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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-21
(45)【発行日】2024-07-01
(54)【発明の名称】トナー及びトナーの製造方法
(51)【国際特許分類】
   G03G 9/087 20060101AFI20240624BHJP
   G03G 9/08 20060101ALI20240624BHJP
   G03G 9/097 20060101ALI20240624BHJP
【FI】
G03G9/087 331
G03G9/08 381
G03G9/097 371
G03G9/097 374
G03G9/097 375
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2019186992
(22)【出願日】2019-10-10
(65)【公開番号】P2021063861
(43)【公開日】2021-04-22
【審査請求日】2022-10-07
(73)【特許権者】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002860
【氏名又は名称】弁理士法人秀和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】細井 一人
(72)【発明者】
【氏名】高橋 徹
(72)【発明者】
【氏名】菅原 庸好
(72)【発明者】
【氏名】北村 伸
(72)【発明者】
【氏名】佐野 仁思
(72)【発明者】
【氏名】大山 一成
(72)【発明者】
【氏名】西村 悠
(72)【発明者】
【氏名】辻本 大祐
(72)【発明者】
【氏名】石上 恒
【審査官】高草木 綾音
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-012657(JP,A)
【文献】特開2012-236752(JP,A)
【文献】特開2001-235897(JP,A)
【文献】特開2009-151342(JP,A)
【文献】特開2020-063348(JP,A)
【文献】特開2020-063412(JP,A)
【文献】特開2020-086033(JP,A)
【文献】特開2011-203511(JP,A)
【文献】特開平07-244403(JP,A)
【文献】特開2020-173318(JP,A)
【文献】特開2012-242448(JP,A)
【文献】特開2018-041016(JP,A)
【文献】特開2010-160375(JP,A)
【文献】特開2016-191769(JP,A)
【文献】特開2015-225319(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03G 9/00-9/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
結着樹脂を含有するトナー粒子と、
無機微粒子Aと、
を有するトナーであって、
該結着樹脂が、下記式(1)で表される構造を有するポリエステルを含有し、
該ポリエステルが、主骨格に、両末端にヒドロキシ基を有するシリコーンオイルAに由来する構造を有するものであり、
該無機微粒子Aが、無機微粒子のシリコーンオイルBによる表面処理物であり、
該無機微粒子Aにおける、該シリコーンオイルBに由来する炭素量が、1.5質量%以上7.0質量%以下である、トナー。

(式(1)中、R及びRは、それぞれ独立して、水素、メチル基又はフェニル基を表し、nは10~80の整数を表す。)
【請求項2】
結着樹脂を含有するトナー粒子と、
無機微粒子Aと、
を有するトナーであって、
該結着樹脂が、下記式(1)で表される構造を有するポリエステルを含有し、
該ポリエステルが、主骨格に、両末端にヒドロキシ基を有するシリコーンオイルAに由来する構造を有するものであり、
該無機微粒子Aが、無機微粒子のシリコーンオイルBによる表面処理物であり、
該無機微粒子Aにおける、該シリコーンオイルBの炭素基準の固定化率が、55%以下である、トナー。

(式(1)中、R及びRは、それぞれ独立して、水素、メチル基又はフェニル基を表し、nは10~80の整数を表す。)
【請求項3】
前記無機微粒子Aにおける、前記シリコーンオイルBの炭素基準の固定化率が、55%以下である、請求項1に記載のトナー。
【請求項4】
前記トナー粒子100質量部に対する、前記無機微粒子Aの含有量が、0.07質量部以上6.00質量部以下である、請求項1~3のいずれか一項に記載のトナー。
【請求項5】
前記無機微粒子Aが、無機微粒子のシラン化合物による処理物のシリコーンオイルによる表面処理物である、請求項1~のいずれか一項に記載のトナー。
【請求項6】
前記無機微粒子Aが、シリカ微粒子及びアルミナ微粒子からなる群から選択される少なくとも一の無機微粒子を含有する、請求項1~のいずれか一項に記載のトナー。
【請求項7】
前記結着樹脂中の、前記式(1)で表される構造を有するポリエステルの含有量が、50質量%以上である、請求項1~のいずれか一項に記載のトナー。
【請求項8】
前記式(1)で表される構造を有するポリエステル中の、前記式(1)で表される構造の含有量が、0.3質量%以上5.0質量%以下である、請求項1~のいずれか一項に記載のトナー。
【請求項9】
前記R及び前記Rが、いずれもメチル基である、請求項1~のいずれか一項に記載のトナー。
【請求項10】
前記シリコーンオイルBが、ジメチルシリコーンオイル、メチルフェニルシリコーンオイル、メチルハイドロジェンシリコーンオイル及びフッ素変性シリコーンオイルからなる群から選択される少なくとも一を含有する、請求項1~のいずれか一項に記載のトナー。
【請求項11】
前記トナー粒子が粉砕トナー粒子である、請求項1~10のいずれか一項に記載のトナー。
【請求項12】
結着樹脂を含む組成物を溶融混練し混練物を得る工程、
該混練物を冷却し冷却物を得る工程、
該冷却物を粉砕してトナー粒子を得る工程、及び
該トナー粒子の表面に無機微粒子Aを外添する工程
を含み、
該結着樹脂が、下記式(1)で表される構造を有するポリエステルを含有し、
該ポリエステルが、主骨格に、両末端にヒドロキシ基を有するシリコーンオイルAに由来する構造を有するものであり、
該無機微粒子Aが、シリコーンオイルBで表面処理された無機微粒子であり、
該無機微粒子Aにおける、該シリコーンオイルBに由来する炭素量が、1.5質量%以
上7.0質量%以下である、トナーの製造方法。

(式(1)中、R及びRは、それぞれ独立して、水素、メチル基又はフェニル基を表し、nは10~80の整数を表す。)
【請求項13】
結着樹脂を含む組成物を溶融混練し混練物を得る工程、
該混練物を冷却し冷却物を得る工程、
該冷却物を粉砕してトナー粒子を得る工程、及び
該トナー粒子の表面に無機微粒子Aを外添する工程
を含み、
該結着樹脂が、下記式(1)で表される構造を有するポリエステルを含有し、
該ポリエステルが、主骨格に、両末端にヒドロキシ基を有するシリコーンオイルAに由来する構造を有するものであり、
該無機微粒子Aが、シリコーンオイルBで表面処理された無機微粒子であり、
該無機微粒子Aにおける、該シリコーンオイルBの炭素基準の固定化率が、55%以下である、トナーの製造方法。

(式(1)中、R及びRは、それぞれ独立して、水素、メチル基又はフェニル基を表し、nは10~80の整数を表す。)
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、電子写真法、及び静電記録法などに用いられる静電荷像を現像するためのトナー及びトナーの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
電子写真法を用いた画像形成装置において、更なる省電力化やウェイトタイムの短縮化などの要望が従来よりも強くなっている。これらに対応するために、トナーとしては低温定着性が求められている。
他方、様々な使用環境下においても長期間にわたって安定した高品位な画像を出力するためには、トナーの帯電性が温度や湿度に影響されにくく、トナー帯電量の変化が小さいことが必要とされている。
【0003】
低温定着性を達成する目的で、結着樹脂としてシャープメルト性に優れるポリエステル樹脂が従来用いられてきた。しかしながらポリエステル樹脂は、分子中にカルボキシ基および水酸基を有するため、帯電量が湿度の影響を受けやすいという課題があった。
特許文献1では、ポリエステル樹脂の帯電性の湿度依存性を改良する手段として、樹脂の酸価を下げる手法が開示されている。
【0004】
また、トナーの帯電性を向上する目的で、疎水化度を高めた無機微粒子が外添剤として従来用いられてきた。
特許文献2では、無機微粒子の疎水化度を高める手段として、無機微粒子をシラン化合物等で表面処理した後にさらにシリコーンオイルで表面処理する手法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開昭62-291668号公報
【文献】国際公開第2009/139502号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1のトナーにおいては、トナーの帯電性の湿度依存性はある程度改良されるが、長期の耐久に伴うトナー帯電安定性に関しては改善の余地がある。特に、高温高湿環境下で帯電量が低下しやすく、画像濃度の変化が大きくなる場合がある。
