(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-21
(45)【発行日】2024-07-01
(54)【発明の名称】表面処理剤及びその利用
(51)【国際特許分類】
C23C 26/00 20060101AFI20240624BHJP
B32B 15/04 20060101ALI20240624BHJP
【FI】
C23C26/00 A
B32B15/04 Z
(21)【出願番号】P 2018234844
(22)【出願日】2018-12-14
【審査請求日】2021-10-06
【審判番号】
【審判請求日】2023-03-08
(73)【特許権者】
【識別番号】000229597
【氏名又は名称】日本パーカライジング株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】弁理士法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】重江 航平
【合議体】
【審判長】粟野 正明
【審判官】井上 猛
【審判官】相澤 啓祐
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第108300302(CN,A)
【文献】米国特許第6020028(US,A)
【文献】特表2016-521294(JP,A)
【文献】特開2018-135595(JP,A)
【文献】特開2004-238716(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C23C 26/00,28/00,22/00
C23F 11/00
C09D 5/00,7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
アミノ基含有シランカップリング剤と、アゾール環構造を有する化合物
(但し、ベンゾトリアゾール環構造を有する化合物を除く)と、ヒドロキシル基を有するアミノ化合物(但し、カルボキシル基を有するアミノ化合物を除く)とを配合した表面処理剤。
【請求項2】
請求項1に記載の表面処理剤を金属材料の表面又は表面上に接触させる接触工程と、
前記接触工程により前記金属材料の表面又は表面上に接触させた前記表面処理剤を乾燥させる乾燥工程とを含む、皮膜を有する金属材料の製造方法。
【請求項3】
請求項2に記載の製造方法により得られる、皮膜を有する金属材料。
【請求項4】
請求項2に記載の製造方法により得られる、皮膜を有する金属材料の該皮膜上に塗料を塗装する塗装工程と、
前記塗装工程により塗装した前記塗料を乾燥させる乾燥工程とを含む、塗膜を有する金属材料の製造方法。
【請求項5】
請求項4に記載の製造方法により得られる、塗膜を有する金属材料。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表面処理剤、該表面処理剤を用いた、皮膜又は塗膜を有する金属材料の製造方法、及び、該皮膜又は該塗膜を有する金属材料に関する。
【背景技術】
【0002】
金属材料の防錆剤としては、様々なものが知られている。例えば、特許文献1には、3-アミノ-1,2,4-トリアゾール、シランカップリング剤、カルボン酸またはその誘導体からなる、銅箔用の有機防錆剤が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、特許文献1に記載の有機防錆剤は、金属材料に対して耐食性に優れた皮膜を形成できるが、該皮膜上に塗装により塗膜を形成させたときに、外観に問題が生じたり、塗膜が剥がれたりするという問題がある。
【0005】
そこで、本発明は、耐食性、塗装後の外観、及び塗膜の密着性に優れた皮膜を形成可能な表面処理剤、該表面処理剤を用いた、皮膜又は塗膜を有する金属材料の製造方法、及び、該皮膜又は該塗膜を有する金属材料を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は、上記課題を解決するために鋭意検討した結果、特定の表面処理剤が、耐食性、塗装後の外観、及び塗膜の密着性に優れた皮膜を形成できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0007】
