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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-21
(45)【発行日】2024-07-01
(54)【発明の名称】中空突起具の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C08J 9/00 20060101AFI20240624BHJP
   B29C 59/02 20060101ALI20240624BHJP
【FI】
C08J9/00 Z CER
C08J9/00 Z CEZ
B29C59/02 Z
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2020112174
(22)【出願日】2020-06-29
(65)【公開番号】P2022011197
(43)【公開日】2022-01-17
【審査請求日】2023-03-10
(73)【特許権者】
【識別番号】000000918
【氏名又は名称】花王株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002170
【氏名又は名称】弁理士法人翔和国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】玉腰 正人
(72)【発明者】
【氏名】新津 貴利
(72)【発明者】
【氏名】浜本 伸二
【審査官】山本 晋也
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2016/060020(WO,A1)
【文献】国際公開第2017/130799(WO,A1)
【文献】特開2017-176653(JP,A)
【文献】国際公開第2017/170816(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08J9/00-9/42
B29C44/00-44/60
B29C59/00-59/18
B29C67/20
A61F2/82-2/97
A61M25/00-29/04
A61M35/00-36/08
A61M37/00
A61M99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
微細な中空突起部を備えた中空突起具の製造方法であって、
熱可塑性樹脂を含んで形成された基材シートの一面側から凸型部を当接させ、その当接部分を熱により軟化させながら、該凸型部を該基材シートに刺してゆき、該基材シートの他面側から突出する中空突起部を形成する突起形成工程と、
前記中空突起部の内部に前記凸型部を刺した状態で該中空突起部を冷却する冷却工程と、
前記冷却工程の後に、前記中空突起部の内部から前記凸型部を抜いて前記中空突起具を形成するリリース工程とを備え、
前記突起形成工程において、前記凸型部にエネルギーを付与する手段を、予め設定した条件に基づき制御し、前記凸型部の刺入高さに応じて、前記基材シートに加わる熱量を変化させることで、前記中空突起部の形状を制御し、
前記突起形成工程は、少なくとも前記凸型部の刺入高さを読み取る工程、読み取った値から対応する加熱条件のパラメータを算出する算出工程、算出したパラメータを指令する工程の3つを含み、前記3つの工程を繰り返すことで前記刺入高さと前記基材シートに加わる熱量の変化を同期させる、中空突起具の製造方法。
【請求項2】
前記算出工程は、予め設定した凸型部の刺入高さに対する加熱条件を関係式で算出する、請求項に記載の中空突起具の製造方法。
【請求項3】
前記凸型部にエネルギーを付与する手段が超音波振動装置である、請求項1又は2に記載の中空突起具の製造方法。
【請求項4】
前記突起形成工程における前記基材シートに加わる熱量の変化は、前記超音波振動装置による前記凸型部に対する超音波振幅、発振周波数又は前記凸型部が前記基材シートに刺す際の刺入速度の少なくとも1つを加熱条件のパラメータとする、請求項に記載の中空突起具の製造方法。
【請求項5】
前記基材シートに加わる熱量が連続的に変化する、請求項1~の何れか一項記載の中空突起具の製造方法。
【請求項6】
前記突起形成工程において、前記凸型部と前記基材シートとの当接直後における熱量が、中空突起部形成直後における熱量よりも小さい、請求項1~の何れか一項記載の中空突起具の製造方法。
【請求項7】
前記中空突起部に開孔手段を用いて開孔する開孔工程を有し、
前記突起形成工程は、前記開孔工程で形成される開孔位置に合わせて、前記中空突起部の形状を制御する、請求項1~の何れか一項に記載の中空突起具の製造方法。
【請求項8】
前記中空突起部の頂点を通る何れかの縦断面を視て、該中空突起部の突出方向と直交する幅方向に位置する外面同士の間隔を外径、該幅方向に位置する内面同士の間隔を内径、該内径が0より大きい領域における前記外径と前記内径の差の半分の値を肉厚と定義したときに、
前記突起形成工程においては、前記中空突起部の肉厚に関し、前記開孔位置の肉厚が他の部位の肉厚と比べて薄くなるように前記中空突起部の形状を制御する、請求項7に記載の中空突起具の製造方法。
【請求項9】
前記開孔手段は、レーザー照射装置である請求項7又は記載の中空突起具の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、中空突起具の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、樹脂体を配した弾性体の裏面側から樹脂体の軟化温度より高い温度で加熱しながら微細針を樹脂体に貫通させるとともに弾性体に穿刺し、該弾性体の穿刺穴と微細針との間に軟化ないし溶融した樹脂を導入し微細な中空突起部を形成し、樹脂体を冷却して固化させ、固化した樹脂体を前記微細針および前記弾性体から取り出すことで中空突起物を製造する製造方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許6106922号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
対象物に加熱した微細針などの凸型部を挿入して中空突起物を形成する場合、中空突起物の形状は、凸型部の形状、凸型部を介して対象物に伝わる熱量に依存することが多い。特許文献1に記載の技術では、凸型部となる微細針の刺入高さに応じて熱量を変更していないため、中空突起物の形状を高精度に制御することは難しい。
したがって本発明の課題は、前述した従来技術が有する欠点を解消し得る中空突起具の製造方法および製造装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、微細な中空突起部を備えた中空突起具の製造方法であって、熱可塑性樹脂を含んで形成された基材シートの一面側から凸型部を当接させ、その当接部分を熱により軟化させながら、該凸型部を該基材シートに刺してゆき、該基材シートの他面側から突出する中空突起部を形成する突起形成工程と、前記中空突起部の内部に前記凸型部を刺した状態で該中空突起部を冷却する冷却工程と、前記冷却工程の後に、前記中空突起部の内部から前記凸型部を抜いて前記中空突起具を形成するリリース工程とを備え、前記突起形成工程において、前記凸型部にエネルギーを付与する手段を、予め設定した条件に基づき制御し、前記凸型部の刺入高さに応じて、前記基材シートに加わる熱量を変化させることで、前記中空突起部の形状を制御する、中空突起具の製造方法、を提供するものである。
