(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-21
(45)【発行日】2024-07-01
(54)【発明の名称】リチウム金属二次電池用電解液
(51)【国際特許分類】
H01M 10/0569 20100101AFI20240624BHJP
H01M 10/0568 20100101ALI20240624BHJP
H01M 10/052 20100101ALI20240624BHJP
【FI】
H01M10/0569
H01M10/0568
H01M10/052
(21)【出願番号】P 2022537796
(86)(22)【出願日】2020-10-30
(86)【国際出願番号】 KR2020015047
(87)【国際公開番号】W WO2021125546
(87)【国際公開日】2021-06-24
【審査請求日】2022-06-17
(31)【優先権主張番号】10-2019-0170942
(32)【優先日】2019-12-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(31)【優先権主張番号】10-2020-0141979
(32)【優先日】2020-10-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】521065355
【氏名又は名称】エルジー エナジー ソリューション リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100188558
【氏名又は名称】飯田 雅人
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(72)【発明者】
【氏名】ジョンボム・イ
(72)【発明者】
【氏名】ヘジン・ハ
(72)【発明者】
【氏名】イェウン・キム
【審査官】多田 達也
(56)【参考文献】
【文献】韓国公開特許第10-2019-0058134(KR,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0344063(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2017/0117578(US,A1)
【文献】国際公開第2019/188360(WO,A1)
【文献】国際公開第2017/010255(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M10/05-10/39
H01M6/00-6/22
H01M4/00-4/62
H01G11/00-11/86
C07C43/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
リチウム塩および非水系溶媒を含み、リチウム塩の濃度が2.0M超過~4.0M以下であるリチウム金属二次電池用電解液であって、
前記リチウム塩は、リチウムビス(フルオロスルホニル)イミドを含み、
前記非水系溶媒は、1H,1H,5H-オクタフルオロペンチル-1,1,2,2-テトラフルオロエチルエーテル;環状フッ化カーボネート系溶媒;および鎖状カーボネート、鎖状エステル、および鎖状エーテル溶媒からなる群より選択される1以上の溶媒;から成
るものの、少なくとも前記鎖状エーテル溶媒を含み、
前記1H,1H,5H-オクタフルオロペンチル-1,1,2,2-テトラフルオロエチルエーテルは、非水系溶媒の総100体積%に対して32体積%以下で含まれ、
前記鎖状エーテル
溶媒は、ジメチルエーテル、ジエチルエーテル、ジプロピルエーテル、メチルエチルエーテル、メチルプロピルエーテル、およびエチルプロピルエーテルからなる群より選択される1種以上である、リチウム金属二次電池用電解液。
【請求項2】
リチウム塩および非水系溶媒を含み、リチウム塩の濃度が2.0M超過~4.0M以下であるリチウム金属二次電池用電解液であって、
前記リチウム塩は、リチウムビス(フルオロスルホニル)イミドを含み、
前記非水系溶媒は、1H,1H,5H-オクタフルオロペンチル-1,1,2,2-テトラフルオロエチルエーテル(OTE);環状フッ化カーボネート系溶媒;および鎖状カーボネート、鎖状エステルからなる群より選択される1以上の鎖状溶媒;から成り、
前記1H,1H,5H-オクタフルオロペンチル-1,1,2,2-テトラフルオロエチルエーテルは、非水系溶媒の総100体積%に対して32体積%以下で含まれ、
前記電解液の非水系溶媒は、前記OTE、環状フッ化カーボネート系溶媒、および鎖状溶媒以外の他の溶媒を含まない、リチウム金属二次電池用電解液。
【請求項3】
