IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 鹿島建設株式会社の特許一覧 ▶ 西尾レントオール株式会社の特許一覧

<>
  • 特許-越境物監視システム及び越境物監視方法 図1
  • 特許-越境物監視システム及び越境物監視方法 図2
  • 特許-越境物監視システム及び越境物監視方法 図3
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-21
(45)【発行日】2024-07-01
(54)【発明の名称】越境物監視システム及び越境物監視方法
(51)【国際特許分類】
   G08B 21/02 20060101AFI20240624BHJP
   G01S 17/04 20200101ALI20240624BHJP
   G08B 25/00 20060101ALI20240624BHJP
   G08B 13/181 20060101ALI20240624BHJP
【FI】
G08B21/02
G01S17/04
G08B25/00 510M
G08B13/181
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2020051121
(22)【出願日】2020-03-23
(65)【公開番号】P2021149795
(43)【公開日】2021-09-27
【審査請求日】2023-01-12
(73)【特許権者】
【識別番号】000001373
【氏名又は名称】鹿島建設株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】523242745
【氏名又は名称】西尾レントオール株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100122781
【弁理士】
【氏名又は名称】近藤 寛
(74)【代理人】
【識別番号】100128107
【弁理士】
【氏名又は名称】深石 賢治
(72)【発明者】
【氏名】中村 隆寛
(72)【発明者】
【氏名】岡 尚人
(72)【発明者】
【氏名】柳田 克巳
(72)【発明者】
【氏名】荻野 裕昭
【審査官】吉村 伊佐雄
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-027637(JP,A)
【文献】特開2019-071578(JP,A)
【文献】特開2015-114152(JP,A)
【文献】特開2017-183837(JP,A)
【文献】特開2006-331154(JP,A)
【文献】特開2000-099862(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01S7/48-7/51
17/00-17/95
G08B13/00-15/02
19/00-31/00
H04N7/18
G08B 21/02
G06Q 50/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
建設現場に対して予め設定された境界を越えて移動する越境物を監視する越境物監視システムであって、
レーザーによって前記越境物を検出するセンサと、
前記境界を撮像する撮像装置と、
前記センサによる前記越境物の検出に応じたタイミングでの前記撮像装置の撮像によって得られた画像を所定の通知先に通知する通知手段と、
を備え
前記通知手段は、前記撮像装置による撮像によって得られた画像に基づいて、前記越境物の移動方向を判断して、判断した移動方向に応じた通知先に通知を行う越境物監視システム。
【請求項2】
前記通知手段は、前記画像に前記境界を示す表示を重畳して、重畳した画像を所定の通知先に通知する請求項1に記載の越境物監視システム。
【請求項3】
建設現場に対して予め設定された境界を越えて移動する越境物を監視する越境物監視システムの動作方法である越境物監視方法であって、
レーザーによって前記越境物を検出する検出ステップと、
前記境界を撮像する撮像ステップと、
前記検出ステップにおける前記越境物の検出に応じたタイミングでの前記撮像ステップにおける撮像によって得られた画像を所定の通知先に通知する通知ステップと、
