(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-21
(45)【発行日】2024-07-01
(54)【発明の名称】果汁感が増強された果汁風味飲食品およびその製造方法
(51)【国際特許分類】
A23L 5/00 20160101AFI20240624BHJP
A23L 27/20 20160101ALI20240624BHJP
A23L 27/00 20160101ALI20240624BHJP
A23L 2/00 20060101ALI20240624BHJP
A23L 2/02 20060101ALI20240624BHJP
A23L 21/10 20160101ALI20240624BHJP
A23L 29/00 20160101ALI20240624BHJP
A23L 29/30 20160101ALI20240624BHJP
【FI】
A23L5/00 H
A23L27/20 D
A23L27/00 Z
A23L2/00 B
A23L2/02 A
A23L21/10
A23L29/00
A23L29/30
(21)【出願番号】P 2018191784
(22)【出願日】2018-10-10
【審査請求日】2021-09-21
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000231453
【氏名又は名称】日本食品化工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003421
【氏名又は名称】弁理士法人フィールズ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】早川 忠良
(72)【発明者】
【氏名】影嶋 富美
(72)【発明者】
【氏名】三輪 加納
【審査官】安田 周史
(56)【参考文献】
【文献】特開2001-294768(JP,A)
【文献】特開2014-226074(JP,A)
【文献】特開2010-229234(JP,A)
【文献】特開2014-005447(JP,A)
【文献】特開2009-112212(JP,A)
【文献】国際公開第2010/032510(WO,A1)
【文献】日本食品工業学会誌,1982年,Vol.29, No.9,pp.547-552
【文献】栄養学雑誌,1980年,Vol.38, No.1,pp.71-77
【文献】日食フジオリゴ,日本食品化工株式会社,2002年,pp.1-8
【文献】日食オリゴ糖シリーズ,日本食品化工株式会社,p.1
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23L 5/00
A23L 27/20
A23L 27/00
A23L 2/00
A23L 2/02
A23L 21/10
A23L 29/00
A23L 29/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)DE
27~33の澱粉分解物、(b)果糖および(c)ショ糖を含んでなる果汁風味飲食品であって、前記飲食品中の上記(a)、(b)および(c)の合計含有量(固形分換算質量)に対する、上記(a)、(b)および(c)のそれぞれの含有量(固形分換算質量)の比率が、3~17%、40~85%および10~45%であり、かつ、前記澱粉分解物のG3~G7の含有量が60~90質量%である、果汁風味飲食品(但し、果汁含有量が10%以上である果汁風味飲食品を除く)。
【請求項2】
無果汁飲食品である、請求項1に記載の果汁風味飲食品。
【請求項3】
果汁風味飲食品の製造方法であって、(a)DE
27~33の澱粉分解物、(b)果糖および(c)ショ糖を他の原材料と混合する工程を含んでなり、前記飲食品中の上記(a)、(b)および(c)の合計含有量(固形分換算質量)に対する、上記(a)、(b)および(c)のそれぞれの含有量(固形分換算質量)の比率を、3~17%、40~85%および10~45%に調整することを特徴とし、かつ、前記澱粉分解物のG3~G7の含有量が60~90質量%である、果汁風味飲食品の製造方法(但し、果汁含有量が10%以上である果汁風味飲食品の製造方法を除く)。
