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特許7508261電子写真用ベルト及び電子写真画像形成装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-21
(45)【発行日】2024-07-01
(54)【発明の名称】電子写真用ベルト及び電子写真画像形成装置
(51)【国際特許分類】
   G03G 15/16 20060101AFI20240624BHJP
   G03G 15/00 20060101ALI20240624BHJP
   B32B 27/18 20060101ALI20240624BHJP
   B32B 27/36 20060101ALI20240624BHJP
【FI】
G03G15/16 103
G03G15/00 552
B32B27/18 J
B32B27/36
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2020075770
(22)【出願日】2020-04-22
(65)【公開番号】P2020190720
(43)【公開日】2020-11-26
【審査請求日】2023-04-13
(31)【優先権主張番号】P 2019092980
(32)【優先日】2019-05-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100123788
【弁理士】
【氏名又は名称】宮崎 昭夫
(74)【代理人】
【識別番号】100127454
【弁理士】
【氏名又は名称】緒方 雅昭
(72)【発明者】
【氏名】▲濱▼名 英一
(72)【発明者】
【氏名】江川 紀章
(72)【発明者】
【氏名】内田 光一
【審査官】山下 清隆
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-191825(JP,A)
【文献】特開平02-294045(JP,A)
【文献】特開2018-189882(JP,A)
【文献】特開平04-362981(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03G 15/16
G03G 15/00
B32B 27/18
B32B 27/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンドレス形状を有する電子写真用ベルトであって、
エンドレス形状のポリエステル樹脂を含有する基層と、
該基層の内周面に位置する導電層と、
を有し、
該導電層は、導電性粒子とバインダー樹脂とを含み、該バインダー樹脂が、テレフタル酸、オルトフタル酸およびイソフタル酸からなる群から選択される少なくとも2つのフタル酸に由来するモノマー単位を有するポリエステル樹脂を含み、
該基層が、イオン導電剤を含む、電子写真用ベルト
【請求項2】
エンドレス形状を有する電子写真用ベルトであって、
エンドレス形状のポリエステル樹脂を含有する基層と、
該基層の内周面に位置する導電層と、
を有し、
該導電層は、導電性粒子とバインダー樹脂とを含み、該バインダー樹脂が、テレフタル酸、オルトフタル酸およびイソフタル酸からなる群から選択される少なくとも2つのフタル酸に由来するモノマー単位を有するポリエステル樹脂を含み、
該導電層の表面抵抗率が、4.0×10 Ω/□以下である、電子写真用ベルト。
【請求項3】
エンドレス形状を有する電子写真用ベルトであって、
エンドレス形状のポリエステル樹脂を含有する基層と、
該基層の内周面に位置する導電層と、
を有し、
該導電層は、導電性粒子とバインダー樹脂とを含み、該バインダー樹脂が、テレフタル酸、オルトフタル酸およびイソフタル酸からなる群から選択される少なくとも2つのフタル酸に由来するモノマー単位を有するポリエステル樹脂を含み、
該導電層中のポリエステル樹脂が、ポリエステルウレタン樹脂である、電子写真用ベルト。
【請求項4】
前記導電性粒子が、電子導電剤である、請求項1~3のいずれか一項に記載の電子写真用ベルト。
【請求項5】
前記導電性粒子が、カーボンブラックである、請求項1~4のいずれか一項に記載の電子写真用ベルト。
【請求項6】
前記カーボンブラックの含有量が、導電層中で9質量%以上13質量%以下である、請求項5に記載の電子写真用ベルト。
【請求項7】
前記基層が、テレフタル酸、オルトフタル酸及びイソフタル酸からなる群から選択される少なくとも2つのフタル酸に由来するモノマー単位を有するポリエステル樹脂を含有する、請求項1~6のいずれか一項に記載の電子写真用ベルト。
【請求項8】
前記導電層は、バーコビッチ型圧子を使用したナノインデンター測定法において、最表面から厚み方向に10~20%の領域における平均硬度が0.10GPa以上である、請求項1~7のいずれか一項に記載の電子写真用ベルト。
【請求項9】
前記基層の厚さが、20μm以上500μm以下である、請求項1~8のいずれか一項に記載の電子写真用ベルト。
【請求項10】
前記導電層の厚さが、0.05μm以上10μm以下である、請求項1~9のいずれか一項に記載の電子写真用ベルト。
【請求項11】
複数のトナー像担持体と、該複数のトナー像担持体の各々からトナー像を1次転写される中間転写ベルトと、該中間転写ベルトに接触する電流供給部材と、該電流供給部材に電圧を印加する電源とを備え、
該電源から該電流供給部材に電圧を印加することによって、該中間転写ベルトの周方向に電流を流して、該トナー像担持体から該中間転写ベルトに該トナー像を1次転写する電子写真画像形成装置であって、
該中間転写ベルトが、エンドレス形状を有する電子写真用ベルトであって、
該電子写真用ベルトは、
エンドレス形状のポリエステル樹脂を含有する基層と、
該基層の内周面に位置する導電層と、
を有し、
該導電層は、導電性粒子とバインダー樹脂とを含み、該バインダー樹脂が、テレフタル酸、オルトフタル酸およびイソフタル酸からなる群から選択される少なくとも2つのフタル酸に由来するモノマー単位を有するポリエステル樹脂を含む、ことを特徴とする電子写真画像形成装置。
【請求項12】
複数のトナー像担持体と、該複数のトナー像担持体の各々からトナー像を1次転写される中間転写ベルトと、該中間転写ベルトに接触する電流供給部材と、該電流供給部材に電圧を印加する電源とを備え、
該電源から該電流供給部材に電圧を印加することによって、該中間転写ベルトの周方向に電流を流して、該トナー像担持体から該中間転写ベルトに該トナー像を1次転写する電子写真画像形成装置であって、
該中間転写ベルトが、請求項1~10のいずれか一項に記載の電子写真用ベルトである、ことを特徴とする電子写真画像形成装置。
【請求項13】
前記電流供給部材が、該電子写真用ベルトの外周面に接触している、請求項11または12に記載の電子写真画像形成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、複写機やプリンタの如き電子写真方式の画像形成装置(以下、「電子写真装置」と称する)において用いられる電子写真用ベルト及び電子写真画像形成装置に向けたものである。
【背景技術】
【0002】
電子写真装置では、感光ドラムの如き静電荷像担持体上を帯電し、帯電した静電荷像担持体を露光して静電潜像が形成される。その後、摩擦帯電したトナーにより静電潜像が現像され、トナー像が紙の如き記録媒体へ転写・定着されることにより、所望の画像を記録媒体に形成している。
【0003】
電子写真装置の転写方式としては、感光ドラムの如き静電荷像担持体上の未定着のトナー像を転写電源から供給される電流により中間転写体へ1次転写した後、該未定着のトナー像を前記中間転写体から記録媒体へ2次転写する、中間転写方式が用いられている。1次転写及び2次転写にはそれぞれ転写電源が設置されており、周囲の環境(温湿度)や記録媒体種に応じて最適な電流値となるように制御されている。このような中間転写方式は、特にカラー電子写真装置において採用されている。
