(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-21
(45)【発行日】2024-07-01
(54)【発明の名称】締固め工法での地盤強度の推定方法
(51)【国際特許分類】
E02D 1/00 20060101AFI20240624BHJP
【FI】
E02D1/00
(21)【出願番号】P 2023213719
(22)【出願日】2023-12-19
【審査請求日】2024-05-27
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000236610
【氏名又は名称】株式会社不動テトラ
(74)【代理人】
【識別番号】100110319
【氏名又は名称】根本 恵司
(74)【代理人】
【識別番号】100150773
【氏名又は名称】加治 信貴
(72)【発明者】
【氏名】原田 健二
(72)【発明者】
【氏名】山下 祐司
【審査官】柿原 巧弥
(56)【参考文献】
【文献】特開2022-137913(JP,A)
【文献】特開2019-132096(JP,A)
【文献】特開平10-183592(JP,A)
【文献】特開2014-040743(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02D 1/00
E02D 3/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
地盤を締固める締固め工法で、締固め後の地盤強度を推定する締固め工法での地盤強度の推定方法であって、
締固め前後の地中における地盤の画像を撮影する第一の工程と、
撮影した締固め前後の地盤の画像から、締固め前後の地盤の画像における土粒子以外の隙間の面積と土粒子の面積との比である締固め前後での間隙比をそれぞれ求める第二の工程と、
既存の間隙比と地盤強度との関係式、又は施工する現場と地盤データが類似する過去の現場で施工したときに実測した間隙比と地盤強度との関係を用いて、第二の工程で求めた締固め後の間隙比より、締固め後の地盤強度を推定する第三の工程と、
を有することを特徴とする締固め工法での地盤強度の推定方法。
【請求項2】
請求項1に記載された締固め工法での地盤強度の推定方法において、
第三の工程での締固め後の地盤強度の推定を、既存の間隙比と地盤強度との関係式を用いて行うとき、締固め前の地盤強度を、既存の間隙比と地盤強度との関係式を用いて推定するとともに、締固め前の地盤強度を実測し、関係式を用いて推定した締固め前の地盤強度と、実測した締固め前の地盤強度を比較して、補正値を求め、締固め後の地盤強度を推定するときに、求めた補正値により、推定する締固め後の地盤強度を補正する締固め工法での地盤強度の推定方法。
【請求項3】
請求項1に記載された締固め工法での地盤強度の推定方法において、
第三の工程での締固め後の地盤強度の推定を、施工する現場と地盤データが類似する過去の現場で施工したときに実測した間隙比と地盤強度との関係を用いて行うとき、その地盤データは、砂や粗砂の土質分類、又は細粒分を含む砂や土の細粒分含有率である締固め工法での地盤強度の推定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、地盤を締固める締固め工法において、地盤を締固めたとき、締固め後の地盤強度を推定するための締固め工法での地盤強度の推定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、地盤を締固める方法として、地盤改良装置を用いて地盤中に締固め改良体を造成して地盤を締固める締固め工法、又は締固め機械を用いて地表より地盤を圧縮して地盤を締固める締固め工法などが知られている。
【0003】
地盤改良装置を用いて地盤中に締固め改良体を造成して地盤を締固める締固め工法は、砂や砕石又はこの砂や砕石にセメントや流動化剤などを加えた粒状体材料を、地盤中に圧入し又は地盤中に排出した後に打ち戻すことにより、地盤中に締固め改良体を造成し、この締固め改良体の造成により周辺の地盤を締固める方法である。この締固め工法は、例えば、地盤中に砂や砕石などの粒状体材料を排出し、排出した粒状体材料を打ち戻すことで、地盤中に拡径した締固め改良体を造成して、造成した締固め改良体の周辺の地盤を強固なものに改良するサンドコンパクションパイル工法、あるいは流動性の極めて低いモルタルを地盤中に圧入して周辺の地盤を締固めるコンパクショングラウチング工法などがある(特許文献1)。
