(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-21
(45)【発行日】2024-07-01
(54)【発明の名称】基板処理方法および基板処理装置
(51)【国際特許分類】
H01L 21/027 20060101AFI20240624BHJP
H01L 21/304 20060101ALI20240624BHJP
H01L 21/308 20060101ALI20240624BHJP
H01L 21/306 20060101ALI20240624BHJP
G03F 7/40 20060101ALI20240624BHJP
G03F 7/42 20060101ALI20240624BHJP
【FI】
H01L21/30 572B
H01L21/304 647Z
H01L21/304 643A
H01L21/304 648G
H01L21/304 651B
H01L21/308 G
H01L21/306 R
G03F7/40 521
G03F7/42
(21)【出願番号】P 2020120953
(22)【出願日】2020-07-14
【審査請求日】2023-06-20
(73)【特許権者】
【識別番号】000207551
【氏名又は名称】株式会社SCREENホールディングス
(74)【代理人】
【識別番号】110002310
【氏名又は名称】弁理士法人あい特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】田原 香奈
【審査官】植木 隆和
(56)【参考文献】
【文献】特開平05-036661(JP,A)
【文献】特開2007-005711(JP,A)
【文献】特開2007-266430(JP,A)
【文献】特開2010-239014(JP,A)
【文献】特開2019-054198(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/027
G03F 7/20
H01L 21/304
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
硫酸および過酸化水素水の一方
ならびに増粘剤を含む第1処理液を基板の表面に塗布
して、前記基板の表面の全域を覆う塗布膜を形成する第1処理液供給工程と、
前記基板の表面に形成された前記第1処理液
の前記塗布
膜の表面に、硫酸および過酸化水素水の他方を含み、前記第1処理液よりも粘度の低い第2処理液を供給する第2処理液供給工程と、
前記塗布膜を形成する前記第1処理液および前記第2処理液が前記基板の表面で混合して生成される硫酸過酸化水素水混合液で前記基板の表面
の全域を処理する混合液処理工程と、
前記混合液処理工程の後に、前記基板にリンス液を供給して前記硫酸過酸化水素水混合液を前記基板の表面から洗い流すリンス工程と、を含む、基板処理方法。
【請求項2】
増粘剤が含まれた第1処理液を基板の表面に塗布
して、前記基板の表面の全域を覆う塗布膜を形成する第1処理液供給工程と、
前記基板の表面に形成された前記第1処理液
の前記塗布
膜の表面に第2処理液を供給する第2処理液供給工程と、
前記塗布膜を形成する前記第1処理液および前記第2処理液が前記基板の表面で混合して生成される硫酸過酸化水素水混合液で前記基板の表面
の全域を処理する混合液処理工程と、
前記混合液処理工程の後に、前記基板にリンス液を供給して前記硫酸過酸化水素水混合液を前記基板の表面から洗い流すリンス工程と、を含む、基板処理方法。
【請求項3】
過酸化水素水および増粘剤を含む第1処理液を基板の表面に塗布
して、前記基板の表面の全域を覆う塗布膜を形成する第1処理液供給工程と、
前記基板の表面に形成された前記第1処理液
の前記塗布
膜の表面に、硫酸を含む第2処理液を供給する第2処理液供給工程と、
前記塗布膜を形成する前記第1処理液および前記第2処理液が前記基板の表面で混合して生成される硫酸過酸化水素水混合液で前記基板の表面
の全域を処理する混合液処理工程と、
前記混合液処理工程の後に、前記基板にリンス液を供給して前記硫酸過酸化水素水混合液を前記基板の表面から洗い流すリンス工程と、を含む、基板処理方法。
【請求項4】
前記第1処理液の供給量は、前記基板の回転によって、前記基板の表面の全域を覆う前記塗布膜を形成するのに十分かつ必要な量に定められる、請求項1~3のいずれか一項に記載の基板処理方法。
【請求項5】
前記増粘剤が、ポリビニルピロリドン、ポリアクリル酸、ポリアクリル酸ナトリウム、ポリアクリル酸アンモニウム、架橋型ポリアクリル酸、架橋型ポリアクリル酸ナトリウム、架橋型アクリル系ポリマー、およびカルボン酸系共重合体からなる群より選択される少なくとも一種を含む、請求項
1~4のいずれか一項に記載の基板処理方法。
【請求項6】
前記第2処理液が増粘剤を含まない、請求項1~5のいずれか一項に記載の基板処理方法。
【請求項7】
前記第2処理液供給工程は、前記基板の表面への前記第1処理液の供給を停止した状態で開始される、請求項1~
6のいずれか一項に記載の基板処理方法。
【請求項8】
前記混合液処理工程の少なくとも一部の期間が、前記第2処理液供給工程の少なくとも一部の期間と重複している、請求項1~
7のいずれか一項に記載の基板処理方法。
【請求項9】
前記混合液処理工程の少なくとも一部の期間において、前記基板の表面への前記第2処理液の供給が停止されている、請求項1~
8のいずれか一項に記載の基板処理方法。
【請求項10】
前記第1処理液供給工程と、前記第2処理液供給工程とが、交互に繰り返し実行される、請求項1~
9のいずれか一項に記載の基板処理方法。
【請求項11】
請求項1~
10のいずれか一項に記載の基板処理方法を実施するための基板処理装置であって、
基板を保持する基板保持手段と、
前記基板保持手段に保持された基板に前記第1処理液を供給する第1処理液ノズルと、
前記基板保持手段に保持された基板に前記第2処理液を供給する第2処理液ノズルと、
前記基板保持手段に保持された基板に前記リンス液を供給するリンス液ノズルと、
前記第1処理液ノズルからの前記第1処理液の供給を制御して前記第1処理液供給工程を実行し、前記第2処理液ノズルからの前記第2処理液の供給を制御して前記第2処理液供給工程を実行し、前記リンス液ノズルからの前記リンス液の供給を制御して前記リンス工程を実行する制御手段と、を含む基板処理装置。
【請求項12】
前記基板保持手段は、基板の表面を上方に向けて水平に保持して回転するスピンチャックを含み、
前記制御手段は、前記第1処理液供給工程において、前記第1処理液ノズルからの前記第1処理液の供給、および前記スピンチャックの回転を制御して、前記基板の表面に前記第1処理液をスピンコートする、請求項
11に記載の基板処理装置。
【請求項13】
前記基板保持手段に保持された基板に処理液を供給するための処理位置と、前記処理位置から退避した待機位置との間で、前記第1処理液ノズルを移動するノズル移動ユニットと、
前記待機位置において前記第1処理液ノズルの吐出口をノズル洗浄液中に浸漬させる洗浄ポットと、をさらに含む、請求項
11または
12に記載の基板処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、基板を処理する装置および方法に関する。処理の対象となる基板には、たとえば、半導体ウエハ、液晶表示装置用基板、有機EL(Electroluminescence)表示装置等のFPD(Flat Panel Display)用基板、光ディスク用基板、磁気ディスク用基板、光磁気ディスク用基板、フォトマスク用基板、セラミック基板、太陽電池用基板などが含まれる。
【背景技術】
【0002】
基板上で第1の処理液と第2の処理液とを混合して反応させ、その反応生成物質を利用して基板に対する処理を行う方法が知られている。具体的には、ドライエッチング後の基板上に残るレジストを剥離するためのレジスト剥離処理においては、硫酸と過酸化水素水とを混合させて生成されるSPM(硫酸過酸化水素水混合液)が用いられる場合がある。