を含み、
前記通知ステップにおいて、前記撮像ステップにおける撮像によって得られた画像に基づいて、前記越境物の移動方向を判断して、判断した移動方向に応じた通知先に通知を行う越境物監視方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建設現場に対して予め設定された境界を越えて移動する越境物を監視する越境物監視システム及び越境物監視方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、建設現場の敷地境界を越えて移動する越境物を監視するシステムが提案されている。例えば、特許文献1には、レーザー測距計によって越境物の有無を判定すると共にカメラによって敷地境界を撮像しておき、判定をトリガとして撮像によって得られた映像を保存するシステムが示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2015-114152号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記の越境物、例えば、建設現場から建設現場外への越境物がある場合、建設現場の担当者等が越境の事実及び越境物が何であるかを遅滞なく把握して対応する必要がある。しかしながら、上記の特許文献1に示される従来のシステムは、必ずしもそのニーズを満たすものではない。
【0005】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであり、建設現場における越境物を即時に適切かつ確実に把握することができる越境物監視システム及び越境物監視方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の目的を達成するために、本発明に係る越境物監視システムは、建設現場に対して予め設定された境界を越えて移動する越境物を監視する越境物監視システムであって、レーザーによって越境物を検出するセンサと、境界を撮像する撮像装置と、センサによる越境物の検出に応じたタイミングでの撮像装置の撮像によって得られた画像を所定の通知先に通知する通知手段と、を備える。
【0007】
本発明に係る越境物監視システムでは、センサによって越境物が検出されると境界の画像が所定の通知先に通知される。即ち、越境物が生じたタイミングで、越境物を把握することが可能な画像が通知される。この通知によって建設現場における越境物が把握される。即ち、本発明に係る越境物監視システムによれば、建設現場における越境物を即時に適切かつ確実に把握することができる。
【0008】
通知手段は、撮像装置による撮像によって得られた画像に基づいて、越境物の移動方向を判断して、判断した移動方向に応じた通知先に通知を行う。この構成によれば、越境物の移動方向に応じた適切な通知先に通知を行うことができる。
【0009】
通知手段は、画像に境界を示す表示を重畳して、重畳した画像を所定の通知先に通知することとしてもよい。この構成によれば、越境物の越境状態を更に適切に把握することができる。
【0010】
ところで、本発明は、上記のように越境物監視システムの発明として記述できる他に、以下のように越境物監視方法の発明としても記述することができる。これはカテゴリが異なるだけで、実質的に同一の発明であり、同様の作用及び効果を奏する。
【0011】
即ち、本発明に係る越境物監視方法は、建設現場に対して予め設定された境界を越えて移動する越境物を監視する越境物監視システムの動作方法である越境物監視方法であって、レーザーによって越境物を検出する検出ステップと、境界を撮像する撮像ステップと、検出ステップにおける越境物の検出に応じたタイミングでの撮像ステップにおける撮像によって得られた画像を所定の通知先に通知する通知ステップと、を含み、通知ステップにおいて、撮像ステップにおける撮像によって得られた画像に基づいて、越境物の移動方向を判断して、判断した移動方向に応じた通知先に通知を行う
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、建設現場における越境物を即時に適切かつ確実に把握することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の実施形態に係る越境物監視システムの構成を示す図である。
