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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-21
(45)【発行日】2024-07-01
(54)【発明の名称】手術器具用の洗浄用器具
(51)【国際特許分類】
   A61B 90/70 20160101AFI20240624BHJP
【FI】
A61B90/70
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2024517019
(86)(22)【出願日】2022-06-30
(86)【国際出願番号】 JP2022026375
(87)【国際公開番号】W WO2024004168
(87)【国際公開日】2024-01-04
【審査請求日】2024-03-15
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】515075692
【氏名又は名称】リバーフィールド株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000578
【氏名又は名称】名古屋国際弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】滝川 恭平
【審査官】和田 将彦
(56)【参考文献】
【文献】特開2021-186231(JP,A)
【文献】特表2018-505008(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 90/70
A61B 34/30
B08B 3/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハウジングを有する手術器具の洗浄用器具であって、
前記ハウジングに差し込まれて前記ハウジングの内部を洗浄する洗浄液を流出させる第1コネクタであって、前記ハウジングに差し込まれる第1の向きに前記洗浄液を流出させる第1コネクタを保持する第1保持部と、
前記ハウジングにおいて前記第1コネクタが差し込まれる位置と異なる位置において前記ハウジングに差し込まれて前記洗浄液を流出させる第2コネクタであって、前記ハウジングに差し込まれる第2の向きに前記洗浄液を流出させる前記第2コネクタを保持する第2保持部と、
前記第1コネクタから前記洗浄液が流出する前記第1の向きに沿った第1流出方向と、前記第2コネクタから前記洗浄液が流出する前記第2の向きに沿った第2流出方向とが交差するように前記第1保持部および前記第2保持部との間をつなぐ連結部と、
を有する洗浄用器具。
【請求項2】
前記第1流出方向と前記第2流出方向との間の交差角度の範囲は、45度を超えて90度以下である請求項1記載の洗浄用器具。
【請求項3】
前記第1流出方向と前記第2流出方向との間の交差角度の範囲は、90度よりも大きく180度以下である請求項1記載の洗浄用器具。
【請求項4】
前記連結部は、前記第1保持部と前記第2保持部とが互いに接近および離間する方向に変位する弾性を有する請求項1から3のいずれか1項に記載の洗浄用器具。
【請求項5】
前記連結部には、前記第1保持部と前記第2保持部とが互いに接近および離間する方向に変位するように弾性変形する弾性部が設けられている請求項1から3のいずれか1項に記載の洗浄用器具。
【請求項6】
ハウジングを有する手術器具の洗浄用器具であって、
前記ハウジングの内部を洗浄する洗浄液を供給する第1チューブの端部に配置され、前記ハウジングに設けられた第1ポートに差し込まれて該第1ポートに差し込まれる第1の向きに前記洗浄液を流出させる第1コネクタと、
前記第1コネクタを保持する第1保持部と、
前記洗浄液を供給する第2チューブの端部に配置され、前記ハウジングに設けられた第2ポートに差し込まれて該第2ポートに差し込まれる第2の向きに前記洗浄液を流出させる第2コネクタと、
前記第2コネクタを保持する第2保持部と、
前記第1コネクタから前記洗浄液が流出する前記第1の向きに沿った第1流出方向と、前記第2コネクタから前記洗浄液が流出する前記第2の向きに沿った第2流出方向とが交差するように前記第1保持部および前記第2保持部との間をつなぐ連結部と、
を有する洗浄用器具。
【請求項7】
前記第1コネクタは外面が円周面である凸形状を有し、内面が円周面である凹形状を有する前記第1ポートに差し込み、および抜き取りされ、
前記第2コネクタは外面が円周面である凸形状を有し、内面が円周面である凹形状を有する前記第2ポートに差し込み、および抜き取りされ、
前記第1コネクタにおける前記外面の外周径から、前記第1ポートにおける前記内面の内周径を引いた値である第1締め代は、前記第2コネクタにおける前記外面の外周径から、前記第2ポートにおける前記内面の内周径を引いた値である第2締め代よりも小さい請求項6記載の洗浄用器具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ハウジングを有する手術器具のそのハウジング内部を洗浄する際に用いる洗浄用器具に関する。
【背景技術】
【0002】
手術を支援する手術支援ロボットが知られている。手術支援ロボットには、手術の目的に応じた付属品が取り付けられる。この付属品は、インスツルメントとも呼ばれ、具体的には医療機器である。インスツルメントとしては、鉗子や電気メスなどが含まれ得る。
【0003】
また、インスツルメントとしては、再使用が可能な機器が含まれ得る。再使用が可能なインスツルメントの場合、手術で使用された後に洗浄が行われ、更に滅菌処理が施されて再び使用される。再使用が可能なインスツルメントとしては、例えば、10回程度の繰り返しの使用が想定される場合がある。
【0004】
