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特許7508203最適化された剛性プロファイルを利用して改善された快適性及び改善された安定化を有する回転安定化されたコンタクトレンズ
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-21
(45)【発行日】2024-07-01
(54)【発明の名称】最適化された剛性プロファイルを利用して改善された快適性及び改善された安定化を有する回転安定化されたコンタクトレンズ
(51)【国際特許分類】
   G02C 7/04 20060101AFI20240624BHJP
【FI】
G02C7/04
【請求項の数】 9
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2019111755
(22)【出願日】2019-06-17
(65)【公開番号】P2019219660
(43)【公開日】2019-12-26
【審査請求日】2022-05-12
(31)【優先権主張番号】16/010,906
(32)【優先日】2018-06-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】510294139
【氏名又は名称】ジョンソン・アンド・ジョンソン・ビジョン・ケア・インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】Johnson & Johnson Vision Care, Inc.
【住所又は居所原語表記】7500 Centurion Parkway, Jacksonville, FL 32256, United States of America
(74)【代理人】
【識別番号】100088605
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 公延
(74)【代理人】
【識別番号】100130384
【弁理士】
【氏名又は名称】大島 孝文
(72)【発明者】
【氏名】ゲーリー・リチャードソン
【審査官】吉川 陽吾
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-045055(JP,A)
【文献】国際公開第2009/139021(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02C 7/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転安定化されたコンタクトレンズであって、
乱視を矯正するように構成されたオプティカルゾーンと、
前記オプティカルゾーンを取り囲み、回転安定性を提供するように構成された周辺ゾーンであって、回転安定性が、非円形性コンポーネント、厚さ差コンポーネント、及び剛性プロファイルコンポーネントの設計パラメータの組み合わせを組み込み、最適化することによって、達成されている、周辺ゾーンと、を備え、
前記非円形性コンポーネントが、第1の中心を有する前記コンタクトレンズの前記周辺ゾーン内に適合する内接直径によって画定される、第1の有効寸法と、第2の中心を有する前記コンタクトレンズの前記周辺ゾーンの周囲の外接直径によって画定される、第2の有効寸法と、を含み、前記第1の有効寸法と前記第2の有効寸法との比が、0.6~0.95の範囲内にあり、
最大厚さ及び最小厚さを有する前記厚さ差コンポーネントが、前記最大厚さと前記最小厚さとの間の差によって定義され、
前記厚さ差コンポーネントが、0.1mm~0.4mmの範囲であり、
前記剛性プロファイルコンポーネントが、コンタクトレンズの材料の弾性率に前記コンタクトレンズの厚さの2乗を乗じることによって生成される剛性プロファイル曲線を前記コンタクトレンズの経線に沿って半径方向位置で積分したものから、前記剛性プロファイル曲線を半径6.0~6.8mmの半径方向位置で積分したものを引いて正規化されたものとして定義され、0.021~0.109MPa×mmの範囲である、コンタクトレンズ。
【請求項2】
前記内接直径が、13.5mm~14.5mmの範囲内にある、請求項1に記載のコンタクトレンズ。
【請求項3】
前記外接直径が、14.0mm~20.0mmの範囲内にある、請求項1に記載のコンタクトレンズ。
【請求項4】
前記第1の有効寸法と前記第2の有効寸法との前記比が、0.8~0.95の範囲内にある、請求項1に記載のコンタクトレンズ。
【請求項5】
前記周辺ゾーンの形状が非対称である、請求項4に記載のコンタクトレンズ。
【請求項6】
前記第1の中心と前記第2の中心とが一致する、請求項4に記載のコンタクトレンズ。
【請求項7】
前記第1の中心と前記第2の中心とが一致していない、請求項4に記載のコンタクトレンズ。
【請求項8】
一致していない前記第1の中心と前記第2の中心が、同じ水平経線上にある、請求項7に記載のコンタクトレンズ。
【請求項9】
一致していない前記第1の中心と前記第2の中心が、同じ垂直経線上にある、請求項7に記載のコンタクトレンズ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、眼用レンズに関し、より具体的には、回転安定化されたコンタクトレンズに関する。具体的には、本発明は、レンズの形状を最適化し、回転回復及び快適性モデリングを利用して、それにより、レンズにおける許容可能な回転安定性を確保しながら、眼の改善された快適性を達成する、設計及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
コンタクトレンズは、医療用デバイスとみなされ、視力の矯正のため、及び/又は美容若しくは他の治療上の理由で装用される場合もある。コンタクトレンズは、1950年代以降、視力を改善するために商用的に利用されてきた。初期のコンタクトレンズは、硬質材料から製造又は製作され、比較的高価で脆弱であった。これらのコンタクトレンズは、現在依然として利用されているが、最初の快適性が低いため、全ての患者に適しているわけではない。その後のこの分野における発展によって、ヒドロゲル系のソフトコンタクトレンズがもたらされ、今日では非常に一般的で広く利用されている。ソフトコンタクトレンズが導入され、装用者が体験する快適性が大いに改善された。コンタクトレンズの1つのタイプは、球面コンタクトレンズであり、大部分が均一な度数を提供し、これらのレンズは実質的に球面であるため、それらは回転対称であり、したがって眼上の回転配置又は位置決めは主な懸念ではない。乱視矯正を必要とする患者については、球面屈折力補正に加えて円柱屈折力補正を提供して、視力矯正を実現することができる。これらのレンズは、トーリックレンズと呼ばれる場合があるが、眼に装用されている間、正しい向きで回転安定化されるオプティカル設計を必要とする。乱視の患者において、レンズの相対的な回転配向は、自身の視力を矯正するために重要である。
【0003】
乱視は、角膜及び/又は水晶体の非回転対称の湾曲によって生じる。通常の角膜は、実質的に回転対称であるが、乱視を有する個体はそうではない。言い換えると、眼の角膜は、ある方向において、別の方向より湾曲しているか、又は勾配が大きく、それによって、画像は、単一点に集中せずに焦線に広がる。球面/単一視レンズではなくトーリックレンズを使用して、これに対処することができる。トーリックレンズは、相互に垂直な2つの配向で、2つの異なる度数を有するオプティカル要素である。本質的には、トーリックレンズは、単一のレンズに組み込まれた、近視又は遠視を矯正するための1つの度数を有する球面レンズと、乱視を矯正するための特定の軸における1つの度数を有する円柱レンズと、を有する。これらの度数は、好ましくは眼に対して維持される様々な角度で配向された曲率で生成される。トーリックレンズの適切な回転配向は、したがって、乱視を適切に矯正するために不可欠である。しかしながら、使用時に、トーリックコンタクトレンズは、眼上で回転する傾向があるので、準最適な視力矯正を一時的に提供する場合がある。したがって、現在利用されているトーリックコンタクトレンズはまた、正しい視力矯正を維持するために、装用者が瞬きするか、又はきょろきょろするときに、コンタクトレンズを眼上で比較的安定的に、かつ適切な配向に保つ機構を備えている。この機構はまた、挿入後、又はレンズが適切な位置及び向きから外れるときに、レンズを眼上で安定かつ適切な配向に戻す働きをする。レンズの適切な配向を確保するために、バラスト又は優先的に厚いゾーン及び薄いゾーンなどのレンズを安定化させる多様な方法が、当技術分野で利用されてきた。安定化を実現するために多様な方法があるが、その全ては、程度の差はあるものの、特に、周辺領域において、コンタクトレンズの後方面と、眼の前方面及び同様に瞼との相互作用により様々な程度に影響を受けることとなり、また、視力及び主観的な装用者の快適性に悪影響を与える場合がある。
【0004】
現在、設計又は利用されている安定化ゾーンの課題は、コンタクトレンズの安定性と快適性とのトレードオフ、並びに安定化ゾーンの領域におけるレンズの厚さの増大に関連する物理的制約である。安定化ゾーンの表面勾配を増大させるといった、回転速度を改善するために設計を変更することにより、コンタクトレンズの厚さが増大し、快適性に悪影響を与える場合がある。更に、コンタクトレンズの設計は、2つの事項、すなわち、挿入時に適切な配向に回転することと、装用期間を通してその配向を維持することと、を達成しなければならない。従来の設計は、これらの複数の考慮事項間で性能のトレードオフを要する。今日の従来のレンズの多くは円形であるが、非円形の形状を採用することは、場合によっては、安定化と快適性とのバランスが最適化され、更に改善されることを確実にするための更なる柔軟性を提供する場合がある。
【0005】