特許文献1は、硫酸と過酸化水素水とをノズル内で混合してSPMを調製し、そのSPMを基板の表面に供給する基板処理を開示している。特許文献2は、硫酸および過酸化水素水を別のノズルから基板上に供給し、基板上でそれらを混合させてSPMを生成させる基板処理を開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2019-207948号公報
【文献】特開2004-349669号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の基板処理では、処理液を流しながら処理を行うため、処理液の消費量が多くなる。具体的には、0.5~2リットル/分程度の流量でノズルからSPMを吐出する必要がある。したがって、基板処理のコストがそれに応じて高くなり、かつ環境負荷が大きくなる問題がある。
特許文献2には、硫酸の液膜を基板上に形成し、その液膜に対して過酸化水素水を霧状に供給する基板処理が開示されている。この処理は、とくに硫酸の消費量が低減される点で好ましいが、基板表面の全域を均一に覆う液膜の形成が難しく、かつ液膜が基板表面全域を覆った状態を維持することも難しい。そのため、処理の均一性が問題となる恐れがある。
【0005】
そこで、この発明の一実施形態は、基板表面を均一に処理することができ、かつ処理液の消費量を低減することができる基板処理方法および基板処理装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明の一実施形態は、硫酸および過酸化水素水の一方を含む第1処理液を基板の表面に塗布する第1処理液供給工程と、前記第1処理液が塗布された前記基板の表面に、硫酸および過酸化水素水の他方を含み、前記第1処理液よりも粘度の低い第2処理液を供給する第2処理液供給工程と、前記第1処理液および前記第2処理液が前記基板の表面で混合して生成される硫酸過酸化水素水混合液で前記基板の表面を処理する混合液処理工程と、前記混合液処理工程の後に、前記基板にリンス液を供給して前記硫酸過酸化水素水混合液を前記基板の表面から洗い流すリンス工程と、を含む、基板処理方法を提供する。
【0007】
この方法によれば、比較的高粘度の第1処理液を基板の表面に塗布するので、第1処理液の消費量を抑制しながら、基板の表面に均一に第1処理液を行き渡らせ、かつ密着させることができる。この第1処理液が塗布された基板の表面に第2処理液が供給される。それにより、基板の表面において、第1処理液および第2処理液が混合して、硫酸過酸化水素水混合液が生成される。第1処理液が基板表面に均一に行き渡って密着しているため、基板の表面に硫酸過酸化水素水混合液を隈無く均一に行き渡らせることができる。第2処理液は、比較的低粘度であるため、第1処理液および第2処理液の混合が速やかに進行する。第1処理液および第2処理液が基板上で混合するため、その混合時の反応によって生じる発熱を有効に活用して、基板の表面を処理することができる。硫酸過酸化水素水混合液による処理の後は、基板の表面にリンス液を供給して硫酸過酸化水素水混合液を洗い流し、処理を停止することができる。
【0008】
このようにして、基板の表面に対して均一な処理を施すことができ、かつ処理液の消費量を低減できる基板処理方法を提供できる。
基板に対する処理の一例は、基板の表面に存在する異物の除去である。異物の具体例は、残渣や膜である。膜の除去は、膜の剥離であってもよいし、膜の一部のエッチングであってもよい。膜の一つの例は、レジスト膜である。
【0009】
この発明の一実施形態では、前記第1処理液が増粘剤を含む。これにより、第1処理液の粘度を増粘剤によって調整できるので、処理に適した粘度で第1処理液を基板の表面に塗布できる。
この発明の一実施形態は、増粘剤が含まれた第1処理液を基板の表面に塗布する第1処理液供給工程と、前記第1処理液が塗布された前記基板の表面に第2処理液を供給する第2処理液供給工程と、前記第1処理液および前記第2処理液が前記基板の表面で混合して生成される硫酸過酸化水素水混合液で前記基板の表面を処理する混合液処理工程と、前記混合液処理工程の後に、前記基板にリンス液を供給して前記硫酸過酸化水素水混合液を前記基板の表面から洗い流すリンス工程と、を含む、基板処理方法を提供する。
【0010】
この方法によれば、増粘剤を含む第1処理液の消費量を抑制しながら、基板の表面に第1処理液を行き渡らせ、かつ密着させることができる。この第1処理液が塗布された基板の表面に第2処理液が供給される。それにより、基板の表面において、第1処理液および第2処理液が混合して、硫酸過酸化水素水混合液が生成される。第1処理液が基板表面に均一に行き渡って密着しているため、基板の表面に硫酸過酸化水素水混合液を隈無く均一に行き渡らせることができる。そして、第1処理液および第2処理液が基板上で混合するため、その混合時の反応によって生じる発熱を有効に利用して、基板の表面を処理することができる。硫酸過酸化水素水混合液による処理の後は、基板の表面にリンス液を供給して硫酸過酸化水素水混合液を洗い流し、処理を停止することができる。
【0011】
前述の実施形態の場合と同じく、基板に対する処理の一例は、基板の表面に存在する異物の除去である。異物の具体例は、残渣や膜である。膜の除去は、膜の剥離であってもよいし、膜の一部のエッチングであってもよい。膜の一つの例は、レジスト膜である。
この発明の一実施形態は、過酸化水素水および増粘剤を含む第1処理液を基板の表面に塗布する第1処理液供給工程と、前記第1処理液が塗布された前記基板の表面に、硫酸を含む第2処理液を供給する第2処理液供給工程と、前記第1処理液および前記第2処理液が前記基板の表面で混合して生成される硫酸過酸化水素水混合液で前記基板の表面を処理する混合液処理工程と、前記混合液処理工程の後に、前記基板にリンス液を供給して前記硫酸過酸化水素水混合液を前記基板の表面から洗い流すリンス工程と、を含む、基板処理方法を提供する。
【0012】
この方法によれば、過酸化水素水は増粘剤を含む第1処理液の形態で基板の表面に塗布されるので、過酸化水素水の消費量を抑制しながら、基板の表面に過酸化水素水を行き渡らせ、かつ密着させることができる。この第1処理液(過酸化水素水)が塗布された基板の表面に硫酸を含む第2処理液が供給される。それにより、基板の表面において、過酸化水素水および硫酸が混合して、硫酸過酸化水素水混合液が生成される。第1処理液が基板表面に均一に行き渡って密着しているため、基板の表面に硫酸過酸化水素水混合液を隈無く均一に行き渡らせることができる。そして、硫酸および過酸化水素水が基板上で混合するため、その混合時の反応によって生じる発熱を有効に利用して、基板の表面を処理することができる。硫酸過酸化水素水混合液による処理の後は、基板の表面にリンス液を供給して硫酸過酸化水素水混合液を洗い流し、処理を停止することができる。
【0013】
前述の実施形態の場合と同じく、基板に対する処理の一例は、基板の表面に存在する異物の除去である。異物の具体例は、残渣や膜である。膜の除去は、膜の剥離であってもよいし、膜の一部のエッチングであってもよい。膜の一つの例は、レジスト膜である。
この発明の一実施形態では、前記第1処理液の供給量は、前記基板の回転によって、前記基板の表面の全域を覆う前記塗布膜を形成するのに十分かつ必要な量に定められる。
この発明の一実施形態では、前記増粘剤が、ポリビニルピロリドン、ポリアクリル酸、ポリアクリル酸ナトリウム、ポリアクリル酸アンモニウム、架橋型ポリアクリル酸、架橋型ポリアクリル酸ナトリウム、架橋型アクリル系ポリマー、およびカルボン酸系共重合体からなる群より選択される少なくとも一種を含む。
【0014】
