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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-21
(45)【発行日】2024-07-01
(54)【発明の名称】車両用シートスライド装置
(51)【国際特許分類】
   B60N 2/08 20060101AFI20240624BHJP
【FI】
B60N2/08
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2018146402
(22)【出願日】2018-08-03
(65)【公開番号】P2020019442
(43)【公開日】2020-02-06
【審査請求日】2021-07-05
【審判番号】
【審判請求日】2022-12-23
(73)【特許権者】
【識別番号】000241500
【氏名又は名称】トヨタ紡織株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】古藤 正稔
【合議体】
【審判長】平城 俊雅
【審判官】鎌田 哲生
【審判官】尾崎 和寛
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-214267(JP,A)
【文献】特開2014-166823(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60N 2/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
上方にシートを支持するアッパレールと、
前記アッパレールを相対移動可能に支持するロアレールと、
前記ロアレールに対して車両前後方向に前記アッパレールの相対移動を規制するロック機構と、
伝達部材を介して入力される操作力に基づき前記ロック機構をアンロック動作させることにより前記アッパレールの相対移動を許容するロック解除機構と、を備え、
前記ロック解除機構は、
前記伝達部材が接続される入力レバーと、
前記操作力に基づき回動した前記入力レバーに押圧されて回動することにより前記ロック機構のアンロック要素を押圧して該ロック機構をアンロック動作させる解除レバーと、
を有し、
前記解除レバーは、
前記アッパレールの上に配置される支軸に回転可能に支持され、かつ、
前記入力レバーに向かって前記アッパレールの長手方向に延びる長手方向延伸部と、前記長手方向延伸部の上端部に連続して前記アッパレールの幅方向に延びる幅方向延伸部と、前記長手方向延伸部から前記幅方向に離間した前記幅方向延伸部の先端部から下方に直線的に延びる上下方向延伸部が一体に設けられる構造を有するとともに、前記幅方向延伸部が上側から前記入力レバーに押圧されることにより、前記上下方向延伸部が押圧位置まで移動することによって前記アンロック要素を押圧するように構成され、
前記上下方向延伸部が前記アンロック要素を押圧しない状態である初期位置に前記解除レバーが位置するときにおいて、前記上下方向延伸部は上下方向に沿うように配置され、
前記上下方向延伸部が前記押圧位置に位置するときにおいて、前記上下方向延伸部は、前記上下方向延伸部の延びる方向と前記アンロック要素の延びる方向との間の角度がより直角に近い状態になるように、配置され、
前記上下方向延伸部において前記アンロック要素を押圧する先端部は、丸まった形状を有する、
車両用シートスライド装置。
【請求項2】
請求項1に記載の車両用シートスライド装置において、
前記アッパレールは、該アッパレールの幅方向に対向する一対の側壁部と、該両側壁部を接続する上壁部と、を有するものであって、
前記ロック解除機構は、前記上壁部に設けられた挿通孔を介して前記解除レバーの前記上下方向延伸部が前記上壁部の下方に位置する前記アンロック要素を押圧するように構成されること、を特徴とする車両用シートスライド装置。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の車両用シートスライド装置において、
前記ロック解除機構は、前記入力レバー及び前記解除レバーを回動可能に支持して前記アッパレールに固定される支持ブラケットを備えること、
を特徴とする車両用シートスライド装置。
【請求項4】
請求項3に記載の車両用シートスライド装置において、
前記支持ブラケットは、前記解除レバーの前記支軸を支える支持壁を備えるとともに、
前記解除レバーは、前記幅方向延伸部が前記入力レバーに押圧される位置を前記支持壁の第1面側に配置する状態で、該第1面の裏側となる前記支持壁の第2面側で軸支されること、を特徴とする車両用シートスライド装置。
【請求項5】
請求項1~請求項4の何れか一項に記載の車両用シートスライド装置において、
前記ロック解除機構は、
前記入力レバーに押圧されることにより前記解除レバーが回動する方向とは反対方向に該解除レバーを付勢する付勢部材を備えるとともに、
前記伝達部材を介した前記操作力の入力がない場合に、前記付勢部材の付勢力に基づき回動する前記解除レバーが前記入力レバーを押圧するように構成されること、
を特徴とする車両用シートスライド装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用シートスライド装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
通常、車両用のシートスライド装置は、上方にシートを支持するアッパレールと、このアッパレールを相対移動可能に支持するロアレールと、そのロアレールに対するアッパレールの相対移動を規制するロック機構と、を備えている。また、このようなシートスライド装置には、伝達部材を介して入力される操作力に基づいて、そのロック機構をアンロック動作させることが可能なロック解除機構を備えるものがある。例えば、特許文献1に記載のロック解除機構は、リクライニング装置と連動したシートバックの前倒し操作に基づいて、その操作力を伝達するワイヤーケーブルに牽引されることにより回動するレバー部材を備えている。そして、このレバー部材がロック機構のアンロック要素(ロック部材)を押圧して当該ロック機構をアンロック動作させることにより、そのロアレールに対するアッパレールの相対移動が許容される構成になっている。
【0003】
