(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-21
(45)【発行日】2024-07-01
(54)【発明の名称】レンズ装置、撮像装置、カメラシステム、およびプログラム
(51)【国際特許分類】
G02B 7/04 20210101AFI20240624BHJP
G02B 7/08 20210101ALI20240624BHJP
G03B 5/00 20210101ALI20240624BHJP
G03B 9/02 20210101ALI20240624BHJP
H04N 23/55 20230101ALI20240624BHJP
H04N 23/66 20230101ALI20240624BHJP
【FI】
G02B7/04 E
G02B7/08 B
G03B5/00 J
G03B9/02 B
H04N23/55
H04N23/66
(21)【出願番号】P 2020083442
(22)【出願日】2020-05-11
【審査請求日】2023-04-14
(73)【特許権者】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100110412
【氏名又は名称】藤元 亮輔
(74)【代理人】
【識別番号】100104628
【氏名又は名称】水本 敦也
(74)【代理人】
【識別番号】100121614
【氏名又は名称】平山 倫也
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 直城
【審査官】登丸 久寿
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2014/065036(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2019/0379389(US,A1)
【文献】特開2013-077915(JP,A)
【文献】特開平10-133246(JP,A)
【文献】特開2017-139689(JP,A)
【文献】特開2011-221519(JP,A)
【文献】国際公開第2012/131794(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 7/04
G02B 7/08
G03B 5/00
G03B 9/02
H04N 23/55
H04N 23/66
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被駆動部材を駆動する駆動部と
、
前記駆動部の制御方式を切り替える切替部と
、
前記駆動部が駆動中であるか否かを判定し、前記切替部に前記制御方式を切り替えさせる制御部と、を有し、
前記制御部は、前記制御方式を切り替える命令を取得した際に、前記駆動部が駆動中である場合、前記切替部に前記制御方式を切り替えさせ、前記駆動部が駆動停止中である場合、前記切替部に前記制御方式を切り替えさせないことを特徴とするレンズ装置。
【請求項2】
前記駆動部の制御方式は、パルス幅変調制御方式、およびリニア制御方式であることを特徴とする請求項1に記載のレンズ装置。
【請求項3】
前記レンズ装置は撮像装置に着脱可能であり、
前記制御部は、前記制御方式を切り替える命令を前記撮像装置から受信することを特徴とする請求項1または2に記載のレンズ装置。
【請求項4】
前記被駆動部材は、絞り、振れ補正レンズ、及びフォーカスレンズの少なくとも1つを含むことを特徴とする請求項1乃至3の何れか一項に記載のレンズ装置。
【請求項5】
前記駆動部は、ステッピングモータであることを特徴とする請求項1乃至4の何れか一項に記載のレンズ装置。
【請求項6】
被駆動部材を駆動する駆動部と
、
前記駆動部の制御方式を切り替える切替部と
、
前記駆動部が駆動中であるか否かを判定し、前記切替部に前記制御方式を切り替えさせる制御部と、を有し、
前記制御部は、前記制御方式を切り替える命令を取得した際に、前記駆動部が駆動中である場合、前記切替部に前記制御方式を切り替えさせ、前記駆動部が駆動停止中である場合、前記切替部に前記制御方式を切り替えさせないことを特徴とする撮像装置。
【請求項7】
前記駆動部の制御方式は、パルス幅変調制御方式、およびリニア制御方式であることを特徴とする請求項6に記載の撮像装置。
【請求項8】
前記被駆動部材は、絞り、振れ補正レンズ、及びフォーカスレンズの少なくとも1つを含むことを特徴とする請求項6または7に記載の撮像装置。
【請求項9】
前記駆動部は、ステッピングモータであることを特徴とする請求項6乃至8の何れか一項に記載の撮像装置。
【請求項10】
請求項1乃至
5の何れか一項に記載のレンズ装置と、
前記レンズ装置により形成された光学像を光電変換する撮像素子とを有することを特徴とするカメラシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レンズ装置、撮像装置、カメラシステム、およびプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
