(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-21
(45)【発行日】2024-07-01
(54)【発明の名称】共役ジエン系重合体組成物、及びゴム組成物。
(51)【国際特許分類】
C08L 9/00 20060101AFI20240624BHJP
C08K 5/103 20060101ALI20240624BHJP
C08L 101/00 20060101ALI20240624BHJP
C08K 3/013 20180101ALI20240624BHJP
C08F 8/30 20060101ALI20240624BHJP
C08F 36/04 20060101ALI20240624BHJP
B60C 1/00 20060101ALI20240624BHJP
【FI】
C08L9/00
C08K5/103
C08L101/00
C08K3/013
C08F8/30
C08F36/04
B60C1/00 A
(21)【出願番号】P 2020069776
(22)【出願日】2020-04-08
【審査請求日】2023-04-07
(73)【特許権者】
【識別番号】000000033
【氏名又は名称】旭化成株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【氏名又は名称】内藤 和彦
(72)【発明者】
【氏名】井上 芳久
(72)【発明者】
【氏名】荒木 祥文
(72)【発明者】
【氏名】小嶋 智弘
【審査官】小森 勇
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-028018(JP,A)
【文献】特開2011-089086(JP,A)
【文献】特開2019-203112(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 7/00-21/00
C08K 5/103
C08L 101/00
C08K 3/013
C08F 8/30
C08F 36/04
B60C 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
100質量部のゴム成分(A)と、
1質量部以上200質量部以下の補強充填剤(B)と、
1質量部以上80質量部以下の、植物油(C)及び/又は植物由来樹脂(D)と、を含有し、
前記ゴム成分(A)が、粘度検出器付きGPC-光散乱法測定法による絶対分子量が40×10
4以上5000×10
4以下であり、かつ、前記粘度検出器付きGPC-光散乱法測定法による分岐度(Bn)が4以上84以下である共役ジエン系重合体(A-1)と、その他のゴム成分(A-2)と、を含み、
前記共役ジエン系重合体(A-1)が
、星型高分子構造を有し、
前記星型高分子構造が、中心分岐点から伸びる高分子鎖が、さらに中間分岐点で分岐した分岐構造を有し、
前記中間分岐点が、アルコキシシリル基及び/又はハロシリル基を含むビニル系単量体に由来する部分により形成され、
前記共役ジエン系重合体(A-1)の含有量が、前記ゴム成分(A)100質量部に対して、80質量部以下であり、
前記その他のゴム成分(A-2)の含有量が、前記ゴム成分(A)100質量部に対して、20質量部以上であり、
前記植物由来樹脂(D)が、植物由来であるロジン誘導体、トール油、トール油の誘導体、ロジンエステル樹脂、天然由来のテルペン樹脂、クマリン-インデン樹脂からなる群より選ばれる少なくとも一種を含む、
共役ジエン系重合体組成物。
【請求項2】
前記共役ジエン系重合体(A-1)が、窒素原子を含有する、
請求項1に記載の共役ジエン系重合体組成物。
【請求項3】
前記共役ジエン系重合体(A-1)のカラム吸着GPC法で測定される変性率が、60質量%以上である、
請求項1又は2に記載の共役ジエン系重合体組成物。
【請求項4】
前記アルコキシシリル基及び/又はハロシリル基を含むビニル系単量体に由来する部分が、下記式(1)又は(2)で表される化合物に基づく単量体単位である、
請求項1~3のいずれか一項に記載の共役ジエン系重合体組成物。
【化1】
(式(1)中、R
1は、水素原子、炭素数1~20のアルキル基、又は炭素数6~20のアリール基を示し、
R
2及びR
3は、各々独立して、炭素数1~20のアルキル基、又は炭素数6~20のアリール基を示し、
X
1は、各々独立して、ハロゲン原子を示し、
mは、0~2の整数を示し、nは、0~3の整数を示し、lは、0~3の整数を示し、(m+n+l)は、3である。)
【化2】
(式(2)中、R
2~R
5は、各々独立して、炭素数1~20のアルキル基又は炭素数6~20のアリール基を示し、
X
2~X
3は、各々独立して、ハロゲン原子を示し、
mは、0~2の整数を示し、nは、0~3の整数を示し、lは、0~3の整数を示し、(m+n+l)は、3であり、
aは、0~2の整数を示し、bは、0~3の整数を示し、cは、0~3の整数を示し、(a+b+c)は、3である。)
【請求項5】
前記式(1)中、R
1が水素原子であり、mが0である、
請求項4に記載の共役ジエン系重合体組成物。
【請求項6】
前記式(2)中、mが0であり、bが0である、
請求項4に記載の共役ジエン系重合体組成物。
【請求項7】
前記式(1)中、R
1が水素原子であり、mが0であり、lが0であり、nが3である、
請求項4に記載の共役ジエン系重合体組成物。
【請求項8】
前記式(2)中、mが0であり、lが0であり、nが3であり、aが0であり、bが0であり、cが3である、
請求項4に記載の共役ジエン系重合体組成物。
【請求項9】
前記植物油(C)及び前記植物由来樹脂(D)を含有する、
請求項1~8のいずれか一項に記載の共役ジエン系重合体組成物。
【請求項10】
前記植物油(C)が、脂肪酸を含み、
該脂肪酸の60質量%以上が、オレイン酸である、
請求項1~9のいずれか一項に記載の共役ジエン系重合体組成物。
【請求項11】
請求項1~10のいずれか一項に記載の共役ジエン系重合体組成物を含む、
タイヤ用トレッド。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、共役ジエン系重合体、共役ジエン系重合体の製造方法、共役ジエン系重合体組成物、及びゴム組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、自動車に対する低燃費化要求が高まり、自動車用タイヤに路面と接するタイヤトレッドに用いられるゴム材料の改良が求められている。
【0003】
近年、自動車に対する燃費規制要求の高まりから、部材の樹脂化などによる自動車の軽量化の傾向にあり、タイヤに関しても軽量化の観点からタイヤ部材の薄肉化の要求が高まっている。
【0004】
タイヤを軽量化するためには、特に材料比率の高い路面と接するトレッド部の厚みを減らす必要があり、従来にも増して耐摩耗性に優れたゴム材料が求められている。
【0005】
また、走行時のタイヤによるエネルギーロスを低減するために、タイヤトレッドに用いられるゴム材料は、転がり抵抗が小さい、すなわち省燃費性を有する材料が求められている。
【0006】
一方で、安全性の観点から、操縦安定性や、ウェットスキッド抵抗性に優れることと、実用上十分な破壊強度を有していることが要求される。
【0007】
上述したような要求に応えるゴム材料として、例えば、ゴム状重合体と、カーボンブラック、シリカ等の補強性充填剤とを含むゴム組成物が挙げられる。
【0008】
シリカを含むゴム組成物を用いると、省燃費性とウェットスキッド抵抗性とのバランスが向上することが既に知られている。また、運動性の高いゴム状重合体の分子末端部に、シリカとの親和性又は反応性を有する官能基を導入することによって、ゴム組成物中におけるシリカの分散性を改良して、さらには、シリカ粒子との結合でゴム状重合体の分子末端部の運動性を低減して、省燃費性を低減化しつつ、耐摩耗性、破壊強度を改良する試みがなされている。
【0009】
例えば、特許文献1~3には、アミノ基を含有するアルコキシシラン類を共役ジエン系重合体活性末端に反応させて得られる変性共役ジエン系重合体とシリカとの組成物が提案されている。
【0010】
さらにまた、特許文献4には、重合体活性末端と多官能性シラン化合物をカップリング反応させて得られる変性共役ジエン系重合体が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【文献】特開2005-290355号公報
【文献】特開平11-189616号公報
【文献】特開2003-171418号公報
【文献】国際公開第07/114203号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
しかしながら、官能基を導入した共役ジエン系重合体は、共役ジエン系重合体組成物の混練り工程中に、共役ジエン系重合体とシリカ粒子とが反応し、共役ジエン系重合他組成物の粘度が上昇し、練り難くなったり、混練り後にシートにする際に肌荒れやシート切れが生じやすくなったりする傾向がみられる。
【0013】
この課題を改善するため、可塑化用のオイルや樹脂を添加しても、十分に改良できず、共役ジエン系重合体組成物を加硫物としたとき、耐摩耗性、省燃費性、ウェットスキッド抵抗性およびスノー性能のバランスが十分ではない。
【0014】
そこで、本発明においては、共役ジエン系重合体組成物の混練り工程時の加工性が優れ、共役ジエン系重合体組成物の加硫物の耐摩耗性、省燃費性、ウェットスキッド抵抗性およびスノー性能のバランスが優れた共役ジエン系重合体組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明者らは、上述した従来技術の課題を解決するために鋭意研究検討した結果、ゴム成分(A)が、特定の絶対分子量及び分岐度(Bn)を有する共役ジエン系重合体をゴム成分として含有し、且つ、特定量の、補強充填剤、植物油(C)及び植物由来樹脂(D)を含有する共役ジエン系重合体組成物が、混練り工程時の加工性が優れ、加硫物の耐摩耗性、省燃費性、ウェットスキッド抵抗性およびスノー性能のバランスが優れることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0016】
すなわち本発明は以下の通りである。
〔1〕
100質量部のゴム成分(A)と、
1質量部以上200質量部以下の補強充填剤(B)と、
1質量部以上80質量部以下の、植物油(C)及び/又は植物由来樹脂(D)と、を含有し、
前記ゴム成分(A)が、粘度検出器付きGPC-光散乱法測定法による絶対分子量が40×10
4以上5000×10
4以下であり、かつ、前記粘度検出器付きGPC-光散乱法測定法による分岐度(Bn)が4以上84以下である共役ジエン系重合体(A-1)を含む、
共役ジエン系重合体組成物。
〔2〕
前記共役ジエン系重合体(A-1)が、窒素原子を含有する、
〔1〕に記載の共役ジエン系重合体組成物。
〔3〕
前記共役ジエン系重合体(A-1)のカラム吸着GPC法で測定される変性率が、60質量%以上である、
〔1〕又は〔2〕に記載の共役ジエン系重合体組成物。
〔4〕
前記共役ジエン系重合体(A-1)が、くし型高分子構造又は星型高分子構造を有する、
〔1〕~〔3〕のいずれか一項に記載の共役ジエン系重合体組成物。
〔5〕
前記共役ジエン系重合体(A-1)が、前記星型高分子構造を有し、
前記星型高分子構造が、中心分岐点から伸びる高分子鎖が、さらに中間分岐点で分岐した分岐構造を有し、
前記中間分岐点が、アルコキシシリル基及び/又はハロシリル基を含むビニル系単量体に由来する部分により形成される、
〔4〕に記載の共役ジエン系重合体組成物。
〔6〕
前記アルコキシシリル基及び/又はハロシリル基を含むビニル系単量体に由来する部分が、下記式(1)又は(2)で表される化合物に基づく単量体単位である、
〔5〕に記載の共役ジエン系重合体組成物。
【化1】
(式(1)中、R
1は、水素原子、炭素数1~20のアルキル基、又は炭素数6~20のアリール基を示し、