【発明の効果】
【0006】
本発明の中空突起具の製造方法によれば、中空突起部の形状を高精度に制御することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1図1は、本発明の中空突起具の製造方法で製造されるマイクロニードルアレイの一例の模式斜視図である。
図2図2(a)は、図1に示す1個の中空突起部の斜視図であり、図2(b)は、図2(a)に示すA-A線断面端面図である。
図3図3は、中空突起物の先端径の測定方法を示す説明図である。
図4図4は、図1に示す中空突起具を製造する製造装置の本実施形態の全体構成を示す図である。
図5図5は、凸型部の先端角度の測定方法を示す説明図である。
図6図6は、凸型部の刺入高さに応じて単位刺入高さあたりのシートに加わる熱量を変化させる制御系の構成を説明する図である。
図7図7(a)~(c)は、読み取った凸型部の刺入高さ(座標値)から対応する加熱条件のパラメータを算出する算出工程を示す図である。
図8図8は、凸型部の高さを読み取る工程、読み取った値から対応する加熱条件のパラメータを算出する算出工程、算出したパラメータを指令する工程を制御の一形態を説明するフローチャートである。
図9図9は、図4に示す製造装置を用いて中空突起物を製造する製造工程と、シートに加わる熱量を変化させるタイミングと変化量の関係を説明する図である。
図10図10(a)~(c)は、シートに加わる熱量を変化させない従来の形態と、本実施形態に係る突起部の刺入高さに応じてシートに加わる熱量を切替える形態の比較を示す図である。
図11図11(a)、(b)、(c)は、凸型部の刺入高さに応じてシートに加わる熱量を切替える切り替えパターンの別な形態を説明する図である。
図12図12は開孔を有する中空突起具を製造する製造装置の全体構成を示す図である。
図13図13は開孔を有する1個の中空突起部の構成を説明する断面端面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明を、その好ましい実施形態に基づき図面を参照しながら説明する。
本発明の製造方法は、内部が中空の微細な中空突起具の製造方法である。図1には、実施形態の微細な中空突起具の製造方法で製造される一実施形態の微細な中空突起具1としてのマイクロニードルアレイ1(M)の斜視図が示されている。実施形態のマイクロニードルアレイ1(M)は、シート状の基底部2と複数の中空突起部3とを有している。中空突起部3の数、中空突起部3の配置及び中空突起部3の形状には、特に制限はないが、本実施形態のマイクロニードルアレイ1(M)は、好適には、シート状の基底部2の上面に、9個の円錐台状の中空突起部3をアレイ(行列)状に有している。アレイ(行列)状に配された9個の中空突起部3は、後述する基材シート2Aを搬送する方向(基材シート2Aの長手方向)であるY方向に3行、搬送する方向と直交する方向及び搬送される基材シート2Aの幅方向であるX方向に3列に配されている。
【0009】
図2(a)は、マイクロニードルアレイ1(M)の有するアレイ(行列)状の中空突起部3の内の1個の中空突起部3に着目したマイクロニードルアレイ1(M)の斜視図であり、図2(b)は、図2(a)に示すA-A線断面端面図である。図2(a),(b)に示す中空突起具1は、シート状の基底部2と、基底部2の上面上に立設する1個の円錐状の中空突起部3とを有する。中空突起具1は、図2(b)に示すように、内部が中空に形成されている。具体的には、中空の空間が、基底部2を貫通して、中空突起部3の内部にまで亘って形成されている。中空突起具1においては、中空突起部3の内部の空間が、中空突起部3の外形形状に対応した円錐状に形成されている。尚、中空突起部3は、中空突起具1においては、円錐状であるが、円錐状の形状以外に、円錐台状、円柱状、角柱状、角錐状、角錐台状等であってもよい。
【0010】
中空突起具1は、中空突起部3の突出高さH1(図2(b)参照)が、マイクロニードルとして使用する場合には、その先端を最も浅いところでは角層まで、深くは真皮まで刺入するため、好ましくは0.01mm以上、更に好ましくは0.02mm以上であり、そして、好ましくは10mm以下であり、更に好ましくは5mm以下であり、具体的には、好ましくは0.01mm以上10mm以下であり、更に好ましくは0.02mm以上5mm以下である。突出高さH1は、中空突起部3が突出している基底部2の上面側となる他面側2Uと平行であって中空突起部3の頂点Pを通る仮想線P1と他面側2Uとの間の距離である。なお、他面側2Uが平坦面ではなく、波打つような凹凸がある場合、中空突起部3の突出方向Hに対して直交し、頂点Pを通る仮想線P1と、他面側2Uの凸部分の頂部を結び仮想線P1と互いに平行な仮想線間距離を突出高さH1とすればよい。突出高さH1は、例えば査型電子顕微鏡(SEM)もしくはマイクロスコープを用いて所定倍率拡大した状態で、頂点Pを通る仮想線P1と他面側2Uまでの間の距離を計測することで計測することができる。
【0011】
中空突起部3は、突起部の頂点Pを通る何れかの縦断面を視た際に、中空突起部3の突出方向Hと直交する幅方向X1に位置する外面32同士の間隔を外径r1とし、幅方向X1に位置する内面31同士の間隔を内径r2としたとき、内径が0より大きい領域における外径と内径の差の半分の値を肉厚T1と定義している。
基底部2は、他面側2Uから一面側2Dまでの厚みT2が、好ましくは0.01mm以上、更に好ましくは0.02mm以上であり、そして、好ましくは1.0mm以下であり、更に好ましくは0.7mm以下であり、具体的には、好ましくは0.01mm以上1.0mm以下であり、更に好ましくは0.02mm以上0.7mm以下である。厚みT2は基材シート2Aの厚さである。
【0012】
中空突起部3の先端径は、その直径が、好ましくは0.001mm以上、更に好ましくは0.005mm以上であり、そして、好ましくは0.5mm以下であり、更に好ましくは0.3mm以下であり、具体的には、好ましくは0.001mm以上0.5mm以下であり、更に好ましくは0.005mm以上0.3mm以下である。中空突起具1の中空突起部3の先端径は、以下のようにして測定する。
【0013】
〔中空突起部3の先端径の測定〕
中空突起部3の先端部を、走査型電子顕微鏡(SEM)もしくはマイクロスコープを用いて所定倍率拡大した状態で、例えば、図3に示すSEM画像のように観察する。次に、図3に示すように、両側辺1a,1bの内の一側辺1aにおける直線部分に沿って仮想直線ILaを延ばし、他側辺1bにおける直線部分に沿って仮想直線ILbを延ばす。そして、先端側にて、一側辺1aが仮想直線ILaから離れる箇所を第1先端点1a1として求め、他側辺1bが仮想直線ILbから離れる箇所を第2先端点1b1として求める。このようにして求めた第1先端点1a1と第2先端点1b1とを結ぶ直線の長さLを、走査型電子顕微鏡(SEM)又はマイクロスコープを用いて測定し、測定した該直線の長さを、中空突起部3の先端径とする。
本実施形態では、中空突起具1が複数の中空突起部3を備えているので、中空突起部3の先端径としたが、中空突起具1が1つの中空突起部3から構成されている場合、中空突起部3の先端径は、中空突起具1の先端径となる。
【0014】
次に、本発明の中空突起具の製造方法を、前述したマイクロニードルアレイ1(M)の製造方法を例にとり図4図9を参照して説明する。図4には、実施形態の製造方法の実施に用いる実施形態の製造装置100の全体構成が示されている。尚、上述したように、マイクロニードルアレイ1(M)の中空突起部3は非常に小さなものであるが、説明の便宜上、図4においては突起部3が非常に大きく描かれている。
