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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-21
(45)【発行日】2024-07-01
(54)【発明の名称】医療用装置
(51)【国際特許分類】
   A61B 34/37 20160101AFI20240624BHJP
【FI】
A61B34/37
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2024527834
(86)(22)【出願日】2022-09-05
(86)【国際出願番号】 JP2022033321
【審査請求日】2024-05-13
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】515075692
【氏名又は名称】リバーフィールド株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000578
【氏名又は名称】名古屋国際弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 真崇
【審査官】宮崎 敏長
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-98496(JP,A)
【文献】国際公開第2015/142933(WO,A1)
【文献】中国特許出願公開第113171179(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 34/30 - A61B 34/37
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
接続された医療機器のピボット動作点を、患者の体表上の所望箇所に配置する医療用装置であって、
ベース部と、
前記医療機器が接続される接続部と、
前記接続部を備えた先側部と、
前記ベース部と前記先側部のそれぞれに接続され、前記ピボット動作点を回転中心として、前記医療機器の姿勢を所望の姿勢に変更する支持部と、
を備え、
前記先側部は、前記ピボット動作点の配置時において、予め設定された方向に向かって光を照射する、第1光照射部を備えている、医療用装置。
【請求項2】
前記第1光照射部は、
第1光源部と、
第2光源部と、
を備え、
前記第1光源部と前記第2光源部は、前記第1光源部の第1光軸と前記第2光源部の第2光軸が、前記第1光源部および前記第2光源部からの所定の相対位置にて交差するように配置されている、
請求項1に記載の医療用装置。
【請求項3】
前記第1光源部と前記第2光源部は、
前記ベース部から前記先側部に向かう向きと交わる方向に並んで配置されている、
請求項2に記載の医療用装置。
【請求項4】
前記第1光源部および前記第2光源部の少なくとも一つは、投影された光の形状が十字形状となるように構成されている、
請求項2に記載の医療用装置。
【請求項5】
前記ベース部を搭載する移動可能なカート部を備え、
前記ベース部は前記カート部が配置される床に向かって光を照射する第2光照射部を備えている請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の医療用装置。
【請求項6】
前記支持部は、
前記第1光照射部と前記第2光照射部との間の距離が、所定の距離となるように、前記先側部の位置を変更する、
請求項5に記載の医療用装置。
【請求項7】
前記第1光照射部は、赤色の補色の光、及び/又は、赤色の反対色の光を照射する、
請求項1又は請求項2に記載の医療用装置。
【請求項8】
前記第2光照射部は、緑色の補色の光、及び/又は緑色の反対色の光を照射する、
請求項5に記載の医療用装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、接続された医療機器の所定の部分を、患者の所望箇所に配置するとともに、当該医療機器を所望の姿勢で支持する医療用装置に関する。
【背景技術】
【0002】
マスタースレーブ型の手術用ロボットシステムを用いた腹腔鏡外科手術が普及している。一般的には、手術用ロボットシステムは、患者の近傍に配置される患者側ユニットと、手術を行う術者が操作を行う操作ユニットと、を備えている。
【0003】
この手術用ロボットシステムを用いた腹腔鏡外科手術では、内視鏡や鉗子など、細長いシャフト状の形状を有する医療機器が、患者側ユニットのマニピュレータアームに接続されて使用される。接続された医療機器の先側の部分は、患者の腹壁を貫通して設けられたトロカールを介して腹腔内に挿入される。
【0004】
術者が操作ユニットを操作して、患者側ユニットのマニピュレータアームや、マニピュレータアームに接続された医療機器に、操作に対応した動作を行わせることで、患者の対象部位に対して所望の処置が行われる。術者による操作に従って、マニピュレータアームがその姿勢を変更することによって、マニピュレータアーム接続された医療機器の位置や、患者に対する角度などが変更される。
【0005】
マニピュレータアームに接続された医療機器は、トロカールを介して患者の腹腔内に挿入されているため、医療機器の移動することのできる範囲は、所定の範囲に制限される。また、医療機器の患者に対する角度も所定の範囲に制限される。
【0006】
このような制限は、例えば、患者に設けられたトロカールの配置位置に対する医療機器の位置や、患者に対するマニピュレータアームの位置や、マニピュレータアームの可動範囲や、などに起因する。
【0007】
このため、術前に、マニピュレータアームや、マニピュレータアームに接続されている医療機器や、トロカールの位置合わせを適切に行うことが必要となる。即ち、手術用ロボットシステムによる手術を開始する前に、患者に配置されたトロカールの配置位置に対する医療機器の相対的な位置や、患者に対するマニピュレータアームの相対的な位置などが適切な位置の関係となるように、それぞれを調節する必要がある。
【0008】
一般的には、手術用ロボットシステムを用いた腹腔鏡外科手術において、位置合わせ用の光源を用いて、上記の位置合わせをすることが行われている。例えば、位置合わせ用のレーザー光源を用いて、トロカールを配置しようとする箇所にレーザー光などの光を照射して、患者と手術用ロボットシステムとの位置合わせをすることが行われている。
【0009】
例えば特許文献1には、内視鏡や鉗子などの術具を所望の姿勢で支持するマニピュレータアームと、術具が挿入されるトロカールとの位置合わせを行うための位置合わせ装置を備えた医療用マニピュレータシステムが開示されている。この医療用マニピュレータシステムでは、アーム部材の先側に備えられたリンク機構が作動することで、医療用マニピュレータシステムに接続された術具の位置や、患者に対する術具の角度が変更される。位置合わせ装置は、このリンク機構の不動点と、トロカールの位置との位置合わせを行う際に用いられる。位置合わせ装置には、リンク機構の不動点に対して光を照射する光源部(照射部)が備えられている。位置合わせを行う作業者は、光源部から照射された光を目安に、リンク機構の不動点と、トロカールの位置との位置合わせを行う。
