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特許7508272微粒子付着防止組成物ならびにこれを利用した被処理物への微粒子付着防止方法および微粒子由来疾患の予防方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-21
(45)【発行日】2024-07-01
(54)【発明の名称】微粒子付着防止組成物ならびにこれを利用した被処理物への微粒子付着防止方法および微粒子由来疾患の予防方法
(51)【国際特許分類】
   A61K 8/9761 20170101AFI20240624BHJP
   A61K 8/9767 20170101ALI20240624BHJP
   A61K 8/73 20060101ALI20240624BHJP
   A61Q 17/00 20060101ALI20240624BHJP
   A61Q 5/00 20060101ALI20240624BHJP
   D06M 15/09 20060101ALI20240624BHJP
   D06M 15/53 20060101ALI20240624BHJP
   D06M 13/17 20060101ALI20240624BHJP
【FI】
A61K8/9761
A61K8/9767
A61K8/73
A61Q17/00
A61Q5/00
D06M15/09
D06M15/53
D06M13/17
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2020092014
(22)【出願日】2020-05-27
(65)【公開番号】P2021187754
(43)【公開日】2021-12-13
【審査請求日】2023-03-09
(73)【特許権者】
【識別番号】000102544
【氏名又は名称】エステー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000590
【氏名又は名称】弁理士法人 小野国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】高野 孟
【審査官】小久保 敦規
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-030704(JP,A)
【文献】特開2007-113137(JP,A)
【文献】特開2016-084472(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 8/00 - 8/99
A61Q 1/00 - 90/00
D06M 13/00 - 15/715
CAplus/REGISTRY(STN)
Mintel GNPD
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)ヒノキ科ヒノキ属、ヒノキ科スギ属およびマツ科モミ属よりなる群から選ばれた樹木の1種または2種以上の木質部および/または葉の精油
(B)ヒドロキシアルキルセルロース
(C)界面活性剤
(D)親水性溶剤
および(E)水
を含有する微粒子付着防止組成物。
【請求項2】
(A)マツ科モミ属の植物が、トドマツまたはモミである請求項第1項記載の微粒子付着防止組成物。
【請求項3】
(B)ヒドロキシアルキルセルロースが、ヒドロキシプロピルメチルセルロースである請求項第1項記載の微粒子付着防止組成物。
【請求項4】
(C)界面活性剤が、ヤシ油アルキルグルコシド、ポリオキシエチレンアルキルエーテルおよびポリオキシエチレン硬化ひまし油である請求項第1項記載の微粒子付着防止組成物。
【請求項5】
微粒子が、花粉である請求項1~4の何れか1に記載の微粒子付着防止組成物。
【請求項6】
更に、微粒子の不活化をするものである請求項1~5の何れか1に記載の微粒子付着防止組成物。
【請求項7】
被処理物を、請求項1~6の何れか1に記載の微粒子付着防止組成物で処理することを特徴とする被処理物への微粒子付着防止方法。
【請求項8】
被処理物が、肌、髪の毛、衣服またはマスクである請求項7記載の被処理物への微粒子付着防止方法。
【請求項9】
更に、微粒子の不活化をするものである請求項7または8記載の被処理物への微粒子付着防止方法。
【請求項10】
被処理物を、請求項1~6の何れか1に記載の微粒子付着防止組成物で処理することを特徴とする微粒子由来疾患の予防方法。
【請求項11】
被処理物が、肌、髪の毛、衣服またはマスクである請求項10記載の微粒子由来疾患の予防方法。
【請求項12】
