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特許7508285パターン形成方法、インプリント装置、及び物品の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-21
(45)【発行日】2024-07-01
(54)【発明の名称】パターン形成方法、インプリント装置、及び物品の製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/027 20060101AFI20240624BHJP
   B29C 59/02 20060101ALI20240624BHJP
【FI】
H01L21/30 502D
B29C59/02 Z
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2020107094
(22)【出願日】2020-06-22
(65)【公開番号】P2022002275
(43)【公開日】2022-01-06
【審査請求日】2023-06-07
(73)【特許権者】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100126240
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 琢磨
(74)【代理人】
【識別番号】100223941
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 佳子
(74)【代理人】
【識別番号】100159695
【弁理士】
【氏名又は名称】中辻 七朗
(74)【代理人】
【識別番号】100172476
【弁理士】
【氏名又は名称】冨田 一史
(74)【代理人】
【識別番号】100126974
【弁理士】
【氏名又は名称】大朋 靖尚
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 涼平
【審査官】植木 隆和
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-061029(JP,A)
【文献】特開2012-234913(JP,A)
【文献】特開2015-023237(JP,A)
【文献】特開2017-139268(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/027
G03F 7/20
B29C 59/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
保持領域ごとに保持力を変更可能な基板保持部によって保持された基板上に、型を用いてインプリント材のパターンを形成するパターン形成方法であって、
前記基板保持部の第1保持領域に対応する複数のショット領域をインプリント処理によるパターン形成の対象として、前記第1保持領域における第1保持力を、前記基板保持部の前記第1保持領域とは異なる第2保持領域における第2保持力よりも小さくする第1工程と、
前記第1保持領域に対応する複数のショット領域を含む領域にインプリント材を塗布する第2工程と、
前記第1保持領域に対応する複数のショット領域に塗布されたインプリント材と前記型とを接触させて前記インプリント材のパターンを形成する第3工程を含み、
前記第2保持領域は、前記第1保持領域とは異なる保持力に制御可能な領域であり、
前記第1工程において、前記第1保持領域によって前記基板を保持することによって生じた歪みが低減されることを特徴とするパターン形成方法。
【請求項2】
前記第3工程は、前記インプリント材と前記型とを接触させる工程、前記インプリント材を硬化させる工程、および前記型と前記インプリント材を引き離す工程、を有する請求項1に記載のパターン形成方法。
【請求項3】
前記第1工程において設定された前記第1保持力を第1の値として、
前記第3工程の前に、前記第1保持力を前記第1の値よりも大きい第2の値に設定することを特徴とする請求項1または2に記載のパターン形成方法。
【請求項4】
前記引き離す工程において、前記第1保持力を前記第2の値よりも小さい第3の値に設定した後に、前記型と前記インプリント材を引き離すことを特徴とする請求項に記載のパターン形成方法。
【請求項5】
前記引き離す工程において、前記基板と前記型のそれぞれを反対側の向きに撓ませながら、前記型と前記インプリント材を引き離すことを特徴とする請求項3に記載のパターン形成方法。
【請求項6】
前記第1保持領域と前記第2保持領域は同心円状に配置されていることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載のパターン形成方法。
【請求項7】
前記第2保持領域に対応する複数のショット領域をインプリント処理によるパターン形成の対象として、前記第2保持力を前記第1保持力よりも小さくする工程と、
