(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-21
(45)【発行日】2024-07-01
(54)【発明の名称】洗濯機
(51)【国際特許分類】
D06F 33/38 20200101AFI20240624BHJP
D06F 33/34 20200101ALI20240624BHJP
D06F 103/04 20200101ALN20240624BHJP
D06F 103/18 20200101ALN20240624BHJP
D06F 103/68 20200101ALN20240624BHJP
D06F 105/50 20200101ALN20240624BHJP
【FI】
D06F33/38
D06F33/34
D06F103:04
D06F103:18
D06F103:68
D06F105:50
(21)【出願番号】P 2020065707
(22)【出願日】2020-04-01
【審査請求日】2023-03-22
(31)【優先権主張番号】P 2019076827
(32)【優先日】2019-04-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000005049
【氏名又は名称】シャープ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000947
【氏名又は名称】弁理士法人あーく事務所
(72)【発明者】
【氏名】柴田 孝
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 裕之
(72)【発明者】
【氏名】北 祐人
【審査官】村山 達也
(56)【参考文献】
【文献】特開平07-185186(JP,A)
【文献】特表2014-510606(JP,A)
【文献】特開2001-293284(JP,A)
【文献】特開2006-051293(JP,A)
【文献】特開2004-049284(JP,A)
【文献】特開平08-173683(JP,A)
【文献】特開2016-106673(JP,A)
【文献】特開平10-071298(JP,A)
【文献】特開平01-256998(JP,A)
【文献】特開昭62-127099(JP,A)
【文献】特開2016-049156(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D06F 33/38
D06F 33/34
D06F 103/04
D06F 103/18
D06F 103/68
D06F 105/50
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
洗濯槽へのシャワー給水を用いてすすぎ工程を行うシャワーすすぎを実施可能な洗濯機であって、
給水管に接続された水道の水道圧が低水圧であるか否かを検出する水圧検出手段
と、
前記洗濯槽に投入された洗濯物の量を検知する洗濯物量検知手段とを備え、
前記水圧検出手段は、前記洗濯槽内の水位が所定の第1水位から所定の第2水位に増加するまでの給水時間を測定し、前記給水時間が第1所定時間以上で、且つ前記第1所定時間よりも長い第2所定時間未満である場合に低水圧を検出し、前記給水時間が前記第2所定時間以上である場合に給水異常を検出し、
前記水圧検出手段によって水道圧が低水圧であると検出された場合に、運転モードとして設定されているシャワーすすぎを溜めすすぎに変更
し、
前記洗濯物量検知手段が検出した洗濯物の量が所定量以上である場合は、前記第1所定時間を長くすることを特徴とする洗濯機。
【請求項2】
請求項1に記載の洗濯機であって、
前記水圧検出手段によって水道圧が低水圧であると検出された場合に、運転モードとして設定されているシャワーすすぎを溜めすすぎに変更する旨をユーザに対して報知することを特徴とする洗濯機。
【請求項3】
請求項1
または2に記載の洗濯機であって、
前記すすぎ工程の前に洗い工程を備え、
前記洗い工程前の給水において、洗剤ケースを介しての給水とシャワー給水とを同時に行うことが可能であり、
前記水圧検出手段によって水道圧が低水圧であると検出されない場合には、洗剤ケースを介しての給水とシャワー給水とを同時に行い、水道圧が低水圧であると検出された場合には、シャワー給水を使用せずに前記洗剤ケースを介しての給水のみを行うことを特徴とする洗濯機。
