(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-21
(45)【発行日】2024-07-01
(54)【発明の名称】像加熱装置及び画像形成装置
(51)【国際特許分類】
G03G 15/20 20060101AFI20240624BHJP
H05B 3/06 20060101ALI20240624BHJP
【FI】
G03G15/20 515
H05B3/06 B
(21)【出願番号】P 2020072459
(22)【出願日】2020-04-14
【審査請求日】2023-04-13
(31)【優先権主張番号】P 2019113878
(32)【優先日】2019-06-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002860
【氏名又は名称】弁理士法人秀和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】尾畑 征児
(72)【発明者】
【氏名】並木 輝彦
(72)【発明者】
【氏名】関水 幸一
(72)【発明者】
【氏名】山田 幸一
【審査官】内藤 万紀子
(56)【参考文献】
【文献】特開平09-319240(JP,A)
【文献】特開2001-125408(JP,A)
【文献】特開2002-299016(JP,A)
【文献】特開2014-109754(JP,A)
【文献】特開2015-191734(JP,A)
【文献】特開平11-286112(JP,A)
【文献】実開昭52-169842(JP,U)
【文献】特開2016-006499(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0123356(US,A1)
【文献】特開2004-157372(JP,A)
【文献】特開2003-084603(JP,A)
【文献】特開2013-235223(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03G 15/20
H05B 3/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
記録材に形成された画像を加熱する像加熱装置であって、
第1の回転体と、
前記第1の回転体と接触し、前記第1の回転体との間に前記記録材を挟持するニップ部を形成する第2の回転体と、
前記ニップ部を加熱するヒータと、
前記ヒータの一部の上に重なるように配置されることで、前記ヒータと電気的に接続する導電性のシート部材と、
前記シート部材と前記ヒータとの電気的な接続状態を維持しつつ、前記シート部材と前記ヒータとの相対位置を規制する規制部材と、
を備え、
前記規制部材は、前記シート部材と前記ヒータとの、前記シート部材が前記ヒータの一部と重なる方向である第1方向への相対移動を規制し、前記第1方向と直交する方向である第2方向への相対移動を許容するように構成され
ており、
前記規制部材と前記シート部材との間にスペーサ部材が配置されていることを特徴とする像加熱装置。
【請求項2】
前記ヒータを保持する保持部材を更に有し、
前記規制部材は、前記第1方向における一方の方向に前記スペーサ部材と当接する当接部と、前記一方の方向とは逆方向に前記保持部材と当接する当接部と、を有し、一対の前記当接部により、前記スペーサ部材、前記シート部材、前記ヒータ、前記保持部材を挟持するように構成されることを特徴とする請求項
1に記載の像加熱装置。
【請求項3】
前記スペーサ部材と前記規制部材は、前記シート部材と前記ヒータと前記保持部材と前記スペーサ部材とが一体となった組立体に対する装着方向と直交する方向に相対移動することを互いに規制する規制部を有することを特徴とする請求項
2に記載の像加熱装置。
【請求項4】
前記ヒータは、
基板と、
前記基板の長手方向に沿って並んで設けられる複数の発熱抵抗体と、
を有し、
前記発熱抵抗体は、電源から前記規制部材を介して供給される電力により発熱することを特徴とする請求項1~
3のいずれか1項に記載の像加熱装置。
【請求項5】
記録材に形成された画像を加熱する像加熱装置であって、
第1の回転体と、
前記第1の回転体と接触し、前記第1の回転体との間に前記記録材を挟持するニップ部を形成する第2の回転体と、
前記ニップ部を加熱するヒータと、
前記ヒータの一部の上に重なるように配置されることで、前記ヒータと電気的に接続する導電性のシート部材と、
