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特許7508160輸送温度監視装置及び輸送温度監視システム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-21
(45)【発行日】2024-07-01
(54)【発明の名称】輸送温度監視装置及び輸送温度監視システム
(51)【国際特許分類】
   G01K 7/00 20060101AFI20240624BHJP
   G01K 1/022 20210101ALI20240624BHJP
【FI】
G01K7/00 381Z
G01K1/022
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2024044482
(22)【出願日】2024-03-21
【審査請求日】2024-04-02
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 令和6年2月8日に公開のウェブサイト https://www.sgkz.or.jp/project/newtech/112/document_03.html
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】522123061
【氏名又は名称】アイオーテック合同会社
(74)【代理人】
【識別番号】100165135
【弁理士】
【氏名又は名称】百武 幸子
(72)【発明者】
【氏名】會沢幸雄
【審査官】細見 斉子
(56)【参考文献】
【文献】特許第6842487(JP,B2)
【文献】特開2023-022788(JP,A)
【文献】特開2013-020338(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2013/0289928(US,A1)
【文献】特開2003-252442(JP,A)
【文献】特開2017-040466(JP,A)
【文献】特開2020-201071(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01K 1/02-1/024
G01K 3/00-3/14
G01K 7/00
B65G 61/00
G06Q 10/00-10/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
輸送容器に取り付け又は組み込み可能な輸送温度監視装置であって、少なくとも輸送容器内部の温度を測定する1つ以上の内部温度センサと、前記内部温度センサと接続される内部温度取得部と、前記輸送容器の外部温度を測定する外部温度センサと、前記外部温度センサと接続される外部温度取得部と、制御部と、記憶部と、通信部と、表示部と、を備え、
前記通信部は、
輸送物の情報と、前記輸送温度監視装置を識別する識別情報と、を含む物品管理情報と、
前記内部温度及び前記外部温度の取得設定情報と、前記輸送容器内部の所定の温度である管理温度と、標準時刻及び、前記内部温度及び前記外部温度を通知する時間間隔と、前記内部温度が前記管理温度に到達する時刻を予測して事前に通知する時間と、を含む設定情報と、を受信し、
前記物品管理情報と前記設定情報と、前記内部温度及び前記外部温度と、前記内部温度が前記管理温度に到達する時刻と、を送信し、
前記制御部は、
前記輸送容器の寸法、形状及び断熱材の性能等に依存するニュートンの冷却法則のパラメータを、前記内部温度取得部で任意の時間間隔で取得した複数の前記内部温度のデータから温度変化が始まった時刻からの微小時間の内部温度勾配値と、前記外部温度取得部で任意の時間間隔で取得した複数の前記外部温度のデータから前記時刻での外部温度と、を用いて決定し、前記パラメータと、前記時刻での前記外部温度と、前記管理温度と、をニュートンの冷却法則に適用して前記内部温度が前記管理温度に到達する時刻を演算する演算処理部を備え、
前記記憶部は、前記物品管理情報と、前記設定情報と、前記内部温度及び前記外部温度と、前記内部温度が前記管理温度に到達する時刻と、を格納することを特徴とする輸送温度監視装置。
【請求項2】
輸送容器に取り付け又は組み込み可能な輸送温度監視装置であって、少なくとも輸送容器内部の温度を測定する1つ以上の内部温度センサと、前記内部温度センサと接続される内部温度取得部と、前記輸送容器の外部温度を測定する外部温度センサと、前記外部温度センサと接続される外部温度取得部と、制御部と、記憶部と、通信部と、表示部と、を備え、
前記通信部は、
輸送物の情報と、前記輸送温度監視装置を識別する識別情報と、を含む物品管理情報と、
前記内部温度及び前記外部温度の取得設定情報と、前記輸送容器内部の所定の温度である管理温度と、標準時刻及び、前記内部温度及び前記外部温度を通知する時間間隔と、前記内部温度が前記管理温度に到達する時刻を予測して事前に通知する時間と、を含む設定情報と、を受信し、
前記制御部は、
前記内部温度取得部で任意の時間間隔で取得した複数の前記内部温度と、前記外部温度取得部で任意の時間間隔で取得した複数の前記外部温度と、前記管理温度と、前記輸送容器の寸法及び断熱材の性能に依存したパラメータと、を用いて、所定のアルゴリズムで前記内部温度が前記管理温度に到達する時刻を演算する演算処理部と、
前記物品管理情報と、前記設定情報と、前記内部温度及び前記外部温度と、前記内部温度が前記管理温度に到達する時刻と、を合わせてコード画像を生成し表示させる表示制御部と、を備え、
前記表示部は、前記コード画像を表示し、
前記記憶部は、前記物品管理情報と、前記設定情報と、前記内部温度及び前記外部温度と、前記内部温度が前記管理温度に到達する時刻と、を格納することを特徴とする輸送温度監視装置。
【請求項3】
