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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-21
(45)【発行日】2024-07-01
(54)【発明の名称】吸収性物品
(51)【国際特許分類】
   A61F 13/533 20060101AFI20240624BHJP
   A61F 13/53 20060101ALI20240624BHJP
【FI】
A61F13/533 100
A61F13/53 200
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2019201326
(22)【出願日】2019-11-06
(65)【公開番号】P2021074071
(43)【公開日】2021-05-20
【審査請求日】2022-09-06
(73)【特許権者】
【識別番号】000000918
【氏名又は名称】花王株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003339
【氏名又は名称】弁理士法人南青山国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100104215
【弁理士】
【氏名又は名称】大森 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100196575
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 満
(74)【代理人】
【識別番号】100160989
【弁理士】
【氏名又は名称】関根 正好
(74)【代理人】
【識別番号】100197398
【弁理士】
【氏名又は名称】千葉 絢子
(72)【発明者】
【氏名】安田 真人
(72)【発明者】
【氏名】松井 学
(72)【発明者】
【氏名】坂橋 春夫
【審査官】横山 綾子
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-215388(JP,A)
【文献】特開2019-165926(JP,A)
【文献】特開2019-103712(JP,A)
【文献】特開2018-121864(JP,A)
【文献】特開2016-104081(JP,A)
【文献】登録実用新案第3210014(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61F 13/15-13/84
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
液透過性の表面シートと、裏面シートと、吸収性コアを有し前記表面シート及び前記裏面シートの間に配置された吸収体と、を含む本体と、前記本体から突出する一対のウイング部と、を備え、着用者の前後方向に対応する縦方向及び前記縦方向に直交する横方向を有する吸収性物品であって、
前記本体は、
前記横方向外側に前記一対のウイング部が配置された中間領域と、前記中間領域の前記縦方向前方に位置する前方領域と、前記中間領域の前記縦方向後方に位置する後方領域と、に区分され、かつ、
前記前方領域において前記縦方向に延びる左右一対の縦方向圧搾溝と、
前記前方領域において前記一対の縦方向圧搾溝の前記横方向内側に位置し、前記横方向に延びる横方向圧搾溝と、をさらに有し、
前記吸収性コアは、前記中間領域に少なくとも一部が位置する幅狭部と、前記幅狭部の前記縦方向前方に位置し前記幅狭部よりも前記横方向における幅の広い幅広部と、を有し、
前記幅狭部は、前記中間領域から前記前方領域の一部及び前記後方領域の一部まで延びている、前記縦方向に沿って一定の幅で構成されるものであり、
前記幅広部は、前記幅狭部から前記縦方向前方に向かうにしたがって徐々に幅の広くなる前方テーパ部と、該前方テーパ部の前記縦方向前方に一定の幅を有する領域と、を含んでなり、
前記一対の縦方向圧搾溝は、前記前方領域において前記幅広部と平面視で重なるように位置する、前記横方向内方へ括れた括れ部を有し、
前記横方向圧搾溝の少なくとも一部は、前記括れ部を通り前記横方向に延びる仮想線上に位置し、
前記横方向圧搾溝は、
最も前記縦方向前方に位置する前端部と、
前記前端部から前記横方向両側に位置する一対の端点と、を含み、かつ、前方に凸な形状を有し、
前記本体は、
前記縦方向圧搾溝の前記横方向内側に、前記幅狭部の前記縦方向全体にわたって前記縦方向に延びる圧搾溝を有していない
吸収性物品。
【請求項2】
前記一対の縦方向圧搾溝は、前記前方領域から前記後方領域にわたって延び、かつ、前端部及び後端部において相互に連結しており、閉鎖された形状を有する
請求項1に記載の吸収性物品。
【請求項3】
前記横方向圧搾溝は、曲線で構成される
請求項2に記載の吸収性物品。
【請求項4】
前記本体は、前記中間領域の前記横方向中央部に位置し、前記縦方向に延びる、少なくとも1つの中央圧搾溝をさらに有し、
前記中央圧搾溝は、前記幅狭部よりも前記縦方向における長さが短い断片状に構成される
請求項1ないし3のいずれか一項に記載の吸収性物品。
【請求項5】
前記吸収性コアは、
前記縦方向に延びる低坪量の縦溝部と、
前記横方向に延びる低坪量の横溝部と、をさらに有する