【請求項4】
洗濯槽へのシャワー給水を用いてすすぎ工程を行うシャワーすすぎを実施可能な洗濯機であって、
給水管に接続された水道の水道圧が低水圧であるか否かを検出する水圧検出手段を備え、
前記水圧検出手段によって水道圧が低水圧であると検出された場合に、運転モードとして設定されているシャワーすすぎを溜めすすぎに変更し、
前記洗濯機の運転開始時に前記洗濯槽内の水位が所定の水位以上である場合には、運転モードとして設定されているシャワーすすぎを溜めすすぎに変更することを特徴とする洗濯機。
【請求項5】
請求項1から
4の何れか1項に記載の洗濯機であって、
前記水圧検出手段によって検出した水道圧の検出結果を記憶する記憶部を備え、
前記水道圧の検出後に前記洗濯機が停電した場合には、停電復帰後に前記記憶部から前記検出結果を読み込んだ結果に基づいて、前記シャワー給水を設定することを特徴とする洗濯機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シャワーすすぎを実施可能な洗濯機に関する。
【背景技術】
【0002】
洗濯機は、洗い工程、すすぎ工程および脱水工程によって洗濯を実行するものである。すすぎ工程に関しては、従来、すすぎ方法として溜めすすぎとシャワーすすぎ(例えば、特許文献1)とが知られている。溜めすすぎとは、洗濯槽(内槽および外槽)に水を溜め、その中で水と共に洗濯物を攪拌してすすぎを行う方法である。シャワーすすぎとは、洗濯槽に水を溜めずに、内槽を回転させながら洗濯物にシャワー状に給水(シャワー給水)してすすぎを行う方法である。シャワーすすぎでは、溜めすすぎよりも使用水量を少なくでき、節水効果を得ることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
シャワーすすぎを行う洗濯機では、特許文献1にも開示があるように、シャワー給水を行うためのシャワーノズルが備えられる。このシャワーノズルは、洗濯機に接続される水道の水圧(水道圧)を利用してシャワー給水を行うものであるが、水道圧が低い場合には、そのシャワー効果が弱くなる。すなわち、シャワーが十分に広がらず、洗濯槽内においてシャワーの届く範囲が狭くなる。例えば、高地に設置された洗濯機などでは、水道圧が低水圧の地域で用いられることも想定される。
【0005】
シャワー効果が弱くなると、洗濯物に対して均一に水が掛からなくなり、すすぎ効果にムラが生じる。また、シャワー効果が弱いと、水の掛からない洗濯物も発生し、一部の洗濯物に対してすすぎ効果が得られなくなる場合もある。すなわち、シャワーすすぎは、水道圧が低くシャワー効果が弱い場合には、十分なすすぎ効果を発揮できないおそれがある。
【0006】
十分なシャワーすすぎ効果を発揮できない場合には、洗濯機の運転モードの設定において、シャワーすすぎを選択せずに溜めすすぎを選択することが適切な対応となる。しかしながら、この場合の溜めすすぎの選択は、ユーザの自主的な設定に委ねられることになるため、ユーザにとっては洗濯の度に煩雑な設定作業が求められるといった問題がある。また、ユーザが水道圧を把握していないこともあり得るため、ユーザの設定によりシャワーすすぎが選択されても、十分なすすぎ効果が得られず、不満が生じることもあり得る。
【0007】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、水道圧が低い場合における不十分なシャワーすすぎを防止できる洗濯機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決するために、本発明は、洗濯槽へのシャワー給水を用いてすすぎ工程を行うシャワーすすぎを実施可能な洗濯機であって、給水管に接続された水道の水道圧が低水圧であるか否かを検出する水圧検出手段を備え、前記水圧検出手段によって水道圧が低水圧であると検出された場合に、運転モードとして設定されているシャワーすすぎを溜めすすぎに変更する
ことを特徴としている。
【0009】
上記の構成によれば、水道圧が低水圧である場合には、設定運転モードにおいてシャワーすすぎが選択されていたとしても、シャワーすすぎを溜めすすぎに変更してすすぎ工程を実施するため、水道圧が低い場合に不十分なシャワーすすぎが実行されることを防止できる。
【0010】