【0004】
例えば、サンドコンパクションパイル工法に用いる地盤改良装置は、前部にマストを立設した施工ケーシングパイプを備える。施工機械は、ケーシングパイプの地盤中への貫入又は地盤中からの引抜きを行う。ケーシングパイプは、円筒形の管状で、その内部を砂や砕石などの粒状体材料の通る供給路にし、下部に排出口を設けて、排出口から粒状体材料を地盤中に排出する。
【0005】
サンドコンパクションパイル工法は、ケーシングパイプを地盤中の所定深度まで貫入して、貫入したケーシングパイプを所定の長さ引抜くとともに粒状体材料を排出し、ケーシングパイプを所定の長さ貫入して排出した粒状体材料を打ち戻す。この粒状体材料の排出とケーシングパイプによる粒状体材料の打ち戻しを上方に向かって順次繰り返し行う。これにより、地盤中に拡径した締固め改良体を造成することで、その周辺の地盤を締固めて強固な地盤に改良することができる。
【0006】
ところで、このサンドコンパクションパイル工法を含む締固め工法では、地盤中に締固め改良体を造成して地盤を締固めたとき、締固め後の地盤強度を推定し、締固め後の地盤が計画通り締固められているかどうかを判断している。この締固め後の地盤強度の推定は、一般的に知られている標準貫入試験やコーン貫入試験などの地盤調査により行われる。
【0007】
例えば、標準貫入試験によって行う場合、地盤の締固め前後、つまり締固め改良体の造成前後で標準貫入試験を行って地盤の貫入抵抗値である地盤のN値を求めるが、この標準貫入試験では、深度方向において約1m毎にN値を求めている。また、標準貫入試験で締固め改良体の周辺の地盤強度を推定する場合、目標の地盤のN値に達しているかどうかにより、締固め後の地盤強度を推定し、締固め後の地盤が計画通り締固められているかどうかを判断する。
【0008】
しかしながら、標準貫入試験において、地盤のN値を求めるとき、締固め改良体を造成した直後では、地盤中の過剰間隙水圧が上昇し、この過剰間隙水圧の上昇による影響で、正しいN値を求めることができない場合がある。この地盤中の過剰間隙水圧の上昇は、地盤の性質によっても異なるが、締固め改良体を造成してから数日から数週間は上昇している。例えば、細粒分の含有率が高い地盤においては、直後に行った調査(標準貫入試験)では充分な強度発現が認められなかったが、20日後に行った再調査では充分な強度発現が認められた例がある。以上のように、地盤を締固めたとき、締固め後の地盤強度を推定し、締固め後の地盤が計画通り締固められているかどうかを正確に判断するのが難しいという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、このような問題に鑑みてなされたものであって、その目的は、締固め工法により地盤を締固めたとき、締固め後の地盤強度を容易に推定することができる締固め工法での地盤強度の推定方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、地盤を締固める締固め工法で、締固め後の地盤強度を推定する締固め工法での地盤強度の推定方法であって、締固め前後の地中における地盤の画像を撮影する第一の工程と、撮影した締固め前後の地盤の画像から、締固め前後の地盤の画像での土粒子以外の隙間の面積と土粒子の面積との比である締固め前後の間隙比をそれぞれ求める第二の工程と、既存の間隙比と地盤強度との関係式、又は施工する現場と地盤データが類似する過去の現場で施工したときに実測した間隙比と地盤強度との関係を用いて、第二の工程で求めた締固め後の間隙比より、締固め後の地盤強度を推定する第三の工程を有する締固め工法での地盤強度の推定方法である。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、締固め工法により地盤を締固めたとき、締固め後の地盤強度を容易に推定することができ、これにより、締固め後の地盤が計画通り締固められているかどうかを正確にかつ簡単に判断することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明の締固め工法での地盤強度の推定方法において用いる装置の地盤撮影用機器の正面図である。
【
図2】地盤撮影用機器の先端コーンの図であって、
図2Aは、先端コーンの正面図、
図2Bは、先端コーンの縦断面図である。
【
図3】本発明の締固め工法での地盤強度の推定方法のフロー図である。
