(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-21
(45)【発行日】2024-07-01
(54)【発明の名称】個別最適化装置、個別最適化プログラム及び個別最適化方法
(51)【国際特許分類】
G09B 5/02 20060101AFI20240624BHJP
G09B 7/02 20060101ALI20240624BHJP
【FI】
G09B5/02
G09B7/02
(21)【出願番号】P 2024080041
(22)【出願日】2024-05-16
【審査請求日】2024-05-16
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】516267692
【氏名又は名称】株式会社首都圏中学模試センター
(74)【代理人】
【識別番号】110003339
【氏名又は名称】弁理士法人南青山国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山下 一
(72)【発明者】
【氏名】本間 勇人
(72)【発明者】
【氏名】石坂 康倫
【審査官】西村 民男
(56)【参考文献】
【文献】特許第7452916(JP,B1)
【文献】特開2019-174580(JP,A)
【文献】特開2021-33227(JP,A)
【文献】登録実用新案第3227380(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G09B 1/00- 9/56
17/00-19/26
G06Q 50/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
或る問題の第1の母集団の正答率である第1の母集団正答率と、複数の思考コードドメインのうち前記問題の特性を表す所定の思考コードドメインと、複数の思考スキルのうち前記問題を解くために要求される所定の思考スキルとを、複数の問題それぞれについて有する問題情報と、
前記複数の問題に回答した回答者個人の、前記所定の思考コードドメインかつ前記所定の思考スキルを有する複数の過去問題の平均正答率である個人正答率を、前記複数の思考コードドメインの各々と前記複数の思考スキルの各々との組み合わせ毎に示す個人正答率情報と、
を入力する入力部と、
前記第1の母集団正答率と前記個人正答率との差分を、前記複数の問題それぞれについて算出する差分算出部と、
前記複数の問題のうち、前記差分が所定範囲内の値である1以上の問題を、前記回答者個人のマッチングゾーンに属するマッチング問題であると判断するマッチングゾーン判断部と、
前記マッチング問題の第1の母集団正答率、思考コードドメイン及び思考スキルに基づき、前記回答者個人に最適化した学習素材を出力する学習素材出力部と
を具備する個別最適化装置。
【請求項2】
請求項1に記載の個別最適化装置であって、
データベースに、思考コードドメインと、思考スキルとがそれぞれ関連付けられた複数の練習問題が蓄積され、
前記学習素材出力部は、前記データベースに蓄積された前記複数の練習問題のうち、前記マッチング問題の思考コードドメイン及び思考スキルと共通の思考コードドメイン及び思考スキルである1以上の練習問題を、前記回答者個人に最適化した学習素材として出力する
個別最適化装置。
【請求項3】
請求項1に記載の個別最適化装置であって、
データベースに、第2の母集団の正答率である第2の母集団正答率と、思考コードドメインと、思考スキルとがそれぞれ関連付けられた複数の練習問題が蓄積され、
前記学習素材出力部は、前記データベースに蓄積された前記複数の練習問題のうち、前記マッチング問題の思考コードドメイン及び思考スキルと共通の思考コードドメイン及び思考スキルである1以上の練習問題を、前記第2の母集団正答率が高い順に、前記回答者個人に最適化した学習素材として出力する
個別最適化装置。
【請求項4】
請求項2又は3に記載の個別最適化装置であって、
前記学習素材出力部は、前記マッチング問題又は前記練習問題の思考コードドメイン及び思考スキルと共通の思考コードドメイン及び思考スキルである新問題を生成し、前記回答者個人に最適化した学習素材として出力する
をさらに具備する個別最適化装置。
【請求項5】
請求項2又は3に記載の個別最適化装置であって、
前記マッチング問題又は前記練習問題の思考コードドメイン及び思考スキルの観点から、前記マッチング問題又は前記練習問題を考える視点のアドバイスを生成するアドバイス生成部