R
2及びR
3は、各々独立して、炭素数1~20のアルキル基、又は炭素数6~20のアリール基を示し、
X
1は、各々独立して、ハロゲン原子を示し、
mは、0~2の整数を示し、nは、0~3の整数を示し、lは、0~3の整数を示し、(m+n+l)は、3である。)
【化2】
(式(2)中、R
2~R
5は、各々独立して、炭素数1~20のアルキル基又は炭素数6~20のアリール基を示し、
X
2~X
3は、各々独立して、ハロゲン原子を示し、
mは、0~2の整数を示し、nは、0~3の整数を示し、lは、0~3の整数を示し、(m+n+l)は、3であり、
aは、0~2の整数を示し、bは、0~3の整数を示し、cは、0~3の整数を示し、(a+b+c)は、3である。)
〔7〕
前記式(1)中、R
1が水素原子であり、mが0である、
〔6〕に記載の共役ジエン系重合体組成物。
〔8〕
前記式(2)中、mが0であり、bが0である、
〔6〕に記載の共役ジエン系重合体組成物。
〔9〕
前記式(1)中、R
1が水素原子であり、mが0であり、lが0であり、nが3である、
〔6〕に記載の共役ジエン系重合体組成物。
〔10〕
前記式(2)中、mが0であり、lが0であり、nが3であり、aが0であり、bが0であり、cが3である、
〔6〕に記載の共役ジエン系重合体組成物。
〔11〕
前記植物油(C)及び前記植物由来樹脂(D)を含有する、
〔1〕~〔10〕のいずれか一項に記載の共役ジエン系重合体組成物
〔12〕
前記植物油(C)が、脂肪酸を含み、
該脂肪酸の60質量%以上が、オレイン酸である、
〔1〕~〔11〕のいずれか一項に記載の共役ジエン系重合体組成物。
〔13〕
〔1〕~〔12〕のいずれか一項に記載の共役ジエン系重合体組成物を含む、
タイヤ用トレッド。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、混練り工程時の加工性が優れ、加硫物の耐摩耗性、省燃費性、ウェットスキッド抵抗性およびスノー性能のバランスが優れた共役ジエン系重合体組成物を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明を実施するための形態(以下、「本実施形態」という。)について詳細に説明する。なお、以下の本実施形態は、本発明を説明するための例示であり、本発明は以下の実施形態に制限されるものではない。本発明は、その要旨の範囲内で適宜に変形して実施することができる。
【0019】
[共役ジエン系重合体組成物]
本実施形態の共役ジエン系重合体組成物は、100質量部のゴム成分(A)と、1質量部以上200質量部以下の補強充填剤(B)と、1質量部以上80質量部以下の、植物油(C)及び/又は植物由来樹脂(D)と、を含有し、ゴム成分(A)が、粘度検出器付きGPC-光散乱法測定法による絶対分子量が40×104以上5000×104以下であり、かつ、前記粘度検出器付きGPC-光散乱法測定法による分岐度(Bn)が4以上84以下である共役ジエン系重合体(A-1)を含む。
【0020】
[ゴム成分(A)]
ゴム成分(A)は、共役ジエン系重合体(A-1)を含み、必要に応じて、共役ジエン系重合体(A-1)以外のゴム成分(A-2)をさらに含んでいてもよい。
【0021】
[共役ジエン系重合体(A-1)]
共役ジエン系重合体(A-1)は、粘度検出器付きGPC-光散乱法測定法による絶対分子量(以下、単に「絶対分子量」ともいう。)が40×104以上5000×104以下であり、かつ、粘度検出器付きGPC-光散乱法測定法による分岐度(Bn)(以下、単に「分岐度(Bn)」ともいう。)が4以上84以下である。
【0022】
共役ジエン系重合体(A-1)の含有量は、ゴム成分(A)100質量部に対して、20質量部以上が好ましく、40質量部以上がより好ましく、60質量部以上がさらに好ましい。共役ジエン系重合体(A-1)の含有量が20質量部以上であることにより、共役ジエン系重合体組成物の省燃費性や機械強度がより向上する傾向にある。一方で、共役ジエン系重合体(A-1)の含有量は、ゴム成分(A)100質量部に対して、90質量部以下が好ましく、80質量部以下がより好ましく、70質量部以下がさらに好ましい。共役ジエン系重合体(A-1)の含有量が90質量部以下であることにより、共役ジエン系重合体組成物のコストや低温での柔軟性や耐摩耗性がより良化する傾向にある。
【0023】
(絶対分子量)
共役ジエン系重合体(A-1)の絶対分子量は、40×104以上であり、90×104以上が好ましく、140×104以上がより好ましく、180×104以上がさらに好ましく、220×104以上が最も好ましい。絶対分子量が40×104以上であることにより、共役ジエン系重合体組成物の機械強度がより向上する。一方、共役ジエン系重合体(A-1)の絶対分子量は、5000×104以下であり、2000×104以下が好ましく、500×104以下がより好ましく、300×104以下がさらに好ましい。絶対分子量が5000×104以下であることにより、共役ジエン系重合体組成物の加工性や柔軟性がより向上する。絶対分子量は、実施例に記載の粘度検出器付きGPC-光散乱法測定法により測定することができる。
【0024】
(分岐構造)
共役ジエン系重合体(A-1)は分岐構造を有する。ここで、分岐構造としては、特に制限されないが、例えば、基礎高分子科学(高分子学会、2006年)に記載の、くし型高分子構造(主鎖中の分岐点に複数の側鎖が結合していても良い)、星型高分子構造、樹脂状高分子構造等の枝分かれ構造が挙げられ、これらの組み合わせであってもよい。
【0025】
分岐度(Bn)が4以上84以下である限り、共役ジエン系重合体(A-1)の分岐構造は特に制限されないが、くし型高分子構造や星型高分子構造が好ましく、星型高分子構造がより好ましい。このような分岐構造を有することにより、共役ジエン系重合体組成物をシートにした時の切れがより抑制され、また50℃において剛性がより向上する傾向にある。
【0026】
共役ジエン系重合体組成物をシートにした時の切れの抑制と50℃の高剛性の点で、くし型高分子構造の副分子鎖および主鎖の末端の副分子鎖の化学構造(単量体の構成や分布)、重合度あるいは分岐度(一般的には分岐無し)は同じであっても良いが、それぞれの副分子で異なっている方がさらに好ましい。
【0027】
共役ジエン系重合体組成物をシートにした時の切れの抑制と50℃の高剛性の点で、星型高分子構造の中心の分岐点(以下、「中心分岐点」ともいう。)からの伸びる分子鎖の化学構造(単量体の構成や分布)、重合度あるいは分岐度は同じであっても良いが、それぞれ分子鎖で異なっている方がさらに好ましい。なお、中心分岐点から伸びる高分子鎖中に形成された分岐点を中間分岐点という。
【0028】
共役ジエン系重合体(A-1)は、主鎖から枝状に側鎖の高分子鎖が分岐したくし型高分子構造や、中心分岐点からの伸びる高分子鎖を有する星型高分子構造などを有することが好ましい。なお、星型高分子構造は、中心分岐点から伸びる高分子鎖が、さらに中間分岐点で分岐した分岐構造を有した分岐構造していてもよい。このような分岐構造を有することにより、共役ジエン系重合体組成物の機械強度がより向上し、またシートにした時の切れがより抑制される傾向にある。
【0029】
(分岐度(Bn)))
共役ジエン系重合体(A-1)の分岐度(Bn)は、4以上であり、好ましくは6以上であり、より好ましくは10以上であり、さらに好ましくは15以上である。分岐度(Bn)が4以上であることにより、加工性や耐摩耗性がより向上する傾向にある。一方、共役ジエン系重合体(A-1)の分岐度(Bn)は、84以下であり、好ましくは60以下であり、より好ましくは40以下であり、さらに好ましくは30以下である。分岐度(Bn)が84以下であることにより、耐摩耗性がより向上する傾向にある。
【0030】
なお、「分岐」とは、1つの重合鎖に対して、他の重合鎖が結合することにより形成される、その結合点をいう。また、「分岐度(Bn)」は、最長の主鎖構造に対して、直接的又は間接的に互いに結合している重合鎖の数を表現するものである。したがって、例えば、分岐度(Bn)が4以上であるとは、実質的に、共役ジエン系重合体(A-1)における、最長の高分子主鎖に対する側鎖の高分子鎖が4本以上であることを意味する。
【0031】
共役ジエン系重合体(A-1)の分岐度(Bn)は、粘度検出器付きGPC-光散乱法測定法により測定される収縮因子(g’)を用いて、下記式により定義することができる。
g’=6Bn/{(Bn+1)(Bn+2)}
【0032】
一般的に、分岐状重合体は、同一の絶対分子量を有する直鎖状重合体と比較した場合に、分子の大きさが小さくなる傾向にある。収縮因子(g’)は、想定上同一の絶対分子量を有する直鎖状重合体の分子の大きさに対する、分岐状重合体の分子の大きさの比率の指標である。すなわち、分岐状重合体の分岐度が大きくなれば、収縮因子(g’)は小さくなる傾向にある。
【0033】
本実施形態では、この収縮因子(g’)の算出において、分子の大きさの指標として固有粘度を用いる。すなわち、粘度検出器付きGPC-光散乱法測定法によって、ある分岐状重合体の絶対分子量M1と固有粘度η1を求め、その絶対分子量M1とおなじ絶対分子量を有する直鎖状重合体の固有粘度η2を、下記関係式により求める。そして、固有粘度η1と固有粘度η2の比として収縮因子(g’)を算出する。
固有粘度[η]=-3.883M0.771
M:絶対分子量
【0034】
しかしながら、上記収縮因子(g’)は、直鎖状重合体に対する分岐状重合体の大きさの減少率を表現するものであるが、分岐状重合体の分岐構造を正確に表現するものではない。そこで、本実施形態においては、上記のようにして得られる収縮因子(g’)を用いて、上記分岐度(Bn)の定義式に従って共役ジエン系重合体(A-1)の分岐度(Bn)を算出する。
【0035】
算出された分岐度(Bn)は、最長の主鎖構造に対して、直接的又は間接的に互いに結合している重合鎖の数を表現するものとなり、分岐構造を表現する指標となる。例えば、中央分岐点で4本の重合体鎖が接続されている典型的な4分岐星型高分子の場合、最長の高分岐主鎖構造に対して高分子鎖の腕が2本結合しており、分岐度(Bn)は2と評価される。また、分岐度(Bn)が4である分岐構造には、例えば、最長の高分岐主鎖構造に対して直接的又は間接的に互いに結合している重合鎖を4本有する6分岐の星型高分子構造が含まれる。
【0036】
分岐度(Bn)が4以上84以下である共役ジエン系重合体(A-1)を用いることにより、共役ジエン系重合体組成物の加硫物の耐摩耗性及び破壊強度が優れるものとなる。
【0037】
一般に、共役ジエン系重合体(A-1)の絶対分子量が上昇すると共役ジエン系重合体組成物の加工性が悪化する傾向にある。そのため、絶対分子量の高い直鎖状高分子を用いた場合、加硫物とする際の粘度が大幅に上昇し、共役ジエン系重合体組成物の加工性が大幅に悪化する。
【0038】
一方、本実施形態の共役ジエン系重合体(A-1)は、分岐度(Bn)を4以上84以下することで、絶対分子量の上昇に伴う加硫物とする際の粘度の上昇を大幅に抑制することができる。そのため、例えば、混練工程においてシリカ等と十分に混合することができ、共役ジエン系重合体(A-1)の周りにシリカを分散させることが可能となる。その結果、例えば、共役ジエン系重合体(A-1)の絶対分子量を従来よりもより大きくすることが可能となり、耐摩耗性及び破壊強度を向上させることが可能となる。さらに、十分な混練によってシリカを共役ジエン系重合体(A-1)の周りに分散させ、シリカと共役ジエン系重合体(A-1)の有する官能基を十分に作用及び/又は反応することが可能となることで、省燃費性とウェットスキッド抵抗性とをさらに向上させることが可能となる。
【0039】
共役ジエン系重合体の分岐度は、後述する分岐化剤の種類や添加量と末端カップリング剤の種類や添加量との組み合わせにより制御することができる。
【0040】
(カップリング剤)