を備え、
前記シート部材は、前記ヒータとの接合部において、前記シート部材の端部側に設けられた前記ヒータとの電気的な接続部より内側に設けられたシート側補強ランドを有し、
前記ヒータは、前記接合部において前記シート側補強ランドと対向する位置に設けられたヒータ側補強ランドを有し、
対向する前記シート側補強ランドと前記ヒータ側補強ランドとが接合されていることを特徴とする像加熱装置。
【請求項6】
前記シート部材は、前記ヒータの一方の端部と接続する第1のシート部材と、他方の端部と接続する第2のシート部材と、を含み、
前記ヒータは、前記第1のシート部材に設けられた第1のシート側補強ランドと接合される第1のヒータ側補強ランドと、前記第2のシート部材に設けられた第2のシート側補強ランドと接合される第2のヒータ側補強ランドと、を有することを特徴とする請求項
5に記載の像加熱装置。
【請求項7】
前記第1の回転体は、内面に前記ヒータが接触する筒状のフィルムであることを特徴とする請求項1~
6のいずれか1項に記載の像加熱装置。
【請求項8】
記録材に画像を形成する画像形成部と、
前記画像形成部によって形成された画像を記録材に定着させる定着部と、
を備え、
前記定着部が、請求項1~
7のいずれか1項に記載の像加熱装置であることを特徴とする画像形成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複写機やプリンタ等の電子写真記録方式の画像形成装置に搭載される定着装置や、記録材に定着されたトナー画像を再度加熱することによりトナー画像の光沢度を向上させる光沢付与装置、などの像加熱装置に関する。特に、像加熱装置の一例としての定着装置において、加熱定着に用いるヒータの温度検知構成に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、上述の像加熱装置の一例である、複写機やプリンタ等の画像形成装置に搭載する定着装置は、熱を記録材に伝達するフィルムと、セラミック製の基板上に発熱抵抗体を有する。そして、フィルムの内面に接触するヒータと、フィルムを介してヒータと共にニップ部を形成するローラとを有する構成を備えている。ヒータは、ヒータの長手方向に発熱領域が分割され、それぞれ独立に温度調節可能に構成されたものがある。そのような定着装置において、発熱領域毎に温度検知素子としてのサーミスタを形成し、発熱領域毎に温度を検知する構成が提案されている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述の特許文献1に記載の構成において、各温度検知素子は導電体を介してヒータ端部で電気接点を持ち、電線によって制御基板に接続される。この電線に、仮にFPC(Flexible Printed_Circvit)やFFC(Flexible Flat Cable)といったフレキシブルシートを用いる。そして、電気接点を半田付けすることで温度検知素子とヒータとを接続する。このようにフレキシブルシートを用いることで、電線のはい回しのしやすさから定着装置の組立性が向上する効果が見込まれる。フレキシブルシートをヒータ端部の電気接点に半田付けした接続部は、せん断方向の力には強いが剥離方向の力に弱いためテープや接着剤によって補強して使用することが一般的である。しかしながら、発熱体を有するヒータは高温に達するため、高温下で使用できるテープや接着剤が必要となりコストアップが懸念される。
【0005】
本発明の目的は、テープや接着剤を用いることなく、ヒータのサーミスタ電極とフレキシブルシートの接合を補強し、半田はがれや電極はがれを抑制することができる構成を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明における像加熱装置は、
記録材に形成された画像を加熱する像加熱装置であって、
第1の回転体と、
前記第1の回転体と接触し、前記第1の回転体との間に前記記録材を挟持するニップ部を形成する第2の回転体と、
前記ニップ部を加熱するヒータと、
前記ヒータの一部の上に重なるように配置されることで、前記ヒータと電気的に接続する導電性のシート部材と、
前記シート部材と前記ヒータとの電気的な接続状態を維持しつつ、前記シート部材と前
記ヒータとの相対位置を規制する規制部材と、
を備え、
前記規制部材は、前記シート部材と前記ヒータとの、前記シート部材が前記ヒータの一部と重なる方向である第1方向への相対移動を規制し、前記第1方向と直交する方向である第2方向への相対移動を許容するように構成されており、