前記第2保持領域に対応する複数のショット領域にインプリント材を塗布する工程と、
前記第2保持領域に対応する複数のショット領域に塗布されたインプリント材と前記型とを接触させて前記インプリント材のパターンを形成する工程をさらに含むことを特徴とする請求項1乃至6のいずれか1項に記載のパターン形成方法。
【請求項8】
前記第2工程において、前記第2保持領域に対応する複数のショット領域にインプリント材が塗布されており、
前記第2保持領域に対応する複数のショット領域をパターン形成の対象として、前記第2保持力を前記第1保持力よりも小さくする工程と、
前記第2保持領域に対応する複数のショット領域に塗布されたインプリント材と前記型とを接触させて前記インプリント材のパターンを形成する工程をさらに含むことを特徴とする請求項1乃至6のいずれか1項に記載のパターン形成方法。
【請求項9】
前記第2工程は、前記基板を移動させる動作を含み、
前記複数のショット領域は、前記第2工程において前記基板を移動させる第1方向に並んでいることを特徴とする請求項1乃至8のいずれか1項に記載のパターン形成方法。
【請求項10】
前記複数のショット領域は、前記第1方向に加えて前記第1方向と垂直な第2方向に並んでいることを特徴とする請求項9に記載のパターン形成方法。
【請求項11】
型を用いて基板のショット領域にインプリント材のパターンを形成するインプリント装置であって、
保持領域ごとに前記基板を保持する保持力を変更可能な基板保持部と、
パターンの形成を制御する制御部を有し、
前記制御部は、前記基板保持部の第1保持領域に対応する複数のショット領域をインプリント処理によるパターン形成の対象として、前記第1保持領域における第1保持力を、前記第1保持領域によって前記基板を保持することによって生じた歪みが低減されるように前記基板保持部の前記第1保持領域とは異なる第2保持領域における第2保持力よりも小さくし、前記第1保持領域に対応する複数のショット領域に塗布されたインプリント材と前記型とを接触させて前記インプリント材のパターンを形成するものであり、前記第2保持領域は、前記第1保持領域とは異なる保持力に制御可能な領域であることを特徴とするインプリント装置。
【請求項12】
請求項1乃至10のいずれか1項に記載のインプリント方法を用いて基板上にインプリント材のパターンを形成する形成工程と、
前記形成工程でインプリント材のパターンが形成された前記基板を加工する加工工程と、を含み、
前記加工工程で加工された前記基板から物品を製造することを特徴とする物品の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パターン形成方法、インプリント装置、及び物品の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体デバイスを製造するための新たなパターン形成技術として、インプリント技術が注目されている。インプリント装置は、シリコンウエハやガラスプレート等の基板の上のインプリント材に型を接触させた状態でインプリント材を硬化させ、硬化したインプリント材から型を引き離すことによって基板上にインプリント材のパターンを形成する。
【0003】
従来のインプリント装置では、基板にインプリント材を塗布する塗布工程、インプリント材と型とを接触させる接触工程、インプリント材を硬化させる硬化工程、インプリント材から型を引き離す離型工程が、基板のショット領域ごとに繰り返される。しかし近年では、スループット向上のために、複数のショット領域にインプリント材を塗布して、これらのショット領域に連続してパターンを形成する方法が検討されている。
【0004】
特許文献1は、基板上の隣接する複数のショット領域または基板の全ショット領域にインプリント材を塗布し、その後、ショット領域ごとに接触工程、硬化工程、離型工程を実施するマルチフィールドディスペンスと呼ばれるシーケンスを開示している。
【0005】
また、型とショット領域との位置合わせ精度を向上させるために、基板の保持によって生じた歪みを開放することが知られている。特許文献2は、領域ごとに保持力を変更可能な基板保持部において、パターン形成の対象となるショット領域に対応する位置の保持力を低下させて、基板に生じた歪みを開放させることを開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特許第5084823号公報
【文献】特開2010-98310号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上述したマルチフィールドディスペンスにおいて、第1ショット領域に対するパターン形成後であって、当該第1ショット領域の次の第2ショット領域に対するパターン形成前に歪みの開放が行われる場合が生じ得る。歪みの開放のためには、保持力を低下させる必要があり、保持力の低下には時間を要する。それゆえ、マルチフィールドディスペンスにおいて、基板の歪みの開放を行うと生産性の低下を招くおそれがある。