共役ジエン系重合体(A-1)は、共役ジエン系重合体組成物の混練機からダンプアウトした際のまとまりの点から、重合及び分岐工程を経て得られた共役ジエン系重合体を、共役ジエン系重合体の活性末端に対して、珪素原子を含有し3官能以上の反応性化合物(以下、「カップリング剤」ともいう。)を用いてカップリング反応を行って得られる共役ジエン系重合体が好ましい。官能基数は4以上がより好ましく、5以上がさらに好ましく、6以上が最も好ましい。
【0041】
(変性剤)
共役ジエン系重合体(A-1)は、シリカの分散性の点から、窒素原子を含有することが好ましい。共役ジエン系重合体(A-1)中への窒素原子の導入位置としては、特に制限されないが、例えば、共役ジエン系重合体(A-1)の重合開始末端、主鎖及び/又は側鎖にあたる分子鎖中、及びそれら分子鎖の重合末端が挙げられる。
【0042】
共役ジエン系重合体(A-1)中への窒素原子の導入方法は、特に制限されないが、窒素原子を含有する変性剤を用いて導入する方法が好ましい。このような方法を用いることにより、共役ジエン系重合体(A-1)の重合生産性や変性率がより向上し、また、得られる共役ジエン系重合体組成物の耐摩耗性や省燃費性がより向上する傾向にある。
【0043】
窒素原子を含有する変性剤としては、特に制限されないが、例えば、イソシアナート化合物、イソチオシアナート化合物、イソシアヌル酸誘導体、窒素基含有カルボニル化合物、窒素基含有ビニル化合物、窒素基含有エポキシ化合物、窒素基含有アルコキシシラン化合物等が挙げられる。このような変性剤を用いることにより、共役ジエン系重合体(A-1)の重合生産性や変性率がより向上し、また、得られる共役ジエン系重合体組成物の耐摩耗性や省燃費性がより向上する傾向にある。
【0044】
このなかでも、窒素基含有アルコキシシラン化合物が好ましい。このような変性剤を用いることにより、共役ジエン系重合体(A-1)の重合生産性や変性率がより向上し、また、得られる共役ジエン系重合体組成物の加硫物の引張強度がより向上する傾向にある。さらに、このような変性剤は分岐化剤としても機能し得る。
【0045】
窒素原子含有基アルコキシシラン化合物としては、特に制限されないが、例えば、2,2-ジメトキシ-1-(3-トリメトキシシリルプロピル)-1-アザ-2-シラシクロペンタン、2,2-ジエトキシ-1-(3-トリエトキシシリルプロピル)-1-アザ-2-シラシクロペンタン、2,2-ジメトキシ-1-(4-トリメトキシシリルブチル)-1-アザ-2-シラシクロヘキサン、2,2-ジメトキシ-1-(5-トリメトキシシリルペンチル)-1-アザ-2-シラシクロヘプタン、2,2-ジメトキシ-1-(3-ジメトキシメチルシリルプロピル)-1-アザ-2-シラシクロペンタン、2,2-ジエトキシ-1-(3-ジエトキシエチルシリルプロピル)-1-アザ-2-シラシクロペンタン、2-メトキシ,2-メチル-1-(3-トリメトキシシリルプロピル)-1-アザ-2-シラシクロペンタン、2-エトキシ,2-エチル-1-(3-トリエトキシシリルプロピル)-1-アザ-2-シラシクロペンタン、2-メトキシ,2-メチル-1-(3-ジメトキシメチルシリルプロピル)-1-アザ-2-シラシクロペンタン、及び2-エトキシ,2-エチル-1-(3-ジエトキシエチルシリルプロピル)-1-アザ-2-シラシクロペンタン、トリス(3-トリメトキシシリルプロピル)アミン、トリス(3-メチルジメトキシシリルプロピル)アミン、トリス(3-トリエトキシシリルプロピル)アミン、トリス(3-メチルジエトキシシリルプロピル)アミン、トリス(トリメトキシシリルメチル)アミン、トリス(2-トリメトキシシリルエチル)アミン、及びトリス(4-トリメトキシシリルブチル)アミン、テトラキス[3-(2,2-ジメトキシ-1-アザ-2-シラシクロペンタン)プロピル]-1,3-プロパンジアミン、テトラキス(3-トリメトキシシリルプロピル)-1,3-プロパンジアミン、テトラキス(3-トリメトキシシリルプロピル)-1,3-ビスアミノメチルシクロヘキサン、及びN1-(3-(ビス(3-(トリメトキシシリル)プロピル)アミノ)プロピル)-N1-メチル-N3-(3-(メチル(3-(トリメトキシシリル)プロピル)アミノ)プロピル)-N3-(3-(トリメトキシシリル)プロピル)-1,3-プロパンジアミンが挙げられる。
【0046】
(変性率)
本実施形態において、「変性率」とは、共役ジエン系重合体(A-1)の総量に対する窒素原子含有官能基を有する共役ジエン系重合体の質量比率をいう。例えば、窒素原子含有変性剤を終末端に反応させた場合、当該窒素原子含有変性剤による窒素原子含有官能基を有する共役ジエン系重合体の、共役ジエン系重合体の総量に対する質量比率が、変性率として表される。他方、窒素原子を含有する分岐化剤によって、重合体を分岐させた場合も、生成する共役ジエン系重合体に窒素原子含有官能基を有することになるので、この分岐した重合体も変性率の算出の際、考慮される。すなわち、本実施形態において、窒素原子含有官能基を有する変性剤によるカップリング重合体及び/又は窒素原子含有官能基を有する分岐化剤による分岐化重合体の合計の質量比率が、「変性率」となる。
【0047】
共役ジエン系重合体(A-1)の変性率は、共役ジエン系重合体(A-1)の総量に対して、好ましくは60質量%以上であり、より好ましくは65質量%以上であり、さらに好ましくは70質量%以上であり、よりさらに好ましくは75質量%以上、さらにより好ましくは80質量%以上である。共役ジエン系重合体(A-1)の変性率が60質量%以上であることにより、破壊強度がより向上する傾向にある。また、共役ジエン系重合体(A-1)の変性率の上限は、特に制限されないが、例えば、98質量%以下である。
【0048】
変性率は、官能基含有の変性成分と非変性成分とを分離できるクロマトグラフィーによって測定することができ、より具体的には実施例に記載のカラム吸着GPC法により測定することができる。
【0049】
共役ジエン系重合体(A-1)の変性率は、変性剤の添加量及び反応方法を調整するによって制御することができる。
【0050】
(分岐化剤)
共役ジエン系重合体(A-1)は、上述したように、主鎖から枝状に側鎖の高分子鎖が分岐したくし型高分子構造や、中心分岐点からの伸びる高分子鎖を有する星型高分子構造などを有し得る。なお、星型高分子構造は、中心分岐点から伸びる高分子鎖が、さらに中間分岐点で分岐した分岐構造を有した分岐構造していてもよい。
【0051】
共役ジエン系重合体(A-1)の分岐点、例えば、くし型高分子構造における、主鎖と側鎖が結合する分岐点や、星型高分子構造の中間分岐点は、アルコキシシリル基及び/又はハロシリル基を含むビニル系単量体に由来する部分により形成されることが好ましい。このような分岐点を有することにより、共役ジエン系重合体組成物の機械強度がより向上し、またシートにした時の切れがより抑制される傾向にある。
【0052】
共役ジエン系重合体(A-1)1分子中に含まれる、アルコキシシリル基及び/又はハロシリル基を含むビニル系単量体に由来する部分により形成される分岐点の数は、好ましくは2個以上であり、より好ましくは3個以上であり、さらに好ましくは4個以上である。また、分岐点の数の上限は特に制限されないが10個以下である。分岐点数が上記範囲内であることにより、共役ジエン系重合体組成物をシートにした際の切れがより抑制され、50℃における剛性がより向上する傾向にある。
【0053】
アルコキシシリル基及び/又はハロシリル基を含むビニル系単量体に由来する部分により形成される分岐点は、29Si-NMRにより検出することができる。より具体的には、これら分岐点は、29Si-NMRにおいて、-45ppmから-65ppmの範囲、さらに限定的には-50ppmから-60ppmの範囲に分岐構造由来のピークを示す。
【0054】
アルコキシシリル基及び/又はハロシリル基を含むビニル系単量体としては、特に制限されないが、例えば、下記式(1)又は(2)で表される化合物が挙げられる。これら化合物は、共役ジエン系重合体(A-1)における、分岐化剤として作用する。より具体的には、分岐化剤を重合中に添加し、その後、単量体を添加し重合を継続することで、分岐点により分岐した高分子鎖を伸長させることができる。そして、その後に、上記変性剤やカップリング剤などを添加してもよい。
【化3】
(式(1)中、R
1は、水素原子、炭素数1~20のアルキル基、又は炭素数6~20のアリール基を示し、
R
2及びR
3は、各々独立して、炭素数1~20のアルキル基、又は炭素数6~20のアリール基を示し、
X
1は、各々独立して、ハロゲン原子を示し、
mは、0~2の整数を示し、nは、0~3の整数を示し、lは、0~3の整数を示し、(m+n+l)は、3である。)
【化4】
(式(2)中、R
2~R
5は、各々独立して、炭素数1~20のアルキル基又は炭素数6~20のアリール基を示し、
X
2~X
3は、各々独立して、ハロゲン原子を示し、
mは、0~2の整数を示し、nは、0~3の整数を示し、lは、0~3の整数を示し、(m+n+l)は、3であり、
aは、0~2の整数を示し、bは、0~3の整数を示し、cは、0~3の整数を示し、(a+b+c)は、3である。)
【0055】
式(1)で表される化合物としては、中、R
1が水素原子であり、mが0である下記式(1’)で表される化合物が好ましい。このような化合物を用いることにより、共役ジエン系重合体(A-1)における分岐数が向上し、共役ジエン系重合体組成物の耐摩耗性と加工性がより向上する傾向にある。
【化5】
【0056】
また、式(1)で表される化合物としては、R
1が水素原子であり、mが0であり、lが0であり、nが3である下記式(1’’)で表される化合物がさらに好ましい。このような化合物を用いることにより、共役ジエン系重合体(A-1)における変性率と分岐度とがより向上し、耐摩耗性と加工性の向上に加え、共役ジエン系重合体組成物をシートにした際の切れがより抑制され、50℃における剛性がより向上する傾向にある。
【化6】
【0057】
このような式(1)で表される分岐化剤としては、特に制限されないが、例えば、トリメトキシ(4-ビニルフェニル)シラン、トリエトキシ(4-ビニルフェニル)シラン、トリプロポキシ(4-ビニルフェニル)シラン、トリブトキシ(4-ビニルフェニル)シラントリイソプロポキシ(4-ビニルフェニル)シラン、トリメトキシ(3-ビニルフェニル)シラン、トリエトキシ(3-ビニルフェニル)シラン、トリプロポキシ(3-ビニルフェニル)シラン、トリブトキシ(3-ビニルフェニル)シラン、トリイソプロポキシ(3-ビニルフェニル)シラン、トリクロロ(4-ビニルフェニル)シランが好ましく、このなかでも、トリメトキシ(4-ビニルフェニル)シラン、トリエトキシ(4-ビニルフェニル)シラン、トリプロポキシ(4-ビニルフェニル)シラン、トリブトキシ(4-ビニルフェニル)シラントリイソプロポキシ(4-ビニルフェニル)シランがより好ましい。
【0058】
式(2)で表される化合物としては、mが0であり、bが0である下記式(2’)で表される化合物が好ましく、mが0、lが0、nが3であり、aが0、bが0であり、cが3である下記式(2’’)で表される化合物がより好ましい。このような化合物を用いることにより、共役ジエン系重合体組成物をシートにした際の切れがより抑制さら、50℃における剛性がより向上する傾向にある。
【化7】
【0059】
このような式(2)で表される分岐化剤としては、特に制限されないが、例えば、1,1-ビス(4-トリメトキシシリルフェニル)エチレン、1,1-ビス(4-トリエトキシシリルフェニル)エチレン、1,1-ビス(4-トリプロポキシシシリルフェニル)エチレン、1,1-ビス(4-トリペントキシシリルフェニル)エチレン、1,1-ビス(4-トリイソプロポキシシリルフェニル)エチレンが好ましく、このなかでも1,1-ビス(4-トリメトキシシリルフェニル)エチレンがより好ましい。
【0060】
(ムーニー粘度)
