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特許7508231感光性着色樹脂組成物、硬化物、カラーフィルタ、表示装置
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  • 特許-感光性着色樹脂組成物、硬化物、カラーフィルタ、表示装置 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-21
(45)【発行日】2024-07-01
(54)【発明の名称】感光性着色樹脂組成物、硬化物、カラーフィルタ、表示装置
(51)【国際特許分類】
   G02B 5/20 20060101AFI20240624BHJP
   C08F 290/06 20060101ALI20240624BHJP
   G02F 1/1335 20060101ALI20240624BHJP
   G03F 7/004 20060101ALI20240624BHJP
   G03F 7/029 20060101ALI20240624BHJP
   G03F 7/031 20060101ALI20240624BHJP
   G03F 7/033 20060101ALI20240624BHJP
   G03F 7/038 20060101ALI20240624BHJP
   G09F 9/30 20060101ALI20240624BHJP
   H05B 33/12 20060101ALI20240624BHJP
   H10K 50/10 20230101ALI20240624BHJP
【FI】
G02B5/20 101
C08F290/06
G02F1/1335 505
G03F7/004 504
G03F7/004 505
G03F7/029
G03F7/031
G03F7/033
G03F7/038 501
G09F9/30 349B
H05B33/12 E
H05B33/14 A
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2020013260
(22)【出願日】2020-01-30
(65)【公開番号】P2021119368
(43)【公開日】2021-08-12
【審査請求日】2023-01-13
(73)【特許権者】
【識別番号】000183923
【氏名又は名称】株式会社DNPファインケミカル
(74)【代理人】
【識別番号】100104499
【弁理士】
【氏名又は名称】岸本 達人
(74)【代理人】
【識別番号】100101203
【弁理士】
【氏名又は名称】山下 昭彦
(72)【発明者】
【氏名】長井 健朗
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 琢実
(72)【発明者】
【氏名】山縣 秀明
【審査官】藤原 研司
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-085756(JP,A)
【文献】特開平10-087768(JP,A)
【文献】特開2001-031885(JP,A)
【文献】特開2014-071440(JP,A)
【文献】特開2016-224447(JP,A)
【文献】特開2011-158687(JP,A)
【文献】特開2010-077203(JP,A)
【文献】特開2018-030051(JP,A)
【文献】特開平10-060360(JP,A)
【文献】国際公開第2014/061556(WO,A1)
【文献】国際公開第2014/091923(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08F
G02B
G02F
G03F
G09F
H05B
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
色材と、分散剤と、アルカリ可溶性樹脂と、光重合性化合物と、光開始剤と、溶剤とを含有し、
前記光開始剤が、ジフェニルスルフィド骨格を有するオキシムエステル系光開始剤を含有し、
前記分散剤が、下記一般式(I)で表される構成単位と下記一般式(II)で表される構成単位とを有し、前記一般式(I)で表される構成単位は全構成単位中3~60質量%の割合で含まれ、前記一般式(II)で表される構成単位は全構成単位中40~97質量%の割合で含まれているグラフト共重合体、並びに、当該グラフト共重合体の当該一般式(I)で表される構成単位が有する窒素部位の少なくとも一部と有機酸化合物及びハロゲン化炭化水素からなる群から選ばれる少なくとも1種とが塩を形成した塩型グラフト共重合体の少なくとも1種を含有する、感光性着色樹脂組成物。
【化1】
(一般式(I)中、Rは水素原子又はメチル基、A-CONH-基又は-COO-基と、炭素原子数1~10のアルキレン基とを含む2価の連結基、R及びRは、それぞれ独立して、RとRが各々独立に、炭素原子数1~5のアルキル基、フェニル基であるか、或いは、とRが互いに結合してピロリジン環、ピペリジン環、又はモルフォリン環を形成してい
一般式(II)中、R1’は水素原子又はメチル基、Aは直接結合又は2価の連結基、Polymerはポリマー鎖を表し、当該ポリマー鎖の構成単位には、下記一般式(III)で表される構成単位及び下記一般式(III’)で表される構成単位からなる群から選択される少なくとも1種の構成単位が含まれる。)
【化2】
(一般式(III)中、Rは水素原子又はメチル基、A-CONH-基又は-COO-基、Rはエチレン基又はプロピレン基、Rは、水素原子、或いは、炭素数1~18のアルキル基、炭素数2~18のアルケニル基、炭素数6~12のアリール基、又はこれらの組み合わせであり、mは3以上80以下の数を表す。
一般式(III’)中、R4’は水素原子又はメチル基、A3’-CONH-基又は-COO-基、Rは炭素数が1~10のアルキレン基、Rは炭素数が3~7のアルキレン基、Rは、水素原子、或いは、炭素数1~18のアルキル基、炭素数2~18のアルケニル基、炭素数6~12のアリール基、又はこれらの組み合わせであり、nは1以上40以下の数を表す。)
【請求項2】
前記ジフェニルスルフィド骨格を有するオキシムエステル系光開始剤が、下記一般式(A)で表されるオキシムエステル化合物である、請求項1に記載の感光性着色樹脂組成物。
【化3】
(一般式(A)において、Z、Z、Z及びZは、それぞれ独立して、水素原子、炭素数1~12の直鎖状もしくは分岐状のアルキル基、炭素数3~20のシクロアルキル基、またはフェニル基を表し、前記アルキル基、シクロアルキル基、およびフェニル基はそれぞれ、ハロゲン原子、炭素数1~6のアルコキシ基、およびフェニル基からなる群から選ばれる置換基で置換されていてもよい。Zはシクロアルキル基で置換された炭素数1~20のアルキル基を表す。)
【請求項3】
前記ジフェニルスルフィド骨格を有するオキシムエステル系光開始剤が、下記化学式(A-1)で表されるオキシムエステル化合物である、請求項1又は2に記載の感光性着色樹脂組成物。
【化4】
【請求項4】
前記分散剤において、前記グラフト共重合体の前記一般式(II)で表される構成単位中のポリマー鎖の構成単位に、前記一般式(III)で表される構成単位が含まれる、請求項1~3のいずれか1項に記載の感光性着色樹脂組成物。
【請求項5】
前記分散剤において、前記グラフト共重合体の前記一般式(II)で表される構成単位中のポリマー鎖の構成単位に、前記一般式(III)で表される構成単位(但し、mは19以上80以下の数を表す)が含まれる、請求項1~4のいずれか1項に記載の感光性着色樹脂組成物。
【請求項6】
前記光開始剤が、更に、α-アミノケトン系光開始剤、カルバゾール骨格を有するオキシムエステル系光開始剤、ビイミダゾール系光開始剤、チオキサントン系光開始剤、及びベンゾフェノン系光開始剤からなる群から選択される少なくとも1種を含有する、請求項1~5のいずれか1項に記載の感光性着色樹脂組成物。
【請求項7】
請求項1~6のいずれか1項に記載の感光性着色樹脂組成物の硬化物。
【請求項8】
基板と、当該基板上に設けられた着色層とを少なくとも備えるカラーフィルタであって、当該着色層の少なくとも1つが請求項7に記載の感光性着色樹脂組成物の硬化物である、カラーフィルタ。
【請求項9】
前記請求項8に記載のカラーフィルタを有する、表示装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、感光性着色樹脂組成物、硬化物、カラーフィルタ、及び表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、パーソナルコンピューターの発達、特に携帯用パーソナルコンピューターの発達に伴って、液晶ディスプレイの需要が増加している。モバイルディスプレイ(携帯電話、スマートフォン、タブレットPC)の普及率も高まっており、益々液晶ディスプレイの市場は拡大する状況にある。また、最近においては、自発光により視認性が高い有機ELディスプレイのような有機発光表示装置も、次世代画像表示装置として注目されている。これらの画像表示装置の性能においては、コントラストや色再現性の向上といったさらなる高画質化や消費電力の低減が強く望まれている。
【0003】
これらの液晶表示装置や有機発光表示装置には、カラーフィルタが用いられる。例えば液晶表示装置のカラー画像の形成は、カラーフィルタを通過した光がそのままカラーフィルタを構成する各画素の色に着色されて、それらの色の光が合成されてカラー画像を形成する。その際の光源としては、従来の冷陰極管のほか、白色発光の有機発光素子や白色発光の無機発光素子が利用される場合がある。また、有機発光表示装置では、色調整などのためにカラーフィルタを用いる。
このような状況下、カラーフィルタにおいても、高輝度化や高コントラスト化、色再現性の向上といった要望が高まっている。
【0004】
ここで、カラーフィルタは、一般的に、透明基板と、透明基板上に形成され、赤、緑、青の三原色の着色パターンからなる着色層と、各着色パターンを区画するように透明基板上に形成された遮光部とを有している。
【0005】
カラーフィルタにおける画素の形成方法としては、中でも、分光特性、耐久性、パターン形状及び精度等の観点から、平均的に優れた特性を有する顔料分散法が最も広範に採用されている。
顔料分散法を用いて形成された画素を有するカラーフィルタにおいては、高輝度化や高コントラスト化を実現するため、顔料の微細化が検討されている。顔料を微細化することにより、顔料粒子によるカラーフィルタを透過する光の散乱が低減されて、高輝度化や高コントラスト化が達成されるものと考えられている。
しかしながら、微細化された顔料粒子は凝集しやすいため、分散性や分散安定性が低下するという問題があった。
【0006】
微細化された顔料の分散性を向上する手法として、分散剤を用いることが有効であることが知られている。例えば特許文献1には、コントラスト比の高い画素を形成することができ、且つ保存安定性にも優れた着色層形成用感放射線性組成物を提供することを目的として、顔料分散剤として、アンモニウム塩基を有する特定の繰り返し単位、及びアミノ基を有する特定の繰り返し単位とを含むAブロックと、カルボン酸エステルを含む特定の繰り返し単位、及びカルボン酸エステルのアルコール由来部分にエチレンオキシド基又はプロピレンオキシド基を含む特定の繰り返し単位とを含むBブロックとを有するブロック共重合体を用いた、着色層形成用感放射線性組成物が開示されている。
また、特許文献2には、顔料分散性に優れると共に、アルカリ現像性に優れるカラーフィルタ用ネガ型レジスト組成物を提供することを目的として、顔料分散剤として、窒素含有モノマーと、ポリマー鎖及びその末端にエチレン性不飽和二重結合を有する基からなる重合性オリゴマーとを共重合成分として含有するグラフト共重合体であり、さらに前記窒素含有モノマーが有するアミノ基と下記一般式(II)で表される有機リン酸化合物とが塩を形成したグラフト共重合体を用いた、カラーフィルタ用ネガ型レジスト組成物が開示されている。特許文献2は、前記窒素含有モノマーが有するアミノ基と下記一般式(II)で表される有機リン酸化合物とが塩を形成することにより、アルカリ現像性が向上する旨が記載されている。
【0007】
一方、特許文献3には、顔料含有量が高いか又は膜厚が大きい場合であっても、高い現像耐性及び高い解像性を達成可能な感光性着色組成物として、ジフェニルスルフィド骨格を有するオキシムエステル系光開始剤を含有する、感光性着色組成物が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】特許5540599号公報
【文献】特開2009-265649号公報
【文献】特開2012-177826号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
近年のカラーフィルタにおいては、高色域化や薄膜化などの要求によって、感光性樹脂組成物中における色材の高濃度化の要求が高まっている。感光性樹脂組成物中の色材比率が高くなると相対的にバインダー成分が減少する。バインダー成分の内、多官能モノマーや光開始剤など、塗膜の硬化性に関わる成分が少なくなることで硬化不足により塗膜の架橋密度が低下し、塗膜に耐溶剤性の不足が発生する。また、アルカリ可溶性樹脂などの現像性に関わる成分が少なくなることで、現像時間の遅延が発生する。したがって、感光性樹脂組成物中の色材の高濃度化の要求を達成するためには、これらのバインダー成分不足に由来する問題を同時に解決する技術が必要となる。また、色材の高濃度化に伴い、分散安定性及びコントラストの向上も求められている。
特許文献3には、耐溶剤性が良好になる旨も記載されているが、ジフェニルスルフィド骨格を有するオキシムエステル系光開始剤を用いただけでは未だ不十分であり、耐溶剤性の更なる向上が求められている。
本発明は、上記実情に鑑みてなされたものであり、分散安定性、高コントラスト化、現像時間の短縮化、及び優れた耐溶剤性を同時に満たす感光性着色樹脂組成物を提供することを目的とする。また、本発明は、当該感光性着色樹脂組成物を用いて形成されたカラーフィルタ及び表示装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明に係る感光性着色樹脂組成物は、色材と、分散剤と、アルカリ可溶性樹脂と、光重合性化合物と、光開始剤と、溶剤とを含有し、
前記光開始剤が、ジフェニルスルフィド骨格を有するオキシムエステル系光開始剤を含有し、
前記分散剤が、下記一般式(I)で表される構成単位と下記一般式(II)で表される構成単位とを有するグラフト共重合体、並びに、当該グラフト共重合体の当該一般式(I)で表される構成単位が有する窒素部位の少なくとも一部と有機酸化合物及びハロゲン化炭化水素からなる群から選ばれる少なくとも1種とが塩を形成した塩型グラフト共重合体の少なくとも1種を含有する。
【0011】
【化1】
(一般式(I)中、Rは水素原子又はメチル基、Aは2価の連結基、R及びRは、それぞれ独立して、水素原子、又はヘテロ原子を含んでもよい炭化水素基を表し、R及びRが互いに結合して環構造を形成してもよい。
一般式(II)中、R1’は水素原子又はメチル基、Aは直接結合又は2価の連結基、Polymerはポリマー鎖を表し、当該ポリマー鎖の構成単位には、下記一般式(III)で表される構成単位及び下記一般式(III’)で表される構成単位からなる群から選択される少なくとも1種の構成単位が含まれる。)
【0012】
【化2】
(一般式(III)中、Rは水素原子又はメチル基、Aは2価の連結基、Rはエチレン基又はプロピレン基、Rは、水素原子、又は炭化水素基であり、mは3以上80以下の数を表す。
一般式(III’)中、R4’は水素原子又はメチル基、A3’は2価の連結基、Rは炭素数が1~10のアルキレン基、Rは炭素数が3~7のアルキレン基、Rは、水素原子、又は炭化水素基であり、nは1以上40以下の数を表す。)
【0013】
本発明に係るカラーフィルタは、基板と、当該基板上に設けられた着色層とを少なくとも備えるカラーフィルタであって、当該着色層の少なくとも1つが前記本発明に係る感光性着色樹脂組成物の硬化物である。
【0014】
本発明に係る表示装置は、前記本発明に係るカラーフィルタを有する。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、分散安定性、高コントラスト化、現像時間の短縮化、及び優れた耐溶剤性を同時に満たす感光性着色樹脂組成物を提供することができる。また、本発明によれば、当該感光性着色樹脂組成物を用いて形成されたカラーフィルタ及び表示装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1図1は、本発明のカラーフィルタの一例を示す概略図である。
図2図2は、本発明の液晶表示装置の一例を示す概略図である。
図3図3は、本発明の有機発光表示装置の一例を示す概略図である。
図4図4は、本発明に用いられるグラフト共重合体の構造の一例の一部を模式的に表した図である。
図5図5は、着色層中の微小孔の断面形状のテーパー角(θ)を説明する概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明に係る感光性着色樹脂組成物、カラーフィルタ、及び表示装置について、順に詳細に説明する。
なお、本発明において光には、可視及び非可視領域の波長の電磁波、さらには放射線が含まれ、放射線には、例えばマイクロ波、電子線が含まれる。具体的には、波長5μm以下の電磁波、及び電子線のことをいう。
本発明において(メタ)アクリロイルとは、アクリロイル及びメタクリロイルの各々を表し、(メタ)アクリルとは、アクリル及びメタクリルの各々を表し、(メタ)アクリレートとは、アクリレート及びメタクリレートの各々を表す。
本明細書において、特に断りのない限り、色度座標x、yは、C光源を使用して測色したJIS Z8701:1999のXYZ表色系におけるものである。
また、本明細書において数値範囲を示す「~」とは、その前後に記載された数値を下限値及び上限値として含む意味で使用される。
【0018】
I.感光性着色樹脂組成物
本発明に係る感光性着色樹脂組成物は、色材と、分散剤と、アルカリ可溶性樹脂と、光重合性化合物と、光開始剤と、溶剤とを含有し、
前記光開始剤が、ジフェニルスルフィド骨格を有するオキシムエステル系光開始剤を含有し、
前記分散剤が、下記一般式(I)で表される構成単位と下記一般式(II)で表される構成単位とを有するグラフト共重合体、並びに、当該グラフト共重合体の当該一般式(I)で表される構成単位が有する窒素部位の少なくとも一部と有機酸化合物及びハロゲン化炭化水素からなる群から選ばれる少なくとも1種とが塩を形成した塩型グラフト共重合体の少なくとも1種を含有する。
【0019】
【化3】
(一般式(I)中、Rは水素原子又はメチル基、Aは2価の連結基、R及びRは、それぞれ独立して、水素原子、又はヘテロ原子を含んでもよい炭化水素基を表し、R及びRが互いに結合して環構造を形成してもよい。
一般式(II)中、R1’は水素原子又はメチル基、Aは直接結合又は2価の連結基、Polymerはポリマー鎖を表し、当該ポリマー鎖の構成単位には、下記一般式(III)で表される構成単位及び下記一般式(III’)で表される構成単位からなる群から選択される少なくとも1種の構成単位が含まれる。)
【0020】
【化4】
(一般式(III)中、Rは水素原子又はメチル基、Aは2価の連結基、Rはエチレン基又はプロピレン基、Rは、水素原子、又は炭化水素基であり、mは3以上80以下の数を表す。
一般式(III’)中、R4’は水素原子又はメチル基、A3’は2価の連結基、Rは炭素数が1~10のアルキレン基、Rは炭素数が3~7のアルキレン基、Rは、水素原子、又は炭化水素基であり、nは1以上40以下の数を表す。)
【0021】
本発明に係る感光性着色樹脂組成物は、分散剤として、前記特定のグラフト共重合体又は塩型グラフト共重合体を用い、且つ、前記光開始剤としてジフェニルスルフィド骨格を有するオキシムエステル系光開始剤を含有するため、分散安定性、高コントラスト化、現像時間の短縮化、及び優れた耐溶剤性を同時に満たすことができる。このような効果を発揮する作用としては、未解明であるが以下のように推定される。
【0022】
前記特定のグラフト共重合体は、グラフトしているポリマー鎖の構成単位に、ポリエチレンオキシド鎖、ポリプロピレンオキシド鎖又はエステル鎖を有する構成単位が含まれる。ポリエチレンオキシド鎖、ポリプロピレンオキシド鎖又はエステル鎖に含まれる酸素原子は、アルカリ現像液と水素結合することによって、現像時にアルカリ現像液に溶解し易くなると考えられる。
また、グラフト共重合体は、グラフトしている複数のポリマー鎖が分散剤の溶剤親和性部となるため、分散剤の溶剤親和性部の比表面積が大きくなることから、溶剤の塗膜への侵入や色材への到達を抑制することができると推定される。前記特定のグラフト共重合体は、グラフトしているポリマー鎖の構成単位に、ポリエチレンオキシド鎖、ポリプロピレンオキシド鎖又はエステル鎖を有する構成単位が含まれることにより、これらの構成単位に含まれる酸素原子が感光性着色樹脂組成物中に含まれるアルカリ可溶性樹脂のカルボキシル基等の酸性基と、水素結合によって相互作用することによって、溶剤の硬化塗膜内への侵入を、より抑制することができると推定される。更に、光開始剤としてジフェニルスルフィド骨格を有するオキシムエステル系光開始剤を含有することにより、塗膜の硬化性が上がる。これらの相乗効果により、前記特定のグラフト共重合体と光開始剤としてジフェニルスルフィド骨格を有するオキシムエステル系光開始剤を組み合わせて用いると、当該感光性着色樹脂組成物の硬化物は、耐溶剤性、カラーフィルタの配向膜作製に溶剤として用いられるN-メチルピロリドン(NMP)に対する耐性(耐NMP性)を向上することができると推定される。
更に、前記特定のグラフト共重合体は、グラフトしているポリマー鎖の構成単位に、適切な長さのポリエチレンオキシド鎖、ポリプロピレンオキシド鎖又はエステル鎖を有する構成単位が含まれることにより、溶剤親和性部の作用が良好となって、色材の分散安定性、及び、コントラストが向上すると推定される。
【0023】
また、本発明の感光性着色樹脂組成物は、後述する実施例に示されるように、現像残渣の発生が抑制される傾向が見られた。前記特定のグラフト共重合体は、ポリエチレンオキシド鎖、ポリプロピレンオキシド鎖又はエステル鎖に含まれる酸素原子が、感光性樹脂組成物中に含まれるアルカリ可溶性樹脂のカルボキシ基等のOHやCHと、水素結合によって相互作用することによって、現像時にアルカリ可溶性樹脂のみが溶解し、色材と分散剤が残渣として残されることを抑制することができると考えられる。一方で、ポリエチレンオキシド鎖、ポリプロピレンオキシド鎖又はエステル鎖の繰り返し単位数が大きくなりすぎると、却って、現像残渣の発生抑制効果が向上しないことが見出された。これは、ポリエチレンオキシド鎖、ポリプロピレンオキシド鎖又はエステル鎖の繰り返し単位数が大きくなりすぎると、アルカリ現像液との親和力が、顔料吸着力より過剰に大きくなり、グラフト共重合体のみがアルカリ現像液に溶解し、顔料が基板上に取り残されるためではないかと推定される。