をさらに具備する個別最適化装置。
【請求項6】
請求項1に記載の個別最適化装置であって、
前記複数の思考コードドメインは、思考レベルの高低を表現する第1の軸と、前記第1の軸に交差し知識レベルの高低を表現する第2の軸とにより構成されるマトリクス状である
個別最適化装置。
【請求項7】
個別最適化装置のコンピュータを、
或る問題の第1の母集団の正答率である第1の母集団正答率と、複数の思考コードドメインのうち前記問題の特性を表す所定の思考コードドメインと、複数の思考スキルのうち前記問題を解くために要求される所定の思考スキルとを、複数の問題それぞれについて有する問題情報と、
前記複数の問題に回答した回答者個人の、前記所定の思考コードドメインかつ前記所定の思考スキルを有する複数の過去問題の平均正答率である個人正答率を、前記複数の思考コードドメインの各々と前記複数の思考スキルの各々との組み合わせ毎に示す個人正答率情報と、
を入力する入力部と、
前記第1の母集団正答率と前記個人正答率との差分を、前記複数の問題それぞれについて算出する差分算出部と、
前記複数の問題のうち、前記差分が所定範囲内の値である1以上の問題を、前記回答者個人のマッチングゾーンに属するマッチング問題であると判断するマッチングゾーン判断部と、
前記マッチング問題の第1の母集団正答率、思考コードドメイン及び思考スキルに基づき、前記回答者個人に最適化した学習素材を出力する学習素材出力部
として動作させる個別最適化プログラム。
【請求項8】
個別最適化装置のコンピュータが、個別最適化プログラムを実行することにより、
或る問題の第1の母集団の正答率である第1の母集団正答率と、複数の思考コードドメインのうち前記問題の特性を表す所定の思考コードドメインと、複数の思考スキルのうち前記問題を解くために要求される所定の思考スキルとを、複数の問題それぞれについて有する問題情報と、
前記複数の問題に回答した回答者個人の、前記所定の思考コードドメインかつ前記所定の思考スキルを有する複数の過去問題の平均正答率である個人正答率を、前記複数の思考コードドメインの各々と前記複数の思考スキルの各々との組み合わせ毎に示す個人正答率情報と、
を入力し、
前記第1の母集団正答率と前記個人正答率との差分を、前記複数の問題それぞれについて算出し、
前記複数の問題のうち、前記差分が所定範囲内の値である1以上の問題を、前記回答者個人のマッチングゾーンに属するマッチング問題であると判断し、
前記マッチング問題の第1の母集団正答率、思考コードドメイン及び思考スキルに基づき、前記回答者個人に最適化した学習素材を出力する
個別最適化方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、入学試験の模擬試験等の受験者個人に最適化した学習素材を出力する個別最適化装置、個別最適化プログラム及び個別最適化方法に関する。
【背景技術】
【0002】
模擬試験等の受験者の回答の採点について、採点者による得点のばらつきを排除する採点装置が開示されている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
採点者による得点のばらつきを排除し正確に採点することで、受験者個人が弱点を正確に知ることができ、ひいては受験者個人が学力を伸ばすことが出来ると考えられる。のみならず、受験者個人が効率的に学力を伸ばすことが出来るようにするために、個人に最適化した学習素材を出力することが望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の一形態に係る個別最適化装置は、
或る問題の第1の母集団の正答率である第1の母集団正答率と、複数の思考コードドメインのうち前記問題の特性を表す所定の思考コードドメインと、複数の思考スキルのうち前記問題を解くために要求される所定の思考スキルとを、複数の問題それぞれについて有する問題情報と、
前記複数の問題に回答した回答者個人の、前記所定の思考コードドメインかつ前記所定の思考スキルを有する複数の過去問題の平均正答率である個人正答率を、前記複数の思考コードドメインの各々と前記複数の思考スキルの各々との組み合わせ毎に示す個人正答率情報と、
を入力する入力部と、
前記第1の母集団正答率と前記個人正答率との差分を、前記複数の問題それぞれについて算出する差分算出部と、
前記複数の問題のうち、前記差分が所定範囲内の値である1以上の問題を、前記回答者個人のマッチングゾーンに属するマッチング問題であると判断するマッチングゾーン判断部と、
