(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-21
(45)【発行日】2024-07-01
(54)【発明の名称】硬化性組成物
(51)【国際特許分類】
C08F 290/06 20060101AFI20240624BHJP
C08F 2/46 20060101ALI20240624BHJP
B29C 64/106 20170101ALI20240624BHJP
B33Y 10/00 20150101ALI20240624BHJP
B33Y 70/00 20200101ALI20240624BHJP
B33Y 80/00 20150101ALI20240624BHJP
C09D 4/02 20060101ALI20240624BHJP
C09J 4/02 20060101ALI20240624BHJP
C09D 11/101 20140101ALI20240624BHJP
C09K 3/10 20060101ALI20240624BHJP
【FI】
C08F290/06
C08F2/46
B29C64/106
B33Y10/00
B33Y70/00
B33Y80/00
C09D4/02
C09J4/02
C09D11/101
C09K3/10 E
(21)【出願番号】P 2019528509
(86)(22)【出願日】2017-11-17
(86)【国際出願番号】 EP2017079664
(87)【国際公開番号】W WO2018095823
(87)【国際公開日】2018-05-31
【審査請求日】2020-08-21
(32)【優先日】2016-11-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】505005522
【氏名又は名称】アルケマ フランス
(74)【代理人】
【識別番号】110001173
【氏名又は名称】弁理士法人川口國際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ハーゼル,トーマス・ダブリュ
(72)【発明者】
【氏名】ウルフ,ウィリアム
(72)【発明者】
【氏名】デイビッド,フロリアン・ジェイ
【審査官】内田 靖恵
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2004/072192(WO,A1)
【文献】特開平10-245422(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08F
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
硬化性組成物であって、
a)6個以上の炭素原子を含む少なくとも1つのエチレン性不飽和カルボン酸の少なくとも1つの塩であって、少なくとも1つの多価カチオンを含み、さらに、エチレン性不飽和ではないカルボキシレート部分及び/又は6個未満の炭素原子を含むエチレン性不飽和カルボキシレート部分を含む塩、
b)少なくとも1つの多官能性(メタ)アクリレートオリゴマー、及び
c)ホモポリマーとして重合したときに、ASTM E1640-13に従う動的機械的分析により測定して少なくとも50℃のガラス転移温度を有する、アルコールの少なくとも1つのモノ(メタ)アクリレートエステル
を含
み、
塩が式(I)に対応する、
M(OC(=O)CR
1
=CH
2
)
x
(O-C(=O)-R
2
-C(=O)-O-R
3
-O-C(=O)CR
4
=CH
2
)
y
(I)
[式中、Mは少なくとも1つの多価カチオンであり、原子価nを有し、n=x+yであり、x=少なくとも1の整数であり、y=少なくとも1の整数であり、R
1
及びR
4
は、同一又は異なり、H又はCH
3
であり、R
2
及びR
3
は、同一又は異なり、それぞれが2個以上の炭素原子を含む二価の有機部分である。]
硬化性組成物。
【請求項2】
前記エチレン性不飽和カルボン酸が、7個、8個、9個、10個、11個、12個、13個またはそれ以上の炭素原子から構成される、請求項1に記載の硬化性組成物。
【請求項3】
前記エチレン性不飽和カルボン酸が、アクリロイル、メタクリロイル、アリル、プロペニル及びビニルからなる群から選択される少なくとも1つの官能基を含む、請求項1に記載の硬化性組成物。
【請求項4】
前記エチレン性不飽和カルボン酸が、(メタ)アクリレート官能化カルボン酸である、請求項1に記載の硬化性組成物。
【請求項5】
前記少なくとも1つの塩が、少なくとも1つの多価金属塩を含む、請求項1に記載の硬化性組成物。
【請求項6】
前記少なくとも1つの塩が、少なくとも1つの亜鉛塩又はカルシウム塩を含む、請求項1に記載の硬化性組成物。
【請求項7】
前記エチレン性不飽和カルボン酸が、ヒドロキシ官能化エチレン性不飽和化合物とポリカルボン酸又はカルボン酸無水物との反応生成物である半エステルである、請求項1に記載の硬化性組成物。
【請求項8】
Mが、Ce、Mg、Ca、Sr、Ba、Ti、Zr、V、Cr、Mo、W、Mn、Fe、Co、Ni、Pd、Cu、Zn、Cd、Hg、B、Al、Ga、In、Si、Ge、Sn、Pb、Sb及びBiからなる群より選択される、請求項
1~7のいずれか一項に記載の硬化性組成物。
【請求項9】
前記アルコールの少なくとも1つのモノ(メタ)アクリレートエステルが、ホモポリマーとして重合したときに、ASTM E1640-13に従って動的機械的分析によって測定して少なくとも75℃のガラス転移温度を有する、請求項1~
8のいずれか一項に記載の硬化性組成物。
【請求項10】
前記少なくとも1つの多官能性(メタ)アクリレートオリゴマーが、ウレタン(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレート、ポリエステル(メタ)アクリレート、ポリエーテル(メタ)アクリレート、ポリカーボネート(メタ)アクリレート、及びそれらの組み合わせからなる群より選択される、請求項1~
9のいずれか一項に記載の硬化性組成物。
【請求項11】
前記少なくとも1つの多官能性(メタ)アクリレートオリゴマーが、少なくとも1つのジ(メタ)アクリレート官能化オリゴマーを含む、請求項1~
10のいずれか一項に記載の硬化性組成物。
【請求項12】
前記少なくとも1つの多官能性(メタ)アクリレートオリゴマーが、約1000~約10,000ダルトンの数平均分子量を有する、請求項1~
11のいずれか一項に記載の硬化性組成物。
【請求項13】
前記アルコールが、環状構造部分又はヒドロキシアルキル構造部分の少なくとも1つを含む、請求項1~
12のいずれか一項に記載の硬化性組成物。
【請求項14】
前記アルコールが、芳香族基及び脂環式基からなる群より選択される環状構造部分の少なくとも1つを含む、請求項1~
13のいずれか一項に記載の硬化性組成物。
【請求項15】
前記アルコールが、単環式、二環式、三環式、四環式、五環式及び六環式炭化水素ラジカルからなる群より選択される環式構造部分の少なくとも1つを含む、請求項1~
14のいずれか一項に記載の硬化性組成物。
【請求項16】
前記アルコールが、イソボルニル、シクロヘキシル、トリシクロデカニル及びフェニルからなる群より選択される環状構造部分の少なくとも1つを含む、請求項1~
15のいずれか一項に記載の硬化性組成物。
【請求項17】
前記塩が、M含有化合物(ただし、Mは、Ce、Mg、Ca、Sr、Ba、Ti、Zr、V、Cr、Mo、W、Mn、Fe、Co、Ni、Pd、Cu、Zn、Cd、Hg、B、Al、Ga、In、Si、Ge、Sn、Pb、Sb及びBiからなる群より選択される元素の少なくとも1つの多価カチオンである)を式(II)に対応する、6個以上の炭素原子を含む少なくとも1つのエチレン性不飽和カルボン酸と反応させることによって得られる、請求項1~
16のいずれか一項に記載の硬化性組成物。
HO-C(=O)-R
2-C(=O)-O-R
3-O-C(=O)CR
4=CH
2(II)
[式中、R
4はH又はCH
3であり、R
2及びR
3は、同一又は異なり、それぞれが2個以上の炭素原子を含有する二価の有機部分である。]
【請求項18】
前記M含有化合物が、M含有酸化物、M含有ハロゲン化物、M含有アルコキシド、M含有水酸化物、M含有硝酸塩、M含有硫酸塩、M含有カルボン酸塩、M含有炭酸塩、及びそれらの組合せからなる群より選択される、請求項
17に記載の硬化性組成物。
【請求項19】
前記M含有化合物が、酸化亜鉛又は酸化カルシウムである、請求項
17又は
18に記載の硬化性組成物。
【請求項20】
前記塩が、前記M含有化合物を、前記式(II)に対応するカルボン酸及び(メタ)アクリル酸の両方と反応させることによって得られる、請求項
17~
19のいずれか一項に記載の硬化性組成物。
【請求項21】
a)+b)+c)の総重量を基準として、1~25重量%のa)、20~55重量%のb)及び25~60重量%のc)を含む、請求項1~
20のいずれか一項に記載の硬化性組成物。
【請求項22】
請求項1~
21のいずれか一項に記載の硬化性組成物を硬化することを含む、硬化物品を製造する方法。
【請求項23】
三次元物品の製造方法であって、以下の工程、すなわち、
a)請求項1~
21のいずれか一項に記載の硬化性組成物の第1の層を表面上にコーティングする工程;
b)前記第1の層を少なくとも部分的に硬化させて、硬化した第1の層を提供する工程;
c)前記硬化性組成物の第2の層を、前記硬化した第1の層の上にコーティングする工程;
d)前記第2の層を少なくとも部分的に硬化させて、前記硬化した第1の層に付着した硬化した第2の層を提供する工程;及び
e)工程c)及びd)を所望の回数繰り返して、前記三次元物品を構築する工程
を含む方法。
【請求項24】
前記硬化工程が、前記硬化性組成物の層を放射線に曝露することによって行われる、請求項