【0015】
図4に示す製造装置100は、基材シート2Aに中空突起部3を形成する突起部形成部10、冷却部20、凸型部11を抜き出すリリース部30を備えている。以下の説明では、基材シート2Aを搬送する方向(基材シート2Aの長手方向)をY方向、搬送する方向と直交する方向及び搬送される基材シート2Aの幅方向をX方向、搬送される基材シート2Aの厚み方向をT方向として説明する。なお、本明細書において凸型部11とは、基材シート2Aに刺さる部分である凸型110を備えた部材のことである。凸型110は、本実施形態では、円盤状の土台部111の上に配された構造となっている。ただし、これに限られず凸型110のみからなる凸型部11であっても良いし、複数の凸型110を台状支持体の上に配した凸型部11であっても良い。
【0016】
製造装置100は、図4に示すように、熱可塑性樹脂を含んで形成された基材シート2Aの原反ロールから帯状の基材シート2Aを繰り出し、Y方向に搬送する。そして、基材シート2Aが所定位置まで送られたところで、基材シート2Aの搬送を止める。このように、実施形態においては、帯状の基材シート2Aの搬送を間欠的に行うようになっている。
基材シート2Aの搬送は、原反ロールからの搬送に限らず、例えば予め所定の大きさに切断された基材シート2Aをロボット等により、間欠的に所定位置に供給する形態であっても良い。
【0017】
基材シート2Aは、製造する中空突起具1の有する基底部2となるシートであり、熱可塑性樹脂を含んで形成されている。熱可塑性樹脂としては、ポリ脂肪酸エステル、ポリカーボネート、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリエステル、ポリアミド、ポリアミドイミド、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルイミド、ポリスチレン、ポリエチレンテレフタレート類、ポリ塩化ビニル、ナイロン樹脂、アクリル樹脂等又はこれらの組み合わせが挙げられ、生分解性の観点から、ポリ脂肪酸エステルが好ましく用いられる。ポリ脂肪酸エステルとしては、具体的に、ポリ乳酸、ポリグリコール酸又はこれらの組み合わせ等が挙げられる。尚、基材シート2Aは、熱可塑性樹脂以外に、ヒアルロン酸、コラーゲン、でんぷん、セルロース等を含んだ混合物で形成されていても良い。基材シート2Aの厚みは、製造する中空突起具1の有する基底部2の厚みT2と同等である。
【0018】
凸型部11の先端側の形状は、製造する中空突起具1の有する中空突起部3の外形形状に対応した形状となっていればよい。凸型部11の凸型110は、その高さH2(図4参照)が、製造される中空突起具1(中空突起部3)の突出高さH1と同じか或いは若干高く形成されており、好ましくは0.01mm以上、更に好ましくは0.02mm以上であり、そして、好ましくは30mm以下であり、更に好ましくは20mm以下であり、具体的には、好ましくは0.01mm以上30mm以下であり、更に好ましくは0.02mm以上20mm以下である。
凸型部11の凸型110は、その先端径D1(図5参照)が、好ましくは0.001mm以上、更に好ましくは0.005mm以上であり、そして、好ましくは1mm以下であり、更に好ましくは0.5mm以下であり、具体的には、好ましくは0.001mm以上1mm以下であり、更に好ましくは0.005mm以上0.5mm以下である。凸型部11の凸型110の先端径D1は、以下のようにして測定する。
【0019】
〔凸型部11の凸型110の先端径の測定〕
凸型部11の凸型110の先端径の測定は、走査型電子顕微鏡(SEM)もしくはマイクロスコープを用いて所定倍率拡大した状態で観察する。次に、図5に示すように、両側辺11a,11bの内の一側辺11aにおける直線部分に沿って仮想直線ILcを延ばし、他側辺11bにおける直線部分に沿って仮想直線ILdを延ばす。そして、先端側にて、一側辺11aが仮想直線ILcから離れる箇所を第1先端点11a1として求め、他側辺11bが仮想直線ILdから離れる箇所を第2先端点11b1として求める。このようにして求めた第1先端点11a1と第2先端点11b1とを結ぶ直線の長さD1を、走査型電子顕微鏡(SEM)又はマイクロスコープを用いて測定し、測定した該直線の長さを、凸型110の先端径とする。
【0020】
凸型部11の凸型110は、その根本径D2が、好ましくは0.1mm以上、更に好ましくは0.2mm以上であり、そして、好ましくは5mm以下であり、更に好ましくは3mm以下であり、具体的には、好ましくは0.1mm以上5mm以下であり、更に好ましくは0.2mm以上3mm以下である。凸型部11の凸型110は、十分な強度が得られ易くなる観点から、その先端角度αが、好ましくは1度以上、更に好ましくは5度以上である。そして、先端角度αは、適度な角度を有する中空突起部3を得る観点から、好ましくは60度以下であり、更に好ましくは45度以下であり、具体的には、好ましくは1度以上60度以下であり、更に好ましくは5度以上45度以下である。凸型部11の先端角度αは、以下のようにして測定する。
【0021】
〔凸型部11の凸型110の先端角度αの測定〕
凸型部11の凸型110の先端部を、走査型電子顕微鏡(SEM)もしくはマイクロスコープを用いて所定倍率拡大した状態で、例えば、図5に示すSEM画像のように観察する。次に、図5に示すように、両側辺11a,11bの内の一側辺11aにおける直線部分に沿って仮想直線ILcを延ばし、他側辺11bにおける直線部分に沿って仮想直線ILdを延ばす。そして、仮想直線ILcと仮想直線ILdとのなす角を、走査型電子顕微鏡(SEM)又はマイクロスコープを用いて測定し、測定した該なす角を、凸型部11の凸型110の先端角度αとする。
【0022】
凸型部11は、折れ難い高強度の材質で形成されている。凸型部11の材質としては、鋼鉄、ステンレス鋼、アルミニウム、アルミニウム合金、ニッケル、ニッケル合金、コバルト、コバルト合金、銅、銅合金、ベリリウム銅、ベリリウム銅合金等の金属、又はセラミック等が挙げられる。
【0023】
図4に示すように、製造装置100は、基材シート2Aの他面側2U(上面側)と一面側2D(下面側)とに第1の開口プレート12Uと第2の開口プレート13Dとがそれぞれ配されている。これら開口プレートは撓み抑制部材として機能する。製造装置100は、第1の開口プレート12Uで構成される支持部材12と第2の開口プレート13Dで構成される第2支持部材13とで、基材シート2Aを挟んだ状態で突起部形成工程を行うようになっている。
基材シート2Aを支持する支持部材12は、凸型部11を一面側2Dから刺し込んだ際に基材シート2Aが撓みにくくする役目をしている。したがって、支持部材12は、基材シート2Aにおける凸型部11が刺し込まれる領域以外の領域、言い換えれば、基材シート2Aにおける中空突起部3の形成される領域以外の領域を支持するように配置されている。このように配置される支持部材12として、実施形態の製造装置100では、凸型部11における凸型110を挿通可能な開口部12aを複数有する第1の開口プレート12Uを用いている。第1の開口プレート12Uは、搬送方向(Y方向)に平行に延在する板状部材から形成されている。第1の開口プレート12Uでは、開口部12a以外の領域で基材シート2Aを支持している。
【0024】