また、車両用のシートにおいては、その操作性の改善が重要な課題の一つとなっている。そこで、例えば、特許文献2に開示があるように、ワイヤーケーブルに牽引されて回動する第1レバーと、この第1レバーに押圧されて回動する第2レバーとを組み合わせることにより、そのロック解除機構を形成する構成が考えられる。即ち、このような構成を採用してリンク比を最適化することにより、より小さな操作力で安定的にアンロック要素を押圧することができる。そして、これにより、そのロック解除機構を用いてロック機構をアンロック動作させる際の操作性を改善することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2018-52207号公報
【文献】特開2006-44532号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記のように2つのレバーが並ぶことで、より大きな設置スペースが必要となる。そして、これにより、そのアッパレールに対する搭載性が低下するおそれがあることから、この点において、なお改善の余地を残すものとなっていた。
【0006】
本発明は、上記問題点を解決するためになされたものであって、その目的は、優れた操作性を確保しつつ、ロック解除機構の小型化を図ることのできる車両用シートスライド装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決する車両用シートスライド装置は、上方にシートを支持するアッパレールと、前記アッパレールを相対動可能に支持するロアレールと、前記アッパレールの相対移動を規制するロック機構と、伝達部材を介して入力される操作力に基づき前記ロック機構をアンロック動作させることにより前記アッパレールの相対移動を許容するロック解除機構と、を備え、前記ロック解除機構は、前記伝達部材が接続される入力レバーと、前記操作力に基づき回動した前記入力レバーに押圧されて回動することにより前記ロック機構のアンロック要素を押圧して該ロック機構をアンロック動作させる解除レバーと、を有し、前記解除レバーは、前記入力レバーに向かって前記アッパレールの長手方向に延びる長手方向延伸部に対して、前記アッパレールの幅方向に延びる幅方向延伸部及び上下方向に延びる上下方向延伸部が一体に設けられるとともに、前記幅方向延伸部が上側から前記入力レバーに押圧されることにより、前記上下方向延伸部が前記アンロック要素を押圧するように構成される。
【0008】
上記構成によれば、その入力レバーに押圧された解除レバーが回動してロック機構のアンロック要素を押圧する構成により、優れた操作性を確保することができる。また、アッパレールの長手方向に並ぶ入力レバーの支軸と解除レバーの支軸との間に、その入力レバーが解除レバーを押圧する位置と、この解除レバーがロック機構のアンロック要素を押圧する位置とが集約して配置される。そして、これにより、アッパレールの長手方向におけるロック解除機構の寸法を短縮化することができる。
【0009】
更に、その長手方向延伸部に対して幅方向延伸部及び上下方向延伸部が一体に設けられた構造を活かして、解除レバーの配置自由度を高めることができる。そして、これにより、ロック解除機構の小型化と併せて、そのアッパレールに対する搭載性を更に向上させることができる。
【0010】
また、解除レバーの幅方向延伸部を入力レバーに対する被押圧部にすることで、安定的に、この入力レバーが解除レバーを押圧することができる。更に、上下方向延伸部をアンロック要素に対する押圧部とすることで、その解除レバーがアンロック要素を押圧する際の当接角度(摩擦角)を、より直角に近い状態に設定することができる。そして、これにより、押圧時の摩擦によりアンロック要素に対して解除レバーが固着する現象(所謂食い込み)を抑制することができる。
【0011】
上記課題を解決する車両用シートスライド装置において、前記アッパレールは、該アッパレールの幅方向に対向する一対の側壁部と、該両側壁部を接続する上壁部と、を有するものであって、前記ロック解除機構は、前記上壁部に設けられた挿通孔を介して前記解除レバーの前記上下方向延伸部が前記上壁部の下方に位置する前記アンロック要素を押圧するように構成されることが好ましい。
【0012】
上記構成によれば、入力レバー及び解除レバーをアッパレールの外部に配置する態様で、容易に、そのロック解除機構をアッパレールに組み付けることができる。更に、アッパレールの上壁部に設けられた孔部に対し、解除レバーの上下方向延伸部が挿入される構成とすることで、その孔部の大きさを最小限に留めることができる。そして、これにより、アッパレールの剛性を好適に維持することができる。
【0013】
上記課題を解決する車両用シートスライド装置において、前記解除レバーは、前記長手方向延伸部の上端部に連続して前記幅方向延伸部が設けられるとともに、前記長手方向延伸部から離間した前記幅方向延伸部の先端部に連続して前記上下方向延伸部が設けられた構造を有することが好ましい。
【0014】
上記構成によれば、例えば、板材を折曲加工する等によって、容易に、その長手方向延伸部に対して幅方向延伸部及び上下方向延伸部が一体に設けられた解除レバーを形成することができる。更に、この解除レバーをアッパレールの長手方向からみた場合、これらの長手方向延伸部、幅方向延伸部及び上下方向延伸部が、下側に開口した略コ字形状を形成する。そして、この形状を解除レバーの配置に利用することで、ロック解除機構の小型化と併せて、そのアッパレールに対する搭載性を更に向上させることができる。
【0015】
上記課題を解決する車両用シートスライド装置において、前記ロック解除機構は、前記入力レバー及び前記解除レバーを回動可能に支持して前記アッパレールに固定される支持ブラケットを備えることが好ましい。
【0016】
上記構成によれば、容易に、アッパレールに対してロック解除機構を組み付けることができる。
上記課題を解決する車両用シートスライド装置において、前記支持ブラケットは、前記解除レバーの支軸を支える支持壁を備えるとともに、前記解除レバーは、前記幅方向延伸部が前記入力レバーに押圧される位置を前記支持壁の第1面側に配置する状態で、該第1面の裏側となる前記支持壁の第2面側で軸支されることが好ましい。
【0017】
上記構成によれば、入力レバーに幅方向延伸部が押圧されたとき、その解除レバーがアッパレールの幅方向に傾き難くなる。そして、これにより、解除レバーが円滑に回動することで、ロック解除機構の安定した動作を確保することができる。
【0018】
