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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-21
(45)【発行日】2024-07-01
(54)【発明の名称】繊維含有化粧料
(51)【国際特許分類】
   A61K 8/73 20060101AFI20240624BHJP
   A61K 8/64 20060101ALI20240624BHJP
   A61K 8/9789 20170101ALI20240624BHJP
   A61K 8/98 20060101ALI20240624BHJP
   A61Q 1/10 20060101ALI20240624BHJP
   A61Q 1/02 20060101ALI20240624BHJP
   A61Q 3/02 20060101ALI20240624BHJP
【FI】
A61K8/73
A61K8/64
A61K8/9789
A61K8/98
A61Q1/10
A61Q1/02
A61Q3/02
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2020057304
(22)【出願日】2020-03-27
(65)【公開番号】P2021155361
(43)【公開日】2021-10-07
【審査請求日】2022-12-16
(73)【特許権者】
【識別番号】000145862
【氏名又は名称】株式会社コーセー
(74)【代理人】
【識別番号】100112874
【弁理士】
【氏名又は名称】渡邊 薫
(74)【代理人】
【識別番号】100147865
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 美和子
(72)【発明者】
【氏名】萩野 亮
【審査官】佐々木 典子
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-211128(JP,A)
【文献】特開2016-041673(JP,A)
【文献】特開2015-071587(JP,A)
【文献】特開2014-028785(JP,A)
【文献】特開2003-146829(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2014/0134217(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 8/00- 8/99
A61Q 1/00-90/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
次の成分(A);
(A)(a1)疎水化処理剤 で処理された (a2)非プラスチック繊維であり、当該(a2)非プラスチック繊維の平均長さが0.1mm~4mmであり、平均太さが10μm~50μmである、
を含有する化粧料。
【請求項2】
記(a1)疎水化処理剤として、アルキルアルコキシシラン、脂肪酸及びその塩、金属石鹸、アシル化アミノ酸及びその塩、レシチンから選ばれる1種又は2種以上を含む請求項1に記載の化粧料。
【請求項3】
前記(a2)非プラスチック繊維として、植物性繊維及び動物性繊維から選ばれる1種又は2種以上を含む請求項1又は2に記載の化粧料。
【請求項4】
前記植物性繊維として、セルロース、レーヨン、アセテート、麻、コットンから選ばれる1種又は2種以上、又は、前記動物性繊維として、シルク、ウール、蜘蛛糸から選ばれる1種又は2種以上を含む請求項3に記載の化粧料。
【請求項5】
さらに成分(B)着色顔料を含む請求項1~4の何れか1項に記載の化粧料。
【請求項6】
前記成分(A)として、成分(B)着色顔料を表面吸着させたa2)非プラスチック繊維が(a1)疎水化処理剤で疎水化表面処理されたもの、および、(a1)疎水化処理剤で表面処理された成分(B)着色顔料が(a2)非プラスチック繊維に表面吸着されたものから選ばれる1種または2種以上を含有する請求項1~の何れか1に記載の化粧料。
【請求項7】
前記成分(B)着色顔料として、酸化鉄、カーボンブラック、酸化チタン、黒酸化チタン、(チタン/酸化チタン)焼結物、グンジョウ、コンジョウ、マンガンバイオレット、カルミン、タール色素から選ばれる1種または2種以上を含む請求項5又は6に記載の化粧料。
【請求項8】