第1の開口プレート12Uは、1個の開口部12aに対して凸型部11における凸型110が複数個挿通できるように、凸型110の断面積よりも大きな開口面積で形成されていてもよいが、実施形態の製造装置100では、1個の開口部12aに対して1個の凸型110が挿通されるように形成されている。
【0025】
第1の開口プレート12Uは、基材シート2Aに当接する方向と離間する方向であるT方向(厚み方向)に移動可能となっている。実施形態の製造装置100では、第1の開口プレート12Uは、電動アクチュエータ(図示せず)によって、T方向(厚み方向)の上下に移動可能となっている。第1の開口プレート12Uの動作の制御は、実施形態の製造装置100に備えられた、制御手段(図6)により制御されるようになっている。
【0026】
支持部材12を構成する材質としては、凸型部11の材質と同じ材質でもよく、合成樹脂等から形成されていてもよい。支持部材12である第1の開口プレート12Uの開口部12aの開孔径は、0.1mm以上20mm以下であることが好ましく、0.2mm以上10mm以下であることが更に好ましい。
【0027】
製造装置100では、凸型部11にエネルギーを付与する手段を備えている。凸型部11にエネルギーを付与する手段は加熱手段であり、例えば、図6に示すように、超音波振動装置200で構成されている。超音波振動装置200は、超音波発振器201と、超音波発振器201から送信される超音波信号によって所定の超音波振幅、発振周波数で振動する超音波ホーン202とを備えている。凸型部11は、土台部111が超音波ホーン202に装着されており、超音波ホーン202が振動することで一体となって振動し、基材シート2Aと当接した際に超音波振動を与えることによって、摩擦熱を発生させる。
【0028】
本実施形態においては、中空突起部3を形成する突起形成工程と、中空突起部3の内部に凸型部11を刺した状態で中空突起部3を冷却する冷却工程と、冷却工程の後に、中空突起部3の内部から凸型部11を抜いて中空突起具1を形成するリリース工程とを備えている。
図4に示すように、製造装置100は、熱可塑性樹脂を含んで形成された基材シート2Aの原反ロールから帯状の基材シート2Aを繰り出し、Y方向に搬送する。そしてY方向に搬送されている帯状の基材シート2Aを所定位置で停止させた後、基材シート2Aの一面側2Dから凸型部11を当接させて、基材シート2Aにおける当接部分TP(図9参照)を熱により軟化させながら、凸型部11を基材シート2Aに刺してゆき基材シート2Aの他面側2Uから突出する中空突起部3を形成する(突起部形成工程)。具体的には、凸型部11は、製造する中空突起具1の有する円錐状の中空突起部3の外形形状に対応して、尖鋭な先端の円錐状の部分を有する形状となっている。
【0029】
凸型部11は、T方向(厚み方向)に移動可能となっている。詳細に説明すると、図6に示すように、超音波ホーン202は、スライダー203を介して電動アクチュエータ204に装着されている。
【0030】
製造装置100は、超音波発振器201と電動アクチュエータ204とを制御する制御手段300を備えている。制御手段300は、超音波発振器201から発生される特定の超音波信号と、特定の超音波信号を超音波ホーン202に送信するタイミングを制御するとともに、電動アクチュエータ204の動作を、超音波ホーン202を振動させるタイミングと同期して制御するように構成されている。
【0031】
より詳細に説明すると、制御手段300は、D/A変換器301、発振器制御部302及びアクチュエータ制御部303を備えている。D/A変換器301と発振器制御部302は、信号線を介してそれぞれ超音波発振器201と接続されており、各種信号の送受信が可能に構成されている。D/A変換器301はアナログ電圧信号を超音波発振器201へと送信する。発振器制御部302は、発振指令を超音波発振器201に送信する。アクチュエータ制御部303は、アクチュエータアンプ304及び信号線を介して電動アクチュエータ204と接続されていて、電動アクチュエータ204の駆動制御と、電動アクチュエータ204の駆動により進退するプランジャ等の可動片の位置や変位量の検出が、可能とされている。
【0032】
本実施形態では、凸型部11を、電動アクチュエータ204の一体に変位させて基材シート2Aに刺入する際に、凸型部11の刺入高さに応じて、超音波発振器201の出力値を変化させ、基材シート2Aに加わる熱量を変化させる。
凸型部11の刺入高さは、凸型部11を基材シート2Aに刺入する際に、時々刻々と変化する刺入量を示す値であり、より具体的には、T方向(厚み方向)に変化する凸型部11の頂点と、基材シート2Aの一面側2D(シート下面側)との間の距離を、刺入高さとすることができる。凸型部11の刺入高さは、例えば、可動片がT方向(厚み方向)と同方向に進退する電動アクチュエータ204からの出力値に基づき算出される凸型部11の座標値を計測し、基材シート2Aの一面側2Dに凸型部11が接触する初期状態からの座標値の変化量として把握することができる。
【0033】
制御手段300は、突起形成工程において、予め設定した凸型部11の刺入高さとなる座標値Zに応じて単位刺入高さあたりの基材シート2Aに加わる熱量を変化させることで、中空突起部3の形状を制御する。具体的には、座標値Zに応じて超音波振幅を調整することで、基材シート2Aに加わる熱量を変化させている。つまり、基材シート2Aへの刺入中に超音波振幅を可変させることで熱量を変化させて、中空突起部3〔中空突起具1〕の形状を制御している。
このように、制御手段300は、突起形成工程において、凸型部11にエネルギーを付与する手段となる超音波振動装置200を、予め設定した条件に基づき制御し、凸型部11の刺入高さに応じて、基材シート2Aに加わる熱量を変化させることで、中空突起部3〔中空突起具1〕の形状を制御している。
【0034】
制御手段300は、突起形成工程において、凸型部11の刺入高さとなる座標値Zを読み取る工程、読み取った値から対応する加熱条件のパラメータを算出する算出工程、算出したパラメータを指令する工程の3つを含み、これら3つの工程を繰り返すことで座標値Zと基材シート2Aに加わる熱量の変化を同期させている。算出工程は、予め設定した凸型部11の刺入高さである座標値Zに対する加熱条件を、図7(a)に示す関係式で算出する。予め設定した条件とは、この関係式である。関係式は図7(a)に示す式ではなく、高次の関係式を用いてもよい。このような高次の関係式を用いることで、加熱条件を非線形的に変化させることができ、中空突起部3の形状をより高精度に制御することができる。
本実施形態では、加熱条件のパラメータとして、超音波振動装置200による凸型部11に対する超音波振幅を用いている。つまり、発振周波数は固定として超音波振幅を変更するようにしている。加熱条件のパラメータとしては、超音波振幅ではなく、発振周波数を用いてもよい。
【0035】
この制御手段300による読み取る工程、算出工程、指令する工程の具体的な内容について図7図9を用いて説明する。
制御手段300は、図8に示すステップS1において制御開始条件が成立すると、次のステップS2に移行する。制御開始条件とは、例えば凸型部11の座標値Z(刺入高さ)が基材シート2Aの一面側2Dの位置Z0(図9参照)に到達しているか否かである。制御開始条件としては、加熱が開始される座標値Zb(図9参照)なども挙げられる。
制御手段300は、ステップS2において現在の座標値Zを読み取る。具体的には電動アクチュエータ204の駆動に伴い送信されてくる座標値Zを、アクチュエータアンプ304を介してアクチュエータ制御部303で読み取る。このステップS2が読み取る工程となる。
【0036】