【請求項4】
果汁風味飲食品が無果汁飲食品である、請求項3に記載の果汁風味飲食品の製造方法。
【請求項5】
果汁風味飲食品の果汁感増強方法であって、(a)DE
27~33の澱粉分解物、(b)果糖および(c)ショ糖を他の原材料と混合する工程を含んでなり、前記飲食品中の上記(a)、(b)および(c)の合計含有量(固形分換算質量)に対する、上記(a)、(b)および(c)のそれぞれの含有量(固形分換算質量)の比率を、3~17%、40~85%および10~45%に調整することを特徴とし、かつ、前記澱粉分解物のG3~G7の含有量が60~90質量%である、果汁感増強方法(但し、果汁含有量が10%以上である果汁風味飲食品の果汁感増強方法を除く)。
【請求項6】
果汁風味飲食品が無果汁飲食品である、請求項5に記載の果汁感増強方法。
【請求項7】
(a)DE
27~33の澱粉分解物、(b)果糖および(c)ショ糖を含んでなる果汁風味飲食品の果汁感増強剤であって、前記増強剤中の上記(a)、(b)および(c)の合計含有量(固形分換算質量)に対する、上記(a)、(b)および(c)のそれぞれの含有量(固形分換算質量)の比率が、3~17%、40~85%および10~45%であり、かつ、前記澱粉分解物のG3~G7の含有量が60~90質量%である、果汁感増強剤(但し、果汁含有量が10%以上である果汁風味飲食品の果汁感増強剤を除く)。
【請求項8】
果汁風味飲食品が無果汁飲食品である、請求項7に記載の果汁感増強剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、果汁風味飲食品およびその製造方法に関する。本発明はまた、果汁風味飲食品の果汁感増強方法および果汁風味飲食品の果汁感増強剤に関する。
【背景技術】
【0002】
果汁風味飲食品の美味しさを決定付ける大きな要因となるのは、その果汁感にある。しかし、果汁を飲料に配合した場合、果汁そのものが沈殿の原因となり、特に、果汁が柑橘類を主とした酸性果汁である場合には他の成分との相互作用による品質悪化の原因となりやすいため、必然的にその配合量を抑えざるをえないことが多い。また、一般的にオレンジ、グレープフルーツ、リンゴ、グレープ等の果汁風味飲食品に用いられる果汁原料は、高価なため配合量を抑えたり、果汁の配合を止めて香料のみを使用した無果汁飲食品としたりすることが多い。
【0003】
しかし、果汁の含有量を減じた飲食品や、果汁を含まない飲食品は、味が単調で、コクがなく、甘味のみ強い人工的な風味にも感じられてしまうという問題があった。特に近年では、無果汁または低果汁のわずかに果汁風味を感じる果汁風味飲料が数多く上市されているが、これらの無果汁または低果汁の飲料は果汁含有量が低いため、各種香料やエキスを用いて果汁風味を付与している。すなわち、無果汁または低果汁の飲食品は、高果汁に比べ、自然な甘味、コク、ボディ感といった果汁感に劣るという問題もあった。このため、無果汁または低果汁の飲食品において、高果汁飲食品のような自然な甘味、コク、ボディ感といった果汁感が付与された果汁風味飲食品が求められているといえる。
【0004】
これまでに、特定構造を有するグルカンを有効成分とする果汁含有飲食品の果汁感向上剤(特許文献1)や、ゲンチオオリゴ糖を有効成分とする低果汁または無果汁飲料の果汁感付与剤(特許文献2)が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2003-289836号公報
【文献】特開2011-206030号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、果汁感が増強された、新規果汁風味飲食品およびその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは今般、果汁風味飲食品にDE20~50の澱粉分解物、果糖およびショ糖を特定の割合で含有させることで、該果汁風味飲食品の果汁感を増強できることを見出した。本発明はこの知見に基づくものである。