請求項1ないし4のいずれか一項に記載の吸収性物品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生理用ナプキン等の吸収性物品に関する。
【背景技術】
【0002】
着用者に対するフィット性を向上させる観点から、排泄部対向領域に位置する部分を幅狭に構成した吸収性コアを有する吸収性物品が知られている。例えば、特許文献1には、前側末端部領域と、後側末端部領域と、これらの間に配置された中央領域と、を備え、吸収性コアが中央領域において括れた形状を有する吸収性物品が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特表2008-541943号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、このような吸収性物品が、適正な着用位置から後方にずれて着用されることがある。この場合、吸収性物品の前方の、吸収性コアが幅広の部分に着用者の大腿部が強く接触し、吸収性物品の好ましくない変形や、これに伴うフィット性の低下が生じやすくなる。また、着用者の鼠径部の肌と当該部分が擦れやすくなり、肌トラブルが生じる可能性もある。
【0005】
本発明の課題は、後方にずれて着用された場合にも、フィット性が良好で、鼠径部における擦れが生じにくい吸収性物品の提供に関する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一形態に係る吸収性物品は、液透過性の表面シートと、裏面シートと、吸収性コアを有し表面シート及び裏面シートの間に配置された吸収体と、を含む本体と、前記本体から突出する一対のウイング部と、を備え、着用者の前後方向に対応する縦方向及び前記縦方向に直交する横方向を有する。
前記本体は、
前記横方向外側に前記一対のウイング部が配置された中間領域と、前記中間領域の前記縦方向前方に位置する前方領域と、前記中間領域の前記縦方向後方に位置する後方領域と、に区分され、かつ、
前記前方領域において前記縦方向に延びる左右一対の縦方向圧搾溝と、
前記前方領域において前記一対の縦方向圧搾溝の前記横方向内方に位置し、前記横方向に延びる横方向圧搾溝と、をさらに有する。
前記吸収性コアは、前記中間領域に少なくとも一部が位置する幅狭部と、前記幅狭部の前記縦方向前方に位置し前記幅狭部よりも前記横方向における幅の広い幅広部と、を有する。
前記一対の縦方向圧搾溝は、前記前方領域において前記幅広部と平面視において重なるように位置する、前記横方向内方へ括れた括れ部を有する。
前記横方向圧搾溝の少なくとも一部は、前記括れ部を通り前記横方向に延びる仮想線上に位置する。
【発明の効果】
【0007】
本発明の吸収性物品によれば、フィット性が良好となり、鼠径部における擦れが生じにくくなる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明の一実施形態に係る吸収性物品を示す平面図である。
図2図1のII-II線で切断した断面図である。
図3】上記吸収性物品の吸収性コアを示す平面図である。
図4図1の要部拡大図であって、上記吸収性物品の本体の前方領域を示す拡大図である。
図5】本発明の実施例における横方向の圧縮荷重の測定に用いた測定機器を示す図であり、(A)は平面図、(B)は側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施形態を説明する。
【0010】
[ナプキンの全体構成]
図1に示す吸収性物品1は、本体Mと、一対のウイング部Wと、一対の後方フラップ部Fと、を備える。吸収性物品1は、生理用ナプキンとして構成され、以下、ナプキン1と称する。
ナプキン1は、着用者の前後方向に対応する縦方向Xと、着用者の左右方向に対応し縦方向Xに直交する横方向Yとを有する。さらに、ナプキン1は、縦方向X及び横方向Yの双方に直交する厚み方向Zを有する。なお、本明細書では、「縦方向X前方」を単に「前方」、「縦方向X後方」を単に「後方」とも称する。また、本明細書では、厚み方向Zに関しては、着用時に着用者の肌に近い側を上又は肌側、着衣に近い側を下又は非肌側という事がある。ナプキン1は、好ましくは就寝時に使用され、例えば縦方向Xに沿って30cm以上の長さを有していてもよい。
【0011】
本体Mは、縦方向Xに沿って延び、着用時に着用者の着衣の内面に固定される。本体Mは、後述する吸収体4を有しており、着用者の経血等の液状物(以下、「液」とも称する)を吸収する機能を有する。
【0012】
本体Mは、縦方向Xに沿って、前方領域M1と、中間領域M2と、後方領域M3と、に区分される。
中間領域M2は、通常の着用位置において着用者の排泄部に対向する領域である。中間領域M2は、横方向Y外側に一対のウイング部Wが配置されており、本体Mにおけるウイング部Wの前後基端部間の領域である。
前方領域M1は、中間領域M2の前方(着用者の腹側)に位置する領域である。
後方領域M3は、中間領域M2の後方(着用者の背側)に位置する領域である。
ここでいう「通常の着用位置」は、ナプキン1の通常想定される着用位置を意味し、具体的には、排泄口が中間領域M2の縦方向X中央部に対向するような着用位置を意味する。本実施形態のナプキン1は、後述するように、通常の着用位置から後方にずれて着用された場合にも、良好なフィット性を有し、着用者の鼠径部との擦れを防止することができる。