【0008】
本発明は、例えば、マルチフィールドディスペンスにおいて、生産性の低下を抑制しつつ、パターン形成精度を向上させたパターン形成方法を実現することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決する本発明のパターン形成方法は、保持領域ごとに保持力を変更可能な基板保持部によって保持された基板上に、型を用いてインプリント材のパターンを形成するパターン形成方法であって、前記基板保持部の第1保持領域に対応する複数のショット領域をインプリント処理によるパターン形成の対象として、前記第1保持領域における第1保持力を、前記基板保持部の前記第1保持領域とは異なる第2保持領域における第2保持力よりも小さくする第1工程と、前記第1保持領域に対応する複数のショット領域を含む領域にインプリント材を塗布する第2工程と、前記第1保持領域に対応する複数のショット領域に塗布されたインプリント材と前記型とを接触させて前記インプリント材のパターンを形成する第3工程を含み、前記第2保持領域は、前記第1保持領域とは異なる保持力に制御可能な領域であり、前記第1工程において、前記第1保持領域によって前記基板を保持することによって生じた歪みが低減されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、マルチフィールドディスペンスにおいて、生産性の低下を抑制しつつ、パターン形成精度を向上させたパターン形成方法を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】インプリント装置の構成を示す図である。
図2】基板保持部の上面を示す図である。
図3】基板保持部の詳細な構成を示す図である。
図4】実施例1における基板上のショット領域の配置を示す図である。
図5】実施例1に係るパターン形成の流れを示すフローチャートである。
図6】離型時のパターンの倒れを示す図である。
図7】実施例2に係るパターン形成の流れを示すフローチャートである。
図8】実施例3における基板上のショット領域の配置を示す図である。
図9】物品の製造方法を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、添付図面を参照して本発明の実施形態について詳しく説明する。なお、以下の実施形態は特許請求の範囲に係る発明を限定するものではない。実施形態には複数の特徴が記載されているが、これらの複数の特徴の全てが発明に必須のものとは限らず、また、複数の特徴は任意に組み合わせられてもよい。さらに、添付図面においては、同一若しくは同様の構成に同一の参照番号を付し、重複した説明は省略する。
【0013】
まず、実施形態に係るインプリント装置の概要について説明する。インプリント装置は、基板上に供給されたインプリント材を型と接触させ、インプリント材に硬化用のエネルギーを与えることにより、型の凹凸パターンが転写された硬化物のパターンを形成する装置である。
【0014】
インプリント材としては、硬化用のエネルギーが与えられることにより硬化する硬化性組成物が用いられる。硬化用のエネルギーとしては、電磁波、熱等が用いられうる。電磁波は、例えば、その波長が10nm以上1mm以下の範囲から選択される光、例えば、赤外線、可視光線、紫外線などであり得る。硬化性組成物は、光の照射により、あるいは、加熱により硬化する組成物であり得る。
【0015】
これらのうち、光の照射により硬化する光硬化性組成物は、少なくとも重合性化合物と光重合開始剤とを含有し、必要に応じて非重合性化合物または溶剤を更に含有してもよい。非重合性化合物は、増感剤、水素供与体、内添型離型剤、界面活性剤、酸化防止剤、ポリマー成分などの群から選択される少なくとも一種である。
【0016】
基板の材料としては、例えば、ガラス、セラミックス、金属、半導体、樹脂等が用いられうる。必要に応じて、基板の表面に、基板とは別の材料からなる部材が設けられてもよい。基板は、例えば、シリコンウエハ、化合物半導体ウエハ、石英ガラスである。
【0017】
図1は、本実施形態に係るインプリント装置の構成を示す図である。このインプリント装置は、本実施形態では、紫外線の照射によってインプリント材を硬化させる光硬化法を採用するが、これに限定されるものではなく、例えば入熱によってインプリント材を硬化させる熱硬化法を採用することもできる。
【0018】
インプリント装置は、パターンが形成された型を用いて基板上のインプリント材を成形する。図1に示すように、基板保持部5は基板ステージ7上に配置されており、基板保持部5の上には基板2が吸着保持される。基板2上に設けられたアライメントマークを、不図示のアライメント光学系によって観察することで基板の位置ずれ情報が取得される。また、高さ測定装置15によって、高さ測定装置15から基板2上面までの距離が測定される。