図2】越境物監視システムによって得られる画像の例である。
図3】本発明の実施形態に係る越境物監視システムで実行される処理を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面と共に本発明に係る越境物監視システム及び越境物監視方法の実施形態について詳細に説明する。なお、図面の説明においては同一要素には同一符号を付し、重複する説明を省略する。
【0015】
図1に本実施形態に係る越境物監視システム1を示す。越境物監視システム1は、建設現場(工事現場、工事敷地)に対して予め設定された境界を越えて移動する越境物を監視するシステム(装置)である。越境物監視システム1は、越境物の越境の事実を、越境時にリアルタイムに建設工事関係者等に通知する。
【0016】
境界は、越境物監視の観点で建設現場と建設現場の外部とを分ける境目である。境界は、例えば、屋外建設現場の近傍かつ外側に設けられる、地面(水平面、地上)から鉛直に延びる平面状の境界である。具体的には、境界は、建設現場の仮囲い鉛直上方に仮想的に設けられる。また、境界は、地面に接する領域まで設定されていなくてもよく、地面から2~3mより上に設定されていてもよい。越境物は、例えば、建設現場から飛散する建設に係る部材又は機材等の建設現場由来の物である。当該部材としては、誤って高所から落下してしまった資材やクレーン等で吊った長尺吊り荷の先端部分等がある。当該機材としては、クレーンのウエイト部分やブーム先端等がある。また、越境物は、建設現場由来の物に限らず、建設現場外に由来する物であってもよい。
【0017】
建設現場由来の物が建設現場外に飛散した場合、当該飛散物(飛来物)によっては、建設工事関係者は迅速な対処を行う必要がある。特に鉄道における線路等に近接している鉄道近接現場においては、線路等の鉄道に係る敷地への越境物の越境に関して厳格な管理を求められる。この際、越境物監視システム1からの通知によって、建設工事関係者等は、越境物を遅滞なく把握することができる。越境物監視システム1は、例えば、24時間×365日の監視を行ってもよい。
【0018】
引き続いて、本実施形態に係る越境物監視システム1の構成を説明する。図1に示すように本実施形態に係る越境物監視システム1は、レーザーバリア装置10と、カメラ20と、管理コンピュータ(サーバー)30とを含んで構成されている。レーザーバリア装置10及びカメラ20と管理コンピュータ30とは、有線又は無線の通信によって互いに情報の送受信を行うことができる。
【0019】
レーザーバリア装置10は、レーザーによって越境物を検出(検知)するセンサである。レーザーバリア装置10は、レーザー(レーザー測距線、検知線)を照射して、その反射光を検出して物体の位置(物体までの距離)を測定することで物体を検出する装置である。レーザーバリア装置10は、予め設定された上記の境界にレーザーを照射できる位置に位置決めされて固定されて設けられている。レーザーバリア装置10は、当該境界にレーザーを照射して、境界における越境物の通過を検出する。
【0020】
例えば、レーザーバリア装置10は、建設現場の仮囲いの現場側境界線上に設けられる。あるいは、レーザーバリア装置10は、高層足場等の上階層外壁ライン近傍に設けられてもよい。仮囲い近傍でなく高層足場上にレーザーバリア装置10を設置すれば、境界に近接した高層建物の場合も、レーザーバリア装置10の測距高さ範囲を超える上階層からの飛来、落下物を検出することができる。この場合、レーザーバリア装置10自体の落下防止のため、高層建物外周を覆う垂直の養生ネット内にレーザーバリア装置10を収めることとするのがよい。
【0021】
レーザーバリア装置10としては、従来の装置を用いることができる。従来の装置では、レーザーの到達範囲及び角度の上限(例えば、距離80m、角度190°)内で越境物を検出する境界を自由に設定することができる。設定したい境界がそれよりも広い場合、境界をカバーするように複数のレーザーバリア装置10を設けてもよい。
【0022】