前記規制部材と前記シート部材との間にスペーサ部材が配置されていることを特徴とする。
また、上記目的を達成するために、本発明における像加熱装置は、
記録材に形成された画像を加熱する像加熱装置であって、
第1の回転体と、
前記第1の回転体と接触し、前記第1の回転体との間に前記記録材を挟持するニップ部を形成する第2の回転体と、
前記ニップ部を加熱するヒータと、
前記ヒータの一部の上に重なるように配置されることで、前記ヒータと電気的に接続する導電性のシート部材と、
を備え、
前記シート部材は、前記ヒータとの接合部において、前記シート部材の端部側に設けられた前記ヒータとの電気的な接続部より内側に設けられたシート側補強ランドを有し、
前記ヒータは、前記接合部において前記シート側補強ランドと対向する位置に設けられたヒータ側補強ランドを有し、
対向する前記シート側補強ランドと前記ヒータ側補強ランドが接合されていることを特徴とする。
【0007】
更に上記目的を達成するために、本発明における画像形成装置は、
記録材に画像を形成する画像形成部と、
前記画像形成部によって形成された画像を記録材に定着させる定着部と、
を備え、
前記定着部が、上記の像加熱装置であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
以上説明したように、本発明によれば、テープや接着剤を用いることなく、ヒータのサーミスタ電極に半田付けしたフレキシブルシートの剥離強度を補強することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明を適用可能な画像形成装置の概要を示す断面図
【
図2】本発明の実施例1、2、3に係る定着ニップ構成を示す断面図
【
図3】本発明の実施例1、2に係るヒータ構成を示す図
【
図4】本発明の実施例1、3に係るサーミスタ接点部保護構成を示す図
【
図5】本発明の実施例1、3に係るサーミスタ接点部保護構成の断面図
【
図6】本発明の実施例2、3に係るサーミスタ接点部保護構成を示す図
【
図7】本発明の実施例2、3に係る発熱体電極の接点構成を示す図
【
図8】本発明の実施例2、3に係る接点部材を保持するハウジング部材を示す図
【
図9】本発明の実施例2、3に係るサーミスタ接点部保護構成を示す図
【
図10】本発明の実施例3に係るヒータ構成を示す図
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に図面を参照して、この発明を実施するための形態を、実施例に基づいて例示的に詳しく説明する。ただし、この実施の形態に記載されている構成部品の寸法、材質、形状それらの相対配置などは、発明が適用される装置の構成や各種条件により適宜変更されるべきものである。すなわち、この発明の範囲を以下の実施の形態に限定する趣旨のものではない。
【0011】
(実施例1)
<画像形成装置の概要>
まず、本発明を適用可能な画像形成装置について説明する。
図1は、本発明において像加熱装置の一例として定着装置を搭載したプリンタ1の全体構成を示す縦断面図である。プリンタ1の下部には、カセット2が引き出し可能に収納されている。そして、プリンタ1の右側には手差し給送部3が配設されている。カセット2、手差し給送部3にそれぞれ記録材Pを積載収容し記録材Pを1枚毎に分離し、レジストローラ4に給送するようになっている。プリンタ1はイエロー、マゼンタ、シアン、ブラックの各色に対応する画像形成ステーション5Y、5M、5C、5Kを、横一列に並設している画像形成部5を備えている。
【0012】
画像形成部5には、像担持体である感光ドラム6Y、6M、6C、6K(以後、感光ドラム6で統一)、感光ドラム6の表面を均一に帯電する帯電装置7Y、7M、7C、7Kが配設されている。画像情報に基づいてレーザービームを照射して感光ドラム6上に静電潜像を形成するスキャナユニット8、静電潜像にトナーを付着させてトナー像として現像する現像装置9Y、9M、9C、9Kも配設されている。更に、感光ドラム6上のトナー像を静電転写ベルト10に転写する一次転写部11Y、11M、11C、11K(以後、一次転写部11で統一)が配設されている。一次転写部11でトナー像が転写された転写ベルト10のトナー像は、二次転写部12で記録材Pに転写される。その後、その転写画像は定着部(像加熱部)としての定着装置100を通過する際に、加熱ユニット101と、加熱ユニット101に圧接する加圧ローラ102とによる圧熱により記録材Pに定着される。その後、両面フラッパ13によって搬送路が切り替えられ、排出ローラ対14、スイッチバックローラ対15のどちらかに搬送される。スイッチバックローラ対15側に搬送された記録材Pは、スイッチバックローラ対15部で反転搬送して、再度レジストローラ4、二次転写部12、定着装置100を通過した後、排出ローラ対14側に搬送され両面印刷される。最後に記録材Pは排出ローラ対14を通過後、記録材P積載部16に排出される。