カラー電子写真装置では、4色(イエロー、マゼンタ、シアン、ブラック)のトナーを、各色の画像形成部から中間転写体上に順次転写し、得られた合成像を記録媒体に一括して転写するため、印刷の高速化や高品質な画像が得られるといった利点がある。
近年、複写機やプリンタの小型化・低コスト化のニーズの高まりに伴って、部品点数を削減することが検討されている。特許文献1には、1次転写用および2次転写用の電源を共通化し、従来よりも導電性を高めた中間転写体を用いることで、1つの転写電源から中間転写体を介して周方向に電流を流し、1次転写を行わせる電子写真画像形成装置が開示されている。
【0004】
そして、特許文献2には、トナー像を外表面に担持するトナー像担持体と、中間転写ベルトと、該中間転写ベルトに接触する電流供給部材と、該電流供給部材に電圧を印加する電源とを備える電子写真画像形成装置が開示されている。これは、該電源から該電流供給部材に電圧を印加することによって該中間転写ベルトの周方向に電流を流し、該トナー像担持体から該中間転写ベルトの外表面に該トナー像を1次転写する電子写真画像形成装置である。そして、該中間転写ベルトは、イオン導電性を有する第1の層(以下、「基層」と略す)と、電子導電性を有し、該第1の層よりも電気抵抗が低い第2の層(以下、「導電層」と略す)と、を有する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2012-098709号公報
【文献】特開2018-036624号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明者らの検討によれば、1つの転写電源によって、特許文献2に係る中間転写ベルトの周方向に電流を流して1次転写を行わせる場合、1次転写性を高めるためには、導電層に、より多くの電子導電剤を含有させることが好ましいことを認識した。具体的には、例えば導電層中に、導電層の質量基準で5質量%以上のカーボンブラックを含有させることが好ましい。
しかしながら、導電層にこのように多量の電子導電剤を含有させた場合、導電層中における結着樹脂の含有割合が相対的に低下することにより、導電層の基層に対する密着性が低下することが懸念された。導電層の基層に対する密着性の低下は、中間転写ベルトの長期に亘る使用によって、導電層の基層からの剥離を招来する可能性がある。
【0007】
そこで、本開示の一態様は、転写用の電源数を減らした電子写真画像形成装置に適用した場合にも高品位な電子写真画像を安定して形成し得る、電子写真用ベルトの提供に向けたものである。
また、本開示の他の態様は、転写用の電源数を減らした場合にも、高品位な電子写真画像を安定して形成することができる電子写真画像形成装置の提供に向けたものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示の一態様によれば、エンドレス形状を有する電子写真用ベルトであって、
エンドレス形状のポリエステル樹脂を含有する基層と、該基層の内周面に位置する導電層と、を有し、
該導電層は、導電性粒子とバインダー樹脂とを含み、該バインダー樹脂が、テレフタル酸、オルトフタル酸およびイソフタル酸からなる群から選択される少なくとも2つのフタル酸に由来するモノマー単位を有するポリエステル樹脂を含む電子写真用ベルトが提供される。
また、本開示の他の態様によれば、複数のトナー像担持体と、該複数のトナー像担持体の各々からトナー像を1次転写される中間転写ベルトと、該中間転写ベルトに接触する電流供給部材と、該電流供給部材に電圧を印加する電源とを備え、
該電源から該電流供給部材に電圧を印加することによって、該中間転写ベルトの周方向に電流を流して、該トナー像担持体から該中間転写ベルトに該トナー像を1次転写する電子写真画像形成装置であって、該中間転写ベルトが、上記の電子写真用ベルトである電子写真画像形成装置が提供される。
【発明の効果】
【0009】
本発明の一態様によれば、転写用の電源数を減らした電子写真画像形成装置に適用した場合にも高品位な電子写真画像を安定して形成し得る、電子写真用ベルトを得ることができる。
また、本発明の他の態様によれば、転写用の電源数を減らした場合にも、高品位な電子写真画像を安定して形成することができる電子写真画像形成装置を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本開示の一実施形態に係る電子写真用ベルトの概略図である。(a)は、エンドレス形状を有する電子写真用ベルトの斜視図である。(b)は、(a)の軸方向断面の拡大図である。
図2】本開示の他の実施態様に係る電子写真画像形成装置の概略図である。
図3図2の画像形成部205aの拡大模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明者らは、多量の導電性粒子を含有させた場合であっても基層に対する密着性が優れた導電層を備えた電子写真用ベルトを得るべく検討を重ねた。その結果、導電層中のバインダー樹脂として、テレフタル酸、オルトフタル酸、及びイソフタル酸からなる群から選択される少なくとも2つのフタル酸に由来するモノマー単位を有するポリエステル樹脂を用いることが、導電性粒子を含む導電層の基層への密着性の改善に有効であることを見出した。
すなわち、導電層は導電性粒子を多量に含むため、該導電層の基層側の表面側にも導電性粒子が多く存在する。そのため、導電層中の樹脂と基層中の樹脂との相互作用が不十分となることにより、基層に対する密着性が低下すると考えられる。
導電層中の導電性粒子の含有量を減らすことなく導電層の基層に対する密着性を向上させるためには、導電層中の樹脂と基層中の樹脂との相互作用をより高めることが有効であると考えられる。
そして、テレフタル酸、オルトフタル酸、及びイソフタル酸からなる群から選択される少なくとも2つのフタル酸に由来するモノマー単位を有するポリエステル樹脂は、分子内に、構造の異なる2つのフタル酸由来のモノマー単位を有するため、ポリエステル樹脂のポリマー鎖同士が配列し難く、結晶性が低い。このことにより、導電層と基層との界面部分における該導電層中のポリエステル樹脂と基層中の樹脂との相互作用が高まり、その結果、導電層の基層に対する密着性が向上しているものと考えられる。
【0012】
<電子写真用ベルト>
以下、本態様に係る電子写真用ベルトについて詳細に説明する。
図1(a)は、エンドレス形状を有する電子写真用ベルトの斜視図である。図1(b)は、図1(a)の軸方向断面の拡大図である。図1に示す電子写真用ベルト100において、導電層102は基層101の内周面に存在しており、該導電層102が電子写真用ベルトの内周面に露出している。また、図示はしないが、該基層101上には、感光ドラムや他の部材と接触する最外層が設けられてもよい。
【0013】
図1における導電層102に対して、該導電層に接触する部材を介して、ツェナーダイオードなどの電圧維持素子を接続することにより、導電層の電位を一定にすることが可能となる。その結果、該導電層を介して、全ての感光ドラムへ所望の電流を流すことができ、特許文献2に記載されるような1つの転写電源で2次転写のみならず1次転写も可能な画像形成装置に用い得る電子写真用ベルトとなる。
【0014】
該電子写真用ベルトは、複数のローラで張架して使用するため、エンドレスベルト形状を有する。エンドレスベルト形状とは、例えば、シートまたはフィルム状の成形物を円筒状に繋ぎ合わせて得られる形状を指し、複数のローラで張架し、回転させることが可能な形状を指す。エンドレスベルト形状の中でも、ベルトの厚さムラ低減等の観点から、繋ぎ目(シーム)が存在しないシームレス形状が好ましい。
【0015】
該電子写真用ベルトは、前述した小型化・低コスト化した画像形成装置に用いるため、常温常湿環境(温度23℃、湿度50%)で測定した体積抵抗率が1×109~1×1010Ω・cmの範囲であることが好ましい。