23に記載の方法。
【請求項25】
請求項1~
21のいずれか一項に記載の組成物の使用であって、コーティング、接着剤、シーラント、インク、3D印刷樹脂、複合材料、又は成形樹脂における使用。
【請求項26】
請求項1~
21のいずれか一項に記載の硬化性組成物を硬化することによって得られる硬化完成品。
【請求項27】
前記硬化完成品が、被覆物品、接着物品、密封物品、2D印刷物品、3D印刷物品、複合材料、及び成形物品からなる群から選択される、請求項
26に記載の硬化完成品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特性が改良された硬化材料を提供するための、フリーラジカル重合及び他の手段によって硬化され得るエチレン性不飽和成分(例えば、(メタ)アクリレート官能化化合物)をベースとする組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
光硬化性樹脂は、UV光に曝されると三次元網目構造を形成することにより硬化する熱硬化性ポリマーの一種である。このような熱硬化性ポリマーは、その機械的特性が、柔軟な絡み合いよりもむしろ剛性の架橋から生じるので、熱可塑性プラスチックよりも本質的に脆性である。したがって、光硬化性組成物は一般に、全体的により弱い機械的特性を有し、特に、同等の材料硬度でより低い耐衝撃性を有する。これらの問題を克服する一つの方法は、高Tg(高ガラス転移温度)の単官能性(メタ)アクリレートモノマーの使用によるものであり、このモノマーは材料に硬度と柔軟性の良好なバランスを与える。残念ながら、このようなモノマーは、多官能性モノマーと比較して反応性が低いという重大な欠点も有する。
【0003】
したがって、高度に柔軟であり、しかもこのようなモノマーをベースとする硬化組成物に典型的な硬度及び剛性を保持する高Tgの単官能性(メタ)アクリレートモノマーをベースとする硬化材料を製造する方法を見出すことが望ましいであろう。その結果として、このような配合物は、従来の光硬化性系と比較して、優れた耐衝撃性を有するであろう。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0004】
高Tgの単官能性(メタ)アクリレートモノマーを含有しているにもかかわらず、良好な硬度及び剛性を保持しながら、硬化時に高度の柔軟性及び耐衝撃性を有する硬化性組成物が発見された。このような組成物は、可溶性金属塩を使用して、柔軟性を損なうことなく反応性を増加させ、これは、従来の多官能性モノマーが光硬化性組成物において典型的に有する効果である。
【0005】
本発明の様々な態様は、以下のように要約することができる。
【0006】
態様1:以下のものから構成される、本質的にそれからなる、又はそれからなる硬化性組成物。
a)6個以上の炭素原子を含む少なくとも1つのエチレン性不飽和カルボン酸の少なくとも1つの塩;
b)少なくとも1つの多官能性(メタ)アクリレートオリゴマー、及び
c)ホモポリマーとして重合したときに、少なくとも50℃のガラス転移温度を有するアルコールの少なくとも1つのモノ(メタ)アクリレートエステル。
【0007】
態様2:エチレン性不飽和カルボン酸が、7個、8個、9個、10個、11個、12個、13個又はそれ以上の炭素原子から構成される、態様1に記載の硬化性組成物。
【0008】
態様3:エチレン性不飽和カルボン酸が、アクリロイル、メタクリロイル、アリル、プロペニル及びビニルから選択される少なくとも1つの官能基を含む、態様1又は2に記載の硬化性組成物。
【0009】
態様4:エチレン性不飽和カルボン酸が(メタ)アクリレート官能化カルボン酸である、態様1~3のいずれかに記載の硬化性組成物。
【0010】
態様5:少なくとも1つの塩が、少なくとも1つの多価金属塩を含む、本質的にそれからなる、又はそれからなる、態様1~4のいずれかに記載の硬化性組成物。
【0011】
態様6:少なくとも1つの塩が、少なくとも1つの亜鉛塩又はカルシウム塩を含む、本質的にそれからなる、又はそれからなる、態様1~5のいずれかに記載の硬化性組成物。
【0012】
態様7:エチレン性不飽和カルボン酸が、ヒドロキシ官能化エチレン性不飽和化合物とポリカルボン酸又はカルボン酸無水物との反応生成物である半エステルである、態様1~6のいずれかに記載の硬化性組成物。
【0013】
態様8:塩が式(I)に対応する、態様1~7のいずれかに記載の硬化性組成物。
M(OC(=O)CR1=CH2)x(O-C(=O)-R2-C(=O)-O-R3-O-C(=O)CR4=CH2)y(I)
式中、Mは水素以外の原子価nの元素であり、n=x+yであり、y=少なくとも1の整数であり、R1及びR4は同一又は異なり、H又はCH3であり、R2及びR3は同一又は異なり、それぞれが2個以上の炭素原子を含有する二価の有機部分である。
【0014】
態様9:Mが、Li、Na、K、Ce、Mg、Ca、Sr、Ba、Ti、Zr、V、Cr、Mo、W、Mn、Fe、Co、Ni、Pd、Cu、Zn、Cd、Hg、B、Al、Ga、In、Si、Ge、Sn、Pb、Sb及びBiからなる群より選択される、態様8に記載の硬化性組成物。
【0015】
態様10:アルコールの少なくとも1つのモノ(メタ)アクリレートエステルが、ホモポリマーとして重合したときに、ASTM E1640-13に従う動的機械的分析によって測定される、少なくとも75℃のガラス転移温度を有する、態様1~9のいずれかに記載の硬化性組成物。
【0016】
態様11:少なくとも1つの多官能性(メタ)アクリレートオリゴマーが、ウレタン(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレート、ポリエステル(メタ)アクリレート、ポリエーテル(メタ)アクリレート、及びポリカーボネート(メタ)アクリレート、並びにそれらの組合せからなる群より選択される、態様1~10のいずれかに記載の硬化性組成物。
【0017】
態様12:少なくとも1つの多官能性(メタ)アクリレートオリゴマーが、少なくとも1つのジ(メタ)アクリレート官能化オリゴマーを含む、本質的にそれからなる、又はそれからなる、態様1~11のいずれかに記載の硬化性組成物。
【0018】
態様13:少なくとも1つの多官能性(メタ)アクリレートオリゴマーが、約1000~約10,000ダルトンの数平均分子量を有する、態様1~12のいずれかに記載の硬化性組成物。
【0019】
態様14:アルコールが、環状構造部分又はヒドロキシアルキル構造部分の少なくとも1つを含む、態様1~13のいずれかに記載の硬化性組成物。
【0020】
態様15:アルコールが、芳香族基及び脂環式基からなる群より選択される環状構造部分の少なくとも1つを含む、態様1~14のいずれかに記載の硬化性組成物。
【0021】
態様16:アルコールが、単環式、二環式、三環式、四環式、五環式及び六環式炭化水素ラジカルからなる群より選択される環式構造部分の少なくとも1つを含む、態様1~15のいずれかに記載の硬化性組成物。
【0022】
態様17:アルコールが、イソボルニル、シクロヘキシル、トリシクロデカニル及びフェニルからなる群より選択される環状構造部分の少なくとも1つを含む、態様1~16のいずれかに記載の硬化性組成物。
【0023】
態様18:塩が、M含有化合物(ただし、Mは、Li、Na、K、Ce、Mg、Ca、Sr、Ba、Ti、Zr、V、Cr、Mo、W、Mn、Fe、Co、Ni、Pd、Cu、Zn、Cd、Hg、B、Al、Ga、In、Si、Ge、Sn、Pb、Sb及びBiからなる群より選択される)を、式(II)に対応するカルボン酸と反応させることによって得られる、態様1~17のいずれかに記載の硬化性組成物。
HO-C(=O)-R2-C(=O)-O-R3-O-C(=O)CR4=CH2(II)
式中、R4はH又はCH3であり、R2及びR3は同一又は異なり、それぞれが2個以上の炭素原子を含有する二価の有機部分である。
【0024】
態様19:M含有化合物が、M含有酸化物、M含有ハロゲン化物、M含有アルコキシド、M含有水酸化物、M含有硝酸塩、M含有硫酸塩、M含有カルボン酸塩、M含有炭酸塩、及びそれらの組合せからなる群より選択される、態様18に記載の硬化性組成物。
【0025】
態様20:M含有化合物が酸化亜鉛又は酸化カルシウムである、態様18又は19に記載の硬化性組成物。
【0026】
態様21:塩が、M含有化合物を、式(II)に対応するカルボン酸及び(メタ)アクリル酸の両方と反応させることによって得られる、態様18~20のいずれかに記載の硬化性組成物。
【0027】
態様22:a)+b)+cの総重量に基づいて、1~25重量%のa)、20~55重量%のb)及び25~60重量%のc)を含む、これらから本質的になる、又はこれらからなる、態様1~21のいずれかに記載の硬化性組成物。
【0028】
態様23:請求項1~22のいずれかに記載の硬化性組成物を硬化することを含む、硬化物品の製造方法。
【0029】
態様24:以下の工程を含む、三次元物品の製造方法。
a)態様1~22のいずれかに記載の硬化性組成物の第1の層を表面上にコーティングする工程;
b)第1の層を少なくとも部分的に硬化させて、硬化した第1の層を提供する工程;
c)硬化性組成物の第2の層を硬化した第1の層の上にコーティングする工程;
d)第2の層を少なくとも部分的に硬化させて、硬化した第1の層に付着した硬化した第2の層を提供する工程;
e)工程c)及びd)を所望の回数繰り返して、三次元物品を構築する工程。
【0030】
態様25:硬化工程が、硬化性組成物の層を放射線に曝露することによって行われる、態様24に記載の方法。
【0031】
態様26:コーティング、接着剤、シーラント、インク、3D印刷樹脂、複合材料、又は成形樹脂における、態様1~22のいずれかに記載の硬化性組成物の使用。
【0032】