【0024】
本発明に係る感光性着色樹脂組成物は、少なくとも色材と、分散剤と、アルカリ可溶性樹脂と、光重合性化合物と、光開始剤と、溶剤とを含有するものであり、本発明の効果を損なわない範囲で、更に他の成分を含有してもよいものである。
以下、このような本発明に係る感光性着色樹脂組成物の各成分について、本発明の特徴的な組み合わせである分散剤と光開始剤から順に詳細に説明する。
【0025】
<分散剤>
本発明においては、分散剤として、前記一般式(I)で表される構成単位と前記一般式(II)で表される構成単位とを有するグラフト共重合体、並びに、当該グラフト共重合体の当該一般式(I)で表される構成単位が有する窒素部位の少なくとも一部と有機酸化合物及びハロゲン化炭化水素からなる群から選ばれる少なくとも1種とが塩を形成した塩型グラフト共重合体の少なくとも1種が用いられる。
まず、グラフト共重合体から説明する。
【0026】
(一般式(I)で表される構成単位)
グラフト共重合体の主鎖を構成する前記一般式(I)で表される構成単位は、塩基性を有し、色材に対する吸着部位として機能する。
一般式(I)において、Aは、2価の連結基である。2価の連結基としては、例えば、直鎖、分岐又は環状のアルキレン基、水酸基を有する、直鎖、分岐又は環状のアルキレン基、アリーレン基、-CONH-基、-COO-基、-NHCOO-基、エーテル基(-O-基)、チオエーテル基(-S-基)、及びこれらの組み合わせ等が挙げられる。なお、本発明において、2価の連結基の結合の向きは任意である。すなわち、2価の連結基に-CONH-が含まれる場合、-COが主鎖の炭素原子側で-NHが側鎖の窒素原子側であっても良いし、反対に、-NHが主鎖の炭素原子側で-COが側鎖の窒素原子側であっても良い。
中でも、分散性の点から、一般式(I)におけるAは、-CONH-基又は-COO-基を含む2価の連結基であることが好ましく、-CONH-基又は-COO-基と、炭素原子数1~10のアルキレン基とを含む2価の連結基であることがより好ましい。
【0027】
及びRにおける、ヘテロ原子を含んでもよい炭化水素基における炭化水素基は、例えば、アルキル基、アラルキル基、アリール基などが挙げられる。
アルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、イソプロピル基、tert-ブチル基、2-エチルヘキシル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基等が挙げられ、アルキル基の炭素原子数は、1~18が好ましく、中でも、メチル基又はエチル基であることがより好ましい。
アラルキル基としては、例えば、ベンジル基、フェネチル基、ナフチルメチル基、ビフェニルメチル基等が挙げられる。アラルキル基の炭素原子数は、7~20が好ましく、更に7~14が好ましい。
また、アリール基としては、フェニル基、ビフェニル基、ナフチル基、トリル基、キシリル基等が挙げられる。アリール基の炭素原子数は、6~24が好ましく、更に6~12が好ましい。なお、上記好ましい炭素原子数には、置換基の炭素原子数は含まれない。
ヘテロ原子を含む炭化水素基とは、上記炭化水素基中の炭素原子がヘテロ原子で置き換えられた構造を有するか、上記炭化水素基中の水素原子がヘテロ原子を含む置換基で置き換えられた構造を有する。炭化水素基が含んでいてもよいヘテロ原子としては、例えば、酸素原子、窒素原子、硫黄原子、ケイ素原子等が挙げられる。
また、炭化水素基中の水素原子は、フッ素原子、塩素原子、臭素原子等のハロゲン原子により置換されていてもよい。
【0028】
とRが互いに結合して環構造を形成しているとは、RとRが窒素原子を介して環構造を形成していることをいう。R及びRが形成する環構造にヘテロ原子が含まれていても良い。環構造は特に限定されないが、例えば、ピロリジン環、ピペリジン環、モルフォリン環等が挙げられる。
【0029】
本発明においては、中でも、RとRが各々独立に、水素原子、炭素原子数1~5のアルキル基、フェニル基であるか、又は、RとRが結合してピロリジン環、ピペリジン環、モルフォリン環を形成していることが好ましい。
【0030】
上記一般式(I)で表される構成単位を誘導するモノマーとしては、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノプロピル(メタ)アクリレート等のアルキル基置換アミノ基含有(メタ)アクリレート等、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリルアミド、ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミドなどのアルキル基置換アミノ基含有(メタ)アクリルアミド等が挙げられる。中でも分散性、及び分散安定性が向上する点でジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミドを好ましく用いることができる。
一般式(I)で表される構成単位は、1種類からなるものであってもよく、2種以上の構成単位を含むものであってもよい。
【0031】
(一般式(II)で表される構成単位)
前記グラフト共重合体は、特定のポリマー鎖を有する前記一般式(II)で表される構成単位を有することにより、溶剤親和性が良好になり、色材の分散性及び分散安定性が良好なものとなる。また、前記グラフト共重合体は、前記一般式(II)で表される構成単位に前記一般式(III)で表される構成単位及び前記一般式(III’)で表される構成単位からなる群から選択される少なくとも1種の構成単位が含まれることから、前述のように、感光性樹脂組成物の現像時間の短縮化、及び感光性着色樹脂組成物の硬化物の耐溶剤性が良好になる。
【0032】
前記一般式(II)において、Aは、直接結合又は2価の連結基である。Aにおける2価の連結基としては、エチレン性不飽和二重結合由来の炭素原子とポリマー鎖を連結可能であれば、特に制限はない。Aにおける2価の連結基としては、例えば、前記Aにおける2価の連結基と同様のものが挙げられる。
中でも、分散性の点から、一般式(II)におけるAは、-CONH-基又は-COO-基を含む2価の連結基であることが好ましく、-CONH-基又は-COO-基と、炭素原子数1~10のアルキレン基とを含む2価の連結基であることがより好ましい。
【0033】
前記一般式(II)において、Polymerは、ポリマー鎖を表し、当該ポリマー鎖の構成単位には前記一般式(III)で表される構成単位及び前記一般式(III’)で表される構成単位からなる群から選択される少なくとも1種の構成単位が含まれる。
前記一般式(III)中、Rは水素原子又はメチル基、Aは2価の連結基、Rはエチレン基又はプロピレン基、Rは、水素原子、又は炭化水素基であり、mは3以上80以下の数を表す。
【0034】
の2価の連結基としては、例えば、前記Aにおける2価の連結基と同様のものが挙げられる。中でも、カラーフィルタ用途に使用される有機溶剤への溶解性の点から、一般式(III)におけるAは、-CONH-基又は-COO-基を含む2価の連結基であることが好ましく、-CONH-基又は-COO-基であることがより好ましい。
【0035】
前記mは、エチレンオキシド鎖又はプロピレンオキシド鎖の繰り返し単位数を表し、3以上の数を表すが、中でも水染み発生抑制の点から、19以上であることが好ましく、21以上であることがより好ましい。なお、水染みとは、アルカリ現像後、純水でリンスした後に、水が染みたような跡が発生するこの現象をいう。このような水染みは、ポストベーク後に消えるので製品としては問題がないが、現像後にパターニング面の外観検査において、ムラ異常として検出されてしまい、正常品と異常品の区別がつかないという問題が生じる。そのため、外観検査において検査装置の検査感度を下げると、結果として最終的なカラーフィルタ製品の歩留まり低下を引き起こし、問題となる。感光性樹脂組成物の硬化膜の水染みの原因としては、硬化膜内への吸水が挙げられる。硬化膜中のアルカリ可溶性樹脂はカルボキシ基等の酸性基を有しているため吸水しやすい。また、当該酸性基が、現像時にアルカリ現像液に典型的に含まれるアルカリ金属と金属塩を形成することにより吸水性がより高まると考えられる。ポリエチレンオキシド鎖又はポリプロピレンオキシド鎖に含まれる酸素原子は、アルカリ金属などの金属と錯生成することで捕捉可能である。ポリエチレンオキシド鎖又はポリプロピレンオキシド鎖の繰り返し単位数が大きくなるにつれて、錯生成定数は増加し、金属分子の捕捉能が増加するため、アルカリ可溶性樹脂のアルカリ金属塩形成を抑制し、硬化膜内への吸水が抑制できると推測される。また、ポリエチレンオキシド鎖又はポリプロピレンオキシド鎖に含まれる酸素原子は、感光性樹脂組成物中に含まれるアルカリ可溶性樹脂のカルボキシ基等の酸性基と、水素結合によって相互作用することによって、酸性基のアルカリ金属塩形成を抑制し、硬化膜内への吸水が抑制できると推測される。
前記mが19以上の場合には、図4に示されるように、前記グラフト共重合体11は、一般式(I)で表される構成単位21と一般式(II)で表される構成単位22とを有する主鎖部分12を含有し、前記一般式(I)で表される構成単位21が有する窒素部位の少なくとも一部と有機酸化合物及びハロゲン化炭化水素からなる群から選ばれる少なくとも1種23とが塩を形成していても良く、前記一般式(II)で表される構成単位22はポリマー鎖24において、特定の繰り返し数を有するポリエチレンオキシド鎖又はポリプロピレンオキシド鎖26を含む一般式(III)で表される構成単位25が含まれる。本発明に用いられる特定のグラフト共重合体においては、このようにグラフトしているポリマー鎖24の構成単位に、特定の繰り返し数を有するポリエチレンオキシド鎖又はポリプロピレンオキシド鎖を有する構成単位25が含まれ、グラフトしているポリマー鎖24自体が枝分かれ構造を有する。その結果、分散剤の金属捕捉部の比表面積が大きくなることと相俟って、ポリエチレンオキシド鎖又はポリプロピレンオキシド鎖に含まれる酸素原子による金属捕捉の作用が顕著になり、吸水抑制効果が向上し、吸水による水染み発生が抑制できると推定される。これらの硬化膜内への吸水抑制作用によって、吸水による水染みの発生を抑制できると推測される。
一方、mの上限値は80以下であるが、カラーフィルタ用途に使用される有機溶剤への溶解性の点から、50以下であることが好ましい。
【0036】
における炭化水素基としては、例えば、炭素数1~18のアルキル基、炭素数2~18のアルケニル基、アリール基、及び、アラルキル基やアルキル置換アリール基等のこれらの組み合わせが挙げられる。
前記炭素数1~18のアルキル基は、直鎖状、分岐状、環状のいずれであってもよく、例えば、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、n-ノニル基、n-ラウリル基、n-ステアリル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、ボルニル基、イソボルニル基、ジシクロペンタニル基、アダマンチル基、低級アルキル基置換アダマンチル基などを挙げることができる。アルキル基の炭素数は、1~12が好ましく、更に1~6が好ましい。
前記炭素数2~18のアルケニル基は、直鎖状、分岐状、環状のいずれであってもよい。このようなアルケニル基としては、例えばビニル基、アリル基、プロペニル基などを挙げることができる。アルケニル基の二重結合の位置には限定はないが、得られたポリマーの反応性の点からは、アルケニル基の末端に二重結合があることが好ましい。アルケニル基の炭素数は、2~12が好ましく、更に2~8が好ましい。
アリール基としては、フェニル基、ビフェニル基、ナフチル基、トリル基、キシリル基等が挙げられる。アリール基の炭素数は、6~24が好ましく、更に6~12が好ましい。
また、アラルキル基としては、ベンジル基、フェネチル基、ナフチルメチル基、ビフェニルメチル基等が挙げられ、更に置換基を有していてもよい。アラルキル基の炭素数は、7~20が好ましく、更に7~14が好ましい。
また、前記アリール基やアラルキル基等の芳香環には、置換基として炭素数1~30の直鎖状、分岐状のアルキル基が結合していても良い。
【0037】
における炭化水素基としては、中でも、分散安定性の点から、炭素数1~18のアルキル基、アルキル基が置換されていても良い炭素数6~12のアリール基、及び、アルキル基が置換されていても良い炭素数7~14のアラルキル基からなる群から選択される1種以上であることが好ましく、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、n-ノニル基、n-ラウリル基、n-ステアリル基、アルキル基が置換されていても良いフェニル基及びベンジル基からなる群から選択される1種以上であることが好ましい。
【0038】
また、前記一般式(III’)中、A3’の2価の連結基としては、例えば、前記Aにおける2価の連結基と同様のものが挙げられる。中でも、カラーフィルタ用途に使用される有機溶剤への溶解性の点から、一般式(III’)におけるA3’は、-CONH-基又は-COO-基を含む2価の連結基であることが好ましく、-CONH-基又は-COO-基であることがより好ましい。
前記一般式(III’)において、Rは炭素数が1~10のアルキレン基であるが、中でも炭素数が2~8のアルキレン基であることが、溶剤再溶解性の点から好ましい。
は炭素数が3~7のアルキレン基であるが、中でも炭素数が3~5のアルキレン基、更に炭素数が5のアルキレン基であることが基材密着性の点から好ましい。
は、水素原子、又は炭化水素基であり、前記Rにおける炭化水素基としては、前記Rにおける炭化水素基と同様であって良い。
【0039】
前記一般式(III’)における前記nはエステル鎖の繰り返し単位数を表し、1以上の数を表すが、中でも現像時間の短縮化、及び優れた耐溶剤性を同時に満たす点から、2以上であることが好ましく、更に3以上であることが好ましい。
一方、nの上限値は40以下であるが、カラーフィルタ用途に使用される有機溶剤への溶解性の点から、20以下であることが好ましい。
【0040】
前記ポリマー鎖において、前記一般式(III)で表される構成単位及び下記一般式(III’)で表される構成単位からなる群から選択される少なくとも1種の構成単位は、1種単独でも良いが、2種以上混合されていても良い。
前記ポリマー鎖において、前記一般式(III)で表される構成単位が含まれることが、酸素原子による溶剤親和性部の作用がより顕著になる点から好ましい。
【0041】
中でも、水染み抑制効果が向上し、耐溶剤性が向上し、且つ現像残渣抑制効果が向上する点から、前記一般式(II)で表される構成単位中のポリマー鎖の構成単位に、mが19以上80以下の前記一般式(III)で表される構成単位からなる群から選択される少なくとも1種と、mが3以上10以下の前記一般式(III)で表される構成単位からなる群から選択される少なくとも1種とを組み合わせて含有することがより好ましく、mが19以上50以下の前記一般式(III)で表される構成単位からなる群から選択される少なくとも1種と、mが3以上8以下の前記一般式(III)で表される構成単位からなる群から選択される少なくとも1種とを組み合わせて含有することがよりさらに好ましい。
【0042】
前記一般式(II)で表される構成単位中のポリマー鎖の構成単位に、mが19以上80以下の前記一般式(III)で表される構成単位からなる群から選択される少なくとも1種を含有する場合、mが19以上80以下の前記一般式(III)で表される構成単位の合計割合は、前記ポリマー鎖の全構成単位を100質量%とした時に、水染み抑制効果の点から、1質量%以上であることが好ましく、2質量%以上であることがより好ましく、4質量%以上であることがより更に好ましく、一方で、溶剤再溶解性、及び水染み抑制効果の点から、75質量%以下であることが好ましく、65質量%以下であることがより好ましく、50質量%以下であることがより更に好ましい。
【0043】
前記一般式(II)で表される構成単位中のポリマー鎖の構成単位に、mが19以上80以下の前記一般式(III)で表される構成単位からなる群から選択される少なくとも1種と、mが3以上10以下の前記一般式(III)で表される構成単位からなる群から選択される少なくとも1種とを組み合わせて含有する場合、mが3以上10以下の前記一般式(III)で表される構成単位の合計割合は、前記ポリマー鎖の全構成単位を100質量%とした時に、20質量%以上であることが好ましい。一方で、溶剤再溶解性の点から、前記ポリマー鎖において、mが3以上10以下の前記一般式(III)で表される構成単位の合計割合は、当該ポリマー鎖の全構成単位を100質量%とした時に、80質量%以下であることが好ましく、60質量%以下であることがより好ましい。
また、前記ポリマー鎖において、mが19以上80以下の前記一般式(III)で表される構成単位と、mが3以上10以下の前記一般式(III)で表される構成単位との混合割合は、現像残渣抑制効果向上の点から、mが19以上80以下の前記一般式(III)で表される構成単位と、mが3以上10以下の前記一般式(III)で表される構成単位との合計を100質量部とした時に、mが19以上80以下の前記一般式(III)で表される構成単位の合計が3質量部以上であることが好ましく、6質量部以上であることがより好ましく、80質量部以下であることが好ましく、60質量部以下であることがより好ましい。
【0044】
分散安定性、高コントラスト化、現像時間の短縮化、及び優れた耐溶剤性を同時に満たす点から、前記ポリマー鎖の全構成単位を100質量%とした時に、前記一般式(III)で表される構成単位及び前記一般式(III’)で表される構成単位からなる群から選択される少なくとも1種の構成単位の合計割合は、1質量%以上であることが好ましく、2質量%以上であることがより好ましく、4質量%以上であることがより更に好ましい。前記一般式(III)で表される構成単位及び前記一般式(III’)で表される構成単位からなる群から選択される少なくとも1種の構成単位の合計割合は、溶剤再溶解性の点から、前記ポリマー鎖の全構成単位を100質量%とした時に、80質量%以下であることが好ましく、70質量%以下であることがより好ましく、60質量%以下であることがより更に好ましい。
【0045】
前記グラフト共重合体の前記一般式(II)で表される構成単位中のポリマー鎖の構成単位には、更に、前記一般式(III)で表される構成単位及び前記一般式(III’)で表される構成単位とは異なる下記一般式(IV)で表される構成単位とが含まれることが、色材の分散性及び分散安定性の点から好ましい。
【0046】
【化5】
(一般式(IV)中、R4”は水素原子又はメチル基、Aは2価の連結基、R10は、水素原子、又はヘテロ原子を含んでもよい炭化水素基である。)
【0047】
の2価の連結基としては、例えば、前記Aにおける2価の連結基と同様のものが挙げられる。中でも、カラーフィルタ用途に使用される有機溶剤への溶解性の点から、一般式(IV)におけるAは、-CONH-基又は-COO-基を含む2価の連結基であることが好ましく、-CONH-基又は-COO-基であることがより好ましい。
【0048】
10における、ヘテロ原子を含んでもよい炭化水素基における炭化水素基は、例えば、アルキル基、アルケニル基、アリール基、及びアラルキル基やアルキル置換アリール基等のこれらの組み合わせが挙げられる。R10における、ヘテロ原子を含んでもよい炭化水素基における炭化水素基としては、前記Rにおける炭化水素基と同様のものが挙げられる。
【0049】
炭化水素基が含んでいてもよいヘテロ原子としては、例えば、酸素原子、窒素原子、硫黄原子、ケイ素原子等が挙げられる。ヘテロ原子を含んでもよい炭化水素基としては、例えば、炭化水素基の炭素鎖中に、-CO-、-COO-、-OCO-、-O-、-S-、-CO-S-、-S-CO-、-O-CO-O-、-CO-NH-、-NH-CO-、-OCO-NH-、-NH-COO-、-NH-CO-NH-、-NH-O-、-O-NH-等の連結基が含まれる構造が挙げられる。
また、当該炭化水素基は、前記グラフト共重合体の分散性能等を妨げない範囲で、置換基を有しても良く、置換基としては、例えば、ハロゲン原子、水酸基、カルボキシ基、アルコキシ基、ニトロ基、シアノ基、エポキシ基、イソシアネート基、チオール基等が挙げられる。
【0050】
また、R10におけるヘテロ原子を含んでもよい炭化水素基としては、炭化水素基においてヘテロ原子を含む連結基を介して末端にアルケニル基等の重合性基が付加された構造であっても良い。例えば、一般式(IV)で表される構成単位が(メタ)アクリル酸由来の構成単位にグリシジル(メタ)アクリレートを反応させたような構造であっても良い。すなわち、一般式(IV)における-A-R10の構造が、-COO-CHCH(OH)CH-OCO-CR=CH(ここで、Rは水素原子又はメチル基)で示される構造であっても良い。また、一般式(IV)で表される構成単位がヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート由来の構成単位に2-イソシアナトアルキル(メタ)アクリレートを反応させたような構造であっても良い。すなわち、一般式(IV)におけるR10が、-R’-OCONH-R”-OCO-CR=CH(ここで、R’及びR”はそれぞれ独立にアルキレン基、Rは水素原子又はメチル基)で示される構造であっても良い。
【0051】
一般式(IV)で表される構成単位を誘導するモノマーとしては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、n-ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、tert-ブチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、2-エトキシエチル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、フェニル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、アダマンチル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル酸、2-メタクリロイルオキシエチルサクシネート、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシ-3-フェノキシプロピル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、エチレンオキシド鎖の繰り返し単位数が19未満のメトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート及びポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、フェノキシエチレングリコール(メタ)アクリレート等由来の構成単位を有するものが好ましい。しかしながら、これらに限定されるものではない。