請求項2に記載の輸送温度監視装置において、前記演算処理部は前記内部温度が前記管理温度に到達する時刻をニュートンの冷却法則を適用して演算し、該ニュートンの冷却法則における輸送容器の寸法及び断熱材の性能に依存したパラメータを、前記内部温度のデータから温度変化が始まった時刻からの微小時間の温度勾配値と、前記時刻での前記外部温度から決定することを特徴とする輸送温度監視装置。
【請求項4】
請求項1に記載の輸送温度監視装置と、設定端末装置と、読取端末装置と、クラウドサーバと、ユーザ端末装置と、を備えた輸送温度監視システムであって、
前記設定端末装置は、
前記物品管理情報と、前記設定情報と、を格納する記憶部と、
前記物品管理情報と、前記設定情報を前記輸送温度監視装置に送信する通信部と、
を備え、
前記読取端末装置は、
前記輸送温度監視装置から前記物品管理情報と、前記設定情報と、前記内部温度及び前記外部温度と、前記内部温度が前記管理温度に到達する時刻と、を受信して、位置情報と統合した統合情報を前記クラウドサーバに送信する通信部と、
前記物品管理情報と、前記設定情報と、前記内部温度及び前記外部温度と、前記内部温度が前記管理温度に到達する時刻を表示する表示部と、
を備え、
前記クラウドサーバは、
前記読取端末装置から前記統合情報を受信し、ユーザ端末装置に送信する通信部と、
前記統合情報を格納する記憶部と、
を備え、
前記ユーザ端末装置は、
前記クラウドサーバから前記統合情報を受信する通信部と、
前記統合情報を格納する記憶部と、
前記統合情報を表示する表示部と、
を備えることを特徴とする輸送温度監視システム。
【請求項5】
請求項2に記載の輸送温度監視装置と、設定端末装置と、読取端末装置と、クラウドサーバと、ユーザ端末装置と、を備えた輸送温度監視システムであって、
前記設定端末装置は、
前記物品管理情報と、前記設定情報と、を格納する記憶部と、
前記物品管理情報と、前記設定情報を前記輸送温度監視装置に送信する通信部と、
を備え、
前記読取端末装置は、
前記輸送温度監視装置の前記表示部に表示される前記コード画像を読み取る撮像部と、
前記コード画像を読み取って得られた情報を表示する表示部と、
前記コード画像を読み取って得られた情報と、位置情報と、を統合した統合情報を前記クラウドサーバに送信する通信部と、
を備え、
前記クラウドサーバは、
前記読取端末装置から前記統合情報を受信し、ユーザ端末装置に送信する通信部と、
前記統合情報を格納する記憶部と、
を備え、
前記ユーザ端末装置は、
前記クラウドサーバから前記統合情報を受信する通信部と、
前記統合情報を格納する記憶部と、
前記統合情報を表示する表示部と、
を備えることを特徴とする輸送温度監視システム。
【請求項6】
請求項2に記載の輸送温度監視装置と、設定端末装置と、読取端末装置と、を備えた輸送温度監視システムであって、
前記設定端末装置は、
前記物品管理情報と、前記設定情報と、を格納する記憶部と、
前記物品管理情報と、前記設定情報を前記輸送温度監視装置に送信する通信部と、
を備え、
前記読取端末装置は、
前記輸送温度監視装置の前記表示部に表示される前記コード画像を読み取る撮像部と、
前記コード画像を読み取って得られた情報を表示する表示部と、
を備えることを特徴とする輸送温度監視システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、輸送容器、例えば保冷ボックスを用いた物品の輸送で、輸送過程での温度管理に関するものであり、特に管理温度の逸脱を予測し、監視するための輸送温度監視装置及び輸送温度監視システムに関する。
【背景技術】
【0002】
厚生労働省は、医薬品の流通過程における品質と完全性を確保するために、GDP(Good Distribution Practice:医薬品の適正流通)ガイドラインを策定している。このガイドラインには、医薬品の保管と輸送時における温度管理が重要視されており、温度測定装置の使用が推奨され、温度の記録と監視が求められている(非特許文献1)。
【0003】
温度逸脱が発生した場合は、適切な対応が求められ、医薬品の温度逸脱の状況を確認し、逸脱した医薬品に対する適切な取り扱いを検討する必要がある。場合によっては、逸脱した医薬品の廃棄、再調達、再配達が必要になることもある。そのため、医薬品の温度管理においては、配送開始から医療施設へ到着するまでの配送期間だけでなく、医療施設内で薬剤が投与される直前までの期間も含めて、温度変化等の輸送品質情報を確認できる温度管理システムも求められている(特許文献1)。
【0004】
医薬品の輸送において、温度管理は極めて重要な課題である。恒温器(インキュベーター)を使用した輸送は、温度を一定に保つための効果的な手段であるが、長時間の輸送中において常に電源を確保することが難しく、またその装置は重くかさばるため、スペースとコストの制約が発生する。そのため、一般的には保冷ボックスが使用される。保冷ボックスでは、保冷剤などの蓄熱材や、断熱材を用いて保冷効果を得るが、この際に事前にシミュレーションを行い、保冷ボックス内の温度が所望の範囲内に保持される時間を評価することで、使用する保冷ボックスの妥当性を担保している(特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特許第6842487号公報
【文献】特許第6465582号公報
【非特許文献】
【0006】
【文献】“医薬品の適正流通(GDP)ガイドライン”[online]株式会社チノー[令和6年2月16日検索]、インターネット[URL: https://www.chino.co.jp/support/technique/lifescience/gdpguidelines/]