制御手段300は、ステップS3において図7(a)に示すような予め設定した加熱条件の関係式へ凸型部11の座標値Zを代入し、ステップS4において、この関係式を用いて振幅デジタル値Dを算出する。制御手段300は、ステップS5において振幅デジタル値Dをアナログ電圧にD/A変換器301を用いて変換する。図7(b)はD/A変換器301による変換の一例を示す。本実施形態では、振幅デジタル値Dの最大値4000に対し、アナログ電圧値Vの上限を5Vとしている。このステップS3~S5が、加熱条件のパラメータを算出する算出工程となる。
【0037】
制御手段300は、図8のステップS6において、ステップS5で変換したアナログ電圧値Vに応じて超音波振動装置200を作動して超音波振幅を変動させる。このステップS6が、パラメータを指令する工程となる。ここでは、図7(c)に示すようにアナログ電圧値Vの最大値5Vのときに超音波振幅が100%となるように、アナログ電圧値Vに応じて超音波振幅を変動させる。具体的には、発振器制御部302から発振指令が超音波発振器201に送信されると、D/A変換器301から送信されたアナログ電圧信号に応じて発振指令が発振器制御部302から超音波発振器201に送られる。超音波発振器201は、この発振指令をトリガとしてアナログ電圧信号に基づく超音波振幅の値で超音波ホーン202が振動するように超音波信号を超音波ホーン202に出力する。
【0038】
制御手段300は、図8のステップS7において、制御終了条件が成立するまでは、ステップS2~S6の工程を繰り返すことで凸型部11の座標値Z(刺入高さ)と基材シート2Aに加わる熱量の変化を同期させる。制御手段300は、制御終了条件が成立すると、この制御を終える。制御終了条件としては、例えば凸型部11の座標値Zが最大上昇位置を示す座標値Zc(図9参照)となったことを検知した時が挙げられる。
【0039】
凸型部11の座標値Z(刺入高さ)が変動すると、それに応じて超音波ホーン202の振幅も変更されるので、凸型部11が移動している間は、基材シート2Aに加わる熱量が、凸型部11の位置に応じて変更されながらも連続的に変化する。
本実施形態においては、突起形成工程において、凸型部11と基材シート2Aとの当接直後における熱量が、突起形成直後における熱量よりも小さくなるように制御手段300によって制御される。すなわち、凸型部11と基材シート2Aとの当接直後の超音波振幅が突起形成直後の超音波振幅よりも小さく設定されている。別な表現をすると、凸型部11と基材シート2Aとの当接直後の超音波振幅よりも突起形成直後の超音波振幅の方が大きく設定されており、凸型部11と基材シート2Aとの当接直後における熱量よりも、突起形成直後における熱量の方が大きくなるように制御手段300によって制御される。
本実施形態において、当接直後とは、図9において凸型部11が座標値Z0の位置に到達した状態であり、突起形成直後とは図9において凸型部11が座標値Zcの位置に到達した状態である。
【0040】
次に図4図9を用いて凸型部11と超音波振幅との関係を製造工程に沿って説明する。
図9において、Zaは凸型部11が基材シート2Aの一面2Dから離間した最下位置にある時の電動アクチュエータ204から送信される座標値であり、Z0は基材シート2Aの一側面2Dの位置を示す座標値である。Zbは加熱が開始される座標値〔刺入高さ〕を示し、Zcは凸型部11が最大上昇位置に到達した時の座標値を示す。
本実施形態の突起部形成工程においては、原反ロールから繰り出されてY方向に搬送されている帯状の基材シート2Aを所定位置で停止させた後、第1の開口プレート12Uと第2の開口プレート13Dを昇降させ、基材シート2Aを第1の開口プレート12Uと第2の開口プレート13Dとで挟んだ状態で突起部形成工程を行うようになっている。この段階においては、凸型部11は、図9(a)に示すように、基材シート2Aの一面側2D(下面側)から離間した位置を占めている。
そして、制御手段300によって電動アクチュエータ204が駆動されて凸型部11を基材シート2Aに向かって上昇移動させると、座標値Z(刺入高さ)に応じた加熱制御が実行される。本実施形態では、座標値Zbとなると、図9(b)に示すように、超音波振動装置200を作動して凸型部11を振動させる。この時の超音波振幅はA1である。
【0041】
本実施形態においては、当接部分TPから離間した待機状態から図9(b)示す上昇工程において電動アクチュエータ204によって凸型部11を当接部分TPに向かって上昇させつつ、超音波振動装置200により凸型部11を振動させる。振動した凸型部11と当接部分TPとが当接することで熱を発生させて当接部分TPを軟化させる。そして、図9(c)に示すように、基材シート2Aの一面側2D(下面側)から他面側2U(上面側)に向かって凸型部11を上昇させて基材シート2Aに刺してゆく。
基材シート2Aに突き刺さった状態で凸型部11が最大上昇位置に向かって上昇を続けると、図9(d)に示すように制御手段300によって超音波振幅がA1からA1よりも振幅の大きいA2へと変更されて当接部分TP(基材シート2A)に与える熱量が多くなり、基材シート2Aの他面側2U(上面側)から突出する中空突起部3が所定の形状を形成する。
【0042】
凸型部11による基材シート2Aの加熱温度は、中空突起部3を効率的に形成する観点から、使用される基材シート2Aのガラス転移温度以上溶融温度未満であることが好ましく、特に軟化温度以上溶融温度未満であることが好ましい。詳述すると前記加熱温度は、好ましくは30℃以上、更に好ましくは40℃以上であり、そして、好ましくは300℃以下であり、更に好ましくは250℃以下であり、具体的には、好ましくは30℃以上300℃以下であり、更に好ましくは40℃以上250℃以下である。本実施形態の場合、この温度範囲になるように、発振周波数や超音波振幅を調整することで加熱温度を調整すればよい。ガラス転移温度(Tg)の測定方法は、以下の方法によって測定され、軟化温度の測定方法は、JIS K-7196「熱可塑性プラスチックフィルム及びシートの熱機械分析による軟化温度試験方法」に従って行う。
【0043】
前記「基材シートのガラス転移温度(Tg)」は、基材シートの構成樹脂のガラス転移温度(Tg)を意味し、該構成樹脂が複数種存在する場合においてそれら複数種のガラス転移温度(Tg)が互いに異なる場合、前記加熱手段による基材シートの加熱温度は、少なくともそれら複数のガラス転移温度(Tg)のうち最も低いガラス転移温度(Tg)以上であることが好ましく、それら複数のガラス転移温度(Tg)のうち最も高いガラス転移温度(Tg)以上であることがさらに好ましい。
また、前記「基材シートの軟化温度」についてもガラス転移温度(Tg)と同様であり、即ち、基材シート2Aの構成樹脂が複数種存在する場合においてそれら複数種の軟化温度が互いに異なる場合、前記加熱手段による基材シートの加熱温度は、少なくともそれら複数の軟化温度のうち最も低い軟化温度以上であることが好ましく、それら複数の軟化温度のうち最も高い軟化温度以上であることがさらに好ましい。
基材シート2Aが融点の異なる2種以上の樹脂を含んで構成されている場合、前記加熱手段による基材シートの加熱温度は、それら複数の融点のうち最も低い融点未満であることが好ましい。
【0044】
〔ガラス転移温度(Tg)の測定方法〕
DSC測定器を使用して熱量の測定を行い、ガラス転移温度を求める。具体的に、測定器はPerkin Elmer社製の示差走査熱量測定装置(Diamond DSC)を使用する。基材シートから試験片10mgを採取する。測定条件は20℃を5分間等温した後に、20℃から320℃まで、5℃/分の速度で昇温させ、横軸温度、縦軸熱量のDSC曲線を得る。そして、このDSC曲線からガラス転移温度Tgを求める。