増粘剤は、たとえば、基板の表面に供給されるときの第1処理液の温度において、第1処理液の粘度が所要の値以上に保持できる耐熱性を有していることが好ましい。この場合の所要の値とは、基板の表面に隈無く均一に第1処理液を塗布でき、かつその塗布状態を少なくとも一定時間維持できる値であり、たとえば、30mPa・s~3000Pa・sの範囲が好ましい。増粘剤は、混合液処理工程における硫酸過酸化水素水混合液の温度において、当該混合液の粘度を所要の値以上に維持できる耐熱性を有していればさらに好ましい。この場合の所要の値とは、基板の表面に隈無く硫酸過酸化水素水混合液が広がった状態を少なくとも一定時間維持できる値であり、たとえば、30mPa・s~3000Pa・sの範囲が好ましい。
【0015】
この発明の一実施形態では、前記第2処理液が増粘剤を含まない。第2処理液が増粘剤を含まないことにより、粘度の低い状態で第2処理液を基板の表面に供給できる。それにより、基板上において、第1処理液と第2処理液との混合を促進することができる。
第1処理液に増粘剤が含まれている場合には、その増粘剤は、基板上で生成される硫酸過酸化水素水混合液中に存在し、その粘度を高める。したがって、基板の表面に隈無く硫酸過酸化水素水混合液を密着させた状態で、硫酸過酸化水素水混合液による処理を進行させることができる。それにより、基板表面に対して均一な処理を行うことができる。
【0016】
第2処理液の消費量を低減するために、第2処理液に増粘剤が含まれていてもよい。ただし、その含有量は、第1処理液との混合を阻害しない程度にとどめることが好ましい。
この発明の一実施形態では、前記第1処理液供給工程において、前記第1処理液が前記基板の表面に塗布されて、前記基板の表面の全域を覆う前記第1処理液の塗布膜が形成される。
【0017】
この方法では、第1処理液の塗布膜(たとえばゲル状塗布膜)が基板表面の全域を覆うので、基板表面の全域に第1処理液を密着させることができる。したがって、第1処理液および第2処理液が混合してできる硫酸過酸化水素水混合液を基板の表面の全域に密着させることができ、基板の表面全域を均一に処理できる。
この発明の一実施形態では、前記第2処理液供給工程において、前記第1処理液の塗布膜の表面に、前記第2処理液が供給される。この方法では、第1処理液の塗布膜が基板の表面に形成され、その塗布膜の表面に第2処理液が供給される。したがって、第2処理液による流動によって第1処理液が基板外に持ち去られることを抑制できるから、第1処理液の消費量を低減できる。
【0018】
この発明の一実施形態では、前記第2処理液供給工程は、前記基板の表面への前記第1処理液の供給を停止した状態で開始される。
この方法では、第1処理液の供給(より具体的には新液の供給)を停止して、第2処理液の供給が開始される。したがって、低粘度の第2処理液による流動によって第1処理液が基板外に持ち去られることを抑制できるから、第1処理液の消費量を低減できる。
【0019】
この発明の一実施形態では、前記混合液処理工程の少なくとも一部の期間が、前記第2処理液供給工程の少なくとも一部の期間と重複している。
基板の表面に第1処理液が存在している状態で第2処理液を基板の表面に供給することにより、第1処理液および第2処理液の混合が始まる。したがって、第2処理液供給工程の実行中に、硫酸過酸化水素水混合液による基板表面の処理が始まる場合がある。
【0020】
この発明の一実施形態では、前記混合液処理工程の少なくとも一部の期間において、前記基板の表面への前記第2処理液の供給が停止されている。
この方法では、第2処理液の供給(具体的には新液の供給)を停止した状態で、硫酸過酸化水素水混合液による基板表面の処理が行われる期間が存在する。
たとえば、基板の表面を上方に向けて水平に保持した状態で、第1処理液の塗布膜が形成された基板の表面に第2処理液を供給し、その供給を停止することにより、基板の表面に硫酸過酸化水素水混合液の液膜が担持されたパドル状態とすることができる。このパドル状態を維持することにより、第1処理液および第2処理液を供給することなく、硫酸過酸化水素水混合液による基板処理を進行させることができる。このようなパドル処理期間中に、必要に応じて、第1処理液および第2処理液の一方または両方を基板の表面に補充してもよい。
【0021】
この発明の一実施形態では、前記第1処理液供給工程と、前記第2処理液供給工程とが、交互に繰り返し実行される。この方法により、第1処理液および第2処理液を必要に応じて繰り返し交互に供給しながら、硫酸過酸化水素水混合液による処理を基板上で進行させることができる。したがって、基板の表面を処理不足のないように十分に処理することができる。
【0022】
第2処理液供給工程の後に、再び第1処理液供給工程を行うときに、それらの間に別の工程が介在してもよい。すなわち、第2処理液供給工程の後、第1処理液も第2処理液も供給せずに行う混合液処理工程の後に、第1処理液を供給してもよい。また、前記リンス工程を行った後に、第1処理液供給工程を行ってもよい。
この発明の一実施形態は、前述のような基板処理方法を実施するための基板処理装置を提供する。この基板処理装置は、基板を保持する基板保持手段と、前記基板保持手段に保持された基板に前記第1処理液を供給する第1処理液ノズルと、前記基板保持手段に保持された基板に前記第2処理液を供給する第2処理液ノズルと、前記基板保持手段に保持された基板に前記リンス液を供給するリンス液ノズルと、制御手段とを含む。前記制御手段は、前記第1処理液ノズルからの前記第1処理液の供給を制御して前記第1処理液供給工程を実行し、前記第2処理液ノズルからの前記第2処理液の供給を制御して前記第2処理液供給工程を実行し、前記リンス液ノズルからの前記リンス液の供給を制御して前記リンス工程を実行する。
【0023】
この構成により、前述の基板処理方法を実施することができる。したがって、基板の表面に対して均一な処理を施すことができ、かつ処理液の消費量を低減できる基板処理装置を提供できる。
この発明の一実施形態では、前記基板保持手段は、基板の表面を上方に向けて水平に保持して回転するスピンチャックを含む。この場合に、前記制御手段は、前記第1処理液供給工程において、前記第1処理液ノズルからの前記第1処理液の供給、および前記スピンチャックの回転を制御して、前記基板の表面に前記第1処理液をスピンコートすることが好ましい。
【0024】
この構成により、いわゆるスピンコートによって、基板の表面に第1処理液を塗布することができる。それにより、少量の第1処理液を基板の表面に均一に塗り広げることができるので、第1処理液の消費量を低減しながら、基板の表面を均一に処理できる。
この発明の一実施形態では、前記基板処理装置は、前記基板保持手段に保持された基板に処理液を供給するための処理位置と、前記処理位置から退避した待機位置との間で、前記第1処理液ノズルを移動するノズル移動ユニットと、前記待機位置において前記第1処理液ノズルの吐出口をノズル洗浄液中に浸漬させる洗浄ポットと、をさらに含む。
【0025】
この構成によれば、第1処理液ノズルが使用されていないときに、第1処理液の待機位置で吐出口を洗浄できる。それにより、高粘度の第1処理液による吐出口の詰まりを抑制または防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【
図1A-1E】
図1A~
図1Eは、この発明の一実施形態に係る基板処理方法を説明するための工程図である。
【
図2A-2D】
図2A~
図2Dは、主要な工程における基板表面の状態の例を説明するための図解的な断面図である。
【
図3】
図3は、前述のような基板処理方法を実行するための基板処理装置の構成例を説明するための図解的な断面図である。
【
図4】
図4は、第1処理液供給源の構成例を説明するための図である。
【
図5】
図5は、第2処理液供給源の構成例を説明するための図である。
【
図6】
図6は、前記基板処理装置の各部の制御に関する構成を説明するためのブロック図である。
【
図7】
図7は、第1処理液供給源の他の構成例を説明するための図である。