また、特許文献2のトナーは、無機微粒子の疎水化度は高まるが、トナーの吸湿性がまだ高いために、高温高湿環境で長期保管された場合の帯電性に改善の余地がある。
本開示は上述した課題を解決するものであり、高温高湿環境下においても帯電安定性に優れたトナーを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示のトナーは、
結着樹脂を含有するトナー粒子と、
無機微粒子Aと、
を有するトナーであって、
該結着樹脂が、下記式(1)で表される構造を有するポリエステルを含有し、
該ポリエステルが、主骨格に、両末端にヒドロキシ基を有するシリコーンオイルAに由来する構造を有するものであり、
該無機微粒子Aが、無機微粒子のシリコーンオイルBによる表面処理物であり、
該無機微粒子Aにおける、該シリコーンオイルBに由来する炭素量が、1.5質量%以上7.0質量%以下である
また、本開示のトナーは、
結着樹脂を含有するトナー粒子と、
無機微粒子Aと、
を有するトナーであって、
該結着樹脂が、下記式(1)で表される構造を有するポリエステルを含有し、
該ポリエステルが、主骨格に、両末端にヒドロキシ基を有するシリコーンオイルAに由来する構造を有するものであり、
該無機微粒子Aが、無機微粒子のシリコーンオイルBによる表面処理物であり、
該無機微粒子Aにおける、該シリコーンオイルBの炭素基準の固定化率が、55%以下である。
【0008】
本開示のトナーの製造方法は、
結着樹脂を含む組成物を溶融混練し混練物を得る工程、
該混練物を冷却し冷却物を得る工程、
該冷却物を粉砕してトナー粒子を得る工程、及び
該トナー粒子の表面に無機微粒子Aを外添する工程
を含み、
該結着樹脂が、下記式(1)で表される構造を有するポリエステルを含有し、
該ポリエステルが、主骨格に、両末端にヒドロキシ基を有するシリコーンオイルAに由来する構造を有するものであり、
該無機微粒子Aが、シリコーンオイルBで表面処理された無機微粒子であり、
該無機微粒子Aにおける、該シリコーンオイルBに由来する炭素量が、1.5質量%以上7.0質量%以下である
また、本開示のトナーの製造方法は、
結着樹脂を含む組成物を溶融混練し混練物を得る工程、
該混練物を冷却し冷却物を得る工程、
該冷却物を粉砕してトナー粒子を得る工程、及び
該トナー粒子の表面に無機微粒子Aを外添する工程
を含み、
該結着樹脂が、下記式(1)で表される構造を有するポリエステルを含有し、
該ポリエステルが、主骨格に、両末端にヒドロキシ基を有するシリコーンオイルAに由来する構造を有するものであり、
該無機微粒子Aが、シリコーンオイルBで表面処理された無機微粒子であり、
該無機微粒子Aにおける、該シリコーンオイルBの炭素基準の固定化率が、55%以下である。
【0009】

(式(1)中、R及びRは、それぞれ独立して、水素、メチル基又はフェニル基を表し、nは10~80の整数を表す。)
【発明の効果】
【0010】
本開示によれば、高温高湿環境下においても帯電安定性に優れたトナーを提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本開示において、数値範囲を示す「XX以上YY以下」や「XX~YY」の記載は、特に断りのない限り、端点である下限及び上限を含む数値範囲を意味する。
また、数値範囲が段階的に記載されている場合、各数値範囲の上限及び下限は任意に組み合わせることができる。
【0012】
本開示のトナーは、
結着樹脂を含有するトナー粒子と、
無機微粒子Aと、
を有するトナーであって、
該結着樹脂が、下記式(1)で表される構造を有するポリエステルを含有し、
該無機微粒子Aが、無機微粒子のシリコーンオイルによる表面処理物である。

(式(1)中、R及びRは、それぞれ独立して、水素、メチル基又はフェニル基を表し、nは10~80の整数を表す。)
【0013】
本発明者らは鋭意検討した結果、上記構成とすることで、高温高湿環境下においても帯電安定性に優れたトナーを得るに至った。
本開示の効果が得られた理由として、本発明者らは以下のように考えている。
結着樹脂が、上記式(1)で表される構造(以下、単に「シリコーン構造」ともいう)を有するポリエステル(以下、単に「変性ポリエステル」ともいう)を含有することで、結着樹脂の疎水化度がある程度向上する。また、シリコーンオイルで無機微粒子を表面処
理することで、無機微粒子の疎水化度が高まる。
そこで、本発明者らは、帯電安定性を改良するために鋭意検討した結果、該変性ポリエステルと、シリコーンオイルで表面処理された無機微粒子(以下、単に「無機微粒子A」ともいう)を組み合わせることで、トナー粒子全体の疎水化度が、結着樹脂の疎水化と無機微粒子の疎水化の足し合わせ以上に高まることを見出した。
この理由として、無機微粒子Aのシリコーンオイル成分がトナー粒子の表面のシリコーン構造に付着し、トナー粒子の表面全体がシリコーンオイル成分により被覆されるためと本発明者らは考えている。
上記シリコーン構造は極性が低いため、該シリコーン構造を極性の高いポリエステル樹脂に組み込んだ場合に、トナー粒子内で偏在する傾向にある。この場合、シリコーン構造の密度は、トナー粒子の内部よりもトナー粒子の表面において高くなり、トナー粒子の表面においてシリコーン構造が相対的に高密度に存在した状態となる。
また、無機微粒子の表面をシリコーンオイルで処理した場合、シリコーンオイルの一部が無機微粒子と物理吸着しているため、シリコーンオイル成分が該シリコーン構造に吸着しやすい状態にある。
トナー粒子の表面に高密度に存在するシリコーン構造は、無機微粒子Aの表面のシリコーンオイルとの親和性が高く、シリコーンオイル成分がシリコーン構造に付着しやすいことが判明した。
その結果、無機微粒子表面及びトナー粒子の表面をシリコーンオイルが被覆し、トナー粒子全体の疎水化度が向上する。
上述の理由により、高温高湿環境下においても帯電安定性に優れたトナーが得られたものと本発明者らは推察している。
【0014】
トナー粒子100質量部に対する、無機微粒子Aの含有量は、トナー粒子の表面に付着するシリコーンオイル量をより多くするという観点から、0.07質量部以上6.00質量部以下であることが好ましい。該含有量は、より好ましくは0.10質量部以上5.00質量部以下であり、さらに好ましくは0.10質量部以上4.00質量部以下である。
【0015】
無機微粒子Aにおける、シリコーンオイルに由来する炭素量は、トナー粒子の表面に付着するシリコーンオイル量をより多くするという観点から、1.5質量%以上7.0質量%以下が好ましい。該炭素量は、より好ましくは2.0質量%以上6.0質量%以下であり、さらに好ましくは2.0質量%以上4.0質量%以下である。
無機微粒子Aにおけるシリコーンオイルに由来する炭素量は、シリコーンオイルの処理条件(処理温度、処理時間、シリコーンオイル粘度、シリコーンオイル添加量など)を変化させることにより制御することができる。
【0016】
無機微粒子Aにおける、シリコーンオイルの炭素基準の固定化率は、トナー粒子の表面に付着するシリコーンオイル量をより多くするという観点から、55%以下であることが好ましい。該固定化率は、より好ましくは、50%以下であり、さらに好ましくは45%以下である。該固定化率の下限は特に制限されないが、好ましくは10%以上であり、より好ましくは25%以上である。
無機微粒子Aにおけるシリコーンオイルの炭素基準の固定化率は、シリコーンオイルの処理条件(処理温度、処理時間、シリコーンオイル粘度、シリコーンオイル添加量など)を変化させることにより制御することができる。
【0017】
変性ポリエステル中のシリコーン構造の含有量は、トナー粒子の表面全体にシリコーンオイル成分を付着させる観点から、0.3質量%以上5.0質量%以下が好ましい。該含有量は、好ましくは0.5質量%以上5.0質量%以下であり、より好ましくは2.0質量%以上4.0質量%以下含有である。
変性ポリエステル中のシリコーン構造の含有量は、結着樹脂の製造条件(シリコーンオ
イルの添加量など)を変化させることにより制御することができる。
【0018】
本開示における好ましいトナーの構成を以下に詳述する。
<結着樹脂>
該結着樹脂は、式(1)で表される構造を有するポリエステルを含有する。
式(1)で表される構造を有するポリエステル(すなわち、変性ポリエステル)を含有する、とは、例えば、変性ポリエステル及びその他の樹脂を含有した結着樹脂が含まれる。その他の結着樹脂としては、該変性ポリエステル以外のポリエステル樹脂、ビニル系共重合樹脂、ポリウレタン樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、これら2種以上の樹脂構造が化学的に結合されたハイブリッド樹脂などが挙げられる。
式(1)で表される構造を有するポリエステル中のポリエステル構造は、非晶性のポリエステルであることが好ましい。
結着樹脂中の、式(1)で表される構造を有するポリエステルの含有量は、50質量%以上であることが好ましく、60質量%以上、70質量%以上、80質量%以上、90質量%以上、又は100質量%であってもよい。また、その上限値は100質量%以下であることが好ましい。
結着樹脂中の変性ポリエステルの含有量が50質量%以上であると、トナー粒子の表面全体にシリコーンオイル成分が被覆され、トナー粒子全体の疎水化度がより向上する。
【0019】
該変性ポリエステルのポリエステル構造を構成する成分について詳述する。なお、以下の成分は種類や用途に応じて種々のものを一種又は二種以上用いることができる。
