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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-21
(45)【発行日】2024-07-01
(54)【発明の名称】耐震用可撓継手の施工方法
(51)【国際特許分類】
   E04B 1/68 20060101AFI20240624BHJP
   E03F 3/04 20060101ALI20240624BHJP
   E04B 1/682 20060101ALI20240624BHJP
   E04G 23/02 20060101ALI20240624BHJP
【FI】
E04B1/68 100Z
E03F3/04 A
E04B1/682 A
E04G23/02 E
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2024023482
(22)【出願日】2024-02-20
【審査請求日】2024-02-20
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】391051256
【氏名又は名称】株式会社美和テック
(74)【代理人】
【識別番号】110001807
【氏名又は名称】弁理士法人磯野国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】合田 裕一
【審査官】菅原 奈津子
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-099233(JP,A)
【文献】特開2023-077833(JP,A)
【文献】特開2009-144438(JP,A)
【文献】特開2005-273159(JP,A)
【文献】特開2015-214852(JP,A)
【文献】特開平10-061031(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2002/0088192(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04B 1/62- 1/98
E01C 11/02
E01D 19/06
E02B 3/16
E02B 5/02
E02D 29/16
E03F 3/04
E21D 11/04-11/38
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
既存のコンクリート部材同士をつなぐ目地に沿って前記目地の両側における所定範囲の領域に光硬化性充填材を充填して平らにする充填工程と、
平らにした前記光硬化性充填材の表面に光硬化性シートを覆う被覆工程と、
前記光硬化性シート及び前記光硬化性充填材を硬化させる波長の光を照射して前記光硬化性充填材及び前記光硬化性シートを硬化させる工程と、
アンカーボルトを介して前記光硬化性シート及び前記目地を覆う伸縮部材を固定する工程と、を含む耐震用可撓継手の施工方法。
【請求項2】
既存のコンクリート部材同士をつなぐ目地に沿って前記目地の両側における所定範囲の領域に光硬化性充填材を充填して平らにする充填工程と、
平らにした前記光硬化性充填材が硬化する波長の光を照射して前記光硬化性充填材を硬化させる工程と、
前記硬化した光硬化性充填材を覆うように光硬化性シートを配置する工程と、
前記光硬化性シートを硬化させる波長の光を照射して前記光硬化性シートを硬化させる工程と、
アンカーボルトを介して前記光硬化性シート及び前記目地を覆う伸縮部材を固定する工程と、を含む耐震用可撓継手の施工方法。
【請求項3】
前記充填工程の前に、前記目地の両側における所定範囲の前記領域を切削する切削工程と、を含み、
前記充填工程は、前記切削した前記領域に前記光硬化性充填材を充填して平らにする請求項1又は請求項2に記載の耐震用可撓継手の施工方法。
【請求項4】
前記光硬化性充填材及び光硬化性シートは、紫外線により硬化する請求項1又は請求項2に記載の耐震用可撓継手の施工方法。
【請求項5】
前記伸縮部材は、前記光硬化性シートの両端よりも内側に配置される幅である請求項1又は請求項2に記載の耐震用可撓継手の施工方法。
【請求項6】
前記アンカーボルトは、前記光硬化性充填材及び光硬化性シートならびに前記伸縮部材を貫通する位置に配置されると共に、前記伸縮部材の長手方向に沿って、前記伸縮部材の両端側に配置される押え板を貫通すると共に前記伸縮部材を貫通して前記伸縮部材を固定する請求項1又は請求項2に記載の耐震用可撓継手の施工方法。
【請求項7】
前記アンカーボルトは、前記伸縮部材の外側で前記光硬化性充填材及び前記光硬化性シートが重なる位置に前記目地に沿って設置され、前記伸縮部材の両端側に前記目地に沿って連続する押え板を押え金具を介して前記伸縮部材上から押えつけるように固定する請求項1又は請求項2に記載の耐震用可撓継手の施工方法。
【請求項8】
前記伸縮部材で前記光硬化性シート及び前記目地を覆った後に、前記伸縮部材を覆う保護シート又は補強布を配置して、前記アンカーボルトを介して、前記伸縮部材、保護シート又は補強布を固定する請求項1又は請求項2に記載の耐震用可撓継手の施工方法。
【請求項9】
前記伸縮部材は、左右に配置される前記アンカーボルトの間において、前記光硬化性シートの上方に突出する1つの凸状部を前記目地に沿って長手方向に連続して有し、