【
図8】
図8は、この発明の第2の実施形態に係る基板処理方法を説明するための工程図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下では、この発明の実施の形態を、添付図面を参照して詳細に説明する。
図1A~
図1Hは、この発明の一実施形態に係る基板処理方法を説明するための工程図である。この基板処理方法は、第1処理液塗布工程S1(第1処理液供給工程、
図1A-
図1B)、第2処理液供給工程S2(
図1C)、混合液処理工程S3(
図1C-1D)、リンス工程S4(
図1E)、残渣除去工程S5(
図1F-
図1G)および乾燥工程S6(
図1H)を含む。処理対象の基板Wは、表面(この実施形態では上面)にレジスト膜(図示せず)が形成された基板である。基板Wは、半導体基板、液晶表装置用基板であり得る。レジスト膜は、典型的には、ドライエッチングのためのマスクとして使用された後のレジスト膜である。この実施形態の基板処理方法は、基板Wの表面のレジスト膜を剥離するレジスト剥離処理を行う。より具体的には、硫酸過酸化水素水混合液(SPM:Sulfuric Acid Hydrogen Peroxide Mixture)によって、基板Wの表面からレジストを剥離して除去する。
【0028】
表面にレジスト膜が形成された基板Wが処理チャンバ1(
図3参照)に搬入され、その基板Wは、スピンチャック5によって保持される。それにより、基板Wは、スピンチャック5によって水平姿勢に保持され、その状態で、中央部を通る鉛直な回転軸線Aまわりに回転される。基板Wは、レジスト膜が形成された基板Wの表面を上向きとした姿勢で、スピンチャック5に保持される。
【0029】
第1処理液塗布工程S1は、スピンチャック5によって基板Wを回転しながら、基板Wの表面(上面)に第1処理液L1を供給し、その第1処理液L1を基板Wの表面に塗布(いわゆるスピンコート)する工程である。第1処理液L1は、この実施形態では、SPMの原料である硫酸および過酸化水素水のうちの一方を含み、その他方は含まない。この実施形態では、第1処理液L1は、さらに増粘剤(高粘度化剤)を含む高粘度の処理液である。
【0030】
第1処理液塗布工程S1において、
図1Aに示すように、第1処理液ノズルN1から基板Wの中央付近に第1処理液L1を所定供給量だけ供給する。所定供給量だけ供給された後は、第1処理液ノズルN1からの第1処理液L1の供給は停止される。基板Wの表面に供給された第1処理液L1は、基板Wの回転に伴う遠心力によって基板Wの表面で周縁部に向かって広がる。それにより、
図1Bに示すように、基板Wの表面(上面)の全域を覆う第1処理液L1の塗布膜F1を形成することができる。第1処理液L1の所定供給量は、基板Wの回転によって、基板Wの表面(上面)の全域を覆う塗布膜F1を形成するのに十分な量に定められる。その所定供給量は、さらに、基板Wの表面(上面)の全域を覆う塗布膜F1を形成するのに必要な量に定められることが好ましく、それにより、第1処理液L1の消費量を最小限にすることができる。
【0031】
第2処理液供給工程S2は、第1処理液塗布工程S1の後に行われる。すなわち、基板Wの表面(上面)の全域に第1処理液L1の塗布膜F1が形成された状態で開始される。第2処理液L2は、この実施形態では、SPMの原料である硫酸および過酸化水素水のうち、第1処理液L1に含まれていない前記他方を含み、第1処理液L1に含まれている前記一方を含まない。第2処理液L2は、好ましくは、第1処理液L1よりも粘度の低い低粘度の処理液である。第2処理液L2は増粘剤を含まないことが好ましいが、必要に応じて微量の増粘剤が含まれていてもよい。
【0032】
第2処理液供給工程S2では、
図1Cに示すように、スピンチャック5によって基板Wを回転軸線Aまわりに回転しながら、基板Wの表面(上面)の全域に形成された第1処理液L1の塗布膜F1の上に、第2処理液ノズルN2から第2処理液L2を供給する。この供給は、所定流量での連続供給であってもよい。第2処理液ノズルN2は、
図1Cに示すように、第2処理液L2を柱状の連続流の形態で吐出するストレートノズルであってもよい。また、第2処理液ノズルN2は、コーン状のプロファイルをなすように第2処理液L2を噴霧するスプレーノズルであってもよい。また、第2処理液ノズルN2は、第2処理液供給工程S2中に、基板W上での着液位置が実質的に一定位置(たとえば回転軸線A上)に保たれる固定式吐出を行ってもよく、第2処理液供給工程S2中に基板W上の着液位置が移動する移動式吐出を行ってもよい。移動式吐出の場合には、第2処理液ノズルN2から吐出される第2処理液L2の着液位置が基板Wの表面上で、回転中心から周縁部までの範囲で移動し、それによって、着液位置が基板Wの表面をスキャンすることが好ましい。第2処理液供給工程S2は、所定時間にわたって行われる。
【0033】
混合液処理工程S3は、第1処理液L1および第2処理液L2が基板W上で混合してできる混合液、すなわち、SPMによって、基板Wの表面のレジスト膜を剥離する工程である。具体的には、硫酸および過酸化水素水が基板W上で混ざり合って発熱反応を起こしながらSPMとなり、そのSPMが基板Wの表面のレジスト膜を腐食させる。第2処理液L2の供給が開始されると、第1処理液L1および第2処理液L2の混合が始まるので、第2処理液供給工程S2の少なくとも一部の期間は、混合液処理工程S3の少なくとも一部の期間と重複していてもよい(
図1C参照)。
【0034】
第2処理液供給工程S2の後にも、すなわち、第2処理液L2の供給を停止した後にも、
図1Dに示すように、基板Wの表面では、第1処理液L1および第2処理液L2の混合反応(SPM反応)が進み、かつSPMによるレジスト膜の腐食が進行する。第2処理液L2の供給を停止した後は、基板Wの回転を停止してもよいし、基板W上に第1処理液L1および第2処理液L2ならびにそれらが混合してできるSPMを保持できる程度の低速で基板Wを回転してもよい(
図1D参照)。これにより、第1処理液L1の塗布膜F1上に第2処理液L2が担持されたパドル状態となる。したがって、それらが混合してできるSPMが基板W上に担持されたパドル状態となる。そのパドル状態が維持されることにより、第1処理液L1および第2処理液L2のいずれをも供給することなく、SPMによるレジスト腐食処理を進行させることができる。
【0035】
第2処理液L2の供給を停止した後の混合液処理工程S3において、必要に応じて、第1処理液ノズルN1から第1処理液L1を基板Wの表面に補充してもよいし、第2処理液ノズルN2から第2処理液L2を基板Wの表面に補充してもよい。必要に応じて、第1処理液L1および第2処理液L2の一方のみを補充してもよいし、両方を補充してもよい。また、第2処理液L2の供給を停止せず、混合液処理工程S3の全期間において、第2処理液L2の供給が継続されてもよい。
【0036】
リンス工程S4は、混合液処理工程S3によって基板W上のレジスト膜を十分に腐食させた後に行われる。具体的には、
図1Eに示すように、スピンチャック5によって基板Wを回転させながら、リンス液ノズルNRから、純水(脱イオン水)、炭酸水等のリンス液Rが供給され、基板W上で腐食したレジスト膜およびSPMが基板Wの表面外へと洗い流される。基板Wは、混合液処理工程S3のときよりも高速に回転され、遠心力を利用して、回転中心から周縁へと向かうリンス液Rの流れを基板Wの表面に形成することが好ましい。
【0037】
第1処理液塗布工程S1、第2処理液供給工程S2、混合液処理工程S3およびリンス工程S4は、循環的に、複数回、繰り返し行われてもよい。すなわち、リンス工程S4の後に、再び、第1処理液塗布工程S1、第2処理液供給工程S2、混合液処理工程S3およびリンス工程S4を行ってもよい。この場合に、2回目以降の第1処理液塗布工程S1で供給する第1処理液の粘度は、1回目の第1処理液塗布工程S1で用いる第1処理液の粘度よりも小さくてもよい。