【0010】
また特許文献2には、術前の準備を誘導するための誘導セットアップシステムを備えた、遠隔操作医療システム(手術用ロボットシステム)が開示されている。この特許文献2には、この誘導セットアップシステムに、レーザー光などの光を利用することが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【文献】特開2019-98496号公報
【文献】特許6725424号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
上記の従来の技術では、術具から離れた位置に光源部が設けられているため、効率的で正確な位置合わせを行うことが難しい場合があった。例えば、特許文献1や特許文献2に記載の技術では、光源部が、光が投影される位置合わせの対象箇所から離れた位置に配置されているため、リンク機構の一部や、作業者の体の一部などが、位置合わせの対象箇所と光源部との間に入ってしまい、光源部から照射された光を遮ってしまう場合があった。また、特許文献1に記載の技術では、術具から離れたアーム部材の先側の部分に光源部が備えられているため、アーム部材がわずかに動いた場合でも、位置合わせの対象箇所に対する光の照射位置が、大きくずれてしまうことがあった。
【0013】
本開示は、医療機器と患者との位置合わせを、効率的で正確に行うことが可能な医療用装置の一例を開示する。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本開示の医療用装置は、接続された医療機器のピボット動作点を、患者の体表上の所望箇所に配置する医療用装置であって、ベース部と、前記医療機器が接続される接続部と、前記接続部を備えた先側部と、前記ベース部と前記先側部とのそれぞれに接続され、前記ピボット動作点を回転中心として、前記医療機器の姿勢を所望の姿勢に変更する支持部と、を備え、前記先側部は、前記ピボット動作点の配置時において、予め設定された方向に向かって光を照射する、第1光照射部を備えている。
【0015】
本開示の医療用装置によれば、接続された医療用装置のピボット動作点を患者の体表上の所望箇所に配置する際に、第1光照射部から、予め設定された方向に向かって光が照射される。このため、医療機器の姿勢を変更する際の回転中心となるピボット動作点が、患者の所望箇所に配置されるようにする調整作業が行い易い。以降において、医療機器の所定の部分が、患者の所望箇所に配置されるように、医療用装置の姿勢や位置を調節したり、患者の位置などを調節したりすることを、「患者と医療用装置の位置合わせ」あるいは単に「位置合わせ」とも記載する。本開示の医療用装置によれば、第1光照射部からの光の投影位置を目安に位置合わせを行うことができるため、患者と医療用装置との位置合わせを行う手術の補助者など(以降において作業者とも記載する。)が、位置合わせの作業を容易に行うことができる。
【0016】
また第1光照射部は、医療機器が接続される接続部が備えられている先側部に配置されているため、位置合わせの作業が行い易い。即ち、患者の所望箇所と第1光照射部との間の距離が短いため、位置合わせの作業が行い易い。また、位置合わせを行う際に、その作業を行う作業者の体の一部や、支持部の一部が、第1光照射部と患者との間に入ってしまうことが起こりにくい。即ち、位置合わせの作業中に、作業者の体の一部や、支持部の一部が、第1光照射部からの光を遮ってしまうことが起こりにくい。このため、作業者が、患者と医療用装置との位置合わせの作業を、効率的に行うことができる。
【0017】
上記においては、前記第1光照射部は、第1光源部と、第2光源部と、を備え、前記第1光源部と前記第2光源部とは、前記第1光源部の第1光軸と、前記第2光源部の第2光軸とが、前記第1光源部および前記第2光源部からの所定の相対位置にて交差するように配置されていることが好ましい。
【0018】
このようにすることにより、患者と医療用装置との位置合わせを、正確に行うことができる。即ち、第1光源部からの光による投影像と、第2光源部からの光による投影像とが、重なって投影される箇所に、患者の所望箇所が配置されるようにすることで、第1光照射部から照射される光が向かう方向(光の照射方向)の位置合わせを正確に行うことができる。例えばピボット動作点にて第1光軸と、第2光軸とが交差するように第1光源部と、第2光源部とを配置すれば、作業者は、第1光軸と、第2光軸とが交差する位置を目安にして、ピボット動作点を患者の所望箇所に正確に配置することができる。換言すれば、第1光照射部光の照射方向における、患者の所望箇所と医療機器のピボット動作点の位置合わせを正確に行うことができる。
【0019】
上記においては、前記第1光源部と前記第2光源部とは、前記ベース部から前記先側部に向かう向きと交わる方向に並んで配置されていることが好ましい。
【0020】
このようにすることにより、先側部を、ベース部から離れる方向に移動したり、ベース部に近づく方向に移動したりして行う位置合わせの作業が行い易い。即ち、作業者が、先側部を、ベース部から離れる方向に移動したり、ベース部に近づける方向に移動したりして位置合わせを行う際に、第1光源部からの光と、第2光源部からの光とが、重なって投影される箇所に、患者の所望箇所が配置されるように位置合わせを行う作業を容易に行うことができる。
【0021】
上記においては、前記第1光源部および前記第2光源部の少なくとも一つは、投影された光の形状が十字形状となるように構成されていることが好ましい。
【0022】
このようにすることにより、作業者が、第1光軸と、第2光軸とが交差する箇所が認識しやすい。換言すれば、作業者は、第1光軸と、第2光軸とが交差する箇所に、患者の所望箇所が配置されるようにする位置合わせの作業を容易に行うことができる。例えば第1光源部からの光の投影形状が十字形状となるように構成された場合において、作業者は、第1光源部からの光による十字形状の投影像の中心の位置と、第2光源部からの光の投影像の中心の位置とを比較して、位置ずれの程度やその方向を把握することができる。例えば第2光源部からの光の投影形状が十字形状となるように構成された場合において、作業者は、第2光源部からの光による十字形状の投影像の中心の位置と、第1光源部からの光の投影像の中心の位置とを比較して、位置ずれの程度やその方向を把握することができる。このため、作業者は、それぞれの光の投影像の中心が重なるようにすることで、正確な位置合わせを容易に行うことができる。第1光源部からの光の投影形状と、第2光源部からの光の投影形状とが、それぞれ十字形状となるように構成された場合において、作業者は、第1光源部による十字形状の投影像の中心と、第2光源部による十字形状の投影像の中心とが、同じ位置に重なるようにすることで、正確な位置合わせを、更に容易に行うことができる。
【0023】
上記においては、前記ベース部を搭載する移動可能なカート部を備え、前記ベース部は前記カート部が配置される床に向かって光を照射する第2光照射部を備えていることが好ましい。