また、内周面側の表面抵抗率が外周面側の表面抵抗率よりも小さく、且つ、内周面側から測定した表面抵抗率が4.0×10Ω/□以下の範囲の電子写真用ベルトであることが好ましい。表面抵抗率が高い場合、感光ドラム状のトナー像を転写ベルトに一次転写するために必要な転写電圧が不足し、転写抜けなどの画像不良が発生する場合がある。
【0016】
次に、該電子写真用ベルトの各層の構成材料及び形成方法について、詳細に説明する。なお、該電子写真用ベルトの製造方法は、特に限定されるものではない。
【0017】
[導電層]
導電層は、導電性粒子とバインダー樹脂とを含む。
導電層の最表面、すなわち、導電層の基層に対向する面とは反対側の面において測定される10V印加時の表面抵抗率は、4.0×10Ω/□以下が好ましく、より好ましくは1.0×10Ω/□以下である。該表面抵抗率の下限は特に限定されない。該表面抵抗率が該範囲内であることにより、複数の転写電源を有する従来の1次転写と同等の一次転写電流を各感光ドラムへ供給することができる。なお、該表面抵抗率は、後述する導電層の表面抵抗率の測定方法により測定される値である。
導電層の厚さは、耐屈曲性の観点から0.05μm以上10μm以下が好ましく、0.1μm以上5μm以下がより好ましい。上記厚さを考慮すると、該バインダー樹脂としては、溶媒に溶解し、当該バインダー樹脂を含む薄層または当該バインダー樹脂原料を含む薄層を形成可能なものが好ましい。
導電層は、バーコビッチ型圧子を使用したナノインデンター測定法において、最表面、すなわち、導電層の基層に対向する面とは反対側の面から厚み(膜厚)方向に10~20%の領域における平均硬度が0.10GPa以上であることが好ましい。最表面付近である導電層の膜厚の10%未満の領域は、圧子の振動など測定環境の影響を受け易い。また、導電層の膜厚の20%を超える領域は、基層の影響を受け易い。そのため、これらの領域を除外して、導電層の膜厚の10~20%の領域における平均硬度を算出する。導電層の硬度を該領域における平均硬度として0.10GPa以上にすることで、電子写真装置に搭載される他の摺動部材(例えば、転写ローラなど)との摺擦による摩耗や損耗といった物理的劣化の発生を抑制できる。
導電層の該領域における平均硬度の上限値は特に制限されないが、0.50GPa以下であることが、一般的な電子写真装置に搭載される摺動部材への物理的ダメージを抑制することができるため好ましい。
すなわち、導電層の該領域における平均硬度は、0.10GPa以上0.50GPa以下であることがより好ましい。該平均硬度は、0.13GPa以上0.40GPa以下であることがさらに好ましく、0.15GPa以上0.30GPa以下であることが特に好ましい。該硬度を向上させる方法として、例えば、ポリエステル樹脂の分子量を上げる方法や高硬度フィラーや架橋剤、硬化性樹脂を加える方法等が挙げられる。
【0018】
(導電性粒子)
導電層に用いられる導電性粒子としては、電子導電剤を用いることが可能である。
電子導電剤の例は、例えば、カーボンブラック、グラファイト、カーボンナノチューブ(以下、「CNT」とも称する。)、カーボンマイクロコイル、グラフェン、酸化亜鉛、アンチモン酸亜鉛、酸化錫、ITO(スズドープ酸化インジウム)、ATO(アンチモンドープ酸化スズ)を含む。
さらに、電子導電剤の他の例は、ポリアニリン、ポリピロール、ポリチオフェンの如き導電性高分子を含む。
これらの中でも、導電性の高いケッチェンブラック(登録商標)の如き高導電性カーボンブラックが好ましい。
導電層中のカーボンブラックの含有量は、前記表面抵抗率の観点から6質量%以上が好ましい。また、他の摺動部材(例えば、転写ローラや張架ローラなど)との摺擦による割れや摩耗といった物理的劣化を抑制する観点から、導電層中のカーボンブラックの含有量は、15質量%以下が好ましい。すなわち、導電層中のカーボンブラックの含有量は、6質量%以上15質量%以下の範囲が好ましく、9質量%以上13質量%以下の範囲がより好ましい。ここで、カーボンブラックの含有量は、導電層を熱分解反応させた残渣の量から求めることができる。導電層を構成する材料の中で、カーボンブラックの熱分解温度は最も高い。そのため、電子写真用ベルトから削り取って秤量した導電層試料を、熱重量分析装置(TGA)を用いて空気雰囲気下でバインダー樹脂の分解温度以上、カーボンブラックの分解温度未満の温度で処理して熱分解反応を進める。これにより、含有量を算出することができる。具体的な条件としては、昇温速度20℃/分で500℃まで昇温後、数時間保持することでカーボンブラック以外の熱分解反応を進める。重量減少速度が1%/時間以下になることで熱分解反応が完了したことを判断することができる。また、カーボンブラックの含有量は、導電層形成時のカーボンブラックの添加量から算出してもよい。
【0019】
(バインダー樹脂)
導電層に用いられるバインダー樹脂は、テレフタル酸、オルトフタル酸およびイソフタル酸からなる群から選択される少なくとも2つのフタル酸に由来するモノマー単位を有するポリエステル樹脂を含む。
例えば、エチレンテレフタレート単位とエチレンオルトフタレート単位を有する共重合体、エチレンテレフタレート単位とエチレンイソフタレート単位を有する共重合体等である。また、他の例としては、エチレンオルトフタレート単位とエチレンイソフタレート単位を有する共重合体である。これらの共重合体は、ブロック/ランダムいずれの共重合体でもよい。また、2種以上の共重合体がブレンド、アロイされた混合体として用いてもよい。
この結果、該導電層は化学構造が異なる複数のポリエステルが混在することから非晶性が非常に高い。前記ポリエステル樹脂の化学構造は、溶媒への溶解などの適切な手段により導電層からポリエステルを抽出した後、単離し、熱分解GC/MSや、IR、NMR、元素分析を用いて同定することができる。
導電層は、前記バインダー樹脂に加えて、本態様に係る効果を損なわない範囲でその他の添加剤を含有してもよい。具体的には、以下のようなものが挙げられる。二硫化モリブデン、窒化ホウ素、窒化ケイ素、層状粘土鉱物、シリコーン粒子、フッ素樹脂粒子、シリコーンオイル、フッ素オイル、パーフルオロポリエーテル、結晶制御剤、架橋剤などである。その他の添加剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、該ポリエステル樹脂の原料と共にジイソシアネートなどの架橋剤を加えて、ポリエステルとウレタンとの共重合体(ポリエステルウレタン樹脂)を形成することが導電層の硬度向上の観点から好ましい。
導電層に用いられるバインダー樹脂のTg(ガラス転移温度)としては、耐熱性の観点から60℃より高いことが好ましい。60℃以下の場合、高温環境下における印刷や連続印刷時の画像形成装置内の昇温により、導電層が軟化し、接触する転写ローラなどの部材と融着することで画像不良を起こす場合がある。前記バインダー樹脂のTgは、導電層から樹脂を分離した後、示差走査熱量測定装置(DSC)を用いて、昇温時の吸熱ピークやベースラインのシフトをみることで算出することができる。
【0020】
(導電層の形成方法)
導電層のポリエステル樹脂は、導電層の膜厚を鑑みると、溶媒に溶解して塗布できることが好ましい。例えば、導電層の形成方法は、ポリエステル樹脂、該ポリエステル樹脂を溶解する溶媒、カーボンブラックを含む導電層形成用塗料の塗膜を基層に塗布して導電層を形成する工程を含む。ポリエステル樹脂としては、ジカルボン酸及びジオールなどの原料からエステル交換反応、重縮合を経て得るか、または、市販のポリエステル樹脂含有塗料を用いることができる。溶媒としては、具体的には、メチルエチルケトンやメチルイソブチルケトン、シクロヘキサノンなどを用いることができる。さらに、導電層形成用塗料には必要に応じてレベリング剤などの添加剤を加えることができる。レベリング剤としては、公知のものを適宜選択して用いることができる。得られた導電層形成用塗料をディップコート、スプレーコート、リングコート、ロールコートなどの塗布手段によって、エンドレスベルト状の基層の内周面へ塗布する。その後、溶媒を乾燥させて除去し、塗膜としての導電層を形成することができる。