微粒子が花粉であり、微粒子由来疾患が花粉症である請求項10または11記載の微粒子由来疾患の予防方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹木の精油を有効成分とする微粒子付着防止組成物ならびにこれを利用した被処理物への微粒子付着防止方法および微粒子由来疾患の予防方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、花粉、PM2.5、ウイルス等の微粒子が花粉症等のアレルギー疾患、ぜんそく等の呼吸器疾患、インフルエンザ等の感染症等様々な疾患を引き起こすため社会問題となってきている。
【0003】
例えば、微粒子由来の疾患の中でも花粉症は日本人の国民病といわれ、日本人の2~3割は花粉症だといわれおり、近年この割合は10年前と比較して1.5倍に増加している。そのため花粉症治療剤等が数多く販売されている。
【0004】
I型アレルギー症状の抑制剤としては、ケミカルメディエータであるヒスタミンの拮抗剤、遊離抑制剤、合成阻害剤、自律神経作用薬およびステロイド剤等が知られているが、これらは抗コリン作用や眠気等の副作用を生じるという問題があった。また、I型アレルギーの治療法としては、アレルゲンを主成分とする注射剤を定期的に投与する減感作療法等が知られているが、該治療法は2~3年の長期間の通院が必要となり、負担が大きいという問題があった。
【0005】
また、花粉症の予防策として、花粉症を予防する用具として、マスク、ゴーグルが使用されている。しかしながら、衣類、毛髪、肌への花粉の付着は防止できない。そして、顔面、毛髪に付着して、室内に持ち込まれた花粉が花粉症を誘発する原因ともなっている。
【0006】
これら問題を解決する手段として、毛髪化粧料や皮膚化粧料に花粉吸着防止剤を配合し、花粉の吸着を防止することが種々提案されている。例えば、特許文献1には、ホスホリルコリン基を有する粉体からなる花粉吸着防止剤。が提案されている。また、特許文献2には帯電防止加工として、カチオン系界面活性剤や第4級アンモニウム塩を繊維表面に固着する技術が開示されている。さらに、特許文献3には特定の構造を有するアミノ変性シリコーンを含有する花粉付着防止剤について開示されている。
【0007】
しかしながら、上記のような花粉付着防止剤により肌、髪の毛、衣服、マスク等へ処理を施しても完全に花粉の付着を防止することはできないため、いくつかの付着した花粉により花粉症を引き起こしてしまう可能性がある。また、花粉以外の微粒子についても付着防止効果があるかどうかも一切記載されておらず不明である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】特開2005-336056号公報
【文献】特開2003-213541 号公報
【文献】特開2007-197850 号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
従って、本発明は、花粉等の微粒子が、肌、髪の毛、衣服、マスク等へ付着することを防止する技術であって、例え、それを完全に防止できなかったとしても、花粉症等の微粒子由来疾患の発生を予防できる微粒子の付着防止技術を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは上記課題を解決するために鋭意研究した結果、特定の樹木の精油とヒドロキシアルキルセルロース等を組み合わせることにより、上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成させた。
【0011】
すなわち、本発明は(A)ヒノキ科ヒノキ属、ヒノキ科スギ属およびマツ科モミ属よりなる群から選ばれた樹木の1種または2種以上の木質部および/または葉の精油
(B)ヒドロキシアルキルセルロース
(C)界面活性剤
(D)親水性溶剤
および(E)水
を含有する微粒子付着防止組成物である。
【0012】
また、本発明は、被処理物を、上記得微粒子付着防止組成物で処理することを特徴とする被処理物への微粒子付着防止方法である。
【0013】
更に、本発明は、被処理物を、上記微粒子付着防止組成物で処理することを特徴とする微粒子由来疾患の予防方法である。
【発明の効果】
【0014】
本発明の微粒子付着防止組成物を、被処理物に処理することにより花粉等の微粒子の付着を外出時であっても手軽に簡便にかつ積極的に防止するとともに、仮に花粉等の微粒子が付着した場合であっても、微粒子を不活化できるため、花粉症等の微粒子由来疾患の発症を予防できるものである。
【0015】