化粧料がケラチン繊維用化粧料である請求項1~の何れか1に記載の化粧料。
【請求項9】
さらに成分(C)植物系樹脂を含む請求項1~8の何れか1項に記載の化粧料。
【請求項10】
さらに成分(C)植物系樹脂として、ロジン酸及びロジン酸と多価アルコールとのエステルのロジン酸誘導体、カルナウバロウエキス、およびキャンデリラロウエキスから選ばれる1種または2種以上を含む請求項1~の何れか1に記載の化粧料。
【請求項11】
化粧料が合成樹脂由来のマイクロプラスチック繊維を含まない請求項1~10の何れか1に記載の化粧料。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、疎水化処理された天然由来繊維を含有する化粧料に関する。
【背景技術】
【0002】
化粧料には疑似毛髪としての効果や光学的な効果、使用感の調整を目的として、繊維が配合されることがある。
【0003】
従来、これらの繊維にはその太さや長さ、機械的強度や撥水性等の物性の調整の容易さからナイロン繊維やポリオレフィン繊維など合成樹脂由来のものが多く使用されてきた。一方で、近年マイクロプラスチックによる海洋を中心とする環境への悪影響が懸念されており、化粧料に配合される繊維成分においても対応が必要となってきている。
【0004】
環境に配慮した繊維としては、例えばポリ乳酸等の生分解性を有する合成樹脂繊維をマスカラに配合する技術(例えば特許文献1)や、シルク繊維を用いるマスカラ技術(例えば特許文献2)や、固形樹脂繊維として、ウール繊維、レーヨン繊維、セルロース系繊維等を用いる整髪化粧料技術(例えば特許文献3)等が提案されている。
【0005】
また、織物や服飾用途において、セルロース繊維の撥水加工技術として、イソシアネートとフッ素系樹脂を用いてセルロースにフッ素樹脂を架橋結合させる技術(例えば特許文献4)や、カルボキシル基又はスルホン基を有する化合物とイソシアネート系化合物及び非フッ素系撥水剤を用いる技術(例えば特許文献5)等が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2016-27214号公報
【文献】特開平6-9340号公報
【文献】特開2004-323421号公報
【文献】特開2002-266241号公報
【文献】特開2019-65443号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、例えば特許文献1に記載のポリ乳酸等の生分解性を有する合成樹脂繊維は、微生物を多量に含む堆肥中では生分解性が十分に高いものの、現在課題となっている海洋中での生分解性は十分とは言い切れない課題があった。また、特許文献2や3のような天然由来の繊維は、主な構造構成成分が糖類やアミノ酸等であるため、合成樹脂と比較して肌やケラチン繊維に対して親和性が高いものの、撥水性に劣っているものが多く、その結果、化粧料中での分散状態や仕上がり後の化粧持続性の点で課題があった。
また、例えば特許文献4や5のようなイソシアネート系化合物と撥水剤を用いる技術では、耐久性が強く撥水効果の高い繊維は得られるものの、撥水剤そのものがポリマー、またはポリマー化しやすく、生分解性を有さないため、環境への悪影響を与える恐れがあった。
【0008】
そこで、本発明は、マイクロプラスチックを含まない天然系の繊維を用いて、従来の合成樹脂繊維を用いたものと遜色のない化粧料を提供することを主な目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者は、鋭意検討の結果、特定の疎水性表面処理を施したセルロ-ス繊維やシルク繊維等の天然系繊維を配合することで、皮膚または毛髪に対し繊維の均一な付着性があり、化粧持続性に優れる化粧料が得られることを見出し、本発明を完成させた。
【0010】
すなわち、本発明は
〔1〕 次の成分(A);
(A)(a1)疎水化処理剤 で表面処理された(a2)非プラスチック繊維を含有する化粧料。
〔2〕
前記成分(A)の平均長さが0.1mm~4mmであり、平均太さが10μm~50μmである前記〔1〕に記載の化粧料。
〔3〕
前記成分(a1)疎水化処理剤として、アルキルアルコキシシラン、脂肪酸及びその塩、金属石鹸、アシル化アミノ酸及びその塩、レシチンから選ばれる1種又は2種以上を含む前記〔1〕又は〔2〕に記載の化粧料。
〔4〕