上記課題を解決する車両用シートスライド装置において、前記ロック解除機構は、前記入力レバーに押圧されることにより前記解除レバーが回動する方向とは反対方向に該解除レバーを付勢する付勢部材を備えるとともに、前記伝達部材を介した前記操作力の入力がない場合に、前記付勢部材の付勢力に基づき回動する前記解除レバーが前記入力レバーを押圧するように構成されることが好ましい。
【0019】
上記構成によれば、入力レバーを初期位置に復帰させる戻りバネ等の構成を省いて部品点数の削減を図ることができる。更に、その付勢部材の付勢力に基づき、これらの入力レバー及び解除レバーが互いに当接する状態に保持される。そして、これにより、そのガタツキによる音の発生を抑制することができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、優れた操作性を確保しつつ、ロック解除機構の小型化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】車両のシート及びシートスライド装置の概略構成図。
図2】シートスライド装置の断面図(図4(a)におけるII-II断面)。
図3】シートスライド装置の分解斜視図。
図4】(a)は、シートスライド装置の断面図(図2におけるIVa-IVa断面)、(b)は、シートスライド装置の底面図。
図5】シートスライド装置の断面図(図4(a)におけるV-V断面、ロック状態)。
図6】シートスライド装置の断面図(図4(a)におけるV-V断面、アンロック状態)。
図7】ロック解除機構の側面図。
図8】ロック解除機構の平面図。
図9】ロック解除機構の正面図(車両後方視)。
図10】ロック解除機構の分解斜視図。
図11】ロック解除機構の斜視図。
図12】(a)は、解除レバーの側面図、(b)は、正面図、(c)は、平面図。
図13】(a)~(c)は、ロック解除機構の動作説明図(a:初期位置、b:中間位置、c:アンロック位置)。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、車両用シートスライド装置に関する一実施形態を図面に従って説明する。
図1に示すように、車両用のシート1は、シートクッション2と、このシートクッション2の後端部に対して傾動自在に設けられたシートバック3と、を備えている。また、車両の床部4には、車両前後方向(図1中、左右方向)に延びる左右一対のロアレール5が設けられている。尚、説明の便宜上、図1及び以下に示す各図中には、その片側のみを示すものとする。更に、これら各ロアレール5には、それぞれ、その延伸方向(長手方向)に沿って当該ロアレール5上を相対移動することが可能なアッパレール6が装着されている。そして、シート1は、これら各アッパレール6の上方に支持されている。
【0023】
即ち、本実施形態のシート1が設置される車両においては、これらのロアレール5及びアッパレール6によってシートスライド装置10が形成されている。そして、このシートスライド装置10の機能を利用することにより、車両前後方向におけるシート1の位置調整、つまりは、そのスライド位置を調整することが可能になっている。
【0024】
詳述すると、図2及び図3に示すように、ロアレール5は、車両の床部4(図1参照)に対する固定部となる略平板状の底壁部11を備えている。また、底壁部11の幅方向(図2中、左右方向)両端には、それぞれ外壁部12が立設されている。更に、これら各外壁部12の上端(図2中、上側の端部)には、それぞれ幅方向内側に向かって延びるフランジ状の上壁部13が形成されている。そして、これら各上壁部13の先端には、それぞれ下側に向かって折り返された内壁部14が形成されている。
【0025】
一方、アッパレール6は、幅方向に対向する一対の側壁部15を備えている。また、アッパレール6は、これらの両側壁部15間を接続する板状の上壁部16を備えている。そして、本実施形態のアッパレール6は、これらの両側壁部15及び上壁部16が形成する断面略コ字形状の本体部17を、ロアレール5の両内壁部14間に配置する状態で、そのロアレール5に組み付けられる構成になっている。
【0026】
また、本実施形態のアッパレール6は、各側壁部15の下端から幅方向外側に向かって折り返された折返部18を備えている。そして、その折返部18が、ロアレール5を構成する外壁部12、上壁部13及び内壁部14に囲まれた空間内に配置されることにより、そのロアレール5に対する上方及び幅方向の相対移動が規制されるようになっている。
【0027】
尚、上記のように幅方向に対向するロアレール5の外壁部12とアッパレール6の折返部18との間には、図示しないボール状の転動体が介在されている。そして、本実施形態のシートスライド装置10においては、これらの転動体がロアレール5の外壁部12及びアッパレール6の折返部18に摺接して転動することにより、そのロアレール5に対するアッパレール6の円滑な相対移動が確保されている。
【0028】
また、図3図6に示すように、本実施形態のシートスライド装置10は、ロアレール5に対するアッパレール6の相対移動を規制し、及びその規制を解除することが可能なロック機構20を備えている。
【0029】
詳述すると、本実施形態のロアレール5は、その長手方向(図4中、左右方向、図5及び図6中、紙面に直交する方向)に並ぶ複数の係合溝21を備えている。本実施形態のロアレール5において、これらの各係合溝21は、その上壁部13の先端から下側に向かって延びる内壁部14の下端部分をスリット状に切り欠く態様で等間隔に設けられている。そして、本実施形態のロック機構20は、アッパレール6に支持された状態で、これらの各係合溝21に係合するロックバネ22を備えている。
【0030】
具体的には、本実施形態のロックバネ22は、線材を二つ折りにする態様で形成された一対の線バネ部25を有している。また、このロックバネ22は、これらの各線バネ部25がアッパレール6の長手方向に延びる態様で、その本体部17の内側に配置されている。更に、各線バネ部25には、それぞれ、略直角に複数回折り曲げられたクランク状の折曲部26が設けられている。そして、本実施形態のロックバネ22は、これらの折曲部26が、そのロアレール5側に設けられた各係合溝21に係合する構成になっている。
【0031】
さらに詳述すると、図4(a)(b)に示すように、本実施形態のアッパレール6は、その本体部17の内側に配置されたロックバネ22の各線バネ部25を下側から支える複数の係止部27を備えている。尚、本実施形態のアッパレール6において、これらの各係止部27は、それぞれ、アッパレール6の各側壁部15を部分的に切り起し、そのアッパレール6の幅方向内側、つまりはアッパレール6の断面コ字形状内に折り曲げることにより形成されている。