【0013】
ウイング部Wは、本体Mから横方向Y外方に突出する。
後方フラップ部Fは、本体Mの後方領域M3において横方向Yの外方に膨出する。
なお、ナプキン1は、ウイング部W及び後方フラップ部Fのうちの少なくとも一つを有さなくてもよい。
【0014】
図2に示すように、ナプキン1は、吸収体4と、表面シート2と、裏面シート3と、一対のサイドシート5と、を備える。本体Mにおいて、ナプキン1は、裏面シート3、吸収体4及び表面シート2が厚み方向Zに積層された構成を有する。これらの構成は、例えば、接着剤や熱シール等による接合、及び後述する圧搾溝によるエンボス加工等によって、適宜接合されて一体化している。
【0015】
吸収体4は、縦方向Xに沿って延び、表面シート2と裏面シート3との間に配置される。吸収体4は、液を表面シート2側の面から吸収し、内部で拡散させて当該液を保持する。
吸収体4は、吸収性コア7と、コアラップシート8と、を有する。
吸収性コア7は、例えば、パルプ繊維等の親水性繊維で構成された繊維集合体で形成されてもよいし、当該繊維集合体に吸水性ポリマーを保持させた構成を有していてもよい。
コアラップシート8は、吸収性コア7を被覆し、例えば吸収性コア7の形状を保持する機能等を有する。コアラップシート8は、例えばティッシュペーパー状の薄く柔らかい紙や液透過性の不織布等で形成される。
【0016】
表面シート2は、液透過性のシート材として構成され、吸収体4の厚み方向Z上方に配置される。なお、表面シート2と吸収体4との間には、表面シート2から吸収体4への液の透過性の向上、吸収体4に吸収された液の表面シート2への液戻りの防止等の観点から、セカンドシート(サブレイヤーシート)が配置されていてもよい。
【0017】
裏面シート3は、吸収体4の厚み方向Z下方に配置される。裏面シート3は、例えばその周縁において、表面シート2及びサイドシート5と、吸収体4を介さずに熱シールによって接合される。裏面シート3は、接着剤等によって吸収体4に接合されていてもよい。
裏面シート3は、例えば、液難透過性、水蒸気透過性及び撥水性等の機能を有するシート材で形成される。当該シート材としては、例えば熱可塑性樹脂のフィルムや、当該フィルムと不織布とのラミネート等を用いることができる。
なお、裏面シート3には、図示はしないが、着衣に対して本体M及びウイング部W等を固定する粘着部が設けられている。
【0018】
一対のサイドシート5は、表面シート2の横方向Y外側に配置される。サイドシート5の材料としては、表面シート2よりも親水性が小さいシート材料が好ましく、具体的には、表面シート2よりも親水性の低い不織布、フィルム材料、及び不織布とフィルム材料のラミネート構造のシートが挙げられる。サイドシート5は、例えば接着剤Eによって表面シート2に接合されている。
【0019】
[吸収性コアの構成]
図3に示すように、吸収性コア7は、前方幅広部(幅広部)9と、幅狭部10と、後方幅広部11と、を有する。前方幅広部9、幅狭部10及び後方幅広部11は、縦方向Xに沿って並んでいる。すなわち、前方幅広部9は幅狭部10の前方に位置し、後方幅広部11は幅狭部10の後方に位置する。吸収性コア7は、横方向Yにおいて左右対称な平面形状を有する。
【0020】
幅狭部10は、中間領域M2に少なくとも一部が位置し、図3に示す例では、中間領域M2から前方領域M1及び後方領域M3の一部まで延びている。幅狭部10は、前方幅広部9及び後方幅広部11よりも幅狭に構成され、前方幅広部9の幅D1及び後方幅広部11の幅D3よりも狭い幅D2を有する。幅狭部10の幅D2は、横方向Yにおける最小幅寸法をいうものとする。幅狭部10は、図3に示す例では、縦方向Xに沿って一定の幅D2で構成される。
なお、ある領域において「幅が一定」とは、当該領域の横方向Yにおける最小幅を100%としたときに、当該領域内の幅寸法の変動が20%以下に収まっていることをいい、該変動は、15%以下が好ましく、10%以下がより好ましい。
【0021】
前方幅広部9は、前方領域M1に位置し、幅狭部10よりも横方向Yにおける幅が広く構成される。同様に、後方幅広部11は、後方領域M3に位置し、幅狭部10よりも横方向Yにおける幅が広く構成される。
前方幅広部9は、幅狭部10から前方に向かうに従って徐々に幅の広くなる前方テーパ部9tを含み、さらに、前方テーパ部9tの前方に、一定の幅D1を有する領域を含む。同様に、後方幅広部11は、幅広部9から後方に向かうに従って徐々に幅の広くなる後方テーパ部11tを含み、さらに、後方テーパ部11tの後方に、一定の幅D3を有する領域を含む。
前方幅広部9の幅D1及び後方幅広部11の幅D3は同一でも異なっていてもよく、図3に示す例では、略同一の寸法を有する。前方幅広部9の幅D1及び後方幅広部11の幅D3は、横方向Yにおける最大幅寸法をいうものとする。また、前方幅広部9及び後方幅広部11の縦方向Xの長さは同一でも異なっていてもよく、例えば後方幅広部11がより長く構成される。
【0022】
吸収性コア7が幅狭部10を有することで、着用者の両脚が閉じ股間幅が狭くなった場合に、幅狭部10に付加される横方向Yからの外力を低減させることができる。これにより、中間領域M2が横方向Yに圧縮されるような好ましくない変形を抑制し、中間領域M2におけるフィット性を高めることができる。
