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特許7508191コンビナトリアルバーコーディングのための方法および組成物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-21
(45)【発行日】2024-07-01
(54)【発明の名称】コンビナトリアルバーコーディングのための方法および組成物
(51)【国際特許分類】
   C12N 15/10 20060101AFI20240624BHJP
   C12M 1/34 20060101ALI20240624BHJP
   C12Q 1/6881 20180101ALI20240624BHJP
   C40B 50/16 20060101ALI20240624BHJP
   C40B 70/00 20060101ALI20240624BHJP
【FI】
C12N15/10 110Z
C12M1/34 Z
C12Q1/6881 ZNA
C40B50/16
C40B70/00
【請求項の数】 21
(21)【出願番号】P 2017549390
(86)(22)【出願日】2016-03-29
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2018-04-12
(86)【国際出願番号】 US2016024783
(87)【国際公開番号】W WO2016160844
(87)【国際公開日】2016-10-06
【審査請求日】2019-03-20
【審判番号】
【審判請求日】2022-03-01
(31)【優先権主張番号】62/152,644
(32)【優先日】2015-04-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/140,360
(32)【優先日】2015-03-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】595117091
【氏名又は名称】ベクトン・ディキンソン・アンド・カンパニー
【氏名又は名称原語表記】BECTON, DICKINSON AND COMPANY
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【弁理士】
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【弁理士】
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100119013
【弁理士】
【氏名又は名称】山崎 一夫
(74)【代理人】
【識別番号】100123777
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 さつき
(74)【代理人】
【識別番号】100111796
【弁理士】
【氏名又は名称】服部 博信
(74)【代理人】
【識別番号】100123766
【弁理士】
【氏名又は名称】松田 七重
(72)【発明者】
【氏名】フー, グレン
(72)【発明者】
【氏名】フォドー, スティーブン ピー.エー.
【合議体】
【審判長】福井 悟
【審判官】上條 肇
【審判官】加々美 一恵
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2012/162267(WO,A2)
【文献】特表2007-504831(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N 15/00 - 15/90
C12Q 1/68 - 1/6897
C40B 50/00 - 50/18
C40B 70/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のパーティションにおいて、コンビナトリアルバーコードのセットでバーコードを付けた標的ポリヌクレオチドを製造する方法であって、前記方法は、
コンポーネントバーコードがコンポーネントバーコードのセットから選択される条件で、前記複数のパーティションのそれぞれにいくつかのコンポーネントバーコードを導入する工程であって、前記コンポーネントバーコードのセットが、
n×m種のユニークコンポーネントバーコード(ただし、nおよびmは正の整数である)を含み、コンポーネントバーコードのそれぞれが、
n種のユニークバーコードサブユニット配列の1つと、
1もしくは2つのリンカー配列またはその相補体とを含み、
および
前記複数のパーティションのそれぞれの中の2つ以上のコンポーネントバーコードを、前記2つ以上のコンポーネントバーコードおよび標的ポリヌクレオチドを伸長させるおよび/または増幅して前記2つ以上のコンポーネントバーコードの配列を含む転写物および/またはアンプリコンを生成することにより、サンプルの標的ポリヌクレオチドの存在下で前記1もしくは2つのリンカー配列またはその相補体を介して互いに接続してコンビナトリアルバーコードを形成する工程、
を含み、
前記コンビナトリアルバーコードが、確率バーコードを含み、前記確率バーコードが、ユニバーサル標識、細胞標識、分子標識、サンプル標識、プレート標識、空間標識、プレ空間標識またはそれらの任意の組合せを含み、且つ前記2つ以上のコンポーネントバーコードがそれぞれ、バーコードサブユニット配列を含み、
前記2つ以上のコンポーネントバーコードの少なくとも1つが固体担体上に固定されており、前記固体担体に固定されている前記コンポーネントバーコードのそれぞれが細胞標識を含み、同じ固体担体に固定されている確率バーコードが同じ細胞標識を含み、且つ異なる固体担体に固定されている確率バーコードが異なる細胞標識を含み、
前記コンビナトリアルバーコードが、m個のバーコードサブユニット配列を有し、記コンビナトリアルバーコードが、m-1個またはm-2個のリンカー配列を有し、且つmが2以上の整数であり、及び
前記コンビナトリアルバーコードが、
式:バーコードサブユニット配列a-リンカー1-バーコードサブユニット配列b-リンカー2-…バーコードサブユニット配列c-リンカーm-1-バーコードサブユニット配列dを含むオリゴヌクレオチドを含み、前記オリゴヌクレオチドが標的ヌクレオチド配列に接続されるか、または
式:バーコードサブユニット配列a-リンカー1-バーコードサブユニット配列b-リンカー2-…-バーコードサブユニット配列cを含む第1のオリゴヌクレオチドと、バーコードサブユニット配列d-…-リンカー3-バーコードサブユニット配列e-リンカーm-2-バーコードサブユニット配列fを含む第2のオリゴヌクレオチドとを含み、前記第1のオリゴヌクレオチドおよび前記第2のオリゴヌクレオチドが、標的ヌクレオチド配列によって互いに接続され、方法。
【請求項2】
コンビナトリアルバーコードのセットを使用する、複数のパーティション中の単一細胞シーケンシングの方法であって、前記方法は、
複数の単一細胞を複数のパーティションに導入する工程、
前記単一細胞を溶解して、前記細胞の核酸含有分を放出させる工程、および
請求項1に記載の方法に従って複数のパーティションのそれぞれの中のそれぞれの細胞の核酸含有分に、コンビナトリアルバーコードのセットでバーコードを付ける工程を含む、方法。
【請求項3】
前記標的ポリヌクレオチドまたは前記核酸含有分が、DNAおよび/またはRNAを含み、
前記DNAが、ゲノムDNAを含むことができ、そして/または
前記RNAが、メッセンジャーRNA(mRNA)、マイクロRNA、低分子干渉RNA(siRNA)、RNA分解産物、それぞれポリ(A)テールを含むRNA、またはそれらの任意の組合せを含むことができる、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記パーティションが、チューブ、マイクロタイタープレート中のウェル、フローセル、中空繊維、スライド上のマイクロウェル、中空の閉粒子または開粒子、子、あるいは三次元の固体またはスキャフォールド中の二次元の表面上または基材上で個別のサンプルの位置分離からなる群から選択されるか、または前記複数のパーティションが、複数のマイクロウェルである、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
任意の所定のバーコードを付けた標的ポリヌクレオチドについて、前記パーティションが確定可能であるように、それぞれのパーティション中の前記コンビナトリアルバーコードがユニークである、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記2つ以上のバーコードサブユニット配列が、リンカー配列および/または標的ヌクレオチド配列を介して互いに接続されており、
1つ以上のリンカー配列のハイブリダイゼーションおよび続く伸長を介して互いに接続することにより、前記2つ以上のバーコードサブユニット配列が、前記コンビナトリアルバーコードを形成する、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記コンビナトリアルバーコードが、バーコードサブユニット配列の第1のセットから選択された細胞標識を含む第1のコンポーネントバーコード、及びバーコードサブユニット配列の第2のセットから選択された分子標識を含む第2のコンポーネントバーコードを含む、請求項1~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記2つ以上のコンポーネントバーコードの少なくとも1つが、標的特異的領域を含み、
前記標的特異的領域が、オリゴdT、遺伝子特異的配列またはランダムマルチマー配列を含む、請求項1~7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記コンビナトリアルバーコードのセットが、少なくとも1,000のユニークコンビナトリアルバーコードを含む、請求項1~8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
各パーティション中の前記2つ以上のコンポーネントバーコードの1つを、前記パーティション中の前記標的ポリヌクレオチドにハイブリダイズする工程をさらに含み、
前記標的ポリヌクレオチドにハイブリダイズした前記コンポーネントバーコードが、伸長反応のプライマーとして使用されて、前記標的および前記コンビナトリアルバーコードを含む伸長産物が生成され、
前記伸長産物を増幅およびシーケンスする工程をさらに含む、請求項1~9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
伸長および/または増幅後に前記複数のパーティションの内容物をプールする工程をさらに含み、
前記プール内容物が、シーケンスされる、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記固体担体が、ビーズまたはマイクロウェルアレイ中のマイクロウェルを含む、請求項1~11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
請求項1~12のいずれか一項に従ってコンビナトリアルバーコードのセットを生成するためのコンポーネントバーコードのセットを含む組成物であって、
n×m種のユニークコンポーネントバーコードであって、nおよびmは正の整数であるユニークコンポーネントバーコード、
を含み、
前記コンポーネントバーコードのそれぞれが、
n種のユニークバーコードサブユニット配列の1つと、
1もしくは2つのリンカー配列またはその相補体と、
を含み、
前記コンポーネントバーコードが、前記1もしくは2つのリンカー配列またはその相補体を介して互いに接続してコンビナトリアルバーコードのセットを生成するように構成され、
n種のユニークバーコードサブユニット配列のセットのそれぞれ1つが、分子標識、細胞標識、次元標識、ユニバーサル標識、またはそれらの任意の組合せを含み、
前記コンポーネントバーコードのそれぞれが、
バーコードサブユニット配列-リンカー、
リンカーの相補体-バーコードサブユニット配列-リンカー、または
リンカーの相補体-バーコードサブユニット配列、
を含み、
前記コンビナトリアルバーコードのセットのそれぞれが標的特異的領域を含む、
組成物。
【請求項14】
異なるリンカー配列の全数がm-1またはm-2である、請求項13に記載の組成物。
【請求項15】
コンビナトリアルバーコードのセットのそれぞれ1つが、式:バーコードサブユニット配列a-リンカー1-バーコードサブユニット配列b-リンカー2-…バーコードサブユニット配列c-リンカーm-1-バーコードサブユニット配列dを含むオリゴヌクレオチドを含む、請求項1314のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項16】
前記オリゴヌクレオチドが標的特異的領域を含む、請求項15に記載の組成物。
【請求項17】
コンビナトリアルバーコードのセットのそれぞれ1つが、
式:バーコードサブユニット配列a-リンカー1-バーコードサブユニット配列b-リンカー2-…-バーコードサブユニット配列cを含む第1のオリゴヌクレオチドと、
バーコードサブユニット配列d-…-リンカー3-バーコードサブユニット配列e-リンカーm-2-バーコードサブユニット配列fを含む第2のオリゴヌクレオチドと、
を含む、請求項1314のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項18】
前記第1のオリゴヌクレオチドおよび前記第2のオリゴヌクレオチドのそれぞれが標的特異的領域を含む、請求項17に記載の組成物。
【請求項19】
前記標的特異的領域がオリゴdTである、請求項1318のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項20】
前記1もしくは2つのリンカー配列のそれぞれ1つが互いに異なる、請求項1319のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項21】
コンビナトリアルバーコードのセットが少なくとも100,000種のユニークコンビナトリアルバーコードを有する、請求項1320のいずれか一項に記載の組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
優先権出願の参照による組込み
本出願は、2015年3月30日出願の米国仮特許出願第62/140,360号および2015年4月24日出願の米国仮特許出願第62/152,644号に基づく優先権を主張する。これらの出願の内容は、本出願をもってその全体が参照により明示的に組み込まれる。
【0002】
配列リストの参照
本出願は、電子形式の配列リストと共に出願されている。配列リストは、2016年3月28日に695バイトのサイズで作成されたBDCRI-013WO_SEQLISTING.TXTという名称のファイルとして提供される。配列リストの電子形式の情報は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【背景技術】
【0003】
個別の反応の小型化および並列処理は、現代の科学実験および測定において劇的なコスト削減およびスループット増加をもたらした。核酸バーコーディングは、配列に情報内容を付加するために配列ストリング(バーコード配列としても知られる)を用いて各サンプルの核酸に識別タグを付ける方法を含みうる。バーコーディングは、化学的(バーコード)空間における分離を含みうるとともに、物理的単離に依存することもしないこともありうる。DNAバーコーディングは、さまざまな配列をプールできるようにしうる。DNAバーコーディングは、他のバーコード付きサンプルとの組合せが可能になる前のサンプル特異的バーコードによる個別のタグ付けのスループットが低いことから実施が困難なこともある。サンプルタグ付け用のバーコードの膨大なレパートリーを生成するための新しい方法が必要とされている。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0004】
本明細書に開示されるいくつかの実施形態は、コンビナトリアルバーコードのセットを生成するためのコンポーネントバーコードのセットを含む組成物であって、n×m種のユニークコンポーネントバーコード(ただし、nおよびmは正の整数である)を含み、コンポーネントバーコードのそれぞれが、n種のユニークバーコードサブユニット配列の1つと、1もしくは2つのリンカー配列またはその相補体と、を含み、コンポーネントバーコードが、1もしくは2つのリンカー配列またはその相補体を介して互いに接続してコンビナトリアルバーコードのセットを生成するように構成される、組成物を提供する。いくつかの実施形態では、n種のユニークバーコードサブユニット配列のセットのそれぞれは、分子標識、細胞標識、次元標識、ユニバーサル標識、またはそれらの任意の組合せを含む。いくつかの実施形態では、異なるリンカー配列の全数はm-1またはm-2である。いくつかの実施形態では、コンポーネントバーコードのそれぞれは、バーコードサブユニット配列-リンカー、リンカーの相補体-バーコードサブユニット配列-リンカー、またはリンカーの相補体-バーコードサブユニット配列を含む。いくつかの実施形態では、コンビナトリアルバーコードのセットのそれぞれは、式:バーコードサブユニット配列-リンカー-バーコードサブユニット配列-リンカー-…バーコードサブユニット配列-リンカーm-1-バーコードサブユニット配列を含むオリゴヌクレオチドを含む。いくつかの実施形態では、オリゴヌクレオチドは標的特異的領域を含む。いくつかの実施形態では、標的特異的領域はオリゴdTである。いくつかの実施形態では、コンビナトリアルバーコードのセットのそれぞれは、式:バーコードサブユニット配列-リンカー-バーコードサブユニット配列-リンカー-…-バーコードサブユニット配列を含む第1のオリゴヌクレオチドと、バーコードサブユニット配列-…-リンカー-バーコードサブユニット配列-リンカーm-2-バーコードサブユニット配列を含む第2のオリゴヌクレオチドと、を含む。いくつかの実施形態では、第1のオリゴヌクレオチドおよび第2のオリゴヌクレオチドのそれぞれは標的特異的領域を含む。いくつかの実施形態では、標的特異的領域の1つはオリゴdTである。いくつかの実施形態では、1もしくは2つのリンカー配列のそれぞれは異なる。いくつかの実施形態では、mは2~10の整数である。いくつかの実施形態では、mは2~4の整数である。いくつかの実施形態では、nは4~100の整数である。いくつかの実施形態では、n=24である。いくつかの実施形態では、n種のユニークバーコードサブユニット配列は同一の長さである。いくつかの実施形態では、n種のユニークバーコードサブユニット配列の少なくとも2つは異なる長さを有する。いくつかの実施形態では、リンカー配列は同一の長さである。いくつかの実施形態では、リンカー配列は異なる長さを有する。いくつかの実施形態では、コンビナトリアルバーコードのセットはn種以下のユニークコンビナトリアルバーコードを有する。いくつかの実施形態では、コンビナトリアルバーコードのセットは少なくとも100,000種のユニークコンビナトリアルバーコードを有する。いくつかの実施形態では、コンビナトリアルバーコードのセットは少なくとも200,000種のユニークコンビナトリアルバーコードを有する。いくつかの実施形態では、コンビナトリアルバーコードのセットは少なくとも300,000種のユニークコンビナトリアルバーコードを有する。いくつかの実施形態では、コンビナトリアルバーコードのセットは少なくとも400,000種のユニークコンビナトリアルバーコードを有する。いくつかの実施形態では、コンビナトリアルバーコードのセットは少なくとも1,000,000種のユニークコンビナトリアルバーコードを有する。
【0005】
本明細書に開示されるいくつかの実施形態は、複数のパーティションにバーコードを付ける方法であって、m種のコンポーネントバーコードがn×m種の異なるコンポーネントバーコードのセット(ただし、nおよびmは正の整数である)から選択され、コンポーネントバーコードのそれぞれが、n種のユニークバーコードサブユニット配列の1つと、1もしくは2つのリンカー配列またはその相補体と、を含む条件で、複数のパーティションのそれぞれにm種のコンポーネントバーコードを導入する工程と、m種のコンポーネントバーコードを接続してコンビナトリアルバーコードを生成する工程と、を含み、それにより、複数のパーティションのそれぞれが、m種のコンポーネントバーコードを含むユニークコンビナトリアルバーコードに関連付けられる、方法を提供する。いくつかの実施形態では、複数のパーティションのそれぞれはサンプルを含む。いくつかの実施形態では、サンプルはDNAサンプルである。いくつかの実施形態では、サンプルはRNAサンプルである。いくつかの実施形態では、サンプルは単一細胞である。いくつかの実施形態では、異なるリンカー配列の全数はm-1またはm-2である。いくつかの実施形態では、本方法は、m種のコンポーネントバーコードの1または2つをサンプルの標的にハイブリダイズさせる工程を含む。いくつかの実施形態では、本方法は、標的にハイブリダイズされたm種のコンポーネントバーコードの1または2つを伸長させる工程を含み、それにより標的がコンビナトリアルバーコードで標識される。いくつかの実施形態では、コンポーネントバーコードは、インクジェットプリンターを用いて複数のパーティションのそれぞれで導入される。
【0006】
本明細書に開示されるいくつかの実施形態は、複数のパーティションで複数のDNA標的にバーコードを付ける方法であって、m種のコンポーネントバーコードがn×m種の異なるコンポーネントバーコードのセット(ただし、nおよびmは正の整数である)から選択され、コンポーネントバーコードのそれぞれが、n種のユニークバーコードサブユニット配列の1つと、1もしくは2つのリンカー配列またはその相補体と、を含む条件で、DNA標的を含む複数のパーティションのそれぞれにm種のコンポーネントバーコードを堆積する工程と、m種のコンポーネントバーコードを接続してコンビナトリアルバーコードを生成する工程と、を含み、それにより、複数のパーティションのそれぞれのDNA標的が、m種のコンポーネントバーコードを含むユニークコンビナトリアルバーコードに関連付けられる、方法を提供する。いくつかの実施形態では、異なるリンカー配列の全数はm-1またはm-2である。いくつかの実施形態では、本方法は、m種のコンポーネントバーコードの1または2つをDNA標的にハイブリダイズさせる工程を含む。いくつかの実施形態では、本方法は、DNA標的にハイブリダイズされた、m種のコンポーネントバーコードの1または2つを伸長させて、コンビナトリアルバーコードを含む伸長産物を生成する工程を含む。いくつかの実施形態では、本方法は、伸長産物を増幅する工程を含む。いくつかの実施形態では、伸長産物を増幅する工程は、等温多重鎖置換増幅を含む。いくつかの実施形態では、本方法は、複数のパーティションの増幅産物をプールする工程を含む。いくつかの実施形態では、本方法は、プール増幅産物をシーケンスする工程を含む。いくつかの実施形態では、本方法は、コンビナトリアルバーコードを用いて配列をアセンブルする工程を含む。いくつかの実施形態では、本方法はアセンブルされた配列を用いたハプロタイプを生成することを含む。いくつかの実施形態では、少なくとも100kbをカバーするオーバーラップシーケンシングリードを用いてハプロタイプが生成される。
【0007】
本明細書に開示されるいくつかの実施形態は、単一細胞シーケンシングの方法であって、m種のコンポーネントバーコードがn×m種の異なるコンポーネントバーコードのセット(ただし、nおよびmは正の整数である)から選択され、コンポーネントバーコードのそれぞれが、n種のユニークバーコードサブユニット配列の1つと、1もしくは2つのリンカー配列またはその相補体と、を含む条件で、単一細胞を含む複数のパーティションのそれぞれにm種のコンポーネントバーコードを堆積する工程と、m種のコンポーネントバーコードを接続してコンビナトリアルバーコードを生成する工程と、を含み、それにより、複数のパーティションのそれぞれの単一細胞の標的が、m種のコンポーネントバーコードを含むユニークコンビナトリアルバーコードに関連付けられる、方法を提供する。いくつかの実施形態では、異なるリンカー配列の全数はm-1またはm-2である。いくつかの実施形態では、標的はDNAである。いくつかの実施形態では、標的はRNAである。いくつかの実施形態では、本方法は、m種のコンポーネントバーコードの1または2つを標的にハイブリダイズさせる工程を含む。いくつかの実施形態では、本方法は、標的にハイブリダイズされた、m種のコンポーネントバーコードの1または2つを伸長させて、コンビナトリアルバーコードを含む伸長産物を生成する工程を含む。いくつかの実施形態では、本方法は、伸長産物を増幅する工程を含む。いくつかの実施形態では、本方法は、複数のパーティションの増幅産物をプールする工程を含む。いくつかの実施形態では、本方法は、プール増幅産物をシーケンスする工程を含む。いくつかの実施形態では、本方法は、コンビナトリアルバーコードを用いて単一細胞からの配列をアセンブルする工程を含む。いくつかの実施形態では、本方法は、単一細胞を大規模に並列に特徴付ける工程を含む。
【0008】
本明細書に開示されるいくつかの実施形態は、サンプル中の標的に空間バーコードを付ける方法であって、基材上に固定された複数のオリゴヌクレオチドを提供する工程と、サンプルと基材上に固定された複数のオリゴヌクレオチドとを接触させる工程と、標的と標的に特異的に結合するプローブとをハイブリダイズさせる工程と、標的の位置を示す画像をキャプチャーする工程と、サンプルの画像をキャプチャーする工程と、標的の位置を示す画像とサンプルの画像とを相関付けてサンプル中の標的に空間バーコードを付ける工程と、を含む方法を提供する。いくつかの実施形態では、基材上に固定されたオリゴヌクレオチドはオリゴdTプライマーである。いくつかの実施形態では、基材上に固定されたオリゴヌクレオチドはランダムプライマーである。いくつかの実施形態では、基材上に固定されたオリゴヌクレオチドは標的特異的プライマーである。いくつかの実施形態では、本方法は標的を逆転写してcDNAを生成する工程を含む。いくつかの実施形態では、本方法はdATPホモポリマーをcDNAに付加する工程を含む。いくつかの実施形態では、本方法はブリッジ増幅を用いてcDNAを増幅する工程を含む。いくつかの実施形態では、基材はフローセルの一部である。いくつかの実施形態では、本方法は、サンプルと基材上に固定された複数のオリゴヌクレオチドとを接触させる工程の前または後にサンプルを溶解する工程を含む。いくつかの実施形態では、サンプルを溶解する工程は、サンプルを加熱する工程、サンプルと界面活性剤とを接触させる工程、サンプルのpHを変化させる工程、またはそれらの任意の組合せを含む。いくつかの実施形態では、サンプルは、組織スライス、細胞単層、固定細胞、組織切片、またはそれらの任意の組合せを含む。いくつかの実施形態では、サンプルは複数の細胞を含む。いくつかの実施形態では、複数の細胞は1つ以上の細胞型を含む。いくつかの実施形態では、1つ以上の細胞型の少なくとも1つは、脳細胞、心臓細胞、癌細胞、循環腫瘍細胞、器官細胞、上皮細胞、転移性細胞、良性細胞、一次細胞、循環細胞、またはそれらの任意の組合せである。いくつかの実施形態では、本方法は、標的を増幅して基材上に固定された複数のアンプリコンを生成する工程を含む。いくつかの実施形態では、標的は、リボ核酸(RNA)、メッセンジャーRNA(mRNA)、マイクロRNA、低分子干渉RNA(siRNA)、RNA分解産物、それぞれポリ(A)テールを含むRNA、またはそれらの任意の組合せを含む。いくつかの実施形態では、本方法は複数の標的に空間バーコードを付ける工程を含む。いくつかの実施形態では、プローブは18~100ntの長さである。いくつかの実施形態では、プローブは蛍光標識を含む。いくつかの実施形態では、標的の位置を示す画像は蛍光画像である。いくつかの実施形態では、サンプルは、免疫組織化学染色、進行性染色、ヘマトキシリン-エオシン染色、またはそれらの組合せを含む。いくつかの実施形態では、固体担体は、ポリマー、マトリックス、ヒドロゲル、ニードルアレイデバイス、抗体、またはそれらの任意の組合せを含む。
【0009】
本明細書に開示されるいくつかの実施形態は、単一細胞シーケンシングの方法であって、40種のユニークバーコードの第1のセットから選択される第1のバーコードと第1のプライマーとを含む第1のオリゴヌクレオチドを、単一細胞を含む複数のパーティション中に堆積する工程と、40種のユニークバーコードの第2のセットから選択される第2のバーコードと第2のプライマーとを含む第2のオリゴヌクレオチドを、単一細胞を含む複数のパーティション中に堆積する工程と、第1のオリゴヌクレオチドと単一細胞の標的とを接触させる工程と、第1のオリゴヌクレオチドを伸長させて第1のバーコードを含む第1の鎖を生成する工程と、第2のオリゴヌクレオチドと第1の鎖とを接触させる工程と、第2のオリゴヌクレオチドを伸長させて第1のバーコードと第2のバーコードとを含む第2の鎖を生成する工程と、を含み、それにより、単一細胞の標的が第1のバーコードと第2のバーコードとで標識される、方法を提供する。いくつかの実施形態では、本方法は、第2の鎖を増幅して増幅産物を生成する工程を含む。いくつかの実施形態では、本方法は、複数のパーティションの増幅産物をプールする工程を含む。いくつかの実施形態では、本方法は、プール増幅産物をシーケンスする工程を含む。いくつかの実施形態では、本方法は、第1のバーコードと第2のバーコードとを用いて単一細胞の配列をアセンブルする工程を含む。いくつかの実施形態では、本方法は、単一細胞を大規模に並列に特徴付ける工程を含む。いくつかの実施形態では、複数のパーティションは1536マイクロウェルプレートで構成される。いくつかの実施形態では、標的はmRNAである。いくつかの実施形態では、第1のプライマーはオリゴdTプライマーである。いくつかの実施形態では、標的はDNAである。
【0010】
本明細書に開示されるいくつかの実施形態は、コンビナトリアルバーコードのセットを含む組成物であって、コンビナトリアルバーコードのセットの各コンビナトリアルバーコードが、それぞれn種のユニークバーコードサブユニット配列のセットから選択されるm個のバーコードサブユニット配列(ただし、nおよびmは正の整数である)と、m-1またはm-2個のリンカー配列と、を含み、m個のバーコードサブユニット配列がm-1またはm-2個のリンカー配列を介して互いに接続され、かつコンビナトリアルバーコードのセット中のユニークコンビナトリアルバーコードの全数が384超である、組成物を提供する。いくつかの実施形態では、n種のユニークバーコードサブユニット配列のセットのそれぞれは、分子標識、細胞標識、次元標識、ユニバーサル標識、またはそれらの任意の組合せを含む。いくつかの実施形態では、コンビナトリアルバーコードのセット中のユニークコンビナトリアルバーコードの全数はn以下である。いくつかの実施形態では、コンビナトリアルバーコードのセットのそれぞれは、式:バーコードサブユニット配列a-リンカー1-バーコードサブユニット配列b-リンカー2-…バーコードサブユニット配列c-リンカーm-1-バーコードサブユニット配列dを含むオリゴヌクレオチドを含む。いくつかの実施形態では、コンビナトリアルバーコードのセットのそれぞれは、式:バーコードサブユニット配列a-リンカー1-バーコードサブユニット配列b-リンカー2-…-バーコードサブユニット配列cを含む第1のオリゴヌクレオチドと、バーコードサブユニット配列d-…-リンカー3-バーコードサブユニット配列e-リンカーm-2-バーコードサブユニット配列fを含む第2のオリゴヌクレオチドと、を含む。いくつかの実施形態では、コンビナトリアルバーコードのセットのそれぞれは1または2つの標的特異的領域を含む。いくつかの実施形態では、1または2つの標的特異的領域の1つはオリゴdTである。いくつかの実施形態では、m-1またはm-2個のリンカー配列のそれぞれは異なる。いくつかの実施形態では、mは2~10の整数である。いくつかの実施形態では、mは2~4の整数である。いくつかの実施形態では、nは4~100の整数である。いくつかの実施形態では、n=24である。いくつかの実施形態では、n種のユニークバーコードサブユニット配列は同一の長さである。いくつかの実施形態では、n種のユニークバーコードサブユニット配列は異なる長さを有する。いくつかの実施形態では、m-1またはm-2個のリンカー配列は同一の長さである。いくつかの実施形態では、m-1またはm-2個のリンカー配列は異なる長さを有する。いくつかの実施形態では、コンビナトリアルバーコードのセットは少なくとも100,000種のユニークコンビナトリアルバーコードを有する。いくつかの実施形態では、コンビナトリアルバーコードのセットは少なくとも200,000種のユニークコンビナトリアルバーコードを有する。いくつかの実施形態では、コンビナトリアルバーコードのセットは少なくとも300,000種のユニークコンビナトリアルバーコードを有する。いくつかの実施形態では、コンビナトリアルバーコードのセットは少なくとも400,000種のユニークコンビナトリアルバーコードを有する。いくつかの実施形態では、コンビナトリアルバーコードのセットは少なくとも1,000,000種のユニークコンビナトリアルバーコードを有する。いくつかの実施形態では、コンビナトリアルバーコードのセットのそれぞれは、固体担体に結合される。いくつかの実施形態では、コンビナトリアルバーコードのセットのそれぞれは、パーティションを標識するために使用される。いくつかの実施形態では、パーティションは、10,000個超のマイクロウェルを有するマイクロウェルアレイの一部である。いくつかの実施形態では、マイクロウェルアレイの各マイクロウェルは、コンビナトリアルバーコードのセットの異なるコンビナトリアルバーコードを含む。
【0011】
一態様では、本開示は、試薬バーコードのセットを含む組成物であって、各試薬バーコードmがnの長さを有し、異なる試薬バーコードの数がn×mであり、かつ異なるコンビナトリアルバーコードの可能な数がnである、組成物を提供する。いくつかの実施形態では、異なるコンビナトリアルバーコードは試薬バーコードの組合せである。いくつかの実施形態では、異なるコンビナトリアルバーコードは少なくとも1つのヌクレオチドが異なる。いくつかの実施形態では、異なるコンビナトリアルバーコードは少なくとも2つのヌクレオチドが異なる。いくつかの実施形態では、n/(n×m)は少なくとも1:2000である。いくつかの実施形態では、n/(n×m)は少なくとも1:3000である。いくつかの実施形態では、n/(n×m)は少なくとも1:4000である。いくつかの実施形態では、異なるコンビナトリアルバーコードの数は少なくとも100,000である。いくつかの実施形態では、異なるコンビナトリアルバーコードの数は少なくとも200,000である。いくつかの実施形態では、異なるコンビナトリアルバーコードの数は少なくとも300,000である。いくつかの実施形態では、異なるコンビナトリアルバーコードの数は少なくとも400,000である。いくつかの実施形態では、異なるコンビナトリアルバーコードの数は331,776である。いくつかの実施形態では、mは少なくとも2である。いくつかの実施形態では、mは少なくとも3である。いくつかの実施形態では、mは少なくとも4である。いくつかの実施形態では、mは4である。いくつかの実施形態では、nは5~50である。いくつかの実施形態では、nは24である。いくつかの実施形態では、試薬バーコードのセットの試薬バーコードは異なる長さを含む。いくつかの実施形態では、第1のバーコードは、リンカーを介してバーコードのセットの第2のバーコードに結合される。いくつかの実施形態では、第1のバーコードは標的特異的領域を含む。いくつかの実施形態では、標的特異的領域は標的ポリヌクレオチドのセンス鎖にハイブリダイズする。いくつかの実施形態では、コンビナトリアルバーコードはバイパータイトである。いくつかの実施形態では、コンビナトリアルバーコードはトリパータイトである。いくつかの実施形態では、コンビナトリアルコードは、一部が標的ポリヌクレオチドの3’末端上にあり、かつ一部が標的ポリヌクレオチドの5’末端上にある。いくつかの実施形態では、標的特異的領域は標的ポリヌクレオチドのアンチセンス鎖にハイブリダイズする。いくつかの実施形態では、組成物は標的ポリヌクレオチドをさらに含む。
【0012】
一態様では、本開示は、サンプルにバーコードを付ける方法であって、各試薬バーコードmがnの長さを有し、異なる試薬バーコードの数がn×mであり、かつ異なるコンビナトリアルバーコードの可能な数がnである条件で、試薬バーコードのセットと複数のパーティションとを接触させる工程と、バーコード試薬を標的ポリヌクレオチドに関連付ける工程と、標的ポリヌクレオチドのそれぞれが異なるコンビナトリアルバーコードを含む条件で標的ポリヌクレオチドをバーコード試薬で標識する工程と、を含む方法を提供する。いくつかの実施形態では、標的ポリヌクレオチドはDNAである。いくつかの実施形態では、標的ポリヌクレオチドはゲノムDNAである。いくつかの実施形態では、標的ポリヌクレオチドはRNAである。いくつかの実施形態では、標的ポリヌクレオチドは染色体の断片である。いくつかの実施形態では、標的ポリヌクレオチドは少なくとも100キロ塩基長である。いくつかの実施形態では、標的ポリヌクレオチドは単一細胞のものである。
【0013】
一態様では、本開示は、複数の細胞を単離する方法であって、ウェルが2つ以上のコンビナトリアルバーコード試薬を含む条件で複数の細胞の単一細胞を基材の単一ウェル中に非ポアソン的に単離する工程と、細胞の核酸をコンビナトリアルバーコード試薬で標識することによりコンビナトリアルバーコード付き核酸を生成する工程と、を含む方法を提供する。いくつかの実施形態では、単離工程は、基材のウェルの少なくとも20%が単一細胞を有するように複数の細胞を分配する工程を含む。いくつかの実施形態では、単離工程は、基材のウェルの少なくとも40%が単一細胞を有するように複数の細胞を分配する工程を含む。いくつかの実施形態では、単離工程は、基材のウェルの少なくとも60%が単一細胞を有するように複数の細胞を分配する工程を含む。いくつかの実施形態では、単離工程は、基材のウェルの少なくとも80%が単一細胞を有するように複数の細胞を分配する工程を含む。いくつかの実施形態では、単離工程は、基材のウェルの100%が単一細胞を有するように複数の細胞を分配する工程を含む。いくつかの実施形態では、単離工程は非ランダムである。いくつかの実施形態では、単離工程は単離デバイスにより行われる。いくつかの実施形態では、単離デバイスは、フローサイトメーター、ニードルアレイ、およびマイクロインジェクターからなる群から選択されるデバイスまたはそれらの任意の組合せを含む。いくつかの実施形態では、基材は少なくとも500ウェルを含む。いくつかの実施形態では、基材は少なくとも1,000ウェルを含む。いくつかの実施形態では、基材は少なくとも10,000ウェルを含む。いくつかの実施形態では、基材は、96、384、または1536ウェルを含む。いくつかの実施形態では、コンビナトリアルバーコード試薬の一コンビナトリアルバーコード試薬はサブユニットコードセクションを含む。いくつかの実施形態では、このコンビナトリアルバーコード試薬は、サブユニットコードセクションに近接するリンカーをさらに含む。いくつかの実施形態では、リンカーは、サブユニットコードセクションの5’、3’、または5’と3’の両方に位置する。いくつかの実施形態では、異なるコンビナトリアルバーコード試薬のリンカーは、ハイブリダイズさせて一体化することによりコンカチネートコンビナトリアルバーコード試薬を生成するように構成される。いくつかの実施形態では、コンカチネートバーコード試薬はコンビナトリアルバーコードに対応する。いくつかの実施形態では、コンビナトリアルバーコードはバイパータイトである。いくつかの実施形態では、コンビナトリアルバーコードは、一部がコンビナトリアルバーコード付き核酸の3’末端上にあり、かつ一部がコンビナトリアルバーコード付き核酸の5’末端上にある。いくつかの実施形態では、サブユニットコードセクションは4~30ヌクレオチド長である。いくつかの実施形態では、サブユニットコードセクションは6ヌクレオチド長である。いくつかの実施形態では、コンビナトリアルバーコード試薬の各サブユニットコードセクションはユニークサブユニットコード配列を含む。いくつかの実施形態では、コンビナトリアルバーコード試薬の一コンビナトリアルバーコード試薬は標的特異的領域を含む。いくつかの実施形態では、コンビナトリアルバーコード試薬の1つのみが標的特異的領域を含む。いくつかの実施形態では、コンビナトリアルバーコード試薬の2つのみが標的特異的領域を含む。いくつかの実施形態では、標的特異的領域は、ランダムマルチマー、オリゴdT、または遺伝子特異的配列からなる群から選択される。いくつかの実施形態では、標的特異的領域は、標的核酸のセンス鎖にハイブリダイズするように適合化される。いくつかの実施形態では、標的特異的領域は、標的核酸のアンチセンス鎖にハイブリダイズするように適合化される。いくつかの実施形態では、標識工程は、コンビナトリアルバーコード試薬を核酸にハイブリダイズさせる工程を含む。いくつかの実施形態では、ハイブリダイズ工程は、コグネイトリンカーを介してコンビナトリアルバーコード試薬を互いにハイブリダイズさせる工程をさらに含む。いくつかの実施形態では、本方法は、コンビナトリアルバーコード試薬を伸長させる工程をさらに含む。いくつかの実施形態では、伸長工程は、コンビナトリアルバーコード試薬をプライマー伸長させる工程を含む。いくつかの実施形態では、伸長工程は、コンビナトリアルバーコード試薬の配列と核酸とを含む転写物を生成する工程を含む。いくつかの実施形態では、基材のウェルは、コンビナトリアルバーコード試薬の異なる組合せを含む。いくつかの実施形態では、コンビナトリアルバーコード試薬の異なる組合せは、異なるコンビナトリアルバーコードに対応する。いくつかの実施形態では、本方法は、標識工程の後にコンビナトリアルバーコード付き核酸をプールする工程をさらに含む。いくつかの実施形態では、本方法は、コンビナトリアルバーコード付き核酸を増幅する工程をさらに含み、それによりコンビナトリアルバーコード付きアンプリコンを生成する。いくつかの実施形態では、増幅工程は多重鎖置換を含む。いくつかの実施形態では、増幅工程はPCRを含む。いくつかの実施形態では、増幅工程は、コンビナトリアルバーコード試薬の配列にハイブリダイズするプライマーを用いて行われる。いくつかの実施形態では、増幅工程は、遺伝子特異的プライマーとコンビナトリアルバーコード試薬の配列にハイブリダイズするプライマーとを用いて行われる。いくつかの実施形態では、本方法は、コンビナトリアルバーコード付きアンプリコンの配列を決定する工程をさらに含む。いくつかの実施形態では、決定工程は、コンビナトリアルバーコード付きアンプリコンのコンビナトリアルバーコードの配列の部分と、コンビナトリアルバーコード付きアンプリコンの核酸の配列の部分と、を決定する工程を含む。いくつかの実施形態では、本方法は、標識工程の前に細胞を溶解する工程をさらに含む。いくつかの実施形態では、核酸はRNAである。いくつかの実施形態では、核酸はmRNAである。いくつかの実施形態では、核酸はDNAである。いくつかの実施形態では、核酸はゲノムDNAである。いくつかの実施形態では、細胞は、ヒト細胞、哺乳動物細胞、ラット細胞、ブタ細胞、マウス細胞、ハエ細胞、ワーム細胞、無脊椎動物細胞、脊椎動物細胞、菌類細胞、細菌細胞、および植物細胞からなる群から選択される細胞またはそれらの任意の組合せを含む。いくつかの実施形態では、細胞は腫瘍細胞を含む。いくつかの実施形態では、細胞は疾患細胞を含む。いくつかの実施形態では、ウェル中のコンビナトリアルバーコード試薬の数は少なくとも2である。いくつかの実施形態では、ウェル中のコンビナトリアルバーコード試薬の数は少なくとも3である。いくつかの実施形態では、ウェル中のコンビナトリアルバーコード試薬の数は少なくとも4である。いくつかの実施形態では、ウェル中のコンビナトリアルバーコード試薬の数は4である。