【0019】
一方、型1は型保持部4によって保持され、また、型1のパターン面と高さ測定装置15との相対高さは、事前に計測されているため、基板2上面から型1のパターン面までの距離が算出可能となる。ディスペンサ14は光硬化樹脂としてのインプリント材3を基板2上に供給する。型1を駆動部12により下降させて基板2上に供給されたインプリント材3と接触させると、インプリント材3はパターンの彫り込まれた溝に流入する。型1は、インプリント材を硬化させる光(紫外線)に対して透明な材料で形成されている。
【0020】
光源20から発せられた紫外線は、ハーフミラー19で反射され、型1を通過して基板2上のインプリント材3に入射する。こうして紫外線を照射されたインプリント材は硬化する。その後、型1を駆動部12により上昇させることにより、硬化したインプリント材3から型1が引き離され、型1のパターンの反転パターンが基板上に形成される。観察光学系18は、基板2のショット領域を観察するスコープである。観察光学系18は、インプリント処理の状態、例えば、型1の押印状態や型1へのインプリント材3の充填状態などの確認に用いられる。制御部50は、これらインプリント処理に係る各部を統括的に制御する。
【0021】
上記した駆動部12は、型1を基板2に対して上下させる機構であるが、型1と基板2との間隔を相対的に変化させる機構であればよい。例えば、基板2を型1に対して上下させる機構であってもよいし、あるいは型1と基板2をそれぞれ上下させる機構を備えていてもよい。
【0022】
基板保持部5は、例えば、真空吸着により基板2を保持する。図2は、基板保持部5を型1側から見た図である。図2に示されるように、基板保持部5の基板2と接する面には、複数の吸着領域(保持領域)5a~5cが同心円状に形成されている。吸着領域5a、5b、5cに対応する基板の領域をそれぞれ、Zоne1、Zоne2、Zоne3とする。
【0023】
図3に、図2のA-A´線に沿う断面図を示す。複数の吸着領域5a~5cはそれぞれ、空気圧調整機構に接続される。なお、図3では吸着領域5a、5bに対応する接続構成の図示は省略している。ここでは代表的に、吸着領域5cについて説明する。吸着領域5cには配管31が接続されている。配管31は途中で流路切替弁32によって二股に分かれ、一方はレギュレータ33を介して不図示の真空ポンプに接続され、他方はレギュレータ34を介して不図示のコンプレッサに接続される。
【0024】
基板2を吸着保持する場合、制御部50は、流路切替弁32を真空ポンプ側に切り替える。これにより、吸着領域5c内の空気が配管31、流路切替弁32、レギュレータ33を介して真空ポンプへ吸引され、吸着領域5c内は負圧となって基板2が吸着される。このとき、レギュレータ33は、制御部50の制御の下、吸着力(基板保持部5が基板を引き付ける力、基板を保持する保持力)を制御することができる。
【0025】
基板2の吸着保持を解除する場合、制御部50は、流路切替弁32をコンプレッサ側に切り替える。これにより、コンプレッサからの空気がレギュレータ34、流路切替弁32、配管31を介して吸着領域5cに供給され、吸着領域5a内は正圧となって基板2が基板保持部5から離脱する。
【0026】
他の吸着領域5a、5bについても同様の構成であるので、説明を省略する。このように本実施形態の基板保持部5は、複数の吸着領域5a~5cにおける吸着力をそれぞれ独立に制御可能な構成となっている。
【0027】
(実施例1)
次に、図4を用いて、実施例1における基板上のショット領域の配置とグループ分けについて説明する。図4では、基板上に複数のショット領域(1a~1f、2a~2d)が1列に並んでおり、ショット領域1a~1fをグループ1、ショット領域2a~2dをグループ2とする。図4において、グループ1に属するショット領域1a~1fは、Zоne2とZоne3を含む領域に位置している。ショット領域1a、1fはZоne3に配置され、ショット領域1c、1dはZоne2に配置され、ショット領域1b、1eはZоne2とZоne3にまたがって配置されている。グループ2に属するショット領域2a~2dは、Zоne1とZоne2を含む領域に位置している。ショット領域2b、2cはZоne1に配置され、ショット領域2a、2dはZоne1とZоne2にまたがって配置されている。
【0028】
本実施形態においては、基板上の隣り合う複数のショット領域にインプリント材を塗布し、その後、ショット領域ごとにパターン形成を行う、マルチフィールドディスペンス方式のパターン形成が実行される。グループ1に属するショット領域1a~1f、グループ2に属するショット領域2a~2dに対して順にパターン形成を行う流れについて、図5のフローチャートを用いて説明する。制御部50は、コンピュータプログラムである制御プログラムに従って、図5のフローチャートに示す制御を行う。