【0052】
本発明において、前記R10としては、中でも、後述する有機溶剤との溶解性に優れたものを用いることが好ましく、色材分散液に使用する有機溶剤に合わせて適宜選択されれば良い。具体的には、例えば前記有機溶剤が、色材分散液の有機溶剤として一般的に使用されているエーテルアルコールアセテート系、エーテル系、エステル系、アルコール系などの有機溶剤を用いる場合には、メチル基、エチル基、イソブチル基、n-ブチル基、2-エチルヘキシル基、ベンジル基、シクロヘキシル基、ジシクロペンタニル基、ヒドロキシエチル基、フェノキシエチル基、アダマンチル基、メトキシポリエチレングリコール基、メトキシポリプロピレングリコール基、ポリエチレングリコール基等が好ましい。
【0053】
前記ポリマー鎖において、前記一般式(IV)で表される構成単位は、1種単独でも良いが、2種以上混合されていても良い。
色材の分散性及び分散安定性の点から、前記ポリマー鎖において、前記一般式(IV)で表される構成単位の合計割合は、当該ポリマー鎖の全構成単位を100質量%とした時に、25質量%以上であることが好ましく、35質量%以上であることがより好ましい。一方で、分散安定性、高コントラスト化、現像時間の短縮化、及び優れた耐溶剤性を同時に満たす点から、前記ポリマー鎖において、前記一般式(IV)で表される構成単位の合計割合は、当該ポリマー鎖の全構成単位を100質量%とした時に、99質量%以下であることが好ましく、98質量%以下であることがより好ましい。
【0054】
前記グラフト共重合体の前記一般式(II)で表される構成単位中のポリマー鎖の構成単位には、前記一般式(III)で表される構成単位、前記一般式(III’)で表される構成単位、前記一般式(IV)で表される構成単位の他に、その他の構成単位を含んでいても良い。
その他の構成単位としては、前記一般式(III)で表される構成単位を誘導するモノマーや前記一般式(III’)で表される構成単位を誘導するモノマーや前記一般式(IV)で表される構成単位を誘導するモノマーと共重合可能な不飽和二重結合を有する単量体由来の構成単位を挙げることができる。
その他の構成単位を誘導するモノマーとしては、例えば、スチレン、α-メチルスチレン等のスチレン類、フェニルビニルエーテル等のビニルエーテル類等が挙げられる。
【0055】
前記グラフト共重合体の前記一般式(II)で表される構成単位中のポリマー鎖において、その他の構成単位の合計割合は、本発明の効果の点から、当該ポリマー鎖の全構成単位を100質量%とした時に、30質量%以下であることが好ましく、10質量%以下であることがより好ましい。
【0056】
Polymerにおけるポリマー鎖の質量平均分子量Mwは、色材の分散性及び分散安定性の点から、2000以上であることが好ましく、3000以上であることがより好ましく、4000以上であることがより更に好ましく、15000以下であることがより好ましく、12000以下であることがより更に好ましい。
前記範囲であることにより、分散剤としての十分な立体反発効果を保持できるとともに、分散剤の溶剤親和性部の比表面積が大きくなることによる、ポリエチレンオキシド鎖、ポリプロピレンオキシド鎖、又はエステル鎖に含まれる酸素原子による相互作用が顕著になり、現像残渣抑制効果の向上、現像時間の短縮化、耐溶剤性の向上の作用を良好にすることができる。
【0057】
また、Polymerにおけるポリマー鎖は、目安として、組み合わせて用いられる有機溶剤に対して、23℃における溶解度が20(g/100g溶剤)以上であることが好ましい。
当該ポリマー鎖の溶解性は、グラフト共重合体を調製する際のポリマー鎖を導入する原料が前記溶解度を有することを目安にすることができる。例えば、グラフト共重合体にポリマー鎖を導入するために、ポリマー鎖及びその末端にエチレン性不飽和二重結合を有する基を含む重合性オリゴマー(マクロモノマー)を用いる場合、当該重合性オリゴマーが前記溶解度を有すれば良い。また、エチレン性不飽和二重結合を有する基を含むモノマーにより共重合体が形成された後に、共重合体中に含まれる反応性基と反応可能な反応性基を含むポリマー鎖を用いて、ポリマー鎖を導入する場合、当該反応性基を含むポリマー鎖が前記溶解度を有すれば良い。
【0058】
(グラフト共重合体)
前記グラフト共重合体において、前記一般式(I)で表される構成単位は、3~60質量%の割合で含まれていることが好ましく、6~45質量%がより好ましく、9~30質量%がさらに好ましい。グラフト共重合体中の一般式(I)で表される構成単位が前記範囲内にあれば、グラフト共重合体中の色材との親和性部の割合が適切になり、かつ有機溶剤に対する溶解性の低下を抑制できるので、色材に対する吸着性が良好となり、優れた分散性、及び分散安定性が得られる。
一方、前記グラフト共重合体において、前記一般式(II)で表される構成単位は、40~97質量%の割合で含まれていることが好ましく、55~94質量%がより好ましく、70~91質量%がさらに好ましい。グラフト共重合体中の一般式(II)で表される構成単位が前記範囲内にあれば、グラフト共重合体中の溶剤親和性部の割合が適切になって、分散剤としての十分な立体反発効果を保持できるとともに、分散剤の溶剤親和性部の比表面積が大きくなることによる、ポリエチレンオキシド鎖、ポリプロピレンオキシド鎖、又はエステル鎖に含まれる酸素原子による相互作用が顕著になり、現像時間の短縮化、耐溶剤性の向上の作用を良好にすることができる。
【0059】
本発明に用いられる前記グラフト共重合体は、本発明の効果が損なわれない範囲内で、前記一般式(I)で表される構成単位及び前記一般式(II)で表される構成単位以外に、更に他の構成単位を有していても良い。他の構成単位としては、前記一般式(I)で表される構成単位を誘導するエチレン性不飽和二重結合含有モノマー等と共重合可能な、エチレン性不飽和二重結合含有モノマーを適宜選択して共重合し、他の構成単位を導入することができる。
前記一般式(I)で表される構成単位と共重合されている他の構成単位としては、例えば、前記一般式(IV)で表される構成単位や、前記一般式(II)で表される構成単位のポリマー鎖の構成単位に、前記一般式(III)で表される構成単位及び前記一般式(III’)で表される構成単位からなる群から選択される少なくとも1種の構成単位が含まれず、前記一般式(IV)で表される構成単位が含まれるような、前記一般式(II)で表される構成単位とは異なるポリマー鎖を有する構成単位等が挙げられる。
なお、前記構成単位の含有割合は、製造時には、グラフト共重合体を合成する際の、前記一般式(I)で表される構成単位、前記一般式(II)で表される構成単位、及び前記一般式(III)で表される構成単位、前記一般式(III’)で表される構成単位等を誘導するモノマーの仕込み量から算出される。
【0060】
また、前記グラフト共重合体の質量平均分子量Mwは、分散性及び分散安定性の点から、4000以上であることが好ましく、6000以上であることがより好ましく、8000以上であることがより更に好ましい。一方、溶剤再溶解性の点から、50000以下であることが好ましく、30000以下であることがより好ましい。
なお、本発明において質量平均分子量Mwは、GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)により測定された値である。測定は、東ソー製のHLC-8120GPCを用い、溶出溶剤を0.01モル/リットルの臭化リチウムを添加したN-メチルピロリドンとし、校正曲線用ポリスチレンスタンダードをMw377400、210500、96000、50400、20650、10850、5460、2930、1300、580(以上、Polymer Laboratories製 Easi PS-2シリーズ)及びMw1090000(東ソー製)とし、測定カラムをTSK-GEL ALPHA-M×2本(東ソー製)として行われたものである。
【0061】
また、塩形成前のグラフト共重合体のアミン価は、特に限定されないが、色材分散性及び分散安定性の点から、下限としては、40mgKOH/g以上であることが好ましく、50mgKOH/g以上であることがより好ましく、60mgKOH/g以上であることがさらにより好ましい。また、上限としては、140mgKOH/g以下であることが好ましく、130mgKOH/g以下であることがより好ましく、120mgKOH/g以下であることがさらにより好ましい。上記下限値以上であれば、分散安定性がより優れている。また、上記上限値以下であれば、他の成分との相溶性に優れ、溶剤再溶解性が良好になる。
なお、本発明において塩形成前のグラフト共重合体のアミン価とは、塩形成前のグラフト共重合体の固形分1gを中和するのに必要な塩酸量に対して当量となる水酸化カリウムの質量(mg)を表し、JIS K 7237:1995に記載の方法により測定される値である。
【0062】
塩形成前のグラフト共重合体の酸価は、現像密着性及び溶剤再溶解性が良好になる点から、18mgKOH/g以下であることが好ましく、12mgKOH/g以下であることがより好ましい。また、塩形成前のグラフト共重合体の酸価は、溶剤再溶解性及び現像密着性をより向上する点、分散安定性の点からは、1mgKOH/g未満であってもよい。一方で、現像残渣抑制効果の点からは、1mgKOH/g以上であることが好ましく、2mgKOH/g以上であることがより好ましい。
【0063】
塩形成前のグラフト共重合体の酸価は、グラフト共重合体の固形分1g中に含まれる酸性成分を中和するために要する水酸化カリウムの質量(mg)を表し、JIS K 0070:1992に記載の方法により測定される値である。
【0064】
(グラフト共重合体の製造方法)
本発明において、前記グラフト共重合体の製造方法としては、前記一般式(I)で表される構成単位と、前記一般式(II)で表される構成単位とを有するグラフト共重合体を製造することができる方法であればよく、特に限定されない。前記一般式(I)で表される構成単位と前記一般式(II)で表される構成単位とを有するグラフト共重合体を製造する場合、例えば、下記一般式(Ia)で表されるモノマーと、前記ポリマー鎖及びその末端にエチレン性不飽和二重結合を有する基からなる重合性オリゴマー(マクロモノマー)とを共重合成分として含有して共重合し、グラフト共重合体を製造する方法が挙げられる。
必要に応じて更にその他のモノマーも用い、公知の重合手段を用いてグラフト共重合体を製造することができる。
【0065】
【化6】
(一般式(Ia)中、R、A、R及びRは、一般式(I)と同様である。)
【0066】
また、前記一般式(I)で表される構成単位と前記一般式(II)で表される構成単位とを有するグラフト共重合体を製造する場合、前記一般式(Ia)で表されるモノマーとその他のエチレン性不飽和二重結合を有する基を含むモノマーとを付加重合して共重合体が形成された後に、共重合体中に含まれる反応性基と反応可能な反応性基を含むポリマー鎖を用いて、ポリマー鎖を導入しても良い。具体的には例えば、アルコキシ基、水酸基、カルボキシル基、アミノ基、エポキシ基、イソシアネート基、水素結合形成基等の置換基を有する共重合体を合成した後に、当該置換基と反応する官能基を含むポリマー鎖とを反応させて、ポリマー鎖を導入したものであっても良い。
例えば、側鎖にグリシジル基を有する共重合体に、末端にカルボキシル基を有するポリマー鎖を反応させたり、側鎖にイソシアネート基を有する共重合体に、末端にヒドロキシ基を有するポリマー鎖を反応させたりして、ポリマー鎖を導入することができる。
なお、前記重合においては、重合に一般的に用いられる添加剤、例えば重合開始剤、分散安定剤、連鎖移動剤などを用いてもよい。
【0067】
(有機酸化合物及びハロゲン化炭化水素からなる群から選ばれる少なくとも1種)
本発明において分散剤は、色材分散性を向上する点から、前記グラフト共重合体の前記一般式(I)で表される構成単位が有する窒素部位の少なくとも一部と、有機酸化合物及びハロゲン化炭化水素からなる群から選ばれる少なくとも1種とが塩を形成した塩型グラフト共重合体であってもよい。
前記有機酸化合物としては、中でも、下記一般式(1)で表される化合物及び下記一般式(3)で表される化合物が好ましく、前記ハロゲン化炭化水素としては、中でも、下記一般式(2)で表される化合物が好ましい。すなわち、前記有機酸化合物及びハロゲン化炭化水素からなる群から選ばれる少なくとも1種としては、下記一般式(1)~(3)よりなる群から選択される1種以上の化合物を好ましく用いることができる。
【0068】
【化7】
(一般式(1)において、Rは、炭素数1~20の直鎖、分岐鎖又は環状のアルキル基、ビニル基、置換基を有してもよいフェニル基又はベンジル基、或いは-O-Rを表し、Rは、炭素数1~20の直鎖、分岐鎖又は環状のアルキル基、ビニル基、置換基を有してもよいフェニル基又はベンジル基、或いは炭素数1~4のアルキレン基を介した(メタ)アクリロイル基を表す。一般式(2)において、R、Rb’、及びRb”はそれぞれ独立に、水素原子、酸性基又はそのエステル基、置換基を有してもよい炭素数1~20の直鎖、分岐鎖又は環状のアルキル基、置換基を有してもよいビニル基、置換基を有してもよいフェニル基又はベンジル基、或いは-O-Rを表し、Rは、置換基を有してもよい炭素数1~20の直鎖、分岐鎖又は環状のアルキル基、置換基を有してもよいビニル基、置換基を有してもよいフェニル基又はベンジル基、或いは炭素数1~4のアルキレン基を介した(メタ)アクリロイル基を表し、Xは、塩素原子、臭素原子、又はヨウ素原子を表す。一般式(3)において、R及びRはそれぞれ独立に、水素原子、水酸基、炭素数1~20の直鎖、分岐鎖又は環状のアルキル基、ビニル基、置換基を有してもよいフェニル基又はベンジル基、或いは-O-Rを表し、Rは、炭素数1~20の直鎖、分岐鎖又は環状のアルキル基、ビニル基、置換基を有してもよいフェニル基又はベンジル基、或いは炭素数1~4のアルキレン基を介した(メタ)アクリロイル基を表す。但し、R及びRの少なくとも一つは炭素原子を含む。)
【0069】
(前記一般式(1)~(3)よりなる群から選択される1種以上の化合物)
前記一般式(1)~(3)において、R、R、Rb’、Rb”、R、R、R、及びRにおける炭素数1~20の直鎖、分岐鎖又は環状のアルキル基としては、直鎖又は分岐鎖のいずれでも良く、また、環状構造を含んでいても良く、具体的には、メチル基、エチル基、n-プロピル基、i-プロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、n-ペンチル基、n-ヘキシル基、n-ヘプチル基、n-オクチル基、n-ノニル基、n-デシル基、n-ウンデシル基、ドデシル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、テトラデシル基、オクタデシル基などが挙げられる。好ましくは、炭素数1~15の直鎖、分岐鎖又は環状のアルキル基が挙げられ、更に好ましくは炭素数1~8の直鎖、分岐鎖又は環状のアルキル基が挙げられる。
また、R、R、R、及びRにおいて、置換基を有してもよいフェニル基又はベンジル基の置換基としては、例えば、炭素原子数が1~5のアルキル基、アシル基、アシルオキシ基等が挙げられる。
【0070】
、Rb’、Rb”、及びRにおいて、置換基を有してもよいフェニル基又はベンジル基の置換基としては、例えば、酸性基又はそのエステル基、炭素原子数が1~5のアルキル基、アシル基、アシルオキシ基等が挙げられる。
また、R、Rb’、Rb”、及びRにおいて、置換基を有してもよい炭素数1~20の直鎖、分岐鎖又は環状のアルキル基、或いはビニル基の置換基としては、酸性基又はそのエステル基、フェニル基、アシル基、アシルオキシ基等が挙げられる。
、Rb’、Rb”、及びRにおいて酸性基とは、水中でプロトンを放出し酸性を示す基のことをいう。酸性基の具体例としては、カルボキシ基(-COOH)、スルホ基(-SOH)、ホスホノ基(-P(=O)(OH))、ホスフィニコ基(>P(=O)(OH))、ボロン酸基(-B(OH))、ボリン酸基(>BOH)等が挙げられ、カルボキシラト基(-COO)等のように水素原子が解離したアニオンであってもよく、更に、ナトリウムイオンやカリウムイオン等のアルカリ金属イオンと塩形成した酸性塩であってもよい。
また、酸性基のエステル基としては、カルボン酸エステル(-COOR)、スルホン酸エステル(-SOR)、リン酸エステル(-P(=O)(OR))、(>P(=O)(OR))、ボロン酸エステル(-B(OR))、ボリン酸エステル(>BOR)等が挙げられる。中でも、酸性基のエステル基としては、カルボン酸エステル(-COOR)であることが分散性及び分散安定性の点から好ましい。なお、Rは炭化水素基であり、特に限定されないが、分散性及び分散安定性の点から、中でも炭素原子数1~5のアルキル基であることが好ましく、メチル基又はエチル基であることがより好ましい。
【0071】
前記一般式(2)の化合物は、分散性、分散安定性、アルカリ現像性、及び現像残渣抑制効果の点から、カルボキシ基、ボロン酸基、ボリン酸基、これらのアニオン、並びにこれらのアルカリ金属塩、及びこれらのエステルより選択される1種以上の官能基を有することが好ましく、中でも、カルボキシ基、カルボキシラト基、カルボン酸塩基、及びカルボン酸エステルより選択される官能基を有することがより好ましい。
前記一般式(2)の化合物が酸性基及びそのエステル基(以下、酸性基等という)を有する場合、当該化合物が有する酸性基等側、及び、ハロゲン原子側炭化水素のいずれもが末端の窒素部位と塩形成し得るが、末端の窒素部位と酸性基等とが塩形成した場合に比べて、末端の窒素部位とハロゲン原子側炭化水素とが安定して塩形成するものと推定される。そして、安定して存在する塩形成部位に色材が吸着することにより分散性及び分散安定性が向上するものと推定される。
【0072】
前記一般式(2)の化合物が前記酸性基等を有する場合、前記酸性基等を2個以上有していてもよい。前記酸性基等を2個以上有する場合、複数ある前記酸性基等は同一であってもよく、異なっていてもよい。前記一般式(2)の化合物が有する前記酸性基等の数は1~3個であることが好ましく、1~2個であることがより好ましく、1個であることが更により好ましい。
【0073】
前記一般式(1)においてR、前記一般式(2)においてR、Rb’、及びRb”の少なくとも1つ、並びに、前記一般式(3)においてR及びRの少なくとも1つが芳香族環を有する場合には、後述する色材の骨格との間の親和性が向上し、色材の分散性及び分散安定性が優れたものとなり、コントラストに優れた着色組成物を得ることができる点から好ましい。
【0074】
前記一般式(1)~(3)よりなる群から選択される1種以上の化合物の分子量は、色材分散性向上の点から、1000以下であることが好ましく、中でも50~800であることが好ましく、更に50~400であることが好ましく、より更に80~350であることが好ましく、100~330であることが最も好ましい。
【0075】
前記一般式(1)で表される化合物としては、例えば、ベンゼンスルホン酸、ビニルスルホン酸、メタンスルホン酸、p-トルエンスルホン酸、モノメチル硫酸、モノエチル硫酸、モノn-プロピル硫酸等が挙げられる。なお、p-トルエンスルホン酸一水和物のような水和物を用いても良い。前記一般式(2)で表される化合物としては、例えば、メチルクロライド、メチルブロマイド、エチルクロライド、エチルブロマイド、ヨウ化メチル、ヨウ化エチル、n-ブチルクロライド、ヘキシルクロライド、オクチルクロライド、ドデシルクロライド、テトラデシルクロライド、ヘキサデシルクロライド、フェネチルクロライド、ベンジルクロライド、ベンジルブロミド、ベンジルヨーダイド、クロロベンゼン、α-クロロフェニル酢酸、α-ブロモフェニル酢酸、α-ヨードフェニル酢酸、4-クロロメチル安息香酸、4-ブロモメチル安息香酸、4-ヨードフェニル安息香酸、クロロ酢酸、ブロモ酢酸、ヨード酢酸、α-ブロモフェニル酢酸メチル、3-(ブロモメチル)フェニルボロン酸、等が挙げられる。前記一般式(3)で表される化合物としては、例えば、モノブチルリン酸、ジブチルリン酸、メチルリン酸、ジベンジルリン酸、ジフェニルリン酸、フェニルホスフィン酸、フェニルホスホン酸、ジメタクリロイルオキシエチルアシッドホスフェート等が挙げられる。
分散安定性が特に優れる点から、フェニルホスフィン酸、フェニルホスホン酸、ジメタクリロイルオキシエチルアシッドホスフェート、ジブチルリン酸、メチルクロライド、メチルブロマイド、ヨウ化メチル、ベンジルクロライド、ベンジルブロミド、ビニルスルホン酸、及びp-トルエンスルホン酸一水和物よりなる群から選択される1種以上が好ましく、中でも、フェニルホスフィン酸、フェニルホスホン酸、ベンジルクロライド、ベンジルブロミド、及びp-トルエンスルホン酸一水和物よりなる群から選択される1種以上を用いることが好ましい。
また、前記特定のグラフト共重合体との組み合わせにより現像残渣の抑制効果が向上する点から、酸性基及びそのエステル基を有する一般式(2)で表される化合物も好適に用いられ、中でも、α-クロロフェニル酢酸、α-ブロモフェニル酢酸、α-ヨードフェニル酢酸、4-クロロメチル安息香酸、4-ブロモメチル安息香酸、及び4-ヨードフェニル安息香酸よりなる群から選択される1種以上も好適に用いられる。
【0076】
塩型グラフト共重合体において、有機酸化合物及びハロゲン化炭化水素からなる群から選ばれる少なくとも1種の含有量は、一般式(I)で表される構成単位が有する末端の窒素部位と塩形成しているものであることから、一般式(I)で表される構成単位が有する末端の窒素部位に対して、有機酸化合物及びハロゲン化炭化水素からなる群から選ばれる少なくとも1種の合計を0.01モル以上とすることが好ましく、0.05モル以上とすることがより好ましく、0.1モル以上とすることがさらに好ましく、0.2モル以上とすることが特に好ましい。上記下限値以上であると、塩形成による色材分散性向上の効果が得られやすい。同様に、1モル以下とすることが好ましく、0.8モル以下とすることがより好ましく、0.7モル以下とすることがさらに好ましく、0.6モル以下とすることが特に好ましい。上記上限値以下であると現像密着性や溶剤再溶解性に優れたものとすることができる。