【0021】
[最外層]
感光ドラムやクリーニングブレードの如き他の接触部材との密着や、ブロッキング防止等を目的として、基層の外周面に、適宜、最外層を設けることができる。該最外層は、樹脂を含むことができる。
該樹脂は特に限定されないが、最外層の厚さを考慮すると、溶媒に可溶な樹脂であり、薄層形成可能なものが好ましい。樹脂としては、例えば、可溶性のポリイミド、硬化型のウレタン樹脂やアクリル樹脂などを用いることができる。これらの中でも、耐摺擦性、硬度の観点からアクリル樹脂が好ましい。
【0022】
また、最外層には、前記樹脂の他に、添加剤としてフィラー粒子や潤滑剤を加えることもできる。具体的には、以下のようなものが挙げられる。アルミナ、チタニア、シリカ、ジルコニア、酸化亜鉛、アンチモン酸亜鉛、酸化錫、ITO(スズドープ酸化インジウム)、ATO(アンチモンドープ酸化スズ)、二硫化モリブデン、窒化ホウ素、窒化ケイ素、層状粘土鉱物などである。他には、シリコーン粒子、PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)粒子などのフッ素樹脂粒子、カーボンブラック、グラファイト、カーボンナノチューブ、カーボンマイクロコイル、グラフェンなどである。さらに、シリコーンオイル、フッ素オイル、パーフルオロポリエーテルなどが挙げられる。これらの中でも、低摩擦化の観点から、PTFE粒子が好ましい。これらは一種を用いてもよく、二種以上を併用してもよい。
【0023】
PTFE粒子を用いる場合、最外層中のPTFE粒子の含有量は、最外層中の樹脂100質量部に対して5質量部以上60質量部以下であることが好ましく、10質量部以上50質量部以下であることがより好ましい。PTFE粒子の含有量を前記範囲内とすることにより、他の接触部材との密着やブロッキングを防止することができる。また、最外層には、必要に応じて、導電剤、硬化剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、pH調整剤、架橋剤、顔料などを添加することもできる。
【0024】
さらに、最外層の表面には凹凸形状を付与してもよい。凹凸形状を付与することで、前記フィラー粒子や潤滑剤などの添加剤による効果に加え、他の接触部材との接触面積が小さくなり、さらなる低摩擦抵抗化が可能となる。凹凸形状の付与方法としては特に限定されないが、例えば、中子などに支持された最外層を有する電子写真用ベルトを、砥粒を含有するラッピングフィルムと当接させながら周方向に回転させて最外層の表面を研磨し、凹凸形状を付与する方法が挙げられる。また、予め所望の形状に加工した型を当接するインプリント加工などの方法も用いることができる。最外層の厚さは、割れや耐屈曲性の観点から、0.05μm以上10μm以下が好ましく、0.1μm以上5μm以下がより好ましい。
【0025】
[基層]
基層は、エンドレス形状を有する。また、基層は、ポリエステル樹脂をバインダー樹脂として含む。このような基層としては、例えば、ポリエステル樹脂を含む樹脂に導電剤を含有させた半導電性のフィルムを円筒状に繋ぎ合わせたもの、または円筒状のシームレスベルトが挙げられる。
【0026】
(樹脂)
ポリエステル樹脂としては、ジカルボン酸成分とジヒドロキシ成分との重縮合、オキシカルボン酸成分もしくはラクトン成分の重縮合、または、これらの成分を複数用いた重縮合などにより得ることができる。ポリエステル樹脂は、ホモポリエステルであってもコポリエステルであってもよい。
【0027】
ジカルボン酸成分としては、例えば、芳香族ジカルボン酸、脂環族ジカルボン酸、脂肪族ジカルボン酸、これらのジカルボン酸の誘導体等が挙げられる。芳香族ジカルボン酸としては、例えば、分子内の炭素原子数が8以上16以下(C8~C16)のものが挙げられる。具体例としてはテレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸、2,6-ナフタレンジカルボン酸などのナフタレンジカルボン酸、ジフェニルジカルボン酸、ジフェニルエーテルジカルボン酸、ジフェニルメタンジカルボン酸、ジフェニルエタンジカルボン酸などである。脂環族ジカルボン酸としては、例えば、シクロヘキサンジカルボン酸などのC4~C10のシクロアルカンジカルボン酸などが挙げられる。脂肪族ジカルボン酸としては、例えば、コハク酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸などのC4~C12の脂肪族ジカルボン酸等が挙げられる。これらのジカルボン酸の誘導体としては、エステル形成可能な誘導体(例えば、ジメチルエステルなどの低級アルキルエステル、酸無水物、酸クロライドなどの酸ハライド)が例示できる。これらのジカルボン酸成分は、1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて使用できる。好ましいジカルボン酸成分は、結晶性、耐熱性の観点から、芳香族ジカルボン酸であり、より好ましくは、テレフタル酸、イソフタル酸およびナフタレンジカルボン酸である。
【0028】
前記ジヒドロキシ成分としては、例えば、脂肪族ジオール、脂環族ジオール、芳香族ジオールが挙げられる。脂肪族ジオールとしては、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、ヘキサンジオールなどのC2~C10アルキレンジオールが挙げられる。脂環族ジオールとしては、例えば、シクロヘキサンジオール、シクロヘキサンジメタノールなどのC4~C12脂環族ジオールが挙げられる。芳香族ジオールとしては、例えば、ハイドロキノン、レゾルシン、ジヒドロキシビフェニル、ナフタレンジオール、ジヒドロキシジフェニルエーテル、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン(ビスフェノールA)などのC6~C20のものが挙げられる。
他には、前記芳香族ジオールのアルキレンオキサイド付加体(例えば、ビスフェノールAのC2~C4アルキレンオキサイド付加体)が挙げられる。また他には、ポリオキシアルキレングリコール(例えば、ジエチレングリコール、ポリオキシエチレングリコール、ポリオキシプロピレングリコール、ポリテトラメチレンエーテルグリコールなどのポリオキシC2~C4アルキレングリコール)などが挙げられる。これらのジヒドロキシ成分は、エステル形成可能な誘導体(例えば、アルキル基、アルコキシル基またはハロゲン置換体など)であってもよい。これらのジヒドロキシ成分は、1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて使用できる。これらのジヒドロキシ成分のうち、結晶性、耐熱性等の観点から、アルキレンジオール(特にC2~C4アルキレンジオール)、脂環族ジオールを用いることが好ましい。
【0029】
前記オキシカルボン酸成分としては、例えば以下のものが挙げられる。オキシ安息香酸、オキシナフトエ酸、ジフェニレンオキシカルボン酸、2-ヒドロキシプロパン酸などのオキシカルボン酸、およびこれらオキシカルボン酸の誘導体。これらのオキシカルボン酸成分は、1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて使用できる。
【0030】
前記ラクトン成分には、プロピオラクトン、ブチロラクトン、バレロラクトン、カプロラクトン(例えば、ε-カプロラクトンなど)などのC3~C12ラクトンなどが含まれる。これらのラクトン成分も1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて使用できる。