【0029】
図5のステップS501では、基板上のパターン形成を行うショット領域の列を決定する。ここでは、図4で示した複数のショット領域(1a~1f、2a~2d)から構成されるショット領域の列が決定される。最初にパターン形成を行う対象はグループ1のショット領域であるため、ステップS502において、グループ1に属するショット領域1a~1fが位置する吸着領域5b、5c(第1保持領域)の吸着力(第1保持力)を小さくする。このときの吸着力を第1の値とし、例えば、-5kPa程度に設定される。そして、吸着領域5b、5c以外の吸着領域である吸着領域5a(第2保持領域)の吸着力(第2保持力)を第1保持力よりも大きくする。
【0030】
吸着領域5b、5cの吸着力を小さくすることで、基板のZоne2、3に残留した歪みを開放することができる。吸着領域5b、5cの圧力をゼロにすることで、歪みを効果的に開放することができる。吸着領域5b、5cに弱い負圧をかけることで、基板の位置ずれを防ぎつつ、歪みの開放を実現することができる。
【0031】
続いて、ステップS503において、グループ1に属するショット領域1a~1f上にインプリント材が塗布される。インプリント材の塗布に関して、基板とディスペンサ14を相対的に駆動させる動作が含まれる。例えば、図1におけるX方向に基板ステージ7を移動させながら、ディスペンサ14からショット領域1a~1fにインプリント材が塗布される。なお、複数のディスペンサ14を用いて、ショット領域1a~1fに一括してインプリント材を塗布しても良い。また、ステップS503の動作をステップS502の動作と並行して行っても良い。
【0032】
ショット領域1a~1fにインプリント材が塗布されると、ステップS504において、ショット領域1a~1fが位置する吸着領域5b、5cの吸着力を大きくする。上述したように、ステップS502における吸着力は第1の値であり、ステップS504における吸着力は、第1の値よりも大きい第2の値に設定される。その後、ステップS505において、基板2上に供給されたインプリント材3と型1の接触が行われる。
【0033】
ステップS504において、吸着領域5b、5cの吸着力を大きくすることにより、インプリント材3と型1が接触する際に生じ得る基板2の位置ずれを低減することができる。その後、ステップS506において、再び吸着領域5b、5cの吸着力を小さくし、紫外線等によりインプリント材を硬化した後に、ステップS507において、硬化したインプリント材3から型1が引き離される。吸着領域5b、5cの吸着力を小さくした状態で型1を引き離すことで、離型時にインプリント材のパターンに不良が生じるリスクを低減することができる。ステップS504における吸着力は第2の値であり、ステップS506における吸着力は、第2の値よりも小さい第3の値に設定される。
【0034】
ここで、離型時に発生し得るパターンの不良について、図6を用いて説明する。図6は、Y軸方向から見た型1と基板2の拡大図であり、型1に形成されたパターン部1pと、基板2上に形成されたインプリント材のパターン2pを示している。硬化したインプリント材から型1を引き離す際には、硬化したインプリント材に強い力が加わり、インプリント材のパターンに不良が発生することがある。そこで、型1を引き離す際に、図6(a)で示したように、型1のパターン部1pを撓ませる技術が知られている。しかしながら、パターン部1pを撓ませるのみでは、インプリント材のパターン2pの水平方向に力が加わり、パターン2pに倒れが生じてしまうおそれがある。
【0035】
そこで、図6(b)に示したように、型1を引き離す際に、型1のパターン部1pと反対側に基板2を撓ませることにより、硬化したインプリント材のパターン2pの水平方向に加わる力を低減させることができる。これにより、パターン2pに倒れ等の不良が発生するリスクを低減できる。
【0036】
図5の説明に戻る。ステップS508において、インプリント材を塗布した全てのショット領域に対してパターンが形成されたか否かの判定が行われる。パターンが形成されていないショット領域が存在する場合には、ステップS504に再度移行し、吸着領域5b、5cの吸着力を大きくする。その後、ステップS505からステップS507の処理が実行され、対象のショット領域に対してパターン形成が行われる。
【0037】
ステップS508において、インプリント材を塗布した全てのショット領域に対してパターンが形成されたと判定された場合には、ステップS509に移行する。ステップS509では、ステップS501で決定された列に属する全てのショット領域に対してパターンが形成されたか否かの判定が行われる。ここでは、グループ2に属するショット領域2a~2dに対してパターン形成が行われていないため、ステップS503に再度移行し、ショット領域2a~2dを対象として、マルチフィールドディスペンス方式でのパターン形成が行われる。