【0014】
一態様では、本開示は、コンビナトリアルバーコード試薬のセットを含むキットであって、コンビナトリアルバーコード試薬の1つのみが標的特異的配列を含み、コンビナトリアルバーコード試薬がリンカーを介してオーバーラップするようにコンビナトリアルバーコード試薬のセットのバーコードがリンカーを含み、それによりコンビナトリアルバーコードを生成する、キットを提供する。いくつかの実施形態では、コンビナトリアルバーコードはコンビナトリアルバーコード試薬の組合せを含む。いくつかの実施形態では、コンビナトリアルバーコードの配列は少なくとも1つのヌクレオチドが異なる。いくつかの実施形態では、コンビナトリアルバーコードの配列は少なくとも2つのヌクレオチドが異なる。いくつかの実施形態では、コンビナトリアルバーコード試薬のセットから生成されるコンビナトリアルバーコードの数は少なくとも100,000である。いくつかの実施形態では、コンビナトリアルバーコード試薬のセットから生成されるコンビナトリアルバーコードの数は少なくとも200,000である。いくつかの実施形態では、コンビナトリアルバーコード試薬のセットから生成されるコンビナトリアルバーコードの数は少なくとも300,000である。いくつかの実施形態では、コンビナトリアルバーコード試薬のセットから生成されるコンビナトリアルバーコードの数は少なくとも400,000である。いくつかの実施形態では、コンビナトリアルバーコード試薬のセットから生成されるコンビナトリアルバーコードの数は331,776である。いくつかの実施形態では、コンビナトリアルバーコード試薬の一コンビナトリアルバーコード試薬はサブユニットコードセクションを含む。いくつかの実施形態では、このコンビナトリアルバーコード試薬は、サブユニットコードセクションに近接するリンカーをさらに含む。いくつかの実施形態では、リンカーは、サブユニットコードセクションの5’、3’、または5’と3’の両方に位置する。いくつかの実施形態では、異なるコンビナトリアルバーコード試薬のリンカーは、ハイブリダイズさせて一体化することによりコンカチネートコンビナトリアルバーコード試薬を生成するように構成される。いくつかの実施形態では、コンカチネートバーコード試薬はコンビナトリアルバーコードを含む。いくつかの実施形態では、サブユニットコードセクションは5~35ヌクレオチド長である。いくつかの実施形態では、サブユニットコードセクションは6ヌクレオチド長である。いくつかの実施形態では、コンビナトリアルバーコードの各サブユニットコードセクションは、ユニークサブユニットコード配列を含む。いくつかの実施形態では、各試薬バーコードmはnのサブユニットコード長さを有し、かつn/(n×m)は少なくとも2000である。いくつかの実施形態では、n/(n×m)は少なくとも3000である。いくつかの実施形態では、n/(n×m)は少なくとも4000である。いくつかの実施形態では、n×mは異なる試薬バーコードの数である。いくつかの実施形態では、nは異なるコンビナトリアルバーコードの可能な数である。いくつかの実施形態では、コンビナトリアルバーコード試薬の一コンビナトリアルバーコード試薬は標的特異的領域を含む。いくつかの実施形態では、標的特異的領域は、ランダムマルチマー、オリゴdT、または遺伝子特異的配列からなる群から選択される。いくつかの実施形態では、標的特異的領域は、標的核酸のセンス鎖にハイブリダイズするように適合化される。いくつかの実施形態では、標的特異的領域は、標的核酸のアンチセンス鎖にハイブリダイズするように適合化される。いくつかの実施形態では、コンビナトリアルバーコードはバイパータイトである。いくつかの実施形態では、コンビナトリアルバーコードの部分は、一部が標的ポリヌクレオチドの3’末端上にあり、かつ一部が標的ポリヌクレオチドの5’末端上にある。いくつかの実施形態では、キットは基材をさらに含む。いくつかの実施形態では、基材は少なくとも1,000マイクロウェルを含む。いくつかの実施形態では、マイクロウェルは、試薬バーコードのセットの少なくとも2つの試薬バーコードを含む。いくつかの実施形態では、キットは使用説明書をさらに含む。いくつかの実施形態では、キットは緩衝液をさらに含む。いくつかの実施形態では、キットはさらに遺伝子特異的プライマーを含む。いくつかの実施形態では、キットは増幅プライマーをさらに含む。
【0015】
一態様では、本開示は、全ゲノムシーケンシングの方法であって、核酸染色体を1つ以上の染色体断片に断片化する工程と、2つ以上の試薬バーコードを含む基材のウェル中に1つ以上の染色体断片を単離する工程と、試薬バーコードと共に染色体断片を増幅することによりコンビナトリアルバーコード付き断片を生成する工程と、コンビナトリアルバーコード付き断片の配列を決定することにより全ゲノムシーケンシングを行う工程と、を含む方法を提供する。いくつかの実施形態では、染色体断片は少なくとも100キロ塩基長である。いくつかの実施形態では、染色体断片は50~300キロ塩基長である。いくつかの実施形態では、断片化する工程は1×10~1×10断片を生成する。いくつかの実施形態では、単離する工程はウェル中に1~5断片を単離する工程を含む。いくつかの実施形態では、1~5断片はオーバーラップしない。いくつかの実施形態では、増幅する工程は多重鎖置換を含む。いくつかの実施形態では、増幅する工程は等温である。いくつかの実施形態では、本方法は、決定工程の前にコンビナトリアルバーコード付き断片をプールする工程をさらに含む。いくつかの実施形態では、決定工程は、コンビナトリアルバーコードの少なくとも一部と染色体断片の少なくとも一部とをシーケンスする工程を含む。いくつかの実施形態では、決定工程は、コンビナトリアルバーコード配列に基づいてシーケンスリードをいくつかのグループにグループ化する工程を含む。いくつかの実施形態では、グループは、基材のウェルに対応する。いくつかの実施形態では、本方法は、染色体断片からコンティグをアセンブルする工程をさらに含む。いくつかの実施形態では、本方法は、コンティグを母系または父系染色体にマッピングする工程をさらに含む。いくつかの実施形態では、マッピング工程は、染色体断片のハプロタイプフェージングを決定する。
特定の実施形態において、例えば、以下が提供される:
(項目1)
コンビナトリアルバーコードのセットを生成するためのコンポーネントバーコードのセットを含む組成物であって、
n×m種のユニークコンポーネントバーコードであって、nおよびmは正の整数であるユニークコンポーネントバーコード、
を含み、
前記コンポーネントバーコードのそれぞれが、
n種のユニークバーコードサブユニット配列の1つと、
1もしくは2つのリンカー配列またはその相補体と、
を含み、
前記コンポーネントバーコードが、前記1もしくは2つのリンカー配列またはその相補体を介して互いに接続してコンビナトリアルバーコードのセットを生成するように構成される、組成物。
(項目2)
n種のユニークバーコードサブユニット配列のセットのそれぞれ1つが、分子標識、細胞標識、次元標識、ユニバーサル標識、またはそれらの任意の組合せを含む、項目1に記載の組成物。
(項目3)
異なるリンカー配列の全数がm-1またはm-2である、項目1または2に記載の組成物。
(項目4)
前記コンポーネントバーコードのそれぞれが、
a)バーコードサブユニット配列-リンカー、
b)リンカーの相補体-バーコードサブユニット配列-リンカー、または
c)リンカーの相補体-バーコードサブユニット配列、
を含む、項目1~3のいずれか一項に記載の組成物。
(項目5)
コンビナトリアルバーコードのセットのそれぞれ1つが、式:バーコードサブユニット配列 -リンカー -バーコードサブユニット配列 -リンカー -…バーコードサブユニット配列 -リンカー m-1 -バーコードサブユニット配列 を含むオリゴヌクレオチドを含む、項目1~4のいずれか一項に記載の組成物。
(項目6)
前記オリゴヌクレオチドが標的特異的領域を含む、項目5に記載の組成物。
(項目7)
前記標的特異的領域がオリゴdTである、項目6に記載の組成物。
(項目8)
コンビナトリアルバーコードのセットのそれぞれ1つが、
式:バーコードサブユニット配列 -リンカー -バーコードサブユニット配列 -リンカー -…-バーコードサブユニット配列 を含む第1のオリゴヌクレオチドと、
バーコードサブユニット配列 -…-リンカー -バーコードサブユニット配列 -リンカー m-2 -バーコードサブユニット配列 を含む第2のオリゴヌクレオチドと、
を含む、項目1~4のいずれか一項に記載の組成物。
(項目9)
前記第1のオリゴヌクレオチドおよび前記第2のオリゴヌクレオチドのそれぞれが標的特異的領域を含む、項目8に記載の組成物。
(項目10)
前記標的特異的領域の1つがオリゴdTである、項目9に記載の組成物。
(項目11)
前記1もしくは2つのリンカー配列のそれぞれ1つが異なる、項目1~10のいずれか一項に記載の組成物。
(項目12)
mが2~10の整数である、項目1~11のいずれか一項に記載の組成物。
(項目13)
mが2~4の整数である、項目1~11のいずれか一項に記載の組成物。
(項目14)
nが4~100の整数である、項目1~13のいずれか一項に記載の組成物。
(項目15)
n=24である、項目1~13のいずれか一項に記載の組成物。
(項目16)
前記n種のユニークバーコードサブユニット配列が同一の長さである、項目1~15のいずれか一項に記載の組成物。
(項目17)
前記n種のユニークバーコードサブユニット配列の少なくとも2つが異なる長さを有する、項目1~15のいずれか一項に記載の組成物。
(項目18)
前記リンカー配列が同一の長さである、項目1~17のいずれか一項に記載の組成物。
(項目19)
前記リンカー配列が異なる長さを有する、項目1~17のいずれか一項に記載の組成物。
(項目20)
コンビナトリアルバーコードのセットがn 種以下のユニークコンビナトリアルバーコードを有する、項目1~19のいずれか一項に記載の組成物。
(項目21)
コンビナトリアルバーコードのセットが少なくとも100,000種のユニークコンビナトリアルバーコードを有する、項目1~19のいずれか一項に記載の組成物。
(項目22)
コンビナトリアルバーコードのセットが少なくとも200,000種のユニークコンビナトリアルバーコードを有する、項目1~19のいずれか一項に記載の組成物。
(項目23)
コンビナトリアルバーコードのセットが少なくとも300,000種のユニークコンビナトリアルバーコードを有する、項目1~19のいずれか一項に記載の組成物。
(項目24)
コンビナトリアルバーコードのセットが少なくとも400,000種のユニークコンビナトリアルバーコードを有する、項目1~19のいずれか一項に記載の組成物。
(項目25)
コンビナトリアルバーコードのセットが少なくとも1,000,000種のユニークコンビナトリアルバーコードを有する、項目1~19のいずれか一項に記載の組成物。
(項目26)
複数のパーティションにバーコードを付ける方法であって、
m種のコンポーネントバーコードがn×m種の異なるコンポーネントバーコードのセットであって、nおよびmは正の整数であるコンポーネントバーコードのセットから選択され、前記コンポーネントバーコードのそれぞれが、
n種のユニークバーコードサブユニット配列の1つと、
1もしくは2つのリンカー配列またはその相補体と、
を含む条件で、
複数のパーティションのそれぞれにm種のコンポーネントバーコードを導入する工程と、
前記m種のコンポーネントバーコードを接続してコンビナトリアルバーコードを生成する工程と、
を含み、
それにより、前記複数のパーティションのそれぞれが、前記m種のコンポーネントバーコードを含むユニークコンビナトリアルバーコードに関連付けられる、方法。
(項目27)
前記複数のパーティションのそれぞれがサンプルを含む、項目26に記載の方法。
(項目28)
前記サンプルがDNAサンプルである、項目27に記載の方法。
(項目29)
前記サンプルがRNAサンプルである、項目27に記載の方法。
(項目30)
前記サンプルが単一細胞である、項目27に記載の方法。
(項目31)
異なるリンカー配列の全数がm-1またはm-2である、項目26~30のいずれか一項に記載の方法。
(項目32)
前記m種のコンポーネントバーコードの1または2つを前記サンプルの標的にハイブリダイズする工程を含む、項目27~31のいずれか一項に記載の方法。
(項目33)
前記標的にハイブリダイズした前記m種のコンポーネントバーコードの1または2つを伸長させる工程を含み、それにより前記標的が前記コンビナトリアルバーコードで標識される、項目32に記載の方法。
(項目34)
インクジェットプリンターを用いて前記複数のパーティションのそれぞれに前記コンポーネントバーコードが導入される、項目26~33のいずれか一項に記載の方法。
(項目35)
複数のパーティション中の複数のDNA標的にバーコードを付ける方法であって、
m種のコンポーネントバーコードがn×m種の異なるコンポーネントバーコードのセットであって、nおよびmは正の整数であるコンポーネントバーコードのセットから選択され、前記コンポーネントバーコードのそれぞれが、
n種のユニークバーコードサブユニット配列の1つと、
1もしくは2つのリンカー配列またはその相補体と、
を含む条件で、
DNA標的を含む前記複数のパーティションのそれぞれに前記m種のコンポーネントバーコードを堆積する工程と、
前記m種のコンポーネントバーコードを接続してコンビナトリアルバーコードを生成する工程と、
を含み、
それにより、前記複数のパーティションのそれぞれのDNA標的が、前記m種のコンポーネントバーコードを含むユニークコンビナトリアルバーコードに関連付けられる、方法。
(項目36)
異なるリンカー配列の全数がm-1またはm-2である、項目35に記載の方法。
(項目37)
前記m種のコンポーネントバーコードの1または2つを前記DNA標的にハイブリダイズする工程を含む、項目35または36に記載の方法。
(項目38)
前記DNA標的にハイブリダイズした前記m種のコンポーネントバーコードの1または2つを伸長させて前記コンビナトリアルバーコードを含む伸長産物を生成する工程を含む、項目37に記載の方法。
(項目39)
前記伸長産物を増幅する工程を含む、項目38に記載の方法。
(項目40)
前記伸長産物を増幅する工程が等温多重鎖置換増幅を含む、項目39に記載の方法。
(項目41)
前記複数のパーティションの増幅産物をプールする工程を含む、項目39または40に記載の方法。
(項目42)
前記プールされた増幅産物をシーケンスする工程を含む、項目41に記載の方法。
(項目43)
前記コンビナトリアルバーコードを用いて前記配列をアセンブルする工程を含む、項目42に記載の方法。
(項目44)
前記アセンブルされた配列を用いてハプロタイプを生成する工程を含む、項目43に記載の方法。
(項目45)
前記ハプロタイプが、少なくとも100kbをカバーするシーケンシングリードをオーバーラップさせる工程を用いて生成される、項目44に記載の方法。
(項目46)
単一細胞シーケンシングの方法であって、
m種のコンポーネントバーコードがn×m種の異なるコンポーネントバーコードのセットであって、nおよびmは正の整数であるコンポーネントバーコードのセットから選択され、前記コンポーネントバーコードのそれぞれが、
n種のユニークバーコードサブユニット配列の1つと、
1もしくは2つのリンカー配列またはその相補体と、
を含む条件で、
単一細胞を含む複数のパーティションのそれぞれに前記m種のコンポーネントバーコードを堆積する工程と、
前記m種のコンポーネントバーコードを接続してコンビナトリアルバーコードを生成する工程と、
を含み、
それにより、前記複数のパーティションのそれぞれの単一細胞の標的が、前記m種のコンポーネントバーコードを含むユニークコンビナトリアルバーコードに関連付けられる、方法。
(項目47)
異なるリンカー配列の全数がm-1またはm-2である、項目46に記載の方法。
(項目48)
前記標的がDNAである、項目46または47に記載の方法。
(項目49)
前記標的がRNAである、項目46または47に記載の方法。
(項目50)
前記m種のコンポーネントバーコードの1または2つを前記標的にハイブリダイズさせる工程を含む、項目46~49のいずれか一項に記載の方法。
(項目51)
前記標的にハイブリダイズした前記m種のコンポーネントバーコードの1または2つを伸長させて前記コンビナトリアルバーコードを含む伸長産物を生成する工程を含む、項目50に記載の方法。
(項目52)
前記伸長産物を増幅させる工程を含む、項目51に記載の方法。
(項目53)
前記複数のパーティションからの増幅産物をプールする工程を含む、項目52に記載の方法。
(項目54)
前記プールされた増幅産物をシーケンスする工程を含む、項目53に記載の方法。
(項目55)
前記コンビナトリアルバーコードを用いて単一細胞からの配列をアセンブルする工程を含む、項目54に記載の方法。
(項目56)
単一細胞の大規模並列特徴付けの工程を含む、項目55に記載の方法。
(項目57)
サンプル中の標的に空間バーコードを付ける方法であって、
基材上に固定された複数のオリゴヌクレオチドを提供する工程と、
サンプルと前記基材上に固定された複数のオリゴヌクレオチドとを接触させる工程と、
前記標的と前記標的に特異的に結合するプローブとをハイブリダイズさせる工程と、
前記標的の位置を示す画像をキャプチャーする工程と、
前記サンプルの画像をキャプチャーする工程と、
前記標的の位置を示す画像と前記サンプルの画像とを相関付けて前記サンプル中の標的に空間バーコードを付ける工程と、
を含む方法。
(項目58)
前記基材上に固定されたオリゴヌクレオチドがオリゴdTプライマーである、項目57に記載の方法。
(項目59)
前記基材上に固定されたオリゴヌクレオチドがランダムプライマーである、項目57に記載の方法。
(項目60)
前記基材上に固定されたオリゴヌクレオチドが標的特異的プライマーである、項目57に記載の方法。
(項目61)
前記標的を逆転写してcDNAを生成する工程を含む、項目57~60のいずれか一項に記載の方法。
(項目62)
前記cDNAにdATPホモポリマーを付加する工程を含む、項目61に記載の方法。
(項目63)
ブリッジ増幅を用いてcDNAを増幅する工程を含む、項目62に記載の方法。
(項目64)
前記基材はフローセルの一部である、項目57~63のいずれか一項に記載の方法。
(項目65)
前記サンプルと前記基材上に固定された複数のオリゴヌクレオチドとを接触させる工程の前または後に前記サンプルを溶解する工程を含む、項目57~64のいずれか一項に記載の方法。
(項目66)
前記サンプルを溶解する工程が、前記サンプルを加熱する工程、前記サンプルと界面活性剤とを接触させる工程、前記サンプルのpHを変化させる工程、またはそれらの任意の組合せを含む、項目65に記載の方法。
(項目67)
前記サンプルが、組織スライス、細胞単層、固定細胞、組織切片、またはそれらの任意の組合せを含む、項目57~66のいずれか一項に記載の方法。
(項目68)
前記サンプルが複数の細胞を含む、項目57~66のいずれか一項に記載の方法。
(項目69)
前記複数の細胞が1つ以上の細胞型を含む、項目68に記載の方法。
(項目70)
前記1つ以上の細胞型の少なくとも1つが、脳細胞、心臓細胞、癌細胞、循環腫瘍細胞、器官細胞、上皮細胞、転移細胞、良性細胞、一次細胞、循環細胞、またはそれらの任意の組合せである、項目69に記載の方法。
(項目71)
前記標的を増幅して前記基材上に固定された複数のアンプリコンを生成する工程を含む、項目57~70のいずれか一項に記載の方法。
(項目72)
前記標的が、リボ核酸(RNA)、メッセンジャーRNA(mRNA)、マイクロRNA、低分子干渉RNA(siRNA)、RNA分解産物、それぞれポリ(A)テールを含むRNA、またはそれらの任意の組合せを含む、項目57~70のいずれか一項に記載の方法。
(項目73)
複数の標的に空間バーコードを付ける工程を含む、項目57~72のいずれか一項に記載の方法。
(項目74)
前記プローブが18~100ntの長さである、項目57~73のいずれか一項に記載の方法。
(項目75)
前記プローブが蛍光標識を含む、項目57~74のいずれか一項に記載の方法。
(項目76)
前記標的の位置を示す画像が蛍光画像である、項目75に記載の方法。
(項目77)
前記サンプルが、免疫組織化学染色、進行性染色、ヘマトキシリン-エオシン染色、またはそれらの組合せを含む、項目57~76のいずれか一項に記載の方法。
(項目78)
前記固体担体が、ポリマー、マトリックス、ヒドロゲル、ニードルアレイデバイス、抗体、またはそれらの任意の組合せを含む、項目57~77のいずれか一項に記載の方法。
(項目79)
単一細胞シーケンシングの方法であって、
40種のユニークバーコードの第1のセットから選択される第1のバーコードと第1のプライマーとを含む第1のオリゴヌクレオチドを、単一細胞を含む複数のパーティション中に堆積する工程と、
40種のユニークバーコードの第2のセットから選択される第2のバーコードと第2のプライマーとを含む第2のオリゴヌクレオチドを、前記単一細胞を含む複数のパーティション中に堆積する工程と、
前記第1のオリゴヌクレオチドと前記単一細胞の標的とを接触させる工程と、
前記第1のオリゴヌクレオチドを伸長させて前記第1のバーコードを含む第1の鎖を生成する工程と、
前記第2のオリゴヌクレオチドと前記第1の鎖とを接触させる工程と、
前記第2のオリゴヌクレオチドを伸長させて前記第1のバーコードと前記第2のバーコードとを含む第2の鎖を生成する工程と、
を含み、
それにより、前記単一細胞の標的が前記第1のバーコードと前記第2のバーコードとで標識される、方法。
(項目80)
前記第2の鎖を増幅して増幅産物を生成する工程を含む、項目79に記載の方法。
(項目81)
前記複数のパーティションからの増幅産物をプールする工程を含む、項目80に記載の方法。
(項目82)
前記プールされた増幅産物をシーケンスする工程を含む、項目80または81に記載の方法。
(項目83)
前記第1のバーコードと前記第2のバーコードとを用いて単一細胞からの配列をアセンブルする工程を含む、項目82に記載の方法。
(項目84)
単一細胞の大規模並列特徴付けの工程を含む、項目83に記載の方法。
(項目85)
前記複数のパーティションが1536マイクロウェルプレートで構成される、項目79~84のいずれか一項に記載の方法。
(項目86)
前記標的がmRNAである、項目79~85のいずれか一項に記載の方法。
(項目87)
前記第1のプライマーがオリゴdTプライマーである、項目86に記載の方法。
(項目88)
前記標的がDNAである、項目79~85のいずれか一項に記載の方法。
(項目89)
コンビナトリアルバーコードのセットを含む組成物であって、
前記コンビナトリアルバーコードのセットの各コンビナトリアルバーコードが、
それぞれn種のユニークバーコードサブユニット配列のセットから選択されるm個のバーコードサブユニット配列であって、nおよびmは正の整数であるバーコードサブユニット配列と、
m-1またはm-2個のリンカー配列と、
を含み、
前記m個のバーコードサブユニット配列がm-1またはm-2個のリンカー配列を介して互いに接続され、かつ前記コンビナトリアルバーコードのセット中のユニークコンビナトリアルバーコードの全数が384超である、組成物。
(項目90)
前記n種のユニークバーコードサブユニット配列のセットのそれぞれ1つが、分子標識、細胞標識、次元標識、ユニバーサル標識、またはそれらの任意の組合せを含む、項目89に記載の組成物。
(項目91)
前記コンビナトリアルバーコードのセット中のユニークコンビナトリアルバーコードの全数がn 以下である、項目89または90に記載の組成物。
(項目92)
前記コンビナトリアルバーコードのセットのそれぞれ1つが、式:バーコードサブユニット配列 -リンカー -バーコードサブユニット配列 -リンカー -…バーコードサブユニット配列 -リンカー m-1 -バーコードサブユニット配列 を含むオリゴヌクレオチドを含む、項目89~91のいずれか一項に記載の組成物。
(項目93)
前記コンビナトリアルバーコードのセットのそれぞれ1つが、
式:バーコードサブユニット配列 -リンカー -バーコードサブユニット配列 -リンカー -…-バーコードサブユニット配列 を含む第1のオリゴヌクレオチドと、
バーコードサブユニット配列 -…-リンカー -バーコードサブユニット配列 -リンカー m-2 -バーコードサブユニット配列 を含む第2のオリゴヌクレオチドと、
を含む、項目89~91のいずれか一項に記載の組成物。
(項目94)
前記コンビナトリアルバーコードのセットのそれぞれ1つが1または2つの標的特異的領域を含む、項目89~93のいずれか一項に記載の組成物。
(項目95)
前記1または2つの標的特異的領域の1つがオリゴdTである、項目94に記載の組成物。
(項目96)
前記m-1またはm-2個のリンカー配列のそれぞれ1つが異なる、項目89~95のいずれか一項に記載の組成物。
(項目97)
mが2~10の整数である、項目89~96のいずれか一項に記載の組成物。
(項目98)
mが2~4の整数である、項目89~96のいずれか一項に記載の組成物。
(項目99)
nが4~100の整数である、項目89~98のいずれか一項に記載の組成物。
(項目100)
n=24である、項目89~98のいずれか一項に記載の組成物。
(項目101)
前記n種のユニークバーコードサブユニット配列が同一の長さである、項目89~100のいずれか一項に記載の組成物。
(項目102)
前記n種のユニークバーコードサブユニット配列が異なる長さを有する、項目89~100のいずれか一項に記載の組成物。
(項目103)
前記m-1またはm-2個のリンカー配列が同一の長さである、項目89~102のいずれか一項に記載の組成物。
(項目104)
前記m-1またはm-2個のリンカー配列が異なる長さを有する、項目89~102のいずれか一項に記載の組成物。
(項目105)
前記コンビナトリアルバーコードのセットが少なくとも100,000種のユニークコンビナトリアルバーコードを有する、項目89~104のいずれか一項に記載の組成物。
(項目106)
前記コンビナトリアルバーコードのセットが少なくとも200,000種のユニークコンビナトリアルバーコードを有する、項目89~104のいずれか一項に記載の組成物。
(項目107)
前記コンビナトリアルバーコードのセットが少なくとも300,000種のユニークコンビナトリアルバーコードを有する、項目89~104のいずれか一項に記載の組成物。
(項目108)
前記コンビナトリアルバーコードのセットが少なくとも400,000種のユニークコンビナトリアルバーコードを有する、項目89~104のいずれか一項に記載の組成物。
(項目109)
前記コンビナトリアルバーコードのセットが少なくとも1,000,000種のユニークコンビナトリアルバーコードを有する、項目89~104のいずれか一項に記載の組成物。
(項目110)
前記コンビナトリアルバーコードのセットのそれぞれ1つが固体担体に結合される、項目89~109のいずれか一項に記載の組成物。
(項目111)
前記コンビナトリアルバーコードのセットのそれぞれ1つがパーティションを標識するために使用される、項目89~110のいずれか一項に記載の組成物。
(項目112)
前記パーティションが、10,000個超のマイクロウェルを有するマイクロウェルアレイの一部である、項目111に記載の組成物。
(項目113)
前記マイクロウェルアレイの各マイクロウェルが前記コンビナトリアルバーコードのセットとは異なるコンビナトリアルバーコードを含む、項目112に記載の組成物。
【0016】
本発明の新規な特徴は、添付の特許請求の範囲に特定的に示される。本発明の原理が利用される例示的な実施形態を示す以下の詳細な説明および添付の図面を参照すれば、本発明の特徴および利点のよりよい理解が得られるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本開示のコンビナトリアルバーコード試薬の例示的な実施形態を示す。
図2】本開示のコンビナトリアルバーコード試薬のコンカチネーションの例示的な実施形態を示す。
図3】核酸のコンビナトリアルバーコーディングのための本開示の方法の例示的な実施形態を示す。
図4】本開示のコンビナトリアルバーコード試薬を用いてコンティグを生成する方法の例示的な実施形態を示す。
図5】本開示のコンビナトリアルバーコード試薬を用いて単一細胞をジェノタイピングする方法の例示的な実施形態を示す。
図6】コンビナトリアルバーコーディング法と確率バーコーディング法とを組み合わせる方法の例示的な実施形態を示す。
図7】本開示のバイパータイトコンビナトリアルバーコード法の例示的な実施形態を示す。
図8】固体担体上に固定されたコンビナトリアルバーコードの例示的な実施形態を示す。
図9】サンプル中の標的に空間バーコードを付けるための本開示の方法の例示的な実施形態を示す。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本開示は、コンポーネントバーコード試薬の小さいセットを用いるだけでさまざまなバーコーディング試薬のレパートリーを生成するための組成物および方法を提供する。本開示の方法は、コンポーネントバーコーディング試薬のコンビナトリアルペアリングを行うための単純な分子生物学工程を提供する。いくつかの場合には、何十万~何百万超ものサンプルの並列処理が可能である。たとえば、並列処理が可能なサンプルの数は、少なくとも100、1,000、5,000、10,000、50,000、100,000、200,000、300,000、400,000、500,000、600,000、700,000、800,000、または900,000でありうる。いくつかの実施形態では、並列処理が可能なサンプルの数は、多くとも100、1,000、5,000、10,000、50,000、100,000、200,000、300,000、400,000、500,000、600,000、700,000、800,000、または900,000でありうる。いくつかの実施形態では、少なくとも100万、200万、300万、400万、500万、600万、700万、800万、900万、もしくは1000万またはそれ以上のサンプルの並列処理が可能である。いくつかの実施形態では、多くとも100万、200万、300万、400万、500万、600万、700万、800万、900万、もしくは1000万またはそれ以上のサンプルの並列処理が可能である。
【0019】
本開示は、コンビナトリアルバーコード試薬を用いた核酸のコンビナトリアルバーコーディングのための方法、組成物、キット、およびシステムを提供する。図1に示されるように、本開示のコンビナトリアルバーコード試薬105/110/115/120は、標的特異的領域、サブユニットコードセクション、およびリンカー領域、またはそれらの任意の組合せを含みうる。サブユニットコードセクションXXXXXXは、サブユニットコード配列を有しうる。異なるサブユニットコードセクションは、異なるサブユニットコード配列を有しうる。図1に示されるように、コンビナトリアルバーコード試薬105、110、115、および120は、リンカー領域を介して一体的にコンカチネート可能である。コンカチネートされたコンビナトリアルバーコード試薬は、コンビナトリアルバーコード試薬の配列と標的ポリヌクレオチドとを含む転写物125を生成するように伸長させることが可能である(たとえばプライマー伸長により)。コンビナトリアルバーコード試薬は、バーコードの大量のレパートリーを生成するのに必要な試薬の数を低減することが可能である。
【0020】
定義
とくに定義がない限り、本明細書で用いられる技術用語はすべて、本開示が属する分野の当業者により一般に理解されているものと同一の意味を有する。本明細書および添付の特許請求の範囲で用いられる場合、とくに文脈上明確に規定されていない限り、単数形の「a」、「an」、および「the」には、複数の参照語が包含される。本明細書での「or(または)」の意味はいずれも、とくに明記されていない限り、「and/or(および/または)」を包含することが意図される。
【0021】
本明細書で用いられる場合、「関連付けられる」または「~に関連付けられる」という用語は、ある時点で2つ以上の種が共配置されているとして同定可能であることを意味しうる。関連付けは、2つ以上の種が類似の容器内にあることを意味しうる。関連付けは、インフォマティクス的関連付けでありうる。この場合、たとえば、2つ以上の種に関するディジタル情報が記憶され、かつその情報を用いてこれらの種の1つ以上が共配置されたことを決定可能である。関連付けはまた、物理的関連付けでありうる。いくつかの場合には、2つ以上の関連付けられる種は、互いにまたは共通の固体もしくは半固体の表面に「テザー連結」、「結合」、または「固定」される。関連付けは、ビーズなどの固体または半固体の支持体に標識を結合するための共有結合手段または非共有結合手段を意味しうる。関連付けは、標的と標識とのハイブリダイゼーションを含みうる。
【0022】
「コンポーネントバーコード」、「試薬バーコード」、および「コンビナトリアルバーコード試薬」という用語は、サブユニットコード配列を含むポリヌクレオチド配列を意味するものとして同義的に用いられ、1つ以上の他のコンビナトリアルバーコード試薬と併用してコンビナトリアルバーコードを生成可能である。たとえば、コンビナトリアルバーコード試薬は、リンカーを介してコンカチネートすることによりコンビナトリアルバーコードを生成可能である。
【0023】
本明細書で用いられる場合、「コンビナトリアルバーコード」という用語は、1つ以上のコンビナトリアルバーコード試薬の配列を含むポリヌクレオチド配列を意味する。
【0024】
本明細書で用いられる場合、「相補的」という用語は、2つのヌクレオチド間の精密なペアリングの能力を意味する。たとえば、核酸の所与の位置のヌクレオチドが他の核酸のヌクレオチドと水素結合可能である場合、2つの核酸はその位置で互いに相補的であるとみなされる。2つの一本鎖核酸分子間の相補性は、ヌクレオチドの一部のみが結合する場合には「部分的」でありうるし、一本鎖分子間のすべてに相補性が存在する場合には完全でありうる。第1のヌクレオチド配列が第2のヌクレオチド配列に相補的である場合、第1のヌクレオチド配列は第2の配列の「相補体」であるといえる。第1のヌクレオチド配列が第2の配列の逆(すなわち、ヌクレオチドの順序が逆)の配列に相補的である場合、第1のヌクレオチド配列は第2の配列の「逆相補体」であるといえる。本明細書で用いられる場合、「相補体」、「相補的」、および「逆相補体」という用語は、同義的に用いることが可能である。ある分子が他の分子にハイブリダイズしうる場合、それはハイブリダイズしている分子の相補体でありうることが、本開示から理解される。
【0025】
本明細書で用いられる場合、「ディジタルカウンティング」という用語は、サンプル中の標的分子の数を推定する方法を意味する。ディジタルカウンティングは、サンプル中の標的に関連付けられたユニーク標識の数を決定する工程を含みうる。この確率的方法は、分子をカウントする問題を、同一の分子の位置決定および同定の問題から、所定の標識のセットの検出に関する一連のあり/なしのディジタル問題に変換する。
【0026】
本明細書で用いられる場合、「第1のユニバーサル標識」という用語は、本開示のバーコードに対してユニバーサルである標識を意味する。第1のユニバーサル標識は、シーケンシングプライマー結合部位(たとえば、リードプライマー結合部位、すなわち、Illuminaシーケンサー用)でありうる。
【0027】
本明細書で用いられる場合、「標識」という用語は、サンプル内の標的に関連付けられる核酸コードを意味する。標識は、たとえば、核酸標識でありうる。標識は、全体または一部が増幅可能な標識でありうる。標識は、全体または一部がシーケンス可能標識でありうる。標識は、個別に同定可能な天然核酸の一部でありうる。標識は、既知の配列でありうる。標識は、核酸配列の接合(たとえば、天然配列と非天然配列との接合)を含みうる。本明細書で用いられる場合、「標識」という用語は、「インデックス」、「タグ」、または「標識タグ」という用語と同義的に用いうる。標識は、情報を伝達可能である。たとえば、種々の実施形態では、標識は、サンプル同一性、サンプル源、細胞同一性、および/または標的を決定するために使用可能である。
【0028】
本明細書で用いられる場合、「非枯渇リザーバー」という用語は、多種多様な標識から構成された確率バーコードのプールを意味する。非枯渇リザーバーは、非枯渇リザーバーが標的のプールに関連付けられる場合、各標的がユニーク確率バーコードに関連付けられる可能性が高くなるように、多数の異なる確率バーコードを含みうる。各標識標的分子のユニーク性は、ランダム選択の統計により決定可能であり、標識の多様性と比較してコレクション中の同一の標的分子のコピー数に依存する。得られる標識標的分子のセットのサイズは、バーコーディングプロセスの確率的性質により決定可能であり、次いで、検出された確率バーコードの数の解析は、元のコレクションまたはサンプル中に存在する標的分子の数の計算を可能にする。存在する標的分子のコピー数とユニーク確率バーコードの数との比が低い場合、標識標的分子はきわめてユニークである(すなわち、2つ以上の標的分子が1つの所与の標識で標識される確率は非常に低い)。
【0029】
本明細書で用いられる場合、「核酸」とは、ポリヌクレオチド配列またはその断片を意味する。核酸はヌクレオチドを含みうる。核酸は細胞に対して外因性または内因性でありうる。核酸は細胞フリー環境中に存在しうる。核酸は遺伝子またはその断片でありうる。核酸はDNAでありうる。核酸はRNAでありうる。核酸は1つ以上のアナログ(たとえば、修飾された骨格、糖または核酸塩基)を含みうる。アナログのいくつかの例としては、限定されるものではないが、5-ブロモウラシル、ペプチド核酸、ゼノ核酸、モルホリノ体、ロックド核酸、グリコール核酸、トレオース核酸、ジデオキシヌクレオチド、コルジセピン、7-デアザ-GTP、フルオロフォア(たとえば、糖に結合されたローダミンまたはフルオレセイン)、チオール含有ヌクレオチド、ビオチン結合ヌクレオチド、蛍光塩基アナログ、CpGアイランド、メチル-7-グアノシン、メチル化ヌクレオチド、イノシン、チオウリジン、プソイドウリジン、ジヒドロウリジン、キューオシン、およびワイオシンが挙げられる。「核酸」、「ポリヌクレオチド、「標的ポリヌクレオチド」、および「標的核酸」は、同義的に用いうる。
【0030】
核酸は、新しいまたは向上した特徴(たとえば、向上した安定性)を有する核酸を提供するために1つ以上の修飾(たとえば、塩基修飾、骨格修飾)を含みうる。核酸は核酸アフィニティータグを含みうる。ヌクレオシドは塩基-糖の組合せでありうる。ヌクレオシドの塩基部分はヘテロ環塩基でありうる。かかるヘテロ環塩基の2つの最も一般的なクラスはプリンおよびピリミジンである。ヌクレオチドは、ヌクレオシドの糖部分に共有結合されたリン酸基をさらに含むヌクレオシドでありうる。ペントフラノシル糖を含むヌクレオシドでは、リン酸基は、糖の2’、3’、または5’ヒドロキシル部分に結合可能である。核酸を形成する際、リン酸基は、隣接ヌクレオシドを互いに共有結合して線状高分子化合物を形成可能である。ひいては、この線状高分子化合物のそれぞれの末端をさらに連結して環状化合物を形成可能である。しかしながら、線状化合物が一般に好適である。そのほかに、線状化合物は、内部ヌクレオチド塩基相補性を有しうるので、完全二本鎖または部分二本鎖の化合物を生成するようにフォールディングしうる。核酸内では、リン酸基は、通常、核酸のヌクレオシド間骨格を形成するものとして参照可能である。核酸の結合または骨格は、3’→5’ホスホジエステル結合でありうる。
【0031】
核酸は、修飾骨格および/または修飾ヌクレオシド間結合を含みうる。修飾骨格は、骨格中にリン原子を保持するものおよび骨格中にリン原子を有していないものを含みうる。リン原子を中に含有する好適な修飾核酸骨格は、たとえば、ホスホロチオエート、キラルホスホロチオエート、ホスホロジチオエート、ホスホトリエステル、アミノアルキルホスホトリエステル、3’-アルキレンホスホネートや5’-アルキレンホスホネートなどのメチルや他のアルキルのホスホネート、キラルホスホネート、ホスフィネート、3’-アミノホスホルアミデートやアミノアルキルホスホルアミデートなどのホスホルアミデート、ホスホロジアミデート、チオノホスホルアミデート、チオノアルキルホスホネート、チオノアルキルホスホトリエステル、セレノホスフェート、および通常3’-5’結合、2’-5’結合アナログを有するボラノホスフェート、ならびに1つ以上のヌクレオチド間結合が3’→3’、5’→5’、または2’→2’結合である逆極性を有するものを含みうる。
【0032】
核酸は、短鎖アルキルもしくはシクロアルキルのヌクレオシド間結合、混合ヘテロ原子およびアルキルもしくはシクロアルキルのヌクレオシド間結合、または1つ以上の短鎖ヘテロ原子もしくはヘテロ環のヌクレオシド間結合により形成されるポリヌクレオチド骨格を含みうる。これらは、モルホリノ結合(ヌクレオシドの糖部分から部分的に形成される)、シロキサン骨格、スルフィド、スルホキシド、およびスルホン骨格、ホルムアセチルおよびチオホルムアセチル骨格、メチレンホルムアセチルおよびチオホルムアセチル骨格、リボアセチル骨格、アルケン含有骨格、スルファメート骨格、メチレンイミノおよびメチレンヒドラジノ骨格、スルホネートおよびスルホンアミド骨格、アミド骨格を有するもの、ならびに混合N、O、S、およびCH構成部分を有する他のものを含みうる。
