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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-21
(45)【発行日】2024-07-01
(54)【発明の名称】電子装置及び接合方法
(51)【国際特許分類】
   H01R 13/652 20060101AFI20240624BHJP
   B41J 29/00 20060101ALI20240624BHJP
   G03G 15/00 20060101ALI20240624BHJP
   B23K 20/00 20060101ALI20240624BHJP
   H01R 4/64 20060101ALI20240624BHJP
【FI】
H01R13/652
B41J29/00 C
G03G15/00 680
B23K20/00 310L
H01R4/64 A
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2020081432
(22)【出願日】2020-05-01
(65)【公開番号】P2021176132
(43)【公開日】2021-11-04
【審査請求日】2023-04-24
(73)【特許権者】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100123559
【弁理士】
【氏名又は名称】梶 俊和
(74)【代理人】
【識別番号】100177437
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 英子
(72)【発明者】
【氏名】井出 拓美
(72)【発明者】
【氏名】飯田 将道
(72)【発明者】
【氏名】龍末 朗
(72)【発明者】
【氏名】米山 剛弘
(72)【発明者】
【氏名】園田 寿良
【審査官】関 信之
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-255422(JP,A)
【文献】実開昭62-129825(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01R 13/652
B41J 29/00
G03G 15/00
B23K 20/00
H01R 4/64
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の面と前記第1の面とは反対側の第2の面とを有するアース端子を有するインレットと、
筐体板金と、を備える電子装置であって、
前記インレットを保持し、前記アース端子の前記第1の面と拡散接合した第1の筐体板金と、
前記アース端子の前記第2の面と拡散接合した第2の筐体板金と、
を備え
前記インレットは、前記アース端子の一端に前記アース端子を保持するモールド部を有し、
前記アース端子は、前記第1の筐体板金及び前記第2の筐体板金と接合される接合部と前記アース端子の前記一端と前記モールド部とが接触している接触部との間に、前記接合部及び前記接触部よりも熱抵抗が増加するような部分を有することを特徴とする電子装置。
【請求項2】
前記第2の筐体板金は、前記第1の筐体板金と一体であることを特徴とする請求項1に記載の電子装置。
【請求項3】
前記第2の筐体板金は、前記第1の筐体板金とは別体であることを特徴とする請求項1に記載の電子装置。
【請求項4】
前記アース端子は、前記接合部と前記接触部との間に、前記接合部及び前記接触部よりも前記アース端子の短手方向における幅が小さい部分を有することを特徴とする請求項1から請求項3のうちのいずれか1項に記載の電子装置。
【請求項5】
前記アース端子は、前記接合部と前記接触部との間に、切り欠き部を有することを特徴とする請求項に記載の電子装置。
【請求項6】
前記アース端子は、前記接合部と前記接触部との間に、前記接合部及び前記接触部よりも厚みが薄い部分を有することを特徴とする請求項1から請求項3のうちのいずれか1項に記載の電子装置。
【請求項7】
前記アース端子は、前記接合部と前記接触部との間に、凹部を有することを特徴とする請求項に記載の電子装置。
【請求項8】
前記アース端子は、前記接合部と前記接触部との間に、少なくとも1つの孔が形成されていることを特徴とする請求項1から請求項3のうちのいずれか1項に記載の電子装置。
【請求項9】
前記電子装置は、記録材に画像形成を行う画像形成装置であり、
前記第1の筐体板金及び前記第2の筐体板金は、前記画像形成装置の筐体であることを特徴とする請求項1から請求項のいずれか1項に記載の電子装置。
【請求項10】
第1の面と前記第1の面とは反対側の第2の面とを有するアース端子を有するインレットと、筐体板金と、を有する電子装置の接合方法であって、