【0038】
ステップS509において、ステップS501で決定された列に属する全てのショット領域に対してパターンが形成されたと判定された場合には、ステップS510に移行する。ステップS510では、基板上の全てのショット領域に対してパターンが形成されたか否かの判定が行われる。ここでは、ステップS501で決定された列以外のショット領域に対してパターン形成が行われていないため、ステップS501に再度移行し、他のショット領域の列が決定され、当該決定された列に対してパターン形成が行われる。ステップS510において、基板上の全てのショット領域に対してパターンが形成されたと判定された場合には、当該基板に対するパターン形成処理を終了する。
【0039】
以上説明したように、吸着領域を基準にして複数のショット領域をグループ分けし、グループごとに歪み開放及びパターン形成を行うことで、スループットの低下を抑制しつつ、パターン形成の精度を向上させることができる。例えば、図4において、ショット領域(1a~1f、2a~2d)の左側から順に歪み開放とパターン形成を行うと、吸着力を変化させる回数が増え、スループットの低下を招き得る。
【0040】
(実施例2)
実施例1では、パターン形成を行うショット領域の列を決定し、その列に含まれるショット領域をグループ分けし、グループごとにインプリント材の塗布、歪み開放、およびパターン形成を行うシーケンスについて説明した。本実施例では、パターン形成を行うショット領域の列を決定した後に、その列に含まれる全てのショット領域に対してインプリント材の塗布を行う。図4において、グループ1に属するショット領域1a~1f、グループ2に属するショット領域2a~2dに対してインプリント材の塗布が行われる。
【0041】
1枚の基板に対してパターン形成を行う流れについて、図7のフローチャートを用いて説明する。制御部50は、コンピュータプログラムである制御プログラムに従って、図7のフローチャートに示す制御を行う。
【0042】
図7のステップS701では、基板上のパターン形成を行うショット領域の列を決定する。ここでは、図4で示した複数のショット領域(1a~1f、2a~2d)から構成されるショット領域の列が決定される。続いてステップS702において、グループ1に属するショット領域1a~1f、グループ2に属するショット領域2a~2dに対してインプリント材の塗布が行われる。
【0043】
次に、ステップS703において、パターン形成を行うグループが決定される。ここでは、グループ1に対するパターン形成が先に行われるものとする。グループ1に属するショット領域1a~1fが位置する吸着領域5b、5cの吸着力(第1保持力)を小さくする。例えば、-5kPa程度に設定される。そして、吸着領域5b、5c以外の吸着領域である吸着領域5aの吸着力(第2保持力)を第1保持力よりも大きくする。
【0044】
ステップS704からステップS707の処理は、それぞれ図5におけるステップS504からステップS507の処理と同様であるため、説明を省略する。ステップS708において、ステップS703で決定されたグループ1の全てのショット領域に対してパターン形成が完了した否かの判定が行われる。パターンが形成されていないショット領域が存在する場合には、ステップS704に再度移行し、吸着領域5b、5cの吸着力を大きくする。その後、ステップS705からステップS707の処理が実行され、対象のショット領域に対してパターン形成が行われる。
【0045】
ステップS708においてグループ1の全てのショット領域に対してパターンが形成されたと判定された場合には、ステップS709に移行する。ステップS709では、ステップS701で決定された列に属する全てのショット領域に対してパターンが形成されたか否かの判定が行われる。ここでは、グループ2に属するショット領域2a~2dに対してパターン形成が行われていないため、ステップS703に再度移行し、ショット領域2a~2dを対象としてパターン形成が行われる。
【0046】
ステップS709において、ステップS701で決定された列に属する全てのショット領域に対してパターンが形成されたと判定された場合には、ステップS710に移行する。ステップS710では、基板上の全てのショット領域に対してパターンが形成されたか否かの判定が行われる。ここでは、ステップS701で決定された列以外のショット領域に対してパターン形成が行われていないため、ステップS701に再度移行し、他のショット領域の列が決定され、当該決定された列に対してパターン形成が行われる。ステップS710において、基板上の全てのショット領域に対してパターンが形成されたと判定された場合には、当該基板に対するパターン形成処理を終了する。
【0047】