前記1H,1H,5H-オクタフルオロペンチル-1,1,2,2-テトラフルオロエチルエーテルは、非水系溶媒の総100体積%に対して10体積%~30体積%で含まれるものである、請求項1
または2に記載のリチウム金属二次電池用電解液。
【請求項4】
前記環状フッ化カーボネート系溶媒は、非水系溶媒の総100体積%に対して5~30体積%で含まれるものである、請求項1
から3のいずれか一項に記載のリチウム金属二次電池用電解液。
【請求項5】
前記環状フッ化カーボネート系溶媒は、フルオロエチレンカーボネート、ジフルオロエチレンカーボネート、およびトリフルオロメチルエチレンカーボネートからなる群より選択される1種以上である、請求項1から
4のいずれか一項に記載のリチウム金属二次電池用電解液。
【請求項6】
前記鎖状カーボネートは、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、ジプロピルカーボネート、エチルメチルカーボネート、メチルプロピルカーボネート、およびエチルプロピルカーボネートからなる群より選択される1種以上である、請求項1から
5のいずれか一項に記載のリチウム金属二次電池用電解液。
【請求項7】
前記鎖状エステルは、メチルアセテート、エチルアセテート、プロピルアセテート、メチルプロピオネート、エチルプロピオネート、およびプロピルプロピオネートからなる群より選択される1種以上である、請求項1から
6のいずれか一項に記載のリチウム金属二次電池用電解液。
【請求項8】
前記鎖状カーボネート、鎖状エステル、および鎖状エーテル溶媒からなる群より選択される1以上の溶媒は、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、メチルプロピオネート、エチルプロピオネート、ジメチルエーテル、およびジエチルエーテルからなる群より選択される1種以上である、請求項1から
7のいずれか一項に記載のリチウム金属二次電池用電解液。
【請求項9】
リチウムビス(フルオロスルホニル)イミドを電解液の総重量の20~50重量%で含む、請求項1から
8のいずれか一項に記載のリチウム金属二次電池用電解液。
【請求項10】
リチウム塩濃度が2.1M以上~3.0M以下である、請求項1
または2に記載のリチウム金属二次電池用電解液。
【請求項11】
正極;リチウム金属負極;前記正極および負極の間に介される分離膜;および請求項1~
10のいずれか一項に記載の電解液を含むリチウム金属二次電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願(ら)との相互引用
本出願は、2019年12月19日付韓国特許出願第10-2019-0170942号および2020年10月29日付韓国特許出願第10-2020-0141979号に基づいた優先権の利益を主張し、当該韓国特許出願の文献に開示された全ての内容は本明細書の一部として組み含まれる。
【0002】
本発明は、リチウム金属を負極活物質として含むリチウム金属二次電池に適用されて電池の寿命特性を向上させることができるリチウム金属二次電池用電解液に関する。
【背景技術】
【0003】
電子、通信、コンピュータ産業の急速な発展によりカムコーダー、携帯電話、ノートパソコン、PC、さらには電気自動車までエネルギー貯蔵技術の適用分野が拡大している。そのために、軽く、長く使用でき、信頼性の高い高性能の二次電池の開発が行われている。
【0004】
現在、適用されている二次電池のうち、1990年代初めに開発されたリチウム二次電池は、水溶液電解液を使用するNi-MH、Ni-Cd、硫酸-鉛電池などの在来の電池に比べて作動電圧が高く、エネルギー密度が顕著に高いため、脚光を浴びている。
【0005】
リチウム二次電池の負極活物質としては、リチウム金属、炭素系物質、シリコンなどが使用されており、このうちリチウム金属は、最も高いエネルギー密度を得ることができるという長所を有しており、持続的に研究が行われている。
【0006】
活物質としてリチウム金属を利用するリチウム電極は、通常、平面の銅またはニッケル箔を集電体にし、その上にリチウム箔を付着させて製造される。または、別途の集電体なしにリチウム箔自体をリチウム電極として使用したり、リチウム箔なしに集電体のみを利用して電池を組み立てた後、電池の充放電でリチウム金属層を形成させて負極として使用する方法などが知られている。
【0007】