前記目地が形成されている平面が90度以下の範囲で前記平面の向きが変わって傾斜面となる位置において、前記伸縮部材は、その向きが変わった傾斜面に平面から連続して前記目地及び前記光硬化性シートを覆うように配置する請求項1又は請求項2に記載の耐
震用可撓継手の施工方法。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンクリート部材の目地部分に配置する耐震用可撓継手の施工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、コンクリートで形成されている水路用坑道では、その水路用坑道を構成する各コンクリート部材同士を接続している目地の部分を補強する場合、耐震用可撓継手を施すことが知られている(非特許文献1参照)。この耐震用可撓継手の施工方法は、目地の左右領域の劣化したコンクリート壁面を所定範囲及び所定深さに切削し(はつり)、切削することで窪んだ領域にモルタルを塗布して養生する。そして、耐震用可撓継手の施工方法は、モルタルにより平面とした領域にゴムシートで形成されている耐震用可撓継手をアンカーで固定することで目地部分の耐震性能、止水性能を確保している。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【文献】西武ポリマ化成株式會社:ビーシージョイント(登録商標):[令和5年11月29日検索]、インターネット<URL:https://www.seibu-p.co.jp/product/construction/bcjoint.html>
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、コンクリート部材の耐震用可撓継手の施工方法では、目地の部分を補強する際にモルタルを使用しているので、モルタルを乾燥させるために3~7日の養生時間が必要になる。そのため、目地を補強するための耐震用可撓継手の施工方法では、短時間で作業を完了させたい要望がある。
【0005】
本発明は、前記した要望に対応するため、作業時間を短縮することができる耐震用可撓継手の施工方法を提案することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決するための本発明に係る耐震用可撓継手の施工方法は、既存のコンクリート部材同士をつなぐ目地に沿って前記目地の両側における所定範囲の領域を切削する切削工程と、前記切削した前記領域に光硬化性充填材を充填して平らにする充填工程と、平らにした前記光硬化性充填材の表面に光硬化性シートを覆う被覆工程と、前記光硬化性シート及び前記光硬化性充填材を硬化させる波長の光を照射して前記光硬化性充填材及び前記光硬化性シートを硬化させる工程と、前記光硬化性シートを覆うように伸縮部材を、アンカーボルトを介して配置する工程と、を含むこととした。
【0007】
前記課題を解決するための本発明は、耐震用可撓継手の施工方法は、既存のコンクリート部材同士をつなぐ目地に沿って前記目地の両側における所定範囲の領域を切削する切削工程と、前記切削した前記領域に光硬化性充填材を充填して平らにする充填工程と、平らにした前記光硬化性充填材が硬化する波長の光を照射して前記光硬化性充填材を硬化させる工程と、前記硬化した光硬化性充填材を覆うように光硬化性シートを配置する工程と、前記光硬化性シートを硬化させる波長の光を照射して前記光硬化性シートを硬化させる工程と、前記光硬化性シートを覆うように伸縮部材を、アンカーボルトを介して配置する工程と、を含むこととした。
【0008】
なお、光硬化性充填材及び光硬化性シートは、一例として、紫外線の照射により硬化する材料で形成されていることが好ましい。
【発明の効果】
【0009】
本発明の耐震用可撓継手の施工方法によれば、目地の両側となるコンクリートを切削した領域に充填する光硬化性充填材や、硬化性充填材を覆う光硬化性シートを数分から十分程度で硬化させることができる。そのため、アンカーボルトを配置して伸縮部材を固定する作業を従来のモルタルを乾燥硬化させて行う場合に係る3~7日の養生時間と比較して、数十分で行うことができる。したがって、耐震用可撓継手の施工方法では、作業時間を短縮して行うことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】第1実施形態に係る耐震用可撓継手をコンクリート部材に施した状態を模式的に示す模式図である。
図2】第1実施形態に係る耐震用可撓継手の施工方法に使用する耐震用可撓継手の構成を一部断面にして例示する断面斜視図である。
図3】第1実施形態に係る耐震用可撓継手の施工方法を示すフローチャートである。
図4】第1実施形態に係る耐震用可撓継手の施工方法において切削する領域を設定する領域設定工程を例示する模式図である。
図5】第1実施形態に係る耐震用可撓継手の施工方法において領域設定した箇所を切削する切削工程を例示する模式図である。
図6】第1実施形態に係る耐震用可撓継手の施工方法において切削した領域に接着材を吹き付けるプライマ塗布工程を示す模式図である。
図7】第1実施形態に係る耐震用可撓継手の施工方法において光硬化性充填材を配置する充填工程を例示する模式図である。
図8】第1実施形態に係る耐震用可撓継手の施工方法において光硬化性シートを配置する被覆工程を例示する模式図である。