【0024】
このようにすることで、第2光照射部から照射された光は、カート部が配置されている床に投影される。作業者は、この床に投影された光の位置を確認することで、患者の位置と、医療用装置との位置の関係を、容易に把握することができる。また、作業者は、カート部を移動して、患者に対する医療用装置の位置を調節することができる。
【0025】
上記においては、前記支持部は、前記第1光照射部と前記第2光照射部との間の距離が、所定の距離となるように、前記先側部の位置を変更することが好ましい。
【0026】
このようにすることにより、第1光照射部と第2光照射部との間の距離が一定に保たれる。言い換えると、先側部とベース部との間の距離が、所定の距離となるように、支持部が、先側部の位置を変更する。先側部とベース部との間の距離が、所定の距離に保たれることによって、支持部の可動範囲が制限されてしまうことが抑制される。例えば、先側部とベース部との間の距離が短いことによって、支持部の可動範囲が不要に制限されてしまうことなどが抑制される。
【0027】
上記においては、第1光照射部は、赤色の補色の光、及び/又は、赤色の反対色の光を照射することが好ましい。
【0028】
このようにすることにより、第1光照射部からの光が、患者の血液によって覆われた患者の部分に投影されても、作業者は、投影された光の位置を容易に識別することができる。即ち、患者の所望部位が血液によって覆われていても、作業者は、患者と医療用装置との位置合わせの作業を、正確に行うことができる。また、患者と医療用装置との位置合わせの作業を容易に行うことができる。
【0029】
上記においては、前記第2光照射部は、緑色の補色の光、及び/又は緑色の反対色の光を照射することが好ましい。
【0030】
一般的には、手術室の床は、緑色に着色されていたり、緑色の床材が用いられていたりすることが多い。このため、第2光照射部が、緑色の補色の光、及び/又は緑色の反対色の光を照射すると、作業者は、その緑色の床に投影された光を認識しやすい。即ち、作業者は、患者と医療用装置の位置合わせの作業を正確に行うことができる。また、患者と医療用装置の位置合わせの作業を容易に行うことができる。
【発明の効果】
【0031】
本開示によれば、医療機器と患者の位置合わせを、正確、かつ容易に行うことが可能な医療用装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
図1】本開示の医療用装置を説明する外観図である。
図2】本開示の医療用装置の第1光照射部を説明する図である。
図3】本開示の医療用装置の第2光照射部を説明する図である。
図4】本開示の医療用装置に医療機器が接続された状態を説明する図である。
図5】本開示の第1光源部から照射された光と、第2光源部から照射された光との関係を説明する図である。
図6】位置合わせが適切に行われている状態を説明する図である。
図7】位置合わせが適切に行われていない状態の一例を説明する図である。
図8】位置合わせが適切に行われていない他の状態の一例を説明する図である。
図9】本開示の第1光照射部と第2光照射部との関係を説明する図である。
【符号の説明】
【0033】
1…手術用ロボットシステム、2…操作ユニット、3…制御ユニット、10…患者側ユニット(医療用装置)、12a,12b,12c…先側部、13a,13b,13c…マニピュレータアーム、14…ベース部、15…ベース支持部、16…カート部、17a,17b,17c…床側面、21a,21b,21c…ジョイント、30a…第1光照射部、31a…第1光源部、31b…第2光源部、33a…第1光軸、33b…第2光軸、34…交差箇所、35a,35b…投影形状、41a…硬性内視鏡(医療機器)、41b,41c…手術器具(医療機器)、42a,42b,42c…接続部、45…ピボット動作点、50…患者、51…腹腔、52…トロカール、53…貫通穴、54…所望箇所、60…第2光照射部、61…下側面、80…床
【発明を実施するための形態】
【0034】
本開示の一実施形態に係る医療用装置について、図1から図9を参照しながら説明する。なお、各図に付された方向を示す矢印及び斜線等は、各図相互の関係及び各部材又は部位の形状を理解し易くするために記載されたものである。したがって、本開示に示された技術内容は、各図に付された方向に限定されない。斜線が付された図は、必ずしも断面図を示すものではない。
【0035】
本開示の医療用装置は、マスタースレーブ型の手術用ロボットシステム1の、スレーブ装置として用いられるものである。本実施形態の手術用ロボットシステム1は、患者の近傍に配置され、患者に対して所望の処置を行う患者側ユニット10と、手術を行う術者が操作する操作ユニット2と、制御ユニット3と、を備えている。以降において患者側ユニット10を、医療用装置10とも記載する。
【0036】
操作ユニット2は、手術を行う術者が操作を行う操作装置である。制御ユニット3は、主に操作ユニット2に対して行われた操作に従って、医療用装置10の制御を行う部分である。制御ユニット3は、操作ユニット2に対して行われた操作に従った操作信号を出力して、マニピュレータアーム13a,13b,13cの制御を行う。
【0037】
制御ユニット3は、医療用装置10の作動モードを切り替える機能も備えている。医療用装置10の作動モードとしては、操作信号に従った動作を行う操作モードと、患者の近傍にいる補助者によってセッティングが行われるセッティングモードと、がある。医療用装置10は、セッティングモードに切り替えられると、補助者(作業者)が、マニピュレータアーム13a,13b,13cの配置位置を手動で変更することができるように制御される。即ち、補助者が、マニピュレータアーム13a,13b,13cの所定の部分に力を加えることで、操作ユニット2の操作を行うことなく、マニピュレータアーム13a,13b,13cの配置位置を変更することができるように制御される。
【0038】
図1では、説明のために、制御ユニット3を独立したユニットとして記載しているが、操作ユニット2が、制御ユニット3の機能を備えた構成としてもよい。あるいは、医療用装置10が、制御ユニット3の機能を備えた構成としてもよい。あるいは、医療用装置10と操作ユニット2のそれぞれが、制御ユニット3の機能を備えた構成としてもよい。
【0039】
1.構成の説明
医療用装置10は、図1に示されているように、マニピュレータアーム13a,13b,13cと、ベース部14と、先側部12a,12b,12cと、接続部42a,42b,42cと、第1光照射部30aと、を備えている。更に医療用装置10は、カート部16と、第2光照射部60と、を備えている。以降の説明において、マニピュレータアーム13a,13b,13cのベース部14の側を元側とも記載し、その反対の側を先側とも記載する。医療用装置10は、2つ以下のマニピュレータアームを備えてもよい。あるいは、医療用装置10は、4つ以上のマニピュレータアームを備えてもよい。
【0040】