【0032】
また、図3図6に示すように、本実施形態のロックバネ22は、その各線バネ部25に設けられた折曲部26に、それぞれ、アッパレール6の幅方向に延びる複数(本実施形態では4本)の幅方向延伸部26xを有している。そして、本実施形態のアッパレール6は、その各側壁部15及び折返部18の下側部分をスリット状に切り欠く態様で設けられた複数(本実施形態では4本)の挿通孔28を備えている。
【0033】
即ち、図4及び図5に示すように、本実施形態のロックバネ22は、その各線バネ部25の折曲部26が形成する複数の幅方向延伸部26xを、それぞれ、そのアッパレール6に設けられた各挿通孔28の内側に配置する状態で、このアッパレール6に保持される。更に、このロックバネ22は、その各挿通孔28を介してアッパレール6の本体部17から幅方向外側に突出した各幅方向延伸部26xが、それぞれ、ロアレール5側に設けられた各係合溝21内に配置される。そして、本実施形態のロック機構20は、これにより、アッパレール6に保持されたロックバネ22がロアレール5側の各係合溝21に係合することで、その長手方向に沿ったロアレール5に対するアッパレール6の相対移動、つまりはシート1のスライド動作を規制する構成になっている。
【0034】
また、図3図6に示すように、本実施形態のロック機構20は、アッパレール6の長手方向に延びる長尺略棒状の外形を有したアンロックレバー30を備えている。更に、本実施形態のロック機構20は、シート1の前方に配置された状態で、このアンロックレバー30に接続されるループハンドル31を備えている(図1参照)。そして、本実施形態のロック機構20は、このループハンドル31に入力された操作力をアンロックレバー30を介してロックバネ22に伝達することにより、そのロアレール5側の各係合溝21に対するロックバネ22の係合を解除させる構成になっている。
【0035】
詳述すると、図4(a)に示すように、本実施形態のアンロックレバー30は、車両前方側(図4中、左側)に配置されるアッパレール6の第1端部6a側において、その本体部17の内側に配置されたロックバネ22に対して上方から重なる態様で設けられている。
【0036】
また、本実施形態のアンロックレバー30は、アッパレール6の上壁部16に対して下側(図4(a)中、下側)から当接することにより、このアンロックレバー30の回動支点30xを形成する凸状部35を有している。更に、アッパレール6の第1端部6a側に配置されたアンロックレバー30の第1端部30aには、そのアッパレール6の第1端部6aから本体部17の内側に挿入されたループハンドル31の挿入部31xが連結されるようになっている。そして、本実施形態のアンロックレバー30は、この状態において、その車両後方側に位置する第2端部30bが、ロックバネ22の各線バネ部25に設けられた折曲部26の上方に配置される構成になっている。
【0037】
即ち、本実施形態のロック機構20は、ループハンドル31を引き上げることにより、このループハンドル31に連結されたアンロックレバー30の第1端部30aが上方移動する態様で、その回動支点30x周りにアンロックレバー30が回動する(図4中、時計回り方向)。更に、図6に示すように、この回動により下方移動したアンロックレバー30の第2端部30bが、その各線バネ部25の折曲部26に当接する状態でロックバネ22を押し下げる。そして、本実施形態のロック機構20は、これにより、ロックバネ22が撓むことによって、そのロアレール5側の各係合溝21に対するロックバネ22の係合が解除される構成になっている。
【0038】
つまり、本実施形態のシートスライド装置10は、上記のように構成されたロック機構20の機能を利用して、ループハンドル31の引き上げ状態を保持することにより、そのシート1のスライド位置を調整することが可能になる。そして、利用者が、このループハンドル31の引き上げ操作をやめることによって、そのシート1を所望のスライド位置に固定することが可能になっている。
【0039】
(ロック解除機構)
次に、本実施形態のシートスライド装置10に設けられたロック解除機構について説明する。
【0040】
図1に示すように、本実施形態のシートスライド装置10には、シート1に設けられた操作部38が操作されることにより、そのリクライニング装置(リクライナ)39と連動して、上記ロック機構20をアンロック動作させるロック解除機構40が設けられている。
【0041】
具体的には、本実施形態のシート1には、シートクッション2の後方下側となる位置に、その操作部38となるフットレバー41が設けられている。更に、本実施形態のシート1は、このフットレバー41が操作されることにより、リクライニング装置39がシートバック3を前方に傾倒させる。更に、フットレバー41に入力された操作力は、ワイヤーケーブル42を介することにより、そのシートスライド装置10に設けられたロック解除機構40に伝達される。そして、本実施形態のシート1においては、これにより、そのシートバック3を前倒した状態でシート1のスライド位置を調整可能なウォークイン機能が実装されている。
【0042】
詳述すると、図7図11に示すように、本実施形態のロック解除機構40は、上記ワイヤーケーブル42を介して入力される操作力に基づき回動する入力レバー51と、この入力レバー51に押圧されて回動することによりロック機構20をアンロック動作させる解除レバー52と、を備えている。そして、本実施形態のロック解除機構40は、これらの入力レバー51及び解除レバー52を回動可能に支持する状態で、そのアッパレール6に固定される支持ブラケット53を備えている。
【0043】
具体的には、本実施形態の支持ブラケット53は、アッパレール6の上壁部16に対して上側(図7及び図9中、上側)から固定される略平板状の基部54と、この基部54の一端側に立設された支持壁55,56と、を備えている。尚、本実施形態のシートスライド装置10において、この支持ブラケット53は、金属の板材を加工することにより形成されている。また、本実施形態の支持ブラケット53は、これらの各支持壁55,56を厚み方向(図8中、上下方向、図9中、左右方向)に貫通する孔部57,58を有している。そして、これらの各孔部57,58には、それぞれ、その入力レバー51及び解除レバー52の支軸51x,52xとなる軸部材(ヒンジピン)61,62が嵌着される構成になっている。