本発明は、具体的には以下のとおりである。
(1)アミノ基含有シランカップリング剤と、アゾール環構造を有する化合物と、ヒドロキシル基を有するアミノ化合物(但し、カルボキシル基を有するアミノ化合物を除く)とを配合した表面処理剤。
(2)前記(1)に記載の表面処理剤を金属材料の表面又は表面上に接触させる接触工程と、
前記接触工程により前記金属材料の表面又は表面上に接触させた前記表面処理剤を乾燥させる乾燥工程とを含む、皮膜を有する金属材料の製造方法。
(3)前記(2)に記載の製造方法により得られる、皮膜を有する金属材料。
(4)前記(2)に記載の製造方法により得られる、皮膜を有する金属材料の該皮膜上に塗料を塗装する塗装工程と、
前記塗装工程により塗装した前記塗料を乾燥させる乾燥工程とを含む、塗膜を有する金属材料の製造方法。
(5)前記(4)に記載の製造方法により得られる、塗膜を有する金属材料。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、耐食性、塗装後の外観、及び塗膜の密着性に優れた皮膜を形成可能な表面処理剤、該表面処理剤を用いた、皮膜又は塗膜を有する金属材料の製造方法、及び、該皮膜又は該塗膜を有する金属材料を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。以下の好ましい実施形態の説明は、本質的に例示に過ぎず、本発明、その適用物或いはその用途を制限することを意図するものでは全くない。
【0010】
<表面処理剤>
本実施形態に係る表面処理剤は、アミノ基含有シランカップリング剤と、アゾール環構造を有する化合物と、特定のアミノ化合物とを少なくとも配合する。この表面処理剤を用いることにより、金属材料の表面又は表面上に、耐食性、塗装後の外観、及び塗膜の密着性に優れた皮膜を形成することができる。
【0011】
(アミノ基含有シランカップリング剤)
アミノ基含有シランカップリング剤としては、例えば、N-2-(アミノエチル)-3-アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N-2-(アミノエチル)-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-2-(アミノエチル)-3-アミノプロピルトリエトキシシラン、3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルトリエトキシシラン、3-トリエトキシシリル-N-(1,3-ジメチル-ブチリデン)プロピルアミン、N-フェニル-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-(ビニルベンジル)-2-アミノエチル-3-アミノプロピルトリメトキシシラン等が挙げられる。これらのアミノ基含有シランカップリング剤は、単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
【0012】
表面処理剤におけるアミノ基含有シランカップリング剤は、そのままの形態であってもよく、アミノ基含有シランカップリング剤が加水分解した加水分解物の形態であってもよく、該加水分解物が縮重合した縮重合物の形態であってもよく、2種以上のアミノ基含有シランカップリング剤の加水分解物が共重合した共重合物(交互共重合体、ランダム共重合体、ブロック共重合体、グラフト共重合体等)の形態であってもよく、また上記形態が複数混在した形態であってもよい。
【0013】
表面処理剤におけるアミノ基含有シランカップリング剤の配合量は、特に制限されるものではないが、配合濃度で、好ましくは5mg/L以上であり、また、好ましくは500mg/L以下である。
【0014】
(アゾール環構造を有する化合物)