また、上記洗濯機では、前記水圧検出手段は、前記洗濯槽内の水位が所定の第1水位から所定の第2水位に増加するまでの給水時間を測定し、この給水時間が所定時間以上である場合に低水圧を検出する構成とすることができる。
【0011】
上記の構成によれば、全自動洗濯機が通常備えている水位センサやタイマーを用いて水道の低水圧を検出することができる。
【0012】
また、上記洗濯機は、前記洗濯槽に投入された洗濯物の量を検知する洗濯物量検知手段を備え、前記洗濯物量検知手段が検出した洗濯物の量が所定量以上である場合は、前記所定時間を長くする構成とすることができる。
【0013】
また、上記洗濯機は、前記すすぎ工程よりも前に、前記洗濯槽に給水した水を洗濯物になじませる、なじませ工程を行い、前記水圧検出手段は、前記なじませ工程の終了後の追加の給水により、前記洗濯槽内の水位がなじませ工程終了時点の第1水位から所定の第2水位に増加するまでの給水時間を測定し、この給水時間と前記第1水位から前記第2水位までの水位差とに基づいて水道圧を算出し、算出された水道圧が所定の閾値未満である場合に低水圧を検出する構成とすることができる。
【0014】
また、上記洗濯機では、前記水圧検出手段は、当該洗濯機の運転開始時に前記洗濯槽内の水位が所定の水位以上である場合には、水道圧が低水圧であると検出する
構成とすることができる。
【0015】
上記の構成によれば、特に水道圧が低い地域などでユーザが他の容器からの給水を行った場合にも、不十分なシャワーすすぎが実行されることを防止できる。
【0016】
また、上記洗濯機は、前記すすぎ工程の前に洗い工程を備え、前記洗い工程前の給水において、洗剤ケースを介しての給水とシャワー給水とを同時に行うことが可能であり、前記水圧検出手段によって水道圧が低水圧であると検出されない場合には、洗剤ケースを介しての給水とシャワー給水とを同時に行い、水道圧が低水圧であると検出された場合には、シャワー給水を使用せずに前記洗剤ケースを介しての給水のみを行う構成とすることができる。
【0017】
上記の構成によれば、水道圧が低水圧である場合には、シャワー給水を行わず、水道から供給される水道水の全てを洗剤ケース側に送ることで、洗剤ケース内の洗剤を溶かすことを優先して洗剤の溶け残りを抑制することができる。
【0018】
また、上記洗濯機は、前記水圧検出手段によって検出した水道圧の検出結果を記憶する記憶部を備え、前記水道圧の検出後に前記洗濯機が停電した場合には、停電復帰後に前記記憶部から前記検出結果を読み込んだ結果に基づいて、前記シャワー給水を設定する構成とすることができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明の洗濯機は、水道圧が低水圧である場合に、シャワーすすぎを溜めすすぎに変更することで、水道圧が低い場合に不十分なシャワーすすぎが実行されることを防止できるといった効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】本発明が適用可能な洗濯機の概略構成を示す図であり、洗濯機を側方から見た縦断面図である。
【
図2】実施の形態1の洗濯機における運転制御の手順を示すフローチャートである。
【
図3】実施の形態2の洗濯機における水道圧検出方法を示すフローチャートである。
【
図4】
図3の水道圧検出方法を用いる洗濯機における制御系の構成を示すブロック図である。
【
図5】実施の形態2の洗濯機における水道圧検出方法の他の例を示すフローチャートである。
【
図6】実施の形態2の洗濯機における水道圧検出方法のさらに他の例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0021】
〔実施の形態1〕
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。
図1は、本発明が適用可能な洗濯機1の概略構成を示す図であり、洗濯機1を側方から見た縦断面図である。
【0022】
図1に示す洗濯機1は、金属または合成樹脂製の本体筐体10を備えている。本体筐体10は直方体形状に成形され、その上面には洗濯物を投入するための洗濯物投入口10aが設けられている。本体筐体10の上方には、洗濯物投入口10aを開閉する上蓋11が洗濯機の奧側で回動可能に支持されており、上蓋11を上下に回動させて洗濯物投入口10aを開閉する。
【0023】