なお、画像形成装置として感光ドラム6を複数備えたフルカラーレーザービームプリンタを取り上げたが、感光ドラム6を一つ備えたモノクロの複写機やプリンタに搭載する定着装置にも適用することができる。
【0013】
<定着装置>
次に、本発明を適用可能な定着装置について
図2を用いて説明する。
図2は加熱ユニット101と加圧ローラ102からなる定着ニップの断面図である。加熱ユニット101は第1の回転体としての筒状のフィルム103と、フィルム103の内面に摺動層207にて接触するヒータ200と、ヒータ200を保持するヒータ保持部材105と、金属製のステイ部材104とを有する。ヒータ200はフィルム103とは基層201を挟んだ反対側(以下、裏面と称する)に第1の発熱抵抗体202a、第2の発熱抵抗体202bを含む発熱体を有し、基層201と摺動層207とを介してフィルム103に熱を伝える。第2の回転体としての加圧ローラ102は、金属性の芯金部とシリコーンゴム等からなる弾性層を有し、ゴム層で定着ニップを形成する。ヒータ保持部材105は不図示の加圧手段によってステイ部材104を介して加圧ローラ102方向に付勢されている。すなわち、加熱ユニット101が加圧ローラ102に付勢されており、加熱ユニット101と加圧ローラ102によって搬送された記録材Pを挟持する定着ニップ部が形成される。加圧ローラ102は不図示の駆動手段によって回転方向Rに回転駆動され、加圧ローラ102の回転に伴いフィルム103が回転方向Rに駆動される。
【0014】
<ヒータ>
本発明を適用するヒータの特徴について
図3を用いて説明する。
図3(A)はヒータ200の短手方向(記録材Pの搬送方向と垂直方向)の1断面を示している。ヒータ200は、記録材Pの搬送方向に直交する方向を長手方向とするセラミック製の基板201上の
通電層に設けられた第1の発熱抵抗体202aと第2の発熱抵抗体202bによって加熱される。通電層には、第1導電体203と第2導電体204がヒータ長手方向に沿って設けられる。第1導電体203は記録材Pの搬送方向上流側と下流側にそれぞれ203aと203bとに分岐している。第2導電体204は第1の発熱抵抗体202aと第2の発熱抵抗体202bとの間に設けられる。
またヒータ200の裏面には2つの発熱抵抗体202a、bや導電体203、204を覆う絶縁性の保護層206が設けられている。ヒータ200がフィルム103と摺動する摺動面側には摺動性の良好なガラスやポリイミドなどのコーティングによる摺動層207が設けられている。
【0015】
図3(B)、(C)、(D)はヒータ200の各層における平面図を示している。ヒータ200は、通電層に第2導電体204と第1の発熱抵抗体202aおよび第2の発熱抵抗体202bを含む発熱ブロックがヒータ200の長手方向で複数並んでいる。本実施例のヒータ200においてはヒータ200の長手方向に沿って合計5つの発熱ブロックを有する。第1発熱ブロック202-1は、ヒータ200の短手方向に対称に形成された第1の発熱抵抗体202-1a及び第2の発熱抵抗体202-1b、第2導電体204の一部である204-1、後述の電極205-1で構成されている。同様に第2発熱ブロック202-2は、第1の発熱抵抗体202-2a及び第2の発熱抵抗体202-2b、第2導電体204の一部である204-2、後述の電極205-2で構成されている。第3発熱ブロック202-3は、第1の発熱抵抗体202-3a及び第2の発熱抵抗体202-3b、第2導電体204の一部である204-3、後述の電極205-3で構成されている。第4発熱ブロック202-4は、第1の発熱抵抗体202-4a及び第2の発熱抵抗体202-4b、第2導電体204の一部である204-4、後述の電極205-4で構成されている。第5発熱ブロック202-5は、第1の発熱抵抗体202-5a及び第2の発熱抵抗体202-5b、第2導電体204の一部204-5、後述の電極205-5で構成されている。