マニピュレータアーム13aは、図1に示されているように、柱状のアーム部材22a,24aと、ジョイント部材21a,23a,25aとから構成された、多関節アームである。アーム部材22a,24aは、その間に配置されたジョイント部材23aによって、互いに回転可能に接続されている。アーム部材24aの元側は、ジョイント部材25aによって、ベース部14に対して回転可能に接続されている。アーム部材22aの先側には、先側部12aが、ジョイント部材21aを介してアーム部材22aに対して回転可能に接続されている。
【0041】
ジョイント部材21a,23a,25aには、図示されていないアクチュエータが、それぞれ備えられている。マニピュレータアーム13aは、制御ユニット3からの操作信号に従って、それぞれのアクチュエータが作動して、ベース部14に対するアーム部材22a,24aの位置が変更される。即ちマニピュレータアーム13aは、制御ユニット3からの操作信号に従ってそれぞれのアクチュエータが作動して、その姿勢が変更される。即ち、アーム部材22a,24aの配置位置や、アーム部材22aとアーム部材24aとがなす角度や、ベース部14や先側部12aに対するアーム部材22a,24aの角度などが変更される。制御ユニット3からの操作信号に従ってマニピュレータアーム13aの姿勢が変更されることで、先側部12aが所望の方向に移動する。
【0042】
マニピュレータアーム13b,13cは、それぞれマニピュレータアーム13aと同様に構成されている。マニピュレータアーム13bは、図1に示されているように、柱状のアーム部材22b,24bと、ジョイント部材21b,23b,25bとから構成されている。マニピュレータアーム13bの元側は、ジョイント部材25bによってベース部14に対して回転可能に接続されている。また、マニピュレータアーム13bの先側には、先側部12bが、ジョイント部材21bを介してアーム部材22bに対して回転可能に接続されている。
【0043】
ジョイント部材21b,23b,25bには、図示されていないアクチュエータが、それぞれ備えられている。マニピュレータアーム13bは、マニピュレータアーム13aと同様に、制御ユニット3からの操作信号に従って各アクチュエータが作動して、その姿勢が変更される。
【0044】
マニピュレータアーム13cは、図1に示されているように、柱状のアーム部材22c,24cと、ジョイント部材21c,23c,25cとから構成されている。マニピュレータアーム13cの元側は、ジョイント部材25cによってベース部14に対して回転可能に接続されている。また、マニピュレータアーム13cの先側には、先側部12cが、ジョイント部材21cを介してアーム部材22cに対して回転可能に接続されている。
【0045】
ジョイント部材21c,23c,25cには、図示されていないアクチュエータが、それぞれ備えられている。マニピュレータアーム13cは、マニピュレータアーム13aと同様に、制御ユニット3からの操作信号に従って各アクチュエータが作動して、その姿勢が変更される。マニピュレータアーム13a,13b,13cが、支持部の一例である。マニピュレータアーム13a,13b,13cの構成は、操作信号に従った所望の作動を行うものであれば、上記の構成に限定されない。
【0046】
先側部12aには、接続部42aが備えられている。接続部42aには、図4に示されているように、シャフト状の形状を有する医療機器41aが接続される。接続部42aに接続される医療機器41aとしては、硬性内視鏡が例示される。接続部42aには、硬性内視鏡以外の、シャフト状の形状を有する医療機器が接続されてもよい。以降において医療機器41aを、硬性内視鏡41aとも記載する。接続部42aには、硬性内視鏡41aの長手方向と、先側部12aの床側面17aとがなす角度が、所定の角度となるようにして、硬性内視鏡41aが接続される。床側面17aは、使用時に、床80の側を向く先側部12aの部分(面)である(図1図2参照。)。
【0047】
先側部12bには、接続部42bが備えられている。接続部42bは、医療機器41bが接続される接続アダプタである。接続部42bには、シャフト状の部材の先側にエンドエフェクタが備えられた器具が接続される。医療機器41bとしては、シャフト状の部材の先側に把持部が備えられた把持鉗子が例示される。以降において医療機器41bを手術器具41bとも記載する。接続部42bには、手術器具41bのシャフト状の部材が延びる方向と、床側面17bとのなす角度が所定の角度となるようにして手術器具41bが接続される。床側面17bは、使用時に床80の側を向く先側部12bの部分(面)である(図1参照。)。
【0048】
先側部12cには、接続部42cが備えられている。接続部42cは、医療機器41cが接続される接続アダプタである。接続部42cには、シャフト状の部材の先側にエンドエフェクタが備えられた器具が接続される。医療機器41cとしては、シャフト状の部材の先側に把持部が備えられた把持鉗子が例示される。以降において、医療機器41cを手術器具41cとも記載する。接続部42cには、手術器具41cのシャフト状の部材が延びる方向と、床側面17cのなす角度が、所定の角度となるようにして手術器具41cが接続される。床側面17cは、使用時に床80の側を向く先側部12cの部分(面)である(図1参照。)。
【0049】
硬性内視鏡41a,手術器具41b,41cが、医療機器の一例である。接続部42b,42cに接続される医療機器としては、把持鉗子の他、腹腔鏡手術にて一般に用いられる電気メスや、手術用ハサミや、ステープラーなどのエンドエフェクタがシャフト状の部材の先側に備えられた医療機器などが例示される。
【0050】
マニピュレータアーム13aは、操作信号に従って、接続部42aに接続された硬性内視鏡41aの所定の部分が、患者50の所望の箇所に配置された状態で、硬性内視鏡41aの姿勢が所望の姿勢となるように作動する。具体的説明を行うと、マニピュレータアーム13aは、操作信号に従って、硬性内視鏡41aの所定の部分が、患者50の体表上の所望箇所に配置するように作動する。以降において、硬性内視鏡41aの上記の所定の部分を、ピボット動作点45とも記載する。ここで体表上の所望箇所は、患者50の皮膚などの患者50の体表面上の部分の他、患者50の皮膚に穿孔して設けられたトロカール52の貫通穴53の内側の領域も含む。即ち、体表上の所望箇所には、患者50の設けられたトロカール52の貫通穴53の内側の、体表面と対応する領域や、体表面とよりもわずかに体内側にずれた領域を含む。
【0051】
更にマニピュレータアーム13aは、操作信号に従って、ピボット動作点45が患者50の所望箇所に配置された硬性内視鏡41aの、患者50に対する姿勢が、所望の姿勢となるように作動する。
【0052】
即ちマニピュレータアーム13aは、ピボット動作点45を患者50の所望箇所に配置するとともに、その患者50の所望箇所に配置されたピボット動作点45を回転中心として、硬性内視鏡41aの姿勢を操作信号に従って変更するように制御が行われる。換言すれば、マニピュレータアーム13aは、ピボット動作点45が患者50の所望箇所に配置された状態で、ピボット動作点45を回転中心として硬性内視鏡41aを回転させ、患者50に対する硬性内視鏡41aの相対的な角度が、操作信号に従った所望の角度となるように制御が行われる。