【0033】
核酸は核酸ミメティックを含みうる。「ミメティック」という用語は、たとえば、フラノース環のみまたはフラノース環とヌクレオチド間結合の両方が非フラノース基で置き換えられているポリヌクレオチドを含み、フラノース環のみの置換えは、糖サロゲートであるとして参照可能である。ヘテロ環塩基部分または修飾ヘテロ環塩基部分は、適切な標的核酸とのハイブリダイゼーションのために保持可能である。かかる核酸の1つはペプチド核酸(PNA)でありうる。PNAでは、ポリヌクレオチドの糖骨格は、アミド含有骨格とくにアミノエチルグリシン骨格で置換え可能である。ヌクレオチドは保持可能であり、かつ骨格のアミド部分のアザ窒素原子に直接的または間接的に結合される。PNA化合物中の骨格は、PNAにアミド含有骨格を与える2つ以上の結合されたアミノエチルグリシン単位を含みうる。ヘテロ環塩基部分は、骨格のアミド部分のアザ窒素原子に直接的または間接的に結合可能である。
【0034】
核酸はモルホリノ骨格構造を含みうる。たとえば、核酸は、リボース環の代わりに6員モルホリノ環を含みうる。これらの実施形態のいくつかでは、ホスホロジアミデートまたは他の非ホスホジエステルのヌクレオシド間結合によりホスホジエステル結合を置換え可能である。
【0035】
核酸は、モルホリノ環に結合されたヘテロ環塩基を有する結合されたモルホリノ単位(すなわちモルホリノ核酸)を含みうる。結合基は、モルホリノ核酸中のモルホリノモノマー単位を結合可能である。非イオン性モルホリノ系オリゴマー化合物は、細胞タンパク質とのより少ない望ましくない相互作用を有しうる。モルホリノ系ポリヌクレオチドは、核酸の非イオン性ミミックでありうる。モルホリノクラス内のさまざまな化合物は、異なる結合基を用いて連結可能である。ポリヌクレオチドミメティックのさらなるクラスは、シクロヘキセニル核酸(CeNA)として参照可能である。核酸分子中に通常存在するフラノース環は、シクロヘキセニル環で置換え可能である。CeNA DMT保護ホスホロアミダイトモノマーは、ホスホロアミダイト化学を用いたオリゴマー化合物合成のために調製および使用が可能である。核酸鎖中へのCeNAモノマーの取込みは、DNA/RNAハイブリッドの安定性を増加可能である。CeNAオリゴアデニレートは、天然複合体に類似した安定性を有する核酸相補体との複合体を形成可能である。さらなる修飾は、2’-ヒドロキシル基が糖環の4’炭素原子に結合されて2’-C,4’-C-オキシメチレン結合を形成することにより二環式糖部分を形成するロックド核酸(LNA)を含みうる。結合は、2’酸素原子と4’炭素原子とを架橋するメチレン(-CH2-),基(式中、nは1または2である)でありうる。LNAおよびLNAアナログは、相補的核酸との非常に高い二本鎖熱安定性(Tm=+3~+10℃)、3’-エキソヌクレアーゼ分解に対する安定性、および良好な溶解性を示しうる。
【0036】
核酸はまた、いくつかの実施形態では、核酸塩基(単に「塩基」ということが多い)の修飾または置換を含みうる。本明細書で用いられる場合、「非修飾」または「天然」の核酸塩基は、プリン塩基(たとえば、アデニン(A)およびグアニン(G))ならびにピリミジン塩基(たとえば、チミン(T)、シトシン(C)、およびウラシル(U))を含みうる。修飾核酸塩基は、他の合成および天然の核酸塩基、たとえば、5-メチルシトシン(5-me-C)、5-ヒドロキシメチルシトシン、キサンチン、ヒポキサンチン、2-アミノアデニン、アデニンおよびグアニンの6-メチルおよび他のアルキル誘導体、アデニンおよびグアニンの2-プロピルおよび他のアルキル誘導体、2-チオウラシル、2-チオチミン、および2-チオシトシン、5-ハロウラシルおよびシトシン、5-プロピニル(-C=C-CH3)ウラシルおよびシトシン、ならびにピリミジン塩基の他のアルキニル誘導体、6-アゾウラシル、シトシン、およびチミン、5-ウラシル(プソイドウラシル)、4-チオウラシル、8-ハロ、8-アミノ、8-チオール、8-チオアルキル、8-ヒドロキシル、および他の8-置換アデニンおよびグアニン、5-ハロとくに5-ブロモ、5-トリフルオロメチルおよび他の5-置換ウラシルおよびシトシン、7-メチルグアニンおよび7-メチルアデニン、2-F-アデニン、2-アミノアデニン、8-アザグアニンおよび8-アザアデニン、7-デアザグアニンおよび7-デアザアデニン、ならびに3-デアザグアニンおよび3-デアアデニンを含みうる。修飾核酸塩基は、三環式ピリミジン、たとえば、フェノキサジンシチジン(1H-ピリミド(5,4-b)(1,4)ベンゾオキサジン-2(3H)-オン)、フェノチアジンシチジン(1H-ピリミド(5,4-b)(1,4)ベンゾチアジン-2(3H)-オン)、置換フェノキサジンシチジン(たとえば、9-(2-アミノエトキシ)-H-ピリミド(5,4-(b)(1,4)ベンゾオキサジン-2(3H)-オン)などのG-クランプ、カルバゾールシチジン(2H-ピリミド(4,5-b)インドール-2-オン)、ピリドインドールシチジン(Hピリド(3’,’:4,5)ピロロ[2,3-d]ピリミジン-2-オン)を含みうる。
【0037】
本明細書で用いられる場合、「サンプル」という用語は、標的を含む組成物を意味する。本開示の方法、デバイス、およびシステムによる分析に好適なサンプルとしては、細胞、単一細胞、組織、器官、または生物が挙げられる。
【0038】
本明細書で用いられる場合、「サンプリングデバイス」または「デバイス」という用語は、サンプルのセクションの採取および/または基材上へのセクションの配置を行いうるデバイスを意味する。サンプルデバイスとは、たとえば、蛍光活性化細胞選別(FACS)機、セルソーター機、生検針、生検デバイス、組織切片化デバイス、マイクロ流体デバイス、ブレードグリッド、および/またはミクロトームを意味しうる。
【0039】
本明細書で用いられる場合、「固体担体」という用語は、複数の確率バーコードを結合しうる離散した固体または半固体の表面を意味する。固体担体は、核酸を(たとえば共有結合または非共有結合で)固定しうるプラスチック、セラミック、金属、または高分子材料(たとえばヒドロゲル)で構成された任意のタイプの中実、多孔性、または中空のスフェア、ボール、ベアリング、シリンダー、または他の類似の構成体を包含しうる。固体担体は、球状(たとえばマイクロスフェア)でありうるかまたは非球状もしくは不規則形状、たとえば、立方体形、直方体形、角錐形、円柱形、円錐形、扁球形、ディスク形などを有しうる離散粒子を含みうる。アレイ状に離間して配置された複数の固体担体は、基材を含まないこともありうる。固体担体は、「ビーズ」という用語と同義的に用いうる。
【0040】
固体担体は「基材」を意味しうる。基材は固体担体の1種でありうる。基材は、本開示の方法を行いうる連続した固体または半固体の表面を意味しうる。基材は、たとえば、アレイ、カートリッジ、チップ、デバイス、およびスライドを意味しうる。本明細書で用いられる場合、「固体担体」および「基材」は同義的に用いうる。
【0041】
本明細書で用いられる場合、「確率バーコード」という用語は、本開示の標識を含むポリヌクレオチド配列を意味する。確率バーコードは、確率バーコーディングに使用可能なポリヌクレオチド配列でありうる。確率バーコードは、サンプル中の標的を定量可能である。確率バーコードは、標識を標的に関連付けた後に起こりうるエラーの制御に使用可能である。たとえば、確率バーコードは、増幅またはシーケンシングのエラーを評価可能である。標的に関連付けられた確率バーコードは、確率バーコード標的または確率バーコードタグ標的と呼ぶことが可能である。
【0042】
本明細書で用いられる場合、「確率バーコーディング」という用語は、核酸のランダム標識化(たとえばバーコーディング)を意味する。確率バーコーディングは、標識を標的に関連付けて関連付けられた標識を定量するために再帰的ポアソンストラテジーを利用可能である。本明細書で用いられる場合、「確率バーコーディング」という用語は、「確率標識化」と同義的に用いうる。
【0043】
本明細書で用いられる場合、「標的」という用語は、確率バーコードに関連付け可能な組成物を意味する。本開示の方法、デバイス、およびシステムによる分析に好適な例示的な標的としては、オリゴヌクレオチド、DNA、RNA、mRNA、マイクロRNA、tRNAなどが挙げられる。標的は一本鎖または二本鎖でありうる。いくつかの実施形態では、標的はタンパク質でありうる。いくつかの実施形態では、標的は脂質である。
【0044】
「逆転写酵素」という用語は、逆転写酵素活性を有する(すなわち、RNA鋳型からのDNAの合成を触媒する)酵素のグループを意味する。一般的には、かかる酵素としては、限定されるものではないが、レトロウイルス逆転写酵素、レトロトランスポゾン逆転写酵素、レトロプラスミド逆転写酵素、レトロン逆転写酵素、細菌逆転写酵素、グループIIイントロン由来逆転写酵素、およびそれらの突然変異体、変異体、または誘導体が挙げられる。非レトロウイルス逆転写酵素としては、非LTRレトロトランスポゾン逆転写酵素、レトロプラスミド逆転写酵素、レトロン逆転写酵素、およびグループIIイントロン逆転写酵素が挙げられる。グループIIイントロン逆転写酵素の例としては、ラクトコッカス・ラクティス(Lactococcus lactis)Ll.LtrBイントロン逆転写酵素、サーモシネココッカス・エロンガタス(Thermosynechococcus elongatus)TeI4cイントロン逆転写酵素、またはジオバチルス・ステアロサーモフィラス(Geobacillus stearothermophilus)GsI-IICイントロン逆転写酵素が挙げられる。他のクラスの逆転写酵素としては、多くのクラスの非レトロウイルス逆転写酵素(すなわち、レトロン、グループIIイントロン、およびとくに多様性生成レトロエレメント)が挙げられうる。
【0045】
「テンプレートスイッチング」という用語は、初期核酸配列テンプレートを、初期テンプレートから合成された核酸の3’末端との相補性がほとんどまたはまったくない新しい核酸配列テンプレートの3’末端に、切り替える逆転写酵素の能力を意味する。標的ポリヌクレオチドの核酸コピーは、テンプレートスイッチングを用いて作製可能である。テンプレートスイッチングは、たとえば、初期核酸配列テンプレートを、初期テンプレートから合成されたDNAの3’末端との相補性がほとんどまたはまったくない新しい核酸配列テンプレートの3’末端に切り替えることにより、ライゲーションを行うことなく標的オリゴヌクレオチド配列にアダプター配列を直接結合する連続産物DNAの合成を可能にする逆転写酵素を用いて、DNAコピーの調製を可能にする。テンプレートスイッチングは、アダプターのライゲーション、ホモポリマーテーリング(たとえば、ポリアデニル化)、ランダムプライマー、またはポリメラーゼにより関連付け可能なオリゴヌクレオチドを含みうる。
【0046】
確率バーコード
本明細書に開示されるように、確率バーコードは、標的に確率標識(たとえば、バーコード、タグ)を付けるために使用しうるポリヌクレオチド配列でありうる。確率バーコードは1つ以上の標識を含みうる。例示的な標識としては、限定されるものではないが、ユニバーサル標識、細胞標識、分子標識、サンプル標識、プレート標識、空間標識、プレ空間標識、およびそれらの任意の組合せが挙げられる。確率バーコードは、確率バーコードを固体担体に結合しうる5’アミンを含みうる。確率バーコードは、ユニバーサル標識、次元標識、空間標識、細胞標識、および分子標識の1つ以上を含みうる。ユニバーサル標識は最も5’側の標識でありうる。分子標識は最も3’側の標識でありうる。空間標識、次元標識、および細胞標識は任意の順序でありうる。いくつかの場合には、ユニバーサル標識、空間標識、次元標識、細胞標識、および分子標識は任意の順序である。確率バーコードは標的結合領域を含みうる。標的結合領域は、サンプル中の標的(たとえば、標的核酸、RNA、mRNA、DNA)と相互作用可能である。たとえば、標的結合領域は、mRNAのポリAテールと相互作用可能なオリゴdT配列を含みうる。いくつかの場合には、確率バーコードの標識(たとえば、ユニバーサル標識、次元標識、空間標識、細胞標識、および分子標識)は、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、もしくは20ヌクレオチドまたはそれ以上分離しうる。
【0047】
確率バーコードは1つ以上のユニバーサル標識を含みうる。1つ以上のユニバーサル標識は、確率バーコードのセット中のすべての確率バーコードで同一でありうる(たとえば、所与の固体担体に結合される)。いくつかの実施形態では、1つ以上のユニバーサル標識は、複数のビーズに結合されるすべての確率バーコードで同一でありうる。いくつかの実施形態では、ユニバーサル標識は、シーケンシングプライマーにハイブリダイズ可能な核酸配列を含む。シークエンシングプライマーは、ユニバーサル標識を含む確率バーコードをシーケンスするために使用可能である。シークエンシングプライマー(たとえば、ユニバーサルシークエンシングプライマー)は、高スループットシークエンシングプラットフォームに関連付けられるシークエンシングプライマーを含みうる。いくつかの実施形態では、ユニバーサル標識は、PCRプライマーにハイブリダイズ可能な核酸配列を含みうる。いくつかの実施形態では、ユニバーサル標識は、シークエンシングプライマーおよびPCRプライマーにハイブリダイズ可能な核酸配列を含む。シーケンシングプライマーまたはPCRプライマーにハイブリダイズ可能なユニバーサル標識の核酸配列は、プライマー結合部位として参照しうる。ユニバーサル標識は、確率バーコードの転写を開始するために使用しうる配列を含みうる。ユニバーサル標識は、確率バーコードまたは確率バーコード内の領域を伸長させるために使用しうる配列を含みうる。ユニバーサル標識は、1、2、3、4、5、10、15、20、25、30、35、40、45、50ヌクレオチド長もしくはそれ以上または概略で少なくともそうしたヌクレオチド長でありうる。ユニバーサル標識は、少なくとも約10ヌクレオチドを含みうる。ユニバーサル標識は、多くとも約1、2、3、4、5、10、15、20、25、30、35、40、45、50ヌクレオチド長またはそれ以上でありうる。いくつかの実施形態では、切断可能なリンカーまたは修飾ヌクレオチドは、担体からの確率バーコードの切断除去を可能にするユニバーサル標識配列の一部である。本明細書で用いられる場合、ユニバーサル標識は、「ユニバーサルPCRプライマー」と同義的に用いうる。
【0048】
確率バーコードは次元標識を含みうる。次元標識は、確率標識化が行われた次元に関する情報を提供する核酸配列を含みうる。たとえば、次元標識は、標的に確率バーコードが付された時点に関する情報を提供可能である。次元標識は、サンプルの確率バーコーディングの時点に関連付け可能である。次元標識は、確率標識化の時点で活性化可能である。異なる時点で異なる次元標識を活性化可能である。次元標識は、標的、標的のグループ、および/またはサンプルに確率バーコードを付けた順序に関する情報を提供する。たとえば、細胞集団は、細胞周期のG0期に確率バーコードを付けることが可能である。細胞は、細胞周期のG1期に確率バーコードで再びパルスすることが可能である。細胞は、細胞周期のS期に確率バーコードで再びパルスすることが可能であり、他の時期も同様である。各パルス時(たとえば、細胞周期の各期)の確率バーコードは、異なる次元標識を含みうる。こうして、次元標識は、細胞周期のどの期に標的に標識したかに関する情報を提供する。次元標識は、多種多様な生物時間を精査することが可能である。例示的な生物時間としては、限定されるものではないが、細胞周期、転写(たとえば転写開始)、および転写物分解が挙げられうる。他の例として、薬剤治療および/または療法の前および/または後にサンプル(たとえば、細胞、細胞集団)に確率標識を付けることが可能である。識別可能な標的のコピー数の変化は、薬剤および/または療法に対するサンプルの反応の指標でありうる。
【0049】
いくつかの実施形態では、次元標識は活性化可能である。活性化可能な次元標識は、たとえば、特定の時点で活性化可能である。活性化可能な次元標識は、構成的に活性化可能である(たとえば、オフに切り替わらない)。活性化可能な次元標識は、可逆的に活性化可能である(たとえば、活性化可能な次元標識は、オン・オフの切替えが可能である)。次元標識は、少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、9、もしくは10回またはそれ以上可逆的に活性化可能である。次元標識は、1、2、3、4、5、6、7、8、9、もしくは10回またはそれ以上可逆的に活性化可能である。たとえば、次元標識は、蛍光、光、化学的イベント(たとえば、切断、他の分子のライゲーション、修飾(たとえば、ペグ化、SUMO化、アセチル化、メチル化、脱メチル化、脱アセチル化)の追加、光化学的イベント(たとえば、光ケージング)、および非天然ヌクレオチドの導入により活性化可能である。
【0050】
次元標識は、所与の固体担体(たとえばビーズ)に結合されるすべての確率バーコードで同一でありうるが、異なる固体担体(たとえばビーズ)では異なりうる。いくつかの実施形態では、同一の固体担体上の確率バーコードの少なくとも60%、70%、80%、85%、90%、95%、97%、99%、または100%は、同一の次元標識を含む。いくつかの実施形態では、同一の固体担体上の確率バーコードの少なくとも60%は、同一の次元標識を含む。いくつかの実施形態では、同一の固体担体上の確率バーコードの少なくとも95%は、同一の次元標識を含む。
【0051】
複数の固体担体(たとえばビーズ)には、10程度またはそれ以上のユニーク次元標識配列が存在可能である。次元標識は、たとえば、1、2、3、4、5、10、15、20、25、30、35、40、45、50ヌクレオチド長もしくはそれ以上または概略で少なくともそうしたヌクレオチド長でありうる。次元標識は、多くとも約300、200、100、90、80、70、60、50、40、30、20、15、12、10、9、8、7、6、5、4ヌクレオチド長またはそれ以下もしくは以上でありうる。次元標識は、たとえば、約5~約200ヌクレオチド長または約10~約150ヌクレオチド長である。いくつかの実施形態では、次元標識は約20~約125ヌクレオチド長である。
【0052】
確率バーコードは空間標識を含みうる。空間標識は、確率バーコードに関連付けられる標的分子の空間配向に関する情報を提供する核酸配列を含みうる。空間標識は、サンプル中の座標に関連付け可能である。座標は固定座標でありうる。たとえば、座標は基材を基準にして固定可能である。空間標識は二次元または三次元のグリッドを基準にしうる。座標はランドマークを基準にして固定可能である。ランドマークは空間内で同定可能である。ランドマークはイメージング可能な構造体でありうる。ランドマークは生物学的構造体たとえば解剖学的ランドマークでありうる。ランドマークは細胞ランドマーク(たとえばオルガネラ)でありうる。ランドマークは、非天然ランドマーク、たとえば、色コード、バーコード、磁性、蛍光、放射能、またはユニークなサイズもしくは形状のような同定可能な識別子を有する構造体でありうる。空間標識は、物理的パーティション(たとえば、ウェル、容器、またはドロップレット)に関連付け可能である。いくつかの場合には、空間内の1つ以上の位置にコードを付けるために複数の空間標識が一緒に使用される。
【0053】
空間標識は、所与の固体担体(たとえばビーズ)に結合されるすべての確率バーコードで同一でありうるが、異なる固体担体(たとえばビーズ)では異なりうる。いくつかの実施形態では、同一の固体担体上の確率バーコードの少なくとも60%、70%、80%、85%、90%、95%、97%、99%、または100%は、同一の空間標識を含む。いくつかの実施形態では、同一の固体担体上の確率バーコードの少なくとも60%は、同一の空間標識を含む。いくつかの実施形態では、同一の固体担体上の確率バーコードの少なくとも95%は、同一の空間標識を含む。
【0054】
複数の固体担体(たとえばビーズ)には、10程度またはそれ以上のユニーク空間標識配列が存在可能である。空間標識は、1、2、3、4、5、10、15、20、25、30、35、40、45、50ヌクレオチド長もしくはそれ以上または概略で少なくともそうしたヌクレオチド長でありうる。いくつかの実施形態では、空間標識は、多くとも約300、200、100、90、80、70、60、50、40、30、20、15、12、10、9、8、7、6、5、4ヌクレオチド長である。空間標識は、たとえば、約5~約200ヌクレオチド長でありうる。空間標識は、たとえば、約10~約150ヌクレオチド長でありうる。空間標識は、約20~約125ヌクレオチド長でありうる。
【0055】
確率バーコードは細胞標識を含みうる。細胞標識は、どの標的核酸がどの細胞に由来したかを決定するための情報を提供する核酸配列を含みうる。いくつかの実施形態では、細胞標識は、所与の固体担体(たとえばビーズ)に結合されるすべての確率バーコードで同一であるが、異なる固体担体(たとえばビーズ)では異なる。いくつかの実施形態では、同一の固体担体上の確率バーコードの少なくとも60%、70%、80%、85%、90%、95%、97%、99%、または100%は、同一の細胞標識を含む。いくつかの実施形態では、同一の固体担体上の確率バーコードの少なくとも60%は、同一の細胞標識を含む。いくつかの実施形態では、同一の固体担体上の確率バーコードの少なくとも95%は、同一の細胞標識を含む。
【0056】
複数の固体担体(たとえばビーズ)には、10程度またはそれ以上のユニーク細胞標識配列が存在可能である。細胞標識は、少なくとも約1、2、3、4、5、10、15、20、25、30、35、40、45、50ヌクレオチド長またはそれ以上でありうる。細胞標識は、多くとも約300、200、100、90、80、70、60、50、40、30、20、15、12、10、9、8、7、6、5、4ヌクレオチド長またはそれ以下もしくは以上でありうる。細胞標識は、たとえば、約5~約200ヌクレオチド長でありうる。細胞標識は、たとえば、約10~約150ヌクレオチド長でありうる。細胞標識は、たとえば、約20~約125ヌクレオチド長でありうる。
【0057】
確率バーコードは分子標識を含みうる。分子標識は、確率バーコードにハイブリダイズされた標的核酸種の特定のタイプに関する情報の同定を提供する核酸配列を含みうる。分子標識は、確率バーコード(たとえば標的結合領域)にハイブリダイズされた標的核酸種の特定の存在に対するカウンターを提供する核酸配列を含みうる。いくつかの実施形態では、分子標識のさまざまなセットが所与の固体担体(たとえば、ビーズ)に結合される。いくつかの実施形態では、所与の固体担体(たとえばビーズ)に結合されるユニーク分子標識配列は106程度またはそれ以上存在可能である。いくつかの実施形態では、所与の固体担体(たとえばビーズ)に結合されるユニーク分子標識配列は105程度またはそれ以上存在可能である。いくつかの実施形態では、所与の固体担体(たとえばビーズ)に結合されるユニーク分子標識配列は104程度またはそれ以上存在可能である。いくつかの実施形態では、所与の固体担体(たとえばビーズ)に結合されるユニーク分子標識配列は103程度またはそれ以上存在可能である。いくつかの実施形態では、所与の固体担体(たとえばビーズ)に結合されるユニーク分子標識配列は102程度またはそれ以上存在可能である。分子標識は、少なくとも約1、2、3、4、5、10、15、20、25、30、35、40、45、50ヌクレオチド長またはそれ以上でありうる。分子標識は、多くとも約300、200、100、90、80、70、60、50、40、30、20、15、12、10、9、8、7、6、5、4ヌクレオチド長またはそれ以下でありうる。
【0058】
確率バーコードは標的結合領域を含みうる。いくつかの実施形態では、標的結合領域は、標的(たとえば、標的核酸、標的分子、たとえば、分析される細胞核酸)、たとえば、特定の遺伝子配列に特異的にハイブリダイズする核酸配列を含む。いくつかの実施形態では、標的結合領域は、特定の標的核酸の特定の位置に結合(たとえばハイブリダイズ)しうる核酸配列を含む。いくつかの実施形態では、標的結合領域は、制限部位オーバーハング(たとえば、EcoRI付着末端オーバーハング)への特異的なハイブリダイゼーションが可能な核酸配列を含む。次いで、確率バーコードは、制限部位オーバーハングに相補的な配列を含む任意の核酸分子にライゲートしうる。
【0059】
確率バーコードは標的結合領域を含みうる。標的結合領域は、対象の標的にハイブリダイズ可能である。たとえば、標的結合領域は、ポリアデニル化末端を含むmRNAにハイブリダイズ可能なオリゴdTを含みうる。標的結合領域は遺伝子特異的でありうる。たとえば、標的結合領域は、標的の特定の領域にハイブリダイズするように構成可能である。標的結合領域は、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、もしくは30ヌクレオチド長またはそれ以上あるいは少なくともそうしたヌクレオチド長でありうる。標的結合領域は、多くとも1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、もしくは30ヌクレオチド長またはそれ以上でありうる。標的結合領域は5~30ヌクレオチド長でありうる。確率バーコードが遺伝子特異的標的結合領域を含む場合、確率バーコードは遺伝子特異的確率バーコードとして参照可能である。
【0060】
標的結合領域は非特異的標的核酸配列を含みうる。非特異的標的核酸配列は、標的核酸の特定の配列に依存せずに複数の標的核酸に結合しうる配列を意味しうる。たとえば、標的結合領域は、ランダムマルチマー配列を含みうるかまたはmRNA分子のポリAテールにハイブリダイズするオリゴdT配列を含みうる。ランダムマルチマー配列は、たとえば、ランダムダイマー、ランダムトリマー、ランダムクアトラマー、ランダムペンタマー、ランダムヘキサマー、ランダムセプタマー、ランダムオクタマー、ランダムノナマー、ランダムデカマー、または任意の長さのより高次のランダムマルチマーの配列でありうる。いくつかの実施形態では、標的結合領域は、所与のビーズに結合されたすべての確率バーコードで同一である。いくつかの実施形態では、所与のビーズに結合された複数の確率バーコードの標的結合領域は、2つ以上の異なる標的結合配列を含む。標的結合領域は、5、10、15、20、25、30、35、40、45、50ヌクレオチド長もしくはそれ以上または概略で少なくともそうしたヌクレオチド長でありうる。いくつかの実施形態では、標的結合領域は、多くとも約5、10、15、20、25、30、35、40、45、50ヌクレオチド長またはそれ以上である。
【0061】
確率バーコードは、確率バーコードのオリエント(たとえばアライメント)のために使用可能なオリエント性を含みうる。確率バーコードは、等電点電気泳動用の部分を含みうる。異なる確率バーコードは、異なる等電点電気泳動点を含みうる。こうした確率バーコードをサンプルに導入した場合、サンプルは、確率バーコードを既知の形態にオリエントするために等電点電気泳動を行うことが可能である。こうして、オリエント性は、サンプルで確率バーコードの既知のマップを作成するために使用可能である。例示的なオリエント性としては、限定されるものではないが、電気泳動移動度(たとえば、確率バーコードのサイズに基づく)、等電点、スピン、伝導率、および/またはセルフアセンブリーが挙げられる。たとえば、確率バーコードは、セルフアセンブリーのオリエント性を含みうるとともに、活性化時に特定のオリエンテーションにセルフアセンブル可能である(たとえば、核酸ナノ構造)。
【0062】
確率バーコードは親和性を含みうる。空間標識は親和性を含みうる。親和性は、他のエンティティー(たとえば細胞レセプター)への確率バーコードの結合を促進可能な化学的および/または生物学的部分に含まれうる。たとえば、親和性は抗体を含みうる。抗体は、サンプル上の特定の部分(たとえばレセプター)に特異的でありうる。抗体は、確率バーコードを特定の細胞型または分子に案内可能である。特定の細胞型もしくは分子および/またはその近傍にある標的は、確率標識化が可能である。抗体は確率バーコードを特定の位置に案内可能であるので、親和性はまた、空間標識のヌクレオチド配列に加えて空間情報を提供可能である。抗体は治療用抗体でありうる。抗体はモノクローナル抗体でありうる。抗体はポリクローナル抗体でありうる。抗体はヒト化しうる。抗体はキメラでありうる。抗体はネイキッド抗体でありうる。抗体は融合抗体でありうる。
【0063】
抗体は、全長(すなわち、天然に存在するかもしくは通常の免疫グロブリン遺伝子断片組換えプロセスにより形成される)免疫グロブリン分子(たとえばIgG抗体)または免疫グロブリン分子の免疫活性(すなわち特異的結合)部分たとえば抗体フラグメントでありうる。
【0064】
抗体は抗体フラグメントでありうる。抗体フラグメントは、F(ab’)2、Fab’、Fab、Fv、sFvなどの抗体の一部でありうる。抗体フラグメントは、全長抗体により認識される同一の抗原に結合可能である。抗体フラグメントは、抗体の可変領域からなる単離された断片、たとえば、重鎖および軽鎖の可変領域からなる「Fv」フラグメントならびに軽鎖および重鎖の可変領域がペプチドリンカーにより接続された組換え一本鎖ポリペプチド分子(「scFvタンパク質」)を含みうる。例示的な抗体としては、限定されるものではないが、癌細胞に対する抗体、ウイルスに対する抗体、細胞表面レセプター(CD8、CD34、CD45)に結合する抗体、および治療用抗体が挙げられうる。
【0065】
本開示の細胞標識および/または任意の標識は、エラー訂正能力を提供するように設計される規定の長さたとえばそれぞれ7ヌクレオチド(いくつかのハミングエラー訂正コードで使用されるビットの数と等価である)の核酸サブ配列のユニークセットをさらに含みうる。ハミングコードは、他のエラー訂正コードと同様に、冗長性の原理に基づくものであり、ノイズの多い媒体を介して転送されるデータに冗長パリティビットを付加することにより構築可能である。かかるエラー訂正コードは、サンプル識別子を冗長パリティビットと共にコード化してこのサンプル識別子をコードワード」として「転送」することが可能である。ハミングコードは、1ビットエラーの訂正が可能な固有冗長性に基づいてユニーク二進コードを同定する算術プロセスを意味しうる。たとえば、ハミングコードは、核酸増幅時に起こる単一ヌクレオチドエラーをスクリーニングするために核酸バーコードにマッチさせうる。それにより、ハミングコードを用いた単一ヌクレオチドエラーの同定は、核酸バーコードの訂正を可能にしうる。
【0066】
ハミングコードは、バイナリーサブ空間の多次元球(すなわち、たとえば超球)の中心を基準にして選択される可能なコードワードのサブセットにより表すことが可能である。1ビットエラーは、特定のコードワードに関連付けられる超球内に入りうるので、訂正可能である。一方、特定のコードワードに関連付けられない2ビットエラーは、検出可能であるが訂正可能でない。座標(0,0,0)(すなわち、たとえばx-y-z座標系を用いる)を中心とする第1の超球を考える。この場合、いずれの1ビットエラーも、中心座標から半径1以内に含まれることから訂正可能である。すなわち、たとえば、(0,0,0)、(0,1,0)、(0,0,1)、(1,0,0)、または(1,1,0)の座標を有する1ビットエラー。同様に、第2の超球を構築しうる。この場合、1ビットエラーは、その中心座標(1,1,1)から半径1以内に含まれることから訂正可能である(すなわち、たとえば、(1,1,1)、(1,0,1)、(0,1,0)、または(0,1,1)。
【0067】
いくつかの実施形態では、エラー訂正コードの生成に使用される核酸サブ配列の長さはさまざまでありうる。たとえば、少なくとも3ヌクレオチド長、少なくとも7ヌクレオチド長、少なくとも15ヌクレオチド長、または少なくとも31ヌクレオチド長でありうる。いくつかの実施形態では、他の長さの核酸サブ配列をエラー訂正コードの生成に使用可能である。
【0068】
確率バーコードが2つ以上のあるタイプの標識(たとえば、2つ以上の細胞標識または2つ以上の分子標識)を含む場合、標識はリンカー標識配列を散在させうる。リンカー標識配列は、少なくとも約5、10、15、20、25、30、35、40、45、50ヌクレオチド長またはそれ以上でありうる。リンカー標識配列は、多くとも約5、10、15、20、25、30、35、40、45、50ヌクレオチド長またはそれ以上でありうる。いくつかの場合には、リンカー標識配列は12ヌクレオチド長である。リンカー標識配列は、確率バーコードの合成を促進可能である。リンカー標識は、エラー訂正(たとえばハミング)コードを含みうる。
【0069】
コンビナトリアルバーコード
単一細胞や核酸断片などの多数のサンプルを標識してシーケンシングなどの並行分析に供すべく、多数の異なるコンビナトリアルバーコードを使用可能である。本明細書に開示されるように、バーコードサブユニット配列が種々の組合せにより接続される条件で、比較的少数のバーコードサブユニット配列から多数のコンビナトリアルバーコードのセットを生成可能である。こうして、異なるバーコードサブユニット配列の数、コンビナトリアルバーコード中で互いに接続されるバーコードサブユニット配列の数、またはその両方の増加を比較的小さくして、生成される異なるコンビナトリアルバーコードの数を有意に増加させることが可能である。
【0070】
本明細書に開示されるいくつかの実施形態は、コンビナトリアルバーコードのセットを含む組成物を提供する。コンビナトリアルバーコードは、リンカー配列、標的ヌクレオチド配列、またはその両方を介して互いに接続される2つ以上のバーコードサブユニット配列を含む。2つ以上のバーコードサブユニット配列は、たとえば、1つ以上のリンカー配列のハイブリダイゼーションおよび続く伸長を介して互いに接続することによりコンビナトリアルバーコードを形成可能である。たとえば、バーコードサブユニット配列に結合されたリンカー配列を他のバーコードサブユニット配列に結合されたリンカー配列にハイブリダイズして、伸長反応で他のバーコードサブユニット配列をテンプレートとして使用することにより、他のバーコードサブユニット配列を組み込みうるとともに、これを繰り返しうる。いくつかの実施形態では、2つのバーコードサブユニット配列を両方とも標的ヌクレオチド配列にハイブリダイズし、続いて、2つの伸長反応を行って標的ヌクレオチド配列に2つのバーコードサブユニット配列を組み込むことが可能である。
【0071】
いくつかの実施形態では、コンビナトリアルバーコード中のバーコードサブユニット配列の数つまりコンビナトリアルバーコードの長さは、リンカー配列の設計により影響を受けうる。たとえば、m個のバーコードサブユニット配列を有するコンビナトリアルバーコードを生成するために、m-1またはm-2個のリンカー配列は使用しうる。ただし、mは整数≧2である。m個のバーコードサブユニット配列を有するコンビナトリアルバーコードを生成するためにn種のユニークバーコードサブユニット配列を使用した場合、最大数n種のユニークコンビナトリアルバーコードを生成しうる。いくつかの実施形態では、コンビナトリアルバーコードは、式:バーコードサブユニット配列a-リンカー1-バーコードサブユニット配列b-リンカー2-…バーコードサブユニット配列c-リンカーm-1-バーコードサブユニット配列dを含むオリゴヌクレオチドを含みうる。いくつかの実施形態では、コンビナトリアルバーコードは、式:バーコードサブユニット配列a-リンカー1-バーコードサブユニット配列b-リンカー2-…-バーコードサブユニット配列cを含む第1のオリゴヌクレオチドと、バーコードサブユニット配列d-…-リンカー3-バーコードサブユニット配列e-リンカーm-2-バーコードサブユニット配列fを含む第2のオリゴヌクレオチドと、を含みうる。第1のオリゴヌクレオチドおよび第2のオリゴヌクレオチドは、標的ヌクレオチド配列により互いに接続しうる。いくつかの実施形態では、コンビナトリアルバーコード中のバーコードサブユニット配列a、バーコードサブユニット配列b、バーコードサブユニット配列c、…のそれぞれは、n種のユニークバーコードサブユニット配列のセットから選択される。いくつかの実施形態では、コンビナトリアルバーコード中のバーコードサブユニット配列a、バーコードサブユニット配列b、バーコードサブユニット配列c、…の一部または全部は同一でありうる。いくつかの実施形態では、コンビナトリアルバーコード中のバーコードサブユニット配列a、バーコードサブユニット配列b、バーコードサブユニット配列c、…の一部または全部は異なりうる。
【0072】
いくつかの実施形態では、コンビナトリアルバーコードのセットは、少なくとも1,000、少なくとも10,000、少なくとも100,000、少なくとも200,000、少なくとも300,000、少なくとも400,000、少なくとも500,000、少なくとも1,000,000、少なくとも10,000,000、少なくとも100,000,000、少なくとも1,000,000,000種またはそれ以上のユニークコンビナトリアルバーコードを含む。
【0073】
本明細書に開示されるコンビナトリアルバーコードは、1つ以上の確率バーコードを含みうる。たとえば、コンビナトリアルバーコードは、1つ以上のユニバーサル標識、細胞標識、分子標識、サンプル標識、プレート標識、空間標識、プレ空間標識、またはそれらの任意の組合せを含みうる。いくつかの実施形態では、細胞標識、サンプル標識、空間標識などの確率バーコードは、2つ以上のバーコードサブユニット配列、たとえば、少なくとも2つ、少なくとも3つ、少なくとも4つ、少なくとも5つ、またはそれ以上のバーコードサブユニット配列を含みうる。
【0074】
いくつかの実施形態では、コンビナトリアルバーコードは、マイクロウェルアレイ中のビーズやマイクロウェルなどの固体担体上に固定しうる。図8に示されるように、ビーズやマイクロ粒子などの固体担体は、第1の複数のコンビナトリアルバーコードで被覆しうる。いくつかの実施形態では、コンビナトリアルバーコードは、ユニバーサル配列(US)、細胞標識、リンカー、分子標識、標的特異的領域たとえばオリゴ(dT)配列の1つ以上を含みうる。いくつかの実施形態では、固体担体は、標的特異的領域の代わりに空間プライマーを有すること以外は第1の複数のコンビナトリアルバーコードと同一の構造(必ずしも同一の配列であるとは限らない)を有する第2の複数のコンビナトリアルバーコードを含みうる。いくつかの実施形態では、第2の複数のコンビナトリアルバーコードの数は、たとえば、第1の複数のコンビナトリアルバーコードの数の1/10、1/100、1/1,000である。いくつかの実施形態では、第2の複数のコンビナトリアルバーコードは、ユニバーサルPCRを介して空間標識を導入するために使用される。第2の複数のコンビナトリアルバーコードは、各ウェル中にプリントまたはディスペンスすることにより追加しうる。いくつかの実施形態では、第2の複数のコンビナトリアルバーコードは、第1のビーズを有する同一のウェル中に第2のビーズにより送達しうる。
【0075】
コンポーネントバーコード
本明細書に開示されるように、それぞれバーコードサブユニット配列を含む2つ以上のコンポーネントバーコードは、コンビナトリアルバーコードを生成するために1つ以上のリンカー配列を介して互いに接続可能である。たとえば、コンポーネントバーコードのそれぞれは、バーコードサブユニット配列と1つ以上のリンカー配列またはその相補体とを含みうるとともに、2つ以上のコンポーネントバーコードは、1もしくは2つのリンカー配列またはその相補体を介して互いに接続することによりコンビナトリアルバーコードのセットを生成するように構成される。コンポーネントバーコードは、バーコードサブユニット配列、リンカー配列、標的特異的領域、またはそれらの任意の組合せを含みうる。たとえば、コンポーネントバーコードは、次の構成、すなわち、a)バーコードサブユニット配列-リンカー配列(すなわち、コンポーネントバーコードは、バーコードユニット配列とリンカー配列との両方を含み、バーコードサブユニット配列は、リンカー配列に対してコンポーネントバーコードの5’部分に位置する)、b)リンカー配列の相補体-バーコードサブユニット配列-リンカー配列、c)リンカー配列の相補体-バーコードサブユニット配列、d)バーコードサブユニット配列-リンカー配列の相補体、e)リンカー配列-バーコードサブユニット配列-リンカー配列の相補体、またはf)リンカー配列-バーコードサブユニット配列の1つを含みうる。いくつかの実施形態では、バーコードサブユニット配列およびリンカー配列は、化学結合により直接ではなく結合可能である。たとえば、バーコードサブユニット配列およびリンカー配列は、化学的部分または生物学的部分を介して結合可能である。
【0076】
コンポーネントバーコード試薬またはコンビナトリアルバーコード試薬は、バーコードサブユニット配列を含むサブユニットコードセクションを含みうる。コンビナトリアルバーコード試薬は、1、2、3、4、もしくは5つまたはそれ以上のサブユニットコードセクションを含みうる。コンビナトリアルバーコード試薬は、少なくともまたは多くとも1、2、3、4、または5つのサブユニットコードセクションを含みうる。いくつかの場合には、コンビナトリアルバーコード試薬は1つのサブユニットコードセクションを有する。サブユニットコードセクションはサブユニットコード配列を含みうる。同義的に用いられるサブユニットコード配列またはバーコードサブユニット配列は、コンビナトリアルバーコード試薬中のヌクレオチドのユニーク配列を意味しうる。サブユニットコードセクションは、5、10、15、20、25、30、35、40、もしくは45ヌクレオチド長またはそれ以上あるいは少なくともそうしたヌクレオチド長でありうる。サブユニットコードセクションは、多くとも5、10、15、20、25、30、35、40、または45ヌクレオチド長でありうる。いくつかの場合には、サブユニットコードセクションは6ヌクレオチド長である。
【0077】
いくつかの実施形態では、サブユニットコードセクションのそれぞれの位置は、4種のヌクレオチド(たとえば、A、T、C、およびG)の選択肢を有する。それぞれのサブユニットコードセクションがnヌクレオチド長を有する場合(ただし、nは正の整数である)、サブユニットコードセクションの可能なユニークサブユニットコード配列の数は4である。たとえば、サブユニットコードセクションが6ヌクレオチド長であり、かつそれぞれの位置が4種のヌクレオチドの選択肢を有する場合、可能なユニークサブユニットコード配列の全数は4,096コードでありうる。
【0078】