なお、平面的にレーザーを照射する機構の従来装置を上述したように鉛直の平面状の境界の通過物の検出に用いる場合、レーザーバリア装置10は、平面状の境界の越境物の通過を検出することはできるが、越境物が何れの方向に通過したか(境界のどちら側から通過したか)は検出することができない。そのため、後述するように画像に基づく越境物の移動方向の判断を行う。レーザーバリア装置10は、越境物を検出するとその旨をリアルタイムに管理コンピュータ30に通知する。
【0023】
また、検出対象の越境物を、一瞬越境しただけのもの(例えば、鳥、旋回途中に一瞬だけ越境したクレーンブーム等)ではなく、越境し続けているもの(例えば、荷を吊っている時間中ずっと越境し続けているクレーンのウエイト、仮囲いをよじ登って敷地内へ侵入しようとしている侵入者等)とする場合、レーザーバリア装置10の監視(測距)スパンの長短を調節することで対応が可能である。例えば、1秒間隔に監視スパンを設定すれば、1秒スパンで越境継続時間が算出可能である。なお、監視スパンの設定は、従来の装置の機能として設けられている。
【0024】
カメラ20は、境界を撮像する撮像装置である。カメラ20は、越境物を監視する際に継続的に撮像を行う。例えば、カメラ20は動画撮像を行う。カメラ20は、例えば、平面状の境界を側面から撮像する。即ち、カメラ20は、平面状の境界の一方の側からもう一方の側への越境物の通過の方向と垂直な方向から撮像する。カメラ20は、そのような撮像が可能な位置に位置決めされて固定されている。図2にカメラ20によって撮像される画像(キャプチャ画像)の例を示す。図2の画像には、画像中の境界に相当する位置に境界を示す表示である敷地境界仮想ライン100が重畳されている(当該表示の重畳については後述する)。図2の例では、境界の左側が建設現場であり、仮囲いが画像に写っている。また、境界の右側が建設現場の外部であり、鉄道の線路が写っている。
【0025】
例えば、カメラ20は、レーザーバリア装置10と同じ位置に設置されてもよい。あるいは、カメラ20は、レーザーバリア装置10と同じ位置ではなく、レーザーバリア装置10と同軸となるような位置(レーザーの照射方向及び撮像方向が同じになる位置)でレーザーバリア装置10よりも後方に設置されてもよい。あるいは、カメラ20に広角レンズを用いて確実に境界の範囲を撮像できるようにしてもよい。また、レーザーバリア装置10とカメラ20とは、一体化された一つの機器であってもよい。越境を監視しやすくするため、カメラ20が撮像する境界部分に照明を設けておき、夜間等には必要に応じて照明を点灯してもよい。カメラ20は、雨よけの覆いや曇り止め機構を有してもよい。
【0026】
なお、カメラ20は、上記以外の方向から境界を撮像してもよく、上記以外の位置に設けられていてもよい。また、レーザーバリア装置10と同様に複数のカメラ20を設けてもよい。複数のレーザーバリア装置10及びカメラ20が設けられる場合、同一の境界の部分を監視するレーザーバリア装置10とカメラ20とを対応付けておく。
【0027】
カメラ20としては、動画撮像が可能な従来のカメラ(例えば、従来のWebカメラ)を用いることができる。カメラ20は、撮像によって得られた画像(動画)をリアルタイムに管理コンピュータ30に送信する。
【0028】
管理コンピュータ30は、レーザーバリア装置10及びカメラ20から入力された情報に基づいて、建設工事関係者等の所定の通知先への通知を行う装置である。管理コンピュータ30は、インターネット等の外部のネットワークに接続されており、外部のネットワークを介して所定の通知先へ情報を送信することができる。
【0029】
管理コンピュータ30としては、プロセッサ及びメモリ等のハードウェアを含んで構成されている従来のコンピュータを用いることができる。また、管理コンピュータ30は、複数のコンピュータを含むコンピュータシステムとして構成されていてもよい。管理コンピュータ30の後述する各機能は、これらの構成要素がプログラム等により動作することによって発揮される。
【0030】
図1に示すように、管理コンピュータ30は、通知部31を備える。通知部31は、レーザーバリア装置10による越境物の検出に応じたタイミングでのカメラ20の撮像によって得られた画像を所定の通知先に通知する通知手段である。通知部31は、カメラ20による撮像によって得られた画像に基づいて、越境物の移動方向を判断して、判断した移動方向に応じた通知先に通知を行ってもよい。通知部31は、画像に境界を示す表示を重畳して、重畳した画像を所定の通知先に通知してもよい。通知部31は、以下のように通知を行う。