【0053】
ここで、ピボット動作点45は、図4に示されているように、硬性内視鏡41aが使用される際に、患者50の腹部に配置されるトロカール52の貫通穴53の内側に配置される硬性内視鏡41aの部分である。硬性内視鏡41aにおけるピボット動作点45の相対的な位置は、その長さや用途などの硬性内視鏡41aに関する情報などに基づいて予め設定されている。ピボット動作点45は、図4に示されているように、硬性内視鏡41aの接続部42aに接続される部分から、先側に所定距離Dだけ離れた硬性内視鏡41a上の位置に設定されている。ピボット動作点45は、接続部42aや先側部12a等との相対的な位置の関係が特定できれば、他の部分を基準としてその相対的な位置が設定されていてもよい。
【0054】
以降において、硬性内視鏡41aが接続部42aに接続された際の、接続部42aに対するピボット動作点45の相対的な配置位置を、配置位置P1とも記載する。換言すれば、硬性内視鏡41aが接続部42aに接続された際に、ピボット動作点45が配置される位置の、接続部42aに対する相対的な配置位置を、配置位置P1とも記載する。
【0055】
配置位置P1は、図4に示されているように、軸線43上の、接続部42aから患者50に向かう方向に距離Dだけ離れた位置に予め設定されている。ここで軸線43は、接続部42aを通る軸線であって、接続部42aに接続された硬性内視鏡41aの長手方向と直交する向きの断面の中心を通り、硬性内視鏡41aの長手方向に延びる軸線である(図4,5参照。)。
【0056】
マニピュレータアーム13bも同様に、手術器具41bのシャフト状の部材上の所定の部分を患者の所望箇所に配置するとともに、その患者の所望箇所に配置された所定の部分を回転中心として、手術器具41bの姿勢を変更するように制御が行われる。マニピュレータアーム13cも同様に、手術器具41cのシャフト状の部材上の所定の部分を患者の所望箇所に配置するとともに、その患者の所望箇所に配置された所定の部分を回転中心として、手術器具41cの姿勢を変更するように制御が行われる。
【0057】
ベース部14は、図1に示されているように、カート部16から延出する柱状の形状を有したベース支持部15に接続されている。ベース部14は、ベース支持部15に対して、軸線60Aを中心に回転自在に、ベース支持部15に接続されている。図1図9において破線で示されているように、軸線60Aは、床80に対して直交する方向に延びる軸線である。
【0058】
カート部16は、ベース支持部15を介して、ベース部14と、マニピュレータアーム13a,13b,13cと、を支持する部分である。作業者は、所定の操作を行ってカート部16を移動することができる。即ち、カート部16を移動させることで、医療用装置10の位置を変更することができる。
【0059】
図2に示されているように、先側部12aの床側面17aには、第1光照射部30aが備えられている。第1光照射部30aは、ピボット動作点45を患者50の所望箇所54に配置する際に、予め設定された方向に向かって光を照射する。この予め設定された方向には、第1光照射部30aから、接続部42aに接続された硬性内視鏡41aのピボット動作点45に向かう向きが含まれる。第1光照射部30aは、配置位置P1に向かって光を照射する。即ち、第1光照射部30aは、ピボット動作点45を患者50の所望箇所54に配置する際に、配置位置P1に向かって光を照射する。そして、ピボット動作点45が、所望箇所54に配置された際には、患者50の所望箇所に配置されたピボット動作点45(配置位置P1)に向かって光を照射する。
【0060】
第1光照射部30aは、第1光源部31aと、第2光源部31bと、から構成されている。第1光源部31aと、第2光源部31bと、は、ベース部14から先側部12aに向かう方向と交わる方向に並んで配置されている。ベース部14から先側部12aに向かう方向は、図2においてXを付した矢印にて示されている。
【0061】
第1光源部31aと、第2光源部31bとは、第1光源部31aの第1光軸33aと、第2光源部31bの第2光軸33bとが、第1光源部31aおよび第2光源部31bからの所定の相対位置にて交差するように配置されている。言い換えると、第1光源部31aと第2光源部31bとは、第1光軸33aと第2光軸33bとが、第1光源部31aと第2光源部31bとから、所定の距離だけ相対的に離れた位置で交差するように配置されている。
【0062】
第1光源部31aと第2光源部31bとは、図5に示されているように、第1光軸33aと、第2光軸33bとが、接続部42aから、患者50の側に距離Dだけ離れた軸線43上の位置にて交差するようにそれぞれが配置されている。換言すれば、第1光源部31aと第2光源部31bとは、図5に示されているように、第1光軸33aと、第2光軸33bとが、配置位置P1にて交差するようにそれぞれが配置されている。
【0063】
即ち、第1光源部31aと第2光源部31bとは、接続部42aに硬性内視鏡41aが接続された状態において、第1光軸33aと第2光軸33bとが、ピボット動作点45が配置される位置で交差するようにそれぞれが配置されている。
【0064】
第1光照射部30aは、血液の色である赤色と補色の関係にある色を有するレーザー光を照射する。即ち、第1光源部31aと、第2光源部31bとは、それぞれ、赤色と補色の関係にある色のレーザー光を照射する。ここで、補色とは、色度図において、白色点を通る直線上で、白色点を間に相互に向かい合う点にある色のことである。あるいは、色相環で、正反対に位置する関係の色のことである。第1光源部31aは、赤色と補色の関係にある青緑色のレーザー光を照射する。第2光源部31bも同様に、赤色と補色の関係にある青緑色のレーザー光を照射する。第1光源部31aと、第2光源部31bとは、血液の色と補色の関係にある色であれば、それぞれ青緑色以外の色のレーザー光を照射するものであってもよい。あるいは、血液の色と補色の関係にある色の、レーザー光以外の光を照射するものであってもよい。第1光源部31aは、第2光源部31bと同じ色の光を照射するものであってもよい。第1光源部31aは、血液の色と補色の関係にある色であれば、第2光源部31bと異なる色の光を照射するものであってもよい。
【0065】
第1光源部31aと、第2光源部31bとは、それぞれ、血液の色と反対色の関係にある色の光を照射するものであってもよい。ここで反対色とは、色相、明度、彩度において、特定の色と対立する性質を持つ色をいう。例えば第1光源部31aと、第2光源部31bは、青緑や、黄緑や、青や、青紫など、赤色の反対色として知られている色のレーザー光を照射するものであってもよい。あるいは、血液の色と反対色のレーザー光以外の光を照射するものであってもよい。第1光源部31aは、第2光源部31bと同じ色の光を照射するものであってもよい。あるいは第1光源部31aは、血液の色と反対色の関係にある色の光であれば、第2光源部31bと異なる色の光を照射するものであってもよい。