可能なサブユニットコード配列のサブセットは、本開示のコンビナトリアルバーコード試薬として使用が可能である。可能なサブユニットコード配列のサブセットは、そのエラー訂正性に基づいて選択可能である。たとえば、可能なサブユニットコード配列のサブセットは、サブユニットコード配列が塩基エラー(たとえば、1または2塩基エラー)を訂正できるように十分にかけ離れた配列を有しうる(たとえば、十分に異なる配列、距離を有しうる)。他の例として、サブユニットコード配列のサブセットは、配列中に本開示のエラー訂正バーコード(たとえばハミングコード)が組み込まれた長さおよび数でありうる。
【0079】
サブセット中のサブユニットコード配列の数は、5、10、15、20、25、30、35、40、もしくは45またはそれ以上あるいは少なくともそうした数でありうる。いくつかの実施形態では、サブセット中のサブユニットコード配列の数は、多くとも5、10、15、20、25、30、35、40、または45である。いくつかの実施形態では、サブセット中のサブユニットコード配列の数は24である。サブユニットコード配列は互いに異なりうる。サブユニットコード配列は、1、2、3、4、5、6、7、8、9、もしくは10ヌクレオチドまたはそれ以上あるいは少なくともそうしたヌクレオチドが異なりうる。いくつかの実施形態では、サブユニットコード配列は、多くとも1、2、3、4、5、6、7、8、9、または10ヌクレオチドが異なりうる。サブユニットコード配列は、配列のセットにクロスハイブリダイズしないものでありうる。サブユニットコード配列はエラー訂正性でありうる。
【0080】
コンビナトリアルバーコード試薬は1つ以上のリンカーを含みうる。リンカーは、コンビナトリアルバーコード試薬を一体的に結合する(たとえば、コンビナトリアルバーコード試薬を一体的にコンカチネートする)ために使用可能である。リンカーは、他のコンビナトリアルバーコード試薬のリンカーにハイブリダイズする(たとえば、それによりコンビナトリアルバーコード試薬をコンカチネートする)ように構成可能である。リンカーはコンビナトリアルバーコード試薬のサブユニットコードの3’側でありうる。リンカーはコンビナトリアルバーコード試薬のサブユニットコードの5’側でありうる。リンカーはコンビナトリアルバーコード試薬のサブユニットコードの3’側および5’側の両方でありうる。リンカーは、1、2、3、4、5、6、7、8、9、もしくは10ヌクレオチド長またはそれ以上あるいは少なくともそうしたヌクレオチド長でありうる。いくつかの実施形態では、リンカーは、多くとも1、2、3、4、5、6、7、8、9、もしくは10ヌクレオチド長またはそれ以上でありうる。いくつかの実施形態では、第1のコンビナトリアルバーコード試薬のリンカー配列は、第2のコンビナトリアルバーコード試薬のリンカー配列にハイブリダイズ可能である。いくつかの実施形態では、第1のコンビナトリアルバーコード試薬のリンカー配列は、第2のコンビナトリアルバーコード試薬のリンカー配列の相補体でありうる。いくつかの実施形態では、第1のコンビナトリアルバーコード試薬のリンカー配列は、1、2、3、4、5、6、7、8、9、もしくは10ミスマッチまたはそれ以上あるいは少なくともそうしたミスマッチを有して第2のコンビナトリアルバーコード試薬のリンカー配列にハイブリダイズ可能である。いくつかの実施形態では、第1のコンビナトリアルバーコード試薬のリンカー配列は、多くとも1、2、3、4、5、6、7、8、9、もしくは10ミスマッチまたはそれ以上のミスマッチを有して第2のコンビナトリアルバーコード試薬のリンカー配列にハイブリダイズ可能である。
【0081】
いくつかの実施形態では、コンビナトリアルバーコード試薬は標的特異的領域を含む。標的特異的領域は、本開示の標的ポリヌクレオチド(たとえば単一細胞のもの)に関連付け(たとえばハイブリダイズ)可能である。標的特異的領域は、オリゴdT、遺伝子特異的配列、またはランダムマルチマー配列を含みうる。標的特異的領域は、本開示の二本鎖標的ポリヌクレオチドのセンス鎖にハイブリダイズ可能である。標的特異的領域は、本開示の二本鎖標的ポリヌクレオチドのアンチセンス鎖にハイブリダイズ可能である。標的特異的領域は、1、2、3、4、5、6、7、8、9、もしくは10ヌクレオチド長またはそれ以上あるいは少なくともそうしたヌクレオチド長でありうる。いくつかの実施形態では、標的特異的領域は、多くとも1、2、3、4、5、6、7、8、9、もしくは10ヌクレオチド長またはそれ以上でありうる。
【0082】
いくつかの実施形態では、コンビナトリアルバーコード試薬は、本開示の1つ以上の細胞標識、分子標識、ユニバーサル標識、標的結合領域、もしくは任意の標識またはそれらの任意の組合せを含む。
【0083】
コンビナトリアルバーコード試薬は、任意のタイプの核酸(たとえば、PNA、LNA)で構成可能である。コンビナトリアルバーコード試薬は、固体または半担体(たとえば、ビーズ、ゲル粒子、抗体、ヒドロゲル、アガロース)に結合可能である。コンビナトリアルバーコード試薬は、本開示の基材(たとえばアレイ)上に固定可能である。コンビナトリアルバーコード試薬は、ウイルス、リポソーム、マイクロスフェアなどの生物学的パッケージ内に組込み可能である。コンビナトリアル試薬はある部分を含みうる。ある部分は識別子(たとえば、蛍光部分、放射性部分)として作用可能である。
【0084】
コンポーネントバーコードのセット
本明細書に開示されるいくつかの実施形態は、コンビナトリアルバーコードのセットを生成するためのコンポーネントバーコードのセットを含む組成物を提供する。セット中のユニークコンビナトリアルバーコード試薬の数はn×mでありうる。ただし、nはサブユニットコード配列(n)の数であり、mはコンビナトリアルバーコード中のサブユニットコードセクション(m)の数であり、かつnおよびmが正の整数である。たとえば、サブユニットコード配列のサブセットが24種であり、かつコンビナトリアルバーコード中に4つのサブユニットコードセクションが存在する場合、合計96種のユニークコンビナトリアルバーコード試薬が存在可能である。n×mユニークコンポーネントバーコードを用いて生成可能なユニークコンビナトリアルバーコードのセットの最大数はnmである。ただし、nはサブユニットコード配列の数であり、かつmはコンビナトリアルバーコード中のサブユニットコードセクションの数である。たとえば、コンビナトリアルバーコードに24種のサブユニットコード配列および4つのサブユニットコードセクションが存在する場合、96種のユニークコンビナトリアルバーコード試薬のセットから331,776種のユニークコンビナトリアルバーコードの最大セットを生成可能である。
【0085】
コンビナトリアルバーコード中のサブユニットコードセクションの数は、1、2、3、4、5、6、7、8、9、もしくは10またはそれ以上あるいは少なくともそうした数でありうる。コンビナトリアルバーコード中のサブユニットコードセクションの数は、多くとも1、2、3、4、5、6、7、8、9、または10でありうる。いくつかの実施形態では、コンビナトリアルバーコード中のサブユニットコードセクションの数は4である(図1に示される通り)。
【0086】
コンビナトリアルバーコード試薬のセットのいくつかのコンビナトリアルバーコード試薬は標的特異的領域を含みうる。標的特異的領域を含むセット中のコンビナトリアルバーコード試薬の数は、1、2、3、4、もしくは5またはそれ以上あるいは少なくともそうした数でありうる。いくつかの実施形態では、標的特異的領域を含むセット中のコンビナトリアルバーコード試薬の数は、多くとも1、2、3、4、または5でありうる。図2A~Cに示されるように、いくつかの実施形態では、標的特異的領域を含むセット中のコンビナトリアルバーコード試薬の数は少なくとも2である。いくつかの場合には、標的特異的領域を含むセット中のコンビナトリアルバーコード試薬の数は2である(図2A~B)。いくつかの実施形態では、標的特異的領域を含むセット中のコンビナトリアルバーコード試薬の数は少なくとも1である。いくつかの場合には、標的特異的領域を含むセット中のコンビナトリアルバーコード試薬の数は1である(図2C)。
【0087】
コンビナトリアルバーコード試薬のセットは、標的特異的領域を含むいくつかのコンビナトリアルバーコード試薬と、標的特異的領域を含まないいくつかのコンビナトリアルバーコード試薬と、を含みうる。いくつかの場合には、コンビナトリアルバーコード試薬のセットは、標的特異的領域を有する1種のコンビナトリアルバーコード試薬を含み、かつコンビナトリアルバーコード試薬の残りのものは、標的特異的領域を有していなくてもよい(たとえば、サブユニットコードセクション/配列および1つ以上のリンカーを含みうる)。いくつかの場合には、コンビナトリアルバーコード試薬のセットは、標的特異的領域を有する2種のコンビナトリアルバーコード試薬を含み、かつコンビナトリアルバーコード試薬の残りのものは、標的特異的領域を有していなくてもよい(たとえば、サブユニットコードセクション/配列および1つ以上のリンカーを含みうる)。
【0088】
標的特異的領域を有していなくてもよいセット中のコンビナトリアルバーコード試薬の数は、1、2、3、4、5、6、7、8、9、もしくは10またはそれ以上あるいは少なくともそうした数でありうる。いくつかの実施形態では、標的特異的領域を有していなくてもよいセット中のコンビナトリアルバーコード試薬の数は、多くとも1、2、3、4、5、6、7、8、9、または10でありうる。
【0089】
コンビナトリアルバーコード試薬のセットは、複数のコンビナトリアルバーコードをコード付け可能である。コンビナトリアルバーコードは、セットのコンビナトリアルバーコード試薬の全配列を含みうる(すなわち、所与の標的ポリヌクレオチドに対して)。コンビナトリアルバーコードは、所与の標的ポリヌクレオチドに対するコンカチネートコンビナトリアルバーコード試薬の全配列でありうる(たとえば、リンカーを介して結合一体化されうる)。コンビナトリアルバーコードは、コンビナトリアルバーコード試薬のリンカー配列を含みうる。コンビナトリアルバーコードは、コンビナトリアルバーコード試薬のリンカー配列を排除可能である(たとえば、サブユニットコード配列のみを含む)。コンビナトリアルバーコードは、所与の標的ポリヌクレオチドに対するコンビナトリアルバーコード試薬のサブユニットコードセクションの配列の全配列でありうる。
【0090】
いくつかの実施形態では、コンビナトリアルバーコードは、1つ以上のリンカー配列を介して互いにハイブリダイズされるおよび/または1つ以上の標的特異的領域を介して標的ポリヌクレオチドにハイブリダイズされる2種以上のコンビナトリアルバーコード試薬を意味しうる(たとえば、それを用いて形成しうる)。いくつかの実施形態では、コンビナトリアルバーコードは、伸長、逆転写、および/または増幅を介して標的ポリヌクレオチドを伴ってまたは伴わずに単一ポリヌクレオチド中に組み込まれた2種以上のコンビナトリアルバーコード試薬を意味しうる。
【0091】
いくつかの実施形態では、コンビナトリアルバーコードはバイパータイトでありうる。コンビナトリアルバーコードの一部は、標的ポリヌクレオチドの5’末端に接続可能である。コンビナトリアルバーコードの一部は、標的ポリヌクレオチドの3’末端に接続可能である。全コンビナトリアルバーコードは、標的ポリヌクレオチドの5’末端に接続可能である。全コンビナトリアルバーコードは、標的ポリヌクレオチドの3’末端に接続可能である。
【0092】
コンビナトリアルバーコード試薬を組み合わせてコンビナトリアルバーコードを作製可能である。コンビナトリアルバーコードは、1つ以上の細胞標識、分子標識、ユニバーサル標識、標的結合領域、本開示の任意の標識、またはそれらの任意の組合せを含みうる。いくつかの場合には、コンビナトリアルバーコード試薬は、標識を含んでいなくてもよい。たとえば、コンビナトリアルバーコードが4種のコンビナトリアルバーコード試薬から構成される場合、1種のコンビナトリアルバーコード試薬は標識を含んでいなくてもよく、かつコンビナトリアルバーコードの3種のコンビナトリアルバーコード試薬は本明細書に開示される任意の標識を含みうる。コンビナトリアルバーコード試薬は本開示の確率バーコードを含みうる。
【0093】
コンビナトリアルバーコード試薬のセットはランダムでありうる。たとえば、コンビナトリアルバーコード中のリンカー配列の全部または一部は同一でありうる。したがって、コンポーネントバーコードは任意の順序で結合可能である。コンビナトリアルバーコード試薬のセットは非ランダムでありうる。たとえば、コンビナトリアルバーコード中のリンカー配列はすべて異なりうる。したがって、コンポーネントバーコードの順序は特定の順序で結合可能である。
【0094】
いくつかの実施形態では、コンビナトリアルバーコード試薬は、本明細書に開示される任意の固体または半固体の担体に結合される。たとえば、コンビナトリアルバーコード試薬は、ビーズとゲル粒子との組合せ、またはビーズ上に結合された第2のコンビナトリアルバーコード試薬と溶液中の第1のコンビナトリアルバーコード試薬との組合せ、またはマイクロウェル内の基材上に固定された第1のコンビナトリアルバーコード試薬とマイクロウェル内の溶液中にあるもしくは固体粒子上に存在する第2のコンビナトリアルバーコード試薬との組合せに結合可能である。いくつかの実施形態では、コンビナトリアルバーコード試薬は、生物学的サンプルおよび核酸の定位置局在化を目的としてスポンジ状スキャフォールドとして作用可能なヒドロゲルまたは類似の材料に埋め込まれる。
【0095】
固体担体
本明細書に開示されるコンビナトリアルバーコード試薬および/またはコンビナトリアルバーコードは、固体担体(たとえば、ビーズ、基材)に結合可能である。本明細書に開示されるコンビナトリアルバーコード試薬および/またはコンビナトリアルバーコードは、固体担体(たとえば、アレイのマイクロウェル中)に位置しうる。本明細書で用いられる場合、「テザー連結」、「結合」、および「固定」という用語は、同義的に用いられて、確率バーコードを固体担体に結合するための共有結合または非共有結合の手段を意味する。さまざまな異なるいずれの固体担体も、プレ合成されたコンビナトリアルバーコード試薬を結合するためのまたはコンビナトリアルバーコード試薬をin situ固相合成するための固体担体として使用しうる。
【0096】
いくつかの場合には、固体担体はビーズである。ビーズは、核酸を(たとえば共有結合または非共有結合で)固定しうるプラスチック、セラミック、金属、または高分子材料で構成された任意のタイプの中実、多孔性、または中空のスフェア、ボール、ベアリング、シリンダー、または他の類似の構成体を包含しうる。ビーズは、球状(たとえばマイクロスフェア)でありうるかまたは非球状もしくは不規則形状、たとえば、立方体形、直方体形、角錐形、円柱形、円錐形、扁球形、ディスク形などを有しうる離散粒子を含みうる。ビーズは非球状の形状でありうる。
【0097】
ビーズは、限定されるものではないが、常磁性材料(たとえば、マグネシウム、モリブデン、リチウム、およびタンタル)、超常磁性材料(たとえば、フェライト(Fe、マグネタイト)ナノ粒子)、強磁性材料(たとえば、鉄、ニッケル、コバルト、それらのいくつかの合金、およびいくつかの希土類金属化合物)、セラミック、プラスチック、ガラス、ポリスチレン、シリカ、メチルスチレン、アクリルポリマー、チタン、ラテックス、セファロース、アガロース、ヒドロゲル、ポリマー、セルロース、ナイロン、ならびにそれらの任意の組合せなどのさまざまな材料を含みうる。
【0098】
ビーズの直径は、5μm、10μm、20μm、25μm、30μm、35μm、40μm、45μm、もしくは50μmまたは概略で少なくともそうした長さでありうる。ビーズの直径は、多くとも約5μm、10μm、20μm、25μm、30μm、35μm、40μm、45μm、または50μmでありうる。ビーズの直径は、基材のウェルの直径に関連付け可能である。たとえば、ビーズの直径は、ウェルの直径よりも10、20、30、40、50、60、70、80、90、もしくは100%長いもしくは短い長さまたは少なくともそうした長さでありうる。いくつかの実施形態では、ビーズの直径は、ウェルの直径よりも多くとも10、20、30、40、50、60、70、80、90、もしくは100%長いまたは短い長さでありうる。ビーズの直径は、細胞(たとえば、基材のウェルに閉じ込められた単一細胞)の直径に関連付けうる。ビーズの直径は、細胞の直径よりも10、20、30、40、50、60、70、80、90、100、150、200、250、もしくは300%またはそれ以上長いまたは短い長さあるいは少なくともそうした長さでありうる。いくつかの実施形態では、ビーズの直径は、細胞の直径よりも多くとも10、20、30、40、50、60、70、80、90、100、150、200、250、もしくは300%またはそれ以上長いまたは短い長さでありうる。
【0099】
ビーズは、本開示の基材への埋込みおよび/または結合が可能である。ビーズは、ゲル、ヒドロゲル、ポリマー、および/またはマトリックスへの埋込みおよび/または結合が可能である。基材(たとえば、ゲル、マトリックス、スキャフォールド、またはポリマー)内のビーズの空間位置は、位置アドレスとして機能可能なビーズ上の確率バーコードに存在する空間標識を用いて同定可能である。
【0100】
ビーズの例としては、限定されるものではないが、ストレプトアビジンビーズ、アガロースビーズ、磁気ビーズ、Dynabead(登録商標)、MACS(登録商標)マイクロビーズ、抗体コンジュゲートビーズ(たとえば、抗免疫グロブリンマイクロビーズ)、プロテインAコンジュゲートビーズ、プロテインGコンジュゲートビーズ、プロテインA/Gコンジュゲートビーズ、プロテインLコンジュゲートビーズ、オリゴdTコンジュゲートビーズ、シリカビーズ、シリカ様ビーズ、抗ビオチンマイクロビーズ、抗蛍光色素マイクロビーズ、およびBcMag(商標)カルボキシ末端磁気ビーズが挙げられうる。
【0101】
ビーズは、1つの蛍光光学チャネルまたは複数の光学チャネルで蛍光を発するように量子ドットまたは蛍光色素への関連付け(たとえばそれらによる含浸)が可能である。ビーズは、常磁性または強磁性にするために酸化鉄または酸化クロムへの関連付けが可能である。ビーズは同定可能でありうる。ビーズは、カメラを用いてイメージング可能である。ビーズは、ビーズに関連付けられた検出可能なコードを有しうる。たとえば、ビーズは、RFIDタグを含みうる。ビーズは、任意の検出可能なタグ(たとえば、UPCコード、電子バーコード、エッチング識別子)を含みうる。ビーズは、たとえば、有機または無機の溶液中での膨潤に起因してサイズ変化しうる。ビーズは疎水性または親水性でありうる。ビーズは生体適合性でありうる。
【0102】
固体担体(たとえばビーズ)は可視化可能である。固体担体は可視化タグ(たとえば蛍光色素)を含みうる。固体担体(たとえばビーズ)は識別子(たとえば数)でエッチング可能である。識別子は固体担体(たとえばビーズ)のイメージングにより可視化可能である。
【0103】
固体担体は、不溶性、半可溶性、または不溶性の材料を含みうる。固体担体は、それに結合されたリンカー、スキャフォールド、ビルディングブロック、または他の反応性部分を含む場合、「官能基化」としても参照可能であり、一方、固体担体は、それに結合されたかかる反応性部分が欠如している場合、「非官能基化」でありうる。固体担体は、たとえば、マイクロタイターウェル方式、カラムなどのフロースルー方式、またはディップスティックの場、溶液中に遊離した状態で利用可能である。
【0104】
固体担体は、メンブレン、ペーパー、プラスチック、被覆表面、フラット表面、ガラス、スライド、チップ、またはそれらの任意の組合せを含みうる。固体担体は、樹脂、ゲル、マイクロスフェア、または他の幾何学構成体の形態をとりうる。固体担体は、シリカチップ、マイクロ粒子、ナノ粒子、プレート、アレイ、キャピラリー、フラット担体、たとえば、ガラス繊維フィルター、ガラス表面、金属表面(鋼、金銀、アルミニウム、シリコン、および銅)、ガラス担体、プラスチック担体、シリコン担体、チップ、フィルター、メンブレン、マイクロウェルプレート、スライド、マルチウェルのプレートもしくはメンブレン(たとえば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリアミド、ポリビニリデンジフルオリドで形成される)を含むプラスチック材料、および/またはウエハ、コーム、ウエハ(たとえばシリコンウエハ)などのフラット表面のピットもしくはナノリットルウェルのアレイのピンもしくはニードル(たとえば、コンビナトリアル合成もしくは分析に好適なピンのアレイ)もしくはビーズ、フィルターボトムを備えたもしくは備えていないピットを有するウエハを含みうる。
【0105】
固体担体は、ポリマーマトリックス(たとえば、ゲル、ヒドロゲル)を含みうる。ポリマーマトリックスは、細胞内空間(たとえば、オルガネラの周り)を透過可能でありうる。ポリマーマトリックスは、循環システム全体にわたりポンプ操作可能でありうる。
【0106】
固体担体は生物学的分子でありうる。たとえば、固体担体は、核酸、タンパク質、抗体、ヒストン、細胞区画、脂質、炭水化物などでありうる。生物学的分子である固体担体は、増幅、翻訳、転写、分解、および/または修飾(たとえば、ペグ化、SUMO化、アセチル化、メチル化)が可能である。生物学的分子である固体担体は、生物学的分子に結合された空間標識に加えて空間および時間の情報を提供可能である。たとえば、生物学的分子は、非修飾である場合、第1のコンフォメーションを含みうるが、修飾された場合、第2のコンフォメーションに変化しうる。さまざまなコンフォメーションで本開示の確率バーコードを標的に露出可能である。たとえば、生物学的分子は、生物学的分子のフォールディングによってアクセス不能になる確率バーコードを含みうる。生物学的分子が修飾(たとえばアセチル化)されると、生物学的分子は、コンフォメーションを変化させて確率標識を露出可能である。修飾のタイミングは、本開示の確率バーコーディングの方法に他の時間次元を提供可能である。
【0107】
いくつかの実施形態では、本開示のコンビナトリアルバーコード試薬を含む生物学的分子は、細胞の細胞質に位置しうる。活性化時、生物学的分子は、核に移動可能であり、その後、確率バーコーディングを行うことが可能である。こうして、生物学的分子の修飾は、確率バーコードにより同定される標的に対して追加の空間-時間情報のコード付けを可能にする。
【0108】
次元標識は、生物学的イベント(たとえば細胞分裂)の空間-時間に関する情報を提供可能である。たとえば、次元標識は第1の細胞に添加可能であり、第1の細胞は分裂して第2の娘細胞を生成可能であり、第2の娘細胞は次元標識のすべてもしくは一部を含みうるかまたはまったく含まないこともある。次元標識は原細胞および娘細胞で活性化可能である。こうして、次元標識は、識別可能な空間でコンビナトリアルバーコーディングの時間に関する情報を提供可能である。
【0109】
基材
基材はあるタイプの固体担体を意味しうる。基材は、本開示のコンビナトリアルバーコード試薬を含みうる固体担体を意味しうる。基材は複数のマイクロウェルを含みうる。マイクロウェルは、規定の体積の小さい反応チャンバーを含みうる。マイクロウェルは1つ以上の細胞を閉込め可能である。マイクロウェルは1つのみの細胞を閉込め可能である。マイクロウェルは1つ以上の固体担体を閉込め可能である。マイクロウェルは1つのみの固体担体を閉込め可能である。いくつかの場合には、マイクロウェルは単一細胞および単一固体担体(たとえばビーズ)を閉じ込める。マイクロウェルは本開示のコンビナトリアルバーコード試薬を含みうる。
【0110】
アレイのマイクロウェルは、さまざまな形状およびサイズで作製可能である。ウェルのジオメトリーとしては、限定されるものではないが、円柱、円錐、半球、矩体、または多面体(たとえば、いくつかの平面で構成される三次元ジオメトリー、たとえば、六角柱、八角柱、逆三角錐、逆正四角錐、逆五角錐、逆六角錐、または逆角錐台)が挙げられうる。マイクロウェルは、これらのジオメトリーの2つ以上を組み合わせた形状を含みうる。たとえば、マイクロウェルは部分的に円柱形でありうるとともに、残りの部分は逆円錐の形状を有しうる。マイクロウェルは2つの並んだ円柱を含みうる。その一方は他方の直径(たとえば、ほぼ細胞の直径に対応する)よりも長い直径(たとえば、ほぼビーズの直径に対応する)であり、それらは円柱の全長(深さ)にわたる垂直チャネル(すなわち円柱軸に平行)により接続される。マイクロウェルの開口は基材の上側表面に存在しうる。マイクロウェルの開口は基材の下側表面に存在しうる。マイクロウェルのクローズドエンド(またはボトム)はフラットでありうる。マイクロウェルのクローズドエンド(またはボトム)は、湾曲表面(たとえば、凸または凹)を有しうる。マイクロウェルの形状および/またはサイズは、マイクロウェル内にトラップされる細胞または固体担体のタイプに基づいて決定しうる。
【0111】
ウェル間の基材の部分はあるトポロジーを有しうる。たとえば、ウェル間の基材の部分は丸形でありうる。ウェル間の基材の部分は尖頭形でありうる。ウェル間の基材のスペース部分はフラットでありうる。ウェル間の基材の部分はフラットでなくてもよい。いくつかの場合には、ウェル間の基材の部分は丸形である。言い換えれば、ウェルを含まない基材の部分は湾曲表面を有しうる。湾曲表面は、湾曲表面の最も高い点(たとえば頂点)が2つ以上のウェルのエッジ間の最も離れた点(たとえば、ウェルから等距離)になりうるように作製可能である。湾曲表面は、湾曲表面の出発点が第1のマイクロウェルのエッジに存在し、かつ第2のマイクロウェルの端で終わる放物線を形成するように、作製可能である。この放物線は、ウェルの六角グリッド上の近接したマイクロウェルをキャプチャーするように二次元に延在可能である。湾曲表面は、ウェル間の表面がウェルの開口の平面よりも高くなるようにおよび/または湾曲するように作製可能である。湾曲表面の高さは、0.1、0.5、1、1.5、2、2.5、3、3.5、4、4.5、5、5.5、6、6.5、もしくは7マイクロメートルまたはそれ以上あるいは少なくともそうした高さでありうる。いくつかの実施形態では、湾曲表面の高さは、多くとも0.1、0.5、1、1.5、2、2.5、3、3.5、4、4.5、5、5.5、6、6.5、もしくは7マイクロメートルまたはそれ以上でありうる。
【0112】
マイクロウェルの寸法は、ウェルの直径および深さにより特徴付け可能である。本明細書で用いられる場合、マイクロウェルの直径は、マイクロウェルのジオメトリーの平面断面に内接可能な最大の円を意味する。マイクロウェルの直径は、マイクロウェル内にトラップされる細胞または固体担体の直径の約1倍~約10倍の範囲内でありうる。マイクロウェルの直径は、マイクロウェル内にトラップされる細胞または固体担体の直径の1倍もしくは少なくとも1倍、少なくとも1.5倍、少なくとも2倍、少なくとも3倍、少なくとも4倍、少なくとも5倍、または少なくとも10倍でありうる。いくつかの実施形態では、マイクロウェルの直径は、マイクロウェル内にトラップされる細胞または固体担体の直径の多くとも10倍、多くとも5倍、多くとも4倍、多くとも3倍、多くとも2倍、多くとも1.5倍、または多くとも1倍でありうる。マイクロウェルの直径は、マイクロウェル内にトラップされる細胞または固体担体の直径の約2.5倍でありうる。
【0113】
マイクロウェルの直径は絶対寸法により規定可能である。マイクロウェルの直径は約5~約60マイクロメートルの範囲内でありうる。マイクロウェルの直径は、5マイクロメートルもしくは少なくとも5マイクロメートル、少なくとも10マイクロメートル、少なくとも15マイクロメートル、少なくとも20マイクロメートル、少なくとも25マイクロメートル、少なくとも30マイクロメートル、少なくとも35マイクロメートル、少なくとも40マイクロメートル、少なくとも45マイクロメートル、少なくとも50マイクロメートル、または少なくとも60マイクロメートルでありうる。マイクロウェルの直径は、多くとも60マイクロメートル、多くとも50マイクロメートル、多くとも45マイクロメートル、多くとも40マイクロメートル、多くとも35マイクロメートル、多くとも30マイクロメートル、多くとも25マイクロメートル、多くとも20マイクロメートル、多くとも15マイクロメートル、多くとも10マイクロメートル、または多くとも5マイクロメートルでありうる。マイクロウェルの直径は約30マイクロメートルでありうる。
【0114】
マイクロウェルの深さは、細胞および固体担体の効率的トラッピングを提供するように選択しうる。マイクロウェルの深さは、ウェル内に含有されるアッセイ緩衝剤および他の試薬の効率的交換を提供するように選択しうる。直径対高さの比(すなわちアスペクト比)は、細胞および固体担体をマイクロウェル内に静置した時にそれらがマイクロウェルを超えて流体運動により変位しないように選択しうる。マイクロウェルの寸法は、マイクロウェルを超えて流体運動により除去されることなく種々のサイズの固体担体および細胞を収容するのに十分な空間をマイクロウェルが有するように選択しうる。マイクロウェルの深さは、マイクロウェル内にトラップされる細胞または固体担体の直径の約1倍~約10倍の範囲内でありうる。マイクロウェルの深さは、マイクロウェル内にトラップされる細胞または固体担体の直径の1倍もしくは少なくとも1倍、少なくとも1.5倍、少なくとも2倍、少なくとも3倍、少なくとも4倍、少なくとも5倍、または少なくとも10倍でありうる。マイクロウェルの深さは、マイクロウェル内にトラップされる細胞または固体担体の直径の多くとも10倍、多くとも5倍、多くとも4倍、多くとも3倍、多くとも2倍、多くとも1.5倍、または多くとも1倍でありうる。マイクロウェルの深さは、マイクロウェル内にトラップされる細胞または固体担体の直径の約2.5倍でありうる。
【0115】
マイクロウェルの深さは絶対寸法により規定可能である。マイクロウェルの深さは、約10~約60マイクロメートルの範囲内でありうる。マイクロウェルの深さは、10マイクロメートルもしくは少なくとも10マイクロメートル、少なくとも20マイクロメートル、少なくとも25マイクロメートル、少なくとも30マイクロメートル、少なくとも35マイクロメートル、少なくとも40マイクロメートル、少なくとも50マイクロメートル、または少なくとも60マイクロメートルでありうる。マイクロウェルの深さは、多くとも60マイクロメートル、多くとも50マイクロメートル、多くとも40マイクロメートル、多くとも35マイクロメートル、多くとも30マイクロメートル、多くとも25マイクロメートル、多くとも20マイクロメートル、または多くとも10マイクロメートルでありうる。マイクロウェルの深さは約30マイクロメートルでありうる。
【0116】
本開示の方法、デバイス、およびシステムで使用されるマイクロウェルの容積は、約200マイクロメートル~約120,000マイクロメートルの範囲内でありうる。マイクロウェルの容積は、少なくとも200マイクロメートル、少なくとも500マイクロメートル、少なくとも1,000マイクロメートル、少なくとも10,000マイクロメートル、少なくとも25,000マイクロメートル、少なくとも50,000マイクロメートル、少なくとも100,000マイクロメートル、または少なくとも120,000マイクロメートルでありうる。マイクロウェルの容積は、多くとも120,000マイクロメートル、多くとも100,000マイクロメートル、多くとも50,000マイクロメートル、多くとも25,000マイクロメートル、多くとも10,000マイクロメートル、多くとも1,000マイクロメートル、多くとも500マイクロメートル、または多くとも200マイクロメートルでありうる。マイクロウェルの容積は約25,000マイクロメートルでありうる。マイクロウェルの容積は、これらの値のいずれかにより境界付けられる任意の範囲内(たとえば、約18,000マイクロメートル~約30,000マイクロメートル)に含まれうる。
【0117】
マイクロウェルの容積は、5、10、15、20、25、30、35、40、45、もしくは50ナノリットルまたはそれ以上あるいは少なくともそうした容積でありうる。マイクロウェルの容積は、多くとも5、10、15、20、25、30、35、40、45、もしくは50ナノリットルまたはそれ以上でありうる。マイクロウェル内に収容可能な液体の体積は、少なくとも5、10、15、20、25、30、35、40、45、もしくは50ナノリットルまたはそれ以上でありうる。マイクロウェル内に収容可能な液体の体積は、多くとも5、10、15、20、25、30、35、40、45、もしくは50ナノリットルまたはそれ以上でありうる。マイクロウェルの容積は、5、10、15、20、25、30、35、40、45、もしくは50ピコリットルまたはそれ以上あるいは少なくともそうした容積でありうる。マイクロウェルの容積は、多くとも5、10、15、20、25、30、35、40、45、もしくは50ピコリットルまたはそれ以上でありうる。マイクロウェル内に収容可能な液体の体積は、少なくとも5、10、15、20、25、30、35、40、45、もしくは50ピコリットルまたはそれ以上でありうる。マイクロウェル内に収容可能な液体の体積は、多くとも5、10、15、20、25、30、35、40、45、もしくは50ピコリットルまたはそれ以上でありうる。
【0118】
本開示の方法、デバイス、およびシステムで使用されるマイクロウェルの容積は、マイクロウェル間の体積変動によりさらに特徴付けしうる。マイクロウェルの容積の変動係数(パーセントで表される)は約1%~約10%の範囲内でありうる。マイクロウェルの容積の変動係数は、少なくとも1%、少なくとも2%、少なくとも3%、少なくとも4%、少なくとも5%、少なくとも6%、少なくとも7%、少なくとも8%、少なくとも9%、または少なくとも10%でありうる。マイクロウェルの容積の変動係数は、多くとも10%、多くとも9%、多くとも8%、多くとも7%、多くとも6%、多くとも5%、多くとも4%、多くとも3%、多くとも2%、または多くとも1%でありうる。たとえば、マイクロウェルの容積の変動係数は、これらの値に囲まれた範囲内の任意の値、たとえば、約1.5%~約6.5%を有しうる。いくつかの実施形態では、マイクロウェルの容積の変動係数は約2.5%でありうる。
【0119】
本開示の方法、デバイス、およびシステムで使用されるマイクロウェルの容積とビーズの表面積(または確率バーコードオリゴヌクレオチドを結合しうる固体担体の表面積)との比は、約2.5~約1,520マイクロメートルの範囲内でありうる。比は、少なくとも2.5、少なくとも5、少なくとも10、少なくとも100、少なくとも500、少なくとも750、少なくとも1,000、または少なくとも1,520でありうる。比は、多くとも1,520、多くとも1,000、多くとも750、多くとも500、多くとも100、多くとも10、多くとも5、または多くとも2.5でありうる。比は約67.5でありうる。マイクロウェルの容積とビーズ(または固定に使用される固体担体)の表面積との比は、これらの値のいずれかにより境界付けられる任意の範囲内(たとえば、約30~約120)に含まれうる。
【0120】
マイクロウェルアレイのウェルは、一次元、二次元、または三次元のアレイに配置可能である。いくつかの実施形態では、三次元アレイは、たとえば、一連の2つ以上の二次元アレイをスタックすることにより(すなわち、マイクロウェルアレイを含む2つ以上の基材をスタックすることにより)達成可能である。
【0121】
マイクロウェル間のパターンおよびスペースは、各ウェル中に単一細胞および単一固体担体(たとえばビーズ)をトラップする効率を最適化するように、さらにはアレイの単位面積当たりのウェルの数を最大化するように、選択可能である。マイクロウェルは、さまざまなランダムパターンまたは非ランダムパターンに従って分布させうる。たとえば、アレイ基材の表面全体にわたりランダムに分布させうるか、または正方グリッド、矩形グリッド、六角グリッドなどに配置しうる。いくつかの場合には、マイクロウェルは六角状に配置しうる。ウェル間の中心間距離(またはスペース)は、約5マイクロメートル~約75マイクロメートルでさまざまでありうる。いくつかの場合には、マイクロウェル間のスペースは約10マイクロメートルである。他の実施形態では、ウェル間のスペースは、少なくとも5マイクロメートル、少なくとも10マイクロメートル、少なくとも15マイクロメートル、少なくとも20マイクロメートル、少なくとも25マイクロメートル、少なくとも30マイクロメートル、少なくとも35マイクロメートル、少なくとも40マイクロメートル、少なくとも45マイクロメートル、少なくとも50マイクロメートル、少なくとも55マイクロメートル、少なくとも60マイクロメートル、少なくとも65マイクロメートル、少なくとも70マイクロメートル、または少なくとも75マイクロメートルである。マイクロウェルのスペースは、多くとも75マイクロメートル、多くとも70マイクロメートル、多くとも65マイクロメートル、多くとも60マイクロメートル、多くとも55マイクロメートル、多くとも50マイクロメートル、多くとも45マイクロメートル、多くとも40マイクロメートル、多くとも35マイクロメートル、多くとも30マイクロメートル、多くとも25マイクロメートル、多くとも20マイクロメートル、多くとも15マイクロメートル、多くとも10マイクロメートル、多くとも5マイクロメートルでありうる。マイクロウェルのスペースは約55マイクロメートルでありうる。マイクロウェルのスペースは、これらの値のいずれかにより境界付けられる任意の範囲内(たとえば、約18マイクロメートル~約72マイクロメートル)に含まれうる。
【0122】
マイクロウェルアレイは、細胞および固体担体をウェル内に案内するのに役立つようにおよび/またはそれらがウェル間の表面上に静置するのを防止するように設計されるマイクロウェル間の表面フィーチャーを含みうる。好適な表面フィーチャーの例としては、限定されるものではないが、ウェルを取り囲むまたはウェル間の表面をまたぐドーム状、リッジ状、またはピーク状の表面フィーチャーが挙げられうる。
【0123】
マイクロウェルアレイ中のウェルの全数は、ウェルのパターンおよびスペースならびにアレイの全体寸法により決定可能である。アレイ中のマイクロウェルの数は、約96~約5,000,000の範囲内またはそれ以上でありうる。アレイ中のマイクロウェルの数は、少なくとも96、少なくとも384、少なくとも1,536、少なくとも5,000、少なくとも10,000、少なくとも25,000、少なくとも50,000、少なくとも75,000、少なくとも100,000、少なくとも500,000、少なくとも1,000,000、または少なくとも5,000,000でありうる。アレイ中のマイクロウェルの数は、多くとも5,000,000、多くとも1,000,000、多くとも75,000、多くとも50,000、多くとも25,000、多くとも10,000、多くとも5,000、多くとも1,536、多くとも384、または多くとも96ウェルでありうる。アレイ中のマイクロウェルの数は、約96、384、および/または1536でありうる。マイクロウェルの数は約150,000でありうる。アレイ中のマイクロウェルの数、これらの値のいずれかにより境界付けられる任意の範囲内(たとえば、約100~325,000)に含まれうる。
【0124】
マイクロウェルアレイは、いくつかの作製技術のいずれかを用いて作製しうる。使用しうる作製方法の例としては、限定されるものではないが、バルクマイクロマシニング技術、たとえば、フォトリソグラフィーおよび湿式化学エッチング、プラズマエッチング、またはディープ反応性イオンエッチング、マイクロモールディングおよびマイクロエンボシング、レーザーマイクロマシニング、3Dプリンティングまたは硬化性材料を用いた他の直接書込み作製プロセス、ならびに類似の技術が挙げられる。
【0125】
マイクロウェルアレイは、いくつかの基材材料のいずれかから作製可能である。材料の選択は作製技術の選択に依存しうるとともにその逆も成り立つ。好適な材料の例としては、限定されるものではないが、シリコン(溶融シリカ)、ガラス、ポリマー(たとえば、アガロース、ゼラチン、ヒドロゲル、ポリジメチルシロキサン(PDMS、エラストマー)、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、ポリカーボネート(PC)、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレン(PE)、高密度ポリエチレン(HDPE)、ポリイミド、環状オレフィンポリマー(COP)、環状オレフィンコポリマー(COC)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、エポキシ樹脂、チオール-エン系樹脂、金属または金属フィルム(たとえば、アルミニウム、ステンレス鋼、銅、ニッケル、クロム、およびチタン)などが挙げられうる。いくつかの場合には、マイクロウェルは光学接着剤を含む。いくつかの場合には、マイクロウェルは光学接着剤で作製される。いくつかの場合には、マイクロウェルアレイはPDMSを含むおよび/またはPDMSで作製される。いくつかの場合には、マイクロウェルはプラスチックで作製される。マイクロウェルアレイの作製のために(たとえば、湿潤性を向上させるためにならびに細胞および他の生体物質の非特異的結合を最小限に抑えるために)、親水性材料が望ましいこともある。処理または被覆(たとえば、酸素プラズマ処理またはポリエチレンオキシド表面層のグラフト化により)が可能な疎水性材料も使用可能である。デバイス内に閉じ込められた気泡のキャピラリーウィッキング/ベンティングを促進するために、マイクロウェルアレイの作製に多孔性親水性材料の使用が望ましいこともある。マイクロウェルアレイは単一材料から作製可能である。マイクロウェルアレイは、結合一体化または機械連結された2種以上の異なる材料を含みうる。
【0126】
マイクロウェルアレイは、さまざまなサイズおよび形状のいずれかの基材を用いて作製可能である。たとえば、マイクロウェルが作製される基材の形状(またはフットプリント)は、正方形、矩形、円形、または不規則形状でありうる。マイクロウェルアレイ基材のフットプリントは、マイクロタイタープレートに類似したものでありうる。マイクロウェルアレイ基材のフットプリントは標準的顕微鏡スライドに類似したものでありうる。たとえば、約75mmの長さ×25mmの幅(約3”の長さ×1”の幅)、または約75mmの長さ×50mmの幅(約3”の長さ×2”の幅)でありうる。マイクロウェルが作製される基材の厚さは、約0.1mmの厚さ~約10mmの厚さの範囲内またはそれ以上でありうる。マイクロウェルアレイ基材の厚さは、少なくとも0.1mmの厚さ、少なくとも0.5mmの厚さ、少なくとも1mmの厚さ、少なくとも2mmの厚さ、少なくとも3mmの厚さ、少なくとも4mmの厚さ、少なくとも5mmの厚さ、少なくとも6mmの厚さ、少なくとも7mmの厚さ、少なくとも8mmの厚さ、少なくとも9mmの厚さ、または少なくとも10mmの厚さでありうる。マイクロウェルアレイ基材の厚さは、多くとも10mmの厚さ、多くとも9mmの厚さ、多くとも8mmの厚さ、多くとも7mmの厚さ、多くとも6mmの厚さ、多くとも5mmの厚さ、多くとも4mmの厚さ、多くとも3mmの厚さ、多くとも2mmの厚さ、多くとも1mmの厚さ、多くとも0.5mmの厚さ、または多くとも0.1mmの厚さでありうる。マイクロウェルアレイ基材の厚さは約1mmの厚さでありうる。たとえば、マイクロウェルアレイ基材の厚さはこれらの範囲内の任意の値でありうる。たとえば、マイクロウェルアレイ基材の厚さは約0.2mm~約9.5mmでありうる。マイクロウェルアレイ基材の厚さは均一でありうる。