【0008】
本発明によれば以下の発明が提供される。
[1](a)DE20~50の澱粉分解物、(b)果糖および(c)ショ糖を含んでなる果汁風味飲食品であって、前記飲食品中の上記(a)、(b)および(c)の合計含有量(固形分換算質量)に対する、上記(a)、(b)および(c)のそれぞれの含有量(固形分換算質量)の比率が、3~17%、35~85%および10~50%である、果汁風味飲食品。
[2]果汁含有量が40%以下である、上記[1]に記載の果汁風味飲食品。
[3]果汁風味飲食品の製造方法であって、(a)DE20~50の澱粉分解物、(b)果糖および(c)ショ糖を他の原材料と混合する工程を含んでなり、前記飲食品中の上記(a)、(b)および(c)の合計含有量(固形分換算質量)に対する、上記(a)、(b)および(c)のそれぞれの含有量(固形分換算質量)の比率を、3~17%、35~85%および10~50%に調整することを特徴とする、果汁風味飲食品の製造方法。
[4]果汁風味飲食品の果汁含有量が40%以下である、上記[3]に記載の果汁風味飲食品の製造方法。
[5]果汁風味飲食品の果汁感増強方法であって、(a)DE20~50の澱粉分解物、(b)果糖および(c)ショ糖を他の原材料と混合する工程を含んでなり、前記飲食品中の上記(a)、(b)および(c)の合計含有量(固形分換算質量)に対する、上記(a)、(b)および(c)のそれぞれの含有量(固形分換算質量)の比率を、3~17%、35~85%および10~50%に調整することを特徴とする、果汁感増強方法。
[6]果汁風味飲食品の果汁含有量が40%以下である、上記[5]に記載の果汁感増強方法。
[7](a)DE20~50の澱粉分解物、(b)果糖および(c)ショ糖を含んでなる果汁風味飲食品の果汁感増強剤であって、前記増強剤中の上記(a)、(b)および(c)の合計含有量(固形分換算質量)に対する、上記(a)、(b)および(c)のそれぞれの含有量(固形分換算質量)の比率が、3~17%、35~85%および10~50%である、果汁感増強剤。
[8]果汁風味飲食品の果汁含有量が40%以下である、上記[7]に記載の果汁感増強剤。
【0009】
本発明によれば飲食品中のDE20~50の澱粉分解物、果糖およびショ糖の含有比率を特定範囲内に調整することにより果汁風味飲食品の果汁感を増強することができる。
【発明の具体的説明】
【0010】
本発明において「果汁風味飲食品」とは、果汁風味が付与された飲食品(すなわち、果汁風味が付与された飲料および食品)を意味し、果汁風味が付与された飲食品であれば、いずれのものでもよい。果汁風味飲食品としては、例えば、清涼飲料、炭酸飲料、アルコール飲料、乳飲料等の飲料類、ヨーグルト、アイスクリーム等の乳製品類、ジャム、フルーツシラップ等のシラップ類、フルーツケーキ、ゼリー、ムース、キャンディー、ガム等の菓子類が挙げられる。果汁風味飲食品は、果実入りであっても、果汁入りであってもよい。
【0011】
本発明において「果汁風味」とは、果汁が有する香気、甘味、酸味、苦味、自然な風味、フレッシュ感、コク等を意味し、果汁や果肉など果実そのものを用いて付与された風味、果実由来の果実から抽出されたエキスや香料を用いて付与された風味、さらには人工的に合成された物質を用いて付与された風味のいずれであってもよい。人工的に合成された物質としては、例えば、果実の香りを有する合成香料が挙げられる。
【0012】
本発明において「果汁風味」や「果汁感」の対象となる果実としては、特に限定されるものではないが、例えば、オレンジ、グレープフルーツ、蜜柑、ぽんかん、甘夏、柚子、レモン等の柑橘系果実や、葡萄、桃、リンゴ、パイナップル、ウメ、チェリー、キウイ、イチゴ、ブルーベリー、メロン、バナナ、マンゴー、梨、洋梨等が挙げられる。
【0013】
本発明の果汁風味飲食品は、(a)DE20~50の澱粉分解物、(b)果糖および(c)ショ糖を組合せて含有することを特徴とするものである。以下、各成分について説明する。
【0014】
(a)DE20~50の澱粉分解物