前記マッチング問題の第1の母集団正答率、思考コードドメイン及び思考スキルに基づき、前記回答者個人に最適化した学習素材を出力する学習素材出力部と
を具備する。
【発明の効果】
【0006】
本開示によれば、個人に最適化した学習素材を出力することを図れる。
【0007】
なお、ここに記載された効果は必ずしも限定されるものではなく、本開示中に記載されたいずれかの効果であってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本開示の一実施形態に係る個別最適化装置の構成を示す。
【
図7】差分算出部及びマッチングゾーン判断部の処理を模式的に示す。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照しながら、本開示の実施形態を説明する。
【0010】
1.個別最適化装置の構成
【0011】
図1は、本開示の一実施形態に係る個別最適化装置の構成を示す。
【0012】
個別最適化装置1には、入学試験の模擬試験等の問題情報300と、この模擬試験の複数の受験者(回答者)それぞれの個人正答率情報400と、が入力される。個別最適化装置1は、複数の受験者それぞれについて、問題情報300及び個人正答率情報400に基づき、受験者それぞれについて、受験者個人に最適化した学習素材を電子機器20に出力する。電子機器20は、学習素材を電子機器20の内蔵又は外部のディスプレイに表示したり、学習素材を印刷媒体(典型的には紙)に印刷したりする。
【0013】
電子機器20は、入学試験の模擬試験を受験する受験者(回答者)の端末装置(パーソナルコンピュータ、タブレットコンピュータ、スマートフォン等)、受験者(回答者)が在籍する学習塾等の受験機関や学校の端末装置(パーソナルコンピュータ)等のうち何れか1以上でよい。さらに、電子機器20は、模擬試験開催者側のサーバ装置、採点結果を印刷するためのプリンタ、プリンタに接続されたコンピュータ等でもよい。個別最適化装置1と電子機器20との間にインターフェースとなる電子機器が介在してもよい(不図示)。
【0014】
個別最適化装置1は、コンピュータ100を構成するCPUがROMに記録された文章採点プログラムをRAMにロードして実行することにより、入力部101、差分算出部102、マッチングゾーン判断部103、学習素材出力部104、アドバイス生成部105及びGUI生成部106として動作する。
【0015】
2.問題情報
【0016】
【0017】
問題情報300は、複数の問題301-307を含む問題群308の一覧である。問題情報300は、問題コード310、第1の母集団正答率320、思考コードドメイン330、思考スキル340を、複数の問題それぞれについて有する。
【0018】
問題コード310は、特定の問題群308に含まれる各問題301-307を一意に識別する識別子である。問題群308に含まれる問題301-307は、例えば、1回の模擬試験に含まれる全ての問題、1回の模擬試験に含まれる特定の科目の全ての問題、1回の過去の入学試験(中学入学試験等)に含まれる全ての問題(過去問)、1回の過去の入学試験に含まれる特定の科目の全ての問題(過去問)等である。
【0019】
第1の母集団正答率320は、問題コード310により識別される或る問題301-307の、特定の母集団の正答率(%)である。特定の母集団は、例えば、模擬試験を受験した受験者(問題群308が、模擬試験の問題である場合)、回答者個人の志望校の入学試験の合格者(問題群308が、入学試験の過去問である場合)、共通集団(学校や学習塾での同じクラス、同じ校舎等)の構成員等である。
【0020】
思考コードドメイン330は、思考コード200(後述)に含まれる複数の思考コードドメインのうち、或る問題301-307の特性を表すドメイン(領域)である。
【0021】
思考スキル340は、思考スキル群500(後述)に含まれる複数のスキルのうち、或る問題301-307を解く(正答する)ために要求されるスキルである。
【0022】
このように、各問題301-307には、問題の特性を表す思考コードドメイン330が1つ割り当てられ、また、問題を解くのに要求される思考スキル340が1つ割り当てられている。
【0023】
3.個人正答率情報
【0024】
【0025】
個人正答率情報400は、問題群308(に含まれる複数の問題301-307)に回答した回答者(受験者)個人毎の情報である。言い換えれば、回答者(受験者)各人に対して1個の個人正答率情報400が紐づけられる。個人正答率情報400は、思考コードドメイン430及び思考スキル440の組み合わせに対して、個人正答率420が関連付けられている。