【0031】
通知部31は、予め通知先を記憶している。通知部31による通知は、例えば、電子メールや各種のソーシャル・ネットワーキング・サービス(SNS)で行われる。例えば、電子メールで通知を行う場合、通知部31は、通知先のメールアドレスを記憶している。通知部31は、通知の方法に応じた通知先を記憶している。通知先は、予め設定されており、例えば建設工事関係者、具体的には工事事務所の所員(現場社員)である。また、通知先は、遠隔地にいる者であってもよい。
【0032】
通常、工事事務所の所員は、日中は本来の現場管理業務をこなしているため、専門の警備員のように境界を監視するためカメラ20によって撮像された動画像等を見続けることはできない。また、帰宅後及び休日における境界監視もできない。そのため、本実施形態のように越境物の越境(検出時)時のみ上記の通知を行う警報メールを受信し、どこにいても即時に越境の事実を把握したいというニーズがある。
【0033】
通知部31は、カメラ20から管理コンピュータ30に送信される画像を受信して記憶する。通知部31は、レーザーバリア装置10から管理コンピュータ30に対する越境物を検出した旨の通知を受信する。通知部31は、当該通知を受信すると、その時点で受信した画像(動画像を構成する画像の1つ)を添付して警告メールを上記の通知先に送信する。警告メールの本文等には、越境物が発生したことを分かりやすく伝えるための記載(例えば、本文に「エリア内に侵入」との定型文)がなされていてもよい。
【0034】
通知される画像は、その時点で受信した画像ではなく、レーザーバリア装置10から通知を受信したタイミングから一定時間(例えば、5秒)遡った画像としてもよい。あるいは、当該一定時間遡った時点からレーザーバリア装置10から通知を受信したタイミングまでの動画像、あるいは当該動画像から一定時間(例えば、1秒)毎に抽出した複数の画像としてもよい。このように動画像、あるいは複数の画像を通知することで、通知を受けた者は、これを参照して越境物が描く放物線を確認する等して、どこから(例えば、建物の何階か)越境物が飛来したものか目星を付けることができる。これにより、当該階で作業をしている作業員に遅滞なく適切な対応(現地確認や風散養生の徹底等)を指示することができる。
【0035】
また、通知部31は、画像を添付するのではなく、画像のリンク先(例えば、URL(Uniform Resource Locator))を通知して、通知先の端末からリンク先への画像の要求があった場合に画像を送信してもよい。
【0036】
通知部31は、画像に基づいて越境物の移動方向を自ら判断してもよい。具体的には、通知部31は、越境物が、建設現場側から外部に越境したのか、外部から建設現場側に越境したのかを判断してもよい。通知部31は、レーザーバリア装置10からの通知を受信すると、通知を受信したタイミングから一定時間(例えば、5秒)遡った時点から通知を受信したタイミングまでの動画像を用いて越境物の移動方向を判断する。通知部31は、例えば、これらの動画像に対してフレーム間差分法又は背景差分法を利用して、予め設定された画像中の境界の領域について移動体(越境物)を検出すると共に移動物の移動方向を判断する。例えば、図2に示すように画像において境界が縦方向のセンターラインとなり、建設現場側が左側、外部が右側に分かれる場合、越境物が左右のどちら側からどちら側へ移動したかを判断する。なお、越境物の移動方向の判断は、上記以外の方法で行われてもよく、判断される越境物の移動方向は、上記以外の方向であってもよい。
【0037】
通知部31は、予め越境物の方向毎に通知先を記憶しており、判断された方向の通知先に画像を通知する。例えば、建設現場側から外部に越境した場合の通知先は、工事事務所の所員及び越境先関係者である。越境先関係者は、例えば、建設現場に隣接する鉄道の関係者(例えば、鉄道会社の担当者)や、建設現場に隣接する道路の管理者(行政担当者)である。また、外部から建設現場側に越境した場合の通知先は、工事事務所の所員のみである。即ち、越境先関係者は通知先ではない。