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1の温度管理システムでは、薬剤が利用される直前までの品質を確認することができるシステムであるが、管理温度の逸脱を予測し、監視するためのシステムではない。そのため、温度逸脱を予防できるような温度管理システムが求められる。また、特許文献2では、事前にシミュレーションを行い、保冷ボックス内の温度が所望の範囲内に保持される時間を評価することができるが、想定外の外部の気象条件の大きな変動や、保冷ボックスの蓋の開閉など、さまざまな要因により、シミュレーションからの予測は信頼性に欠けることがある。このような状況下での保冷ボックス内部の温度管理は困難を伴うため、より確実な温度監視と管理のために新たな技術やシステムの開発が求められている。
【0008】
これらの課題を克服するためには、温度逸脱の危険が迫った場合にそれを対応可能な時間に把握し、温度逸脱を予防できるような輸送温度管理装置の開発が求められる。このような装置は、保冷ボックス内に複数の温度センサを配置し、リアルタイムで保冷ボックス内部の温度変化を監視することで、温度逸脱が発生する前にそれを検知し、適切な対策を講じることが可能となる。また、予測モデルを活用して、外部の気象条件や保冷ボックスの使用状況などの要因を考慮して、温度の変動を事前に予測し、適切な対策を打つことができるようになる。このような輸送温度管理装置の開発により、医薬品や他の温度に敏感な物品の輸送中における温度管理がより確実に行えるようになり、品質の保持と安全性の確保が強化される。
【0009】
本発明は、上記の課題に対処するために、輸送容器内部の温度が、設定した管理温度を逸脱する時刻を予測して、輸送中又は保管中に管理温度を逸脱する可能性がある時刻を事前に知らせることができる輸送温度監視装置及び輸送温度監視システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために、請求項1に記載の発明は、輸送容器に取り付け又は組み込み可能な輸送温度監視装置であって、少なくとも輸送容器内部の温度を測定する1つ以上の内部温度センサと、前記内部温度センサと接続される内部温度取得部と、前記輸送容器の外部温度を測定する外部温度センサと、前記外部温度センサと接続される外部温度取得部と、制御部と、記憶部と、通信部と、表示部と、を備え、前記通信部は、輸送物の情報と、前記輸送温度監視装置を識別する識別情報と、を含む物品管理情報と、前記内部温度及び前記外部温度の取得設定情報と、前記輸送容器内部の所定の温度である管理温度と、標準時刻及び、前記内部温度及び前記外部温度を通知する時間間隔と、前記内部温度が前記管理温度に到達する時刻を予測して事前に通知する時間と、を含む設定情報と、を受信し、前記物品管理情報と前記設定情報と、前記内部温度及び前記外部温度と、前記内部温度が前記管理温度に到達する時刻と、を送信し、前記制御部は、前記輸送容器の寸法、形状及び断熱材の性能等に依存するニュートンの冷却法則のパラメータを、前記内部温度取得部で任意の時間間隔で取得した複数の前記内部温度のデータから温度変化が始まった時刻からの微小時間の内部温度勾配値と、前記外部温度取得部で任意の時間間隔で取得した複数の前記外部温度のデータから前記時刻での外部温度と、を用いて決定し、前記パラメータと、前記時刻での前記外部温度と、前記管理温度と、をニュートンの冷却法則に適用して前記内部温度が前記管理温度に到達する時刻を演算する演算処理部を備え、前記記憶部は、前記物品管理情報と、前記設定情報と、前記内部温度及び前記外部温度と、前記内部温度が前記管理温度に到達する時刻と、を格納することを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明の輸送温度監視装置及び輸送温度監視システムにより、輸送容器内部の温度が、設定した管理温度を逸脱する時刻を予測して事前に通知することが可能である。これにより、輸送中の輸送容器の開閉や想定外の外気温度、保冷剤性能の劣化などの状況が発生しても、管理温度逸脱が発生する前に十分な時間的余裕を持って予防対策を講じることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の一実施形態である輸送温度監視装置の使用態様を示す説明図である。
図2】本発明の一実施形態である輸送温度監視装置の構成を示すブロック図である。
図3】本発明の一実施形態である輸送温度監視装置の構成を説明する説明図である。
図4】本発明の一実施形態である輸送温度監視装置への物品管理情報と設定情報の書き込み方法を示す説明図である。
図5】内部温度が上昇する際の外部温度の変化、管理温度、内部温度の変化の関連性についての一例を説明する図である。
図6】内部温度が下降する際の外部温度の変化、管理温度、内部温度の変化の関連性についての一例を説明する図である。
図7】保冷ボックスの蓋が開閉された際の外部温度、管理温度、内部温度の変化の関連性についての一例を説明する図である。
図8】本発明の一実施形態である輸送温度監視システムを示す概略図である。
図9】本発明の他の形態である輸送温度監視システムを示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態(以下実施例と記す)を、図面に基づいて説明する。なお、以下の図において、共通する部分には同一の符号を付しており、同一符号の部分に対して重複した説明を省略する。
【0014】
〔輸送温度監視装置〕
本実施例の輸送温度監視装置の構成について、図1~4を参照して説明する。図1は、輸送温度監視装置10の使用態様を示す説明図である。図2は、輸送温度監視装置10の構成を示すブロック図である。図3は、本発明の輸送温度監視装置10の構成を説明する説明図である。図4は、輸送温度監視装置10への物品管理情報と設定情報の書き込み方法を示す説明図である。以下の実施例では、輸送容器として保冷ボックスを例に挙げて説明する。