洗濯機1は、本体筐体10内に、内槽12および外槽13からなる2槽構造の洗濯槽を備えている。外槽13および内槽12は、上側が開口した有底筒状のカップの形状をしており、各々中心軸を垂直にして、外槽13を外側とし、内槽12を内側とする形で同軸に配置されている。
【0024】
内槽12内の底面には、攪拌翼14が回転可能に配置されている。また、本体筐体10内の外槽13の下側には、クラッチ・ブレーキ機構21と駆動モータ22とを有する駆動ユニット20が取り付けられている。駆動ユニット20には内槽12および攪拌翼14が接続されており、クラッチの切替えによって駆動力の伝達を切り替えるようになっている。すなわち、洗濯機1は、洗い工程時および後述する溜めすすぎ工程時には攪拌翼14のみを回転させ、脱水工程時および後述するシャワーすすぎ工程時には内槽12および攪拌翼14の両方を回転させる。
【0025】
洗濯機1は、洗濯槽への給水を行う給水装置30を備えている。給水装置30は、給水管31を介して水道と接続され、水道水を洗濯槽へ給水するものである。給水装置30の具体的構造は公知であるため詳細な説明は省略するが、給水装置30は、内部に有する複数の弁によって給水形態を切り替えることが可能となっている。
【0026】
洗濯機1では、給水装置30の給水形態の一つとしてシャワー給水がある。給水装置30はシャワーノズル(図示せず)を有しており、シャワー給水時にはシャワーノズルから給水が行われる。シャワー給水は、洗濯機1がシャワーすすぎ工程を行う場合の給水形態である。シャワーすすぎ工程では、内槽12を回転させながらシャワー給水が行われる。このとき、シャワー給水によって洗濯物に降り注がれる水は、回転する内槽12の遠心力によって洗濯物を通過して排水されるが、洗濯物を通過する際に洗剤成分をすすぐように作用する。
【0027】
また、給水装置30は、シャワーノズルを用いずに洗濯槽への給水を行うことも可能である。基本的には、洗い工程や溜めすすぎ工程ではシャワーノズルを用いずに給水が行われるが、洗い工程用の給水では水道水に洗剤を溶かしながら給水を行うこともでき、溜めすすぎ工程の給水では水道水に仕上げ剤(例えば柔軟剤)を溶かしながら給水を行うこともできる。
【0028】
また、外槽13には排水管40が接続されており、排水管40には排水弁41が設けられている。洗濯機1では、排水弁41を閉じた状態で給水装置30から給水を行うことで洗濯槽に水を溜めることができ、排水弁41を開くことで洗濯槽内の水を排水することができる。
【0029】
以上が洗濯機1の基本構成であるが、続いて洗濯機1における運転制御について説明する。本実施の形態1に係る洗濯機1は、運転開始から洗い工程、すすぎ工程および脱水工程を順次自動で行う全自動洗濯機である。
図2は、洗濯機1における運転制御の手順を示すフローチャートである。尚、以下の運転制御においては、洗い工程が1回、すすぎ工程が2回、脱水工程が1回行われるように運転モードが設定されており、すすぎ工程は1回目がシャワーすすぎ工程、2回目が溜めすすぎ工程に設定されているものと仮定する。
【0030】
洗濯機1の運転が開始されると、最初に洗い工程のための給水が行われる(ST1)。本実施の形態1の運転制御では、ST1の給水時に水道圧の検出が行われ、検出された水道圧が低水圧であるか否かが判定される。水道圧の検出方法については後述する。ST1の給水が終了すると、洗い工程が実行される(ST2)。洗い工程の後には中間脱水工程が実行される(ST3)。中間脱水工程により、洗い工程によって汚れた洗濯水を、洗濯物から分離して排水する。
【0031】
中間脱水工程の終了後はすすぎ工程となるが、このとき、水道圧が低水圧であるか否かでシャワーすすぎ工程の実施の可否が判定される(ST4)。すなわち、水道圧が低水圧でなければ(ST4でNO)シャワーすすぎが可能とあると判定されるが、水道圧が低水圧であれば(ST4でYES)十分なシャワーすすぎ効果を発揮できないと見なされ、シャワーすすぎが不可であると判定される。
【0032】
水道圧が低水圧でなく、シャワーすすぎが可能と判定された場合は、最初の運転モード設定どおり、1回目のすすぎがシャワーすすぎ工程(ST5)として実施される。一方、水道圧が低水圧であり、シャワーすすぎが不可と判定された場合は、最初の運転モード設定に関わらず、1回目のすすぎが溜めすすぎ工程に変更され、1回目の溜めすすぎ工程(ST6)が実施される。1回目のすすぎが終了した後は、何れの場合も中間脱水工程(ST7)が実行され、その後は最初の運転モード設定どおり、2回目のすすぎとして溜めすすぎ工程(ST8)と脱水工程(ST9)とが実施される。