【0038】
越境先関係者は、自身の管轄領域(鉄道軌道上や道路上)に越境物が飛来した場合、事故防止のため、越境物除去等に即座に対処する必要等があるためである。一方で、工事事務所の所員も、建設現場由来の越境物が外部に飛来した場合、建設工事者として越境物除去等に即座に対処する必要等があると共に、建設現場に外部から越境物が飛来した場合も、建設現場内の安全確保のため適切に対処する必要等があるためである。例えば、外部から建設現場への越境物が引火性の高いもの又は危険物等であった場合、即座に建設現場から除去する等の必要がある。
【0039】
即ち、越境先関係者に対しては、越境物の移動方向が建設現場側から外部への方向の場合のみに通知を行って、工事事務所の所員に対しては越境物の移動方向が何れの方向の場合も通知を行う。また、通知部31は、画像の通知の際にあわせて判断した越境物の移動方向も通知してもよい。なお、越境物の移動方向に応じた通知は、必ずしも上記のように行われる必要はなく、判断された越境物の移動方向に応じて予め設定された任意の通知先に行われればよい。
【0040】
通知部31は、通知する画像に境界線(境界面)を示す表示を重畳してもよい。例えば、図2に示すように画像中の境界に相当する位置に境界を示す表示である敷地境界仮想ライン100を重畳してもよい。上述したようにカメラ20は、固定されて設置されているので画像中の境界に相当する位置は、特定の位置となる。通知部31は、重畳する表示を予め記憶しておき、それを用いて画像への重畳を行う。画像に対する表示の重畳は、例えば、デジタル的にレイヤー処理する等の従来の方法で行われればよい。また、画像に対する表示の重畳は、画像重ね合わせ用サーバーを経由して行われてもよい。
【0041】
複数のレーザーバリア装置10及びカメラ20が設けられる場合、通知部31は、予めそれらの対応関係を記憶しておく。通知部31は、レーザーバリア装置10からの通知があった場合、通知を行ったレーザーバリア装置10に対応するカメラ20によって撮像された画像を警告メールに添付して通知する。この場合、警告メールを受信した人が、通知された画像が建設現場のどこを写した画像であるかを即座に理解できるように、通知部31は、送信する画像を撮像したカメラ20に応じた情報を画像に重畳してもよい。例えば、カメラ20を特定する情報(具体的にはカメラNo.等)、あるいは、カメラ20が設置されている場所を示す情報(具体的には「北側仮囲い沿いY2通り東向きに設置のNo.1カメラにより越境物を検知しました」等の記載)を重畳してもよい。また、これらの記載は、画像ではなく、警告メールの本文に記載されてもよい。また、通知部31は、必要に応じて上記以外の情報を画像に重畳してもよい。例えば、建設現場内の仮想の通り芯や、仮想の1m間隔のグリッド線等である。
【0042】
通知部31は、画像に基づいて越境物の位置を検出してもよい。検出される越境物の位置としては、例えば、カメラ20からの距離(例えば、No.3のカメラ20から西方向へ水平距離5m、高さ25m)、又は予め設定された基準位置(例えば、設定された通り芯)からの距離(例えば、X10通りからX9方向へ水平距離2m、高さ20m)である。越境物の位置の検出に画像としては、例えば、上述した越境物の移動方向を判断するための画像の一部を用いることができる。画像に基づく越境物の位置の検出は、従来の画像に基づく位置検出の方法を用いることができる。通知部31は、検出した越境物の位置を示す情報(例えば、上記の越境物の位置を示す記載)を、通知対象となる画像、即ち、警告メールに添付する画像に重畳するか、警告メールの本文に含める。
【0043】
通知部31は、画像に基づいて越境物が何であるか、即ち、越境物の種別を判断してもよい。例えば、越境物が、鳥であるか、建設資材(例えばボルト等)であるか等を判断してもよい。具体的には、通知部31は、越境物の種別毎の可能性を判断してもよい。例えば、通知部31は、越境物が鳥である可能性:80%、越境物がボルトである可能性:5%といった判断を行ってもよい。上記の判断に画像としては、例えば、上述した越境物の移動方向を判断するための画像の一部を用いることができる。画像に基づく越境物の位置の検出は、従来の物体の種別を識別する方法を用いることができる。例えば、画像を入力して物体を識別する機械学習エンジンを予め学習によって生成して通知部31に記憶させておき、通知部31が画像を機械学習エンジンに入力して越境物の種別を判断する。通知部31は、判断した越境物の種別を示す情報(例えば、上記の越境物の種別を示す記載)を、通知対象となる画像、即ち、警告メールに添付する画像に重畳するか、警告メールの本文に含める。