【0015】
図1に示すように、輸送温度監視装置10は保冷ボックス1の外部に取り付けられて使用される装置である。図1において輸送温度監視装置10の主な機能ブロックも示している。詳細な機能ブロック図は図2に示す。輸送温度監視装置10は保冷ボックス1の外部に取り付けられ、外部の温度と、センサプローブ22を介して保冷ボックス内部の温度を監視する機能を有する。
【0016】
輸送温度監視装置10は、保冷ボックス1に取り付け又は組み込み可能であって、少なくとも保冷ボックス内部の温度を測定する1つ以上の内部温度センサ21と、内部温度センサ21と接続される内部温度取得部11と、保冷ボックス1の外部温度を測定する外部温度センサ20と、外部温度センサ20と接続される外部温度取得部12と、制御部13と、記憶部14と、通信部15と、表示部16と、を備える。さらに図2に示すように、スイッチ部(入力部)18と、電源部、出力部を回路基板130に備える。
【0017】
表示部16は制御部13と接続され、表示制御部より制御される。電源17は電源部及び出力部と接続され、出力部に接続された外部電源から電源部の制御で充電される。本実施例では電源17を充電可能な二次電池としているが、充電を行わない一次電池としてもよい。
【0018】
輸送温度監視装置10は、図2の機能ブロックで構成される回路基板130、表示部(電子ペーパー)16及び電源17が外箱19(筐体)に収納される(図3(C)参照)。外箱19(筐体)は小型薄型な形状かつ剛性の高い素材で形成される。図3(A)に示すように、輸送温度監視装置10の正面には、表示部16にコード画像が表示され、例えば電源ON/OFFボタン180と無線機能ON/OFFボタン181が備えられている。図3(B)の輸送温度監視装置10の平面(上面)はできるだけ薄い方が好ましい。図3(C)は、輸送温度監視装置10を構成する内部部品の配置を示しており、本実施例では、回路基板130の上部に表示部16を配置し、下部に電源17を配置している。それらの配置は、図3(C)の配置に限定されず、例えば回路基板130と平行に表示部16と電源17を備えるより薄型の構成とすることもできる。図3(C)に示すように、表示部16と電源17をそれぞれ別の面に配置すると、正面部の面積を小さくできる。以下、回路基板130の各機能ブロックについて詳細に説明する。
【0019】
検知部は、内部温度取得部11と外部温度取得部12を備える。図1に示すように、保冷ボックス1の内部にセンサプローブ22が設置され、センサプローブ22を介して内部温度センサ21(1)と内部温度センサ21(2)が輸送温度監視装置10に接続されている。図1に示す例では、2つの内部温度センサ21を使用しているが、保冷のボックスの寸法、外部の温度等により、1つ又は3つ以上の温度センサ21を使用してもよい。特に保冷のボックスの寸法が大きい場合には、複数の内部温度センサ21を使用することが好ましい。内部温度取得部11は、保冷ボックス1内の内部温度センサ21からの各々の温度情報を設定した任意の時間間隔で取得して、輸送温度監視装置10に内蔵されるタイマーの時刻と紐づけて、制御部13に送り、記憶部14に記憶する。尚、タイマーの時刻は、適時通信手段15を介して標準時刻と同期される。
【0020】
通信部15は、外部の端末装置等と無線又は有線通信を行う。通信部15は、輸送物の情報と、輸送温度監視装置10を識別する識別情報と、を含む物品管理情報と、内部温度及び外部温度の取得設定情報と、保冷ボックス内部の管理温度と、標準時刻及び通知時刻と、を含む設定情報を受信する。輸送物の情報は、例えば医薬品の名称や型番、シリアル番号の情報である。輸送温度監視装置10を識別する識別情報は、記号や数字等で装置を識別する情報である。保冷ボックス内部の管理温度は、商品が管理されるのに適した温度である。内部温度及び外部温度の取得設定情報は、取得時間間隔、取得開始時刻、取得終了時刻等の情報である。通知時刻の設定は、内部温度及び外部温度を通知する時間(時間間隔)と、保冷ボックス内部の温度が管理温度を逸脱する時刻の前に通知する時間(例えば30分前)の設定である。
【0021】
図4(A)に示すように、物品管理情報と設定情報の書き込みは、携帯端末30(スマートフォン)と通信部15がブルートゥース(Bluetooth:登録商標)等による無線通信によって接続され、実行される構成とすることができる。また、上記の物品管理情報と設定情報は、出力部(端子部)から得ることも可能である。例えば、図4(B)に示すように、端末装置(パソコン)40のUSB端子と輸送温度監視装置10の出力部(端子部)間にUSBケーブル41を接続して上記の情報を得ることができる。
【0022】
また、通信部15が設定した時間(時間間隔)で、物品管理情報と設定情報、内部温度及び外部温度と、内部温度が管理温度を逸脱する時刻を外部の端末装置等に送信することもできる。この送信は必須ではなく、送信する代わりに内部温度及び外部温度と、内部温度が管理温度を逸脱する時刻を示すコード画像を後述する表示部16に表示させる構成とすることもできる。
【0023】
記憶部14は、フラッシュメモリ、EEPROM(Electrically Erasable Programmable Read Only Memory)(登録商標)等が用いられる。記憶部14は、上記の物品管理情報と設定情報と、内部温度及び外部温度と、制御部13によって演算される保冷ボックス内部の管理温度を逸脱する時刻等を格納する。内部温度及び外部温度、管理温度を逸脱する時刻は、設定した時間間隔でその値を更新して格納する。
【0024】