態様27:態様1~22のいずれかに記載の硬化性組成物を硬化させることによって得られる硬化完成品。
【0033】
態様28:硬化完成品が、被覆物品、接着物品、密封物品、2D印刷物品、3D印刷物品、複合材料、及び成形物品からなる群から選択される、態様27の硬化完成品。
【発明を実施するための形態】
【0034】
エチレン性不飽和カルボン酸の塩
本発明の硬化性組成物は、6個以上の炭素原子から構成されるエチレン性不飽和カルボン酸の1種以上の塩を含有することを特徴とする。このような塩は、比較的多数の炭素原子を含有する少なくとも1つのカルボン酸基を含むことによって、(メタ)アクリル酸のようなより短鎖のエチレン性不飽和カルボン酸の類似塩と比較して有機媒体中での増加した溶解度、特に、硬化性組成物の他の成分(例えば、多官能性(メタ)アクリレートオリゴマー(複数可)及び/又はアルコール(複数可)のモノ(メタ)アクリレートエステル(複数可))中での改善された溶解度を有する。この種の塩は、当技術分野において「油溶性」と呼ばれることがある。一般的に言えば、有機媒体中の塩の溶解度は、炭素原子の数が増加するにつれて増加する傾向があるが、ある程度、溶解度は、その中に炭素原子が存在する構造部分(単数又は複数)の種類、並びに存在し得る他の種類の原子及び官能基にも依存する。本発明の種々の実施形態において、エチレン性不飽和カルボン酸は、例えば、6個、7個、8個、9個、10個、11個、12個、13個、14個、15個又はそれ以上の炭素原子を含有することができる。他の実施形態において、エチレン性不飽和カルボン酸は、30個以下、25個以下、又は20個以下の炭素原子を含む。炭素原子は、脂肪族炭素原子(炭素-炭素二重結合に関与する炭素原子を含む)、並びに芳香族炭素原子であることができる。
【0035】
適切なエチレン性不飽和カルボン酸は、少なくとも1つの炭素-炭素二重結合(すなわち、エチレン性不飽和の少なくとも1つの部位)を含むカルボン酸である。このような二重結合により、エチレン性不飽和カルボン酸の塩は、硬化性組成物が硬化するときに起こり、例えば、フリーラジカル重合機構又はカチオン重合機構を含み得る反応に関与することができるようになる。任意のこのような炭素-炭素結合が存在してもよいが、本発明の種々の実施形態において、炭素-炭素二重結合(複数可)は、アクリロイル(-O-C(=O)CH=CH2)、メタクリロイル(-O-C(=O)C(CH3)=CH2)、マレイル(-O-C(=O)-CH=CH-C(=O)-O-)、アリル(-CH2-CH=CH2)、プロペニル(-CH=CHCH3)及びビニル(-CH=CH2)からなる群より選択される1つ以上の官能基によって提供される。(メタ)アクリレート官能化カルボン酸の塩が、本発明の一実施形態において利用される。
【0036】
塩のエチレン性不飽和カルボキシレート部分に対する対イオン(複数可)であるカチオンが多価である(すなわち、1より大きい原子価を有する)本発明の実施形態では、塩は、エチレン性不飽和ではない(すなわち、炭素-炭素二重結合を全く含まない)カルボキシレート部分、及び/又は6個未満の炭素原子を含むエチレン性不飽和カルボキシレート部分(例えば、アクリレート部分又はメタクリレート部分)をさらに含んでもよい。例えば、塩が亜鉛又はカルシウムのような二価種の塩である場合、塩は式MXYに対応し得、式中、M=Zn又はCa、X=6個以上の炭素原子を含むエチレン性不飽和カルボン酸から誘導されるカルボキシレート、及びY=アクリル酸又はメタクリル酸から誘導されるカルボキシレートである。
【0037】
さらに、塩のカチオン部分が多価である実施形態において、カルボキシレート部分は、互いに同一又は異なる6個以上の炭素原子を含有する複数のエチレン性不飽和カルボキシレート部分から構成され得る。
【0038】
また、1分子当たり2つ以上のカルボン酸官能基を含有するエチレン性不飽和カルボン酸を用いることも可能であり、それによって、各々が単一の多価カチオン(例えば、Zn+2又はCa+2)とイオン結合している、2つ以上の-C(=O)O-基を与える。
【0039】
塩中の対イオン(単数又は複数)であるカチオン(単数又は複数)は、任意の適切な元素によって提供され得、一価(すなわち、1価)又は多価(すなわち、2、3、4、5、6又はそれ以上の価)であり得る。1つの有利な実施形態において、そのような元素は二価である。カチオン(複数可)としての使用に適した元素は、金属元素及び非金属元素の両方を含み、例えば、Li、Na、K、Ce、Mg、Ca、Sr、Ba、Ti、Zr、V、Cr、Mo、W、Mn、Fe、Co、Ni、Pd、Cu、Zn、Cd、Hg、B、Al、Ga、In、Si、Ge、Sn、Pb、Sb及びBiからなる群から選択され得る。亜鉛及びカルシウムは本発明の特定の実施形態において使用される。
【0040】
ある実施形態において、本発明の硬化性組成物は、式(I)に対応する1つ以上の(メタ)アクリレート塩を含有することを特徴とする。
M(OC(=O)CR1=CH2)x(O-C(=O)-R2-C(=O)-O-R3-O-C(=O)CR4=CH2)y(I)
式中、Mは原子価nの、水素(H)以外の元素であり、n=x+yであり、y=少なくとも1の整数であり、R1及びR4は同一又は異なり、H又はCH3であり、R2及びR3は同一又は異なり、それぞれが2個以上の炭素原子を含有する二価の有機部分である。
【0041】
本発明の種々の実施形態において、R2は、非置換又はアルキル基(例えば、C1-C6アルキル基、例えば、メチル)のような1つ以上の置換基で置換され得るシクロヘキシル部分であることができる。一実施形態において、R2は、1,2-シクロヘキシル部分であり、これは、シクロヘキサン環上に、アルキル基のような1つ以上の置換基を有することができる。他の実施形態において、R2は、置換又は非置換であってよく、一般式-(CH2)m-(式中、mは2以上の整数(例えば、2~20)である)に対応することができるアルキレン部分であることができる。さらに他の実施形態において、R2は、フェニレン部分、特にオルト-フェニレン部分であることができ、これは、非置換であってもよく、又はアルキル基(例えば、C1-C6アルキル基、例えば、メチル)のような1つ以上の置換基で置換されていてもよい。
【0042】
他の実施形態において、R3は、-CH2CH2-、-CH(CH3)CH2-のような(しかしこれらに限定されない)分枝状若しくは直鎖状アルキレン部分、又は(CH2CH2O)oCH2CH2のような(しかしこれに限定されない)オリゴオキシアルキレン部分であり、ここで、oは1以上の整数(例えば、1~10)である。さらに他の実施形態において、R3は、例えば、式-CH(R5)CH2-に対応する置換アルキレン部分であることができ、ここで、R5は、アリール基(例えば、フェニル又は置換フェニル)、アラルキル基(例えば、ベンジル)、アルキル基(例えば、C1-C20アルキル)、又はエーテル含有ヒドロカルビル基(例えば、Ar-O-CH2-又はAlk-O-CH2-、ここで、Arは、フェニルのような置換又は非置換芳香族基であり、Alkは、アルキル基である)であることができる。
【0043】
<エチレン性不飽和カルボン酸の塩の製造方法>
本発明に有用なエチレン性不飽和カルボン酸の塩は、当該技術分野で知られており、例えば、米国特許第3,899,382号;米国特許第6,399,672号及び米国特許出願公開第2007/0054969号に記載されている。これらの特許文献のそれぞれの開示は、全ての目的のためにその全体が参照により本明細書に組み込まれる。このような(メタ)アクリレート塩は、商業的供給源、特にペンシルバニア州エクストンのArkema Inc.のSartomer Americas(「Sartomer」)からも入手可能である。
【0044】
このような塩を製造するための適切な方法は、ヒドロキシ官能化化合物を多価カルボン酸又は無水化合物と反応させてカルボン酸官能化化合物を形成し、次いでそのカルボン酸官能化化合物を塩のカチオン部分の供給源として役立つ化合物と反応させることを含む。後者の反応の間、カルボン酸官能化化合物は塩の形態に変換される。
【0045】
このような調製で使用されるヒドロキシ官能化化合物は、飽和又は不飽和化合物であり得る(すなわち、このようなヒドロキシ官能化化合物は、1つ以上の炭素-炭素二重結合を含み得るか、又は含み得ない)。飽和ヒドロキシ官能化化合物は、多価カルボン酸及び/又は無水化合物がエチレン性不飽和を含む場合に使用することができる。不飽和ヒドロキシ官能化化合物は、多価カルボン酸及び/又は無水化合物がエチレン性不飽和を含まない場合に使用することができる。他の実施形態において、ヒドロキシ官能化化合物及び多価カルボン酸又は無水化合物の両方は、エチレン性不飽和の1つ以上の部位(1つ以上の炭素-炭素二重結合)を含む。
【0046】
エチレン性不飽和基を含有するヒドロキシ官能化化合物については、不飽和は、例えば、(メタ)アクリロイル基、マレイル基、アリル基、プロペニル基及び/又はビニル基によって提供することができる。本明細書で使用されるように、「(メタ)アクリロイル」という用語は、メタクリロイル及びアクリロイルの両方を含むことを意図する。
【0047】