一方で、ナプキン1が通常の着用位置よりも後方にずれて着用された場合、着用者の両脚からの外力は、中間領域M2に加え、前方領域M1にも付加されやすくなる。この場合、着用者の両脚は、前方幅広部9に接触しやすくなるが、ナプキン1では、以下の構成を有することで、フィット性の低下や鼠径部との擦れを抑制することができる。
【0023】
[縦方向圧搾溝及び横方向圧搾溝の構成]
図1に示すように、本体Mは、さらに、左右一対の縦方向圧搾溝12と、横方向圧搾溝13と、を有する。
縦方向圧搾溝12及び横方向圧搾溝13は、本体Mの表面シート2側に設けられた線状溝である。圧搾溝における「線状」は、溝の形状が平面視において直線状の態様に限られず、曲線状の態様や、直線状と曲線状とからなる態様を含む。また、この「線状」は、高圧搾部分が延在方向にわずかに離間して並んでおり、全体として線状の溝が形成される態様も含む。
【0024】
縦方向圧搾溝12及び横方向圧搾溝13は、本体Mの表面シート2側から厚み方向Zに圧搾加工することによって形成される。
縦方向圧搾溝12及び横方向圧搾溝13は、表面シート2及び吸収体4が裏面シート3側に向かって一体的に凹陥した構成を有する(図2参照)。縦方向圧搾溝12及び横方向圧搾溝13は、熱エンボス加工又は超音波シール加工等の圧搾加工により常法に従って形成することができる。縦方向圧搾溝12及び横方向圧搾溝13では、表面シート2及び吸収体4が熱融着等により一体化している。
【0025】
縦方向圧搾溝12及び横方向圧搾溝13は、他の領域と比較して圧密化されている。これにより、縦方向圧搾溝12及び横方向圧搾溝13は、ナプキン1が力を受けた場合に、当該力に伴って弾性変形するとともに、周囲の領域の変形を促す変形の起点として機能し得る。
【0026】
図1及び図4に示すように、縦方向圧搾溝12は、前方領域M1において縦方向Xに延びる。縦方向圧搾溝12は、少なくとも一部が前方領域M1に位置していればよく、図1に示す例では、本体M全体にわたって縦方向Xに延びている。
縦方向圧搾溝12における「縦方向Xに延びる」とは、縦方向圧搾溝12が縦方向Xに平行に延びる態様に限定されず、縦方向圧搾溝12が全体として縦方向Xと平行なベクトル成分を含む方向に延びていればよい。
【0027】
図1及び図4に示すように、縦方向圧搾溝12は、横方向Y内方へ括れた括れ部14を有する。括れ部14は、一対の縦方向圧搾溝12が横方向Y内方に相互に近接する部分であって、横方向Y内方に凸となる極小点として構成される。つまり、縦方向圧搾溝12では、括れ部14を挟んで前側の部分及び後ろ側の部分が、いずれも、括れ部14に向かって横方向Y内方に向かうベクトル成分を含む方向に延びるように構成される。
括れ部14は、前方領域M1において前方幅広部9と平面視で重なるように位置する。括れ部14が「前方幅広部9と平面視で重なる」とは、厚み方向Zから見た平面視において、括れ部14が前方幅広部9の少なくとも一部と重なることを意味する。図4に示す例では、括れ部14は、前方幅広部9の前方テーパ部9tと重なるように位置している。
【0028】
図1及び図4に示すように、横方向圧搾溝13は、一対の縦方向圧搾溝12の横方向Y内側に位置し、前方領域M1において横方向Yに延びる。また、横方向圧搾溝13は、一対の縦方向圧搾溝12の最前方部(前端部12a)よりも後方側に位置している。図4に示す例では、横方向圧搾溝13は、全体が前方領域M1に位置している。横方向圧搾溝13における「横方向Yに延びる」とは、横方向圧搾溝13が横方向Yに平行に延びる態様に限定されず、横方向圧搾溝13が全体として横方向Yと平行なベクトル成分を含む方向に延びていればよい。つまり、詳細を後述するように、横方向圧搾溝13は曲線で構成されてもよい。
図4に示すように、横方向圧搾溝13の少なくとも一部は、括れ部14を通り横方向Yに延びる仮想線L上に位置する。横方向圧搾溝13は、曲線状に構成される場合、一部が仮想線L上に配置され、横方向Yに延びる直線状に構成される場合、全体が仮想線L上に配置される。
【0029】
ナプキン1が通常の着用位置から後方にずれて着用された場合、着用者の脚(大腿)は、吸収性コア7の幅広部9が位置する前方領域M1に接触しやすくなる。この前方領域M1に着用者の脚から横方向Yの外力が付加された場合、ナプキン1では、括れ部14を含む縦方向圧搾溝12がこの外力を受け止めて、括れ部14が横方向Yに相互に近接するような変形が誘導される。さらに、括れ部14と縦方向Xにおいて重なる位置に横方向圧搾溝13が存在することで、横方向圧搾溝13もこの外力を受け止め、括れ部14に伴って弾性変形する。具体的には、当該外力によって横方向圧搾溝13の左右の端点間が相互に近接し、横方向圧搾溝13の横方向Y中央部が肌側に盛り上がるように変形する。このように、横方向Yからの外力に対して括れ部14及び横方向圧搾溝13が弾性変形する結果、幅広部9を含む前方領域M1に対して、その横方向Y中央部を肌側に盛り上げるような変形が促される。したがって、前方領域M1は、脚による外力を受けた場合にも、着用者の身体形状に沿うように柔軟に変形しやすくなり、着用者に対するフィット性が向上する。
さらに、ナプキン1では、横方向Yからの外力が前方領域M1に付加された場合、上記の好ましい変形によって外力のエネルギが効率よく消費される。これにより、着用者の鼠径部に対するナプキン1からの接触圧(抗力)が軽減される。したがって、着用者の鼠径部の擦れを抑制でき、肌トラブルの発生を防止することができる。