なお、有機酸化合物及びハロゲン化炭化水素からなる群から選ばれる少なくとも1種は、1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせてもよい。2種以上を組み合わせる場合は、その合計の含有量が上記範囲内であることが好ましい。
【0077】
塩型グラフト共重合体の調製方法としては、塩形成前のグラフト共重合体を溶解乃至分散した溶剤中に、前記有機酸化合物及びハロゲン化炭化水素からなる群から選ばれる少なくとも1種を添加し、攪拌、更に必要により加熱する方法などが挙げられる。
なお、グラフト共重合体の当該一般式(I)で表される構成単位が有する末端の窒素部位と、前記有機酸化合物及びハロゲン化炭化水素からなる群から選ばれる少なくとも1種とが塩を形成していること、及びその割合は、例えばNMR等、公知の手法により確認することができる。
【0078】
得られた塩型グラフト共重合体のアミン価は、塩形成前のグラフト共重合体に比べて塩を形成した分だけ値が小さくなる。しかし、塩形成部位は、アミノ基に相当する末端の窒素部位と同様、又はむしろ強化された色材吸着部位となるため、塩形成によって色材分散性や色材分散安定性が向上する傾向がある。また、塩形成部位は、アミノ基と同様に、多すぎると溶剤再溶解性に悪影響を与える。そのため、本発明においては、塩形成前のグラフト共重合体のアミン価を、色材分散安定性、及び溶剤再溶解性を良好にするための指標とすることができる。得られた塩型グラフト共重合体のアミン価としては、0~130mgKOH/gであることが好ましく、10~120mgKOH/gであることが更に好ましく、20~110mgKOH/gであることがより更に好ましい。
上記上限値以下であれば、他の成分との相溶性に優れ、溶剤再溶解性が良好になる。
【0079】
なお、塩型グラフト共重合体のうち、前記一般式(2)で表される化合物により塩形成されている塩型グラフト共重合体のアミン価は、JIS K 7237:1995に記載の方法により測定される値とすることができる。前記一般式(2)の化合物は、一般式(I)で表される構成単位が有する末端の窒素部位とハロゲン原子側炭化水素が塩を形成するため、当該測定方法によっても塩形成の状態に変化をきたさず、アミン価を測定可能だからである。
一方で、塩型グラフト共重合体のうち、前記一般式(1)又は(3)で表される化合物により塩形成されている塩型グラフト共重合体のアミン価は、前述した塩形成前のグラフト共重合体のアミン価から、下記のように算出することにより求められる。前記一般式(1)又は(3)で表される化合物は、一般式(I)で表される構成単位が有する末端の窒素部位と酸性基が塩を形成するため、このような塩型グラフト共重合体のアミン価を前記JIS K 7237:1995に記載の方法により測定すると、塩形成の状態に変化をきたし、正確な値を測定することができないからである。
まず、前述の方法により、塩形成前のグラフト共重合体のアミン価を求める。次に、塩型グラフト共重合体の13C-NMRスペクトルを核磁気共鳴装置を用いて測定し、得られたスペクトルデータのうち、前記一般式(I)で表される構成単位が有する末端の窒素部位において、塩形成されていない窒素原子に隣接する炭素原子ピークと、塩形成されている窒素原子に隣接する炭素原子ピークの積分値の比率より、塩型グラフト共重合体の、一般式(I)で表される構成単位が有する末端の窒素部位に対する、前記一般式(1)又は(3)よりなる群から選択される1種以上の化合物の反応率(塩形成されている末端の窒素部位比率)を測定する。前記一般式(1)又は(3)よりなる群から選択される1種以上の化合物が塩形成した一般式(I)で表される構成単位が有する末端の窒素部位は、アミン価が0になったとして、(JIS K 7237:1995に記載の方法により測定される塩形成前グラフト共重合体のアミン価)×(13C-NMRスペクトルより算出される塩形成されている末端の窒素部位比率(%)/100)により算出される、塩形成により消費したアミン価を、塩形成前のグラフト共重合体のアミン価から差し引くことにより求められる。
塩型グラフト共重合体のアミン価={JIS K 7237:1995に記載の方法により測定される塩形成前グラフト共重合体のアミン価}-{JIS K 7237:1995に記載の方法により測定される塩形成前グラフト共重合体のアミン価}×{13C-NMRスペクトルより算出される塩形成されている末端の窒素部位比率(%)/100}
【0080】
また、本発明において、分散剤の水酸基価は、溶剤再溶解性の点からは、120mgKOH/g以下であることが好ましく、60mgKOH/g以下であることがより好ましく、30mgKOH/g以下であることがより更に好ましく、0mgKOH/gであることが好ましい。
一方、分散剤の水酸基価は、現像性の点から、5mgKOH/g以上であることが好ましく、15mgKOH/g以上であることがより好ましい。
なお、本発明において水酸基価は固形分1gから得られるアセチル化物に結合している酢酸を中和するのに必要なKOHの質量(mg)を表し、JIS K 0070:1992に準じ、電位差滴定法によって求めた値をいう。
【0081】
分散剤におけるグラフト共重合体中の各構成単位の含有割合(モル%)は、製造時には原料の仕込み量から求めることができ、また、NMR等の分析装置を用いて測定することができる。また、分散剤の構造は、NMR、各種質量分析等を用いて測定することができる。また、分散剤を必要に応じて熱分解等により分解し、得られた分解物について、高速液体クロマトグラフィー、ガスクロマトグラフ質量分析計、NMR、元素分析、XPS/ESCA及びTOF-SIMS等を用いて求めることができる。
【0082】
本発明において、分散剤としては、前記グラフト共重合体及び塩型グラフト共重合体の少なくとも1種を用い、その含有量は、用いる色材の種類、更に後述する感光性着色樹脂組成物中の固形分濃度等に応じて適宜選定される。
分散剤の含有量は、感光性着色樹脂組成物の固形分全量に対して2質量%~30質量%で配合するのが好ましく、特に3質量%~25質量%の割合で配合するのが好ましい。上記下限値以上であれば、色材の分散性及び分散安定性に優れ、感光性着色樹脂組成物の保存安定性により優れている。また、上記上限値以下であれば、現像性が良好なものとなる。特に色材濃度が高い着色層を形成する場合には、分散剤の含有量は、感光性着色樹脂組成物の固形分全量に対して、2質量%~25質量%、より好ましくは3質量%~20質量%の割合で配合することが好ましい。
尚、本発明において固形分は、後述する溶剤以外のもの全てであり、溶剤中に溶解しているモノマー等も含まれる。
【0083】
<光開始剤>
本発明の感光性着色樹脂組成物における光開始剤は、ジフェニルスルフィド骨格を有するオキシムエステル系光開始剤を含有する。ジフェニルスルフィド骨格を有するオキシムエステル系光開始剤を含有することから、塗膜の硬化性が向上することによって、前記特定の分散剤との相乗効果により、感光性着色樹脂組成物の硬化物の耐溶剤性が良好になると考えられる。
【0084】
(ジフェニルスルフィド骨格を有するオキシムエステル系光開始剤)
本発明に用いられるジフェニルスルフィド骨格を有するオキシムエステル系光開始剤は、特に限定されないが、感度が向上する点から、下記一般式(a)で表されるオキシムエステル化合物が挙げられる。
【0085】
【化8】
(一般式(a)において、Xは、水素原子、炭素数1~12の直鎖状もしくは分岐状のアルキル基、炭素数3~20のシクロアルキル基、またはフェニル基を表し、前記アルキル基、シクロアルキル基、およびフェニル基はそれぞれ、ハロゲン原子、炭素数1~6のアルコキシ基、およびフェニル基からなる群から選ばれる置換基で置換されていてもよい。Xは、炭素数1~12の直鎖状もしくは分岐状のアルキル基、またはシクロアルキル基で置換された炭素数1~20のアルキル基を表す。Xは、それぞれ独立して、炭素数1~12の直鎖状もしくは分岐状のアルキル基、炭素数3~20のシクロアルキル基、アリール基、ヘテロアリール基、炭素数1~6のエステル基、炭素数1~6のアルコキシ基、ニトロ基、カルボキシ基、または-CO-Xを表し、前記アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、ヘテロアリール基、エステル基、およびアルコキシ基はそれぞれ、ハロゲン原子、水酸基、炭素数1~6のアルコキシ基、およびフェニル基からなる群から選ばれる置換基で置換されていてもよい。Xは炭素数1~12の直鎖状もしくは分岐状のアルキル基、炭素数3~20のシクロアルキル基、アリール基、ヘテロアリール基を表し、前記アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、ヘテロアリール基はそれぞれ、ハロゲン原子、水酸基、炭素数1~6のアルコキシ基、およびフェニル基からなる群から選ばれる置換基で置換されていてもよい。jは0~1の整数を表し、kは0~5の整数を表す。)
【0086】
、X、Xにおける前記炭素数1~12の直鎖状もしくは分岐状のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、n-プロピル基、i-プロピル基、n-ブチル基、i-ブチル基、sec-ブチル基、t-ブチル基、n-ペンチル基、n-ヘキシル基、n-ヘプチル基、n-オクチル基、n-ノニル基、n-デシル基、n-ウンデシル基、n-ドデシル基等が挙げられる。
、Xにおける前記炭素数3~20のシクロアルキル基としては、例えば、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基、シクロオクタデシル基等が挙げられる。
における前記シクロアルキル基としては、前記炭素数3~20のシクロアルキル基と同様であって良く、シクロペンチル基、シクロヘキシル基が好ましい。
における前記炭素数1~20のアルキル基としては、前記炭素数1~12の直鎖状もしくは分岐状のアルキル基に加えて、n-テトラデシル、n-ヘキサデシル、n-オクタデシル基等が挙げられる。
【0087】
における前記アリール基としては、炭素数6~12のアリール基が挙げられ、例えば、フェニル基、ナフチル基等が挙げられる。
における前記ヘテロアリール基としては、炭素数4~10のヘテロアリール基が挙げられ、例えば、フラニル基、チオフェニル基、ベンゾフラニル基、ベンゾチオフェニル基、インドール基等が挙げられる。
における前記炭素数1~6のエステル基(-COOR)としては、前記Rが、前記炭素数1~6のアルキル基である場合が挙げられる。
における前記炭素数1~6のアルコキシ基としては、例えば、メトキシ基、エトキシ基、n-プロポキシ基、i-プロポキシ基、n-ブトキシ基、t-ブトキシ基等が挙げられる。
【0088】
、Xにおける前記アルキル基、シクロアルキル基、およびフェニル基、並びに、アリール基、ヘテロアリール基に置換されていても良いハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子等が挙げられる。
、Xにおける前記アルキル基、シクロアルキル基、およびフェニル基、並びに、アリール基、ヘテロアリール基に置換されていても良い炭素数1~6のアルコキシ基としては、Xにおける前記炭素数1~6のアルコキシ基と同様であって良い。
【0089】
一般式(a)において、Xとしては、感度が向上する点から、炭素数1~12の直鎖状もしくは分岐状のアルキル基、炭素数3~20のシクロアルキル基、またはフェニル基が好ましく、炭素数1~10のアルキル基、またはフェニル基が好ましい。
一般式(a)において、Xとしては、溶剤溶解性や相溶性の点から、炭素数1~10のアルキル基、またはシクロアルキル基で置換された炭素数1~16のアルキル基が好ましく、炭素数1~8のアルキル基、または炭素数5~6のシクロアルキル基で置換された炭素数1~14のアルキル基がより好ましい。
【0090】
jは0~1の整数を表す。
kは0~5の整数を表す。溶剤溶解性や相溶性の点からは、kは1以上であって良く、現像性及び輝度の点からは、kは3以下、2以下、1以下が好ましい。現像性及び輝度の点からは、kは0、すなわち置換基を有しなくても良い。
【0091】
本発明においては、前記ジフェニルスルフィド骨格を有するオキシムエステル系光開始剤が、下記一般式(A)で表されるオキシムエステル化合物であることが、現像残渣の抑制効果の点から好ましい。
【0092】
【化9】
(一般式(A)において、Z、Z、Z及びZは、それぞれ独立して、水素原子、炭素数1~12の直鎖状もしくは分岐状のアルキル基、炭素数3~20のシクロアルキル基、またはフェニル基を表し、前記アルキル基、シクロアルキル基、およびフェニル基はそれぞれ、ハロゲン原子、炭素数1~6のアルコキシ基、およびフェニル基からなる群から選ばれる置換基で置換されていてもよい。Zはシクロアルキル基で置換された炭素数1~20のアルキル基を表す。)
【0093】
一般式(A)において、Z、Z、Z及びZにおける炭素数1~12の直鎖状もしくは分岐状のアルキル基、及び炭素数3~20のシクロアルキル基は、それぞれ、前記一般式(a)で説明したものと同様であって良い。
また、Z、Z、Z及びZにおいて、前記アルキル基、シクロアルキル基、およびフェニル基に置換されていても良いハロゲン原子、及び炭素数1~6のアルコキシ基としては、それぞれ、前記一般式(a)で説明したものと同様であって良い。
また、Zにおいて、シクロアルキル基で置換された炭素数1~20のアルキル基としては、前記一般式(a)で説明したものと同様であって良い。
【0094】
一般式(A)において、Zとしては、感度が向上する点から、炭素数1~6のアルキル基またはフェニル基が好ましく、メチル基、エチル基、またはフェニル基がより好ましく、メチル基がより更に好ましい。
また、一般式(A)において、Z、Z及びZとしては、水素原子、メチル基、エチル基、n-プロピル基、またはi-プロピル基が、輝度の点から好ましい。
【0095】
一般式(A)において、Zとしては、現像残渣抑制効果が良好な点から、炭素数5~6のシクロアルキル基で置換された炭素数1~14のアルキル基が好ましく、炭素数5~6のシクロアルキル基で置換された炭素数1~10のアルキル基が更に好ましく、シクロヘキシルメチル基、またはシクロペンチルメチル基がより更に好ましく、シクロヘキシルメチル基が特に好ましい。
【0096】
前記ジフェニルスルフィド骨格を有するオキシムエステル系光開始剤としては、例えば、下記化学式(A-1)で表されるオキシムエステル化合物、1,2-オクタジオン,1-[4-(フェニルチオ)フェニル]-,2-(o-ベンゾイルオキシム](例えば、イルガキュアOXE01、BASF社製)、1,2-プロパンジオン,3-シクロペンチル-1-[4-(フェニルチオ)フェニル]-,2-(o-ベンゾイルオキシム](例えば、TR-PBG-305、常州強力電子新材料社製)、1,2-プロパンジオン,3-シクロペンチル-1-[4-[(2-ヒドロキシエトキシ)フェニルチオ]フェニル]-,2-(o-アセチルオキシム]、1-ペンタノン,1-[4-[4-(2-ベンゾフラニルカルボニル)フェニルチオ]フェニル]-4-メチル,1-(o-アセチルオキシム)、市販品としてはTR-PBG-3057(常州強力電子新材料社製)、アデカアークルズNCI-930(ADEKA社製)、イルガキュアOXE04(BASF社製)等が挙げられる。
【0097】
【化10】
【0098】
現像残渣抑制効果が良好な点から、前記化学式(A-1)で表されるオキシムエステル化合物、及び、1,2-プロパンジオン,3-シクロペンチル-1-[4-(フェニルチオ)フェニル]-,2-(o-ベンゾイルオキシム]からなる群から選択される少なくとも1種が好ましく、耐溶剤性がより向上し易い点から、前記ジフェニルスルフィド骨格を有するオキシムエステル系光開始剤が、前記化学式(A-1)で表されるオキシムエステル化合物であることが好ましい。また、前記化学式(A-1)で表されるオキシムエステル化合物は、本発明で用いられる前記特定の分散剤のうち、ポリエチレンオキシド鎖、ポリプロピレンオキシド鎖又はエステル鎖が比較的短い分散剤との組み合わせにおいても相乗効果によって水染み抑制効果を向上しやすい点から好ましい。
【0099】
ジフェニルスルフィド骨格を有するオキシムエステル系光開始剤は、例えば、特表2012―526185号公報を参照し、ジフェニルスルフィド又はその誘導体を用い、使用する材料に応じて溶剤、反応温度、反応時間、精製方法等を適宜選択することにより、合成できる。また、市販品を適宜入手して用いても良い。
【0100】
(その他の光開始剤)
本発明の感光性着色樹脂組成物における光開始剤は、ジフェニルスルフィド骨格を有するオキシムエステル系光開始剤を含有するが、感度をより良好に調整する点から、更にジフェニルスルフィド骨格を有するオキシムエステル系光開始剤とは異なる光開始剤を含有してもよい。なお、本発明の感光性着色樹脂組成物に用いられるその他の光開始剤には、光重合開始剤の他に、所謂増感剤と呼称されるものが含まれる。
中でも、本発明の感光性着色樹脂組成物における光開始剤は、ジフェニルスルフィド骨格を有するオキシムエステル系光開始剤の他に、更に、α-アミノケトン系光開始剤、カルバゾール骨格を有するオキシムエステル系光開始剤、ビイミダゾール系光開始剤、チオキサントン系光開始剤、及びベンゾフェノン系光開始剤からなる群から選択される少なくとも1種を含有することが、着色層のパターニング時に、同時に着色層に所望の微小孔を形成する際に、微小孔の断面形状が良好になる点から好ましい。すなわち、着色層形成のため、より高感度な光開始剤を使用する場合、ラジカル発生後、未露光部までラジカルが移動してしまい、露光部分の内部にある未露光部の形状を保ちつつ、かつ未露光部周辺部を寸法精度の悪化なく形成することは困難である。α-アミノケトン系光開始剤、カルバゾール骨格を有するオキシムエステル系光開始剤、ビイミダゾール系光開始剤、チオキサントン系光開始剤、及びベンゾフェノン系光開始剤からなる群から選択される少なくとも1種は、塗膜の中間から深部を硬化させる性質を有し、塗膜表面のみの硬化を抑制し易い。
そのため、ジフェニルスルフィド骨格を有するオキシムエステル系光開始剤の他に、更に、α-アミノケトン系光開始剤、カルバゾール骨格を有するオキシムエステル系光開始剤、ビイミダゾール系光開始剤、チオキサントン系光開始剤、及びベンゾフェノン系光開始剤からなる群から選択される少なくとも1種を組み合わせて含有すると、良好な感度を維持しつつ、塗膜の表面から深部までバランス良く硬化させることが可能となって、微小孔の断面形状の制御が可能になり、微小孔の断面形状のテーパー角(θ)(図5参照)が90°未満となり良好になる。
また、ジフェニルスルフィド骨格を有するオキシムエステル系光開始剤の他に、更に、α-アミノケトン系光開始剤、カルバゾール骨格を有するオキシムエステル系光開始剤、ビイミダゾール系光開始剤、チオキサントン系光開始剤、及びベンゾフェノン系光開始剤からなる群から選択される少なくとも1種を組み合わせて含有すると、未露光部の感度を良好に制御できるようになり、現像残渣抑制効果が高くなる。
【0101】
α-アミノケトン系光開始剤としては、例えば、2-メチル-1-(4-メチルチオフェニル)-2-モルフォリノプロパン-1-オン(例えばイルガキュア907、BASF社製)、2-ベンジル-2-(ジメチルアミノ)-1-(4-モルフォリノフェニル)-1-ブタノン(例えばイルガキュア369、BASF社製)、2-(ジメチルアミノ)-2-[(4-メチルフェニル)メチル]-1-[4-(4-モルホリニル)フェニル]-1-ブタノン(イルガキュア379EG、BASF社製)等が挙げられる。
α-アミノケトン系光開始剤としては、単独で又は2種以上組み合わせて用いても良く、中でも、2-メチル-1-(4-メチルチオフェニル)-2-モルフォリノプロパン-1-オン、及び、2-ベンジル-2-(ジメチルアミノ)-1-(4-モルフォリノフェニル)-1-ブタノンが、微小孔の断面形状を良好にする点からより好ましい。
【0102】
カルバゾール骨格を有するオキシムエステル系光開始剤としては、例えば、エタノン,1-[9-エチル-6-(2-メチルベンゾイル)-9H-カルバゾール-3-イル]-,1-(O-アセチルオキシム)(例えば、イルガキュアOXE02、BASF社製)、メタノン,[8-[[(アセチルオキシ)イミノ][2-(2,2,3,3-テトラフルオロプロポキシ)フェニル]メチル]-11-(2-エチルヘキシル)-11H-ベンゾ[a]カルバゾール-5-イル]-,(2,4,6-トリメチルフェニル)(例えば、イルガキュアOXE-03、BASF製)、エタノン,1-[9-エチル-6-(1,3-ジオキソラン,4-(2-メトキシフェノキシ)-9H-カルバゾール-3-イル]-,1-(o-アセチルオキシム)、メタノン,(9-エチル-6-ニトロ-9H-カルバゾール-3-イル)[4-(2-メトキシ-1-メチルエトキシ-2-メチルフェニル]-,o-アセチルオキシム、1-プロパノン,3-シクロペンチル-1-[9-エチル-6-(2-メチルベンゾイル)-9H-カルバゾール-3-イル]-,1-(o-アセチルオキシム)例えば、TR-PBG-304、常州強力電子新材料社製)、1-プロパノン,3-シクロペンチル-1-[2-(2-ピリミジニルチオ)-9H-カルバゾール-3-イル]-,1-(o-アセチルオキシム)、エタノン,2-シクロヘキシル-1-[2-(2-ピリミジニルオキシ)-9H-カルバゾール-3-イル]-,1-(o-アセチルオキシム)、エタノン,2-シクロヘキシル-1-[2-(2-ピリミジニルチオ)-9H-カルバゾール-3-イル]-,1-(o-アセチルオキシム)、1-オクタノン,1-[4-[3-[1-[(アセチルオキシ)イミノ]エチル]-6-[4-[(4,6-ジメチル-2-ピリミジニル)チオ]-2-メチルベンゾイル]-9H-カルバゾール-9-イル]フェニル]-,1-(o-アセチルオキシム)(例えば、EXTA-9、ユニオンケミカル製)、市販品としてはADEKA OPT-N-1919(ADEKA社製)、アデカアークルズNCI-831(ADEKA社製)等が挙げられる。
カルバゾール骨格を有するオキシムエステル系光開始剤としては、単独で又は2種以上組み合わせて用いても良く、中でも、1-プロパノン,3-シクロペンチル-1-[9-エチル-6-(2-メチルベンゾイル)-9H-カルバゾール-3-イル]-,1-(o-アセチルオキシム)(例えば、TR-PBG-304、常州強力電子新材料社製)、エタノン,1-[9-エチル-6-(2-メチルベンゾイル)-9H-カルバゾール-3-イル]-,1-(O-アセチルオキシム)(例えば、イルガキュアOXE02、BASF社製)、または、メタノン,(9-エチル-6-ニトロ-9H-カルバゾール-3-イル)[4-(2-メトキシ-1-メチルエトキシ-2-メチルフェニル]-,o-アセチルオキシムを用いることが、感度が高い点から好ましい。