図9】第1実施形態に係る耐震用可撓継手の施工方法において光照射工程を例示する模式図である。
図10】第1実施形態に係る耐震用可撓継手の施工方法においてアンカーボルトを打ち込んだ状態を例示する模式図である。
図11】第1実施形態に係る耐震用可撓継手の施工方法において伸縮部材を配置した状態を例示する模式図である。
図12】第1実施形態に係る耐震用可撓継手の施工方法において保護シートを配置した状態を例示する模式図である。
図13】第1実施形態に係る耐震用可撓継手の施工方法においてアンカーボルトにナットを締めて施工を完了する状態を例示する模式図である。
図14】第2実施形態に係る耐震用可撓継手の施工方法を例示するフローチャートである。
図15】本発明に係る耐震用可撓継手の施工方法を実施する他の構造物を例示する斜視図である。
図16】本発明に係る耐震用可撓継手の施工法に使用する他の耐震用可撓継手の構成を一部断面にして例示する斜視図である。
図17図16の耐震用可撓継手を施工した状態を例示する平面図である。
図18】(a)は、本発明に係る第1変形例を示す耐震用可撓継手の施工状態を例示す断面図である。(b)は、本発明に係る第2変形例を示す耐震用可撓継手の施工状態を例示す断面図である。(c)は、本発明に係る第3変形例を示す耐震用可撓継手の施工状態を例示す断面図である。
図19】(a)は、本発明に係る第4変形例を示す耐震用可撓継手の施工状態を例示す断面図である。(b)は、本発明に係る第5変形例を示す耐震用可撓継手の施工状態を例示す断面図である。(c)は、本発明に係る第6変形例を示す耐震用可撓継手の施工状態を例示す断面図である。
図20】(a)は、本発明に係る第7変形例を示す耐震用可撓継手の施工状態を例示す断面図である。(b)は、本発明に係る第8変形例を示す耐震用可撓継手の施工状態を例示す断面図である。(c)は、本発明に係る第9変形例を示す耐震用可撓継手の施工状態を例示す断面図である。
図21】(a)は、本発明に係る第10変形例を示す耐震用可撓継手の施工状態を例示する断面図である。(b)は、本発明に係る第10変形例の耐震用可撓継手を角度が異なる位置に設置した状態を例示する断面図である。
図22】本発明に係る耐震用加工継手の施工方法の応用例を例示するフローチャートである。
図23】本発明に係る耐震用加工継手の施工方法の応用例を例示するフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明に係る一実施形態について図面を参照して説明する。なお、以下の説明では、はじめに、第1実施形態として水路で使用される配管となるコンクリート構造物の目地に配置される耐震用可撓継手の構成を説明した後に、耐震用可撓継手の施工方法について説明する。
図1に示すように、コンクリート構造物100は、筒状のコンクリート部材10,10を接続して水路となる配管状に構成している。そして、コンクリート構造物100では、接続するコンクリート部材10,10の接続部分11に目地12が設けられるが、経年劣化に伴い目地12の部分を補強する必要がある。そのため、コンクリート構造物100では、目地12の部分に耐震用可撓継手20を施すことが行われている。
【0012】
図2に示すように耐震用可撓継手20は、例えば、目地12の両側における所定範囲の劣化したコンクリート面を、切削し(はつり)、光硬化性充填材26を充填した上に光硬化性シート27を被覆して準備をした後に、伸縮部材21をアンカーボルト23により固定するように用いられている。
耐震用可撓継手20は、光硬化性シート27の上から目地12に対向する位置を覆う伸縮部材21と、伸縮部材21の両端側を押える押え板22、22と、伸縮部材21を覆い押え板22,22で固定される保護シート24と、押え板22,22を固定するアンカーボルト23及びナット29とを備えている。
【0013】
伸縮部材21は、例えば、エチレンプロピレンゴムのような伸縮性のある部材がシート状に形成されている。そして、伸縮部材21は、中央側が重なるように折りたたまれた折畳部21aと、折畳部21aから連続して押え板22,22で抑え付けられる平坦部21bと、平坦部21bの両端に平坦部21bから垂直方向に立ち上がる立上部21cと、を有している。なお、折畳部21aの折りたたまれている折畳形状は、特に限定されるものではない。さらに、平坦部21bは、押え板22が当接できる広さの幅を備えている。また、立上部21cは、平坦部21bの端を垂直方向に立ち上げて押え板22の側面が当接して押え板22,22の押えを確実にしている。また、伸縮部材21は、一例として、アンカーボルト23が貫通する貫通穴を長手方向において所定間隔ごとに形成している。
【0014】
押え板22は、伸縮部材21の平坦部21bに当接してアンカーボルト23及びナット29で抑え付けられて、伸縮部材21と光硬化性シート27との間から水の浸入を防いでいる。押え板22は、断面形状が四角形に形成され、長手方向に沿って所定間隔ごとにアンカーボルト23を挿通する穴を有している。押え板22は、例えば、SUS304又はSUS316などの金属で形成されている。なお、押え板22は、一例として、50cm~150cmの長さに形成され、必要に応じて、切断して所定長さの単位で使用される。また、図2で示すように、押え板22は、ここでは、保護シート24も伸縮部材21と共に光硬化性シート27に向かって押圧している。
【0015】