【0045】
凸型部11を基材シート2Aに刺してゆく刺入速度は、遅過ぎると樹脂を過剰に加熱軟化させ、速過ぎると加熱軟化不足となるので、中空突起部3を効率的に形成する観点から、好ましくは0.1mm/秒以上、更に好ましくは1mm/秒以上であり、そして、好ましくは1000mm/秒以下であり、更に好ましくは800mm/秒以下であり、具体的には、好ましくは0.1mm/秒以上1000mm/秒以下であり、更に好ましくは1mm/秒以上800mm/秒以下である。加熱状態の凸型部11の上昇を停止させ、中空突起部3の内部に凸型部11を刺した状態のまま次工程(冷却工程)までの時間である軟化時間は、長過ぎると過剰加熱となるが、加熱不足を補う観点から、好ましくは0秒より大きく、更に好ましくは0.1秒以上であり、そして、好ましくは10秒以下であり、更に好ましくは5秒以下であり、具体的には、好ましくは0秒より大きく10秒以下であり、更に好ましくは0.1秒以上5秒以下である。
【0046】
前述した凸型部11が最大上昇位置にある時の高さを最大刺入高さと定義する。最大刺入高さは、スライダー203や電動アクチュエータ204等の部材により機械的に制限される上限位置の高さを指すものではない。最大刺入高さは突起部形成工程で凸型部11が最も深く刺し込まれて基材シート2Aの他面側2Uから凸型部11が出てきた状態(図9(d))における、基材シート2Aの一面側2Dから垂直方向に測定した凸型部11の頂点までの距離のことである。例えば突出高さH1=1mmの中空突起部3を製造する場合において、基材シート2Aの厚みT2が0.4mmの場合、最大刺入高さは1.4mmとなり、高さ0.6mmの中空突起部3を製造する場合において、基材シート2Aの厚みT2が0.4mmとすると、最大刺入高さは1.0mmとなる。
【0047】
次に、本実施形態の製造装置100においては、図4に示すように、第1の開口プレート12Uと第2の開口プレート13Dとで基材シート2Aを挟んだ状態で冷却部20において複数の中空突起部3が冷却される。本実施形態では、図9(e)が冷却工程を示し、この状態において超音波振幅は0とされている。超音波振幅を0とするタイミングは、凸型部11が最大上昇位置Zcを占めて所定時間経過した後、制御手段300によって行われ、基材シート2Aに対する加熱制御が停止される。冷却工程では、中空突起部3の内部に凸型部11を刺した状態で冷却する。
【0048】
本実施形態の加熱手段は、超音波振動装置200であるので、振動がなくなると冷却するのが早く、冷却部20に冷却装置を必ず備える必要はない。このように超音波振動装置200を加熱手段として用いると、装置の簡便化とともに、高速での中空突起具1の製造が容易となるので好ましい。また、基材シート2Aの凸型部11と当接していない部分では、より熱が伝わりにくく、また、超音波振動付与のオフによって冷却が効率的に行われるので、成形部分以外の変形が生じにくいという長所がある。
無論、本実施形態は、冷却工程において冷却装置による冷却を否定するものではなく、より早期に冷却させたい場合には、送風ファンなどの公知の冷却装置を冷却部20に設置して複数の中空突起部3を冷却してもよい。
【0049】
次に、本実施形態の製造装置100においては、図4に示すように、リリース部30においてリリース工程が行われる。本実施形態においては、冷却工程の後にリリース工程を行うことで、中空突起部3の内部から凸型部11を抜いて中空突起具1の前駆体1Aを形成する。具体的に、本実施形態のリリース工程においては、図9(f)に示すように、電動アクチュエータ204を駆動して凸型部11を基材シート2Aの一面側2D(下面側)から離間する方向に向かって下降させ、中空突起部3の内部に凸型部11を刺した状態から、凸型部11を抜いて、内部が中空の中空突起具1となる帯状の微細な中空突起部3の前駆体1Aを形成する。
【0050】
ところで、従来から凸型部11を用いて中空突起部3を形成し、最終的に中空突起具1を製造することが行われている。凸型部11を所望の形状に形成することができれば、所望の形状の中空突起部3や中空突起具1を得ることは可能であるが、複雑な形状に凸型部11を加工することは難しく、形状によっては形成することができない。また、加工できた場合でも、中空突起具1を形成する際には、形成したい中空突起具1の形状毎に凸型部11を交換しなければならず、作業性の面で課題を残している。
【0051】
さらに、基材シート2Aの軟化温度より高い温度で加熱しながら凸型部11を基材シート2Aに貫通させて中空突起具1を形成しようとした場合、形成したい中空突起具1の突出高さH1によっては、基材シート2Aへ与える単位高さあたりの熱量の調整が難しい。例えば突出高さH1が1mm程度の場合、熱量が大きいと熱の伝わりが早く突起形状が崩れてしまう。また、熱量が低すぎると基材シート2Aを十分に軟化することができず、中空突起部3を十分に形成することができない。この結果、希望の形状の中空突起具1の形成が困難となる。つまり、凸型部11の形状を変えずに中空突起具1の形状を変更しようとした場合、凸型部11の刺入高さ〔座標値Z〕に応じて与える熱量を制御する必要がある。しかし、凸型部11の熱に対する感度〔温度変化特性〕、基材シート2Aの材質などを考慮して制御しなければ熱量制御によって希望の形状の中空突起具1を形成することは困難である。さらに、熱量制御はせず、凸型部11の刺入速度を単独で変化させて形状を変更しようとした場合、中空突起具1の突出高さH1によっては、刺入速度の変化が形状の形成に影響を与えないこともある。
特許文献1に記載の技術では、樹脂体及び弾性体に穿刺する凸型部11に相当する針の加熱手段としてヒータを用いるが、ヒータの温度変化に対する針の温度変化の応答性が低く、ニードルの形状(中空突起具1の肉厚)を局所的に変化させることができない。すなわち、中空突起具1を製造する際の連続的な温度変化による加工が困難である。
【0052】
これに対し、本実施形態の構成によれば、突起形成工程において、予め設定した凸型部11の刺入高さとなる凸型部11の座標値Zに応じて単位刺入高さあたりの基材シート2Aに加わる熱量を変化させることで、中空突起具1の形状を高精度に制御することができる。このため、凸型部11の形状を変更することなく、所望の形状の中空突起具1を形成することが可能である。つまり、凸型部11にエネルギーを付与する超音波振動装置200が予め設定した条件に基づき制御され、凸型部11の刺入高さに応じて基材シート2Aに加わる熱量を変化させることで、中空突起具1の形状を高精度に制御することができる。
【0053】
本実施形態によれば、凸型部11にエネルギーを付与する手段として超音波振動装置200を用いるので、熱量変化の応答性がよく、より所望の形状の中空突起具1が形成可能である。
本実施形態によれば、凸型部11の刺入高さを読み取る工程、読み取った値から対応する加熱条件のパラメータを算出する算出工程、算出したパラメータを指令する工程の3つを繰り返すことで凸型部11の刺入高さ(座標値)と基材シート2Aに加わる熱量の変化を同期させるため、中空突起具1の形状をより高精度に制御することができる。
さらに、算出工程は、予め設定した凸型部11の刺入高さに対する加熱条件を高次の関係式で算出することで、中空突起具1の形状をより高精度に制御することができる。
【0054】