【0016】
第1導電体203は、ヒータ200の長手方向に沿って設けられている。第1導電体203は導電体203aと203bで構成されている。導電体203aは、各発熱ブロックの第1発熱抵抗体202-1a、202-2a、202-3a、202-4a、202-5aと接続する。導電体203bは、各発熱ブロックの第2発熱抵抗体202-1b、202-2b、202-3b、202-4b、202-5bと接続する。ここで、第1導電部としての導電体203aは、各発熱ブロックにおいて電極205C1と第1の発熱抵抗体202-1a~202-5aの第2の発熱抵抗体202-1b~202-5bと対向する側とは反対側である基板の短手方向一端とを電気的に接続する。また、第2導電部としての導電体203bは、各発熱ブロックにおいて電極205C2と第2の発熱抵抗体202-1b~202-5bの短手方向他端とを電気的に接続する。第2導電体204は発熱ブロック202-1、202-2、202-3、202-4、202-5とそれぞれ接続する204-1、204-2、204-3、204-4、204-5に分割されている。この204-1~5が、電極205-1~5と第1の発熱抵抗体202-1a~202-5aの短手方向他端とを電気的に接続し、電極205-1~5と第2の発熱抵抗体202-1b~202-5bの短手方向一端を電気的に接続しており、第3導電部となる。
【0017】
電極205C1、205C2、205-1、205-2、205-3、205-4、205-5は、電力を第1の発熱抵抗体202aと第2の発熱抵抗体202bに供給するための、保護層206の開口部である。第1電気接点部としての電極205C1は基板の長手方向一端付近に、第2電気接点部としての電極205C2は基板の長手方向他端付近にそれぞれ設けられている。これらの電極205C1及び電極205C2は、導電体203a及び導電体203bを介して5つの発熱ブロック202-1~202-5に電力を供給するための共通の電極である。一方、電極205-1は発熱ブロック202-1に電力を
供給するための電極である。同様に、電極205-2は発熱ブロック202-2に、電極205-3は発熱ブロック202-3に、電極205-4は発熱ブロック202-4に、電極205-5は発熱ブロック202-5に電力を供給する。そして、電極205C1と電極205C2の間に設けられた前述の電極205-1~205-5が各発熱ブロックにおける第3電気接点部に相当する。これらの電極に対して電源に接続された不図示の接点部材を接触させ導通をとることで、導電体203aと導電体203bに対して互いに並列に接続している第1~5発熱ブロックに電力を供給する。
ヒータ200の分割された発熱ブロック202-1~202-5への電力供給比率をそれぞれ変化させることにより記録紙が通紙されない非通紙領域の端部昇温を抑制することができる。例えば発熱ブロック202-3に対応する幅をもった記録紙を定着する際に、発熱ブロック202-3のみに電力を供給することにより、非通紙部領域の端部昇温を抑制できる。
【0018】
<温度検知構成>
ヒータ200の摺動面層には、温度検知素子としてのサーミスタTp1~Tp5、Ts1~Ts5が各発熱ブロックに配置されている。これらのサーミスタにより各発熱ブロックの温度を検知し、発熱ブロックに供給される電力の制御を行う。また、ヒータ200の摺動面層には各サーミスタと接続される導電体も形成されている。導電体EG1、EG2は、サーミスタTp1~Tp5、Ts1~Ts5の一端に接続され、制御回路のサーミスタ温度検知部のグランド電位に接続される。導電体ET1~ET5は、サーミスタTs1~Ts5にそれぞれ接続され、ヒータ200の長手方向の端部まで形成される。導電体EP1は、サーミスタTp1~Tp5の導電体EG1と接続していない方の端部に接続される。摺動面層には保護ガラスがヒータ200の長手方向の端部を除いて構成されている。保護ガラスに覆われない各導電体の一部は、導電性のシート部材であるフレキシブルシート107と接続される電極となる。
図3(E)は、フレキシブルシート107がヒータ端部の電極に接合された様子を示している。フレキシブルシート107には、サーミスタに接続された導電体と同様の導電体パターンが形成されており、半田によってフレキシブルシート107がヒータの一部と重なるようにヒータ端部の接続点に接合される。
【0019】
<接点保護構成>