しかし、リチウム金属電極を含むリチウム二次電池は、リチウム金属の高い反応性と電池の充放電時に電極にリチウム金属が電着および剥離される過程で発生する表面不均一現象などにより、電解液とリチウム金属電極との間に安定した界面が形成されず、持続的な電解液分解反応が発生するという問題がある。このような電解液副反応は、電池抵抗を急激に増加させるだけでなく、電池内の電解液と可用リチウムを枯渇させて電池の寿命退化を起こす主原因になる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
前記問題点を解決するために、本発明は、リチウム金属に対して安定性に優れた非水系電解液を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
そこで、本発明の一実施形態によれば、
リチウム塩および非水系溶媒を含み、リチウム塩の濃度が2.0M超過~4.0M以下であるリチウム金属二次電池用電解液であって、
前記リチウム塩は、リチウムビス(フルオロスルホニル)イミドを含み、
前記非水系溶媒は、1H,1H,5H-オクタフルオロペンチル-1,1,2,2-テトラフルオロエチルエーテル;環状フッ化カーボネート系溶媒;および鎖状カーボネート、鎖状エステル、および鎖状エーテル溶媒からなる群より選択される1以上の溶媒;を含み、
前記1H,1H,5H-オクタフルオロペンチル-1,1,2,2-テトラフルオロエチルエーテルは、非水系溶媒の総100体積%に対して32体積%以下で含まれる、リチウム金属二次電池用電解液が提供される。
【0010】
一実施形態において、前記1H,1H,5H-オクタフルオロペンチル-1,1,2,2-テトラフルオロエチルエーテルは、非水系溶媒の総100体積%に対して10体積%~30体積%で含まれ得る。
【0011】
一実施形態において、前記環状フッ化カーボネート系溶媒は、非水系溶媒の総100体積%に対して5~30体積%で含まれ得る。
【0012】
一実施形態において、前記環状フッ化カーボネート系溶媒は、フルオロエチレンカーボネート、ジフルオロエチレンカーボネート、およびトリフルオロメチルエチレンカーボネートからなる群より選択される1種以上であり得る。
【0013】
一実施形態において、前記鎖状カーボネートは、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、ジプロピルカーボネート、エチルメチルカーボネート、メチルプロピルカーボネート、およびエチルプロピルカーボネートからなる群より選択される1種以上であり得る。
【0014】
一実施形態において、前記鎖状エステルは、メチルアセテート、エチルアセテート、プロピルアセテート、メチルプロピオネート、エチルプロピオネート、およびプロピルプロピオネートからなる群より選択される1種以上であり得る。
【0015】
一実施形態において、前記鎖状エーテルは、ジメチルエーテル、ジエチルエーテル、ジプロピルエーテル、メチルエチルエーテル、メチルプロピルエーテル、およびエチルプロピルエーテルからなる群より選択される1種以上であり得る。
【0016】
一実施形態において、前記鎖状カーボネート、鎖状エステル、および鎖状エーテル溶媒からなる群より選択される1以上の溶媒は、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、メチルプロピオネート、エチルプロピオネート、ジメチルエーテル、およびジエチルエーテルからなる群より選択される1種以上であり得る。
【0017】
一実施形態において、前記電解液は、リチウムビス(フルオロスルホニル)イミドを電解液の総重量の20~50重量%で含むことができる。
【0018】
一実施形態において、前記電解液は、リチウム塩濃度が2.1M以上~3.0M以下であり得る。
【0019】
具体的に、前記リチウム金属二次電池は、正極;リチウム金属負極;前記正極および負極の間に介される分離膜;および前述の本発明の電解液を含む。
【発明の効果】
【0020】
本発明のリチウム金属二次電池用電解液は、リチウム金属に対する安定性に優れて電解液副反応が少なく、そのために、リチウム金属二次電池に適用されて電池の寿命特性および高率充電性能を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】実施例1、2、および比較例1~3の各電池に対して25℃での容量維持率を測定した結果である。
【
図2】実施例2および比較例1の各電池に対して45℃での容量維持率を測定した結果である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本明細書で使用される用語は、単に例示的な実施例を説明するために使用されたものであって、本発明を限定しようとする意図ではない。単数の表現は、文脈上明白に異なって意味しない限り、複数の表現を含む。本明細書で、「含む」、「備える」または「有する」などの用語は、実施された特徴、段階、構成要素またはこれらを組み合わせたものが存在することを指定しようとするものであり、一つまたはそれ以上の他の特徴や段階、構成要素、またはこれらを組み合わせたものの存在または付加可能性を予め排除しないものと理解されなければならない。