制御部13は、CPU、プログラムメモリ、入出力バス等から構成される。制御部13は制御、演算手段として機能し、輸送温度監視装置10の各機能ブロック及び装置全体に対する制御、検知データに対する演算処理等を行う。本実施例では、記憶部14を参照し、演算処理部と表示制御部を制御する。また、制御部13はシステム時刻を有しているが、端末装置や携帯端末との通信時に標準時刻へと補正される。
【0025】
演算処理部は、取得した内部温度及び外部温度と設定した管理温度から所定のアルゴリズムを用いて保冷ボックス内部の温度が管理温度を逸脱する時刻を演算する。アルゴリズムの詳細は後述する。
【0026】
表示制御部は、上記の物品管理情報と、設定情報と、内部温度及び外部温度と、制御部13によって演算される保冷ボックス内部の管理温度を逸脱する時刻を合わせてコード画像を生成して表示部16に表示する。具体的には、バーコードなどの一次元コード、CPコード、QRコード(登録商標)などの二次元コードを生成し、生成したコード画像を表示部(電子ペーパー)16へ表示するための制御を実施する。本実施例では、図3(A)に示すように、QRコードを表示する(以下、コード画像をQRコードと略称する)。QRコードを生成して表示できることで、電波利用に規制がある医療機関でも簡単に輸送品質を確認することができる。
【0027】
QRコードは、小さなスペースに大容量のデータを収納でき、誤り訂正機能により汚れや破損にも強いため、輸送温度監視装置10に使用するコード画像として好ましい。従来の多くの物品管理システムでは、保冷ボックスの情報、保冷ボックスに設置される温度計測装置の情報、そして保冷ボックスで輸送される医薬品の情報などを合わせたバーコードを生成して、保冷ボックスに貼り付けることで、保冷ボックス内の管理が行われている。そのためバーコードジェネレータが必要になり、貼り付け作業も発生する。本発明の輸送温度監視装置10ではQRコードを生成して表示できるため、バーコードジェネレータが不要になり、作業工数も減らして物品管理が行える。なお、QRコードの表示は必須ではない。
【0028】
さらに、表示制御部は、物品管理情報と設定情報を合わせて、測定した内部温度、外部温度、及び管理温度を逸脱する時刻等の輸送品質情報を随時最新の情報に書き換え、QRコードを生成して表示する。つまり、物流品質可視化情報が表示されたQRコードは、スマートフォンやタブレット、ハンディターミナル、QRコードリーダー等の携帯端末のカメラ機能で適時読み取られる。表示制御部のコード生成表示機能により、電波利用に規制がある医療機関でも簡単に輸送品質を確認することができる。
【0029】
表示部16は、表示制御部から送られるQRコードを表示する。表示部16は液晶ディスプレイ(LCD)、有機ELディスプレイ(OELD)及び電子ペーパーディスプレイ(EPD)といった薄型の表示機器を適用することができる。本実施例では、バッテリーが空になっても一度表示した絵がそのまま残る特長(画像保持性)がある電子ペーパーディスプレイを使用する。本実施例では、前述のように、表示部16は回路基板130の上面に取り付けられる(図3(C))。電子ペーパーディスプレイで表示されたQRコードは次に更新されるまで保持され、その間はほとんど電力を消費せず、電源が切れても表示が維持されるため、物流過程で輸送温度監視装置10の電源が空になっても表示部16から情報の読み取りは可能である。
【0030】
表示部16は、このように、視覚情報を出力するが、同時に音か光を出力する構成としてもよい。例えば、内部温度が管理温度を逸脱する時刻になった場合(又は時刻の5分前等)に、警告音や光を出力する機能を備えてもよい。
【0031】
スイッチ部18(入力部)は、電源と無線機能のオンとオフの切り替えができ、電源がオンのときに電源部から回路基板130の各機能ブロックに電力が供給される。また、無線機能がオンのときに通信部15からの無線通信が可能になる。ユーザは、使用する際に、スイッチ部18をオンにして輸送温度監視装置10を作動させる。スイッチ部18は、オンとオフの切り替えができれば、押ボタン式、スライド式などいかなる方法を用いてもよい。
【0032】
電源17は、輸送温度監視装置10の各機能ブロックに電力を供給する。電源17は、いわゆる一次電池である乾電地を使用してもよいし、二次電池である充電式電池を使用してもよい。本実施例では、携帯電話やノートパソコン、モバイル機器などのバッテリーに用いられている薄型の充電式のリチウムポリマー電池を使用する。本実施例では、前述のように、電源17は回路基板130の下面に取り付けられる(図3(C))。
【0033】
出力部(端子部)は、端末装置40等とUSBケーブルを接続して電源部の充電や輸送温度監視装置10への物品管理情報と設定情報の書き込みや輸送温度監視装置10の記憶部14に記憶された測定データを取得するための端子(USB端子)を備える。
【0034】
以上、説明したように輸送温度監視装置が構成される。輸送温度監視装置10が上記のように構成されていることで、保冷ボックス内部の任意の場所の温度が、設定した管理温度を逸脱する時刻を予測して事前に通知することが可能である。これにより、輸送中の保冷ボックスの開閉や想定外の外気温度、保冷剤性能の劣化などの状況が発生しても、管理温度逸脱が発生する前に十分な時間的余裕を持って予防対策を講じることができる。その結果、医薬品等の廃棄や再調達、再配達などの作業を削減することができる。
【0035】
〔演算処理部のアルゴリズム〕
輸送温度監視装置10の演算処理部による温度逸脱予測のアルゴリズムを図5図7を用いて説明する。図5は、保冷ボックス外部温度の影響で保冷ボックス内部の任意の場所の温度(Ti)が上昇する場合の、保冷ボックス外部温度(To)と、保冷ボックス内部の管理温度(Tm)との関連性についての一例を説明する説明図である。
【0036】