【0026】
個人正答率420は、回答者(受験者)個人の、所定の思考コードドメイン430及び思考スキル440を有する複数の過去問題の平均正答率を、複数の思考コードドメイン430の各々と複数の思考スキル440の各々との組み合わせ401-407毎に示す。即ち、個人正答率420は、特定の問題群308に含まれる各問題301-307の正答率や点数ではない。上述のように、各問題301-307には、思考コードドメイン330及び思考スキル340が割り当てられている。同様に、回答者個人が過去に回答した無数の過去問題にも、思考コードドメイン及び思考スキルが割り当てられている。個人正答率420は、回答者個人が過去に回答した無数の過去問題を思考コードドメイン430及び思考スキル440の組み合わせ401-407毎にソートし、思考コードドメイン430及び思考スキル440の組み合わせ401-407毎に算出した平均正答率である。従って、複数の組み合わせ401-407それぞれの、思考コードドメイン430及び思考スキル440のペアは全て異なる。
【0027】
例えば、思考コードドメイン「A2」431及び思考スキル「置き換え」441の組み合わせ401に特徴づけられる複数の過去問題の個人正答率421は10.3%である。
【0028】
4.思考コード
【0029】
【0030】
思考コード200は、複数(本例では9個)の思考コードドメインA1、A2、A3、B1、B2、B3、C1、C2、C3を含む。問題情報300において、思考コードドメインA1、A2、A3、B1、B2、B3、C1、C2、C3のうち何れかが、各問題コード310に関連付けられている。
【0031】
複数の思考コードドメインA1、A2、A3、B1、B2、B3、C1、C2、C3は、横軸である第1の軸211と、第1の軸211に交差(本例では直交)する第2の軸212とにより構成される3x3のマトリクス状である。第1の軸211は、思考レベルの高低(本例では3段階)を表現する。第2の軸212は、知識レベルの高低(本例では3段階)を表現する。
【0032】
第1の軸211は、思考コードドメインA1を原点として、思考コードドメインA1から離れるほど(思考コードドメインB1、C1と進む順に)思考レベルが3段階で高くなって行くことを示す。具体的には、「A」は「知識があるか・理解できているか」、「B」は「応用できるか・論理的に思考し表現できるか」、「C」は「批判的に思考し表現できるか・創造的に思考し表現できるか」という観点を表す。
【0033】
第2の軸212は、思考コードドメインA1を原点として、思考コードドメインA1から離れるほど(思考コードドメインA2、A3と進む順に)知識レベルが3段階で高くなって行くことを示す。具体的には、「1」は「単純な知識レベルの問題」、「2」は「複雑な知識レベルの問題」、「3」は「変容的(高次)な知識レベルの問題」という尺度を表す。
【0034】
思考コードドメインA1は「単純な知識レベルの問題の知識があるか・理解できているか」という力を表し、具体的には、一般採点基準に関する。思考コードドメインA2は「複雑な知識レベルの問題の知識があるか・理解できているか」という力を表し、具体的には、主張の明快さに関する。思考コードドメインA3は「変容的(高次)な知識レベルの問題の知識があるか・理解できているか」という力を表し、具体的には、発想のおもしろさに関する。
【0035】
思考コードドメインB1は「単純な知識レベルの問題において応用できるか・論理的に思考し表現できるか」を表し、具体的には、具体例、データ、エピソードに関する。思考コードドメインB2は「複雑な知識レベルの問題において応用できるか・論理的に思考し表現できるか」を表し、具体的には、主張と理由のつながり、主張に対する反論とその反論を説得する理由に関する。思考コードドメインB3は「変容的(高次)な知識レベルの問題において応用できるか・論理的に思考し表現できるか」を表し、具体的には、複眼思考、5つの目(鳥の目、虫の目、魚の目、コウモリの目、心の目)活用度に関する。
【0036】
思考コードドメインC1は「単純な知識レベルの問題において批判的に思考し表現できるか・創造的に思考し表現できるか」を表し、具体的には、誰にとってどれくらい重要なのか条件を明示することに関する。思考コードドメインC2は「複雑な知識レベルの問題において批判的に思考し表現できるか・創造的に思考し表現できるか」を表し、具体的には、理由を裏付ける時代背景やストーリーに関する。思考コードドメインC3は「変容的(高次)な知識レベルの問題において批判的に思考し表現できるか・創造的に思考し表現できるか」を表し、具体的には、独創的なアイデアに関する。