共役ジエン系重合体(A-1)の100℃で測定されるムーニー粘度は、好ましくは40以上170以下であり、より好ましくは50以上150以下であり、さらに好ましくは55以上130以下である。ムーニー粘度が上記範囲内であることにより、共役ジエン系重合体の生産性、充填剤等を配合した組成物としたときの加工性、並びに、組成物を加硫物としたときの操縦安定性、及び破壊強度がより向上する傾向にある。
【0061】
特に、100℃で測定されるムーニー粘度が40以上の場合、加硫物とした際の破壊強度が向上する傾向にあり、また、100℃で測定されるムーニー粘度が170以下であると共役ジエン系重合体の製造に支障が生じることを抑制し、充填剤等を配合した組成物とする際の加工性が良好となる。
【0062】
共役ジエン系重合体組成物のムーニー粘度を上述した範囲に調整するために、共役ジエン系重合体組成物は共役ジエン系重合体(A-1)100質量部に対して、後述するゴム用軟化剤を1質量部以上60質量部以下含んでいてもよい。
【0063】
ムーニー粘度の測定は、ISO289準拠し、述する実施例に記載の方法により測定することができる。
【0064】
(ミクロ構造)
共役ジエン系重合体(A-1)は、共役ジエンモノマーと分岐化剤との重合体であってもよいし、共役ジエンモノマー、分岐化剤及びこれら以外のモノマーとの共重合体であってもよい。例えば、共役ジエンモノマーがブタジエン又はイソプレンで、これとビニル芳香族部分を含む分岐化剤とを重合させた場合、ポリブタジエン又はポリイソプレンによる主鎖と、ビニル芳香族由来の側鎖を有する共役ジエン系重合体となる。
【0065】
共役ジエンとしては、特に制限されないが、例えば、ブタジエン、イソプレン、2,3-ジメチル-1,3-ブタジエンなどが挙げられる。このなかでも、ブタジエン、イソプレンが好ましい。ブタジエン及びイソプレンの総含有量は、共役ジエン全体に対して、好ましくは70質量%以上であり、より好ましくは70~100質量%である。
【0066】
ビニル芳香族としては、特に制限されないが、例えば、スチレン、α-メチルスチレンが挙げられる。このなかでも、スチレンが好ましい。スチレンの含有量は、ビニル芳香族全体に対して、好ましくは70質量%以上であり、より好ましくは70~100質量%である。
【0067】
共役ジエンの含有量は、共役ジエン系重合体(A-1)全体に対して、40質量%以上が好ましく、60質量%以上がより好ましく、75質量%以上がさらに好ましく、85質量%以上が最も好ましい。共役ジエンの含有量が40質量%以上であることにより、破壊強度がより向上する傾向にある。また、共役ジエンの含有量は、共役ジエン系重合体(A-1)全体に対して、100質量%以下が好ましく、95質量%以下がより好ましく、90質量%以上がさらに好ましく、85質量%以下が最も好ましい。共役ジエンの含有量が100質量%以下であることにより、他の共役ジエン系重合体との相溶性がより向上する傾向にある。
【0068】
芳香族ビニルの含有量は、共役ジエン系重合体(A-1)全体に対して、0質量%以上が好ましく、5質量%以上がより好ましく、10質量%以上がさらに好ましく、15質量%以上が最も好ましい。芳香族ビニルの含有量が0質量%以上であることにより、他の共役ジエン系重合体との相溶性がより向上する傾向にある。また、芳香族ビニルの含有量は、共役ジエン系重合体(A-1)全体に対して、60質量%以下が好ましく、40質量%以下がより好ましく、25質量%以上がさらに好ましく、15質量%以下が最も好ましい。芳香族ビニルの含有量が60質量%以下であることにより、破壊強度がより向上する傾向にある。芳香族ビニル含有量は、後述する実施例に記載の方法に準じて測定する。
【0069】
また、共役ジエンとビニル芳香族の総量は、共役ジエン系重合体(A-1)を構成する単量体全体に対して、好ましくは80質量%以上であり、より好ましくは80~100質量%である。
【0070】
共役ジエン系重合体(A-1)において、共役ジエン結合単位中のビニル結合量は、10mol%以上が好ましく、20mol%以上がより好ましい。ビニル結合量が10mol%以上であることにより、共役ジエン系重合体の生産性がより向上する傾向にある。また、共役ジエン結合単位中のビニル結合量は、75mol%以下が好ましく、60mol%以下がより好ましく、45mol%以下がさらに好ましく、30mol%以下が最も好ましい。ビニル結合量が75mol%以下であることにより、共役ジエン系重合体組成物の耐老化性がより向上する傾向にある。ビニル結合量は、後述する実施例に記載の方法により測定することができる。
【0071】
共役ジエン系重合体(A-1)のガラス転移温度は、-90℃以上が好ましく、-80℃以上がより好ましく、-75℃以上がさらに好ましい。ガラス転移温度が-90℃以上であることにより、共役ジエン系重合体組成物の引張強度がより向上する傾向にある。一方、共役ジエン系重合体(A-1)のガラス転移温度は、-15℃以下が好ましく、-30℃以下が好ましく、-40℃以下がさらに好ましい。ガラス転移温度が-15℃以下であることにより、共役ジエン系重合体組成物の柔軟性がより向上する傾向にある。
【0072】
また、共役ジエン系重合体(A-1)は、ガラス転移温度が異なる2種類以上を用いてもよい。例えば、共役ジエン系重合体組成物の低温での柔軟性や省燃費性やウェットスキット抵抗性の点で、Tgが-80℃以上-50℃以下の共役ジエン系重合体(A-1)と、Tgが-25℃以上0℃以下の共役ジエン系重合体(A-1)と、を併用することが好ましい。この場合、Tgが低い共役ジエン系重合体(A-1)の含有量が、Tgが高い共役ジエン系重合体(A-1)の含有量に対して、2倍以上であることが好ましく、3倍以上であることがより好ましい。これにより、共役ジエン系重合体組成物の低温での柔軟性や省燃費性やウェットスキット抵抗性がより向上する傾向にある。
【0073】
ガラス転移温度については、ISO 22768:2006に従い、所定の温度範囲で昇温しながらDSC曲線を記録し、DSC微分曲線のピークトップ(Inflection point)をガラス転移温度とする。具体的には、後述する実施例に記載の方法により測定することができる。
【0074】
共役ジエン系重合体(A-1)が、共役ジエン-芳香族ビニル共重合体である場合、芳香族ビニル単位が30以上連鎖しているブロックの数が、少ないか又はないものであることが好ましい。より具体的には、共重合体がブタジエン-スチレン共重合体の場合、Kolthoffの方法(I.M.KOLTHOFF,et al.,J.Polym.Sci.1,429(1946)に記載の方法)により共重合体を分解し、メタノールに不溶なポリスチレン量を分析する公知の方法において、芳香族ビニル単位が30以上連鎖しているブロックの量(以下、「スチレンブロック量」ともいう。)を測定することができる。このようにして得られるスチレンブロック量は、共役ジエン系重合体(A-1)の総量に対して、好ましくは5.0質量%以下、より好ましくは3.0質量%以下である。
【0075】
[共役ジエン系重合体(A-1)の製造方法]
本実施形態の共役ジエン系重合体(A-1)の製造方法は、特に制限されないが、有機リチウム系化合物を重合開始剤として用いて、少なくとも共役ジエン化合物を重合し、分岐化剤を用いて分岐構造を有する共役ジエン系重合体を得る重合及び分岐工程と、得られた共役ジエン系重合体を、カップリング剤又は変性剤と反応させる変性及びカップリング工程と、を有することが好ましい。
【0076】
(重合及び分岐工程)
重合方式としては、特に制限されないが、例えば、回分式(「バッチ式」ともいう。)、連続式の重合反応様式が挙げられる。
【0077】
重合工程においては、重合体共役ジエン部分のミクロ構造の調節剤として、極性化合物(ビニル化剤)を適量用いることができる。これにより、ビニル結合量を所望の範囲に調整することができる。また、多くの極性化合物は、ビニル結合量の調整効果の他、共役ジエン化合物と芳香族ビニル化合物との共重合において有効なランダム化効果を有する。そのため、極性化合物は、芳香族ビニル化合物の分布の調整やスチレンブロック量の調整剤として用いることもできる。
【0078】
さらに、共役ジエン化合物と芳香族ビニル化合物とをランダム化する方法としては、例えば、特開昭59-140211号公報に記載されているように、スチレンの全量と1,3-ブタジエンの一部とで共重合反応を開始させ、共重合反応の途中で残りの1,3-ブタジエンを断続的に添加する方法を用いてもよい。
【0079】
分岐工程における分岐化剤の添加量は、目的とする分岐度により適宜調整することができるが、重合開始剤1モルに対して、0.03モル以上0.5モル以下であることが好ましく、0.05モル以上0.4モル以下であることがより好ましく、0.01モル以上0.25モル以下であることがさらに好ましい。分岐化剤は共役ジエン系重合体の共役ジエン部分の分岐構造の分岐点として、所望の分岐点数に応じて、適量用いることができる。
【0080】
分岐工程において、分岐化剤を添加するタイミングは、特に制限されないが、重合開始剤添加後の原料転化率を一つの指標とすることができる。分岐化剤を添加するタイミングは、原料転化率が20%以上であるタイミングが好ましく、40%以上であることがより好ましく、50%以上であることがさらに好ましく、65%以上であることがさらにより好ましく、75%以上であることがよりさらに好ましい。このようなタイミングで分岐化剤を添加することにより、得られる変性共役ジエン系重合体(A-1)の絶対分子量と変性率がより向上する傾向にある。
【0081】
また、分岐化剤を添加後、さらに所望の単量体を追添加して、分岐化後に重合工程を継続してもよい。さらに、分岐化剤の添加は複数回行ってもよいし、上記単量体の追添加もそれに合わせて複数回行ってもよい。
【0082】
追添加する単量体の添加量は、特に制限されないが、共役ジエン系重合体の変性率向上の点から、重合工程で使用される共役ジエン系単量体総量の5%以上であることが好ましく、10%以上であることがより好ましく、15%以上であることがさらに好ましく、20%以上であることがさらにより好ましく、25%以上、30%以下であることがよりさらに好ましい。
【0083】
追添加する単量体の添加量が上記範囲内にあることにより、分岐化剤による分岐点とカップリング剤による分岐点間の分子量が長くなり、直線性の高い分子構造を取りやすい傾向にある。共役ジエン系重合体(A-1)がこのような直線性の高い分子構造を有することにより、加硫物とした際に共役ジエン系重合体の分子鎖同士の絡み合いが増して、耐摩耗性、操縦安定性及び破壊強度に優れたゴム組成物を得られ易い傾向にある。
【0084】
(変性工程およびカップリング工程)
共役ジエン系重合体(A-1)の製造方法においては、上述した重合及び分岐工程を経て得られた共役ジエン系重合体を、変性剤により変性させる変性工程や、上述した重合及び分岐工程を経て得られた共役ジエン系重合体を、カップリング剤によりカップリングさせるカップリング工程を有することが好ましい。
【0085】
前述したように、変性剤としては、重合生産性や高い変性率等の点で、窒素原子を含有する変性剤が好ましく、さらに、窒素原子を含有する変性剤としては、窒素基含有アルコキシシラン化合物がより好ましい。
【0086】
変性工程における、窒素基含有アルコキシシラン化合物中のシリル基に結合したアルコキシ基の合計モル数は、重合開始剤の添加モル数に対して、0.6倍以上3.0倍以下が好ましく、0.8倍以上2.5倍以下がより好ましく、0.8以上2.0倍以下がさらに好ましい。アルコキシ基の合計モル数が0.6倍以上であることにより、得られる共役ジエン系重合体(A-1)の変性率、絶対分子量、及び分岐構造をより適切に調整することができる。また、アルコキシ基の合計モル数が3.0倍以下であることにより、カップリング工程において重合体末端同士をカップリングさせ分岐状重合体成分を得やすくなり、加工性の改良がより良化する上、変性剤コストを抑えることができる。
【0087】
一方、重合工程における重合開始剤のモル数は、変性剤のモル数に対して、好ましくは3.0倍モル以上であり、より好ましくは4.0倍モル以上である。