アゾール環構造を有する化合物としては、例えば、トリアゾール、テトラゾール、ベンゾアゾール等の環構造を有する化合物又はその塩が挙げられるがこれらに制限されるものではない。塩としては、例えば、アンモニウム塩、アミン塩等が挙げられるがこれらに制限されるものではない。
【0015】
上記トリアゾール環構造を有する化合物としては、例えば、3-アミノ-1,2,4-トリアゾール、4-アミノ-4H-1,2,4-トリアゾール、4-アミノ-3-ヒドラジノ-5-メルカプト-1,2,4-トリアゾール等が挙げられる。また、テトラゾール環構造を有する化合物としては、例えば、1H-テトラゾール、5-アミノ-1H-テトラゾール、5-メチル-1H-テトラゾール、5-フェニル-1H-テトラゾール、1-メチル-5-エチル-1H-テトラゾール、1-メチル-5-メルカプト-1H-テトラゾール、1-フェニル-5-メルカプト-1H-テトラゾール、1-(2-ジメチルアミノエチル)-5-メルカプト-1H-テトラゾール、2-メトキシ-5-(5-トリフルオロメチル-1H-テトラゾール-1-イル)-ベンズアルデヒド、5,5’-ビ-1H-テトラゾール、4,5-ジ(5-テトラゾリル)-[1,2,3]トリアゾール、5,5’-アゾビス-1H-テトラゾール、1-メチル-5-ベンゾイル-1H-テトラゾール、(1-メチル-1H-テトラゾール-5-イル)フェニルメタノンオキシム(E+Z)等が挙げられる。ベンゾアゾール環構造を有する化合物としては、例えば、ベンゾトリアゾール、ベンゾイミダゾール、ベンゾオキサゾール、ベンゾチアゾール等の環構造を有する化合物が挙げられるがこれらに制限されるものではない。ベンゾトリアゾール環構造を有する化合物としては、例えば、5-メチル-1H-ベンゾトリアゾール等のメチル基が結合したベンゾトリアゾール環構造を有する化合物の他;2-(2’-ヒドロキシ-5’-メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2-(2’-ヒドロキシ-3’-tert-ブチル-5’-メチルフェニル)-5-クロロベンゾトリアゾール、2-(2’-ヒドロキシ-3’,5’-ジ-tert-アミルフェニル)ベンゾトリアゾール、2-(2’-ヒドロキシ-5’-tert-オクチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2,2’-メチレンビス[6-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)-4-tert-オクチルフェノール]、6-(2-ベンゾトリアゾリル)-4-tert-オクチル-6’-tert-ブチル-4’-メチル-2,2’-メチレンビスフェノール、1,2,3-ベンゾトリアゾール、1-[N,N-ビス(2-エチルヘキシル)アミノメチル]ベンゾトリアゾール、5-カルボキシベンゾトリアゾール、1-[N,N-ビス(2-エチルヘキシル)アミノメチル]メチルベンゾトリアゾール、2,2’-[[(メチル-1H-ベンゾトリアゾール-1-イル)メチル]イミノ]ビスエタノール等が挙げられる。ベンゾイミダゾール環構造を有する化合物としては、例えば、1,3-ジヒドロ-1-フェニル-2H-ベンゾイミダゾール-2-チオン、2-ヒドロキシベンゾイミダゾール、2-ブロモベンゾイミダゾール、1-イソプロペニルベンゾイミダゾール-2-オン、1-(2-プロペニル)ベンゾイミダゾール-2-オン、2-メチルベンゾイミダゾール等の他;2-メルカプトベンゾイミダゾール、2-メルカプト-5-メトキシベンゾイミダゾール、2-メルカプト-5-カルボキシベンゾイミダゾール、2-メルカプトベンゾイミダゾール-5-スルホン酸、2-メルカプト-5-ニトロベンゾイミダゾール、2-メルカプト-5-アミノベンゾイミダゾール等のメルカプト基が結合したベンゾイミダゾール環構造を有する化合物等が挙げられる。ベンゾオキサゾール環構造を有する化合物としては、例えば、2-メルカプトベンゾオキサゾール等のメルカプト基が結合したベンゾオキサゾール環構造を有する化合物が挙げられる。