1つ以上の(メタ)アクリレート官能基を含むこのような適切なヒドロキシ官能化化合物の例としては、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート(例えば、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート);ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート又はヒドロキシプロピル(メタ)アクリレートのようなヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートで開環したアルキルグリシジル(メタ)アクリレート、アリールグリシジル(メタ)アクリレート、及びアリルグリシジル(メタ)アクリレート;トリメチロールプロパンモノ-及びジ-(メタ)アクリレート;ペンタエリトリトールモノ-、ジ-及びトリ-(メタ)アクリレート;ジペンタエリトリトールモノ-、ジ-、トリ-、テトラ-及びペンタ-(メタ)アクリレート;グリセロールモノ-及びジ-(メタ)アクリレート;ネオペンチルグリコールモノ(メタ)アクリレート;ヘキサンジオールモノ(メタ)アクリレートのようなアルキレンジオールモノ(メタ)アクリレート;トリス(2-ヒドロキシエチル)イソシアヌレートモノ-及びジ-(メタ)アクリレート;アルコキシル化(例えば、エトキシル化又はプロポキシル化)された上記の全ての型;ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート;ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート;ポリエチレン/プロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート;ポリブチレングリコールモノ(メタ)アクリレート;ポリテトラメチレングリコールモノ(メタ)アクリレート;ヒドロキシポリカプロラクトンモノ(メタ)アクリレート等、並びにそれらの組合せが挙げられる。これらの化合物の残基は、式(I)及び(II)において、R3で表され得る。
【0048】
1つ以上のアリル基を含有するヒドロキシ官能化化合物の例としては、アリルアルコール、プロポキシル化及び/又はエトキシル化アリルアルコール、シンナミルアルコール、クロチルアルコール、3-ブテン-1-オール、3-ブテン-2-オール、リナロール、2-シクロヘキセン-1-オール、2-シクロペンテン-1-オール、2-ブテン-1,4-ジオール、グリセロールモノ-及びジ-アリルエーテル、トリメチロールプロパンモノ-及びジ-アリルエーテル等が挙げられる。
【0049】
例えば、エチレングリコールビニルエーテル、プロピレングリコールビニルエーテル、1,4-ブタンジオールビニルエーテル、1,3-ブタンジオールビニルエーテル、1,6-ヘキサンジオールビニルエーテル、2-メチル-1,3-プロパンジオールビニルエーテル、ジ(エチレングリコール)ビニルエーテル、ジ(プロピレングリコール)ビニルエーテル等のような1つ以上のビニル基を含有する他のヒドロキシ官能化化合物も使用することができる。
【0050】
ヒドロキシ官能化化合物と反応することができる多価カルボン酸又は無水物は、1分子当たり2つ以上のカルボン酸基、又は1分子当たり少なくとも1つの無水物基、又は1分子当たり少なくとも1つの無水物基及び少なくとも1つのカルボン酸基のいずれかを有する。ヒドロキシ官能化化合物は、多価カルボン酸又は無水物と反応して、カルボン酸官能化化合物(場合によっては、「ハーフエステル」と考えられる)を形成し、これは、塩のカチオン部分を提供することができる化合物(例えば、金属化合物、例えば、金属酸化物、例えば、酸化亜鉛)との反応に適している。適切な多価カルボン酸及び無水物のカルボキシ当量官能性は、約2~30、好ましくは2~6であることができる。
【0051】
ヒドロキシ官能化化合物と反応する無水物基及び/又はカルボン酸基を含有する適切な化合物には、無水フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、無水テトラブロモフタル酸、無水テトラヒドロフタル酸、無水ヘキサヒドロフタル酸(無水1,2-シクロヘキサンジカルボン酸)、及びそれらのアルキル置換類似体、無水イタコン酸、イタコン酸、フタル酸、無水トリメリット酸(無水物基1つ及びカルボキシル基1つを含有する)、ピロメリット酸二無水物、無水5-ノルボルネン-エンド-2,3-ジカルボン酸、ナフチル無水物、ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、無水マレイン酸、無水シトラコン酸、無水ジフェン酸、無水コハク酸、無水クロレンド酸、マレイン酸、コハク酸、フマル酸、シュウ酸、マロン酸、グルタル酸、無水グルタル酸、アジピン酸、二量体脂肪酸、無水ヘキサヒドロトリメリット酸、ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、無水ジフタル酸、無水ホモフタル酸、無水アコニット酸、ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、スチレン/無水マレイン酸オリゴマー及びポリマー、並びに(メタ)アクリル酸オリゴマー、ポリマー及びコポリマーが挙げられる。
【0052】
上記のように調製されたヒドロキシ官能化化合物/ポリカルボン酸及び/又は無水物反応生成物(例えば、ハーフエステル)と反応したときに塩のカチオン部分を提供することができる適切な化合物には、金属化合物及び非金属化合物の両方が含まれる。この目的に適した化合物としては、リチウム、ナトリウム、カリウム、セシウム、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウム、チタン、ジルコニウム、バナジウム、クロム、モリブデン、タングステン、マンガン、鉄、コバルト、ニッケル、パラジウム、銅、亜鉛、カドミウム、水銀、ホウ素、アルミニウム、ガリウム、インジウム、ケイ素、ゲルマニウム、スズ、鉛、アンチモン、ビスマス等から選択される1つ以上の元素を含有する化合物が挙げられる。この化合物は、例えば、前記元素の酸化物、ハロゲン化物、アルコキシド、水酸化物、硝酸塩、硫酸塩、カルボン酸塩及び炭酸塩であり得る。ヒドロキシ官能化化合物/ポリカルボン酸及び/又は無水物反応生成物との反応に最も好ましい化合物は、非常に容易に反応し、容易に入手できるので、酸化亜鉛である。
【0053】
本発明での使用に適したエチレン性不飽和カルボン酸の塩を製造する1つの適切な方法は、M含有化合物を、「ハーフエステル」と考えることができる式(II)に対応するカルボン酸と反応させることを含む。
HO-C(=O)-R2-C(=O)-O-R3-O-C(=O)CR4=CH2(II)
【0054】
M含有化合物は、式(I)の(メタ)アクリレート塩中のM供給源として役立つ。すなわち、適切なM含有化合物には、式(II)のカルボン酸と反応することができ、式(II)のカルボン酸と反応したときに1つ以上のMイオンを与えることができる化合物が含まれる。適切なM含有化合物は、本発明の種々の実施形態において、M含有酸化物、M含有ハロゲン化物、M含有アルコキシド、M含有水酸化物、M含有硝酸塩、M含有硫酸塩、M含有カルボン酸塩、M含有炭酸塩、及びそれらの組合せからなる群から選択され得る。例えば、M含有化合物は、式M(X)nに対応することができ、ここで、複数のXが存在する場合、各Xは独立して、酸素、ハロゲン化物、アルコキシド、水酸化物、硝酸塩、硫酸塩、カルボン酸塩、炭酸塩又はそれらの組合せであり、そしてn=Mの原子価である。特にM含有酸化物、特に酸化亜鉛又は酸化カルシウムを使用することができる。
【0055】
前記のように、本発明での使用に適したエチレン性不飽和官能基は、少なくとも1つの炭素-炭素二重結合、特に、反応(例えばフリーラジカル反応)に関与し得る炭素-炭素二重結合を含有する基を含み、ここで、炭素-炭素二重結合の少なくとも1つの炭素は、第2の分子中の原子、特に炭素原子に共有結合した状態となる。このような反応は、重合又は硬化をもたらし得、それにより、1つ以上のエチレン性不飽和官能基を含有する化合物が、重合されたマトリックス又はポリマー鎖の一部となる。炭素-炭素二重結合は、例えば、α,β-不飽和カルボニル部分、例えば、アクリレート官能基(H2C=CH-C(=O)O-)又はメタクリレート官能基(H2C=C(CH3)-C(=O)O-)のようなα,β-不飽和エステル部分の一部として存在し得る。炭素-炭素二重結合は、ビニル基-CH=CH2又はアリル基-CH2-CH=CH2の形でエチレン性不飽和官能基に存在してもよい。
【0056】
<多官能性(メタ)アクリレートオリゴマー>
本発明の硬化性組成物は、1つ以上の多官能性(メタ)アクリレートオリゴマーが存在することを特徴とする。このようなオリゴマーは、典型的には中程度の分子量を有し、1分子当たり2つ以上の(メタ)アクリレート官能基を含む(すなわち、この内容において、「多官能性」という用語は、オリゴマー分子中の複数の(メタ)アクリレート官能基の存在を指す)。このタイプのオリゴマーは、複数の(メタ)アクリレート官能基の存在により、マルチ(メタ)アクリレート官能化オリゴマーとも呼ばれ得る。このような(メタ)アクリレート官能基(例えば、構造-O-C(=O)C(CH3)=CH2に対応するメタクリレート官能基)及び構造-O-C(=O)CH=CH2に対応するアクリレート官能基)は、硬化性組成物が、例えば、フリーラジカル重合又はカチオン重合によって硬化されるときに、硬化性組成物中に存在する他のエチレン性不飽和基と反応することができる。異なる多官能性(メタ)アクリレートオリゴマーの混合物を使用してもよい。多官能性(メタ)アクリレートオリゴマー(複数可)の数平均分子量は、本発明の種々の実施形態において、少なくとも500ダルトン、少なくとも750ダルトン、少なくとも1000ダルトン、少なくとも1500ダルトン又は少なくとも2000ダルトンかつ10,000ダルトン以下、9000ダルトン以下、又は8000ダルトン以下であり得る。一実施形態において、硬化性組成物は、ジ(メタ)アクリレート官能化オリゴマー又はジ(メタ)アクリレート官能化オリゴマーの混合物を含む。他の実施形態において、硬化性組成物は、ジ(メタ)アクリレート官能化オリゴマー以外の多官能性(メタ)アクリレートオリゴマーを含まない。ある実施形態において、硬化性組成物は、1つ以上のモノ(メタ)アクリレート官能化オリゴマー(すなわち、1分子当たり単一の(メタ)アクリレート官能基を含有するオリゴマー)をさらに含んでもよい。
