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特許7508266潤滑油添加剤としてのポリアジリジンポリマー
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  • 特許-潤滑油添加剤としてのポリアジリジンポリマー 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-21
(45)【発行日】2024-07-01
(54)【発明の名称】潤滑油添加剤としてのポリアジリジンポリマー
(51)【国際特許分類】
   C10M 151/04 20060101AFI20240624BHJP
   C10N 20/04 20060101ALN20240624BHJP
   C10N 40/04 20060101ALN20240624BHJP
   C10N 40/25 20060101ALN20240624BHJP
   C10N 40/08 20060101ALN20240624BHJP
   C10N 30/06 20060101ALN20240624BHJP
【FI】
C10M151/04
C10N20:04
C10N40:04
C10N40:25
C10N40:08
C10N30:06
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2020086320
(22)【出願日】2020-05-15
(65)【公開番号】P2020186387
(43)【公開日】2020-11-19
【審査請求日】2023-02-09
(31)【優先権主張番号】19174838
(32)【優先日】2019-05-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】519414848
【氏名又は名称】エボニック オペレーションズ ゲーエムベーハー
【氏名又は名称原語表記】Evonik Operations GmbH
【住所又は居所原語表記】Rellinghauser Strasse 1-11, 45128 Essen, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100135633
【弁理士】
【氏名又は名称】二宮 浩康
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】レベッカ イュステル
(72)【発明者】
【氏名】シュテファン ヒルフ
(72)【発明者】
【氏名】ザンドラ ゲープハート
【審査官】松原 宜史
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第107163247(CN,A)
【文献】特開2017-222858(JP,A)
【文献】特開昭49-007181(JP,A)
【文献】特表2013-521369(JP,A)
【文献】特開昭60-223898(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2007/0027046(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C10M
C10N
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1種のベース流体と、式(I)
【化1】
[式中、Rは、15~30個の炭素原子を有する直鎖状または分枝鎖状アルキル基である]の1種以上のアジリジンモノマーからなるモノマー組成物を重合することによって得られる少なくとも1種のポリアジリジンポリマーとを含む、潤滑油組成物。
【請求項2】
前記少なくとも1種のポリアジリジンポリマーが、直鎖状ポリマー骨格を有する、請求項1記載の潤滑油組成物。
【請求項3】
前記少なくとも1種のポリアジリジンポリマーが、1,000g/モル~20,000g/モルの間の範囲に含まれる数平均分子量を有する、請求項1または2記載の潤滑油組成物。
【請求項4】
前記少なくとも1種のポリアジリジンポリマーが、1,000g/モル~10,000g/モルの間の範囲に含まれる数平均分子量を有する、請求項3記載の潤滑油組成物。
【請求項5】
前記少なくとも1種のポリアジリジンポリマーが、2,000g/モル~8,000g/モルの間の範囲に含まれる数平均分子量を有する、請求項3記載の潤滑油組成物。
【請求項6】
前記少なくとも1種のポリアジリジンポリマーが、3,000g/モル~6,000g/モルの間の範囲に含まれる数平均分子量を有する、請求項3記載の潤滑油組成物。
【請求項7】
前記少なくとも1種のポリアジリジンポリマーが、式(I)で示され、その式中、Rが15~20個の炭素原子を有する直鎖状アルキル基である、1種以上のアジリジンモノマーからなるモノマー組成物を重合することにより得られる、請求項1から6までのいずれか1項記載の潤滑油組成物。
【請求項8】