一般的には、医療機器の洗浄方法としては、超音波洗浄、減圧沸騰洗浄、および、ウォッシャーディスインフェクター洗浄(以下「WD洗浄」とも表記する。)の3つの洗浄方法が広く知られている。WD洗浄は他の2つの洗浄方法と比較して作業工数が少なく、洗浄を行う医療スタッフへの負担が軽い。このため、多くの施設で医療機器の洗浄方法としてWD洗浄が導入されている。
【0005】
WD洗浄は、洗浄剤による化学的な洗浄効果と、高圧の水流による物理的な洗浄効果とを合わせた洗浄方法である(例えば、特許文献1および2参照。)。このWD洗浄では、洗浄液を高圧で供給する機器が用いられる。上述のインスツルメントについても、そのインスツルメントに適合した機器を用いることにより、WD洗浄を行うことが可能である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2013-188387号公報
【文献】特開2016-073907号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
インスツルメントをWD洗浄にて洗浄する場合には、インスツルメントの内部に、WD洗浄のための本体機器から洗浄液が高圧で噴射される。これにより、インスツルメントの内部の洗浄が行われる。この洗浄液は上述の洗浄剤を含む液体である。手術に用いられた後のインスツルメントの内部は、血液などの体液で汚染されている。上記の本体機器からインスツルメントの内部に噴射される洗浄液により、その体液が洗い流される。
【0008】
洗浄液をインスツルメントに高圧で供給する構成としては、例えばWD洗浄の本体機器から、洗浄チューブを介してインスツルメントに供給する構成が知られている。この構成では、洗浄チューブのインスツルメント側の端部には洗浄コネクタが設けられている。また、インスツルメントには、洗浄コネクタに対応した洗浄ポートが設けられている。この洗浄チューブの洗浄コネクタが、洗浄ポートに差し込まれてその洗浄ポートと接続され、洗浄液が、WD洗浄の本体機器からインスツルメントの内部に高圧で供給される。
【0009】
洗浄を行う医療スタッフの負担を軽減するため、洗浄コネクタと洗浄ポートとの接続やその取り外しを容易に行える構成であることが好ましい。例えば、洗浄コネクタと洗浄ポートとを相対的に回転させるなどの追加的な操作を行うことなく、洗浄コネクタを洗浄ポートに差し込んで洗浄コネクタを洗浄ポートに接続できるような構成であることが好ましい。同様に、洗浄ポートと洗浄コネクタとを互いに離間させるようにするだけで、追加的な操作を行うことなく、洗浄ポートから洗浄コネクタを抜き取って取り外しができる構成であることが好ましい。
【0010】
その一方で、その接続や取り外しをより容易に行える構成を採用しようとすると、洗浄液が高圧で噴射された際にその反動により洗浄コネクタが洗浄ポートから外れる可能性が高まり得る。洗浄コネクタが意図せず外れると、洗浄の不備が発生し得る。
【0011】
本開示は、接続や取り外し等を容易に行えるようにしつつ安定した洗浄を実現する洗浄用器具の一例を開示する。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本開示の一局面である洗浄用器具は、ハウジングを有する手術器具の洗浄用器具であって、前記ハウジングに差し込まれて前記ハウジングの内部を洗浄する洗浄液を流出させる第1コネクタであって、前記ハウジングに差し込まれる第1の向きに前記洗浄液を流出させる第1コネクタを保持する第1保持部と、前記ハウジングにおいて前記第1コネクタが差し込まれる位置と異なる位置において前記ハウジングに差し込まれて前記洗浄液を流出させる第2コネクタであって、前記ハウジングに差し込まれる第2の向きに前記洗浄液を流出させる前記第2コネクタを保持する第2保持部と、前記第1コネクタから前記洗浄液が流出する前記第1の向きに沿った第1流出方向と、前記第2コネクタから前記洗浄液が流出する前記第2の向きに沿った第2流出方向とが交差するように前記第1保持部および前記第2保持部との間をつなぐ連結部と、を有する。
【0013】
本開示の一局面である洗浄用器具は、ハウジングを有する手術器具の洗浄用器具であって、前記ハウジングの内部を洗浄する洗浄液を供給する第1チューブの端部に配置され、前記ハウジングに設けられた第1ポートに差し込まれて該第1ポートに差し込まれる第1の向きに前記洗浄液を流出させる第1コネクタと、前記第1コネクタを保持する第1保持部と、前記洗浄液を供給する第2チューブの端部に配置され、前記ハウジングに設けられた第2ポートに差し込まれて該第2ポートに差し込まれる第2の向きに前記洗浄液を流出させる第2コネクタと、前記第2コネクタを保持する第2保持部と、前記第1コネクタから前記洗浄液が流出する前記第1の向きに沿った第1流出方向と、前記第2コネクタから前記洗浄液が流出する前記第2の向きに沿った第2流出方向とが交差するように前記第1保持部および前記第2保持部との間をつなぐ連結部と、を有する。
【0014】
本開示の洗浄用器具によれば、第1コネクタにおける洗浄液の流出による反力が働く向きと反対向きの方向である第1流出方向は、第2コネクタの差し込まれる方向、および抜き取りされる方向に沿った第2流出方向と交差している。このため、第1コネクタが洗浄液の流出による反力によってハウジングから抜ける向きに力を受ける際に、連結部によってつながれた第2コネクタにより第1コネクタの移動が制限される。
【0015】
また、第2コネクタにおける洗浄液の流出による反力と反対向きの方向に沿った第2流出方向は、第1コネクタの差し込まれる方向、および抜き取りされる方向に沿った第1流出方向と交差している。このため、第2コネクタが洗浄液の流出による反力によってハウジングから抜ける向きに力を受ける際に、連結部によってつながれた第1コネクタにより第2コネクタの移動が制限される。
【0016】