【0057】
適切なフリーラジカル硬化性多官能性(メタ)アクリレートオリゴマーとしては、例えば、ポリエステル(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレート、ポリエーテル(メタ)アクリレート、ポリウレタン(メタ)アクリレート、アクリル(メタ)アクリレートオリゴマー、エポキシ官能性(メタ)アクリレートオリゴマー、及びそれらの組み合わせが挙げられ、その各々は、1分子当たり少なくとも2つの(メタ)アクリレート官能基(分子の末端に、及び/又は分子の骨格に沿って配置され得る)を含む。
【0058】
多官能性(メタ)アクリレートオリゴマーの各タイプは、硬化したときに組成物に特定の特性を提供し得、したがって、硬化組成物においてある所望の物理的特性を達成するために必要とされ得るように選択され及び変化し得る。このようなオリゴマーは、一般に、(メタ)アクリレート官能化モノマーと比較して、光硬化組成物に靭性を付与し、また、硬度、柔軟性、接着性及び/又は耐薬品性を調整するために使用することができる。本発明において、多官能性(メタ)アクリレートオリゴマー、特に高分子量のオリゴマー(例えば2000g/mol~10,000g/molの又はそれより高い数平均分子量を有するオリゴマー)は、硬化したとき、柔軟性(高い破断点伸び)及び耐衝撃性を組成物に提供するのに有用であることが分かった。
【0059】
例示的なポリエステル(メタ)アクリレートとしては、アクリル酸若しくはメタクリル酸又はそれらの混合物とヒドロキシル基末端ポリエステルポリオールとの反応生成物が挙げられる。その反応方法は、かなりの濃度の残留ヒドロキシル基がポリエステル(メタ)アクリレート中に残るように行うことができ、又はポリエステルポリオールのヒドロキシル基の全て若しくは本質的に全てが(メタ)アクリル化されるように行うことができる。ポリエステルポリオールは、ポリヒドロキシル官能性成分(特にジオール)及びポリカルボン酸官能性化合物(特にジカルボン酸及び無水物)の重縮合反応によって製造することができる。ポリヒドロキシル官能性成分及びポリカルボン酸官能性成分はそれぞれ、直鎖状、分枝状、脂環式又は芳香族構造を有することができ、個々に又は混合物として用いることができる。
【0060】
適切なエポキシ(メタ)アクリレートの例としては、アクリル酸若しくはメタクリル酸又はそれらの混合物と、グリシジルエーテル(ビスフェノールジグリシジルエーテル及びオリゴマーエポキシ樹脂等)又はグリシジルエステルとの反応生成物が挙げられる。エポキシ(メタ)アクリレートオリゴマーは、SartomerのCN159生成物をはじめとして、Sartomerのような商業的供給源から入手可能である。
【0061】
適切なポリエーテル(メタ)アクリレートには、アクリル酸若しくはメタクリル酸又はそれらの混合物と、ポリエーテルポリオールであるポリエーテルオールとの縮合反応生成物が挙げられるが、これらに限定されない。適切なポリエーテルオールは、エーテル結合及び末端ヒドロキシル基を含む直鎖状又は分枝状物質であることができる。ポリエーテルオールは、テトラヒドロフラン又はアルキレンオキシドのような環状エーテルと開始剤分子との開環重合により製造することができる。適切な開始剤分子としては、水、ヒドロキシル官能性材料(例えばポリオール、ビスフェノール等)、ポリエステルポリオール及びアミンが挙げられる。
【0062】
本発明の硬化性組成物に使用できるポリウレタン(メタ)アクリレート(「ウレタン(メタ)アクリレート」又は「メタ)アクリレート官能化ウレタンオリゴマーとも呼ばれる)は、脂肪族及び/又は芳香族ポリエステルポリオール及びポリエーテルポリオール、並びに脂肪族及び/又は芳香族ポリエステルジイソシアネート及び(メタ)アクリレート末端基でキャップされたポリエーテルジイソシアネートをベースとするウレタンを含む。適切なポリウレタン(メタ)アクリレートには、例えば、脂肪族ポリエステルベースのウレタンジアクリレートオリゴマー、脂肪族ポリエーテルベースのウレタンジアクリレートオリゴマー、並びに脂肪族ポリエステル/ポリエーテルベースのウレタンジアクリレートオリゴマーが挙げられる。
【0063】
種々の実施形態において、ポリウレタン(メタ)アクリレートは、脂肪族及び/又は芳香族ジイソシアネートを、OH基末端ポリエステルポリオール(芳香族、脂肪族及び混合脂肪族/芳香族ポリエステルポリオールを含む)、ポリエーテルポリオール、ポリカーボネートポリオール、ポリカプロラクトンポリオール、ポリジメチルシロキサンポリオール若しくはポリブタジエンポリオール又はそれらの組合せと反応させて、イソシアネート官能化オリゴマーを形成し、次いで、これをヒドロキシエチルアクリレート又はヒドロキシエチルメタクリレートのようなヒドロキシ官能化アクリレートと反応させて、末端(メタ)アクリレート基を提供することによって調製され得る。例えば、ポリウレタン(メタ)アクリレートは、1分子当たり2つ、3つ、4つ又はそれより多くの(メタ)アクリレート官能基を含むことができる。
【0064】
1つ以上のウレタンジアクリレートは、本発明のある実施形態において使用される。例えば、硬化性組成物は、(本発明の単官能性化合物に加えて)二官能性芳香族ウレタンアクリレートオリゴマー、二官能性脂肪族ウレタンアクリレートオリゴマー、及びそれらの組合せを含む少なくとも1つのウレタンジアクリレートを含むことができる。ある実施形態において、Sartomerから商品名CN9782として入手可能なもの等の二官能性芳香族ウレタンアクリレートオリゴマーを、少なくとも1つのウレタンジアクリレートとして使用することができる。他の実施形態では、Sartomerから商品名CN9023で入手可能なもの等の二官能性脂肪族ウレタンアクリレートオリゴマーを、少なくとも1つのウレタンジアクリレートとして使用することができる。全てSartomerから入手可能なCN9782、CN9023、CN978、CN965、CN966、CN9031、CN8881及びCN8886は、全て、本発明の硬化性組成物においてウレタンジアクリレートとして有利に使用され得る。
【0065】
適切なアクリル(メタ)アクリレートオリゴマー(当技術分野では「アクリルオリゴマー」とも呼ばれることがある)は、2つ以上の(メタ)アクリレート基(オリゴマーの末端又はアクリル骨格に対するペンダントにあり得る)で官能化されたオリゴマーアクリル骨格を有する物質として記載され得るオリゴマーを含む。アクリル骨格は、アクリルモノマーの反復単位から構成されるホモポリマー、ランダムコポリマー又はブロックコポリマーであることができる。アクリルモノマーは、C1-C6アルキル(メタ)アクリレートのようなモノマー(メタ)アクリレート、並びにヒドロキシル基、カルボン酸基及び/又はエポキシ基を有する(メタ)アクリレートのような官能化された(メタ)アクリレートであることができる。アクリル(メタ)アクリレートオリゴマーは、その少なくとも一部がヒドロキシル基、カルボン酸基及び/又はエポキシ基で官能化されて(例えば、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル酸、グリシジル(メタ)アクリレート)、官能化オリゴマー中間体を得、次いでそれを1つ以上の(メタ)アクリレート含有反応剤と反応させて所望の(メタ)アクリレート官能基を導入する、モノマーのオリゴマー化等の当技術分野で知られた任意の手順を用いて調製することができる。適切なアクリル(メタ)アクリレートオリゴマーは、例えば、CN820、CN821、CN822及びCN823と称される生成物としてSartomerから市販されている。
【0066】
<アルコールのモノ(メタ)アクリレートエステル>
本発明の硬化性組成物はさらに、ホモポリマーとして重合したときに、少なくとも50℃のガラス転移温度を有する、アルコールの少なくとも1つのモノ(メタ)アクリレートエステルを含有することを特徴とする。このようなモノ(メタ)アクリレートエステルは、本明細書では、時に「高Tg(メタ)アクリレート」と呼ばれることがある。
【0067】
適切な高Tg(メタ)アクリレートは、硬化性組成物の他の成分と反応して熱硬化性マトリックスを形成することができるアクリロイル官能基又はメタクリロイル官能基を含有する化合物である。(メタ)アクリロイル官能基に加えて、高Tg(メタ)アクリレートは、(メタ)アクリレートの単独重合時に高いガラス転移温度を有するポリマーを形成する能力に寄与する、1つ以上の構造的特徴又は部分(環状構造部分及び/又はヒドロキシル基等)を有する。本発明の種々の実施形態において、高Tg(メタ)アクリレートは、ホモポリマーとして重合したときに、少なくとも55℃、少なくとも60℃、少なくとも65℃、少なくとも70℃、少なくとも75℃、少なくとも80℃、少なくとも85℃、少なくとも90℃、少なくとも95℃又は少なくとも100℃のガラス転移温度を有する。このようなホモポリマーのTgは、例えば、200℃の高さ、175℃の高さ、又は150℃の高さであり得る。
【0068】
(メタ)アクリレートモノマーのホモポリマーのガラス転移温度は、光開始剤の存在下で(メタ)アクリレートモノマーを最大転化率まで光硬化させ、次いで、ASTM E1640-13に記載されている手順に従って、動的機械的分析(DMA)によって得られたホモポリマーのTgを測定することによって決定することができる。
【0069】
ある実施形態において、高Tg(メタ)アクリレートは、式(III)に対応する。
Z-O-C(=O)C(R6)=CH2(III)