ここで、「ポリエステル構造」とは、ポリエステルに由来する部分を意味し、ポリエステル構造を構成する成分としては、具体的には、2価以上のアルコールモノマー成分と2価以上のカルボン酸、2価以上のカルボン酸無水物及び2価以上のカルボン酸エステル等の酸モノマー成分が挙げられる。
ポリエステル構造を構成する2価の酸成分としては、以下のジカルボン酸又はその誘導体が挙げられる。
フタル酸、テレフタル酸、イソフタル酸、無水フタル酸などのベンゼンジカルボン酸類又はその無水物若しくはその低級アルキルエステル;コハク酸、アジピン酸、セバシン酸、アゼライン酸などのアルキルジカルボン酸類又はその無水物若しくはその低級アルキルエステル;炭素数の平均値が1以上50以下のアルケニルコハク酸類又はアルキルコハク酸類、又はその無水物若しくはその低級アルキルエステル;フマル酸、マレイン酸、シトラコン酸、イタコン酸などの不飽和ジカルボン酸類又はその無水物若しくはその低級アルキルエステル。該低級アルキルエステル中のアルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基及びイソプロピル基が挙げられる。
【0020】
一方、ポリエステル構造を構成する2価のアルコール成分としては、以下のものが挙げられる。
エチレングリコール、ポリエチレングリコール、1,2-プロパンジオール、1,3-プロパンジオール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、2,3-ブタンジオール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、2-メチル-1,3-プロパンジオール、2-エチル-1,3-ヘキサンジオール、1,4-シクロヘキサンジメタノール(CHDM)、水素化ビスフェノールA、式(I-1)で表されるビスフェノール及びその誘導体:及び式(I-2)で示されるジオール類。
【0021】

式(I-1)中、Rはエチレン基又はプロピレン基であり、x、yはそれぞれ0以上の整数であり、かつ、x+yの平均値は0以上10以下である。
【0022】

式(I-2)中、R’はエチレン基又はプロピレン基であり、x’、y’はそれぞれ0以上の整数であり、かつ、x’+y’の平均値は0以上10以下である。
【0023】
該ポリエステル構造の構成成分は、上述の2価のカルボン酸化合物及び2価のアルコール化合物以外に、3価以上のカルボン酸化合物、3価以上のアルコール化合物を構成成分として含有してもよい。
3価以上のカルボン酸化合物としては、特に制限されないが、トリメリット酸、無水トリメリット酸、ピロメリット酸などが挙げられる。また、3価以上のアルコール化合物としては、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、グリセリンなどが挙げられる。
【0024】
ポリエステル構造の構成成分は、上記化合物以外に、1価のカルボン酸化合物及び1価のアルコール化合物を構成成分として含有してもよい。具体的には、1価のカルボン酸化合物としては、パルミチン酸、ステアリン酸、アラキジン酸、ベヘン酸などが挙げられる。また、セロチン酸、ヘプタコサン酸、モンタン酸、メリシン酸、ラクセル酸、テトラコンタン酸、ペンタコンタン酸なども挙げられる。
また、1価のアルコール化合物としては、ベヘニルアルコール、セリルアルコール、メリシルアルコール、テトラコンタノールなどが挙げられる。
【0025】
該変性ポリエステル中の式(1)で表される構造(すなわち、シリコーン構造)を構成する成分について詳述する。なお、以下の成分は種類や用途に応じて種々のものを一種又は二種以上用いることができる。
該シリコーン構造は、下記式(1)で表される構造を有する。
【0026】

該式(1)中、R及びRは、それぞれ独立して、水素、メチル基又はフェニル基を表し、nは10~80の整数を表す。該nは、20~65の整数であることが好ましい。
【0027】
nが上記範囲内であることにより、結着樹脂中への拡散性が良好となりやすい。そのため、効果的にトナー粒子の表面においてシリコーン構造が相対的に高密度に存在した状態となりやすくなると考えられる。
該式(1)中、R及びRは、いずれもメチル基であることが好ましい。
及びRが共にメチル基であることにより、シリコーン構造のトナー粒子表面への偏在がより促進され、シリコーンオイルの吸着性が良好となる。
【0028】
該変性ポリエステル中に式(1)で表される構造を形成させる成分としては、式(1)の末端に上記ポリエステルと化学的に反応する官能基を有するシリコーンオイルを用いる
とよい。該ポリエステルと反応する官能基としては、ヒドロキシ基、カルボキシ基、エポキシ基、アミノ基などが挙げられる。
該シリコーンオイルの末端の官能基は、ポリエステルとの反応性を制御する上で、官能基はヒドロキシ基又はカルボキシ基を用いることが好ましい。
該シリコーンオイルの末端の官能基の数は、1、2又は3以上のものを用いることができる。該ポリエステルの主骨格にシリコーン構造を導入するためには、シリコーンオイルの両末端に官能基を有するシリコーンオイルを用いることが好ましい。具体的には、両末端にヒドロキシ基を有するシリコーンオイル(KF-6001、KF-6000、KF-6002、いずれも信越化学工業(株)製)が例示できる。
【0029】
該変性ポリエステルの製造方法については、特に制限されるものではなく、公知の方法を用いることができる。
例えば、前述の2価のカルボン酸化合物及び2価のアルコール化合物、並びに末端に官能基を有するシリコーンオイルを、エステル化反応又はエステル交換反応、及び縮合反応を経て重合し、変性ポリエステルを製造するとよい。
重合温度は、特に制限されないが、180℃以上290℃以下の範囲が好ましい。
ポリエステルの重合に際しては、例えば、チタン系触媒、スズ系触媒、酢酸亜鉛、三酸化アンチモン、二酸化ゲルマニウムなどの重合触媒を用いることができる。
【0030】
<着色剤>
該トナーは、磁性一成分トナー、非磁性一成分トナー、非磁性二成分トナーのいずれのトナーとしても使用できる。
磁性一成分トナーとして用いる場合、着色剤としては、磁性体が好ましく用いられる。磁性1成分トナーに含まれる磁性体としては、マグネタイト、マグヘマイト、フェライトのような磁性酸化鉄、及び他の金属酸化物を含む磁性酸化鉄;Fe,Co,Niのような金属、又は、これらの金属とAl,Co,Cu,Pb,Mg,Ni,Sn,Zn,Sb,Be,Bi,Cd,Ca,Mn,Se,Ti,W,Vのような金属との合金、及びこれらの混合物が挙げられる。
磁性体の含有量は、結着樹脂100質量部に対して、30質量部以上150質量部以下であることが好ましい。
【0031】
非磁性一成分トナー、及び非磁性二成分トナーとして用いる場合の着色剤としては、以下のものが挙げられる。
黒色の顔料としては、ファーネスブラック、チャンネルブラック、アセチレンブラック、サーマルブラック、ランプブラックなどのカーボンブラックが用いられ、また、マグネタイト、フェライトなどの磁性体も用いられる。
イエロー色に好適な着色剤としては、顔料又は染料を用いることができる。顔料としては、C.I.ピグメントイエロー1、2、3、4、5、6、7、10,11,12、13、14、15、17、23、62、65、73、74、81、83、93、94、95、97、98、109、110、111、117、120、127、128、129、137、138、139、147、151、154、155、167、168、173、174、176、180、181、183、191、C.I.バットイエロー1,3,20が挙げられる。染料としては、C.I.ソルベントイエロー19、44、77、79、81、82、93、98、103、104、112、162などが挙げられる。これらのものを単独又は2以上のものを併用して用いるとよい。
シアン色に好適な着色剤としては、顔料又は染料を用いることができる。顔料としては、C.I.ピグメントブルー1、7、15、15:1、15:2、15:3、15:4、16、17、60、62、66など、C.I.バットブルー6、C.I.アシッドブルー45が挙げられる。染料としては、C.I.ソルベントブルー25、36、60、70、93、95などが挙げられる。これらのものを単独又は2以上のものを併用して用いると
よい。
マゼンタ色に好適な着色剤としては、顔料又は染料を用いることができる。顔料としては、C.I.ピグメントレッド1,2,3,4,5,6,7,8,9,10,11,12,13,14,15,16,17,18,19,21,22,23,30,31,32,37,38,39,40,41,48,48:2,48:3,48:4,49,50,51,52,53,54,55,57,57:1,58,60,63,64,68,81,81:1,83,87,88,89,90,112,114,122,123,144,146,150,163,166,169,177,184,185,202,206,207,209,220,221,238,254など、C.I.ピグメントバイオレット19;C.I.バットレッド1,2,10,13,15,23,29,35が挙げられる。マゼンタ用染料としては、C.I.ソルベントレッド1,3,8,23,24,25,27,30,49,52,58,63,81,82,83,84,100,109,111,121,122など、C.I.ディスパースレッド9,C.I.ソルベントバイオレット8,13,14,21,27など,C.I.ディスパースバイオレット1などの油溶染料、C.I.ベーシックレッド1,2,9,12,13,14,15,17,18,22,23,24,27,29,32,34,35,36,37,38,39,40など、C.I.ベーシックバイオレット1,3,7,10,14,15,21,25,26,27,28などの塩基性染料などが挙げられる。これらのものを単独又は2以上のものを併用して用いるとよい。