本発明において使用する「澱粉分解物」は、澱粉を加水分解することにより得られる糖組成物、すなわち、澱粉の加水分解物を意味する。本発明における澱粉分解物は、その製造方法に特に制限は無く、澱粉を酸分解したものでも、酵素分解したものでも良い。澱粉を酵素分解する際の澱粉分解酵素に特に制限はないが、例えば、α-アミラーゼや、イソアミラーゼおよびプルラナーゼなどの枝切り酵素を用いることができる。
【0015】
本発明において使用する澱粉分解物は、上記の通り澱粉の分解により直接得てもよく、あるいは、澱粉分解物に分画処理等を施すことにより、特定重合度の糖組成物を分取・除去することで得てもよく、さらには、複数の澱粉分解物を混合することで調製してもよい。製造効率およびコストを考慮すると澱粉の分解により直接澱粉分解物を調製することが好ましい。
【0016】
本発明において使用する澱粉分解物は、果汁感やボディ感をより向上させる観点から、DE20~50(好ましくはDE27~33)であるものを使用することができる。ここで、「DE(Dextrose Equivalent)」とは、澱粉分解物の分解度合いの指標であり、試料中の還元糖をブドウ糖(グルコース)として測定し、試料中の還元糖をブドウ糖として固形分に対する百分率で示した値である。DEの値が高い澱粉分解物ほど分解が進み低分子化しているといえる。DEは、具体的には下記式により算出される。
DE=[(直接還元糖(グルコース換算)の質量)/(固形分の質量)]×100
【0017】
本発明においてDEを算出するための還元糖の測定は、ウィルシュテッター・シューデル(Wilstatter Schudel)法に従って行うことができる。
【0018】
本発明において使用する澱粉分解物の糖組成は、澱粉分解物に対するG3~G7の含有量を50~90質量%(好ましくは55~80質量%、より好ましくは60~75%)とすることができる。ここで、「G3~G7」は単糖の重合度が3~7のオリゴ糖を意味する。また、「G4~G5」は単糖の重合度が4~5のオリゴ糖を、「G6~G7」は単糖の重合度が6~7のオリゴ糖を、それぞれ意味する。
【0019】
本発明において使用する澱粉分解物の原料となる澱粉は、食品用に利用可能な澱粉であれば特に制限はないが、例えば、コーンスターチ、タピオカ澱粉、米澱粉、小麦澱粉、馬鈴薯澱粉、甘藷澱粉、緑豆澱粉、片栗澱粉、葛澱粉、蕨澱粉、サゴ澱粉、緑豆澱粉、オオウバユリでん粉を用いることができる。また、いずれの澱粉においても通常の澱粉に加え、ウルチ種、ワキシー種、ハイアミロース種のように、育種学的手法または遺伝子工学的手法において改良されたものを用いることができる。さらに、上記澱粉は、酸化処理、エステル化処理、エーテル化処理、架橋処理といった化学加工処理を施したものでも、湿熱処理、油脂加工処理、ボールミル処理、微粉砕処理、加熱処理、温水処理、漂白処理、酸処理、アルカリ処理、酵素処理等の物理加工を施したものであってもよい。
【0020】
本発明において使用する澱粉分解物は、例えば、澱粉を耐熱性α-アミラーゼで液化した後、α-アミラーゼ等のα-グルカンを加水分解する酵素および/または枝切り酵素で加水分解することにより調製することができる。澱粉分解物の具体的な調製例は以下の通りである。すなわち、澱粉を15~35質量%のスラリー(懸濁液)とした後、例えば、アルカリ性カルシウム塩を用いpH5.0~7.0に調整し、この澱粉スラリーに耐熱性α-アミラーゼを加え、ジェットクッカーやオートクレーブ等の加熱装置を用いて100~130℃に加熱し、30~120分間程度加水分解することによって、DE6~10程度、好ましくは7~9程度の液化液を調製することができる。このときの液化液のDEが低すぎれば、得られる澱粉分解物に高分子糖が多く残存してしまい、澱粉分解物のDEが低くなりすぎてしまう傾向があり、逆に液化液のDEが高すぎれば甘味度の高い低分子糖が多く生成され、澱粉分解物のDEが高くなりすぎる傾向がある。
【0021】