内部温度取得部11で取得した温度データの中から、温度変化の最も大きな温度データを出力している温度センサを選択し、選択した温度センサからの温度データを図5に示す内部温度Tiとする。尚、内部温度Tiは、選択した温度センサからの温度データ以上の温度を出力する別の温度センサが現れた場合は、別の温度センサからの温度データが、選択した温度センサからの温度データを超えたことを検出した時刻から、別の温度センサの温度データを内部温度Tiとして、改めて温度逸脱時刻の計算を始める。
【0037】
Toは、保冷ボックス外部の温度、To(1)は保冷ボックス外部温度の初期値、To(2)は保冷ボックス外部温度の変化値、tは時間、t0はTo(1)で温度上昇時は保冷剤の液体化が始まった時刻、温度下降時は保冷剤の個体化が始まった時刻、もしくは保冷剤が無い状態で温度監視が始まった時刻である。t1はTo(1)が維持されると仮定した場合の保冷ボックス内部温度が管理温度を逸脱する予測時刻、t2はTo(2)に変わった場合の保冷ボックス内部温度が管理温度を逸脱する予測時刻である。Tmは保冷ボックス内部の管理温度、Tは保冷ボックス内部の選択された温度センサから任意の時間間隔で取得している温度、Tiは保冷ボックス内部の選択された温度センサからの温度の初期値、kは保冷ボックス1のサイズ、断熱材の性能に依存するパラメータである。
【0038】
これらの温度、時間、パラメータを使用して、一般に保冷ボックス内部の温度変化はニュートンの冷却法則である以下の式で表される。
【数1】
【0039】
ここで、式(1)中の温度関数及び温度定数を保冷ボックス内部温度の初期値であるTi分シフトさせると下記の式になる。
【数2】
【0040】
さらに、動作記述の正確を期すために、時間t を保冷ボックス内部温度が変化し始める時刻t0を起点とする時間t’と書き直すと、式(1)は以下の式(2)になる。
【数3】
【0041】
次に、保冷ボックス内部の選択された温度センサからの温度データの解析から温度変化を検出する。ここで、温度変化が始まる時刻t0からの微小時間をΔt、微小時間での微小温度変化をΔTとする。微小時間Δtは、温度センサから温度データを取得する時間間隔を十分に短い時間間隔とし、時間間隔をtwとすると、Δt=twと見なせる。また、ΔTは時刻t0からの微小温度変化値であり、下記の式で表すことができる。
【数4】
【0042】
ここで、指数関数での微小変化は、指数関数に対するテーラ展開の一次式で求めることができる。
【数5】
【0043】
式(2)をテーラ展開した一次式は、下記の式になる。
【数6】
【0044】
さらに、式(3)より温度勾配ΔT/Δtを求めると、下記の式になる。
【数7】
【0045】
これから、保冷ボックス1のサイズ、断熱材の性能に依存するパラメータkは、以下の式から演算処理部で算出して、記録部14に記録される。
【数8】
【0046】
To’、ΔT、Δtはそれぞれ外部及び内部温度センサから取得したデータであり数値化できている。よって、式(5)から保冷ボックス1のサイズ、場所、断熱材の性能に依存するパラメータkは事前に評価して把握しておく必要はない。
【0047】
次に、管理温度Tm’が、外部温度To’に対してx%の割合になっているとすると、下記の式になる。
【数9】
【0048】
ここで、式(2)から内部温度T’が管理温度Tm’になる時間をtm’とすると、下記の式になる。
【数10】
【0049】
両辺の対数を取ると以下の式になる。更にこれから時間tm’を求めることができる。
【数11】
【0050】
kの値は式(5)より、xの値は、時刻t0でのTm’、To’の値が各々温度センサから取得した値であるため式(6)より算出できる。よって、保冷ボックス内部の温度が、管理温度に到達する時間、つまり温度が逸脱する予測時間tm’は式(8)から算出することができる。よって、温度が逸脱する予測時刻tmはt0+tm’となる。
【0051】
したがって、仮に温度逸脱予測時刻tmの30分前に注意を促すためには、時刻(t0+tm’)-30分に通信部15と無線接続する端末にアラートを無線送信、もしくは表示部16にアラート表示する手段を取ることができる。図5のグラフでは、保冷ボックス1が外部温度To(1)の環境に置かれたままの状態では、tmはt1となることを示している。
【0052】
次に、時刻t1に保冷ボックス内部の温度が管理温度を逸脱する可能性があることを知ったことで、外部温度To(1)の環境から外部温度To(2)の環境へ保冷ボックス1を移動したとすると、図5の時刻td(o)に、外部温度センサ20はTo(2)を取得し、保冷ボックス内部の温度センサは温度Td(i)を取得する。時刻t0に外部温度To(1)の状態で、式(2)の関数を導き出し、この関数から時刻td(o)に予測される温度と、内部の温度センサが取得した温度Td(i)とに一定以上の差が発生したことを演算処理部13が検知したら、時刻td(o)での実際の内部温度Td(i)を内部温度の初期値として、記録部14に記録し、改めて外部温度の変化後の温度逸脱時刻を予測する。計算の便宜上、保冷ボックス内部温度の初期値であるTd(i)分のシフトを行う。
【数12】
【0053】
外部温度To(1)の際に温度センサが任意の時間間隔で取得した外部温度及び内部温度を用いて式(5)より計算されるパラメータkの値と、外部温度To(2)の際に温度センサが任意の時間間隔で取得した外部温度及び内部温度を用いて式(5)より計算されるパラメータkの値とがほぼ同じになる時刻を起点として、再度、式(6)から式(8)までの演算処理を行い新たな温度逸脱時刻を予測する。この予測から外部温度To(1)の環境から外部温度To(2)の環境へ保冷ボックス1を移動すると、保冷ボックス内部の温度逸脱予測時刻は図5のグラフよりt1からt2へと遷移する。
【0054】