着色剤の含有量は、結着樹脂100質量部に対して、1質量部以上20質量部以下であることが好ましい。
【0032】
トナー粒子は、離型性を与えるために、離型剤(ワックス)を含有してもよい。該ワックスの一例としては、次のものが挙げられる。
低分子量ポリエチレン、低分子量ポリプロピレン、オレフィン共重合体、マイクロクリスタリンワックス、パラフィンワックス、フィッシャートロプシュワックスなどの脂肪族炭化水素系ワックス;酸化ポリエチレンワックスなどの脂肪族炭化水素系ワックスの酸化型ワックス;カルナバワックス、ベヘン酸ベヘニル、モンタン酸エステルワックスなどの脂肪酸エステルを主成分とするワックス類;及び脱酸カルナバワックスなどの脂肪酸エステルを一部又は全部を脱酸化したものなどが挙げられる。
さらに、パルミチン酸、ステアリン酸、モンタン酸などの飽和直鎖脂肪酸類;ブラシジン酸、エレオステアリン酸、パリナリン酸などの不飽和脂肪酸類;ステアリルアルコール、アラルキルアルコール、ベヘニルアルコール、カルナウビルアルコール、セリルアルコール、メリシルアルコールなどの飽和アルコール類;ソルビトールなどの多価アルコール類;リノール酸アミド、オレイン酸アミド、ラウリン酸アミドなどの脂肪酸アミド類;メチレンビスステアリン酸アミド、エチレンビスカプリン酸アミド、エチレンビスラウリン酸アミド、ヘキサメチレンビスステアリン酸アミドなどの飽和脂肪酸ビスアミド類;エチレンビスオレイン酸アミド、ヘキサメチレンビスオレイン酸アミド、N,N’-ジオレイルアジピン酸アミド、N,N’-ジオレイルセバシン酸アミドなどの不飽和脂肪酸アミド類;m-キシレンビスステアリン酸アミド、N,N’-ジステアリルイソフタル酸アミドなどの芳香族系ビスアミド類;ステアリン酸カルシウム、ラウリン酸カルシウム、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸マグネシウムなどの脂肪族金属塩(一般に金属石けんといわれているもの);脂肪族炭化水素系ワックスにスチレンやアクリル酸などのビニル系共重合モノマーを用いてグラフト化させたワックス類;ベヘニン酸モノグリセリドなどの脂肪酸と多価アルコールの部分エステル化物;植物性油脂の水素添加などによって得られるヒドロキシ基を有するメチルエステル化合物などが挙げられる。
【0033】
これらのうち、好ましく用いられるワックスは、脂肪族炭化水素系ワックスである。
例えば、アルキレンを高圧下でラジカル重合又は低圧下でチーグラー触媒、メタロセン触媒で重合した低分子量の炭化水素;石炭又は天然ガスから合成されるフィッシャートロ
プシュワックス;高分子量のオレフィンポリマーを熱分解して得られるオレフィンポリマー;一酸化炭素及び水素を含む合成ガスからアーゲ法により得られる炭化水素の蒸留残分から得られる合成炭化水素ワックス、又はこれらを水素添加して得られる合成炭化水素ワックスが挙げられる。
また、プレス発汗法、溶剤法、真空蒸留の利用や分別結晶方式により炭化水素ワックスの分別を行ったものも例示できる。特にアルキレンの重合によらない方法により合成されたワックスは、その分子量分布からも好ましい。
該ワックスを添加するタイミングは、トナー製造時に添加してもよいし、結着樹脂の製造時に添加してもよい。また、これらワックスは、一種類を単独で使用してもよいし、二種類以上を併用して使用してもよい。ワックスの含有量は、結着樹脂100質量部に対して、1質量部以上20質量部以下であることが好ましい。
【0034】
トナー粒子は、荷電制御剤として、既知の荷電制御剤を用いることができる。既知の荷電制御剤としては、アゾ系鉄化合物、アゾ系クロム化合物、アゾ系マンガン化合物、アゾ系コバルト化合物、アゾ系ジルコニウム化合物、カルボン酸誘導体のクロム化合物、カルボン酸誘導体の亜鉛化合物、カルボン酸誘導体のアルミ化合物、カルボン酸誘導体のジルコニウム化合物が挙げられる。該カルボン酸誘導体は、芳香族ヒドロキシカルボン酸が好ましい。また、荷電制御樹脂も用いることもできる。必要に応じて一種類又は二種類以上の荷電制御剤を併用してもよい。荷電制御剤の含有量は、結着樹脂100質量部に対して、0.1質量部以上10質量部以下であることが好ましい。
【0035】
該トナーは、キャリアと混合して二成分現像剤として使用してもよい。キャリアとしては、通常のフェライト、マグネタイトなどのキャリアや樹脂コートキャリアを使用することができる。また、樹脂中に磁性体が分散されたバインダー型のキャリアを用いることもできる。
樹脂コートキャリアは、キャリアコア粒子とキャリアコア粒子表面を被覆(コート)する樹脂である被覆材からなる。被覆材に用いられる樹脂としては、スチレン-アクリル酸エステル共重合体、スチレン-メタクリル酸エステル共重合体などのスチレン-アクリル系樹脂;アクリル酸エステル共重合体、メタクリル酸エステル共重合体などのアクリル系樹脂;ポリテトラフルオロエチレン、モノクロロトリフルオロエチレン重合体、ポリフッ化ビニリデンなどのフッ素含有樹脂;シリコーン樹脂;ポリエステル樹脂;ポリアミド樹脂;ポリビニルブチラール;アミノアクリレート樹脂が挙げられる。その他には、アイオモノマー樹脂やポリフェニレンサルファイド樹脂が挙げられる。これらの樹脂は、単独又は複数を併用して用いることができる。
【0036】
<無機微粒子A>
該トナーは、無機微粒子Aを含有する。
該無機微粒子Aは、シリコーンオイルで表面処理された無機微粒子である。すなわち、該無機微粒子Aは、無機微粒子のシリコーンオイルによる表面処理物である。
該無機微粒子Aは、例えば、シリカ、アルミナ、酸化マグネシウム、酸化チタン、酸化ジルコニウム、酸化クロム、酸化セリウム、酸化錫、酸化亜鉛などの金属酸化物を含有してもよい。また、該無機微粒子Aは、例えば、カーボンブラックなどの無定形炭素、窒化ケイ素などの窒化物、炭化ケイ素などの炭化物、チタン酸ストロンチウム、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、炭酸カルシウムなどの金属塩を含有していてもよい。
これらは、一種単独で使用してもよいし、複数を併用してもよい。さらに、複数の金属酸化物を複合化した粒子を含有してもよい。
該無機微粒子Aは、帯電性及び流動性の観点から、シリカ微粒子及びアルミナ微粒子からなる群から選択される少なくとも一の無機微粒子を含有することが好ましい。シリカ微粒子やアルミナ微粒子は比較的高抵抗であるため、トナーとしての抵抗が高くなり、高温高湿環境下における帯電緩和が抑制される。また、トナーの帯電立ち上がり性が優れたも
のとなる。
【0037】
該無機微粒子の表面処理に用いるシリコーンオイルとしては、例えば、アミノ変性シリコーンオイル、エポキシ変性シリコーンオイル、カルボキシ変性シリコーンオイル、カルビノール変性シリコーンオイル、メタクリル変性シリコーンオイル、メルカプト変性シリコーンオイル、フェノール変性シリコーンオイル、ポリエーテル変性シリコーンオイル、メチルスチリル変性シリコーンオイル、アルキル変性シリコーンオイル、脂肪酸変性シリコーンオイル、アルコキシ変性シリコーンオイル、フッ素変性シリコーンオイル;ジメチルシリコーンオイル、メチルフェニルシリコーンオイル、ジフェニルシリコーンオイル、メチルハイドロジェンシリコーンオイルなどがあげられる。
これらのシリコーンオイルの中でも、アルキル基、アリール基、水素原子の一部または全部がフッ素原子に置換されたアルキル基及び水素原子からなる群から選択される少なくとも一を置換基として有するシリコーンオイルが好ましい。具体的には、ジメチルシリコーンオイル、メチルフェニルシリコーンオイル、メチルハイドロジェンシリコーンオイル、フッ素変性シリコーンオイルが好ましく、より好ましくはジメチルシリコーンオイルである。これらのシリコーンオイルは、単独又は複数を併用して用いることができる。
該無機微粒子の表面処理に用いるシリコーンオイルは、25℃における粘度が5mm/s~2000mm/sであることが好ましく、60mm/s~500mm/sであることがより好ましい。5mm/s以上であると十分な疎水性が得られ、2000mm/s以下であると無機微粒子を均一に処理しやすくなったり、凝集物ができにくく十分な流動性が得られたりする。
【0038】
無機微粒子の表面処理に用いるシリコーンオイルの量は、無機微粒子100質量に対して、2質量部~300質量部が好ましく、2質量部~30質量部が好ましい。
シリコーンオイルによる無機微粒子の表面処理の方法は、例えば、無機微粒子とシリコーンオイルとをヘンシェルミキサーなどの混合機を用いて直接混合してもよく、無機微粒子にシリコーンオイルを噴霧する方法でもよい。
【0039】
該無機微粒子の一例であるシリカの製造方法として、例えば、以下の方法が挙げられる。
ケイ素化合物をガス状にして火炎中において分解・溶融させる火炎溶融法。四塩化ケイ素を酸素、水素、希釈ガス(例えば、窒素、アルゴン、二酸化炭素など)の混合ガスとともに高温で燃焼させる気相法(乾式法シリカ又はヒュームドシリカ)。水が存在する有機溶媒中で、アルコキシシランを触媒により加水分解、縮合反応させた後、得られたシリカゾル懸濁液から、溶媒除去、乾燥する湿式法(ゾルゲルシリカ)。