【0103】
ビイミダゾール系光開始剤としては、例えば、2,2’-ビス(2-クロロフェニル)-4,4’,5,5’-テトラキス(4-エトキシカルボニルフェニル)-1,2’-ビイミダゾール、2,2’-ビス(2-ブロモフェニル)-4,4’,5,5’-テトラキス(4-エトキシカルボニルフェニル)-1,2’-ビイミダゾール、2,2’-ビス(2-クロロフェニル)-4,4’,5,5’-テトラフェニル-1,2’-ビイミダゾール、2,2’-ビス(2,4-ジクロロフェニル)-4,4’,5,5’-テトラフェニル-1,2’-ビイミダゾール、2,2’-ビス(2,4,6-トリクロロフェニル)-4,4’,5,5’-テトラフェニル-1,2’-ビイミダゾール、2,2’-ビス(2-ブロモフェニル)-4,4’,5,5’-テトラフェニル-1,2’-ビイミダゾール、2,2’-ビス(2,4-ジブロモフェニル)-4,4’,5,5’-テトラフェニル-1,2’-ビイミダゾール、2,2’-ビス(2,4,6-トリブロモフェニル)-4,4’,5,5’-テトラフェニル-1,2’-ビイミダゾール等を挙げることができる。
ビイミダゾール系光開始剤としては、単独で又は2種以上組み合わせて用いても良く、中でも、 2,2’-ビス(2-クロロフェニル)-4,4’,5,5’-テトラフェニル-1,2’-ビイミダゾールを用いることが微小孔の断面形状を良好にする点から好ましい。
【0104】
チオキサントン系光開始剤としては、例えば、2,4-イソプロピルチオキサントン、2,4-ジエチルチオキサントン、1-クロロ-4-プロポキシチオキサントン、2,4-ジクロロチオキサントン等が挙げられる。
チオキサントン系光開始剤としては、単独で又は2種以上組み合わせて用いても良く、中でも、2,4-イソプロピルチオキサントン、2,4-ジエチルチオキサントンを用いることが、ラジカル発生の転移が向上する点から好ましい。
【0105】
ベンゾフェノン系光開始剤としては、ベンゾフェノン、ベンゾイル安息香酸、ベンゾイル安息香酸メチル、4-フェニルベンゾフェノン、ヒドロキシベンゾフェノン、4-ベンゾイル-4’-メチルジフェニルサルファイド、3,3’-ジメチル-4-メトキシベンゾフェノン、4,4’-ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン等が挙げられる。
ベンゾフェノン系光開始剤としては、単独で又は2種以上組み合わせて用いても良く、中でも、4,4’-ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノンを用いることが、微小孔の断面形状を良好にする点から好ましい。
【0106】
本発明の感光性着色樹脂組成物において用いられる光開始剤の合計含有量は、本発明の効果が損なわれない限り特に制限はないが、感光性着色樹脂組成物の固形分全量に対して、好ましくは0.1質量%以上12.0質量%以下、さらに好ましくは1.0質量%以上8.0質量%以下の範囲内である。この含有量が上記下限値以上であると十分に光硬化が進み、露光部分が現像時に溶出することを抑制し、一方上記上限値以下であると、得られる着色層の黄変による輝度の低下を抑制できる。
なお、固形分とは、溶剤以外のもの全てであり、液状の多官能モノマー等も含まれる。
【0107】
前記光開始剤が、前記ジフェニルスルフィド骨格を有するオキシムエステル系光開始剤と、前記その他の光開始剤とを含有する場合、光開始剤の全量に対して、前記ジフェニルスルフィド骨格を有するオキシムエステル系光開始剤の含有量は、耐溶剤性の向上、感度の点から、10質量%以上98質量%以下であることが好ましく、20質量%以上95質量%以下であることがより好ましく、30質量%以上95質量%以下であることがより更に好ましく、耐溶剤性の向上、現像残渣抑制効果の向上、及び微小孔の断面形状の向上の点から、50質量%以上90質量%以下であることが特に好ましい。
【0108】
<色材>
本発明において、色材は、カラーフィルタの着色層を形成した際に所望の発色が可能なものであればよく、特に限定されず、種々の有機顔料、無機顔料、分散可能な染料、染料の造塩化合物等を、単独で又は2種以上混合して用いることができる。中でも有機顔料は、発色性が高く、耐熱性も高いので、好ましく用いられる。有機顔料としては、例えばカラーインデックス(C.I.;The Society of Dyers and Colourists 社発行)においてピグメント(Pigment)に分類されている化合物、具体的には、下記のようなカラーインデックス(C.I.)番号が付されているものを挙げることができる。
【0109】
C.I.ピグメントイエロー1、3、12、13、14、15、16、17、20、24、31、55、60、61、65、71、73、74、81、83、93、95、97、98、100、101、104、106、108、109、110、113、114、116、117、119、120、126、127、128、129、138、139、150、151、152、153、154、155、156、166、168、175、185、及びC.I.ピグメントイエロー150の誘導体顔料;
C.I.ピグメントオレンジ1、5、13、14、16、17、24、34、36、38、40、43、46、49、51、61、63、64、71、73;
C.I.ピグメントバイオレット1、19、23、29、32、36、38;
C.I.ピグメントレッド1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、14、15、16、17、18、19、21、22、23、30、31、32、37、38、40、41、42、48:1、48:2、48:3、48:4、49:1、49:2、50:1、52:1、53:1、57、57:1、57:2、58:2、58:4、60:1、63:1、63:2、64:1、81:1、83、88、90:1、97、101、102、104、105、106、108、112、113、114、122、123、144、146、149、150、151、166、168、170、171、172、174、175、176、177、178、179、180、185、187、188、190、193、194、202、206、207、208、209、215、216、220、224、226、242、243、245、254、255、264、265、269、272、291;
C.I.ピグメントブルー15、15:3、15:4、15:6、60;
C.I.ピグメントグリーン7、36、58、59、62、63;
C.I.ピグメントブラウン23、25;
C.I.ピグメントブラック1、7。
【0110】
また、前記無機顔料の具体例としては、酸化チタン、硫酸バリウム、炭酸カルシウム、亜鉛華、硫酸鉛、黄色鉛、亜鉛黄、べんがら(赤色酸化鉄(III))、カドミウム赤、群青、紺青、酸化クロム緑、コバルト緑、アンバー、チタンブラック、合成鉄黒、カーボンブラック等を挙げることができる。
【0111】
例えば、カラーフィルタの基板上に、本発明に係る色材分散液を後述する感光性着色樹脂組成物として遮光層のパターンを形成する場合には、インク中に遮光性の高い黒色顔料を配合する。遮光性の高い黒色顔料としては、例えば、カーボンブラックや四三酸化鉄などの無機顔料、或いは、シアニンブラックなどの有機顔料を使用できる。
【0112】
上記分散可能な染料としては、染料に各種置換基を付与したり、溶解度の低い溶剤と組み合わせて用いることにより分散可能となった染料が挙げられる。
染料の造塩化合物としては、染料がカウンターイオンと塩を形成した化合物をいい、例えば、塩基性染料と酸との造塩化合物、酸性染料と塩基との造塩化合物が挙げられ、溶剤に可溶性の染料を公知のレーキ化(造塩化)手法を用いて、溶剤に不溶化したレーキ顔料も包含する。
本発明においては、染料及び染料の造塩化合物から選ばれる少なくとも一種を含む色材と、前記本発明の分散剤とを組み合わせて用いることにより当該色材の分散性や分散安定性を向上することができる。
【0113】
前記染料としては、従来公知の染料の中から適宜選択することができる。このような染料としては、例えば、アゾ染料、金属錯塩アゾ染料、アントラキノン染料、トリフェニルメタン染料、キサンテン染料、シアニン染料、ナフトキノン染料、キノンイミン染料、メチン染料、フタロシアニン染料などを挙げることができる。
なお、目安として、10gの溶剤(又は混合溶剤)に対して染料の溶解量が10mg以下であれば、当該溶剤(又は混合溶剤)において、当該染料が分散可能であると判定することができる。
【0114】
中でも、色材が、ジケトピロロピロール顔料、キノフタロン顔料、銅フタロシアニン顔料、亜鉛フタロシアニン顔料、キノフタロン染料、クマリン染料、シアニン染料、及びこれらの染料の造塩化合物よりなる群から選ばれる少なくとも1種を含有する場合、前記分散剤を用いることによる色材の昇華乃至析出を抑制する効果が高く、高輝度な着色層を形成可能である点から好ましい。また、前記色材としては、中でも、ジケトピロロピロール顔料、キノフタロン顔料、銅フタロシアニン顔料、亜鉛フタロシアニン顔料、キノフタロン染料よりなる群から選ばれる少なくとも1種を含有することが好ましい。
【0115】
ジケトピロロピロール顔料としては、例えば、C.I.ピグメントレッド254、255、264、272、291、及び下記一般式(i)で表されるジケトピロロピロール顔料が挙げられ、中でもC.I.ピグメントレッド254、272、291、及び下記一般式(i)においてR21及びR22がそれぞれ4-ブロモフェニル基であるジケトピロロピロール顔料から選ばれる少なくとも1種が好ましい。
【0116】
【化11】
(一般式(i)中、R21及びR22は、それぞれ独立に、4-クロロフェニル基、又は4-ブロモフェニル基である。)
【0117】
キノフタロン顔料としては、例えば、C.I.ピグメントイエロー138等が挙げられる。
銅フタロシアニン顔料としては、例えば、C.I.ピグメントブルー15、15:1、15:2、15:3、15:4、15:5、15:6、C.I.ピグメントグリーン7、36等が挙げられ、中でも、C.I.ピグメントブルー15:6が好ましい。
亜鉛フタロシアニン顔料としては、例えば、C.I.ピグメントグリーン58、59等が挙げられる。
キノフタロン染料としては、例えば、C.I.ディスパースイエロー54、64、67、134、149、160、C.I.ソルベントイエロー114、157等が挙げられ、中でも、C.I.ディスパースイエロー54が好ましい。
【0118】
本発明に用いられる色材の平均一次粒径としては、カラーフィルタの着色層とした場合に、所望の発色が可能なものであればよく、特に限定されず、用いる色材の種類によっても異なるが、10~100nmの範囲内であることが好ましく、15~60nmであることがより好ましい。色材の平均一次粒径が上記範囲であることにより、本発明に係る感光性着色樹脂組成物を用いて製造されたカラーフィルタを備えた表示装置を高コントラストで、かつ高品質なものとすることができる。
【0119】
また、感光性着色樹脂組成物中の色材の平均分散粒径は、用いる色材の種類によっても異なるが、10~100nmの範囲内であることが好ましく、15~60nmの範囲内であることがより好ましい。
感光性着色樹脂組成物中の色材の平均分散粒径は、少なくとも溶剤を含有する分散媒体中に分散している色材粒子の分散粒径であって、レーザー光散乱粒度分布計により測定されるものである。レーザー光散乱粒度分布計による粒径の測定としては、感光性着色樹脂組成物に用いられている溶剤で、感光性着色樹脂組成物をレーザー光散乱粒度分布計で測定可能な濃度に適宜希釈(例えば、1000倍など)し、レーザー光散乱粒度分布計(例えば、日機装社製ナノトラック粒度分布測定装置UPA-EX150)を用いて動的光散乱法により23℃にて測定することができる。ここでの平均分布粒径は、体積平均粒径である。
【0120】
本発明に用いられる、色材は、再結晶法、ソルベントソルトミリング法等の公知の方法にて製造することができる。また、市販の色材を微細化処理して用いても良い。
【0121】
本発明に係る感光性着色樹脂組成物において、色材の含有量は、特に限定されない。色材の含有量は、分散性及び分散安定性の点から、感光性着色樹脂組成物の固形分全量に対して、3質量%~65質量%、より好ましくは4質量%~60質量%の割合で配合することが好ましい。上記下限値以上であれば、感光性着色樹脂組成物を所定の膜厚(通常は1.0μm~5.0μm)に塗布した際の着色層が充分な色濃度を有する。また、上記上限値以下であれば、保存安定性に優れると共に、充分な硬度や、基板との密着性を有する着色層を得ることができる。特に色材濃度が高い着色層を形成する場合には、色材の合計含有量は、感光性着色樹脂組成物の固形分全量に対して、15質量%~65質量%、より好ましくは25質量%~60質量%の割合で配合することが好ましい。
【0122】
<アルカリ可溶性樹脂>
本発明におけるアルカリ可溶性樹脂は酸性基を有するものであり、バインダー樹脂として作用し、かつパターン形成する際に用いられるアルカリ現像液に可溶性であるものの中から、適宜選択して使用することができる。
本発明において、アルカリ可溶性樹脂とは、酸価が40mgKOH/g以上であることを目安にすることができる。
本発明における好ましいアルカリ可溶性樹脂は、酸性基、通常カルボキシ基を有する樹脂であり、具体的には、カルボキシ基を有するアクリル系共重合体及びカルボキシ基を有するスチレン-アクリル系共重合体等のアクリル系樹脂、カルボキシ基を有するエポキシ(メタ)アクリレート樹脂等が挙げられる。これらの中で特に好ましいものは、側鎖にカルボキシ基を有するとともに、さらに側鎖にエチレン性不飽和基等の光重合性官能基を有するものである。光重合性官能基を含有することにより形成される硬化膜の膜強度が向上するからである。また、これらアクリル系共重合体及びスチレン-アクリル系共重合体等のアクリル系樹脂、並びにエポキシアクリレート樹脂は、2種以上混合して使用してもよい。
【0123】
カルボキシ基を有する構成単位を有するアクリル系共重合体、及びカルボキシ基を有するスチレン-アクリル系共重合体等のアクリル系樹脂は、例えば、カルボキシ基含有エチレン性不飽和モノマー、及び必要に応じて共重合可能なその他のモノマーを、公知の方法により(共)重合して得られた(共)重合体である。
カルボキシ基含有エチレン性不飽和モノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸、ビニル安息香酸、マレイン酸、マレイン酸モノアルキルエステル、フマル酸、イタコン酸、クロトン酸、桂皮酸、アクリル酸ダイマーなどが挙げられる。また、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートなどの水酸基を有する単量体と無水マレイン酸や無水フタル酸、シクロヘキサンジカルボン酸無水物のような環状無水物との付加反応物、ω-カルボキシ-ポリカプロラクトンモノ(メタ)アクリレートなども利用できる。また、カルボキシ基の前駆体として無水マレイン酸、無水イタコン酸、無水シトラコン酸などの無水物含有モノマーを用いてもよい。中でも、共重合性やコスト、溶解性、ガラス転移温度などの点から(メタ)アクリル酸が特に好ましい。
【0124】
アルカリ可溶性樹脂は、着色層の密着性が優れる点から、更に炭化水素環を有することが好ましい。アルカリ可溶性樹脂に、嵩高い基である炭化水素環を有することにより、得られた着色層の耐溶剤性、特に着色層の膨潤が抑制されるとの知見を得た。作用については未解明であるが、着色層内に嵩高い炭化水素環が含まれることにより、着色層内における分子の動きが抑制される結果、塗膜の強度が高くなり溶剤による膨潤が抑制されるものと推定される。
このような炭化水素環としては、置換基を有していてもよい環状の脂肪族炭化水素環、置換基を有していてもよい芳香族環、及びこれらの組み合わせが挙げられ、炭化水素環がカルボニル基、カルボキシ基、オキシカルボニル基、アミド基等の置換基を有していてもよい。中でも、脂肪族環を含む場合には、着色層の耐熱性や密着性が向上すると共に、得られた着色層の輝度が向上する。
炭化水素環の具体例としては、シクロプロパン、シクロブタン、シクロペンタン、シクロヘキサン、ノルボルナン、トリシクロ[5.2.1.0(2,6)]デカン(ジシクロペンタン)、アダマンタン等の脂肪族炭化水素環;ベンゼン、ナフタレン、アントラセン、フェナントレン、フルオレン等の芳香族環;ビフェニル、ターフェニル、ジフェニルメタン、トリフェニルメタン、スチルベン等の鎖状多環や、下記化学式(ii)に示されるカルド構造等が挙げられる。
【0125】
【化12】
【0126】
また、アルカリ可溶性樹脂は、下記一般式(iii)で表されるマレイミド構造を有するのも好ましい。
【0127】
【化13】
(一般式(iii)において、Rは、置換されていてもよい炭化水素環である。)
【0128】
アルカリ可溶性樹脂が、前記一般式(iii)で表されるマレイミド構造を有する場合、炭化水素環に窒素原子を有するため、本発明の分散剤との相溶性が非常によく、現像残渣抑制効果が向上する。
前記一般式(iii)のRにおける、置換されていてもよい炭化水素環の具体例としては、前記炭化水素環の具体例と同様のものが挙げられる。
【0129】
炭化水素環として、脂肪族環を含む場合には、着色層の耐熱性や密着性が向上すると共に、得られた着色層の輝度が向上する点から好ましい。
また、前記化学式(ii)に示されるカルド構造を含む場合には、着色層の硬化性が向上し、耐溶剤性(NMP膨潤抑制)が向上する点から特に好ましい。
【0130】
本発明で用いられるアルカリ可溶性樹脂において、カルボキシ基を有する構成単位とは別に、上記炭化水素環を有する構成単位を有するアクリル系共重合体を用いることが、各構成単位量を調整しやすく、上記炭化水素環を有する構成単位量を増加して当該構成単位が有する機能を向上させやすい点から好ましい。
カルボキシ基を有する構成単位と、上記炭化水素環とを有するアクリル系共重合体は、前述の“共重合可能なその他のモノマー”として炭化水素環を有するエチレン性不飽和モノマーを用いることにより調製することができる。
前記炭化水素環を有するエチレン性不飽和モノマーとしては、例えば、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、アダマンチル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、スチレンなどが挙げられ、現像後の着色層の断面形状が加熱処理においても維持される効果が大きい点から、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、アダマンチル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、スチレンが好ましい。
【0131】
本発明で用いられるアルカリ可溶性樹脂はまた、側鎖にエチレン性二重結合を有することが好ましい。エチレン性二重結合を有する場合には、カラーフィルタ製造時における樹脂組成物の硬化工程において、当該アルカリ可溶性樹脂と、上述した本発明の分散剤とが架橋結合を形成することができ、また、当該アルカリ可溶性樹脂同士、乃至、当該アルカリ可溶性樹脂と光重合性化合物等が架橋結合を形成し得る。そのため、側鎖にエチレン性二重結合を有するアルカリ可溶性樹脂と、本発明の分散剤とを組み合わせて用いると、相乗効果により硬化膜の膜強度がより向上するため、着色層の輝度及びITO膜のクラック耐性をより向上することができ、さらに、現像耐性が向上し、また、硬化膜の熱収縮が抑制されて基板との密着性に優れるようになる。
アルカリ可溶性樹脂中に、エチレン性二重結合を導入する方法は、従来公知の方法から適宜選択すればよい。例えば、アルカリ可溶性樹脂が有するカルボキシ基に、分子内にエポキシ基とエチレン性二重結合とを併せ持つ化合物、例えばグリシジル(メタ)アクリレート等を付加させ、側鎖にエチレン性二重結合を導入する方法や、水酸基を有する構成単位を共重合体に導入しておいて、分子内にイソシアネート基とエチレン性二重結合とを備えた化合物を付加させ、側鎖にエチレン性二重結合を導入する方法などが挙げられる。
【0132】
本発明で用いられるアルカリ可溶性樹脂は、更にメチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート等、エステル基を有する構成単位等の他の構成単位を含有していてもよい。エステル基を有する構成単位は、感光性着色樹脂組成物のアルカリ可溶性を抑制する成分として機能するだけでなく、溶剤に対する溶解性、さらには溶剤再溶解性を向上させる成分としても機能する。
【0133】
本発明で用いられるアルカリ可溶性樹脂は、カルボキシ基を有する構成単位と、炭化水素環を有する構成単位とを有するアクリル系共重合体及びスチレン-アクリル系共重合体等のアクリル系樹脂であることが好ましく、カルボキシ基を有する構成単位と、炭化水素環を有する構成単位と、エチレン性二重結合を有する構成単位とを有するアクリル系共重合体及びスチレン-アクリル系共重合体等のアクリル系樹脂であることがより好ましい。
【0134】
アルカリ可溶性樹脂は、各構成単位の仕込み量を適宜調整することにより、所望の性能を有するアルカリ可溶性樹脂とすることができる。
【0135】
カルボキシ基含有エチレン性不飽和モノマーの仕込み量は、良好なパターンが得られる点から、モノマー全量に対して5質量%以上であることが好ましく、10質量%以上であることがより好ましい。一方、現像後のパターン表面の膜荒れ等を抑制する点から、カルボキシ基含有エチレン性不飽和モノマーの仕込み量は、モノマー全量に対して50質量%以下であることが好ましく、40質量%以下であることがより好ましい。
カルボキシ基含有エチレン性不飽和モノマーの割合が上記下限値以上であると得られる塗膜のアルカリ現像液に対する溶解性が十分であり、また、カルボキシ基含有エチレン性不飽和モノマーの割合が上記上限値以下であると、アルカリ現像液による現像時に、形成されたパターンの基板からの脱落やパターン表面の膜荒れが起こり難い傾向がある。
【0136】
また、アルカリ可溶性樹脂としてより好ましく用いられる、エチレン性二重結合を有する構成単位とを有するアクリル系共重合体及びスチレン-アクリル系共重合体等のアクリル系樹脂において、エポキシ基とエチレン性二重結合とを併せ持つ化合物はカルボキシ基含有エチレン性不飽和モノマーの仕込み量に対して、10質量%~95質量%であることが好ましく、15質量%~90質量%であることがより好ましい。
【0137】