【0066】
第1光源部31aは、投影された光の形状が十字形状となるように構成されている。以降において第1光源部31aからの光の投影像の形状を、投影形状35aとも記載する。第2光源部31bは、投影された光の形状が十字形状となるように構成されている。以降において、第2光源部31bからの光の投影像の形状を、投影形状35bとも記載する。作業者が、第1光源部31aと、第2光源部31bは、第1光軸33aと、第2光軸33bとが交差する箇所を認識することができれば、投影形状35aと、投影形状35bとのいずれか一方が、十字形状以外の形状となるように構成されていてもよい。以降において、第1光軸33aと、第2光軸33bとが交差する箇所を交差箇所44とも記載する。
【0067】
例えば投影形状35aが十字形状となるように第1光源部31aが構成され、投影形状35bが、円形などの十字形状以外の形状となるように、第2光源部31bが構成されていてもよい。あるいは、例えば投影形状35bが十字形状となるように第2光源部31bが構成され、投影形状35aが、円形などの十字形状以外の形状となるように、第1光源部31aが構成されていてもよい。第1光源部31aと、第2光源部31bは、作業者が交差箇所44を認識することができる形状であれば、投影形状35aと、投影形状35bとのそれぞれが、十字形状以外の形状となるように構成されていてもよい。
【0068】
ベース部14の床80の側を向く下側面61には、第2光照射部60が備えられている(図1図3参照。)。第2光照射部60は、床80に向かって赤紫色のレーザー光を照射する部分である。ここで赤紫は、緑色と補色の関係にある色である。一般的に手術室では、その床に緑色の床材が用いられていたり、緑色に塗られていたりする場合が多い。即ち第2光照射部60は、緑色の床80と補色の関係にある赤紫色のレーザー光を照射する。第2光照射部60は、緑色と補色の関係のある色として知られている他の色のレーザー光を照射する部分であってもよい。あるいは、緑色と補色の関係のある色として知られている色を有する、レーザー光以外の光を照射するものであってもよい。
【0069】
あるいは第2光照射部60は、緑色と反対色の関係のある色として知られる色のレーザー光を照射する部分であってもよい。例えば第2光照射部60は、赤紫や赤色などの光を照射する部分であってもよい。あるいは、第2光照射部60は、緑色と反対色の関係のある色として知られる色の、レーザー光以外の光を照射するものであってもよい。
【0070】
第2光照射部60は、ベース部14の回転中心を通り、床80に対して直交する軸線60A上に備えられている(図1図3参照。)。換言すれば、第2光照射部60は、ベース部14の回転中心の真下に配置されている。
【0071】
制御ユニット3は、マニピュレータアーム13aの可動範囲を適切に確保できるようにするために、第2光照射部60と第1光照射部30aとの間の水平方向の距離が、所定の距離となるようにマニピュレータアーム13aの制御を行う。具体的には、制御ユニット3は、図9に示すように、軸線60Aと軸線37との間の距離が予め設定された所定距離dとなるように先側部12aの位置が変更されるように制御を行う。軸線37は、第1光源部31aと第2光源部31bの間をとおり、床80に対して直交する方向に延びる軸線である。
【0072】
即ち制御ユニット3は、第2光照射部60と第1光照射部30aとの間の水平方向の距離を、所定距離dで維持した状態で、操作信号に従ってマニピュレータアーム13aが作動するように制御を行う。
【0073】
2.セッティング方法の説明
以降において、手術用ロボットシステム1を用いた腹腔鏡外科手術を開始する前に行われる、医療用装置10のセッティングについて説明を行う。具体的には、硬性内視鏡41aが接続されるマニピュレータアーム13aに対して行われるセッティングについて説明を行う。
【0074】
医療用装置10のセッティングを行う場合には、はじめに接続部42aに硬性内視鏡41aが接続されていない状態で、患者50と医療用装置10の位置合わせを行う。作業者は、カート部16に対して所定の操作を行って医療用装置10を移動して、患者50の近傍に配置する。医療用装置10を患者50の近傍に配置する際には、作業者は、床80に投影されている第2光照射部60による光の投影位置を確認しながら、医療用装置10を所望の位置に配置する。
【0075】
例えば、床80に投影されている第2光照射部60からの光の投影位置と、患者50が搭載されている、図示されていない患者寝台との間の距離を確認しながら、患者50と医療用装置10との間が所望の距離となるように、カート部16を移動させる。あるいは、床80に、位置決め用のマークなどが予め設けられている場合には、第2光照射部60からの光がそのマークに投影されるようにして、カート部16を移動させる。前述のように、マニピュレータアーム13aは、第2光照射部60と第1光照射部30aとの間が、所定距離dとなるように先側部12aを移動する制御が行われるため、作業者は、所定距離dを考慮して、患者50と医療用装置10の間の距離を調節する。
【0076】
所定の操作が行われ、医療用装置10がセッティングモードに切り替えられたら、作業者は、患者と医療用装置の位置合わせを行う。具体的には、アーム部材22a,24aや先側部12aを保持して、手動でマニピュレータアーム13aの姿勢を変更したり、あるいは患者50の位置を調節したりして、第1光照射部30aからの光が、患者50の所望箇所54の表面に投影されるように位置合わせを行う。所望箇所54は、手術を行うために、トロカール52が配置される患者50の腹部の部分である。あるいは、患者50にトロカール52が配置された状態においては、所望箇所54は、トロカール52が配置された患者50の部分である。所望箇所54には、患者50に配置されたトロカール52の貫通穴53の内側の、患者50の体表面に対応する領域を含む。
【0077】
先側部12aの位置と患者50の位置とを調節する際には、図6に示されているように、第1光源部31aの光の投影形状35aと、第2光源部31bの光の投影形状35bとが、所望箇所54の表面に重なって投影されるように、先側部12aの位置を調整したり、患者50の位置を調整したりする。即ち、作業者は、第1光軸33aと、第2光軸33bとの交差箇所34が、所望箇所54の表面に投影されるように、位置合わせを行う。重なって投影された投影形状35a,35bの十字形状の中心部分が、患者の所望箇所54の表面に投影されるように、先側部12aの位置を調整したり、患者50の位置を調節したりする。
【0078】
所望箇所54が、交差箇所34よりも先側部12aに近い側に配置されている場合には、図7に示されているように、投影形状35aと、投影形状35bとが、それぞれ異なる位置に離れて投影される。即ち所望箇所54が、配置位置P1よりも先側部12aに近い側に配置されている場合には、図7に例示されているように、投影形状35aと、投影形状35bとが、それぞれ異なる位置に離れて投影される。
【0079】