撮像装置内に設けられたフォーカス、絞り、手振れ補正機構、およびシャッターなどの被駆動部は、アクチュエータにより駆動される。アクチュエータの駆動を制御するための方式として、パルス幅変調制御方式(PWM制御方式、デジタル制御方式、以下、PWM制御)、およびリニア制御方式(DC制御方式、アナログ制御方式、以下リニア制御)が知られている。PWM制御は電力損失が少なく所定の電圧を出力できるが、PWM周期ごとにスイッチング動作が入るため、ノイズが発生してしまう。
【0003】
近年、撮像装置では、撮像センサの高画素化と高感度化が進み、撮像センサから出力される信号に対するノイズの影響が大きくなっている。このような状況では、PWM制御によるノイズの影響を無視できない撮影条件も発生する。
【0004】
特許文献1では、撮影時の被写体条件によって、パルス幅変調制御方式とリニア制御方式とを切り替え可能なドライバを有する撮像装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1の撮像装置では、制御方式を切り替えた際の出力信号の信号値の差分によりアクチュエータが誤作動し、結果として画像や動画に悪影響を与える恐れがある。
【0007】
本発明は、画像や動画に与える影響を抑制可能なレンズ装置、撮像装置、カメラシステム、およびプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一側面としてのレンズ装置は、被駆動部材を駆動する駆動部と、駆動部の制御方式を切り替える切替部と、駆動部が駆動中であるか否かを判定し、切替部に制御方式を切り替えさせる制御部と、を有し、制御部は、制御方式を切り替える命令を取得した際に、駆動部が駆動中である場合、切替部に制御方式を切り替えさせ、駆動部が駆動停止中である場合、切替部に制御方式を切り替えさせないことを特徴とする。
【0009】
また、本発明の他の側面としての撮像装置は、被駆動部材を駆動する駆動部と、駆動部の制御方式を切り替える切替部と、駆動部が駆動中であるか否かを判定し、切替部に制御方式を切り替えさせる制御部と、を有し、制御部は、制御方式を切り替える命令を取得した際に、駆動部が駆動中である場合、切替部に制御方式を切り替えさせ、駆動部が駆動停止中である場合、切替部に制御方式を切り替えさせないことを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、画像や動画に与える影響を抑制可能なレンズ装置、撮像装置、カメラシステム、およびプログラムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明の実施形態に係るカメラシステムの構成図である。
【
図2】絞り駆動回路に含まれるドライバICとレンズ制御CPUとの関係を示す図である。
【
図5】PWM出力からリニア出力に切り替えたときの電圧変動図である。
【
図6】ACT制御方法切替命令と実行タイミングを示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の好ましい実施の形態を、添付の図面に基づいて詳細に説明する。各図において、同一の部材については同一の参照番号を付し、重複する説明は省略する。
【0013】
図1は、本発明の実施形態に係るカメラシステムの構成図である。カメラシステムは、レンズ装置(以下、交換レンズ)100、および交換レンズ100が着脱可能かつ通信可能に装着される撮像装置(以下、カメラ本体)200を有する。なお、本発明は、交換レンズ式のカメラシステムだけでなく、レンズ一体型の撮像装置(デジタルスチルカメラおよびビデオカメラなど)にも適用可能である。
【0014】
交換レンズ100において、撮影光学系は、被写体側(物体側)から像側へ順に配置された、固定フロントレンズ101、変倍レンズ102、絞り103、手振れ補正レンズ104、およびフォーカスレンズ105を含む。なお、
図1では、それぞれのレンズが1つのレンズ素子により構成されているが、実際には1つ又は複数のレンズ素子を含む。
【0015】
変倍レンズ102は、不図示のズームリングが回転操作され、カム環が回転すると、光軸方向へ移動する。隣り合うレンズ群の間隔が変化することで広角から望遠までの焦点距離での撮影が可能となる。ズームリングの回転操作量は、不図示のセンサによって検出される。変倍レンズ102は、ステッピングモータやDCモータ等により構成されるズームアクチュエータの駆動に伴い、光軸方向へ移動し、変倍を行ってもよい。
【0016】
絞り(被駆動部材)103は、ステッピングモータやDCモータ等により構成される絞りアクチュエータ(駆動部)106の駆動に伴い、開口径を変化させることができる。絞り駆動回路(切替部)107は、絞りアクチュエータ106に駆動電圧と電流を供給する。光量調整装置116は、絞り103、絞りアクチュエータ106、および絞り駆動回路107からなる。