ここで、Zは、ヒドロキシアルキル基(例えば、HOCH2CH2-、HOC(CH3)CH2-)又は少なくとも1つの環状構造元素を含む一価部分であり、R6はH又はCH3である。部分Zに含まれる環状構造元素は、炭素原子、酸素原子、窒素原子及び硫黄原子からなる群から選択される原子を含む(これ(ら)の原子により形成される)任意の環状構造であることができる。ある実施形態において、部分Zは、フリーラジカル重合性官能基を全く含まない。本発明の特定の態様では、環状構造要素(複数可)は、脂肪族炭化水素環(特に、飽和脂肪族炭化水素環)、芳香族炭化水素環、複素環、及びそれらの組合せからなる群から選択される。一実施形態において、部分Zは、少なくとも1つのヒドロキシル基及び少なくとも1つの環状構造要素の両方を含有することができ、したがってZは、例えば、ヒドロキシ置換脂環式基又は芳香族基であることができる。
【0070】
適切な脂肪族炭化水素環としては、単環式脂肪族炭化水素環及び多環式脂肪族炭化水素環、特に飽和単環式脂肪族炭化水素環及び飽和多環式脂肪族炭化水素環が挙げられる。単環式脂肪族炭化水素環としては、シクロプロパン環、シクロブタン環、シクロペンタン環、シクロヘキサン環、シクロヘプタン環若しくはシクロオクタン環又は一般にC3-C10シクロアルカン環のようなシクロアルカン環が挙げられるが、これらに限定されない。
【0071】
適切な多環式脂肪族炭化水素環としては、ノルボルナン環、ビシクロ[2.2.1]ヘプタン環、ビシクロ[3.2.1]オクタン環、ビシクロ[4.3.2]ウンデカン環、アダマンタン環、トリシクロデカン環又はテトラシクロドデカン環のような橋かけ環、並びにスピロ環が挙げられるが、これらに限定されない。適切な芳香族炭化水素環としては、ベンゼン環のような単環式芳香族炭化水素環、及びナフタレン環、アントラセン環、フェナントレン環、フルオレン環、インデン環又はピレン環のような縮合ベンゼン環によって代表される多環式芳香族炭化水素環が挙げられるが、これらに限定されない。
【0072】
適切な複素環としては、炭素原子及び酸素原子を含む複素環;炭素原子及び窒素原子を含む複素環、並びに炭素原子及び硫黄原子を含む複素環が挙げられるが、これらに限定されない。より具体的には、適切な複素環には、オキシラン環、テトラヒドロフラン環、テトラヒドロピラン環、モルホリン環、クロマン環、イソクロマン環、テトラヒドロチオフェン環、テトラヒドロチオピラン環、アジリジン環、ピロリジン環、ピペリジン環、ピペラジン環、インドリン環、2,6-ジオキサビシクロ[3.3.0]オクタン環又は1,3,5-トリアザシクロヘキサン環のような非芳香族複素環、及びチオフェン環、ピロール環、フラン環又はピリジン環のような芳香族複素環が挙げられる。
【0073】
上記の環状構造元素のいずれかを含む環状構造元素は、アルキル基、アリール基、アルカリル基、アルコキシ基、ハロゲン化物等の、水素以外の1以上の置換基で置換されていてもよく、ただし、このような置換基は、高Tg(メタ)アクリレートが本発明の硬化性組成物においてその意図された目的のために使用される能力を妨害しないことを条件とする。本発明の実施形態において、環式構造元素は、飽和二環式及び三環式炭化水素ラジカルからなる群より選択される。環状構造元素は、例えば、トリシクロ[5.2.1.02,6]デカンラジカル、トリシクロ[3.3.1.13,7]デカンラジカル及びビシクロ[2.2.1]ヘプタンラジカルからなる群から選択され得る。
【0074】
環状構造元素を含有する適切な高Tg(メタ)アクリレートの例には、イソボルニル(メタ)アクリレート、フェニル(メタ)アクリレート、3,3,5-トリメチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、tert-ブチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、シクロヘキサン(メタ)アクリレート、シクロヘキサンメタノール(メタ)アクリレート、シクロヘキサンジメタノールモノ(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、トリシクロデカンジメタノールモノ(メタ)アクリレート、トリシクロデカンメタノール(メタ)メタクリレート、モノヒドロキシ-ナフタレン(メタ)アクリレート、モノヒドロキシ-アントラセン(メタ)アクリレート、モノヒドロキシ-ビフェニル(メタ)アクリレート、及びそれらの組合せが挙げられるが、これらに限定されない。
【0075】
<エチレン性不飽和カルボン酸塩、多官能性(メタ)アクリレートオリゴマー及び高Tg(メタ)アクリレートエステルの量>
一般的に言えば、本発明に従う硬化性組成物の上記の成分の相対量及び比率は、特に重要であるとは考えられず、その未硬化及び硬化状態の両方において、硬化性組成物においてある所望の特性及び属性を得るために必要とされ得るように、調節又は変化され得る。例えば、硬化性組成物は、本発明の種々の実施形態において、1~25重量%のエチレン性不飽和カルボン酸塩(単数又は複数)、20~55重量%の多官能性(メタ)アクリレートオリゴマー(単数又は複数)、及び25~60重量%の高Tg(メタ)アクリレートエステル(単数又は複数)を、これら3つの成分の総重量を基準にして含むか、本質的にそれらからなるか、又はそれらからなることができる。
【0076】
<硬化性組成物の他の任意の成分>
硬化性組成物は、本明細書で論じるエチレン性不飽和カルボン酸塩、多官能性(メタ)アクリレートオリゴマー及び高Tg(メタ)アクリレートエステルに加えて、1つ以上の反応性成分を含有することができる。このような付加的成分は、硬化性組成物が硬化する時に反応して、それによって硬化時に形成されるポリマーマトリックスの一部となることができる。このような反応性成分は、典型的には、(メタ)アクリロイル、アリル、ビニル、マレイル、プロペニル、又は他のこのような基によって提供されるもののような、1分子当たり1つ以上のエチレン性不飽和部位を含有するものである。しかし、種々の実施形態において、このようなさらなる反応性成分の総量は、エチレン性不飽和カルボン酸塩、多官能性(メタ)アクリレートオリゴマー及び高Tg(メタ)アクリレートエステルの総重量の20重量%以下、15重量%以下、10重量%以下、又は5重量%以下である。
【0077】
適切なさらなる反応性成分の例としては、ホモポリマーとして重合したときに、50℃未満のガラス転移温度を有するモノ(メタ)アクリレートエステル、並びにジ-、トリ-及びより高い官能性(メタ)アクリレートモノマーが挙げられる。
【0078】
有利には、硬化性組成物は、溶媒を含まない、すなわち、任意の非反応性揮発性物質を含まないように配合され得る。
【0079】
しかし、本発明の他のある実施形態において、硬化性組成物は、1つ以上の溶媒、特に非反応性有機溶媒であり得る1つ以上の有機溶媒を含み得る。様々な実施形態において、溶媒(複数可)は、比較的揮発性であり得、例えば、大気圧で150℃以下の沸点を有する溶媒であり得る。他の実施形態において、溶媒(複数可)は、大気圧で少なくとも40℃の沸点を有し得る。
【0080】
溶媒(複数可)は、硬化性組成物の1つ以上の成分を可溶化することができるか、及び/又は硬化性組成物の粘度又は他のレオロジー特性を調節することができるように選択することができる。
【0081】
しかし、あるいは、本発明の硬化性組成物は、硬化性組成物の総重量を基準として、非反応性溶媒をほとんど又は全く含まないように、例えば、10%未満又は5%未満、又はさらに0%である非反応性溶媒を含むように配合することもできる。このような無溶媒又は低溶媒組成物は、例えば、低粘度の反応性希釈剤及び/又は水をはじめとする種々の成分を用いて配合することができ、これらの成分は、硬化性組成物を、たとえ溶媒が存在しなくても、粘度が十分に低くなるように選択され、その結果、硬化性組成物は、比較的薄い均一な層を形成するように、適切な塗布温度で基材表面に容易に塗布することができる。
【0082】
適切な溶媒としては、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、イソブチルエチルケトン及びシクロペンタノンのようなケトン(脂肪族ケトン及び環状ケトンの両方);酢酸エチル、酢酸ブチル、エチレングリコールメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート及びプロピレングリコールメチルエーテルアセテートのようなエステル;炭酸ジメチル、炭酸プロピレングリコール及び炭酸エチルグリコールのような炭酸塩;エトキシエタノール、メトキシエタノール、1-メトキシ-2-プロパノール、メチルアルコール、エチルアルコール、n-プロピルアルコール、ブチルアルコール、イソプロピルアルコール及びジアセトンアルコールのようなアルコール;キシレン、ベンゼン、トルエン及びエチルベンゼンのような芳香族溶媒;ヘキサン及びヘプタンのようなアルカン;エチレングリコールモノブチルエーテル(ブチルセロソルブ)、エチレングリコールモノメチルエーテル(2-メトキシエタノール)、エチレングリコールモノエチルエーテル(2-エトキシエタノール)、エチレングリコールモノプロピルエーテル(2-プロポキシエタノール)、エチレングリコールモノイソプロピルエーテル(2-イソプロポキシエタノール)、エチレングリコールモノフェニルエーテル(2-フェノキシエタノール)、エチレングリコールモノベンジルエーテル(2-ベンジルオキシエタノール)、ジエチレングリコールモノメチルエーテル(メチルカルビトール)、ジエチレングリコールモノエチルエーテル(カルビトールセロソルブ)、ジエチレングリコールモノ-n-ブチルエーテル(2-(2-ブトキシエトキシ)エタノール)、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル及びエチレングリコールジブチルエーテルのようなグリコールエーテル;テルヒドロフラン、ジメチルエーテル、ジエチルエーテルのようなエーテル;及びNMP及びDMFのようなアミド;並びにそれらの組合せを挙げることができる。