前記潤滑油組成物が、潤滑油組成物の総質量を基準として、95~99.95質量%の間の前記ベース流体および0.05~5質量%の間の前記少なくとも1種のポリアジリジンポリマーを含む、請求項1から7までのいずれか1項記載の潤滑油組成物。
【請求項9】
前記潤滑油組成物が、粘度指数向上剤、流動点向上剤、分散剤、解乳化剤、潤滑添加剤、清浄剤、消泡剤、腐食防止剤、酸化防止剤、耐摩耗添加剤、極圧添加剤、抗疲労添加剤、染料、着臭剤およびこれらの混合物からなる群から選択される添加剤をさらに含む、請求項1から8までのいずれか1項記載の潤滑油組成物。
【請求項10】
前記少なくとも1種のベース流体が、APIグループIベース流体、APIグループIIベース流体、APIグループIIIベース流体、APIグループIVベース流体、APIグループVベース流体およびそれらの混合物からなる群から選択される、請求項1から9までのいずれか1項記載の潤滑油組成物。
【請求項11】
請求項1から10までのいずれか1項に規定された少なくとも1種のポリアジリジンポリマーを含む潤滑油組成物の製造方法であって、
(i)1種以上のポリアジリジンポリマーを製造すること、および
(ii)1種以上のベース流体と混合すること
を含む、方法。
【請求項12】
自動変速機液、手動変速機液、無段変速機液、デュアルクラッチ変速機液、専用ハイブリッド変速機液、エンジンオイル配合物、ギアオイル配合物、工業用ギアオイル配合物、軸液または油圧液中の潤滑油添加剤としての、請求項1から10までのいずれか1項に規定された潤滑油組成物におけるポリアジリジンポリマーの使用。
【請求項13】
潤滑油組成物における摩擦を低減するための摩擦調整剤としての請求項12記載のポリアジリジンポリマーの使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の属する技術分野
本発明は、ポリアジリジンポリマーを含む潤滑油組成物、かかる潤滑油組成物の製造方法、およびかかる潤滑油組成物の、変速機液、エンジンオイル配合物、ギアオイル配合物、軸液または油圧液における摩擦を低減するための潤滑油添加剤としての使用に関する。
【0002】
発明の背景
本発明は、潤滑の分野に関する。潤滑剤は、表面間の摩擦を低減する組成物である。潤滑剤は、2つの表面間での自由な運動を可能にし、表面の機械的摩耗を減らすことに加えて、表面の腐食を抑制し、かつ/または熱または酸化による表面への損傷を抑制し得る。潤滑剤組成物の例には、エンジンオイル、変速機液、ギアオイル、工業用潤滑油、グリースおよび金属加工油が含まれるが、これらに限定されない。
【0003】
典型的な潤滑剤組成物には、ベース流体および場合により1種以上の添加剤が含まれる。慣用のベース流体は、鉱油などの炭化水素である。「基油」または「ベース流体」という用語は、一般的に、相互に交換可能な用語として使用されている。本明細書では、ベース流体を、総称として使用する。
【0004】
潤滑剤の使用目的に応じて、さまざまな添加剤を、ベース流体と組み合わせることができる。潤滑添加剤の例には、粘度指数向上剤、増粘剤、酸化防止剤、腐食防止剤、分散剤、高圧添加剤、消泡剤および金属不活性化剤が含まれるが、これらに限定されない。
【0005】
自動車業界における潤滑油の製造業者およびOEMにとって目下の最大の課題は、ますます厳しさを増している燃費目標である。例えば、変速機の燃費を改善するために、2つのてこが使用されている。すなわち、より粘度の低い潤滑剤が使用されること、およびハードウェアが小型化されていることである。
【0006】
低粘度の潤滑剤を使用すると、特に高温では、例えば、ギアリングおよびローラーベアリングの接触面間の油膜が薄くなり、したがって過度な局所的応力によって引き起こされる損傷のレベルが高まる。摩擦調整剤は、金属表面に保護膜を形成することにより金属表面を保護するために使用され、さらに摩擦の低減に役立つ。
【0007】
ハードウェアの小型化は、追加のハードルにつながる。変速機および油圧ポンプはより小さくなり、冷却はより困難になり、ギアおよびベアリングは、より大きな負荷を処理しなければならない。したがって、2つの移動表面間のトライボロジー接触では、潤滑剤の膜厚の減少がみられる。適用される添加剤は、低摩擦損失を保証し、かつこれらの境界の条件において、摩耗や疲労から表面を保護しなければならない。
【0008】
今日の時点で、潤滑剤中で一般的な油溶性摩擦調整剤は、例えばファンデルワールス相互作用を介してトライボロジー接触の金属表面に吸着するか、反応層を形成する。摩擦調整剤の典型的なクラスは、(i)アルコール、エステルおよびカルボン酸を含む、表面で吸着可能な極性の頭基を有する酸素含有有機化合物、(ii)(i)または(iii)のいずれかと組み合わせて窒素基を含む有機化合物、(iii)表面で反応膜を形成し得る有機硫黄化合物、(iv)表面で反応膜を形成し得る有機リン化合物、(v)表面で反応膜を形成し得る有機ホウ素化合物、(vi)表面にMoS膜を形成し得る有機モリブデン化合物、または(vii)表面に高分子膜を形成し得るZDDPである(R. M. Mortierら(編)、Chemistry and Technology of Lubricants, 第3版, DOI 10.1023/b105569_3, Springer Science+Business Media B.V. 2010年)。