前記電子装置は、前記インレットを保持し、前記アース端子の前記第1の面に接する第1の筐体板金と、前記アース端子の前記第2の面に接する第2の筐体板金と、を有し、
前記第1の筐体板金に第1の電極を接触させ、前記第2の筐体板金に第2の電極を接触させ、前記第1の電極と前記第2の電極との間に力を加えて電流を流す接合工程を備え、
前記接合工程において、前記第1の筐体板金と前記アース端子の前記第1の面とが接合され、前記第2の筐体板金と前記アース端子の前記第2の面とが接合されることを特徴とする接合方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子装置及び接合方法に関し、特にACインレットを備える電子装置に関する。
【背景技術】
【0002】
画像形成装置等の電子装置は、一般にACインレットを有しており、ACインレットへ電源コードを嵌合することで電子装置に交流電力が供給される。電子装置の筐体に用いられている筐体板金は、電気的な性能を満足させるために、電子装置に設けられているACインレットのアース端子と電気的に締結されている。ここで、電気的な性能とは、例えば、装置内部に設けられた電気基板からの放射ノイズを遮断するためのシールド効果等である。筐体板金には、安価であることや加工のし易さ、入手が簡易である、比較的低い電気伝導率を有する、等の理由から、鉄が広く使用されている。一方、ACインレットのアース端子は、電流が流れることが前提であるため、低い電気伝導率であることが必須であり、また、入手が簡易である、かつ安価であることを理由に、銅が広く使用されている。
【0003】
ACインレットのアース端子と電子装置の筐体板金との電気的な締結方法においては、例えば特許文献1や特許文献2に示す構成が知られている。特許文献1には、筐体板金とACインレットのアース端子とが、ねじによって締結された構成が記載されている。しかし、ねじによる締結によって安全なアースの接続とするためには、スプリングワッシャ付きのM4ねじによって締結させる必要があり、筐体板金側にM4ねじを締めるための穴を形成しなければならない。加えて、作業者によるねじ止め作業が必要となる。特許文献2には、筐体板金とACインレットのアース端子とが、はんだ付けによって締結された構成が記載されている。しかし、はんだ付けによる締結は、はんだが必要なことに加え、作業者によるはんだ付け作業が必要となる。
【0004】
そこで、追加部品を必要としない締結方法として、溶接による締結が考えられる。一般に、異なる材質の金属同士を溶接する、いわゆる異種金属接合において、2つの金属材を重ね合わせ、一対の電極により2つの金属を挟んで加圧し電流を流すこと(以下、加圧通電という)で溶接する方法が知られている。また、例えば特許文献3には、次のような溶接によって機械的強度を確保する方法が記載されている。すなわち、アルミニウムとスチールのような融点が大きく異なる異種金属接合において、融点が高い金属で融点が低い金属を挟み込み、電極による加圧通電で発生する熱により融点が低い金属を溶かし、融点が高い金属同士を接触させ溶接する方法である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特許第3311061号公報
【文献】特許第5723992号公報
【文献】特表2016-523718号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、従来例をACインレットのアース端子と電子装置の筐体板金との締結に適用しようとした場合、以下のような課題がある。一般に、ACインレットのアース端子は錫メッキされた銅系材料でできており、加圧通電するための電極の母材である銅(Cu)とアース端子の錫(Sn)とが反応しやすいという性質がある。このため、締結部がCu・Sn系合金(青銅)に転化していき、Cu・Sn系合金は比較的脆性であるため、電極は溶接のたびに徐々に欠損し、電極の接触面積が変化していく。電極の接触面積の変化が大きくなると、溶接時に必要な電流が流れなくなり所望の発熱が得られなくなる。そのため、電極に研磨を施したり電極自体を交換したりする必要が生じ、生産性の低下につながる。
【0007】
また、異種金属接合においては、融点の高い金属同士は溶接されるものの、融点の低い金属と融点の高い金属とは溶接されておらず、それぞれの表面が互いに接触しているのみである。このため融点の低い金属と融点の高い金属との間において、信頼性の高い電気的導通を得ることが難しい。
【0008】
本発明は、このような状況のもとでなされたもので、ACインレットのアース端子と筐体板金との接合時に用いる電極の損耗を低減し生産性を向上させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上述した課題を解決するために、本発明は、以下の構成を備える。
【0010】