【0037】
5.思考スキル群
【0038】
【0039】
思考スキル群500は、複数の思考スキル501-515を有する。問題情報300において、複数の思考スキル501-515のうち何れかが、各問題コード310に関連付けられている。
【0040】
複数の思考スキル501-515は、情報を獲得する501、知識502、再現する503、理由504、調べる505、置き換え506、順序立てて筋道をとらえる507、比較508、特徴的な部分に注目する509、分類510、具体・抽象511、一般化512、関係づけ513、特定の状況を仮定する514、推論515である。
【0041】
図2の例では、問題コード「240414K01」311、第1の母集団正答率「20.3」321、思考コードドメイン「A2」331、思考スキル「置き換え」341が、互いに関連付けて問題情報300として登録されている。これは、問題コード「240414K01」311により識別される或る問題301の、第1の母集団(模擬試験の受験者、入学試験の合格者等)の正答率が20.3%であることを意味する。また、この問題301の特性は思考コードドメイン「A2」の「複雑な知識レベルの問題の知識があるか・理解できているか」という特性であること、この問題301を正答するには思考スキル「置き換え」506(文字情報を別の形で言い換える、問題の状況を図表などに表す、未知のものを自分が知っている形で表す、具体的な数と比を自由に行き来する、及び、情報を式化することが出来るスキル)が回答者に要求されることを意味する。
【0042】
図2の例では、複数の問題301-307それぞれの、思考コードドメイン330及び思考スキル340の組み合わせが全て異なるが、これは一例に過ぎない。一部の問題の思考コードドメイン330及び思考スキル340の組み合わせは同じでもよい。この点、
図3の個人正答率情報400において思考コードドメイン430及び思考スキル440の組み合わせ401-407が全て異なる点とは相違する。
【0043】
6.個別最適化装置の動作フロー
【0044】
【0045】
入力部101は、入学試験の模擬試験等の問題情報300と、この模擬試験の複数の受験者(回答者)それぞれの個人正答率情報400と、を入力する(ステップS1)。
【0046】
図7は、差分算出部及びマッチングゾーン判断部の処理を模式的に示す。
【0047】
差分算出部102は、問題情報300に含まれる複数の問題301-307それぞれについて、第1の母集団正答率320(a)と個人正答率420(b)との差分601(a-b)を算出する(ステップS2)。
【0048】
(A)に示す様に、例えば、問題情報300(
図2)において、問題コード「240414K01」311により識別される或る問題301の第1の母集団正答率321(a)が20.3%であり、この問題301の思考コードドメイン331は「A2」、思考スキル341は「置き換え」である。一方、個人正答率情報400において(
図3)、同じ思考コードドメイン「A2」431及び同じ思考スキル「置き換え」441の組み合わせ401に特徴づけられる複数の過去問題の個人正答率421(a)は10.3%である。
【0049】
差分算出部102は、問題コード「240414K01」311により識別される或る問題301について、第1の母集団正答率321(a)20.3%と個人正答率420(b)10.3%との差分601(a-b=10.0%)を算出する。
【0050】
マッチングゾーン判断部103は、複数の問題301-307のうち、差分601が所定範囲内の値である1以上の問題を、回答者個人のマッチングゾーン602に属する問題(マッチング問題603)であると判断する(ステップS3)。
【0051】
(B)に示す様に、例えば、マッチングゾーン判断部103は、複数の問題301-307を差分601順にソートし、差分601(a-b)が0%<(a-b)≦15%の範囲内の値である問題303、301、304を、回答者個人のマッチング問題603であると判断する。
【0052】
この範囲は可変でよい。範囲を狭めることで、出力される学習素材(後述)の種類のバリエーションが狭まり、同種の学習素材を集中的に演習することが出来る。一方、範囲を広くすることで、出力される学習素材(後述)の種類のバリエーションが広くなり、多種の学習素材を幅広く演習することが出来る。