【
図4】
図4Aは、締固め改良体の造成前の地中における地盤の画像の二値化画像を示す図、
図4Bは、締固め改良体の造成後の地中における地盤の画像の二値化画像を示す図である。
【
図5】関係式を用いて推定した締固め前の地盤のN値と実測した締固め前の地盤のN値を示す図表である。
【
図6】地表より地盤を圧縮して地盤を締固める締固め工法において地盤を締固めている状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の締固め工法での地盤の改良効果の判定方法の一実施形態について、図面を参照して説明する。
本実施形態に係る締固め工法での地盤強度の推定方法は、地盤中に締固め改良体を造成して地盤を締固める締固め工法、又は地表より地盤を圧縮して地盤を締固める締固め工法などにおいて、締固め後の地盤強度を推定するものである。この締固め後の地盤強度を推定することで、締固め後の地盤が計画通り締固められているかどうかを判断する。なお、ここでの地盤強度は、地盤のN値(貫入抵抗値)である。ただし、これに限定されない。
【0015】
本実施形態では、例えば、サンドコンパクションパイル工法などにより地盤中に締固め改良体(サンドコンパクションパイル工法では「締固め砂杭」ともいう)を造成して地盤を締固めたとき、締固め改良体の周辺の地盤(締固め後の地盤)の強度を推定し、締固め後の地盤が計画通り締固められているかどうかを判断する。ここでの周辺の地盤とは、複数の締固め改良体を造成したときの隣接する締固め改良体の間や造成した締固め改良体から所定の距離離れた地点の地盤である。
【0016】
また、ここでの締固め工法での地盤強度の推定方法は、サンドコンパクションパイル工法に限らず、砂や砕石などの粒状体材料を、地盤中に圧入し又は地盤中に排出した後に打ち戻すことにより、地盤中に締固め改良体を造成し、この締固め改良体の造成により周辺の地盤を締固めるその他の締固め工法のときにも用いることができる。なお、砂や砕石などの粒状体材料は、砂や砕石に限らず、この砂や砕石にセメントや流動化剤などを加えたものも含まれる。
【0017】
締固め工法での地盤強度の推定方法において用いる装置について説明する。
装置は、地盤の画像を撮影する地盤撮影用機器と、地盤撮影用機器から得た情報に基づいて各種の処理作業を行う処理装置を備える。
図1は、締固め工法での地盤強度の推定方法において用いる装置の地盤撮影用機器の正面図である。
図2は、地盤撮影用機器の先端コーンの図であって、
図2Aは、先端コーンの正面図、
図2Bは、先端コーンの縦断面図である。
【0018】
地盤撮影用機器10は、
図1に示すように、コーン貫入試験装置13を用いている。このコーン貫入試験装置13に、地盤中に貫入するロッド11と、ロッド11の先端(下端)に取り付けてビデオカメラ14を搭載する先端コーン12とを備えて、コーン貫入試験装置13で、ロッド11及び先端コーン12の地盤中への貫入あるいは引き抜きを行う。
【0019】
ロッド11は、その形状が円筒形の管状で上下に向かって伸び、コーン貫入試験装置13により地盤中に貫入しあるいは引き抜かれる。
また、先端コーン12は、
図2A、
図2Bに示すように、ロッド11の先端(下端)に取り付けて地盤中に貫入するもので、その形状は円筒形の管状で上下に向う。先端コーン12には、地盤の画像を撮影するビデオカメラ14を搭載する。ビデオカメラ14は、先端コーン12の側面に撮影用の開口部15をあけ、この開口部15の内側に配置する。ビデオカメラ14は、先端コーン12の軸方向に直交する方向に向けることで、貫入時又は引き抜き時において地盤の画像を撮影することができる。なお、先端コーン12に設ける開口部15及びビデオカメラ14は、ここでは1つであるが、これを複数個にしてもよい。
【0020】
処理装置は、各種のプログラムを格納し、この格納したプログラムを用いて各種の処理作業を行うコンピュータである。
処理装置では、地盤撮影用機器10で撮影した締固め前後(締固め改良体の造成前後)の地中における地盤の画像から、締固め前後の地盤の画像における土粒子以外の隙間の面積と土粒子の面積との比である締固め前後での間隙比をそれぞれ求め、続いて、この締固め後の間隙比より締固め後の地盤強度を推定する処理作業を行う。この処理装置30は、
図1に示すように、地盤撮影用機器10に搭載する。ただし、これに限定されるものではなく、作業現場の事務所内あるいは別の場所である施工会社の社内等に設置してもよい。