(1)第1の面と前記第1の面とは反対側の第2の面とを有するアース端子を有するインレットと、筐体板金と、を備える電子装置であって、前記インレットを保持し、前記アース端子の前記第1の面と拡散接合した第1の筐体板金と、前記アース端子の前記第2の面と拡散接合した第2の筐体板金と、を備え、前記インレットは、前記アース端子の一端に前記アース端子を保持するモールド部を有し、前記アース端子は、前記第1の筐体板金及び前記第2の筐体板金と接合される接合部と前記アース端子の前記一端と前記モールド部とが接触している接触部との間に、前記接合部及び前記接触部よりも熱抵抗が増加するような部分を有することを特徴とする電子装置。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、ACインレットのアース端子と筐体板金との接合時に用いる電極の損耗を低減し生産性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】実施例1のACインレットと筐体板金の構成を示す図、ACインレットのアース端子と筐体板金との接合時の様子を示す図
図2】実施例1のACインレットと筐体板金の構成を示す図、ACインレットのアース端子と筐体板金との接合時の様子を示す図
図3】実施例2のACインレットのアース端子の形状を示す図
図4】実施例3の電子装置としての画像形成装置の構成を示す図
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明を実施するための形態を、実施例により図面を参照しながら詳しく説明する。
【実施例1】
【0014】
実施例1のACインレットのアース端子と電子装置の筐体板金との接合(溶接)構成について図面を参照しながら説明する。実施例1では、ACインレットのアース端子と電子装置の筐体板金との接合において、ACインレットのアース端子表面の錫メッキと電極の材質である銅とが反応することによる、電極の損耗を減らし生産性を向上させる構成について説明する。
【0015】
[ACインレットのアース端子と電子装置の筐体板金との接合]
図1(a)は実施例1のACインレット5と電子装置100の筐体板金7の構成を説明した図である。なお、図1の手前側は電子装置100の内部側となっている。ACインレット5は、ライブ端子1、ニュートラル端子2、アース端子3、モールド部4を有している。アース端子3は、錫メッキされた銅系材料で構成されている。モールド部4は、ライブ端子1、ニュートラル端子2、アース端子3を保持し固定するための部材である。電子装置100は、第1の筐体板金6(以下、筐体板金6という)、筐体板金7を有している。筐体板金6は、ACインレット5の保持を兼ねている。筐体板金7は、筐体板金6とは別体で構成された板金であり、筐体板金6とビス8によって締結されている。すなわち、筐体板金6と筐体板金7とは電気的にも接続された状態となっている。
【0016】
筐体板金6は、亜鉛メッキ鋼板で構成されている。筐体板金6は、第1の金属材で形成された第1の部分6aと、第2の金属材で形成された第2の部分6bと、ACインレット5のモールド部4を保持する部分6cと、部分6cと部分6a、6bとを接続する部分6dとを有している。なお、実施例1では、第1の部分6aと第2の部分6bとが一体となっており、筐体板金6は第2の筐体板金としても機能する。
【0017】
図1(b)は、ACインレットのアース端子3と筐体板金6との接合時の様子を示す図であり、図1(a)の手前側から見た、アース端子3と筐体板金6との接合部分(溶接部分)を示す要部拡大図である。第1の電極9a(以下、電極9aという)、第2の電極9b(以下、電極9bという)は対象物に加圧力を加えて電流を流す(以下、加圧通電という)ための一対の電極である。アース端子3と筐体板金6とを接合する際には、電極9aと電極9bとの間にアース端子3及び筐体板金6を挟み、所定の加圧力を加えて電極9a、9bに電流を流す。このとき、図1(a)に示すように、筐体板金6がアース端子3を挟む位置は、モールド部4から所定の距離だけ離れた、アース端子3の先端側(他端側)の位置である。ACインレット5のアース端子3と第1の部分6aとが拡散接合(接合面の原子の拡散を利用した接合)された部分を接合部10aとする。ACインレット5のアース端子3と第2の部分6bとが拡散接合された部分を接合部10bとする。
【0018】
実施例1では、第1の部分6a及び第2の部分6bは、電子装置100の筐体板金6と一体に構成されている。具体的には、筐体板金6において、部分6dは、ACインレット5を避けつつアース端子3の先端(モールド部4とは反対側の端部)に向かって部分6cから連続してのびている。第1の部分6aは、部分6dに連続しており、アース端子3の第1の面3a(以下、面3aという)に接している。第2の部分6bは、屈曲部6eを介して第1の部分6aに連続しており、アース端子3の面3aとは反対側の第2の面3b(以下、面3bという)に接している。このようにして、第1の部分6a及び第2の部分6bは筐体板金6(詳細には部分6c)と一体に構成されている。そして、電子装置100の筐体板金6、詳細には第1の部分6aと第2の部分6bとが、ACインレット5のアース端子3を挟み込むように配置されている。