【0044】
即ち、本実施形態の入力レバー51及び解除レバー52は、それぞれ、これらの軸部材(ヒンジピン)61,62が挿通される挿通孔63,64を有している。そして、本実施形態の支持ブラケット53は、これにより、その支持壁55に支えられた軸部材61が形成する支軸51x回りに入力レバー51が回動可能に軸支され、支持壁56に支えられた軸部材62が形成する支軸52x回りに解除レバー52が回動可能に軸支される構成になっている。
【0045】
また、本実施形態の支持ブラケット53は、これらの各支持壁55,56に支持された入力レバー51及び解除レバー52が、アッパレール6の長手方向(図7及び図8中、左右方向、図9中、紙面に直交する方向)、つまりは車両前後方向に並ぶ状態で、その基部54がアッパレール6の上壁部16に固定される。具体的には、この支持ブラケット53は、支持壁55に支持された入力レバー51を、支持壁56に支持された解除レバー52よりもアッパレール6の第2端部6b側(図7及び図8中、右側、図3及び図4参照、右側)、即ち車両後方側に配置する状態でアッパレール6に固定される。そして、本実施形態の支持ブラケット53は、これらの各支持壁55,56が、それぞれ、当該各支持壁55,56よりもアッパレール6の幅方向外側(図8中、下側、図9中、左側)で、その入力レバー51及び解除レバー52を軸支する構成になっている。
【0046】
尚、本実施形態のシートスライド装置10においては、入力レバー51及び解除レバー52もまた、金属の板材を加工することにより形成されている。そして、アッパレール6の上壁部16に対する支持ブラケット53の固定には、リベット(POPリベット)65を用いる構成になっている。
【0047】
更に、本実施形態の支持ブラケット53は、アッパレール6に固定された状態において、その支持壁55に支持される入力レバー51の挿通孔63及び支持壁56に支持される解除レバー52の挿通孔64が、ともにアッパレール6の本体部17から幅方向外側に外れた位置に配置されるように構成されている。そして、本実施形態のロック解除機構40は、これにより、その支持ブラケット53に支持された入力レバー51及び解除レバー52、並びに入力レバー51に接続されたワイヤーケーブル42が、アッパレール6(及びロアレール)に干渉し難い構成になっている。
【0048】
さらに詳述すると、本実施形態の入力レバー51は、先端部71aにワイヤーケーブル42が接続される孔部70を有して下方(図7中、下側)に延びる第1延伸部71を有している。即ち、本実施形態の入力レバー51は、この第1延伸部71がワイヤーケーブル42に牽引されることにより回動する(図7中、反時計回り方向)。具体的には、この第1延伸部71は、先端部71aがアッパレール6の第1端部6a側、即ち車両前方側(図7及び図8中、左側、図3及び図4参照、左側)に延びる態様で略L字状に屈曲した形状を有している。そして、本実施形態の入力レバー51は、これにより、そのワイヤーケーブル42が接続された先端部71aを、より解除レバー52に近い位置に配置する構成になっている。
【0049】
また、本実施形態の入力レバー51は、支軸51xを挟んで上記第1延伸部71の反対側となる位置に設けられた第2延伸部72を有している。具体的には、この第2延伸部72は、アッパレール6の第1端部6a側に延出した後、幅方向内側(図8中、上側、図9中、右側)に延出し、再び第1端部6a側に延出したクランク状の外形を有している。尚、本実施形態の入力レバー51において、この第2延伸部72のクランク形状は、折曲加工により形成されている。そして、本実施形態の入力レバー51は、ワイヤーケーブル42に牽引されて回動することにより、この第2延伸部72の先端部72aが解除レバー52を押圧する構成になっている。
【0050】
一方、本実施形態の解除レバー52は、その支持ブラケット53がアッパレール6の上壁部16に固定された状態において、車両後方側、即ちアッパレール6の第2端部6b側に位置する入力レバー51に向かって、そのアッパレール6の長手方向に延びる長手方向延伸部73を備えている。そして、この解除レバー52は、アッパレール6の幅方向に延在する幅方向延伸部74と、上下方向に延在する上下方向延伸部75と、を備えている。
【0051】
詳述すると、図12(a)~(c)に示すように、本実施形態の解除レバー52は、長手方向延伸部73の基端部73bに、その支軸52xとなる軸部材62が挿通される上記挿通孔64を有している。そして、幅方向延伸部74及び上下方向延伸部75は、この長手方向延伸部73の先端部73aに設けられている。
【0052】
具体的には、幅方向延伸部74は、その長手方向延伸部73の上端部73cに連続して、この長手方向延伸部73の厚み方向一方側(図12(b)中、右側、図12(c)中、上側)に延びる態様で設けられている。更に、上下方向延伸部75は、これにより、その長手方向延伸部73から離間した幅方向延伸部74の先端部74aに連続して下方(図12(a)(b)中、下側)に延びる態様で設けられている。尚、本実施形態の解除レバー52は、これらの長手方向延伸部73、幅方向延伸部74及び上下方向延伸部75が、折曲加工によって、一枚の板材から形成されている。そして、本実施形態の解除レバー52は、これにより、アッパレール6の長手方向から見た場合(例えば、入力レバー51側から見た場合)、これらの長手方向延伸部73、幅方向延伸部74及び上下方向延伸部75が、下方に開口した略コ字形状を形成する構成になっている。
【0053】
さらに詳述すると、図7図9に示すように、本実施形態の解除レバー52は、その幅方向延伸部74の上方に、入力レバー51に設けられた上記第2延伸部72の先端部72aが配置される状態で、支持ブラケット53に支持される。また、本実施形態のアッパレール6は、その上壁部16に、上方に開口する孔部76を有している。更に、本実施形態の支持ブラケット53は、この支持ブラケット53がアッパレール6の上壁部16に固定された状態で、その孔部76の上方に配置される孔部53xを有している。そして、本実施形態の解除レバー52は、これにより、その上下方向延伸部75の先端部75aがアッパレール6の上壁部16に設けられた孔部76内に挿入された状態で、支持ブラケット53に支持される構成になっている。
【0054】