ベンゾチアゾール環構造を有する化合物としては、例えば、2-メルカプトベンゾチアゾール、3-(2-ベンゾチアジルチオ)プロピオン酸、2,2’-ジベンゾチアゾリルジスルフィド、(2-ベンゾチアジルチオ)酢酸、4-メチル-2-メルカプトベンゾチアゾール、2-アミノ-6-メトキシベンゾチアゾール、2-(メチルチオ)ベンゾチアゾール、2-クロロベンゾチアゾール、2-(メチルチオ)-2-チアゾリン、2-メチルベンゾチアゾール、5-メトキシ-2-メチルベンゾチアゾール、2-メチル-4,5,7-トリフルオロベンゾチアゾール、2-アミノベンゾチアゾール、2-アミノ-6-メチルベンゾチアゾール、2-アミノ-4-メトキシベンゾチアゾール、3-クロロ-1,2-ベンズイソチアゾール、(ベンゾチアゾール-2-イルチオ)コハク酸、ドデカンチオ酸S-ベンゾチアゾール-2-イルエステル、ビス(2-エチルヘキシル)ジチオカルバミン酸ベンゾチアゾール-2-イルエステル、1-(1,2-ベンズイソチアゾール-3-イル)ピペラジン、N,N-ビス(2-エチルヘキシル)-2-ベンゾチアゾリルスルフェンアミド、ジベンジルジチオカルバミン酸ベンゾチアゾール-2-イルエステル、2-(2-ヒドロキシフェニル)ベンゾチアゾール等が挙げられる。これらのアゾール環構造を有する化合物は、1種を単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
【0016】
表面処理剤におけるアゾール環構造を有する化合物の配合量は、特に制限されるものではなく、配合濃度で、好ましくは5mg/L以上、より好ましくは25mg/L以上、さらに好ましくは50mg/L以上であり、また、好ましくは500mg/L以下、より好ましくは300mg/L以下、さらに好ましくは100mg/L以下である。
【0017】
(特定のアミノ化合物)
本願明細書において、特定のアミノ化合物とは、ヒドロキシル基を有するアミノ化合物のうち、カルボキシル基を有するアミノ化合物を除いたものを意味し、特に好ましくは、カルボニル炭素以外の炭素原子にヒドロキシル基が結合した構造を有するアミノ化合物のうち、カルボキシル基を有するアミノ化合物を除くものを意味する。ここで、アミノ化合物とは、第1級アミノ基、第2級アミノ基、又は第3級アミノ基を有する化合物を意味する。
【0018】
特定のアミノ化合物としては、ヒドロキシル基を有し、カルボキシル基を有しないアミノ化合物であれば特に制限されるものではなく、例えば、アミノアルコール、アミノフェノール、アミノアルキルスルホン酸、アミノベンゼンスルホン酸、アミノアルキルホスホン酸、アミノベンゼンホスホン酸等が挙げられる。
【0019】
アミノアルコールとしては、例えば、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、アミノエチルエタノールアミン、メチルエタノールアミン、ジメチルエタノールアミン、ジエチルエタノールアミン、2-アミノ-2-メチル-1-プロパノール、モノイソプロパノールアミン、ジイソプロパノールアミン、トリイソプロパノールアミン等が挙げられる。アミノフェノールとしては、例えば、p-アミノフェノール、m-アミノフェノール、ジアミノフェノール等が挙げられる。アミノアルキルスルホン酸としては、例えば、アミノメタンスルホン酸、2-アミノエタンスルホン酸等が挙げられる。アミノベンゼンスルホン酸としては、例えば、3-アミノベンゼンスルホン酸、4-アミノベンゼンスルホン酸等が挙げられる。アミノアルキルホスホン酸としては、例えば、アミノメチルホスホン酸、2-アミノエチルホスホン酸等が挙げられる。アミノベンゼンホスホン酸としては、例えば、3-アミノベンゼンホスホン酸、4-アミノベンゼンホスホン酸等が挙げられる。これらのアミノ化合物は、1種を単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
【0020】