本開示の一局面である洗浄用器具において前記第1流出方向と前記第2流出方向との間の交差角度の範囲は、45度を超えて90度以下であることが好ましい。
【0017】
第1コネクタにおける洗浄液の流出による反力のうち、第2流出方向と平行な方向の成分は、第2流出方向と垂直な方向の成分よりも小さくなる。反力の垂直方向の成分は第2コネクタに伝わり、第2コネクタが第2流出方向と垂直な方向にハウジングに押し付けられる力となる。第2コネクタとハウジングとの間に働く摩擦力が、反力の第2流出方向と垂直な方向の成分に起因して大きくなる。第1コネクタに働く反力における平行な方向の成分が相対的に小さいことにより、第1コネクタの移動が制限される。反力の第2流出方向と垂直な方向の成分が相対的に大きいことにより、第2コネクタがハウジングから抜けにくくなり、第2コネクタは第1コネクタの移動を制限する。
【0018】
また、第2コネクタにおける洗浄液の流出による反力のうち、第1流出方向と平行な方向の成分は、第1流出方向と垂直な方向の成分よりも小さくなる。反力の垂直方向の成分は第1コネクタに伝わり、第1コネクタが第1流出方向と垂直な方向にハウジングに押し付けられる力となる。第1コネクタとハウジングとの間に働く摩擦力が、反力の第1流出方向と垂直な方向の成分に起因して大きくなる。第2コネクタに働く反力における第1流出方向と平行な方向の成分が相対的に小さいことにより、第1コネクタの移動が制限される。第1流出方向と垂直な方向の成分が相対的に大きいことにより、第2コネクタがハウジングから抜けにくくなり、第1コネクタは第2コネクタの移動を制限する。
【0019】
本開示の一局面である洗浄用器具において前記第1流出方向と前記第2流出方向との間の交差角度の範囲は、90度よりも大きく180度以下であることが好ましい。
【0020】
第1コネクタにおける洗浄液の流出による反力のうち、第2流出方向と平行な方向の成分は、第2コネクタがハウジングから抜き取りされる方向と反対方向に働く。そのため、第2コネクタは、第1コネクタの移動を更に制限する。
【0021】
また、第2コネクタにおける洗浄液の流出による反力のうち、第1流出方向と平行な方向の成分は、第1コネクタがハウジングから抜き取りされる方向と反対方向に働く。そのため、第1コネクタは、第2コネクタの移動を更に制限する。
【0022】
本開示の一局面である洗浄用器具において前記連結部は、前記第1保持部と前記第2保持部とが互いに接近および離間する方向に変位する弾性を有することが好ましい。
【0023】
連結部が弾性を有することにより、第1保持部および第2保持部に対して互いに接近する方向(互いに接近しようとする方向)に働く力を加えることが可能となる。その力は、換言すれば、第1保持部から第2保持部に向かう力であり、および/または第2保持部から第1保持部に向かう力である、とも理解され得る。言い換えると、第1コネクタおよび第2コネクタに対して互いに接近する方向(互いに接近しようとする方向)に働く力を加えることができる。同様に、その力は、換言すれば、第1コネクタから第2コネクタに向かう力であり、および/または第2コネクタから第1コネクタに向かう力である、とも理解され得る。連結部による接近する方向に働く力の少なくとも一部は、第1コネクタをハウジングに押し付ける力となる。また、連結部による接近する方向に働く力の少なくとも一部は、第2コネクタをハウジングに押し付ける力となる。
【0024】
本開示の一局面である洗浄用器具において前記連結部には、前記第1保持部および前記第2保持部が接近および離間する方向に変位するように弾性変形する弾性部が設けられていることが好ましい。
【0025】
連結部に弾性部を設けることにより連結部の他の部分に弾性を持たせる必要がなくなり、連結部を形成する材料や形状の選択範囲が広くなる。
【0026】
本開示の一局面である洗浄用器具において前記第1コネクタは外面が円周面である凸形状を有し、内面が円周面である凹形状を有する前記第1ポートに差し込み、および抜き取りされ、前記第2コネクタは外面が円周面である凸形状を有し、内面が円周面である凹形状を有する前記第2ポートに差し込み抜き、および取りされ、前記第1コネクタにおける前記外面の径である外周径から、前記第1ポートにおける前記内面である内周径を引いた値である第1締め代は、前記第2コネクタにおける前記外面の径である外周径から前記第2ポートにおける前記内面の径である内周径を引いた値である第2締め代よりも小さいことが好ましい。
【0027】
第1締め代は第2締め代よりも小さいため、第1コネクタを第1ポートに差し込む際に必要な力は、第2コネクタを第2ポートに差し込む際に必要な力よりも小さい。また、第1コネクタを第1ポートから抜き取るのに必要な力は、第2コネクタを第2ポートから抜き取る際に必要な力よりも小さい。言い換えると、第2コネクタを第2ポートに差し込む際に必要な力は、第1コネクタを第1ポートに差し込む際に必要な力よりも大きい。また、第2コネクタを第2ポートから抜き取る際に要する力は、第1コネクタを第1ポートから抜き取る際に要する力よりも大きい。このため、第2コネクタが、第1コネクタにおける反力による抜けを制限する力は、第1コネクタが、第2コネクタにおける反力による抜けを制限する力よりも大きい。
【0028】
第1コネクタを第1ポートに対して差し込み抜き取り容易とすることにより、洗浄用器具の取付け、取り外しが容易となる。その一方で、洗浄作業中に第1コネクタが反力により第1ポートから抜けることを、第2コネクタにより制限することができる。
【発明の効果】
【0029】
本開示の洗浄用器具によれば、ハウジングから抜ける方向への第1コネクタの移動が第2コネクタにより制限され、ハウジングから抜ける方向への第2コネクタの移動が第1コネクタにより制限される。そのため、洗浄中に第1コネクタおよび第2コネクタがハウジングから抜けにくくなり、手術器具の内部(ハウジングの内部)のより安定的な洗浄を行うことができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0030】
