IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ダイハツ工業株式会社の特許一覧

<>
  • 特許-射出成形装置 図1
  • 特許-射出成形装置 図2
  • 特許-射出成形装置 図3
  • 特許-射出成形装置 図4
  • 特許-射出成形装置 図5
  • 特許-射出成形装置 図6
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-21
(45)【発行日】2024-07-01
(54)【発明の名称】射出成形装置
(51)【国際特許分類】
   B29C 45/76 20060101AFI20240624BHJP
   B29C 45/40 20060101ALI20240624BHJP
   B29C 45/64 20060101ALI20240624BHJP
   B29C 45/84 20060101ALI20240624BHJP
【FI】
B29C45/76
B29C45/40
B29C45/64
B29C45/84
【請求項の数】 1
(21)【出願番号】P 2020126621
(22)【出願日】2020-07-27
(65)【公開番号】P2022023586
(43)【公開日】2022-02-08
【審査請求日】2023-05-10
(73)【特許権者】
【識別番号】000002967
【氏名又は名称】ダイハツ工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100180644
【弁理士】
【氏名又は名称】▲崎▼山 博教
(72)【発明者】
【氏名】花山 由宇
(72)【発明者】
【氏名】永井 真
(72)【発明者】
【氏名】若月 富男
(72)【発明者】
【氏名】増山 朗
【審査官】浅野 弘一郎
(56)【参考文献】
【文献】特開昭58-224731(JP,A)
【文献】特開2002-370260(JP,A)
【文献】実開昭61-183621(JP,U)
【文献】特開昭63-003930(JP,A)
【文献】特開平11-048301(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 45/76
B29C 45/40
B29C 45/64
B29C 45/84
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一対のプラテンと、
成形品を押し出す押出装置を備えた金型と、
前記プラテンの開閉動作を制御する制御装置と、
前記開閉動作を含む動作を人が入力可能な操作装置と、を有し、
型締め、射出、成形、型開き、前記押出装置の前進、前記押出装置の後退を含む一連の射出成形動作を1サイクルとして、少なくとも前記1サイクルを自動運転により実行可能であるとともに、前記一連の射出成形動作の途中で前記自動運転を停止可能に構成され、
前記制御装置が、
射出完了後に前記自動運転が停止した際、前記押出装置の前進動作及び前記押出装置の後退動作のうち少なくとも一方を検出していない場合に、成形品が前記金型内に残存している可能性があることを示す成形品残り有りと判定し、前記操作装置への入力による型締め操作を不可とすることを特徴とする、射出成形装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、射出成形装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、樹脂等の成形材料を金型内に充填して部品の成形を行う射出成形が行われている。ここで、射出成形後に成形品が金型内に残存したまま型締めを行うと、金型が破損する恐れがある。このような金型内への成形品残りに起因する金型破損を抑制するための技術として、例えば、下記特許文献1の技術が開示されている。特許文献1の金型多面監視装置では、金型内の映像信号に基づいて成形品残りを検出することとされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開平11-48301号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1の技術では、成形品を検出するためのカメラ等の撮像装置が必要となり、カメラ等を設けるためのコストが増加することとなる。また、コストを抑制しつつ金型内に成形品が残存した状態で型締めが行われることに起因する金型の破損を抑制したいとの要望があった。