【0009】
吸収性化合物のクラスでは、それらが高負荷下でも表面との強い相互作用を示さなければならないこと、それらが表面で保護膜層を形成しなければならないこと、それらが表面から脱着する場合、油溶性でなければならないこと、表面と相互作用するそれらの傾向が、周囲の油との相互作用よりも高くなければならないことなどの、いくつかの要因が重要である。
【0010】
ポリアジリジンポリマーの合成は、“The living anionic polymerization of activated aziridines: a systematic study of reaction conditions and kinetics”, Polym. Chem. 2017年, 8, 2824-2832;“Multihydroxy Polyamines by Living Anionic Polymerization of Aziridines” ACS Macro Lett., 2016年, 5, 195-198;または“Organocatalytic Ring-Opening Polymerization of N-Tosyl Aziridines by a N-Heterocyclic Carbene” Chem. Commun., 2016年, 72, 9719-9722などの多くの刊行物に詳細に記載されている。これらの刊行物には、潤滑および油溶性の問題については記載されていない。
【0011】
上記に基づいて、さらなる潤滑油添加剤、特に、潤滑油組成物との良好な油相溶性を有しながら優れた摩擦性能を備えた新しい摩擦調整剤を見出す必要が依然としてある。
【0012】
発明の概要
徹底的な調査後、本発明の発明者らは、驚くべきことに、請求項1に規定されたポリアジリジンポリマーが潤滑油組成物に添加された場合に優れた摩擦低減性能をもたらすことを見出した。
【0013】
したがって、本発明の第1の対象は、請求項1およびその従属請求項に規定された少なくとも1種のベース流体および少なくとも1種のポリアジリジンポリマーを含む、潤滑油組成物である。
【0014】
本発明の第2の対象は、本発明による潤滑油組成物の製造方法に関する。
【0015】
本発明の第3の対象は、自動変速機液、手動変速機液、無段変速機液、デュアルクラッチ変速機液、専用ハイブリッド変速機液、エンジンオイル配合物、ギアオイル配合物、工業用ギアオイル配合物、軸液または油圧液における潤滑油添加剤としての、請求項1またはその従属請求項に規定された潤滑油組成物におけるポリアジリジンポリマーの使用である。好ましい実施形態では、本発明は、潤滑油組成物における摩擦を低減するための摩擦調整剤としての本発明によるポリアジリジンポリマーの使用に関する。
【0016】
図面の簡単な説明
本発明のポリアジリジンポリマーを含む潤滑油組成物の利点および特性をより良く例示するため、グラフが非限定的な例として添付されている:
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1図1は、本発明によるポリマー2で処理された、純粋なナフテン系APIグループVベース流体で得られたストリベック曲線と、同じベース流体(APIグループVベース流体)で得られたストリベック曲線とを比較したグラフである。
【0018】
発明の詳細な説明
本発明の潤滑油組成物
本発明の第1の態様によれば、本発明は、少なくとも1種のベース流体;および式(I)
【化1】
[式中、Rは、15~30個の炭素原子を有する直鎖状または分枝鎖状アルキル基である]の1種以上のアジリジンモノマーからなるモノマー組成物を重合することによって得られる少なくとも1種のポリアジリジンポリマーを含む、潤滑油組成物に関する。
【0019】
本発明の好ましい実施形態によれば、潤滑油組成物は、潤滑組成物の総質量を基準として、95~99.95質量%の間の少なくとも1種のベース流体および0.05~5質量%の間の少なくとも1種のポリアジリジンポリマーを含む。
【0020】
本発明の別の好ましい実施形態によれば、潤滑油組成物は、粘度指数向上剤、流動点向上剤、分散剤、解乳化剤、潤滑添加剤、清浄剤、消泡剤、腐食防止剤、酸化防止剤、耐摩耗添加剤、極圧添加剤、抗疲労添加剤、染料、着臭剤またはそれらの混合物からなる群から選択される添加剤をさらに含み得る。
【0021】
ポリアジリジンポリマー
本発明によれば、請求項1に規定されたポリアジリジンポリマーは、直鎖状または分枝鎖状ポリマー骨格のすべてのモノマー単位において窒素を有し、したがって金属表面への良好な結合を可能にする。既存の炭素酸化合物の摩擦調整剤とは異なり、それらは多座化合物として作用し、高荷重下でも良好な結合性を示す。