【0038】
また、第1処理液塗布工程S1、第2処理液供給工程S2および混合液処理工程S3を、循環的に、複数回、繰り返し行ってもよい。そして、所定回数の繰り返しの後に、リンス工程S4を行ってもよい。この場合に、2回目以降の第1処理液塗布工程S1で供給する第1処理液の粘度は、1回目の第1処理液塗布工程S1で用いる第1処理液の粘度よりも小さくてもよい。
【0039】
残渣除去工程S5は、リンス工程S4で除去し切れない異物を除去するための洗浄工程である。より具体的には、残渣除去工程S5は、混合液処理工程S3における生成物(処理残渣)やパーティクルを基板Wの表面から除去する。残渣除去工程S5は、
図1Fに示す洗浄液供給工程S51と、
図1Gに示すリンス工程S52とを含む。必要とされる処理内容によっては、残渣除去工程S5は、省かれてもよい。
【0040】
洗浄液供給工程S51は、スピンチャック5によって基板Wを回転させながら、薬液ノズルNCから基板Wの表面に洗浄液C(より具体的には洗浄薬液)を供給する。洗浄液供給工程S51は、洗浄液Cとしてアンモニア過酸化水素水混合液(たとえばSC1)を用いて基板Wを洗浄するアルカリ洗浄工程であってもよい。
リンス工程S52は、洗浄液供給工程S51の後に、基板Wの表面の洗浄液Cをリンス液Rで置換し、洗浄液Cを基板Wの表面からに洗い流す工程である。リンス工程S52は、スピンチャック5によって基板Wを回転させながら、リンス液ノズルNRから基板Wの表面に向けてリンス液Rを供給する。
【0041】
乾燥工程S6は、残渣除去工程S5のリンス工程S52(
図1G参照)の後に行われる。残渣除去工程S5が省かれる場合には、リンス工程S4(
図1E参照)の後に行われる。すなわち、乾燥工程S6は、基板Wの表面へのリンス液Rの供給を停止した後に行われる。乾燥工程S6は、
図1Hに示すように、スピンチャック5によって基板Wを高速に回転させて基板W上の液体を遠心力によって振り切るスピンドライ工程であってもよい。この乾燥工程S6によって、一連の基板処理が完了し、処理チャンバ1(
図3参照)から処理済みの基板W、すなわち、レジスト膜が表面から剥離され、その表面が洗浄および乾燥された基板Wが搬出される。
【0042】
図2A~
図2Dは、主要な工程における基板表面の状態の例を説明するための図解的な断面図である。この例では、第1処理液L1は、高粘度の過酸化水素水、すなわち、増粘剤を含む過酸化水素水である。また、第2処理液L2は、硫酸である。第2処理液L2は、好ましくは、第1処理液L1よりも低粘度の硫酸である。たとえば、第2処理液L2は増粘剤を含まない硫酸である。基板Wの表面に供給されるときの温度(たとえば室温)での第1処理液L1の粘度は、30mPa・s以上、好ましくは50mPa・s以上、より好ましくは100mPa・s以上、さらに好ましくは200mPa・s以上である。第1処理液L1の粘度の上限については、基板Wの表面にスピンコートできる範囲であればよく、たとえば、3000mPa・sである。
【0043】
増粘剤の例としては、ポリビニルピロリドン、アクリル系増粘剤などを挙げることができる。アクリル系増粘剤としては、ポリアクリル酸、ポリアクリル酸ナトリウム、ポリアクリル酸アンモニウム、架橋型ポリアクリル酸、架橋型ポリアクリル酸ナトリウムなどのポリアクリル酸系増粘剤のほか、架橋型アクリル系ポリマー、カルボン酸系共重合体(アンモニウム塩またはナトリウム塩)なども含まれる。これらの増粘剤の一種以上、すなわち、一種または二種以上が用いられてもよい。増粘剤は、粉末、水溶液、またはエマルションの形態で提供され得る。
【0044】
第1処理液塗布工程S1(
図2A参照)では、基板Wの表面に高粘度過酸化水素水(第1処理液L1)の塗布膜F1(たとえばゼリー状の膜)が形成される。この塗布膜F1は、基板Wの表面の全域に密着する。
第2処理液供給工程S2(
図2B参照)では、高粘度過酸化水素水の塗布膜(第1処理液L1の塗布膜F1)の上に、たとえば、それよりも、粘度の低い硫酸(第2処理液L2)が供給され、その液層ができる。そして、高粘度過酸化水素水(第1処理液L1)と硫酸(第2処理液L2)との混合が始まる。
【0045】
混合液処理工程S3(
図2C参照)では、高粘度過酸化水素水と硫酸との混合によってSPMが生成される。そのSPMが基板Wの表面に到達することにより、その表面に形成されているレジスト膜を腐食させる。過酸化水素水が高粘度の状態で基板Wの表面に存在しているので、基板W上からのSPMの流出を抑制または防止した状態で反応が進行する。それにより、少量の高粘度過酸化水素水および少量の硫酸の供給によって、基板Wの表面のレジスト膜を腐食させることができる。過酸化水素水および/または硫酸が不足する場合に、それらを補充してもよいことは前述のとおりである。高粘度過酸化水素水の塗布膜F1は、基板Wの全域に密着しているので、基板Wの全域で均一に処理を進行させることができ、その結果、均一性のよい基板処理(レジスト剥離処理)を実現できる。
【0046】
第1処理液L1中に含まれる増粘剤は、基板W上で第1処理液L1および第2処理液L2が混合してSPMが生成されたとき、そのSPMの粘度を30mPa・s以上、好ましくは50mPa・s以上、より好ましくは100mPa・s以上、さらに好ましくは200mPa・s以上にできるものであることが好ましい。それにより、基板W上でSPMをパドル状態で保持しやすいので、第1処理液L1および第2処理液L2の消費量を効果的に低減しながら、均一な基板処理を実現しやすい。
【0047】
混合液処理工程S3の後、リンス工程S4(
図2D参照)により、基板W上のSPMがリンス液Rに置換され、腐食したレジスト膜とともに基板Wの表面から除去される。
第1処理液L1に高粘度の硫酸、すなわち増粘剤を添加した硫酸を用い、第2処理液L2
に過酸化水素水(好ましくは、第1処理液L1よりも低粘度のもの)を用いる場合の処理は、前述の説明において、「過酸化水素水」と「硫酸」とを置き換えればよい。この場合にも、均一性のよい基板処理(レジスト剥離処理)を実現できる。
【0048】
図3は、前述のような基板処理方法を実行するための基板処理装置100(処理ユニット)の構成例を説明するための図解的な断面図である。基板処理装置100は、基板保持手段の一例であるスピンチャック5と、第1処理液ノズルN1と、第2処理液ノズルN2と、薬液ノズルNCと、リンス液ノズルNRと、待機ポット3とを含み、これらは、処理チャンバ1内に収容されている。基板処理装置100は、さらに、処理チャンバ1外に配置された第1処理液供給源15および第2処理液供給源25を含む。基板処理装置100は、さらに、処理チャンバ1外に配置された薬液供給源35を含む。
【0049】
スピンチャック5は、処理チャンバ1内で1枚の基板Wを水平姿勢で保持して、基板Wの中心を通る鉛直な回転軸線Aまわりに基板Wを回転させる基板保持回転装置である。スピンチャック5は、回転軸線Aに沿って延びる回転軸51と、回転軸51の上端に結合されたスピンベース52と、回転軸51を回転させるためのスピンモータ53とを含む。スピンベース52は、回転軸51の上端に水平姿勢で保持された円盤形状を有している。スピンベース52の周縁部には、複数の挟持ピン54が周方向に間隔を空けて配置されている。複数の挟持ピン54は、基板Wの周端面に当接して、基板Wを挟持するように構成されている。このようなメカニカルチャックに代えて、基板Wの下面中央を吸着して保持するバキューム型チャックが採用されてもよい。
【0050】