米国特許第6,406,145号では、最小厚さ変化を有する回転安定化されたコンタクトレンズが開示されている。米国特許第6,491,392号では、安定化特徴の設計は、快適性を改善するためにスプライン又は多項式関数の使用を組み込んでおり、一方、米国特許第6,939,005号及び同第7,159,979号は両方とも、レンズを安定化させる時間を短縮するために厚さ差の変化率に焦点を合わせる。米国特許第7,201,480号及び同第7,682,019号は、安定化目的のために薄いゾーンの使用を採用する。
【0006】
乱視患者のニーズに対処するためのより最近の試みにおいて、例えば、米国特許第8,827,448号は、前方面の第1の円柱屈折力及びコンタクトレンズの後方面の第2の円柱屈折力による屈折矯正に対して、非点収差がないカスタマイズされたレンズの使用が提案されている。このような設計で視力の改善が実現されると提案されているが、これらのアイテムは、レンズのオプティカルゾーンに限定されており、これがどのように非対称形状の角膜と相互作用するのか。レンズの他の領域、最も顕著には、周辺領域における設計の変更も、視力の改善を目指すオプティカルゾーンに限定されるアイテムに対して依然影響力があり、悪影響を及ぼさないで、共存可能であり、レンズの性能を更に改善するだろう。
【0007】
安定化目的のための非円形レンズの初期使用は、主に安定化目的のためにレンズを増粘することを回避するために、米国特許第5,760,870号に開示されている。その‘870特許の発明者らは、レンズの増粘により、患者の不快感、望ましくない度数変化、及び厚化領域における酸素透過性を減少し、代わりに非円形レンズの使用を推奨し、得られたレンズのアスペクト比の差の、厚さ差ではない安定化を達成することを示した。より最近では、米国特許第8,668,331号では、セントレーション、回転、及び安定化の目的のためのレンズ-瞼相互作用を最大化するための非円形レンズの使用が開示されており、それは有益であり得る。本発明の譲受人と同じ譲受人に譲渡された米国特許出願公開第2014/0063444号には、安定化ゾーンと共に円形及び非円形の形状の使用が開示されている。しかしながら、組み合わせにおける形状及び厚さを最適化することは、記載されていない。特に角膜縁部の位置における角膜表面とのレンズ相互作用は、レンズの背後に封入された気泡をもたらすことができ、この状況は、レンズの直径が典型的には角膜縁部の位置を越えて延在するため、より大きな直径のレンズでより優勢であり得る。本発明と同じ譲受人に譲渡された米国特許第9,778,487号は、特に関連技術であり、レンズ設計を最適化するために、非円形性差及び厚さ差を利用して組み合わせる方法を記載している。
【0008】
要約すると、この空間内の以前の技術革新の大部分は、選択的レンズの増粘、レンズの薄化、プリズムバラスト、及び他の方法によって安定化のこの問題に対処しようと試みてきたが、これらの全ては一般的に、厚さ差の設計として特徴付けることができる。限定された数は、非円形レンズを使用する解決策に関して調べられており、円形性/非円形性の設計として一般的に特徴付けられてもよく、これは、場合によっては乱視を完全にマスクしようと試みられている。更に、レンズ設計及び材料の両方における著しい改善にもかかわらず、多くのコンタクトレンズ装用者は、依然として不快感に関連する理由で脱落している。出願人は、一連のモデル化ツールを使用してレンズ設計に対処することを全体的に検討している人はほとんどいなく、成功している人は更に少ないと考えている。出願人は、これらのようなツールの使用により、レンズ設計がそれが置かれる角膜表面とどのように相互作用するか、及び改善された快適性を有する回転安定化を達成するために、どのように幾何学的レンズパラメータを最適化することができるかについての洞察を提供し得ると考えている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
したがって、高い快適性及び視力矯正を維持しながら、眼性能の改善を達成するために、非円形性及び厚さ差を同時に最適化することによって達成される回転安定性を更に改善するコンタクトレンズが必要とされている。第2の目的は、より大きい直径のレンズの後ろに閉じ込められた気泡の除去又は防止であろう。特に、角膜縁領域を越えて延在するレンズをもたらす安定化特徴及び直径を有するレンズは、気泡がレンズの後ろに閉じ込められている傾向がより高い。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明によるコンタクトレンズは、レンズの中心座屈を防止し、角膜縁部(角膜が強膜と交わる領域)を越えて持ち上がることを最小化して、気泡形成を防止し、接触応力の均一な分布を提供し、並びに満足のいく又は改善された快適性を達成しながらも、容易かつ適切に配向される、最適化された設計を有する非円形レンズ設計を提供することにより、上記で簡潔に述べた先行技術に関連する欠点を克服する。具体的には、レンズ形状全体を使用し、及び予測的な眼モデルからのフィードバックに基づいて、安定化ゾーンの再形成を最適化することによって、より従来のアプローチを使用して達成されたものでは得られない結果を達成することができる。
【0011】
出願人は、レンズの縁の形状(非円形性又は直径方向のアスペクト比)と、採用される厚さ差の量との間に好ましい関係が存在するという発見に基づいて更に改善した。出願人によって共通に所有され、参照により本明細書に組み込まれる、米国特許第9,778,487号を参照されたい。‘487特許のアプローチは、安定化された配向、快適性、及び取り扱いについて最適化されたレンズをもたらし、それによって、非円形性又は厚さ差のいずれかのアプローチのみでは得られない改善された性能結果を可能にした一方で、出願人の本発明は、レンズの同等の回転回復を依然として提供し、レンズ下での気泡形成の発生及びサイズを減少させながら、眼上にある間のレンズの快適性の更なる改善を実現するために、剛性プロファイルの更なる態様を追加する。
【0012】
米国特許第9778487号に開示されているように、非円形性及び厚さ差の両方を、レンズ設計を最適化するために活用することができる。本発明では、出願人らは、追加の態様を組み込むことによって、この方法論及び結果として得られるレンズ設計を更に改善した。すなわち、米国特許第9778487号に採用されている方法論のそれに対する剛性プロファイルである。本発明によれば、これは、直径方向及び円周方向の両方の材料の賢明な配置によって達成され、これは、典型的な現況技術の安定化されたレンズ設計の同様の回転回復を可能にするが、厚さ差が大幅に減少されるという利益が加えられる。我々は、これを剛性プロファイルと呼ぶ。非円形性及び厚さ差の両方が、指定された厚さ差と組み合わせて非円形性の選択を分析することによって、2次的な最適な設計を達成することができる、設計自由度の第1の2次元を表す場合、出願者らは、剛性プロファイルを表す本発明に従う第3の設計寸法の追加が、設計空間の3次元のそれぞれにおいて最適設計を達成するための追加の設計柔軟性及び設計オプションを提供でき、それにより、出願人が所有する米国特許第9778487号の2次元設計空間に存在する、最適設計を更に改善することを決定した。
【0013】
剛性は、材料の弾性率及び厚さの両方の関数である。Eを弾性率、及びtを所与の点での法線厚さ(曲げ剛性)とすると、Eにtの3乗を乗じた立方として剛性を計算することができる。他のものは、Eにtを乗じたものとして、剛性を定義する(伸張剛性)。本発明では、出願人らは、Eにtの2乗を乗じたものとして定義される剛性プロファイルを使用することを選択したが、これは厳密な意味で正確な剛性ではないが、実際には剛性に比例する。
【0014】
一態様によれば、本発明は、快適性を最大化しながら、眼上のコンタクトレンズの安定化を最適化するための方法を目的とする。この方法はいくつかの工程を含み、第1の工程は、非円形性コンポーネント及び厚さ差を有する周辺形状のマトリクスセットを定義する工程であり、ここにおいて、非円形性コンポーネントが、真円から95%~60%の範囲であり、厚さ差が、0.1mm~0.4mmの範囲であり、マトリクスセットが、2つの非円形性値の最小値、及び2つの厚さ差値の最小値を含む。次いで、これに続いて、所与の非円形性コンポーネント及び所与の厚さ差についてのマトリクスセットにおける各項目についての安定化までの時間を計算し、次いで、マトリクスセットにおける各項目についての安定化までの時間を示す等高線プロットを作成する。次いで、等高線プロットを評価し、最大の快適性、安定化までの最小の時間、又は最小の製造困難性の3つの変数のうちの少なくとも1つに基づいて、好ましい領域を画定し、次いで、好ましい領域の境界内で最適な安定化時間を生成する、非円形性コンポーネント、及び厚さ差の両方を有する、周辺形状を最終的に選択する。その非円形性コンポーネント(すなわち、直径方向のアスペクト比)及び厚さ差を有する結果として得られる周辺形状が、更なる最適化を必要とする場合、結果として得られる組み合わせが所望の条件を達成するまで、プロセスを繰り返すことができる。
【0015】
別の態様によれば、本発明は、視力を矯正するための内側オプティカルゾーンと、回転安定性を提供するように構成された外側ゾーンと、を有するコンタクトレンズを目的とし、ここにおいて、回転安定性は、非円形性、すなわち我々が呼ぶ減少した直径方向のアスペクト比と、厚さ差コンポーネントとの組み合わせによって達成される。非円形性又は減少する直径方向のアスペクト比は、内接円及び外接円と比例的に関連し、及び画定される一対の有効寸法、並びにこれらの円の中心を位置決めして、非円形形状のファミリーを作成することによって記述され得る。非円形性の直径方向のアスペクト比又は範囲は、0.6~0.95であることが好ましい。厚さ差コンポーネントは、レンズの最大厚さと最小厚さとの差によって定義されてもよく、この差は、0.1mm~0.4mmであることが好ましい。周辺ゾーンは、対称性及び非対称性の両方であり得る。レンズ形状の有効寸法を画定する外接及び内接円の中心は、一致していても、一致していなくてもよく、同じ又は異なる垂直又は水平経線上にあってもよい。
【0016】