このような場合には、先側部12aと所望箇所54との間の相対的な距離が大きくなるように先側部12aの位置と患者50の位置をそれぞれ調節する。具体的には、先側部12aの位置が、患者から離れた位置となるように調節したり、あるいは図示されていない患者寝台の高さを下げたりして、先側部12aと所望箇所54との間の相対的な距離を調節する。
【0080】
また、所望箇所54が、交差箇所34よりも、先側部12aから遠い側に配置されている場合には、図8に示されているように、投影形状35aと、投影形状35bとが、それぞれ異なる位置に離れて投影される。即ち所望箇所54が、配置位置P1よりも先側部12aから遠い側に位置に配置されている場合には、図7に例示されているように、投影形状35aと、投影形状35bとが、それぞれ異なる位置に離れて投影される。
【0081】
このような場合には、先側部12aと所望箇所54との間の相対的な距離が小さくなるように、先側部12aの位置と患者50の位置をそれぞれ調節する。具体的には、先側部12aの位置が、患者に近い位置となるように調節したり、あるいは図示されていない患者寝台の高さを上げたりして、先側部12aと所望箇所54との間の距離を調節する。即ち、投影形状35aと、投影形状35bとが、所望箇所54に投影されるようにすることで、配置位置P1と所望箇所54の高さ方向の位置合わせを正確に行うことができる。換言すれば、配置位置P1と所望箇所54の、第1光照射部30aの光の照射方向の位置合わせを正確に行うことができる。ここで、第1光照射部30aの光の照射方向は、第1光軸33aと、第2光軸33bとのそれぞれを面内に有する平面において、交差箇所34をとおり、床側面17aに対して直交する軸線38が延びる方向であるということができる(図6,7,8参照。)。
【0082】
マニピュレータアーム13aのセッティングを行ったら、患者の所望箇所54に、トロカール52を配置する。具体的には、術者が、所望箇所54に重なって投影されている投影形状35a,35bの十字形状の中心部分を切開して、切開された患者50の腹部にトロカール52を挿入して配置する。
【0083】
トロカール52は、腹腔鏡外科手術などに用いられる医療機器で、患者50の所望の部位に、皮膚の側から腹壁を貫通して腹腔51につながる貫通穴53を設けるために用いられるものである。
【0084】
トロカール52を患者50に配置したら、接続部42aに硬性内視鏡41aを接続する。図4に示されているように、硬性内視鏡41aの先側が、トロカール52の貫通穴53を介して腹腔51に挿入された状態で、硬性内視鏡41aを接続部42aに接続する。硬性内視鏡41aを接続部42aに接続する際には、投影形状35aと、投影形状35bとが、重なって投影されている所望箇所54の位置に、貫通穴53が配置されている状態となるように先側部12aの位置を調節して、硬性内視鏡41aを接続する。接続部42aに、硬性内視鏡41aが接続されると、硬性内視鏡41aのピボット動作点45が、貫通穴53の内側に配置された状態となる。即ち、ピボット動作点45が、所望箇所54に配置された状態となる。
【0085】
3.術中の説明
術者によって操作ユニット2の操作が行われると、マニピュレータアーム13aは、制御ユニット3からの操作信号に従った動作を行う。例えば、術者によって操作ユニット2に対して所定の操作が行われると、マニピュレータアーム13aが操作信号に従った作動をおこない、硬性内視鏡41aの姿勢が変更される。
【0086】
例えば術者が、硬性内視鏡41aの視野を変更するために、操作ユニット2に対して操作を行うと、硬性内視鏡41aの先側が、所望の方向を向くように、硬性内視鏡41aの姿勢が変更される。即ち、操作信号に従ってマニピュレータアーム13aが作動することによって、硬性内視鏡41aは、ピボット動作点45を回転中心として回転して、その先側が所望の方向を向いた状態となる。即ち、硬性内視鏡41aの視野が、術者による操作に従った方向に変更される。
【0087】
上記のように構成された医療用装置10によれば、位置合わせを行う際に、第1光照射部30aから、予め設定された方向に向かって光が照射される。このため、患者50と医療用装置10の位置合わせの作業が行い易い。より具体的には、第1光照射部30aから、接続部42aに硬性内視鏡41aが接続された際にピボット動作点45が配置される配置位置P1に向かって光が照射される。このため、ピボット動作点45(配置位置P1)と患者の所望箇所54が同じ位置となるようにする、患者50と医療用装置10の位置合わせの作業が行い易い。
【0088】
また、第1光照射部30aは、接続部42aが設けられた先側部12aに備えられている。即ち、第1光照射部30aは、接続される硬性内視鏡41aの近くに配置されている。このため、患者50と医療用装置10の位置合わせの作業が行い易い。また、第1光照射部30aは、先側部12aに備えられているため、作業者が位置合わせを行う際に、マニピュレータアーム13aの一部が、第1光照射部30aと所望箇所54との間に入ってしまい、第1光照射部30aからの光が遮られてしまうことが発生しにくい。また、位置合わせを行う作業者(補助者)の体の一部が、第1光照射部30aと所望箇所54との間に入ってしまい、第1光照射部30aからの光が遮られてしまうことが発生しにくい。更に、第1光照射部30aは、所望箇所54の近くに配置される先側部12aに備えられているため、マニピュレータアーム13aの配置位置などが変更されたりしても、第1光照射部30aからの光の照射位置が大きくずれることはない。また、第1光照射部30aからの光の照射位置がずれても、先側部12aの位置を修正するだけで、位置ずれを容易に修正することができる。即ち、患者と医療用装置の位置合わせの作業を、容易で効率的に行うことができる。また、位置合わせを正確に行うことができる。
【0089】
位置合わせを正確に行えるようになることで、硬性内視鏡41aの姿勢を変更する際に、患者に不要な負荷を与えてしまうことを抑制することができる。正確な位置合わせが行われていないために、硬性内視鏡41aの姿勢が変更される際に、トロカール52の貫通穴53の内側に配置されている硬性内視鏡41aの部分が移動してしまい、患者に不要な負荷を与えてしまうことを抑制することができる。
【0090】
また第1光照射部30aは、第1光源部31aと、第2光源部31bと、から構成されている。そして、第1光源部31aと第2光源部31bとは、第1光軸33aと、第2光軸33bとが、第1光源部31aおよび第2光源部31bからの所定の相対位置にて交差するように配置されている。換言すれば、第1光源部31aと第2光源部31bとは、第1光軸33aと、第2光軸33bとが、第1光源部31aと、第2光源部31bとのそれぞれから相対的に所定の距離だけ離れた位置で交差するように配置されている。このため、第1光照射部30aの光の照射方向(高さ方向)について、正確な位置合わせを容易に行うことができる。また、例えば第1光軸33aと、第2光軸33bとが、配置位置P1にて交差するように第1光源部31aと第2光源部31bとを配置すれば、患者50の所望箇所54とピボット動作点45の第1光照射部30aの光の照射方向(高さ方向)の正確な位置合わせを容易に行うことができる。