本実施形態の構成によれば、突起形成工程における基材シート2Aに加わる熱量の変化が、超音波振動装置200による凸型部11の刺入高さ(座標値)に対する超音波振幅を加熱条件のパラメータとするので、温度変化に対する応答性がよく、中空突起具1(中空突起部3)の形状をより高精度に制御することができる。また、基材シート2Aに加わる熱量を連続的に変化させるので、中空突起具1を製造する際の連続的な温度変化による加工が可能でとなり、中空突起具1の形状をより高精度に制御することができる。
本実施形態では、加熱条件のパラメータとして超音波振動装置200による凸型部11の刺入高さ(座標値)に対する超音波振幅を用いたが、凸型部11が基材シート2Aに向かって移動する際の刺入速度をパラメータとして用いてもよい。
【0055】
本実施形態によれば、突起形成工程において、凸型部11と基材シート2Aとの当接直後における熱量を突起形成直後における熱量よりも小さく設定しているので、当接直後における過度な基材シート2Aの軟化による突起先端部の肉薄化を抑えられ、中空突起具1の形状をより高精度に制御することができる。
【0056】
図10は、従来の製造方法と本実施形態に係る製造方法によって製造した突起部の形状の違いを示す比較図である。図10(a)は凸型部11に与える超音波振幅を30%の固定とした時、図10(b)は凸型部11に与える超音波振幅を70%の固定とした時、図10(c)は凸型部11に与える超音波振幅を30%から70%へ切り替えた時の中空突起部3の形状の違いを示す。
図10(a)~(c)においては、超音波振幅以外の条件となる基材シート2Aの厚さ、凸型部の形状、刺入速度、刺入高さ、発振周波数、軟化時間はすべて同一としている。
【0057】
超音波振幅による基材シート2Aへの加熱による中空突起部3の形成は、摩擦熱で中空突起部3の形状を形成している。このため、超音波振幅が高くなるほど熱量は大きく、熱量が大きくなるほど中空突起部3の肉厚T1が薄く、超音波振幅が低いほど熱量は小さく、熱量が小さくなるほど肉厚T1が厚くなる。
図10(a)では、形成される中空突起部3の肉厚は、凸型部11の外形に対して平均的な肉厚で形成されている。図10(b)では、図10(a)に比べて超音波振幅が刺入初期から大きく発熱量が多いため、熱収縮によって中空突起部3の肉厚が図10(a)の場合よりも薄く形成されている。
一方、本発明の製造方法では、図10(c)に示すように、刺入初期は超音波振幅を小さく(例えば30%)とし、刺入が進むにつれて、例えば凸型部11の座標値Z0+0.5mmで超音波振幅を30%から70%に切り替えたところ、図10(a)、図10(b)とは異なる肉厚の中空突起部3が形成された。図10(c)の場合、図10(b)に比べて先端側の肉厚が厚く形成されている。
【0058】
このように、単に基材シート2Aに与える熱量が、凸型部11の刺入高さ(座標値Z)に対して一定の場合よりも、刺入高さ(座標値Z)に応じて変更することで、中空突起部3の肉厚を任意に変化されることができるので、所望の形状に中空突起部3を形成することができる。この結果、中空突起具1の形状をより高精度に制御することができる。
【0059】
超音波振幅の値は、形成したい中空突起具1(中空突起部3)の形状、肉厚によって適宜変更すればよい。超音波振幅の値は、超音波振幅が低すぎると発振が安定しないので、例えば30%以上が好ましい。
【0060】
以上、本発明の好ましい実施の形態について説明したが、本発明は係る特定の実施形態に限定されるものではなく、上述の説明で特に限定していない限り、特許請求の範囲に記載された本発明の趣旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能である。
例えば、超音波振幅の切り替えパターンは、図10(c)に示す形態に限定するものではなく、図11(a)~(b)に示す切り替えパターンであってもよい。図11(a)は、凸型部11と基材シート2Aとの当接直後における熱量が、突起形成直後における熱量よりも大きくされているパターンである。すなわち、図10(c)に示すパターンとは逆に、刺入初期は超音波振幅(A1)を70%、刺入が進むにつれて、凸型部の座標値Z0+0.5mm時の超音波振幅(A2)を30%に切り替えた。このため、刺入初期は超音波振幅を大きくして熱量が大きく、刺入が進むにつれて超音波振幅を小さくして熱量が小さい。
【0061】
図11(b)は、刺入初期は超音波振幅を小さくして熱量を小さく(例えば30%)、刺入が進むにつれて(例えば座標値Z0+0.4mm)で超音波振幅を大きく(例えば70%)して熱量を大きくするが、凸型部11の最大上昇位置(Zc)になる前に例えば(例えば座標値Z0+0.6mm)で超音波振幅を小さく(例えば30%)して熱量を小さくている。
図11(c)は、凸型部の座標値Z0~座標値Zcの間において、加熱条件となる超音波振幅を70%~30%の間で非線形的に変化させたものである。このように、超音波振幅を非線形的に変化させることで、中空突起部3の形状をより高精度に制御することができる。
【0062】
このように、従来と同様の凸型部11の形状であって、凸型部11の座標値と超音波振幅の指令値を同期させることで、刺入中に基材シート2Aに与える単位刺入高さあたりの熱量をコントロールすることができ、中空突起部3の局所的な肉厚の制御が可能である。このため、複雑な凸型部11の作製を必要としない。さらに、品種の異なる中空突起具1を交互に製造する場合でも凸型部11の型替えを不要とするので、生産性の向上につながる。
本実施形態によれば、中空突起部3の局所的な肉厚をコントロールできるので、例えば、先端は強度アップのために厚みを持たせるなどの任意の形状の中空突起具1を形成することができる。
【0063】
製造装置100による製造方法は、中空突起具1に非接触式の開孔手段を用いて開孔する開孔工程を備えていてもよい。図12に示す製造装置100Aは、図4で説明した製造装置100に開孔形成部40を備えたものである。開孔工程は開孔形成部40によって実行される。開孔形成部40は、基材シート2Aの他面側2U(上面側)に非接触式の開孔手段4を備えている。非接触式の開孔手段4としては、レーザー光を照射するレーザー光照射装置、ホットエアーを発射するホットエアー発射装置、赤外線を照射するハロゲンランプ照射装置等、熱源を用いた加工装置が挙げられる。製造装置100Aには、微細加工に必要な集光性や高精度なエネルギー制御が可能である観点から、非接触式の開孔手段4として、レーザー光照射装置が用いられている。
【0064】
レーザー光照射装置(非接触式の開孔手段4)は、図12に示すように、レーザー光4Lを自在に走査するガルバノスキャナである照射ヘッド41を具備する。照射ヘッド41は、基材シート2Aの他面側2U(上面側)に該他面側2UからT方向(厚み方向)の上方に一定の間隔を空けて配置されている。
このように基材シート2Aの他面側2Uに配された照射ヘッド41からレーザー光4Lを、図13(a)に示すように非貫通の中空突起部3に照射すると、図13(b)に示すように、中空突起部3に外面32に中空突起部3の内面31まで貫通する開孔3hを形成することができる。このように、レーザー光4Lの照射により中空突起部3に開孔3hを形成すると、中空突起部3の外面32における開孔3hの周囲にバリが形成され難い。また、中空突起部3の任意の位置に開孔3hを形成し易いため、液剤等を供給したい皮膚表面に対する位置を任意に制御し易い。
【0065】