カルボキシ基含有共重合体の好ましい重量平均分子量(Mw)は、好ましくは1,000~50,000の範囲であり、さらに好ましくは3,000~20,000である。1,000未満では硬化後のバインダー機能が著しく低下する場合があり、50,000を超えるとアルカリ現像液による現像時に、パターン形成が困難となる場合がある。
なお、カルボキシ基含有共重合体の上記重量平均分子量(Mw)は、ポリスチレンを標準物質とし、THFを溶離液としてショウデックスGPCシステム-21H(Shodex GPC System-21H)により測定することができる。
【0138】
カルボキシ基を有するエポキシ(メタ)アクリレート樹脂としては、特に限定されるものではないが、エポキシ化合物と不飽和基含有モノカルボン酸との反応物を酸無水物と反応させて得られるエポキシ(メタ)アクリレート化合物が適している。
エポキシ化合物、不飽和基含有モノカルボン酸、及び酸無水物は、公知のものの中から適宜選択して用いることができる。カルボキシ基を有するエポキシ(メタ)アクリレート樹脂は、それぞれ1種単独で使用してもよいし、二種以上を併用してもよい。
【0139】
アルカリ可溶性樹脂は、現像液に用いるアルカリ水溶液に対する現像性(溶解性)の点から、酸価が50mgKOH/g以上のものを選択して用いることが好ましい。アルカリ可溶性樹脂は、現像液に用いるアルカリ水溶液に対する現像性(溶解性)の点、及び基板への密着性の点から、酸価が60mgKOH/g以上300mgKOH/g以下であることが好ましく、中でも、70mgKOH/g以上200mgKOH/g以下であることが好ましい。
なお、アルカリ可溶性樹脂の酸価はJIS K 0070:1992に従って測定することができる。
【0140】
アルカリ可溶性樹脂の側鎖にエチレン性不飽和基を有する場合のエチレン性不飽和結合当量は、硬化膜の膜強度が向上して現像耐性が向上し、基板との密着性に優れるといった効果を得る点から、100~2000の範囲であることが好ましく、特に、140~1500の範囲であることが好ましい。該エチレン性不飽和結合当量が、100以上であれば現像耐性や密着性に優れている。また、2000以下であれば、前記カルボキシ基を有する構成単位や、炭化水素環を有する構成単位などの他の構成単位の割合を相対的に増やすことができるため、現像性や耐熱性に優れている。
ここで、エチレン性不飽和結合当量とは、上記アルカリ可溶性樹脂におけるエチレン性不飽和結合1モル当りの重量平均分子量のことであり、下記数式(2)で表される。
【0141】
数式(2) エチレン性不飽和結合当量(g/mol)=W(g)/M(mol)
(数式(2)中、Wは、アルカリ可溶性樹脂の質量(g)を表し、Mはアルカリ可溶性樹脂W(g)中に含まれるエチレン性二重結合のモル数(mol)を表す。)
【0142】
上記エチレン性不飽和結合当量は、例えば、JIS K 0070:1992に記載のよう素価の試験方法に準拠して、アルカリ可溶性樹脂1gあたりに含まれるエチレン性二重結合の数を測定することにより算出してもよい。
【0143】
感光性着色樹脂組成物において用いられるアルカリ可溶性樹脂は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよく、その含有量としては特に制限はないが、感光性着色樹脂組成物の固形分全量に対してアルカリ可溶性樹脂は好ましくは5質量%~60質量%、さらに好ましくは10質量%~40質量%の範囲内である。アルカリ可溶性樹脂の含有量が上記下限値以上であると、充分なアルカリ現像性が得られ、また、アルカリ可溶性樹脂の含有量が上記上限値以下であると、現像時に膜荒れやパターンの欠けを抑制できる。
【0144】
<光重合性化合物>
感光性着色樹脂組成物において用いられる光重合性化合物は、前記光開始剤によって重合可能なものであればよく、特に限定されず、通常、エチレン性不飽和二重結合を2つ以上有する化合物が好適に用いられ、特にアクリロイル基又はメタクリロイル基を2つ以上有する、多官能(メタ)アクリレートであることが好ましい。
このような多官能(メタ)アクリレートとしては、従来公知のものの中から適宜選択して用いればよい。具体例としては、例えば、特開2013-029832号公報に記載のもの等が挙げられる。
【0145】
これらの多官能(メタ)アクリレートは1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。また、本発明の感光性着色樹脂組成物に優れた光硬化性(高感度)が要求される場合には、多官能(メタ)アクリレートが、重合可能な二重結合を3つ(三官能)以上有するものであるものが好ましく、3価以上の多価アルコールのポリ(メタ)アクリレート類やそれらのジカルボン酸変性物が好ましく、具体的には、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレートのコハク酸変性物、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレートのコハク酸変性物、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート等が好ましい。
【0146】
感光性着色樹脂組成物において用いられる上記光重合性化合物の含有量は、特に制限はないが、感光性着色樹脂組成物の固形分全量に対して光重合性化合物は好ましくは5質量%~60質量%、さらに好ましくは10質量%~40質量%の範囲内である。光重合性化合物の含有量が上記下限値以上であると十分に光硬化が進み、露光部分が現像時の溶出を抑制でき、また、光重合性化合物の含有量が上記上限値以下であるとアルカリ現像性が十分である。
感光性着色樹脂組成物において用いられる上記光重合性化合物の含有量と前記光開始剤との含有割合は、優れた硬化性、残膜率の点、更には、電気信頼性が向上する点から、上記光重合性化合物100質量部に対して、前記光開始剤の合計含有割合が5質量部以上であることが好ましく、更に10質量部以上であることが好ましく、40質量部以下であることが好ましく、更に30質量部以下であることが好ましい。
【0147】
<溶剤>
本発明に用いられる溶剤としては、感光性着色樹脂組成物中の各成分とは反応せず、これらを溶解もしくは分散可能な有機溶剤であればよく、特に限定されない。溶剤は単独もしくは2種以上組み合わせて使用することができる。
溶剤の具体例としては、例えば、メチルアルコール、エチルアルコール、N-プロピルアルコール、i-プロピルアルコール、メトキシアルコール、エトキシアルコールなどのアルコール系溶剤;メトキシエトキシエタノール、エトキシエトキシエタノールなどのカルビトール系溶剤;酢酸エチル、酢酸ブチル、メトキシプロピオン酸メチル、メトキシプロピオン酸エチル、エトキシプロピオン酸エチル、乳酸エチル、ヒドロキシプロピオン酸メチル、ヒドロキシプロピオン酸エチル、n-ブチルアセテート、イソブチルアセテート、酪酸イソブチル、酪酸n-ブチル、乳酸エチル、シクロヘキサノールアセテートなどのエステル系溶剤;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、2-ヘプタノンなどのケトン系溶剤;メトキシエチルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、3-メトキシ-3-メチル-1-ブチルアセテート、3-メトキシブチルアセテート、エトキシエチルアセテートなどのグリコールエーテルアセテート系溶剤;メトキシエトキシエチルアセテート、エトキシエトキシエチルアセテート、ブチルカルビトールアセテート(BCA)などのカルビトールアセテート系溶剤;プロピレングリコールジアセテート、1,3-ブチレングリコールジアセテート等のジアセテート類;エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールジメチルエーテルなどのグリコールエーテル系溶剤;N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、N-メチルピロリドンなどの非プロトン性アミド溶剤;γ-ブチロラクトンなどのラクトン系溶剤;テトラヒドロフランなどの環状エーテル系溶剤;ベンゼン、トルエン、キシレン、ナフタレンなどの不飽和炭化水素系溶剤;N-ヘプタン、N-ヘキサン、N-オクタンなどの飽和炭化水素系溶剤;トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類などの有機溶剤が挙げられる。これらの溶剤の中ではグリコールエーテルアセテート系溶剤、カルビトールアセテート系溶剤、グリコールエーテル系溶剤、エステル系溶剤が他の成分の溶解性の点で好適に用いられる。中でも、本発明に用いる溶剤としては、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテル、ブチルカルビトールアセテート(BCA)、3-メトキシ-3-メチル-1-ブチルアセテート、エトキシプロピオン酸エチル、乳酸エチル、及び、3-メトキシブチルアセテートよりなる群から選択される1種以上であることが、他の成分の溶解性や塗布適性の点から好ましい。
【0148】
本発明に係る感光性着色樹脂組成物において、溶剤の含有量は、着色層を精度良く形成することができる範囲で適宜設定すればよい。該溶剤を含む感光性着色樹脂組成物の全量に対して、通常、55質量%~95質量%の範囲内であることが好ましく、中でも、65質量%~88質量%の範囲内であることがより好ましい。上記溶剤の含有量が、上記範囲内であることにより、塗布性に優れたものとすることができる。
【0149】
<その他の成分>
本発明の感光性着色樹脂組成物には、必要に応じて各種添加剤を含むものであってもよい。添加剤としては、例えば、酸化防止剤、重合停止剤、連鎖移動剤、レベリング剤、可塑剤、界面活性剤、消泡剤、シランカップリング剤、紫外線吸収剤、密着促進剤等などが挙げられる。
界面活性剤及び可塑剤の具体例としては、例えば、特開2013-029832号公報に記載のものが挙げられる。
【0150】
またシランカップリング剤としては、例えばKBM-502、KBM-503、KBE-502、KBE-503、KBM-5103、KBM-903、KBE-903、KBM573、KBM-403、KBE-402、KBE-403、KBM-303、KBM-802、KBM-803、KBE-9007、X-12-967C(信越シリコーン社製)などが挙げられる。中でもSiN基板の密着性の点からメタクリル基、アクリル基を有するKBM-502、KBM-503、KBE-502、KBE-503、KBM-5103が好ましい。
【0151】
シランカップリング剤の含有量としては、感光性着色樹脂組成物中の全固形分100質量部に対して、シランカップリング剤が0.05質量部以上10.0質量部以下であることが好ましく、0.1質量部以上5.0質量部以下であることがより好ましい。上記下限値以上、上記上限値以下であれば、基板密着性に優れている。
【0152】
<感光性着色樹脂組成物の製造方法>
本発明の感光性着色樹脂組成物の製造方法は、色材と、分散剤と、アルカリ可溶性樹脂と、光重合性化合物と、光開始剤と、溶剤と、所望により用いられる各種添加成分とを含有し、色材が分散剤により溶剤中に均一に分散されうる方法であることがコントラストを向上する点から好ましく、公知の混合手段を用いて混合することにより、調製することができる。
当該樹脂組成物の調製方法としては、例えば、(1)まず溶剤中に、色材と、分散剤とを添加して色材分散液を調製し、当該分散液に、アルカリ可溶性樹脂と、光重合性化合物と、光開始剤と、所望により用いられる各種添加成分を混合する方法;(2)溶剤中に、色材と、分散剤と、アルカリ可溶性樹脂と、光重合性化合物と、光開始剤と、所望により用いられる各種添加成分とを同時に投入し混合する方法;(3)溶剤中に、分散剤と、アルカリ可溶性樹脂と、光重合性化合物と、光開始剤と、所望により用いられる各種添加成分とを添加し、混合したのち、色材を加えて分散する方法;(4)溶剤中に、色材と、分散剤と、アルカリ可溶性樹脂とを添加して色材分散液を調製し、当該分散液に、更にアルカリ可溶性樹脂と、溶剤と、光重合性化合物と、光開始剤と、所望により用いられる各種添加成分を添加し、混合する方法;などを挙げることができる。
これらの方法の中で、上記(1)及び(4)の方法が、色材の凝集を効果的に防ぎ、均一に分散させ得る点から好ましい。
【0153】
色材分散液を調製する方法は、従来公知の分散方法の中から適宜選択して用いることができる。例えば、(1)予め、分散剤を溶剤に混合、撹拌し、分散剤溶液を調製し、次いで必要に応じて有機酸化合物を混合して分散剤が有するアミノ基と有機酸化合物との塩形成させる。これを色材と必要に応じてその他の成分を混合し、公知の攪拌機または分散機を用いて分散させる方法;(2)分散剤を溶剤に混合、撹拌し、分散剤溶液を調製し、次いで、色材及び必要に応じて有機酸化合物と、更に必要に応じてその他の成分を混合し、公知の攪拌機または分散機を用いて分散させる方法;(3)分散剤を溶剤に混合、攪拌し、分散剤溶液を調整し、次いで、色材及び必要に応じてその他の成分を混合し、公知の攪拌機または分散機を用いて分散液としたのちに、必要に応じて有機酸化合物を添加する方法などが挙げられる。
【0154】
分散処理を行うための分散機としては、2本ロール、3本ロール等のロールミル、ボールミル、振動ボールミル等のボールミル、ペイントコンディショナー、連続ディスク型ビーズミル、連続アニュラー型ビーズミル等のビーズミルが挙げられる。ビーズミルの好ましい分散条件として、使用するビーズ径は0.03mm~2.00mmが好ましく、より好ましくは0.10mm~1.0mmである。
【0155】
<用途>
本発明に係る感光性着色樹脂組成物は、分散安定性、高コントラスト化、現像時間の短縮化、及び優れた耐溶剤性を同時に満たすことが可能であることから、中でもカラーフィルタ用途に好適に用いることができる。
【0156】
III.カラーフィルタ
本発明に係るカラーフィルタは、基板と、当該基板上に設けられた着色層とを少なくとも備えるカラーフィルタであって、当該着色層の少なくとも1つが、前記本発明に係る感光性着色樹脂組成物の硬化物である。
【0157】
このような本発明に係るカラーフィルタについて、図を参照しながら説明する。図1は、本発明のカラーフィルタの一例を示す概略断面図である。図1によれば、本発明のカラーフィルタ10は、基板1と、遮光部2と、着色層3とを有している。
【0158】
<着色層>
本発明のカラーフィルタに用いられる着色層は、少なくとも1つが、前記本発明に係る感光性着色樹脂組成物の硬化物である着色層である。
着色層は、通常、後述する基板上の遮光部の開口部に形成され、通常3色以上の着色パターンから構成される。
また、当該着色層の配列としては、特に限定されず、例えば、ストライプ型、モザイク型、トライアングル型、4画素配置型等の一般的な配列とすることができる。また、着色層の幅、面積等は任意に設定することができる。
当該着色層の厚みは、塗布方法、感光性着色樹脂組成物の固形分濃度や粘度等を調整することにより、適宜制御されるが、通常、1~5μmの範囲であることが好ましい。
【0159】
当該着色層は、例えば、下記の方法により形成することができる。
まず、前述した本発明の感光性着色樹脂組成物を、スプレーコート法、ディップコート法、バーコート法、ロールコート法、スピンコート法、ダイコート法などの塗布手段を用いて後述する基板上に塗布して、ウェット塗膜を形成させる。なかでもスピンコート法、ダイコート法を好ましく用いることができる。
次いで、ホットプレートやオーブンなどを用いて、該ウェット塗膜を乾燥させたのち、これに、所定のパターンのマスクを介して露光し、アルカリ可溶性樹脂及び多官能モノマー等を光重合反応させて硬化塗膜とする。露光に使用される光源としては、例えば低圧水銀灯、高圧水銀灯、メタルハライドランプなどの紫外線、電子線等が挙げられる。露光量は、使用する光源や塗膜の厚みなどによって適宜調整される。
また、露光後に重合反応を促進させるために、加熱処理を行ってもよい。加熱条件は、使用する感光性着色樹脂組成物中の各成分の配合割合や、塗膜の厚み等によって適宜選択される。
【0160】
次に、現像液を用いて現像処理し、未露光部分を溶解、除去することにより、所望のパターンで塗膜が形成される。現像液としては、通常、水や水溶性溶剤にアルカリを溶解させた溶液が用いられる。このアルカリ溶液には、界面活性剤などを適量添加してもよい。また、現像方法は一般的な方法を採用することができる。
現像処理後は、通常、現像液の洗浄、感光性着色樹脂組成物の硬化塗膜の乾燥が行われ、着色層が形成される。なお、現像処理後に、塗膜を十分に硬化させるために加熱処理を行ってもよい。加熱条件としては特に限定はなく、塗膜の用途に応じて適宜選択される。
【0161】
<遮光部>
本発明のカラーフィルタにおける遮光部は、後述する基板上にパターン状に形成されるものであって、一般的なカラーフィルタに遮光部として用いられるものと同様とすることができる。
当該遮光部のパターン形状としては、特に限定されず、例えば、ストライプ状、マトリクス状等の形状が挙げられる。遮光部は、スパッタリング法、真空蒸着法等によるクロム等の金属薄膜であっても良い。或いは、遮光部は、樹脂バインダー中にカーボン微粒子、金属酸化物、無機顔料、有機顔料等の遮光性粒子を含有させた樹脂層であってもよい。遮光性粒子を含有させた樹脂層の場合には、感光性レジストを用いて現像によりパターニングする方法、遮光性粒子を含有するインクジェットインクを用いてパターニングする方法、感光性レジストを熱転写する方法等がある。
【0162】
遮光部の膜厚としては、金属薄膜の場合は0.2~0.4μm程度で設定され、黒色顔料をバインダー樹脂中に分散又は溶解させたものである場合は0.5~2μm程度で設定される。
【0163】
<基板>
基板としては、後述する透明基板、シリコン基板、及び、透明基板又はシリコン基板上にアルミニウム、銀、銀/銅/パラジウム合金薄膜などを形成したものが用いられる。これらの基板上には、別のカラーフィルタ層、樹脂層、TFT等のトランジスタ、回路等が形成されていてもよい。
本発明のカラーフィルタにおける透明基板としては、可視光に対して透明な基材であればよく、特に限定されず、一般的なカラーフィルタに用いられる透明基板を使用することができる。具体的には、石英ガラス、無アルカリガラス、合成石英板等の可撓性のない透明なリジッド材、あるいは、透明樹脂フィルム、光学用樹脂板、フレキシブルガラス等の可撓性を有する透明なフレキシブル材が挙げられる。
当該透明基板の厚みは、特に限定されるものではないが、本発明のカラーフィルタの用途に応じて、例えば100μm~1mm程度のものを使用することができる。
なお、本発明のカラーフィルタは、上記基板、遮光部及び着色層以外にも、例えば、オーバーコート層や透明電極層、さらには配向膜や柱状スペーサ等が形成されたものであってもよい。
【0164】
IV.表示装置
本発明に係る表示装置は、前記本発明に係るカラーフィルタを有することを特徴とする。本発明において表示装置の構成は特に限定されず、従来公知の表示装置の中から適宜選択することができ、例えば、液晶表示装置や、有機発光表示装置などが挙げられる。
【0165】
[液晶表示装置]
本発明の液晶表示装置としては、例えば、前述した本発明に係るカラーフィルタと、対向基板と、前記カラーフィルタと前記対向基板との間に形成された液晶層とを有する液晶表示装置が挙げられる。
このような本発明の液晶表示装置について、図を参照しながら説明する。図2は、本発明の液晶表示装置の一例を示す概略図である。図2に例示するように本発明の液晶表示装置40は、カラーフィルタ10と、TFTアレイ基板等を有する対向基板20と、上記カラーフィルタ10と上記対向基板20との間に形成された液晶層30とを有している。
なお、本発明の液晶表示装置は、この図2に示される構成に限定されるものではなく、一般的にカラーフィルタが用いられた液晶表示装置として公知の構成とすることができる。
【0166】
本発明の液晶表示装置の駆動方式としては、特に限定はなく一般的に液晶表示装置に用いられている駆動方式を採用することができる。このような駆動方式としては、例えば、TN方式、IPS方式、OCB方式、及びMVA方式等を挙げることができる。本発明においてはこれらのいずれの方式であっても好適に用いることができる。
また、対向基板としては、本発明の液晶表示装置の駆動方式等に応じて適宜選択して用いることができる。
さらに、液晶層を構成する液晶としては、本発明の液晶表示装置の駆動方式等に応じて、誘電異方性の異なる各種液晶、及びこれらの混合物を用いることができる。
【0167】
液晶層の形成方法としては、一般に液晶セルの作製方法として用いられる方法を使用することができ、例えば、真空注入方式や液晶滴下方式等が挙げられる。前記方法によって液晶層を形成後、液晶セルを常温まで徐冷することにより、封入された液晶を配向させることができる。
【0168】
[有機発光表示装置]
本発明の有機発光表示装置としては、例えば、前述した本発明に係るカラーフィルタと、有機発光体とを有する有機発光表示装置が挙げられる。
このような本発明の有機発光表示装置について、図を参照しながら説明する。図3は、本発明の有機発光表示装置の一例を示す概略図である。図3に例示するように本発明の有機発光表示装置100は、カラーフィルタ10と、有機発光体80とを有している。カラーフィルタ10と、有機発光体80との間に、有機保護層50や無機酸化膜60を有していても良い。
【0169】
有機発光体80の積層方法としては、例えば、カラーフィルタ上面へ透明陽極71、正孔注入層72、正孔輸送層73、発光層74、電子注入層75、および陰極76を逐次形成していく方法や、別基板上へ形成した有機発光体80を無機酸化膜60上に貼り合わせる方法などが挙げられる。有機発光体80における、透明陽極71、正孔注入層72、正孔輸送層73、発光層74、電子注入層75、および陰極76、その他の構成は、公知のものを適宜用いることができる。このようにして作製された有機発光表示装置100は、例えば、パッシブ駆動方式の有機ELディスプレイにもアクティブ駆動方式の有機ELディスプレイにも適用可能である。
なお、本発明の有機発光表示装置は、この図3に示される構成に限定されるものではなく、一般的にカラーフィルタが用いられた有機発光表示装置として公知の構成とすることができる。
【実施例
【0170】
以下、本発明について実施例を示して具体的に説明する。これらの記載により本発明を制限するものではない。
塩形成前のブロック共重合体のアミン価、及び塩型ブロック共重合体のアミン価は、前述の本発明の明細書に記載した測定方法に従って求めた。