【0091】
第1光源部31aと、第2光源部31bとは、ベース部14から先側部12aに向かう向きと交わる方向に、並んで配置されている。このため、作業者が、例えば先側部12aをベース部14から離す方向に移動させたり、あるいは先側部12aをベース部14に近づける方向に移動させたりして位置合わせを行う際に、位置合わせの作業が行い易い。即ち、先側部12aをベース部14に対して近づけたり、離したりして、その位置の調整を行う際に、投影形状35aと、投影形状35bとが、所望箇所54に重なって投影されるように位置合わせを行う作業が行い易い。
【0092】
第1光源部31aと、第2光源部31bとは、投影形状35aと、投影形状35bとの少なくともいずれか一方が、十字形状となるように構成されている。このため、位置合わせが適切に行われていない場合に、作業者は、十字形状の投影像を基準にして、交差箇所34の位置と所望箇所54の位置とが、どの程度ずれているかを容易に認識することができる。従って作業者は、患者50と医療用装置10の位置合わせの作業を容易に行うことができる。更に、投影形状35aと、投影形状35bとのいずれもが、十字形状となるように第1光源部31aと、第2光源部31bとを構成すれば、交差箇所34の位置と所望箇所54の位置とが、どの程度ずれているかを更に容易に認識することができる。即ち、作業者は、患者50と医療用装置10の位置合わせの作業を更に行い容易に行うことができる。
【0093】
医療用装置10は、移動可能なカート部16を備えている。このため、医療用装置10を所望の場所に移動させることができる。また、患者50に対する医療用装置10の配置位置を調節することができる。
【0094】
更に、ベース部14の下側面61には、第2光照射部60が備えられている。床80に投影された第2光照射部60からの光を確認することで、医療用装置10と、患者50との間の距離を容易に把握することができる。即ち、患者50の近傍に医療用装置10を配置する作業が行い易い。
【0095】
マニピュレータアーム13aは、第1光照射部30aと第2光照射部60との間の距離が、所定の距離となるように先側部12aの位置を移動する。このため、マニピュレータアーム13aの可動領域が確保された状態で、マニピュレータアーム13aと患者50の位置合わせを行うことができる。
【0096】
第1光源部31aは、赤色の補色の光、及び/又は、赤色の反対色の光を照射する。即ち、第1光源部31aと第2光源部31bとは、それぞれ赤色の補色の光、及び/又は、赤色の反対色の光を照射する。トロカール52は、組織を切開して、患者の腹部に設けられる。このため、第1光源部31aの光が投影される箇所には、患者の血液が存在している場合が多い。血液は赤色をしているため、その補色の光や反対色の光は、位置合わせを行う作業者によって識別されやすい。このため、作業者は、マニピュレータアーム13aと患者との位置合わせを容易に行うことができる。
【0097】
第2光照射部60は、緑色の補色の光、及び/又は緑色の反対色の光を照射する。一般的には、腹腔鏡外科手術が行われる手術室の床は緑色をしている場合が多い。このため、第2光照射部60から緑色の補色の光、及び/又は緑色の反対色の光が投影されると、位置合わせを行う作業者は、緑色の床80に投影された第2光照射部60からの光を識別しやすい。即ち、作業者は、患者50と医療用装置10との位置合わせを容易に行うことができる。
【0098】
本開示の技術範囲は上記実施形態に限定されるものではなく、本開示の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。
【0099】
例えば、先側部12bに第1光照射部30aを設けた構成としてもよい。このようにすれば、手術器具41bを挿入するためのトロカール52を適切な位置に設けることができる。同様に先側部12cに第1光照射部30aを設けた構成としてもよい。
【0100】
さらに、本開示は、上記の実施形態に記載された開示の趣旨に合致するものであればよく、上記の実施形態に限定されない。したがって、上記の複数の実施形態のうち少なくとも2つの実施形態が組み合わせられた構成、又は上記の実施形態において、図示された構成要件もしくは符号を付して説明された構成要件のうちいずれかが廃止された構成であってもよい。
【0101】
本開示は、例えば以下の項目も提供する。
【0102】
(項目1)
接続された医療機器のピボット動作点を、患者の体表上の所望箇所に配置する医療用装置であって、
ベース部と、
前記医療機器が接続される接続部と、
前記接続部を備えた先側部と、
前記ベース部と前記先側部のそれぞれに接続され、前記ピボット動作点を回転中心として、前記医療機器の姿勢を所望の姿勢に変更する支持部と、
を少なくとも備え、
前記先側部は、前記ピボット動作点の配置時において、予め設定された方向に向かって光を照射する、第1光照射部を備えている、医療用装置。
【0103】
(項目2)
前記第1光照射部は、
第1光源部と、
第2光源部と、
を備え、
前記第1光源部と前記第2光源部は、前記第1光源部の第1光軸と前記第2光源部の第2光軸が、前記第1光源部および前記第2光源部からの所定の相対位置にて交差するように配置されている、
項目1に記載の医療用装置。
【0104】
(項目3)
前記第1光源部と前記第2光源部は、
前記ベース部から前記先側部に向かう向きと交わる方向に並んで配置されている、
項目2に記載の医療用装置。
【0105】
(項目4)
前記第1光源部および前記第2光源部の少なくとも一つは、投影された光の形状が十字形状となるように構成されている、
項目2または項目3に記載の医療用装置。
【0106】
(項目5)
前記ベース部を搭載する移動可能なカート部を備え、
前記ベース部は前記カート部が配置される床に向かって光を照射する第2光照射部を備えている項目1から項目4のいずれか一つに記載の医療用装置。
【0107】
(項目6)
前記支持部は、
前記第1光照射部と前記第2光照射部との間の距離が、所定の距離となるように、前記先側部の位置を変更する、
項目5に記載の医療用装置。
【0108】
(項目7)
前記第1光照射部は、赤色の補色の光、及び/又は、赤色の反対色の光を照射する、
項目1から項目6のいずれか一つに記載の医療用装置。
【0109】
(項目8)
前記第2光照射部は、緑色の補色の光、及び/又は緑色の反対色の光を照射する、
項目5から項目7のいずれか一つに記載の医療用装置。
【要約】
医療機器と患者との位置合わせなどのセッティングを、正確に行うことが可能な医療用装置を提供する。本開示の医療用装置は、医療機器のピボット動作点を、患者の体表上の所望箇所に配置する。医療用装置は、ベース部と、接続部と、先側部と、ベース部及び先側部のそれぞれに接続され、ピボット動作点を回転中心として、医療機器の姿勢を所望の姿勢に変更する支持部とを備え、先側部は、予め設定された方向に向かって光を照射する第1光照射部を備えている。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9