また、本発明の微粒子付着防止組成物は、持続性に優れる一方、洗浄等により容易に除去することができる。また、被処理物の使用感の変化(べたつき等) もなく使用感にも優れる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1図1は皮膚付着防止試験の結果を示す図である(実施例2)。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明の微粒子付着防止組成物(以下、「本発明組成物」という)に使用される(A)の精油は、ヒノキ科ヒノキ属、ヒノキ科スギ属およびマツ科モミ属の樹木の木質部および/または葉から得られるものである(以下、「樹木精油」ということがある)。
【0018】
このうち、ヒノキ科ヒノキ属の樹木としては、ヒノキ、タイワンヒノキ、ベイヒバ、ローソンヒノキ、チャボヒバ、サワラ、クジャクヒバ、オウゴンチャボヒバ、スイリュウヒバ、イトヒバ、オウゴンヒヨクヒバ、シノブヒバ、オウゴンシノブヒバ、ヒムロスギ等が、ヒノキ科スギ属の樹木としては、スギ、アシウスギ、エンコウスギ、ヨレスギ、オウゴンスギ、セッカスギ、ミドリスギ等が、マツ科モミ属の樹木としては、トドマツ、モミ、ウラジロモミ、シラビソ、オオシラビソ、シラベ、バルサムファー、ミツミネモミ、ホワイトファー、アマビリスファー、アオトドマツ、カリフォルニアレッドファー、グランドファー、ノーブルファー等がそれぞれ挙げられる。
【0019】
このうち好ましいものとしては、ヒノキ科ヒノキ属の樹木であるヒノキ、タイワンヒノキおよびベイヒバ;ヒノキ科スギ属の樹木であるスギ;マツ科モミ属の樹木であるトドマツおよびモミが挙げられ、これらの中でも特に好ましくはトトマツまたはモミである。また、好ましい部位としては葉である。
【0020】
上記樹木から精油を得るには、チップ化した樹木の木質部あるいは細断した樹木の葉を原料とし、これを、常圧蒸留法、減圧蒸留法、水蒸気蒸留法、溶媒抽出法等の従来公知の精油採取方法に付すことにより得ることができる。
【0021】
より好ましい精油採取方法としては、チップ化した樹木の木質部あるいは細断した樹木の葉等の原料を減圧下で加熱して蒸留を行う方法(以下、「減圧水蒸気蒸留法」という)が採用される。加熱を行う場合はヒーターによる加熱でもかまわないが、マイクロ波を照
射することにより、マイクロ波が水分子を直接加熱する性質を利用して、素材中に元から含まれている水分のみで精油の抽出を行う方法を採用することが好ましい。
【0022】
減圧水蒸気蒸留においては、蒸留槽内の圧力を3~40キロパスカル(以下、「kPa」という)、好ましくは5~30kPa、さらに好ましくは10~20kPa程度として行なえば良く、その際の蒸気温度は40℃~100℃になる。蒸留槽から発生した気体を冷却することにより得られた蒸留成分のうち、油性成分を精油として用いることができる。
【0023】
また、上記した精油採取方法としては、特許第5508388号公報、特許第6124340号公報等の実施例等に記載の方法等も挙げられる。
【0024】
本発明組成物における(A)の配合量は0.01~10質量%(以下、単に「%」という)、好ましくは0.05~5%、さらに好ましくは0.1~1%である。0.01%未満だと微粒子の不活化が不十分になる恐れがあり、10%より多くてもこれ以上の微粒子の不活化効果が変わらない恐れがある。
【0025】
本発明組成物に使用される(B)のヒドロキシアルキルセルロースは従来公知のものを用いることができ、具体的には、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース等が挙げられ、これらは1種もしくは2種以上を混合して使用することができる。これらのうち、微粒子付着防止効果の観点からヒドロキシプロピルメチルセルロースを用いることが好ましい。
【0026】
本発明組成物における(B)の配合量は0.01~10%、好ましくは0.05~5%、さらに好ましくは0.1~1%である。0.01%未満だと付着防止効果が不十分になる恐れがあり、10%より多いと組成物の粘度が上昇して被処理物がべたつき、逆に微粒子が付着してしまう恐れがある。
【0027】
本発明組成物に使用される(C)である界面活性剤は、水への(A)成分の溶解のため、肌や髪の毛へ付着し素早く広がるとともに浸透させるため、また、微粒子に対して(A)成分の不活化効力を高めるために用いられ、従来公知のものを用いることができ、従来公知の、アニオン系界面活性剤、カチオン系界面活性剤、ノニオン系界面活性剤または両性界面活性剤の1種若しくは2種以上が挙げられ、これらは混合して用いることもできる。
【0028】