保護シート24は、伸縮部材21を覆い伸縮部材21を保護するものである。保護シート24は、例えば、厚みが1.0mm~2.0mm(例えば、1.5mm)であり、エチレンプロプレンゴムで形成されている。保護シート24は、長手方向に沿って所定間隔でアンカーボルト23を挿通させる穴が形成されている。保護シート24は、伸縮部材21の折畳部21a及び平坦部21bを覆うようにアンカーボルト23により固定されている。
【0016】
つぎに、耐震用可撓継手20の施工方法について、図3から図13を参照して説明する。
耐震用可撓継手の施工方法S100は、既存のコンクリート部材同士をつなぐ目地12に沿って目地12の両側における所定範囲の領域に光硬化性充填材26を充填して平らにする充填工程(充填工程)S4と、平らにした光硬化性充填材26の表面に光硬化性シート27を覆う被覆工程(被覆工程)S5と、光硬化性シート27及び光硬化性充填材26を硬化させる波長の光を照射して光硬化性充填材26及び光硬化性シート27を硬化させる工程(光照射工程)S5と、アンカーボルト23を介して光硬化性シート27及び目地12を覆う伸縮部材21を固定する工程(アンカーボルト打込工程S7、伸縮部材配置工程S8)と、を含むものである。つまり、耐震用可撓継手の施工方法S100は、切削工程S2と、充填工程S4と、被覆工程S5と、光照射工程S6と、アンカーボルト打込工程S7と、伸縮部材配置工程S8とを含むこととした。なお、可撓継手の施工方法S100では、切削工程S2の前に切削領域を設定する領域設定工程S1を行い、また、切削工程S2の後にプライマ塗布工程S3を行い、さらに、伸縮部材配置工程S8の後に、保護シート配置工程S9と、ナット締付工程S10とを行っているこことして説明する。
【0017】
領域設定工程S1は、コンクリート部材10の表面の劣化している部分を平坦にするために、目地12の両側において切削する範囲の領域を設定する工程である。領域設定工程S1では、図4に示すように、例えば、目地12の長手方向に沿って、目地12の両側の所定範囲の領域の境界線となる位置に、電動カッター30等の工具により直線状にコンクリート部材10の表面に切込みを入れている。設定領域として設定される切削領域13は、例えば、光硬化性シート27を被覆する範囲を目安としている。領域設定工程S1は、一例として、電動カッター30により直線的に切溝ができるように作業しているが、コンクリート表面に境界線を描くことで設定しても構わない。なお、図1のようなコンクリート構造物では、コンクリート部材10,10の目地12は、周方向に亘って配置されることになる。領域設定工程S1を行うことで、切削する範囲が明確化される。特に、コンクリート部材10の表面に切込みを入れることで、切り込まれた境界線の位置で切削したコンクリートが剥がれ落ち切削領域13が明確に区画される。領域設定工程S1が終了すると、切削工程S2が行われる。
【0018】
切削工程S2は、切削領域13の範囲が設定されたコンクリート部材10の表面を切削する(はつる)工程である。切削工程S2では、図5に示すように、例えば、コンクリートハンマ等の切削機31を使用して切削領域13を切削する作業を行っている。なお、コンクリート部材10の表面を切削する作業は、グラインダ等のホイールの周表面に砥石をつけた工具で行うことや、切削するための工具は特に限定されるものではない。切削工程S2で切削した実際の領域と、領域設定工程S1で設定した切削領域13とは略同等となることが好ましいが、切削領域13は目安であり一致する必要はない。切削工程S2が終了すると、プライマ塗布工程S3が行われる。
【0019】
プライマ塗布工程S3は、コンクリート部材10の表面を切削した切削領域13にプライマ(例えば、接着材)14を塗布する工程である。プライマ塗布工程S3では、図6に示すように、プライマ噴射装置32を介して噴射ノズルからシャワーあるいは噴霧することで、切削領域13にプライマ14を塗布している。塗布されたプライマ14は、光硬化性充填材26が切削領域13内に適切に定着できるようにするものである。なお、プライマ14は、光硬化性充填材26のコンクリート部材10へのしみ込みを防止すると共に、光硬化性充填材26とコンクリート部材10との接着性を向上させている。プライマ塗布工程S3では、プライマ噴射装置32を使用しているが刷毛等の他の手段でプライマ14を塗布することであっても構わない。プライマ塗布工程S3が終了すると、つぎに充填工程S4が行われる。なお、図6図7では、交差している細線でプライマ14が塗布された状態を示している。
【0020】
充填工程S4は、プライマ14を塗布した切削領域13に光硬化性充填材26を充填する工程である。充填工程S4は、図7に示すように、例えば、コテ33を使用して、光硬化性充填材26をコンクリート部材10の表面と同等の高さで平坦になるように充填している。光硬化性充填材26は、例えば、所定波長の光、紫外線を照射することで硬化するパテ状の光硬化性ビニルエステル樹脂を主に含む材料である。ここで使用される光硬化性充填材26は、既存の製品がs使用されている。光硬化性充填材26は、一例として、250Wのメタルハライドランプを使用し10mw/cmの光の強さで5分間において光を照射されている。光硬化性充填材26は、一例として、光の照射により、硬化物バーコール硬度が34(JIS K 7060)の硬度を有することができる。なお、充填工程S4は、次工程である被覆工程S5の後に光を照射されることで光硬化性充填材26及び光硬化性シート27を硬化させている。充填工程S4が終了すると、つぎに、被覆工程S5が行われる。