【0088】
カップリング剤としては、上記したものと同様のものを用いることができる。
【0089】
(その他の工程)
共役ジエン系重合体(A-1)の製造方法は、共役ジエン部を水素化する水素化工程を有してもよい。共役ジエン系重合体(A-1)の共役ジエン部を水素化する方法は、特に制限されず、公知の方法が利用できる。
【0090】
また、共役ジエン系重合体(A-1)の製造方法においては、カップリング工程の後、重合体溶液に、必要に応じて、失活剤、中和剤等を添加してもよい。
【0091】
さらに、共役ジエン系重合体(A-1)の製造方法においては、重合後のゲル生成を防止する点、及び加工時の安定性を向上させる点から、ゴム用安定剤を添加することが好ましい。
【0092】
共役ジエン系重合体(A-1)の製造方法においては、生産性や、充填剤等を配合した組成物としたときの加工性をより改善するために、必要に応じて、ゴム用軟化剤等を添加することができる。ゴム用軟化剤としては、特に制限されないが、例えば、伸展油、液状ゴム、樹脂が挙げられる。また、ゴム用軟化剤を添加する方法としては、ゴム用軟化剤を共役ジエン系重合体溶液に混合し、その後に脱溶媒する方法が挙げられる。
【0093】
(脱溶媒工程)
共役ジエン系重合体(A-1)の製造方法において、得られた共役ジエン系重合体を、重合体溶液から取得する方法としては、公知の方法を用いることができる。その方法として、特に制限されないが、例えば、スチームストリッピング等で溶媒を分離した後、重合体を濾別し、さらにそれを脱水及び乾燥して重合体を取得する方法、フラッシングタンクで濃縮し、さらにベント押出し機等で脱揮する方法、ドラムドライヤー等で直接脱揮する方法が挙げられる。
【0094】
[共役ジエン系重合体(A-1)以外のゴム成分(A-2)]
その他のゴム成分(A-2)としては、非ジエン系重合体、天然ゴム、絶対分子量及び/又は分岐度が共役ジエン系重合体(A-1)と異なる共役ジエン系重合体が挙げられる。このようなその他のゴム成分(A-2)としては、特に制限されないが、例えば、ブタジエンゴム、イソプレンゴムなどの共役ジエン系重合体又はその水素添加物、スチレン-ブタジエンゴムなどの共役ジエン系化合物とビニル芳香族化合物との共重合体又はその水素添加物、非ジエン系重合体、天然ゴムが挙げられる。これらは、ゴムは、極性を有する官能基を付与したものであっても、付与していないものであってもよい。また、ゴム成分(A-2)は1種単独で用いても2種以上を併用してもよい。
【0095】
非ジエン系重合体としては、特に制限されないが、例えば、エチレン-プロピレンゴム、エチレン-プロピレン-ジエンゴム、エチレン-ブテン-ジエンゴム、エチレン-ブテンゴム、エチレン-ヘキセンゴム、エチレン-オクテンゴム等のオレフィン系エラストマー、ブチルゴム、臭素化ブチルゴム、アクリルゴム、フッ素ゴム、シリコーンゴム、塩素化ポリエチレンゴム、エピクロルヒドリンゴム、α、β-不飽和ニトリル-アクリル酸エステル-共役ジエン共重合ゴム、ウレタンゴム、及び多硫化ゴムが挙げられる。エチレン-スチレン-ブタジエン共重合体のように、オレフィン系エラストマーが、オレフィン以外に、ビニル芳香族化合物や共役ジエンを含んでもよい。
【0096】
天然ゴムとしては、特に制限されないが、例えば、スモークドシートであるRSS3~5号、SMR、エポキシ化天然ゴムが挙げられる。
【0097】
このなかでも、ブタジエンゴム、イソプレンゴム、スチレン-ブタジエンゴム(乳化重合タイヤや溶液重合タイプ)、天然ゴム、及びブチルゴムが好ましい。このようなゴム成分(A-2)を用いることにより、共役ジエン系重合体組成物の経済性や機械強度や低温での柔軟性がより良化する傾向にある。また、これらゴム成分(A-2)は、本実施形態の共役ジエン系重合体組成物をタイヤ用に用いる場合に、特に好ましい。
【0098】
ゴム成分(A-2)の重量平均分子量は、性能と加工特性とのバランスの点から、2000以上2000000以下であることが好ましく、5000以上1500000以下であることがより好ましい。また、低分子量のゴム成分、いわゆる液状ゴムを用いることもできる。
【0099】
その他のゴム成分(A-2)の含有量は、ゴム成分(A)100質量部に対して、10質量部以上が好ましく、20質量部以上がより好ましく、30質量部以上がさらに好ましい。共役ジエン系重合体(A-1)の含有量が10質量部以上であることにより、共役ジエン系重合体組成物のコストや低温での柔軟性や耐摩耗性がより良化する傾向にある。一方で、共役ジエン系重合体(A-1)の含有量は、ゴム成分(A)100質量部に対して、80質量部以下が好ましく、60質量部以下がより好ましく、40質量部以下がさらに好ましい。共役ジエン系重合体(A-1)の含有量が80質量部以下であることにより、共役ジエン系重合体組成物の省燃費性や機械強度がより向上する傾向にある。
【0100】
(補強充填剤(B))
補強充填剤(B)の含有量は、ゴム成分(A)100質量部に対して、1質量部以上であり、30質量部以上が好ましく、50質量部以上がより好ましい。補強充填剤(B)の含有量が1質量部以上であることにより、共役ジエン系重合体組成物の機械強度やウェットスキッド抵抗性がより向上する傾向にある。一方、補強充填剤(B)の含有量は、ゴム成分(A)100質量部に対して、200質量部以下であり、150質量部以下が好ましく、120質量部以下がより好ましく、100質量部以下が最も好ましい。補強充填剤(B)の含有量が200質量部以下であることにより、共役ジエン系組成物の加工性や省燃費性がより向上する傾向にある。
【0101】
補強充填剤(B)としては、特に制限されないが、例えば、シリカ系無機充填剤、カーボンブラック、金属酸化物、金属水酸化物が挙げられる。これらの中でも、シリカ系無機充填剤やカーボンブラックが好ましい。補強充填剤(B)は1種単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0102】
シリカ系無機充填剤としては、特に制限されず、公知のものを用いることができる。このなかでもSiO2又はSi3Alを構成単位として含む固体粒子が好ましく、SiO2又はSi3Alを構成単位の主成分として含む固体粒子がより好ましい。ここで、主成分とは、シリカ系無機充填剤中に50質量%以上、好ましくは70質量%以上、より好ましくは80質量%以上含有される成分をいう。
【0103】
シリカ系無機充填剤としては、特に制限されないが、例えば、シリカ、クレイ、タルク、マイカ、珪藻土、ウォラストナイト、モンモリロナイト、ゼオライト、ガラス繊維等の無機繊維状物質が挙げられる。また、表面を疎水化したシリカ系無機充填剤、シリカ系無機充填剤とシリカ系以外の無機充填剤との混合物も挙げられる。これらの中でも、強度及び耐摩耗性等の点から、シリカ及びガラス繊維が好ましく、シリカがより好ましい。シリカとしては、例えば、乾式シリカ、湿式シリカ、合成ケイ酸塩シリカが挙げられる。これらのシリカの中でも、破壊強度の改良効果から、湿式シリカが好ましい。
【0104】
ゴム組成物の実用上良好な硬さを得る点から、シリカ系無機充填剤のBET吸着法で求められる窒素吸着比表面積は、100m2/g以上300m2/g以下であることが好ましく、170m2/g以上250m2/g以下であることがより好ましい。また必要に応じて、比較的比表面積が小さい(例えば、比表面積が200m2/g以下の)シリカ系無機充填剤と、比較的比表面積の大きい(例えば、200m2/g以上の)シリカ系無機充填剤)と、を組み合わせて用いることができる。本実施形態において、比較的比表面積の大きい(例えば、200m2/g以上の)シリカ系無機充填剤を用いる場合に、上述の共役ジエン系重合体を含む組成物は、シリカの分散性を改善し、破壊強度と省燃費性とを高度にバランスさせることができる傾向にある。
【0105】
シリカ系無機充填剤の含有量は、ゴム成分(A)100質量部に対して、5質量部以上が好ましく、20質量部以上がより好ましく、40質量部以上がさらに好ましい。シリカ系無機充填剤の含有量が5質量部以上であることにより、共役ジエン系重合体組成物のコストがより低下し、機械強度がより向上する傾向にある。一方、シリカ系無機充填剤の含有量は、ゴム成分(A)100質量部に対して、170質量部以下が好ましく、120質量部以下がより好ましい。シリカ系無機充填剤の含有量が170質量部以下であることにより、共役ジエン系重合体組成物の機械強度がより向上する傾向にある。
【0106】
さらに、シリカ系無機充填剤の含有量は、植物油(C)と植物由来樹脂(D)の合計量と下記2式の関係を満たすことがより好ましい。
植物油(C)と植物由来樹脂(D)の合計量(質量部)<0.825×シリカ系無機充填剤(質量部)+30 (式1)
植物油(C)と植物由来樹脂(D)の合計量(質量部)>0.825×シリカ系無機充填剤(質量部)-50 (式2)
【0107】
カーボンブラックとしては、特に制限されないが、例えば、SRF、FEF、HAF、ISAF、SAF等の各クラスのカーボンブラックが挙げられる。これらの中でも、窒素吸着比表面積が50m2/g以上、かつ、ジブチルフタレート(DBP)吸油量が80mL/100g以下のカーボンブラックが好ましい。
【0108】
カーボンブラックの含有量は、ゴム成分(A)100質量部に対して、0.5質量部以上が好ましく、3.0質量部以上がより好ましく、5.0質量部以上がさらに好ましい。カーボンブラックの含有量が0.5質量部以上であることにより、共役ジエン系重合体組成物の機械強度、ドライグリップ性能、導電性がより向上する傾向にある。一方で、カーボンブラックの含有量は、ゴム成分(A)100質量部に対して、100質量部以下が好ましく、50質量部以下がより好ましい。カーボンブラックの含有量が100質量部以下であることにより、共役ジエン系重合体組成物の加工性や柔軟性がより向上する傾向にある。
【0109】
金属酸化物とは、化学式MxOy(Mは、金属原子を示し、x及びyは、各々独立して、1~6の整数を示す。)を構成単位の主成分とする固体粒子のことをいう。
【0110】
金属酸化物としては、特に制限されないが、例えば、アルミナ、酸化チタン、酸化マグネシウム、及び酸化亜鉛が挙げられる。
【0111】
金属水酸化物としては、特に制限されないが、例えば、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、及び水酸化ジルコニウムが挙げられる。
【0112】
(植物油(C))
本実施形態において植物油(C)とは、植物に含まれる脂質を抽出・精製した油脂・油で植物油脂の中で、常温における状態で液体のものをいう。植物油(C)は鉱物油に比較してTgが低いので、共役ジエン系重合体組成物の混練性を改善するだけでなく、例えば、共役ジエン系重合体組成物をタイヤに用いた際のスノー性能を向上させることができる。また、植物油(C)は、常温で固体の植物油脂と比較してTg制御に優れるため、植物油が好適である。
【0113】
植物油(C)の含有量は、ゴム成分(A)100質量部に対して、1質量部以上であり、5質量部以上がより好ましく、10質量部以上がさらに好ましく、20質量部以上が最も好ましい。植物油(C)の含有量が1質量部以上であることにより、スノー性能がより向上する傾向にある。一方、植物油(C)の含有量は、ゴム成分(A)100質量部に対して、80質量部以下であり、60質量部以下がより好ましく、40質量部以下がさらに好ましい。植物油(C)の含有量が80質量部以下であることにより、共役ジエン系重合体組成物の省燃費性や取扱い性がより向上する傾向にある。
【0114】
なお、植物油(C)と植物由来樹脂(D)を含む場合における植物油(C)の含有量は、好ましくは2~78質量部であり、より好ましくは5~60質量部であり、さらに好ましくは10~40質量部である。
【0115】