【0022】
ポリアジリジンポリマーは、カチオン開環重合によって製造することができ、その場合、本発明によるポリアジリジンポリマーは、分枝鎖状ポリマー骨格を有する。ポリアジリジンポリマーのポリマー骨格は、共有結合した原子の最長の系列に対応し、これらの原子と一緒にポリアジリジンポリマーの連続鎖を作り出す。
【0023】
ポリアジリジンポリマーは、アニオン性開環重合によっても製造することができ、その場合、本発明によるポリアジリジンポリマーは、直鎖状ポリマー骨格を有する。本発明のポリアジリジンポリマーは、例えば、刊行物“Sequence-Controlled Polymers via Simultaneous Living Anionic Copolymerization of Competing Monomers”, E. Rieger, Macromol. Rapid Commun., 2016年, 37, 833-839の補足情報のセクションBに記載されているプロセスに従って製造することができる。
【0024】
すべてのモノマー単位中の窒素原子によって、構造は、非常に極性になる。驚くべきことに、本発明の発明者らによって、この構造が、油相に留まるのではなく、金属表面に結合しやすいという結論に達した。ポリマーが迅速かつ強力に表面に結合しやすいので、金属部品間の摩擦を低減することができると考えられる。
【0025】
アジリジンモノマーは、側基が結合できる2つの部位:窒素原子または複数の炭素原子のうちの1つを有する。これにより、特性を調整し、また、長い炭素側鎖を結合して、この構造を油溶性にすることが可能である。本発明によるポリアジリジンポリマーが、式(I)で示され、その式中、アルキル基Rが15~30個の間の炭素原子、好ましくは15~20個の間の炭素原子、より好ましくは16個の炭素原子を有するアジリジンモノマーを使用して製造されなければならないことが判明した。これにより、実験部で示したように、潤滑油組成物での油溶性が保証されると思われる。
【0026】
本発明の発明者らは、驚くべきことに、本発明による少なくとも1種の油溶性ポリアジリジンポリマーを含む潤滑油組成物が、純粋なベース流体と比較して改善された摩擦係数を有することを見出した。したがって、本発明による油溶性ポリアジリジンポリマーは、潤滑油組成物において摩擦調整剤として使用することができる。
【0027】
本発明の好ましい実施形態によれば、油溶性ポリアジリジンポリマーは、ポリ-2-メチル-N-ヘキサデカシルアジリジンであり、その場合、アジリジンモノマーのアルキル基Rは、16個の炭素原子を有する直鎖状アルキル基である。
【0028】
本発明の好ましい実施形態によれば、少なくとも1種のポリアジリジンポリマーは、直鎖状ポリマー骨格を有する。
【0029】
本発明の別の好ましい実施形態によれば、少なくとも1種のポリアジリジンポリマーは、1,000g/モル~20,000g/モルの間の範囲、好ましくは1,000g/モル~10,000g/モルの間の範囲、より好ましくは2,000g/モル~8,000g/モルの間の範囲、さらにより好ましくは3,000g/モル~6,000g/モルの間の範囲に含まれる数平均分子量を有する。
【0030】
本発明では、すべての数平均分子量は、ポリマー鎖のH NMR吸収および開始剤シグナルの比を測定することによって計算される。核磁気共鳴(NMR)測定は、298Kで300MHzの周波数で動作するBruker AVANCE 300分光計で行われた。
【0031】
本発明の好ましい実施形態によれば、少なくとも1種のポリアジリジンポリマーは、式(I)で示され、その式中、Rが15~20個の炭素原子、好ましくは16個の炭素原子を有する直鎖状アルキル基である、1種以上のアジリジンモノマーからなるモノマー組成物を重合することにより得られる。
【0032】
ベース流体
上記のように、本発明は、ベース流体と請求項1に規定された本発明の少なくとも1種のポリアジリジンポリマーとを含む潤滑油組成物に関する。
【0033】
ベース流体は、使用目的に応じてそれらの使用/選択に適した潤滑剤ベース流体、鉱物油、合成油または天然油、動物油または植物油に対応する。
【0034】
本発明による潤滑油組成物を配合するのに使用されるベース流体には、例えば、グループI、グループII、グループIII、グループIVおよびグループVとして知られているAPI(米国石油協会)ベースストックのカテゴリから選択される従来のベースストックが含まれる。グループIおよびIIのベースストックは、粘度指数(またはVI)が120未満の鉱油材料(例えば、パラフィン系オイルおよびナフテン系オイル)である。さらに、グループIとグループIIとは、後者は90%を超える飽和物質を含み、前者は90%未満の飽和物質(すなわち、10%を超える不飽和物質)を含む点で異なっている。グループIIIは、120以上のVIおよび90%以上の飽和レベルを有する最高レベルの鉱物ベース流体と見なされている。グループIVのベース流体は、ポリアルファオレフィン(PAO)である。グループVのベース流体は、エステルおよびグループI~IVのベース流体に含まれていない他のベース流体である。これらのベース流体は、個別に、または混合物として使用することができる。好ましくは、潤滑剤組成物は、APIグループVのベース流体を含む。