図4に、フレキシブルシート107とヒータ200の接合部の保護構成を示す。
図4(A)はコの字形のハウジング部材106aをヒータ保持部材105に取り付ける前、
図4(B)はコの字形のハウジング部材106aをヒータ保持部材105に取り付けた後の状態を示している。ハウジング部材106aは、コの字形をしており、フレキシブルシート107がヒータの一部と重なる方向を第1方向とすると、第1方向と直交する方向である第2方向に略平行に延び、互いに対向している一対の当接部106a-1、106a-2を有している。本実施例では、ハウジング部材106aを、ヒータ保持部材105の一部と共にフレキシブルシート107とヒータ200の接続部分である接合部に装着する。すると、前述の一対の当接部の一方となる106a-1が前述の第1方向における一方の方向にフレキシブルシート107と当接し、一対の当接部の他方となる106a-2が一方の方向とは逆方向にヒータ保持部材105と当接することになる。その結果、フレキシブルシート107とヒータ200との接合部は、ヒータ保持部材105と共に一対の当接部により挟持される。
【0020】
別の言い方をすると、フレキシブルシート107は、ヒータの長手方向の端部において、ヒータ200およびヒータ保持部材105と共にコの字形のハウジング部材106aの空隙部に積層されて配置される。このようにフレキシブルシート107を配置することで、フレキシブルシート107とヒータ200との、前述の第1方向への相対移動が規制され、第1方向の直交方向である第2方向への相対移動は許容されることになる。その結果、フレキシブルシート107にかかる剥離方向の力をコの字形のハウジング部材106a
が受けることになり、フレキシブルシート107とヒータ200の接合部に直接剥離方向の力が加わることを防止することができる。そのため、ヒータ200の長手方向の端部におけるフレキシブルシート107との接合部の半田はがれや、ヒータ200およびフレキシブルシート107の電極はがれの発生を抑制することができる。
【0021】
また、ハウジング部材106aを装着した際に、フレキシブルシート107とヒータ200の電気的な接続状態は維持される。そして、上述の第1方向すなわちフレキシブルシート107の剥離方向への、フレキシブルシート107とヒータ200の相対移動は規制される。すなわち、ハウジング部材106aは、フレキシブルシート107とヒータ200双方の相対位置を規制する規制部材として機能する。しかしながら、第1方向と直交する方向である第2方向、すなわちハウジング部材106aの装着方向への移動は許容されたままである。そのため、従来のようにテープや接着剤を用いていた場合とは異なり、ハウジング部材106aを装着もしくは取り外す際の組立性を向上させることができる。なお、本実施例では、ハウジング部材106aは、ヒータ保持部材105と共にフレキシブルシート107とヒータ200の接合部に装着されているが、これに限られない。例えば、ヒータ保持部材105を介さずに、直接フレキシブルシート107とヒータ200の接合部に装着しても同様の効果を得ることができる。
【0022】
(実施例2)
次に本発明の実施例2に係る定着装置について説明する。実施例1と同様の構成のものには同一の符号を付して説明を省略する。
図6(A)はコの字形のハウジング部材106bを取り付ける前の状態を表し、
図6(B)はコの字形のハウジング部材106bを取り付けた状態を表している。
図7はヒータ200を取り付けた状態のヒータ保持部材105をヒータ裏面側からみた様子を示している。ハウジング部材106bは、フレキシブルシート107がヒータ200の一部と重なる方向を第1方向としたときに、第1方向と直交する方向である第2方向に略平行に延び、互いに対向する一対の当接部106b-1、106b-2を有する。本実施例の一対の当接部は、前述の第1方向における一方の方向で後述のスペーサ部材108と当接する当接部106b-1と、一方の方向とは逆方向でヒータ保持部材105と当接する当接部106b-2とで構成されている。更に
図8に示すように、コの字形のハウジング部材106bには電気接点部材109が少なくとも一つ配置されている。電気接点部材109は、ヒータ保持部材105と当接する当接部106b-2に、ハウジング部材106bの装着方向に沿って設けられている。コの字形のハウジング部材106bを、ヒータ保持部材105と共にフレキシブルシート107とヒータ200の接合部に取り付けた際に電気接点部材109が電極部205C1および205C2に接触し、電気的に接続される。ヒータ200に設けられた前述の発熱抵抗体202aと202bは、ハウジング部材106bを介して電源から電力が供給され発熱する。