植物油(C)は、伸展油としても機能し得る。植物油(C)を伸展油として使用することにより、合成油や鉱物油を伸展油として用いる場合と比較して、環境への配慮を達成しつつ、混練性の改善を図ることができる。このような植物油(C)としては、特に制限されないが、例えば、アマニ油、ベニバナ油、ダイズ油、コーン油、綿実、ターニップシード油、ヒマシ油、キリ油、パイン油、ヒマワリ油、パーム油、オリーブ油、ココナッツ油、落花生油、グレープシード油等が挙げられる。このなかでも、ヒマワリ油を用いることが好ましい。これらの植物油(C)は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0116】
また、植物油(C)は、脂肪酸を含むことが好ましい。脂肪酸としては、特に制限されないが、例えば、カプロン酸、エナント酸、カプリル酸、ペラルゴン酸、カプリン酸、ウンデシル酸、ラウリン酸、トリデシル酸、ミリスチン酸、ペンタデシル酸、パルミチン酸、マルガリン酸、ステアリン酸、ベヘン酸等の飽和脂肪酸;リノレン酸、エイコサペンタエン酸、ドコサヘキサエン酸、リノール酸、アラキドン酸、パルミトレイン酸、オレイン酸、エルカ酸、ネルボン酸等の不飽和脂肪酸が挙げられる。このなかでも、不飽和脂肪酸が好ましく、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸及びこれらの混合物がより好ましく、オレイン酸がさらに好ましい。これら一価不飽和脂肪酸は酸化し劣化し難い傾向にある。脂肪酸は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0117】
植物油(C)が脂肪酸を含む場合、脂肪酸に含まれるオレイン酸の含有量は、脂肪酸の総量に対して、好ましくは60質量%以上であり、より好ましくは70質量%以上であり、さらに好ましくは80質量%以上であり、特に好ましくは90質量%以上である。特に、オレイン酸を上記含有量で含むヒマワリ油が好ましい。
【0118】
(植物油(C)以外の伸展油)
本実施形態の共役ジエン系重合体組成物は、植物油(C)以外の伸展油をさらに含んでいてもよい。植物油(C)以外の伸展油としては、合成油や鉱物油が挙げられる。また、これら伸展油のTgは、好ましくは-20℃未満であり、より好ましくは-40℃未満である。
【0119】
植物油(C)以外の伸展油としては、特に制限されないが、例えば、ポリオレフィン油、ナフテン油(低または高粘度、特に水素化型またはその他)、パラフィン油、DAE油、MES油、TDAE油、RAE油、TRAE油、SRAE油、鉱物油、エーテル可塑剤、エステル可塑剤、ホスフェート可塑剤、スルホネート可塑剤等が挙げられる。これらの植物油(C)以外の伸展油は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0120】
(植物由来樹脂(D))
植物由来樹脂(D)としては、特に制限されないが、例えば、植物由来であるロジン誘導体(桐油樹脂を含む)、トール油、トール油の誘導体、ロジンエステル樹脂、天然由来のテルペン樹脂、クマリン-インデン樹脂が挙げられる。これらの中でも、Tg、軟化点、分子量(Mn),分子量分布(PI)及び環境への配慮の観点から、テルペン樹脂が好ましい。
【0121】
植物由来樹脂(D)のガラス転移温度は、好ましくは25℃以上であり、より好ましくは30~100℃であり、さらに好ましくは30~90℃である。ガラス転移温度が上記範囲内であることにより、共役ジエン系重合体組成物の機械強度、省燃費性、及び取扱性がより向上する傾向にある。ガラス転移温度は実施例に記載の方法により測定することができる。
【0122】
植物由来樹脂(D)の軟化点は、好ましくは50℃以上であり、より好ましくは50~150℃である。軟化点が上記範囲内であることにより、共役ジエン系重合体組成物の機械強度、省燃費性、及び取扱性がより向上する傾向にある。軟化点は規格ISO 4625(環球法)によって測定することができる。
【0123】
植物由来樹脂(D)の数平均分子量(Mn)は、好ましくは400~2000であり、より好ましくは500~1500である。数平均分子量(Mn)が上記範囲内であることにより、共役ジエン系重合体組成物の機械強度、省燃費性、及び取扱性がより向上する傾向にある。数平均分子量(Mn)は、実施例に記載の方法によって測定することができる。
【0124】
植物由来樹脂(D)の分子量分布(PI)は、3以下であり、より好ましくは2以下であり、さらに好ましくは1~2である。分子量分布(PI)が上記範囲内であることにより、共役ジエン系重合体組成物の機械強度、省燃費性、及び取扱性がより向上する傾向にある。分子量分布(PI)は、数平均分子量(Mn)に対する質量平均分子量(Mw)の比として求めることができる。数平均分子量(Mn)及び質量平均分子量(Mw)は、実施例に記載の方法によって測定することができる。
【0125】
このなかでも、上記のガラス転移温度、軟化点、数平均分子量、及び分子量分布の少なくともいずれか1つ、好ましくは全てを満たす、植物由来のテルペン樹脂が好ましい。
【0126】
植物由来樹脂(D)の含有量は、ゴム成分(A)100質量部に対して、1質量部以上であり、5質量部以上がより好ましく、10質量部以上がさらに好ましく、20質量部以上が最も好ましい。植物由来樹脂(D)の含有量が1質量部以上であることにより、機械強度がより向上する傾向にある。一方、植物由来樹脂(D)の含有量は、ゴム成分(A)100質量部に対して、80質量部以下であり、60質量部以下が好ましく、40質量部以下がさらに好ましい。植物由来樹脂(D)の含有量が80質量部以下であることにより、共役ジエン系重合体組成物の省燃費性や取扱性がより向上する傾向にある。
【0127】
本実施形態の共役ジエン系重合体組成物は、植物油(C)と植物由来樹脂(D)を共に含むことが好ましい。これにより、植物油(C)以外の伸展油や、植物由来樹脂(D)以外の固体の樹脂のみを用いる場合と比較して、環境への配慮を達成しつつ、取扱性がより向上する傾向にある。
【0128】
なお、植物油(C)と植物由来樹脂(D)を含む場合における植物由来樹脂(D)の含有量は、好ましくは2~78質量部であり、より好ましくは5~60質量部であり、さらに好ましくは10~40質量部である。
【0129】
(植物由来樹脂(D)以外の樹脂)
本実施形態の共役ジエン系重合体組成物は、植物由来樹脂(D)以外の樹脂をさらに含んでいてもよい。
【0130】
このような樹脂としては、特に制限されないが、例えば、芳香族系石油樹脂、クマロン・インデン樹脂、合成のテルペン樹脂、脂肪族炭化水素樹脂、芳香族炭化水素樹脂、混合脂肪族-芳香族炭化水素樹脂、フェノール樹脂、p-tert-ブチルフェノール-アセチレン樹脂、フェノール-ホルムアルデヒド樹脂、キシレン-ホルムアルデヒド樹脂、モノオレフィンのオリゴマー、ジオレフィンのオリゴマー、芳香族炭化水素樹脂、芳香族系石油樹脂、水素化芳香族炭化水素樹脂、環式脂肪族炭化水素樹脂、水素化炭化水素樹脂、炭化水素樹脂、水素化桐油樹脂、水素化油樹脂、水素化油樹脂と単官能又は多官能アルコールとのエステル等が挙げられる。これら樹脂は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。水素化する場合、不飽和基を全て水添してもよいし、一部残してもよい。
【0131】
固体可塑剤である炭化水素樹脂は、例えば、国際公開第2005/087859号パンフレット、国際公開第2006/061064号パンフレットおよび国際公開第2007/017060号パンフレットに記載されているような、+20℃よりも高い、好ましくは+30℃よりも高いTgを示す。
【0132】
(シランカップリング剤)
本実施形態の共役ジエン系重合体組成物は、シランカップリング剤をさらに含んでもよい。シランカップリング剤は、ゴム成分(A)と補強充填剤(B)との相互作用を緊密にする機能を有しており、ゴム成分(A)及び補強充填剤(B)のそれぞれに対する親和性又は結合性の基を有しており、硫黄結合部分とアルコキシシリル基又はシラノール基部分とを一分子中に有する化合物が好ましい。
【0133】
このようなシランカップリング剤としては、特に制限されないが、例えば、ビス-[3-(トリエトキシシリル)-プロピル]-テトラスルフィド、ビス-[3-(トリエトキシシリル)-プロピル]-ジスルフィド、ビス-[2-(トリエトキシシリル)-エチル]-テトラスルフィド、S-[3-(トリエトキシシリル)-プロピル]オクタンチオエート及びS-[3-(トリエトキシシリル)-プロピル]オクタンチオエートと[(トリエトキシシリル)-プロピル]チオールの縮合物、少なくとも1個のチオール(-SH)官能基(メルカプトシランと称する)および/または、少なくとも1個のマスクトチオール基を担持するシラン類が挙げられる。
【0134】
シランカップリング剤の含有量は、上述した補強充填剤(B)100質量部に対して、0.1質量部以上30質量部以下が好ましく、0.5質量部以上20質量部以下がより好ましく、1.0質量部以上15質量部以下がさらに好ましい。シランカップリング剤の含有量が上記範囲であることにより、ゴム成分(A)への補強充填剤(B)の分散性がより向上する傾向にある。
【0135】
(加硫剤)
本実施形態の共役ジエン系重合体組成物は、加硫剤により加硫処理を施した加硫組成物としてもよい。加硫剤としては、特に制限されないが、例えば、有機過酸化物及びアゾ化合物等のラジカル発生剤、オキシム化合物、ニトロソ化合物、ポリアミン化合物、硫黄、硫黄化合物が挙げられる。硫黄化合物には、一塩化硫黄、二塩化硫黄、ジスルフィド化合物、高分子多硫化合物等が含まれる。
【0136】
加硫剤の含有量は、ゴム成分(A)100質量部に対して、0.01質量部以上20質量部以下が好ましく、0.1質量部以上15質量部以下がより好ましい。加硫方法としては、従来公知の方法を適用でき、加硫温度は、120℃以上200℃以下が好ましく、より好ましくは140℃以上180℃以下である。
【0137】
加硫に際しては、必要に応じて加硫促進剤や加硫助剤を用いてもよい。加硫促進剤としては、従来公知の材料を用いることができ、特に制限されないが、例えば、スルフェンアミド系、グアニジン系、チウラム系、アルデヒド-アミン系、アルデヒド-アンモニア系、チアゾール系、チオ尿素系、ジチオカルバメート系の加硫促進剤が挙げられる。また、加硫助剤としては、特に制限されないが、例えば、亜鉛華、ステアリン酸が挙げられる。加硫促進剤又は加硫助剤の含有量は、ゴム成分(A)100質量部に対して、0.01質量部以上20質量部以下が好ましく、0.1質量部以上15質量部以下がより好ましい。
【0138】
(その他の添加剤)
本実施形態の共役ジエン系重合体組成物は、必要に応じて、上述した以外のその他の軟化剤及び充填剤、耐熱安定剤、帯電防止剤、耐候安定剤、老化防止剤、着色剤、滑剤等の各種添加剤を用いてもよい。その他の軟化剤としては、公知の軟化剤を用いることができる。その他の充填剤としては、具体的には、例えば、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、硫酸アルミニウム、硫酸バリウムが挙げられる。上記の耐熱安定剤、帯電防止剤、耐候安定剤、老化防止剤、着色剤、潤滑剤としては、それぞれ公知の材料を用いることができる。
【0139】
(共役ジエン系重合体組成物の製造方法)
共役ジエン系重合体組成物の製造方法は、特に制限されないが、例えば、ゴム成分(A)と、補強充填剤(B)と、植物油(C)及び/又は植物由来樹脂(D)と、必要に応じてその他の成分とを、混合する方法が挙げられる。
【0140】
混合方法としては、特に制限されないが、例えば、オープンロール、バンバリーミキサー、ニーダー、単軸スクリュー押出機、2軸スクリュー押出機、多軸スクリュー押出機等の一般的な混和機を用いた溶融混練方法、各成分を溶解混合後、溶剤を加熱除去する方法が挙げられる。これらのうち、ロール、バンバリーミキサー、ニーダー、押出機による溶融混練法が生産性、良混練性の点から好ましい。また、ゴム成分とその他の充填剤、シランカップリング剤、及び添加剤とを一度に混練する方法、複数の回数に分けて混合する方法のいずれも適用可能である。