【0053】
問題302の様に、(a-b)≦0%は、回答者個人の正答率が第1の母集団正答率を超えている又は到達していることを意味する。このため、回答者個人が、同種(同じ思考コードドメイン、同じ思考スキル)の問題をさらに演習する必要性は低い。一方、問題306、305、307の様に、(a-b)>15%は、回答者個人の正答率が第1の母集団正答率より大幅に低いことを意味する。このため、回答者個人が、同種(同じ思考コードドメイン、同じ思考スキル)の問題をさらに演習しても、その種の学力を伸ばすことが容易ではない又は時間が掛かる可能性が相対的に高い。一方、問題303、301、304の様に、0%<(a-b)≦15%は、回答者個人の正答率が第1の母集団正答率より僅かに低いことを意味する。このため、回答者個人が、同種(同じ思考コードドメイン、同じ思考スキル)の問題をさらに演習すれば、その種の学力を伸ばし、且つ、回答者個人の正答率が第1の母集団正答率に到達することが比較的容易である又は比較的短期間で実現できる可能性が相対的に高い。
【0054】
学習素材出力部104は、マッチング問題603の第1の母集団正答率、思考コードドメイン及び思考スキルに基づき、回答者個人に最適化した学習素材を出力する(ステップS4)。学習素材出力部104は、生成AIを利用して、回答者個人に最適化した学習素材を出力してもよい。例えば、学習素材出力部104は、データベース700に蓄積された複数の練習問題701から、1以上の練習問題701を、回答者個人に最適化した学習素材として出力する。
【0055】
【0056】
データベース700には、複数の練習問題701が一覧で登録される。具体的には、問題コード710、第2の母集団正答率720、思考コードドメイン730、思考スキル740、アイテム情報750が、複数の練習問題701それぞれについて登録される。
【0057】
第2の母集団正答率720は、問題コード710により識別される或る問題701の、特定の第2の母集団の正答率(%)である。第2の母集団は、例えば、模擬試験を受験した受験者、回答者個人の志望校の入学試験の合格者、共通集団(学校や学習塾での同じクラス、同じ校舎等)の構成員等である。第1の母集団正答率320の母集団と第2の母集団正答率720の母集団とは、同一でもよいし異なってもよい。
【0058】
アイテム情報750は、練習問題701にアクセスするためのURLや、練習問題701自体(テキスト情報)等である。
【0059】
例えば、学習素材出力部104は、データベース700に蓄積された複数の練習問題701のうち、マッチング問題603の思考コードドメイン430及び思考スキル440と共通の思考コードドメイン730及び思考スキル740である1以上の練習問題701を、第2の母集団正答率720が高い順に、回答者個人に最適化した学習素材として出力すればよい。第2の母集団正答率720が高いということは、その練習問題701は相対的に難度が低いことを意味する。このため、回答者個人がこの練習問題701に正答する可能性が相対的に高く、この練習問題701を演習することで、その種の学力を伸ばすことが比較的容易である又は比較的短期間で実現できる可能性が相対的に高い。
【0060】
また、学習素材出力部104は、例えば生成AIを用いて、マッチング問題603又は練習問題701の思考コードドメイン430、730及び思考スキル440、740と共通の思考コードドメイン及び思考スキルである新問題を生成し、回答者個人に最適化した学習素材として出力してもよい。
【0061】
アドバイス生成部105は、例えば生成AIを用いて、マッチング問題603又は練習問題701の思考コードドメイン430、730及び思考スキル440、740の観点から、マッチング問題603又は練習問題701を考える視点のアドバイスを生成する(ステップS5)。
【0062】
GUI生成部106は、個人に最適化した学習素材やアドバイスを電子機器20に出力する(ステップS6)。GUI生成部106は、マトリクス状の複数の思考コードドメインそれぞれに対する学習素材やアドバイスを表示するためのGUIを生成してもよい。
【0063】
7.本実施形態の応用
【0064】
【0065】
第1段階801(中学受験の場合、6年生の夏頃まで)として、個別最適化装置1により基礎学力の個別最適化を図ることが出来る。この段階では、第1の母集団正答率320を、模擬試験を受験した受験者や共通集団(学校や学習塾での同じクラス、同じ校舎等)の構成員等の正答率とすればよい。