【0023】
本発明は、多様な変更を加えることができ、多様な形態を有することができるところ、特定の実施例を例示して下記で詳細に説明する。しかし、これは本発明を特定の開示形態について限定しようとするのではなく、本発明の思想および技術範囲に含まれる全ての変更、均等物乃至代替物を含むものと理解されなければならない。
【0024】
以下、本発明を詳しく説明する。
【0025】
リチウム金属二次電池用電解液
本発明の一実施形態によるリチウム金属二次電池用電解液は、リチウム塩および非水系溶媒を含み、リチウム塩の濃度が2.0M超過~4.0M以下であり、リチウム塩としてリチウムビス(フルオロスルホニル)イミド(LiFSI)を、非水系溶媒として1H,1H,5H-オクタフルオロペンチル-1,1,2,2-テトラフルオロエチルエーテル(OTE);環状フッ化カーボネート系溶媒;および鎖状カーボネート、鎖状エステル、および鎖状エーテル溶媒からなる群より選択される1以上の溶媒;を含む。この時、前記OTEは、非水系溶媒の総100体積%に対して32体積%以下で含まれる。
【0026】
本発明者らは、リチウム金属を負極活物質として含むリチウム金属電池に使用されるに適した非水系電解液の組成に対して研究を重ねた結果、本発明の組成を満たす電解液がリチウム金属電池に適用された時、既存の電解液に比べて顕著に向上した安定性を示し、電池の寿命および高率充電性能を大幅に向上させる点を確認して本発明を完成した。このような本発明の効果は、前記リチウム塩および溶媒の組み合わせが満たされる場合にのみ確保できるものであって、前記構成要素のうちのいずれか一つでも足りない場合には達成され難い。
【0027】
前記1H,1H,5H-オクタフルオロペンチル-1,1,2,2-テトラフルオロエチルエーテル(OTE)は、下記のような構造式を有する物質であり、本発明の非水系電解液に溶媒として使用される。
【0028】
【0029】
OTEは、リチウム金属と電解液の副反応を抑制して電池の寿命特性を向上させ、粘度が高い高濃度電解液の粘度を減少させて電極および分離膜含浸性を向上させる効果がある。
【0030】
しかし、本発明者らの実験結果、OTEの含有量が電解液に使用される非水系溶媒の総100体積%に対して32体積%を超えて過度に多い場合、寿命改善の効果が多少落ちる様相を示した。また、OTE含有量が非水系溶媒の総体積に対して5体積%未満に過度に少ない場合にも、前記効果を確保することができない。したがって、電解液の安定性向上および電池寿命特性向上の効果を確保するために、OTEは、非水系溶媒の総100体積%に対して5体積%以上、10体積%以上、または20体積%以上であり、30体積%以下、25体積%以下、または24体積%以下で含まれることが好ましい。
【0031】
本発明では前記OTEと共に、環状フッ化カーボネート系溶媒を含む。
【0032】
環状フッ化カーボネート系溶媒は、通常、電解液の溶媒として使用される環状カーボネート系溶媒において少なくとも1以上の水素がフッ素で置換された化合物であれば特に制限されない。具体的に、環状フッ化カーボネート系溶媒は、フルオロエチレンカーボネート、ジフルオロエチレンカーボネート、およびトリフルオロメチルエチレンカーボネートからなる群より選択される1種以上であり得、好ましくはフルオロエチレンカーボネートであり得る。
【0033】
前記環状フッ化カーボネート系溶媒は、非水系溶媒の総100体積%に対して5体積%以上、または10体積%以上であり、30体積%以下、または20体積%以下で含まれることが好ましい。もし環状フッ化カーボネート系溶媒の含有量が5体積%未満であれば電解液副反応の抑制効果を確保することができず、30体積%を超えればリチウム塩が十分に解離されず、電解液のイオン伝導度を確保することができないことがある。
【0034】
一方、OTEおよび環状フッ化カーボネート系溶媒以外に、本発明の電解液は、非水系溶媒として鎖状カーボネート、鎖状エステル、および鎖状エーテル溶媒からなる群より選択される1以上の溶媒(以下、鎖状溶媒という)を含む。
【0035】
このような鎖状溶媒とOTEおよび環状フッ化カーボネート系溶媒をLiFSI塩と共に混合して製造された電解液は、リチウム金属に対して優れた安定性を示すが、環状溶媒とOTE、環状フッ化カーボネート、LiFSI組み合わせの電解液ではこのような効果を達成することができず、これは後述する実施例の結果から確認することができる。