塩形成前のブロック共重合体の重量平均分子量(Mw)は、前述の本発明の明細書に記載した測定方法に従って、GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)により標準ポリスチレン換算値として求めた。
【0171】
(合成例1:マクロモノマーAの製造)
冷却管、添加用ロート、窒素用インレット、機械的攪拌機、デジタル温度計を備えた反応器に、プロピレングリコールメチルエーテルアセテート(PGMEA)70.0質量部を仕込み、窒素気流下攪拌しながら、温度90℃に加温した。一般式(III)で表される構成単位を誘導する、PEG鎖を有するモノマー(Evonik製、商品名:VISIOMER MPEG 1005 MA W、一般式(III)中のRはCH、AはCOO、Rはエチレン基、RはCH、m=22)1.0質量部、メタクリル酸メチル(MMA)99.0質量部、メルカプトエタノール4.0質量部、PGMEA30質量部、α,α’-アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)1.0質量部の混合溶液を1.5時間かけて滴下し、さらに3時間反応した。次に、窒素気流を止めて、この反応溶液を80℃に冷却し、カレンズMOI(昭和電工(株)社製)8.74質量部、ジラウリン酸ジオクチルすず0.125g、p-メトキシフェノール0.125質量部、及びPGMEA30質量部、を加えて3時間攪拌することで、マクロモノマーAの50%溶液を得た。得られたマクロモノマーAを、GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)にて、N-メチルピロリドン、0.01モル/L臭化リチウム添加/ポリスチレン標準の条件で確認したところ、重量平均分子量(Mw)4500、分子量分布(Mw/Mn)1.6であった。
【0172】
(合成例2~10:マクロモノマーB~Mの製造)
合成例1のマクロモノマーAの製造において、モノマーとして一般式(III)で表される構成単位を誘導するモノマー1.0質量部とMMA99.0質量部を用いる代わりに、表1に示すようにモノマーの種類及び質量比の少なくとも一方を変更して用いた以外は、合成例1と同様にして、マクロモノマーB~Mを製造した。得られたマクロモノマーの重量平均分子量(Mw)及び分子量分布(Mw/Mn)を表1に示す。
【0173】
(合成例11:マクロモノマーNの製造)
冷却管、添加用ロート、窒素用インレット、機械的攪拌機、デジタル温度計を備えた反応器に、PGMEA30.0質量部を仕込み、窒素気流下攪拌しながら、温度90℃に加温した。MMA25.0質量部、カプロラクトン変性ヒドロキシエチルメタクリレート(商品名;プラクセルFM5、株式会社ダイセル製、カプロラクトン鎖繰り返し数n=5)(PCL-FM5)75.0質量部、メルカプトプロピオン酸7.0質量部、AIBN1.0質量部の混合溶液を1.5時間かけて滴下し、さらに3時間反応した。冷却後、この反応溶液をテトラヒドロフラン(THF)200質量部で希釈し、ヘキサン3000質量部で再沈澱することで、白色粉末106.0質量部を得た。次に、この白色粉末50.0質量部に、PGMEA50.0質量部、グリシジルメタクリレート(GMA)3.7質量部、N,N-ジメチルドデシルアミン0.15質量部及びp-メトキシフェノール0.1質量部を加え、空気バブリングを行いながら110℃にて、24時間攪拌した。冷却後、この反応溶液を、ヘキサン3000質量部で再沈澱することで、マクロモノマーNを52.0質量部を得た。
得られたマクロモノマーの重量平均分子量(Mw)及び分子量分布(Mw/Mn)を表1に示す。
【0174】
(比較合成例1~2:マクロモノマーO~Pの製造)
合成例1のマクロモノマーAの製造において、モノマーとして一般式(III)で表される構成単位を誘導するモノマー1.0質量部とMMA99.0質量部を用いる代わりに、表1に示すようにモノマーの種類及び質量比の少なくとも一方を変更して用いた以外は、合成例1と同様にして、マクロモノマーO~Pを製造した。得られたマクロモノマーの重量平均分子量(Mw)及び分子量分布(Mw/Mn)を表1に示す。
【0175】
【表1】
なお、表中の略号は以下の通りである。
PEG鎖を有するモノマー(m=30);日油製、商品名:ブレンマーPSE-1300、一般式(III)中のRはCH、AはCOO、Rはエチレン基、RはC1837、m=30
PEG鎖を有するモノマー(m=45);Evonik製、商品名:VISIOMER MPEG 2005 MA W、一般式(III)中のRはCH、AはCOO、Rはエチレン基、RはCH、m=45
PEG鎖を有するモノマー(m=17);Evonik製、商品名:VISIOMER MPEG 750 MA W、PEG鎖の繰り返し数m=17
PEG鎖を有するモノマー(m=9);日油製、商品名:ブレンマーPME-400、PEG鎖の繰り返し数m=9
PEG鎖を有するモノマー(m=3);東京化成工業製、商品名:トリエチレングリコールモノエチルエーテルメタクリレート、PEG鎖の繰り返し数m=3
PEG鎖を有するモノマー(m=90);日油製、商品名:ブレンマーPME-4000、PEG鎖の繰り返し数m=90
BMA;n-ブチルメタクリレート
2-EHMA;2-エチルヘキシルメタクリレート
BzMA;ベンジルメタクリレート
【0176】
(製造例1:グラフト共重合体Aの製造)
冷却管、添加用ロート、窒素用インレット、機械的攪拌機、デジタル温度計を備えた反応器に、PGMEA63.1質量部を仕込み、窒素気流下攪拌しながら、温度85℃に加温した。合成例1のマクロモノマーA溶液141質量部(有効固形分70.5質量部)、メタクリル酸2-(ジメチルアミノ)エチル(DMMA)29.5質量部、n-ドデシルメルカプタン1.24質量部、PGMEA49.4質量部、AIBN1.0質量部の混合溶液を1.5時間かけて滴下し、3時間加熱攪拌したのち、AIBN0.10質量部 、PGMEA6.0質量部の混合液を10分かけて滴下し、さらに同温で1時間熟成することで、グラフト共重合体Aの35.0質量%溶液を得た。得られたグラフト共重合体Aは、GPC測定の結果、重量平均分子量(Mw)10000であった。なおアミン価は105mgKOH/gであった。
【0177】
(製造例2~9:グラフト共重合体B~Nの製造)
製造例1において、マクロモノマーA有効固形分70.5質量部とDMMA29.5質量部とを用いる代わりに、表2に示すように、マクロモノマーの種類及びマクロモノマーとDMMAの質量比とを変更した以外は、製造例1と同様にして、グラフト共重合体B~Nを製造した。得られたグラフト共重合体B~Nの重量平均分子量(Mw)及び変性前アミン価を表2に示す。
【0178】
(比較製造例1~3:グラフト共重合体O~Qの製造)
製造例1において、マクロモノマーA有効固形分70.5質量部とDMMA29.5質量部とを用いる代わりに、表2に示すように、マクロモノマーの種類及びマクロモノマーとDMMAの質量比とを変更した以外は、製造例1と同様にして、グラフト共重合体O~Pを製造した。得られたグラフト共重合体O~Pの重量平均分子量(Mw)及び変性前アミン価を表2に示す。
なお、比較製造例3のグラフト共重合体Qの製造においては、マクロモノマーAの代わりにPEG鎖を有するモノマー(m=90)を用いた。当該PEG鎖を有するモノマー(m=90)は、日油製、商品名:ブレンマーPME-4000、PEG鎖の繰り返し数m=90である。
【0179】
(製造例3’:塩型グラフト共重合体Cの製造)
グラフト共重合体C溶液4.22質量部に、塩形成成分であるフェニルホスホン酸(日産化学工業(株)社製、「PPA」)を0.15質量部(グラフト共重合体CのDMMAユニットに対し、0.5当量)加え、室温にて1時間攪拌することにより、塩型グラフト共重合体C溶液を調製した。得られた塩型グラフト共重合体C溶液はPGMEAにより固形分35%となるように調整した。
【0180】
(製造例6’、7’、8’、9’、10’、11’、12’、比較製造例2’:塩型グラフト共重合体F,G,H,I、J、K、L、及びPの製造)
製造例3’において、グラフト共重合体C溶液の代わりに、グラフト共重合体F,G,H,I、J、K、L、又はP溶液を用い、塩形成剤の種類及び量(グラフト共重合体CのDMMAユニットに対する当量)を表2に示すように変更した以外は、製造例3’と同様にして、塩型グラフト共重合体F,G,H,I、J、K、L、及びP溶液をそれぞれ製造した。塩型グラフト共重合体の塩形成後アミン価を表2に示す。
【0181】
(比較製造例4:ブロック共重合体Rの製造)
冷却管、添加用ロート、窒素用インレット、機械的攪拌機、デジタル温度計を備えた500mL丸底4口セパラブルフラスコにTHF250質量部、塩化リチウム0.6質量部を加え、充分に窒素置換を行った。反応フラスコを-60℃まで冷却した後、ブチルリチウム4.9質量部(15質量%ヘキサン溶液)、ジイソプロピルアミン1.1質量部、イソ酪酸メチル1.0質量部を、シリンジを用いて注入した。Bブロック用モノマーの一般式(III)で表される構成単位を誘導する、PEG鎖を有するモノマー(Evonik製、商品名:VISIOMER MPEG 1005 MA W、一般式(III)中のRはCH、AはCOO、Rはエチレン基、RはCH、m=22)23.0質量部、MMA30.0質量部、BMA22.0質量部を、添加用ロートを用いて60分かけて滴下した。30分後、Aブロック用モノマーであるDMMA25.0質量部を20分かけて滴下した。30分間反応させた後、メタノール1.5質量部を加えて反応を停止させた。得られたブロック共重合体THF溶液はヘキサン中で再沈殿させ、濾過、真空乾燥により精製を行い、PGMEAで固形分35質量%溶液となるよう希釈しブロック共重合体R溶液を得た。このようにして得られたブロック共重合体Rを、GPCにて確認したところ、重量平均分子量Mwは15800であった。また、アミン価は89mgKOH/gであった。
ブロック共重合体Rのモノマーの組成、重量平均分子量(Mw)及び分子量分布(Mw/Mn)を表1に示す。ブロック共重合体Rのアミン価を表2に示す。
【0182】
(比較製造例5:塩型ブロック共重合体Sの製造)
冷却管、添加用ロート、窒素用インレット、機械的攪拌機、デジタル温度計を備えた500mL丸底4口セパラブルフラスコにTHF250質量部、塩化リチウム0.6質量部を加え、充分に窒素置換を行った。反応フラスコを-60℃まで冷却した後、ブチルリチウム4.9質量部(15質量%ヘキサン溶液)、ジイソプロピルアミン1.1質量部、イソ酪酸メチル1.0質量部をシリンジを用いて注入した。PEG鎖を有するモノマー(東京化成工業製、商品名:トリエチレングリコールモノエチルエーテルメタクリラート、一般式(III)中のRはCH、AはCOO、Rはエチレン基、RはCH、m=3)8.3質量部、MMA18.8質量部、BMA20.1質量部、2-EHMA14.1質量部、BzMA11.8質量部を、添加用ロートを用いて60分かけて滴下した。30分後、Aブロック用モノマーであるDMMA26.9質量部を20分かけて滴下した。30分間反応させた後、メタノール1.5質量部を加えて反応を停止させた。得られたブロック共重合体THF溶液はヘキサン中で再沈殿させ、濾過、真空乾燥により精製を行った。このようにして得られたブロック共重合体を、GPCにて確認したところ、重量平均分子量Mwは4900であった。また、アミン価は81mgKOH/gであった。次いで、得られたブロック共重合体8.0質量部をPGMEA10.0質量部で希釈し、ベンジルクロライド1.2質量部(ブロック共重合体のDMMAユニットに対し、0.83当量)加え、80℃にて4時間攪拌することにより、塩型ブロック共重合体S溶液を調製した。得られた塩型ブロック共重合体S溶液はPGMEAにより固形分35%となるように調整した。
ブロック共重合体Sのモノマーの組成、重量平均分子量(Mw)及び分子量分布(Mw/Mn)を表1に示す。ブロック共重合体Sの塩形成前アミン価、及び塩型ブロック共重合体Sの塩形成後アミン価を表2に示す。
【0183】
【表2】
【0184】
(調製例1:アルカリ可溶性樹脂Aの調製)
重合槽に、PGMEAを300質量部仕込み、窒素雰囲気下で100℃に昇温した後、メタクリル酸2-フェノキシエチル(PhEMA)90質量部、MMA54質量部、メタクリル酸(MAA)36質量部及びパーブチルO(日油株式会社製)6質量部、連鎖移動剤(n-ドデシルメルカプタン)2質量部を1.5時間かけて連続的に滴下した。その後、100℃を保持して反応を続け、上記主鎖形成用混合物の滴下終了から2時間後に重合禁止剤として、p-メトキシフェノール0.1質量部を添加して重合を停止した。
次に、空気を吹き込みながら、エポキシ基含有化合物としてメタクリル酸グリシジル(GMA)20質量部を添加して、110℃に昇温した後、トリエチルアミン0.8質量部を添加して110℃で15時間付加反応させ、アルカリ可溶性樹脂A溶液(重量平均分子量(Mw)8500、酸価75mgKOH/g、固形分40質量%)を得た。
なお、上記重量平均分子量の測定方法は、ポリスチレンを標準物質とし、THFを溶離液としてショウデックスGPCシステム-21H(Shodex GPC System-21H)により重量平均分子量を測定した。また酸価の測定方法は、JIS K 0070に基づいて測定した。
【0185】
(実施例1)
(1)色材分散液G-1の製造
分散剤として製造例1のグラフト共重合体Aを9.29質量部、色材としてC.I.ピグメントグリーン58(PG58)を9.10質量部、C.I.ピグメントイエロー138(PY138)を3.90質量部、調製例1で得られたアルカリ可溶性樹脂A溶液を14.63質量部、PGMEAを63.09質量部、粒径2.0mmジルコニアビーズ100質量部をマヨネーズビンに入れ、予備解砕としてペイントシェーカー(浅田鉄工(株)製)にて1時間振とうし、次いで粒径2.0mmジルコニアビーズを取り出し、粒径0.1mmのジルコニアビーズ200質量部を加えて、同様に本解砕としてペイントシェーカーにて4時間分散を行い、色材分散液G-1を得た。
【0186】
(2)感光性着色樹脂組成物G-1の製造
上記(1)で得られた色材分散液G-1を9.77質量部、調製例1で得られたアルカリ可溶性樹脂A溶液を0.28質量部、多官能モノマー(商品名アロニックスM-403、東亞合成(株)社製)を0.99質量部、化学式(A-1)で表されるオキシムエステル化合物(ジフェニルスルフィド骨格を有するオキシムエステル系光開始剤:WO2018/062105記載の化合物E)を0.12質量部、フッ素系界面活性剤(商品名メガファックR-08MH、DIC(株)製)を0.07質量部、PGMEAを8.73質量部加え、感光性着色樹脂組成物G-1を得た。
【0187】
(実施例2~8)
(1)色材分散液G-2~G-8の製造
実施例1の(1)において、グラフト共重合体Aの代わりに、表3に示すように、(塩型)グラフト共重合体B,C,D,E,F,G,及びHをそれぞれ用いた以外は、実施例1と同様にして、色材分散液G-2~G-8を製造した。
(2)感光性着色樹脂組成物G-2~G-8の製造
実施例1の(2)において、色材分散液G-1の代わりに、それぞれ上記色材分散液G-2~G-8を用いた以外は、実施例1の(2)と同様にして、感光性着色樹脂組成物G-2~G-8を得た。
【0188】
(実施例9~10)
(1)色材分散液G-9~G-10の製造
実施例8と同様にして、色材分散液G-9~G-10を製造した。
(2)感光性着色樹脂組成物G-9~G-10の製造
実施例1の(2)において、色材分散液G-1の代わりに、それぞれ上記色材分散液G-9~G-10を用い、光開始剤として、化学式(A-1)で表されるオキシムエステル化合物の代わりに、それぞれ表3に示す開始剤を同量用いた以外は、実施例1の(2)と同様にして、感光性着色樹脂組成物G-9~G-10を得た。
【0189】
(比較例1~8)
(1)比較色材分散液G-1~G-8の製造
実施例1と同様にして、比較色材分散液G-1~G-8を得た。
(2)比較用感光性着色樹脂組成物G-1~G-8の製造
実施例1の(2)において、色材分散液G-1の代わりに、それぞれ上記比較色材分散液G-1~G-8を用い、光開始剤として、化学式(A-1)で表されるオキシムエステル化合物の代わりに、それぞれ表3に示す開始剤を同量用いた以外は、実施例1の(2)と同様にして、比較感光性着色樹脂組成物G-1~G-8を得た。
【0190】
(実施例11~20)
(1)色材分散液G-11~G-20の製造
実施例8と同様にして、色材分散液G-11~G-20を製造した。
(2)感光性着色樹脂組成物G-11~G-20の製造
実施例1の(2)において、色材分散液G-1の代わりに、それぞれ上記色材分散液G-11~G-20を用い、光開始剤として、化学式(A-1)で表されるオキシムエステル化合物0.12質量部の代わりに、それぞれ表4に示す開始剤を表4に示す配合量で用いた以外は、実施例1の(2)と同様にして、感光性着色樹脂組成物G-11~G-20を得た。
【0191】
(実施例21~26)
(1)色材分散液G-21~G-26の製造
実施例1の(1)において、グラフト共重合体Aの代わりに、表4に示すように、(塩型)グラフト共重合体I,J,K,L,M,及びNをそれぞれ用いた以外は、実施例1と同様にして、色材分散液G-21~G-26を製造した。
(2)感光性着色樹脂組成物G-21~G-26の製造
実施例1の(2)において、色材分散液G-1の代わりに、それぞれ上記色材分散液G-21~G-26を用いた以外は、実施例1の(2)と同様にして、感光性着色樹脂組成物G-21~G-26を得た。
【0192】
(比較例9~13)
(1)比較色材分散液G-9~G-13の製造
実施例1の(1)において、グラフト共重合体Aの代わりに、表4に示すように、(塩型)グラフト共重合体O,P,及びQ、並びにブロック共重合体R及びSをそれぞれ用いた以外は、実施例1と同様にして、比較色材分散液G-9~G-13を得た。
(2)比較用感光性着色樹脂組成物G-9~G-13の製造
実施例1の(2)において、色材分散液G-1の代わりに、それぞれ上記比較色材分散液G-9~G-13を用いた以外は、実施例1の(2)と同様にして、比較感光性着色樹脂組成物G-9~G-13を得た。
【0193】
(実施例27)
(1)色材分散液G-27の製造
実施例1の(1)において、色材としてC.I.ピグメントグリーン58(PG58)を9.10質量部、C.I.ピグメントイエロー138(PY138)を3.90質量部用いる代わりに、色材としてC.I.ピグメントグリーン59(PG59)を9.10質量部、C.I.ピグメントイエロー150(PY150)を3.90質量部用いた以外は、実施例1と同様にして、色材分散液G-27を製造した。
(2)感光性着色樹脂組成物G-27の製造
実施例1の(2)において、色材分散液G-1の代わりに、上記色材分散液G-27を用いた以外は、実施例1の(2)と同様にして、感光性着色樹脂組成物G-27を得た。
【0194】
(実施例28~34)
(1)色材分散液G-28~G-34の製造
実施例27の(1)において、グラフト共重合体Aの代わりに、表5に示すように、(塩型)グラフト共重合体B,C,D,E,F,G,及びHをそれぞれ用いた以外は、実施例27と同様にして、色材分散液G-28~G-34を製造した。
(2)感光性着色樹脂組成物G-28~G-34の製造
実施例27の(2)において、色材分散液G-27の代わりに、それぞれ上記色材分散液G-28~G-34を用いた以外は、実施例1の(2)と同様にして、感光性着色樹脂組成物G-28~G-34を得た。
【0195】
(実施35~36)
(1)色材分散液G35~G-36の製造
実施例34と同様にして、色材分散液G-35~G-36を製造した。
(2)感光性着色樹脂組成物G35~G-36の製造
実施例27の(2)において、色材分散液G-27の代わりに、それぞれ上記色材分散液G-35~G-36を用い、光開始剤として、化学式(A-1)で表されるオキシムエステル化合物の代わりに、それぞれ表5に示す開始剤を同量用いた以外は、実施例27の(2)と同様にして、感光性着色樹脂組成物G35~G-36を得た。
【0196】
(比較例14~21)
(1) 比較色材分散液G-14~G-21の製造
実施例27と同様にして、比較色材分散液G-14~G-21を得た。
(2)比較用感光性着色樹脂組成物G-14~G-21の製造
実施例27の(2)において、色材分散液G-27の代わりに、それぞれ上記比較色材分散液G-14~G-21を用い、光開始剤として、化学式(A-1)で表されるオキシムエステル化合物の代わりに、それぞれ表5に示す開始剤を同量用いた以外は、実施例27の(2)と同様にして、比較感光性着色樹脂組成物G-14~G-21を得た。
【0197】
(実施例37~46)
(1)色材分散液G-37~G-46の製造
実施例34と同様にして、色材分散液G-37~G-46を製造した。
(2)感光性着色樹脂組成物G-37~G-46の製造
実施例27の(2)において、色材分散液G-27の代わりに、それぞれ上記色材分散液G-37~G-46を用い、光開始剤として、化学式(A-1)で表されるオキシムエステル化合物0.12質量部の代わりに、それぞれ表6に示す開始剤を表6に示す配合量で用いた以外は、実施例27の(2)と同様にして、感光性着色樹脂組成物G-37~G-46を得た。
【0198】
(実施例47~52)
(1)色材分散液G-47~G-52の製造
実施例27の(1)において、グラフト共重合体Aの代わりに、表6に示すように、(塩型)グラフト共重合体I,J,K,L,M,及びNをそれぞれ用いた以外は、実施例27と同様にして、色材分散液G-47~G-52を製造した。
(2)感光性着色樹脂組成物G-47~G-52の製造
実施例27の(2)において、色材分散液G-27の代わりに、それぞれ上記色材分散液G-47~G-52を用いた以外は、実施例1の(2)と同様にして、感光性着色樹脂組成物G-47~G-52を得た。
【0199】
(比較例22~26)
(1)比較色材分散液G-22~G-26の製造
実施例27の(1)において、グラフト共重合体Aの代わりに、表6に示すように、(塩型)グラフト共重合体O,P,及びQ、並びにブロック共重合体R及びSをそれぞれ用いた以外は、実施例27と同様にして、比較色材分散液G-22~G-26を得た。
(2)比較用感光性着色樹脂組成物G-22~G-26の製造
実施例27の(2)において、色材分散液G-27の代わりに、それぞれ上記比較色材分散液G-22~G-26を用いた以外は、実施例27の(2)と同様にして、比較感光性着色樹脂組成物G-22~G-26を得た。
【0200】
(実施例53)
(1)色材分散液R-1の製造
実施例1の(1)において、色材としてC.I.ピグメントグリーン58(PG58)を9.10質量部、C.I.ピグメントイエロー138(PY138)を3.90質量部用いる代わりに、色材としてC.I.ピグメントレッド177(PR177)を3.90質量部、C.I.ピグメントレッド291(PR291)を9.10質量部用いた以外は、実施例1と同様にして、色材分散液R-1を製造した。