【0083】
様々な実施形態において、硬化性組成物は、ケトン、エステル、炭酸塩、アルコール、アルカン、芳香族、エーテル、アミド及びグリコールエーテル並びにそれらの組合せからなる群より選択される少なくとも1つの溶媒から構成される。本発明のある態様によれば、少なくとも1つの溶媒は、本明細書に記載される硬化性組成物を、基材への塗布のために十分に流動性にするのに十分な量で含まれる。
【0084】
本発明の種々の実施形態において、本明細書に記載された硬化性組成物は、27スピンドル(粘度に依存して、スピンドル速度が典型的には20~200rpmで変化する)を用いて、ブルックフィールド粘度計モデルDV-IIを用いて25℃で測定して、5000cPs未満又は4000cPs未満又は3000cPs未満又は2500cPs未満の粘度を有する。
【0085】
特定の実施形態において、少なくとも1つの溶媒は、エネルギー源(放射線、加熱)への曝露による硬化が開始される前に、本明細書に記載された硬化性組成物から除去される。例えば、溶媒は、エネルギー誘起硬化の前に蒸発によって除去することができる。所望であれば、その表面に塗布された硬化性組成物の1つ以上の層を有する基材は、溶媒の蒸発を促進するために、加熱されるか、及び/又はガス流に曝されるか、及び/又は真空下に置くことができる。
【0086】
本発明のある実施形態において、硬化性組成物は、非反応性溶媒ではなく水を含有するように配合される。このような組成物は、硬化性組成物の成分の1つ以上又は全てが水中の分散物として存在する水性系と称することができる。硬化性組成物成分の安定な水性分散体を生成し、維持するために、乳化剤及び/又は分散剤を使用することができる。硬化性組成物の成分の1つ以上は、ある実施形態において、自己分散性であってもよい。そのような水系組成物は、硬化性組成物の粘度を低下させる働きをする水と共に、基材の表面に塗布することができる。次いで、硬化性組成物の塗布層を処理して水を除去し(例えば、蒸発により)、その後、コーティングを硬化させる(例えば、加熱及び/又は放射エネルギーへの暴露による)。硬化性組成物の重合性成分の硬化(例えば、適切なエネルギー源によるコーティングの照射による)は、水の蒸発後に行うことができる。
【0087】
本発明のある実施形態において、本明細書に記載された硬化性組成物は、少なくとも1つの光開始剤を含み、放射エネルギーで硬化可能である。例えば、光開始剤(複数可)は、α-ヒドロキシケトン、フェニルグリオキシレート、ベンジルジメチルケタール、α-アミノケトン、モノ-アシルホスフィン、ビス-アシルホスフィン、ホスフィンオキシド及びそれらの組合せからなる群から選択され得る。特定の実施形態において、少なくとも1つの光開始剤は、1-ヒドロキシ-シクロヘキシル-フェニル-ケトン及び/又は2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニル-1-プロパノンであり得る。他の実施形態において、少なくとも1つの光開始剤は、ホスフィンオキシド、特にビス(2,4-6-トリメチルベンゾイル)フェニルホスフィンオキシドであるか、又はそれを含む。
【0088】
適当な光開始剤としては、2-メチルアントラキノン、2-エチルアントラキノン、2-クロロアントラキノン、2-ベンジル(benzy)アントラキノン、2-t-ブチルアントラキノン、1,2-ベンゾ-9,10-アントラキノン、ベンジル、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、アルファ-メチルベンゾイン、アルファ-フェニルベンゾイン、ミヒラーズケトン、ベンゾフェノン、4,4’-ビス(ジエチルアミノン)ベンゾフェノン、アセトフェノン、2,2-ジエチルオキシアセトフェノン、ジエチルオキシアセトフェノン、2-イソプロピルチオキサントン、チオキサントン、ジエチルチオキサントン、1,5-アセトナフチレン、エチル-p-ジメチルアミノベンゾエート、ベンジルケトン、α-ヒドロキシケト、2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシド、ベンジルジメチルケタール、ベンジルケタール(2,2-ジメトキシ-1,2-ジフェニルエタノン)、1-ヒドロキシルシクロヘキシルフェニルケトン、2-メチル-1-[4-(メチルチオ)フェニル]-2-モルホリノプロパノン-1,2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニルプロパノン、オリゴマーα-ヒドロキシケトン、フェニルビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)ホスフィンオキシド、エチル-4-ジメチルアミノベンゾエート、エチル(2,4,6-トリメチルベンゾイル)フェニルホスフィネート、アニソイン、アントラキノン、アントラキノン-2-スルホン酸、ナトリウム塩一水和物、(ベンゼン)トリカルボニルクロム、ベンジル、ベンゾインイソブチルエーテル、ベンゾフェノン/1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、50/50ブレンド、3,3’,4,4’-ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、4-ベンゾイルビフェニル、2-ベンジル-2-(ジメチルアミノ)-4’-モルホリノブチロフェノン、4,4’-ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン、4,4’-ビス(ジメチルアミノ)ベンゾフェノン、カンファーキノン、2-クロロチオキサンテン-9-オン、ジベンゾスベレノン、4,4'-ジヒドロキシベンゾフェノン、2,2-ジメトキシ-2-フェニルアセトフェノン、4-(ジメチルアミノ)ベンゾフェノン、4,4’-ジメチルベンジル、2,5-ジメチルベンゾフェノン、3,4-ジメチルベンゾフェノン、ジフェニル(2,4,6-トリメチルベンゾイル)ホスフィンオキシド/2-ヒドロキシ-2-メチルプロピオフェノン、50/50ブレンド、4’-エトキシアセトフェノン、2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシド、フェニルビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)ホスフィンオキシド、フェロセン、3’-ヒドロキシアセトフェノン、4’-ヒドロキシベンゾフェノン、3-ヒドロキシベンゾフェノン、4-ヒドロキシベンゾフェノン、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2-ヒドロキシ-2-メチルプロピオフェノン、2-メチルベンゾフェノン、3-メチルベンゾフェノン、メチルベンゾイルホルメート、2-メチル-4’-(メチルチオ)-2-モルホリノプロピオフェノン、フェナントレンキノン、4’-フェノキシアセトフェノン、(クメン)シクロペンタジエニル鉄(ii)ヘキサフルオロホスフェート、9,10-ジエトキシ及び9,10-ジブトキシアントラセン、2-エチル-9,10-ジメトキシアントラセン、チオキサンテン-9-オン、並びにそれらの組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。
【0089】
光開始剤の量は重要であるとは考えられないが、他の要因の中でも特に、選択された光開始剤(複数可)、硬化性組成物中に存在するエチレン性不飽和化合物の量及びタイプ、使用された放射線源及び放射条件に応じて適宜変化させることができる。しかし、典型的には、光開始剤の量は、硬化性組成物の総重量(存在し得る水又は非反応性溶媒を含まない)を基準として、0.05重量%~5重量%であることができる。
【0090】
本発明のある実施形態において、本明細書に記載される硬化性組成物は、開始剤を全く含まず、電子ビームエネルギーで硬化可能である。他の実施形態において、本明細書に記載される硬化性組成物は、加熱されたとき、又は促進剤の存在下で分解する少なくとも1つのフリーラジカル開始剤を含み、化学的に(すなわち、硬化性組成物を放射線に曝露する必要なく)硬化可能である。加熱されたとき、又は促進剤の存在下で分解する少なくとも1つのフリーラジカル開始剤は、例えば、過酸化物又はアゾ化合物を含み得る。この目的に適した過酸化物は、例えば、ジアルキル過酸化物、ジアリール過酸化物及びアリール/アルキル過酸化物、ヒドロペルオキシド、過炭酸塩、ペルエステル、過酸、アシルペルオキシド等のような、少なくとも1つのペルオキシ(-O-O-)部分を含有する任意の化合物、特に任意の有機化合物を含むことができる。少なくとも1つの促進剤は、例えば、少なくとも1つの第三級アミン及び/又はM含有塩(例えば、鉄、コバルト、マンガン、バナジウム等の遷移M含有のカルボン酸塩、及びそれらの組合せ等)をベースとする1つ以上の他の還元剤を含むことができる。硬化性組成物の硬化が、硬化性組成物を加熱又は焼成する必要なしに達成されるように、促進剤(複数可)は、活性フリーラジカル種を生成するために、室温又は周囲温度でのフリーラジカル開始剤の分解を促進するように選択され得る。他の実施形態において、促進剤は存在せず、硬化性組成物は、フリーラジカル開始剤の分解を引き起こし、硬化性組成物中に存在する重合性化合物(複数可)の硬化を開始するフリーラジカル種を生成するのに有効な温度まで加熱される。
【0091】
したがって、本発明の種々の実施形態において、本明細書に記載される硬化性組成物は、放射線硬化(UV放射線又は電子ビーム硬化)、電子ビーム硬化、化学硬化(加熱されたときに又は促進剤の存在下で分解するフリーラジカル開始剤を用いる、例えば、過酸化物硬化)、熱硬化、又はそれらの組合せからなる群より選択される技術により硬化可能である。