【0005】
そこで本発明は、コストを抑制しつつ、金型内への成形品残りに起因する金型の破損を抑制することができる射出成形装置の提供を目的とした。
【課題を解決するための手段】
【0006】
ここで、自動車のバンパーやインパネなどの大型部品を射出成形する場合には、射出成形後に取出ロボットを用いて金型から成形品を取り出している。すなわち、通常時には、生産性の観点から射出成形装置の制御と取出ロボットの制御とを連動させて、自動運転により成形品の連続成形が行われている。
【0007】
より具体的に説明すると、通常行われてる自動運転では、(1)射出完了、(2)型開き、(3)押出装置の前進、(4)取出ロボットによる成形品取り出し、(5)押出装置の後退、(6)型締め、(7)射出開始、といった一連の流れで連続成形が行われている(図4参照)。
【0008】
また、大型部品を射出成形する場合には、押出板を前進させて、押出ピンにより成形品を固定型から押し出して離反させた後、成形品は押出ピンの先端で保持される。押出ピンに保持された成形品は、取出ロボットにより金型から取り出される。さらに、自動運転時には、取出ロボットが成形品を取り出したか否か(取出ロボットが成形品を持っているかどうか)で、成形品が金型に残存しているか否かの判定を行っている場合がある。そのため、自動運転で連続成形を行う場合には、取出ロボット側の制御装置により取出ロボットが成形品を把持していることが検知されてから型締めが行われるようになっている。
【0009】
一方、試作品の成形(トライ)のために1サイクル運転をした場合や、何らかの不具合によりサイクルが停止した場合には、金型内に成形品が残った状態で運転が停止する場合があり、このような場合には押出装置の動作は手動で行うこととなる。すなわち、トライ時やサイクルの途中で手動操作を余儀なくされた場合では、型開きが完了した後の動作(押出装置の進退動作や型締め動作など)は、射出成形装置の操作盤に対するオペレータの手動操作によって行われることとなる。そのため、オペレータが成形品を取り忘れたり、操作ミスによってそのまま型締めを行ったりすると、金型内に製品を挟みこみ金型を破損させてしまう恐れがある。
【0010】
ここで、通常の製品(大型部品ではない成形品)を射出成形により成形する場合には、自動運転で連続成形する場合に成形後の製品を落下させることを前提とした制御とされている。そのため、一般的な射出成形装置の制御では、型開き後に成形品が残存しているかどうかを検知する手段が設けられておらず、金型内に成形品が残った状態でも型締めすることが出来るものとなっている。
【0011】
例えば、押出板(押出装置)の前進動作の途中など、成形品が取り出される前に取出ロボットが停止すると、取出ロボットの制御と射出成形装置の制御との通信が途切れ、続く動作の手動操作を余儀なくされる場合がある。このようにサイクルの途中で手動運転への切り替えを余儀なくされた場合、射出成形装置の単体の制御では押出板の前進動作や後退動作、さらには型締め動作を単独で行うことが可能となっている。そのため、型締めまでに必要な動作(押出板の前進や後退)を行ったか否か、成形品の取り出し忘れがないかといった確認作業を失念することが想定される。
【0012】
その結果、サイクルの途中で運転が停止した場合や、トライのために1サイクル運転を行う場合など、少なくとも一部の動作を手動運転で射出成形を行う場合など、不慣れな者が成形品の取り出しを行ったか否か等の確認を失念することで、金型内に成形品が残った状態で型締めして金型が破損する、あるいは金型内に成形品が残った状態でさらに射出成形を行って(二度打ち)その結果金型が破損するといった問題があった。
【0013】
このような問題を解決するための方策について本発明の発明者らが検討したところ、取出ロボット不使用時など少なくとも一部の動作について手動運転を行う場合に、押出装置の動作の有無に基づいて型締めを禁止する制御とすることで、上記の問題を解決することができるとの知見に至った。
【0014】