次に、糖化反応に用いる酵素の反応可能pHとなるよう、液化液のpHを例えば、塩酸または苛性ソーダを用いて調整し、α-アミラーゼおよび枝切り酵素を添加して50~60℃で12~60時間反応させることができる。各酵素添加量および反応時間は、澱粉分解物の糖組成を確認しながら決定することができる。酵素添加量、反応時間の不足により加水分解反応が十分に進行しないと、DEが20未満の高分子糖が多く含まれる澱粉分解物となる場合がある。一方、酵素添加量、反応時間が過剰であり加水分解反応が必要以上に進行すると、甘味度の高い低分子糖が多く生成され、DEが50より高い澱粉分解物となる場合がある。
【0022】
本発明において使用する澱粉分解物の糖組成のバランスは、各酵素添加量および反応時間により調整することができる。例えば、枝切り酵素の添加量を増やすことでG6~G7含量を増加させることができ、α-アミラーゼ添加量を増やすことや反応時間を延ばすことで基質の加水分解が進み、結果としてG6~G7含量を減少させ、G4~G5含量を増加させることができる。
【0023】
本発明において使用する澱粉分解物の調製においては、上記手順の後、澱粉分解物の白濁を防止するため、例えば、80~90℃で1~5時間程度保持し、液化液のヨウ素―澱粉反応の消失を確認することができる。次いで、pHを4とすることで酵素反応を停止させ、その後、必要により、活性炭等による脱色ろ過、イオン交換樹脂等に拠る脱塩処理した後、真空濃縮により濃縮して液状の澱粉分解物とすることができる。
【0024】
本発明において使用する澱粉分解物の調製においてはさらに、クロマト分離装置や膜分画装置を用いて分画処理を行い、低分子成分や高分子成分を分離除去して製造することも可能である。また、得られた澱粉分解物に各種市販のマルトオリゴ糖シラップを適宜混合し、本発明に使用する澱粉分解物としてもよい。
【0025】
本発明において使用する澱粉分解物は、上記のようにして調製したもの以外に、市販品を使用してもよい。本発明の澱粉分解物として利用可能な市販品としては、フジオリゴ#360(日本食品化工社製)、オリゴMT-500(昭和産業社製)が挙げられる。
【0026】
(b)果糖
本発明において「果糖」は、フルクトースともいい、単糖類の一種である。本発明において使用する「果糖」は、果糖を含むものであれば、いずれの形態のものも使用することができ、例えば、結晶果糖、高果糖液糖(果糖90%以上)、異性化糖由来の果糖、果汁由来の果糖等が挙げられる。
【0027】
(c)ショ糖
本発明において「ショ糖」は、スクロースともいい、二糖類の一種である。本発明において使用する「ショ糖」は、ショ糖を含むものであれば、いずれの形態のものも使用することができ、例えば、グラニュー糖、液糖、上白糖、白双糖、三温糖、中双糖、氷砂糖、和三盆、黒砂糖等を使用でき、さらには、果汁由来のショ糖等も使用することができる。
【0028】
本発明においては、(a)DE20~50の澱粉分解物、(b)果糖および(c)ショ糖の合計含有量(固形分換算質量)に対する、上記(a)の含有量(固形分換算質量)の比率は、果汁風味飲食品に適度な果汁感およびボディ感を付与する観点から、下限値は3%(好ましくは5%)とすることができ、上限値は17%(好ましくは15%)とすることができる。これらの下限値および上限値はそれぞれ任意に組み合わせることができ、上記含有比率の範囲は、例えば、3~17%(好ましくは5~15%)とすることができる。
【0029】
本発明においては、(a)DE20~50の澱粉分解物、(b)果糖および(c)ショ糖の合計含有量(固形分換算質量)に対する、上記(b)の含有量(固形分換算質量)の比率は、果汁風味飲食品に適度な果汁感およびボディ感を付与するとともに適度な甘味を付与する観点から、下限値は35%(好ましくは40%)とすることができ、上限値は85%(好ましくは80%)とすることができる。これらの下限値および上限値はそれぞれ任意に組み合わせることができ、上記含有比率の範囲は、例えば、35~85%(好ましくは40~80%)とすることができる。
【0030】