なかでも、高温高湿環境下での帯電緩和抑制効果をさらに高めるために、また、より高抵抗であり湿度の影響を受けにくいという観点から、気相法または火炎溶融法で製造されたシリカがより好ましい。
該無機微粒子の一例であるアルミナとしては、バイヤー法、改良バイヤー法、エチレンクロルヒドリン法、水中火花放電法、有機アルミニウム加水分解法、アルミニウムミョウバン熱分解法、アンモニウムアルミニウム炭酸塩熱分解法又は塩化アルミニウムの火焔分解法により得られるアルミナ粒子を用いることができる。アルミナの結晶系としてはα,β,γ,δ,ζ,η,θ,κ,χ,ρ型、これらの混晶型、アモルファスのいずれのものも用いることができ、なかでもα,δ,γ,θ,混晶型,アモルファスのものが好ましい。
【0040】
該無機微粒子Aは、無機微粒子表面のシリコーンオイル量を増やす観点から、シラン化合物で処理した後にシリコーンオイルで表面処理された無機微粒子であることが好ましい。すなわち、該無機微粒子Aは、無機微粒子のシラン化合物による処理物のシリコーンオイルによる表面処理物であることが好ましい。
該無機微粒子をシラン化合物で処理する方法については特に限定されず、公知の手法を用いることができる。
該シラン化合物としては、例えば、ヘキサメチルジシラザン、イソブチルトリメトキシシラン、トリメチルシラン、トリメチルクロルシラン、トリメチルエトキシシラン、ジメチルジクロルシラン、メチルトリクロルシラン、アリルジメチルクロルシラン、アリルフェニルジクロルシラン、ベンジルジメチルクロルシラン、ブロムメチルジメチルクロルシラン、α-クロルエチルトリクロルシラン、β-クロルエチルトリクロルシラン、クロルメチルジメチルクロルシラン、トリオルガノシリルメルカプタン、トリメチルシリルメルカプタン、トリオルガノシリルアクリレート、ビニルジメチルアセトキシシラメン、ジメチルジエトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、ジフェニルジエトキシシラン、へキサメチルジシロキサン、1,3-ジビニルテトラメチルジシロキサン、1,3-ジフェニルテトラメチルジシロキサン、及び、1分子あたり2個~12個のシロキサン単位を有し、末端に位置する単位のケイ素原子に水酸基を1つずつ有するジメチルポリシロキサンなどが挙げられる。これらのシラン化合物は、単独又は複数を併用して用いることができる。
【0041】
<トナーの製造方法>
該トナー粒子の製造方法としては、特に限定されず、公知の方法を用いるとよい。例えば、粉砕法、乳化凝集法、懸濁重合法、溶解懸濁法などが挙げられる。
本開示のトナーの製造方法としては、例えば以下の実施形態とすることができるが、これに限定されない。
【0042】
結着樹脂を含む組成物を溶融混練し混練物を得る工程、
該混練物を冷却し冷却物を得る工程、
該冷却物を粉砕してトナー粒子を得る工程、及び
該トナー粒子の表面に無機微粒子Aを外添する工程
を含み、
該結着樹脂が、下記式(1)で表される構造を有するポリエステルを含有し、
該無機微粒子Aが、シリコーンオイルで表面処理された無機微粒子である、トナーの製造方法。

(式(1)中、R及びRは、それぞれ独立して、水素、メチル基又はフェニル基を表し、nは10~80の整数を表す。)
【0043】
粉砕法により製造されるトナー粒子(粉砕トナー粒子)は、例えば下記のようにして製造される。
変性ポリエステルを含有する結着樹脂、及び、必要に応じて着色剤、ワックス及びその他の添加剤などを、ヘンシェルミキサー、ボールミルのような混合機により充分混合し、組成物を得る。
得られた組成物を二軸混練押出機、加熱ロール、ニーダー、エクストルーダーのような熱混練機を用いて溶融混練し、混錬物を得る。得られた混練物を冷却固化して冷却物を得た後、粉砕及び分級を行い、トナー粒子を得る。この際、微粉砕時の排気温度を調整することで、トナー粒子の平均円形度を制御することもできる。さらに、トナー粒子と無機微粒子Aをヘンシェルミキサーのような混合機により混合して無機微粒子Aをトナー粒子の
表面に外添し、トナーを得ることができる。
【0044】
混合機としては、以下のものが挙げられる。ヘンシェルミキサー(三井鉱山社製);スーパーミキサー(カワタ社製);リボコーン(大川原製作所社製);ナウターミキサー、タービュライザー、サイクロミックス(ホソカワミクロン社製);スパイラルピンミキサー(太平洋機工社製);レーディゲミキサー(マツボー社製)。
混練機としては、以下のものが挙げられる。KRCニーダー(栗本鉄工所社製);ブス・コ・ニーダー(Buss社製);TEM型押し出し機(東芝機械社製);TEX二軸混練機(日本製鋼所社製);PCM混練機(池貝鉄工所社製);三本ロールミル、ミキシングロールミル、ニーダー(井上製作所社製);ニーデックス(三井鉱山社製);MS式加圧ニーダー、ニダールーダー(森山製作所社製);バンバリーミキサー(神戸製鋼所社製)。
粉砕機としては、以下のものが挙げられる。カウンタージェットミル、ミクロンジェット、イノマイザ(ホソカワミクロン社製);IDS型ミル、PJMジェット粉砕機(日本ニューマチック工業社製);クロスジェットミル(栗本鉄工所社製);ウルマックス(日曹エンジニアリング社製);SKジェット・オー・ミル(セイシン企業社製);クリプトロン(川崎重工業社製);ターボミル(ターボ工業社製);スーパーローター(日清エンジニアリング社製)。
【0045】
また、必要に応じて、粉砕後に、ハイブリタイゼーションシステム(奈良機械製作所製)、ノビルタ(ホソカワミクロン社製)、メカノフージョンシステム(ホソカワミクロン社製)、ファカルティ(ホソカワミクロン社製)、イノマイザ(ホソカワミクロン社製)、シータコンポーザ(徳寿工作所社製)、メカノミル(岡田精工社製)、メテオレインボー MR Type(日本ニューマチック工業社製)を用いて、トナー粒子の表面処理を行い、トナー粒子の平均円形度を制御することもできる。
分級機としては、以下のものが挙げられる。クラッシール、マイクロンクラッシファイアー、スペディッククラシファイアー(セイシン企業社製);ターボクラッシファイアー(日清エンジニアリング社製);ミクロンセパレータ、ターボプレックス(ATP)、TSPセパレータ(ホソカワミクロン社製);エルボージェット(日鉄鉱業社製)、ディスパージョンセパレータ(日本ニューマチック工業社製);YMマイクロカット(安川商事社製)。
粗粒子をふるい分けるために用いられる篩い装置としては、以下のものが挙げられる。ウルトラソニック(晃栄産業社製);レゾナシーブ、ジャイロシフター(徳寿工作所社);バイブラソニックシステム(ダルトン社製);ソニクリーン(新東工業社製);ターボスクリーナー(ターボ工業社製);ミクロシフター(槙野産業社製);円形振動篩い。
【0046】
以下、各種測定方法について述べる。
<トナー粒子の重量平均粒径(D4)の測定>
トナー粒子の重量平均粒径(D4)は、100μmのアパーチャーチューブを備えた細孔電気抵抗法による精密粒度分布測定装置「コールター・カウンター Multisizer 3」(登録商標、ベックマン・コールター社製)と、測定条件設定及び測定データ解析をするための付属の専用ソフト「ベックマン・コールター Multisizer 3 Version3.51」(ベックマン・コールター社製)を用いて、実効測定チャンネル数2万5千チャンネルで測定し、測定データの解析を行ない、算出する。測定に使用する電解水溶液は、特級塩化ナトリウムを脱イオン水に溶解して濃度が約1質量%となるようにしたもの、例えば、「ISOTON II」(ベックマン・コールター社製)が使用できる。
なお、測定、解析を行なう前に、以下のように専用ソフトの設定を行なう。
専用ソフトの「標準測定方法(SOM)を変更」画面において、コントロールモードの総カウント数を50000粒子に設定し、測定回数を1回、Kd値は「標準粒子10.0
μm」(ベックマン・コールター社製)を用いて得られた値を設定する。「閾値/ノイズレベルの測定」ボタンを押すことで、閾値とノイズレベルを自動設定する。また、カレントを1600μAに、ゲインを2に、電解液をISOTON IIに設定し、「測定後のアパーチャーチューブのフラッシュ」にチェックを入れる。
専用ソフトの「パルスから粒径への変換設定」画面において、ビン間隔を対数粒径に、粒径ビンを256粒径ビンに、粒径範囲を2μmから60μmまでに設定する。
【0047】
具体的な測定法は以下の(1)~(7)の通りである。
(1)Multisizer 3専用のガラス製250mLの丸底ビーカー内に電解水溶液200mLを入れ、サンプルスタンドにセットし、スターラーロッドの撹拌を反時計回りで24回転/秒にて行なう。そして、解析ソフトの「アパーチャーチューブのフラッシュ」機能により、アパーチャーチューブ内の汚れと気泡を除去する。
(2)ガラス製の100mLの平底ビーカー内に前記電解水溶液30mLを入れ、この中に分散剤として「コンタミノンN」(非イオン界面活性剤、陰イオン界面活性剤、有機ビルダーからなるpH7の精密測定器洗浄用中性洗剤の10質量%水溶液、和光純薬工業社製)を脱イオン水で3質量倍に希釈した希釈液を0.3mL加える。
(3)発振周波数50kHzの発振器2個を、位相を180度ずらした状態で内蔵し、電気的出力120Wの超音波分散器「Ultrasonic Dispersion System Tetora150」(日科機バイオス社製)を準備する。超音波分散器の水槽内に3.3Lのイオン交換水を入れ、この水槽中にコンタミノンNを2mL添加する。(4)前記(2)のビーカーを前記超音波分散器のビーカー固定穴にセットし、超音波分散器を作動させる。そして、ビーカー内の電解水溶液の液面の共振状態が最大となるようにビーカーの高さ位置を調整する。