第1処理液ノズルN1は、スピンチャック5に保持された基板Wの表面(上面)に第1処理液L1を供給するノズルである。第1処理液ノズルN1は、スピンチャック5に保持された基板Wの表面に第1処理液L1を吐出する処理位置(実線で示す位置)と、スピンチャック5の側方に設定された待機位置(二点鎖線で示す位置)との間で移動する移動ノズルの形態を有している。より具体的には、第1処理液ノズルN1は、第1ノズル移動ユニット11によって移動される。第1ノズル移動ユニット11は、たとえば、水平に延びた第1揺動アーム12を含み、その第1揺動アーム12の揺動端に第1処理液ノズルN1が結合されている。詳細な図示は省略するが、第1ノズル移動ユニット11は、さらに、第1揺動アーム12の基端部に結合された揺動駆動機構を含み、揺動駆動機構は、第1揺動アーム12の基端部を通る鉛直な揺動軸線まわりに第1揺動アーム12を揺動させる。それにより、第1処理液ノズルN1は、処理位置と待機位置との間で移動する。第1処理液L1は、前述のとおり、高粘度の処理液である。処理位置は、基板Wの回転中心に第1処理液L1が着液する位置であってもよい。基板Wの回転中心に着液した第1処理液L1は、基板Wの回転によって発生する遠心力によって、基板Wの表面の全域に塗り延ばされる。
【0051】
第2処理液ノズルN2は、スピンチャック5に保持された基板Wの表面(上面)に第2処理液L2を供給するノズルである。第2処理液ノズルN2は、スピンチャック5に保持された基板Wの表面に第2処理液L2を吐出する処理位置と、スピンチャック5の側方に設定された待機位置との間で移動する移動ノズルの形態を有している。より具体的には、第2処理液ノズルN2は、第2ノズル移動ユニット21によって移動される。第2ノズル移動ユニット21は、たとえば、第1ノズル移動ユニット11と同様の構成を有している。すなわち、第2ノズル移動ユニット21は、たとえば、水平に延びた第2揺動アーム22を含み、その第2揺動アーム22の揺動端に第2処理液ノズルN2が結合されている。第1ノズル移動ユニット11と同様に、第2ノズル移動ユニット21は、第2揺動アーム22を揺動させる揺動駆動機構を備えている。第2処理液ノズルN2は、第2処理液L2を吐出しながら、基板W上での着液位置をスキャンさせるスキャンノズルとして作動してもよい。この場合、処理位置は、基板Wの回転中心と周縁との間で変動する。
【0052】
薬液ノズルNCは、スピンチャック5に保持された基板Wの表面(上面)に洗浄液C(洗浄用の薬液)を供給するノズルである。薬液ノズルNCは、スピンチャック5に保持された基板Wの表面に洗浄液Cを吐出する処理位置と、スピンチャック5の側方に設定された待機位置との間で移動する移動ノズルの形態を有している。より具体的には、薬液ノズルNCは、第3ノズル移動ユニット31によって移動される。第3ノズル移動ユニット31は、たとえば、第1ノズル移動ユニット11と同様の構成を有している。すなわち、第3ノズル移動ユニット31は、たとえば、水平に延びた第3揺動アーム32を含み、その第3揺動アーム32の揺動端に薬液ノズルNCが結合されている。第1ノズル移動ユニット11と同様に、第3ノズル移動ユニット31は、第3揺動アーム32を揺動させる揺動駆動機構を備えている。洗浄液Cは、前述のとおり、たとえば、アンモニア過酸化水素水混合液(たとえばSC1)である。薬液ノズルNCは、洗浄液Cを吐出しながら、基板W上での着液位置をスキャンさせるスキャンノズルとして作動してもよい。すなわち、処理位置は、基板Wの回転中心と周縁との間で移動してもよい。
【0053】
リンス液ノズルNRは、スピンチャック5に保持された基板Wの表面(上面)にリンス液Rを供給するノズルである。リンス液ノズルNRは、この実施形態では、位置固定された固定ノズルの形態を有している。むろん、リンス液ノズルNRは、スピンチャック5に保持された基板Wの表面にリンス液Rを吐出する処理位置と、スピンチャック5の側方に設定された待機位置との間で移動する移動ノズルの形態を有していてもよい。リンス液ノズルNRは、この実施形態では、基板Wの回転中心に向けてリンス液Rを吐出するように固定されている。リンス液Rは、典型的には、純水(脱イオン水)である。
【0054】
待機ポット3は、第1処理液ノズルN1の待機位置(
図3に二点鎖線で示す)に配置されており、第1処理液ノズルN1の吐出口10を洗浄する洗浄ポットの一例である。待機ポット3は、第1処理液ノズルN1の吐出口10を洗浄するためのノズル洗浄液を貯留する容器の形態を有していてもよい。第1処理液ノズルN1は、待機位置において、その吐出口10を待機ポット3内のノズル洗浄液中に浸漬させられる。それにより、高粘度の第1処理液L1の固化を抑制し、第1処理液ノズルN1の吐出口10の詰まりを防ぐことができる。
【0055】
第1処理液ノズルN1は、第1処理液配管13を介して第1処理液供給源15に接続されている。第1処理液配管13の途中には、第1処理液バルブ14が介装されている。第1処理液バルブ14は、第1処理液配管13の流路を開閉する。
第2処理液ノズルN2は、第2処理液配管23を介して第2処理液供給源25に接続されている。第2処理液配管23の途中には、第2処理液バルブ24が介装されている。第2処理液バルブ24は、第2処理液配管23の流路を開閉する。
【0056】
薬液ノズルNCは、薬液配管33を介して薬液供給源35に接続されている。薬液配管33の途中には、薬液バルブ34が介装されている。薬液バルブ34は、薬液配管33の流路を開閉する。図示は省略するが、薬液供給源35は、洗浄薬液(たとえばアンモニア過酸化水素水混合液)を貯留する薬液タンクと、薬液タンクから薬液ノズルNCに向けて、薬液配管33へと薬液を送り出す薬液ポンプとを含む。薬液タンクには、洗浄液が貯留される。より具体的には、アンモニア水と過酸化水素水とを含む洗浄用の薬液が所定の比率で混合されて洗浄液が調製され、薬液タンクに貯留される。薬液タンクまたは薬液配管33には、必要に応じて、薬液を適切な温度に加熱するヒータが配置されてもよい。
【0057】
リンス液ノズルNRは、リンス液配管43を介してリンス液供給源45に接続されている。リンス液配管43の途中には、リンス液バルブ44が介装されている。リンス液バルブ44は、リンス液配管43の流路を開閉する。リンス液供給源45は、脱イオン水等のリンス液を供給する工場内ユーティリティであってもよい。
図4は、第1処理液供給源15の構成例を説明するための図である。第1処理液供給源15は、第1処理液L1を貯留する第1処理液タンク16と、第1処理液タンク16から第1処理液ノズルN1に向けて、第1処理液配管13へと第1処理液L1を送り出す第1処理液ポンプ17とを含む。第1処理液配管13には、第1処理液L1中の異物を除去するための第1フィルタ18が介装されていてもよい。第1処理液タンク16には、予め調製された高粘度の第1処理液L1が貯留される。高粘度の第1処理液L1は、硫酸および過酸化水素水の一方と増粘剤とを混合して調製される。第1処理液L1が硫酸を含む場合には、第1処理液タンク16または第1処理液配管13に第1処理液ヒータ19が配置されることが好ましい。それにより、第1処理液L1が室温よりも高温(たとえば120℃~130
℃程度)に加熱される。第1処理液L1が過酸化水素水を含む場合には、このような第1処理液ヒータ19は不要であり、室温(環境温度であり、一般的には0℃~30℃。たとえば25℃程度)の第1処理液L1が第1処理液ノズルN1に供給されて吐出される。
【0058】
図5は、第2処理液供給源25の構成例を説明するための図である。第2処理液供給源25は、第2処理液L2を貯留する第2処理液タンク26と、第2処理液タンク26から第2処理液ノズルN2に向けて、第2処理液配管23へと第2処理液L2を送り出す第2処理液ポンプ27とを含む。第2処理液配管23には、第2処理液L2中の異物を除去するための第2フィルタ28が介装されていてもよい。第2処理液タンク26には、第2処理液L2(好ましくは、第1処理液L1よりも低粘度の第2処理液L2)が貯留される。第2処理液L2は、硫酸および過酸化水素水の他方を含み、この実施形態では、増粘剤を含まない。第2処理液L2が硫酸を含む場合には、第2処理液タンク26または第2処理液配管23に第2処理液ヒータ29が配置される。それにより、第2処理液L2が室温よりも高温(たとえば120℃~130℃程度)に加熱される。第2処理液L2が過酸化水素水を含む場合には、このような第2処理液ヒータ29は不要であり、室温(環境温度であり、一般的には0℃~30℃。たとえば25℃程度)の第2処理液L2が第2処理液ノズルN2に供給されて吐出される。