【0127】
マイクロウェルアレイ表面の性質を改変するためにさまざまな表面処理および表面改質技術を使用しうる。例としては、限定されるものではないが、疎水性材料表面をより親水性にするための酸素プラズマ処理、ガラスおよびシリコンの表面を平滑化(または粗面化)するための湿式または乾式エッチング技術の使用、より親水性にするためのならびにバイオ分子および細胞の非特異的吸着を起こしにくくするための基材表面へのポリエチレンオキシドまたは他のポリマー層(たとえばプルロニック)またはウシ血清アルブミンの吸着またはグラフト化、シリコンおよびガラスの表面を他の形で不活性化するように化学反応性官能基をグラフトするためのシラン反応の使用などが挙げられうる。アレイ構造の特定の位置で化学反応性官能基を選択的に活性化させるために光脱保護技術を使用可能であり、たとえば、オリゴヌクレオチドプローブ、ペプチド、タンパク質、または他のバイオ分子をマイクロウェルの壁に共有結合するために、マイクロウェルの内壁上で第1級アミン基やカルボキシル基などの化学反応性官能基の選択性な付加または活性化を使用しうる。利用される表面処理または表面改質の選択は、望まれる表面の性質のタイプおよびマイクロウェルアレイを作製する材料のタイプの両方または一方に依存しうる。
【0128】
隣接するマイクロウェル間での標的核酸のクロスハイブリダイゼーションを防止するために、たとえば細胞溶解工程時、マイクロウェルの開口をシールしうる。たとえば、マイクロウェルアレイ基材の表面をクランプする固体材料の可撓性メンブレンもしくはシート(すなわちプレートもしくはプラテン)を用いて、またはビーズの直径がマイクロウェルの直径よりも大きい場合には好適なビーズを用いて、マイクロウェル(またはマイクロウェルのアレイ)をシールまたはキャップしうる。
【0129】
固体材料の可撓性メンブレンまたはシートを用いて形成されるシールは、たとえば、無機ナノ細孔メンブレン(たとえば酸化アルミニウム)、透析膜、ガラススライド、カバースリップ、エラストマーフィルム(たとえばPDMS)、または親水性ポリマーフィルム(たとえば、溶解緩衝液で水和されたアガロースの薄膜で被覆されたポリマーフィルムを含みうる。
【0130】
マイクロウェルのキャッピングに使用される固体担体(たとえばビーズ)は、本開示の固体担体のいずれか(たとえばビーズ)を含みうる。いくつかの場合には、固体担体は架橋デキストランビーズ(たとえばSephadex)である。架橋デキストランは約10マイクロメートル~約80マイクロメートルの範囲内でありうる。キャッピングに使用される架橋デキストランビーズは、20マイクロメートル~約50マイクロメートルでありうる。いくつかの実施形態では、ビーズは、マイクロウェルの直径よりも少なくとも約10、20、30、40、50、60、70、80、または90%大きくしうる。キャッピングに使用されるビーズは、マイクロウェルの直径よりも多くとも約10、20、30、40、50、60、70、80、または90%大きくしうる。
【0131】
シールまたはキャップは、ウェルからのマクロ分子(たとえば核酸)の移行を防止しつつ、マイクロウェルに対する緩衝液の出入りを可能にしうる。少なくとも約1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、12、13、14、15、16、17、18、19、もしくは20ヌクレオチドまたはそれ以上のマクロ分子は、シールまたはキャップによりマイクロウェルからのまたはマイクロウェルへの移行を阻止しうる。多くとも約1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、12、13、14、15、16、17、18、19、もしくは20ヌクレオチドまたはそれ以上のマクロ分子は、シールまたはキャップによりマイクロウェルからのまたはマイクロウェルへの移行を阻止しうる。
【0132】
固体担体(たとえばビーズ)は基材中に分配しうる。固体担体(たとえばビーズ)は、基材のウェル中に分配可能であるか、基材のウェルから除去可能であるか、さもなければ遠心分離もしくは他の非磁性手段により1つ以上のマイクロウェルアレイを含むデバイスを介して輸送可能である。基材のマイクロウェルは固体担体でプレロード可能である。基材のマイクロウェルは、少なくとも1、2、3、4、もしくは5つまたはそれ以上の固体担体を保持可能である。基材のマイクロウェルは、多くとも1、2、3、4、もしくは5つまたはそれ以上の固体担体を保持可能である。いくつかの場合には、基材のマイクロウェルは1つの固体担体を保持可能である。
【0133】
個別の細胞およびビーズは、代替手段を用いてマイクロウェルに区画化しうる。たとえば、単一固体担体および単一細胞は、エマルジョンの単一ドロップレット内に閉じ込めうる(たとえば、ドロップレットディジタルマイクロ流体システムの場合)。
【0134】
細胞は、潜在的に、複数のテザー連結された確率バーコードをそれ自体が含む多孔性ビーズ内に閉込め可能である。個別の細胞および固体担体は、任意のタイプの容器、マイクロ容器、反応チャンバー、反応槽などに区画化しうる。
【0135】
単一細胞コンビナトリアルバーコーディングはマイクロウェルを用いることなく行いうる。単一細胞コンビナトリアルバーコーディングアッセイはいかなる物理的容器も用いることなく行いうる。たとえば、物理的容器を含まないコンビナトリアルバーコーディングは、ポリマー層またはゲル層内に細胞およびビーズを互いにごく近接して埋め込んで異なる細胞/ビーズペア間に拡散障壁を形成することにより行うことが可能である。他の例として、物理的容器を含まないコンビナトリアルバーコーディングは、インタクト固体組織上、インタクト細胞上、および/または細胞下で、in situ、in vivoで行うことが可能である。
【0136】
マイクロウェルアレイはアッセイシステムのコンシューマブルコンポーネントでありうる。マイクロウェルアレイは再使用可能でありうる。マイクロウェルアレイは、アッセイを手作業で行うためのスタンドアロンデバイスとして使用するように構成可能であるか、またはアッセイ手順の完全もしくは部分自動化を提供する機器システムの固定されたもしくは取外し可能なコンポーネントを含むように構成しうる。本開示の方法のいくつかの実施形態では、確率バーコードのビーズベースライブラリーは、アッセイ手順の一部としてマイクロウェルアレイのウェル内に堆積可能である。いくつかの実施形態では、ビーズは、マイクロウェルアレイのウェル内にプレロードしうるとともに、たとえば、核酸標的の確率バーコーディングおよびディジタルカウンティングを行うためのキットの一部としてユーザーに提供しうる。
【0137】
いくつかの実施形態では、2つの対をなすマイクロウェルアレイが提供され、一方は、第1のマグネットにより所定の位置に保持されたビーズでプレロードされ、他方は、個別細胞をロードする際にユーザーにより使用される。第2のマイクロウェルアレイ中に細胞を分配した後、2つのアレイを対面状態に配置し、そして第2のマグネットを用いて第1のアレイのビーズを第2のアレイの対応するマイクロウェル中に引き込みつつ第1のマグネットを除去することにより、ビーズが第2のマイクロウェルアレイ中の細胞上に確実に静止するようにし、それにより、ビーズ上の確率バーコードへの標的分子の効率的結合を最大化しつつ細胞溶解後の標的分子の拡散損失を最小限に抑える。
【0138】
本開示のマイクロウェルアレイは固体担体(たとえばビーズ)でプレロードしうる。マイクロウェルアレイの各ウェルは単一固体担体を含みうる。マイクロウェルアレイ中のウェルの少なくとも10、20、30、40、50、60、70、80、90、または100%は、単一固体担体でプレロードしうる。マイクロウェルアレイ中のウェルの多くとも10、20、30、40、50、60、70、80、90、または100%は、単一固体担体でプレロードしうる。固体担体は本開示の確率バーコードおよび/またはコンビナトリアルバーコードを含みうる。異なる固体担体上の確率バーコードの細胞標識は異なりうる。同一の固体担体上の確率バーコードの細胞標識は同一でありうる。
【0139】
三次元基材
三次元アレイは任意の形状でありうる。三次元基材は、本開示の基材で使用される任意の材料で作製可能である。いくつかの場合には、三次元基材はDNAオリガミを含む。DNAオリガミ構造は、ビルディング材料としてDNAを組み込んでナノスケールの形状を作製する。DNAオリガミプロセスは、複数の合理的に設計された「ステープル」DNA鎖を用いて1つ以上の長い「スキャフォールド」DNA鎖を特定の形状にフォールディングする工程を含みうる。ステープル鎖の配列は、スキャフォールド鎖の特定の部分にハイブリダイズするようにかつその際にスキャフォールド鎖を特定の形状にするように設計可能である。DNAオリガミは、スキャフォールド鎖と複数の合理的に設計されたステープル鎖とを含みうる。スキャフォールド鎖は、任意の十分な非繰返し性の配列を有しうる。
【0140】
ステープル鎖の配列は、DNAオリガミが確率標識を結合可能な少なくとも1つの形状を有するように選択可能である。いくつかの実施形態では、DNAオリガミは、少なくとも1つの内表面と少なくとも1つ外表面とを有する任意の形状でありうる。内表面は、サンプルの表面との相互作用が立体的に防止されるDNAオリガミの任意の表面領域でありうるとともに、外表面は、サンプルの表面との相互作用が立体的に防止されないDNAオリガミの任意の表面領域でありうる。いくつかの実施形態では、粒子(たとえば固体担体)がDNAオリガミの内表面にアクセスできるようにDNAオリガミは1つ以上の開口(たとえば2つの開口)を有する。たとえば、ある特定の実施形態では、DNAオリガミは、10マイクロメートル、5マイクロメートル、1マイクロメートル、500nm、400nm、300μm、250nm、200nm、150nm、100nm、75nm、50nm、45nm、または40nmよりも小さい粒子がDNAオリガミの内表面に接触できるようにする1つ以上の開口を有する。
【0141】
DNAオリガミは、1つ以上のある特定の環境刺激に応答して形状(コンフォメーション)を変化させることが可能である。それゆえ、DNAオリガミの領域は、DNAオリガミがいくつかのコンフォメーションを呈する場合には内表面でありうるが、その考案物が他のコンフォメーションを呈する場合には外表面でありうる。いくつかの実施形態では、DNAオリガミは、新しいコンフォメーションを呈することによりある特定の環境刺激に反応しうる。
【0142】
いくつかの実施形態では、DNAオリガミのステープル鎖は、DNAオリガミは実質的にバレル形状またはチューブ形状になるように選択可能である。DNAオリガミのステープルは、バレル形状の両端が閉じるように、または一端もしくは両端が開くことにより粒子がバレルの内側に進入しかつその内表面にアクセスできるように、選択可能である。ある特定の実施形態では、DNAオリガミのバレル形状は六角チューブでありうる。
【0143】
いくつかの実施形態では、DNAオリガミのステープル鎖は、DNAオリガミが第1のドメインと第2のドメインとを有し、第1のドメインの第1の端が1つ以上の一本鎖DNAヒンジにより第2のドメインの第1の端に結合され、かつ第1のドメインの第2の端が1つ以上の分子ラッチにより第2のドメインの第2のドメインに結合されるように、選択可能である。複数のステープルは、分子ラッチのすべてがそれらのそれぞれの外部刺激に接触する場合、第1のドメインの第2の端が第2のドメインの第2の端に未結合の状態になるように、選択可能である。ラッチは、核酸、脂質、タンパク質などの外部刺激に結合可能な少なくとも1つの刺激結合ドメインを有する少なくとも1つステープル鎖と、刺激結合ドメインに結合する少なくとも1つのラッチドメインを有する少なくとも1つの他のステープル鎖と、を含む2つ以上のステープルから形成可能である。ラッチドメインへの刺激結合ドメインの結合は、DNAオリガミの第1のコンフォメーションの安定性を支援する。
【0144】
固体担体上および基材上でのコンビナトリアルバーコードの合成
いくつかの実施形態では、コンビナトリアルバーコード試薬は固体担体(たとえばビーズ)上で合成可能である。プレ合成されたコンビナトリアルバーコード試薬(たとえば、固体担体に結合可能な5’アミンを含む)は、固体担体上および確率バーコード上に官能基ペアを含むさまざまな固定技術のいずれかにより固体担体(たとえばビーズ)に結合しうる。コンビナトリアルバーコード試薬は官能基を含みうる。固体担体(たとえばビーズ)は官能基を含みうる。コンビナトリアルバーコード試薬の官能基および固体担体の官能基は、たとえば、ビオチン、ストレプトアビジン、第1級アミン、カルボキシル、ヒドロキシル、アルデヒド、ケトン、およびそれらの任意の組合せを含みうる。コンビナトリアルバーコードは、たとえば、コンビナトリアルバーコード試薬上の5’アミノ基と官能基化固体担体のカルボキシル基とをカップリングさせることにより(たとえば、1-エチル-3-(3-ジメチルアミノプロピル)カルボジイミドを用いて)、固体担体にテザー連結しうる。残留するカップリングされないコンビナトリアルバーコード試薬は、複数回の濯ぎ工程を行うことにより反応混合物から除去しうる。いくつかの実施形態では、コンビナトリアルバーコード試薬および固体担体は、類似の結合化学を用いてリンカー分子(たとえば、短い官能基化炭化水素分子またはポリエチレンオキシド分子)を介して間接結合される。リンカーは、切断性リンカー、たとえば、酸不安定性リンカーまたは光切断性リンカーでありうる。
【0145】
コンビナトリアルバーコード試薬は、ホスホジエステル合成、ホスホトリエステル合成、ホスフィットトリエステル合成、ホスホロアミダイト合成などのいくつかの固相オリゴヌクレオチド合成技術のいずれかを用いて固体担体(たとえばビーズ)上で合成可能である。単一ヌクレオチドは、成長中のテザー連結されたコンビナトリアルバーコード試薬にステップワイズにカップリングしうる。いくつかの実施形態では、いくつかのオリゴヌクレオチドの短いプレ合成された配列(またはブロック)を成長中のテザー連結されたコンビナトリアルバーコード試薬にカップリングしうる。
【0146】
コンビナトリアルバーコード試薬は、スプリット-プール合成の1回以上のラウンドを用いて散在ステップワイズカップリング反応またはブロックカップリング反応により合成可能である。この場合、合成ビーズの全プールをいくつかの個別の小さいプールに分割し、次いで、それぞれを異なるカップリング反応に付し、続いて、個別のプールを再び組み合わせて混合することによりビーズの全プールにわたり成長中のコンビナトリアルバーコード試薬配列をランダム化する。スプリット-プール合成は、最小数の化学カップリング工程を用いて最大数の化学化合物を合成であるコンビナトリアル合成プロセスの例である。こうして作製された化合物ライブラリーの潜在的多様性は、各カップリング工程に利用可能なユニークビルディングブロック(たとえばヌクレオチド)の数およびライブラリーの作製に使用されるカップリングする工程の数により決定される。たとえば、各工程で4種の異なるヌクレオチドを用いた10ラウンドのカップリングを含むスプリット-プール合成は、410=1,048,576種のユニークヌクレオチド配列を生成するであろう。いくつかの実施形態では、スプリット-プール合成は、化学カップリングではなくポリメラーゼ伸長やライゲーション反応などの酵素法を用いて行いうる。たとえば、スプリット-プールポリメラーゼ伸長反応の各ラウンドでは、所与のプールのビーズにテザー連結された確率バーコードの3’末端に、セミランダムプライマー、たとえば、5’-(M)-(X)-(N)-3’(式中、(X)は、iヌクレオチド長のヌクレオチドのランダム配列であり((X)のすべての可能な組合せを含むプライマーのセット)、(N)は特定のヌクレオチド(または一連のj個のヌクレオチド)であり、かつ(M)は特定のヌクレオチド(または一連のk個のヌクレオチド)である)の構造を有するプライマー、のセットの5’末端を、ハイブリダイズさせる。この場合、異なるデオキシリボヌクレオチド三リン酸(dNTP)は各プールに添加され、テザー連結されたオリゴヌクレオチド中にポリメラーゼにより組み込まれる。
【0147】
固体担体上にコンジュゲートされるまたは固体担体上で合成されるコンビナトリアルバーコード試薬の数は、少なくとも100、1000、10000、もしくは1000000またはそれ以上のコンビナトリアルバーコード試薬を含みうる。固体担体上にコンジュゲートされるまたは固体担体上で合成されるコンビナトリアルバーコード試薬の数は、多くとも100、1000、10000、もしくは1000000またはそれ以上のコンビナトリアルバーコード試薬を含みうる。ビーズなどの固体担体上にコンジュゲートされるまたは固体担体上で合成されるコンビナトリアルバーコード試薬の数は、細胞内の標的核酸の数の少なくとも、1、2、3、4、5、6、7、8、9、または10倍以上でありうる。ビーズなどの固体担体上にコンジュゲートされるまたは固体担体上で合成されるコンビナトリアルバーコード試薬の数は、細胞内の標的核酸の数の多くとも1、2、3、4、5、6、7、8、9、または10倍以上でありうる。確率バーコードの少なくとも10、20、30、40、50、60、70、80、90、または100%は、標的核酸に結合可能である。確率バーコードの多くとも10、20、30、40、50、60、70、80、90、または100%は、標的核酸に結合可能である。少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、20、30、40、50、60、70、80、90、もしくは100またはそれ以上の異なる標的核酸は、固体担体上のコンビナトリアルバーコード試薬によりキャプチャー可能である。多くとも1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、20、30、40、50、60、70、80、90、もしくは100またはそれ以上の異なる標的核酸は、固体担体上のコンビナトリアルバーコード試薬によりキャプチャー可能である。
【0148】
複数のパーティションにバーコードを付ける方法
本開示は、コンビナトリアルバーコードのセットを用いて複数のパーティションにバーコードを付ける方法を提供する。ある実施形態では、複数のパーティションはマイクロウェルアレイ中の複数のマイクロウェルでありうる。いくつかの実施形態では、マイクロウェルアレイ中のマイクロウェルの数は、少なくとも96、少なくとも384、少なくとも1,536、少なくとも5,000、少なくとも10,000、少なくとも25,000、少なくとも50,000、少なくとも75,000、少なくとも100,000、少なくとも500,000、少なくとも1,000,000、もしくは少なくとも5,000,000またはそれ以上でありうる。いくつかの実施形態では、各マイクロウェルアレイは、他のマイクロウェルアレイのアレイバーコードと識別可能なアレイバーコードを含みうる。
【0149】
いくつかの実施形態では、本方法は、コンポーネントバーコードが本明細書に開示されるコンポーネントバーコードのセットから選択される条件で複数のパーティションのそれぞれにいくつかのコンポーネントバーコードを導入する工程を含みうる。いくつかの実施形態では、複数のパーティションのそれぞれのコンポーネントバーコードは、コンビナトリアルバーコードを形成するために互いに接続しうる。コンポーネントバーコードは、サンプルの標的ポリヌクレオチドの存在下または不在下で互いに接続しうる。
【0150】
図3に記載されるように、コンビナトリアルバーコード試薬305、310、315、および320は、任意の特定のマイクロウェル325(たとえば、マイクロウェルのアレイ330)内にディスペンス可能である。ディスペンシングは、たとえば、ピペッティング、ピンスポッティング、非接触プリンティングなどの方法により実施可能である。コンビナトリアルバーコード試薬はまた、たとえば、ビーズや他の粒子などの送達方法を用いてウェルにランダムに添加しうる。たとえば、インクジェットプリントヘッドは、各ウェル中にコンビナトリアルバーコード試薬をディスペンス可能である。バーコーディング試薬は、個別のパーティション中にディスペンスまたは形成しうる。例示的なパーティションとしては、限定されるものではないが、チューブ、マイクロタイタープレート中のウェル、フローセル、中空繊維、スライド上のマイクロウェル、中空の閉粒子または開粒子、閉ドロップレット、ビーズなどの粒子または他の固体もしくは液体もしくはゲルの粒子、あるいはサンプル間の分離に使用される他の物理的パーティションが挙げられうる。物理的分離はまた、三次元の固体またはスキャフォールド中の二次元の表面上または基材上で個別のサンプルの位置分離を行うことによっても達成しうる。
【0151】
コンビナトリアルバーコード試薬はかかる方法で設計可能であるので、各サブユニットコードセクションの各サブユニットコード配列はリンカーを用いてあらかじめプログラムされた順序で組合せ可能である。各マイクロウェル325中の最終コードはユニークでありうる。任意の所与のコンビナトリアルバーコード試薬の組合せに対して、マイクロウェルの位置を確定可能である。こうして、コンビナトリアルバーコード試薬は、マイクロウェルアレイ330上のマイクロウェル325内のサンプルの空間位置を決定するために使用可能である。
【0152】
本開示は、コンポーネントバーコード試薬の小さいセットを用いるだけでバーコーディング試薬多様性の大量のレパートリーの生成(たとえば、コンビナトリアルバーコーディング)を可能にするための組成物および方法を提供する。コンビナトリアルバーコーディングの方法は確率バーコーディングの方法と組合せ可能である。いくつかの場合には、何十万~何百万超ものサンプルの並列処理が可能である。たとえば、並列処理が可能なサンプルの数は、少なくとも10万、20万、30万、40万、50万、60万、70万、80万、または90万サンプルでありうる。並列処理が可能なサンプルの数は、多くとも10万、20万、30万、40万、50万、60万、70万、80万、または90万サンプルでありうる。並列処理が可能なサンプルの数は、少なくとも100万、200万、300万、400万、500万、600万、700万、800万、900万、もしくは1000万サンプルまたはそれ以上でありうる。並列処理が可能なサンプルの数は、多くとも100万、200万、300万、400万、500万、600万、700万、800万、900万、もしくは1000万サンプルまたはそれ以上でありうる。
【0153】
多数(何千~何百万)の個別のサンプルの核酸に同時にバーコードタグを付ける方法が本明細書に開示される。バーコードタグは、ランダムなまたは所定/既知の核酸配列のストリング(バーコード)の1つ以上からなりうる。バーコードは、合成オリゴヌクレオチドおよび/または天然もしくは非天然DNA断片を含みうる。たとえば、バーコードは、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、もしくは20ヌクレオチド長またはそれ以上あるいは少なくともそうした長さでありうる。バーコードは、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、もしくは20ヌクレオチド長またはそれ以上あるいは少なくともそうした長さでありうる。
【0154】
さまざまなDNA配列のほかに、コンビナトリアルバーコードは、さまざまな材料で構成しうるかまたはさまざまな形態で生じうる。たとえば、コンポーネントバーコードは、ビーズとゲル粒子との組合せ、またはビーズ上の第2のオリゴヌクレオチドと溶液中の第1のオリゴヌクレオチドとの組合せ、またはマイクロウェル内の基材上に固定された第1のオリゴヌクレオチドとマイクロウェル内の溶液中にあるもしくは固体粒子上に存在する第2のオリゴヌクレオチドとの組合せでありうる。バーコードはまた、生物学的サンプルおよび核酸の定位置局在化を目的としてスポンジ状スキャフォールドとして作用可能なヒドロゲルまたは類似の材料に埋み込みうる。たとえば、薄い組織切片上の細胞を溶解しうるとともに、放出された核酸含有分を所定の位置にキャプチャーすることが可能である。キャプチャーされた核酸は、位置特異的バーコードまたはコンビナトリアルバーコードを組み込みうるとともに、所望によりさらにレプリケートし、所定の位置で検出しうるか、または放出および単離を行って次世代シーケンシングなどの方法によるさらなる特徴付けに供しうる。
【0155】
サンプルは、マイクロウェル中にディスペンス可能である。いくつかの実施形態では、サンプルは単一細胞でありうる。いくつかの実施形態では、サンプルは組織切片でありうる。サンプルは、コンビナトリアルバーコード試薬をディスペンスする前にディスペンス可能である。サンプルは、コンビナトリアルバーコード試薬をディスペンスした後にディスペンス可能である。サンプルは、ディスペンシング(たとえば単離)デバイスを用いてディスペンスする可能である。例示的なディスペンシング/単離デバイスとしては、限定されるものではないが、フローサイトメーター、ニードルアレイ、およびマイクロインジェクターが挙げられうる。マイクロウェルアレイは、サンプルをマイクロウェルアレイのウェル内に直接単離/ディスペンスできるように単離/ディスペンシングデバイスに装着可能である。
【0156】
本開示のバーコードを含むサンプル(すなわち、本開示のバーコーディング法が行われたサンプル)は、シーケンシングなどの下流用途で使用可能である。DNAシーケンシング後、得られたサンプル核酸配列のほかに、各シーケンスリードは、たとえばコンピューター処理を用いてサンプルのプール内の特定のサンプルへのそのリードの帰属を可能にするサンプルバーコードストリングを有しうる。
【0157】
サンプルは、非ランダム法で基材のウェル内にディスペンス可能である。マイクロウェルアレイ中にディスペンス/単離された各サンプルの位置は既知でありうる。このようにすれば、分配はランダムおよび/または確率に従わなくてもよい。サンプルは、非ポアソン法で基材のウェル内にディスペンス可能である。ポアソン分布または曲線は、イベントが既知の平均レートで起こりかつ互いに独立している場合に一定期間に起こるいくつかのイベントの確率を表す離散確率分布である。ポアソン分布式は次の通りである。すなわち、f(k;λ)=(e-λλ/k!)である。式中、kはイベントの出現の数であり、λは所与の間隔での出現の期待数の正の実数である。非ポアソン分布は、ポアソン式に従わない分布でありうる。
【0158】
核酸、単一細胞、単一細胞の核酸、コンビナトリアルバーコード試薬、ならびにプライマー伸長および増幅に必要な試薬(たとえば、ポリメラーゼdNTP、緩衝液)、またはそれらの任意の組合せを含むマイクロウェルは、シール可能である。マイクロウェルのシーリングは、隣接マイクロウェル間の標的核酸のクロスハイブリダイゼーションを防止するのに有用でありうる。マイクロウェルは、テープおよび/または任意の接着剤でシール可能である。シーラントは透明でありうる。シーラントは不透明でありうる。シーラントは光を通過させうるので、シールされたマイクロウェルの内容物の目視検出が可能になる(たとえば、UV-Vis、蛍光)。パーティション(たとえば、アレイのマイクロウェル)の核酸(たとえば、サンプルのもの)は、マイクロウェル内にディスペンスされたコンビナトリアルバーコード試薬に関連付け(たとえばハイブリダイズ)可能である。
【0159】
ウェル内のコンビナトリアルバーコード試薬および標的ポリヌクレオチドは、伸長および/または増幅によりコンビナトリアルバーコード試薬の配列を含む転写物および/またはアンプリコンを生成可能である。増幅は、限定されるものではないが、PCR、プライマー伸長、逆転写、等温増幅、線形増幅、多重置換増幅(MDA)、転写媒介増幅(TMA)、核酸配列ベースの増幅(NASBA)、鎖置換増幅(SDA)、リアルタイムSDA、ローリングサークル増幅、またはサークル-サークル増幅、RT-PCR、リアルタイムPCR、ネステッドPCR、定量PCR、多重PCR、ディジタルPCR、およびアセンブリーPCR、エンドポイントPCR、およびサプレッションPCR、またはそれらの任意の組合せをはじめとする方法により行うことが可能である。いくつかの場合には、増幅および/または伸長は等温増幅で行われる。いくつかの場合には、増幅および/または伸長は多重鎖置換で行われる。
【0160】
マイクロウェルの内容物は伸長および/または増幅の後にプール可能である。内容物のプールは、下流プロセス用のサンプル調製時のエラーを低減可能である。マイクロウェルサンプルは、1つの容器(たとえばチューブ)内にプール可能である。マイクロウェルサンプルは、2つ以上の容器(たとえば、サンプル/プレートインデクシング用のチューブ)内にプール可能である。
【0161】
プールマイクロウェルサンプルは分子生物学的に操作可能である。たとえば、プールサンプルは1ラウンド以上の増幅に供しうる。プールサンプルは精製工程に供しうる(たとえば、Ampureビーズ、サイズ選択、ゲル/カラム濾過、rRNAまたは任意の他のRNA不純物の除去、不純物の酵素分解、パルスゲル電気泳動、およびスクロースグラジエントまたは塩化セシウムグラジエントによる沈降、およびサイズ排除クロマトグラフィー(ゲル浸透クロマトグラフィー)を用いる)。
【0162】
プールマイクロウェルサンプルはシーケンシング用に調製可能である。シーケンシング調製物は、アダプターライゲーション(たとえばTAライゲーション)またはプライマー伸長(たとえば、この場合、プライマーはフローセルアダプターの配列を含む)のいずれかによるシーケンシング(たとえばフローセルアダプター)の付加を含みうる。核酸の断片にアダプターをライゲートする方法は周知である。アダプターは、二本鎖、一本鎖か、または部分一本鎖でありうる。いくつかの態様では、アダプターは、2つのオリゴヌクレオチドが一体的にハイブリダイズされた時に二本鎖領域を形成するように、相補性の領域、たとえば、完全相補性の約10~30または約15~40塩基を有する2つのオリゴヌクレオチドから形成される。任意選択的に、オリゴヌクレオチドの一方または両方は、他のオリゴヌクレオチドに相補的でない領域を有しうるとともに、アダプターの一方または両方の末端で一本鎖オーバーハングを形成する。一本鎖オーバーハングは約1~約8または約~2~約4塩基でありうる。オーバーハングは、制限酵素による切断により形成されるオーバーハングに相補的であり「付着末端」ライゲーションを促進しうる。アダプターは、プライマー結合部位や制限部位などの他の特徴を含みうる。いくつかの態様では、制限部位は、IIS型制限酵素または認識配列の外側を切断する他の酵素たとえばEcoP151に対するものであう。プールサンプルはシーケンス可能である(たとえば、本明細書に記載される方法により)。
【0163】
コンビナトリアルバーコード付き核酸のシーケンシングは、コンビナトリアルバーコードの少なくとも一部(たとえば、コンビナトリアルバーコードの作製に使用されるコンビナトリアルバーコード試薬の配列)をシーケンスする工程を含みうる。シーケンシングは、標的ポリヌクレオチドのコンビナトリアルバーコードの少なくとも10、20、30、40、50、60、70、80、90、または100%をシーケンスする工程を含みうる。シーケンシングは、標的ポリヌクレオチドのコンビナトリアルバーコードの多くとも10、20、30、40、50、60、70、80、90、または100%をシーケンスする工程を含みうる。シーケンシングは、標的ポリヌクレオチドの少なくとも一部をシーケンスする工程を含みうる。シーケンシングは、標的ポリヌクレオチドの少なくとも10、20、30、40、50、60、70、80、90、または100%をシーケンスする工程を含みうる。シーケンシングは、標的ポリヌクレオチドの多くとも10、20、30、40、50、60、70、80、90、または100%をシーケンスする工程を含みうる。シーケンシングは、コンビナトリアルバーコードの少なくとも一部と標的ポリヌクレオチドの少なくとも一部とをシーケンシングする工程を含みうる。シーケンシングは、コンビナトリアルバーコードと標的ポリヌクレオチドとの接合をシーケンスする工程を含みうる。シーケンシングは、ペアエンドシーケンシングを含みうる。ペアエンドシーケンシングは、単一ポリヌクレオチド二本鎖上の2つの場所の配列の2つ以上のリードの決定を可能にしうる。
【0164】
DNAシーケンシング後、得られたサンプル核酸配列のほかに、各シーケンスリードは、たとえばコンピューター処理を用いてサンプルのプール内の特定のサンプルへのそのリードの帰属を可能にするサンプルバーコードストリングおよび/または標的核酸配列を有しうる。たとえば、第1のマイクロウェルのコンビナトリアルバーコード配列を含むリードは一体的にビニング可能であり、一方、第2のマイクロウェルのコンビナトリアルバーコード配列を含むリードは一体的にビニング可能である。各マイクロウェル(たとえばビン)に対するリードは、分析および/または処理が可能である。たとえば、出発材料が断片化染色体DNAであった場合、リードは、処理してコンティグを形成可能である、および/またはPCT国際出願第PCT/US2016/22712号明細書(その内容はその全体が参照により組み込まれる)に記載されるようにハプロタイプフェージングを実施可能である。
【0165】
たとえば、コンティグ(連続配列)は、リードのショートレンジ特性データから形成可能である。リードはビニング可能である。すべてのビン中で、そのビン中のリードのショートレンジプローブシグネチャーの検索および記録が可能である。ビニングされたリードのサブセットに対して従来のコンティギング分析を用いることにより、ショートレンジシグネチャーを用いてビン中のコンティグ化リードに対してリードの順序および距離を決定可能である。近接するビンのコンティグのオリエントおよび接続により、より大きなコンティグを形成可能である。
【0166】
いくつかの実施形態では、リードはショートレンジプロービングに従ってビニングされる。ショートレンジプローブシグネチャーの初期比較の後、高い信頼度を有するリードのクラスターが形成される。次いで、クラスター中のリードに対してリードの順序および距離が決定される。すべてのリードクラスターのロングレンジプローブ情報の検索および記録が行われ、クラスターに対するコンポジットロングレンジスコアが生成される。このコンポジットは、クラスター中のすべてのリードにわたり(リード)比較スコアの最大(または他の算術組合せ)をとることにより、各エントリーに対して生成可能である。結果はゲノムを基準にしたクラスターのビニングであり、このグローバルポジショニング情報は近接クラスターの決定に使用可能である。次いで、近接するビニングされたクラスターのコンティグのオリエントおよび接続を行ってより大きいコンティグを形成可能である。
【0167】
複数のDNA標的のバーコーディング
本明細書に開示されるいくつかの実施形態は、複数のパーティション中の複数のDNA標的にバーコードを付ける方法を提供する。複数のパーティションは、本明細書に開示されるコンビナトリアルバーコードを用いてバーコード付け可能である。たとえば、各パーティションは、コンポーネントバーコードのセットから選択されるコンポーネントバーコードのユニークな組合せでバーコード付け可能である。いくつかの実施形態では、複数のパーティションのそれぞれの各コンビナトリアルバーコードは、パーティション中の1つ以上のDNA標的に結合する標的特異的領域を含む。ゲノムDNA断片などの複数のDNA標的は複数のパーティションに導入しうる。いくつかの実施形態では、各パーティションは1つ以下のDNA標的を含む。いくつかの実施形態では、各パーティションは、同一の染色体の1つ以下のDNA標的を含む。いくつかの実施形態では、各パーティションは、平均で1以下、2以下、3以下、5以下、10以下、100以下のDNA標的を含みうる。いくつかの実施形態では、DNA標的は、パーティションにコンポーネントバーコードを導入した後にパーティションに導入される。いくつかの実施形態では、DNA標的は、パーティションにコンポーネントバーコードを導入する前にパーティションに導入される。いくつかの実施形態では、各パーティション中の1つ以上のコンポーネントバーコードは、パーティション中の1つ以上のDNA標的にハイブリダイズする。いくつかの実施形態では、DNA標的にハイブリダイズしたコンポーネントバーコードは、DNA標的とコンビナトリアルバーコードとを含む伸長産物を生成するために伸長反応用のプライマーとして使用しうる。いくつかの実施形態では、伸長産物を増幅してシーケンスしうる。
【0168】
図4は、コンティグを生成するための本開示のコンビナトリアルバーコーディング法の例示的な実施形態を示している。核酸(たとえば染色体)は断片化可能である。断片化は、たとえば、超音波処理、剪断、酵素的断片化などの任意の方法により行うことが可能である。断片は、10、50、100、150、200、250、300、350、もしくは400キロ塩基長またはそれ以上あるいは少なくともそうした長さでありうる。断片は、多くとも10、50、100、150、200、250、300、350、もしくは400キロ塩基長またはそれ以上でありうる。断片化工程は、少なくとも1×10、1×10、1×10、1×10、1×10、もしくは1×10断片またはそれ以上を生成可能である。断片化工程は、多くとも1×10、1×10、1×10、1×10、1×10、もしくは1×10断片またはそれ以上を生成可能である。ウェル内に単離された断片は、約1~20、1~15、1~10、1~5、5~20、5~15、5~10、10~15、または10~20断片/ウェルでありうる。ウェル内に単離された断片は、オーバーラップ性でありうる。ウェル内に単離された断片は、非オーバーラップ性でありうる。核酸断片405は、マイクロウェルアレイ415のウェル410内に単離可能である。マイクロウェルアレイのウェルの一部または全部は、1つ以上のコンビナトリアルバーコード試薬420および425を含みうる(たとえば、コンビナトリアルバーコード試薬の既知のグループ化によりユニークコンビナトリアルバーコードを生成する)。マイクロウェルはシール可能である。マイクロウェルの内容物は、伸長/増幅によりコンビナトリアルバーコードを含む転写物430を生成可能である(たとえば、プライマー伸長および/または多重鎖置換により)。コンビナトリアルバーコードを含む転写物/アンプリコン430はシーケンス可能である。シーケンシング分析は、同一のマイクロウェルに対応するコンビナトリアルバーコード配列に基づいてリードをビニングする工程を含みうる。リードを生成してコンティグにすることが可能である。コンティグはハプロタイプフェージング(たとえば、親SNP)に使用可能である。
【0169】
単一細胞シーケンシング
本明細書に開示されるいくつかの実施形態は、単一細胞シーケンシングの方法を提供する。複数のパーティションは、本明細書に開示されるコンビナトリアルバーコードを用いてバーコード付け可能である。たとえば、各パーティションは、コンポーネントバーコードのセットから選択されるコンポーネントバーコードのユニークな組合せでバーコード付け可能である。いくつかの実施形態では、複数のパーティションのそれぞれに各コンビナトリアルバーコードは、パーティション中の単一細胞の1つ以上の標的ポリヌクレオチドに結合する標的特異的領域を含む。いくつかの実施形態では、標的ポリヌクレオチドはDNAを含む。いくつかの実施形態では、標的ポリヌクレオチドはRNAを含む。
【0170】
複数の単一細胞は、マイクロウェルアレイのマイクロウェルなどの複数のパーティション中に導入可能である。いくつかの実施形態では、細胞は、フローサイトメーターを用いて望ましい特性に関して富化可能である。いくつかの実施形態では、マイクロウェルアレイのマイクロウェル内に複数の単一細胞を導入する工程は、マイクロウェルアレイのマイクロウェル内にフローサイトメトリーにより複数の細胞を堆積する工程を含みうる。マイクロウェルアレイのマイクロウェル内にフローサイトメトリーにより複数の単一細胞を堆積する工程は、フローサイトメーターを用いてマイクロウェルアレイのマイクロウェル内に一度に単一細胞を堆積する工程を含みうる。いくつかの実施形態では、複数のパーティションは1536超のマイクロウェルで構成される。いくつかの実施形態では、複数のパーティションは、5マイクロメートル以上のマイクロウェルアレイ形式である。いくつかの実施形態では、複数のパーティションは、空間位置決めなどにより寸法規定される。
【0171】
図5は、単一細胞シーケンシングのための例示的な方法を示す。バーコード付けされるサンプルは、単一細胞および/または単一細胞の核酸を含みうる。単一細胞505は、マイクロウェルアレイ515のウェル510内に単離可能である。いくつかの実施形態では、ウェルの少なくとも10、20、30、40、50、60、70、80、90、または100%は、単一細胞を含みうる。いくつかの実施形態では、ウェルの多くとも10、20、30、40、50、60、70、80、90、または100%は、単一細胞を含みうる。細胞は、非ポアソン的にウェルに分配可能である。細胞は、非ランダムにウェルに分配可能である。細胞は、ポアソン的にウェルに分配可能である。細胞は、ランダムにウェルに分配可能である。
【0172】
細胞は、溶解させることにより細胞の核酸含有分を放出可能である。ウェルは溶解前にシール可能である。細胞の核酸含有分は、マイクロウェル中の1つ以上のコンビナトリアルバーコード試薬520/525に関連付け可能である(たとえば、コンビナトリアルバーコード試薬の既知のグループ化によりユニークコンビナトリアルバーコードを生成する)。マイクロウェルの内容物は、伸長/増幅によりコンビナトリアルバーコードを含む転写物530を生成可能である(たとえば、プライマー伸長および/または多重鎖置換により)。コンビナトリアルバーコードを含む転写物/アンプリコン530はシーケンス可能である。シーケンシング分析は、同一のマイクロウェルに対応するコンビナトリアルバーコード配列に基づいてリードをビニングする工程を含みうる。リードは、単一細胞の遺伝子発現分析のために分析可能である。リードは、細胞を分析するために(たとえば、細胞型を決定するために、障害または疾患の一部として細胞を診断するために、細胞をジェノタイピングするために、療法またはレジメンに対する細胞の反応を決定または予測するために、および/または細胞の表現プロファイルの経時変化を測定するために)使用可能である。