【0021】
被覆工程S5は、充填した光硬化性充填材26を覆い目地12を覆わないように光硬化性シート27を被覆する工程である。被覆工程S5では、図8に示すように、一例として、シート状あるいはフィルム状で光の照射により硬化する光硬化性シート27を、目地12を除いて光硬化性充填材26の上を覆うように配置している。すなわち、被覆工程S5では、目地12の両側に光硬化性シート27が光硬化性充填材26を覆うように配置される。なお、被覆工程S5で使用される光硬化性シート27は、例えば、光硬化性ビニルエステル樹脂にガラス繊維基材が混合されている材料を用いている。光硬化性シート27は、厚みが0.8mm以上、例えば、1.0mmの厚みのものが使用される。光硬化性シート27は、一面側に接着層を有している。そのため、光硬化性シート27は、側壁あるいは天井壁面にも配置されるが、接着層が光硬化性充填材26の表面及びコンクリート部材10の表面に接着することで配置することが可能となる。
【0022】
また、光硬化性シート27を使用することで、光硬化性充填材26の表面に小さな凹凸が発生しても、その凹凸を光硬化性シート27の厚みにより吸収して光硬化性シート27の表面において均等な平坦性を確保できる可能性が高くなる。ここで使用される光硬化性シート27は、既存の製品が使用されている。被覆工程S5では、250Wのメタルハライドランプを使用し10mw/cmの光を5分間照射することで硬化させていることができる素材が用いられている。なお、光硬化性シート27は、一例として、硬化すると硬化物バーコール硬度において38となる(JIS K 7060)。被覆工程S5が終了すると、つぎに、光照射工程S6が行われる。
【0023】
光照射工程S6は、光硬化性充填材26及び光硬化性シート27に光を照射して硬化させる工程である。光照射工程S6は、図9に示すように、例えば、250Wのメタルハライドランプにより5分~10分程度、光を光硬化性充填材26及び光硬化性シート27に向けて光照射装置34を介して照射している。光照射装置34は、例えば、メタルハライドランプが使用され、350nm~725nmの波長範囲の光を照射し、紫外線波長領域の光により、光硬化性充填材26及び光硬化性シート27を硬化させている。光照射工程S6では、例えば、スタンドを用いて、メタルハライドランプを使用する光照射装置34により5分~10分程度の時間、光硬化性充填材26及び光硬化性シート27に光を照射している。
【0024】
なお、光照射装置34は、複数のメルハライドランプを使用して、連続する一連の目地12を覆う光硬化性シート27の上方から光を所定時間照射することが好ましい。この光照射工程S6で使用されるランプは、光硬化性充填材26及び光硬化性シート27が硬化する光の波長に合わせて、その波長域を照射することができるものが使用される。したがって、光硬化性充填材26及び光硬化性シート27が、可視光領域で硬化する素材であれば、光照射装置34もその可視光領域を照射することができるランプが使用され、紫外線領域で硬化する素材であれば紫外線領域を照射することができるランプが使用される。また、光照射装置34は、所定波長領域を照射するLED光源を使用することとしても構わない。光照射工程S6が終了すると、つぎに、アンカーボルト打込工程S7が行われる。
【0025】
アンカーボルト打込工程S7は、アンカーボルト23を光硬化性充填材26及び光硬化性シート27の重なる位置に所定間隔で打ち込む工程である。アンカーボルト打込工程S7では、図10に示すように、後記する伸縮部材21を固定するためのアンカーボルト23を光硬化性充填材26及び光硬化性シート27の重なる範囲内で、伸縮部材21に形成されている貫通穴に挿通できる位置に振動ドリル等の工具により打ち込んでいる。アンカーボルト23は、複数が打ち込まれ、光硬化性シート27の上面から一部が突出する状態で配置される。なお、アンカーボルト打込工程S7が行われるときには、光硬化性充填材26及び光硬化性シート27は、十分硬化しているため、コンクリート部材10と同様に振動ドリル等の工具で穿孔する必要がある。アンカーボルト打込工程S7が終了すると、つぎに、伸縮部材配置工程S8が行われる。
【0026】
伸縮部材配置工程S8は、打ち込まれたアンカーボルト23に伸縮部材21の貫通穴が挿通されるように、光硬化性シート27の上に伸縮部材21を配置する工程である。伸縮部材配置工程S8では、一例として、エチレンプロピレンゴム等のゴムあるいは合成ゴムで形成されている伸縮部材21が使用される。図2及び図11に示すように、伸縮部材21は、予め設定された折り畳み状態で配置される。ここでは、伸縮部材21は、目地12の両端側に光硬化性シート27と当接する平坦部21b,21bと、平坦部21b,21bから中央側にシートが重なるように折り畳まれた折畳部21aと、平坦部21b,21bの外側となる端部を垂直方向に立ち上げた立上部21c,21cとを備えている。
【0027】
そして、伸縮部材21の平坦部21b,21bには、一定間隔ごとにアンカーボルト23が挿通する貫通穴が形成されている。伸縮部材21は、例えば、厚みが、4mm~8mm(例えば、6mm)の範囲のものが、ここでは使用されている。また、伸縮部材21は、光硬化性シート27の両端よりも内側に配置される幅に形成されている。伸縮部材21の幅が光硬化性シート27の幅の内側に配置されることで、目地側に水の侵入を抑制することを確実に行うことができる。伸縮部材配置工程S8が終了すると、保護シート配置工程S9が行われる。