図1】本開示の洗浄用器具および手術器具の構成を説明する正面図である。
図2】本開示の洗浄用器具および手術器具の構成を説明する上面図である。
図3】第1コネクタおよび第2コネクタの形状を説明する斜視図である。
図4】手術器具における第1ポートおよび第2ポートの位置を説明する斜視図である。
図5】第1コネクタおよび第1ポートの間の第1締め代を説明する模式図である。
図6】第2コネクタおよび第2ポートの間の第2締め代を説明する模式図である。
図7】本開示の洗浄用器具の構成を説明する正面図である。
図8】本開示の洗浄用器具の構成を説明する上面図である。
図9】洗浄用器具の変形例を説明する正面図である。
図10】洗浄用器具の別の変形例を説明する正面図である。
図11】第1コネクタに働く力の向きを説明する正面図である。
図12】弾性部により働く力の向きを説明する正面図である。
【符号の説明】
【0031】
10…洗浄用器具、 21A…第1コネクタ、 21B…第2コネクタ、 31A…第1保持部、 31B…第2保持部、 32…連結部、 33…弾性部、 50…手術器具、 51…ハウジング、 55A…第1ポート、 55B…第2ポート、 AF…第1流出方向、 BF…第2流出方向、 AC…第1締め代、 BC…第2締め代
【発明を実施するための形態】
【0032】
[第1実施形態]
本開示の一実施形態に係る洗浄用器具10について、図1から図12を参照しながら説明する。図1を参照し、洗浄用器具10は、手術に使用される手術器具50を洗浄する際に用いられる器具である(洗浄用器具10については、図7,8も参照)。洗浄用器具10は、より具体的には、手術器具50に対してWD洗浄(WD:Washer Disinfector)を行う際に用いられる。
【0033】
手術器具50は、一例では、マスタースレーブ型の手術支援ロボット(図示省略)に装着される。マスタースレーブ型の手術支援ロボットとは、執刀医が手元のコンソール(マスター)を操作して、患者の体内に挿入されたマニピュレータ(スレーブ:ロボットの腕や手に相当)を操作する仕様の手術支援ロボットである。
【0034】
洗浄用器具10は、手術器具50のハウジング51内に洗浄液を供給して手術器具50の内部(ハウジング51の内部)を洗浄する際に用いられる器具である。洗浄液は、洗浄用器具10と接続される、別途の本体40から供給される。本体40は、WD洗浄を行うための機器である。洗浄用器具10は、本体40と、手術器具50との間の接続に用いられる器具である。
【0035】
洗浄用器具10には、図1および図2に示すように、第1保持部31Aと、第2保持部31Bと、連結部32と、が含まれ、さらに、追加的には、弾性部33が含まれてもよい。そして、洗浄用器具10には、第1コネクタ21Aと、第2コネクタ21Bと、が接続される。さらに、洗浄用器具10には、第1コネクタ21Aを介して第1チューブ11Aが接続され、第2コネクタ21Bを介して第2チューブ11Bが接続される。
【0036】
第1チューブ11Aおよび第2チューブ11Bは、本体40からハウジング51へ洗浄液を導く管状の部材である。第1チューブ11Aおよび第2チューブ11Bの本体40側の端部は、本体40と着脱自在に、その本体40に接続されていてもよい。あるいは第1チューブ11Aおよび第2チューブ11Bの本体40側の端部は、本体40に固定されていてもよい。第1チューブ11Aおよび第2チューブ11Bは、可撓性を有する樹脂材料を用いて形成されている。
【0037】
第1コネクタ21Aは、それぞれ第1チューブ11Aのハウジング51側の端部に配置されている部材である。第2コネクタ21Bは、第2チューブ11Bのハウジング51側の端部に配置されている部材である。第1コネクタ21Aは、ハウジング51の第1ポート55A(図4,5参照)に差し込まれる部分である。第2コネクタ21Bは、第2ポート55B(図4,6参照)に対して差し込まれる部分である。第1コネクタ21A、および第2コネクタ21Bは、それぞれの差し込まれる向きとは逆の向きに力が加えられることでハウジング51から抜き取られるように構成されている。ハウジング51の第1ポート55Aおよび第2ポート55Bについては後述する。
【0038】
第1コネクタ21Aおよび第2コネクタ21Bは、同じ形状を有している。図3に示すように、第1コネクタ21Aおよび第2コネクタ21Bは略円筒形状をしており、その円筒形状の中心軸線に沿って延びる貫通孔22A,22Bをそれぞれ有している。貫通孔22A,22Bは洗浄液が流れる流路である。洗浄液は貫通孔22A,22Bが延びる向き、言い換えると円筒形状の中心軸線が延びる向きに流れる。即ち、第1コネクタ21Aは、洗浄液が流出する向きと、第1ポート55Aに差し込まれる向きとが同じ向きになるように構成されている。同様に第2コネクタ21Bは、洗浄液が流出する向きと、第2ポート55Bに差し込まれる向きとが同じ向きになるように構成されている。
【0039】
第1コネクタ21Aおよび第2コネクタ21Bにおけるハウジング51側の部分には、ハウジング側端部23A,23Bが設けられている。ハウジング側端部23A,23Bは、先端に向かって径が小さくなる円錐台形状を有する。ハウジング側端部23A,23Bの中心軸線に沿って貫通孔22A,22Bがそれぞれ延びている。
【0040】
第1コネクタ21Aおよび第2コネクタ21Bにおける長手方向の中央部は、その外径が、両端の部分と比較して径が大きく形成されている。第1コネクタ21Aの長手方向の中央部には、第1保持部31A(図1,7,8参照)が配置される二つの溝部24A,24Aが設けられている。第2コネクタ21Bの長手方向の中央部には、第2保持部31B(図1,7,8参照)が配置される二つの溝部24B,24Bが設けられている。