上記アニオン系界面活性剤としては、例えば、石けん(高級脂肪酸石けん)、石けん用素地、金属石けん、アルキルベンゼンスルホン酸ナトリウム、N-アシル-L-グルタミン酸トリエチルアルコールアミン、N-アシル-L-グルタミン酸ナトリウム、アルキル硫酸ナトリウム、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸ナトリウム、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル硫酸ナトリウム、ジアルキルスルホ琥珀酸ナトリウム、ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテルリン酸、ヤシ油脂肪酸メチルタウリンナトリウム(N-ココイル-N-メチルタウリンナトリウム)、ラウリル硫酸トリエチルアルコールアミン、ラウリル硫酸ナトリウム、ラウロイルサルコシンナトリウム、ラウロイルメチルβ-アラニンナトリウム液、ラウロイルメチルタウリンナトリウム等の1種若しくは2種以上を混合して用いることができる。
【0029】
上記カチオン系界面活性剤としては、エチル硫酸ラノリン脂肪酸アミノプロピルエチルジメチルアンモニウム、塩化アルキルトリメチルアンモニウム、塩化ジアルキルジメチルアンモニウム、塩化ジステアリルジメチルアンモニウム、塩化ステアリルジメチルベンジルアンモニウム、塩化ステアリルトリメチルアンモニウム、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム等の1種若しくは2種以上を混合して用いることができる。
【0030】
上記ノニオン系界面活性剤としては、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンスチリルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルアミノエーテル、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコール、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン硬化ひまし油、脂肪酸アルカノールアミド、ヤシ油アルキルグルコシド、第3級アミンオキサイド等の1種若しくは2種以上を混合して用いることができる。
【0031】
上記両性界面活性剤としては、アルキルジメチルアミンオキサイド、2-アルキル-N-カルボキシメチル-N-ヒドロキシエチルイミダゾリニウムベタイン、塩酸アルキルジアミノエチルグリシン液、ラウリルジメチルアミノ酢酸ベタイン等の1種若しくは2種以上を混合して用いることができる。
【0032】
上記界面活性剤中のうち、肌に対する安全性の点でノニオン系界面活性剤が好ましく、(A)成分は疎水性が高いため、その中でも乳化もしくは可溶化能が高い点でヤシ油アルキルグルコシド、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレン硬化ひまし油を混合して使用することが好ましい。
【0033】
本発明組成物における(C)の配合量は0.01~10%、好ましくは0.1~8%、さらに好ましくは1~5%である。0.01%未満だと(A)成分の可溶化ないしは乳化ができなくなる恐れがあり、10%より多いと被処理物がべたつき、逆に微粒子が付着してしまう恐れがある。
【0034】
本発明組成物に使用される(D)は、従来公知の親水性溶媒を用いることができる。具体的な親水性溶媒の例としては、エタノール、イソプロピルアルコール、プロピルアルコール等のアルコール系溶媒、ペンチレングリコール、ブチレングリコール、プロピレングリコール、エチレングリコール等のグリコール系溶媒、エチレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、3-メトキシ-3-メチル-1-ブタノール等のグリコールエーテル系溶媒等が挙げられ、その1種若しくは2種以上を混合して用いることができる。
【0035】
上記親水性溶媒のうち、速乾性、対物安全性、対人安全性、肌、髪への付着性等を考慮して、アルコール類および/またはグリコール系溶媒を用いることが好ましく、特にエタノール、ペンチレングリコール、ブチレングリコールを用いることが好ましい。
【0036】
本発明組成物における(D)の配合量は0.01~20%、好ましくは0.1~15%、さらに好ましくは1~10%である。0.01%未満だと微粒子への浸透効果および付着防止効果が不十分になる恐れがあり、20%より多いと被処理物がべたつく恐れがある。なお、(D)としてエタノールのみを用いた場合には、配合量を多くしても被処理物がべたつく恐れはないため、配合量の上限は特にない。