前記成分(a2)非プラスチック繊維として、セルロース、レーヨン、アセテート、麻、コットン等の植物性繊維、シルク、ウール、蜘蛛糸等の動物性繊維から選ばれる1種又は2種以上を含む前記〔1〕~〔3〕の何れか1つに記載の化粧料。
〔5〕
さらに成分(B)着色顔料として、酸化鉄、カーボンブラック、酸化チタン、黒酸化チタン、(チタン/酸化チタン)焼結物、グンジョウ、コンジョウ、マンガンバイオレット、カルミン、タール色素から選ばれる1種または2種以上を含有する〔1〕~〔4〕の何れか1つに記載の化粧料。
〔6〕
前記成分(A)として、前記成分(B)着色顔料を表面吸着させた成分(a2)が成分(a1)で疎水化表面処理されたもの、および前記成分(a1)疎水化処理剤で表面処理された(B)着色顔料が(a2)に表面吸着されたものから選ばれる1種または2種以上を含有する前記〔1〕~〔5〕の何れか1つに記載の化粧料。
〔7〕
化粧料がケラチン繊維用化粧料である前記〔1〕~〔6〕の何れか1つに記載の化粧料。
〔8〕
さらに成分(C)植物系樹脂として、ロジン酸及びその誘導体、カルナウバロウエキス、およびキャンデリラロウエキスから選ばれる1種または2種以上を含む前記〔1〕~〔7〕の何れか1つに記載の化粧料。
〔9〕
実質的に合成樹脂を含まない前記〔1〕~〔8〕の何れか1つに記載の化粧料。
【発明の効果】
【0011】
本技術によれば、環境負荷のあるマイクロプラスチックを用いることなく、繊維が皮膚またはケラチン繊維に均一に付着し、その特性を十分に発揮できる上、化粧持続性にも優れる化粧料を提供することができる。
ここに記載された効果は、必ずしも限定されるものではなく、本明細書中に記載されたいずれかの効果であってもよい。
【発明を実施するための形態】
【0012】
次に、本技術の好ましい実施形態について詳細に説明する。ただし、本技術は以下の好ましい実施形態に限定されず、本技術の範囲内で自由に変更することができるものである。尚、本明細書において百分率は特に断りのない限り質量による表示である。なお、本明細書においては、~を用いて数値範囲を表す際は、その範囲は両端の数値を含むものとする。また、平均長さ、平均幅、平均粒子径は、走査型電子顕微鏡(日本電子製、JSM-7800prime)、または光学顕微鏡を用いて観察し、画像解析装置(ルーゼックスAP、ニレコ社製)による測定により求めた値(メジアン径D50)を示すものである。
【0013】
<本技術の疎水化処理非プラスチック繊維>
本技術の(A)疎水化処理非プラスチック繊維は(a1)疎水化処理剤を用いて(a2)非プラスチック繊維を処理したものである。
【0014】
成分(a2)非プラスチック繊維は化学合成によるポリマーを含まない繊維であり、素材として具体的には麻、コットン、イグサ等の繊維、パルプ等から精製して得られるセルロース繊維、セルロース再生繊維であるレーヨン、セルロースをアセチル化して得られる半合成のアセテート繊維等の植物性繊維や、シルク、ウール、カシミヤ、モヘア、キャメル、蜘蛛糸等の動物が産生する動物性繊維が挙げられる。その中でも、肌及びケラチン繊維への均一な付着性、(a1)による疎水化処理のしやすさ、経済性の観点からセルロース、レーヨン、アセテート、麻、コットン、シルク、ウール、蜘蛛糸が好ましい。これらの繊維は、内部に別の物質を練りこんで繊維状にしても良く、天然由来の成分により染められていても良く、複合化の有無は特に限定しない。
【0015】
本発明の(a2)非プラスチック繊維の平均長さと平均太さは、温度25℃、湿度50%の環境下において無作為に選択した50本の繊維を、光学顕微鏡、または電子顕微鏡で観察した平均値で得られる。繊維の平均長さは、繊維の長径の平均粒子径を計測したものであり、0.1mm~5mmが好ましく、0.1mm~4mmがより好ましく、0.5mm~3mmが更に好ましい。また繊維の平均太さは、繊維の形状に寄らず、繊維の最短径を計測したものではなく、長径を軸としたときの最大幅である回転直径の平均値を示すものである。5μm~80μmが好ましく、10μm~50μmがより好ましい。繊維の平均長さ、平均太さがこの範囲であれば、繊維の均一な付着性、化粧持続性の点で特に良好なものが得られる。
【0016】