【0041】
第1コネクタ21Aにおける第1チューブ11A側の部分には、第1チューブ11Aに差し込まれるチューブ側端部25Aが設けられている。第2コネクタ21Bにおける第2チューブ11B側の部分には、第2チューブ11Bに差し込まれるチューブ側端部25Bが設けられている。
【0042】
手術器具50は、図1,4に示すように、ハウジング51と、シャフト60とを有する。ハウジング51は内部空間を有する容器であり、カバー52と、手術器具50を装着するための取付面57を備えたベース56と、を有する。
【0043】
以降では、次に説明するX方向、Y方向およびZ方向を用いて説明する。シャフト60と平行な方向がZ方向である。Z方向の正方向は、ハウジング51から離れる方向である。X方向およびY方向はシャフト60と直交する面に沿って延びる方向であって、互いに直交する方向である。
【0044】
X方向は、ハウジング51のベース56における取付面57に沿って延びる方向であり、X方向の正方向は、図4の紙面において左斜め下に向かう方向であり、図2の紙面において下側に向かう方向である。Y方向は、取付面57に直交する方向であり、Y方向の正方向は、ハウジング51のベース56からカバー52に向かう方向である。
【0045】
カバー52は、ベース56とともにハウジング51の外形を形成し、ハウジング51の内部空間を形成する部材である。カバー52は、図2,4等に示すように、上面52Aと、前面52Bと、側面52C,52Dと、後面52Eとを有する。
【0046】
上面52Aは、Z-X平面に沿って延びる面であり、カバー52におけるY方向の正側に位置する面である。前面52Bは、X-Y平面に沿って延びる面であり、カバー52におけるZ方向の正側に位置する面である。側面52C,52Dは、Y-Z平面に沿って延びる面であり、カバー52におけるX方向の正側および負側に位置する面である。後面52Eは、X-Y平面に沿って延びる面であり、カバー52におけるZ方向の負側に位置する面である。
【0047】
カバー52には、第1ポート55Aが設けられている。以降において、第1ポート55Aをフラッシュポートとも表記する。カバー52の上面52Aには、第1ポート55Aが設けられている。第1ポート55Aは、カバー11の前面52Bに設けられてもよいし、あるいは側面52Cや側面52Dに設けられてもよい。
【0048】
第1ポート55Aはカバー52を貫通するY方向に延びる貫通孔である。具体的に第1ポート55Aは、上面52Aを貫通する貫通孔である。第1ポート55Aは、ハウジング51の外部から内部空間へ洗浄液を供給する際に用いられる貫通孔である。
【0049】
第1ポート55Aは、図5に示すように、第1コネクタ21Aが差し込まれる部分の側面が、ハウジング側端部23Aの円錐台形状に対応した角度で傾斜している。具体的には、第1ポート55Aの、ハウジング側端部23Aが差し込まれる部分の側面は、ハウジング51の外部に向かうにつれてその径が大きくなる円錐面を有している。第1ポート55Aにおけるハウジング51の内側の側には底面58Aが設けられており、その底面には、洗浄液が流れる孔59Aが設けられている。
【0050】
第1ポート55Aにおける底面部分の直径である内周径55ADは、第1コネクタ21Aのハウジング側端部23Aにおける先端の直径である外周径23AD以上である。以降の説明において、先端の外周径23ADから底面部分の内周径55ADを引いた値を、第1締め代ACと表記する。図5に示すように、第1コネクタ21Aを第1ポート55Aに差し込むと、第1コネクタ21Aの先端は第1ポート55Aの底面58Aに当接する。
【0051】
ベース56は、カバー52とともにハウジング51の外形を形成する板状に形成された部材であり、手術支援ロボットに取り付けられる箇所を形成する。図1,4等に示されているように、ベース56におけるY方向の正側にはカバー52が配置される。ベース56におけるY方向の負側の面は取付面57である。取付面57は、手術支援ロボットに手術器具50を装着するための面であり、手術支援ロボットと接触する面である。
【0052】
ベース56におけるZ方向の正側端部には、シャフト60が取り付けられる。ベース56におけるZ方向の負側端部には、第2ポート55Bが設けられている。以降において第2ポート55Bをメインフラッシュポートとも表記する。第2ポート55B(メインフラッシュポート)は、ハウジング51の外部からシャフト60の内部へ洗浄液を供給する際に用いられる貫通孔である。
【0053】
第2ポート55Bは、ベース56におけるカバー52側(Y方向の正側)に延びた部分に設けられている。言い換えると、第2ポート55Bは、ベース56のZ方向の負側端部において、Y方向の正側に延びた部分に設けられている。第2ポート55Bは、Z方向に延びる貫通孔である。
【0054】
第2ポート55Bは、図6に示すように、第2コネクタ21Bが差し込まれる部分の側面が、ハウジング側端部23Bの円錐台形状に対応した角度で傾斜している。具体的には、第2ポート55Bのハウジング側端部23Bが差し込まれる部分の側面が、ハウジング51の外部に向かうにつれてその径が大きくなる円錐面を有している。第2ポート55Bにおけるハウジング51の内側には、フラッシュチューブ55Cが設けられている。フラッシュチューブ55Cは、第2ポート55Bを介して供給される洗浄液を、所定の箇所に導く管状の部材である。以降において、第1ポート55Aのハウジング側端部23Aが差し込まれる側の側面、および第2ポート55Bのハウジング側端部23Bが差し込まれる側の側面を内周面とも記載する。またハウジング側端部23Aの第1ポート55Aに差し込まれる側の側面、およびハウジング側端部23Bの第2ポート55Bに差し込まれる側の側面を外周面とも記載する。
【0055】