次に図6を用いて輸送温度監視装置10の温度逸脱予測動作について説明する。図6は保冷ボックス外部温度の影響で、保冷ボックス内部の任意の場所の温度Tiが下降する場合の、保冷ボックス外部温度Toと、保冷ボックス内部の管理温度Tmとの関連性についての一例を説明する説明図である。
【0055】
図6の内部温度が下降する関数グラフは、式(2)より、図5の内部温度が上昇する関数グラフで内部温度T’=0を中心に時間軸(t’)に対して対称のグラフになる。したがって、図5の動作において、温度が正から負に変化しただけであり、その動作の説明を省略する。
【0056】
次に図7を用いて輸送温度監視装置10の温度逸脱予測動作について説明する。図7は保冷ボックス1の蓋2が開閉された際の外部温度、管理温度、内部温度の変化の関連性についての一例を説明する説明図である。図7では、保冷ボックス1の蓋2が開閉された際の外部温度、管理温度、内部温度の変化の関連性が示されている。
【0057】
図7の関数グラフでは、時刻td(s)に保冷ボックス1の蓋2が開閉されると、保冷ボックス1の内部温度はTd(i)まで上昇する。時刻td(s)に、保冷ボックス内部の温度センサで取得された温度はTd(i)であり、式(2)で外部温度To(1)とした場合に予測される内部温度とに差が発生したこと演算処理部が検知したら、実際の内部温度Td(i)を内部温度の初期値として、記録部14に記録し、改めて保冷ボックス内部温度の逸脱時刻を予測するために、温度関数及び温度定数を保冷ボックス内部温度の初期値であるTd(i)分のシフトを行う。さらに、外部温度To(1)の際に温度センサが任意の時間間隔で取得した外部温度及び内部温度を用いて式(5)より計算されるパラメータkの値と、保冷ボックス1の蓋2が開閉された後の温度センサが任意の時間間隔で取得した外部温度及び内部温度を用いて式(5)より計算されるパラメータkの値とがほぼ同じになった時刻を起点として、再度、式(6)から(8)までの演算処理を行い、外部温度To(1)の環境で保冷ボックス1の蓋2が開閉された場合の保冷ボックス内部の温度逸脱予測時刻が、図7のグラフよりt1からt2へと早まったことが導き出せる。
【0058】
〔輸送温度監視装置システム〕
次に、本発明の一実施例である輸送温度監視装置システムの構成、使用態様について、図8図9を参照して説明する。図8は、本実施例の輸送温度監視装置システムの構成を示す概略図である。図9は、他の形態の輸送温度監視装置システムの構成を示す概略図である。本実施例の輸送温度監視装置システムは、本発明者の特許第7134528号に記載の物流管理システムと同様のシステムを構成することができる。
【0059】
まず、図8に示す輸送温度監視装置システムについて説明する。輸送温度監視システムは、輸送温度監視装置10と、設定端末装置と、読取端末装置と、クラウドサーバ60と、ユーザ端末装置と、を備える。設定端末装置は輸送温度監視装置10に物品管理情報と設定情報の書き込みを行う。設定端末装置は、物品管理情報と設定情報を格納する記憶部と、物品管理情報と設定情報を輸送温度監視装置10に送信する通信部(無線又は有線)を備える。
【0060】
設定端末装置は、図4(A)に示すように、携帯端末(スマートフォン)30でもよいし、図4(B)に示すように、端末装置(パソコン)40でもよいし、いかなる装置でもよい。本実施例では、スマートフォン30を使用する。輸送前(管理設定時)に、スマートフォン30と輸送温度監視装置10がブルートゥース等による無線通信によって接続され、物品管理情報と設定情報が書き込まれる。
【0061】
読取端末装置は、輸送温度監視装置10からの情報(内部温度及び外部温度と、内部温度が管理温度を逸脱する時刻,物品管理情報と設定情報等)を通信部で受け取り、又は撮像部でコード画像を読み取り、記憶部に格納する。通信部で受け取った情報又は撮像部で読み取って得られた情報は表示部に表示される。
【0062】
読取端末装置は、輸送温度監視装置10と通信する通信部又はQRコードを読み取る撮像部があり、何らかの通信手段でクラウドサーバ60と通信できれば、GPS機能を有したスマートフォンやタブレット、ハンディターミナル、QRコードリーダー等いかなる端末装置でもよい。本実施例では、図8に示すように、設定端末装置と同じスマートフォン30を使用するが、設定端末装置と異なる装置を使用してもよい。
【0063】
スマートフォン(読取端末装置)30の記憶部には、内部温度及び外部温度と、内部温度が管理温度を逸脱する時刻,物品管理情報と設定情報の他、GPS情報、クラウドサーバ60のIPアドレス情報等も格納されている。
【0064】
スマートフォン(読取端末装置)30は、専用アプリがインストールされて、輸送中に輸送温度監視装置10から随時情報を受信、又は読み取る。そして、それらの情報とGPS機能による位置情報を統合した統合情報をクラウドサーバ60に送信する。図8に示すように、電波規制のあるエリア(例えば病院等)では輸送温度監視装置10やスマートフォン30の無線機能をオフにして電波を出さないようにして、QRコードから情報を読み込む。この場合、電波規制のあるエリアから出た後に、統合情報をクラウドサーバ60に送信する。スマートフォン(読取端末装置)30の上記の動作は、輸送が開始してから終了するまで続けられる。
【0065】
クラウドサーバ60は、スマートフォン(読取端末装置)から統合情報を受信し、ユーザ端末装置に送信する通信部と、受け取った統合情報を格納する記憶部を備える。クラウドサーバ60は、ユーザ端末装置に統合情報をメールで送信してもよいし、ユーザ端末装置に専用アプリがインストールされて、専用アプリ上で統合情報を表示させることもできる。クラウドサーバ60の上記の動作は、輸送が開始してから終了するまで続けられ、終了後ユーザは記録部から統合情報をいつでも取り出せる。
【0066】