【0092】
本発明の硬化性組成物は、上記成分の代わりに、又はそれに加えて、1つ以上の添加剤を任意に含んでもよい。このような添加剤としては、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、発泡防止剤、流動剤又はレベリング剤、着色剤、顔料、分散剤(湿潤剤)、スリップ添加剤、充填剤、チキソトロピー剤、つや消し剤、フリーラジカル重合性官能基を含まないアクリル樹脂等の熱可塑性樹脂、ワックス、又はコーティング、シーラント、接着剤、成形、又はインク技術分野で従来使用されている添加剤のいずれかをはじめとする、他の様々な添加剤が挙げられるが、これらに限定されない。
【0093】
<本発明の硬化性組成物の使用>
本明細書中に記載された本発明の硬化性組成物は、フリーラジカル重合又は他のタイプの重合(例えば、カチオン重合)によって硬化されるべき組成物であることができる。本発明の組成物の最終使用用途としては、インク、コーティング、接着剤、3D印刷樹脂、成形樹脂、シーラント、複合材料等が挙げられるが、これらに限定されない。
【0094】
本明細書に記載されたような硬化性組成物から調製される硬化組成物は、例えば、三次元物品(三次元物品は、硬化組成物から本質的になるか、又はそれからなる)、被覆物品(基材は、硬化組成物の1つ以上の層でコーティングされる)、積層又は接着物品(物品の第1の部品は、硬化組成物によって第2の部品に積層又は接着される)、複合物品又は印刷物品(図形等が、硬化組成物を使用して、紙、プラスチック又はM含有基材等の基材上に刷り込まれる)において使用され得る。
【0095】
本発明に従う組成物の硬化は、フリーラジカル重合及び/又はカチオン重合のような任意の適切な方法によって行うことができる。フリーラジカル開始剤(例えば、光開始剤、過酸化物開始剤)のような1つ以上の開始剤が、硬化性組成物中に存在し得る。硬化の前に、硬化性組成物は、例えば、スプレー、ナイフコーティング、ローラーコーティング、流延、ドラムコーティング、浸漬等及びそれらの組み合わせによる、任意の既知の従来の方式で基材表面に塗布され得る。転写法を用いる間接塗布も使用できる。基材は、高表面エネルギー基材又は低表面エネルギー基材、例えば、それぞれ金属基材又はプラスチック基材のような任意の商業的に関連する基材であり得る。基材は、金属、紙、ボール紙、ガラス、ポリオレフィン、ポリカーボネート、アクリロニトリルブタジエンスチレン(ABS)及びそれらのブレンドのような熱可塑性物質、複合材料、木材、皮革並びにそれらの組合せを含むことができる。接着剤として使用される場合、硬化性組成物は、2つの基材の間に配置され、次いで硬化され得、それによって硬化組成物は、基材を互いに接着し、接着物品を提供する。
【0096】
硬化は、硬化性組成物にエネルギーを供給することによって、例えば、硬化性組成物を加熱することによって、及び/又は硬化性組成物を放射線源、例えば、可視光又はUV光、赤外線及び/又は電子ビーム放射線に曝露することによって、加速又は促進され得る。したがって、硬化組成物は、硬化によって形成された硬化性組成物の反応生成物とみなすことができる。
【0097】
本発明に従う硬化性組成物の複数の層を基材表面に適用してもよく、複数の層を同時に(例えば、単一線量の放射線に曝露することによって)硬化してもよく、又は硬化性組成物のさらなる層を塗布する前に各層を連続的に硬化してもよい。
【0098】
本明細書に記載された本発明の組成物は、3D印刷樹脂配合物、すなわち、3D印刷技術を用いて三次元物品を製造する際に使用することを意図した組成物として特に有用である。このような三次元物品は、自立型(free-standing)/自立型(self-supporting)であってもよく、硬化された本発明に従った組成物から本質的になるか、又はそれからなってもよい。また、三次元物品は、前記したような硬化組成物から本質的になるか、又はそれからなる少なくとも1つの部品、並びにこのような硬化組成物以外の1つ以上の材料から構成される少なくとも1つのさらなる部品(例えば、金属部品又は熱可塑性部品)を含む複合材料であってもよい。
【0099】
本発明に従う硬化性組成物を使用して三次元物品を製造する方法は、以下の工程、すなわち、
a)本発明に従った組成物の第1の層を表面上にコーティングする工程;
b)第1の層を少なくとも部分的に硬化して、硬化した第1の層を提供する工程;
c)前記硬化性組成物の第2の層を硬化した第1の層の上にコーティングする工程;
d)第2の層を少なくとも部分的に硬化して、硬化した第1の層に付着した硬化した第2の層を提供する工程;及び
e)工程c)及びd)を所望の回数繰り返して、三次元物品を構築する工程
を含むことができる。
【0100】
硬化工程は、場合によっては硬化性組成物中に存在する成分に依存する任意の適切な手段によって行うことができるが、本発明のある実施形態において、硬化は、硬化される層を有効量の放射線(例えば、電子ビーム放射線、UV放射線、可視光等)に曝露することによって達成される。
【0101】
従って、種々の実施形態において、本発明は、以下の工程、すなわち
a)本発明の組成物の第1の層を液状で表面にコーティングする工程;
b)第1の層を化学線に像様に露光して第1の露光され、画像化された断面を形成し、ここで放射線は、露光領域におけるさらなる層の少なくとも部分的な硬化(例えば、組成物中に最初に存在する(メタ)アクリレート二重結合の%変換によって測定される、少なくとも50%の硬化)を引き起こすのに十分な強度及び持続時間を有する工程;
c)先に露光され、画像化された断面上に硬化性組成物のさらなる層をコーティングする工程;
d)該さらなる層を化学線に像様に露光してさらなる画像化された断面を形成し、ここで放射線は、曝露領域におけるさらなる層の少なくとも部分的な硬化(例えば、組成物中に最初に存在する(メタ)アクリレート二重結合の%変換によって測定される、少なくとも50%の硬化)を引き起こし、以前に露光され、画像化された断面に対する該さらなる層の接着を引き起こすのに十分な強度及び持続時間を有する工程;
e)工程c)及びd)を所望の回数繰り返して、三次元物品を構築する工程
を含む方法を提供する。
【0102】
本明細書内では、明瞭かつ簡潔な明細書を書くことを可能にする方法で実施形態を説明してきたが、実施形態は、本発明から逸脱することなく、様々に組み合わせたり、分離したりすることができることが意図され、理解されるであろう。例えば、本明細書に記載された全ての好ましい特徴は、本明細書に記載された本発明の全ての態様に適用可能であることが理解されるであろう。
【0103】
いくつかの実施形態において、本発明は、硬化性組成物又は方法の基本的かつ新規の特徴に実質的に影響を与えない任意の要素又は方法の工程を除外するものとして解釈することができる。さらに、いくつかの実施形態において、本発明は、本明細書に明記されていない任意の要素又は方法の工程を除外するものとして解釈することができる。
【0104】
本発明は、特定の実施形態を参照して本明細書に例示及び記載されているが、本発明は、示された詳細に限定されることを意図しない。むしろ、本発明から逸脱することなく、特許請求の範囲内及び均等物の範囲内で詳細に様々な修正を行うことができる。
【実施例】
【0105】
[実施例1]
この実施例において、異なる量の油溶性ジアクリル酸亜鉛を本発明に従った硬化性組成物に導入する効果を評価した。
【0106】
基本の(比較)硬化性組成物(1-A)は、45重量%のCN966、55重量%のSR506、及び1%の添加されたIrgacure(R) 819光開始剤を含有していた。CN966及びSR506は、以下の組成を有するSartomerによって販売されている市販生成物である。
CN966:約3000ダルトンの分子量を有する二官能性ウレタンアクリレートオリゴマー。
SR506:アクリル酸イソボルニル(単独重合形態において、動的機械的分析により測定されたTgが約94℃である高Tg(メタ)アクリレート)。
【0107】
表1に示すように、本発明に従う硬化性組成物1-B、1-C及び1-Dを調製した。これらの組成物に使用される「ジアクリル酸亜鉛」は、酸化亜鉛を、アクリル酸と、ヒドロキシエチルアクリレートをヘキサヒドロ-4-メチルフタル酸無水物と反応させることによって形成される半エステルとの1:1混合物と反応させることによって得られた。ジアクリル酸亜鉛の構造は次式で表される。
Zn(OC(=O)CH=CH2)(O-C(=O)-R2-C(=O)-O-CH2CH2-O-C(=O)CH=CH2)
ここで、R2は、4位においてメチル基で置換された1,4-シクロヘキシル部分である。
【0108】
【0109】
配合物は、酸素阻害を防ぐために2片のガラス間で硬化した。サンプルを、コンベヤーベルト上で、各側に1つずつ、600WのVランプ下で、50フィート/分で2回通過させて硬化させた。
【0110】
硬化性組成物中のジアクリル酸亜鉛の量を増加させることを含む効果を表2に示す。
【0111】
【0112】
硬化性組成物1-Bにジアクリル酸亜鉛を10重量%含有させると、硬化性組成物の硬化時の引張係数及び強度が有意に増加し、その代わりに伸びがわずかに減少した。したがって、破断点エネルギーはジアクリル酸亜鉛の存在により増加した。耐衝撃性は靭性の尺度であり、破断点エネルギーと直接相関するので、この特性の増加が期待される。しかし、さらに、10%のジアクリル酸亜鉛の含有は、モノマー及びオリゴマー1モル当たりに存在するエチレン性不飽和部位の数を増加させることによって、配合物の反応性を増加させた。この反応性の増加は、単官能性モノマーをベースとする配合物の加工を助ける。