【0019】
さらに一対の電極9a及び電極9bがそれぞれ第1の部分6a及び第2の部分6bに接触するように配置され、図1(b)中の矢印方向に加圧力を加えながら電流を流す。すなわち、電極9a及び電極9bは、アース端子3とは直接接触しない構成である。これにより、ACインレット5のアース端子3の面3aと第1の部分6aとの接触面、及びACインレット5のアース端子3の面3bと第2の部分6bとの接触面が、それぞれ発熱する。これにより、拡散接合された接合部10aと接合部10bが形成される(接合工程)。拡散接合は異種金属の接合方法の1つであり、異種金属を接触させ、その状態で接合金属同士を融点以下の温度に加熱して、原子の拡散を行うものである。拡散接合は原子の相互拡散を基礎にしているために、接合においては接合すべき金属の接触面の状態が重要な要件となる。具体的には接触面に酸化物や他の汚染物質が存在していないことが重要である。
【0020】
実施例1において、ACインレット5のアース端子3は、錫メッキがなされている。一方、電子装置100の筐体板金6の第1の部分6a及び第2の部分6bは、亜鉛メッキがなされている。一対の電極9a及び電極9bにより加圧通電を行うことで、ACインレット5のアース端子3の面3aと第1の部分6aとの接触面、及びACインレット5のアース端子3の面3bと第2の部分6bとの接触面が発熱する。そうすると、ACインレット5のアース端子3の表面の錫メッキと、第1の部分6a及び第2の部分6bの表面の亜鉛メッキとが、それぞれ融点以上に達し溶解する。これらのメッキが溶解すると表面の酸化物や汚染物質が融液に混入する。そして、電極9a及び電極9bによる加圧によりACインレット5のアース端子3の面3aと第1の部分6aとの接触面、及びACインレットのアース端子3の面3bと第2の部分6bとの接触面から、前述の融液が外側に押し出される。そして錫メッキが溶解したことで表面化したACインレット5のアース端子3の銅と、亜鉛メッキが溶解したことで表面化した第1の部分6a及び第2の部分6bの鉄との、清浄な面同士が接触している箇所において、異種金属間の拡散接合が行われる。
【0021】
このように、ACインレット5のアース端子3を電子装置100の筐体板金6で挟み込み、1対の電極9a及び電極9bにより加圧通電する構成にする。これにより、1対の電極9a及び電極9bとACインレット5のアース端子3とを直接接触させずに、ACインレット5のアース端子3と、筐体板金6の第1の部分6a及び第2の部分6bとを接合することができる。そのため、電極9a及び電極9bの材質である銅とACインレット5のアース端子3の表面の錫メッキとが反応することによる、電極9a及び電極9bの損耗が防止されるため、電極9a及び電極9bの研磨や交換作業が低減し生産性を向上させることができる。
【0022】
図1(b)の接合構成によりACインレット5のアース端子3が接合された電子装置100の筐体板金6は、筐体板金6とは別体の筐体板金7に2つのビス8により締結されている。これにより、電子装置100の筐体板金6とは別体で構成された筐体板金7においても、電子装置100の筐体板金6を介して、ACインレット5のアース端子3との電気的接続が確保できる。なお、図1では、第1の金属材で形成された第1の部分6aと第2の金属材で形成された第2の部分6bとが一体で構成された場合について示した。しかし、第1の金属材で形成された第1の部分6aと第2の金属材で形成された第2の部分6bとは別体で構成されていてもよい。
【0023】
[第1の部分と第2の部分とが別体で構成されている場合]
図2(a)は、第1の部分と第2の部分とが別体で構成されている場合のACインレットと筐体板金との構成を示す図である。図1と同じ構成には同じ符号を付し説明を省略する。筐体板金12は電子装置100の筐体板金であり、亜鉛メッキ鋼板で構成されている。第1の筐体板金12(以下、筐体板金12という)は、第1の金属材で形成された第1の部分12aと、ACインレット5のモールド部4を保持する部分12bと、第1の部分12aと部分12bとを接続する部分12cとを有している。
【0024】