【0021】
次に、締固め工法での地盤強度の推定方法について、
図3のフロー図を用いて説明する。
締固め工法での地盤強度の推定方法は、締固め前後(締固め改良体の造成前後)の地中における地盤の画像を撮影する第一の工程(S1)と、撮影した締固め前後の地盤の画像から、締固め前後での間隙比をそれぞれ求める第二の工程(S2)と、第二の工程(S2)で求めた締固め後の間隙比より、締固め後の地盤強度(地盤のN値)を推定する第三の工程(S3)とを有する。
【0022】
〔第一の工程〕
第一の工程(S1)は、締固め前後の地中における地盤の画像を撮影する工程であって、地盤撮影用機器10を用いて締固め改良体の造成前後、つまり地盤の締固め前後の地中における地盤の画像を撮影する。すなわち、地盤中に締固め改良体を造成する前と後において、地盤撮影用機器10のロッド11及び先端コーン12を、コーン貫入試験装置13で地中に貫入し、貫入時の地盤の画像を先端コーン12に搭載したビデオカメラ14で撮影する。このビデオカメラ14で撮影した締固め改良体の造成前後の地中における地盤の画像はカラー画像の動画である。また、地盤の画像の撮影は、ロッド11及び先端コーン12を地盤中に貫入しているときに行っているが、ロッド11及び先端コーン12を地盤中に貫入した後、ロッド11及び先端コーン12を引き抜くとき、つまり、引き抜き時に地盤の画像を撮影してもよい。
【0023】
なお、地盤中に締固め改良体を造成した後において地盤の画像を撮影する地点は、複数の締固め改良体を造成したときの隣接する締固め改良体の間や造成した締固め改良体から所定の距離離れた地点である。また、地盤中に締固め改良体を造成する前と後において、ビデオカメラ14での撮影は、造成する締固め改良体の深度方向全長を撮影してもよいし、あるいは必要な場所のみ、例えば、砂層と粘土層が混在する地層において砂層の部分が、例えば深度5mから10mの場合、この深度5mから10mの範囲を撮影するようにしてもよい。
【0024】
以上にように、第一の工程(S1)では、地盤の締固め前(締固め改良体の造成前)の地中における地盤の画像の撮影を行うとともに、地盤の締固め後(締固め改良体の造成後)の地中における地盤の画像の撮影を行う。
【0025】
〔第二の工程〕
第二の工程(S2)は、第一の工程(S1)で撮影した締固め前後の地盤の画像から、締固め前後の地盤の画像における土粒子以外の隙間の面積と土粒子の面積との比である締固め前後での間隙比をそれぞれ求める工程である。
【0026】
すなわち、ビデオカメラ14で撮影した地盤の締固め前後(締固め改良体の造成前後)の地中における地盤の画像を、所定の画像処理プログラムを用いて画像処理作業を行う。この画像処理作業は、ビデオカメラ14で撮影した地盤の画像のカラー画像から二値化画像に変換する作業である。
【0027】
二値化画像とは、白と黒の2色で表された画像のことである。
ここでのカラー画像から二値化画像への変換は、撮影したカラー画像を、まず所定のプログラムを用いてグレースケール画像に変換する。このグレースケール画像は、白黒の濃淡を表現した画像で、例えば、1画素が8ビットで、この8ビット画像では、その濃淡を256階調で表し、画素値0が黒で、そこから徐々に色が薄くなり、画素値255が白である。続いて、変換したグレースケール画像の画素値において、その画素値が、設定した閾値以上の場合は白Wに、閾値未満の場合は黒Bに変換することで、画素毎に白W又は黒Bの2色で表される二値化画像に変換することができる。なお、閾値は、地盤中の土粒子の部分を白Wに、地盤中の土粒子以外(空気及び水など)の隙間の部分を黒Bにそれぞれ表すことができる値に設定する。なお、土粒子とは、地盤中の土砂などの粒子のことをいう。
【0028】
この二値化画像については、例えば、
図4A、
図4Bに示す。
図4Aは、締固め改良体を造成する前の地中における地盤の画像の二値化画像を示す図であり、
図4Bは、締固め改良体を造成した後の地中における地盤の画像の二値化画像を示す図である。
【0029】
次に、締固め前後(締固め改良体の造成前後)におけるそれぞれの地盤の画像おいて、土粒子以外の隙間の面積と土粒子の面積との比である締固め前後での間隙比eをそれぞれ求める。
【0030】
すなわち、締固め改良体の造成後の地中における地盤の画像の二値化画像より、その二値化画像での土粒子以外の隙間の面積(黒Bの面積)を算出し、これとともに、締固め改良体の造成後の地中における地盤の画像の二値化画像より、その二値化画像での地盤中の土粒子の面積(白Wの面積)を算出する。