【0059】
図6は、基板処理装置100の各部の制御に関する構成を説明するためのブロック図である。基板処理装置100は、その各部を制御するための制御手段としてのコントローラ2を含む。コントローラ2は、プロセッサ(CPU)2aおよびメモリ2bを含む。プロセッサ2aは、メモリ2bに格納されたプログラムを実行することにより、コントローラ2の種々の機能を実現する。コントローラ2は、第1処理液バルブ14、第2処理液バルブ24、薬液バルブ34およびリンス液バルブ44の開閉を制御する。さらに、コントローラ2は、スピンチャック5の回転、第1ノズル移動ユニット11、第2ノズル移動ユニット21および第3ノズル移動ユニット31の動作などを制御する。また、コントローラ2は、第1処理液供給源15、第2処理液供給源25および薬液供給源35の動作を制御する。
【0060】
それにより、コントローラ2は、第1処理液L1、第2処理液L2、洗浄液Cおよびリンス液Rの供給およびその停止を制御する。また、コントローラ2は、基板Wの回転(回転/停止および回転速度等)を制御する。さらに、コントローラ2は、第1処理液ノズルN1、第2処理液ノズルN2および薬液ノズルNCの位置を制御する。このような制御によって、コントローラ2は、前述の第1処理液塗布工程S1、第2処理液供給工程S2、混合液処理工程S3、リンス工程S4、残渣除去工程S5および乾燥工程S6を実行する。
【0061】
図示しない基板搬送ロボットによってスピンチャック5に未処理の基板Wが受け渡されると、コントローラ2は、第1処理液塗布工程S1(
図1Aおよび
図1B参照)を実行する。すなわち、コントローラ2は、スピンチャック5を第1処理液塗布速度(たとえば500rpm~1500rpm)で回転させながら、第1処理液ノズルN1を処理位置に配置し、第1処理液バルブ14を開いて、第1処理液ノズルN1から基板Wの表面(上面)の回転中心に向けて所定量の第1処理液L1を吐出させる。基板Wの表面に接した第1処理液L1は、遠心力によって基板Wの周縁へと広がり、それにより、基板Wの全面に塗り広げられる。それによって、基板Wの表面の全域を覆う第1処理液L1の塗布膜F1が形成される。
【0062】
第1処理液塗布工程S1の後、コントローラ2は、第2処理液供給工程S2(
図1C参照)を実行する。すなわち、コントローラ2は、第1処理液ノズルN1を待機位置(
図3に二点鎖線で示す)に移動させ、代わって、第2処理液ノズルN2を処理位置まで移動させる。第1処理液ノズルN1は、待機位置において、待機ポット3内のノズル洗浄液に吐出口10が浸漬され、それによって、吐出口10が洗浄される。コントローラ2は、スピンチャック5を第2処理液処理速度(たとえば300rpm~800rpm)で回転させる。第2処理液処理速度は、第1処理液塗布速度と等しいか、それよりも低速であることが好ましい。さらに、コントローラ2は、たとえば、第2処理液L2が基板Wの表面の回転中心に着液するように第2処理液ノズルN2を配置する。
【0063】
コントローラ2は、第2処理液L2が基板Wの表面の回転中心に着液する状態で、第2処理液ノズルN2を静止させて第2処理液供給工程S2を行ってもよい。また、コントローラ2は、第2処理液L2の着液位置を基板Wの表面の回転中心と周縁との間でスキャンさせるように、第2処理液ノズルN2を移動させながら、第2処理液供給工程S2を行ってもよい。第2処理液ノズルN2がスプレーノズルであるときには、着液位置を静止させて第2処理液供給工程S2を行うことが適切である場合がある。また、第2処理液ノズルN2がストレートノズルであるときには、着液位置をスキャンさせて第2処理液供給工程S2を行うことが適切な場合がある。
【0064】
第2処理液供給工程S2の後、コントローラ2は、第2処理液ノズルN2からの第2処理液L2の供給を停止させ、第2処理液ノズルN2を待機位置に移動する。また、コントローラ2は、スピンチャック5の回転速度を混合液処理速度(たとえば0rpm~50rpm)とする。混合液処理速度は、第2処理液供給速度よりも低速であることが好ましく、零(すなわち回転停止)であってもよい。第1処理液L1の塗布膜F1の上に第2処理液L2が供給されることによって、それらが混合してSPMが生成される。したがって、第2処理液L2の供給直後からSPMによる処理工程、すなわち、混合液処理工程S3が始まる(
図1Cおよび
図1D参照)。第2処理液L2の供給を停止した後にも、基板Wの表面上において、高粘度の第1処理液L1と第2処理液L2との混合が継続するので、混合液処理工程S3は、第2処理液L2の供給を停止した後にも継続する。
【0065】
第2処理液L2の供給を停止した後、予め定める反応時間が経過すると、コントローラ2は、リンス工程S4を実行する(
図1E参照)。すなわち、コントローラ2は、リンス液ノズルNRを処理位置に移動する。そして、コントローラ2は、スピンチャック5を所定のリンス速度(たとえば300rpm~1000rpm)で回転させる。その状態で、コントローラ2は、リンス液バルブ44を開いて、リンス液ノズルNRから基板Wに向けてリンス液Rを吐出させる。基板Wの表面におけるリンス液Rの着液位置は、この実施形態では、基板Wの中心に固定である。ただし、移動ノズルの形態のリンス液ノズルNRを用いて、リンス液Rの着液位置を、基板Wの中心と周縁との間で移動(スキャン)してもよい。
【0066】
予め定めるリンス処理時間の経過後、コントローラ2は、リンス液ノズルNRからのリンス液Rの吐出を停止して、リンス工程S4を終え、リンス液ノズルNRを待機位置に移動する。
そして、コントローラ2は、残渣除去工程S5を実行する(
図1Fおよび
図1G参照)。すなわち、コントローラ2は、薬液ノズルNCを処理位置に移動する。そして、コントローラ2は、スピンチャック5を所定の洗浄液処理速度(たとえば500rpm~1500rpm)で回転させる。その状態で、コントローラ2は、薬液バルブ34を開いて、洗浄液C(たとえばアンモニア過酸化水素水混合液)を基板Wに向けて吐出させて、洗浄液供給工程S51を実行する(
図1F参照)。基板Wの表面における洗浄液Cの着液位置は、基板Wの中心に固定であってもよいし、基板Wの中心と周縁との間で移動(スキャン)してもよい。予め定める時間だけ洗浄液Cを供給した後、コントローラ2は、薬液ノズルNCからの洗浄液Cの吐出を停止し、薬液ノズルNCを待機位置に移動させる。
【0067】
次いで、コントローラ2は、洗浄液処理後のリンス工程S52を実行する(
図1G参照)。このリンス工程S52は、混合液処理工程S3の直後のリンス工程S4(
図1E参照)と実質的に同様であってもよい。
予め定めるリンス処理時間の経過後、コントローラ2は、リンス液ノズルNRからのリンス液Rの吐出を停止して、リンス工程S52を終える。そして、コントローラ2は、スピンチャック5を乾燥回転速度(たとえば2500rpm~4000rpm)まで加速し、基板W上のリンス液Rを振り切る乾燥工程S6(スピンドライ)を実行する(
図1H参照)。この乾燥工程S6を所定時間だけ行った後、コントローラ2は、スピンチャック5の回転を停止して、処理を終える。
【0068】
処理済みの基板Wは、基板搬送ロボット(図示せず)によってスピンチャック5から受け取られ、処理チャンバ1から搬出される。
図7は、第1処理液供給源15の他の構成例を説明するための図である。
前述の
図4に示した第1処理液供給源15の構成例では、第1処理液タンク16に調整済みの第1処理液L1を供給するか、または第1処理液タンク16内で第1処理液L1を調製することができる。具体的には、硫酸または過酸化水素水の一方と増粘剤とを混合して調製された第1処理液L1が第1処理液タンク16に供給されるか、そのような調製が第1処理液タンク16内で行われる。