成分(a1)疎水化処理剤は、非プラスチック繊維の表面特性を改質するものであり、一般にプラスチック繊維に比べて非プラスチック繊維は親水性が高く、化粧料中に配合された際の分散性や化粧膜の持続性に課題があるため、その他成分に混合しやすい状態にするために予め処理するものである。疎水化処理剤は、繊維の表面に化学的結合または静電的あるいは物理的吸着し、表面を疎水化するものであり、具体的には、例えば、メチルハイドロジェンポリシロキサン、末端アルコシシジメチルポリシロキサン、アクリルシリコーン、フッ素化シリコーン等のオルガノシロキサン、アルキルアルコキシシラン、パーフルオロアルキルアルコキシシラン等のシランカップリング剤、トリイソステアリン酸イソプロピルチタン等のチタネートカップリング剤、ミリスチン酸、ステアリン酸カリウム等の脂肪酸及びその塩、ラウリン酸亜鉛、ミリスチン酸マクネシウム、ステアリン酸アルミニウム等の金属石鹸、ステアロイルグルタミン酸ナトリウムまたは2ナトリウム、パルミトイルグルタミン酸マグネシウム、ステアロイルアスパラギン酸ナトリウム、N-ラウロイル-L-リジン等のアシルアミノ酸塩、例えば大豆、卵黄、ひまわり等から得られるレシチン等が挙げられる。その中でも、処理剤自身がマイクロプラスチックに該当しないこと、繊維への処理のしやすさ、化粧持続性の観点から、アルキルアルコキシシラン、脂肪酸及びその塩、金属石鹸、アシル化アミノ酸及びその塩、レシチンが好ましい。
【0017】
成分(a1)の成分(a2)への処理方法については、通常公知の処理方法を用いることができるが、具体的には、前記処理剤を水、アセトン、イソプロパノール、イソドデカン等の揮発性溶媒に溶解又は分散し、その中に繊維の一種または二種以上を加え、撹拌後、溶媒を留去して繊維上に処理剤を吸着させ、場合によっては更に焼き付け処理をする方法や、前記処理剤が金属石鹸やアシル化アミノ酸塩の場合は、脂肪酸又はアシル化アミノ酸の水溶液に繊維を加えて分散した後、塩化亜鉛等の金属塩を加えて処理剤の金属石鹸又はアシル化アミノ酸塩を繊維に析出・吸着させる方法等が挙げられる。尚、本発明に用いられる成分(a2)非プラスチック繊維は合成繊維に比べ耐熱性が弱い傾向にあるため、処理時の温度は120℃を超えないことが好ましく、110℃以下であることがより好ましい。成分(a1)に用いられる疎水化処理剤による繊維の処理量は、処理剤の種類によっても異なるが、概ね繊維の0.1~20%が好ましく、0.5~10%が特に好ましい。
【0018】
本発明における成分(A)疎水化処理非プラスチック繊維の含有量は、下限としては、好ましくは0.1%以上、より好ましくは1%以上、さらに好ましくは3%以上、上限として好ましくは20%以下、より好ましくは15%以下、さらに好ましくは7%以下である。含有量がこの範囲であれば、繊維による化粧効果、化粧持続性の点で特に良好なものが得られる。
【0019】
本発明の成分(B)は、酸化鉄、カーボンブラック、酸化チタン、黒酸化チタン、(チタン/酸化チタン)焼結物、グンジョウ、コンジョウ、マンガンバイオレット、カルミン、タール色素等の着色顔料から選ばれるものを含有することができる。成分(B)は化粧料に色を付ける効果を付与するものであれば、特に形状・粒径は限定せず、1種または2種以上組み合わせて配合してもよい。また、成分(A)は、成分(a2)の繊維に、成分(B)を予め表面に付着させるか繊維内部に分散させたものを(a1)により疎水化処理しても良く、予め(a1)で疎水化処理した成分(B)を成分(a2)に被覆吸着処理させても良い。なお、これらの処理を行う場合に、成分(B)の化粧料中の分散性を向上させ、特に発色と化粧持ちに優れる化粧料が得られる場合がある。本発明における、成分(B)の含有量は、下限として0%以上、好ましくは1%以上、より好ましくは3%以上であり、上限として、好ましくは20%以下、より好ましくは15%以下、更に好ましくは10%以下である。
【0020】
本発明には成分(C)として天然樹脂を配合することができる。成分(C)の天然樹脂は動植物から抽出される固体~高粘度液体の不揮発性成分であり、成分(A)疎水化処理非プラスチック繊維の化粧料中での分散性及び肌やケラチン繊維への付着力を向上する目的で使用される。成分(A)の分散が良い油溶性かつ肌やケラチンへの付着に優れる親水部位を同時に有していることが好ましく、具体的にはロジン酸、ロジン酸とペンタエリスリット、ジペンタエリスリット、グリセリン、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、ネオペンチルグリコール、トリメチロールプロパン、ヘキサントリオール等の多価アルコールとのエステル等のロジン酸誘導体、カルナウバロウの樹脂分を濃縮したカルナウバロウエキス、キャンデリラロウの樹脂分を濃縮したキャンデリラロウエキス等が挙げられる。