【0036】
前記鎖状溶媒は、電解液の非水系溶媒100体積%に対して40体積%以上、または50体積%以上で使用することができ、85体積%以下、70体積%以下、または65体積%以下で使用することができる。
【0037】
本発明の一実施形態による電解液は、溶媒としてOTE、環状フッ化カーボネート、および鎖状溶媒のみを含み、それ以外に他の溶媒をさらに含まなくてもよい。つまり、鎖状溶媒は、OTEおよび環状フッ化カーボネート以外に残部の溶媒として使用することができる。
【0038】
前記鎖状溶媒は、通常、リチウム二次電池用電解液に使用される鎖状溶媒が制限なしに使用可能である。
【0039】
具体的に、前記鎖状カーボネートは、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、ジプロピルカーボネート、エチルメチルカーボネート、メチルプロピルカーボネート、およびエチルプロピルカーボネートからなる群より選択される1種以上であり得る。
【0040】
前記鎖状エステルは、メチルアセテート、エチルアセテート、プロピルアセテート、メチルプロピオネート、エチルプロピオネート、およびプロピルプロピオネートからなる群より選択される1種以上であり得る。
【0041】
前記鎖状エーテルは、ジメチルエーテル、ジエチルエーテル、ジプロピルエーテル、メチルエチルエーテル、メチルプロピルエーテル、およびエチルプロピルエーテルからなる群より選択される1種以上であり得る。
【0042】
好ましくは、前記鎖状カーボネート、鎖状エステル、および鎖状エーテル溶媒からなる群より選択される1以上の溶媒は、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、メチルプロピオネート、エチルプロピオネート、ジメチルエーテル、およびジエチルエーテルからなる群より選択される1種以上であり得る。
【0043】
好ましい一実施形態による本発明の電解液は、非水系溶媒としてOTE;環状フッ化カーボネート系溶媒としてフルオロエチレンカーボネート;および鎖状溶媒としてジメチルカーボネートを含むものであり得る。この時、非水系溶媒の総100体積%に対してOTEは10~30体積%、または20~25体積%で含まれ;フルオロエチレンカーボネートは10~20体積%で含まれ;ジメチルカーボネートは50~65体積%で含まれ得る。
【0044】
一方、本発明のリチウム金属二次電池用電解液は、リチウム塩としてリチウムビス(フルオロスルホニル)イミド(LiFSI)を含む。
【0045】
前記LiFSIの含有量は、電解液総100重量%に対して20~50重量%、または30~40重量%で含まれることが好ましい。LiFSIの含有量が20重量%未満であれば正極集電体(例えば、アルミニウム箔)の腐食および正極活物質の遷移金属溶出が発生する問題があり、50重量%を超えれば低いイオン伝導度による性能劣化および高粘度による含浸性低下の問題があり得るため好ましくない。
【0046】
本発明の電解液は、リチウム塩として前記LiFSIのみを含むか、またはLiFSI以外に他のリチウム塩をさらに含むことができる。LiFSI以外に含まれるリチウム塩は、電解液100重量%に対して0.1~3重量%範囲で使用されることが、リチウム金属電池の寿命性能を確保することができるため好ましい。
【0047】
LiFSI以外に含むことができるリチウム塩としては、通常、電解液に使用されるLiCl、LiBr、LiI、LiClO4、LiBF4、LiB10Cl10、LiPF6、LiAsF6、LiSbF6、LiAlCl4、LiSCN、LiC4BO8、LiCF3CO2、LiCH3SO3、LiCF3SO3、LiN(SO2CF3)2、LiN(SO2C2F5)2、LiC4F9SO3、LiC(CF3SO2)3、(CF3SO2)2NLi、リチウムクロロボレート、低級脂肪族カルボン酸リチウム、テトラフェニルホウ酸リチウム、リチウムイミドなどが可能である。
【0048】
この時、電解液中のLiFSIおよびその他のリチウム塩の総濃度は、2.0M(mol/L)超過であり、4.0M以下であることが好ましい。このように高い塩濃度でリチウム金属と電解液間の副反応を抑制することができ、正極集電体の腐食および正極活物質の遷移金属溶出を防止する効果を確保することができる。
【0049】
一実施形態において、電解液中のリチウム塩の濃度は、2.1M以上、または2.3M以上であり、3.5M以下、3.0M以下、または2.6M以下であり得る。リチウム塩の濃度が過度に高い場合、低いイオン伝導度による性能劣化および高粘度による電解液含浸性低下の問題があり得るところ、前記範囲内で適切に調節する。
【0050】