【0173】
いくつかの場合には、本開示の方法は、確率バーコーディングとコンビナトリアルバーコーディングとを含みうる。たとえば、図6に示されるように、細胞605は、ウェルが単一細胞を含有するようにマイクロウェルアレイ615中のウェル610に非ポアソン的に分配可能である。細胞は溶解可能である。細胞の核酸620は、標的(たとえばmRNA)に接触可能な本開示のオリゴdTと細胞標識と分子標識とを含む複数の確率バーコード625に接触可能である。確率バーコードは、逆転写することにより確率バーコード付きcDNA630を生成する可能である。確率バーコード付きcDNAは、第2の鎖合成を行うことが可能な1つ以上のコンビナトリアルバーコード試薬635/640に接触可能である。第2の鎖合成用の1つ以上のコンビナトリアルバーコード試薬635/640は、ユニバーサル配列(たとえば、シーケンシングプライマー結合部位、すなわち、Illuminaリード1)を含みうる。第2の鎖合成は、確率バーコード付きかつコンビナトリアルバーコード付きの核酸分子645をもたらしうる。確率バーコード付きかつコンビナトリアルバーコード付きの核酸分子645は、下流のライブラリー調製法(たとえば、プーリング、シーケンシングアダプター付加)に供してシーケンス可能である。確率バーコードは、サンプル605中の標的核酸620の数をカウントするために使用可能である。コンビナトリアルバーコードは、細胞が入っていたマイクロウェルアレイ615のウェル610を同定するために使用可能である。
【0174】
ビナトリアルバーコーディングを含みうる。たとえば、図7に示されるように、細胞705は、ウェルが単一細胞を含有するようにマイクロウェルアレイ715中のウェル710に非ポアソン的に分配可能である。細胞は溶解可能である。細胞の核酸720は、標的(たとえばmRNA)に接触可能な1つ以上の3’コンビナトリアルバーコード試薬725に接触可能である。1つ以上の3’コンビナトリアルバーコード試薬725は、逆転写することにより3’コンビナトリアルバーコード付きcDNA730を生成する。3’コンビナトリアルバーコード付きcDNA730は、第2の鎖合成を行うことが可能な1つ以上の5’コンビナトリアルバーコード試薬740で接触可能である。第2の鎖合成用の1つ以上の5’コンビナトリアルバーコード試薬740は、ユニバーサル配列(たとえば、シーケンシングプライマー結合部位、すなわち、Illuminaリード1)を含みうる。第2の鎖合成は、バイパータイトコンビナトリアルバーコード付き核酸分子745をもたらしうる。バイパータイトコンビナトリアルバーコード付き核酸分子745は、下流のライブラリー調製法(たとえば、プーリング、シーケンシングアダプター付加)に供してシーケンス可能である。バイパータイトコンビナトリアルバーコードは、細胞が入っていたマイクロウェルアレイ715のウェル710を同定可能である。
【0175】
本明細書に開示される方法は、さまざまな時点で細胞および/または核酸転写物の比較を可能にする。本開示の方法は、被験体を診断するためにまたは疾患被験体の細胞/核酸を健常被験体のものと比較するために使用可能である。たとえば、マイクロウェルアレイの各ウェルは、さまざまな被験体の細胞を含みうる。
【0176】
本明細書に開示される方法は、たとえば、医薬検査または臨床試験検査に使用可能である。たとえば、コンビナトリアルバーコード試薬を含む基材のマイクロウェルは、モジュレート試薬を含みうる。モジュレート試薬は、薬剤、療法剤、タンパク質、RNA、リポソーム、脂質、または任意の治療用分子(たとえば、臨床試験分子、FDAより認可された分子、FDAにより認可されていない分子)を含みうる。モジュレート剤は、ウェル内へのサンプルの単離前にウェル内に導入可能である。モジュレート剤は、ウェル内へのサンプルの単離後にウェル内に導入可能である(たとえば、モジュレート剤は、ウェル内のサンプルに接触可能である)。一例として、マイクロウェルアレイの各ウェルは、さまざまな被験体の細胞を含みうる。細胞はモジュレート剤で処理可能である。シーケンシング結果は、モジュレート剤がサンプル(たとえば単一細胞)の遺伝子発現にどのように影響を及ぼしたかを断定するために使用可能である。シーケンシング結果は、被験体集団のどの被験体がモジュレート剤の影響を受けうるかを決定するためにおよび/または集団の被験体を診断するために使用可能である。
【0177】
確率バーコーディングの方法
本開示は、サンプルのコンビナトリアルバーコーディングおよび/または確率バーコーディングの方法を提供する。コンビナトリアルバーコーディングの方法および確率バーコーディングの方法は組合せ可能である。本方法は、サンプルにごく近接して確率バーコードを配置する工程、サンプルを溶解する工程、識別可能な標的と確率バーコードとを関連付ける工程、標的を増幅する工程、および/または標的をディジタルカウントする工程を含みうる。本方法は、確率バーコード上の空間標識から得られる情報を分析および/または可視化する工程をさらに含みうる。サンプル(たとえば、サンプル切片、薄いスライス、細胞)は、確率バーコードを含む固体担体と接触可能である。サンプル中の標的は、確率バーコードに関連付け可能である。固体担体は捕集可能である。cDNA合成は固体担体上で実施可能である。cDNA合成は固体担体から離れて実施可能である。cDNA合成は、合成される新しいcDNA標的分子中に標識情報を確率バーコード中の標識から組み込むことにより標的-バーコード分子を生成可能である。標的-バーコード分子はPCRを用いて増幅可能である。標的-バーコード分子上の標的および確率バーコードの標識の配列は、シーケンシング法により決定可能である。
【0178】
サンプルと確率バーコードとの接触
本開示は、ウェルがコンビナトリアルバーコード試薬を含みかつ分配が非ポアソン的に行われる条件で基材の複数のウェルにサンプル(たとえば細胞)を分配する方法を提供する。ウェル内への細胞の分配/単離は非ランダムでありうる(たとえば、細胞はアレイ中の特定の位置に特別にソートされる)。このようにすれば、細胞の分配は非ポアソンとみなすことが可能である。
【0179】
たとえば、細胞、器官、または組織薄片を含むサンプルは、確率バーコードに接触可能である。固体担体は浮動性でありうる。固体担体は半固体または固体のアレイに埋込み可能である。確率バーコードは固体担体に関連付け可能である。確率バーコードは個別のヌクレオチドでありうる。確率バーコードは基材に関連付け可能である。確率バーコードが標的にごく近接している場合、標的は確率バーコードにハイブリダイズ可能である。確率バーコードは、各識別可能な標的を本開示の識別可能な確率バーコードに関連付けできるように非枯渇比で接触可能である。標的と確率バーコードとの効率的関連付けを保証するために、標的は確率バーコードに架橋可能である。
【0180】
サンプルの2つの識別可能な標的が同一のユニーク確率バーコードに接触可能である確率は、10-6、10-5、10-4、10-3、10-2、もしくは10-1またはそれ以上あるいは少なくともそうした数でありうる。サンプルの2つの識別可能な標的が同一のユニーク確率バーコードに接触可能である確率は、多くとも10-6、10-5、10-4、10-3、10-2、もしくは10-1またはそれ以上でありうる。同一の細胞の同一の遺伝子の2つの標的が同一の確率バーコードに接触可能である確率は、10-6、10-5、10-4、10-3、10-2、もしくは10-1またはそれ以上あるいは少なくともそうした数でありうる。同一の細胞の同一の遺伝子の2つの標的が同一の確率バーコードに接触可能である確率は、多くとも10-6、10-5、10-4、10-3、10-2、もしくは10-1またはそれ以上でありうる。
【0181】
いくつかの場合には、細胞集団の細胞は、本開示の基材のウェル内に分離(たとえば単離)可能である。細胞集団は分離前に希釈可能である。細胞集団は、基材のウェルの少なくとも1、5、10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、または100%が単一細胞を収容するように希釈可能である。細胞集団は、基材のウェルの多くとも1、5、10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、または100%が単一細胞を収容するように希釈可能である。細胞集団は、希釈集団中の細胞の数が基材上のウェルの数の1、5、10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、もしくは100%または少なくともそうした数になるように希釈可能である。細胞集団は、希釈集団中の細胞の数が基材上のウェルの数の1、5、10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、もしくは100%または少なくともそうした数になるように希釈可能である。いくつかの場合には、細胞集団は、細胞の数が基材中のウェルの数の約10%になるように希釈される。
【0182】
基材のウェル中への単一細胞の分配はポアソン分布に従いうる。たとえば、基材のウェルが2細胞以上を有する確率は、少なくとも0.1、0.5、1、2、3、4、5、6、7、8、9、もしくは10%またはそれ以上でありうる。基材のウェルが2細胞以上を有する確率は、少なくとも0.1、0.5、1、2、3、4、5、6、7、8、9、もしくは10%またはそれ以上でありうる。基材のウェル内への単一細胞の分配はランダムでありうる。基材のウェル内への単一細胞の分配は非ランダムでありうる。細胞は、基材のウェルが1細胞のみを収容するように分離可能である。
【0183】
細胞溶解
細胞および確率バーコードの分配後、細胞は標的分子を遊離するように溶解可能である。細胞溶解は、さまざまな手段のいずれかにより、たとえば、化学的もしくは生化学的手段により、浸透圧ショックにより、または熱溶解、機械溶解、もしくは光学溶解により達成しうる。細胞は、界面活性剤(たとえば、SDS、Liドデシルスルフェート、Triton X-100、Tween-20、もしくはNP-40)、有機溶媒(たとえば、メタノールもしくはアセトン)、または消化酵素(たとえば、プロテイナーゼK、ペプシンまたはトリプシン)、あるいはそれらの任意の組合せを含む細胞溶解緩衝液の添加により溶解しうる。標的と確率バーコードとの関連付けを向上させるために、たとえば、温度の低下および/またはライセートの粘度の増加により、標的分子の拡散速度を変化させることが可能である。
【0184】
標的核酸分子への確率バーコードの結合
細胞の溶解およびそれからの核酸分子の放出の後、核酸分子は、共局在化された固体担体の確率バーコードにランダムに関連付けうる。関連付けは、たとえば、標的核酸分子の相補的部分への確率バーコードの標的認識領域のハイブリダイゼーションを含みうる(たとえば、確率バーコードのオリゴdTは、標的のポリAテールと相互作用可能である)。ハイブリダイゼーションに使用されるアッセイ条件(たとえば、緩衝液pH、イオン強度、温度など)は、特定の安定なハイブリッドの形成を促進するように選択可能である。
【0185】
結合は、確率バーコードの標的認識領域と標的核酸分子の一部とのライゲーションをさらに含みうる。たとえば、標的結合領域は、制限部位オーバーハング(たとえば、EcoRI付着末端オーバーハング)への特異的ハイブリダイゼーションが可能でありうる核酸配列を含みうる。アッセイ手順は、制限部位オーバーハングを生成するために制限酵素(たとえばEcoRI)で標的核酸を処置する工程をさらに含みうる。次いで、確率バーコードは、制限部位オーバーハングに相補的な配列を含む任意の核酸分子にライゲートしうる。リガーゼ(たとえばT4DNAリガーゼ)は2つの断片を連結するために使用しうる。
【0186】
複数の細胞(または複数のサンプル)の標識標的(たとえば、標的-バーコード分子)は、たとえば、確率バーコードおよび/または標的-バーコード分子が結合されたビーズを回収することにより後続的にプール可能である。結合された標的-バーコード分子の固体担体ベースのコレクションの回収は、磁気ビーズおよび外部印加磁界の使用により実現しうる。標的-バーコード分子をプールした後、すべてのさらなる処理を単一反応槽内で進行させうる。さらなる処理は、たとえば、逆転写反応、増幅反応、切断反応、解離反応、および/または核酸伸長反応を含みうる。さらなる処理反応は、マイクロウェル内で、すなわち、複数の細胞の標識標的核酸分子を最初にプールすることなく、行いうる。
【0187】
逆転写
本開示は、逆転写を用いて確率標的-バーコードコンジュゲートを生成する方法を提供する。確率標的-バーコードコンジュゲートは、確率バーコードと標的核酸の全部または一部の相補的配列と(すなわち、確率バーコード付きcDNA分子)を含みうる。関連付けられたRNA分子の逆転写は、逆転写酵素と共に逆転写プライマーを添加することにより行いうる。逆転写プライマーは、オリゴdTプライマー、ランダムヘキサヌクレオチドプライマー、または標的特異的オリゴヌクレオチドプライマーでありうる。オリゴdTプライマーは、12~18ヌクレオチド長でありうるとともに、哺乳動物mRNAの3’末端の内因性ポリAテールに結合可能である。ランダムヘキサヌクレオチドプライマーは、さまざまな相補的部位でmRNAと結合しうる。標的特異的オリゴヌクレオチドプライマーは、典型的には対象のmRNAを選択的にプライミングする。
【0188】
増幅
核酸増幅反応は、標識標的核酸分子の複数のコピーを生成するために1回以上行いうる。増幅は、複数の標的核酸配列が同時に増幅される条件で、多重方式で行いうる。増幅反応は、核酸分子にシーケンシングアダプターを付加するために使用しうる。増幅反応は、存在するのであればサンプル標識の少なくとも一部を増幅する工程を含みうる。増幅反応は、細胞および/または分子標識の少なくとも一部を増幅する工程を含みうる。増幅反応は、サンプルタグ、細胞標識、空間標識、分子標識、標的核酸、またはそれらの組合せの少なくとも一部を増幅する工程を含みうる。増幅反応は、複数の核酸の少なくとも1%、2%、3%、4%、5%、6%、7%、8%、9%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、97%、または100%を増幅する工程を含みうる。本方法は、サンプル標識、細胞標識、空間標識、および/または分子標識を含む標的-バーコード分子のcDNAコピーを1つ以上生成するためにcDNA合成反応を1回以上行う工程をさらに含みうる。
【0189】
いくつかの実施形態では、増幅はポリメラーゼ連鎖反応(PCR)を用いて行いうる。本明細書で用いられる場合、PCRとは、DNAの相補鎖の同時プライマー伸長により特定のDNA配列のin vitro増幅を行う反応を意味しうる。本明細書で用いられる場合、PCRは、その反応の派生形、たとえば、限定されるものではないが、RT-PCR、リアルタイムPCR、ネステッドPCR、定量PCR、多重PCR、ディジタルPCR、およびアセンブリーPCRを包含しうる。
【0190】
標識核酸の増幅は非PCRベースの方法を含みうる。非PCRベースの方法の例としては、限定されるものではないが、多重置換増幅(MDA)、転写媒介増幅(TMA)、全トランスクリプトーム増幅(WTA)、全ゲノム増幅(WGA)、核酸配列ベースの増幅(NASBA)、鎖置換増幅(SDA)、リアルタイムSDA、ローリングサークル増幅、またはサークル-サークル増幅が挙げられる。他の非PCRベースの増幅方法としては、DNAもしくはRNA標的を増幅するためのDNA依存性RNAポリメラーゼ駆動RNA転写増幅またはRNA指向DNA合成および転写の多重サイクル、リガーゼ連鎖反応(LCR)、およびQβレプリカーゼ(Qβ)法、パリンドロームプローブの使用、鎖置換増幅、制限エンドヌクレアーゼを用いたオリゴヌクレオチド駆動増幅、プライマーが核酸配列にハイブリダイズされかつ得られた二本鎖が伸長反応および増幅の前に切断される増幅方法、5’エキソヌクレアーゼ活性の欠如した核酸ポリメラーゼを用いた鎖置換増幅、ローリングサークル増幅、および分岐伸長増幅(RAM)が挙げられる。いくつかの場合には、増幅は環化転写物を生成しうる。
【0191】
サプレッションPCRは、本開示の増幅方法に使用可能である。サプレッションPCRは、増幅に使用されるプライマーが全リピートまたはリピートの一部に対応する場合に非効率的増幅に起因して末端逆方向リピートがフランキングするある特定のサイズ未満の分子が選択的に排除されることを意味しうる。この理由は、断片の相補的末端の生産的PCRプライマーアニーリングおよび非生産的自己アニーリングとの間の平衡にありうる。一定サイズのフランキング末端逆方向リピートでは、インサートが短いほど、サプレッション効果が強くなり、その逆も成り立つ。同様に、一定インサートサイズでは、末端逆方向リピートが長いほど、サプレッション効果が強い。
【0192】
サプレッションPCRは、PCR増幅の前にDNA断片の末端にライゲートされるアダプターを使用可能である。融解およびアニーリングの後、鎖の5’末端および3’末端に自己相補的アダプターを有する一本鎖DNA断片は、PCR時に断片の増幅を抑制する抑制的「テニスラケット」形構造を生成可能である。
【0193】
いくつかの場合には、本明細書に開示される方法は、確率標識アンプリコンを生成するために標識核酸(たとえば、標識RNA、標識DNA、標識cDNA)上でポリメラーゼ連鎖反応を行う工程をさらに含む。標識アンプリコンは二本鎖分子でありうる。二本鎖分子は、二本鎖RNA分子、二本鎖DNA分子、またはDNA分子にハイブリダイズされたRNA分子を含みうる。二本鎖分子の一方または両方の鎖は、サンプル標識、空間標識、細胞標識、および/または分子標識含みうる。確率標識アンプリコンは一本鎖分子でありうる。一本鎖分子は、DNA、RNA、またはそれらの組合せを含みうる。本開示の核酸は、合成核酸または改変核酸を含みうる。
【0194】
増幅は、1つ以上の非天然ヌクレオチドの使用を含みうる。非天然ヌクレオチドは、光不安定性またはトリガー性のヌクレオチドを含みうる。非天然ヌクレオチドの例としては、限定されるものではないが、ペプチド核酸(PNA)、モルホリノ核酸、およびロックド核酸(LNA)、さらにはグリコール核酸(GNA)およびトレオース核酸(TNA)が挙げられうる。非天然ヌクレオチドは、増幅反応の1サイクル以上に添加しうる。非天然ヌクレオチドの添加は、増幅反応の特定のサイクルまたは時点で産物を同定するために使用しうる。
【0195】
増幅反応を1回以上行う工程は、1つ以上のプライマーの使用を含みうる。1つ以上のプライマーは、少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、もしくは15ヌクレオチドまたはそれ以上を含みうる。1つ以上のプライマーは、少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、もしくは15ヌクレオチドまたはそれ以上を含みうる。1つ以上のプライマーは、12~15ヌクレオチド未満を含みうる。1つ以上のプライマーは、複数の確率標識標的の少なくとも一部にアニールしうる。1つ以上のプライマーは、複数の確率標識標的の3’末端または5’末端にアニールしうる。1つ以上のプライマーは、複数の確率標識標的の内部領域にアニールしうる。内部領域は、複数の確率標識標的の3’末端から少なくとも約50、100、150、200、220、230、240、250、260、270、280、290、300、310、320、330、340、350、360、370、380、390、400、410、420、430、440、450、460、470、480、490、500、510、520、530、540、550、560、570、580、590、600、650、700、750、800、850、900、または1000ヌクレオチドでありうる。1つ以上のプライマーは、プライマーの一定パネルを含みうる。1つ以上のプライマーは、少なくとも1つ以上のカスタムプライマーを含みうる。1つ以上のプライマーは、少なくとも1つ以上の対照プライマーを含みうる。1つ以上のプライマーは、少なくとも1つ以上の遺伝子特異的プライマーを含みうる。
【0196】
1つ以上のプライマーは、本開示の任意のユニバーサルプライマーを含みうる。ユニバーサルプライマーは、ユニバーサルプライマー結合部位にアニールしうる。1つ以上のカスタムプライマーは、第1のサンプル標識、第2のサンプル標識、空間標識、細胞標識、分子標識、標的、またはそれらの任意の組合せにアニールしうる。1つ以上のプライマーは、ユニバーサルプライマーおよびカスタムプライマーを含みうる。カスタムプライマーは、1つ以上の標的を増幅するように設計しうる。標的は、1つ以上のサンプル中の全核酸のサブセットを含みうる。標的は、1つ以上のサンプル中の全確率標識標的のサブセットを含みうる。1つ以上のプライマーは、少なくとも96カスタムプライマーまたはそれ以上を含みうる。1つ以上のプライマーは、少なくとも960カスタムプライマーまたはそれ以上を含みうる。1つ以上のプライマーは、少なくとも9600カスタムプライマーまたはそれ以上を含みうる。1つ以上のカスタムプライマーは、2つ以上の異なる標識核酸にアニールしうる。2つ以上の異なる標識核酸は、1つ以上の遺伝子に相当しうる。
【0197】
任意の増幅スキームを本開示の方法に使用可能である。たとえば、一スキームでは、第1ラウンドのPCRは、遺伝子特異的プライマーおよびユニバーサルIlluminaシーケンシングプライマー1配列に対するプライマーを用いて分子(たとえば、ビーズに結合されたもの)を増幅可能である。第2ラウンドのPCRは、Illuminaシーケンシングプライマー2配列がフランキングするネステッド遺伝子特異的プライマーとユニバーサルIlluminaシーケンシングプライマー1配列に対するプライマーとを用いて第1のPCR産物を増幅可能である。第3ラウンドのPCRは、P5とP7とサンプル指標インデックスとを付加してPCR産物をIlluminaシーケンシングライブラリーにする。150bp×2シーケンシングを用いたシーケンシングは、リード1上の細胞標識および分子インデックス、リード2上の遺伝子、ならびにインデックス1リード上のサンプルインデックスを明らかにしうる。
【0198】
増幅は1ラウンド以上で実施可能である。いくつかの場合には、複数ラウンドの増幅が行われる。増幅は2ラウンド以上の増幅を含みうる。第1の増幅は遺伝子特異的領域を生成する伸長off X’でありうる。第2の増幅は、新た形成された鎖にサンプル核酸がハイブリダイズする場合に起こりうる。
【0199】
いくつかの実施形態では、ハイブリダイゼーションは核酸分子の末端で行う必要はない。いくつかの実施形態では、より長い核酸のインタクト鎖内の標的核酸にハイブリダイズして増幅する。たとえば、ゲノムDNAまたはmRNAのより長いセクション内の標的。標的は、ポリヌクレオチドの末端から50nt超、100nt超、または1000nt超にありうる。
【0200】
シークエンシング
異なる確率標識核酸の数を決定する工程は、標識標的、空間標識、分子標識、サンプル標識、および細胞標識、または任意の産物(たとえば、標識アンプリコン、標識cDNA分子)の配列を決定する工程を含みうる。増幅標的はシーケンシングに供しうる。確率標識核酸またはその任意の産物の配列を決定する工程は、サンプル標識、空間標識、細胞標識、分子標識の少なくとも一部、および/または確率標識標的の少なくとも一部、それらの相補体、それらの逆相補体、またはそれらの任意の組合せの配列を決定するためにシーケンシング反応を行なう工程を含みうる。
【0201】
核酸(たとえば、増幅核酸、標識核酸、標識核酸のcDNAコピーなど)の配列の決定は、限定されるものではないが、合成シーケンシング(SBS)、ハイブリダイゼーションシーケンシング(SBH)、ライゲーションシーケンシング(SBL)、定量漸進蛍光ヌクレオチド付加シーケンシング(QIFNAS)、ステップワイズライゲーションおよび切断、蛍光共鳴エネルギー移動(FRET)、分子ビーコン、TaqManレポータープローブ消化、パイロシーケンシング、蛍光in situシーケンシング(FISSEQ)、FISSEQビーズ、ウォッブルシーケンシング、多重シーケンシング、重合コロニー(POLONY)シーケンシング、ナノグリッドローリングサークルシーケンシング(ROLONY)、対立遺伝子特異的オリゴライゲーションアッセイ(たとえば、オリゴライゲーションアッセイ(OLA)、ライゲート線状プローブとローリングサークル増幅(RCA)リードアウトとを用いた単一テンプレート分子OLA、ライゲートパドロックプローブ、またはライゲート環状パドロックプローブとローリングサークル増幅(RCA)リードアウトとを用いた単一テンプレート分子OLA)などをはじめとするさまざまなシーケンシング法を用いて行うことが可能である。
【0202】
いくつかの場合には、標識核酸またはその任意の産物の配列を決定する工程は、ペアエンドシーケンシング、ナノ細孔シーケンシング、高スループットシーケンシング、ショットガンシーケンシング、色素ターミネーターシーケンシング、多重プライマーDNAシーケンシング、プライマウォーキング、サンガージデオキシシーケンシング、マキサム・ギルバートシーケンシング、パイロシーケンシング、真単一分子シーケンシング、またはそれらの任意の組合せを含む。代替的に、標識核酸またはその任意の産物の配列は、電子顕微鏡法または化学増感電界効果トランジスター(chemFET)アレイにより決定しうる。
【0203】
高スループットシーケンシング法、たとえば、Roche454、Illumina Solexa、ABI-SOLiD、ION Torrent、Complete Genomics、Pacific Bioscience、Helicos、Polonatorプラットフォームなどのプラットフォームを用いたサイクリックアレイシーケンシングを利用することも可能である。シーケンシングは、MiSeqシーケンシングを含みうる。シーケンシングは、HiSeqシーケンシングを含みうる。
【0204】
確率標識標的は、生物のゲノムの遺伝子の約0.01%から生物のゲノムの遺伝子の約100%までに相当する核酸を含みうる。たとえば、サンプルの相補的配列を含有する遺伝子をキャプチャーすることにより、複数のマルチマーを含む標的相補的領域を用いて、生物のゲノムの遺伝子の約0.01%から生物のゲノムの遺伝子の約100%までをシーケンス可能である。いくつかの実施形態では、標識核酸は、生物のトランスクリプトームの転写物の約0.01%から生物のトランスクリプトームの転写物の約100%までに相当する核酸を含む。たとえば、サンプルのmRNAをキャプチャーすることにより、ポリTテールを含む標的相補的領域を用いて、生物のトランスクリプトームの転写物の約0.501%から生物のトランスクリプトームの転写物の約100%までをシーケンス可能である。
【0205】
シーケンシングは、標識核酸および/または確率バーコードの少なくとも約10、20、30、40、50、60、70、80、90、100ヌクレオチドもしくは塩基対またはそれ以上のシーケンシングを含みうる。シーケンシングは、標識核酸および/または確率バーコードの多くとも約10、20、30、40、50、60、70、80、90、100ヌクレオチドもしくは塩基対またはそれ以上のシーケンシングを含みうる。シーケンシングは、標識核酸および/または確率バーコードの少なくとも約200、300、400、500、600、700、800、900、1,000ヌクレオチドもしくは塩基対またはそれ以上のシーケンシングを含みうる。シーケンシングは、標識核酸および/または確率バーコードの多くとも約200、300、400、500、600、700、800、900、1,000ヌクレオチドもしくは塩基対またはそれ以上のシーケンシングを含みうる。シーケンシングは、標識核酸および/または確率バーコードの少なくとも約1,500、2,000、3,000、4,000、5,000、6,000、7,000、8,000、9,000、もしくは10,000ヌクレオチドまたは塩基対あるいはそれ以上のシーケンシングを含みうる。シーケンシングは、標識核酸および/または確率バーコードの多くとも約1,500、2,000、3,000、4,000、5,000、6,000、7,000、8,000、9,000、もしくは10,000ヌクレオチドまたは塩基対あるいはそれ以上のシーケンシングを含みうる。
【0206】
シーケンシングは、少なくとも約200、300、400、500、600、700、800、900、1,000シーケンシングリード/ランまたはそれ以上のシーケンシングを含みうる。シーケンシングは、多くとも約200、300、400、500、600、700、800、900、1,000シーケンシングリード/ランまたはそれ以上のシーケンシングを含みうる。いくつかの場合には、シーケンシングは、少なくとも約1,500、2,000、3,000、4,000、5,000、6,000、7,000、8,000、9,000、もしくは10,000シーケンシングリード/ランまたはそれ以上を含みうる。いくつかの場合には、シーケンシングは、多くとも約1,500、2,000、3,000、4,000、5,000、6,000、7,000、8,000、9,000、もしくは10,000シーケンシングリード/ランまたはそれ以上を含みうる。シーケンシングは、少なくとも0.1億、0.5億、1億、1.5億、2億、2.5億、3億、3.5億、4億、4.5億、5億、5.5億、6億、6.5億、7億、7.5億、8億、8.5億、9億、9.5億、もしくは10億シーケンシングリード/ランまたはそれ以上を含みうる。シーケンシングは、多くとも0.1億、0.5億、1億、1.5億、2億、2.5億、3億、3.5億、4億、4.5億、5億、5.5億、6億、6.5億、7億、7.5億、8億、8.5億、9億、9.5億、もしくは10億シーケンシングリード/ランまたはそれ以上を含みうる。シーケンシングは、全体として少なくとも1億、2億、3億、4億、5億、6億、7億、8億、9億、10億、11億、12億、13億、14億、15億、16億、20億、30億、40億、もしくは50億シーケンシングリード/ランまたはそれ以上を含みうる。シーケンシングは、全体として多くとも1億、2億、3億、4億、5億、6億、7億、8億、9億、10億、11億、12億、13億、14億、15億、16億、20億、30億、40億、もしくは50億シーケンシングリード/ランまたはそれ以上を含みうる。シーケンシングは、約1,600,000,000シーケンシングリード/ラン以下を含みうる。シーケンシングは、約200,000,000リード/ラン以下を含みうる。
【0207】
空間バーコーディングの方法
本明細書に開示されるいくつかの実施形態は、サンプルの標的核酸の空間バーコーディングの方法を提供する。いくつかの実施形態では、複数のオリゴヌクレオチドがスライドなどの基材に固定される。いくつかの実施形態では、基材は、ポリマー、マトリックス、ヒドロゲル、ニードルアレイデバイス、抗体、またはそれらの任意の組合せで被覆しうる。いくつかの実施形態では、オリゴヌクレオチドは、オリゴ(dT)配列、遺伝子特異的配列、ランダムマルチマーなどの標的特異的領域を含む。
【0208】
たとえば、スライス、細胞単層、固定細胞、組織切片を含むサンプルは、基材上のオリゴヌクレオチドに接触可能である。細胞は1つ以上の細胞型を含みうる。たとえば、細胞は、脳細胞、心臓細胞、癌細胞、循環腫瘍細胞、器官細胞、上皮細胞、転移性細胞、良性細胞、一次細胞、循環細胞、またはそれらの任意の組合せでありうる。細胞は、たとえば、細胞が静置しかつ単層を形成できる条件で重力フローにより接触可能である。サンプルは組織薄片でありうる。薄片は基材上に配置可能である。サンプルは一次元でありうる(たとえば、平面表面を形成する)。サンプル(たとえば細胞)は、たとえば、基材上で細胞の成長/培養を行うことにより、基材全体に展延可能である。
【0209】
細胞溶解
細胞および確率バーコードの分配後、細胞は標的分子を遊離するように溶解可能である。細胞溶解は、さまざまな手段のいずれかにより、たとえば、化学的もしくは生化学的手段により、浸透圧ショックにより、または熱溶解、機械溶解、もしくは光学溶解により達成可能である。細胞は、界面活性剤(たとえば、SDS、Liドデシルスルフェート、Triton X-100、Tween-20、もしくはNP-40)、有機溶媒(たとえば、メタノールもしくはアセトン)、または消化酵素(たとえば、プロテイナーゼK、ペプシンまたはトリプシン)、あるいはそれらの任意の組合せを含む細胞溶解緩衝液の添加により溶解可能である。標的と確率バーコードとの関連付けを向上させるために、たとえば、温度の低下および/またはライセートの粘度の増加により、標的分子の拡散速度を変化させることが可能である。
【0210】
いくつかの実施形態では、サンプルは濾紙を用いて溶解可能である。濾紙は濾紙の上を溶解緩衝液で浸漬可能である。濾紙は、サンプルの溶解および基材へのサンプルの標的のハイブリダイゼーションを促進可能な加圧でサンプルに適用可能である。
【0211】
いくつかの実施形態では、溶解は、機械溶解、熱溶解、光学溶解、および/または化学溶解により行うことが可能である。化学溶解は、プロテイナーゼK、ペプシン、トリプシンなどの消化酵素の使用を含みうる。溶解は、基材への溶解緩衝液の添加により行うことが可能である。溶解緩衝液はトリスHClを含みうる。溶解緩衝液は、少なくとも約0.01、0.05、0.1、0.5、もしくは1Mまたはそれ以上のトリスHClを含みうる。溶解緩衝液は、多くとも約0.01、0.05、0.1、0.5、もしくは1Mまたはそれ以上のトリスHClを含みうる。溶解緩衝液は約0.1MトリスHClを含みうる。溶解緩衝液のpHは、少なくとも約1、2、3、4、5、6、7、8、9、もしくは10またはそれ以上でありうる。溶解緩衝液のpHは、多くとも約1、2、3、4、5、6、7、8、9、もしくは10またはそれ以上でありうる。いくつかの実施形態では、溶解緩衝液のpHは約7.5である。溶解緩衝液は塩(たとえばLiCl)を含みうる。溶解緩衝液中の塩の濃度は、少なくとも約0.1、0.5、もしくは1Mまたはそれ以上でありうる。溶解緩衝液中の塩の濃度は、多くとも約0.1、0.5、もしくは1Mまたはそれ以上でありうる。いくつかの実施形態では、溶解緩衝液中の塩の濃度は約0.5Mである。溶解緩衝液は、界面活性剤(たとえば、SDS、Liドデシルスルフェート、トリトンX、トゥイーン、NP-40)を含みうる。溶解緩衝液中の界面活性剤の濃度は、少なくとも約0.0001、0.0005、0.001、0.005、0.01、0.05、0.1、0.5、1、2、3、4、5、6、もしくは7%またはそれ以上でありうる。溶解緩衝液中の界面活性剤の濃度は、多くとも約0.0001、0.0005、0.001、0.005、0.01、0.05、0.1、0.5、1、2、3、4、5、6、もしくは7%またはそれ以上でありうる。いくつかの実施形態では、溶解緩衝液中の界面活性剤の濃度は約1%Liドデシルスルフェートである。本方法で溶解に使用される時間は、使用される界面活性剤の量に依存性しうる。いくつかの実施形態では、界面活性剤を多く使用するほど、溶解に必要な時間は短くなる。溶解緩衝液はキレート化剤(たとえば、EDTA、EGTA)を含みうる。溶解緩衝液中のキレート化剤の濃度は、少なくとも約1、5、10、15、20、25、もしくは30mMまたはそれ以上でありうる。溶解緩衝液中のキレート化剤の濃度は、多くとも約1、5、10、15、20、25、もしくは30mMまたはそれ以上でありうる。いくつかの実施形態では、溶解緩衝液中のキレート化剤の濃度は約10mMである。溶解緩衝液は還元試薬(たとえば、βメルカプトエタノール、DTT)を含みうる。溶解緩衝液中の還元試薬の濃度は少なくとも約1、5、10、15、20mMまたはそれ以上でありうる。溶解緩衝液中の還元試薬の濃度は多くとも約1、5、10、15、20mMまたはそれ以上でありうる。いくつかの実施形態では、溶解緩衝液中の還元試薬の濃度は約5mMである。いくつかの実施形態では、溶解緩衝液は、約0.1MのトリスHCl、約pH7.5、約0.5M LiCl、約1%リチウムドデシルスルフェート、約10mM EDTA、および約5mM DTTを含みうる。[0087]溶解は、約4、10、15、20、25、または30Cの温度で行うことが可能である。溶解は、約1、5、10、15、もしくは20分間またはそれ以上行うことが可能である。溶解細胞は、少なくとも約100000、200000、300000、400000、500000、600000、もしくは700000標的核酸分子またはそれ以上を含みうる。溶解細胞は、多くとも約100000、200000、300000、400000、500000、600000、もしくは700000標的核酸分子またはそれ以上を含みうる。
【0212】
いくつかの実施形態では、オリゴヌクレオチドは、細胞から放出された核酸にハイブリダイズ可能である。核酸は、DNA、たとえば、ゲノムDNA、もしくはRNA、たとえば、メッセンジャーRNA(mRNA)、マイクロRNA、低分子干渉RNA(siRNA)、RNA分解産物、それぞれポリ(A)テールを含むRNA、またはそれらの任意の組合せを含みうる。オリゴヌクレオチドにハイブリダイズされた核酸は、逆転写などの伸長反応、DNA合成などのためのテンプレートとして使用可能である。
【0213】
溶解細胞から放出された核酸分子は、基材上の複数のプローブへの関連付け(たとえば、基材上のプローブへのハイブリダイゼーション)が可能である。プローブがオリゴdTを含む場合、mRNA分子はプローブへのハイブリダイゼーションおよび逆転写が可能である。オリゴヌクレオチドのオリゴdT部分は、cDNA分子の第1の鎖合成用のプライマーとして作用可能である。標識RNA分子の逆転写は、逆転写プライマーの添加により行うことが可能である。いくつかの場合には、逆転写プライマーは、オリゴdTプライマー、ランダムヘキサヌクレオチドプライマーはまたは標的特異的オリゴヌクレオチドプライマーである。一般に、オリゴdTプライマーは、12~18ヌクレオチド長であり、哺乳動物mRNAの3’末端の内因性ポリ(A)+テールに結合する。ランダムヘキサヌクレオチドプライマーは、さまざまな相補的部位でmRNAと結合しうる。標的特異的オリゴヌクレオチドプライマーは、典型的には対象のmRNAを選択的にプライミングする。
【0214】
逆転写は、繰返し行うことにより複数の標識cDNA分子を生成可能である。本明細書に開示される方法は、少なくとも約1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、または20回の逆転写反応を行う工程を含みうる。本方法は、少なくとも約25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、または100回の逆転写反応を行う工程を含みうる。
【0215】
いくつかの実施形態では、核酸は、化学切断を用いて基材から除去可能である。たとえば、核酸中に存在する化学基または修飾塩基は、固体担体からのその除去を促進するために使用可能である。たとえば、酵素は、基材から核酸を除去するために使用可能である。たとえば、核酸は、制限エンドヌクレアーゼ消化による基材からの除去が可能である。たとえば、dUTPまたはddUTPを含有する核酸のウラシル-d-グリコシラーゼ(UDG)処理は、基材から核酸を除去するために使用可能である。たとえば、核酸は、ヌクレオチド切除を行う酵素、たとえば、塩基除去修復酵素、たとえば、脱プリン/脱ピリミジン(AP)エンドヌクレアーゼを用いて基材から除去可能である。いくつかの実施形態では、核酸は、光切断性基と光とを用いて基材から除去可能である。いくつかの実施形態では、切断性リンカーは、基材から核酸を除去するために使用可能である。たとえば、切断性リンカーは、ビオチン/アビジン、ビオチン/ストレプトアビジン、ビオチン/ニュートラビジン、Ig-プロテインA、光不安定性リンカー、酸または塩基不安定性リンカー基、またはアプタマーの少なくとも1つを含みうる。
【0216】
プローブが遺伝子特異的である場合、分子は、プローブにハイブリダイズし、逆転写および/または増幅が可能である。いくつかの実施形態では、核酸が合成された後(たとえば、逆転写された後)、増幅が可能である。増幅は、複数の標的核酸配列が同時に増幅される条件で、多重方式で行いうる。増幅は、核酸にシーケンシングアダプターを付加しうる。
【0217】
増幅は、たとえばブリッジ増幅を用いて基材上に行うことが可能である。基材上でオリゴdTプローブを用いてブリッジ増幅するのに適合していた末端を生成するために、cDNAにホモポリマーテールを付加することが可能である。ブリッジ増幅では、テンプレート核酸の3’末端に相補的なプライマーは、固体粒子に共有結合された各ペアの第1のプライマーでありうる。テンプレート核酸を含有するサンプルが粒子に接触して1回の熱サイクルが行われる場合、テンプレート分子は第1のプライマーにアニールし、かつ第1のプライマーはヌクレオチドの付加により順方向に伸長して、テンプレート分子とテンプレートに相補的な新たに形成されたDNA鎖とからなる二本鎖分子を形成する。次のサイクルの加熱工程では、二本鎖分子は変性されて、粒子からテンプレート分子を放出し、第1のプライマーを介して粒子に結合された相補的DNA鎖を残存させる。続くアニーリング・伸長工程のアニーリング段階では、相補鎖は、第1のプライマーから除去された位置の相補鎖のセグメントに相補的な第2のプライマーにハイブリダイズ可能である。このハイブリダイゼーションにより、相補鎖は、共有結合により第1のプライマーにかつハイブリダイゼーションにより第2のプライマーに固定されたブリッジを第1および第2のプライマー間に形成可能である。伸長段階では、第2のプライマーは、同一の反応混合物中にヌクレオチドを添加することにより反対方向に伸長し、それによりブリッジを二本鎖ブリッジに変換可能である。次いで、次のサイクルが開始され、二本鎖ブリッジは変性されて、それぞれ第1および第2のプライマーを介して粒子表面に結合された一方の末端と、それぞれ未結合の状態の他方の末端と、を有する2つの一本鎖核酸分子を与えることが可能である。この第2のサイクルのアニーリング・伸長工程では、各鎖は同一の粒子上のこれまで未使用であったさらなる相補的プライマーにハイブリダイズして新しい一本鎖ブリッジを形成可能である。この時点でハイブリダイズされる2つのこれまで未使用であったプライマーは伸長して2つの新しいブリッジを二本鎖ブリッジに変換可能である。
【0218】
増幅反応は、複数の核酸の少なくとも1%、2%、3%、4%、5%、6%、7%、8%、9%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、97%、または100%を増幅する工程を含みうる。