例えば、射出完了後に、押出板(押出装置)が完全に前進し切ったことと、その後押出板が完全に後退し切ったことの両方が検知されていない場合(前進及び後退の双方が検出されていない場合)や、前進動作は検知されたが後退動作が検知されていない場合(前進及び後退のうち一方が検出されていない場合)など、押出装置の動作の有無に基づいて型締めを不可とする(作業者が手動での型締め操作を行えない)。これにより、金型内に成形品が残存していないかどうかといった確認作業を作業者に促すことができる。
【0015】
また、射出完了後に、押出板が完全に前進し切ったことと、押出板が完全に後退し切ったこととの双方を充足する場合には、成形品の取り出し忘れがあったとしても、成形品を保持していた押出ピンが後退して成形品が押出ピンから外れ、成形品が金型から脱落する可能性が高い。成形品が押出ピンから脱落した場合、金型の狭持領域から外れた位置まで落下する。そのため、成形品の取り出し忘れがあり、そのまま型締めが行われたとしても、金型内に成形品が残存する蓋然性を低下させることができる。その結果、成形品残りに起因して金型が破損する恐れを低下させることができる。
【0016】
上述の知見に基づき提供される本発明の射出成形装置は、一対のプラテンと、成形品を押し出す押出装置を備えた金型と、前記プラテンの開閉動作を制御する制御装置と、前記開閉動作を含む動作を人が入力可能な操作装置と、を有し、前記制御装置が、射出完了後に、前記押出装置の動作の有無に基づいて、成形品が前記金型内に残存している可能性があることを示す成形品残り有りと判定し、前記操作装置への入力による型締め操作を不可とすることを特徴とする。
【0017】
本発明の射出成形装置によれば、少なくとも一部の工程について手動操作を行う場合において、成形品が残存したまま型締めが行われることを抑制することができる。すなわち、本願発明の射出成形装置では、射出完了後、押出装置の動作の有無に基づいて、成形品残り有りと判断し、手動での型締め操作を不可とする。
【0018】
本発明の射出成形装置は、一対のプラテンと、成形品を押し出す押出装置を備えた金型と、前記プラテンの開閉動作を制御する制御装置と、前記開閉動作を含む動作を人が入力可能な操作装置と、を有し、前記制御装置が、射出完了後に、前記押出装置の前進動作及び前記押出装置の後退動作のうち少なくとも一方を検出していない場合に、成形品が前記金型内に残存している可能性があることを示す成形品残り有りと判定し、前記操作装置への入力による型締め操作を不可とするものであるとよい。
【0019】
本発明の射出成形装置によれば、少なくとも一部の動作について手動操作を行う場合において、成形品が残存したまま型締めが行われることを抑制することができる。すなわち、本願発明の射出成形装置では、射出完了後、押出装置が前進していないことと、押出装置が後退していないこと(押出板の進退動作が完了していないこと)との少なくとも一方を検知していないことを条件として、成形品残り有りと判断し、手動での型締め操作を不可とする。
【0020】
このように、本発明の射出成形装置では、射出完了後、トライ時やサイクルの途中で運転が停止した場合(押出装置が前進しないまま自動運転が切れた場合など)など、少なくとも一部の工程で手動運転が行われる場合に押出装置の動作の有無に基づいて「成形品残り」の有無を判断し、成形品残り有りの場合には手動での型締めを不可とする。これにより、本発明の射出成形装置は、金型内に成形品が残存していないかどうか、型締めまでに必要な動作が全て完了しているかといった確認作業を作業者に促すことができる。その結果、本発明の射出成形装置は、カメラやセンサを設けることなくコストを抑えて成形品残りの有無を検知する機能を設け、成形品が残存したまま型締めが行われることや、成形品が残存したままさらに射出成形が行われること(二度打ち)に起因する金型の破損を抑制することができる。
【0021】
本発明の射出成形装置は、前記成形品残り有りを報知する報知装置が設けられているものであるとよい。
【0022】
上述の構成によれば、作業者に成形品残り有りを報知する報知装置(異常警報ランプを点灯させるなど)によりエラー(成形品残り有り)を報知して、金型内に成形品が残存していないかどうか、型締めまでに必要な動作が全て完了しているかといった確認作業を作業者に促すことができる。