続いて、算出した土粒子以外の隙間の面積Vvと土粒子の面積Vsとの比である締固め後の間隙比eを求める。
また、締固め改良体の造成前の地中における地盤の画像の二値化画像からも、前述と同様に、土粒子以外の隙間の面積Vvと土粒子の面積Vsとの比である締固め前の間隙比eを求める。
【0031】
この地盤の間隙比eは、次の式で求めている。
【0032】
【0033】
前記式において、Vvは地盤中の土粒子以外の隙間の部分の面積、Vsは土粒子の面積である。
【0034】
以上のように、第二の工程(S2)では、締固め後の地盤の画像での土粒子以外の隙間の面積Vvと土粒子の面積Vsとの比である締固め後の間隙比eを求めるとともに、締固め前の地盤の画像での土粒子以外の隙間の面積Vvと土粒子の面積Vsとの比である締固め前の間隙比eを求める。
【0035】
〔第三の工程〕
第三の工程(S3)は、既存の間隙比と地盤強度との関係式、又は施工する現場と地盤データが類似する過去の現場で施工したときに実測した間隙比と地盤強度との関係を用いて、第二の工程(S2)で求めた締固め後の間隙比より、締固め後の地盤強度(地盤のN値)を推定する工程である。
ここでは、既存の間隙比と地盤強度との関係式を用いて、締固め後の地盤強度(地盤のN値)を推定する場合である。
【0036】
既存の間隙比と地盤強度との関係式を用いて、締固め後の地盤のN値(地盤強度)を推定する方法(求める方法)は、次のようなものである。
まず、第二の工程(S2)で撮影した地盤の画像から求めた締固め後の間隙比eより、地盤の相対密度Dr(%)を求める。地盤の相対密度Drは、次の間隙比eと地盤の相対密度Drの関係式で求めている。
【0037】
【0038】
前記式において、emaxは地盤の最大間隙比、eminは地盤の最小間隙比である。
【0039】
続いて、求めた地盤の相対密度Drから地盤のN値を求める。地盤のN値は、次の地盤のN値と地盤の相対密度Drの関係式(Meyerhofの式)で求めている。
【0040】
【0041】
前記式において、σvは有効上載圧(kgf/cm2)である。
【0042】
以上のように、第三の工程(S3)では、既存の間隙比と地盤強度(地盤のN値)との関係式を用いて、締固め後の地盤のN値を求める。これにより、締固め後の地盤のN値(地盤強度)を推定することができる。
【0043】
また、この第三の工程(S3)において、既存の間隙比と地盤強度との関係式を用いて、締固め後の地盤のN値を求めるが、このとき、求めた地盤のN値を補正するようにしてもよい。
例えば、第二の工程(S2)で求めた締固め前の間隙比より、締固め前の地盤のN値を推定する。次に締固め前の地盤のN値を、既存の間隙比と地盤強度(地盤のN値)との関係式を用いて推定する。これとともに、締固め前の地盤のN値を実測する。この地盤のN値の実測は、標準貫入試験などによって行う。続いて、既存の間隙比と地盤強度との関係式を用いて推定した締固め前の地盤のN値と、実測した締固め前の地盤のN値を比較し、比較した結果により補正値を求める(S4)。この求めた補正値に基づいて、第三の工程(S3)で求めた締固め後の地盤のN値を補正する(S5)。
【0044】
すなわち、地盤のN値の補正は、締固め前の地盤において、関係式を用いて推定した締固め前の地盤のN値と、実測した締固め前の地盤のN値とを複数回調査して求め、続いて、関係式を用いて推定した締固め前の地盤のN値と、実測した締固め前の地盤のN値と比較して、その結果より両者のずれを求める。このようにして求めたずれを補正値にする。つまり、
図5に示すように、横軸に関係式を用いて推定した締固め前の地盤のN値を示し、縦軸に実測した締固め前の地盤のN値を示し、複数回調査した値を並べて、並べた値を線Aで結ぶ。この結んだ線Aから、その勾配を求めて、勾配が例えば1.2であれば、この1.2の値が、関係式を用いて推定した締固め前の地盤のN値と、実測した締固め前の地盤のN値とのずれである補正値になる。次に、この補正値である1.2を、第三の工程(S3)において、既存の間隙比と地盤強度との関係式を用いて求めた締固め後の地盤のN値に乗算(×1.2)して地盤のN値を補正することができる。なお、この補正値の1.2の値は例えであって、これに限定されるものではない。
【0045】