【0141】
[用途]
本実施形態の共役ジエン系重合体組成物は、タイヤ部品、自動車の内装及び外装品、防振ゴム、ベルト、履物、発砲体、各種工業用品用途等に利用できる。これらの中でも、タイヤ部品に好適に用いられる。
【0142】
タイヤ部品としては、省燃費タイヤ、オールシーズンタイヤ、高性能タイヤ、スノー用タイヤ、スタッドレスタイヤ等の各種タイヤ:トレッド、カーカス、サイドウォール、ビード部等のタイヤ各部位への利用が可能である。特に、タイヤ部品としては、加硫物としたときに耐摩耗性能、省燃費性、ウェットスキッド抵抗性およびスノー性能とのバランスに優れているので、省燃費タイヤや高性能タイヤ用、スノー用タイヤのタイヤトレッド用として、好適に用いられる。
【実施例】
【0143】
以下、具体的な実施例及び比較例を挙げて、本実施形態を更に詳しく説明するが、本実施形態は以下の実施例及び比較例により何ら制限されるものではない。
【0144】
実施例及び比較例における各種の物性は下記に示す方法により測定した。
【0145】
(物性1)分子量と分子量分布
測定条件1 :
重合例で得られた共役ジエン系重合体を試料として、ポリスチレン系ゲルを充填剤としたカラムを3本連結したGPC測定装置(東ソー社製の商品名「HLC-8320GPC」)を使用して、RI検出器(東ソー社製の商品名「HLC8020」)を用いてクロマトグラムを測定し、標準ポリスチレンを使用して得られる検量線に基づいて、重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)と分子量分布(Mw/Mn)とを求めた。
【0146】
(測定条件)
GPC測定装置:東ソー社製の商品名「HLC-8320GPC」
溶離液 :5mmol/Lのトリエチルアミン入りTHF(テトラヒドロフラン)
ガードカラム:東ソー社製の「TSKguardcolumn SuperMP(HZ)-H」
カラム :東ソー社製の「TSKgel SuperMultiporeHZ-H」を3本接続した。
オーブン温度:40℃
流量 :0.35mL/分
サンプル :測定用の試料10mgを10mLのTHFに溶解して測定溶液とし、測定溶液10μLをGPC測定装置に注入した。
【0147】
上記の測定条件1で測定した各種試料の中で、分子量分布(Mw/Mn)の値が1.6未満であった試料は、改めて下記の測定条件2により測定し、その結果を用いた。測定条件1で測定し、その分子量分布の値が1.6以上であった試料に対しては、測定条件1で測定した結果を用いた。
【0148】
測定条件2 :
重合例で得られた共役ジエン系重合体を試料として、ポリスチレン系ゲルを充填剤としたカラムを3本連結したGPC測定装置(東ソー社製の商品名「HLC-8320GPC」)を使用して、RI検出器(東ソー社製の商品名「HLC8020」)を用いてクロマトグラムを測定し、標準ポリスチレンを使用した検量線に基づいて、重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)と分子量分布(Mw/Mn)とを求めた。
【0149】
(測定条件)
溶離液 :5mmol/Lのトリエチルアミン入りTHF
ガードカラム:東ソー社製の「TSKguardcolumn SuperH-H」
カラム :東ソー社製の「TSKgel SuperH5000」、「TSKgel SuperH6000」、及び「「TSKgel SuperH7000」を上流からこの順で連結したもの
オーブン温度:40℃
流量 :0.6mL/分
サンプル :測定用の試料10mgを20mLのTHFに溶解して測定溶液とし、測定溶液20μLをGPC測定装置に注入して測定した。
【0150】
(物性2)重合体ムーニー粘度
重合例で得られた共役ジエン系重合体を試料として、ムーニー粘度計(上島製作所社製の商品名「VR1132」)を用い、ISO 289に準拠し、ムーニー粘度を測定した。
【0151】
より具体的には、試料を1分間、100℃で予熱した後、L型ローターを2rpmで回転させ、4分後のトルクを測定してムーニー粘度(ML(1+4))を得た。
【0152】
(物性3)GPC-光散乱法測定による、絶対分子量及び分岐度(Bn)
共役ジエン系重合体の分岐度(Bn)は、粘度検出器付きGPC-光散乱法測定法によって以下とおり測定した。重合例で得られた共役ジエン系重合体を試料として、ポリスチレン系ゲルを充填剤としたカラムを3本連結したゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)測定装置(Malvern社製の商品名「GPCmax VE-2001」)を使用して、光散乱検出器、RI検出器、粘度検出器(Malvern社製の商品名「TDA305」)の順番に接続されている3つの検出器を用いて測定し、標準ポリスチレンに基づいて、光散乱検出器とRI検出器結果から絶対分子量を、RI検出器と粘度検出器の結果から固有粘度を求めた。
【0153】
直鎖状重合体の固有粘度[η]は、下記式に従うものとし、上記により得られた共役ジエン系重合体の絶対分子量と同等の絶対分子量を有する直鎖状重合体の固有粘度ηを算出した。そして、算出した直鎖状重合体の固有粘度ηと、上記により測定した共役ジエン系重合体の固有粘度ηの比から、収縮因子(g’)を算出した。
固有粘度[η]=-3.883M0.771
M:絶対分子量
【0154】
その後、得られた収縮因子(g’)を用いて、下記式より分岐度(Bn)を算出した。
g’=6Bn/{(Bn+1)(Bn+2)}
【0155】
(測定条件)
溶離液 :5mmol/Lのトリエチルアミン入りTHF
カラム :東ソー社製の「TSKgel G4000HXL」、「TSKgel G5000HXL」、及び「TSKgel G6000HXL」を上流からこの順で連結したもの
オーブン温度:40℃
流量 :1mL/分
サンプル :測定用の試料20mgを10mLのTHFに溶解して測定溶液とし、測定溶液100μLをGPC測定装置に注入して測定した。
【0156】
(物性4)変性率
共役ジエン系重合体における変性率をカラム吸着GPC法で以下のとおり測定した。重合例で得られた共役ジエン系重合体を試料として、シリカ系ゲルを充填剤としたGPCカラムに、変性した塩基性重合体成分が吸着する特性を応用することにより、測定した。
【0157】
試料及び低分子量内部標準ポリスチレンを含む試料溶液を、ポリスチレン系カラムで測定したクロマトグラムと、シリカ系カラムで測定したクロマトグラムと、の差分よりシリカ系カラムへの吸着量を測定し、変性率を求めた。
【0158】
具体的には、以下に示すとおりである。また、上記の(物性1)の測定条件1で測定した結果、共役ジエン系重合体の分子量分布の値が1.6以上であった試料に対しては下記の測定条件3、その分子量分布の値が1.6未満であった試料に対しては下記の測定条件4で測定した。
【0159】
測定条件3 : ポリスチレン系カラムを用いたGPC測定条件:
GPC測定装置:東ソー社製の商品名「HLC-8320GPC」
溶離液 :5mmol/Lのトリエチルアミン入りTHF
ガードカラム:東ソー社製の「TSKguardcolumn SuperMP(HZ)-H」
カラム :東ソー社製の「TSKgel SuperMultiporeHZ-H」を3本接続した。
オーブン温度:40℃
流量 :0.35mL/分
RI検出器(東ソー社製 HLC8020)
サンプル :測定用の試料10mg及び標準ポリスチレン5mgを20mLのTHFに溶解して測定溶液とし、測定溶液10μLをGPC測定装置に注入した。
【0160】
測定条件4 : ポリスチレン系カラムを用いたGPC測定条件
GPC測定装置:東ソー社製の商品名「HLC-8320GPC」
溶離液 :5mmol/Lのトリエチルアミン入りTHF
ガードカラム:東ソー社製の「TSKguardcolumn SuperH-H」
カラム :東ソー社製の「TSKgel SuperH5000」、「TSKgel SuperH6000」、及び「「TSKgel SuperH7000」を上流からこの順で連結したもの
オーブン温度:40℃
流量 :0.6mL/分
RI検出器(東ソー社製 HLC8020)
サンプル :測定用の試料10mgを20mLのTHFに溶解して測定溶液とし、測定溶液20μLをGPC測定装置に注入して測定した。
【0161】
シリカ系カラムを用いたGPC測定条件:
GPC測定装置:東ソー社製の商品名「HLC-8320GPC」
溶離液 :THF
ガードカラム:「DIOL 4.6×12.5mm 5micron」
カラム :「Zorbax PSM-1000S」、「PSM-300S」、「PSM-60S」を上流からこの順で連結したもの
オーブン温度:40℃
流量 :0.5mL/分
RI検出器(東ソー社製 HLC8020)
サンプル :測定用の試料10mg及び標準ポリスチレン5mgを20mLのTHFに溶解して測定溶液とし、測定溶液50μLをGPC測定装置に注入した。
【0162】
変性率の計算方法 :
ポリスチレン系カラムを用いたクロマトグラムのピーク面積の全体を100として、試料のピーク面積P1、標準ポリスチレンのピーク面積P2を求めた。同様に、シリカ系カラムを用いたクロマトグラムのピーク面積の全体を100として、試料のピーク面積P3、標準ポリスチレンのピーク面積P4を求めた。そして、得られた面積値に基づいて、下記式より変性率(%)を求めた。
変性率(%)=[1-(P2×P3)/(P1×P4)]×100
(ただし、P1+P2=P3+P4=100)
【0163】
(物性5)結合スチレン量
重合例で得られた共役ジエン系重合体を試料として、試料100mgを、クロロホルムで100mLにメスアップし、溶解して測定サンプルとした。スチレンのフェニル基による紫外線吸収波長(254nm付近)の吸収量により、試料である共役ジエン系重合体100質量%に対しての結合スチレン量(質量%)を測定した(測定装置:島津製作所社製の分光光度計「UV-2450」)。
【0164】
(物性6)ブタジエン部分のミクロ構造(1,2-ビニル結合量)
重合例で得られた共役ジエン系重合体を試料として、試料50mgを、10mLの二硫化炭素に溶解して測定サンプルとした。溶液セルを用いて、赤外線スペクトルを600~1000cm-1の範囲で測定して、所定の波数における吸光度によりハンプトンの方法(R.R.Hampton,Analytical Chemistry 21,923(1949)に記載の方法)の計算式に従い、ブタジエン部分のミクロ構造、すなわち、1,2-ビニル結合量(mol%)を求めた(測定装置:日本分光社製のフーリエ変換赤外分光光度計「FT-IR230」)。
【0165】
(物性7)ガラス転移温度(Tg)
重合例により得られた共役ジエン系重合体のガラス転移温度については、ISO 22768:2006に従い、DSC曲線を記録し、DSC微分曲線のピークトップ(Inflection point)をガラス転移温度とした。
【0166】
(重合例1)共役ジエン系重合体(A-1-1)
内容積が10Lで、内部の高さ(L)と直径(D)との比(L/D)が4.0であり、底部に入口、頂部に出口を有し、攪拌機付槽型反応器である攪拌機及び温度制御用のジャケットを有する槽型圧力容器を重合反応器として2基連結した。
【0167】
予め水分除去した、1,3-ブタジエンを25.6g/分、スチレンを5.0g/分、n-ヘキサンを115.4g/分の条件で混合した。この混合溶液を反応基の入口に供給する配管の途中に設けたスタティックミキサーにおいて、残存不純物不活性処理用のn-ブチルリチウムを0.094mmol/分で添加、混合した後、反応基の底部に連続的に供給した。更に、極性物質として2,2-ビス(2-オキソラニル)プロパンを0.080mmol/分の速度で、重合開始剤としてn-ブチルリチウムを0.208mmol/分の速度で、攪拌機で激しく混合する1基目反応器の底部へ供給し、反応器内温を67℃に保持した。
【0168】