【0219】
標識核酸の増幅は、PCRベースの方法または非PCRベースの方法を含みうる。標識核酸の増幅は、標識核酸の指数関数的増幅を含みうる。標識核酸の増幅は、標識核酸の線形増幅を含みうる。増幅は、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)により行うことが可能である。PCRは、DNAの相補鎖の同時プライマー伸長により特定のDNA配列のin vitro増幅を行う反応を意味しうる。PCRは、その反応の派生形、たとえば、限定されるものではないが、RT-PCR、リアルタイムPCR、ネステッドPCR、定量PCR、多重PCR、ディジタルPCR、サプレッションPCR、セミサプレッシブPCR、およびアセンブリーPCRを包含しうる。
【0220】
いくつかの場合には、標識核酸の増幅は非PCRベースの方法を含む。非PCRベースの方法の例としては、限定されるものではないが、多重置換増幅(MDA)、転写媒介増幅(TMA)、核酸配列ベースの増幅(NASBA)、鎖置換増幅(SDA)、リアルタイムSDA、ローリングサークル増幅、またはサークル-サークル増幅が挙げられる。他の非PCRベースの増幅方法としては、DNAもしくはRNA標的を増幅するためのDNA依存性RNAポリメラーゼ駆動RNA転写増幅またはRNA指向DNA合成および転写の多重サイクル、リガーゼ連鎖反応(LCR)、Qβレプリカーゼ(Qβ)、パリンドロームプローブの使用、鎖置換増幅、制限エンドヌクレアーゼを用いたオリゴヌクレオチド駆動増幅、プライマーが核酸配列にハイブリダイズされかつ得られた二本鎖が伸長反応および増幅の前に切断される増幅方法、5’エキソヌクレアーゼ活性の欠如した核酸ポリメラーゼを用いた鎖置換増幅、ローリングサークル増幅、および/または分岐伸長増幅(RAM)が挙げられる。
【0221】
いくつかの場合には、本明細書に開示される方法は、増幅アンプリコン(たとえば標的)上でネステッドポリメラーゼ連鎖反応を行う工程をさらに含む。アンプリコンは二本鎖分子でありうる。二本鎖分子は、二本鎖RNA分子、二本鎖DNA分子、またはDNA分子にハイブリダイズされたRNA分子を含みうる。二本鎖分子の一方または両方の鎖は、サンプルタグまたは分子識別子標識を含みうる。代替的に、アンプリコンは一本鎖分子でありうる。一本鎖分子は、DNA、RNA、またはそれらの組合せを含みうる。本発明の核酸は、合成核酸または改変核酸を含みうる。
【0222】
いくつかの場合には、本方法は、多数のアンプリコンを生成するために標識核酸を繰返し増幅する工程を含む。本明細書に開示される方法は、少なくとも約1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、または20回の増幅反応を行う工程を含みうる。代替的に、本方法は、少なくとも約25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、または100回の増幅反応を行う工程を含む。
【0223】
増幅工程は、複数の核酸を含む1つ以上のサンプルに1つ以上の対照核酸を添加する工程をさらに含みうる。増幅工程は、複数の核酸に1つ以上の対照核酸を添加する工程をさらに含みうる。対照核酸は、対照標識を含みうる。
【0224】
増幅は、1つ以上の非天然ヌクレオチドの使用を含みうる。非天然ヌクレオチドは、光不安定性および/またはトリガー性ヌクレオチドを含みうる。非天然ヌクレオチドの例としては、限定されるものではないが、ペプチド核酸(PNA)、モルホリノ核酸およびロックド核酸(LNA)、さらにはグリコール核酸(GNA)およびトレオース核酸(TNA)が挙げられる。非天然ヌクレオチドは、増幅反応の1サイクル以上に添加しうる。非天然ヌクレオチドの添加は、増幅反応の特定のサイクルまたは時点で産物を同定するために使用しうる。
【0225】
増幅反応を1回以上行う工程は、1つ以上のプライマーの使用を含みうる。1つ以上のプライマーは1つ以上のオリゴヌクレオチドを含みうる。1つ以上のオリゴヌクレオチドは少なくとも約7~9ヌクレオチドを含みうる。1つ以上のオリゴヌクレオチドは12~15ヌクレオチド未満を含みうる。1つ以上のプライマーは、複数の標識核酸の少なくとも一部にアニールしうる。1つ以上のプライマーは、複数の標識核酸の3’末端および/または5’末端にアニールしうる。1つ以上のプライマーは、複数の標識核酸の内部領域にアニールしうる。内部領域は、複数の標識核酸の3’末端から少なくとも約50、100、150、200、220、230、240、250、260、270、280、290、300、310、320、330、340、350、360、370、380、390、400、410、420、430、440、450、460、470、480、490、500、510、520、530、540、550、560、570、580、590、600、650、700、750、800、850、900、または1000ヌクレオチドでありうる。1つ以上のプライマーは、プライマーの一定パネルを含みうる。1つ以上のプライマーは、少なくとも1つ以上のカスタムプライマーを含みうる。1つ以上のプライマーは、少なくとも1つ以上の対照プライマーを含みうる。1つ以上のプライマーは、少なくとも1つ以上のハウスキーピング遺伝子プライマーを含みうる。1つ以上のプライマーは、ユニバーサルプライマーを含みうる。ユニバーサルプライマーは、ユニバーサルプライマー結合部位にアニールしうる。1つ以上のカスタムプライマーは、第1のサンプルタグ、第2のサンプルタグ、分子識別子標識、核酸、またはその産物にアニールしうる。1つ以上のプライマーは、ユニバーサルプライマーおよびカスタムプライマーを含みうる。カスタムプライマー、1つ以上の標的核酸を増幅するように設計しうる。標的核酸は、1つ以上のサンプル中の全核酸のサブセットを含みうる。いくつかの場合には、プライマーには、本開示のアレイに結合されたプローブである。
【0226】
検出
標的特異的な1つ以上のプローブは、基材上で1つ以上の標的を検出するために使用しうる。いくつかの実施形態では、プローブは蛍光標識しうる。ハイブリダイズされたプローブの画像は、たとえば、蛍光イメージングにより生成しうる。いくつかの実施形態では、プローブは除去しうるとともに、プローブの異なるセットは標的の異なるセットを検出するために使用される。
【0227】
標的(たとえば、分子、増幅分子)は、たとえば、検出プローブ(たとえば蛍光プローブ)を用いて検出可能である。アレイは、少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、9、もしくは10検出プローブまたはそれ以上でハイブリダイズ可能である。アレイは、多くとも1、2、3、4、5、6、7、8、9、もしくは10検出プローブまたはそれ以上でハイブリダイズ可能である。いくつかの実施形態では、アレイは4つの検出プローブでハイブリダイズされる。
【0228】
検出プローブは、対象の遺伝子の配列に相補的な配列を含みうる。検出プローブの長さは、少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、もしくは15ヌクレオチドまたはそれ以上でありうる。検出プローブの長さは、多くとも1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、もしくは15ヌクレオチドまたはそれ以上でありうる。検出プローブは、対象の遺伝子(たとえば標的)の配列に完全に相補的な配列を含みうる。検出プローブは、対象の遺伝子(たとえば標的)の配列に不完全に相補的な配列を含みうる。検出プローブは、対象の遺伝子の配列に対して少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、9、もしくは10ミスマッチまたはそれ以上の配列を含みうる。検出プローブは、対象の遺伝子の配列に対して多くとも1、2、3、4、5、6、7、8、9、もしくは10ミスマッチまたはそれ以上の配列を含みうる。
【0229】
検出プローブは検出可能な標識を含みうる。例示的な検出可能な標識は、フルオロフォア、クロモフォア、低分子、ナノ粒子、ハプテン、酵素、抗体、および磁性、またはそれらの任意の組合せを含みうる。
【0230】
ハイブリダイズされたプローブは画像化可能である。画像は、検出可能なシグナル(たとえば蛍光シグナル)の強度に基づいて対象の遺伝子の相対発現レベルを決定するために使用可能である。走査レーザー蛍光顕微鏡またはリーダーは、基材(たとえばマイクロアレイ)からの発光光のディジタル画像を得るために使用可能である。ハイブリダイズされた領域全体にわたりフォーカス光源(通常レーザー)を走査することにより、ハイブリダイズされた基材から蛍光などの光学シグナルを発するようにすることが可能である。スキャン操作時にフルオロフォア特異的蛍光データの収集および測定を行い、次いで、適切なアルゴリズム、ソフトウェア、およびコンピューターハードウェアにより基材の画像を再構築することが可能である。次いで、プローブ核酸の特徴の期待また意図される位置をそうした位置で測定された蛍光強度と組み合わせてデータを生成し、次いで、これを用いて標的サンプルの遺伝子発現レベルまたは核酸配列を決定する。期待されるプローブ位置からデータを集めるプロセスは、「特徴抽出」としても参照可能である。ディジタル画像は、典型的には5~50ミクロンのサイズ範囲の数千~数億ピクセルで構成可能である。ディジタル画像中の各ピクセルは16ビットの整数により表すことが可能であり、これにより65,535の異なるグレースケール値が可能になる。リーダーは、スキャンされた基材からピクセルを逐次的に捕捉して、コンピューターハードドライブ上に記憶可能な画像ファイルにそれを書き出すことが可能である。基材は、各スポット位置でいくつかの異なる蛍光タグ付きプローブDNAサンプルを含みうる。スキャナーは、適切な波長のレーザーで全基材を繰返しスキャンすることにより、プローブDNAサンプルのそれぞれを励起してそれをその個別の画像ファイルに記憶する。画像ファイルを解析し、続いてプログラムコンピューターの助けを借りて考察する。
【0231】
基材は、共焦点レーザースキャナーで画像化可能である。スキャナーは、基材スライドをスキャン可能であり、特定の色素に固有の波長のレーザーを用いて逐次的にスキャンすることにより使用した各色素につき1画像を生成可能である。各色素は、既知の励起スペクトルおよび既知の発光スペクトルを有しうる。スキャナーは、レーザービームを対物レンズの方向に反射するビームスプリッターを含みうるとともに、これによりスライドの表面にビームを集束させて蛍光球面発光を引き起こす。発光の一部は、レンズおよびビームスプリッターを介して逆方向に進行可能である。ビームスプリッターを通り抜けた後、蛍光ビームはミラーにより反射可能であり、発光フィルター、フォーカスディテクターレンズ、およびセンターピンホールを移動する。
【0232】
プロービングデータとイメージングデータとの相関
標的の位置を示す画像とサンプルの画像とを相関付けることにより、標的の空間バーコードを生成可能である。基材スキャンのデータは、基材上の非溶解サンプルの画像に相関付けることが可能である。データを重ね合わせてマップを生成可能である。サンプルの標的の位置のマップは、本明細書に記載の方法を用いて生成された情報を用いて構築可能である。マップは、標的の物理的位置を決定するために使用可能である。マップは、複数の標的の位置を同定するために使用可能である。複数の標的は標的の同一種でありうるか、または複数の標的は複数の異なる標的でありうる。たとえば、脳のマップを構築して複数の標的の量および位置を示すことが可能である。
【0233】
マップは、単一のサンプルのデータから生成可能である。マップは、複数のサンプルのデータを用いて構築可能であり、それにより組合せマップを生成可能である。マップは、何十、何百、および/または何千ものサンプルのデータで構築可能である。複数のサンプルから構成されるマップは、複数のサンプルに共通する領域に関連付けられる標的の分布を示すことが可能である。たとえば、レプリケートアッセイは同一のマップ上に表示可能である。少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、9、もしくは10レプリケートまたはそれ以上を同一のマップ上に表示(たとえばオーバーレイ)可能である。多くとも1、2、3、4、5、6、7、8、9、もしくは10レプリケートまたはそれ以上を同一のマップ上に表示(たとえばオーバーレイ)可能である。標的の空間分布および数は、さまざまな統計量により表すことが可能である。
【0234】
複数のサンプルのデータを組み合わせることにより、組合せマップの位置分解能を向上させることが可能である。サンプル全体にわたる個別の位置測定が少なくとも部分的には隣接しない場合、アレイ上の共有のランドマークおよび/またはx-y位置により複数のサンプルのオリエンテーションの位置合せが可能である。以上の方法を多重化すれば、サンプル中の標的核酸の高分解能マップが得られるであろう。
【0235】
データ解析および相関は、特定の細胞型(たとえば、希少細胞、癌細胞)の存在および/または不在を決定するのに有用でありうる。データ相関は、細胞内またはサンプル内のいずれかの識別可能な位置で標的核酸の相対比を決定するのに有用でありうる。
【0236】
本明細書に開示される方法および組成物は、医療専門家(たとえば病理学者)のためのコンパニオン診断でありうる。この場合、病理画像を目視観察して画像を遺伝子発現に相関付けることにより(たとえば、癌遺伝子発現を同定することにより)被験体を診断可能である。この方法および組成物は、細胞集団の細胞を同定してサンプル内の細胞の遺伝的異質性を決定するのに有用でありうる。この方法および組成物は、サンプルの遺伝子型を決定するために有用になりえる。
【0237】
本開示は、基材のレプリケートの作製方法を提供する。基材は、異なる対象の遺伝子に対する異なるプローブにより再プローブしたり特定の遺伝子を選択的に選んだりすることが可能である。たとえば、サンプルは、複数のオリゴ(dT)プローブを含む基材上に配置可能である。mRNAはプローブにハイブリダイズ可能である。オリゴ(dT)プローブを含むレプリケート基材は、初期のスライドに接触させてmRNAのレプリケートを作製することが可能である。RNA遺伝子特異的プローブを含むレプリケート基材はレプリケートを作製するために初期スライドに接触することが可能である。
【0238】
mRNAはcDNAに逆転写可能である。cDNAは、ホモポリマーテーリングおよび/または増幅(たとえばブリッジ増幅)が可能である。アレイはレプリケートアレイに接触可能である。レプリケートアレイは、対象のcDNAに結合可能な遺伝子特異的プローブを含みうる。レプリケートアレイは、ポリアデニル化配列を有するcDNAに結合可能なポリAプローブを含みうる。
【0239】
作製可能なレプリケートの数は、少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、9、もしくは10またはそれ以上でありうる。作製可能なレプリケートの数は、多くとも1、2、3、4、5、6、7、8、9、もしくは10またはそれ以上でありうる。
【0240】
いくつかの実施形態では、初期基材は複数の遺伝子特異的プローブを含み、レプリケート基材は、同一の遺伝子特異的プローブ、または遺伝子特異的プローブと同一の遺伝子に対応する異なるプローブを含む。
【0241】
イメージング
基材に接触させたサンプルは分析可能である(たとえば、免疫組織化学、染色、および/またはイメージングを用いて)。免疫組織化学の例示的な方法は、生体物質間の特異的結合反応により組織切片上に存在する検出対象の生体物質を可視化するために、検出対象の生体物質を認識可能な物質に標識を導入することにより得られる標識プローブ生体物質を組織切片に反応させる工程を含みうる。
【0242】
組織診断検体では、組織片は、典型的にはホルマリンである好適な固定剤で固定して融解パラフィンワックスに埋込み可能である。ワックスブロックは、ミクロトームでカットして組織を含有するパラフィンの薄いスライスを生成可能である。検体スライスは、基材に適用して空気乾燥させ、そして加熱して検体をガラススライドに接着可能である。残留パラフィンは、典型的にはキシレン、トルエンなどである好適な溶媒で溶解可能である。こうしたいわゆる脱パラフィン溶媒は、染色前に洗浄-脱水タイプの試薬で除去可能である。スライスは、凍結検体から作製して10%ホルマリンで短時間固定し、次いで、脱水試薬を注入可能である。脱水試薬は水性染色剤による染色の前に除去可能である。
【0243】
いくつかの実施形態では、パパニコロウ染色技術を使用可能である(たとえば、進行性染色および/またはヘマトキシリンエオシン[H&E]、すなわち、退行性染色)。HE(ヘマトキシリン-エオシン)染色は、色素としてヘマトキシリンおよびエオシンを使用する。ヘマトキシリンは、青紫色の色素であり、細胞核、骨組織、軟骨組織の一部、漿液成分などの好塩基性組織を染色する性質を有する。エオシンは、赤色~桃色の色素であり、細胞質、軟組織の結合組織、赤血球、フィブリン、内分泌顆粒などの好酸球性組織を染色する性質を有する。
【0244】
免疫組織化学(IHC)は、他の方法では認識できない抗原-抗体反応を可視化するために発色プロセスを用いることから「免疫学的染色」としても参照可能である(これ以降では、「免疫組織化学染色」という用語は免疫組織化学に使用可能である)。レクチン染色は、レクチンを用いて組織検体内の糖鎖を検出するために非免疫学的かつ特定的な形で特定の糖鎖に結合するレクチンの特性を使用可能な技術である。
【0245】
HE染色、免疫組織化学、およびレクチン染色は、たとえば、細胞検体中の癌細胞の位置を検出するために使用可能である。たとえば、細胞検体中の癌細胞の位置を確認することが望ましい場合、細胞検体中の癌細胞の存在または不在を決定するために、病理学者は、組織切片を調製して本開示の基材上にそれらを配置することが可能である。アレイ上の切片は、その形態学的情報および/または任意の他の同定上の特徴(たとえば、希少細胞の存在または不在)を得るために、HE染色、イメージング、または任意の免疫組織化学的分析に供することが可能である。サンプルは溶解可能であり、核酸分子の存在または不在は本開示の方法を用いて決定可能である。核酸情報は画像と比較可能であり(たとえば、空間比較)、それにより、サンプル中の核酸の空間位置を示すことが可能である。
【0246】
いくつかの実施形態では、組織は、染色エンハンサー(たとえば、化学浸透エンハンサー)で染色される。組織内への染色剤の浸透を促進する組織化学浸透エンハンサーの例としては、限定されるものではないが、ポリエチレングリコール(PEG)、界面活性剤、たとえば、ポリオキシエチレンソルビタン、ポリオキシエチレンエーテル(ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート(Tween 20)および他のTween誘導体、ポリオキシエチレン23ラウリルエーテル(Brij35)、Triton X-100、Brij、Nonidet P-40、界面活性剤様物質、たとえば、リゾレシチン、サポニン、非イオン性界面活性剤、たとえば、TRITON(登録商標)X-100など、非プロトン性溶媒、たとえば、ジメチルスルホキシド(DMSO)、エーテル、たとえば、テトラヒドロフラン、ジオキサンなど、エステル、たとえば、エチルアセテート、ブチルアセテート、イソプロピルアセテート、炭化水素、たとえば、トルエン、塩素化溶媒、たとえば、ジクロロメタン、ジクロロエタン、クロロベンゼンなど、ケトン、たとえば、アセトン、ニトリル、たとえば、アセトニトリル、および/または細胞膜透過性を増加させる他の作用剤が挙げられる。
【0247】
いくつかの実施形態では、哺乳動物組織サンプルの染色を促進する組成物が提供される。組成物は、染色剤、たとえば、ヘマトキシリン、もしくはヘマトキシリンおよびエオシン-Y、少なくとも1種の組織化学浸透エンハンサー、たとえば、界面活性剤、非プロトン性溶媒、および/またはPEG、あるいはそれらの任意の組合せを含みうる。
【0248】
いくつかの実施形態では、サンプルは画像化される(たとえば、IHCの前もしくは後またはIHC不使用のいずれか)。イメージングは、顕微鏡観察、たとえば、明領域イメージング、傾斜照明、暗領域イメージング、分散染色、相コントラスト、示差干渉コントラスト、干渉反射顕微鏡観察、蛍光、共焦点、電子顕微鏡観察、透過型電子顕微鏡観察、走査型電子顕微鏡観察、単一平面照明、またはそれらの任意の組合せを含みうる。イメージングは、ネガティブ染色(たとえば、ニグロシン、モリブデン酸アンモニウム、酢酸ウラニル、ウラニルホルメート、リンタングステン酸、四酸化オスミウム)の使用を含みうる。イメージングは、電子を散乱可能な重金属(たとえば、金、オスミウム)の使用を含みうる。
【0249】
イメージングは、サンプルの一部(たとえば、スライド/アレイ)の画像化を含みうる。イメージングは、サンプルの少なくとも10、20、30、40、50、60、70、80、90、または100%の画像化を含みうる。イメージングは、サンプルの多くとも10、20、30、40、50、60、70、80、90、または100%の画像化を含みうる。イメージングは個別の工程で行うことが可能である(たとえば、画像が隣接している必要がないこともある)。イメージングは、少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、9、もしくは10またはそれ以上の異なる画像の取込みを含みうる。イメージングは、多くとも1、2、3、4、5、6、7、8、9、もしくは10またはそれ以上の異なる画像の取込みを含みうる。
【0250】
図9は、本開示のホモポリマーテーリング法の例示的な実施形態を示す。本開示は、基材の表面に結合された複数のプローブ905を含む基材910を提供する。基材910はマイクロアレイでありうる。複数のプローブ905はオリゴ(dT)を含みうる。複数のプローブ905は遺伝子特異的配列を含みうる。複数のプローブ105は確率バーコードを含みうる。サンプル(たとえば細胞)915は基材910上で配置および/または成長が可能である。サンプルを含む基材は、たとえば、イメージングおよび/または免疫組織化学により分析920可能である。サンプル915は基材910上で溶解925可能である。サンプル915の核酸930は、基材910上の複数のプローブ905に関連付け(たとえばハイブリダイズ)可能である。いくつかの実施形態では、核酸930は、逆転写、ホモポリマーテーリング、および/または増幅(たとえばブリッジ増幅)が可能である。増幅核酸は、検出プローブ940(たとえば蛍光プローブ)を用いて精査935可能である。検出プローブ940は遺伝子特異的プローブでありうる。基材910上の検出プローブ940の結合の位置は、基材の画像との相関によりサンプル中の核酸の空間位置を示すマップを生成可能である。
【0251】
いくつかの実施形態では、本方法は、元の基材910のレプリケート946の作製945を含みうる。レプリケート基材946は、複数のプローブ931を含みうる。複数のプローブ931は、元の基材910上の複数のプローブ905と同一でありうる。複数のプローブ931は、元の基材910上の複数のプローブ905と異なりうる。たとえば、複数のプローブ905は、オリゴ(dT)プローブでありうるとともに、レプリケート基材946上の複数のプローブ931は遺伝子特異的プローブでありうる。レプリケート基材は、検出(たとえば蛍光)プローブによる精査などにより元の基材と同様に処理可能である。
【0252】
サンプル
細胞
本開示の方法に使用されるサンプルは1細胞以上を含みうる。サンプルとは1細胞以上を意味しうる。いくつかの実施形態では、細胞は、癌組織、たとえば、乳癌、肺癌、結腸癌、前立腺癌、卵巣癌、膵癌、脳癌、黒色腫、非黒色腫皮膚癌などから摘出された癌細胞である。いくつかの場合には、細胞は、癌に由来するが体液から採取される(たとえば循環腫瘍細胞)。癌の例としては、限定されるものではないが、腺腫、腺癌、扁平上皮細胞癌、基底細胞癌、小細胞癌、大細胞未分化癌、軟骨肉腫、および線維肉腫が挙げられる。
【0253】
いくつかの実施形態では、細胞は、ウイルスに感染していてウイルスオリゴヌクレオチドを含有する細胞である。いくつかの実施形態では、ウイルス感染は、二本鎖DNAウイルス(たとえば、アデノウイルス、ヘルペスウイルス、ポックスウイルス)、一本鎖(+鎖または「センス」)DNAウイルス(たとえば、パルボウイルス)、二本鎖RNAウイルス(たとえば、レオウイルス)、一本鎖(+鎖またはセンス)RNAウイルス(たとえば、ピコルナウイルス、トガウイルス)、一本鎖(鎖またはアンチセンス)RNAウイルス(たとえば、オルトミクソウイルス、ラブドウイルス)、一本鎖(生活環でDNA中間体を有する(+鎖またはセンス)RNAウイルス)RNA-RTウイルス(たとえば、レトロウイルス)、および二本鎖DNA-RTウイルス(たとえば、ヘパドナウイルス)からなる群から選択されるウイルスにより引き起こされうる。例示的なウイルスとしては、限定されるものではないが、SARS、HIV、コロナウイルス、エボラ、マラリア、デング熱、C型肝炎、B型肝炎、およびインフルエンザが挙げられる。
【0254】
いくつかの実施形態では、細胞は細菌である。これらは、グラム陽性細菌またはグラム陰性細菌のいずれかを含みうる。本開示の方法、デバイス、およびシステムを用いて分析しうる細菌の例としては、限定されるものではないが、アクチノメズラエ属(Actinomedurae)、アクチノマイセス・イスラエリー(Actinomyces israelii)、バチルス・アントラシス(Bacillus anthracis)、バチルス・セレウス(Bacillus cereus)、クロストリジウム・ボツリナム(Clostridium botulinum)、クロストリジウム・ディフィシレ(Clostridium difficile)、クロストリジウム・パーフリンジェンス(Clostridium perfringens)、クロストリジウム・テタニ(Clostridium tetani)、コリネバクテリウム属(Corynebacterium)、エンテロコッカス・フェカリス(Enterococcus faecalis)、リステリア・モノサイトゲネス(Listeria monocytogenes)、ノカルディア属(Nocardia)、プロピオニバクテリウム・アクネス(Propionibacterium acnes)、スタフィロコッカス・アウレウス(Staphylococcus aureus)、スタフィロコッカス・エピデルム(Staphylococcus epiderm)、ストレプトコッカス・ミュータンス(Streptococcus mutans)、ストレプトコッカス・ニューモニアエ(Streptococcus pneumoniae)などが挙げられる。グラム陰性菌細として菌は、限定されるものではないが、アフピア・フェリス(Afipia felis)、バクテリオデス属(Bacteriodes)、バルトネラ・バチリホルミス(Bartonella bacilliformis)、ボルタデラ・ペルツッシス(Bortadella pertussis)、ボレリア・ブルグドルフェリ(Borrelia burgdorferi)、ボレリア・リカレンチス(Borrelia recurrentis)、Brucella、カリマトバクテリウム・グラヌロマチス(Calymmatobacterium granulomatis)、カンピロバクター属(Campylobacter)、エシェリキア・コリ(Escherichia coli)、フランシセラ・ツラレンシス(Francisella tularensis)、ガードネレラ属(Gardnerella)バギナリス(vaginalis)、ヘモフィリウス・アエジプチウス(Haemophilius aegyptius)、ヘモフィルス・デュクレイ(Haemophilius ducreyi)、ヘモフィラス・インフルエンジアエ(Haemophilius influenziae)、ヘリオバクター・ピロリ(Heliobacter pylori)、レジオネラ・ニューモフィラ(Legionella pneumophila)、レプトスピラ・インテロガンス(Leptospira interrogans)、ナイセリア・メニンジティディア(Neisseria meningitidia)、ポルフィロモナス・ジンジバリス(Porphyromonas gingivalis)、プロビデンシア・スツルチ(Providencia sturti)、シュードモナス・アエルギノサ(Pseudomonas aeruginosa)、サルモネラ・エンテリディス(Salmonella enteridis)、サルモネラ・チフィ(Salmonella typhi)、セラチア・マルセッセンス(Serratia marcescens)、シゲラ・ボイディイ(Shigella boydii)、ストレプトバシラス・モニリフォルミス(Streptobacillus moniliformis)、ストレプトコッカス・ピオゲネス(Streptococcus pyogenes)、トレポネーマ・パリダム(Treponema pallidum)、ビブリオ・コレラエ(Vibrio cholerae)、エルシニア・エンテロコリティカ(Yersinia enterocolitica)、エルシニア・ペスチス(Yersinia pestis)などが挙げられる。他の細菌としては、マイコバクテリウム・アビウム(Myobacterium avium)、ミオバクテリウムleprae、マイコバクテリウム・ツベルクローシス(Myobacterium tuberculosis)、バルトネラ・ヘンセラエ(Bartonella henseiae)、クラミジア・シッタシ(Chlamydia psittaci)、クラミジア・トラコマチス(Chlamydia trachomatis)、コクシエラ・バーネッティイ(Coxiella burnetii)、マイコプラズマ・ニューモニアエ(Mycoplasma pneumoniae)、リケッチア・アカリ(Rickettsia akari)、リケッチア・ロワゼキイ(Rickettsia prowazekii)、リケッチア・リケッチイ(Rickettsia rickettsii)、リケッチア・ツツガムシ(Rickettsia tsutsugamushi)、リケッチア・ティフィー(Rickettsia typhi)、ウレアプラズマ・ウレアリティカム(Ureaplasma urealyticum)、ディプロコッカス・ニューモニエ(Diplococcus pneumoniae)、エールリキア・シャフィンシス(Ehrlichia chafensis)、エンテロコッカス・フェシウム(Enterococcus faecium)、髄膜炎菌属(Meningococci)などが挙げられる。
【0255】
いくつかの実施形態では、細胞は菌類である。本開示の方法、デバイス、およびシステムを用いて分析しうる菌類の例としては、限定されるものではないが、限定されるものではないが、アスペルギルス属(Aspergilli)、カンジダエ属(Candidae)、カンジダ・アルビカンス(Candida albicans)、コクシジオイデス・イミティス(Coccidioides immitis)、クリプトコッカス属(Cryptococci)、およびそれらの組合せが挙げられる。
【0256】
いくつかの実施形態では、細胞は原生動物または他の寄生生物である。本開示の方法、デバイス、およびシステムを用いて分析される寄生生物の例としては、限定されるものではないが、バランチジウム・コリ(Balantidium coli)、クリプトスポリジウム・パルバム(Cryptosporidium parvum)、シクロスポラ・カヤタネンシス(Cyclospora cayatanensis)、エンセファリトゾア属(Encephalitozoa、エントアメーバ・ヒストリティカ(Entamoeba histolytica)、エンテロシトゾーン・ビネウシ(Enterocytozoon bieneusi)、ジアルジア・ランブリア(Giardia lamblia)、リーシュマニア属(Leishmaniae)、プラスモジウム属(Plasmodii)、トキソプラズマ・ゴンディ(Toxoplasma gondii)、トリパノソーマ属(Trypanosomae)、トラペゾイドアメーバ(trapezoidal amoeba)、ワーム(たとえば、蠕虫)、とくに、寄生虫、たとえば、限定されるものではないが、線形動物門(Nematoda)(回虫、たとえば、鞭虫、鉤虫、蟯虫、回虫、糸状虫など)、多節条虫亜綱(Cestoda)(たとえば、サナダムシ))が挙げられる。
【0257】
本明細書で用いられる場合、「細胞」という用語は、1細胞以上を意味しうる。いくつかの実施形態では、細胞は、正常細胞、たとえば、さまざまな発生段階のヒト細胞またはさまざまな器官もしくは組織型のヒト細胞(たとえば、白血球、赤血球、血小板、上皮細胞、内皮細胞、ニューロン、グリア細胞、線維芽細胞、骨格筋細胞、平滑筋細胞、配偶子、または心臓、肺、脳、肝臓、腎臓、脾臓、膵臓、胸腺、膀胱、胃、結腸、小腸の細胞)である。いくつかの実施形態では、細胞は、未分化ヒト幹細胞または分化誘導されたヒト幹細胞でありうる。いくつかの実施形態では、細胞は胎児ヒト細胞でありうる。胎児ヒト細胞は、胎児を有する妊娠母体から得られうる。いくつかの実施形態では、細胞は希少細胞である。希少細胞は、たとえば、循環腫瘍細胞(CTC)、循環上皮細胞、循環内皮細胞、循環子宮内膜細胞、循環幹細胞、幹細胞、未分化幹細胞、癌幹細胞、骨髄細胞、前駆細胞、フォーム気泡、間葉細胞、栄養芽細胞、免疫系細胞(宿主またはグラフト)、細胞断片、細胞オルガネラ(たとえば、ミトコンドリアまたは核)、病原体感染細胞などでありうる。
【0258】
いくつかの実施形態では、細胞は、非ヒト細胞、たとえば、他のタイプの哺乳動物細胞)(たとえば、マウス、ラット、ブタ、イヌ、ウシ、またはウマ)である。いくつかの実施形態では、細胞は、他のタイプの動物または植物細胞である。他の実施形態では、細胞は、任意の原核細胞または真核細胞でありうる。
【0259】
いくつかの実施形態では、第1の細胞サンプルは、疾患や病態を有していない者から得られ、第2の細胞サンプルは、疾患または病態を有する者から得られる。いくつかの実施形態では、人物は異なる。いくつかの実施形態では、人物は同一であるが、細胞サンプルはさまざまな時点で得られる。いくつかの実施形態では、人物は患者であり、細胞サンプルは患者サンプルである。疾患または病態は、癌、細菌感染、ウイルス感染、炎症性疾患、神経変性疾患、菌類病、寄生虫性疾患、遺伝障害、またはそれらの任意の組合せでありうる。
【0260】
いくつかの実施形態では、本開示の方法に使用するのに好適な細胞は、直径約2マイクロメートル~約100マイクロメートルのサイズ範囲内である。いくつかの実施形態では、細胞は、少なくとも2マイクロメートル、少なくとも5マイクロメートル、少なくとも10マイクロメートル、少なくとも15マイクロメートル、少なくとも20マイクロメートル、少なくとも30マイクロメートル、少なくとも40マイクロメートル、少なくとも50マイクロメートル、少なくとも60マイクロメートル、少なくとも70マイクロメートル、少なくとも80マイクロメートル、少なくとも90マイクロメートル、または少なくとも100マイクロメートルの直径を有する。いくつかの実施形態では、細胞は、多くとも100マイクロメートル、多くとも90マイクロメートル、多くとも80マイクロメートル、多くとも70マイクロメートル、多くとも60マイクロメートル、多くとも50マイクロメートル、多くとも40マイクロメートル、多くとも30マイクロメートル、多くとも20マイクロメートル、多くとも15マイクロメートル、多くとも10マイクロメートル、多くとも5マイクロメートル、または多くとも2マイクロメートルの直径を有する。細胞は、たとえば、約5マイクロメートル~約85マイクロメートルの範囲内の任意の値の直径を有しうる。いくつかの実施形態では、細胞は約10マイクロメートルの直径を有する。
【0261】
いくつかの実施形態では、細胞は、細胞をビーズおよび/またはマイクロウェルに関連付ける前にソートされる。たとえば、細胞は、蛍光活性化細胞ソーティングまたは磁気活性化細胞ソーティングまたはたとえばフローサイトメトリーによりソート可能である。細胞はサイズによりフィルター可能である。いくつかの場合には、リテンテートは、ビーズに関連付けられる細胞を含有する。いくつかの場合には、フロースルーは、ビーズに関連付けられる細胞を含有する。
【0262】
サンプルは核酸でありうる。サンプルは核酸を含みうる。サンプルは単一細胞でありうる。サンプルが単一細胞である場合、細胞は単一細胞から核酸を放出するように溶解しうる。サンプルは複数の細胞でありうる。異なるウェルのサンプルは同一の被験体に由来しうる。異なるウェルのサンプルは異なる被験体に由来しうる。異なるウェルのサンプルは異なる組織(たとえば、脳、心臓、肺、腎臓、脾臓)に由来しうる。異なるウェルのサンプルは同一の組織に由来しうる。
【0263】
基材を横切る拡散
本開示の方法に従ってサンプル(たとえば細胞)に確率バーコードおよび/またはコンビナトリアルバーコードを付ける場合、細胞を溶解しうる。細胞を溶解すると溶解の初期位置から離れる方向に溶解内容物(たとえば細胞内容物)の拡散を生じうる。言い換えれば、溶解内容物は、細胞が占める表面領域よりも広い表面領域に移動可能である。
【0264】
サンプル溶解混合物(たとえば、標的を含む)の拡散は、種々のパラメーターにより、たとえば、限定されるものではないが、溶解混合物の粘度、溶解混合物の温度、標的のサイズ、基材中の物理的バリヤーのサイズ、溶解混合物の濃度などにより調整可能である。たとえば、溶解反応の温度は、少なくとも1、2、3、4、5、10、15、20、25、30、35、もしくは40Cまたはそれ以上の温度に設定可能である。溶解反応の温度は、多くとも1、2、3、4、5、10、15、20、25、30、35、もしくは40Cまたはそれ以上の温度に設定可能である。溶解混合物の粘度は、たとえば、拡散速度を遅くするために増粘試薬(たとえば、グリセロール、ビーズ)を添加することにより改変可能である。溶解混合物の粘度は、たとえば、拡散速度を増加させるために希釈試薬(たとえば水)を添加することにより改変可能である。基材は、サンプルの標的の拡散速度を改変可能な物理的バリヤー(たとえば、ウェル、マイクロウェル、マイクロヒル)を含みうる。溶解混合物の濃度は、サンプルの標的の拡散速度を増加または減少させるように改変可能である。溶解混合物の濃度は、少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、もしくは9またはそれ以上の倍率で増加または減少させうる。溶解混合物の濃度は、多くとも1、2、3、4、5、6、7、8、もしくは9またはそれ以上の倍率で増加または減少させうる。
【0265】
拡散速度は増加可能である。拡散速度は減少可能である。溶解混合物の拡散速度は、未改変溶解混合物と比較して少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、9、もしくは10またはそれ以上の倍率で増加または減少が可能である。溶解混合物の拡散速度は、未改変溶解混合物と比較して多くとも1、2、3、4、5、6、7、8、9、もしくは10またはそれ以上の倍率で増加または減少が可能である。溶解混合物の拡散速度は、未改変溶解混合物と比較して少なくとも10、20、30、40、50、60、70、80、90、または100%増加または減少させうる。溶解混合物の拡散速度は、未改変溶解混合物と比較して少なくとも10、20、30、40、50、60、70、80、90、または100%増加または減少させうる。
【0266】
データ解析および表示ソフトウェア
データ解析および標的の空間分解能の可視化
本開示は、確率バーコーディングおよび/またはコンビナトリアルバーコーディングおよびディジタルカウンティングを用いて標的の数および位置を推定する方法を提供する。本開示の方法から得られるデータはマップ上に可視化可能である。本開示の方法から得られるデータは、マイクロウェルアレイのマップ上に可視化可能である(たとえば、各サンプルの結果をマイクロウェルアレイ中の位置にトレースできるように)。サンプルの標的の数および位置のマップは、本明細書に記載の方法を用いて生成された情報を用いて構築可能である。マップは、標的の物理的位置を決定するために使用可能である。マップは、複数の標的の位置を同定するために使用可能である。複数の標的は標的の同一種でありうるか、または複数の標的は複数の異なる標的でありうる。たとえば、脳のマップを構築して複数の標的のディジタルカウントおよび位置を示すことが可能である。
【0267】
マップは、単一のサンプルのデータから生成可能である。マップは、複数のサンプルのデータを用いて構築可能であり、それにより組合せマップを生成可能である。マップは、何十、何百、および/または何千ものサンプルのデータで構築可能である。複数のサンプルから構成されるマップは、複数のサンプルに共通する領域に関連付けられる標的のディジタルカウントの分布を示すことが可能である。たとえば、レプリケートアッセイは同一のマップ上に表示可能である。少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、9、もしくは10レプリケートまたはそれ以上を同一のマップ上に表示(たとえばオーバーレイ)しうる。多くとも1、2、3、4、5、6、7、8、9、もしくは10レプリケートまたはそれ以上を同一のマップ上に表示(たとえばオーバーレイ)しうる。標的の空間分布および数は、さまざまな統計量により表すことが可能である。
【0268】