【0023】
また、
図6(A)(B)に示すように、ヒータ200の一部の上に重なるフレキシブルシート107とコの字形のハウジング部材106bの間にはスペーサ部材108が配置されている。コの字形のハウジング部材106bを、ヒータ保持部材105と共にフレキシブルシート107とヒータ200の接続部分である接合部に取り付ける際に、フレキシブルシート107とヒータ200の接合部をスペーサ部材108で覆うことができる。すなわち、本実施例では、ハウジング部材106bが有する一対の当接部の一方となる106b-1がフレキシブルシート107ではなく、スペーサ部材108と当接し、他方となる106b-2がヒータ保持部材105と当接する。そのため、ハウジング部材106bがフレキシブルシート107とヒータ200の接合部に直接当たらず、ヒータ摺動面層の長手方向の端部にあるフレキシブルシート107とヒータ200の接合部を損傷させる可能性を低減させることができる。
【0024】
スペーサ部材108には、ハウジング部材106bのフレキシブルシート107とヒータ200の接合部への装着方向と同じ方向に延びる突起部分が設けられている。この突起部分は、ハウジング部材106bの一対の当接部のうちスペーサ部材108と当接する当接部106b-1に設けられた溝部と係合するように構成されている。この突起部分はハウジング部材106bの溝部と係合することで、ハウジング部材106bの装着方向と直交する方向への移動が規制される。また、上述のようにハウジング部材106bは、スペーサ部材108と当接する当接部106b-1と、ヒータ保持部材105と当接する当接部106b-2を有しており、
図6(A)に示すように2つの当接部は一端が繋がっている。そのため、ハウジング部材106bの一方の当接部106b-1の移動が規制されると、他方の当接部106b-2の移動も合わせて規制される。ハウジング部材106b全体として装着方向の直交方向への移動が規制されるので、ヒータ200がハウジング部材106bと共に、ハウジング部材106bの装着方向と直交する方向へ移動することはない。以上のことから、例えば、フレキシブルシート107、ヒータ200、ヒータ保持部材105およびスペーサ部材108を合わせて一体となった組立体と捉える。すると、ハウジング部材106bに設けられた溝部とスペーサ部材108に設けられた突起部分は、前述の組立体に対する装着方向と直交する方向に対しての、ハウジング部材106bとスペーサ部材108の互いの相対移動を規制する規制部であるといえる。この溝部と突起部分で構成される規制部により、前述のハウジング部材106bの移動が規制されると同時に、ハウジング部材106bを取付けたヒータ保持部材105に対して、ヒータ200がヒータの長手方向にずれるのを防ぐことができる。
【0025】
ヒータ200を裏面側から見たときの保護層の電極部205C1、205C2およびヒータ摺動面層のサーミスタ電極部は共にヒータ長手方向の端部に位置する。しかしながら、電極部同士の絶縁距離を確保するために、前述のサーミスタ電極部とヒータ裏面側から見たときの電極部205C1、205C2はヒータ長手方向にずらして配置しなければならない場合がある。
図9は、ヒータ200の保護層の電極部205C1、205C2と、ヒータ摺動面層のサーミスタ電極がヒータ長手方向にずれて配置される場合において、フレキシブルシート107とヒータ200の接合部の保護構成を示す図である。スペーサ部材108がヒータ200の長手方向端部で、フレキシブルシート107とヒータ200の接合部にオーバーラップして配置される構成を示している。すなわち、ヒータ保持部材105の一部と共にフレキシブルシート107とヒータ200の接合部が、ハウジング部材106bが有する一対の当接部の間に位置し、さらに前述の接合部の上にスペーサ部材108が重なるように構成されている。このような構成をとることで、フレキシブルシート107とヒータ200との、フレキシブルシート107がヒータ200の一部と重なる方向(第1方向)への相対移動が規制され、ハウジング部材106bの装着方向(第2方向)への相対移動は許容される。
【0026】