前述の本発明のリチウム金属二次電池用電解液は、OTE、環状フッ化カーボネート、および鎖状溶媒を含み、リチウム塩としてLiFSIを含むことで、リチウム金属電極に対して優れた安定性を示し、電池駆動中の副反応が顕著に減少する効果を示す。そのために、本発明の電解液をリチウム金属二次電池に適用時、電池の寿命特性を顕著に向上させることができ、高率充電性能を向上させることができる。
【0051】
リチウム金属二次電池
本発明の一実施形態によれば、前述の電解液を含むリチウム金属二次電池が提供される。具体的に、前記リチウム金属二次電池は、正極、リチウム金属を活物質として含む負極、および分離膜を含み、電解質として前述の本発明の電解液を含む。
【0052】
(1)正極
正極は、正極集電体上にコーティングされた正極活物質層を含む。前記正極活物質層は、正極活物質、バインダー、および選択的に導電剤を含むことができる。
【0053】
正極集電体は、当該電池に化学的変化を誘発せずに高い導電性を有するものであれば特に制限されず、例えばステンレススチール、アルミニウム、ニッケル、チタン、焼成炭素、またはアルミニウムやステンレススチールの表面にカーボン、ニッケル、チタン、銀などで表面処理したものなどを使用することができる。この時、前記正極集電体は、正極活物質との接着力を高めることもできるように、表面に微細な凹凸が形成されたフィルム、シート、箔、ネット、多孔質体、発泡体、不織布体など多様な形態を使用することができる。
【0054】
前記正極活物質としては、リチウムの可逆的なインターカレーションおよびデインターカレーションが可能な化合物であって、当業界に知られた化合物を制限なしに使用することができる。具体的に前記正極活物質は、コバルト、マンガン、ニッケル、またはアルミニウムのような1種以上の金属と、リチウムとを含む、リチウム複合金属酸化物であり得る。
【0055】
前記リチウム複合金属酸化物としては、リチウム-マンガン系酸化物(例えば、LiMnO2、LiMn2O4など)、リチウム-コバルト系酸化物(例えば、LiCoO2など)、リチウム-ニッケル系酸化物(例えば、LiNiO2など)、リチウム-ニッケル-マンガン系酸化物(例えば、LiNi1-YMnYO2(ここで、0<Y<1)、LiMn2-zNizO4(ここで、0<Z<2)など)、リチウム-ニッケル-コバルト系酸化物(例えば、LiNi1-Y1CoY1O2(ここで、0<Y1<1)など)、リチウム-マンガン-コバルト系酸化物(例えば、LiCo1-Y2MnY2O2(ここで、0<Y2<1)、LiMn2-Z1CoZ1O4(ここで、0<Z1<2)など)、リチウム-ニッケル-マンガン-コバルト系酸化物(例えば、Li(NipCoqMnr1)O2(ここで、0<p<1、0<q<1、0<r1<1、p+q+r1=1)またはLi(Nip1Coq1Mnr2)O4(ここで、0<p1<2、0<q1<2、0<r2<2、p1+q1+r2=2)など)、またはリチウム-ニッケル-コバルト-遷移金属(M)酸化物(例えば、Li(Nip2Coq2Mnr3MS2)O2(ここで、MはAl、Fe、V、Cr、Ti、Ta、MgおよびMoからなる群より選択される1種以上であり、p2、q2、r3およびs2は、それぞれ独立的な元素の原子分率であって、0<p2<1、0<q2<1、0<r3<1、0<s2<1、p2+q2+r3+s2=1である)など)などが挙げられ、これらのうちのいずれか一つまたは二つ以上の化合物が含まれ得る。
【0056】
バインダーは、電極活物質と導電剤の結合と集電体に対する結合のために使用する。このようなバインダーの非制限的な例としては、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリアクリル酸(PAA)、ポリメタクリル酸(PMA)、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、ポリアクリールアミド(PAM)、ポリメタクリルアミド、ポリアクリロニトリル(PAN)、ポリメタクリロニトリル、ポリイミド(PI)、アルギン酸(Alginic acid)、アルギネート(Alginate)、キトサン(Chitosan)、カルボキシメチルセルロース(CMC)、デンプン、ヒドロキシプロピルセルロース、再生セルロース、ポリビニルピロリドン、テトラフルオロエチレン、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン-プロピレン-ジエンポリマー(EPDM)、スルホン化-EPDM、スチレン-ブタジエンゴム(SBR)、フッ素ゴム、これらの多様な共重合体などが挙げられる。
【0057】