これに加えて、ナプキン1は、幅狭部10を有する吸収性コア7を備える。これにより、中間領域M2にも横方向Yからの外力が付加されにくくなり、上述のように中間領域M2におけるフィット性が向上する。また、中間領域M2においても着用者に対するナプキン1からの接触圧が軽減され、鼠径部の擦れが抑制される。
以上より、ナプキン1は、前方領域M1から中間領域M2にわたる広い範囲で良好なフィット性を発揮し、着用者の鼠径部の擦れを効果的に抑制することができる。
【0030】
[縦方向圧搾溝の詳細な構成]
図1に示すように、一対の縦方向圧搾溝12は、好ましくは、前方領域M1から後方領域M3にわたって延び、かつ、前端部12a及び後端部12bで相互に連結しており、閉鎖された形状を有する。「閉鎖された形状」は、連続的な環状を意味するが、概ね4mm以下のわずかな途切れ部を有している態様も含む。前端部12aは、縦方向圧搾溝12において最も前方に位置する部分であり、前方領域M1に位置する。後端部12bは、縦方向圧搾溝12において最も後方に位置する部分であり、後方領域M3に位置する。前端部12a及び後端部12bは、好ましくは、本体Mを横方向Yに2等分する縦中心線CL上に配置される。
【0031】
この構成により、前端部12aの位置する前方領域M1では、左右一対の縦方向圧搾溝12が連動して作用しやすくなる。これにより、ナプキン1が通常の着用位置から後方にずれて着用され、前方領域M1に横方向Yからの外力が付加された場合、前方領域M1の一対の縦方向圧搾溝12が弾性変形して相互に近接しやすくなり、これらの間の領域を柔軟に変形させる。したがって、前方領域M1が着用者の身体形状に沿うように変形しやすくなり、着用者に対するフィット性を高めることができる。また、前方領域M1が柔軟に変形することで、鼠径部に対するナプキン1からの接触圧が一層軽減され、着用者の鼠径部の擦れを効果的に抑制できる。
【0032】
[横方向圧搾溝の詳細な構成]
図1及び図4に示すように、横方向圧搾溝13は、好ましくは、前方に凸な形状を有する。つまり、この横方向圧搾溝13は、その横方向Y中央部において、前方に突出した形状を有する。図4に示すように、横方向圧搾溝13の最も前方に位置する部分を、前端部13aとする。前端部13aから左右の端点に向かう部分を、それぞれ左側部分13b及び右側部分13cとする。横方向圧搾溝13では、左側部分13b及び右側部分13cが、縦方向Xのベクトル成分を含む方向に延びる。前端部13aは、好ましくは、本体Mの縦中心線CL上に配置される。
【0033】
上記構成の横方向圧搾溝13では、横方向Yからの外力が付加された場合、左側部分13b及び右側部分13cが当該外力を受け止めやすくなり、横方向圧搾溝13自体が肌側へ盛り上がるように柔軟に弾性変形しやすくなる。これにより、括れ部14を含む前方領域M1全体に対しても、横方向Y中央部を肌側へ盛り上げるような好ましい変形を促しやすくなる。したがって、この構成によって、前方領域M1におけるフィット性を一層向上させ、着用者の鼠径部の擦れをより効果的に抑制することができる。
【0034】
横方向圧搾溝13は、より好ましくは曲線で構成される。つまり、この場合の横方向圧搾溝13は、前方に凸状に湾曲した形状を有する。
この構成では、左側部分13b及び右側部分13cがそれぞれ湾曲した形状を有するため、これらの部分の長さを十分に確保することができ、横方向Yからの外力を十分に受け止めることができる。これにより、外力のエネルギをより効率よく消費させ、着用者の鼠径部に対する接触圧をより低減させることができる。
さらに、左側部分13b及び右側部分13cが湾曲した形状を有することで、前方領域M1の横方向Y中央部を緩やかな凸状に湾曲させることができる。これにより、前方領域M1におけるフィット性を一層向上させることができる。
【0035】
[中央圧搾溝の構成]
図1に示すように、本体Mは、中間領域M2の横方向Y中央部に位置し、縦方向Xに延びる、少なくとも1つの中央圧搾溝15をさらに有していてもよい。中間領域M2の横方向Y中央部は、中間領域M2を横方向Yに3等分した場合の中央の領域とする。中央圧搾溝15における「縦方向Xに延びる」とは、中央圧搾溝15が縦方向Xに平行に延びる態様に限定されず、中央圧搾溝15が全体として縦方向Xと平行なベクトル成分を含む方向に延びていればよい。
【0036】
中央圧搾溝15は、本体Mの表面シート2側に設けられた線状溝であり、本体Mの表面シート2側から厚み方向Zに圧搾加工することによって形成される。図2に示すように、中央圧搾溝15は、表面シート2及び吸収体4が裏面シート3側に向かって一体的に凹陥した構成を有する。中央圧搾溝15は、熱エンボス加工又は超音波シール加工等の圧搾加工により常法に従って形成することができる。中央圧搾溝15では、表面シート2及び吸収体4が熱融着等により一体化している。
このように、中央圧搾溝15は、周囲の領域と比較して圧密化されており、力を受けた場合に周囲の領域の変形を促す変形の起点として機能する。
【0037】
中間領域M2では、幅狭部10の作用によって着用者の脚からの力の影響が低減されるが、当該力が大きい場合であっても、中央圧搾溝15によって、当該力を利用して中間領域M2の好ましい変形を促すことができる。