【0021】
本発明における成分(C)の天然樹脂の含有量は、下限として、好ましくは0.1%以上、より好ましくは0.5%以上、さらに好ましくは3%以上であり、上限として、好ましくは30%以下、より好ましくは20%以下、さらに好ましくは10%以下である。含有量がこの範囲であれば、化粧料中での繊維の分散状態、繊維の均一な付着、化粧持続性の点で特に良好なものが得られる。
【0022】
本発明はマイクロプラスチックを用いないという観点から、本発明の化粧料中で、繊維以外の成分においても合成樹脂を使用しないことが好ましい。合成樹脂とは、天然由来の加工物は含まず、モノマーを出発とする有機合成により得られる皮膜を形成する高分子であり、25℃において水への溶解度が0.1g/100ml以下であり、水中で固体の形状を有するものと本発明では定義する。
【0023】
本発明の化粧料は、上記必須成分を含有する化粧料であれば、剤型は特に限定されないが、本発明の効果が特に発揮されやすい剤型は、連続相が油相である油性型、または油中水型、粉末、粉末固型が好ましい。また、本発明の化粧料の形態は、液状、ペースト状であると、肌への塗布性等の使用性、化粧膜の均一性等の観点より好ましい。
【0024】
本発明の化粧料には、上記成分の他、本発明の効果を損なわない範囲で、必要に応じて、油剤、粉体、界面活性剤及び、ベンゾフェノン系,PABA系,ケイ皮酸系,サリチル酸系,4-tert-ブチル-4’-メトキシジベンゾイルメタン,オキシベンゾン等の紫外線吸収剤、多価アルコール,タンパク質,ムコ多糖,コラーゲン,エラスチン等の保湿剤、α-トコフェロール,アスコルビン酸等の酸化防止剤、ビタミン類、消炎剤,生薬等の美容成分、パラオキシ安息香酸エステル,フェノキシエタノール,1,3-ブチレングリコール等の防腐剤、メチルセルロース,ヒドロキシメチルセルロース,キサンタンガム,カラギーナン,グアーガム,寒天,ペクチン等の水系増粘剤、水、香料等を適宜配合することができる。
【0025】
本発明の化粧料において、油剤を配合することにより、エモリエント感を付与したり、硬さや塗布時の感触を調整することができる。ここで用いられる油剤としては、成分(C)の天然樹脂以外のものであり、通常化粧料に用いられる油剤であれば特に限定されず、動物油、植物油、合成油等の起源及び、固形油、半固形油、液体油、揮発性油等の性状を問わず、炭化水素類、油脂類、ロウ類、硬化油類、エステル油類、脂肪酸類、高級アルコール類、シリコーン油類、フッ素系油類、ラノリン誘導体類等の油剤が挙げられ、これらを一種又は二種以上用いることができる。本発明の化粧料における、これら油剤の配合量は、概ね10~80%である。
【0026】
本発明の化粧料において、粉体を配合することにより、着色効果、紫外線遮断効果、メーキャップ効果等を付与でき、更に感触を調整することができる。ここで用いられる粉体としては、通常化粧用粉体として用いられている粉体であれば、球状、板状、針状等の形状、煙霧状、微粒子、顔料級等の粒子径、多孔質、無孔質等の粒子構造等により特に限定されず、無機粉体類、光輝性粉体類、有機粉体類、色素粉体類、金属粉体類、複合粉体類等が挙げられる。尚、これら粉体は、フッ素系化合物、シリコーン系化合物、金属石鹸、レシチン、水素添加レシチン、コラーゲン、炭化水素、高級脂肪酸、高級アルコール、エステル、ワックス、ロウ、界面活性剤等の一種又は二種以上を用いて表面処理を施してあっても良い。本発明の化粧料における、これら粉体の配合量は、粉体の配合目的等により異なるが、概ね0.1~60%である。
【0027】
本発明の化粧料において、乳化剤、分散剤、湿潤剤等の目的で、界面活性剤を配合することができる。ここで用いられる界面活性剤としては、通常化粧料に用いられている界面活性剤であれば、何れでも良く、非イオン性界面活性剤、アニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、両性界面活性剤等が挙げられ、これらを一種又は二種以上を用いることができる。尚、本発明の化粧料における、界面活性剤の配合量は、界面活性剤の配合目的により異なるが、概ね0.01~15%である。
【0028】