【0023】
本発明の射出成形装置は、前記制御装置が、前記押出装置のストローク量に基づいて、前記押出装置の前進動作、及び前記押出装置の後退動作を検知するものであるとよい。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、コストを抑制しつつ、金型内への成形品残りに起因する金型の破損を抑制することができる射出成形装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】本発明の射出成形装置を備える射出成形システムを示す平面図である。
図2図1の射出成形装置の動作を示す図である。(a)は射出完了、(b)は型開き、(c)は押出前進を示している。
図3図1の射出成形装置の動作を示す図である。(a)は成形品取出、(b)は押出後退、(c)は型締めを示している。
図4】自動運転モードにおける一連の動作を示す図である。
図5】手動運転モードにおける一連の動作を示す図である。
図6図5の成形品残り有無判定の処理を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明の射出成形装置10、及び射出成形装置10を備える射出成形システムSについて、図面を参照しつつ説明する。
【0027】
図1に示すとおり、射出成形システムSには、射出成形装置10に加え、射出成形装置10から成形品Wを取り出す取出ロボット60や成形品Wを搬送する搬送路70が設けられている。
【0028】
本実施形態の射出成形装置10は、バンパーやインパネなど、車体を構成する大型部品となる成形品Wを射出成形するものである。なお、本実施形態の成形品Wは、バンパーやインパネを例として示したが、本発明は本実施形態に限定されない。例えば、本発明の射出成形装置により成形される成形品は、ドア、フード、あるいはアウタパネル等、いかなる部品であってもよい。
【0029】
射出成形装置10は、樹脂などの材料を射出成形によって成形品Wを製造する装置である。図1に示すとおり、射出成形装置10は、プラテン11(一対のプラテン)、金型20、操作部40(操作装置)、エラー報知ランプ42(報知装置)、及び成形側制御装置50(制御装置)を備えている。
【0030】
プラテン11(一対のプラテン)は、固定プラテン12及び可動プラテン14により構成されている。プラテン11は、固定プラテン12に対して可動プラテン14が近接及び離間するように移動可能(開閉可能)とされている。
【0031】
図1に示すとおり、射出成形装置10には、可動プラテン14を移動させて型締め動作を行う型締めユニット15や、材料である樹脂を金型20内に射出する射出ユニット13などが設けられている。射出ユニット13は固定プラテン12に接続されており、型締めユニット15は固定プラテン12に接続されている。
【0032】
可動プラテン14は、型締めユニット15により移動可能とされている。なお、可動プラテン14は、図示を省略したガイド部材により移動する際(型締め時及び型開き時)にガイドされる。
【0033】
以下の説明では、プラテン11の開閉方向(金型20の開閉方向)を、単に「開閉方向X」と記載して説明する場合がある。また、開閉方向Xのうち、固定プラテン12に対して可動プラテン14が接近する方向を、「型締め方向X1」と記載して説明し、固定プラテン12に対して可動プラテン14が離間する方向を、「型開き方向X2」と記載して説明する場合がある。
【0034】
図1に示すとおり、金型20は、固定型22と可動型24とから構成されている。固定型22は固定プラテン12に取り付けられる。可動型24は可動プラテン14に取り付けられる。
【0035】
可動型24は、可動プラテン14の移動に伴って開閉方向Xに沿って移動可能とされている。また、図2(b)に示すとおり、可動型24には、押出装置30が設けられている。
【0036】
図2(a)に示すとおり、固定型22と可動型24とを型締めした状態では、成形材料(融解樹脂)が注入されるキャビティCが形成される。また、型締めした状態でキャビティCに溶融材料を射出することにより、成形品Wが成形される。
【0037】