更に別の態様によれば、本発明は、コンタクトレンズの剛性プロファイルを活用する3次的な設計原理を更に備える、コンタクトレンズを目的とする。非円形性及び厚さ差に加えて、剛性プロファイル(あるいはレンズの材料の賢明な配置)を利用して、レンズの回転安定性を推進する形状の性質と結果として生じる眼上の快適性の間の最適なバランスを達成する。これにより、性能を最大化すること、及び眼上にある間のレンズの快適性を更に改善することの両方を可能にする。具体的には、本発明によれば、出願人らは、所与の非円形性及び厚さ差について、依然として十分な回転回復を確実にしながら、材料の賢明な配置によって、厚さ差を最大約50%更に減少させることができ、それは30~50%の範囲が好ましいと決定した。この減少により、眼上のレンズの快適性が改善され、気泡形成の減少がもたらされる。出願人らは、30%未満の減少が、気泡形成の減少に有意な影響を及ぼさないが、50%を超える値は、回転回復を確実にするのに十分ではないと決定した。
【0017】
更に別の態様によれば、本発明は、眼上のコンタクトレンズの安定化の最適化をなおも達成しながら、最大快適性の範囲を更に改善する方法を目的とする。この方法はいくつかの工程を含み、第1の工程は、非円形性コンポーネント及び厚さ差を有する周辺形状のマトリクスセットを定義する工程であり、ここにおいて、非円形性コンポーネントが、真円から95%~60%の範囲であり、厚さ差が、0.1mm~0.4mmの範囲であり、マトリクスセットが、2つの非円形性値の最小値、及び2つの厚さ差値の最小値を含む。複数の分析ツールを使用して、非円形性及び最適かつ更に減少した厚さ差と相まって最適な剛性プロファイルを定義することにより、設計空間の3次元のそれぞれにおいて最適化された設計がもたらされ、それは快適性の更なる改善を可能にする。次いで、これに続いて、所与の非円形性コンポーネント、所与の厚さ差、及び最適化された剛性プロファイルについてのマトリクスセットにおける各項目についての安定化までの時間を計算し、次いで、マトリクスセットにおける各項目についての安定化までの時間を示す等高線プロットを作成する。次いで、等高線プロットを評価し、最大の快適性、安定化までの最小の時間、又は最小の製造困難性の3つの変数のうちの少なくとも1つに基づいて、好ましい領域を画定し、次いで、好ましい設計容積空間の境界内で最適な安定化時間を生成する、非円形性コンポーネント、厚さ差、及び剛性プロファイルを有する、周辺形状を最終的に選択する。その非円形性コンポーネント(すなわち、直径方向のアスペクト比)、厚み差、及び剛性プロファイルを有する結果として得られる周辺形状が、更なる最適化を必要とする場合、結果として得られる組み合わせが所望の条件を達成するまで、初期レンズ設計パラメータを変更することによって、プロセスを繰り返すことができる。
【0018】
安定化の最適化は、レンズがその所望の回転位置にどれだけ迅速に安定化するかを評価することによって測定することができる。一方で、レンズの快適性は、幾分主観的であるが、それでも分析方法によって予測され、臨床研究によって確認され得る。非円形性及び厚さ差の両方が独立して、異なる方法で安定化時間の減少を達成することができるが、この2つの組み合わせは、どちらかの項目のみよりも、安定化時間をより効果的に改善することができるだけでなく、本発明に従って、より快適な様式でも安定化時間を効果的に改善することができる。剛性プロファイルの使用は、安定化時間を犠牲にすることなく得られる、快適性のレベルを更に改善する。厚さ差の減少は快適性を向上させることができるが、これはまた、安定化効果に悪影響を及ぼす。非円形性の増加は、安定化効果を改善するが、快適性を犠牲にし、製造困難性及びコストを増加し、並びに取り扱い上の困難性を増加する場合がある。最適な剛性プロファイルは、安定化を達成するために必要とされる最小レベルの厚さだけが利用され、したがって快適性を更に改善するために、半径方向及び円周方向の両方におけるレンズの厚さの最適配置を可能にする。
【0019】
本発明によれば、1つの目的は、これらの複数のアプローチを利用して、いずれかの単一のアプローチのみを使用するものより良好に機能する、最適化された設計を得る方法を提供することである。別の目的は、このアプローチが採用されるときに得られるレンズ設計である。更に別の目的は、本発明に従って開示される方法を使用して、既存の設計を改善することである。本発明のコンタクトレンズは、追加の費用なしで任意のタイプのコンタクトレンズのオプティカル要素と共に利用され、臨床的快適性及び/又は生理学機能を改善するように最適化することができる。加えて、治療薬と組み合わされたコンタクトレンズなどの組み合わせ製品、及び美容用パターンを有する美容レンズもまた、本発明の利益を活用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
本発明の上述及び他の特徴と利点は、添付図面に例証されるような、本発明の好ましい実施形態の以下のより具体的な記載から明白となるであろう。
図1A】本発明による、非円形レンズ自体を通じて見た、レンズ及びその領域の代表的な図を提供する。
図1B】本発明による、図1Aに示される非円形レンズの断面表現図を提供する。
図2A】様々な円形(従来の)レンズ形状及び非円形レンズ形状、並びに本発明に従って非円形性又は直径方向のアスペクト比の程度がどのように定義されるかについての概略表現図を提供する。
図2B】様々な円形(従来の)レンズ形状及び非円形レンズ形状、並びに本発明に従って非円形性又は直径方向のアスペクト比の程度がどのように定義されるかについての概略表現図を提供する。
図2C】様々な円形(従来の)レンズ形状及び非円形レンズ形状、並びに本発明に従って非円形性又は直径方向のアスペクト比の程度がどのように定義されるかについての概略表現図を提供する。
図2D】様々な円形(従来の)レンズ形状及び非円形レンズ形状、並びに本発明に従って非円形性又は直径方向のアスペクト比の程度がどのように定義されるかについての概略表現図を提供する。
図2E】様々な円形(従来の)レンズ形状及び非円形レンズ形状、並びに本発明に従って非円形性又は直径方向のアスペクト比の程度がどのように定義されるかについての概略表現図を提供する。
図3】円形レンズ直径及びレンズ厚さ差の両方の様々な条件に対する臨床的快適性の読取値の等高線図を提供するが、一方で、臨床的快適性スコアの値が高いほど、より快適な状態を表す。
図4A】様々な直径方向のアスペクト比(非円形性)及び様々な厚さ差を安定化させるための閾値時間の実験的等高線図を提供し、更に本発明に従って、所与の非円形又は直径方向のアスペクト比及び厚さ差のための所望のレンズ機能性を達成するために、この情報をどのように活用するかを提供する。
図4B】様々な直径方向のアスペクト比(非円形性)及び様々な厚さ差を安定化させるための閾値時間の実験的等高線図を提供し、更に本発明に従って、所与の非円形又は直径方向のアスペクト比及び厚さ差のための所望のレンズ機能性を達成するために、この情報をどのように活用するかを提供する。
図4C】様々な直径方向のアスペクト比(非円形性)及び様々な厚さ差を安定化させるための閾値時間の実験的等高線図を提供し、更に本発明に従って、所与の非円形又は直径方向のアスペクト比及び厚さ差のための所望のレンズ機能性を達成するために、この情報をどのように活用するかを提供する。
図4D】様々な直径方向のアスペクト比(非円形性)及び様々な厚さ差を安定化させるための閾値時間の実験的等高線図を提供し、更に本発明に従って、所与の非円形又は直径方向のアスペクト比及び厚さ差のための所望のレンズ機能性を達成するために、この情報をどのように活用するかを提供する。
図5】本発明による、2次最適化プロセスに採用される方法の代表的なフローチャートを示す。
図6】本発明による、設計空間の3次元のそれぞれにおける最適化された設計に採用される方法の代表的なフローチャートを示す。
図7】設計空間の3次元のそれぞれにおける最適化された設計のための更なる設計寸法として、有効面積/剛性プロファイルを追加する例を示す図であり、得られた設計空間は、様々な直径方向のアスペクト比(非円形性)、様々な厚さ差及び剛性プロファイルの3つの設計寸法によって画定される。
図8A】代表的な設計がどのように挙動するかを示す、回転/偏心モデルの幾分典型的な出力図を提供する。
図8B】代表的な設計がどのように挙動するかを示す、回転/偏心モデルの幾分典型的な出力図を提供する。
図8C】代表的な設計がどのように挙動するかを示す、回転/偏心モデルの幾分典型的な出力図を提供する。
図9A】3つの異なる設計構成の結果、及びこの場合、快適性のプロキシとして機能する瞼自体のストレス状態にそれぞれが及ぼす影響を示す、出願人の瞼快適性モデルからの典型的な出 力図を提供し、及び比較するものである。
図9B】3つの異なる設計構成の結果、及びこの場合、快適性のプロキシとして機能する瞼自体のストレス状態にそれぞれが及ぼす影響を示す、出願人の瞼快適性モデルからの典型的な出力図を提供し、及び比較するものである。具体的には、図9Bは、図9Aの詳細図である。
図9C】3つの異なる設計構成の結果、及びこの場合、快適性のプロキシとして機能する瞼自体のストレス状態にそれぞれが及ぼす影響を示す、出願人の瞼快適性モデルからの典型的な出力図を提供し、及び比較するものである。
図9D】3つの異なる設計構成の結果、及びこの場合、快適性のプロキシとして機能する瞼自体のストレス状態にそれぞれが及ぼす影響を示す、出願人の瞼快適性モデルからの典型的な出力図を提供し、及び比較するものである。具体的には、図9Dは、図9Cの詳細図である。
図9E】3つの異なる設計構成の結果、及びこの場合、快適性のプロキシとして機能する瞼自体のストレス状態にそれぞれが及ぼす影響を示す、出願人の瞼快適性モデルからの典型的な出力図を提供し、及び比較するものである。
図9F】3つの異なる設計構成の結果、及びこの場合、快適性のプロキシとして機能する瞼自体のストレス状態にそれぞれが及ぼす影響を示す、出願人の瞼快適性モデルからの典型的な出力図を提供し、及び比較するものである。具体的には、図9Fは、図9Eの詳細図である。
図10】3つの異なる設計構成の結果、及びそれが眼の角膜/角結膜と相互作用するときに、レンズ内の接触応力の均一又は不均一な分布に与えるそれぞれの影響を示す、出願人の仮想ラッピングモデルからの典型的な出力図を提供する。