具体的には、中央圧搾溝15により、中間領域M2の横方向Y中央部にも変形の起点を設けることができ、横方向Yからの力によって中央圧搾溝15の横方向Y両側の領域を柔軟に変形させることができる。これにより、中間領域M2が肌側に盛り上がるように変形しやすくなり、身体形状に沿うようにフィットしやすくなる。
さらに、ナプキン1では、中間領域M2の好ましい変形によって力のエネルギが効率よく消費されるため、着用者の鼠径部に対する中間領域M2からの接触圧が軽減される。
したがって、この構成により、前方領域M1に加えて中間領域M2のフィット性も一層向上するとともに、前方領域M1及び中間領域M2の広範囲にわたって鼠径部の擦れが効果的に抑制される。
【0038】
中央圧搾溝15は、縦方向Xに延びる断片状に構成され、中間領域M2の縦方向Xにおける長さに対して短く構成される。中央圧搾溝15の縦方向Xにおける長さは、中間領域M2を柔軟に変形させる観点から、好ましくは5mm以上、より好ましくは7mm以上であり、そして好ましくは30mm以下、より好ましくは25mm以下である。
【0039】
図1に示すように、本体Mは、好ましくは複数の中央圧搾溝15を有している。これにより、中間領域M2の横方向Y中央部に複数の変形起点を設けることができ、中間領域M2をより柔軟に変形させることができる。
【0040】
本体Mは、例えば、4本の中央圧搾溝15を有していてもよい。図1に示す例では、中間領域M2の縦方向X中央部に2本の中央圧搾溝15が配置され、その前方及び後方に、それぞれ1本の中央圧搾溝15が配置されている。縦方向X中央部の2本の中央圧搾溝15は、例えば本体Mの縦中心線CLを挟んだ左側部分及び右側部分にそれぞれ配置され、前方及び後方の中央圧搾溝15は、例えば縦中心線CL上にそれぞれ配置される。
これにより、中間領域M2の中央部を囲むように中央圧搾溝15が配置され、横方向Yからの力に対して、中間領域M2の中央部を盛り上げるように変形させることができる。したがって、この構成により、中間領域M2が身体形状に沿うようにより変形しやすくなり、中間領域M2におけるフィット性がより一層高められる。
【0041】
[吸収性コアの低坪量の溝部の構成]
図3に示すように、吸収性コア7は、縦方向Xに延びる低坪量の縦溝部16と、横方向Yに延びる低坪量の横溝部17と、をさらに有する。吸収性コア7は、図3に示す例において、複数の縦溝部16及び複数の横溝部17を有し、これらによってブロック状に分割されている。これらの溝部において「縦方向Xに延びる」又は「横方向Yに延びる」とは、全体として縦方向X又は横方向Yに延びていればよく、少なくとも一部が湾曲又は蛇行している態様も含むものとする。
これらの溝部は、図2に示すように、例えば吸収性コア7の厚み方向Zの上面から下方に向かって形成された溝を含む。これらの溝部は、周囲の領域よりも低い坪量で構成される。
なお、溝部の「低坪量」とは、吸収性コア7の材料が存在する形態の他、吸収性コア7の材料が存在しない形態も含む概念である。各縦溝部16及び横溝部17で吸収性コア7の材料が存在する形態では、各溝部を介してその両側に位置する吸収性コア7のブロック状部位が接続されているため、吸収性コア7の変形及び破壊等を抑制しつつ柔軟性を付与できるため、より好ましい。
【0042】
縦溝部16及び横溝部17は、周囲のブロック状部位と比較して薄く構成されるため、変形の起点となりやすい。つまり、吸収性コア7が縦溝部16及び横溝部17を有することで、本体Mが柔軟に変形しやすくなる。したがって、上述の力に対する各圧搾溝の変形作用をより効果的に発揮させ、フィット性を向上させることができる。また、吸収性コア7の柔軟性が高まることで、着用者の鼠径部に対する接触圧を低減させることができ、鼠径部の擦れもより一層効果的に防止することができる。
【0043】
[本実施形態の追加説明]
以下、本実施形態の説明を補足する。
【0044】
(吸収性コアの追加説明)
図2及び図3に示すように、吸収性コア7は、中間領域M2における横方向Y中央部に少なくとも位置し、周囲よりも坪量の高い高坪量部18を有する。図3では、高坪量部18をドットパターンで示している。高坪量部18は、例えば厚み方向Z上方に突出している。高坪量部18により、中間領域M2における吸収性コア7の吸収性を高めるとともに、中間領域M2におけるフィット性を一層高めることができる。
【0045】
図3に示すように、高坪量部18は、中間領域M2から前方領域M1及び後方領域M3まで延びていてもよく、例えば吸収性コア7の幅狭部10の縦方向X全長にわたって延びていてもよい。これにより、幅狭部10の吸収性を高めるとともに、十分なフィット性を確保することができる。
【0046】
また、図2に示すように、中央圧搾溝15は、高坪量部18上に形成されていてもよい。これにより、坪量の大きい高坪量部18の柔軟な変形を促進することができ、中間領域M2におけるフィット性をより一層高めることができる。
【0047】
(吸収性コアの各部の幅)
前方幅広部9及び後方幅広部11の幅D1,D3は、好ましくは60mm以上100mm以下であり、より好ましくは70mm以上90mm以下である。
幅狭部10の幅D2は、十分な吸収性を確保しつつ、上述の力の緩衝作用を得る観点から、好ましくは40mm以上75mm以下であり、より好ましくは50mm以上70mm以下である。
【0048】
(縦溝部及び横溝部の追加説明)