(5)前記(4)のビーカー内の電解水溶液に超音波を照射した状態で、トナー粒子10mgを少量ずつ前記電解水溶液中に添加し、分散させる。そして、さらに60秒間超音波分散処理を継続する。なお、超音波分散にあたっては、水槽の水温が10℃以上40℃以下となるように適宜調節する。
(6)サンプルスタンド内に設置した前記(1)の丸底ビーカー内に、ピペットを用いてトナー粒子を分散した前記(5)の電解水溶液を滴下し、測定濃度が約5%となるように調整する。そして、測定粒子数が50,000個になるまで測定を行なう。
(7)測定データを装置付属の専用ソフトにて解析を行い、重量平均粒径(D4)を算出する。なお、専用ソフトでグラフ/体積%と設定したときの、分析/体積統計値(算術平均)画面の「平均径」が重量平均粒径(D4)である。
【0048】
<無機微粒子Aの一次粒子の個数平均粒径の測定方法>
クライオミクロトーム(Leica社製 ULTRACUT UCT)装置に水溶性樹脂に分散したトナーを入れる。液体窒素により該装置を-80℃まで冷却し、トナーが分散された水溶性樹脂を凍結する。凍結された水溶性樹脂を、ガラスナイフにより切削面形状が約0.1ミリ幅、約0.2ミリ長になるようにトリミングする。次にダイヤモンドナイフを用いて、水溶性樹脂を含むトナーの超薄切片(厚み設定:70nm)を作製し、まつげプローブを用いてTEM観察用グリッドメッシュ上に移動する。水溶性樹脂を含むトナーの超薄切片を室温に戻した後、水溶性樹脂を純水に溶解させて透過型電子顕微鏡(TEM)の観察試料とする。該試料は、日立社製透過型電子顕微鏡H-7500を用い、加速電圧100kVにて観察し、トナーの断面の拡大写真を撮影する。また、拡大写真の倍率は20000倍とする。
上記写真撮影により得られたTEM画像は、画像解析ソフトImage-ProPlusProPlus5.1J(Media Cybernetics社製)を用いて、2値の画像データに変換する。そのうち、無機微粒子Aについてのみ無作為に解析を行なう。
無機微粒子Aの一次粒子の個数平均粒径は、粒子の長軸と短軸の平均値を一次粒子径とする。一次粒子100個を無作為に選択し、その一次粒子径の個数平均を無機微粒子Aの
一次粒子の個数平均粒径とする。
なお、無機微粒子Aを単独で入手できる場合は、上記方法で無機微粒子Aを単独で測定して個数平均粒径を測定してもよい。
【0049】
<シリコーンオイルに由来する炭素量とシリコーンオイルの炭素基準の固定化率の測定方法>
(脱離シリコーンオイルの抽出)
1.ビーカーに0.5gの無機微粒子A、クロロホルム40mlを入れ、2時間撹拌する。
2.撹拌を止めて、12時間静置する。
3.サンプルをろ過して、クロロホルム40mlで3回洗浄する。
4.減圧乾燥によりクロロホルムを除去する。
【0050】
(シリコーンオイルに由来する炭素量の測定方法)
下記のように、酸素気流下の温度1100℃で試料を燃焼させ、発生したCO、CO量をIRの吸光度により測定して、無機微粒子A中のシリコーンオイルに由来する炭素量を測定する。そして、シリコーンオイルの抽出前後での炭素量を比較して、シリコーンオイルの炭素基準の固定化率を計算する。
1.2gの無機微粒子Aを試料として円筒金型に入れプレスする。
2.プレスした試料0.15gを精秤し、燃焼用ボードに乗せ、堀場製作所EMA-110で測定する。
当該方法により測定された炭素量が0.0質量%を超えていた場合、無機微粒子Aが、シリコーンオイルによる表面処理物であると判断する。
【0051】
(シリコーンオイルの炭素基準の固定化率の測定方法)
(1)無機微粒子Aの炭素量を、C1とする。
(2)上記方法により無機微粒子Aから脱離シリコーンオイルを抽出した無機微粒子の炭素量を、C2とする。
シリコーンオイルの炭素基準の固定化率は、以下のように計算して求める。
シリコーンオイルの固定化率(%)=(C2/C1)×100
【0052】
<トナーからの無機微粒子Aの抽出方法>
水洗処理法により無機微粒子Aをトナーから抽出する。具体的には、イオン交換水10.3gにショ糖31.1g(キシダ化学(株)製)を溶解させたショ糖水溶液に、下記のコンタミノンN 6mLを下記の30mLのガラスバイアルに入れて十分に混合し、分散液を作製する。
コンタミノンN:非イオン界面活性剤、陰イオン界面活性剤、有機ビルダーからなるpH7の精密測定器洗浄用中性洗剤、和光純薬工業(株)製
ガラスバイアル:日電理化硝子(株)製、VCV-30、外径:35mm、高さ:70mm
このガラスバイアルにトナー1.0gを添加し、トナーが自然に沈降するまで静置して処理前分散液を作製する。この分散液を、振とう機(YS-8D型:(株)ヤヨイ製)にて、振とう速度:200rpmで5分間振とうし、無機微粒子Aをトナー粒子の表面から離脱させる。トナー粒子とトナー粒子の表面から脱離した無機微粒子Aとの分離は遠心分離機を用いて行う。遠心分離工程は3700rpmで30分間行う。トナー粒子の表面から離脱させた無機微粒子Aを吸引濾過することで採取し、乾燥させて無機微粒子Aを得る。
【0053】
<トナー中の無機微粒子Aの含有量の測定方法>
(無機微粒子Aがアルミナ微粒子を含有する場合)
トナーに対して蛍光X線測定を行い、無機微粒子Aの含有量を算出する。
各元素の蛍光X線の測定は、JIS K 0119-1969に準ずるが、具体的には以下の通りである。
測定装置としては、波長分散型蛍光X線分析装置「Axios」(PANalytical社製)と、測定条件設定及び測定データ解析をするための付属の専用ソフト「SuperQ ver.4.0F」(PANalytical社製)とを用いる。なお、X線管球のアノードとしてはRhを用い、測定雰囲気は真空、測定径(コリメーターマスク径)は27mm、測定時間10秒間とする。また、軽元素を測定する場合にはプロポーショナルカウンタ(PC)を、重元素を測定する場合にはシンチレーションカウンタ(SC)を用いる。
測定サンプルとしては、専用のプレス用アルミリングの中にトナー約4gを入れて平らにならし、下記の錠剤成型圧縮機を用いて、20MPaで、60秒間加圧し、厚さ約2mm、直径約39mmに成型したペレットを用いる。
錠剤成型圧縮機「BRE-32」((株)前川試験機製作所製)
上記条件で測定を行い、得られたX線のピーク位置をもとにアルミニウム元素を同定し、単位時間あたりのX線光子の数である計数率(単位:cps)から無機微粒子Aの含有量を算出する。
(無機微粒子Aがシリカ微粒子を含有する場合)
上述の蛍光X線測定に加え、固体NMR測定から無機微粒子Aの含有量を算出する。
蛍光X線測定からケイ素元素を同定することにより、結着樹脂中のシリコーン構造とシリカ微粒子が合わさった含有量が算出される。そして、固体NMR測定から得られる結着樹脂中のシリコーン構造と無機微粒子Aの含有比率から、無機微粒子Aの含有量を算出する。
【0054】
結着樹脂中のシリコーン構造とシリカ微粒子の含有比率は、固体29Si-NMRにより算出する。
具体的には、シリコーン構造に由来したピーク(0~-25ppm)の面積と、シリカ微粒子に由来したピーク(-90~-110ppm)の面積比から、含有比率を算出する。
(固体29Si-NMRの測定条件)
装置:JNM-ECX5002 (JEOL RESONANCE)
測定温度:室温
測定法:DD/MAS法 29Si 45°
試料管:ジルコニア3.2mmφ
試料:試験官に粉末状態で充填
試料回転数:10kHz
Relaxation delay:180s
Scan:2000
【0055】
<式(1)で表される構造を有するポリエステルの同定方法>
式(1)で表される構造の確認には以下の方法を用いる。
式(1)のRで表される炭化水素基及びシリコーン構造は、13C-NMR及び固体29Si-NMRにより確認する。
なお、固体29Si-NMRの測定条件は、上記の通りである。
13C-NMRの測定条件)
装置:JEOL RESONANCE製 JNM-ECX500II
試料管:3.2mmφ
試料:NMR測定用の試料の重クロロホルム可溶分
測定温度:室温
パルスモード:CP/MAS
測定核周波数:123.25MHz(13C)
基準物質:アダマンタン(外部標準:29.5ppm)
試料回転数:20kHz
コンタクト時間:2ms
遅延時間:2s
積算回数:1024回
当該方法にて、ケイ素原子に結合しているメチル基(Si-CH)又はフェニル基(Si-C)などに起因するシグナルの有無により、式(1)のRで表される炭化水素基を確認する。
【0056】
<変性ポリエステル及び式(1)で表される構造の含有量の測定方法>
変性ポリエステル及び式(1)で表される構造の含有量は、上述した装置を用いて、H-NMRにより確認する
H-NMRの測定条件)
試料:重クロロホルム可溶分
パルス条件:5.0μS
周波数範囲:10500Hz
積算回数:64回
【実施例
【0057】
以下、製造例、実施例及び比較例に基づいて具体的に本開示について説明する。しかしながら、本開示はこれら実施例に何ら限定されるものではない。なお、特に断りのない限り、部は、全て質量基準である。
【0058】
<結着樹脂1の製造例>
・ビスフェノールAエチレンオキサイド(2.2モル付加物): 50.0モル部
・ビスフェノールAプロピレンオキサイド(2.2モル付加物): 50.0モル部
・テレフタル酸: 90.0モル部
・無水トリメリット酸: 10.0モル部