図11A】現況技術のトーリックレンズ、現況技術の非トーリックレンズ、及び本発明による最適化された設計、並びにそれぞれが典型的な眼の表面トポロジーとどのように相互作用するかを示す図である。
図11B】現況技術のトーリックレンズ、現況技術の非トーリックレンズ、及び本発明による最適化された設計、並びにそれぞれが典型的な眼の表面トポロジーとどのように相互作用するかを示す図である。
図11C】現況技術のトーリックレンズ、現況技術の非トーリックレンズ、及び本発明による最適化された設計、並びにそれぞれが典型的な眼の表面トポロジーとどのように相互作用するかを示す図である。
図12A】本発明による代表的な設計の剛性プロファイルを、現況技術の設計の多数のベンチマークと比較して示す図である。
図12B】有効面積(剛性プロファイルのプロキシ、したがって快適性)がどのように決定されるかを示す図である。
図12C】有効面積(剛性プロファイルのプロキシ、したがって快適性)がどのように決定されるかを示す図である。
図13A】仮想回転偏心分析モデルを使用して計算された、2つの代表的なレンズ設計の回転回復に要する時間(すなわち、レンズが位置から45度だけ回転して、安定化するのに要する時間)を示す図である。
図13B】仮想回転偏心分析モデルを使用して計算された、2つの代表的なレンズ設計の回転回復に要する時間(すなわち、レンズが位置から45度だけ回転して、安定化するのに要する時間)を示す図である。
図14A】2つの代表的な設計についての時間的なレンズ位置の角度分布を示し、それらが回転回復の点でどのように有意に異なるかを示す図である。
図14B】2つの代表的な設計についての時間的なレンズ位置の角度分布を示し、それらが回転回復の点でどのように有意に異なるかを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明の目的のために、図1Aに示されるコンタクトレンズ10は、少なくとも2つのはっきりと異なる領域によって画定される。つまり、視覚矯正が得られる内側領域11と、目の上におけるコンタクトレンズ10の機械的安定性をもたらす、コンタクトレンズ10の外側の周辺領域13である。内側領域11と外側領域13との間に位置する第3の任意選択の中間領域12は、急激な不連続性が生じないような円滑な様式で、2つの前述の領域を融合するために利用され得る。いくつかの例示的な実施形態では、中間領域12は必要なくてもよい。
【0022】
内側領域11、すなわちオプティカルゾーンは、視力矯正を提供し、単一視の矯正、乱視の視力矯正、二焦点の視力矯正、多焦点の視力矯正、カスタム矯正等の特定のニーズ、又は視力矯正を提供し得る任意の他の設計のために設計される。外側周辺部、すなわち周辺ゾーン13は、セントレーション及び配向を含む、眼上のコンタクトレンズの基本的なフィット感及び安定性を提供する。回転安定性は、オプティカルゾーンが乱視矯正及び/又は高次収差矯正などの非回転対称性の特徴を含むとき不可欠である。任意選択の中間領域又はゾーン12により、オプティカルゾーン及び周辺ゾーンは確実に円滑に融合することができる。オプティカルゾーン11と周辺ゾーン13との両方は、相互作用が存在する場合、それぞれの設計が強く関係する場合があるが、独立して設計されてもよいことに留意することは重要である。例えば、乱視用のオプティカルゾーンを有するトーリックレンズの設計は、眼上の所定の配向にコンタクトレンズを維持するための特定の周辺ゾーンを必要とするだろう。
【0023】
本発明の目的のために、コンタクトレンズはまた、図1Aのレンズの断面図である図1Bに示されるような前面14と、後面又はベースカーブ15と、周縁部16と、により画定される。コンタクトレンズの前面及び後面は、少なくとも2つの領域、視覚矯正が得られる内側領域11と、眼上のコンタクトレンズの機械的安定性を提供するコンタクトレンズの外側領域13又は周辺部とによって説明される。前述したように、内側領域11と外側領域13との間に位置する任意選択の中間領域12は、上記で説明されたような不連続性が生じないような連続的及び/又は円滑な様式で、2つの前述の領域を接合及び/又は融合するために使用され得る。特定の状況では、非円形の設計では、中間領域12は、不連続性を回避しながら、円形オプティカルゾーンから非円形周辺部へと容易に移行することを可能にし、レンズ10の径方向寸法に沿ってより円滑な厚さの変化を行うことを可能にする。
【0024】
レンズの厚さは、最適化可能である重要な変数であり、3つの領域のいずれかにおいて、好ましくは、前面14と後面15との間のベースカーブに垂直な方向に沿った相対距離を単に測定することによって外側又は周辺領域13において決定され得る。厚さ差は、レンズの公称厚さ部分とレンズの公称薄さ部分との間の差として定義される。公称厚さ部分は、レンズの最大周辺厚さを表す。レンズの公称薄さ部分は、最小周辺厚さの経線に沿って位置するが、レンズの最大厚さのものと比例的に同等の半径方向距離での厚さとして特定される。これは、安定化効果及び快適性の両方の目的のために重要な変数である。一般に、厚さの差が大きいほど安定化効果がより効果的であり、残念ながら、より大きな厚さの差は装用者にとってより顕著である傾向があり、特に高感度のレンズ装用者にとって、より不快感をもたらす場合がある。本発明によれば、所与の厚さ差の減少又は百分率を使用する効果を計算することができ、この減少又は百分率の効果の所与のレンズ設計が安定化するのにかかる時間への影響、並びに快適性への影響を計算することができる。また、所望の厚さ差を直接的に標的化することもできる。今日までの我々の研究及び経験は、0.1mm~0.4mmの範囲の厚さ差が、本発明による効果的な安定化を依然として達成しながら、快適性を改善するためにより好ましいことを示した。
【0025】
周縁部16は、コンタクトレンズ10の縁であり、最適化スキームにおいて検討すべき別の有用な変数である。本発明において、周縁部16の形状は、非円形であることが好ましく、また非対称であってもよい。本目的のために、円形性/非円形性は、レンズの周辺形状内に適合することができる最大内接直径を、レンズの周辺形状の周囲に適合する最小の外接直径で除した比として定義される。したがって、従来の円形コンタクトレンズでは、これらの2つの直径が等しくなるだけでなく、内接及び外接直径の両方の中心が一致するであろう。本発明によれば、非円形性は楕円形レンズをもたらし得る。これは、最大内接直径の中心及び最小外接直径の中心が一致するが、それぞれの直径が図2Bに示されるように等しくないときに生じる。非円形性、又は我々が直径方向のアスペクト比と呼ぶものはまた、水平経線又は垂直経線のいずれかに対して非対称のレンズを含んでもよい。この非対称レンズタイプは、内接及び外接直径の中心が、垂直又は水平経線に沿ってそれぞれ整列されるが、一致しない場合に生じ得る。最後に、本発明による別の非円形性の例は、一致しない中心が水平又は垂直のいずれかに位置合わせされていない、非対称プロファイルを含んでもよい。
【0026】
円形レンズ(円形が直径方向のアスペクト比が100%に等しいと定義されている)に対して厚さ差だけの減少を見ると、その影響は、元の厚さ差の百分率が減少するにつれて安定化までの時間が増大することである。所与の開始厚さ差について、増加する非円形性、あるいは減少する直径方向のアスペクト比を評価すると、安定化までの時間のわずかな減少、続いて変化がなく、続いて安定化までの時間の増加を見ることができる。したがって、直径方向のアスペクト比が100%から減少するにつれて、円形レンズ(直径方向のアスペクト比が100%に等しい)で開始する95%の厚さ差について、安定化までの時間は、約85%の直径方向のアスペクト比で最小に達するまで減少し、85%レベルで反転をもたらした後に、直径方向のアスペクト比が更に減少し、次いで、安定化時間は、直径方向のアスペクト比が更に減少すると増加する。しかしながら、この傾向及び変化率は、異なる厚さ差で変化する。本発明のように、厚さ差を減少させることに同時に結合される、増加する非円形性又は減少する直径方向のアスペクト比の組み合わせを検討すると、安定化するまでの最小時間の局所領域を決定することができるように、非円形性又は厚さ差だけで達成可能な改善された製品を定義することができる。
【0027】
図2A図2Eは、5つの代表的な状況の実施例を提供する。第1の実施例では(図2Aを参照)、内接円及び外接円(図示せず)がレンズ直径に等しい、等しい直径を有する、従来の円形コンタクトレンズ20が示されている。加えて、3つの全ての中心(内接、外接、及びレンズ自体)は、一致しており、上位-下位軸26と鼻部-側頭部軸28との交点に配置される。したがって、円及び中心の位置は両方とも、レンズ20の周縁部と変わらない。楕円形の形状である第1の非円形の実施例(図2Bを参照)では、内接円22及び外接円24は異なる直径を有するが、それらの中心は一致する。これにより、非円形レンズの形状20は、上位-下位軸(垂直経線)26及び鼻部-側頭部軸(水平経線)28の両方に対して対称である。図2Cでは、内接円22の中心は、外接円24の中心に対して距離27だけ、鼻部-側頭部軸(水平経線)28に沿って変位される。これにより、上位-下位対称性を保持する一方で、鼻部-側頭部非対称性がもたらされる。同様に、図2Dでは、内接円22の中心は、外接円24の中心に対して距離29だけ、上位-下位軸(垂直経線)26に沿って変位される。これにより、鼻部-側頭部対称性を保持する一方で、上位-下位非対称性がもたらされる。この一連における最後の代表的な実施例が図2Eに示されており、ここにおいて、内接円22は、外接円24に対して、鼻部-側頭部軸26及び上位-下位軸線28の両方に沿って変位される。これにより、非対称レンズ形状20がもたらされる。図2C図2Eに示されるように、中心位置の水平オフセット27及び垂直オフセット29の範囲、並びに内接22及び外接24の円の直径は、関連するだけでなく、代表的な5つの実施例に示されるものを超える多数の非円形レンズ形状を作成するために、変更されてもよく、また異なっていてもよい。