【0031】
さらに、結晶性、耐熱性が維持される範囲内で、多官能性モノマーを併用してもよい。多官能モノマーの例としては、トリメリット酸、トリメシン酸、ピロメリト酸などの多価カルボン酸、グリセリン、トリメチロールプロパン、トリメチロールエタン、ペンタエリスリトールなどの多価アルコールが挙げられる。このような多官能性モノマーの使用により生成する分岐または架橋構造を有するポリエステルも使用できる。
【0032】
ポリエステル樹脂としては、上記成分(ジカルボン酸成分およびジヒドロキシ成分、オキシカルボン酸成分、ラクトン成分、またはこれら成分のうちの複数)を重縮合して得られるポリエステル樹脂を使用することができる。そして、結晶性、耐熱性等の点から、ポリアルキレンテレフタレート、ポリアルキレンナフタレートおよびポリアルキレンテレフタレートとポリアルキレンイソフタレートとのブロック/ランダム共重合体から選ばれる少なくとも一つが好ましい。共重合体としては、例えばブロック共重合体およびランダム共重合体が挙げられる。ポリアルキレンテレフタレート、ポリアルキレンイソフタレートおよびポリアルキレンナフタレート中のアルキレンの炭素数は結晶性、耐熱性の観点から2以上16以下が好ましい。更に好ましくはポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンテレフタレートとポリエチレンイソフタレートとのブロック/ランダム共重合体およびポリエチレンナフタレートから選ばれる少なくとも一つである。
【0033】
ポリエステル樹脂は、2種類以上のブレンド物もしくはアロイであってもよい。なお、ポリエチレンナフタレートの具体例としては、市販のTN-8050SC(商品名:帝人社製)およびTN-8065S(商品名:帝人社製)が挙げられる。ポリエチレンテレフタレートとして、市販のTR-8550(商品名:帝人社製)、ポリエチレンテレフタレートとポリエチレンイソフタレートの共重合体として、市販のPIFG30(商品名:(株)ベルポリエステルプロダクツ製)が挙げられる。
【0034】
前記ポリエステル樹脂の固有粘度は、好ましくは1.4dl/g以下、より好ましくは0.3dl/g以上1.2dl/g以下、さらに好ましくは0.4dl/g以上1.1dl/g以下である。固有粘度が1.4dl/g以下であれば、成形時の流動性が低下することを効率的に防ぐことができる。固有粘度が0.3dl/g以上であれば、強度や耐久性を効率的に確保することができる。なお、ポリエステル樹脂の固有粘度は、ポリエステル樹脂の希釈溶媒にo-クロロフェノールを用いて、ポリエステル樹脂のo-クロロフェノール溶液の濃度を0.5質量%、温度を25℃にして測定した値である。
【0035】
ポリエステル樹脂は、基層の全質量に対して、50質量%以上、特には60質量%以上、さらには70質量%以上とすることが好ましい。50質量%以上であれば、電子写真用ベルトの耐久性が低下することを効率的に防ぐことができる。
【0036】
(導電剤)
基層には、導電剤として、ノニオン系およびイオン導電剤を用いることが可能である。また、導電剤としては、高分子型と低分子型の導電剤を用いることができる。例えば、高分子型では、ノニオン系としてポリエーテルエステルアミド、ポリエチレンオキシド-エピクロルヒドリンやポリエーテルエステルなどを用いることが可能である。また、高分子型のイオン導電剤としては、カチオン系として第4級アンモニウム基含有アクリレート重合体、アニオン系としてポリスチレンスルホン酸などを用いることが可能である。また、低分子型の導電剤としては、ノニオン系としてエーテル基を含む誘導体やエーテルエステルを含む誘導体などを用いることが可能である。低分子型のイオン導電剤としては、カチオン系として第1~3級アンモニウム塩や第4級アンモニウム塩とそれらの誘導体、アニオン系としてカルボン酸塩、硫酸エステル塩、スルホン酸塩、リン酸エステル塩とそれらの誘導体などを用いることが可能である。これらの高分子型あるいは低分子型の導電剤は、単独でまたは二種以上組合せて使用することができ、中でも耐熱性や導電性の観点から、第4級アンモニウム塩やスルホン酸塩、ポリエーテルエステルアミドなどが好適に用いられる。
また、基層中には、必要に応じて、可塑剤、酸化防止剤、分解防止剤、結晶制御剤、粗さ調整剤、架橋剤、顔料、フィラー、エラストマーなどの添加剤を添加することができる。
【0037】
(基層の形成方法)
基層は、例えば以下の方法により形成することができる。樹脂として熱可塑性樹脂を用いる場合、導電剤であるイオン性界面活性剤と、樹脂と、必要に応じて添加剤とを混合し、2軸の混練装置などを用いて溶融混練して、半導電性のペレットを作製する。次に、該ペレットを溶融押出により、シート形状、フィルム形状またはシームレスベルト形状に押出すことにより、半導電性フィルムを得ることができる。また、熱プレスや射出成形によって成形することもでき、形成したプリフォームを延伸ブローすることによって、半導電性フィルムを得ることができる。基層の厚さは、20μm以上500μm以下が好ましく、30μm以上150μm以下がより好ましい。
【0038】
このようにして得られた基層の電気抵抗としては、100V印加時の体積抵抗率が1.0×10Ω・cm以上1.0×1012Ω・cm以下であることが好ましい。また、表面抵抗率が、1.0×10Ω/□以上1.0×1012Ω/□以下であることが好ましい。電気抵抗をこれらの半導電性領域内に制御することによって、低湿環境下や連続駆動時のチャージアップに伴う転写電圧不足による転写画像の不良を抑制できる。
【0039】
<電子写真装置>
次に、本開示に係る電子写真用ベルトを、中間転写ベルトとして電子写真装置に使用する例を、図2を用いて説明する。
図2は、本開示に係る中間転写ベルト200を使用したフルカラー電子写真装置の模式図である。中間転写ベルト200は、駆動ローラ兼2次転写対向ローラ201、張架ローラ202及び203の3本のローラによって支持されている。駆動ローラ兼2次転写対向ローラ201は、中間転写ベルト200を駆動するために、表層に摩擦抵抗の高いゴム層を設けている。該ゴム層は、体積抵抗率が1.0×10Ω・cm以下の導電性を有する。また、駆動ローラ兼2次転写対向ローラ201は、中間転写ベルト200を介して2次転写ローラ204と2次転写部を形成している。張架ローラ202はゴム層を設けており、該ゴム層は、体積抵抗率が1.0×10Ω・cm以下の導電性を有する。また、張架ローラ203は、金属ローラとすることができる。2次転写ローラ204は、中間転写ベルト200を介して、駆動ローラ兼2次転写対向ローラ201に押圧される。2次転写ローラ204としては、体積抵抗率が1.0×10Ω・cm以上1.0×10Ω・cm以下の弾性ローラを用いることができる。張架ローラ202、203、及び2次転写ローラ204は、中間転写ベルト200に従動して回転する。
【0040】
本開示に係る電子写真装置は、トナー像を形成する感光ドラムと、該感光ドラムと接して該トナー像が1次転写される中間転写ベルトと、該中間転写ベルトに対向し、記録媒体に該トナー像を2次転写する2次転写部材と、を備える。該2次転写部材は、2次転写用の電圧印加可能な電源を有する。該中間転写ベルトとして、本開示に係る電子写真用ベルトを用いることができる。該電源は、該2次転写部材に電圧を印加することで、該2次転写部材から該中間転写ベルトを介して該感光ドラムに電流を流すことにより、該感光ドラムから該中間転写ベルトに該トナー像を1次転写させる。このように、本開示においては、1次転写用電源と2次転写用電源が共通化されている。
【0041】