即ち、図13(a)~(c)に示すように、本実施形態のロック解除機構40は、ワイヤーケーブル42に牽引された入力レバー51が回動することにより(図13中、反時計回り方向)、その入力レバー51の第2延伸部72(の先端部72a)が解除レバー52の幅方向延伸部74を上方(図13中、上側)から押圧する。また、これにより解除レバー52が回動することによって(図13中、時計回り方向)、その上壁部16に設けられた孔部76を介してアッパレール6(の本体部17)の内側に挿入された上下方向延伸部75(の下端部75a)が下方に移動する。そして、本実施形態のロック解除機構40は、この下方に移動する解除レバー52の上下方向延伸部75が、アッパレール6(の本体部17)の内側に位置するアンロックレバー30を押圧することにより、そのロック機構20をアンロック動作させる構成になっている。
【0055】
詳述すると、本実施形態のアンロックレバー30は、上記のように、その凸状部35がアッパレール6の上壁部16に対して下側から当接する態様で回動支点30xを形成する。更に、このアンロックレバー30は、その回動支点30x回りに回動して第2端部30b側が下方移動することにより、この第2端部30bに設けられた押圧部37がロアレール5に係合したロックバネ22を押し下げる。そして、本実施形態のロック機構20は、これにより撓められたロックバネ22がロアレール5から脱離する態様でアンロック動作する構成になっている(図5及び図6参照)。
【0056】
この点を踏まえ、本実施形態のロック解除機構40は、その解除レバー52の上下方向延伸部75が、アンロックレバー30の回動支点30xよりも第2端部30b側の長手方向位置において、そのロック機構20のアンロック要素となるアンロックレバー30を上側から押圧するように構成されている。そして、これにより、そのロックバネ22の上方に位置する第2端部30b側が下方移動する方向(図13中、時計回り方向)、つまりはロック機構20をアンロック動作させる方向に、そのアンロックレバー30を回動させることが可能になっている。
【0057】
また、図9に示すように、本実施形態のロック解除機構40においては、アッパレール6の幅方向、その上壁部16に設けられた孔部76よりも解除レバー52の支持壁56側(図9中、左側)に位置するアッパレール6の壁部(15,16)が、解除レバー52の長手方向延伸部73と上下方向延伸部75との間に配置されている。そして、本実施形態の解除レバー52は、これにより、その長手方向延伸部73、幅方向延伸部74及び上下方向延伸部75が形成する下側に開口した略コ字形状の内側に、上記アッパレール6の壁部(15,16)を配置する状態で回動する構成になっている。
【0058】
即ち、本実施形態の解除レバー52は、その上下方向延伸部75が長手方向延伸部73からアッパレール6の幅方向に離間した位置に配置される構成になっている。更に、本実施形態のロック解除機構40において、この解除レバー52は、これらの上下方向延伸部75と長手方向延伸部73との間に位置するアッパレール6の側壁部15及び上壁部16よりも上方に、その幅方向延伸部74を配置する状態で回動可能に軸支される。そして、本実施形態のロック解除機構40は、これにより、解除レバー52とアッパレール6との干渉を回避しつつ、その解除レバー52の支軸52xを低い位置に設定することが可能になっている。
【0059】
更に、図8に示すように、本実施形態の解除レバー52は、その支持壁55よりもアッパレール6の幅方向外側(図8中、下側)で、この支持壁56に軸支される一方、その幅方向延伸部74が入力レバー51に押圧される位置74xについては、その支持壁55よりも幅方向内側(同図中、上側)となっている。換言すると、解除レバー52は、幅方向延伸部74が入力レバー51に押圧される位置74xを、その支持壁56の第1面56a側に配置する状態で、この第1面56aの裏側となる支持壁56の第2面56b側で、この支持壁56に支えられた支軸52xに軸支されている。そして、本実施形態のロック解除機構40は、これにより、幅方向延伸部74が入力レバー51に押圧されたとき、そのアッパレール6の幅方向に生ずる解除レバー52の傾きを抑えて、この解除レバー52を円滑に回動させることが可能になっている。
【0060】
また、図11及び図13に示すように、本実施形態のロック解除機構40は、解除レバー52の支軸52xとなる軸部材62に嵌挿された捩りコイルバネ78を備えている。そして、この捩りコイルバネ78の弾性力に基づいて、その入力レバー51に押圧されることにより回動する方向(図13中、時計回り方向)とは反対方向(同図中、反時計回り方向)に解除レバー52を回動付勢する構成になっている。
【0061】
具体的には、本実施形態の捩りコイルバネ78は、その一端が支持ブラケット53の基部54に設けられた係止部79に係止されるとともに、他端が解除レバー52の長手方向延伸部73に設けられた孔部80に係止されている。そして、本実施形態のロック解除機構40は、ワイヤーケーブル42を介した入力レバー51に対する操作力の入力がなくなった場合に、この捩りコイルバネ78の付勢力(弾性力)に基づいて、図13(a)に示すような、その上下方向延伸部75がアンロックレバー30を押圧しない初期位置N0に解除レバー52を復帰させる構成になっている。
【0062】
即ち、本実施形態のシート1は、上記のようにフットレバー41(図1参照)を操作することにより前倒し状態となったシートバック3を引き起こすことにより、そのワイヤーケーブル42が入力レバー51を牽引しない状態になる。また、本実施形態のロック解除機構40は、これにより、この入力レバー51が解除レバー52を押圧しない状態になることで、その捩りコイルバネ78の付勢力に基づいて、解除レバー52が初期位置N0に復帰する。そして、本実施形態のシートスライド装置10は、これにより、ロック機構20がロアレール5に対するアッパレール6の相対移動を規制するロック状態に復帰することで、そのシート1のスライド位置を固定することが可能になっている。
【0063】
更に、本実施形態のロック解除機構40は、このとき、その捩りコイルバネ78の付勢力に基づき回動する解除レバー52が、入力レバー51を押圧して回動させることにより(図13中、時計回り方向)、この入力レバー51が、そのワイヤーケーブル42が入力レバー51を牽引しない場合の初期位置M0に復帰する。そして、これにより、再びワイヤーケーブル42を介した操作力の入力があった場合に、これらの入力レバー51及び解除レバー52が円滑に回動することで、そのロック機構20を速やかにアンロック動作させることが可能になっている。
【0064】