【0037】
本発明組成物には、更に、ポリシロキサン誘導体、アミノ酸変性シリコーンなどのシリコーン、ポリエチレングリコール、ポリアクリル酸、α-シクロデキストリン、β-シクロデキストリン、γ-シクロデキストリン等のデキストリン類等の従来公知の吸着防止剤を配合することも可能である。
【0038】
更に、本発明組成物には、本発明の効果に影響を与えない範囲内で、必要に応じて香料、可溶化助剤、消臭剤、pH調整剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、防腐剤等を配合してもよい。
【0039】
本発明組成物は、少なくとも上記した(A)~(E)を撹拌、混合することにより製造することができる。
【0040】
斯くして得られる本発明組成物は、被処理物を処理することにより被処理物への微粒子の付着を防止することができる。本発明組成物の被処理物への処理量は特に限定されないが、例えば、1回あたり、0.1~1ml、好ましくは0.3~0.5mlである。また、この処理は1日あたり、2~10回、好ましくは3~5回行えばよい。
【0041】
被処理物を処理する方法としては、特に限定されないが、従来から使用されている噴霧器、容器等に本発明組成物を入れ、それを利用して噴霧、塗布等をすればよい。噴霧器としては、例えば、ポンプ式や蓄圧式のトリガー式のスプレー噴霧器や、エアゾール容器等が挙げられる。
【0042】
本発明組成物が、付着防止できる微粒子としては、例えば、スギ、ブタクサ等の花粉、PM2.5、インフルエンザウイルス、コロナウイルス等のウイルス等が挙げられる。これらの中でも花粉が好ましい。微粒子の大きさは、概ね0.005~100μm、好ましくは0.05~50μmである。なお、この大きさは電子顕微鏡で測定される値である。
【0043】
また、本発明組成物で、処理できる被処理物としては、例えば、顔、手、首等の肌、髪の毛、シャツ等の上着、ズボン、パンツ等の下着、マフラー、帽子、手袋等の衣服、マスク等の衛生製品、布団、マットレス等の寝具、カーテン、絨毯、畳、網戸、ドア等の住宅設備等が挙げられる。これらの中でも肌、髪の毛、衣服またはマスクが好ましい。
【0044】
本発明組成物を、微粒子の吸着を防止したい被処理物にあらかじめ処理しておくことにより、被処理物への微粒子の吸着を積極的に防止することができる。また、本発明組成物は被処理物に対して素早く広がり、早期の吸着防止効果を発揮することができる。更に、本発明組成物は被処理物への微粒子の吸着が防止できずに付着した場合であっても微粒子を不活化できる。また更に、本発明組成物は被処理物にすでに微粒子が付着していた場合であっても不活化できる。
【0045】
以上のように本発明組成物は、微粒子付着の防止と共に、付着した微粒子の不活化もできるため微粒子由来疾患の軽減や予防もできる。微粒子由来疾患としては、微粒子を由来とする疾患であれば、特に限定されないが、例えば、花粉症等のアレルギー疾患、ぜんそく等の呼吸器疾患、インフルエンザ等の感染症等が挙げられる。本発明組成物は、微粒子が花粉であり、花粉に由来する疾患である花粉症の予防に特に好ましい。
【0046】
本発明組成物の具体的な使用方法を、微粒子が花粉の場合で挙げる。従来、外出から帰ったら衣服を払って、衣服に付着した花粉を落としてから家に入る、ふとんを干した後は、掃除機でふとんを吸引して花粉を吸い取る、等の方法で花粉の家の中への持込み・侵入を防いでいたのを、あらかじめ衣服、ふとん等に本発明組成物をスプレーで噴霧しておくことにより、花粉の吸着を防止することができ、花粉の家の中への持込み・浸入を容易かつ簡便に防ぐことができる。
【0047】
また、外出中においても、花粉の吸着を防止するとともに、仮に少量の花粉が吸着したとしても花粉付着防止剤組成物が花粉に作用し、花粉を不活化することにより、花粉による悪影響を受けない。特に本発明の花粉付着防止剤組成物は花粉に素早く作用し、不活化させることができる。
【実施例
【0048】
以下、本発明を実施例を挙げて詳細に説明するが、本発明はこれら実施例に何ら限定されるものではない。
【0049】
参 考 例 1
トドマツ精油の調製:
原料として、トドマツの葉を用い、特許第6124340号公報の実施例2に準じてトドマツ精油を得た。すなわち、トドマツ葉を圧砕式粉砕機(KYB製作所製)で粉砕しマイクロ波蒸留装置の蒸留槽に投入し、攪拌しながら蒸留槽内の圧力を、約20kPaの減圧条件下に保持し、(蒸気温度は約67℃)1時間マイクロ波を照射し蒸留した。得られた蒸留物から油性画分を採取しトドマツ精油を得た。
【0050】
実 施 例 1
微粒子付着防止組成物の調製:
以下の成分を撹拌、混合して微粒子付着防止組成物を調製した。
【0051】
【表1】
【0052】
実 施 例 2
肌付着防止試験:
被験者の右前腕部内側を温水で30秒洗浄後、4cm四方(16cm)に2か所マーキングし環境調整室で20分静置乾燥させた。当該マーキング部分に疑似皮脂としてホバクリームM-40(部分水素添加ホホバ油:香栄興業(株)製)を塗布した。その後実施例1で調製した微粒子付着防止組成物30μリットルをマーキング中央部と四隅に滴下しガラス棒で塗り広げ20分乾燥させた。乾燥後。花粉(スギ花粉:ITEA社製)0.01gを薬包紙の秤量し高さ20cmから落下させた。その後、腕を90度傾け、塗布した腕に2m/sの風速で風を5分吹きかけたあと、外観を下記基準で目視で観察した。また、本発明品で処理しない場合を比較とした。それらの結果を表2に示した。更に、塗布直後、90度傾けた後、ファン1分後、ファン5分後の外観の写真を図1に示した。
【0053】
<外観評価基準>
(内容) (評価)
比較に比べ花粉の付着量が減少した : 〇
比較と花粉の付着量に変化がない : △
比較に比べ花粉の付着量が増加した : ×
【0054】
【表2】
【0055】
本発明品1は無処理の比較と比べて、肌への花粉の付着が防止できることが分かった。また、本発明品1を塗布後の肌は、べたつき等はなく、試験後に容易に洗浄できた。なお、本発明品1に使用したトドマツ精油は、特許第6124340号公報の試験例1等により花粉等のアレルゲンのアレルギー性を低減させることが示されている。そのため、本発明品1は花粉の付着防止と共に、当然に花粉の不活化もできる。
【0056】
またカラー成分測定サイト「色とりどり」(https://ironodata.info/extraction/irotoridori.php)を用いた画像解析により、ファン5分後の肌における花粉残存率を求めた。画像解析の際には、解析を容易にするため画像の明るさを30%上げた。また、花粉残存率は画像データを上記測定サイトにアップロードし花粉の色調である#rrggbbカラーコードE0E080、E0E0A0、E0C080およびF0E0A0の合計数値から求めた。その結果を表3に示した。
【0057】
【表3】
【0058】
以上の結果より、本発明品1は、無処理の比較と比べて花粉の付着を3割以上も防止するものであった。なお、本試験では多量の花粉を肌へ落下させた時の結果であり、通常の生活環境においては、本発明品1は花粉の付着を相当防止できると推測される。
【0059】
実 施 例 3
アンケート調査(項目評価):
実施例1で調製した微粒子付着防止組成物をエアゾール容器に充填したものを用いて、花粉症の症状のあるヒト60名を対象に、外出前などの任意のタイミングで顔または髪の毛に20cm程度離して適量スプレーしてもらい、その効果についてアンケートを実施した。結果を表4~表12に示す。
【0060】
【表4】
【0061】
【表5】
【0062】
【表6】
【0063】
【表7】
【0064】
【表8】
【0065】
【表9】
【0066】
【表10】
【0067】
【表11】
【0068】
【表12】
【0069】
以上の結果より、本発明品1には、71.7%と高い花粉症の軽減効果があることが分かった。また、花粉症の諸症状である鼻水、鼻づまり、くしゃみ、目のかゆみ、のどの腫れなどにも効果が認められ、花粉症全体として80%以上の人が軽減効果がある(とてもある、ややある)と回答し、65%が花粉症軽減効果の持続性があるとの回答をした。また、顔や髪の毛にスプレーした場合もべたつきが気にならないものであった。
【0070】
実 施 例 4
アンケート調査(全体評価):
実施例3で行ったアンケートにおいて、「あなたは、この商品を実際に使用してみて、点数をつけるとしたら100点満点で何点くらいになりますか。」という問いに対し、35人が満足度80点以上との回答が得られた。その理由は表13の通りであり、花粉症の諸症状の予防、軽減、香の満足感などが評価された。
【0071】
【表13】
【0072】
実 施 例 5
ポンプスプレー:
以下の成分を撹拌、混合して微粒子付着防止組成物を調製した。これをポンプ式のスプレー噴霧器に入れた。
【0073】
(配合成分) (配合量)
トドマツ精油 0.7%
PEG-40水添ヒマシ油 2.0%
エタノール 10.0%
ブチレングリコール 2.0%
ペンチレングリコール 1.0%
ヒドロキシブロピルメチルセルロース 0.3%
精製水 残 部
【産業上の利用可能性】
【0074】
本発明の微粒子付着防止組成物は、花粉等の微粒子の付着を防止すると共に、花粉症等の微粒子由来疾患の発生の予防に利用できる
図1