その結果、フレキシブルシート107にかかる剥離方向の力を、スペーサ108を介してコの字形のハウジング部材106bが受けることになり、フレキシブルシート107とヒータ200の接合部に直接剥離方向の力が加わることを防止することができる。そのため、ヒータ200の長手方向の端部におけるフレキシブルシート107との接合部の半田はがれや、ヒータ200およびフレキシブルシート107の電極はがれの発生を抑制することができる。また、ハウジング部材106bは装着した際に、フレキシブルシート107とヒータ200の一部と重なる第1方向、すなわちフレキシブルシート107の剥離方向へのフレキシブルシート107とヒータの相対移動を規制する規制部材でもある。しかしながら、第1方向と直交する方向である第2方向への移動は許容される。そのため、実施例1と同様に、テープや接着剤を用いていた場合と異なり、ハウジング部材106bを装着もしくは取り外す際の組立性を向上させることができる。
【0027】
(実施例3)
次に本発明の実施例3に係る定着装置について説明する。実施例1、2と同様の構成のものには同一の符号を付して説明を省略する。
【0028】
まず、本発明を適用するヒータの特徴について
図10を用いて説明する。
図10(A)はヒータ200の短手方向(記録材Pの搬送方向と垂直方向)の1断面図を示している。また、
図10(B)(C)(D)のヒータ200の各層における平面図を示している。また、
図10(E)はフレキシブルシート107がヒータ端部の電極に接合された様子を示している。
【0029】
ヒータ200の摺動面層の長手方向両端部で、かつ短手方向両端部には導電体LH1~LH4が形成されている。また、ヒータ200の両端部側には、ヒータ200の一方の端部と接族する第1のシート部材と他方の端部と接続する第2のシート部材からなり、それぞれがヒータ200の一部と重なるようにして接合されるフレキシブルシート107が設けられている。フレキシブルシート107の一方の端部にはヒータ200に形成された導電体LH1~LH4と同様の導電体LF1~LF4が形成されており、半田によって導電体LH1~LH4が導電体LF1~LF4と重なるように接合される。この導電体LH1~LH4と導電体LF1~LF4による接合部が、ヒータ200とフレキシブルシート107の剥がれを防止するための補強ランドである。これらの補強ランドのうち、ヒータ200の摺動面層に形成された導電体LH1~LH4がヒータ側補強ランドに相当し、フレキシブルシート107に形成された導電体LF1~LF4がシート側補強ランドに相当する。より具体的に言うと、
図10(D)のLH1とLH2が第1のヒータ側補強ランド、LH3とLH4が第2のヒータ側補強ランドである。そして、
図10(E)のLF1とLF2が、LH1およびLH2と接合する第1のシート側補強ランド、LF3とLF4が、LH3およびLH4と接合する第2のシート側補強ランドである。尚、補強ランドによる接合部は通紙領域内に配置するとプリント時にヒータ上の発熱抵抗体202が高温になり半田が溶融して剥離する恐れがあるため、発熱抵抗体202から離れた通紙領域外に配置している。
【0030】
また、仮にこの接合部が剥離した時も、ヒータ上のサーミスタTs、Tpからフレキシブルシート107に形成した導電体EF1、EF2までの導通経路を遮断させないため、これらの補強ランドは導通経路から隔離されたヒータ短手方向端部の位置に形成されている。また、補強ランドは、フレキシブルシート107の一方の端部側に設けたヒータ200との電極接合部EJ1、EJ2より、フレキシブルシート107の内側で接合している。
【0031】
そのため、
図4、
図6で示したハウジング部材106aやスペーサ部材108を取り付ける前に、フレキシブルシート107の配線這い回し時に接合部EJ1、EJ2にフレキシブルシートの剥離方向の力が直接かからず補強ランドにかかる。尚、補強ランドの接合は、ヒータ200端部の電極とフレキシブルシート107の導電体EG1、EG2、EP1、ET1~ET5を接合する際に同時に行う。これにより、ヒータ200とフレキシブルシート107の半田接合後にフレキシブルシート107の剥離方向の力がかかり電極接合部が剥がれたり、フレキシブルシート上に形成された導電体が屈曲応力で断線して導通不良に至ることは無くなった。その結果、ヒータ上に配置した複数のサーミスタTp、Tsが検知したの発熱領域ごとの温度情報を安定して入手しヒータ200を温度バラツキなく発熱することができる。
【符号の説明】
【0032】
200…ヒータ、101…加熱ユニット、102…加圧ローラ、106a…規制部材