【0033】
このように、本実施の形態1に係る洗濯機1は、水道圧が低水圧である場合にこれを検出し、低水圧を検出した場合には、設定運転モードにおいてシャワーすすぎが選択されていたとしても、シャワーすすぎを溜めすすぎに変更してすすぎ工程を実施する。このため、洗濯機1は、水道圧が低く十分なシャワーすすぎ効果を発揮できない場合に、不十分なシャワーすすぎが実行されることを防止できる。
【0034】
尚、本実施の形態1に係る洗濯機1では、設定運転モードにおいて選択されていたシャワーすすぎが溜めすすぎに変更された場合、ユーザに対して、すすぎ方法の変更が行われた旨の報知を行うようにすることが好ましい。また、このときの報知方法では、すすぎ方法の変更が水道圧の水圧不足によるものであることを示すメッセージ表示であることがさらに望ましい。また、すすぎ方法がシャワーすすぎから溜めすすぎに変更された場合、これにより、洗濯に掛かる総時間が増加することになる。このため、洗濯機1において洗濯の残時間表示が行われる場合、ユーザに対して、残時間の変更が生じたことの報知を行うようにすることが好ましい。これらの報知により、適切なすすぎ方法が自動選択されたことをユーザに対して示すことが可能となる。
【0035】
〔実施の形態2〕
本実施の形態2では、洗濯機1における具体的な水道圧検出方法について説明する。
図3は、
図2のST1における給水時のサブルーチンを示すものであり、洗濯機1における水道圧検出方法の一例を示すフローチャートである。また、
図4は、この水道圧検出方法を用いる洗濯機1における制御系の構成を示すブロック図である。
【0036】
図4に示す洗濯機1は、洗濯槽内の水位を検知するための水位センサ51と、給水に掛かる時間を測定するためのタイマー52と、水位センサ51およびタイマー52の出力に基づいて水道圧が低水圧であるか否かを判定する主制御部50とを有している。水位センサ51としては、例えば、洗濯槽の上方に配置され、洗濯槽の水面までの距離を測定する測距センサを用いることができる。ここでは、主制御部50、水位センサ51およびタイマー52が、特許請求の範囲に記載の水圧検出手段に相当する。
【0037】
洗濯機1において水道圧を検出するに当たっては、給水の開始(ST11)と同時にタイマー52が時間の測定を開始する(ST12)。給水が行われている間、水位センサ51は洗濯槽の水位を監視しており、洗濯槽の水位が所定水位となったときにこれを検知する(ST13でYES)。洗濯槽の水位が所定水位となった時点で、主制御部50は、タイマー52の測定結果より第1所定時間が経過しているか否かを判定する(ST14)。尚、この場合、水位ゼロの状態が特許請求の範囲に記載の第1水位に相当し、所定水位が特許請求の範囲に記載の第2水位に相当する。また、第1所定時間が特許請求の範囲に記載の所定時間に相当する。
【0038】
水道圧が低い場合には給水に時間が掛かることから、主制御部50は、第1所定時間が経過していた場合(ST14でYES)には水道圧が低水圧であると判定(ST15)し、第1所定時間が経過していない場合(ST14でNO)には水道圧が低水圧ではないと判定(ST16)する。
【0039】
また、主制御部50は、給水が行われている間、タイマー52の測定結果より第2所定時間(>第1所定時間)が経過しているか否かを監視し、洗濯槽の水位が所定水位となる前に第2所定時間が経過した場合(ST13でNO、かつST17でYES)には、給水異常を検出(ST18)するようにしてもよい。
【0040】
本発明における水道圧検出方法は、上記例に限定されるものではなく、他の水道圧検出方法を適用することも可能である。例えば、タイマー52が時間の測定を開始するタイミングは、給水の開始時ではなく、他の所定のタイミング(例えば、水位センサ51が洗濯槽の水有り水位を検知したタイミング)であってもよい。すなわち、洗濯機1では、所定の2点の水位間での給水時間を測定し、この給水時間が所定時間以上である場合に低水圧を検出することができる。
【0041】