第2ポート55Bにおけるフラッシュチューブ55Cの端面位置における直径である内周径55BDは、第2コネクタ21Bのハウジング側端部23Bにおける先端の直径である外周径23BDよりも小さい。以降の説明において、先端の外周径23BDから端面位置における内周径55BDを引いた値を第2締め代BCと表記する。図5に示すように、第2コネクタ21Bを第2ポート55Bに差し込むと、第2コネクタ21Bの先端は、フラッシュチューブ55Cの端面位置から離れた位置で止まる。
【0056】
上記において、第1締め代ACは負の値となり、第2締め代BCは正の値となる。言い換えると、第1締め代ACは第2締め代BCよりも小さい。本実施形態において、第1コネクタ21Aと第1ポート55Aとの嵌め合いを隙間ばめとも表記する。また、本実施形態において、第2コネクタ21Bと第2ポート55Bとの嵌め合いを締りばめとも表記する。なお、上記では第1コネクタ21Aと第1ポート55Aとの嵌め合いが隙間ばめである場合を例示して説明を行ったが、第1締め代ACが第2締め代BCよりも小さい条件を満たせば、第1コネクタ21Aと第1ポート55Aとの嵌め合いは、締りばめであってもよい。即ち、第1締め代ACが第2締め代BCよりも小さい条件を満たす範囲において、内周径55ADが外周径23ADよりも小さくてもよい。即ち、第2コネクタ21Bを、第2ポート55Bに対して差し込んだり、第2ポート55Bから抜き取ったりする場合と比較して、第1コネクタ21Aを第1ポート55Aに差し込んだり、第1ポート55Aから抜き取ったりすることを容易に行うことができれば、第1コネクタ21Aと第1ポート55Aとの嵌め合いが、締りばめであってもよい。
【0057】
第1保持部31Aは、図1に示すように、第1コネクタ21Aを保持する部材である。具体的には、第1保持部31Aは、図3の溝部24A,24Aの一方と係合し第1コネクタ21Aを保持する部材である。
【0058】
第1保持部31Aは、図7および図8に示すように、連結部32におけるZ軸の正側の端部に設けられている。第1保持部31Aは、溝部24Aに沿って延びる円弧状の形状を有している。図8に示すように第1保持部31Aは、Z-X平面上に配置された円弧状の形状を有している。
【0059】
なお、第1保持部31Aは、第1コネクタ21Aを保持できる形状であればよく、円弧状の形状以外の形状であってもよい。また、第1保持部31Aは、第1コネクタ21Aを容易に着脱することができる形状であってもよい。
【0060】
第2保持部31Bは、図1,2に示すように、第2コネクタ21Bを保持する部材である。具体的には、第2保持部31Bは、図3の溝部24B,24Bの一方に配置され第2コネクタ21Bを保持する部材である。
【0061】
第2保持部31Bは、図7および図8に示すように、連結部32におけるZ軸の負側の端部であって、Y軸の負側の端部に設けられている。本実施形態において第2保持部31Bは、溝部24Bに沿って延びる円弧状の形状を有している。図7に示すように第2保持部31Bは、X-Y平面上に配置された円弧状の形状を有している。
【0062】
なお、第2保持部31Bは、第2コネクタ21Bを保持できる形状であればよく、円弧状の形状以外の形状であってもよい。また、第2保持部31Bは、第2コネクタ21Bを容易に着脱することができる形状であってもよい。
【0063】
連結部32は、図7および図8に示すように、第1保持部31Aおよび第2保持部31Bとの間をつなぐ線状に形成された部分である。図7に示すように、連結部32は、Z軸に沿って直線状に延びる第1部分39Aと、Y軸に沿って負側へ直線状に延びる第2部分39Bとを有している。図7に示すように、第1部分33Aと第2部分33Bとの間に弾性部33が設けられている。言い換えると、連結部32が折れ曲がる位置に、弾性部33が設けられている。
【0064】
図8に示すように、第1部分39Aの端部には第1保持部31Aが配置されている。また、第2部分39Bの端部には第2保持部31Bが配置されている。
【0065】
円弧状に形成された第1保持部31Aにおける中心軸線は、第1保持部31Aに保持される第1コネクタ21Aから洗浄液が流出する方向である第1流出方向AFと平行に延びている。円弧状に形成された第2保持部31Bにおける中心軸線は、第2保持部31Bに保持される第2コネクタ21Bから洗浄液が流出する方向である第2流出方向BFと平行に延びている。
【0066】
第1流出方向AFと第2流出方向BFとは90度の角度で交差している。第1流出方向AFと第2流出方向BFとの交差角度は、45度を超えて90度以下の範囲の角度であってもよい。また、第1流出方向AFと第2流出方向BFとの交差角度は、90度よりも大きく180度以下の範囲の角度であってもよい。本実施形態において交差角度とは、第1流出方向AFと第2流出方向BFとがなす角度をいう。交差角度には、第1流出方向AFと第2流出方向BFとがなす角度が180度である場合も含む。
【0067】
弾性部33は線状の部材をらせん状に形成した部材である。弾性部33は、連結部32を形成する線状の部材をらせん状に巻いて形成した部材である。即ち、弾性部33と連結部32を形成する線状の部材とは連続している。
【0068】
なお弾性を有する線状の部材を図9に示すように折り曲げて連結部32を形成し、図7,8に示すような弾性部33が設けられていない構成としてもよい。また、第1保持部31Aと第2保持部31Bとの間を本開示の趣旨に即して適切につなぐことができれば、弾性を有さない線状の部材を折り曲げて連結部32を形成してもよい。
【0069】
また、図10に示すように、弾性部33はクランプ部35により覆われてもよい。クランプ部35は、互いに回動可能な2つの回動部36A,36Bと、2つの回動部36A,36Bから延びる棒状の開閉部37A,37Bとを備えている。
【0070】