図3に示す例では、縦溝部16は、前方幅広部9及び後方幅広部11において、横方向Yに間隔をあけて5本配置されている。これらの縦溝部16の配置は限定されないが、例えば、縦中心線CL上に1本の縦溝部16が配置され、その横方向Y両側に2対の縦溝部16が配置される。
幅狭部10においては、縦中心線CL上に1本の縦溝部16が配置され、その横方向Y両側に1対の縦溝部16が配置される。幅狭部10の両側の2本の縦溝部16は、高坪量部18の外周を取り囲むように延びていてもよい。これにより、高坪量部18の壊れを防止して形状を良好に維持できるとともに、幅狭部10の柔軟な変形を促進することができる。
これらの縦溝部16は、図3に示すように、前方幅広部9、幅狭部10及び後方幅広部11の縦方向X全長にわたって延びていてもよいし、これらの各部の一部に延びていてもよい。
【0049】
図3に示す例では、横溝部17は、縦方向Xに間隔をあけて吸収性コア7全体に配置されている。横溝部17は、図3に示すように、吸収性コア7の横方向Y全幅にわたって延びていてもよいし、一部に延びていてもよい。
【0050】
縦溝部16及び横溝部17の延在方向に直交する方向における幅は、好ましくは0.5mm以上、より好ましくは1mm以上であり、また、好ましくは10mm以下であり、より好ましくは5mm以下である。縦溝部16及び横溝部17の深さは、好ましくは0.5mm以上であり、好ましくは10mm以下である。
【0051】
(他の圧搾溝の構成)
図1に示すように、本体Mは、後方領域M3において横方向Yに延びる1又は複数の横方向圧搾溝をさらに有していてもよい。以下、前方領域M1における横方向圧搾溝13を、第1横方向圧搾溝13とする。後方領域M3において縦方向圧搾溝12の縦方向X及び横方向Yの内側に位置する横方向圧搾溝を、第2横方向圧搾溝19とする。後方領域M3において縦方向圧搾溝12の後方(外側)に位置する横方向圧搾溝を、第3横方向圧搾溝20とする。
なお、本体Mは、図示しない他の圧搾溝を有していてもよく、例えば中間領域M2において縦方向Xに延びる1又は複数対の補助圧搾溝を有していてもよい。
【0052】
第2横方向圧搾溝19は、例えば後方に凸な形状を有し、曲線状に構成される。第2横方向圧搾溝19は、縦方向圧搾溝12の環状構造で囲まれた内部に位置しており、例えば縦方向Xに離間して2本設けられる。各第2横方向圧搾溝19の最も後方に位置する後端部は、例えば縦中心線CL上に配置される。このような第2横方向圧搾溝19により、後方領域M3の横方向Y中央部を肌側へ盛り上げるような変形が促され、後方領域M3における着用者の臀部に対するフィット性を向上させることができる。
【0053】
第3横方向圧搾溝20は、例えば後方に凸な形状を有し、曲線状に構成される。第3横方向圧搾溝20は、縦方向圧搾溝12の環状構造の外側に位置している。第3横方向圧搾溝20の最も後方に位置する後端部は、例えば縦中心線CLから横方向Yに離間した位置に配置される。また、第3横方向圧搾溝20の左右の端点のうち一方の端点側は、渦巻き状に構成されていてもよい。このような第3横方向圧搾溝20により、後方領域M3の後端部近傍の領域の肌側への起立を抑制でき、着用者の略平坦な臀部後方におけるフィット性を向上させることができる。
【0054】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上述の実施形態にのみ限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。
【0055】
以上の実施形態では、吸収性物品として生理用ナプキンの例を示したが、これに限定されない。本発明の吸収性物品は、例えば、尿取りパットやおりものシート、使い捨ておむつ等であってもよい。
【実施例
【0056】
以下、本発明を実施例によりさらに具体的に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0057】
[評価用の吸収性物品の作製]
(実施例)
実施例1の吸収性物品として、図1図4に示す構成の生理用ナプキン(ナプキン)を作製した。
まず、吸収性コアをコアラップシートで巻回して吸収体を作製した。吸収性コアは、図3に示すように、幅狭部と、その前後両端部側に位置する幅広部と、を有し、縦溝部及び横溝部によりブロック構造が形成されたものであった。
この吸収体を、液透過性の表面シートと、ポリエチレン製の樹脂フィルムからなる裏面シート間に配置し、積層体を作製した。表面シートは、吸収体上に接着剤をスパイラルパターンで塗工して吸収体上に固定した。
さらに、この積層体の表面シート側から圧搾加工を行った。圧搾加工は、例えば、この積層体を、外周面に凸部が設けられたエンボスロールと、外周面が平坦なフラットロールとの間で一体的に加熱及び加圧することにより行った。これにより、当該凸部の平面形状に対応するパターンの圧搾溝が形成され、実施例に係るナプキンが作製された。
本実施例1のナプキンは全長400mmであり、吸収性コアにおける幅狭部の縦方向長さ及び横方向長さが、それぞれ130mm、65mm、幅広部の横方向最大幅が80mm、テーパ部の縦方向長さが11mmであった。
【0058】
実施例に係るナプキンは、表1に示すように、前方領域において幅広部と平面視で重なるように位置する括れ部を有する縦方向圧搾溝と、少なくとも一部が、括れ部を通り横方向に延びる仮想線上に位置する横方向圧搾溝と、を備えていた。