また、水位センサ51は、上述した測距センサに限らず、他の方法、例えば、外槽と底部で連通し上端が閉塞された水位計測管を配し、水位計測管の上端に圧力センサを設けて、水位計測管内の水位上昇による内圧上昇を検知して水位を検出する、などの構成としてもよい。また、水位センサ51は、重量センサを用いることも可能である。すなわち、水位センサ51に重量センサを用いる場合、洗濯槽の総重量に基づいて水位を推測することが可能である。この場合は、所定の2点の重量間での給水時間を測定し、この給水時間が所定時間以上である場合に低水圧を検出することができる。
【0042】
全自動洗濯機は、給水量の制御や工程時間の制御のために、通常、水位センサ51やタイマー52を有している。上述した水道圧検出方法は、これらの水位センサ51やタイマー52を用いて水道圧を検出できる方法であり、洗濯機1に新たな水道圧検出手段を付加する必要がないためコスト面で有利となる。
【0043】
但し、本発明における水道圧検出方法は、水位センサ51およびタイマー52を用いる方法に限定されるものでもない。例えば、給水装置30内に水圧センサを設け、水圧センサによって水道圧を直接検出するようにしてもよい。この場合は、水圧センサによって検出された水道圧を所定の閾値と比較し、水道圧が閾値以下である場合に低水圧を検出することができる。
【0044】
図5は、本実施の形態2における変形例を示すものであり、洗濯機1における水道圧検出方法の他の例を示すフローチャートである。また、
図5のフローも、
図3のフローと同様に、
図2のST1における給水時のサブルーチンを示している。
【0045】
図3のフローでは、タイマー52によって測定する第1所定時間を一定としているが、
図5のフローでは、洗濯物の量(衣類量)に応じて第1所定時間を可変としている。具体的には、給水(ST11)の開始前に衣類量測定(ST21)を行い、測定された衣類量に応じて第1所定時間Tを設定する。ST14では、設定された第1所定時間Tが経過したか否かを判定し、第1所定時間Tが経過していた場合(ST14でYES)には低水圧であると判定(ST15)し、経過していない場合(ST14でNO)には低水圧ではないと判定(ST16)する。
【0046】
衣類量の測定には、洗濯物を洗濯槽に投入した状態で内槽12や攪拌翼14を回転させて、その回転速度やモータに流れる電流を電流センサで検知して判断する方法や、洗濯槽の重量を重量センサで測定する方法など、既知の方法が使用できる。これらの方法では、電流センサや重量センサが、特許請求の範囲に記載の洗濯物量検知手段に相当する。
【0047】
第1所定時間Tに関しては、洗濯物の量が多いほど、第1所定時間が増加するように設定される。これは以下の理由による。洗濯物が多い場合には、給水された水を洗濯物が多く吸ってしまうことで、水位の上昇が遅くなる。このため、
図3のフローでは、実際にはシャワー給水可能な給水圧であっても、洗濯物の吸水量が多くなることで第1所定時間内に所定水位まで上昇せずに、シャワー給水が行われなくなることが考えられる。一方、
図5のフローでは、予め検知した洗濯物の量に応じて、洗濯物の吸水量を考慮した第1所定時間Tを設定することができ、洗濯物の多少にかかわらず、シャワー給水の使用について適切に判断することができる。
【0048】
以下の表1は第1所定時間の設定テーブルの一例を示すものである。
【0049】
【0050】
表1の例では、洗濯物の量(衣類量)に対応する判定水量を設定し、単位時間当たりの水道水量が4L/minの場合に判定水量に到達するまでの時間を第1所定時間Tとして設定している。また、判定水量は、12Lが基準量として設定され、かつ、検知された衣類量に応じて増加される。すなわち、衣類量が0~3kgの場合は判定水量の増加は0Lであるが、衣類量が3~6kgの場合は判定水量の増加は10L、衣類量が6kg超の場合は判定水量の増加は20Lとなる。この判定水量の増加分は、洗濯物による吸水量を追加するものである。衣類量に応じた衣類の吸水量を判定水量に加算しておくことで、洗濯物の吸水量を考慮した判定水量および第1所定時間Tを設定することができる。尚、判定水量の基準量は、洗濯機1における洗濯槽サイズや、洗濯槽が穴無し槽であるか否かなどに応じて、適宜変更してもよい。
【0051】