【0028】
図3は、厚さ差と、円形レンズの複数の垂直寸法/直径との間の関係を考慮したときの快適性の等高線を示す。このプロットでは、48の快適性の読取値は、48よりも高い快適性の読取値よりも快適性が劣る。見ることができるように、厚さ差を減少させる全体的な傾向は、厚さの差を減少させるのにつれて快適性を更に改善するが、快適性が改善される割合もまた、直径/寸法依存性である。また、大きな厚さ差(>75%)では、円形直径が14.0から14.5まで増加するにつれて、75%を超える所与の厚さ差について快適性の増加があることも見ることができる。これは、所与の厚さ差について、円形直径が14.0から14.5まで増加するにつれて、55%未満である所与の厚さ差についての快適性が減少する、より小さな厚さ差(<55%)とは対照的である。この実施例では、最小百分率の厚さ差と組み合わせた14mm寸法/直径は、66以上の値を持つ最も高いレベルの快適性をもたらす。14.00mmよりも大きい、又は小さい垂直直径を選択できる一方で、以下の実施例は、14.00mmの垂直直径の状況に焦点を合わせる。
【0029】
厚さ差及び非円形性の両方を活用することによって達成される関係及び相乗効果は重要であるが、直径の効果も考慮する必要がある。以下の実施例は、直径方向のアスペクト比の様々な百分率に基づいて、対応する水平直径を有する14.00mmの垂直直径レンズについて論じる。図4A図4Dは、本発明による好ましい領域49をもたらす、厚さ差及び非円形性の関係を示す。この領域は、快適性、並びに安定化時間及び製造の容易さなどの他の考慮事項を最大化するものである。図4A図4Dに示される等高線プロットは、14.0mmの一貫した垂直寸法/直径を有するレンズと、90超から-50未満までの秒の尺度化/正規化を安定させるための閾値時間を示す等高線バンド又は領域とに基づく。閾値時間は、モデルの理論予測に従って、レンズが最終静止位置の10度以内で安定化するのにかかる時間として定義される。予測される時間の正規化は、開始設計の安定化にかかる時間に関連する。
【0030】
図4Aは、安定化するまでの14.0mmの垂直直径のレンズについての閾値時間の代表的な等高線プロット40を示す。対応する水平直径は、14.0mmの垂直直径を、直径方向のアスペクト比で除することによって得られる。したがって、94%の直径方向のアスペクト比の群は、14.89mmの水平直径に相当する一方で、残りの直径方向のアスペクト比に関しては、88%の直径方向のアスペクト比の群が15.91mmの水平直径に相当する等である。一定の水平直径を有するそれぞれの直径方向のアスペクト比の群について、それぞれの厚さ差を評価した。このプロットは、示される直径方向のアスペクト比及び厚さ差の組み合わせのそれぞれについて、データ点のセット(等高線プロット40上の黒点として示される)から構築された。各データ点は、特定の直径方向のアスペクト比及び厚さ差の組み合わせについて、3つの眼上で安定化するまでの閾値時間の平均である。閾値時間は、所与の開始設計のために得られる閾値時間に正規化される(0未満の値は、開始設計よりも速い安定化時間を示す)。このプロットは、厚さ差変化(水平軸)42の両方の影響、並びにレンズ周辺部の直径方向のアスペクト比又は非円形性変化(垂直軸)44を変化させる影響を示す。図示されるように、この等高線プロット40は単調ではなく、したがって、両方の変数が同時に考慮される場合、他よりも望ましい非円形性及び厚さ差の組み合わせをもたらす。
【0031】
図4Bに示されるように、非円形性の程度を増加させるか、又は直径方向のアスペクト比を減少させる一方で、厚さ差の減少が利用されることに応じて、得られる安定化時間応答は、選択された組み合わせに応じて異なる。一例として、所与の経路(等高線46)上の3つの位置は、等高線プロット40上の約97%の厚さ差に対応する位置経路41、約75%の厚さ差に対応する位置経路43、及び約59%の厚さ差に対応する位置経路45に強調される。参照することができるように、必要とされる非円形性の程度は、等高線46によって示される同じレベルの安定化時間を達成するために、特定の位置経路ごとに異なる。この特定の等高線(図4Bの46として記される)は、臨床研究によって支持されるような、所望される最大安定化時間に対応し、開始設計を安定化させるために、それらの時間よりも大きく、かつそれよりも短い閾値時間の間の分割線である。この等高線の下の値は、安定化時間に対してより許容可能であろう一方で、考慮される必要がある快適性及び製造の容易さなどの他の考慮事項又はトレードオフが存在する。
【0032】
先に述べたように、厚さ差を増加させると一般的に安定化時間が減少するが、快適性もまた減少し得る。出願人によって実行された臨床研究は、許容可能な快適性と厚さ差の関係を示す。これらの内部臨床研究に基づいて、元の厚さ差の70%未満の厚さ差減少は、70%を超えるものと比較してより許容可能な快適性を提供するように見えるので、この例では、図4Bに示すように、70%の厚さの差での垂直境界47の左側の値が好ましいと決定した。
【0033】
図4Cに関して、非円形性の程度はまた、安定化までの加速時間にも寄与する一方で、ここでもトレードオフが存在する。非円形性の増加又は直径方向のアスペクト比を減少に伴って円形設計から離れるにつれて、あるレベルの非円形度を超えると、製造の複雑さが増すとともに、取り扱いの容易さに関連する困難性が増す。したがって、図4Cに示されるように、水平境界線48として等高線プロット40上に表される非円形性又は直径方向のアスペクト比の範囲を、80%より上に維持することが好ましいと決定される。したがって、本発明によれば、垂直境界47の左側、水平フロア48の上、及び上部等高線バンド46の対応する部分の下に保つと、この事例において、本発明による垂直直径14.00mmのレンズについて示されるレンズ厚さ差及びレンズの非円形性を採用して、最適な安定化特徴を生成するための、安定化までの時間、装用者の快適性、挿入/取り扱いの容易さ、並びに製造可能性の複雑さ、の相互関連の考慮事項を最大にする、好ましい領域49(陰影付き)を画定することができる。
【0034】
本発明の好ましい態様では、前述の好ましい領域49の境界内に留まりながら、他のものよりも1つの考慮事項に焦点を合わせることによって、レンズ性能を更に向上させることを選択することができる。例えば、安定化時間を減少させることが他の考慮事項よりも重要である場合、好ましい領域49の右下隅に配置される、非円形性及び厚さ差を有する設計を作成するであろう。最も重要な考慮事項として、快適性の増加により集中した場合、厚さ差を減少し、したがって、好ましい領域の左側部分に配置する非円形性及び厚さ差を選択することによって、快適性を高めることになる。最後に、挿入の容易さ及び/又は製造可能性の問題に一層関心がある場合、それは設計上の考慮事項に関連するので、好ましい領域の上部を標的にし、好ましい領域内にある非円形性及び対応する厚さ差の範囲が最小限に抑えられた、レンズ設計を製造するであろう。
【0035】
前述のように、非円形及び厚さ差の組み合わせのセットに対して選択された垂直直径は、固有の応答面を生成する。垂直直径の増加又は減少(それによる、非円形及び厚さ差の組み合わせの新たなセット)は、図4Dに示すように、この応答面が変化し、好ましい領域49が主に好ましい領域49の垂直方向へのシフトの形態で移動することをもたらす。
【0036】
例示的な実施形態によれば、垂直直径の増加は、より速い安定化時間をもたらし、したがって、好ましい領域の対応する上方シフト50をもたらすと考えられる。したがって、垂直直径の減少は、安定化時間を増加させ、好ましい領域の下方シフト51を生成する。
【0037】
任意の初期開始設計を採用することができ、本発明に従って説明される方法論を使用して更に改善することができるが、開始点として既知の設計で開始し、その非円形性に対する修正によってその機能性を改善し、厚さ差の減少を導入して、より快適であり効果的に安定化された設計を達成することが好ましい。既知の設計は、プロセス、以前に商業化された設計、又は以前の既存の設計で機能することができる。
【0038】
図5に示されるように、フローチャート500は、工程501で、最初に初期の開始レンズ設計パラメータを定義するか、又は既存の設計の予め定義されたレンズ設計パラメータを使用して開始する。所与の設計では、最初に、初期厚さ差を計算する(工程502)。これは、開始点、並びに厚さ差の最大値であり、したがって、100%厚さ差として指定される。所与の開始レンズ設計(円形又は非円形)に関しては、開始レンズの形状のより多くの非円形バージョンを徐々に達成するために、アスペクト比を変更することによって、周縁部プロファイルを再設計することができる。所与の垂直直径寸法から開始すると、直径方向のアスペクト比を使用して、円形設計の50~95%、好ましくは、円形設計の60~95%、最も好ましくは、円形設計の80~95%の値のそれぞれのファミリーの水平直径寸法を画定する(工程503)。このプロセスは、適切な工程又は厚さ差の増分を使用して、開始値の50%~100%の各厚さ差について、及び適切な非円形性増分において、最大50%の非円形性までの各直径方向のアスペクト比のオプションについて繰り返される(工程504)。直径方向のアスペクト比及び厚さ差の全ての順列が定義されると、各順列の安定化時間が計算される(工程505)。次いで、マトリクスに値を追加し、対応する等高線プロットを作成することができる(工程506及び工程507)。それぞれの開始設計は、安定化時間の等高線プロットについて異なる結果をもたらすが、同じファミリーの設計では、同一でない場合であっても、同様の形状及び傾向を期待することができる。次の工程は、以下の工程によって、結果として得られる等高線プロット上の好ましい領域を特定することである。最大化されるべき快適性のレベルに応じて、50~100%の垂直厚さ差境界を特定する工程、取り扱いの容易さ及び製造性の容易さに応じて、好ましい領域の水平フロアとしての非円形性の下限を特定する工程、並びに最終的に、正規化された開始設計の安定化時間についての等高線のそれ以下である安定化時間についての最大結果の等高線を識別して、最適な形状を最終的に選択するために同等の、又は必要に応じて、安定化の改善を確実にする工程(工程508及び509)。工程508において領域が適切でないと決定した場合、次いで工程502に戻ることによって、これらの代替直径が更に快適性、取り扱い、及び製造の容易さを更に改善するかどうかを確認するために、開始直径よりも大きい又は小さい直径についてのプロセスを繰り返すことができる。このプロセスは、所望の結果を達成するために反復的に繰り返すことができる。