【0069】
これに対して、
図7に示した第1処理液供給源15の構成例では、第1処理液配管13の途中で、硫酸または過酸化水素水一方と増粘剤とが混合される。
具体的には、第1処理液配管13には、硫酸または過酸化水素水の一方である第1処理液成分L1aを供給する第1処理液成分配管131と、液体状の増粘剤を供給する増粘剤配管132とが接続されている。したがって、第1処理液成分L1aと増粘剤とが第1処理液配管13で合流して混合される。その混合を促進するために、第1処理液配管13にはインラインミキサ133が介装されている。
【0070】
インラインミキサ133は、たとえば撹拌エレメントを有し、第1処理液配管13を流れる流体を撹拌することにより、第1処理液成分L1aと増粘剤とを十分に混合させて、高粘度の第1処理液L1の生成を補助する。このような撹拌型のインラインミキサだけでなく、第1処理液成分L1aと増粘剤とを合流させるときに、主流路を流れる流体に混合ノズルから流体を分散吐出して分散混合させる分散混合型のインラインミキサが用いられてもよい。
【0071】
この構成例の第1処理液供給源15は、増粘剤が液体またはエマルションである場合にとくに好適である。増粘剤が固体(粉体等)である場合には、
図4に示した構成の第1処理液供給源15の方が適している。
以上のように、この実施形態によれば、増粘剤を添加して高粘度の液体とした第1処理液L1が基板Wの表面(上面)の全域に塗布される。それにより、第1処理液L1の消費量を抑制しながら、基板Wの表面の全域に、第1処理液L1を均一に行き渡らせ、かつ密着させることができる。この第1処理液L1が塗布された基板Wの表面に第2処理液L2が供給されることにより、基板W上で第1処理液L1および第2処理液L2が混合して、SPMが生成される。第1処理液L1が基板Wの表面の全域に均一に隈無く行き渡って密着しているので、基板Wの表面の全域にSPMを隈無く均一に行き渡らせることができる。したがって、基板Wの表面全域でSPMによる処理(レジストを腐食させる処理)を均一に進行させることができる。しかも、第1処理液L1および第2処理液L2が基板W上で混合するので、その混合時の反応熱を利用でき、それに応じて、効率的な処理が可能である。SPMによる処理は、基板Wの表面にリンス液Rを供給してSPMを置換することで停止することができる。
【0072】
第2処理液L2が比較的低粘度(たとえば第1処理液L1よりも低粘度)であれば、第1処理液L1および第2処理液L2の混合が速やかに進行するので、それらの混合液であるSPMを速やかに生成させることができる。それにより、一層効率的な処理が可能となる。
第1処理液L1の粘度は、増粘剤によって適切に調整することができるので、基板Wの表面に塗布するときの延伸性、基板Wの表面における塗布膜F1の保持性、第2処理液L2との混合度合いなどを考慮して、適切な粘度を設定できる。それにより、とりわけ、第1処理液L1の消費量を低減しながら、基板Wに対して均一な処理を施すことができる。
【0073】
とくに、過酸化水素水および増粘剤を含む液を第1処理液L1とし、硫酸を含む液を第2処理液L2として用いることにより、過酸化水素水の消費量を低減できるので好ましい。
第1処理液塗布工程S1において、基板Wの表面に塗布膜F1(たとえばゲル状の塗布膜)が形成されれば、基板Wの表面の全域に確実に第1処理液L1を密着させることができる。それに応じて、第2処理液L2を供給してできるSPMを基板Wの表面の全域に確実に密着させることができるので、効率的でかつ均一な処理が可能になる。
【0074】
第2処理液供給工程S2は、第1処理液L1の供給(新液の供給)を停止した状態で行うことが好ましい。それにより、第1処理液L1の消費量を確実に低減できる。しかも、第1処理液L1の塗布膜F1の上に第2処理液L2を供給できるので、第2処理液L2の流動によって、第1処理液L1が基板W外に持ち去られることを抑制できる。
混合液処理工程S3の少なくとも一部の期間には、第2処理液L2の供給(新液の供給)を停止することが好ましい。それにより、第2処理液L2の消費量を一層抑制することができる。すなわち、第1処理液L1の塗布膜F1上に第2処理液L2の液膜が担持された状態でそれらの混合が進行するパドル処理によって、それらの混合液であるSPMによる基板処理を進行させることができる。このとき、第1処理液L1および第2処理液L2のいずれもが供給されないので、いずれの処理液の消費量も低減できる。
【0075】
図8は、この発明の第2の実施形態に係る基板処理方法を説明するための工程図である。この実施形態では、第1処理液塗布工程S1の前に、前処理工程S0が実行される。その後の工程S1~S6は、前述の第1の実施形態(
図1A~
図1H参照)と同様である。
前処理工程S0は、高粘度の第1処理液L1を基板Wの表面に塗布する前に、第2処理液(好ましくは第1処理液L1よりも低粘度の第2処理液L2)を基板Wの表面に供給する工程である。前処理工程S0では、基板処理装置100は、第2処理液供給工程S2と実質的に同様に作動してもよい。
【0076】
前処理工程S0では、基板Wに第1処理液L1の塗布膜F1が存在しないので、第2処理液L2は第1処理液L1の塗布膜F1上ではなく、基板Wの表面に供給される。コントローラ2は、スピンチャック5を第2処理液処理速度で回転させ、その状態で、第2処理液ノズルN2から第2処理液L2を基板Wの表面に向けて吐出させる。
このような前処理工程S0の後に、第2処理液ノズルN2が待機位置に移動され、第1処理液塗布工程S1が実行される。基板Wの表面に供給される第1処理液L1は、既に基板W上に存在する第2処理液L2と接するので、第1処理液L1および第2処理液L2の混合(SPM反応)が生じる。したがって、第1処理液L1の供給直後から、基板Wの表面において、混合液処理工程S3を開始させることができる。
【0077】
第1処理液塗布工程S1の前に前処理工程S0を実行することにより、高粘度の第1処理液L1を基板Wの表面全域に塗り広げやすくなり、かつ基板Wの表面における混合液処理を促進できるので、より効率的なレジスト剥離処理を行うことができる。
以上、この発明の2つの実施形態について説明してきたが、この発明は、さらに他の形態で実施することもできる。たとえば、前述の実施形態では、室温の過酸化水素水とそれよりも高温の硫酸とを基板Wの表面に供給する処理を主として説明している。しかし、室温の過酸化水素水と室温の硫酸とを基板Wの表面に供給してもよい。この場合にも、過酸化水素水および硫酸が混合するときの発熱反応によって高温のSPMが基板W上で生成され、基板Wの表面のレジストを腐食させることができる。基板W上の反応を促進するために、基板Wをヒータによって加熱してもよい。ヒータは、スピンチャック5に内蔵されてもよいし、ハロゲンヒータ等の別の熱源が用いられてもよい。
【0078】
また、前述の実施形態では、基板Wを一枚ずつ保持して処理する枚葉式の基板処理について説明したが、複数枚の基板に対して一括処理するバッチ式の基板処理にこの発明が適用されてもよい。
その他、特許請求の範囲に記載された事項の範囲で種々の設計変更を施すことが可能である。
【符号の説明】
【0079】
S1 第1処理液塗布工程
S2 第2処理液供給工程
S3 混合液処理工程
S4 リンス工程
S5 残渣除去工程
S6 乾燥工程
W 基板
L1 第1処理液
L2 第2処理液
R リンス液
C 洗浄液
F1 第1処理液の塗布膜
N1 第1処理液ノズル
N2 第2処理液ノズル
NR リンス液ノズル
NC 薬液ノズル
100 基板処理装置
1 処理チャンバ
2 コントローラ
3 待機ポット
5 スピンチャック
10 吐出口
14 第1処理液バルブ
15 第1処理液供給源
24 第2処理液バルブ
25 第2処理液供給源
44 リンス液バルブ