押出装置30は、成形品Wを押し出して、成形品Wを可動型24から離間させるために設けられている。図2(a)に示すとおり、押出装置30は、複数の押出ピン34、押出板32、及び保持ブロック36を備えている。また、押出装置30は、可動型24に対して移動可能とされている。
【0038】
押出装置30は、可動型24に対して開閉方向Xに沿って移動可能とされている(図2(c)及び図3(b)参照)。押出装置30は、押出板32が駆動装置(図示を省略)の作動により移動可能とされており、押出板32の移動に伴って押出ピン34及び押出ピン34の先端に設けられた保持ブロック36が移動する。駆動装置は、シリンダやモータ等を用いることができる。以下の説明では、押出板32(押出装置30)の突出方向(型締め方向X1)の移動を単に「前進」と、後退方向(型開き方向X2)の移動を単に「後退」と記載して説明する場合がある。
【0039】
なお、押出板32の移動距離(ストローク量M)は、駆動装置に設けられたエンコーダ等の検出装置により検出される。また、押出板32の初期位置P1から押出設定位置P2までの移動量(ストローク量M)は、金型20ごとに予め設定された値(設定値)が記憶されている。
【0040】
また、成形側制御装置50は、押出板32の型開き方向X2へのストローク量Mが設定値に到達すると(押出設定位置P2に到達すると)「押出前進完了」と判定する。また、成形側制御装置50は、押出板32の型締め方向X1へのストローク量Mが設定値に到達すると(初期位置P1に戻ると)「押出後退完了」と判定する。
【0041】
図2(c)に示すとおり、押出ピン34は、押出板32に連結されており、押出板32が開閉方向Xに移動するのに伴って移動する。また、押出ピン34の先端には、保持ブロック36が設けられている。
【0042】
図2(c)に示すとおり、保持ブロック36は、成形品Wを可動型24から離間させるように押し出した後、成形品Wを保持可能な形状とされている。押出装置30により可動型24から成形品Wが押し出されると、成形品Wは複数の保持ブロック36により支持された状態となる。これにより射出成形装置10は、成形品Wを可動型24から離間させた状態で保持することができる。
【0043】
操作部40(操作装置)は、作業者Yが射出成形装置10における各種の動作指示を行うためのものである。より具体的には、操作部40には、射出成形開始、押出板32の前進動作、押出板32の後退動作等の操作を手動で行うための入力部が設けられており、操作部40に入力された操作に基づいて、射出成形装置10を手動で運転させることができる。
【0044】
エラー報知ランプ42(報知装置)は、後述する成形品残り有りの場合に、成形品残りを報知するために設けられている。本実施形態のエラー報知ランプ42は、ランプを点灯させてエラー(成形品残り)を報知するものとされている。なお、本発明の射出成形装置の報知装置はランプに限定されず、音声や画像表示装置等を用いてエラーを報知するものであってもよい。
【0045】
成形側制御装置50(制御装置)は、プラテン11の開閉や、押出動作など、射出成形装置10における各種動作の制御を行う。成形側制御装置50は、後述する自動運転モードでは、射出開始から型開き、成形品Wの押出、型締め等の一連の動作を自動で行い、成形品Wの連続成形を行う。また、成形側制御装置50は、後述する手動運転時では、少なくとも一部の動作を操作部40への入力に基づいて行う。
【0046】
成形側制御装置50には、図示を省略した記憶部が設けられており、射出成形や型開きなど、各種動作の有無が記憶されている。また、成形側制御装置50の記憶部には、押出板32が前進した場合の前進距離(ストローク量M)や、押出板32が後退した場合の後退距離(ストローク量M)が記憶されている。
【0047】
取出ロボット60(取出装置)は、射出成形装置10から成形品Wを取り出すために設けられている。取出ロボット60は、取出ロボット側制御装置62により動作が制御されている。取出ロボット側制御装置62は、成形側制御装置50と通信しており、射出成形装置10の動作に連動して取出ロボット60の動作を制御する。取出ロボット60により金型20から取り出された成形品Wは搬送路70に移動され、所定の場所に搬送される。
【0048】