【0039】
更なる設計寸法として剛性プロファイルを追加することにより、設計空間の3次元のそれぞれにおける最適化された設計のための方法を利用することができ、これは、非円形性及び厚さ差のみを組み合わせて最適化することによって達成され得るものを更に改善する。図6に示されるような工程は、図5のフローチャートに示されるものと同様であるが、ここで、工程605の追加は、剛性プロファイルパラメータを第3の入力として加えることによって設計の精緻化のレベルを増加させ、したがって、この方法の結果として得られるレンズは、設計空間の3次元のそれぞれにおいて最適化された設計となる。
【0040】
図6に示されるように、フローチャート600は、工程601で、最初に初期の開始レンズ設計パラメータを定義するか、又は既存の設計の予め定義されたレンズ設計パラメータを使用して開始する。最適化されるべきパラメータ/コンポーネント/設計寸法の順序は変更され得るが、非円形性/アスペクト比、続いて厚さ差、次いで剛性プロファイルの順で開始することが好ましい。したがって、最初に、非円形アスペクト比を開始することを選択する。所与の開始レンズ設計(円形又は非円形)に関しては、開始レンズの形状のより多くの非円形バージョンを徐々に達成するために、アスペクト比を変更することによって、周縁部プロファイルを再設計することができる。所与の垂直直径寸法から開始すると、直径方向のアスペクト比を使用して、円形設計の50~95%、好ましくは、円形設計の60~95%、最も好ましくは、円形設計の80~95%の値のそれぞれのファミリーの水平直径寸法を画定する(工程602)。次に、最初の厚さ差を計算することができる(工程603)。これは、開始点、並びに厚さ差の最大値であり、したがって、100%厚さ差として指定される。このプロセスは、適切な工程又は厚さ差の増分を使用して、開始値の50%~100%の各厚さ差について、及び典型的に適切な非円形性増分(好ましくは1~5%)において、最大50%の非円形性までの各所望の直径方向のアスペクト比のオプションについて繰り返される(工程604)。直径方向のアスペクト比及び厚さ差の全ての順列が定義されると、設計に対する剛性プロファイルの影響を評価することによって、設計を更に最適化することができる(工程605)。具体的には、出願人らは、特に厚さ差が存在する大径の非円形レンズを設計する際に、材料の賢明な配置によってレンズ安定化のための満足な回転回復を依然として達成しながら、レンズの快適性において更なる利益が得られ得ることを発見した。
【0041】
この様式で進めることによって、典型的なトーリックレンズの剛性プロファイルのものから減少され、したがって快適性を改善する、最適化された剛性プロファイルを作り出すことができる。これらの最適化された剛性プロファイルは、十分な安定性を依然として確保しながら、非トーリック剛性プロファイルのアプローチに近づく。これらのレンズの非円形性及び大きい直径のために、それらは角結膜トポグラフィーの角膜縁領域と相互作用する可能性がより高い。この領域における角結膜の形状の変化により、角結膜とのレンズ相互作用は、レンズの剛性によって影響を受ける。これにより、レンズ下での気泡形成、又はレンズ認識、結膜染色若しくは印象などの他の状況をもたらすことができる。したがって、これはまた、積極的な様式で角膜縁領域と相互作用することによって改善された性能を有する、レンズを設計する機会も提示する。レンズが眼上に配置されたときに、コンタクトレンズの下に空気が閉じ込められること(すなわち、エアポケットの形成)によって形成される気泡は、最適な剛性プロファイルよりも小さい大径レンズで生じ得る。気泡は、レンズ材料の透過性を通過する気泡、又は単にレンズの下から漏れ出た気泡によるレンズ移動のいずれかに起因して時間的に消散するが、レンズの適切な剛性プロファイルを設計することによって、これらの気泡の発生を最小限に抑える及び/又は軽減することができる。出願人らは、50~95%の非円形性を有し、0.1~0.4mmの既存の厚さ差を有する、以前に最適化された非円形レンズの最大50%の剛性プロファイルの更なる減少が、満足のいく安定化/回復時間を依然として達成しながら、レンズの下の気泡の快適性、排除、又は有意な減少の更なる改善をもたらし得ることを決定した。本出願人らによる試験は、50%を超える値がレンズ位置の安定化/回復に悪影響を及ぼし始めるので、剛性プロファイルのこれらの更なる減少が、好ましくは30~50%であることを示した。
【0042】
工程606で最初に定義された変数のマトリクスセットを用いて、各順列の安定化時間を、予測される快適性及び眼のラッピングの程度と共に計算する(工程607)。次いで、マトリクスに値を追加し、対応する等高線プロットを作成することができる(工程608)。それぞれの開始設計は、安定化時間の等高線プロットについて異なる結果をもたらすが、同じファミリーの設計では、同一でない場合であっても、同様の形状及び傾向を期待することができる。次の工程は、以下の工程によって、結果として得られる等高線プロット上の好ましい領域を特定することである。最大化されるべき快適性のレベルに応じて、50~100%の垂直厚さ差境界を特定する工程、取り扱いの容易さ及び製造性の容易さに応じて、好ましい領域の水平フロアとしての非円形性の下限を特定する工程、並びに上限が、現況技術の標準的なトーリック有効面積よりも幾分小さい形状によって境界される、剛性プロファイル曲線下の面積によって測定されるような理想的な剛性プロファイルを決定し、したがって快適性の測定可能な改善を達成する工程。その一方で、下限は、現況技術の非トーリックレンズの非常に快適な方向で有効面積が最小化されるが、回転回収時間によって測定されるように、適切な安定化が依然として達成されるレベルまでにのみ最小化される、形状によって境界される。最終的に、本発明によれば、正規化された開始設計の安定化時間についての等高線のそれ以下である安定化時間についての最大結果の等高線を識別して、最適な形状を最終的に選択するために同等の、又は必要に応じて、安定化の改善が確実にされる(工程609及び610)。工程609において領域が適切でないと決定した場合、次いで工程601に戻ることによって、これらの代替入力が快適性、取り扱い、安定化回復時間及び製造の容易さを更に改善するかどうかを確認するために、開始直径よりも大きい又は小さい直径、異なる厚さ差又は剛性プロファイルの使用を別々に又は組み合わせて、プロセスを繰り返すことができる。このプロセスは、所望の最適な結果を達成するために反復的に繰り返すことができる。
【0043】
更なる設計寸法として剛性プロファイルを追加することにより、非円形性及び厚さ差のみを組み合わせて最適化することによって達成され得るものを更に改善する、設計空間の3次元のそれぞれにおける最適化された設計を達成することができる。設計空間の第1の2次元における設計最適化は、図4Dの好ましい領域49として視覚化及びグラフィカルに表示された非円形性及び厚さ差の2つの入力を用いて得られた、設計パラメータを活用する。本発明によれば、設計空間の3次元のそれぞれにおける最適化された設計は、追加の設計自由度として剛性プロファイルの追加入力を提供し、したがって、2次元設計空間から、複数の解決策が存在し得る3次元設計容積への図4Dの好ましい領域49の変換をもたらす。この代表的な設計容積700は、図7にグラフィカルに示されている。3次元設計容積700は、図4Dの2次元の好ましい領域49が決定された方法と同様の様式で決定される。再び図7を参照すると、直径方向のアスペクト-厚さ差平面上の好ましい領域701が決定され、これは図4Dの好ましい領域49と同等である。図4Dの好ましい領域49と、図7の好ましい容積700との間の唯一の違いは、我々がここで、最適な非円形性及び厚さ差の値に加えて、剛性プロファイルの影響の最小702及び最大703の許容条件を決定することである。剛性プロファイルのこれらの上及び下の条件は、厚さが両方のコンポーネントであるため、厚さ差に関連する。剛性プロファイルが厚さ差と異なる場合、出願人らは、厚さ差を有する所与の非円形レンズについて、材料が配置されている場所が配置される材料の量にとって重要であると決定した。そのようにすることで、安定化/回復時間に悪影響を及ぼすことなく、剛性プロファイルの追加の減少を実現することができる。本発明に従って、出願人らは、好ましい最小剛性プロファイル(702)が0.021MPa・mmであり、好ましい最大剛性プロファイル(703)が0.109MPa・mmであることを決定した。
【0044】
幾何学的/機械的なレンズ構成の影響及び最適化の両方を評価する際に、出願人によって採用されるモデルのいくつかについて、簡単に概説することは有益であろう。
【0045】
回転回復モデル
前述のように、回転及び安定化の両方は、乱視レンズ設計に対して基本的である。特定のレンズ安定化特徴の影響をより良く理解するために、出願人は、コンタクトレンズが眼と相互作用する結果としての眼上のコンタクトレンズの回転及び偏心をシミュレートする、数値回転及び偏心モデル(RCMと指定される)を開発し、利用している。具体的には、このモデルは、モデルの眼の形状と相互作用するレンズの形状の関数として、レンズの移動(回転/並進)を予測する。モデルの眼は、個々に良好に特徴付けられた眼、又は母集団平均を表す複合眼の形状であり得る。このモデルは、レンズに力を付与する瞼力学を含み、レンズ及び眼の両方の材料及び幾何学的特性を利用して、眼上にある間のコンタクトレンズの結果として生じる移動(回転/並進)を計算する。このモデルは、眼上で安定化するまでのレンズ設計に必要な時間を計算するのに有効である。仮想レンズを変位又は回転させることができ、シミュレーションされた瞬きの後、安定化までに必要な時間を決定することができる。したがって、レンズの形状を変更することにより、結果として生じるレンズの眼上の移動が影響及び変化し、次いで、様々な設計の結果として得られる測定値を比較し、及び評価することができる。このモデルからの代表的な出力を図8に示す。