【0035】
追加の添加剤
本発明による潤滑油組成物は、配合物として使用ために適した任意の他の追加の添加剤をさらに含んでもよい。これらの添加剤は、粘度指数向上剤、流動点向上剤、分散剤、解乳化剤、潤滑添加剤、清浄剤、消泡剤、腐食防止剤、酸化防止剤、耐摩耗添加剤、極圧添加剤、抗疲労添加剤、染料、着臭剤およびそれらの混合物からなる群から選択される。
【0036】
本発明による潤滑油組成物の製造方法
本発明はまた、上記に規定された少なくとも1種のポリアジリジンポリマーを含む潤滑油組成物の製造方法であって、
(i)1種以上のポリアジリジンポリマーを製造すること、および
(ii)1種以上のベース流体と混合すること
を含む、製造方法にも関する。
【0037】
上記のベース流体が参照される。
【0038】
本発明によるポリマーの使用
本発明はまた、上記に詳細に記載されたポリマーの、潤滑油組成物における潤滑油添加剤としての使用に関する。
【0039】
本発明は、上記に詳細に記載されたポリマーの、潤滑油組成物用の摩擦調整剤としての使用に関する。
【0040】
潤滑油組成物は、とりわけ、自動変速機液、手動変速機液、無段変速機液、専用ハイブリッド変速機液、デュアルクラッチ変速機液、ギアオイル配合物、工業用ギアオイル配合物、軸液、エンジンオイル配合物または油圧液である。
【0041】
実験部に示されるように、本発明に規定されたポリアジリジンポリマーの存在により、潤滑油組成物は、優れた減摩特性を示す。
【0042】
実験部
本発明は、以下の実施例によって例示される。
【0043】
略語
数平均分子量
MTM ミニ牽引機
ポリ(HDsMAz) ポリ-2-メチル-N-ヘキサデカシルアジリジン
ポリ(OsMAz) ポリ-2-メチル-N-オクタシルアジリジン
SRR スライド-ロール-比
【0044】
試験方法
ポリマーを、0.5質量%の処理率でナフテン系APIグループVベース流体に溶解し、摩擦係数を、次の条件で、ミニ牽引機で測定した:30N、80℃および50%のスライド-ロール-比(SRR)で2500~5mm/sのスキャニングをサンプルごとに4回繰り返した。
【0045】
材料
双方ともマインツのMax-Planck-Institute for Polymer Researchによって供給され、かつ刊行物“Sequence-Controlled Polymers via Simultaneous Living Anionic Copolymerization of Competing Monomers”, E. Rieger, Macromol. Rapid Commun., 2016年, 37, 833-839の補足情報のセクションBの第14頁に記載されているプロセスに従ってアニオン重合により製造された、2種のポリアジリジンポリマーを使用した。
【0046】
ポリマー1:14個の繰り返し単位を有するポリ-2-メチル-N-オクタシルアジリジン(ポリ(OsMAz))
出発材料:2-メチル-N-オクタシルアジリジンモノマー(12.5g、64.28ミリモル)、開始剤としてのN-ベンジル-スルホンアミド(1.00g、5.40ミリモル)、脱プロトン化剤としてのカリウムビス(トリメチルシリル)アミド(969.57mg、4.86ミリモル)
(NMR)=3,400g/モル
【0047】
ポリマー2:15個の繰り返し単位を有するポリ-2-メチル-N-ヘキサデカシルアジリジン(ポリ(HDsMAz))
出発材料:2-メチル-N-ヘキサデカシルアジリジンモノマー(250mg、725マイクロモル)、開始剤としてのN-ベンジル-スルホンアミド(8.93mg、36.15マイクロモル)、脱プロトン化剤としてのカリウムビス(トリメチルシリル)アミド(6.5mg、33マイクロモル)
(NMR)=5,400g/モル
【0048】
摩擦調整剤の特性の評価
潤滑剤への適用の主要な基準である油への溶解度を試験するために、双方のポリマーを、潤滑油組成物の総質量を基準として、0.5質量%の処理率でナフテン系ベース流体に添加した。C8側鎖を有するポリマー1は、油に溶解しなかった。対照的に、C16側鎖を有する本発明のポリマー2は、高温(80~100℃)で油に溶解した。
【0049】
したがって、摩擦調整剤の特性をさらに評価するために、ポリマー2のみを使用した。
【0050】
図1に、純粋なナフテン系APIグループV流体とポリマー2を含む同じベース流体とのMTMで測定されたストリベック曲線の比較を示す。ポリマー2を含むベース流体の摩擦係数は、純粋なベース流体と比較して全速度範囲にわたって低く、したがって、摩擦に対するポリアジリジン構造のプラスの効果および潤滑剤において摩擦調整剤として適用可能であることを証明していることが分かる。
図1