ユーザ端末装置は、クラウドサーバ60から統合情報を受信する通信部と、統合情報を格納する記憶部と、統合情報を表示する表示部を備える。ユーザ端末装置は、クラウドサーバ60と通信できれば、スマートフォンやタブレット、ノートパソコン等、いかなる端末装置でもよい。専用アプリをインストールして、専用アプリ上で統合情報を表示してもよいし、メールで統合情報を受け取って表示してもよい。本実施例では、図8に示すように、ユーザ端末装置にスマートフォン30を使用する。ユーザはスマートフォン30を介して輸送が開始してから終了するまでクラウドサーバ60から統合情報を受信することができる。
【0067】
次に、図9に示す輸送温度監視装置システムについて説明する。このシステムは、電波規制のあるエリア(例えば病院等)で、無線通信ができない場合に有用である。輸送中の常時通信が必要になるIoT(Internet of Things)を用いたクラウド型温度管理システムでは、電波規制のあるエリアや通信環境が悪化した場合には必要なデータが取得できない可能性がある。その結果、輸送中のリアルタイムな温度管理が妨げられる場合があるが、この輸送温度監視装置システムはそのような場合でも使用することができる。輸送温度監視システムは、輸送温度監視装置10と、設定端末装置と、読取端末装置を備える。上記同様に設定端末装置は輸送温度監視装置10に物品管理情報と設定情報の書き込みを行う。設定端末装置は、物品管理情報と設定情報を格納する記憶部と、物品管理情報と設定情報を輸送温度監視装置10に送信する通信部(有線)を備える。
【0068】
設定端末装置は、図4(B)、図9に示すように、端末装置(パソコン)40等が使用される。輸送温度監視装置10とUSBケーブル41等で接続できれば、いかなる装置でもよい。本実施例では、パソコン40を使用する。輸送前(管理設定時)に、パソコン40と輸送温度監視装置10をUSBケーブル41で接続し、輸送温度監視装置10に物品管理情報と設定情報を書き込む。
【0069】
読取端末装置は、輸送温度監視装置10からの情報(内部温度及び外部温度と、内部温度が管理温度を逸脱する時刻,物品管理情報と設定情報等)をコード画像から読み取り、記憶部に格納する。撮像部で読み取って得られた情報は表示部に表示される。
【0070】
読取端末装置は、輸送温度監視装置10のQRコードを読み取る撮像部と、読み取ったQRコード情報を確認できる何らかの手段を有した装置であれば、スマートフォンやタブレット、ハンディターミナル、QRコードリーダー等いかなる端末装置でもよい。本実施例では、図9に示すように、設定端末装置にハンディターミナル50を使用する。ハンディターミナル(読取端末装置)50の上記の動作は、輸送が開始してから終了するまで続けられる。
【0071】
輸送が終了した後、再度、パソコン40と輸送温度監視装置10をUSBケーブルで接続し、輸送温度監視装置10の情報(内部温度及び外部温度と、内部温度が管理温度を逸脱する時刻,物品管理情報、設定情報等)をパソコン40で取得、保存することができる。パソコン40は設定の際に使用したパソコンでもよいし、異なるパソコンでもよい。
【0072】
以上、説明したように輸送温度監視システムが構成されているため、輸送中かつ保管中の保冷ボックス内部の任意の場所の温度が、設定した管理温度を逸脱する時刻を予測して事前に通知することが可能であり、温度管理を確実に行うことができる。
【0073】
なお、上述した実施例の輸送温度監視装置及び輸送温度監視システムは、保冷ボックスを用いた温度管理輸送サービスについての一例であり、その構成は、発明の趣旨を逸脱しない範囲で、適宜変更可能である。例えば、輸送容器が保冷ボックスではなく、保温ボックスである場合の温度管理にも応用可能である。
【産業上の利用可能性】
【0074】
本発明の輸送温度監視装置及び輸送温度監視システムは、保冷ボックスの内部温度が管理温度を逸脱する時刻を、事前に、通信機能や表示機能を用いて知らせて、注意喚起を行うことで、医薬品、食料品、化学製品の輸送など、幅広い分野で活用でき、輸送によって発生する廃棄物の削減や、再輸送等のコストの削減にも貢献する可能性がある。さらに、通信機能として、無線通信を用いても、無線機能を無効にして、表示機能のみ有効にしても輸送品質情報等をコード画像で表示でき、カメラ機能を備えた読み取り端末により取得できるため、電波利用に規制がある医療機関で有用である。
【符号の説明】
【0075】
1…保冷ボックス(輸送容器)、2…保冷ボックス蓋、10…輸送温度監視装置、11…内部温度取得部、12…外部温度取得部、13…制御部、14…記録部、15…通信部、16…表示部、17…電源、18…スイッチ部、19…外箱、20…外部温度センサ、21…内部温度センサ、22…センサプローブ、30…スマートフォン、40…端末装置(パソコン)、41…USBケーブル、50…ハンディターミナル、60…クラウドサーバ、130…回路基板、180…電源ON/OFFボタン、181…無線機能ON/OFFボタン。

【要約】
【課題】輸送容器内部の温度が輸送中もしくは保管中に管理温度を逸脱する時刻を予測して、事前に知らせることができる輸送温度監視装置及び輸送温度監視システムを提供する。
【解決手段】輸送容器に取り付け又は組み込み可能な輸送温度監視装置であって、少なくとも輸送容器内部の温度を測定する1つ以上の内部温度センサと、内部温度取得部と、輸送容器の外部温度を測定する外部温度センサと、外部温度取得部と、制御部と、記憶部と、通信部と、表示部と、を備える。制御部は、内部温度と外部温度から管理温度を逸脱する時刻を演算する演算処理部を備える。また、制御部は、内部温度及び外部温度と、内部温度が管理温度を逸脱する時刻等の情報を合わせてコード画像を生成し、表示させる表示制御部を備えてもよい。
【選択図】図1

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9