前記化粧料として、具体的には、例えば、乳液、クリーム、化粧水、美容液、パック、オールインワンジェル、日焼け止め、洗浄料などの基礎化粧料、メイク下地、BBクリーム、ファンデーション、白粉、頬紅、口紅、アイブロウ、マスカラ、アイライナー、ネイルエナメル等のメイクアップ化粧料、養毛料、疑似増毛剤、ヘアトニック、シャンプー、リンス、ヘアワックス等の頭髪用化粧料、分散液、軟膏、液剤、エアゾール、貼付剤、パップ剤、リニメント剤等のいずれの形態であってもよい。これらの中でも、本技術の繊維の効果が顕著に発揮される点から、アイブロウ、マスカラ、ネイルエナメル、頭髪化粧料等のケラチン繊維に使用される化粧料であることが好ましい。
【0029】
次に、実施例を挙げて本発明を更に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【0030】
[成分(A)の疎水化処理非プラスチック繊維の製造実施例1]
PC純度90%のレシチン5部をイソプロパノール100部に溶解させ、そこに平均長さ3mm、平均太さ40μmのパルプ由来セルロース繊維(a2-1)95部を分散させた。
撹拌しながら80℃に加熱してイソプロパノールを減圧乾燥し、粉砕後、レシチン5%処理セルロースを得た。
【0031】
[成分(A)の疎水化処理非プラスチック繊維の製造実施例2]
精製水120部にラウリン酸ナトリウム3部を70℃で加熱溶解させ、室温冷却後、そこに平均長さ1mm、平均太さ25μmの絹紡糸(a2-2)97部を分散させた。そこに10%塩化亜鉛水溶液10部を加え、10分撹拌しラウリン酸亜鉛を絹紡糸表面に析出させた。精製水による洗浄と濾過を2度行った後に50℃で減圧乾燥させ、粉砕後、ラウリン酸亜鉛3%処理シルクを得た。
【0032】
[成分(A)の疎水化処理非プラスチック繊維の製造実施例3]
オクチルトリエトキシシラン2部をイソプロパノール60部に溶解させ、そこに平均長さ2mm、平均太さ40μmのレーヨン繊維(a2-3)98部を分散させた。撹拌しながら70℃に加熱してイソプロパノールを減圧乾燥し、オクチルトリエトキシシラン2%処理レーヨンを得た。
【0033】
[成分(A)の疎水化処理非プラスチック繊維の製造実施例4]
平均長さ2mm、平均太さ22μmのメリノー種ウール繊維(a2-4)97部にパルミトイルグルタミン酸Mg、パルミトイルサルコシンNa、パルミトイルプロリン、パルミチン酸の混合物(SEPIFEEL ONE、SEPPIC社製)3部を添加し、パウダーミキサーを用いて60℃において5分間混合した。室温冷却後粉砕し、アシル化アミノ酸3%処理ウールを得た。
【0034】
下記表1に示す処方の油性マスカラを調製し、ロングラッシュ効果、化粧膜の均一性、化粧持続性及び耐水性を下記の方法により評価した。その結果を表1に示す。
【0035】
【表1】
※1:パインクリスタルKE-311(荒川化学工業社製)
※2:レオパールKL2(千葉製粉社製)
※3:カルナバワックスをイソプロパノールで抽出、蒸留して得られ、軟化点が70℃、ヨウ素価が40である樹脂組成物
※4:AEROSIL 300(日本アエロジル社製)
※5:BENTONE 38V BC(エレメンティス社製)
※6:TAROX IRON OXIDE ABL-412HP(チタン工業社製)
※7:タルクJA-46R(浅田製粉社製)
【0036】
(製造方法)
A.成分(1)~(8)を100℃に加熱し、均一に混合する。
B.室温冷却後、成分(9)~(22)を成分Aに加え、均一に分散する。
C.Bを容器に充填して製品とする。
【0037】
(評価方法)
下記評価項目について各々下記方法により評価を行った。
(評価項目)
a.ロングラッシュ効果:睫が長くなる化粧効果が得られるかどうか
b.化粧膜の均一性:マスカラ液及び繊維が塊状に付着せず一定の厚みを持っているかどうか
c.化粧持続性:時間が経っても化粧効果が持続しているかどうか
評価項目a、bについて、各試料を用いて専門パネル20名による使用テストを行い、パネル各人が下記絶対評価基準にて7段階に評価し評点を付け、各試料のパネル全員の評点合計から、その平均値を算出し、下記判定基準により判定した。評価項目cについては使用後パネルに通常生活をしてもらい、8時間後に評価を行った。
<絶対評価基準>
(評点):(評価)
6 :非常に良い
5 :良い
4 :やや良い
3 :普通
2 :やや悪い
1 :悪い
0 :非常に悪い
<判定基準>
(判定):(評点の平均点)
◎ :5点を超える :非常に良好