尚、本実施形態の支持ブラケット53には、その捩りコイルバネ78の一端を係止する係止部79とともに、その入力レバー51に接続されたワイヤーケーブル42の係止部81が設けられている。そして、本実施形態のロック解除機構40は、これにより、入力レバー51、解除レバー52、捩りコイルバネ78、及びワイヤーケーブル42の接続端側が、支持ブラケット53により一体に保持された状態で、そのアッパレール6に対する組み付けを行うことが可能になっている。
【0065】
次に、本実施形態の効果について説明する。
(1)ロック解除機構40は、伝達部材としてのワイヤーケーブル42を介して入力される操作力に基づき回動する入力レバー51と、この入力レバー51に押圧されて回動することによりロック機構20のアンロックレバー30を押圧して当該ロック機構20をアンロック動作させる解除レバー52と、を備える。更に、解除レバー52は、その入力レバー51に向かってアッパレール6の長手方向に延びる長手方向延伸部73に対して、アッパレール6の幅方向に延びる幅方向延伸部74及び上下方向に延びる上下方向延伸部75が一体に設けられた構造を有する。そして、解除レバー52は、その幅方向延伸部74が上側から入力レバー51に押圧されることにより、その上下方向延伸部75が下方に位置するアンロック要素としてのアンロックレバー30を押圧するように構成される。
【0066】
上記構成によれば、その入力レバー51に押圧された解除レバー52が回動してロック機構20のアンロックレバー30を押圧する構成により、優れた操作性を確保することができる。また、アッパレール6の長手方向に並ぶ入力レバー51の支軸51xと解除レバー52の支軸52xとの間に、その入力レバー51が解除レバー52を押圧する位置と、この解除レバー52がロック機構20のアンロックレバー30を押圧する位置とが集約して配置される。そして、これにより、アッパレール6の長手方向におけるロック解除機構40の寸法を縮めることができる。
【0067】
更に、その長手方向延伸部73に対して幅方向延伸部74及び上下方向延伸部75が一体に設けられた構造を活かして、解除レバー52の配置自由度を高めることができる。そして、これにより、ロック解除機構40の小型化と併せて、そのアッパレール6に対する搭載性を更に向上させることができる。
【0068】
また、解除レバー52の幅方向延伸部74を入力レバー51に対する被押圧部にすることで、安定的に、この入力レバー51が解除レバー52を押圧することができる。更に、上下方向延伸部75をアンロックレバー30に対する押圧部とすることで、その解除レバー52がアンロックレバー30を押圧する際の当接角度(摩擦角)を、より直角に近い状態に設定することができる。そして、これにより、押圧時の摩擦によりアンロックレバー30に対して解除レバー52が固着する現象(所謂食い込み)を抑制することができる。
【0069】
(2)アッパレール6は、このアッパレール6の幅方向に対向する一対の側壁部15と、これらの両側壁部15を接続する上壁部16と、を有する。そして、ロック解除機構40は、アッパレール6の上壁部16に設けられた孔部76を介して、この上壁部16の下方に位置するアンロックレバー30を、その解除レバー52の上下方向延伸部75が押圧するように構成される。
【0070】
上記構成によれば、入力レバー51及び解除レバー52をアッパレール6の外部に配置する態様で、容易に、そのロック解除機構40をアッパレール6に組み付けることができる。更に、アッパレール6の上壁部16に設けられた孔部76に対し、解除レバー52の上下方向延伸部75が挿入される構成にすることで、その孔部76の大きさを最小限に留めることができる。そして、これにより、アッパレール6の剛性を好適に維持することができる。
【0071】
(3)解除レバー52は、その上下方向延伸部75が長手方向延伸部73からアッパレール6の幅方向に離間した位置に配置される構成になっている。そして、ロック解除機構40は、これら解除レバー52の上下方向延伸部75と長手方向延伸部73との間に位置するアッパレール6の側壁部15及び上壁部16よりも上方に、その幅方向延伸部74を配置する状態で解除レバー52が回動するように構成される。
【0072】
上記構成によれば、解除レバー52とアッパレール6との干渉を回避しつつ、より低い位置に解除レバー52の支軸52xを配置することができる。そして、これにより、ロック解除機構40の小型化と併せて、そのアッパレール6に対する搭載性を更に向上させることができる。
【0073】
(4)解除レバー52は、長手方向延伸部73の上端部73cに連続して幅方向延伸部74が設けられるとともに、その長手方向延伸部から離間した幅方向延伸部74の先端部74aに連続して上下方向延伸部75が設けられた構造を有する。
【0074】
上記構成によれば、例えば、板材を折曲加工する等によって、容易に、その長手方向延伸部73に対して幅方向延伸部74及び上下方向延伸部75が一体に設けられた解除レバー52を形成することができる。更に、この解除レバー52をアッパレール6の長手方向からみた場合、これらの長手方向延伸部73、幅方向延伸部74及び上下方向延伸部75が下側に開口した略コ字形状を形成する。そして、この形状を活かして、上記(2)(3)のように解除レバー52を配置することにより、ロック解除機構40の小型化と併せて、そのアッパレール6に対する搭載性を更に向上させることができる。
【0075】
(5)ロック解除機構40は、入力レバー51及び解除レバー52を回動可能に支持してアッパレール6に固定される支持ブラケット53を備える。これにより、容易に、アッパレール6に対してロック解除機構40を組み付けることができる。
【0076】
(6)支持ブラケット53は、解除レバー52の支軸52xを支える支持壁56を備える。そして、解除レバー52は、その幅方向延伸部74が入力レバー51に押圧される位置74xを支持壁56の第1面56a側に配置する状態で、この第1面56aの裏側となる支持壁56の第2面56b側で軸支される。
【0077】
上記構成によれば、入力レバー51に幅方向延伸部74が押圧されたとき、その解除レバー52がアッパレール6の幅方向に傾き難くなる。そして、これにより、解除レバー52が円滑に回動することで、ロック解除機構40の安定した動作を確保することができる。
【0078】