表面処理剤における特定のアミノ化合物の配合量は、特に制限されるものではないが、配合濃度で、好ましくは5mg/L以上、より好ましくは25mg/L以上、さらに好ましくは50mg/L以上であり、また、好ましくは500mg/L以下、より好ましくは300mg/L以下、さらに好ましくは100mg/L以下である。
【0021】
(他の成分)
表面処理剤には、本発明の効果を阻害しない範囲で、他の成分が配合されていてもよい。他の成分としては、例えば、pH調整剤、界面活性剤等が挙げられる。
【0022】
pH調整剤は、特に制限されるものではないが、例えば、塩酸、硫酸、硝酸、フッ化水素酸、有機酸等の酸成分;水酸化カリウム、水酸化マグネシウム、アンモニア、アンモニウム塩、アミン類等のアルカリ成分;等が挙げられる。界面活性剤は、非イオン性界面活性剤、アニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、及び両性界面活性剤のいずれであってもよく、例えば、含フッ素系界面活性剤、シリコン系界面活性剤等が挙げられる。これらの界面活性剤は、1種を単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。表面処理剤における界面活性剤の配合量は、特に限定されないが、配合濃度で、例えば500mg/L以下である。
【0023】
(液体媒体)
液体媒体としては、特に限定されず、水(脱イオン水、蒸留水)が好ましいが、水に低級アルコール等の水混和性有機溶媒が50重量%未満で含まれた混合液であってもよい。
【0024】
<表面処理剤の製造>
本実施形態に係る表面処理剤は、例えば、アミノ基含有シランカップリング剤と、アゾール環構造を有する化合物と、特定のアミノ化合物と、必要に応じて他の成分とを混合したものを、液体媒体に添加することにより製造することができる。なお、必要であれば、pH調整剤を用いて表面処理剤のpHを調整してもよい。表面処理剤のpHとしては、特に制限されるものではないが、好ましくは7.0~11.0の範囲内、より好ましくは8.0~10.5の範囲内、さらに好ましくは8.5~10.0の範囲内である。表面処理剤のpHは市販のpHメーターを用いて25℃で計測した値を意味する。
【0025】
<皮膜を有する金属材料及びその製造方法>
本実施形態に係る皮膜を有する金属材料は、金属材料の表面又は表面上に上記表面処理剤を接触させる接触工程と、該接触工程により金属材料の表面又は表面上に接触させた表面処理剤を乾燥させる乾燥工程を含む製造方法により得ることができる。
【0026】
なお、金属材料としては、特に限定されないが、例えば、鉄鋼材料(例えば、冷間圧延鋼板、熱間圧延鋼板、黒皮材、酸洗鋼板、高張力鋼板、工具鋼、合金工具鋼、球状化黒鉛鋳鉄、ねずみ鋳鉄等);めっき材料〔例えば、亜鉛めっき材(例えば、電気亜鉛めっき、溶融亜鉛めっき等を有する鋼材)、亜鉛合金めっき材(例えば、合金化溶融亜鉛めっき、Zn-Al合金めっき、Zn-Al-Mg合金めっき、電気亜鉛合金めっき等を有する鋼材)、アルミめっき材等〕;アルミニウム材又はアルミニウム合金材(例えば、1000系、2000系、3000系、4000系、5000系、6000系、アルミニウム鋳物、アルミニウム合金鋳物、ダイキャスト材等);マグネシウム材又はマグネシウム合金材等が挙げられる。
【0027】
(接触工程)
金属材料の表面又は表面上に表面処理剤を接触させる方法としては、例えば、浸漬処理法、スプレー処理法、流しかけ処理法、又はこれらを組み合わせた処理法等が挙げられる。
【0028】
表面処理剤の接触温度及び接触時間は、皮膜を形成できる条件下であれば特に制限されるものではなく、表面処理剤の種類、濃度等に応じて適宜決定すればよい。
【0029】
(乾燥工程)
表面処理剤を乾燥させる方法としては、特に限定されず、例えば、熱風、インダクションヒーター、赤外線、近赤外線等を用いた乾燥方法等が挙げられる。乾燥時間は、表面処理剤の組成等に応じて適宜決定すればよいが、好ましくは1秒以上30分以下の範囲内であり、より好ましくは10秒以上20分以下の範囲内である。乾燥温度は、金属材料の最高到達温度(PMT)として、60℃以上が好ましく、80℃以上がより好ましく、また、300℃以下が好ましく、250℃以下がより好ましく、200℃以下がさらに好ましい。