本開示に係る電子写真装置について、より具体的に説明する。本開示に係る電子写真装置は、イエロー色の画像を形成する画像形成部205a、マゼンタ色の画像を形成する画像形成部205b、シアン色の画像を形成する画像形成部205c、ブラック色の画像を形成する画像形成部205dの画像形成部を備えている。画像形成部205aを例として、以下に詳細な説明をする。図3は、画像形成部205aの拡大模式図である。画像形成部205aは、像担持体である感光ドラム206aを有しており、所定のプロセススピードで回転駆動される。感光ドラム206aの周囲には、帯電部材である帯電ローラ207a、トナー208aが収納された現像部材209a、そしてドラムクリーニング部材210aが設置されている。さらに、感光ドラム206aの周囲には、帯電ローラ207aと現像部材209aの間に、露光部材211aが設置されている。感光ドラム206a上を帯電ローラ207aにより帯電し、帯電した静電荷像担持体を露光部材211aで露光して静電潜像(トナー像)が形成される。その後、現像部材209aにおいて摩擦帯電したトナー208aにより静電潜像が現像され、1次転写電圧により、各画像形成部に対向する位置に設置される中間転写ベルト200に転写される(以下、「1次転写」と称する)。画像形成部205b、205c及び205dにおいても同様に、中間転写ベルト200の回転と共に、同期を取りながら1次転写が行われて、4色のトナー合成像が形成される。その際、画像形成部205bと205cの間に、中間転写ベルト200を介して、画像形成部に対向する位置に、1次転写対向部材である金属ローラ212を1つ以上有することが好ましい。対向する該画像形成部に対して、中間転写ベルト200を押圧する金属ローラ212によって1次転写部を形成することで、1次転写部幅(ニップ)を広く安定させることができる。
【0042】
紙の如き記録媒体213は、中間転写ベルト200上の、4番目の画像形成部205dの位置よりも下流となる位置に供給される。同位置には、2次転写ローラ204(2次転写部材)が配置されている。なお、中間転写ベルト200上におけるトナー像の記録媒体への転写が生じるところの、中間転写ベルト200と2次転写ローラ204とで形成されている間隙及びその近傍を、2次転写部と称する。2次転写部は、図2に示すように駆動ローラ兼2次転写対向ローラ201と2次転写ローラ204とのニップを含み構成されていることが好ましい。中間転写ベルト200上に形成されたトナー合成像の直前の非画像部が2次転写部に到達すると、2次転写ローラ204に電流を供給する電圧電源214から、トナーと反対極性の電圧が印加される。そして、記録媒体213が、図2の矢印Vfの方向で2次転写部を通過する際に、中間転写ベルト200上の4色のトナー合成像が、記録媒体213上に一括して転写される。この転写を「2次転写」と称する。2次転写が行われた記録媒体213は、定着ユニット(不図示)にて定着処理されて、カラー画像となる。一方、2次転写されずに中間転写ベルト200上に残ったトナーは、張架ローラ202が配置されているベルト表面に任意のタイミングで当接するクリーニングブレード215により掻き取られ、廃トナーボックス216に回収される。このようにして、中間転写ベルト200の表面は初期状態に戻る。
【0043】
本開示に係る電子写真装置は、電圧電源214から、2次転写に必要な転写電圧に加え、1次転写に必要な転写電圧も得ている。本開示における中間転写ベルト200は、例えば、ベルトの内周面に導電層を有している。また、図2に示すように、中間転写ベルトの内周面で当接する金属ローラ212は、定電圧素子であるツェナーダイオード217に接続され、接地している。そのため、電圧電源214から印加された電圧により、中間転写ベルトの導電層の電位が周方向で一定となる。その結果、各画像形成部205a、205b、205c及び205dにおける感光ドラムと中間転写ベルトの電位差は略同等となり、各感光ドラムへ流れる電流も略同等となり、1次転写が可能となる。なお、画像形成時の温度や湿度などの環境変動によって記録媒体自体の抵抗値が変わるため、2次転写電圧は、ある範囲で変更させることが好ましい。本開示に係る電子写真装置においては、このような2次転写電圧の変動、例えば、2次転写電圧がより上昇した場合でも、ツェナーダイオード217を接続しているため、ツェナー電位を超えると電流が流れる。これにより、導電層の電位を一定に保つことができ、1次転写性を安定させることができる。具体的には、該電圧電源214の印加電圧を1000~3500V、ツェナー電位を220~300Vとすることが好ましい。本開示によれば、上記転写構成を有することにより、1つの転写電源により、1次転写と2次転写を安定的に行うことができる。
【0044】
本開示の一態様によれば、転写用の電源数を減らした電子写真画像形成装置に適用した場合にも高品位な電子写真画像を安定して形成し得る、電子写真用ベルトを得ることができる。また、本開示の他の態様によれば、転写用の電源数を減らした場合にも、高品位な電子写真画像を安定して形成することができる電子写真画像形成装置を得ることができる。
【実施例
【0045】
以下、実施例及び比較例について説明する。
なお、以下の実施例及び比較例において、塗料中の材料が溶剤により希釈・分散されている場合があるが、各材料の使用量(質量部)は、特に明示しない限り不揮発分に関する量であって、溶剤(揮発分)が除かれた量を意味する。
また、表1-1には、実施例1~15、比較例1~8、及び参考例1に係る電子写真用ベルトNo.1~24の導電層に用いた材料を記載した。表1-2には、実施例1~15、比較例1~8、及び参考例1に係る電子写真用ベルトNo.1~24に係る基層に用いた材料を記載した。表2には、電子写真用ベルトNo.1~24の評価結果を記載した。
【0046】
[実施例1]
(基層の形成)
基層の形成には、以下の原料を用いた。
・ポリエステル樹脂としてポリエチレンナフタレート(商品名:テオネックスTN8050SC、帝人社製)(以下、「PE(1)」と称す)。
・導電剤としてポリエーテルエステルアミド(商品名:TPAE-10HP-10、株式会社T&K TOKA製)(以下、「PEEA」と称す)。
・パーフルオロブタンスルホン酸カリウム(商品名:エフトップKFBS、三菱マテリアル電子化成社製)(以下、「KFBS」と称す)。
なお、PE(1)の融点は、262℃であった。
上記のPE(1)/PEEA/KFBSを80/18/2(質量%)の比率で混合し、二軸押出機(商品名:TEX30α、日本製鋼所社製)を用いて、290℃で5分間溶融混練して、PE(1)、PEEA及びKFBSからなる樹脂混合物を得た。得られた樹脂混合物を、カッター(商品名:ファンカッター、星プラスチック社製)を用いてペレット化し、樹脂混合物ペレット(ペレットサイズ=長径3mm×短径2mm)を得た。得られたペレットは、140℃で6時間乾燥させた。
次に、射出成形装置(商品名:SE180D、住友重機械工業社製)のホッパー内に、前記樹脂混合物の乾燥されたペレットを投入した。そして、シリンダ温度を290℃に設定し、スクリュー撹拌下で溶融させ、金型内に射出成形して試験管形状のプリフォームを作製した。得られたプリフォームをブロー成形機に投入し、金型温度を110℃に保ったブロー金型内で延伸棒とエアーの力でプリフォーム温度155℃、エアー圧力0.3MPa、延伸棒速度1000mm/sでブロー成形してブローボトルを得た。このブローボトルの両端をカットすることにより、エンドレスベルト形状の電子写真用基層を切り出した。基層の厚みは、70μmであった。
【0047】
(導電層のバインダー樹脂の調製)
ジメチルテレフタレート194質量部、ジメチルイソフタレート194質量部、エチレングリコール239質量部、ジエチレングリコール38質量部をオートクレーブに仕込んだ。次に、触媒としてテトラブチルチタネート0.2質量部をオートクレーブに入れ、190~220℃で5時間エステル交換反応を進行させた。次いで反応系を20分かけて0.67kPa(5mmHg)まで減圧し、この間280℃まで昇温した。更に13.3Pa(0.1mmHg)、280℃で重縮合反応を60分間行い、イソフタル酸及びテレフタル酸に由来するモノマー単位を有するポリエステル(1)を得た。DSCによる測定から、得られたポリエステル(1)のガラス転移温度は65℃であった。