【0017】
手振れ補正レンズ(被駆動部材)104は、ステッピングモータやボイスコイルモータ等により構成される手振れ補正アクチュエータ(駆動部)108の駆動に伴い、シフト方向へ移動し、手振れ補正を行う。手振れ補正駆動回路(切替部)109は、手振れ補正アクチュエータ108に駆動電圧と電流を供給する。手振れ補正装置117は、手振れ補正レンズ104、手振れ補正アクチュエータ108、および手振れ補正駆動回路109からなる。
【0018】
フォーカスレンズ(被駆動部材)105は、ステッピングモータ、ボイスコイルモータ、および超音波モータ等により構成されるフォーカスアクチュエータ(駆動部)110の駆動に伴い光軸方向へ移動し、焦点調節を行う。フォーカス駆動回路(切替部)111は、フォーカスアクチュエータ110に駆動電圧と電流を供給する。焦点調整装置118は、フォーカスレンズ105、フォーカスアクチュエータ110、およびフォーカス駆動回路111からなる。
【0019】
交換レンズ100がカメラ本体200に装着されると、交換レンズ100に設けられた電気的接点113a,113b,113cはそれぞれ、カメラ本体200に設けられた電気的接点207a,207b,207cに接続される。これにより、交換レンズ100とカメラ本体200との間での各種情報の通信を行うことができる。
図1では、3線式のシリアル通信を行う場合を示しているが、本発明はこれに限定されない。本実施形態では、レンズ制御CPU112、およびカメラ制御CPU206は、カメラ制御CPU206をクロックマスターとしてシリアル通信を行う。
【0020】
交換レンズ100は、固有情報として、光学情報(焦点距離、F値(絞り値)、フォーカス敏感度、ピント補正量等)や特性情報を保持しており、これらの情報をカメラ本体200に送信することができる。なお、「光学情報」は、ズーム、フォーカス、および絞り値等の状態に応じて変化する光学的な固有情報(フォーカスレンズ敏感度やピント補正量情報等)を意味する。また、「特性情報」は、基本的に上記状態によって変化しない固有情報を意味する。例えば、機種や製造番号を特定するための識別情報(レンズID)、最大通信速度、開放F値、ズームレンズか否か、オートフォーカス(AF)可能か否か、像高、電力モード等である。
【0021】
また、交換レンズ100に設けられた電源接点114a,114b,114c,114dはそれぞれ、カメラ本体200に設けられた電源接点208a,208b,208c,208dに接続される。これにより、交換レンズ100に搭載された各種センサ、レンズ制御CPU112、および各種駆動回路等に電力が供給される。
【0022】
電源接点114a,208aは各種センサやレンズ制御CPU112用の電源端子であり、電源接点114b,208bはこの電源のグランド端子である。また、電源接点114c,208cは各種駆動回路用の電源端子であり、電源接点114d,208dはこの電源のグランド端子である。これら電源はカメラ本体200に搭載されたリチウムイオン電池などの二次電池209から、DCDCコンバータなどのカメラ電源回路210で所望の電圧に変換され、交換レンズ100に供給される。レンズ電源回路115は、交換レンズ100に搭載されたDCDCコンバータなどの電力変換回路であり、各種センサや駆動回路に適した電圧への変換を行う。
【0023】
カメラ本体200には、CCDセンサやCMOSセンサにより構成される光電変換素子としての撮像素子201が設けられている。撮像素子201は、その撮像面に撮影光学系により形成された光学像(被写体像)を光電変換する。光電変換によって撮像素子201に蓄積された電荷は、所定のタイミングで撮像信号(アナログ信号)として出力され、映像信号処理回路202に入力される。
【0024】
映像信号処理回路202は、撮像素子201からのアナログ信号をデジタル信号に変換し、デジタル信号に対して増幅やガンマ補正等の各種信号処理を施して映像信号を生成する。映像信号は、カメラ制御CPU206、液晶ディスプレイパネル等により構成される表示装置205、および光ディスクや半導体メモリ等により構成される記憶装置204に出力される。
【0025】
また、映像信号処理回路202内には、焦点情報生成部としてのAF信号処理回路203が設けられている。AF信号処理回路203は、撮像素子201から出力された撮像信号(又は撮像信号を用いて生成した映像信号)から、焦点検出領域であるAFエリア内の画素群により得られた高周波成分や輝度成分を抽出し、焦点情報としての焦点評価値信号を生成する。焦点評価値信号は、映像のコントラスト状態(撮像コントラスト)、つまりは鮮鋭度を示し、フォーカスレンズ105の移動に伴って変化する。焦点評価値信号の値、つまりは焦点評価値が最大(ピーク)となるフォーカス位置が、そのAFエリアでの合焦位置となる。
【0026】