【0030】
(その他の工程)
上記接触工程の前に、金属材料の表面又は表面上の油分及び付着物の除去を行なうために脱脂工程を行なってもよい。脱脂の方法は、特に限定されず、一般に使用される方法を適用することができる。なお、脱脂工程の後であって接触工程の前に水洗工程を行なってもよい。水洗工程を行なった場合には、接触工程前に金属材料の表面又は表面上を乾燥させる工程を行なってもよい。
【0031】
<塗膜を有する金属材料及びその製造方法>
本実施形態に係る塗膜を有する金属材料は、上記皮膜を有する金属材料の製造方法により得られた皮膜を有する金属材料の皮膜上に塗料を塗装する塗装工程と、塗装工程により塗装した塗料を乾燥させる乾燥工程とを含む製造方法により得ることができる。
【0032】
(塗装工程)
塗装工程で用いられる塗料としては、特に限定されず、例えば、油性塗料、繊維素誘導体塗料、フェノール樹脂塗料、アルキド樹脂塗料、アミノアルキド樹脂塗料、尿素樹脂塗料、不飽和樹脂塗料、ビニル樹脂塗料、アクリル樹脂塗料、エポキシ樹脂塗料、ポリウレタン樹脂塗料、シリコン樹脂塗料、フッ素樹脂塗料、さび止めペイント、防汚塗料、粉体塗料、水系塗料、溶剤塗料等の一般に使用される塗料が挙げられる。なお、塗料は、上塗り塗料、中塗り塗料及び下塗り塗料のいずれであってもよい。
【0033】
塗装の方法としては、特に限定されず、例えば、転がし塗り、電着塗装(例えばカチオン電着塗装)、スプレー塗装、ホットスプレー塗装、エアレススプレー塗装、静電塗装(例えば静電粉体塗装)、ローラーコーティング、カーテンフローコーティング、ハケ塗り、バーコーティング、流動浸漬法等の一般に使用される方法を適用することができる。
【0034】
(乾燥工程)
乾燥工程は、皮膜上に塗装された塗料を硬化させる又は焼き付ける工程である。塗料を乾燥させる方法としては、特に限定されず、例えば、自然乾燥、減圧乾燥、対流型熱乾燥(例えば、自然対流型熱乾燥、強制対流型熱乾燥)、輻射型乾燥(例えば、近赤外線乾燥、遠赤外線乾燥)、紫外線硬化乾燥、電子線硬化乾燥、ベーポキュア、焼付乾燥等が挙げられる。なお、これらの乾燥方法は、1つの方法のみを実施してもよく、2つ以上の方法を組み合わせて実施してもよい。
【0035】
(その他の工程)
なお、上記表面処理剤の乾燥工程の後であって、塗装工程の前に、水洗工程を行なってもよい。また、上記塗料の乾燥工程の後に水洗工程を行なってもよい。水洗工程を行なった場合には、その後に皮膜又は塗膜を有する金属材料の表面を乾燥させる工程を行なってもよい。
【0036】
<塗膜を有する金属材料>
本実施形態に係る塗膜を有する金属材料における塗膜は、単層であってもよく、複数層であってもよい。複数層の場合、各層における塗料の種類や塗装工程等は、それぞれ同じであってもよく、異なっていてもよい。
【実施例】
【0037】
以下、実施例によって本発明を詳細に説明する。なお、以下の実施例は例示であり、本発明を何ら限定しない。
【0038】
<表面処理剤の調製>
(実施例1~23及び比較例1~6)
各成分を混合した混合物を水に添加し、各成分が表1の濃度となるように実施例1~23及び比較例1~6の表面処理剤を調製した。
【0039】
なお、表1に記載の各成分は、以下に記載の化合物等を示す。
(成分α)アミノ基含有シランカップリング剤
α1:N-2-(アミノエチル)-3-アミノプロピルトリメトキシシラン
α2:3-アミノプロピルトリエトキシシラン
(成分β)アゾール環構造を有する化合物
β1:5-アミノ-1H-テトラゾール
β2:3-(2-ベンゾチアジルチオ)プロピオン酸
β3:2-メルカプトベンゾチアゾール
(成分γ)特定のアミノ化合物
γ1:モノエタノールアミン
γ2:ジエタノールアミン
γ3:トリエタノールアミン
γ4:m-アミノフェノール
(成分δ)他の成分
δ1:メガファックF553(DIC株式会社)
δ2:ニッサンアノンBF(日油株式会社)