開閉部37A,37Bを接近させると、回動部36A,36Bがそれぞれ回動する。回動部36A,36Bの回動は連結部32に伝達され、第1保持部31Aおよび第2保持部31Bは、それぞれ離間する方向に移動する。また、開閉部37A,37Bを離間させると、上記とは逆側に回動部36A,36Bがそれぞれ回動する。2つの回動部36A,36Bの回動は連結部32に伝達され、第1保持部31Aおよび第2保持部31Bはそれぞれ近接する方向に移動する。
【0071】
次に、上記構成の洗浄用器具10を用いた手術器具50の洗浄について説明する。手術器具50を洗浄する場合、図1に示すように、洗浄用器具10が手術器具50に取り付けられる。手術器具50のフラッシュポート(第1ポート55A)とメインフラッシュポート(第2ポート55B)(図4参照。)に、それぞれ第1コネクタ21Aおよび第2コネクタ21Bが差し込まれる。
【0072】
図5に示すように、第1コネクタ21AはY方向に沿って第1ポート55Aに差し込まれる。第1コネクタ21Aと第1ポート55Aとは隙間ばめであるため、第1コネクタ21Aのハウジング側端部23Aは、その先端が第1ポート55Aの底面に突き当たるまで差し込まれる。ハウジング側端部23Aの外周面と第1ポート55Aの内周面との間には隙間が残る。
【0073】
図6に示すように、第2コネクタ21BはZ方向に沿って第2ポート55Bに差し込まれる。第2コネクタ21Bと第2ポート55Bとは締りばめであるため、第2コネクタ21Bのハウジング側端部23Bは、その外周面が第2ポート55Bの内周面と当接するまで差し込まれる。ハウジング側端部23Bの先端と第2ポート55Bにおけるフラッシュチューブ55Cの端面との間には隙間が残る。
【0074】
洗浄用器具10が手術器具50に取り付けられると、本体40から洗浄液が供給される。本体40から供給される洗浄液の流量や、洗浄液の成分や、洗浄液の温度などは、予め定められたパターンに従って経時的に制御されてもよい。
【0075】
洗浄液は洗浄用器具10を介して手術器具50のハウジング51内に供給される。ハウジング51の内部は、供給された洗浄液にて洗浄される。ハウジング51内を洗浄した洗浄液は、ハウジング51の隙間から外部へ流出する。
【0076】
本体40から供給された洗浄液は、図11の実線矢印で示すように、第1チューブ11Aを介して第1コネクタ21AからY方向の負側に向かってハウジング51内に噴射される。洗浄液がハウジング51内に噴射されると、第1コネクタ21Aには、点線矢印で示すように、洗浄液の噴射の反力ARがY方向の正側に向かって働く。
【0077】
第1保持部31Aは、連結部32および第2保持部31Bと一体的に構成され、第2保持部31Bは第2コネクタ21Bを保持している。第2コネクタ21Bは、Z方向に向けて第2ポート55Bに差し込まれている。つまり、反力ARの向きと90度の角度をなす方向に差し込まれている。反力ARは、第2ポート55Bに差し込まれた第2コネクタ21Bにより受け止められる。そのため、第1コネクタ21Aは反力ARによって抜けることなく第1ポート55Aに差し込まれた状態で保たれる。
【0078】
また、図12に示すように、この反力ARによって弾性部33にねじりトルクATが加わる。弾性部33はねじりトルクATを受けて弾性変形し、弾性変形によりねじりトルクATと反対向きのねじりトルクRTを発生させる。
【0079】
ねじりトルクRTにより、第1保持部31Aには反力ARと反対向きの力AEが加わる。力AEは、第1保持部31Aと第2保持部31Bとを接近させる向きの力であり、第1保持部31Aをハウジング51に押し付ける向きの力である。
【0080】
第2コネクタ21Bにも洗浄液の噴射による反力が働く。第1コネクタ21Aの場合と同様に、第2コネクタ21Bに働く反力は、第1ポート55Aに差し込まれた第1コネクタ21Aにより受け止められる。そのため、第2コネクタ21Bは第2ポート55Bに差し込まれた状態で保たれる。また、ハウジング側端部23Bの外周面は、第2ポート55Bの内周面と接触しているため、ハウジング側端部23Bと第2ポート55Bとの間には、摩擦力が働く。第2コネクタ21Bは、摩擦力によっても、第2ポート55Bに差し込まれた状態が保たれる。
【0081】
上記の構成の洗浄用器具10によれば、第1コネクタ21Aにおける洗浄液の流出による反力が働く方向とは逆向きの方向である第1流出方向AFは、第2コネクタ21Bにおける洗浄液の流出による反力が働く方向とは逆向きの方向である第2流出方向BFと交差している。即ち、第1コネクタ21Aにおける洗浄液の流出による反力が働く方向は、第2コネクタ21Bの差し込み、および抜き取りがされる方向と交差している。このため、第1コネクタ21Aが洗浄液の流出による反力によって第1ポート55Aから抜き取りされる方向へ移動しようとすると、連結部32によってつながれた第2コネクタ21Bにより、その移動が制限される。即ち第1コネクタ21Aは、洗浄液の流出による反力が働いても第1ポート55Aから抜けにくい。
【0082】
また、第2コネクタ21Bにおける洗浄液の流出による反力が働く方向とは逆向きの方向である第2流出方向BFは、第1コネクタ21Aにおける洗浄液の流出による反力が働く方向とは逆向きの方向である第1流出方向AFと交差している。即ち、第2コネクタ21Bにおける洗浄液の流出による反力が働く方向は、第1コネクタ21Aの差し込み、および抜き取りがされる方向と交差している。このため、第2コネクタ21Bが反力によって第2ポート55Bから抜き取りされる方向へ移動しようとすると、連結部32によってつながれた第1コネクタ21Aにより移動が制限される。即ち第2コネクタ21Bは、洗浄液の流出による反力が働いても第2ポート55Bから抜けにくい。
【0083】