上記ポリエステル構造を構成するモノマー97.0部、及び、両末端にヒドロキシ基を有するシリコーンオイル(KF-6001、信越化学工業(株)製)2.0部を、チタンテトラブトキシド500ppmと共に5リットルオートクレーブに投入し混合した。
そこに、還流冷却器、水分分離装置、Nガス導入管、温度計及び攪拌装置を付し、オートクレーブ内にNガスを導入しながら230℃で縮重合反応を行った。
軟化点が136℃となるように反応時間を調整し、反応終了後容器から取り出し、冷却、粉砕して変性ポリエステル1を得た。該変性ポリエステル1を結着樹脂1とした。
なお、式(1)で表される構造を有するポリエステル中の、式(1)で表される構造の含有量は、2.0質量%であり、式(1)中のR及びRが、いずれもメチル基であり、nは38であった。
【0059】
<結着樹脂2の製造例>
表1に示すようにシリコーンオイルの添加量を変更した以外は結着樹脂1の製造例に従い、変性ポリエステル2を得た。変性ポリエステル2を結着樹脂2とした。なお、式(1)で表される構造を有するポリエステル中の、式(1)で表される構造の含有量は、0.5質量%であり、式(1)中のR及びRが、いずれもメチル基であり、nは38であった。
【0060】
<結着樹脂3の製造例>
両末端にヒドロキシ基を有するシリコーンオイルをKF-6000(信越化学工業(株)製)5.0部に変更したこと及び軟化点が130℃となるように反応時間を調整したこ
と以外は結着樹脂1の製造例に従い、変性ポリエステル3を得た。該変性ポリエステル3を結着樹脂3とした。なお、式(1)で表される構造を有するポリエステル中の、式(1)で表される構造の含有量は、4.9質量%であり、式(1)中のR及びRが、いずれもメチル基であり、nは26であった。
【0061】
<結着樹脂4の製造例>
両末端にヒドロキシ基を有するシリコーンオイルをKF-6002(信越化学工業(株)製)0.1部に変更したこと及び軟化点が128℃となるように反応時間を調整したこと以外は結着樹脂1の製造例に従い、変性ポリエステル4を得た。該変性ポリエステル4を結着樹脂4とした。なお、式(1)で表される構造を有するポリエステル中の、式(1)で表される構造の含有量は、0.1質量%であり、式(1)中のR及びRが、いずれもメチル基であり、nは63であった。
【0062】
<結着樹脂5の製造例>
シリコーンオイルを添加しなかったこと以外は結着樹脂1の製造例に従い、結着樹脂5を得た。
【0063】
【表1】
【0064】
<無機微粒子A1の製造例>
撹拌機付きオートクレーブに、未処理の乾式シリカ(シリカ原体)(BET比表面積29m/g)を投入し、室温で撹拌により流動化状態にした。
反応器内部を窒素ガスで置換して反応器を密閉し、シリカ原体100部に対し、10部のヘキサメチルジシラザンを噴霧し、30分間撹拌を続けた。その後、撹拌しながら150℃まで昇温させてさらに2時間撹拌し、ヘキサメチルジシラザン処理を行った。
その後、オートクレーブを脱圧し、窒素ガス気流による洗浄を行い、得られた疎水性シリカから過剰のヘキサメチルジシラザン及び副生物を除去した。さらに、反応器を150℃に維持し、反応槽内を撹拌しながら、ヘキサメチルジシラザン処理シリカ100部に対し、10部のジメチルシリコーンオイル(信越化学工業社製KF-96-100cs;粘度(25℃)=100mm/s)を噴霧し、2時間撹拌した後に取り出し、無機微粒子A1を得た。
得られた無機微粒子A1の一次粒子の個数平均粒径は、90nmであった。また、シリコーンオイルに由来する炭素量は2.5質量%、シリコーンオイルの炭素基準の固定化率は40%であった。無機微粒子A1の物性を表2に示す。
【0065】
<無機微粒子A2の製造例>
撹拌機付きオートクレーブに、未処理の乾式アルミナ(アルミナ原体)(BET比表面積30m/g)を投入し、室温で撹拌により流動化状態にした。
反応器内部を窒素ガスで置換して反応器を密閉し、アルミナ原体100部に対し、15部のイソブチルトリメトキシシランを噴霧し、30分間撹拌を続けた。その後、撹拌しながら150℃まで昇温させてさらに2時間撹拌し、イソブチルトリメトキシシラン処理を
行った。
その後、オートクレーブを脱圧し、窒素ガス気流による洗浄を行い、疎水性アルミナから過剰のイソブチルトリメトキシシラン及び副生物を除去した。さらに、反応器を150℃に維持し、反応槽内を撹拌しながら、得られた疎水性アルミナ100部に対し、20部のジメチルシリコーンオイル(信越化学工業社製KF-96-200cs;粘度(25℃)=200mm/s)を噴霧し、2時間撹拌した後に取り出し、無機微粒子A2を得た。
得られた無機微粒子A2の一次粒子の個数平均粒径は、100nmであった。また、シリコーンオイルに由来する炭素量は2.5質量%、シリコーンオイルの炭素基準の固定化率は40%であった。無機微粒子A2の物性を表2に示す。
【0066】
<無機微粒子A3の製造例>
無機微粒子A1と同じ乾式シリカを投入し、撹拌による流動化状態において、250℃に加熱した。
反応器内部を窒素ガスで置換して反応器を密閉し、シリカ原体100部に対し、100部のジメチルシリコーンオイル(信越化学工業社製KF-96-500cs;粘度(25℃)=500mm/s)を噴霧し、30分間撹拌を続けた。その後、撹拌しながら300℃まで昇温させてさらに2時間撹拌し、シリコーンオイル処理を終了して無機微粒子A3を得た。
シリコーンオイルに由来する炭素量は2.5質量%、シリコーンオイルの炭素基準の固定化率は40%であった。無機微粒子A3の物性を表2に示す。
【0067】
<無機微粒子A4~A9の製造例>
無機微粒子A1と同様の手法にてシリコーンオイルの種類と添加量を表2に示すように変更した以外は無機微粒子A1と同様にして、無機微粒子A4~A9を得た。無機微粒子A4~A9の物性を表2に示す。また、無機微粒子A4~A9の製造に用いたシリコーンオイルは、以下の通りである。なお、粘度はいずれも25℃での値である。
無機微粒子A4:信越化学工業社製KF-96-200cs
無機微粒子A5:信越化学工業社製KF-96-200cs
無機微粒子A6:信越化学工業社製KF-96-500cs
無機微粒子A7:信越化学工業社製KF-96-350cs
無機微粒子A8:信越化学工業社製KF-96-50cs
無機微粒子A9:信越化学工業社製KF-96-1000cs
【0068】
<無機微粒子A10の製造例>
シリコーンオイル添加を行わなかった以外は無機微粒子A1と同様にして、無機微粒子A10を得た。無機微粒子A10の物性を表2に示す。
【0069】
【表2】
【0070】
<トナー1の製造例>
・結着樹脂1 100部
・フィッシャートロプシュワックス(融点:90℃) 6部
・C.I.ピグメントブルー 15:3 4部
上記材料をヘンシェルミキサーで予備混合した後、二軸混練押し出し機によって、160℃で溶融混練した。
得られた混練物を冷却し、ハンマーミルで粗粉砕した後、ターボミルで微粉砕した。
得られた微粉砕物を、コアンダ効果を利用した多分割分級機を用いて分級し、重量平均粒径(D4)6.0μmの負摩擦帯電性のトナー粒子1を得た。
該100部のトナー粒子1に対して、3.00部の無機微粒子A1を外添混合し、目開き150μmのメッシュで篩い、トナー1を得た。
【0071】
<トナー2~14の製造例>
結着樹脂の種類と無機微粒子Aの種類および含有量を表3に示すように変更した以外は、トナー1の製造方法と同様にして、トナー2~14を得た。表3に本実施例で用いたトナー1~14を示す。
なお、トナー5~14においては、結着樹脂中の変性ポリエステル含有量が表3に示す通りとなるように結着樹脂4と結着樹脂5との混合比率を調整した。
【0072】
<トナー15の製造例>
(結着樹脂1分散液の作製)
結着樹脂1を、結着樹脂1の濃度が20%、イオン交換水80%の組成比で調合し、アンモニアによりpHを8.5に調整し、加熱条件を100℃としてキャビトロンを運転し、結着樹脂1分散液を得た。
(着色剤分散液の作製)
・C.I.ピグメントブルー15:3 1000部
・アニオン性界面活性剤(Dowfax2A1:ダウケミカル社製) 150部
・イオン交換水 9000部
以上を混合した後、高圧衝撃式分散機を用いて着色剤を分散した。
得られた着色剤分散液の着色剤濃度は23%であった。
(ワックス分散液の作製)
・炭化水素ワックス(最大吸熱ピークのピーク温度(融点)90℃) 45部
・アニオン性界面活性剤(Dowfax2A1:ダウケミカル社製) 5部
・イオン交換水 150部
以上を95℃に加熱して、ホモジナイザーを用いて分散した後、圧力吐出型ゴーリンホ
モジナイザーで分散処理し、ワックス分散液(ワックス濃度:20%)を調製した。
【0073】
結着樹脂1分散液 375部を丸型ステンレス製フラスコ中においてホモジナイザーで混合・分散した。これにポリ塩化アルミニウム0.15部を加え、ウルトラタラックスT50(IKA社製)で分散操作を継続した。その後、
・着色剤分散液 30.5部
・ワックス分散液 25部
以上を追加し、さらにポリ塩化アルミニウム0.05部を加え、ウルトラタラックスT50(IKA社製)で分散操作を継続した。
攪拌機、マントルヒーターを設置し、スラリーが充分に攪拌されるように攪拌機の回転数を調整しながら、60℃まで昇温し、60℃で15分間保持した。
その後、0.05℃/分で昇温しながら10分間ごとに重量平均粒径(D4)を測定し、重量平均粒径(D4)が5.0μmとなったところで、5%水酸化ナトリウム水溶液を用いてpHを9.0にした。