【0066】
第2段階802(中学受験の場合、6年生の夏~秋頃)として、個別最適化装置1により合格学力の個別最適化を図ることが出来る。この段階では、第1の母集団正答率320及び第2の母集団正答率720を、回答者個人の志望校の入学試験の合格者の正答率とすればよい。
【0067】
第3段階803(中学受験の場合、6年生の秋頃以降)として、個別最適化装置1により不得意問題の個別最適化を図ることが出来る。この段階では、マッチングゾーン判断部103によるマッチングの範囲を狭くし、且つ、学習素材出力部104が生成AIを用いて多数の練習問題を生成することで、回答者個人が苦手な種類の学習素材を集中的に演習できるようにすればよい。
【0068】
その他の応用例を挙げる。合格のためのモデル文章への最近接発達領域:個別最適化装置1は、連回答者個人の練習問題701の回答の再採点を得、その回答者の意図を生かしたアドバイスをウェブ及びアプリでさらに提案してもよい。
【0069】
合格戦略的学習の方向性:個別最適化装置1は、志望校への合格率がアップしたかどうかをタイムリーに判定してもよい。これにより、リアリスティックリフレクションによるモチベーションアップを形成できる。
【0070】
入学後の文章思考力・表現力の可能性を可視化:個別最適化装置1は、母集団正答率と回答者の個人正答率を比較することによって、入学後の思考力や表現力の伸長努力度が判別できる。そのうえで、どの思考コードドメインを努力するか順序づけ(得意な領域から鍛える)フィードバックできる。
【0071】
別売りコンピテンシー(スキル)評価システム=キャリアアップのための文章思考力・表現力を鍛える問いを自動的に配信:鍛える領域の順序付けに従い、各領域を鍛える問いを提供し、これの個別最適化に個別最適化装置1を適用してもよい。
【0072】
大学入試の小論文対策に適用:大学入試の小論文の個別最適化に個別最適化装置1を適用してもよい。
【0073】
人材発掘システムへの発展(文章からタレント評価):社会人向けの小論文の採点に個別最適化装置1を適用してもよい。対象は、受験者、高校生、大学生、教員のための個別最適化システムに活用されてもよい。
【0074】
8.結語
【0075】
本実施形態によれば、マッチングゾーン判断部103は、回答者個人が、その種の学力を伸ばし、且つ、回答者個人の正答率が第1の母集団正答率に到達することが比較的容易である又は比較的短期間で実現できる可能性が相対的に高いタイプ(同じ思考コードドメイン、同じ思考スキル)の問題を判断することが出来る。学習素材出力部104は、マッチング問題603の第1の母集団正答率、思考コードドメイン及び思考スキルに基づき、回答者個人に最適化した学習素材を出力することができる。また、マッチングゾーン判断部103のマッチング範囲を可変とすることで、段階に応じて個別最適化した学習素材を提供することが出来る。
【0076】
本技術の各実施形態及び各変形例について上に説明したが、本技術は上述の実施形態にのみ限定されるものではなく、本技術の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。
【符号の説明】
【0077】
1:個別最適化装置、101:入力部、102:差分算出部、103:マッチングゾーン判断部、104:学習素材出力部、105:アドバイス生成部、106:GUI生成部、20:電子機器、200:思考コード、300:問題情報、400:個人正答率情報、500:思考スキル群、700:データベース。
【要約】
【課題】個人に最適化した学習素材を出力する。
【解決手段】個別最適化装置は、或る問題の第1の母集団の正答率である第1の母集団正答率と、複数の思考コードドメインのうち問題の特性を表す所定の思考コードドメインと、複数の思考スキルのうち問題を解くために要求される所定の思考スキルとを、複数の問題それぞれについて有する問題情報と、複数の問題に回答した回答者個人の、所定の思考コードドメインかつ所定の思考スキルを有する複数の過去問題の平均正答率である個人正答率を、複数の思考コードドメインの各々と複数の思考スキルの各々との組み合わせ毎に示す個人正答率情報と、を入力し、第1の母集団正答率と個人正答率との差分を、複数の問題それぞれについて算出し、複数の問題のうち、差分が所定範囲内の値である1以上の問題を、回答者個人のマッチングゾーンに属するマッチング問題であると判断し、個人に最適化した学習素材を出力する。
【選択図】
図7