導電剤は、電極活物質の導電性をより向上させるために使用する。このような導電剤は、当該電池に化学的変化を誘発せずに導電性を有するものであれば特に制限されず、例えば、天然黒鉛や人造黒鉛などの黒鉛;カーボンブラック、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、チャンネルブラック、ファーネスブラック、ランプブラック、サーマルブラックなどのカーボンブラック;炭素繊維や金属繊維などの導電性繊維;フッ化カーボン、アルミニウム、ニッケル粉末などの金属粉末;酸化亜鉛、チタン酸カリウムなどの導電性ウィスカ;酸化チタンなどの導電性金属酸化物;ポリフェニレン誘導体などを使用することができる。
【0058】
前記正極を製造する方法は、特に制限されない。例えば、活物質、バインダー、選択的に導電剤を有機溶媒上で混合して製造した活物質スラリーを集電体上に塗布および乾燥し、選択的に電極密度の向上のために集電体に圧縮成形して製造することができる。
【0059】
前記有機溶媒としては、活物質、バインダー、導電剤を均一に分散させることができ、容易に蒸発されるものを使用することが好ましい。具体的にはN-メチルピロリドン、アセトニトリル、メタノール、エタノール、テトラヒドロフラン、水、イソプロピルアルコールなどが挙げられるが、これに制限されるのではない。
【0060】
(2)負極
本発明の負極は、リチウム金属を負極活物質とするリチウム金属負極である。リチウム金属二次電池の組立時に使用されるリチウム金属負極は、集電体のみからなるか、集電体にリチウム金属がコーティングされた形態であるか、またはリチウム金属のみからなるものであり得る。
【0061】
前記負極集電体は、電池に化学的変化を誘発せずに導電性を有するものであれば特に制限されず、例えば銅、ステンレススチール、アルミニウム、ニッケル、チタン、焼成炭素、銅やステンレススチールの表面にカーボン、ニッケル、チタン、銀などで表面処理したもの、アルミニウム-カドミウム合金などを使用することができる。また、その形態は、表面に微細な凹凸が形成されたり未形成されたフィルム、シート、箔、ネット、多孔質体、発泡体、不織布体など多様な形態を使用することができる。一例として、前記負極集電体としては、銅箔板(Copper foil)を使用することができるが、これに制限されるのではない。
【0062】
前記集電体の厚さは、特に制限されないが、5~100μmが好ましく、5~50μmがより好ましい。集電体の厚さが5μm未満であれば、工程上、取り扱いが難しいことがあり、100μmを超えれば、不必要に電池厚さおよび重量が増加してエネルギー密度が減少するなど電池性能に影響を与えることがあるため、前記範囲が好ましい。
【0063】
電池組立時に負極として集電体のみからなる電極を使用する場合、電池組立後、初期充放電により正極から移動したリチウムイオンが非可逆的に負極集電体上にメッキされてリチウム金属層を形成するようになり、その後、前記リチウム金属層が負極活物質層として作用することがある。
【0064】
または、電池組立時から活物質であるリチウム金属を含む負極を使用することもできるが、この時、負極集電体上にリチウム金属をコーティングする方法は特に制限されない。一例として、集電体にリチウム金属の薄膜を積層させた後に圧延する方法、集電体にリチウム金属を電解または無電解メッキする方法などを使用することができる。この時、負極のリチウム金属層の厚さは、特に制限されないが、10μm以上、または20μm以上であり、50μm以下、または40μm以下であり得る。
【0065】
一方、リチウム金属のみからなるリチウム金属負極の場合、その厚さは特に制限されないが、10μm以上、または20μm以上であり、50μm以下、または40μm以下であり得る。
【0066】
(3)分離膜
分離膜は、負極と正極を分離し、リチウムイオンの移動通路を提供するものであり、リチウム電池で通常使用されるものであれば全て使用可能である。つまり、電解質のイオン移動に対して低抵抗であると共に、電解液含湿能力に優れたものを使用することができる。例えば、ガラス繊維、ポリエステル、テフロン(登録商標)、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)またはこれらの組み合わせの中から選択されたものであって、不織布または織布形態であってもよい。
【0067】
例えば、ポリエチレン、ポリプロピレンなどのようなポリオレフィン系高分子分離膜や、耐熱性または機械的強度確保のためにセラミック成分または高分子物質が含まれているコーティング層を含む分離膜を使用することもでき、このような分離膜は、単層または多層構造で使用することができる。一実施例において、前記分離膜としては、ポリオレフィン系高分子基材の両面にセラミック粒子とイオン性バインダー高分子を含有するセラミックコーティング材をコーティングして製造した分離膜を使用することができる。