以上説明したように、実施例2では、パターン形成を行うショット領域の列を決定した後に、その列に含まれる全てのショット領域に対してインプリント材の塗布を行うため、インプリント材の塗布に要する時間を短縮することができる。図1で説明したように、インプリント材の塗布はパターン形成が行われる位置から離れた位置で行われるため、インプリント材の塗布をまとめて行うことで、スループットの向上を実現できる。
【0048】
(実施例3)
実施例1及び2では、X軸方向(第1方向)に配列された複数のショット領域を列として、列ごとにパターン形成を行っている。実施例3では、X軸方向と垂直なY軸方向(第2方向)に並んだ複数の列をまとめてパターン形成の対象とすることにより、スループットの更なる向上を実現している。
【0049】
図8で示したように、基板上に複数のショット領域(1a~1l、2a~2l)が位置している。実施例1で説明したように、各ショット領域は吸着領域に基づいてグループ分けされ、グループごとに順次パターン形成が行われる。例えば、ショット領域1a~1lをグループ1、ショット領域2a~2lをグループ2とする。複数のショット領域(1a~1l、2a~2l)に対してまとめてインプリント材の塗布を行った上で、グループごとに順次歪みの開放とパターン形成が行われる。
【0050】
なお、本実施では2列のショット領域をパターン形成の対象として設定する例について説明したが、3列以上のショット領域をパターン形成の対象とすることも可能である。基板上の全てのショット領域をパターン形成の対象としても良い。
【0051】
(物品製造方法の実施形態)
本発明の実施形態に係る物品製造方法は、例えば、半導体デバイス等のマイクロデバイスや微細構造を有する素子等の物品を製造するのに好適である。本実施形態の物品製造方法は、基板上のインプリント材にインプリント装置を用いてパターンを形成する第1工程と、この第1工程でパターンが形成された基板を加工(処理)する第2工程とを含む。更に、かかる製造方法は、他の周知の工程(酸化、成膜、蒸着、ドーピング、平坦化、エッチング、レジスト剥離、ダイシング、ボンディング、パッケージング等)を含む。本実施形態の物品製造方法は、従来の方法に比べて、物品の性能・品質・生産性・生産コストの少なくとも1つにおいて有利である。
【0052】
インプリント装置を用いて形成した硬化物のパターンは、各種物品の少なくとも一部に恒久的に、或いは各種物品を製造する際に一時的に、用いられる。物品とは、電気回路素子、光学素子、MEMS、記録素子、センサ、或いは、型等である。電気回路素子としては、DRAM、SRAM、フラッシュメモリ、MRAMのような、揮発性或いは不揮発性の半導体メモリや、LSI、CCD、イメージセンサ、FPGAのような半導体素子等が挙げられる。型としては、インプリント用の型等が挙げられる。
【0053】
硬化物のパターンは、上記物品の少なくとも一部の構成部材として、そのまま用いられるか、或いは、レジストマスクとして一時的に用いられる。基板の加工工程においてエッチング又はイオン注入等が行われた後、レジストマスクは除去される。
【0054】
次に、物品製造方法について説明する。図9(a)に示すように、絶縁体等の被加工材2zが表面に形成されたシリコン基板等の基板1zを用意し、続いて、インクジェット法等により、被加工材2zの表面にインプリント材3zを付与する。ここでは、複数の液滴状になったインプリント材3zが基板上に付与された様子を示している。
【0055】
図9(b)に示すように、インプリント用の型4zを、その凹凸パターンが形成された側を基板上のインプリント材3zに向け、対向させる。図9(c)に示すように、インプリント材3zが付与された基板1zと型4zとを接触させ、圧力を加える。インプリント材3zは型4zと被加工材2zとの隙間に充填される。この状態で硬化用のエネルギーとして光を型4zを介して照射すると、インプリント材3zは硬化する。
【0056】
図9(d)に示すように、インプリント材3zを硬化させた後、型4zと基板1zを引き離すと、基板1z上にインプリント材3zの硬化物のパターンが形成される。この硬化物のパターンは、型の凹部が硬化物の凸部に、型の凹部が硬化物の凸部に対応した形状になっており、即ち、インプリント材3zに型4zの凹凸パターンが転写されたことになる。
【0057】
図9(e)に示すように、硬化物のパターンを耐エッチング型としてエッチングを行うと、被加工材2zの表面のうち、硬化物が無いか或いは薄く残存した部分が除去され、溝5zとなる。図9(f)に示すように、硬化物のパターンを除去すると、被加工材2zの表面に溝5zが形成された物品を得ることができる。ここでは硬化物のパターンを除去したが、加工後も除去せずに、例えば、半導体素子等に含まれる層間絶縁用の膜、つまり、物品の構成部材として利用してもよい。
【符号の説明】
【0058】
1 型
2 基板
5 基板保持部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9