【0046】
瞼快適性モデル
角膜(すなわち、角結膜)上のコンタクトレンズの安定化は重要であるが、同等に重要なことは快適性である。結膜は、角膜及び瞼の内側表面の両方を覆う眼の粘膜であり、高度に血管形成され、神経支配され、したがってコンタクトレンズの存在に対して非常に敏感である。これにより、コンタクトレンズと眼との相互作用、特に瞼と角膜との相互作用は、快適性の主要な要因となり得る。図9A図9Fに示されるように、瞼快適性モデルを採用して、コンタクトレンズと瞼との相互作用に基づいて、様々なレンズ設計及びそれぞれが快適性に与える影響を評価した。この瞼快適性モデルは、コンタクトレンズの機械的設計態様及び角結膜及び瞼とのそれらの相互作用に起因して瞼に及ぼす、接触圧及び剪断歪みの両方を予測することができる。図9Aに示されるような、現況技術の非トーリックレンズ901、及び図9Eに示されるような、現況技術のトーリックレンズ903の代表的な設計を使用した出力は、図9Cに示されるような、本発明による最適化されたトーリック設計902と共に示されている。図9A図9C、及び図9Dに示されるような代表的な等高線は、コンタクトレンズの装用に起因する上瞼における接触圧レベルのレベルの増加に対応する。対応する拡大詳細図(図9B図9D、及び図9Fを参照されたい)は、各設計の瞼における最大ピーク応力の面積を示し、本発明のレンズ902を見ると分かるように、レンズ902は、現況技術のトーリックレンズ903よりも実質的に低く、現況技術の非トーリックレンズ901と一致する接触圧を及ぼすことが分かり得る。図9C及び図9Dに示されるような本発明によるレンズのピーク応力状態922は、図9A及び図9Bに示されるようなピーク応力状態921を有する非トーリックレンズ901での瞼内のピーク応力と同等のレベルのピーク応力をもたらす。瞼内のこれら2つのピーク応力状態を、現況技術のトーリックレンズ903と相互作用するときの瞼内の図9E及び図9Fに示されるようなピーク応力状態923と比較すると、著しく低いレベルの応力が示されている。具体的には、ピーク応力面積921及び922を、923のものと比較すると、出願人らは、本発明のレンズと相互作用する瞼におけるピーク応力状態が、伝統的な現況技術のトーリックレンズと相互作用する瞼のピーク応力状態と比較して、ピーク応力状態を約35%減少させ、更に、減少したピーク応力状態が、快適性の点で最高クラスの非トーリックレンズのそれと非常に類似していることが分かることを分析的に示した。具体的には、モデル境界条件における異なる仮定であっても、本発明と現況技術の非トーリックレンズとの間の全ての差は、10%未満であった。したがって、出願人らは、最高クラスの非トーリックレンズの快適性レベル(瞼ピーク応力によって測定されるような)を達成しながら、現況技術のトーリックレンズのレンズ設計と同等に安定化した、本発明によるレンズ設計を最適化することができた。
【0047】
レンズラッピングの仮想的な決定
コンタクトレンズ材料は非常に柔軟であり、それは、コンタクトレンズ自体が角膜の周りを包むのを容易にすることができ、その結果、レンズ自体の歪み及びしたがって応力状態の変化をもたらすことができる。この変化した応力状態は、レンズの装用者による不快感に寄与し得る。レンズ内の応力の状態を使用し、有限要素方法論を採用することによって、レンズ設計を最適化して、眼の上にあるときのレンズ内の応力のより均一な分布を達成することができる。レンズ周縁部設計はまた、快適性に大きな影響を与えることができ、これを他の設計変数と協調させて考慮することは、これらの多くの場合に相反する設計要件を満たす設計を達成するために重要である。レンズがどのように眼の角膜表面に適合又はラップするかは、レンズ設計を成功させるための重要な決定要素である。図10に見られるように、コンタクトレンズのラッピングの評価及び仮想査定は、設計を最適化することを可能にする重要な洞察を提供することができる。このような最適化は、レンズ設計の中心座屈を防止すること、又は角膜縁部の上でレンズを持ち上げることを最小化して、気泡の形成を防止する、若しくはレンズによって眼の角膜若しくは角結膜に与えられる接触応力のより均一な分布を、更に最適化して達成することなどに対処できる。このモデルでは、図10に示されるように、レンズが角膜表面上に配置されたときのレンズの応力状態をより良く理解することを目的として、競合する設計を、既知の設計と比較するために、有限要素解析が用いられる。典型的な非トーリックレンズ(1001)は、安定化ゾーンの区域においてより高い応力状態を有する典型的なトーリックレンズ(1003)と比較して、かなり均一な接触応力状態を有する。本発明によれば、レンズ(1002)の接触応力状態は、安定化ゾーンの存在下でも、非トーリックレンズ(1001)と同様に、より均一である。
【0048】
剛性プロファイルは、材料の厚さ及び材料の弾性率の両方の関数であり、したがって、材料を半径方向及び円周方向の両方に配置する所与の材料(すなわち、弾性率)については、剛性プロファイルに影響を及ぼす可能性がある。同様に、材料の弾性率を単純に変更することによって、異なる剛性プロファイルを達成することができる。材料の異なる配置又は構成も厚さに影響を与えるため、剛性プロファイルの寸法はまた、厚さの違いにも関連する。複数の経線に沿った厚さプロファイルが、一緒になって、材料弾性率と組み合わされたときに、剛性プロファイルを決定することができる。したがって、材料の弾性率及び配置の両方を、単独で又は組み合わせて変更して、様々な剛性プロファイルを達成することができる。軸対称レンズのレンズ剛性を近似するために、レンズ材料の弾性率に、別個の半径方向位置で単一の経線に沿って取られた厚さの2乗を乗じることによって、剛性プロファイルを決定することができる。(下記式1を参照)。
剛性プロファイル=E×t 式1
式中、Eは材料の弾性率に等しく、及び
tは厚さに等しい。
【0049】
各経線の様々な剛性プロファイルの曲線下面積は、剛性プロファイルのプロキシとして使用することができ、レンズの快適性が剛性に関連するため、これらの面積測定値も、快適性のプロキシであり得る。この曲線下の面積を近似するために、厚さプロファイルは、半径方向寸法に沿った幅wの一定数の別個のセグメントに分割され、各セグメントの剛性は、式1によって計算され、幅wを乗じたものである。次いで、合計面積を各セグメントにわたって合計する。
【0050】
シリコーンヒドロゲル及び非シリコーンヒドロゲルコンタクトレンズの弾性率は、配合及びシリコーンの有無に応じて、0.4~1.6MPAの範囲であり得、シリコーンヒドロゲルコンタクトレンズは典型的には、非シリコーンヒドロゲルコンタクトレンズよりも大きい弾性率を有する。
【0051】
図11に示される一連の3つのプロットは、眼(1104)の角膜又は角結膜に適合された様々なレンズ設計を示す、個々の有限要素モデルとして表される様々なレンズ設計を示す。図11Aは、角膜縁領域のレンズ安定化ゾーンの厚化領域を明確に示す、角結膜(1104)に適合された典型的なトーリックタイプのレンズ(1103)の断面を示す。図11Bは、角膜縁領域におけるレンズの厚さの減少を明確に示す、非トーリックタイプのレンズ(1101)を有する類似のモデルを示す。図11Cは、最適化された非円形性、厚さ差、及び減少された剛性プロファイルと共に、最適化された安定化ゾーン及びより大きい直径を有する、本発明によるレンズ(1102)を示す。
【0052】
図12Aは、本発明のレンズによる2つの代表的なレンズ(1202a及び1202b)の剛性プロファイルと共に、典型的なトーリック(1203)及び非トーリック(1201)レンズの両方の様々な剛性プロファイルを示す。このプロットでは、水平軸はレンズの半径方向プロファイルを表し、一方で垂直軸は剛性プロファイルを表す。
【0053】
円形レンズ及び非円形レンズの両方において、レンズ自体の大径及び小径がより大きくなるにつれて、角膜縁の周りの角結膜の形状の変化が考慮される。人間の眼では、角膜縁部のこの区域は、典型的には、眼の中心から半径方向外側に約6~6.8mmに位置する。この位置におけるレンズの剛性もまた、レンズが角結膜形状とどのように相互作用するかとの影響を有するので、重要である。トーリックタイプのレンズは、安定化ゾーンの存在に起因して、この区域において比較的剛性が高くなる。出願人らは、レンズと角膜縁区域形状とのこの相互作用が、特に安定化又は回復時間の改善及び最適化に関連するときに、重要であると決定した。重要な考慮事項は、レンズがどの程度十分に又は完全にラップして表面プロファイルをたどるかを決定すること、又は代替的に、角膜縁区域を覆うように十分に堅いかを決定することである。この領域において、公正な比較を可能にし、及び全てのトーリックタイプのレンズが比較的堅いことに注目するために、有効面積から、角結膜が最も凹状である6.0~6.8mmの半径方向ゾーンを除外した。これにより、1つのレンズ設計を別のレンズ設計と比較し、並びに異なるレンズ設計タイプと比較するとき、剛性プロファイル曲線下の有効面積のより合理的な比較を可能にする。(すなわち、非トーリックートーリック)。大きなレンズと角膜縁区域との他の相互作用には、レンズ及びレンズの認識、結膜染色、及び/又は印象の下での気泡形成などのこうした項目が含まれる。出願人らは、これは、剛性プロファイルの最適化を利用して、気泡形成を緩和及び/又は防止し、並びにレンズ認識、結膜染色、及び/又は印象に関する状況を改善することができる、別の区域であると決定した。
【0054】