δ3:サーフィノール440(日信化学工業株式会社)
【0040】
【0041】
<皮膜を有する金属材料の作製>
(金属材料)
金属材料として、JIS G3141:2011で規格された冷間圧延鋼板(株式会社パルテック製、以下SPCCと略称)を以下の処理に用いた。なお、金属材料の形状は縦150mm、横70mm、厚み0.8mmである。
【0042】
(金属材料の脱脂工程及び水洗工程)
上記金属材料の表面に、脱脂剤[ファインクリーナーE6478(日本パーカライジング株式会社製)を2質量%となるように水で希釈した水溶液]を45℃で2分間スプレーし、脱脂した。脱脂後、金属材料の表面に水を30秒間スプレーし、水洗した。
【0043】
(皮膜を有する金属材料の製造)
脱脂工程及び水洗工程を施した金属材料を実施例1~23又は比較例1~6の表面処理剤に常温で30秒間浸漬させた。浸漬後、金属材料の表面を100℃で5分間乾燥させ、金属材料の表面上に皮膜を有する金属材料(試験片No.1~29)を製造した。
【0044】
[皮膜を有する金属材料の評価]
<耐食性>
試験片No.1~29を、相対湿度90~100%RH(簡易湿度計で測定)の湿潤環境下において25℃で72時間曝露した。その後、各試験片の表面積において、錆が発生した面積の割合(%)を目視で測定し、以下の評価基準に基づいて耐食性を評価した。その結果を表2に示す。なお、耐食性は、評価が「B」以上を合格(実用レベル)とした。
【0045】
(評価基準)
A:錆の面積が0%以上5%未満である。
B:錆の面積が5%以上20%未満である。
C:錆の面積が20%以上である。
【0046】
【0047】
<塗膜を有する金属材料の製造>
(皮膜を有する金属材料の製造)
脱脂工程、水洗工程及びエアブローを施した金属材料を水平に設置し、金属材料の評価面(一方の表面)に対して、実施例1~23又は比較例1~6の表面処理剤を70mL/m2となるように滴下した。その後、各種表面処理剤を滴下した金属材料を100℃で5分間熱風乾燥させ、皮膜を有する金属材料を製造した。
【0048】
(塗膜を有する金属材料の製造)
コロナ荷電方式静電塗装ガン〔パーカーアイオニクス株式会社製GX-8000手動ガン〕を用いて、皮膜を有する金属材料の皮膜上に、エポキシポリエステル系粉体塗料〔日本ペイント・インダストリアルコーティングス株式会社製、ビリューシア アルティーカラー〕を、乾燥後の塗膜の厚みが60μmとなるように静電紛体塗装を施した。その後、180℃で20分間焼付けを行い、塗膜を有する金属材料(試験片No.30~58)を製造した。なお、塗膜の厚さは、電磁膜厚計(KETT社製電磁膜厚計LZ-200J)を用いて確認した。
【0049】
[塗膜を有する金属材料の評価]
<塗装後の外観>
試験片No.30~58の塗膜外観を目視で確認し、以下の評価基準に基づいて塗装後の外観を評価した。その結果を表3に示す。なお、塗装後の外観は、評価が「B」以上を合格(実用レベル)とした。
【0050】
(評価基準)
A:塗膜の外観に異常がない。
B:見る角度によって塗膜の外観に僅かに異常が確認できる。
C:塗膜の外観に異常が確認できる。
【0051】
<塗膜の密着性>
試験片No.30~58を沸騰した水に1時間浸漬した。その後、各試験片の表面における水分を拭き取り、カッターナイフを用い、評価面に対して金属材料に達するように、1mm間隔で100マス(縦10マス×横10マス=100マス)の碁盤目状に切り込みを入れた。次に、碁盤目状に切り込みを入れた評価面に対してセロハンテープを貼り付けた後、セロハンテープを剥がし、評価面に残存した1mm角の塗膜の数を計測し、以下の評価基準に基づいて塗膜の密着性を評価した。その結果を表3に示す。なお、塗膜の密着性は、評価が「B」以上を合格(実用レベル)とした。
【0052】
(評価基準)
A:評価面に残存した塗膜のマス数は100個であった。
B:評価面に残存した塗膜のマス数は80個以上100個未満であった。
C:評価面に残存した塗膜のマス数は80個未満であった。
【0053】