その後、5℃昇温するごとにpHを9.0に調整しながら、昇温速度1℃/分で96℃まで昇温し、96℃で180分間保持し、1℃/分で20℃まで降温して樹脂粒子を固化させた。
その後、生成物をろ過し、イオン交換水で十分洗浄した後、真空乾燥機を用いて乾燥させることにより、トナー粒子15を得た。
100部のトナー粒子15に対して、7.00部の無機微粒子A9を、外添混合し、目開き150μmのメッシュで篩い、トナー15を得た。
【0074】
【表3】

※1:結着樹脂中の、式(1)で表される構造を有するポリエステルの含有量
【0075】
<磁性コア粒子1の製造例>
・Fe 62.7部
・MnCO 29.5部
・Mg(OH) 6.8部
・SrCO 1.0部
上記材料を上記組成比となるようにフェライト原材料を秤量した。
その後、直径1/8インチのステンレスビーズを用いた乾式振動ミルで5時間粉砕及び混合した。得られた粉砕物をローラーコンパクターにて、約1mm角のペレットにした。
このペレットを目開き3mmの振動篩にて粗粉を除去し、次いで目開き0.5mmの振動篩にて微粉を除去した後、バーナー式焼成炉を用いて、窒素雰囲気下(酸素濃度0.01体積%)、温度1000℃で4時間焼成し、仮焼フェライトを作製した。得られた仮焼フェライトの組成は、下記の通りであった。
(MnO)(MgO)(SrO)(Fe
上記式において、a=0.257、b=0.117、c=0.007、d=0.393
【0076】
該仮焼フェライトをクラッシャーで0.3mm程度に粉砕した後に、直径1/8インチのジルコニアビーズを用い、仮焼フェライト100部に対し、水を30部加え、湿式ボールミルで1時間粉砕した。さらに、得られたスラリーを、直径1/16インチのアルミナビーズを用いた湿式ボールミルで4時間粉砕し、フェライトスラリー(仮焼フェライトの微粉砕品)を得た。
該フェライトスラリーに、仮焼フェライト100部に対して、分散剤としてのポリカルボン酸アンモニウム1.0部、及び、バインダーとしてのポリビニルアルコール2.0部を添加し、スプレードライヤー(製造元:大川原化工機)で、球状粒子に造粒した。得られた粒子の粒度を調整した後、ロータリーキルンを用いて、650℃で2時間加熱し、分散剤やバインダーの有機成分を除去した。
焼成雰囲気をコントロールするために、電気炉にて窒素雰囲気下(酸素濃度1.00体積%)で、室温から温度1300℃まで2時間で昇温し、その後、温度1150℃で4時間焼成した。その後、4時間をかけて、温度60℃まで降温し、窒素雰囲気から大気に戻し、温度40℃以下で取り出した。
凝集した粒子を解砕した後に、磁力選鉱により低磁力品をカットし、目開き250μmの篩で篩分して粗大粒子を除去し、体積分布基準の50%粒径(D50)が37.0μmの磁性コア粒子1を得た。
【0077】
<被覆樹脂1の製造例>
・シクロヘキシルメタクリレートモノマー 26.8質量%・メチルメタクリレートモノマー 0.2質量%・メチルメタクリレートマクロモノマー 8.4質量%(片末端にメタクリロイル基を有する重量平均分子量5000のマクロモノマー)
・トルエン 31.3質量%・メチルエチルケトン 31.3質量%・アゾビスイソブチロニトリル 2.0質量%
上記材料のうち、シクロヘキシルメタクリレートモノマー、メチルメタクリレートモノマー、メチルメタクリレートマクロモノマー、トルエン、及びメチルエチルケトンを、還流冷却器、温度計、窒素導入管及び攪拌装置を取り付けた四つ口のセパラブルフラスコに入れた。セパラブルフラスコ内に、窒素ガスを導入して充分に窒素雰囲気にした後、80℃まで加温し、アゾビスイソブチロニトリルを添加し、5時間還流して重合させた。
得られた反応物にヘキサンを注入して共重合体を沈殿析出させた。
得られた沈殿物を濾別後、真空乾燥して樹脂を得た。
30部の該樹脂を、トルエン40部及びメチルエチルケトン30部の混合溶媒に溶解して、樹脂溶液1(固形分濃度30質量%)を得た。
【0078】
<被覆樹脂溶液1の調製>
・樹脂溶液1(固形分濃度30質量%) 33.3質量%・トルエン 66.4質量%・カーボンブラック(Regal330;キャボット社製) 0.3質量%(一次粒子の個数平均粒径:25nm、窒素吸着比表面積:94m/g、DBP吸油量
:75mL/100g)
上記材料を、ペイントシェーカーに投入し、直径0.5mmのジルコニアビーズを用いて、1時間分散を行った。得られた分散液を、5.0μmのメンブランフィルターで濾過を行い、被覆樹脂溶液1を得た。
【0079】
<磁性キャリア1の製造例>
常温で維持されている真空脱気型ニーダーに、被覆樹脂溶液1及び磁性コア粒子1を投入した(被覆樹脂溶液1の投入量は、100部の磁性コア粒子1に対して、樹脂成分として2.5部)。
投入後、回転速度30rpmで15分間撹拌し、溶媒が一定以上(80質量%)揮発した後、減圧混合しながら80℃まで昇温し、2時間かけてトルエンを留去した後に冷却した。
得られた磁性キャリアを、磁力選鉱により低磁力品を分別し、開口70μmの篩を通した後、風力分級器で分級し、体積分布基準の50%粒径(D50)が38.2μmの磁性キャリア1を得た。
【0080】
<現像剤1~15の製造例>
トナー1~15と磁性キャリア1を、90部の磁性キャリア1に対して、トナー1~15が10部になるように、V型混合機(V-10型:株式会社徳寿製作所)を用いて、0.5s-1、回転時間5minの条件で混合して現像剤1~15を調製した。
【0081】
<実施例1~15>
上記現像剤1~15を用いて以下の評価を行った。
[画像評価]
画像形成装置として、キヤノン製フルカラー複写機imagePRESS C800を用いた。該複写機のシアンステーション位置の現像機に現像剤1を入れた。高温高湿環境下(温度30℃/相対湿度80%RH、以下「H/H環境」とも表す)において以下の方法で評価を行った。
なお、後述の2万枚連続通紙耐久中は、1枚目と同じ現像条件、転写条件(キャリブレーション無し)で通紙を行うこととした。2万枚連続通紙耐久には、印字比率5%の画像を用い、初期の画像濃度が1.45となるように現像バイアスを調整した。耐久及び評価には、コピー普通紙CS-680(A4、坪量68g/m、キヤノンマーケティングジャパン株式会社より販売)を用いた。
【0082】
以下の方法に従って、トナーの性能評価を行った。
<H/H環境 初期放置後の画像濃度の評価>
H/H環境において、A4紙全面にベタ画像を100枚出力した後、H/H環境にて複写機を7日間放置した(初期放置)。初期放置後、さらにA4紙全面にベタ画像を1枚出力した。初期放置前に出力した100枚目のベタ画像、及び、初期放置後に出力したベタ画像を評価に用いた。分光濃度計500シリーズ(X-Rite社)により濃度測定を行い、5点の平均値をとって画像濃度とし、初期放置前後の画像濃度を比較し、下記の指標で判断した。
(評価基準)
A:初期放置後の画像濃度変化率が4%未満
B:初期放置後の画像濃度変化率が4%以上9%未満
C:初期放置後の画像濃度変化率が9%以上12%未満
D:初期放置後の画像濃度変化率が12%以上16%未満
E:初期放置後の画像濃度変化率が16%以上
【0083】
<耐久画像濃度の評価>
初期放置後の画像濃度の評価に続き、H/H環境で2万枚連続通紙耐久を行った。
H/H環境での2万枚連続通紙耐久後に、A4紙全面にベタ画像を100枚出力し、100枚目のベタ画像を耐久画像濃度の評価に用いた。分光濃度計500シリーズ(X-Rite社)により濃度測定を行い、5点の平均値をとって画像濃度とし、初期放置前に出力した100枚目のベタ画像の濃度と比較し、下記の指標で判断した。
(評価基準)
A:耐久後の画像濃度維持率が90%以上
B:耐久後の画像濃度維持率が80%以上90%未満
C:耐久後の画像濃度維持率が70%以上80%未満
D:耐久後の画像濃度維持率が60%以上70%未満
E:耐久後の画像濃度維持率が60%未満
【0084】
<H/H環境 耐久放置後の画像濃度の評価>
耐久画像濃度の評価に続き、さらにH/H環境にて複写機を7日間放置した(耐久放置)。耐久放置後、A4紙全面にベタ画像を1枚出力し、出力された画像を評価に用いた。分光濃度計500シリーズ(X-Rite社)により濃度測定を行い、5点の平均値をとって画像濃度とし、2万枚連続通紙耐久後に出力した100枚目のベタ画像の濃度と比較し、下記の指標で判断した。
(評価基準)
A:耐久放置後の画像濃度変化率が5%未満
B:耐久放置後の画像濃度変化率が5%以上10%未満
C:耐久放置後の画像濃度変化率が10%以上15%未満
D:耐久放置後の画像濃度変化率が15%以上20%未満
E:耐久放置後の画像濃度変化率が20%以上
以上の評価結果を表5に示す。
【0085】
<比較例1~3>
(トナー16~18の製造例)
結着樹脂の種類と無機微粒子Aの種類及び含有量を表4のように変更した以外は、トナー1の製造例と同様にして、トナー16~18を得た。
なお、トナー16においては、結着樹脂中の変性ポリエステル含有量が40質量%となるように結着樹脂4と結着樹脂5との混合比率を調整した。
【0086】
【表4】

※2:結着樹脂中の、式(1)で表される構造を有するポリエステルの含有量
【0087】
(現像剤16~18の製造例)
トナー1をトナー16~18に変更した以外は、現像剤1の製造例と同様にして、現像剤16~18を得た。さらに、現像剤16~18について、現像剤1と同様に評価を行った。評価結果を表5に示す。
【0088】
【表5】
【0089】
上記すべての評価においてB評価以上のとき、本開示の効果が得られていると判断した。