剛性プロファイルの計算及び最適化の方法論は、図12B及び図12Cに示されるような一例でより良く理解することができる。図12Bは、レンズ中心からその外側周縁部までの半径方向位置に基づく、レンズの典型的な剛性プロファイルを示す。図12Cは、除外された角膜縁部の領域における剛性プロファイル曲線下の面積を有する同じプロットを示す。(省略面積として指定)。曲線下の残りの面積(正規化された有効面積として指定される)は、あるレンズ構成/タイプから別のレンズ構成/タイプまでの相対剛性プロファイルを比較するために使用される面積である。この設計空間の3次元を具現化するのは、剛性プロファイル曲線下でのこの有効面積の最適化(及び減少)である。出願人らは、安定化ゾーンを有さない伝統的な非トーリックレンズ、並びに安定化ゾーンを有する伝統的なトーリックレンズの有効面積(すなわち、有効剛性(E×t×w)のプロキシ)を計算した。角膜縁領域(6.0~6.8mm)における曲線下の省略面積を含まないこれらの有効面積は、伝統的な非トーリックレンズ設計についての約0.04~0.05MPammから、伝統的なトーリックレンズ設計についての約0.10~0.11MPammの範囲である。伝統的なトーリックレンズのより大きな有効面積は、厚さが増加する傾向がある安定化ゾーンの存在によるものである。出願人らは、同等の安定化有効性を達成するが、剛性プロファイルが減少されたいくつかのレンズ形状を設計及び最適化し、本質的に、伝統的なトーリックレンズの典型的な剛性プロファイルにおける約35%~50%の減少、したがって快適性の改善をもたらした。本発明の追加的な実施形態によれば、出願人らは、有効面積に対する省略面積の比率を最大化することによって、快適性及び気泡減少の両方の観点から、レンズ性能を更に向上させることができると決定した。本発明によれば、以下に示す表1は、出願人により示唆されているように有効面積の減少と相まって変化する弾性率との相互作用を要約している。
【0055】
【表1】
0.105mmの開始時の伝統的な正規化された有効面積を使用
【0056】
低弾性率又は高弾性率材料がレンズに使用される場合には、最適化された剛性プロファイルは、0.021~0.109MPa×mmの範囲であり得、最適化された非円形性及び最適化された厚さ差と結合されると、改善された快適性及び満足できる安定化の両方を達成することができる。
【0057】
図13A及び図13Bは、典型的なレンズ(図13A)及び本発明によるレンズ(図13B)が、その最適な安定化された位置から45度人工的に再配置されたときに、それ自体を再配向するのに要する時間の様々な試験を示す。見ることができるように、非円形性、厚さ差、及び剛性プロファイルの組み合わせ及び最適化が利用される場合、顕著な改善が存在する。図14A及び図14Bは、45度位相をずらした最初の人工的な再位置決めの30、60及び90秒後のこれらの試験のそれぞれに対する、レンズの角度位置の分布を示す。商業市場の典型的な伝統的なトーリックレンズの図14Aの分布の程度と比較して、本発明によるレンズについての図14Bの分布の程度の顕著な減少に留意されたい。
【0058】
出願人らの発明に従って3つの全ての設計寸法が最適化されると、出願人らは、臨床試験により確認された、快適性に関連するときレンズの応力状態がより好ましいこと、臨床試験により気泡形成が減少することも確認されたこと、及びレンズの安定化及び回復時間が満足のいくもの以上であることを決定した。
【0059】
ここで図示及び説明した実施形態は、最も実用的で好適な実施形態と考えられるが、当業者であれば、ここに図示及び開示した特定の設計及び方法からの変更はそれ自体当業者にとって自明であり、本発明の趣旨及び範囲から逸脱することなく使用できることは明らかであろう。本発明は、説明し例証した特定の構成に限定されないが、添付の特許請求の範囲に含まれ得る全ての修正と一貫するように構成されているべきである。
【0060】
〔実施の態様〕
(1) 回転安定化された非切詰型コンタクトレンズであって、
視力を矯正するように構成されたオプティカルゾーンと、
前記オプティカルゾーンを取り囲み、回転安定性を提供するように構成された周辺ゾーンであって、回転安定性が、非円形性コンポーネント、厚さ差コンポーネント、及び剛性プロファイルコンポーネントからなる群からの少なくとも2つの設計パラメータの組み合わせを組み込み、最適化することによって、達成されている、周辺ゾーンと、を備える、コンタクトレンズ。
(2) 前記非円形性コンポーネントが、第1の中心を有する前記コンタクトレンズの前記周辺ゾーン内に適合する内接直径によって画定される、第1の有効寸法と、第2の中心を有する前記コンタクトレンズの前記周辺ゾーンの周囲の外接直径によって画定される、第2の有効寸法と、を含み、前記第1の有効寸法と前記第2の有効寸法との比が、約0.6~約0.95の範囲内にある、実施態様1に記載のコンタクトレンズ。
(3) 最大厚さ及び最小厚さを有する前記厚さ差コンポーネントが、前記最大厚さと前記最小厚さとの間の差によって定義されている、実施態様1に記載のコンタクトレンズ。
(4) 前記剛性プロファイルコンポーネントが、回転安定性の測定可能な減少を伴わずに、前記厚さ差コンポーネントを、最大約50%更に減少させることができる、実施態様1に記載のコンタクトレンズ。
(5) 前記内接直径が、約13.5mm~約14.5mmの範囲内にある、実施態様2に記載のコンタクトレンズ。
【0061】
(6) 前記外接直径が、約14.0mm~約20.0mmの範囲内にある、実施態様2に記載のコンタクトレンズ。
(7) 前記厚さ差が、約0.1mm~約0.4mmの範囲である、実施態様3に記載のコンタクトレンズ。
(8) 回転安定化された非切詰型コンタクトレンズであって、乱視を矯正するように構成されたオプティカルゾーンと、前記オプティカルゾーンを取り囲み、回転安定性を提供するように構成された周辺ゾーンであって、前記回転安定性が、前記レンズの非円形性コンポーネントの最適化、前記レンズの厚さ差コンポーネントの最適化、及び前記レンズの剛性プロファイルコンポーネントの最適化の組み合わせによって達成されている、周辺ゾーンと、を備え、前記非円形性コンポーネントが、真円の約60%~約95%であり、前記厚さ差コンポーネントが、約0.1mm~約0.4mmの範囲であり、前記剛性プロファイルが、約0.021~約0.109MPa×mmの範囲である、コンタクトレンズ。
(9) 眼の快適性を最大化しながら、安定化されたコンタクトレンズの設計を最適化する方法であって、非円形性コンポーネント、厚さ差コンポーネント、及び剛性プロファイルコンポーネントからなる群からの少なくとも2つの設計パラメータの組み合わせを有する、周辺形状のマトリクスセットを定義する工程であって、前記非円形性コンポーネントが、最大の内接直径を、最小の外接直径で除した比として定義され、前記比が、真円から約60%~約95%の範囲であり、前記厚さ差コンポーネントが、前記レンズの公称薄肉部分の公称厚さに対する付加的厚さとして定義され、前記厚さ差が、約0.1mm~約0.4mmの範囲であり、前記剛性プロファイルコンポーネントが、厚さプロファイル曲線下の有効面積から、角膜縁部の面積にレンズ材料の弾性率を乗じたものを引いたものとして定義され、前記剛性プロファイルが、約0.021~約0.109MPa×mmの範囲であり、前記マトリクスセットが、少なくとも2つの非円形性値、2つの厚さ差値の最小値、及び2つの剛性プロファイル値の最小値からなる群からの少なくとも2つの設計パラメータの組み合わせを含む、定義する工程と、所定のセットのマトリクス値について、前記レンズが眼上で安定化するまでの時間を計算する工程と、前記マトリクスセット内に提供された前記値について、前記レンズが安定化するまでの時間を示す等高線プロットを作成する工程と、前記等高線プロットを評価し、3つの変数のうちの少なくとも1つに基づいて、好ましい領域を画定する工程であって、前記変数が、レンズ厚さの関数である最大の快適性、安定化までの最小の時間、及び非円形性の関数である最小の製造困難性を含む、評価及び画定する工程と、前記好ましい領域内で安定化するまでの時間を生成する、非円形性コンポーネント、厚さ差コンポーネント、及び剛性プロファイルコンポーネントからなる群からの前記設計パラメータのうちの少なくとも2つを有する前記周辺形状を選択する工程と、選択された非円形性コンポーネント、対応する選択された厚さ差、及び選択された剛性プロファイルからなる群からの前記設計パラメータのうちの少なくとも2つを有するコンタクトレンズを製造する工程と、を含む、方法。
(10) 前記レンズの前記剛性プロファイルが、角膜縁領域の発生直前に、第1の剛性から第2の剛性に滑らか、かつ迅速に移行するように構成され、前記第2の剛性が、前記第1の剛性よりも大きい、実施態様8に記載のコンタクトレンズ。
【0062】
(11) 前記レンズの前記剛性プロファイルが、最小化される剛性比を更に含み、前記剛性比が、前記角膜縁領域の内部の前記剛性プロファイルの合計を、前記角膜縁領域の外部の前記剛性プロファイルの合計で除したものとして定義されている、実施態様10に記載のコンタクトレンズ。
(12) 前記剛性比が、約0.55~約0.65の範囲内にある、実施態様11に記載のコンタクトレンズ。
(13) 前記第1の有効寸法と前記第2の有効寸法との前記比が、約0.8~約0.95の範囲内にある、実施態様2に記載のコンタクトレンズ。
(14) 前記周辺ゾーンの形状が非対称である、実施態様13に記載のコンタクトレンズ。
(15) 前記第1の中心と第2の中心とが一致する、実施態様13に記載のコンタクトレンズ。
【0063】
(16) 前記第1の中心と第2の中心とが一致していない、実施態様13に記載のコンタクトレンズ。
(17) 前記一致しない中心が、同じ水平経線上にある、実施態様16に記載のコンタクトレンズ。
(18) 前記一致しない中心が、同じ垂直経線上にある、実施態様16に記載のコンタクトレンズ。
図1A
図1B
図2A
図2B
図2C
図2D
図2E
図3
図4A
図4B
図4C
図4D
図5
図6
図7
図8A
図8B
図8C
図9A
図9B
図9C
図9D
図9E
図9F
図10
図11A
図11B
図11C
図12A
図12B
図12C
図13A
図13B
図14A
図14B