第2の筐体板金13(以下、筐体板金13という)は電子装置100の筐体板金12とは別体で構成された電子装置100内の筐体板金であり、亜鉛メッキ鋼板で構成されている。筐体板金13は、第2の金属材で形成された第2の部分13aと、第2の部分13aに連続する部分13bとを有している。別体で構成された2つの筐体板金12と筐体板金13とは、ACインレット5のアース端子3を挟み込むように配置されている。具体的には、筐体板金12において、部分12cは、ACインレット5を避けつつアース端子3の先端に向かって部分12bから連続してのびている。第1の部分12aは、部分12cに連続しており、アース端子3の面3aに接している。筐体板金13において、部分13aは、部分13bに連続しており、アース端子3の面3bに接している。
【0025】
図2(b)は、ACインレットのアース端子3と筐体板金12、13との接合時の様子を示す図である。また、第1の金属材で形成された第1の部分12aと第2の金属材で形成された第2の部分13aとが別体で構成されたときの、ACインレット5のアース端子3と筐体板金12、13の接合構成を説明した図である。このような構成において、第1の部分12aと第2の部分13aとはそれぞれ別体で構成された電子装置100の筐体板金12と筐体板金13により構成されており、ACインレット5のアース端子3を挟み込むように配置されている。図1(b)と同様に、電極9a及び電極9bにより、図2(b)中の矢印方向に加圧しながら電流を流す。これにより、ACインレット5のアース端子3の面3aと第1の部分12aとの接触面が、及びACインレット5のアース端子3の面3bと第2の部分13aとの接触面がそれぞれ発熱し、拡散接合された接合部10aと接合部10bとが形成される。
【0026】
そして図2(b)に示した構成によりACインレット5のアース端子3と筐体板金12、及びACインレット5のアース端子3と筐体板金13のそれぞれが接合される。これにより、別体で構成された2つの筐体板金12と筐体板金13とをビス等で締結しなくても、ACインレットのアース端子3と、2つの筐体板金12及び筐体板金13との電気的接続を確保することができる。
【0027】
以上、説明したように、ACインレット5のアース端子3を電子装置100の筐体板金6(12、13)で挟み込んで接合することにより、電極9a及び電極9bとACインレットのアース端子3とが接触しない構成とする。これにより、電極9a及び電極9bの材質である銅と、ACインレット5のアース端子3の表面の錫メッキとが反応することによる電極9a及び電極9bの損耗を低減でき、生産性を向上させることができる。
【0028】
以上、実施例1によれば、ACインレットのアース端子と筐体板金との接合時に用いる電極の損耗を低減し生産性を向上させることができる。
【実施例2】
【0029】
[ACインレットのアース端子の形状]
ACインレットのアース端子と筐体板金との接合(溶接)において、電極による加圧通電により生じる発熱がACインレットのモールド部に伝わることで、ACインレットのモールド部の溶解が生じるおそれがある。そこで、実施例2では、ACインレットのアース端子と筐体板金との接合時の熱による、ACインレットのモールド部の溶解を防止する構成について説明する。図3は実施例2のACインレット5のアース端子31、32、33の形状を示した図であり、実施例1で説明した構成と同じ構成には同じ符号を付し説明を省略する。以下の説明において、ACインレット5のアース端子31~33の一端とACインレット5のモールド部4とが接触する部分を接触部4aとする。また、実施例1で説明したような、ACインレット5のアース端子31~33と第1の金属材で形成された第1の部分又は第2の金属材で形成された第2の部分である筐体板金との接合部を、接合部11とする。なお、図3では接合部11はアース端子3の図面右側側面にのみ図示しているが、実際にはアース端子3の図面左側側面にも存在している。
【0030】
図3(a)の形状)
ACインレット5のアース端子31は、筐体板金の第1の部分と接する面31aと、筐体板金の第2の部分と接する面31bと、側面31cと、側面31dとを有した板状の形状となっている。側面31cの一部には、面31a及び面31bの端部から内側に向かって切り欠き部31eが設けられている。また、側面31dの一部には、面31a及び面31bの端部から内側に向かって切り欠き部31fが設けられている。これにより、ACインレット5のアース端子3aは、接合部11と接触部4aとの間が、接合部11及び接触部4aと比較して細く構成される。これにより、接合部11と接触部4aとの間の熱抵抗が増加するため、接合時に生じる接合部11の発熱が接触部4aに伝わり、ACインレットのモールド部4が溶解してしまうことを防止できる。
【0031】
図3(b)の形状)
ACインレット5のアース端子32は、筐体板金の第1の部分と接する面32aと、筐体板金の第2の部分と接する面32bと、側面32cと、側面32dとを有した板状の形状となっている。面32aには、側面32cから側面32dに向かって凹部32eが設けられている。すなわち、図3(b)のアース端子32は、凹部32eにおける厚みが接触部4a及び接合部11における厚みよりも薄くなっている。ここで、アース端子32の厚みとは、面32aと面32bとの距離、言い換えれば、側面32c及び側面32dの短手方向の長さ(幅)をいう。