本発明においては、(a)DE20~50の澱粉分解物、(b)果糖および(c)ショ糖の合計含有量(固形分換算質量)に対する、上記(c)の含有量(固形分換算質量)の比率は、果汁風味飲食品に適度な果汁感およびボディ感を付与するとともに適度な甘味を付与する観点から、下限値は10%(好ましくは15%)とすることができ、上限値は50%(好ましくは45%)とすることができる。これらの下限値および上限値はそれぞれ任意に組み合わせることができ、上記含有比率の範囲は、例えば、10~50%(好ましくは15~45%)とすることができる。
【0031】
本発明において、(a)DE20~50の澱粉分解物、(b)果糖および(c)ショ糖を飲食品に含有させるときは、飲食品全体に対する上記(a)、(b)および(c)の合計量(固形分換算質量)の比率は0.5~15%(好ましくは3%~10%、より好ましくは5%~8%)とすることができる。
【0032】
飲食品中の前記(a)、(b)および(c)の含有量は、例えば、高速液体クロマトグラフィー法(HPLC法)により測定することができる。
【0033】
本発明の果汁風味飲食品は果汁風味を有することから、前記(a)、(b)および(c)に加えて、果汁、果肉、果汁エキス、果実エキスおよび香料からなる群から選択される1種または2種以上の果汁風味付与成分を含有していてもよい。果汁風味の対象となる果実の例としては前記したものが挙げられる。
【0034】
本発明の果汁風味飲食品に含まれる果汁含有量は特に限定されるものではないが、該飲食品中の果汁含有量を40%以下(好ましくは30%以下、より好ましくは20%以下、さらに好ましくは10%以下)とすることができる。本発明の果汁風味飲食品中の果汁含有量の下限値は0%とすることができる。本発明の果汁風味飲食品によれば果汁飲食品および無果汁飲食品が提供される。
【0035】
本発明の果汁風味飲食品が飲料であるときは、本発明の飲料は液体原料を含んでいてもよい。液体原料としては、水(例えば、飲用水)、炭酸水が挙げられる。ここで「炭酸水」とは、飲用に適した水に二酸化炭素を圧入したものを意味する。液体原料として水などの非炭酸水を用いた場合には炭酸ガス添加工程により炭酸ガスを付与してもよい。また液体原料として炭酸水を用いた場合でも炭酸ガス添加工程により炭酸ガスを付与し、炭酸感がより強い飲料としてもよい。
【0036】
本発明の果汁風味飲食品がアルコール飲料であるときは、本発明の飲料はアルコール(エタノール)を含んでなるものである。本発明に使用する「アルコール」は、アルコール(エタノール)を含むものであれば、いずれの形態のものも使用することができ、例えば、原料用アルコール類および醸造用アルコール類に加えて、ウイスキー、バーボン、ブランデー、スピリッツ類(例えば、ウォッカ)、リキュール類、果実酒、日本酒、中国酒、焼酎、発泡酒、チュウハイ等のアルコール飲料が挙げられる。なお、本発明のアルコール飲料のアルコール濃度(アルコール分の含有量)は、特に限定されないが、例えば1~10v/v%であり、好ましくは2~8v/v%(より好ましくは3~6v/v%)である。
【0037】
本発明の果汁風味飲食品は、果汁感およびボディ感を阻害しない範囲で、前記(a)、(b)および(c)以外の他の成分を含有することができる。当該他の成分は飲食品の種類によって適宜選択することができるが、他の成分の例としては、糖類、糖アルコールおよび澱粉類等;直鎖デキストリン、分岐デキストンおよび環状デキストン等のデキストリン類;甘味料、安定剤、乳化剤、ゲル化剤、着色料、着香料、苦味料、保存料、酸化防止剤およびpH調整剤等の食品添加物;油脂、乳および乳製品、有機酸、有機酸塩、無機塩、酵素、ビタミン類、酵母エキス、調味料等の呈味成分、その他各種食品素材等が挙げられる。
【0038】
本発明によれば、果汁感やボディ感が増強された果汁風味飲食品が提供される。低果汁含有量(例えば、果汁含有量が40%以下)の果汁風味飲食品においてもこの効果は奏されることから、本発明によれば、無果汁または低果汁の果汁風味飲食品において、高果汁飲食品のような自然な甘味、コク、ボディ感といった果汁感が付与された果汁飲食品を提供できる点で有利である。本発明において「果汁感」とは、果実の様な自然な甘味、コク、ボディ感からなる総合的な呈味感をいう。本発明において「ボディ感」とは、果汁感の構成要素の一つで、果実の様な厚みのある呈味感をいう。