機器システムのいくつかの実施形態では、システムは、単一細胞確率バーコーディングアッセイを行うことにより生成されたシーケンスデータセットのデータ解析を提供するためのコードを含むコンピューター可読媒体を含むであろう。データ解析ソフトウェアにより提供しうるデータ解析機能の例としては、限定されるものではないが、(i)アッセイの実施時に生成された確率バーコードおよび/またはコンビナトリアルバーコード試薬ライブラリーをシーケンスすることにより提供されるサンプル標識、細胞標識、分子標識、および標的シーケンスデータのデコーディング/デマルチプレクシングのためのアルゴリズム、(ii)リード数/遺伝子/細胞およびユニーク転写物分子数/遺伝子/細胞を決定するためのアルゴリズム、(iii)たとえば、遺伝子発現データにより細胞をクラスター化するためのまたは転写物分子数/遺伝子/細胞などの決定の信頼区間を予測するためのシーケンスデータの統計解析、(iv)たとえば、主成分分析、階層的クラスタリング、k平均値クラスタリング、自己組織化マップ、神経回路網などを用いて、希少細胞のサブ集団を同定するためのアルゴリズム、(v)遺伝子配列データを既知の参照配列にアライメントするためのおよび突然変異、多型体マーカー、およびスプライス変異体を検出するための配列アライメント機能、ならびに(vi)増幅またはシーケンシングエラーを補償するための分子標識の自動クラスタリングが挙げられる。いくつかの実施形態では、データ解析の全部または一部を行うために市販のソフトウェアを使用しうる。たとえば、全細胞コレクションで各細胞に存在する1遺伝子以上のコピー数の表を編集するためにSeven Bridges(https://www.sbgenomics.com/)ソフトウェアを使用しうる。いくつかの実施形態では、データ解析ソフトウェアは、有用なグラフ形式のシーケンシング結果、たとえば、細胞集団の各細胞に存在する1遺伝子以上のコピー数を示すヒートマップを出力するためのオプションを含みうる。いくつかの実施形態では、データ解析ソフトウェアは、たとえば、細胞集団の各細胞に存在する1遺伝子以上のコピー数と、あるタイプの細胞、あるタイプの希少細胞型、または特異的疾患もしくは病態を有する被験体に由来する細胞と、を相関付けることにより、シーケンシング結果から生物学的意味を抽出するためのアルゴリズムをさらに含みうる。ある実施形態では、データ解析ソフトウェアは、異なる生物学的サンプル全体にわたり細胞集団を比較するためのアルゴリズムをさらに含みうる。
【0269】
いくつかの実施形態では、データ解析機能のすべてを単一ソフトウェアパッケージ内にパッケージ化しうる。いくつかの実施形態では、データ解析能力の完全セットは、一式のソフトウェアパッケージを含みうる。いくつかの実施形態では、データ解析ソフトウェアは、アッセイ機器システムに依存せずにユーザーが利用可能なスタンドアロンパッケージでありうる。いくつかの実施形態では、ソフトウェアはウェブベースでありうるとともに、ユーザーによるデータの共有を可能しうる。
【0270】
システムプロセッサーおよびネットワーク
一般的には、本開示の機器システムに含まれるコンピューターまたはプロセッサーは、固定媒体を有するサーバーに任意選択的に接続可能な媒体またはネットワークポートから命令を読取り可能な論理装置としてさらに理解しうる。システムは、CPU、ディスクドライブ、キーボードやマウスなどのオプションの入力デバイス、およびオプションのモニターを含みうる。データ通信は、ローカル位置またはリモート位置のサーバーに対して指定の通信媒体を介して達成可能である。通信媒体は、データを送受信する任意の手段を含みうる。たとえば、通信媒体は、ネットワーク接続、無線接続、またはインターネット接続でありうる。かかる接続は、World Wide Webによる通信を提供可能である。本開示に関するデータは、かかるネットワークまたは接続を介してあるパーティーによる受信または閲覧のために伝送可能である。
【0271】
コンピュータシステムの第1のアーキテクチャー例の例示的な実施形態は、本開示の実施形態例との関連で使用可能である。コンピュータシステム例は、処理命令用のプロセッサーを含みうる。プロセッサーの例としては、限定されるものではないが、Intel Xeon(商標)プロセッサー、AMD Opteron(商標)プロセッサー、Samsung 32ビットRISC ARM 1176JZ(F)-S v1.0(商標)プロセッサー、ARM Cortex-A8 Samsung S5PC100(商標)プロセッサー、ARM Cortex-A8 AppleA4(商標)プロセッサー、Marvell PXA 930(商標)プロセッサー、または機能的に等価なプロセッサーが挙げられる。実行のマルチスレッドは並列処理に使用可能である。いくつかの実施形態では、クラスター接続の単一コンピュータシステムであるか、または複数のコンピューター、携帯電話、もしくは個人用携帯情報端末デバイスを含むネットワーク接続の分散システムであるかにかかわらず、複数のプロセッサーまたは複数のコアを備えたプロセッサーも使用可能である。
【0272】
高速キャッシュは、プロセッサーが最近使用したまたは頻繁に使用する命令またはデータに対する高速メモリーを提供するために、プロセッサーに接続または導入することが可能である。プロセッサーは、プロセッサーバスによりノースブリッジに接続可能である。ノースブリッジは、メモリーバスによりランダムアクセスメモリー(RAM)に接続され、プロセッサーによりRAMへのアクセスを管理する。ノースブリッジはまた、チップセットバスによりサウスブリッジに接続可能である。サウスブリッジは、ひいては、周辺機器用バスに接続される。周辺機器用バスは、たとえば、PCI、PCI-X、PCI Express、または他の周辺機器用バスでありうる。ノースブリッジおよびサウスブリッジはプロセッサーチップセットと呼ばれることが多く、プロセッサーとRAMと周辺機器用バス上の周辺機器要素との間のデータ転送を管理する。いくつかの代替アーキテクチャーでは、ノースブリッジの機能、個別のノースブリッジチップを使用する代わりにプロセッサー中に組込み可能である。
【0273】
システムは、周辺機器用バスに結合されたアクセラレーターカードを含みうる。アクセラレーターは、ある特定の処理を加速するためにフィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)または他のハードウェアを含みうる。たとえば、アクセラレーターは、アダプティブデータリストラクチャリングのために、または拡張セット処理で使用される代数式を評価するために、使用可能である。
【0274】
ソフトウェアおよびデータは、外部記憶装置に記憶可能であり、プロセッサーによる使用のためにRAMまたはキャッシュにロード可能である。システムは、管理システムリソース用のオペレーティングシステムを含む。オペレーティングシステムの例は、限定されるものではないが、Linux(登録商標)、Windows(登録商標)(商標)、MACOS(商標)、BlackBerry OS(商標)、iOS(商標)、および他の機能的に等価なオペレーティングシステム、さらには本発明の実施形態例に従ってデータ記憶および最適化を管理するためのオペレーティングシステムの上で動作するアプリケーションソフトを含む。
【0275】
この例では、システムはまた、ネットワークインターフェースカード(NIC)を含み、ネットワーク接続記憶装置(NAS)などの外部記憶装置および分散並列処理に使用可能な他のコンピュータシステムへのネットワークインターフェースを提供する周辺機器用バスに接続される。
【0276】
ネットワークの例示的な図は、複数のコンピュータシステム、複数の携帯電話および個人用携帯情報端末、ならびにネットワーク接続記憶装置(NAS)を含みうる。実施形態例では、システムはデータ記憶を管理し、ネットワーク接続記憶装置(NAS)に記憶されたデータに対するデータアクセスを最適化可能である。数学モデルはデータに使用し、分散並列処理コンピュータシステムならびに携帯電話および個人用携帯情報端末システムを用いて評価可能である。コンピュータシステムならびに携帯電話および個人用携帯情報端末システムはまた、ネットワーク接続記憶装置(NAS)に記憶されたデータのアダプティブデータリストラクチャリングのために並列処理を提供可能である。多種多様な他のコンピューターアーキテクチャーおよびシステムは、本発明の種々の実施形態との関連で使用可能である。たとえば、ブレードサーバーは、並列処理を提供するために使用可能である。プロセッサーブレードは、並列処理を提供するためにバックプレーンを介して接続可能である。記憶装置はまた、バックプレーンに接続可能であるか、または個別ネットワークインターフェースを介するネットワーク接続記憶装置(NAS)として存在しうる。
【0277】
いくつかの実施形態例では、プロセッサーは、個別メモリー空間を保持可能であるとともに、ネットワークインターフェースを介してバックプレーンにまたは他のプロセッサーによる並列処理のために他のコネクターにデータを伝送可能である。他の実施形態では、プロセッサーの一部または全部は、共有仮想アドレスメモリー空間を使用可能である。
【0278】
マルチプロセッサーコンピュータシステムの例示的なブロック図は、実施形態例に従って共有仮想アドレスメモリー空間を含みうる。システムは、共有メモリーサブシステムにアクセス可能な複数のプロセッサーを含みうる。システムは、メモリーサブシステム中で複数のプログラマブルハードウェアメモリーアルゴリズムプロセッサー(MAP)を組込み可能である。各MAPは、メモリーと1つ以上のフィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)とを含みうる。MAPは、設定可能な機能ユニットを提供可能であり、特定のアルゴリズムまたはアルゴリズムの一部は、それぞれのプロセッサーと緊密に連携して処理するためにFPGAに提供可能である。たとえば、MAPは、データモデルに関する代数式を評価するためにおよび実施形態例でアダプティブデータリストラクチャリングを行うために使用可能である。この例では、各MAPは、こうした目的のためにすべてのプロセッサーによりグローバルにアクセス可能である。一構成では、各MAPは、関連付けられたメモリーにアクセスするためにダイレクトメモリアクセス(DMA)を使用可能であり、それにより、それぞれのマイクロプロセッサーに依存せずにかつ非同期的に課題を実行可能になる。この構成では、MAPは、アルゴリズムのパイプライン実行および並行実行のために他のMAPに結果を直接供給可能である。
【0279】
以上のコンピューターアーキテクチャーおよびシステムは、単なる例にすぎず、一般的プロセッサー、共プロセッサー、FPGA、および他のプログラマブルロジックデバイス、システムオンチップ(SOC)、特定用途向け集積回路(ASIC)、および他の処理素子および論理素子の任意の組合せを使用するシステムを含めて、多種多様な他のコンピューター、携帯電話、および個人用携帯情報端末のアーキテクチャーおよびシステムを実施形態例との関連で使用可能である。いくつかの実施形態では、コンピュータシステムの全部または一部は、ソフトウェアまたはハードウェアで実現可能である。任意のさまざまなデータ記憶媒体は、ランダムアクセスメモリー、ハードドライブ、フラッシュメモリー、テープドライブ、ディスクアレイ、ネットワーク接続記憶装置(NAS)、ならびに他のローカルまたは分散データ記憶デバイスおよびシステムを含めて、実施形態例との関連で、使用可能である。
【0280】
実施形態例では、本開示のコンピューターサブシステムは、以上のまたは他のコンピューターアーキテクチャーおよびシステムのいずれかで実行されるソフトウェアモジュールを用いて実現可能である。他の実施形態では、システムの機能は、ファームウェア、プログラマブルロジックデバイス、たとえば、フィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)、システムオンチップ(SOC)、特定用途向け集積回路(ASIC)、または他の処理素子および論理素子で、部分的にまたは完全に実現可能である。たとえば、セットプロセッサーおよびオプティマイザーは、アクセラレーターカードなどのハードウェアアクセラレーターカードを用いてハードウェアアクセラレーションで実現可能である。
【0281】
キット
本明細書に開示されるのは、単一細胞の確率バーコーディングおよび/またはコンビナトリアルバーコーディングアッセイを行うためのキットである。キットは、本開示の任意の組成物または組成物の混合物(たとえば、任意のタイプおよび任意の数の任意のコンビナトリアルバーコード試薬)を含みうる。キットは、本開示の1つ以上のコンビナトリアルバーコード試薬を含みうる。キットは、本開示の1つ以上の確率バーコードを含みうる。キットは、1つ以上のマイクロウェルアレイを含む自立性基材(もしくはチップ)としてまたは1つ以上のフローセル内もしくはカートリッジ内にパッケージ化されて1つ以上の基材(たとえばマイクロウェルアレイ)を含みうる。キットの1つ以上の基材は、ウェル内にプレロードされたコンビナトリアルバーコード試薬および/または確率バーコード試薬を含みうる。いくつかの場合には、確率バーコード試薬は、基材のウェル内にプレロードしうるとともに、キットは、ユーザーによるウェルへの添加のためにコンビナトリアルバーコード試薬を含む。
【0282】
いくつかの場合には、キットは、コンビナトリアルバーコード試薬のセットを含みうる。コンビナトリアルバーコード試薬の2番目は、標的特異的領域(たとえば、センス鎖またはアンチセンス鎖のいずれかへの)を含む1つのコンビナトリアルバーコード試薬を含みうるとともに、他方のコンビナトリアルバーコード試薬は、標的特異的領域を含んでいなくてもよいが、すべてのコンビナトリアルバーコード試薬を一体的に結合するリンカーを含みうる(たとえば、コンビナトリアルバーコード試薬が標的核酸の一方の末端に一体的に結合されるように(図2C参照))。
【0283】
キットは、サスペンジョン内の個別の固体担体が本開示の複数の結合された確率バーコードを含む条件で、1つ以上の固体担体サスペンジョン剤を含みうる。キットは、固体担体に結合されていなくてもよい確率バーコードを含みうる。キットはシーラントを含みうる。いくつかの実施形態では、キットは、基材中へのサンプルおよび試薬のピペッティングを容易にする反応ウェルを形成するように自立性基材を取り付けるための機械的固定具をさらに含みうる。
【0284】
キットは、確率バーコーディングアッセイを行うために、たとえば、溶解緩衝液、濯ぎ緩衝液、またはハイブリダイゼーション緩衝液などの試薬をさらに含みうる。キットは、逆転写反応やプライマー伸長反応などの核酸伸長反応を行うために試薬(たとえば、酵素、プライマー、dNTP、NTP、RNアーゼ阻害剤、または緩衝液)をさらに含みうる。キットは、増幅反応によりシーケンシングライブラリーを調製するために試薬(たとえば、酵素、ユニバーサルプライマー、シークエンシングプライマー、標的特異的プライマー、または緩衝液)をさらに含みうる。キットは、分子のホモポリマーテーリング用の試薬(たとえば、ターミナルトランスフェラーゼ酵素およびdNTP)を含みうる。キットは、たとえば、本開示の任意の酵素的切断を行うための試薬(たとえば、ExoIヌクレアーゼ制限酵素)を含みうる。試薬は、基材のウェル内にプレロード可能である(たとえば、コンビナトリアルバーコード試薬)。
【0285】
キットは、シーケンシングライブラリー増幅プライマーを含みうる。キットは、本開示の第2の鎖合成プライマーを含みうる。キットは、本開示の任意のプライマー(たとえば、遺伝子特異的プライマー、ランダムマルチマー、シークエンシングプライマー、およびユニバーサルプライマー)を含みうる。
【0286】
キットは、サスペンジョン内の個別のビーズが本開示の複数の結合された確率バーコードを含む条件で、1つ以上のモールド、たとえば、基材をキャストするためにマイクロピラーのアレイを含むモールド(たとえばマイクロウェルアレイ)および1つ以上の固体担体(たとえばビーズ)を含みうる。キットは、基材(たとえば、アガロース、ヒドロゲル、PDMS、光学接着剤など)をキャストする際に使用するための材料をさらに含みうる。
【0287】
キットは、本開示の複数の結合された確率バーコードを含む固体担体がプレロードされた1つ以上の基材を含みうる。いくつかの場合には、基材のマイクロウェル1つ当たり1つの固体担体が存在しうる。いくつかの実施形態では、複数の確率バーコードは、固体担体にではなく基材の表面に直接結合しうる。こうした実施形態のいずれでも、1つ以上のマイクロウェルアレイは、自立性基材(もしくはチップ)の形態で提供しうるか、またはフローセルもしくはカートリッジに充填しうる。
【0288】
いくつかの実施形態では、キットは、1つ以上の基材が組み込まれる1つ以上のカートリッジを含みうる。いくつかの実施形態では、1つ以上のカートリッジは、サスペンジョン内の個別の固体担体が本開示の複数の結合された確率バーコードを含む条件で、1つ以上のプレロードされた固体担体をさらに含む。いくつかの実施形態では、ビーズは、カートリッジの1つ以上のマイクロウェルアレイ内にプレ分散される。いくつかの実施形態では、ビーズは、サスペンジョンの形態でカートリッジの試薬ウェル内にプレロードして貯蔵可能である。いくつかの実施形態では、1つ以上のカートリッジは、カートリッジの試薬リザーバー内にプレロードされ貯蔵された他のアッセイ試薬をさらに含む。
【0289】
キットは、一般に、本明細書に記載の方法の1つ以上を行うための説明書を含みうる。キットに含まれる説明書は、パッケージング材料に固定可能であるか、または添付文書として含みうる。説明書は典型的には文書または印刷物であるが、そのように限定されるものではない。かかる説明書を保存してそれをエンドユーザーに伝達すること可能ないずれの媒体も、本開示により企図される。かかる媒体としては、限定されるものではないが、電子記憶媒体(たとえば、磁気ディスク、テープ、カートリッジ、チップ)、光学媒体(たとえば、CD ROM)、RFタグなどが挙げられる。本明細書で用いられる場合、「説明書」という用語は、説明書を提供するインターネットサイトのアドレスを含みうる。
【0290】
デバイス
フローセル
マイクロウェルアレイ基材は、流体ハンドリングシステムの残りの部分との便利なインターフェースを提供し、かつ流体、たとえば、マイクロウェルアレイおよび/またはエマルジョンドロップレットに送達される細胞および固体担体サスペンジョン、溶解緩衝液、濯ぎ緩衝液などの交換を容易にするフローセル内にパッケージ化可能である。設計上の特徴としては、(i)細胞サンプル、固体担体サスペンジョン、または他のアッセイ試薬を導入するための1つ以上の入口ポート、(ii)バックエディーまたはデッドゾーンを最小限に抑えつつ均一な充填および効率的な流体交換を提供するように設計された1つ以上のマイクロウェルアレイチャンバー、ならびに(iii)サンプル捕集点または廃棄リザーバーに流体を送達するための1つ以上の出口ポートが挙げられうる。フローセルの設計は、1つ以上の異なる細胞サンプルが並列処理されるように、複数のマイクロウェルアレイとインターフェースをとる複数のマイクロアレイチャンバーを含みうる。フローセルの設計は、均一なフロー速度プロファイルを生成する特徴、すなわち、たとえば、チャンバー入口の近傍およびマイクロウェルアレイの上流に位置する多孔性バリヤーを「フローディフューザー」として用いて、または各アレイチャンバーを、全体として同一の全アレイ領域をカバーするが分割された入口流体ストリームが並列に流れるいくつかのサブセクションに分割することにより、マイクロウェルへの細胞およびビーズのより均一な送達を提供するようにアレイチャンバーの幅全体にわたる「プラグフロー」をさらに含みうる。いくつかの実施形態では、フローセルは、2つ以上のマイクロウェルアレイ基材を収容または導入しうる。いくつかの実施形態では、一体型マイクロウェルアレイ/フローセルアセンブリーは、システムの固定コンポーネントを構成しうる。いくつかの実施形態では、マイクロウェルアレイ/フローセルアセンブリーは装置から取外し可能でありうる。
【0291】
一般的には、フローセル設計では、流体チャネルおよびアレイチャンバーの寸法は、(i)マイクロウェルアレイへの細胞およびビーズの均一な送達を提供するように、かつ(ii)サンプルおよび試薬の消費を最小限に抑えるように、に最適化されるであろう。いくつかの実施形態では、流体チャネルの幅は50μm~20mmであろう。他の実施形態では、流体チャネルの幅は、少なくとも50μm、少なくとも100μm、少なくとも200μm、少なくとも300μm、少なくとも400μm、少なくとも500μm、少なくとも750μm、少なくとも1mm、少なくとも2.5mm、少なくとも5mm、少なくとも10mm、少なくとも20mm、少なくとも50mm、少なくとも100mm、または少なくとも150mmでありうる。さらに他の実施形態では、流体チャネルの幅は、多くとも150mm、多くとも100mm、多くとも50mm、多くとも20mm、多くとも10mm、多くとも5mm、多くとも2.5mm、多くとも1mm、多くとも750μm、多くとも500μm、多くとも400μm、多くとも300μm、多くとも200μm、多くとも100μm、または多くとも50μmでありうる。一実施形態では、流体チャネルの幅は約2mmである。流体チャネルの幅は、これらの値のいずれかにより境界付けられる任意の範囲内(たとえば、約250μm~約3mm)に含まれうる。
【0292】
いくつかの実施形態では、流体チャネルの深さは50μm~2mmでありうる。他の実施形態では、流体チャネルの深さは、少なくとも50μm、少なくとも100μm、少なくとも200μm、少なくとも300μm、少なくとも400μm、少なくとも500μm、少なくとも750μm、少なくとも1mm、少なくとも1.25mm、少なくとも1.5mm、少なくとも1.75mm、または少なくとも2mmでありうる。さらに他の実施形態では、流体チャネルの深さは、多くとも2mm、多くとも1.75mm、多くとも1.5mm、多くとも1.25mm、多くとも1mm、多くとも750μm、多くとも500μm、多くとも400μm、多くとも300μm、多くとも200μm、多くとも100μm、または多くとも50μmでありうる。一実施形態では、流体チャネルの深さは約1mmである。流体チャネルの深さは、これらの値のいずれかにより境界付けられる任意の範囲内(たとえば、約800μm~約1mm)に含まれうる。
【0293】
フローセルは、当業者に公知のさまざまな技術および材料を用いて作製しうる。たとえば、フローセルは、個別の部材として作製可能であり、続いて、マイクロウェルアレイ基材に機械的にクランプするかまたは永久的に結合することが可能である。好適な作製技術の例としては、従来の機械加工、CNC機械加工、射出成形、3Dプリンティング、レーザーカットまたはダイカットされたポリマーフィルムの1つ以上の層のアライメントおよびラミネーション、またはいくつかのマイクロ加工技術、たとえば、フォトリソグラフィーおよび湿式化学エッチング、乾式エッチング、ディープ反応性イオンエッチング、またはレーザーマイクロマシニングのいずれかが挙げられる。フローセル部を作製した後、たとえば、それをマイクロウェルアレイ基材にクランプすることにより(ガスケットを用いてもしくは用いずに)、マイクロウェルアレイ基材に機械的に結合しうるか、あるいは当業者に公知のさまざまな技術のいずれかを用いて(使用する材料の選択に依存して)、たとえば、陽極結合、加熱結合、またはさまざまな接着剤もしくは接着剤フィルムのいずれか、たとえば、エポキシ系、アクリル系、シリコーン系、UV硬化性、ポリウレタン系、もしくはシアノアクリレート系の接着剤を用いて、マイクロウェルアレイ基材に直接結合しうる。
【0294】
フローセルは、当業者に公知のさまざまな材料を用いて作製可能である。一般的には、使用する材料の選択は、使用する作製技術の選択に依存し、その逆も成り立つ。好適な材料の例としては、限定されるものではないが、シリコン、溶融シリカ、ガラス、さまざまなポリマーのいずれか、たとえば、ポリジメチルシロキサン(PDMS、エラストマー)、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、ポリカーボネート(PC)、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレン(PE)、高密度ポリエチレン(HDPE)、ポリイミド、環状オレフィンポリマー(COP)、環状オレフィンコポリマー(COC)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、エポキシ樹脂、金属(たとえば、アルミニウム、ステンレス鋼、銅、ニッケル、クロム、およびチタン)、非固着性材料、たとえば、テフロン(登録商標)(PTFE)、またはこれらの組合せ材料が挙げられる。
【0295】
カートリッジ
システムのいくつかの実施形態では、フローセルが結合されたまたは結合されていないマイクロウェルアレイは、機器システムとインターフェースをとるコンシューマブルカートリッジ内にパッケージ化しうる。カートリッジの設計上の特徴としては、(i)装置との流体接続を形成するためのまたは細胞サンプル、ビーズサスペンジョン、もしくは他のアッセイ試薬をカートリッジに手動で導入するための1つ以上の入口ポート、(ii)1つ以上のバイパスチャネル、すなわち、オーバーフィリングまたはバックフローを回避するために細胞サンプルおよびビーズサスペンジョンのセルフメータリングを行うためのもの、(iii)1つ以上の一体型マイクロウェルアレイ/フローセルアセンブリーまたはマイクロアレイ基材が配置される1つ以上のチャンバー、(iv)デバイスを通る流体フローを制御するための一体型小型ポンプまたは他の流体駆動機構、(v)プレロードされた試薬(たとえば、ビーズサスペンジョン、コンビナトリアルバーコード試薬、確率バーコード)を区画化するためのまたはデバイスを通る流体フローを制御するための一体型小型バルブ(または他の閉込め機構)、(vi)トラップされた空気の逃し通路を提供するための1つ以上のベント、(vii)1つ以上のサンプルおよび試薬廃棄リザーバー、(viii)装置との流体接続を形成するためのまたは処理サンプル捕集ポイントを提供するための1つ以上の出口ポート、(ix)機器システムを基準にして取外し可能なコンシューマブルカートリッジを再現性よく配置するためのおよび外部マグネットとマイクロウェルアレイとをごく近接した状態にできるようにアクセスを提供するための機械的インターフェースフィーチャー、(x)機器システムとの良好な熱的接触を提供するための一体型温度制御コンポーネントまたは熱インターフェース、ならびに(xi)マイクロウェルアレイの光学精査に使用するための光学インターフェースフィーチャーたとえば透明窓が挙げられうる。
【0296】
カートリッジは、1サンプル以上を並列処理するように設計可能である。カートリッジは、スタンドアロンPCRサーマルサイクラーまたはシーケンシング装置とインターフェースをとるのに好適な1つ以上の取外し可能なサンプル捕集チャンバーをさらに含みうる。カートリッジ自体は、スタンドアロンPCRサーマルサイクラーまたはシーケンシング装置とインターフェースをとるのに好適でありうる。本開示で用いられる「カートリッジ」という用語は、アッセイの実施時にサンプルおよびビーズを含有する部分の任意のアセンブリーを含むことを意味しうる。
【0297】
カートリッジは、マイクロウェル間のクロス汚染を最小限に抑えるために大分子の拡散を防止する物理的または化学的バリヤーを形成するように(または経路長および拡散時間を増加させるように)設計されたコンポーネントをさらに含みうる。かかるバリヤーの例としては、限定されるものではないが、マイクロウェルアレイへの細胞および固体担体(たとえばビーズ)の送達に使用されるサーペンタインチャネルのパターン、溶解工程またはインキュベーション工程でプレスされてマイクロウェルアレイ基材の表面と接触した状態になるリトラクタブルプラテンまたはデフォーマブルメンブレン、マイクロウェルの開口をブロックするためのより大きなビーズたとえば以上に記載のSephadexビーズの使用、またはアレイ中の各マイクロウェルを効果的に分離し区画化するための溶解工程またはインキュベーション工程でのカートリッジ内のリザーバーからの非混和性疎水性流体の放出が挙げられうる。
【0298】
カートリッジ設計では、流体チャネルおよびアレイチャンバーの寸法は、(i)マイクロウェルアレイへの細胞およびビーズの均一な送達を提供するように、かつ(ii)サンプルおよび試薬の消費を最小限に抑えるように、に最適化可能である。流体チャネルの幅は50マイクロメートル~20mmでありうる。他の実施形態では、流体チャネルの幅は、少なくとも50マイクロメートル、少なくとも100マイクロメートル、少なくとも200マイクロメートル、少なくとも300マイクロメートル、少なくとも400マイクロメートル、少なくとも500マイクロメートル、少なくとも750マイクロメートル、少なくとも1mm、少なくとも2.5mm、少なくとも5mm、少なくとも10mm、または少なくとも20mmでありうる。さらに他の実施形態では、流体チャネルの幅は、多くとも20mm、多くとも10mm、多くとも5mm、多くとも2.5mm、多くとも1mm、多くとも750マイクロメートル、多くとも500マイクロメートル、多くとも400マイクロメートル、多くとも300マイクロメートル、多くとも200マイクロメートル、多くとも100マイクロメートル、または多くとも50マイクロメートルでありうる。流体チャネルの幅は約2mmである。流体チャネルの幅は、これらの値のいずれかにより境界付けられる任意の範囲内(たとえば、約250μm~約3mm)に含まれうる。
【0299】
カートリッジ中の流体チャネルは深さを有しうる。カートリッジ設計では、流体チャネルの深さは50マイクロメートル~2mmでありうる。流体チャネルの深さは、少なくとも50マイクロメートル、少なくとも100マイクロメートル、少なくとも200マイクロメートル、少なくとも300マイクロメートル、少なくとも400マイクロメートル、少なくとも500マイクロメートル、少なくとも750マイクロメートル、少なくとも1mm、少なくとも1.25mm、少なくとも1.5mm、少なくとも1.75mm、または少なくとも2mmでありうる。流体チャネルの深さは、多くとも2mm、多くとも1.75mm、多くとも1.5mm、多くとも1.25mm、多くとも1mm、多くとも750マイクロメートル、多くとも500マイクロメートル、多くとも400マイクロメートル、多くとも300マイクロメートル、多くとも200マイクロメートル、多くとも100マイクロメートル、または多くとも50マイクロメートルでありうる。流体チャネルの深さは約1mmである。流体チャネルの深さは、これらの値のいずれかにより境界付けられる任意の範囲内(たとえば、約800マイクロメートル~約1mm)に含まれうる。
【0300】
カートリッジは、当業者に公知のさまざまな技術および材料を用いて作製可能である。一般的には、カートリッジは、一連の個別のコンポーネント部として作製され、続いて、いくつかの機械的アセンブリーまたは結合技術のいずれかを用いてアセンブルされよう。好適な作製技術の例としては、限定されるものではないが、従来の機械加工、CNC機械加工、射出成形、サーモフォーミング、および3Dプリンティングが挙げられる。カートリッジコンポーネントを作製した後、ネジ、クリップなどを用いて機械的にアセンブルしうるか、あるいはさまざまな技術のいずれか(使用する材料の選択に依存して)、たとえば、加熱結合/溶接を用いて、またはさまざまな接着剤もしくは接着剤フィルムのいずれか、たとえば、エポキシ系、アクリル系、シリコーン系、UV硬化性、ポリウレタン系、またはシアノアクリレート系の接着剤を用いて、永久的に結合しうる。
【0301】
カートリッジコンポーネントは、いくつかの好適な材料のいずれか、たとえば、限定されるものではないが、シリコン、溶融シリカ、ガラス、さまざまなポリマーのいずれか、たとえば、ポリジメチルシロキサン(PDMS、エラストマー)、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、ポリカーボネート(PC)、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレン(PE)、高密度ポリエチレン(HDPE)、ポリイミド、環状オレフィンポリマー(COP)、環状オレフィンコポリマー(COC)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、エポキシ樹脂、非固着性材料たとえばテフロン(登録商標)(PTFE)、金属(たとえば、アルミニウム、ステンレス鋼、銅、ニッケル、クロム、およびチタン)、またはそれらの任意の組合せを用いて作製可能である。
【0302】
カートリッジの入口および出口の特徴は、装置との便利で漏れのない流体接続を提供するように設計可能であるか、またはカートリッジにもしくはカートリッジからサンプルおよび試薬を手動ピペッティングするための開リザーバーとして機能しうる。入口および出口ポートのコネクターの便利な機械設計の例としては、限定されるものではないが、ネジ切りコネクター、ルアーロックコネクター、ルアースリップまたは「スリップティップ」コネクター、プレスフィットコネクターなどが挙げられうる。カートリッジの入口および出口ポートは、キャップ、バネ式カバーもしくはクロージャー、またはカートリッジを装置内に配置したときに開口もしくは穿孔を生じうるとともに、保存時に内部カートリッジ表面の汚染を防止する役割を果たすか、またはカートリッジを装置から取り外したときに流体が流出するのを防止する、ポリマーメンブレン、をさらに含みうる。カートリッジの1つ以上の出口ポートは、スタンドアロンPCRサーマルサイクラーまたはシーケンシング装置とインターフェースをとるのに好適な取外し可能なサンプル捕集チャンバーをさらに含みうる。
【0303】
カートリッジは、デバイスを通る流体フローを制御するための一体型小型ポンプまたは他の流体駆動機構を含みうる。好適な小型ポンプまたは流体駆動機構の例としては、限定されるものではないが、電気機械式もしくは空気圧式作動小型シリンジもしくはプランジャー機構、空気圧式作動もしくは外部ピストン式作動メンブレンダイヤフラムポンプ、空気圧式作動試薬パウチもしくはブラダー、または電気浸透式ポンプが挙げられうる。
【0304】
カートリッジは、プレロードされた試薬を区画化するためのまたはデバイスを通る流体フローを制御するための小型バルブを含みうる。好適な小型バルブの例としては、限定されるものではないが、溶融もしくは溶解可能なワックスもしくはポリマープラグまたは穿孔を形成可能なポリマーメンブレンを用いて作製されたワンショット「バルブ」、デフォーマブルメンブレンと空気圧、磁気、電磁、もしくは電気機械(ソレノイド)アクチュエーションとを用いて作製されたピンチバルブ、デフォーマブルメンブレンフラップを用いて作製されたワンウェイバルブ、および小型ゲートバルブが挙げられうる。
【0305】
カートリッジは、トラップされた空気の逃し通路を提供するベントを含みうる。ベントは、たとえば、空気のキャピラリーウィッキングを可能にするが水の浸透をブロックするポリジメチルシロキサン(PDMS)または他の疎水性材料のポーラスプラグを用いて、さまざまな技術により作製しうる。
【0306】
カートリッジの機械的インターフェースフィーチャーは、容易に取外し可能であるが機器システムを基準にしてカートリッジのきわめて正確かつ繰返し可能な配置を提供可能である。好適な機械的インターフェースフィーチャーとしては、限定されるものではないが、アライメントピン、アライメントガイド、メカニカルストップなどが挙げられうる。機械設計フィーチャーとしては、外部機器、たとえば、マグネットまたは光学コンポーネントをマイクロウェルアレイチャンバーにごく近接させるレリーフフィーチャーを含みうる。
【0307】
カートリッジはまた、外部温度制御モジュールと対をなす温度制御コンポーネントまたは熱インターフェースフィーチャーを含みうる。好適な温度制御エレメントの例としては、限定されるものではないが、抵抗加熱エレメント、小型赤外発光源、ペルティエ加熱または冷却装置、ヒートシンク、サーミスター、熱電対などが挙げられる。熱インターフェースフィーチャーは、良好な熱導体(たとえば、銅、金、銀など)の材料から作製可能であり、外部加熱ブロックまたは冷却ブロックとの良好な熱接触が可能な1つ以上のフラット表面を含みうる。
【0308】
カートリッジは、マイクロウェルアレイの光学イメージングまたは分光学的精査に使用するための光学インターフェースフィーチャーを含みうる。カートリッジは、光学透明ウィンドウを含みうる。たとえば、マイクロウェル基材自体またはマイクロウェルアレイに対向するフローセルもしくはマイクロアレイチャンバーの側であり、マイクロウェルアレイをプローブするのに使用されるイメージングまたは分光技術のスペクトル要件を満たす材料から作製される。好適な光学ウィンドウ材料の例としては、限定されるものではないが、ガラス、溶融シリカ、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、ポリカーボネート(PC)、環状オレフィンポリマー(COP)、または環状オレフィンコポリマー(COC)が挙げられうる。
【0309】
以上に記載の実施形態の少なくともいくつかでは、実施形態で使用される1つ以上のエレメントは、他の実施形態で互換的に使用可能である。ただし、かかる交換が技術的に実現可能である場合に限る。特許請求された主題の範囲から逸脱することなく、以上に記載の方法および構造に種々の他の省略、追加、および変更を行いうることは、当業者であれば分かるであろう。かかる変更および変化はすべて、添付の特許請求の範囲に規定される主題の範囲内に含まれることが意図される。
【0310】
本明細書に記載の実質的に任意の複数形および/または単数形の用語の使用に関連して、文脈上および/または適用上適切であれば、当業者は複数形から単数形へおよび/または単数形から複数形への変換が可能である。明確にするために種々の単数形/複数形の入替えを本明細書に明示的に記述しうる。本明細書および添付の特許請求の範囲で用いられる場合、とくに文脈上明確に規定されていない限り、単数形の「a」、「an」、および「the」には、複数の参照語が包含される。本明細書での「or(または)」の意味はいずれも、とくに明記されていない限り、「and/or(および/または)」を包含することが意図される。
【0311】
一般的には、本明細書とくに添付の特許請求の範囲(たとえば添付の特許請求の範囲の本文)で用いられる用語は「オープン」用語であることが一般に意図されることは当業者であれば理解されよう(たとえば、「including(~を含む)」という用語は「~を含むがこれらに限定されるものではない」と解釈すべきであり、「having(~を有する)」という用語は「少なくとも~を有する」と解釈すべきであり、「includes(~を含む)」という用語は「~を含むがこれらに限定されるものではない」と解釈すべきであるなど)。さらに、導入クレームレシテーションの特定数が意図される場合、かかる意図は請求項で明示的にリサイトされ、かかるレシテーションの不在下ではかかる意図は存在しないことは当業者であれば理解されようたとえば、理解の一助として、以下の添付の特許請求の範囲は、クレームレシテーションを導入するために導入語句「at least one(少なくとも1つ)」および「one or more(1つ以上)」の使用を含みうる。しかしながら、かかる語句が用いられたとしても、不定冠詞「a」または「an」によるクレームレシテーションの導入が、かかる導入クレームレシテーションを含む任意の特定の請求項を、一方のかかるレシテーションを含む実施形態のみに限定することを意味するものと解釈すべきでない。たとえ同一の請求項が導入語句「one or more(1つ以上)」または「at least one(少なくとも1つ)」と不定冠詞たとえば「a」または「an」とを含む場合でさえも、そのように解釈すべきでない(たとえば、「a」および/または「an」は「at least one(少なくとも1つ)」または「one or more(1つ以上)」を意味するものと解釈すべきである)。定冠詞を用いてクレームレシテーションを導入する場合にも、同じことが当てはまる。そのほかに、たとえ特定数の導入クレームレシテーションが明示的にリサイトされたとしても、かかるレシテーションは少なくともリサイトされた数を意味すると解釈すべきであることは当業者であれば分かるであろう(たとえば、「2つのレシテーション」という他の修飾語を含まないベアのレシテーションは、少なくとも2つのレシテーションまたは2つ以上レシテーションを意味する)。さらに、「A、B、およびCの少なくとも1つ」に類似した条件が用いられる場合、一般的には、かかる構成は当業者がその条件を理解する意味であることが意図される(たとえば、「A、B、およびCの少なくとも1つを有する系」は、限定されるものではないが、A単独、B単独、C単独、AとBの両方、AとCの両方、BとCの両方、および/またはAとBとCの全部などを有する系を含であろう)。「A、B、またはCの少なくとも1つなど」に類似した条件が用いられる場合、一般的には、かかる構成は当業者がその条件を理解する意味であることが意図される(たとえば、「A、B、またはCの少なくとも1つを有する系」は、限定されるものではないが、A単独、B単独、C単独、AとBの両方、AとCの両方、BとCの両方、および/またはAとBとCの全部などを有する系を含であろう)。さらに、2つ以上の代替用語を表す実質上任意の選言的な語および/または語句は、明細書、請求項、または図面にかかわらず、用語の1つ、用語のいずれか、または用語の両方を含む可能性が企図されると理解すべきであることは当業者であれば理解されよう。たとえば、「AまたはB」という語句は「A」または「B」または「AおよびB」の可能性を含むものと理解されよう。
【0312】
そのほかに、本開示の特徴または態様がマーカッシュグループにより記述される場合、それにより、本開示は、マーカッシュグループの任意の個別のメンバーまたはメンバーのサブグループにより記述されることは当業者であれば分かるであろう。
【0313】
当業者であれば理解されるであろうが、あらゆる目的で、たとえば、明細書の提供に関して、本明細書に開示された範囲はすべて、あらゆる可能なサブ範囲およびそのサブ範囲の組合せをも包含する。いずれの列挙された範囲も、十分に記述されたものとしてかつその範囲が少なくとも2等分、3等分、4等分、5等分、10等分などされうるものとして容易に認識可能である。たとえば、限定されるものではないが、本明細書で考察した各範囲は、下3分の1、中3分の1、上3分の1に容易に分解可能である。同様に、当業者であれば理解されるであろうが、「~まで」、「少なくとも~」、「~超」、「~未満」などの表現はすべて、リサイトされた数を含み、以上で考察したように後続的にサブ範囲に分解可能な範囲を意味する。最終的に、当業者であれば理解されるであろうが、範囲は各個別のメンバーを含む。したがって、たとえば、1~3個の物品を有するグループは、1、2、または3個の物品を有するグループを意味する。同様に、1~5個の物品を有するグループは、1、2、3、4、または5個の物品を有するグループを意味し、他も同様である。
【0314】
種々の態様および実施形態を本明細書に開示してきたが、他の態様および実施形態は当業者には自明であろう。本明細書に開示される種々の態様および実施形態は、例示を目的としたものであり、限定を意図したものではなく、真の範囲および趣旨は、以下の特許請求の範囲により示される。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
【配列表】
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