【0048】
(導電層の形成)
前記ポリエステル(1)に、高導電性カーボンブラックとしてMHIブラック#273(商品名、御国色素社製)を含有量が11質量%となるように混合した。得られた混合物を、固形分濃度が15質量%になるようにメチルエチルケトンで希釈し、さらにレベリング剤としてサイマックUS-270(商品名、東亞合成社製)を0.5質量%加えてスターラーで撹拌して、均一な導電層形成用塗料を得た。この塗料を、前記基層の内周面にスプレー法で均一に塗布し、70℃で5分間乾燥させた。これにより、基層の内周面に、厚さ2μmの導電層が形成された電子写真用ベルトNo.1を得た。そして、電子写真用ベルトNo.1を、下記評価1~3に供した。
【0049】
<評価1.導電層の平均硬度の測定>
導電層の硬度は、微小押し込み硬さ試験機(商品名:ナノインデンターG200型、アジレント・テクノロジー社製)を用いて、バーコビッチ型圧子を使用して測定した。なお、測定領域は、導電層の基層に対向する面とは反対側の面から厚さ方向に10~20%の領域とし、この領域における平均硬度を算出した。結果を表2に示す。
【0050】
<評価2.抵抗率の測定>
導電層の表面抵抗率は、日本工業規格(JIS) K 6911に準拠し、抵抗率計(商品名:ハイレスタUP MCP-HT450型、三菱ケミカルアナリテック社製)を用いて測定した。導電層の表面抵抗率の測定は、温度23℃、相対湿度50%の環境下で、導電層の基層に対向する面とは反対側の面に対してURSプローブを当接させ、印加電圧10V、測定時間10秒の値を測定値とし、導電層の周方向を90°位相ごとに4点測定し、それら測定値の平均値を算出した。基層及び導電層を含む電子写真用ベルトの体積抵抗率の測定は、上記環境下で、外周面側からURプローブを当接させ、印加電圧100V、測定時間10秒の値を測定値とした。電子写真用ベルトの周方向を90°位相ごとに4点測定し、それら測定値の平均値を算出した。結果を表2に示す。尚、表2において、「UNDER」とは、測定下限値以下の値であることを示しており、およそ1.0×105Ω/□未満である。
【0051】
<評価3.剥がれ及び画像評価>
得られた電子写真用ベルトを、図2に示す構成を有する電子写真画像形成装置の中間転写ベルトとして用いて電子写真画像の形成を行って、二次転写に起因する画像不良の有無を観察した。
紙として、レターサイズ(幅216mm)の普通紙(商品名:Business4200、Xerox社、坪量:75g/m)を使用し、プリントモードは片面プリントモードで出力した2色のトナーのベタ画像を重ね合わせた2次色の画像を用いた。ここで2次色画像とは、レッド(R)、グリーン(G)、ブルー(B)の平均濃度200%の画像であり、75000枚出力し、10000枚目、30000枚目及び75000枚目を評価した。上記枚数出力後、電子写真用ベルトを画像形成装置から取り外し、導電層の表面を目視及び倍率20倍のルーペにより観察した。そして、導電層の剥がれの発生の有無を、下記基準により評価した。
ランクA:ルーペによる観察で導電層の剥がれが認められない。
ランクB:目視による観察で導電層の剥がれが認められない。
ランクC:目視による観察で導電層の剥がれが確認され、画像上に当該剥がれに起因する転写抜けが観察された。
ランクN:転写電圧の不足に伴う転写不良がみられる。
【0052】
[実施例2]
実施例1の導電層のバインダー樹脂の調製において、ジメチルテレフタレートをジメチルオルトフタレートに変更したこと以外は、実施例1と同様にしてポリエステル(2)を調製し、電子写真用ベルトNo.2を得た。DSCによる測定から、得られたポリエステル(2)のガラス転移温度は68℃であった。得られた電子写真用ベルトNo.2を前記評価1~3に供した。
【0053】
[実施例3]
実施例1の導電層のバインダー樹脂の調製において、ジメチルテレフタレート及びジメチルイソフタレートに代えて、ジメチルテレフタレート129質量部、ジメチルイソフタレート129質量部及びジメチルオルトフタレート129質量部に変更したこと以外は、実施例1と同様にしてポリエステル(3)を調製し、電子写真用ベルトNo.3を得た。DSCによる測定から、得られたポリエステル(3)のガラス転移温度は66℃であった。得られた電子写真用ベルトNo.3を前記評価1~3に供した。
【0054】
[実施例4]
実施例1の基層の成形において、ポリエチレンナフタレートを80質量%から72質量%に変更し、さらに、ポリエチレンテレフタレートとポリエチレンイソフタレートの共重合体として、市販のPIFG30(商品名:(株)ベルポリエステルプロダクツ社製)(以下、「PE(2)」と称する)を8質量%加えて基層を成形したこと以外は実施例1と同様にして電子写真用ベルトNo.4を得た。得られた電子写真用ベルトNo.4を前記評価1~3に供した。
【0055】
[実施例5、6]
導電層の形成において、導電層の導電性粒子を表1に示す種類及び含有量に変更した以外は、実施例4と同様にして電子写真用ベルトを得た。実施例5では導電性粒子としてのグラフェン(商品名:WGNP、ブリヂストンKBG社製)を、実施例6では金属酸化物であるアンチモン酸亜鉛(商品名:セルナックスCX-Z410K、日産化学工業社製)を用いて電子写真用ベルトNo.5~6を得た。得られた電子写真用ベルト5、6を前記評価1~3に供した。
【0056】
[実施例7]
(基層の形成)
実施例4と同様の方法で基層を成形した。
(導電層のバインダー樹脂の調製)
温度計、撹拌翼、リービッヒ冷却管を具備した2Lの4つ口フラスコにジメチルテレフタレート287部、ジメチルイソフタレート97部、エチレングリコール81部、ネオペンチルグリコール94部を投入した。また、触媒としてテトラブチルチタネート(TBT)を0.2部仕込み、190℃~230℃で3時間エステル交換反応を進行させた。次いで250℃に昇温後、減圧下に20分間重合し、ポリエステルジオールを得た。得られたポリエステルジオールを100部、メチルエチルケトンを45部、及びトルエンを55部仕込み、70℃で均一に溶解させた。次いで、ジフェニルメタンジイソシアナート30部を添加し、70℃のまま1時間反応させ、メチルエチルケトン及びトルエン各々50部で希釈した。ポリプロピレングリコールとして、ニューポールPP-1200(商品名:三洋化成工業社製)を49部添加し、70℃で30分間経過後、ジブチル錫ラウレート0.02部を添加し、70℃でさらに2時間反応させた。次いでメチルエチルケトン及びトルエンで希釈し、ネオペンチルグリコール3部を投入してさらに2時間反応させた後、メチルエチルケトン及びトルエンで希釈し、ポリエステルウレタン(1)を得た。DSCによる測定から、得られたポリエステルウレタン(1)のガラス転移温度は70℃であった。
(導電層の形成)
前記ポリエステルウレタン(1)に、高導電性カーボンブラックとしてMHIブラック#273(商品名、御国色素社製)をカーボンブラック含有量が11質量%となるように混合した。得られた混合物を、固形分濃度が15質量%になるようにメチルエチルケトンで希釈し、さらにレベリング剤としてのサイマックUS-270(商品名、東亞合成社製)を0.5質量%加えてスターラーで撹拌して、均一な導電層形成用塗料を得た。この塗料を、前記基層の内周面にスプレー法で均一に塗布し、70℃で5分間乾燥させた。これにより、基層の内周面に、厚さ2μmの導電層が形成された電子写真用ベルトNo.7を得た。得られた電子写真用ベルトNo.7を前記評価1~3に供した。
【0057】
[実施例8]