○ :3.5点を超える5点以下:良好
△ :2点を超える3.5点以下:やや不良
× :2点以下 :不良
【0038】
d.耐水性の評価方法
ガラス板状にアプリケーターを用いて、各マスカラを400μmの厚さとなるように塗工した後、室温で4時間乾燥させてマスカラ塗膜を作成する。作成したマスカラ塗膜の表面に水0.8gを滴下し、5分経過後不織布にて水滴をふき取り、塗膜の状態及び不織布への付着状態を目視で観察する。
(評価基準)
◎:塗膜に変化はなく、不織布に水以外の付着物はない。
○:塗膜に変化はないが、不織布に僅かに繊維又はマスカラ液の付着が見られる。
△:塗膜の表面に僅かに擦れ跡等の変化があり、不織布に繊維又はマスカラ液の付着が見られる。
×:塗膜の表面に明らかに擦れ跡があり、不織布に繊維及びマスカラ液の付着が見られる。
【0039】
表1の結果から明らかな如く、本発明の実施例1~7の油性マスカラは、比較例1~4に比べ、ロングラッシュ効果、化粧膜の均一性、化粧持続性、耐水性の全てにおいて優れたものであった。
これに対して、未処理の繊維を含有した比較例1~4では、繊維の分散性が悪いため均一に睫毛に付着せず、ロングラッシュ効果や化粧膜の均一性が低かった。また、化粧持続性や耐水性の点でも満足のいくものが得られなかった。
【0040】
実施例8:水中油型アイブロウマスカラ
(成分) (%)
(1)ジメチルポリシロキサン※8 3
(2)ステアリン酸 1
(3)パルミチン酸 1
(4)重質流動イソパラフィン※9 0.1
(5)フィッシャートロプシュワックス 3
(6)エイコセンビニルピロリドン共重合体※10 3
(7)コレステロール 2
(8)トリメチルシロキシケイ酸※11 2
(9)キャンデリラロウ樹脂※12 0.5
(10)精製水 残量
(11)カルボキシメチルセルロース 1
(12)アクリル酸アルキル・酢酸ビニル共重合体エマルジョン※13 10
(13)トリエタノールアミン 1.2
(14)オクチルトリエトキシシラン処理酸化チタン被覆ガラス末 1
(15)EDTA-2Na 0.5
(16)トレハロース 0.5
(17)ポリビニルアルコール 1
(18)ラウロイルリジン3%処理カーボンブラック10%被覆シルク(a2-1)

(19)球状セルロース※14 1
(20)煙霧状無水ケイ酸※15 5
※8:BELSIL DM 1PLUS(旭化成ワッカーシリコーン社製)
※9:パールリーム18(日油社製)
※10:ANTARON V-220(ISP社製)
※11:SR-1000(モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・ジャパン社製)※12:キャンデリラ樹脂E-1(日本ナチュラルプロダクツ社製)
※13:ビニゾール2140L(固形分45%)(大同化成工業社製)
※14:CELLULOBEADS D-10(大東化成工業社製)
※15:AEROSIL 380S(日本アエロジル社製)
【0041】
(製造方法)
A.成分(1)~(9)を100℃まで加熱し、均一に混合する。
B.成分(10)~(20)を均一に混合し80℃に加熱する。
C.BにAを加え乳化する。
D.Cを室温まで冷却し、容器に充填し製品とする。
【0042】
本発明の水中油型アイブロウマスカラは、眉毛の自然な増毛感、化粧膜の均一性、化粧持続性、耐水性の全てにおいて優れたものであった。
【0043】
実施例9:油中水型ヘアマスカラ:
(成分) (%)
(1)イソステアリン酸デキストリン※16 3
(2)ロジン酸ペンタエリスリトール※17 10
(3)イソステアリン酸フィトステリル 1
(4)ポリビニルピロリドン 0.1
(5)軽質流動イソパラフィン※18 残量
(6)デキストリン脂肪酸エステル※19 2
(7)煙霧状無水ケイ酸※20 8
(8)有機変性ベントナイト※5 2
(9)ステロイルグルタミン酸2Na3%処理チタン・酸化チタン焼結物※21

(10)ウール繊維(a2-4) 5
(11)1,3-ブチレングリコール 8
(12)精製水 3
(13)香料 0.1
※16:ユニフィルマHVY(千葉製粉社製)
※17:エステルガムHP(荒川化学工業社製)
※18:IPソルベント1620MU(出光興産社製)
※19:レオパールTL2(千葉製粉社製)
※20:AEROSIL R974(日本アエロジル社製)
※21:TILACK D(赤穂化成社製)
【0044】
(製造方法)