照射ヘッド41は、図12に示すように、照射されたレーザー光4Lを集光するレンズ43、並びに集光したレーザー光4Lを自在に走査する2枚のミラー42及び保護レンズ44を具備する。保護レンズ44は具備しなくてもよいが、光学系への塵やほこりの進入を防止する観点から具備する方が好ましい。ミラー42は、モータ軸(図示せず)に取り付けられている。ミラー42は、レーザー光4Lが基材シート2A上の中空突起部3に当たる照射点を、Y方向に移動させる機構とX方向に移動させる機構とを備え、レーザー光4Lを自在に走査できるようになっている。レンズ43は、光軸方向に移動可能となっており、レーザー光4Lを集光して、中空突起部3に当たるレーザー光4Lの照射点のスポット径を一定にする機構、該レーザー光4Lの照射点を基材シート2AのT方向(厚み方向)に移動させる機構等を備えている。ミラー42及びレンズ43を有する照射ヘッド41は、レーザー光4Lの照射点をX方向、Y方向及びZ方向からなる3次元に調整できるようになっている。その為、複数(図示の形態では9個)の中空突起部3それぞれの照射したい位置を3次元に座標化することで、レーザー光4Lを各中空突起部3の照射したい位置に所定のスポット径で照射することができる。レーザー光4Lとしては、開孔3hを形成する中空突起部3に吸収され得るものを用いることが好ましい。中空突起部3を形成する基材シート2Aが、熱可塑性樹脂を主体とするフィルム等のシートである場合、レーザー光4Lとしては、COレーザー、エキシマレーザー、アルゴンレーザー、YAGレーザー、LDレーザー(半導体レーザー)、YVOレーザー、ファイバーレーザー等を用いることが好ましい。
【0066】
このように、2次加工となる開孔工程において開孔3hを形成する場合、開孔3hが形成される開孔位置に合わせて、中空突起具1の形状を制御するのが好ましい。すなわち、図13(a)に示すように、基材シート2Aに中空突起部3を形成するに際し、開孔3hが形成される位置の肉厚T1aが他の部位の肉厚T1と比べて薄くなるように超音波振幅を調整する。
このように開孔3hが形成される開孔位置の肉厚T1aが薄く形成できると、開孔3hを形成する際にレーザー出力を抑えることができるので、省エネルギーで開孔することが可能である。すなわち、上述した実施形態のように、予め設定した中空突起部3の刺入高さである座標値Zに応じて単位刺入高さあたりの基材シート2Aに加わる熱量を変化させることで、使用用途に応じて最適な形状〔所望形状〕の中空突起具1を容易に製造することができる。
【0067】
前記実施形態では、凸型部11の座標値と超音波振幅とを同期させて、予め設定した凸型部11の刺入高さに応じて単位刺入高さあたりの基材シート2Aに加わる熱量を変化させるようにしているが、さらに、凸型部11の刺入速度を変更するようにしてもよい。刺入速度の変更は電動アクチュエータ204の駆動を制御することで実現できる。例えば、図10(c)で説明した凸型部11に与える超音波振幅を30%から70%へ切り替える場合であっても、刺入速度を速い場合と遅い場合とでは、基材シート2Aに与える熱量の特性が変化する。
このため、加熱条件のパラメータとして刺入速度を加え、使用用途に応じて刺入速度を切り替えるように制御手段300で電動アクチュエータ204の駆動を制御することで、最適な形状〔所望形状〕の中空突起具1を容易に製造することができるので好ましい。
【0068】
前記各実施形態においては、シート状の基底部2に複数の中空突起部3を形成するため、複数(9つ)の凸型110を備え、これら複数の凸型110は電動アクチュエータ204によって昇降される円盤状の1つの土台部111に隣接して配されている。また、各凸型110の高さはすべて同一の高さとされている。このため、一度の突起形成工程で複数の中空突起部3を形成する場合、各凸型110を備えた一つの凸型部11に対して同一の熱量コントロールが行われるので、複数の中空突起部3間のバラツキを抑制でき、中空突起具1の形状をより高精度に制御することができるので好ましい。
【0069】
上述した実施形態に関し、本発明はさらに以下の中空突起具の製造方法を開示する。
<1>
微細な中空突起部を備えた中空突起具の製造方法であって、
熱可塑性樹脂を含んで形成された基材シートの一面側から凸型部を当接させ、その当接部分を熱により軟化させながら、該凸型部を該基材シートに刺してゆき、該基材シートの他面側から突出する中空突起部を形成する突起形成工程と、
前記中空突起部の内部に前記凸型部を刺した状態で該中空突起部を冷却する冷却工程と、
前記冷却工程の後に、前記中空突起部の内部から前記凸型部を抜いて前記中空突起具を形成するリリース工程とを備え、
前記突起形成工程において、前記凸型部にエネルギーを付与する手段を、予め設定した条件に基づき制御し、前記凸型部の刺入高さに応じて、前記基材シートに加わる熱量を変化させることで、前記中空突起部の形状を制御する、中空突起具の製造方法。
【0070】
<2>
前記突起形成工程は、制御手段によって電動アクチュエータが駆動されて前記凸型部を前記基材シートに向かってに上昇移動させると、前記刺入高さに応じた加熱制御が実行される、前記<1>記載の中空突起具の製造方法。
<3>
前記凸型部にエネルギーを付与する手段が超音波振動装置である、前記<1>又は前記<2>記載の中空突起具の製造方法。
<4>
前記突起形成工程は、少なくとも前記凸型部の刺入高さを読み取る工程、読み取った値から対応する加熱条件のパラメータを算出する算出工程、算出したパラメータを指令する工程の3つを含み、前記3つの工程を繰り返すことで前記刺入高さと前記基材シートに加わる熱量の変化を同期させる、前記<1>、<2>又は<3>記載の中空突起具の製造方法。
<5>
前記算出工程は、予め設定した凸型部の刺入高さに対する加熱条件を関係式で算出する、前記<4>記載の中空突起具の製造方法。
【0071】
<6>
前記算出工程は、制御手段おいて前記凸型部の刺入高さを用いて振幅デジタル値を算出し、つぎに前記振幅デジタル値をアナログ電圧に変換器を用いて変換する、前記<4>記載の中空突起具の製造方法。
<7>
前記突起形成工程における前記基材シートに加わる熱量の変化は、前記超音波振動装置による前記凸型部に対する超音波振幅、発振周波数又は前記凸型部が前記基材シートに刺す際の刺入速度の少なくとも1つを加熱条件のパラメータとする、前記<3>~前記<6>の何れか一項記載の中空突起具の製造方法。
<8>
前記基材シートに加わる熱量が連続的に変化する、前記<1>~前記<7>の何れか一項記載の中空突起具の製造方法。
<9>
前記突起形成工程において、前記凸型部と前記基材シートとの当接直後における熱量が、中空突起部形成直後における熱量よりも小さい、前記<1>~前記<8>の何れか一項記載の中空突起具の製造方法。
【0072】
<10>
前記中空突起部に開孔手段を用いて開孔する開孔工程を有し、
前記突起形成工程は、前記開孔工程で形成される開孔位置に合わせて、前記中空突起部の形状を制御する、前記<1>~前記<9>の何れか一項に記載の中空突起具の製造方法。
<11>
前記突起形成工程は、前記開孔位置の肉厚が他の部位の肉厚と比べて薄くなるように超音波振幅を調整する、前記<10>記載の中空突起具の製造方法。
<12>
前記開孔手段は、レーザー照射装置である前記<10>又は前記<11>記載の中空突起具の製造方法。
【符号の説明】
【0073】
1 中空突起具
2A 基材シート
2D 基材シートの一面側
2U 基材シートの他面側
3 中空突起部
3h 開孔
4 開孔手段(レーザー照射装置)
11 凸型部
200 凸型部にエネルギーを付与する手段(超音波振動装置)
TP 当接部分
Z 凸型部の座標値
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13