実施例7の導電層のバインダー樹脂の調製において、ポリエステルウレタン(1)を、オルトフタル酸およびイソフタル酸に由来するモノマー単位を有するバイロンUR8200(商品名、東洋紡社製)(以下、「ポリエステルウレタン(2)」と称す)に変えた。それ以外は、実施例7と同様にして調製し、電子写真用ベルトNo.8を得た。DSCによる測定から、ポリエステルウレタン(2)のガラス転移温度は73℃であった。得られた電子写真用ベルトNo.8を前記評価1~3に供した。
【0058】
[実施例9]
実施例7の導電層のバインダー樹脂の調製において、ポリエステルウレタン(1)を、テレフタル酸およびイソフタル酸に由来するモノマー単位を有するバイロンUR1400(商品名、東洋紡社製)(以下、「ポリエステルウレタン(3)」と称す)に変更した。それ以外は、実施例7と同様にして調製し、電子写真用ベルトNo.9を得た。DSCによる測定から、ポリエステルウレタン(3)のガラス転移温度は83℃であった。得られた電子写真用ベルトNo.9を前記評価1~3に供した。
【0059】
[実施例10~15]
導電層のバインダー樹脂の調製において、導電性粒子の量を表1に示す含有量に変更した以外は、実施例9と同様にして電子写真用ベルトNo.10~15を得た。得られた電子写真用ベルトNo.10~15を前記評価1~3に供した。
【0060】
[比較例1]
実施例4の導電層のバインダー樹脂の調製において、ジメチルイソフタレートを用いず、かつ、ジメチルテレフタレートを194部から388部に変更したこと以外は、実施例4と同様にしてポリエステル(4)を調製し、電子写真用ベルトNo.16を得た。得られた電子写真用ベルトNo.16を前記評価1~3に供した。
【0061】
[比較例2]
実施例4の導電層のバインダー樹脂の調製において、ジメチルテレフタレートを用いず、かつ、ジメチルイソフタレートを194部から388部に変更したこと以外は、実施例4と同様にしてポリエステル(5)を調製し、電子写真用ベルトNo.17を得た。得られた電子写真用ベルトNo.17を前記評価1~3に供した。
【0062】
[比較例3]
実施例8の導電層のバインダー樹脂の調製において、ジメチルイソフタレートを用いず、かつ、ジメチルオルトフタレートを194部から388部に変更したこと以外は、実施例8と同様にしてポリエステル(6)を調製し、電子写真用ベルトNo.18を得た。得られた電子写真用ベルトNo.18を前記評価1~3に供した。
【0063】
[比較例4]
基層の形成において、PE(1)をポリカーボネート(商品名:パンライトK-1300Y(融点250℃)、帝人社製)に変え、熱溶融混練温度を280℃に変えた。これら以外は比較例1と同様にして電子写真用ベルトNo.19を得た。得られた電子写真ベルトNo.19を前記評価1~3に供した。なお、表1-2において、本比較例にて用いたポリカーボネートは、「PC」と略記した。
【0064】
[比較例5]
(基層の形成)
基層の形成において、イオン導電剤(テトラブチルアンモニウムハイドロジェンサルフェィト,商品名:98131、広栄化学社製)(以下、「IL1」と称す)2.5質量%を含むポリフッ化ビニリデン樹脂組成物を用意した。該PVdF樹脂組成物を熱溶融押出し成形して、厚みが50μmのシート状フィルムを作製した。得られたシート状フィルムを円柱部材の外周面に2周巻き付け、さらに、前記シート状フィルムを巻き付けた円柱部材に、中空状の管状型部材を被せた。円柱部材と管状型部材の寸法及び熱膨張係数は、後述する温度200℃での加熱工程の際、円柱部材の外径と管状型部材の内径寸法の差が100μmになるように設計されている。次いで、温度200℃で60分加熱して厚み100μmのエンドレス形状の基層を得た。なお、表1-2において、本比較例に係る基層の形成に用いたポリフッ化ビニリデン樹脂組成物は「PVdF」を略記した。
この基層を用いた以外は、比較例1と同様にして電子写真用ベルトNo.20を得た。得られた電子写真用ベルトNo.20を前記評価1~3に供した。
【0065】
[比較例6]
(基層の形成)
比較例5と同様の方法で基層を成形した。
(導電層のバインダー樹脂の調製及び形成)
アクリルモノマーとしてジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(主成分)(以下、「アクリル」と称する)(商品名:アロニックスM-402、東亜合成社製)、高導電性カーボンブラックとしてMHIブラック#273(商品名、御国色素社製)を用いた。ここで、アクリルとカーボンブラックに対するカーボンブラック含有量が11質量%となるように混合した。得られた混合物を、固形分濃度が15質量%になるようにメチルエチルケトンで希釈し、さらにレベリング剤としてのサイマックUS-270(商品名、東亞合成社製)を0.5質量%加えてスターラーで撹拌して、均一な導電層形成用塗料を得た。
この塗料を、前記基層の内周面にスプレー法で均一に塗布し、60℃で1分間乾燥させて溶媒を除去した後、紫外線を照射して硬化させた。これにより、基層の内周面に、厚さ2μmの導電層が形成された電子写真用ベルトNo.22を得た。なお、紫外線源として、紫外線照射装置(商品名:UE06/81-3、アイグラフィックス社製)を使用した。波長365nmのピーク照度が150mW/cmで積算光量が2000mJ/cmになるまで紫外線を照射し、導電層のUV硬化を行った。得られた電子写真用ベルトNo.21を前記評価1~3に供した。
【0066】
[比較例7]
バインダー樹脂を、アクリルからポリアミドイミド(商品名:バイロマックスHR-14ET、東洋紡社製)に変えた以外は比較例6と同様にして電子写真用ベルトNo.22を得た。得られた電子写真用ベルトNo.22を前記評価1~3に供した。
【0067】
[参考例1]
実施例4の導電層において、導電性粒子を用いず成形した以外は実施例4と同様にして電子写真用ベルトNo.23を得た。得られた電子写真用ベルトNo.23を前記評価1~3に供した。
【0068】
【表1-1】
【0069】
【表1-2】
【0070】
【表2】
【0071】
以下に、表2に示した評価結果について述べる。
導電層中に少なくとも2種のフタル酸に由来するモノマー単位を有するポリエステル樹脂を含んでいる、
実施例1~15に係る電子写真用ベルトNo.1~15は、75000枚の画像出力後においても目視で確認し得るような導電層の剥離は認められなかった。また、75000枚目の画像には、導電層の剥離に起因する転写抜けも認められなかった。中でも、基層にも2種類のフタル酸のモノマー単位を有するポリエステル樹脂(PE(2))を含む実施例4に係る電子写真用ベルトNo.4は、導電層と基層との密着性が特に良好であった。また、30000枚目の画像出力後のルーペによる観察でも導電層の剥離が認められなかった。
さらに、実施例7~13に係る、電子写真用ベルトNo.7~13は、75000枚の出力後においても、ルーペによる観察でも、導電層の剥離は認められず、導電層と基層との密着性が特に優れていた。これは、これらの電子写真用ベルトが、導電層のバインダー樹脂としてポリエステルウレタン樹脂を用いており、ウレタン構造の導入が、基層との密着性の更なる向上に寄与しているものと考えられる。
一方、2種のフタル酸に由来するモノマー単位を有しないポリエステル樹脂を含んでいる、比較例1~7に係る電子写真用ベルトNo.16~22は、30000枚の画像出力後には、目視によって導電層の剥離が確認された。さらに、導電層の剥離に起因する転写抜けが30000枚目の画像に認められた。
また、参考例1に係る、電子写真用ベルトNo.23は、導電層が導電性粒子を含んでいないため、導電層の基層に対する密着性自体は優れていた。しかしながら、導電層の表面抵抗率が高かったため、転写電圧の不足により、初期より転写不良が認められた。
また、電子写真用ベルトNo.19~22において、導電層及び基層の樹脂の種類を変更したが、いずれも剥がれ評価において十分なレベルではなかった。
【符号の説明】
【0072】
100 電子写真用ベルト
101 基層
102 導電層
200 中間転写ベルト
204 2次転写ローラ
214 電圧電源
図1
図2
図3