【0039】
本発明の果汁風味飲食品の製造は、(a)DE20~50の澱粉分解物、(b)果糖および(c)ショ糖が所定の含有比率で飲料に含まれるようにすること以外は、飲食品の製造に用いられる通常の方法に従って実施することができる。例えば、本発明の果汁風味飲食品が飲料の場合には、液体原料を含む原材料を準備し、所定の含有比率となるように、前記(a)、(b)および(c)を他の原材料と混合ないし調合することにより、飲料を製造することができる。また、本発明の果汁風味飲食品が食品の場合には、原材料を準備し、所定の含有比率となるように、前記(a)、(b)および(c)を他の原材料と混合ないし調合し、加工処理することにより、食品を製造することができる。なお、前記(a)、(b)および(c)の他の原材料への添加時期や添加順序は特に限定されない。
【0040】
本発明の果汁風味飲食品のうち飲料の製造においては、上記調合工程に加えて、充填工程および殺菌工程等の工程(場合によってはさらに炭酸ガス添加工程)を経て容器詰め飲料として提供することができる。例えば、調合工程で得られた飲料あるいは調合工程後の炭酸ガス添加工程を経て得られた飲料を常法に従って殺菌し、容器に充填することができる。殺菌は容器への充填前であっても充填後であってもよい。
【0041】
本発明によれば、果汁風味飲食品の果汁感増強方法が提供される。本発明の果汁感増強方法は、本発明の果汁風味飲食品およびその製造方法に関する記載に従って実施することができる。すなわち、前記(a)、(b)および(c)を他の原材料と混合ないし調合し、果汁風味飲食品中の前記(a)、(b)および(c)の合計含有量(固形分換算質量)に対する、前記(a)、(b)および(c)のそれぞれの含有量(固形分換算質量)の比率を3~17%、35~85%および10~50%に調整することにより、果汁風味飲食品において果汁感を増強させることができる。
【0042】
本発明によれば、果汁風味飲食品の果汁感増強剤が提供される。本発明の果汁感増強剤は、本発明の果汁風味飲食品およびその製造方法に関する記載に従って実施することができる。すなわち、本発明の果汁感増強剤を他の原材料と混合ないし調合することにより、本発明の果汁風味飲食品を製造することができる。本発明の果汁感増強剤は、飲食品全体に対する上記(a)、(b)および(c)の合計量(固形分換算質量)の比率が0.5~15%(好ましくは3%~10%、より好ましくは5%~8%)となるように原材料に配合することができる。
【実施例】
【0043】
以下の例に基づいて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの例に限定されるものではない。なお、本明細書において特に記載の無い場合は「%」は質量%を意味し、また「固形分」当たりの割合や「固形分」の含有割合(濃度)に言及した場合には、固形成分の質量に基づいて定められた割合を意味するものとする。
【0044】
例1:グレープフルーツ風味飲料(1)
表1に示した配合で各種原料を混合し、グレープフルーツ風味飲料を調製した。マルトオリゴ糖はマルトオリゴ糖A(DE30、G3~G7含有比率:66.0%)(固形分濃度72%の液状品)を、果糖は結晶果糖(日新製糖社製、粉末品)を、ショ糖はグラニュー糖(日新製糖社製、粉末品)をそれぞれ用いた。
【0045】
得られた飲料について、「果汁感」および「ボディ感」に関し、下記基準で官能評価を実施した。
【0046】
「果汁感」とは、果実の様な自然な甘味、コク、ボディ感からなる総合的な呈味感をいう。果糖のみを配合した飲料(比較例1)を0点として±5点の11段階で評価し、点数が高いほど果汁感が強く、点数が低いほど果汁感が弱い。
【0047】
「ボディ感」とは、果汁感の構成要素の一つで、果実の様な厚みのある呈味感をいう。「ボディ感」に関しては、果糖のみを配合した比較区1を0点として±5点の11段階で評価した。点数が高いほどボディ感が強く、点数が低い程ボディ感が弱い。
【0048】
官能評価は4名の訓練されたパネラーで実施し、その平均点を算出した。その結果を表1に示した。