【0028】
保護シート配置工程S9は、伸縮部材21を覆うように保護シート24を配置する工程である。保護シート配置工程S9では、図12に示すように、アンカーボルト23が挿通する貫通穴が形成されている保護シート24を使用している。また、保護シート24は、例えば、エチレンプロピレンゴムなどの素材のものを使用している。保護シート24は、一例として、厚みが1.3mm~1.8mmの範囲のものが使用され、ここでは、1.5mmの厚みのものを使用している。また、保護シート24は、片面側に接着層を備えており、伸縮部材21の表面側に接着することで配置される。保護シート配置工程S9が終了すると、つぎに、ナット締付工程S10が行われる。
【0029】
ナット締付工程S10は、光硬化性充填材26の位置に打ち込まれて伸縮部材21の貫通穴及び保護シート24の貫通穴を挿通して突出しているアンカーボルト23に押え板22を介してナット29によりネジ止めする工程である。ナット締付工程S10では、図13に示すように、例えば、目地12に沿って長手方向に連続し、アンカーボルト23の位置に貫通穴を備える金属製の押え板22を配置し、押え板22を介してナット29によりアンカーボルト23に取り付けている。ナット締付工程S10で使用される押え板22は、例えば、金属製の断面が矩形の金属バーを使用している。
【0030】
押え板22は、一例として、厚みが10mm~15mmの範囲のものが使用され、ここでは、12mmで、板幅が50mmのものを用いている。なお、押え板22の長さは、特に、限定はされないが、例えば、50cm~150cmのものを連続して配置することで使用している。なお、押え板22の構成は、特に限定されるものではなく、例えば、図21に示すような押え板25Kのようにアングル形状の押え板を使用しても良い。また、押え板22は、配置される場所によっては、適宜、その場所の長さに合わせて切断して使用される。押え板22の材質は、金属製であることが好ましく、例えば、SUS304又はSUS316のようなステンレス鋼であることが好ましい。ナット締付工程S10では、電動レンチ35を使用してナット29をアンカーボルト23に締め付けて押え板22を下方に押圧するように固定している。なお、図13では、押え板22の一部を破断して直下の保護シート24が見えるようにし、保護シート24の一部を破断して、直下の伸縮部材21が見えるようにし、さらに、伸縮部材21の一部を破断して示している。
【0031】
以上、説明した各工程により、耐震用可撓継手20が目地12を覆う位置に取り付けられ、光硬化性充填材26及び光硬化性シート27を用いることで、従来のモルタルを使用する場合に比較して3~7日の養生時間も短縮して作業を行うことが可能となる。また、各工程において、アンカーボルト打込工程S7と伸縮部材配置工程S8とは、順序が逆になっても構わない。すなわち、先に伸縮部材21を光硬化性シート27上に配置して、配置した伸縮部材21の予め形成した貫通穴の位置にアンカーボルト23を打ち込むような手順であっても構わない。また、以下に示す他の施工方法における工程においても同様にアンカーボルト打込工程S7と伸縮部材配置工程S8とは、順序が逆になっても構わない。なお、耐震用可撓継手の施工方法S100では、光硬化性充填材26及び光硬化性シート27を一度の光照射工程S6で光を照射して硬化させていたが、図14で示すような手順であっても構わない。つまり、図14に示すように、耐震用可撓継手の施工方法S100Aとして、光硬化性充填材26に光照射工程(第1光照射工程)S45Aにより硬化させ、その後、光硬化性シート27を被覆する被覆工程S5を行い、再度、光照射工程(第2光照射工程)S6を行うようにしても構わない。このように、光照射工程S45A、S6を行うことで、同じ波長の光の照射でもよいが、波長の異なる光により硬化する光硬化性充填材26、光硬化性シート27を使用することができ、資材の選択の幅を広げることができる。もちろん、同じ波長の光の照射で硬化する材料でも構わない。この耐震用可撓継手の施工方法S100Aでは、その他の工程は、すでに説明した通りである。
【0032】
なお、耐震用可撓継手の施工方法S100、S100Aでは、図1の水路を構成するコンクリート構造物100において、図2で示す構成の耐震用可撓継手20を一例として説明したが、例えば、図15で示すようなコンクリート構造物100Aである貯水槽や、図示しないその他のコンクリート構造物であってもよい。また、使用する耐震用可撓継手は、図2で示す耐震用可撓継手20、あるいは、図16で示すような耐震用可撓継手20Aを使用してもよい。
【0033】
図16に示すように、耐震用可撓継手20Aは、押え金具25を介して押え板22Aを押えることで伸縮部材21を固定している。押え板22Aは、断面が矩形でC字型に形成されており、上方にC字型の開放部分が向くように配置される。そして、押え金具25は、アンカーボルト23が挿通する穴を形成した中央板25aと、中央板25aの両端を垂直方向に立ち上げた側板25b,25bと、側板25b,25bのそれぞれから水平方向に延伸させた爪部25c,25cとを備えている。そして、両方の爪部25c,25cにより押え板22Aを押えるように押え金具25で支持することで、押え板22Aが伸縮部材21を押圧した状態として固定される。