連結部32に設けられた弾性部33が弾性を有することにより、第1保持部31Aおよび第2保持部31Bに対して、互いが接近する方向に働く力を加えられる。言い換えると、第1コネクタ21Aおよび第2コネクタ21Bに対して、それぞれが接近する方向に働く力が加えられる。この接近する方向に働く力の少なくとも一部は、第1コネクタ21Aをハウジング51に押し付ける力となる。また、この接近する方向に働く力の少なくとも一部は、第2コネクタ21Bをハウジング51に押し付ける力となる。即ち、第1コネクタ21Aおよび第2コネクタ21Bが、第1ポート55A、および第2ポート55Bから抜けにくくなる。
【0084】
連結部32に弾性部33を設けることにより連結部32に弾性を持たせる必要がなくなり、連結部32を形成する材料や形状の選択範囲が広くなる。
【0085】
第1締め代ACは第2締め代BCよりも小さいため、第1コネクタ21Aを第1ポート55Aに差し込む際に必要な力は、第2コネクタ21Bを第2ポート55Bに差し込む際に必要な力よりも小さい。言い換えると、ハウジング側端部23Bの外周面と第2ポート55Bの内周面との間の摩擦力によって、第2コネクタ21Bを、第2ポート55Bに対して差し込む際には、第1コネクタ21Aを第1ポート55Aに差し込む際に必要な力よりも大きな力を要する。また、第2コネクタ21Bを、第2ポート55Bから抜き取る際には、第1コネクタ21Aを第1ポート55Aから抜き取る際よりも大きな力を要する。即ち、第2コネクタ21Bを、第2ポート55Bに対して差し込んだり、第2ポート55Bから抜き取ったりする場合と比較して、第1コネクタ21Aを第1ポート55Aに差し込んだり、第1ポート55Aから抜き取ったりすることを容易に行うことができる。また、第2コネクタ21Bが第2ポート55Bに差し込まれると、その摩擦力によって、第2ポート55Bに固定される。このため第2コネクタ21Bが、第1コネクタ21Aにおける反力による抜けを制限する力は、第1コネクタ21Aが、第2コネクタ21Bにおける反力による抜けを制限する力よりも大きい。
【0086】
第1コネクタ21Aを第1ポート55Aに対して差し込み抜き取り容易とすることにより、洗浄用器具10の取付け、取り外しが容易となる。その一方で、洗浄作業中に第1コネクタ21Aが反力により第1ポート55Aから抜けることを、第2コネクタ21Bにより制限することができる。
【0087】
第1流出方向AFと第2流出方向BFとの交差角度が、45度を超えて90度以下の範囲の角度である場合、第1コネクタ21Aにおける洗浄液の流出による反力のうち、第2流出方向BFと平行な方向の成分は、垂直方向の成分よりも小さくなる。
【0088】
反力の垂直方向の成分は第2コネクタ21Bに伝わり、第2コネクタ21Bが第2ポート55Bに押し付けられる力となる。第2コネクタ21Bと第2ポート55Bとの間に働く摩擦力が、反力の垂直方向の成分に起因して大きくなる。
【0089】
第1コネクタ21Aに働く反力における平行な方向の成分が相対的に小さいことにより、第1コネクタ21Aの移動が制限される。垂直方向の成分が相対的に大きいことにより、第2コネクタ21Bが第2ポート55Bから抜けにくくなり、第2コネクタ21Bは第1コネクタ21Aの移動を制限する。
【0090】
また、第2コネクタ21Bにおける洗浄液の流出による反力のうち、第1流出方向AFと平行な方向の成分は、垂直方向の成分よりも小さくなる。第2コネクタ21Bに働く反力における平行な方向の成分が相対的に小さいことにより、第1コネクタ21Aの移動が制限される。垂直方向の成分が相対的に大きいことにより、第2コネクタ21Bが第2ポート55Bから抜けにくくなり、第1コネクタ21Aは第2コネクタ21Bの移動を制限する。
【0091】
第1流出方向AFと第2流出方向BFとの交差角度が、90度よりも大きく180度以下の範囲の角度である場合、第1コネクタ21Aにおける洗浄液の流出による反力のうち、第2流出方向BFと平行な方向の成分は、第2コネクタ21Bが第2ポート55Bから抜ける方向と反対方向に働く。そのため、第2コネクタ21Bは、第1コネクタ21Aの移動を更に制限する。
【0092】
また、第2コネクタ21Bにおける洗浄液の流出による反力のうち、第1流出方向AFと平行な方向の成分は、第1コネクタ21Aが第1ポート55Aから抜ける方向と反対方向に働く。そのため、第1コネクタ21Aは、第2コネクタ21Bの移動を更に制限する。
【0093】
[第2実施形態]
上記第1実施形態では、第1コネクタ21Aおよび第2コネクタ21Bについて、洗浄用器具10が備える構成ではなく、洗浄用器具10とは独立した別の構成である。しかし、本開示は、これに限られない。
【0094】
本第2実施形態では、洗浄用器具10が第1コネクタ21Aおよび第2コネクタ21Bを備える。つまり、第1コネクタ21Aおよび第2コネクタ21Bは、洗浄用器具10に含まれる構成である。
【0095】
[他の実施形態]
上記第1実施形態では、第1チューブ11Aおよび第2チューブ11Bについて、洗浄用器具10が備える構成ではなく、洗浄用器具10とは独立した別の構成であることを前提に説明した。しかし、本開示はこれに限られない。例えば、洗浄用器具10が第1チューブ11Aおよび第2チューブ11Bを備えてもよい。つまり、第1チューブ11Aおよび第2チューブ11Bは、洗浄用器具10に含まれてもよい。
【0096】
上記実施形態における1つの構成要素が有する機能を複数の構成要素として分散させたり、複数の構成要素が有する機能を1つの構成要素に統合したりしてもよい。また、上記実施形態の構成の一部を省略してもよい。また、上記実施形態の構成の少なくとも一部を、他の実施形態の構成に対して付加、置換等してもよい。なお、請求の範囲に記載の文言から特定される技術思想に含まれるあらゆる態様が本開示の実施形態である。
図1
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