【0068】
本発明のリチウム金属二次電池を製造する方法は、特に制限されず、一例として前記正極、分離膜、および負極を順に積層させ電極組立体を製造し、これを電池ケースに入れた後、ケースの上部に本発明による電解液を注入し、キャッププレートおよびガスケットで密封して製造することができる。
【0069】
前述のようなリチウム二次電池の形態は、特に制限されず、例えばジェリーロール型、スタック型、スタック-フォルディング型(スタック-Z-フォルディング型を含む)、またはラミネーション-スタック型であり得る。
【0070】
このように製造されたリチウム金属二次電池は、リチウム金属電極と電解液間の副反応が顕著に少ないため、優れた電池寿命特性と高率充電性能を示すことができる。
【0071】
以下、本発明の理解のために好ましい実施例を提示するが、下記の実施例は本発明を例示するものに過ぎず、本発明の範疇および技術思想の範囲内で多様な変更および修正が可能であることは当業者において明白であり、このような変更および修正が添付された特許請求の範囲に属することも当然である。
【0072】
[実施例]
実施例1、2および比較例1~3:リチウム金属二次電池の製造
(1)正極の製造
正極活物質としてNCM811(LiNi0.8Co0.1Mn0.1O2)、導電剤としてカーボンブラック、バインダーとしてポリフッ化ビニリデン(PVdF)を使用し、溶媒としてN-メチルピロリドンを使用して、活物質:導電剤:バインダーの重量比が96:2:2である正極活物質スラリーを製造した。その後、厚さ12μmのアルミニウム箔の両面に前記正極活物質スラリーをコーティングして圧延および乾燥して、ローディングが3.8mAh/cm2である正極を製造した。
【0073】
(2)負極の製造
厚さ8μmの銅箔の一面に厚さ20μmのリチウム金属箔を積層させ、圧延してリチウム金属負極を製造した。
【0074】
(3)電解液の製造
下記表1の組成により実施例および比較例の電解液を製造した。下記表で、DMCはジメチルカーボネート(鎖状カーボネート)、ECはエチレンカーボネート(環状カーボネート)、FECはフルオロエチレンカーボネート、OTEは1H,1H,5H-オクタフルオロペンチル-1,1,2,2-テトラフルオロエチルエーテルである。また、下記表で、リチウム塩の含有量(wt%)は、電解液総100重量%に対する重量%であり、リチウム塩の濃度(M)は、電解液中に含まれている総溶媒1L当たりのリチウム塩のモル(mol)数であり、各溶媒の含有量は電解液溶媒の総100体積%中の各溶媒の体積%である。
【0075】
【0076】
(4)電池の組立
前記(1)の正極の両面に分離膜および前記(2)の負極を積層して、負極/分離膜/正極/分離膜/負極の順に積層された125mAh容量のパウチ型バイセルを作製した。この時、分離膜としては7μm厚さのポリエチレン生地の両面に2.5μm厚さのアルミナがコーティングされた分離膜を使用した。
【0077】
前記パウチに(3)で製造した各電解液200μl(1.6μl/mAh)を注入し、実施例1、2および比較例1~5の電池を製造した。
【0078】
実験例:常温(25℃)および高温(45℃)での寿命特性評価
前記各実施例および比較例の電池に対して25℃で標準充/放電の電流密度を0.2C/2.0Cにし、充電終止電圧を4.25V、放電終止電圧を2.5Vにして充放電を繰り返した。この時、下記式1で表される容量維持率が80%になるサイクルを記録して、下記表2に示した。また、45℃で実施例2および比較例1の電池に対して同一の実験を行ってその結果を下記表2に示した。
【0079】
[式1]
容量維持率(%)=(n回目のサイクルでの放電容量/1回目のサイクルでの放電容量)*100
【0080】
【0081】
前記表2および
図1~2を参照すれば、OTEを含む実施例の電解液が比較例1に比べて顕著に向上した常温および高温寿命特性を示すことが確認される。しかし、比較例2から、OTE含有量が過度に多い場合、寿命向上効果を十分に確保できないことが分かる。また、実施例2と比較例3を比較すると、OTEを適用した電解液に線状溶媒でない環状溶媒を使用した場合、寿命特性が顕著に減少することを確認できる。一方、比較例4から、リチウム塩の濃度が2.0M以下に低い場合、正極集電体(アルミニウム)の腐食が発生することによって高温寿命性能が大幅に減少することを確認できる。反面、リチウム塩の濃度が4.0Mを超えて過度に高い比較例5の場合、電解液の含浸性が確保されず、常温と高温寿命性能が正常に発現しないことが分かる。