ISO感度調整部212は、カメラ制御CPU206内に実装され、主にISO感度を決定する。ISO感度調整部212は、被写体からの受光量を測定する不図示の測光ユニット(AE)の出力値を基にISO感度を決定する。
【0027】
表示装置205とユーザインターフェイス部211から構成されるカメラGUI部によって、ISO感度や撮影モード等の撮影条件を設定することができる。
【0028】
カメラ制御CPU206は、ACT(アクチュエータの略記、以下ACT)制御方法切替通信部213を含む。ACT制御方法切替通信部213は、電気的接点113a~113cおよび電気的接点207a~207cを介して、レンズ制御CPU112に対してACT制御方法切替命令を送信する。
【0029】
レンズ制御CPU(制御部)112は、ACT制御方法変更部119、およびACT制御方法切替通信処理部120を含む。ACT制御方法切替通信処理部120は、ACT制御方法切替通信部213からのACT制御方法切替命令の実行タイミングを管理する。ACT制御方法切替命令が取得されると、ACT制御方法変更部119により、ACTの制御方式がPWM制御方式からリニア制御方式に切り替えられる。
【0030】
以下、
図2を参照して、ACT制御に関する駆動回路構成について説明する。
図2は、絞り駆動回路107に含まれるドライバIC121とレンズ制御CPU112との関係を示す図である。本実施形態では、絞りアクチュエータ106としてステッピングモータを使用している。レンズ制御CPU112は、シリアル通信によりドライバIC121に出力形式と出力レベルを指示する。
【0031】
ドライバIC121は、内部にアンプ出力(リニア出力)とPWM出力の二つの出力形式を搭載し、ステッピングモータへの駆動出力を行う。また、ドライバIC121は外部からのシリアル通信を受信するSCIモジュール122を搭載しているため、出力形式の選択と出力レベルを通信により指示可能である。ドライバIC121には、電源接点114c,208cの電源端子と、電源接点114d,208dのグランド端を介して、パワー系電源が供給されている。
【0032】
リニア出力設定時には、SCIモジュール122により通信された信号を処理するロジック回路123を介して、設定電圧がリニア出力生成回路125a,125bに入力される。設定電圧は、D/Aコンバータにより、アナログ電圧出力されてアンプに入力され、最終出力段トランジスタより出力される。
【0033】
PWM出力設定時には、ロジック回路123を介して、PWMDutyがPWM出力生成回路124a,124bに入力される。三角波に対する閾値電圧を変化させることによりDuty比を変化させたPWM出力が生成され、最終出力段トランジスタより出力される。
【0034】
以下、ACTの制御方式の切り替え方法について説明する。本実施形態では、ユーザインターフェイス部211によりユーザが撮像素子201へのノイズ影響が大きくなる撮影条件を設定した場合について説明する。撮像素子201へのノイズ影響が大きくなる撮影条件とは例えば、ISO感度が高感度に設定されていたり、撮影モードがナイト撮影モードに設定されていたり、又は長秒撮影設定が行われている条件である。この場合、カメラ制御CPU206は、レンズ制御CPU112に対して、ACT制御方法切替通信部213により、アクチュエータノイズ低減のためのACT制御方法切替命令を送信する。レンズ制御CPU112は、ACT制御方法切替命令を取得すると、各種アクチュエータ駆動回路(光量調整装置116、手振れ補正装置117、および焦点調整装置118)の動作状況を確認して、ACTの制御方式を切り替える。
【0035】
なお、ACTの制御方式の切り替えを指示する方法として、カメラ本体200のユーザインターフェイスからの操作による例を示したが、交換レンズ100の不図示のユーザインターフェイスに設けられたスイッチなどでレンズ制御CPU112に指示してもよい。
【0036】
制御方式を切り替える際に、PWM出力とリニア出力とで同一の目標電圧レベルを設計値から指示すると、実際の出力電圧には差分が生じてしまう。PWM出力では、最終出力段トランジスタの立ち上がり時間差や出力遅延時間等により、
図3に示されるように、PWM出力生成回路124a,124bで生成したPWMDuty波形と最終出力段トランジスタから出力されるDuty波形との間に差分が生じる。例えば、電源電圧の半分で出力したい場合にDuty50%と設定すると実際の出力では40%程となり、設定電圧と実際の出力電圧との間に差分が生じる。また、リニア出力生成回路125a、125bでリニア出力を設定しても、
図4に示されるように、負帰還回路を構成し、プラス入力とマイナス入力をイマジナリーショートとしても、プラス端子とマイナス端子との間にオフセット誤差が発生する。これにより、リニア出力でも、入力している電圧と出力電圧との間に差分を生じる。したがって、それぞれの出力形式に対して、目標とする電圧設定を設計から算出された値で行うと、それぞれの出力形式による誤差要因からズレ(出力電圧差)が生じてしまう。