例えば、衣類量が0~3kgの場合は、判定水量が12Lであるため、第1所定時間Tは3(=12/4)分に設定される。また、衣類量が6kg超の場合は、衣類が20Lほど吸水すると推測して、判定水量を32(=12+20)Lに補正するため、第1所定時間Tは8分(=32/4)分に設定される。第1所定時間Tが表1のように設定された場合、所定水位の検知時点で第1所定時間Tを超えている場合には、洗濯物の吸水量を考慮しても単位時間当たりの水道水量が4L/min未満となるため、水道圧が低水圧であると判定できる。
【0052】
尚、洗濯物による吸水量は、実際には、洗濯物の量だけではなく、洗濯物の布質によっても異なる。上述した
図5のフローでは、洗濯物の量については判別できても、洗濯物の布質について判別できない。このため、例えば、化繊など吸水性が低い洗濯物が多い場合には、水道圧が低めでもシャワー給水可能と判断されることがある。
【0053】
但し、吸水性の低い布質は、洗剤成分なども布の中に入り込みにくいため、シャワーの水圧が若干不足していても、洗剤成分などを十分に落とすことができる。一方で、綿などの吸水性が高い洗濯物が多い場合には、洗濯物による吸水量が多く、水位の上昇も遅くなるため、実際に十分な水道圧があるときだけシャワー給水が可能と判断される。したがって、
図5のフローでは、洗濯物の布質に応じても、適切なシャワー給水を行うことができる。
【0054】
上述した
図3および
図5のフローにおける水道圧検出方法では、最初の給水段階でシャワー給水可能な水道圧であるかを判断できるため、ユーザが洗濯を開始してすぐに、シャワー給水を適用できるか否かをユーザに報知することができる。一方で、検出した水道圧は洗濯物の量や布質に依存することがある。そこで、検出精度を向上させることのできる水道圧検出方法についてさらに説明する。
【0055】
図6は、本実施の形態2における他の変形例を示すものであり、洗濯機1における水道圧検出方法のさらに他の例を示すフローチャートである。また、
図6のフローは、
図2のST1およびST2における給水および洗い時のサブルーチンを示している。
【0056】
図6のフローでは、給水の開始(ST31)と同時には、タイマー52による時間の測定を開始しない。そして、給水の開始後、時間測定の開始前に、洗い(なじませ工程)を実施する(ST32)。通常の洗濯において、乾燥した衣類は空気を多分に含んでおり、洗剤を含む洗濯水が浸透するには時間がかかる。ST32のなじませ工程では、乾燥した衣類に対して洗濯水を十分に浸透させることができる。
【0057】
なじませ工程が終了すると、その時点での洗濯槽の水位(第1水位)を水位センサ51で測定し、記録する(ST33)。なじませ工程終了時の水位が記録されると、追加の給水(補給水)を行いながらの洗いを開始する(ST34)と共に、タイマー52による時間の測定を開始する(ST35)。補給水によって洗濯槽の水位が所定水位(第2水位)に到達すると、タイマー52の測定を停止する(S36)。
【0058】
ST36でタイマー測定で終了すると、測定前後での水位差と測定された経過時間とに基づいて水道圧(あるいは単位時間当たりの水道水量)を算出し、これを閾値(例えば4L/min)と比較する(ST37)。算出された水道圧が閾値以上であれば、水道圧が低水圧ではないと判定(ST38)し、閾値未満であれば、水道圧が低水圧であると判定(ST39)する。
【0059】
図6のフローでは、なじませ工程によって洗濯物に十分に吸水させた後に、水位上昇にかかる時間を計測しているため、洗濯物の量や布質による吸水の影響を除外でき、洗濯物の量や布質を判別しなくても水道圧を適切に検出することができ、検出精度が向上する。尚、なじませ工程は、洗い工程前に行うことが好ましく、これにより、ユーザに、シャワー給水を適用できるか否かを、より早く報知することができる。
【0060】
〔実施の形態3〕
上記実施の形態1および2では、洗濯槽への給水は、給水管31から供給される水道水の給水であることを前提としている。しかしながら、水道圧が低い地域などでは、水道水の給水では時間が掛かりすぎるため、ユーザがバケツなどの他の容器に溜めた水を洗濯槽へ注ぎ込んで洗濯を行うことも考えられる。このように、想定した水道水の給水が実施されない場合、洗濯機1において水道圧を検出することも不可能となる。
【0061】
したがって、本実施の形態3に係る洗濯機1では、運転開始時に水位センサ51によって検出される水位が所定の水位以上である場合には、水道圧が低い可能性があるものと判断し、低圧水が検出された場合と同様に、シャワーすすぎを溜めすすぎに変更する。これにより、特に水道圧が低い地域などでユーザが他の容器からの給水を行った場合にも、不十分なシャワーすすぎが実行されることを防止できる。