1基目反応器頂部より重合体溶液を連続的に抜き出し、2基目反応器の底部に連続的に供給し70℃で反応を継続し、さらに2基目の頂部よりスタティックミキサーへ供給した。重合が十分に安定したところで、2基目の反応基の底部より、分岐化剤としてトリメトキシ(4-ビニルフェニル)シランを0.028mmol/分の速度で添加し、さらに重合反応と分岐化反応を進行した。
【0169】
次に、2基目反応器の出口より流出した重合体溶液に、変性剤として、テトラキス(3-トリメトキシシリルプロピル)-1,3-プロパンジアミンを0.028mmol/分の速度で連続的に添加し、スタティックミキサーを用いて混合し、変性反応した。このとき、反応器の出口より流出した重合溶液に変性剤が添加されるまでの時間は4.8分、温度は68℃であり、重合工程における温度と、変性剤を添加するまでの温度との差は2℃であった。変性反応した重合体溶液に、酸化防止剤(BHT)を重合体100gあたり0.2gとなるように0.055g/分(n-ヘキサン溶液)で連続的に添加し、変性反応を終了し、星型高分子構造を有する共役ジエン系重合体(A-1-1)を得た。このようにして得られた共役ジエン系重合体(A-1-1)の物性を表1に示す。
【0170】
(重合例2)共役ジエン系重合体(A-1-2)
1基目反応器における各成分の添加量を、1,3-ブタジエンを27.0g/分、スチレンを3.1g/分、n-ヘキサンを115.4g/分、残存不純物不活性処理用のn-ブチルリチウムを0.104mmol/分、極性物質として2,2-ビス(2-オキソラニル)プロパンを0.041mmol/分、重合開始剤としてn-ブチルリチウムを0.208mmol/分とした。
【0171】
また、2基目反応器における、トリメトキシ(4-ビニルフェニル)シランを0.010mmol/分とし、変性反応におけるテトラキス(3-トリメトキシシリルプロピル)-1,3-プロパンジアミンを0.030mmol/分で添加した。上記以外は、実施例1と同様にして、星型高分子構造を有する共役ジエン系重合体(A-1-2)を得た。得られた共役ジエン系重合体(A-1-2)の物性を表1に示す。
【0172】
(重合例3)共役ジエン系重合体(A-1-3)
1基目反応器における各成分の添加量を、1,3-ブタジエンを17.0g/分、スチレンを11.4g/分、n-ヘキサンを175.2g/分、残存不純物不活性処理用のn-ブチルリチウムを0.114mmol/分、極性物質として2,2-ビス(2-オキソラニル)プロパンを0.075mmol/分、重合開始剤としてn-ブチルリチウムを0.143mmol/分とした。
【0173】
また、2基目反応器における、トリメトキシ(4-ビニルフェニル)シランを0.019mmol/分とし、変性反応におけるテトラキス(3-トリメトキシシリルプロピル)-1,3-プロパンジアミンを0.029mmol/分で添加した。上記以外は、実施例1と同様にして、星型高分子構造を有する共役ジエン系重合体(A-1-3)を得た。得られた共役ジエン系重合体(A-1-3)の物性を表1に示す。
【0174】
(重合例4)共役ジエン系重合体(A-1-4)
1基目反応器における各成分の添加量を、1,3-ブタジエンを25.6g/分、スチレンを5.0g/分、n-ヘキサンを115.4g/分、残存不純物不活性処理用のn-ブチルリチウムを0.104mmol/分、極性物質として2,2-ビス(2-オキソラニル)プロパンを0.041mmol/分、重合開始剤としてn-ブチルリチウムを0.200mmol/分とした。
【0175】
また、2基目反応器において、トリメトキシ(4-ビニルフェニル)シランは添加せず、変性反応における変性剤としてテトラキス(3-トリメトキシシリルプロピル)-1,3-プロパンジアミンの代わりに、2,2-ジメトキシ-1-(3-トリメトキシシリルプロピル)-1-アザ-2-シラシクロペンタンを0.059mmol/分で添加した。上記以外は、実施例1と同様にして、共役ジエン系重合体(A-1-4)を得た。得られた共役ジエン系重合体(A-1-4)の物性を表1に示す。
【0176】
(重合例5)共役ジエン系重合体(A-1-5)
1基目反応器における各成分の添加量を、1,3-ブタジエンを25.6g/分、スチレンを5.0g/分、n-ヘキサンを115.4g/分、残存不純物不活性処理用のn-ブチルリチウムを0.094mmol/分、極性物質として2,2-ビス(2-オキソラニル)プロパンを0.080mmol/分、重合開始剤としてn-ブチルリチウムを0.200mmol/分とした。
【0177】
また、2基目反応器において、トリメトキシ(4-ビニルフェニル)シランを0.028mmol/分とし、変性反応における変性剤としてテトラキス(3-トリメトキシシリルプロピル)-1,3-プロパンジアミンの代わりに、四塩化ケイ素を0.039mmol/分で添加した。上記以外は、実施例1と同様にして、星型高分子構造を有する共役ジエン系重合体(A-1-5)を得た。得られた共役ジエン系重合体(A-1-5)の物性を表1に示す。
【0178】
(重合例6)共役ジエン系重合体(A-1-6)
1基目反応器における各成分の添加量を、1,3-ブタジエンを25.6g/分、スチレンを5.0g/分、n-ヘキサンを115.4g/分、残存不純物不活性処理用のn-ブチルリチウムを0.094mmol/分、極性物質として2,2-ビス(2-オキソラニル)プロパンを0.080mmol/分、重合開始剤としてn-ブチルリチウムを0.208mmol/分とした。
【0179】
また、2基目反応器において、トリメトキシ(4-ビニルフェニル)シランは添加せず、変性反応においてテトラキス(3-トリメトキシシリルプロピル)-1,3-プロパンジアミンを0.040mmol/分で添加した。上記以外は、実施例1と同様にして、共役ジエン系重合体(A-1-6)を得た。得られた共役ジエン系重合体(A-1-6)の物性を表1に示す。
【0180】
(重合例7)共役ジエン系重合体(A-1-7)
1基目反応器における各成分の添加量を、1,3-ブタジエンを25.6g/分、スチレンを5.0g/分、n-ヘキサンを115.4g/分、残存不純物不活性処理用のn-ブチルリチウムを0.094mmol/分、極性物質として2,2-ビス(2-オキソラニル)プロパンを0.080mmol/分、重合開始剤としてn-ブチルリチウムを0.451mmol/分とした。
【0181】
また、2基目反応器において、トリメトキシ(4-ビニルフェニル)シランを0.060mmmol/分とし、変性反応においてテトラキス(3-トリメトキシシリルプロピル)-1,3-プロパンジアミンを0.060mmol/分で添加した。上記以外は、実施例1と同様にして、星型高分子構造を有する共役ジエン系重合体(A-1-7)を得た。得られた共役ジエン系重合体(A-1-7)の物性を表1に示す。
【0182】
【0183】
(実施例1~17及び比較例1~2)
表2に記載の各成分を混合し、共役ジエン系重合体組成物を得た。より具体的には、温度制御装置を備える密閉混練機(内容量0.3L)を使用し、第一段の混練として、充填率65%、ローター回転数30~50rpmの条件で、ゴム成分、補強充填剤、シランカップリング剤、伸展油、亜鉛華、ステアリン酸、樹脂及びワックスを混練した。このとき、密閉混合機の温度を制御し、排出温度は155~160℃で各ゴム組成物を得た。
【0184】
次に、第二段の混練として、上記で得た配合物を室温まで冷却後、老化防止剤を加え、補強充填剤の分散を向上させるため再度混練した。この場合も、混合機の温度制御により、配合物の排出温度を155~160℃に調整した。冷却後、第三段の混練として、70℃に設定したオープンロールにて、硫黄、他の加硫促進剤を加えて混練した。その後、成型し、160℃で20分間、加硫プレスにて加硫した。加硫後のゴム組成物を下記方法により評価した。その結果を表2に示す。
【0185】
(評価1)加工性
上記で得た第二段の混練後、かつ、第三段の混練前の配合物を試料として、ムーニー粘度計を使用し、ISO 289に準拠して、130℃、1分間の予熱を行った後に、ローターを毎分2回転で4分間回転させた後の粘度を測定した。比較例1の結果を100として指数化した。指数が小さいほど加工性が良好であることを示す。
【0186】
(評価2)耐摩耗性
アクロン摩耗試験機(安田精機製作所社製)を使用し、JIS K6264-2に準拠して、荷重44.4N、1000回転の摩耗量を測定し、比較例1の結果を100として指数化した。指数が大きいほど耐摩耗性が良好であることを示す。
【0187】
(評価3)粘弾性パラメータ
レオメトリックス・サイエンティフィック社製の粘弾性試験機「ARES」を使用し、ねじりモードで粘弾性パラメータを測定した。各々の測定値は、比較例1の結果を100として指数化した。
【0188】
-20℃において周波数10Hz、ひずみ1%で測定した弾性率(G‘)をスノー性能の指標とした。指数が大きいほど雪や氷上でのグリップ性が良好であることを示す。
【0189】
0℃において周波数10Hz、ひずみ1%で測定したtanδをウェットスキッド抵抗性の指標とした。指数が大きいほどウェットスキッド抵抗性が良好であることを示す。
【0190】
50℃において周波数10Hz、ひずみ3%で測定したtanδを省燃費性の指標とした。指数が小さいほど省燃費性が良好であることを示す。
【0191】
表2には、比較例1を基準として各性能が下記の範囲で変化する場合の記号を記載した。
AA:20%以上良化
A :15%以上20%未満の範囲で良化
B : 5%以上15%未満の範囲で良化
C : 0%以上 5%未満の範囲で良化
D :10%以上悪化
【0192】
【0193】
(ゴム成分)
NR:天然ゴム(解凝固化物)
BR:ハイシスポリブタジエン(宇部興産社製「UBEPOL BR150」)
A-1-1~A1-1-7:重合例で得られた共役ジエン系重合体
(補強充填材)
シリカ(エボニック デグサ社製の商品名「Ultrasil 7000GR」、窒素吸着比表面積170m2/g)
カーボンブラック(東海カーボン社製の商品名「シーストKH(N339)」)
(伸展油)
植物油(NOVANCE社製の商品名「LUBRIROB TOD 1880」、オレイン酸の含有量:85質量%)
SRAE(JX日鉱日石エネルギー社製の商品名「プロセスNC140」)
(樹脂)
テルペン樹脂(DRT社製の商品名「DERCOLYTE」、植物由来樹脂)
石油系樹脂(EXXON MOBIL社製の商品名「ESCOREZ373」)
(シランカップリング剤)
シランカップリング剤(エボニック デグサ社製の商品名「Si75」、ビス(トリエトキシシリルプロピル)ジスルフィド)
(加硫剤)
・硫黄
(加硫促進剤)
CBS(N-シクロヘキシル-2-ベンゾチアジルスルフィンアミド)
DPG(ジフェニルグアニジン)
(加硫助剤)
亜鉛華
ステアリン酸
(その他)
・ワックス(パラフィンワックス)
・老化防止剤(N-(1,3-ジメチルブチル)-N‘-フェニル-p-フェニレンジアミン)
【0194】
表2に示すとおり、実施例1~17は、比較1、2と比較して、加硫物とする際の配合物ムーニー粘度が低く良好な加工性を示し、加硫物としたときにおける耐摩耗性、省燃費性、ウェットスキッド抵抗性およびスノー性能のバランスに優れることが確認された。
【0195】
植物油はTgが低く、配合物のTgを下げることができるのでスノー性能に優れるが、粘度が低いため、混練り改善効果が鉱物油よりも小さい。実施例で用いた共役ジエン系重合体は、比較例で用いた共役ジエン系重合体よりも重量平均分子量が高いが、分岐度も高いものであるために混練り加工性に優れる。結果として、植物油と、所定の共役ジエン系重合体とを併用し、さらに植物由来樹脂を使用することで、環境に配慮した加硫物としたときにおける耐摩耗性、省燃費性、ウェットスキッド抵抗性およびスノー性能のバランスに優れる加硫物を得られることができることが分かった。
【産業上の利用可能性】
【0196】
本発明に係る共役ジエン系重合体は、タイヤトレッド、自動車の内装及び外装品、防振ゴム、ベルト、履物、発砲体、各種工業用品用途等の分野において産業上の利用可能性がある。