【0034】
押え金具25は、中央板25aの穴にアンカーボルト23を挿通してナット29により締め付けることで、押え板22Aを介して伸縮部材21を押えつけて固定している。なお、押え金具25は、伸縮部材21の外側で、光硬化性充填材26及び光硬化性シート27の重なる範囲にアンカーボルト23で固定されるため、伸縮部材21はアンカーボルト23を挿通する穴を備えていない。そのため、耐震用可撓継手20Aでは、伸縮部材21から水がさらに浸入し難くなっている。
【0035】
なお、伸縮部材21は、図17に示すように、交差する一方を連続させ、交差する他方を、連続する伸縮部材21の両側から当接するように配置することで、交差する目地12を覆うようにしている。また、図17では、図16の耐震用可撓継手20Aを例示しているが、図2の耐震用可撓継手20を用いることや、その他の構成の耐震用可撓継手を使用することとしてもよい。また、図18(a)から図20(c)に示すように、耐震用可撓継手の第1変形例乃至第9変形例の構成であっても構わない。
【0036】
すなわち、図18(a)から図18(c)に示すように、第1変形例乃至第3変形例の耐震用可撓継手20B、20C、20Dは、それぞれ、保護シート24を使用しない構成である。また、耐震用可撓継手20B、20C、20Dは、それぞれの伸縮部材21B、21C、21Dに折り曲げられて折畳部としての凸部が中央に1か所ある構成のものを使用している。耐震用可撓継手20B、20C、20Dは、それぞれ、地震における変動が小さいと判断された構造に対して設置するタイプのものである。
【0037】
また、図19(a)から図19(c)に示すように、第4変形例乃至第6変形例の耐震用可撓継手20E、20F、20Gは、それぞれの伸縮部材21E、21F、21Gに折り曲げられて折畳部としての凸部が中央に2か所あるいは3か所ある構成のものを使用している。耐震用可撓継手20E、20F、20Gは、それぞれ、地震における変動がある程度大きいと診断された構造に対して設置するタイプのものである。また、耐震用可撓継手20E、20F、20Gは、伸縮部材21E、21F、21Gを覆う補強布24E、24F、21Gが配置される構成である。この補強布24E、24F、21Gは、アンカーボルト23により固定されており、中央に重なり部分があり、地震などの振動により構造物に変化が生じたときに、その重なり部分が展開されて伸縮部材21E、21F、21Gのそれぞれを補強するものである。なお、補強布24E、24F、21Gの配置されるタイミングは、保護シート24を配置する工程と同じタイミングで行われることになる。また、補強布24E、24F、21Gは、例えば、布製、樹脂製、その他この種の製品で使用される素材で形成されている。補強布24E、24F、21Gは、保護シート24よりも強度が高く、変形が大きく、水圧が大きくかかる施設に使用される。
【0038】
さらに、図20(a)から図20(c)に示すように、第7変形例乃至第9変形例の耐震用可撓継手20H、20I、20Jは、すでに説明した図16に示す押え金具25を使用する構成のものである。耐震用可撓手20H、20I、20Jは、伸縮部材21H、21I、21Jが折畳部としての凸部が中央に2つ、3つ、4つの構成としている。耐震用可撓継手20H、20I、20Jは、それぞれ、地震における変動がある程度大きいと診断された構造に対して設置するタイプのものである。そして、耐震用可撓継手20Hは、一例として、補強布を用いないで使用している。また、耐震用可撓継手20I、20Jでは、補強布24I、24Jを用いる構成としている。補強布24I、21Jの配置されるタイミングは、保護シート24を配置する工程と同じタイミングで行われることになる。補強布24I、24Jは、例えば、布製、樹脂製、その他この種の製品で使用される素材で形成されている。耐震用可撓継手20Hは、補強布を用いて使用してもよく、耐震用可撓継手20I、21Jは、補強布24I、21Jを用いないで使用してもよい。
【0039】
なお、既に説明した保護シート24は、用いることなく耐震用可撓継手20、20Aを使用することとしてもよく、保護シート24の代わりに、補強布を用いることとしてもよい。また、耐震用可撓継手で使用する補強布の代わりに、保護シート24を使用する構成としても構わない。さらに、伸縮部材の折畳部は、具体的に図面で使用した以外の状態であっても構わない。また、伸縮部材21B~21Jでは、幅方向の両端に立上部が形成されていないように示しているが、立上部を備える構成であってもよい。図そして、説明した全ての耐震用可撓継手において、保護シートや補強布を用いることなく使用しても構わない。保護シート24の代わりに補強布を用いる場合には、図22に記載するような手順で耐震用可撓継手の施工方法S100aが行われる。
【0040】
図21(a)、(b)に示すように、第10変形例は、及び第11変形例の耐震用可撓継手20Kは、補強布24Kで伸縮部材21Kを覆い、伸縮部材21Kの両端側に配した押え板25Kを介して補強布24Kと共にアンカーボルト23で固定している。伸縮部材21Kは、アンカーボルト23,23の間となる中央に光硬化性シート27の上方に突出する1つの凸状部21Kaを目地12に沿って長手方向に連続して備えている。伸縮部材21Kは、既に説明した伸縮部材21Dの凸状態を大きくしたものである。伸縮部材21Kは、折畳部としての凸状部21Kaの高さが、光硬化性シート27に接触している一方の平坦部21Kbの長さとほぼ同等の寸法にしている。