【0044】
また、警告メールに添付される画像及び警告メールの本文等には、上記以外の工夫が凝らされていてもよい。以上が、本実施形態に係る越境物監視システム1の構成である。
【0045】
引き続いて、図3のフローチャートを用いて、本実施形態に係る越境物監視システム1で実行される処理(越境物監視システム1が行う動作方法)である越境物監視方法を説明する。まず、レーザーバリア装置10によって、レーザーによる越境物の監視が行われる(S01、検出ステップ)。また、カメラ20によって、監視対象である境界が撮像される(S02、撮像ステップ)。撮像された画像は、カメラ20から管理コンピュータ30に送信される。レーザーバリア装置10による越境物の監視(S01)及びカメラ20による境界の撮像(S02)は継続的に行われる。
【0046】
レーザーバリア装置10による監視によって越境物が検出された場合(S03のYES、検出ステップ)、管理コンピュータ30の通知部31によって、レーザーバリア装置10による越境物の検出に応じたタイミングでのカメラ20の撮像によって得られた画像が、所定の通知先に通知される(S04、通知ステップ)。この際、上述したように画像に境界を示す表示が重畳されてもよい。また、画像に基づいて、越境物の移動方向が判断されて、判断された移動方向に応じた通知先に通知が行われてもよい。通知部40によって送信された画像は、工事事務所の所員等の端末(例えば、スマートフォン、タブレット端末、PC(パーソナルコンピュータ))等によって受信されて、越境物の越境が把握される。以上が、本実施形態に係る越境物監視システム1で実行される処理である。
【0047】
本実施形態では、レーザーバリア装置10によって越境物が検出されると境界の画像が所定の通知先に通知される。即ち、越境物が生じたタイミングで、越境物を把握することが可能な画像が通知される。この通知によって、リアルタイムに建設工事関係者等に建設現場における越境物が把握される。即ち、本実施形態によれば、建設現場における越境物を即時に適切かつ確実に把握することができる。また、通知される画像は、越境物が発生したことの根拠(エビデンス)として、越境物の越境先への説明等にも用いることができる。
【0048】
また、本実施形態のようにカメラ20による撮像によって得られた画像に基づいて、越境物の移動方向を判断して、判断した移動方向に応じた通知先に通知を行ってもよい。この構成によれば、越境物の移動方向に応じた適切な通知先に通知を行うことができる。例えば、上述したように越境物が、建設現場側から外部に越境したのか、外部から建設現場側に越境したのかに応じて適切な通知先に通知を行うことができる。また、越境物の方向が工事事務所の所員等に遅滞なく把握されれば、警告メール受信後の工事事務所の所員等の初動を臨機応変に変えることができる。例えば、越境物が建設現場側から外部に越境したものであれば、夜間休日を問わず至急対応が必要であるが、越境物が外部から建設現場側に越境したものであれば越境物によっては翌日対応とする等の判断もできる。但し、越境物の移動方向の判断、及び移動方向に応じた通知先への通知は、必ずしも行われる必要はない。
【0049】
また、本実施形態のように通知する画像に境界を示す表示を重畳してもよい。この構成によれば、越境物の越境状態を更に適切に把握することができる。但し、画像への重畳は必ずしも行われる必要はない。
【0050】
なお、カメラ20の撮像によって得られた画像(動画像)は、管理コンピュータ30に保存されて、事後の確認等に用いられてもよい。例えば、越境物が建設現場由来か否かの証拠保全に用いられてもよい。
【符号の説明】
【0051】
1…越境物監視システム、10…レーザーバリア装置、20…カメラ、30…管理コンピュータ、31…通知部。
図1
図2
図3