【0062】
〔実施の形態4〕
上記実施の形態1ないし3では、シャワー給水はシャワーすすぎ工程の際に行われるものとしているが、洗い工程前の給水時(
図2のST1)にシャワー給水を用いることも考えられる。通常、洗い工程前の給水では、洗剤ケースに収納した洗剤を給水前の水に溶かし、洗剤が溶かされた洗剤液を洗濯槽に給水することが行われる。このとき、洗剤液の給水と同時にシャワー給水を行う場合がある。この場合のシャワー給水は、洗剤液が洗濯槽に向けて吐出された直後の位置にシャワーを当て、シャワーの水圧によって洗剤液が洗濯槽内の洗濯物に到達する前に洗剤液を分散させることで、洗濯槽内における洗剤の拡散効果を高めるために行われるものである。シャワーノズルは、広範囲に給水するために先端を絞った形状とすることがあり、洗剤液を流すと目詰まりするおそれがある。したがって、洗剤液の給水口とシャワー給水の給水口とを別にすることで、シャワーノズルが目詰まりすることなく、洗剤液を広範囲に拡散することが可能となる。
【0063】
このように、洗い工程前の給水にシャワー給水を用いる場合であっても、本発明のシャワー給水の制御方法が適用可能である。すなわち、本実施の形態4に係る洗濯機1は、水道圧が低水圧である場合にこれを検出し、低水圧を検出した場合には、洗い工程前の給水におけるシャワー給水を行わないようにする。このような制御を行う理由は、以下の通りである。
【0064】
洗い工程前の給水にシャワー給水を用いる場合は、水道から供給される水道水は、シャワーノズルと洗剤ケースとに分けて送られる。したがって、水道圧が低水圧である場合(すなわち水流が弱い場合)は、シャワー給水を行うことで洗剤ケースに送られる水流がさらに弱くなり、洗剤が十分に溶けきらずに洗剤ケースに残ってしまうことが起こり得る。洗剤が十分に溶けきらなければ、当然ながら洗濯槽内では洗剤不足となり、所望の洗浄効果が得られなくなる。
【0065】
このため、本実施の形態4に係る洗濯機1は、水道圧が低水圧であると検出されなかった場合には、洗い工程前の給水にシャワー給水を使用し、洗濯槽内で洗剤をより拡散させて供給する。一方、水道圧が低水圧であることが検出された場合には、シャワー給水を行わず、水道から供給される水道水の全てを洗剤ケース側に送り、洗剤ケース内の洗剤を溶かすことを優先して洗剤の溶け残りを抑制することができる。
【0066】
〔実施の形態5〕
上述した実施の形態1~4では、ユーザがシャワー給水(シャワーすすぎ)を選択設定していることが前提である。この場合、洗濯機1が、仮に水道圧の検出結果に基づいてシャワー給水を行わないと判断しても、この判断後に停電などが発生した場合には、停電からの復帰後にユーザ設定にしたがいシャワー給水が行われることが考えられる。特に、シャワーすすぎを行う設定の場合は、水道圧の判断からすすぎ工程まで相当の時間が経過するため、その途中で停電が起こることも想定され、その場合には不十分なすすぎが行われる恐れがある。
【0067】
このような停電発生時の不十分なすすぎを防止するために、本実施の形態5に係る洗濯機1は、水道圧が検出された時点で、その検出結果を記憶部(不揮発性メモリなど)に記憶する。そして、水道圧の検出後に停電が発生した場合は、停電からの復帰後に記憶部から水道圧の検出結果を読み込んで、シャワー給水を行うか否かの設定を行う。これにより、停電が発生した場合における不十分なすすぎを防止することができる。
【0068】
今回開示した実施形態は全ての点で例示であって、限定的な解釈の根拠となるものではない。したがって、本発明の技術的範囲は、上記した実施形態のみによって解釈されるものではなく、特許請求の範囲の記載に基づいて画定される。また、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内での全ての変更が含まれる。
【符号の説明】
【0069】
1 洗濯機
10 本体筐体
11 上蓋
12 内槽(洗濯槽)
13 外槽(洗濯槽)
14 攪拌翼
20 駆動ユニット
30 給水装置
31 給水管
40 排水管
41 排水弁
50 主制御部(水圧検出手段)
51 水位センサ(水圧検出手段)
52 タイマー(水圧検出手段)