(2)感光性着色樹脂組成物R-1の製造
実施例1の(2)において、色材分散液G-1の代わりに、上記色材分散液R-1を用いた以外は、実施例1の(2)と同様にして、感光性着色樹脂組成物R-1を得た。
【0201】
(実施例54~60)
(1)色材分散液R-2~R-8の製造
実施例53の(1)において、グラフト共重合体Aの代わりに、表7に示すように、(塩型)グラフト共重合体B,C,D,E,F,G,及びHをそれぞれ用いた以外は、実施例53と同様にして、色材分散液R-2~R-8を製造した。
(2)感光性着色樹脂組成物R-2~R-8の製造
実施例53の(2)において、色材分散液R-1の代わりに、それぞれ上記色材分散液R-2~R-8を用いた以外は、実施例53の(2)と同様にして、感光性着色樹脂組成物R-2~R-8を得た。
【0202】
(実施例61~62)
(1)色材分散液R-9~R-10の製造
実施例60と同様にして、色材分散液R-9~R-10を製造した。
(2)感光性着色樹脂組成物R-9~R-10の製造
実施例53の(2)において、色材分散液R-1の代わりに、それぞれ上記色材分散液R-9~R-10を用い、光開始剤として、化学式(A-1)で表されるオキシムエステル化合物の代わりに、それぞれ表7に示す開始剤を同量用いた以外は、実施例60の(2)と同様にして、感光性着色樹脂組成物R-9~R-10を得た。
【0203】
(比較例27~34)
(1)比較色材分散液R-1~R-8の製造
実施例53と同様にして、比較色材分散液R-1~R-8を得た。
(2)比較用感光性着色樹脂組成物R-1~R-8の製造
実施例53の(2)において、色材分散液R-1の代わりに、それぞれ上記比較色材分散液R-1~R-8を用い、光開始剤として、化学式(A-1)で表されるオキシムエステル化合物の代わりに、それぞれ表7に示す開始剤を同量用いた以外は、実施例53の(2)と同様にして、比較感光性着色樹脂組成物R-1~R-8を得た。
【0204】
(実施例63~72)
(1)色材分散液R-11~R-20の製造
実施例60と同様にして、色材分散液R-11~R-20を製造した。
(2)感光性着色樹脂組成物R-11~R-20の製造
実施例53の(2)において、色材分散液R-1の代わりに、それぞれ上記色材分散液R-11~R-20を用い、光開始剤として、化学式(A-1)で表されるオキシムエステル化合物0.12質量部の代わりに、それぞれ表8に示す開始剤を表8に示す配合量で用いた以外は、実施例53の(2)と同様にして、感光性着色樹脂組成物R-11~R-20を得た。
【0205】
(実施例73~78)
(1)色材分散液R-21~R-26の製造
実施例53の(1)において、グラフト共重合体Aの代わりに、表8に示すように、(塩型)グラフト共重合体I,J,K,L,M,及びNをそれぞれ用いた以外は、実施例53と同様にして、色材分散液R-21~R-26を製造した。
(2)感光性着色樹脂組成物R-21~R-26の製造
実施例53の(2)において、色材分散液R-1の代わりに、それぞれ上記色材分散液R-21~R-26を用いた以外は、実施例53の(2)と同様にして、感光性着色樹脂組成物R-21~R-26を得た。
【0206】
(比較例35~39)
(1)比較色材分散液R-9~R-13の製造
実施例53の(1)において、グラフト共重合体Aの代わりに、表8に示すように、(塩型)グラフト共重合体O,P,及びQ、並びにブロック共重合体R及びSをそれぞれ用いた以外は、実施例53と同様にして、比較色材分散液R-9~R-13を得た。
(2)比較用感光性着色樹脂組成物R-9~R-13の製造
実施例53の(2)において、色材分散液R-1の代わりに、それぞれ上記比較色材分散液R-9~R-13を用いた以外は、実施例53の(2)と同様にして、比較感光性着色樹脂組成物R-9~R-13を得た。
【0207】
(実施例79)
(1)色材分散液B-1の製造
実施例1の(1)において、色材としてC.I.ピグメントグリーン58(PG58)を9.10質量部、C.I.ピグメントイエロー138(PY138)を3.90質量部用いる代わりに、色材としてC.I.ピグメントブルー15:6(PB15:6)を11.70質量部、C.I.ピグメントバイオレット23(PV23)を1.30質量部用いた以外は、実施例1と同様にして、色材分散液B-1を製造した。
(2)感光性着色樹脂組成物B-1の製造
実施例1の(2)において、色材分散液G-1の代わりに、上記色材分散液B-1を用いた以外は、実施例1の(2)と同様にして、感光性着色樹脂組成物B-1を得た。
【0208】
(実施例80~86)
(1)色材分散液B-2~B-8の製造
実施例79の(1)において、グラフト共重合体Aの代わりに、表9に示すように、(塩型)グラフト共重合体B,C,D,E,F,G,及びHをそれぞれ用いた以外は、実施例79と同様にして、色材分散液B-2~B-8を製造した。
(2)感光性着色樹脂組成物B-2~B-8の製造
実施例79の(2)において、色材分散液B-1の代わりに、それぞれ上記色材分散液B-2~B-8を用いた以外は、実施例79の(2)と同様にして、感光性着色樹脂組成物B-2~B-8を得た。
【0209】
(実施例87~88)
(1)色材分散液B-9~B-10の製造
実施例86と同様にして、色材分散液B-9~B-10を製造した。
(2)感光性着色樹脂組成物B-9~B-10の製造
実施例79の(2)において、色材分散液B-1の代わりに、それぞれ上記色材分散液B-9~B-10を用い、光開始剤として、化学式(A-1)で表されるオキシムエステル化合物の代わりに、それぞれ表9に示す開始剤を同量用いた以外は、実施例79の(2)と同様にして、感光性着色樹脂組成物B-9~B-10を得た。
【0210】
(比較例40~47)
(1)比較色材分散液B-1~B-8の製造
実施例79と同様にして、比較色材分散液B-1~B-8を得た。
(2)比較用感光性着色樹脂組成物B-1~B-8の製造
実施例79の(2)において、色材分散液B-1の代わりに、それぞれ上記比較色材分散液B-1~B-8を用い、光開始剤として、化学式(A-1)で表されるオキシムエステル化合物の代わりに、それぞれ表9に示す開始剤を同量用いた以外は、実施例79の(2)と同様にして、比較感光性着色樹脂組成物B-1~B-8を得た。
【0211】
(実施例89~98)
(1)色材分散液B-11~B-20の製造
実施例86と同様にして、色材分散液B-11~B-20を製造した。
(2)感光性着色樹脂組成物B-11~B-20の製造
実施例79の(2)において、色材分散液B-1の代わりに、それぞれ上記色材分散液B-11~B-20を用い、光開始剤として、化学式(A-1)で表されるオキシムエステル化合物0.12質量部の代わりに、それぞれ表10に示す開始剤を表10に示す配合量で用いた以外は、実施例79の(2)と同様にして、感光性着色樹脂組成物B-11~B-20を得た。
【0212】
(実施例99~104)
(1)色材分散液B-21~B-26の製造
実施例79の(1)において、グラフト共重合体Aの代わりに、表10に示すように、(塩型)グラフト共重合体I,J,K,L,M,及びNをそれぞれ用いた以外は、実施例79と同様にして、色材分散液B-21~B-26を製造した。
(2)感光性着色樹脂組成物B-21~B-26の製造
実施例79の(2)において、色材分散液B-1の代わりに、それぞれ上記色材分散液B-21~B-26を用いた以外は、実施例79の(2)と同様にして、感光性着色樹脂組成物B-21~B-26を得た。
【0213】
(比較例48~52)
(1)比較色材分散液B-9~B-13の製造
実施例79の(1)において、グラフト共重合体Aの代わりに、表10に示すように、(塩型)グラフト共重合体O,P,及びQ、並びにブロック共重合体R及びSをそれぞれ用いた以外は、実施例79と同様にして、比較色材分散液B-9~B-13を得た。
(2)比較用感光性着色樹脂組成物B-9~B-13の製造
実施例79の(2)において、色材分散液B-1の代わりに、それぞれ上記比較色材分散液B-9~B-13を用いた以外は、実施例79の(2)と同様にして、比較感光性着色樹脂組成物B-9~B-13を得た。
【0214】
[評価方法]
【0215】
<現像時間評価>
実施例及び比較例で得られた感光性着色樹脂組成物を、それぞれガラス基板(NHテクノグラス(株)社製、「NA35」)上に、スピンコーターを用いてポストベーク後に厚さ2.0μmの着色層を形成する膜厚で塗布した後、ホットプレートを用いて80℃で3分間乾燥することにより、ガラス基板上に着色層を形成した。この着色層にフォトマスクを介して超高圧水銀灯を用いて60mJ/cmの紫外線を照射した。その後、上記着色層が形成されたガラス基板を、アルカリ現像液として0.05質量%水酸化カリウム水溶液を用いてシャワー現像し、上記着色層が完全に溶解し、上記着色層を形成した箇所のガラス面が現れるまでの時間を現像時間として測定した。
【0216】
<耐溶剤性(耐NMP性)評価>
実施例及び比較例で得られた感光性着色樹脂組成物を、それぞれガラス基板(NHテクノグラス(株)社製、「NA35」)上に、スピンコーターを用いてポストベーク後に厚さ2.0μmの着色層を形成する膜厚で塗布した後、ホットプレートを用いて80℃で3分間乾燥することにより、ガラス基板上に着色層を形成した。この着色層に超高圧水銀灯を用いて60mJ/cmの紫外線を照射した。
次に、当該着色基板を230℃のクリーンオーブンで30分間ポストベークし、着色基板を作成した。得られた着色基板の膜厚を測定した後、NMPに30分間浸漬した後、風乾し、再び膜厚を測定した。なお、膜厚測定には、触針式段差膜厚計「P-15Tencor」(Instruments製)を用いた。
(耐NMP性評価基準)
AA:NMP浸漬時間60分の条件にしたときの、NMP浸漬前後の膜厚の変化率が2%未満
A:NMP浸漬前後の膜厚の変化率が2%未満
B:NMP浸漬前後の膜厚の変化率が2%以上5%未満
C:NMP浸漬前後の膜厚の変化率が5%以上8%未満
D:NMP浸漬前後の膜厚の変化率が8%以上
評価結果がBであれば耐NMP性は良好であり、評価結果がA、更にAAであれば耐NMP性に優れている。
【0217】
<色材分散液の分散性安定性評価>
実施例及び比較例で得られた色材分散液についてそれぞれ、調製直後と、25℃で30日間保存後の粘度を測定し、保存前後の粘度から粘度変化率を算出し、粘度安定性を評価した。粘度測定には振動式粘度計を用いて、25.0±0.5℃における粘度を測定した。
(分散安定性評価基準)
A:保存前後の粘度の変化率が20%未満
B:保存前後の粘度の変化率が20%以上40%未満
C:保存前後の粘度の変化率が40%以上60%未満
D:保存前後の粘度の変化率が60%以上
ただし、色材分散液の溶剤を含めた合計質量に対して、色材を13質量%としたときの値である。
評価結果がBであれば色材分散液は良好であり、評価結果がAであれば色材分散液は、分散安定性に優れている。
【0218】
<光学性能評価、コントラスト評価>
実施例及び比較例で得られた感光性着色樹脂組成物を、それぞれ厚み0.7mmで100mm×100mmのガラス基板(NHテクノグラス(株)社製、「NA35」)上に、スピンコーターを用いて塗布した後、ホットプレートを用いて80℃で3分間乾燥することにより、着色層を形成した。この着色層に超高圧水銀灯を用いて60mJ/cmの紫外線を照射した。
次に、当該着色基板を230℃のクリーンオーブンで30分間ポストベークし、得られた着色基板のコントラストと色度(x、y)、輝度(Y)を壺坂電気製コントラスト測定装置CT-1Bとオリンパス製顕微分光測定装置OSP-SP200を用いて測定した。
(コントラスト評価基準)
A:Greenは7000超過、Redは5000超過、Blueは6000超過
B:Greenは5600超過7000以下、Redは4000超過5000以下、Blueは4800超過6000以下
C:Greenは4200以上5600以下、Redは3000以上4000以下、Blueは3600以上4800以下
D:Greenは4200未満、Redは3000未満、Blueは3600未満
ただし、それぞれC光源で実施例1~52及び比較例1~26のGreenはy=0.570、実施例53~78及び比較例27~39のRedはx=0.650、実施例79~104及び比較例40~52のBlueはy=0.107としたときの値である。
【0219】
<水染み抑制評価>
実施例及び比較例で得られた感光性着色樹脂組成物を、それぞれガラス基板(NHテクノグラス(株)社製、「NA35」、厚み0.7mmで100mm×100mm)上に、スピンコーターを用いてポストベーク後に厚さ2.0μmの着色層を形成する膜厚で塗布した後、ホットプレートを用いて60℃で3分間乾燥し、フォトマスクを介さずに超高圧水銀灯を用いて30mJ/cmの紫外線を全面照射することにより、ガラス基板上に着色層を形成した。次いで、0.05wt%カリウム(KOH)を現像液として60秒間シャワー現像させた後に純水で洗浄することで現像処理し、洗浄後の基板を10秒間回転させ水を遠心除去した直後に、下記のように純水の接触角を測定して水染みを評価した。
純水の接触角の測定は、前記水を遠心除去した直後の着色層表面に、純水1.0μLの液滴を滴下し、着滴10秒後の静的接触角をθ/2法に従って計測した。測定装置は、協和界面科学社製 接触角計DM 500を用いて、測定した。
(評価基準)
A:接触角70度以上
B:接触角50度以上70度未満
C:接触角30度以上50度未満
D:接触角30度未満
水染み評価基準がA又はBであれば、実用上使用できるが、評価結果がAであればより効果が優れている。
【0220】
<現像残渣評価>
実施例及び比較例で得られた感光性着色樹脂組成物を、それぞれガラス基板(NHテクノグラス(株)社製、「NA35」)上に、スピンコーターを用いてポストベーク後に厚さ2.0μmの着色層を形成する膜厚で塗布した後、ホットプレートを用いて80℃で3分間乾燥し、ガラス基板上に着色層を形成した。上記着色層が形成されたガラス板を、アルカリ現像液として0.05質量%水酸化カリウム水溶液を用いて60秒間シャワー現像させた後に純水で洗浄することで現像処理した。現像後の上記着色層の形成部を、目視により観察した後、エタノールを含ませたレンズクリーナー(東レ社製、商品名トレシーMKクリーンクロス)で十分に拭き取り、そのレンズクリーナーの着色度合いを目視で観察した。
(現像残渣評価基準)
AA:ホットプレートでの乾燥温度を90℃にして現像残渣の強制評価を行い、目視により現像残渣が確認されず、レンズクリーナーが全く着色しなかった
A:目視により現像残渣が確認されず、レンズクリーナーが全く着色しなかった
B:目視により現像残渣が確認されず、レンズクリーナーの着色がわずかに確認された
C:目視により現像残渣がわずかに確認され、レンズクリーナーの着色が確認された
D:目視により現像残渣が確認され、レンズクリーナーの着色が確認された
評価結果がBであれば現像残渣抑制効果は良好であり、評価結果がA、更にAAであれば現像残渣抑制効果に優れている。
【0221】
<微小孔の断面形状>
各実施例及び各比較例で得られた感光性着色樹脂組成物を、ガラス基板(NHテクノグラス(株)社製、「NA35」)上に、スピンコーターを用いて硬化塗膜が厚さ3.0μmとなるように塗布した後、ホットプレートを用いて80℃で3分間乾燥しガラス基板上に塗膜を形成した。この塗膜に、開口寸法90μm×300μmの独立細線内の中央に20μm×20μmのクロムマスクを配置したパターンフォトマスク(クロムマスク)を介して、超高圧水銀灯を用いて40mJ/cmの紫外線で露光することにより、ガラス基板上に露光後塗膜を形成した。次いで、0.05wt%水酸化カリウム水溶液を現像液としてスピン現像し、現像液に60秒間接液させた後に純水で洗浄することで現像処理し、微小孔を有する独立細線パターン状の塗膜を得た。その後、230℃のクリーンオーブンで25分間ポストベークすることにより、微小孔を有する独立細線パターン状の着色層を形成した。得られた着色層について下記評価を行った。
前記微小孔の着色層の厚み方向断面形状を、走査型電子顕微鏡((株)島津製作所製、super scan model 220、倍率10000倍)により観察し、下記評価基準により、微小孔の断面形状のテーパー角(θ)(図5参照)について評価した。
[微小孔の断面形状]
A: テーパー角(θ)が15度以上60度以下
B:テーパー角(θ)が60度より大きく90度以下
C:テーパー角(θ)が90度より大きい
【0222】
なお、表3~表10において、開始剤1~3はジフェニルスルフィド骨格を有するオキシムエステル系光開始剤であり、その他開始剤1~8は、ジフェニルスルフィド骨格を有するオキシムエステル系光開始剤とは異なる開始剤であり、それぞれ以下のとおりである。
開始剤1:化学式(A-1)で表されるオキシムエステル化合物(WO2018/062105記載の化合物E)
開始剤2:3-シクロペンチル-1-[4-(フェニルチオ)フェニル]-,2-(o-ベンゾイルオキシム](商品名TR-PBG-305、常州強力電子新材料社製)
開始剤3:1,2-オクタジオン,1-[4-(フェニルチオ)フェニル]-,2-(o-ベンゾイルオキシム](商品名イルガキュアOXE01、BASF社製)
その他開始剤1:α-アミノケトン系光開始剤、2-メチル-1-(4-メチルチオフェニル)-2-モルフォリノプロパン-1-オン(商品名イルガキュア907、BASF社製)
その他開始剤2:α-アミノケトン系光開始剤、2-ベンジル-2-(ジメチルアミノ)-1-(4-モルフォリノフェニル)-1-ブタノン(商品名イルガキュア369、BASF社製)
その他開始剤3:カルバゾール骨格を有するオキシムエステル系光開始剤、エタノン,1-[9-エチル-6-(2-メチルベンゾイル)-9H-カルバゾール-3-イル]-,1-(O-アセチルオキシム)(商品名イルガキュアOXE02、BASF社製)
その他開始剤4:カルバゾール骨格を有するオキシムエステル系光開始剤、1-プロパノン,3-シクロペンチル-1-[9-エチル-6-(2-メチルベンゾイル)-9H-カルバゾール-3-イル]-,1-(o-アセチルオキシム)(商品名TR-PBG-304、常州強力電子新材料社製)
その他開始剤5:カルバゾール骨格を有するオキシムエステル系光開始剤、商品名アデカアークルズNCI-831、ADEKA社製
その他開始剤6:ビイミダゾール系光開始剤、2,2’-ビス(2-クロロフェニル)-4,4’,5,5’-テトラフェニル-1,2’-ビイミダゾール (黒金化成社製)
その他開始剤7:チオキサントン系光開始剤、2,4-ジエチルチオキサントン(商品名DOUBLECURE DETX、Double BondChemical製)
その他開始剤8:ベンゾフェノン系光開始剤、4,4’-ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン(商品名ハイキュアABP、川口薬品社製)
【0223】
【表3】
【0224】
【表4】
【0225】
【表5】
【0226】
【表6】
【0227】
【表7】
【0228】
【表8】
【0229】
【表9】
【0230】
【表10】
【0231】
[結果のまとめ]
実施例及び比較例の比較により、本発明で特定したグラフト共重合体又は塩型グラフト共重合体と、ジフェニルスルフィド骨格を有するオキシムエステル系光開始剤とを組み合わせて用いた実施例1~104では、分散安定性、高コントラスト化、現像時間の短縮化、及び優れた耐溶剤性を同時に満たす感光性着色樹脂組成物が得られることが明らかにされた。
それに対して、本発明で特定したグラフト共重合体又は塩型グラフト共重合体に、ジフェニルスルフィド骨格を有するオキシムエステル系光開始剤とは異なる光開始剤を組み合わせて用いた比較例1~8、14~21、27~34、及び40~47では、耐溶剤性が劣ることが明らかにされた。
また、グラフト共重合体のグラフト鎖(ポリマー鎖)において、エチレンオキシド鎖の繰り返し単位数が90である長すぎる分岐鎖を含むグラフト共重合体Oを用いた比較例9,22,35,48の比較感光性着色樹脂組成物は、分散安定性及びコントラストが悪化するものであった。
従来技術の特許文献2で開示されているようにグラフト共重合体のグラフト鎖(ポリマー鎖)がMMAとBMA由来の構成単位から構成されるグラフト共重合体Pを用いた比較例10,23,36,49の比較感光性着色樹脂組成物は、耐溶剤性が劣り、現像時間も長くなった。
グラフト共重合体のグラフト鎖(ポリマー鎖)として、エチレンオキシド鎖の繰り返し単位数が90であるポリマー鎖としたグラフト共重合体Qを用いた比較例11,24,37,50の比較感光性着色樹脂組成物は、分散安定性及びコントラストが悪化するものであった。
ブロック共重合体の構成単位として、エチレンオキシド鎖の繰り返し単位数が22であるポリマー鎖を有するブロック共重合体Rを用いた比較例12,25,38,51の比較感光性着色樹脂組成物は、耐溶剤性の効果が得られないものであった。
従来技術の特許文献1で開示されているようにブロック共重合体の構成単位として、エチレンオキシド鎖の繰り返し単位数が3であるトリエチレングリコールエチルエーテルメタクリレート由来の構成単位を含むブロック共重合体Sを用いた比較例13,26,39,52の比較感光性着色樹脂組成物は、耐溶剤性の効果が得られず、現像時間も長く、更に分散安定性が劣るものであった。
【0232】
実施例の中でも、グラフト共重合体のグラフト鎖(ポリマー鎖)において、エチレンオキシド鎖の繰り返し単位数がm=19以上など、一定以上大きくなると、水染み発生抑制効果が向上した。
また、実施例の中でも、グラフト共重合体のグラフト鎖(ポリマー鎖)において、エチレンオキシド鎖の繰り返し単位数がm=19以上など、一定以上大きい構成単位と、mが3以上10以下など一定以上小さい構成単位とを組み合わせて含有すると、耐溶剤性が向上し、且つ現像残渣抑制効果が向上した。
また、実施例の中でも、光開始剤として、ジフェニルスルフィド系オキシムエステル開始剤に、更にα-アミノケトン系光開始剤、カルバゾール骨格を有するオキシムエステル系光開始剤、ビイミダゾール系光開始剤、チオキサントン系光開始剤、及びベンゾフェノン系光開始剤からなる群から選択される少なくとも1種を組み合わせて含有すると、現像残渣抑制効果が向上し、且つ、微小孔の断面形状が向上した。
【符号の説明】
【0233】
1 基板
2 遮光部
3 着色層
5 微小孔
10 カラーフィルタ
20 対向基板
30 液晶層
40 液晶表示装置
50 有機保護層
60 無機酸化膜
71 透明陽極
72 正孔注入層
73 正孔輸送層
74 発光層
75 電子注入層
76 陰極
80 有機発光体
100 有機発光表示装置
図1
図2
図3
図4
図5