(7)ロック解除機構40は、入力レバー51に押圧されることにより解除レバー52が回動する方向とは反対方向に、この解除レバー52を付勢する付勢部材としての捩りコイルバネ78を備える。そして、ロック解除機構40は、捩りコイルバネ78の付勢力(弾性力)に基づき回動する解除レバー52が、入力レバー51を押圧して回動させることにより、そのワイヤーケーブル42を介した操作力の入力がない場合の初期位置M0に、この入力レバー51が復帰するように構成される。
【0079】
上記構成によれば、入力レバー51を初期位置M0に復帰させる戻りバネ等の構成を省いて部品点数の削減を図ることができる。更に、その捩りコイルバネ78の付勢力に基づき、これらの入力レバー51及び解除レバー52が互いに当接する状態に保持される。そして、これにより、そのガタツキによる音の発生を抑制することができる。
【0080】
なお、上記実施形態は、以下のように変更して実施することができる。上記実施形態及び以下の変更例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施することができる。
【0081】
・上記実施形態では、ロアレール5に係合したロックバネ22を押し下げて脱離させることによりロック機構20をアンロック動作させる当該ロック機構20のアンロックレバー30をアンロック要素として、このアンロックレバー30を解除レバー52の上下方向延伸部75が押圧することとした。しかし、これに限らず、ロック機構20のロックバネ22をアンロック要素として、このロックバネ22をロック解除機構40の解除レバー52が押圧する構成としてもよい。即ち、解除レバー52の上下方向延伸部75に押圧されることによりロック機構20がアンロック動作するような当該ロック機構20の構成部材であれば、そのアンロック要素は、どのようなものであってもよい。また、例えば、ロアレール5に係合するロック部材を備えたロック機構においては、そのロック部材がアンロック要素となりうる。そして、このようなロック部材を解除レバー52の上下方向延伸部75が押圧する構成等、ロック機構の構成についてもまた、任意に変更してもよい。
【0082】
・上記実施形態では、解除レバー52をアッパレール6の長手方向から見た場合に、その長手方向延伸部73、幅方向延伸部74及び上下方向延伸部75が下側に開口した略コ字形状を形成することとした。しかし、これに限らず、長手方向延伸部73に対して幅方向延伸部74及び上下方向延伸部75が一体に設けられた構成を有する解除レバー52であれば、その長手方向延伸部73、幅方向延伸部74及び上下方向延伸部75の配置は、任意に変更してもよい。
【0083】
例えば、上下方向延伸部75が長手方向延伸部73に連続して延びる構成であってもよい。また、上下方向延伸部75が、アッパレール6の長手方向に位置する幅方向延伸部74の側端部分に連続して延びる構成であってもよい。更に、幅方向延伸部74が上下方向延伸部75の下端部に連続して延びる構成であってもよい。そして、解除レバー52をアッパレール6の長手方向から見た場合に、その長手方向延伸部73、幅方向延伸部74及び上下方向延伸部75が、T字形状或いは、クランク形状等をなす構成であってもよい。
【0084】
・上記実施形態では、支持ブラケット53は、アッパレール6の上壁部16に固定されることとしたが、側壁部15に固定される構成であってもよい。そして、必ずしも、その入力レバー51及び解除レバー52の各支持壁55,56をアッパレール6の幅方向外側に外れた位置に配置する構成でなくともよい。
【0085】
・上記実施形態では、入力レバー51を解除レバー52よりもアッパレール6の第2端部6b側、即ち車両後方側に配置する構成としたが、入力レバー51の車両後方側に解除レバー52を配置する構成としてもよい。
【0086】
・また、支持ブラケット53には、入力レバー51及び解除レバー52の各支持壁55,56とともに、捩りコイルバネ78の係止部79、及びワイヤーケーブル42の係止部81が設けられることとした。しかし、これに限らず、その壁部(15,16)を利用する等(例えば、保持部となる切り起こしを形成する等)によって、これらロック解除機構40の構成部材の少なくとも何れかがアッパレール6によって直接的に支持される構成であってもよい。
【0087】
・上記実施形態では、入力レバー51に操作力を入力する伝達部材には、その操作力を引張力として伝達するワイヤーケーブル42が用いられることとしたが、その操作力を押圧力として伝達可能な伝達部材を用いる構成としてもよい。
【0088】
・上記実施形態では、解除レバー52の付勢部材に捩りコイルバネ78を用いることとしたが、例えば、圧縮バネや引張バネを用いる等、任意に変更してもよい。
・上記実施形態では、ロック解除機構40は、シートクッション2の後方下側となる位置に設けられたフットレバー41と接続されることとしたが、例えば、シート1の他の部位に設けられた操作部38、例えば、シートバック3の肩口付近に設けられた操作レバーと接続された構成であってもよい。
【符号の説明】
【0089】
1…シート、2…シートクッション、3…シートバック、4…床部、5…ロアレール、6…アッパレール、6a…第1端部、6b…第2端部、10…シートスライド装置、11…底壁部、12…外壁部、13…上壁部、14…内壁部、15…側壁部、16…上壁部、17…本体部、18…折返部、20…ロック機構、21…係合溝、22…ロックバネ、25…線バネ部、26…折曲部、26x…幅方向延伸部、27…係止部、28…挿通孔、30…アンロックレバー(アンロック要素)、30a…第1端部、30b…第2端部、30x…回動支点、31…ループハンドル、31x…挿入部、35…凸状部、37…押圧部、38…操作部、39…リクライニング装置、40…ロック解除機構、41…フットレバー、42…ワイヤーケーブル(伝達部材)、51…入力レバー、51x…支軸、M0…初期位置、52…解除レバー、52x…支軸、N0…初期位置、53…支持ブラケット、54…基部、55,56…支持壁、56a…第1面、56b…第2面、57,58…孔部、61,62…軸部材、63,64…挿通孔、65…リベット、70…孔部(接続部)、71…第1延伸部、71a…先端部、72…第2延伸部、72a…先端部、73…長手方向延伸部、73a…先端部、73b…基端部、73c…上端部、74…幅方向延伸部、74a…先端部、74x…位置、75…上下方向延伸部、75a…下端部、76…孔部、78…コイルバネ(付勢部材)、79…係止部、80…孔部、81…係止部。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13