【0059】
【表1】
【0060】
(比較例1)
比較例1として、表1に示すように、前方領域において括れ部を有する縦方向圧搾溝と、少なくとも一部が、括れ部を通り横方向に延びる仮想線上に位置する横方向圧搾溝と、を備えていない以外は、実施例と同様の構成のナプキンを作製した。表1に示すように、比較例1に係るナプキンは、実施例に係るナプキンと同様に、幅狭部を有する吸収性コアを有していた。
【0061】
(比較例2)
比較例2として、表1に示すように、幅狭部を有しておらず、縦方向X全長にわたって幅が一定の吸収性コアを備えている以外は、実施例と同様の構成のナプキンを作製した。表1に示すように、比較例2に係るナプキンは、前方領域において括れ部を有する縦方向圧搾溝と、少なくとも一部が、括れ部を通り横方向に延びる仮想線上に位置する横方向圧搾溝と、を備えていた。
【0062】
(比較例3)
比較例3として、表1に示すように、幅狭部を有しておらず、縦方向X全長にわたって幅が一定の吸収性コアを備えており、かつ、少なくとも一部が、括れ部を通り横方向に延びる仮想線上に位置する横方向圧搾溝を備えていない以外は、実施例と同様の構成のナプキンを作製した。表1に示すように、比較例3に係るナプキンは、前方領域において括れ部を有する縦方向圧搾溝を備えていた。
【0063】
(比較例4)
比較例4として、表1に示すように、幅狭部を有しておらず、縦方向X全長にわたって幅が一定の吸収性コアを備えており、かつ、前方領域において括れ部を有する縦方向圧搾溝と、少なくとも一部が、括れ部を通り横方向に延びる仮想線上に位置する横方向圧搾溝と、を備えていない以外は、実施例と同様の構成のナプキンを作製した。
【0064】
[横方向の圧縮荷重の測定]
実施例及び比較例1~4のナプキンについて、下記方法により、横(幅)方向の圧縮荷重を測定した。横方向の圧縮荷重は、着用者の大腿部からの横方向の圧縮に対する、吸収性物品の柔軟性、肌へ与える接触荷重の大きさを評価するものである。
【0065】
測定機器として、図5に示すように、オリエンテック社製TENSILON RTC-1210S(測定装置T)と治具Jを用いた。治具Jは、サンプルSに幅圧縮荷重を付加する一対の弧J11,J12と、弧J11に取り付けられた紐J3を引っ張る滑車J2と、を有する。
サンプルSは、ナプキン本体における裏面シートの粘着部全面にティッシュペーパーを貼りつけ、ウイング部と後方フラップ部を裏面シート側に折り返した状態で弧J11,J12の間に配置した。このとき、サンプルS幅がコアラップシートの幅と同じになるように調整した。
サンプルSは、図5Aに示すように、測定位置が治具Jの一対の弧J11,J12の頂点と同じ水平位置になり、かつ滑車J2側の弧J12に接するようにして、固定紐J4の下に配置した。このとき、左右の弧J11,J12の間の距離は100mmに合わせた。
サンプルSの測定位置は、中間領域(排泄部対向領域)を縦方向に2等分する位置と、この位置から後方に42mmずらした位置と、の2箇所とした。以下、前者の測定位置を「通常の測定位置」と称し、後者の測定位置を「後方ずらし時の測定位置」と称する。
測定時には、図5Bに示すように、弧J11に取り付けられた紐J3を測定装置Tと滑車J2で引張してサンプルSを幅30mmになるまで圧縮していき、50mm幅に圧縮された時点での荷重を幅圧縮荷重として測定した。測定条件は、引張速度50 mm/分とし、サンプルS載置面からの固定紐J4の高さを22mmとした。
表1に、測定結果を示す。
【0066】
実施例、比較例1及び2の結果から、吸収性コアが幅狭部を有することで、通常の測定位置における圧縮荷重が低減できることが確認された。
一方で、実施例及び比較例1の結果から、前方領域において括れ部を有する縦方向圧搾溝と、少なくとも一部が、括れ部を通り横方向に延びる仮想線上に位置する横方向圧搾溝と、を備えていることで、後方ずらし時の測定位置における圧縮荷重も低減できることが確認された。また、実施例1及び比較例2の結果から、後方ずらし時の圧縮荷重は、これらの圧搾溝に加えて、吸収性コアが幅狭部を有することによってさらに低減できることが確認された。
実施例、比較例2及び3の結果から、括れ部を通り横方向に延びる仮想線上に位置する横方向圧搾溝によって、いずれの測定位置における圧縮荷重も低減できることが確認された。
実施例、比較例3及び4の結果から、前方領域において括れ部を有する縦方向圧搾溝を備えていることで、後方ずらし時の測定位置における圧縮荷重を大幅に低減できることが確認された。
以上より、幅狭部を有する吸収性コアと、前方領域において括れ部を有する縦方向圧搾溝と、少なくとも一部が、括れ部を通り横方向に延びる仮想線上に位置する横方向圧搾溝と、のいずれも備えた吸収性物品により、通常の装着位置のみならず、後方にずれた装着位置においても、横方向の圧縮荷重を低減できることが確認された。したがって、このような吸収性物品により、着用者に対するフィット性を高めることができ、鼠径部への接触圧が低減されて擦れを抑制することができる。
【符号の説明】
【0067】
1…ナプキン(吸収性物品)
2…表面シート
3…裏面シート
4…吸収体
9…前方幅広部(幅広部)
10…幅狭部
12…縦方向圧搾溝
13…横方向圧搾溝
14…括れ部
M…本体
M1…前方領域
M2…中間領域
M3…後方領域
W…ウイング部
図1
図2
図3
図4
図5