【0049】
【0050】
表1の通り、マルトオリゴ糖、果糖およびショ糖を一定の割合で配合した飲料は、果糖のみを配合した飲料(比較区1)に比べ、果汁感およびボディ感が改善されており、特にマルトオリゴ糖10%、果糖60~75%、ショ糖15~30%とした飲料(試験区4および5)は改善効果が顕著であった。また、ショ糖のみもしくはマルトオリゴ糖のみを配合した飲料(比較区2および3)は、果糖、マルトオリゴ糖およびショ糖を配合した飲料に比べ、果汁感、ボディ感の改善効果が弱く、好ましい飲料ではなかった。
【0051】
例2:りんご風味飲料
表2に示した配合で各種原料を混合し、りんご風味飲料を調製した。マルトオリゴ糖はマルトオリゴ糖A(DE30、G3~G7含有比率:66.0%)(固形分濃度72%の液状品)を、果糖は結晶果糖(日新製糖社製、粉末品)を、ショ糖はグラニュー糖(日新製糖社製、粉末品)をそれぞれ用いた。
【0052】
果糖のみを配合した飲料(比較区4)を0点とした以外は、例1と同様に官能評価を実施し、その平均点を算出した。その結果を表2に示した。
【0053】
【0054】
表2の通り、マルトオリゴ糖、果糖およびショ糖を一定の割合で配合した飲料(試験区10~18)は、果糖のみを配合した飲料(比較区4)に比べ、果汁感およびボディ感が改善されており、好ましい飲料であった。
【0055】
例3:オレンジゼリー
表3に示した配合で各種原料を混合溶解し、攪拌しながら加熱を行い、充填後、冷やして固め、オレンジゼリーを調製した。マルトオリゴ糖はマルトオリゴ糖A(DE30、G3~G7含有比率:66.0%)(固形分濃度72%の液状品)を、果糖は結晶果糖(日新製糖社製、粉末品)を、ショ糖はグラニュー糖(日新製糖社製、粉末品)をそれぞれ用いた。
【0056】
果糖のみを配合したゼリー(比較区5)を0点とした以外は、例1と同様に官能評価を実施し、その平均点を算出した。その結果を表3に示した。
【0057】
【0058】
表3の通り、マルトオリゴ糖、果糖およびショ糖を一定の割合で配合したゼリー(試験区19~21)は、果糖のみを配合したゼリー(比較区5)に比べ、果汁感およびボディ感が改善されており、好ましい味のオレンジゼリーであった。
【0059】
例4:グレープフルーツ風味飲料(2)
表4に示した配合で各種原料を混合し、グレープフルーツ風味飲料を調製した。マルトオリゴ糖はマルトオリゴ糖A(DE30、G3~G7含有比率:66.0%)、マルトオリゴ糖B(DE47、G3~G7含有比率:72.6%)またはマルトオリゴ糖C(DE26、G3~G7含有比率:63.1%)を、果糖は結晶果糖(日新製糖社製、粉末品)を、ショ糖はグラニュー糖(日新製糖社製、粉末品)をそれぞれ用いた。なお、マルトオリゴ糖はいずれも固形分濃度72%の液状品であった。
【0060】
果糖のみを配合した飲料(比較区1)を0点とした以外は、例1と同様に官能評価を実施し、その平均点を算出した。その結果を表4に示した。
【0061】
【0062】
表4の通り、果糖、ショ糖およびマルトオリゴ糖を配合した飲料(試験区5、22および23)は、果糖のみを配合した飲料(比較区1)に比べ、果汁感およびボディ感が改善されており、好ましい飲料であった。
【0063】
例5:グレープフルーツ果汁飲料
表5に示した配合で各種原料を混合し、30%果汁グレープフルーツ果汁飲料を調製した。マルトオリゴ糖はマルトオリゴ糖A(DE30、G3~G7含有比率:66.0%)(固形分濃度72%の液状品)を、果糖は結晶果糖(日新製糖社製、粉末品)を、ショ糖はグラニュー糖(日新製糖社製、粉末品)をそれぞれ用いた。
【0064】
果糖のみを配合した飲料(比較区6)を0点とした以外は、例1と同様に官能評価を実施し、その平均点を算出した。その結果を表5に示した。
【0065】
【0066】
表5の通り、果糖、ショ糖およびマルトオリゴ糖を一定の割合で配合したグレープフルーツ果汁飲料(試験区24~26)は、果糖のみを配合したグレープフルーツ果汁飲料(比較区6)に比べ、果汁感およびボディ感が改善されており、好ましい飲料であった。