【0032】
図3(b)において、ACインレット5のアース端子32は、接合部11と接触部4aとの間が、接合部11及び接触部4aと比較して薄くなるように構成されている。これにより、接合部11と接触部4aとの間の熱抵抗が増加するため、接合時に生じる接合部11の発熱が接触部4aに伝わり、ACインレットのモールド部4が溶解してしまうことを防止できる。なお、図3(b)では、凹部32eが面32aに設けられている構成について説明したが、凹部32eは面32bに設けられてもよいし、両方の面32a、32bに設けられてもよい。また、図3(b)では、凹部32eの断面形状はコの字型であるが、凹部32eにおける厚みが接触部4a及び接合部11における厚みよりも薄い形状であればよく、例えば断面円弧状等、他の形状であってもよい。更に、凹部32eは、側面32cから側面32dまでの長さを有する構成でなくてもよく、アース端子33の長手方向において接合部11と接触部4aの間に設けられた凹部であればよい。
【0033】
図3(c)の形状)
ACインレット5のアース端子33は、筐体板金の第1の部分と接する面33aと、筐体板金の第2の部分と接する面33bと、側面33cと、側面33dとを有した板状の形状となっている。面32a及び面32bには、両面を貫通する孔33eが設けられている。孔33eは、アース端子33の長手方向において接触部4aと接合部11との間に設けられている。
【0034】
図3(c)において、ACインレット5のアース端子33は、接合部11と接触部4aとの間に孔33eを設けている。これにより、接合部11と接触部4aとの間の熱抵抗が増加するため、接合時に生じる接合部11の発熱が接触部4aに伝わり、ACインレットのモールド部4が溶解してしまうことを防止できる。なお、図3(c)では接合部11と接触部4aとの間に孔33eを1つ設ける構成を示しているが、孔を複数設けてもよい、すなわち少なくとも1つの孔が設けられていればよい。更に、図3(c)では、孔33eの形状は矩形形状であるが、接触部4aと接合部11との間に孔が設けられていればよく、例えば円形状等、他の形状であってもよい。
【0035】
以上、説明したように、ACインレット5のアース端子31~33の形状により、アース端子31~33と筐体板金との接合部11と、アース端子31~33とモールド部4との接触部4aとの間の熱抵抗を増加させる。これにより、接合部11の熱が接触部4aに伝わり、モールド部4が溶解してしまうことを防止することができる。
【0036】
以上、実施例2によれば、ACインレットのアース端子と筐体板金との接合時に用いる電極の損耗を低減し生産性を向上させることができる。
【実施例3】
【0037】
[レーザビームプリンタの説明]
図4に画像形成装置の一例として、レーザビームプリンタの概略構成を示す。レーザビームプリンタ1000(以下、プリンタ1000という)は、感光ドラム1010、帯電部1020、現像部1030を備えている。感光ドラム1010は、静電潜像が形成される像担持体である。帯電部1020は、感光ドラム1010を一様に帯電する。現像部1030は、感光ドラム1010に形成された静電潜像をトナーにより現像することでトナー像を形成する。感光ドラム1010上(像担持体上)に形成されたトナー像をカセット1040から供給された記録材としてのシートPに転写部1050によって転写し、シートPに転写した未定着のトナー像を定着器1060によって定着してトレイ1070に排出する。この感光ドラム1010、帯電部1020、現像部1030、転写部1050が画像形成部である。また、プリンタ1000は、電源装置1080を備え、電源装置1080からモータ等の駆動部と制御部5000へ電力を供給している。プリンタ1000は、筐体板金7と、筐体板金7とビス8により締結された筐体板金6(12)と、筐体板金6(12)によって保持されたACインレット5と、を有している(図1参照)。ACインレット5に電源コード(不図示)が嵌合されることで、電源装置1080に交流電力が供給される。制御部5000は、CPU(不図示)を有しており、画像形成部による画像形成動作やシートPの搬送動作等を制御している。なお、本発明のACインレット5及び筐体板金6を適用することができる画像形成装置は、図4に例示された構成に限定されない。
【0038】
以上、実施例3によれば、ACインレットのアース端子と筐体板金との接合時に用いる電極の損耗を低減し生産性を向上させることができる。
【符号の説明】
【0039】
3 アース端子
3a、3b 面
5 ACインレット
6 筐体板金
6a、6b 部分
図1
図2
図3
図4