【0037】
図5は、制御目標電圧を4Vとした際にPWM出力からリニア出力に切り替えたときの電圧変動図である。PWM出力では実際の出力は目標としているDuty比よりHi側の出力期間が短くなるため、PWM出力は目標値より低い3.9V出力となる。リニア出力は、制御目標電圧およびPWM出力時よりもオフセットの影響で高めの4.1V出力となる。すなわち、アクチュエータにかかる電圧として0.2Vの出力電圧差が発生する。絞り制御時において、出力電圧差が発生すると、制御方式を切り替えただけで絞りが動作し、画像の明るさ変化が発生して、オーバーな画像やアンダーな画像が撮影されてしまう。また、焦点調節時において、オートフォーカス(以下、AF)停止後に出力電圧差が発生すると、ピント位置がずれてしまい、画像がボケてしまう。
【0038】
そこで、本実施例では、各種アクチュエータ駆動回路(光量調整装置116、手振れ補正装置117、および焦点調整装置118)の動作状況を確認して、各種アクチュエータの駆動開始、又は駆動中にACTの制御方式を切り替える。各種アクチュエータの駆動開始、又は駆動中にACTの制御方式を切り替えることで、もともと動作が行われているため、絞り制御であれば光量変動、フォーカス制御であればピント移動は許される。また、その駆動内では相対的に動作が行われるので、目標位置等がずれることはない。
【0039】
図6は、ACT制御方法切替命令と実行タイミングを示すフローチャートである。
【0040】
ステップS101では、ユーザインターフェイス部211によりユーザが撮像素子201へのノイズ影響が大きくなる撮影条件を設定する。
【0041】
ステップS102では、ACT制御方法切替通信部213は、レンズ制御CPU112に対してACT制御方法切替命令を送信する。
【0042】
ステップS103では、ACT制御方法切替通信処理部120は、制御方法切り替え対象のACTが駆動中であるかどうかを判断する。駆動中には、駆動終了のタイミングも含まれている。ACT停止命令が実際に発行された後の猶予時間も駆動終了のタイミングに含まれるようにしてもよい。具体的には、実際にACT停止命令が発行されてから約1usの期間であれば駆動終了のタイミングとみなせる。この期間は主としてドライバIC121内部のD/Aコンバータとアンプ出力の伝搬遅延時間に対応するものである。駆動中である場合、ステップS104に進み、そうでない場合、ステップS105に進む。
【0043】
ステップS104では、ACT制御方法変更部119は、各駆動回路にACTの制御方式をPWM制御方式からリニア制御方式への切り替えを実行させる。
【0044】
ステップS105では、ACT制御方法切替通信処理部120は、制御切り替え対象のACTが駆動開始時であるかどうかを判断する。実際にACTを駆動するタイミングより前の期間も駆動開始時に含まれるようにしてもよい。具体的には、実際にACTを駆動するタイミングより前の約1usの期間であれば駆動開始時とみなせる。この期間は主としてドライバIC121内部のD/Aコンバータとアンプ出力の伝搬遅延時間に対応するものである。駆動開始時である場合、ステップS104に進み、そうでない場合、ステップS106に進む。
【0045】
ステップS106では、レンズ制御CPU112は、カメラ制御CPU206から制御切り替え対象のACTに対する駆動命令を受信したかどうかを判断する。駆動命令を受信するまで、すなわちACT制御方法切替命令を取得しているが、ACTが駆動停止中である場合、ACT制御方法変更部119は各駆動回路にACTの制御方式を切り替えさせない。駆動命令を受信した場合、ステップS104に進み、そうでない場合、本ステップの処理を繰り返す。
【0046】
以上説明したように、本実施例の構成によれば、撮影条件によりアクチュエータへの出力方法を切り替えても、画像や動画への影響、又はユーザへの違和感を抑制することが可能であるため、撮影状況に応じた最適なアクチュエータ制御が可能となる
[その他の実施例]
本発明は、上述の実施例の1以上の機能を実現するプログラムを、ネットワーク又は記憶媒体を介してシステム又は装置に供給し、そのシステム又は装置のコンピュータにおける1つ以上のプロセッサがプログラムを読出し実行する処理でも実現可能である。また、1以上の機能を実現する回路(例えば、ASIC)によっても実現可能である。
【0047】
以上、本発明の好ましい実施形態について説明したが、本発明はこれらの実施形態に限定されず、その要旨の範囲内で種々の変形及び変更が可能である。
【符号の説明】
【0048】
100 レンズ装置
103 絞り(被駆動部材)
104 手振れ補正レンズ(被駆動部材)
105 フォーカスレンズ(被駆動部材)
106 絞りアクチュエータ(駆動部)
107 絞り駆動回路(切替部)
108 手振れ補正アクチュエータ(駆動部)
109 手振れ補正駆動回路(切替部)
110 フォーカスアクチュエータ(駆動部)
111 フォーカス駆動回路(切替部)