A.成分(1)~(8)を100℃に加熱溶解し、常温になるまで冷却する。その後、
成分(9)と(10)を予め混合吸着させてから、加えて分散する。
B.Aに成分(11)~(13)を加えて乳化する。
C.Bを容器に充填して製品とする。
【0045】
本発明の油中水型ヘアマスカラは、頭髪のボリュームアップ効果、化粧膜の均一性、化粧持続性、耐水性の全てにおいて優れたものであった。
【0046】
実施例10:油性マスカラトップコート
(成分) (%)
(1)メチルトリメチコン※22 10
(2)イソドデカン 残量
(3)パルミチン酸デキストリン※19 5
(4)エチレン・プロピレンコポリマー 1
(5)ポリイソブチレン※23 0.1
(6)メチルフェニルポリシロキサン 0.5
(7)煙霧状無水ケイ酸※24 10
(8)球状炭酸カルシウム 5
(9)クオタニウム-18ヘクトライト 2
(10)エタノール 0.5
(11)ジプロピレングリコール 1
(12)カーボンブラック 0.05
(13)黒酸化鉄被覆合成金雲母※25 1
(14)イソステアリン酸処理2%処理レーヨン(a2-3) 1
(15)アモジメチコン処理無水ケイ酸※26 5
※22:シリコーンTMF-1.5(信越化学工業社製)
※23:オパノールB-100(BASF社製)
※24:AEROSIL R972(日本アエロジル社製)
※25:NK-BLACK(日本光研工業社製)
※26:処理量5%、粒子径15μm
【0047】
(製造方法)
A.成分(1)~(6)を95℃で加熱溶解する。
B.Aに成分(7)~(15)を加え、均一に混合する。
C.Bを容器に充填して製品とする。
【0048】
本発明の油性マスカラトップコートは、ロングラッシュ効果、化粧膜の均一性、化粧持続性、耐水性の全てにおいて優れたものであった。
【0049】
実施例11:パウダーファンデーション
(成分) (%)
(1)タルク 残量
(2)ラウリン酸亜鉛処理(6%)マイカ 20
(3)レシチン処理板状セルロース※27 10
(4)シリカ※28 5
(5)オキシ塩化ビスマス 2
(6)窒化ホウ素 5
(7)板状硫酸バリウム※29 7
(8)トリイソステアリン酸イソプロピルチタン(10%)処理微粒子酸化チタン

(9)オクチルトリエトキシシラン(2%)処理ベンガラ 0.4
(10)オクチルトリエトキシシラン(2%)処理黄酸化鉄 1.2
(11)オクチルトリエトキシシラン(2%)処理黒酸化鉄 0.2
(12)ステアロイルアスパラギン酸(3%)処理亜麻繊維※30 3
(13)クロルフェネシン 0.3
(14)メトキシケイ皮酸オクチル 4
(15)ステアリン酸オクチルドデシル 5
(16)セスキイソステアリン酸ソルビタン 1
※27:処理量1%、平均粒径20μm、アスペクト比20
※28:シリカマイクロビードP-1505(日記触媒化成社製)
※29:板状硫酸バリウムHL(堺化学工業製)
※30:平均太さ15μm、平均長さ0.5mm
【0050】
(製造方法)
A.成分(1)~(13)を均一に混合する。
B.Aに成分(14)~(16)を加え、均一に混合する。
C.Bを粉砕処理し、金皿にプレス成型して製品とする。
【0051】
本発明のパウダーファンデーションは、自然な産毛感、化粧膜の均一性、化粧持続性、耐水性の全てにおいて優れたものであった。
【0052】
実施例12:ネイルエナメル
(成分) (%)
(1)(酢酸/酪酸)セルロース 8
(2)ニトロセルロース(30%)シンナー溶液 25
(3)酢酸エチル 15
(4)酢酸ブチル 残量
(5)ヘプタン 2
(6)イソプロピルアルコール 5
(7)クエン酸アセチルトリブチル 4
(8)安息香酸スクロース 1
(9)ジエチルアミノヒドロキシベンゾイル安息香酸ヘキシル 0.1
(10)ステアラルコニウムヘクトライト 2.5
(11)パーフルオロオクチルトリエトキシシラン(5%)処理黄酸化鉄 1.1
(12)赤226号 0.8
(13)パーフルオロオクチルトリエトキシシラン(5%)酸化チタン被覆ホウケイ酸

(14)パーフルオロオクチルトリエトキシシラン処理(5%)絹紡糸(a2-2)
1.5
【0053】
(製造方法)
A.成分(1)~(9)を均一に混合する。
B.Aに成分(10)~(14)を加え、均一に混合する。
C.Bを容器に充填して製品とする。
【0054】
本発明のネイルエナメルは、爪の補強効果、化粧膜の均一性、化粧持続性、耐水性の全てにおいて優れたものであった。