このように、関係式を用いて推定した締固め前の地盤のN値と実測した締固め前の地盤のN値より求めた補正値に基づいて、第三の工程(S3)で求めた締固め後の地盤のN値を補正することで、それぞれ現場に応じた形で補正することができ、これにより、求める締固め後の地盤のN値を、地盤の締固めを行うそれぞれの現場に合った正確な値にすることができる。
【0046】
また、前述の第三の工程(S3)での締固め後の地盤のN値(地盤強度)の推定は、既存の間隙比と地盤強度との関係式を用いて行っているが、これに限定されるものではない。例えば、施工する現場と地盤データが類似する過去の現場で施工したときに実測した間隙比と地盤強度との関係を用いて、締固め後の地盤のN値を推定する(求める)ようにしてもよい。
【0047】
すなわち、過去に施工した現場において、施工したときの間隙比と地盤強度(地盤のN値)とをそれぞれ実測し、その値を地盤データに応じて地盤における間隙比と地盤強度との関係としてデータ化する。この地盤データとしては、砂や粗砂などの土質分類、又は細粒分を含む砂や土の細粒分含有率などである。
【0048】
このデータ化したものを用いて、第二の工程(S2)で求めた締固め後の間隙比より、締固め後の地盤のN値を求める(地盤強度を推定する)。これによっても、締固め後の地盤のN値(地盤強度)を推定することができる。
【0049】
以上説明したように、本実施形態によれば、締固め工法により地盤を締固めたとき、締固め後の地盤のN値(地盤強度)を容易に推定することができる。これにより、締固め後の地盤が計画通り締固められているかどうかを正確にかつ簡単に判断することができる。
【0050】
また、前述の実施形態では、地盤改良装置を用いて地盤中に締固め改良体を造成して地盤を締固める締固め工法(サンドコンパクションパイル工法など)において、締固め後の地盤強度を推定するものであるが、本発明の締固め工法での地盤強度の推定方法は、前記の締固め工法に限らず、締固め機械を用いて地表より地盤を圧縮して地盤を締固める締固め工法などにおいて締固め後の地盤強度を推定するようにしてもよい。
【0051】
すなわち、地表より地盤を圧縮して地盤を締固める締固め工法として、例えば、盛土の作業において行う盛土の締固め方法がある。つまり、
図6に示すように、盛土Mの締固め作業を行うとき、盛土Mの地表より締固め機械40を用いて盛土Mを圧縮して締固める。ここでの締固め機械40は、例えば車体42にローラ43を備えて作業者が乗車して走行しながら作業を行うタイヤローラ41といった大型の機械である。ただし、締固め機械40は、これに限らず、ロードローラや振動ローラといった大型の機械、あるいは上下動する衝撃板により地面を突いて盛土Mを締固めるランマやプレートコンパクタといった小型の機械などでもよい。
【0052】
この締固め機械40を用いて盛土Mの地表より圧縮して盛土Mを締固めたあと、締め固めた盛土Mを、前述の実施形態と同様に、締固め前後の地中における地盤の画像を撮影する工程である第一の工程(S1)、撮影した締固め前後の地盤の画像から、締固め前後での間隙比をそれぞれ求める工程である第二の工程(S2)、締固め後の間隙比より、締固め後の地盤のN値(地盤強度)を推定する第三の工程(S3)を経て、締固め後の地盤のN値(地盤強度)を推定する。この締固め後の地盤のN値を推定することで、締固め後の地盤(盛土M)が計画通り締固められているかどうかを正確にかつ簡単に判断することができる。
【符号の説明】
【0053】
10…地盤撮影用機器、11…ロッド、12…先端コーン、13…コーン貫入試験装置、14…ビデオカメラ、15…開口部、30…処理装置、40…締固め機械、41…タイヤローラ、42…車体、43…ローラ。
【要約】
【課題】締固め工法により地盤を締固めたとき、締固め後の地盤強度を容易に推定することができる締固め工法での地盤強度の推定方法を提供する。
【解決手段】地盤を締固める締固め工法で、締固め後の地盤強度を推定する締固め工法での地盤強度の推定方法であって、締固め前後の地中における地盤の画像を撮影する第一の工程と、撮影した締固め前後の地盤の画像から、締固め前後の地盤の画像における土粒子以外の隙間の面積と土粒子の面積との比である締固め前後での間隙比をそれぞれ求める第二の工程と、既存の間隙比と地盤強度との関係式、又は施工する現場と地盤データが類似する過去の現場で施工したときに実測した間隙比と地盤強度との関係を用いて、第二の工程で求めた締固め後の間隙比より、締固め後の地盤強度を推定する第三の工程を有する。
【選択図】
図3