【0041】
また、押え板25Kは、アンカーボルト23の貫通穴が開いている平面部25K1と、平面部25K1の目地12側となる一端に形成した板立上部25K2と、平面部25K1の他端に形成した立下部25K3とを備えている。そして、板立上部25K2は、アンカーボルト23のボルト頭部よりも高く立ち上がるように平面部25K1から直交して形成されている。また、立下部25K3は、平面部25K1から直交して下方に折り曲げて、あるいは、接合して形成され、伸縮部材21Kとほぼ同じ厚みの高さになるように形成されている。
そのため、押え板25Kをアンカーボルト23で固定したときに、立下部25K3の下端部が光硬化性シート27の上面に当接する状態となる。このような構成の押え板25Kは、沈下によるゴムの変形や水圧がかかった際に板立上部25K2に変形した部分が面であたることで伸縮部材21Kの破損し難くし、アンカーボルト23やナット29に伸縮部材21Kが点で当たり傷つかないようにすることができる。
【0042】
このような構成の伸縮部材21Kは、例えば、図21(b)で示すように、目地の両側の平面だった領域の一方が、垂直面になるような構造物に対して、そのまま、伸縮部材21Kを連続して使用することができる。すなわち、図21(a)の状態から伸縮部材21Kを90度ねじり変形させることで、図21(b)で示すように、一方が垂直面で他方が水平面となっても伸縮部材21Kを連続して配置することができる。これは、伸縮部材21Kの凸状部21Kaが所定の大きさがあるので、その大きさの範囲で設置面の角度が90以下で変わっても追随して変形することができることによる。なお、図21(b)では、一方の設置面を他方の設置面よりも90度の角度をつけた状態で示しているが、伸縮部材21Kを設置する目地12の両側の設置面が水平面から合計で90度以下の変化であれば、例えば、一方の設置面が水平から30度、他方の設置面が水平から60度、両方の設置面が水平から45度等、いずれに変化しても、合計で90度以下であれば、伸縮部材21Kを連続して使用することができる。
【0043】
また、すでに説明した耐震用可撓継手の施工方法では、切削機31で所定の範囲を切削した後に、光硬化性充填材を充填して平らにする充填工程を行っていたが、切削工程S2を行うことなく、充填工程S4を行い、被覆工程S5、光照射工程S6、アンカーボルト打込工程S7、伸縮部材配置工程S8を含むような手順で行ってもよい。つまり、作業を行うコンクリート表面が切削工程S2を行う必要がないような凸凹状態であれば、コンクリート面に直接あるいはプライマを塗布して、光硬化性充填材26を配置して平らにならすことで充填工程S4を行うこととする。なお、領域設定工程S1や、プライマ塗布工程S3を、充填工程S4の前に行っても構わない。領域設定工程S1は、切削工程S2を行うことがないので、コンクリート面に切込みをいれる代わりに、墨などで充填する領域の範囲をコンクリート面に書き込む等、領域の範囲が分かるように印をつけることで行われてもよい。
耐震用可撓継手の施工方法S100bは、以上で説明したように各工程が進められ、一例として、図23に示すように、切削工程S2を行うことなく他の工程を順に行うことで作業が行われるようにしても構わない。
【符号の説明】
【0044】
10 コンクリート部材(既存コンクリート部材)
11 接続部分
12 目地
13 切削領域(所定範囲の領域)
14 プライマ(接着材)
20 耐震用可撓継手
21,21B~21K 伸縮部材
22 押え板
23 アンカーボルト
24 保護シート
25 押え金具
26 光硬化性充填材
27 光硬化性シート
29 ナット
30 電動カッター
31 切削機
32 プライマ噴射装置
33 コテ
34 光照射装置
35 電動レンチ
100 コンクリート構造物
S1 領域設定工程
S2 切削工程
S3 プライマ塗布工程
S4 充填工程
S5 被覆工程
S6 光照射工程
S7 アンカーボルト打込工程
S8 可逆性シート配置工程
S9 保護シート配置工程
S10 ナット締付工程
【要約】
【課題】作業時間を短縮することができる耐震用可撓継手の施工方法を提案すること。
【解決手段】耐震用可撓継手の施工方法S100は、既存のコンクリート部材同士をつなぐ目地に沿って前記目地の両側における所定範囲の領域に光硬化性充填材を充填して平らにする充填工程S4と、平らにした前記光硬化性充填材の表面に光硬化性シートを覆う被覆工程S5と、前記光硬化性シート及び前記光硬化性充填材を硬化させる波長の光を照射して前記光硬化性充填材及び前記光硬化性シートを硬化させる工程S6と、アンカーボルトを介して前記光硬化性シート及び前記目地を覆う伸縮部材を固定する工程S7、S8と、を含む。
【選択図】図3
図1
図2
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図4
図5
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図7
図8
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図10
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