以下、射出成形装置10の制御について説明する。射出成形装置10は、取出ロボット60と連動して成形品Wの連続成形を行うことができる。また、射出成形装置10は、取出ロボット60と連動しない状態(取出ロボット60の停止時)において、射出成形装置10を単体で稼働させることができる。
【0049】
なお、以下の説明では、射出成形装置10の取出ロボット60と連動した運転を行う場合を、単に「自動運転モード」又は「自動運転時」と記載して説明する場合がある。また、射出成形装置10が単体で運転を行う場合(取出ロボット60の不使用時)であって、自動運転モード中であるか(一部の動作が手動で行われる場合)、全動作を手動運転により行われるかを問わず、少なくとも一部の動作が操作部40に対する手動操作により運転が行われる場合を、単に「手動運転時」と記載して説明する場合がある。
【0050】
以下の説明では、先ず自動運転モードにおける射出成形装置10の一連の動作について説明し、その後に手動運転時における動作について説明する。
【0051】
<自動運転モードでの動作>
図4に示すとおり、自動運転時の射出成形システムSでは、射出成形、型開き、押出板前進、成形品取出、押出板後退、型締め、射出開始に至る一連の動作が繰り返し行われる。また、射出成形システムSでは、取出ロボット60の成形品Wの把持が検知されることに基づいて、押出後退や型締めが行われる。
【0052】
図4に示すとおり、成形側制御装置50は、射出成形の完了(ステップ1)の後に、型開きを行う(ステップ2)。図2(a)に示すとおり、射出成形では、型締めされてキャビティCが形成された状態の金型20に成形材料(熔解材料)を注入して、成形品Wが形成される。また、図2(b)に示すとおり、型開きでは、可動プラテン14(図2では図示を省略)を固定プラテン12(図2では図示を省略)から離反させ、可動型24から固定型22を離反させる。
【0053】
図4に示すとおり、成形側制御装置50は、型開き(ステップ2)の後に、押出板32を前進させて成形品Wを可動型24から離反させる(ステップ3の押出前進)。具体的には、図2(c)に示すとおり、押出板駆動装置(図示を省略)を作動させて押出板32及び押出ピン34を前進させる。これにより、押出ピン34に押されて成形品Wが可動型24から離反する。また、上述のとおり、押出装置30には保持ブロック36が設けられており、押出装置30は、成形品Wを可動型24から押し出した後(離型させた後)、保持ブロック36により成形品Wを保持する。
【0054】
図4に示すとおり、押出板32の前進(ステップ3)が完了した後、取出ロボット60により成形品Wが取り出される(ステップ4の成形品取出)。より具体的には、図3(a)に示すとおり、取出ロボット60が所定の位置まで移動して、射出成形装置10から成形品Wが取り出される。
【0055】
取出ロボット60が成形品Wを把持したことを検知すると、押出板32が後退し(ステップ5の押出後退)、その後型締めが行われ(ステップ6の型締め)、さらに次の射出が開始される(ステップ7の射出開始)。射出が開始された後には、ステップ1に戻り、射出完了以後の動作が行われる。
【0056】
このように、射出成形システムSでは、自動運転モードにおいて射出成形装置10と取出ロボット60とが連動して作動し、成形品Wの連続成形が行われる。
【0057】
<手動運転時の動作>
次に、手動運転時の動作について説明する。手動運転時には、少なくとも一部の動作が操作部40に対する手動操作に基づいて行われる。
【0058】
射出成形装置10では、成形品Wの試作品を成形する場合(トライ時)に射出成形装置10を1サイクルで運転する場合や、何らかの理由で取出ロボット60が停止、あるいは停止させて射出成形装置10を単体で作動させる場合など、必要に応じて手動運転が行われる。すなわち、手動運転時には、射出完了から次の射出開始までの間のサイクルにおいて自動運転が停止した場合など、少なくとも一部の工程を手動操作により行う場合が含まれる。
【0059】
図5に示すとおり、射出完了(ステップ10)の後、金型20の型開きが行われる(ステップ11の型開き)。本実施形態では、射出成形から型開きまでは、自動で行われる(成形側制御装置50の制御により行われる)場合を例示している。なお、射出成形から型開きまでの動作は手動で行われるものであってもよい。
【0060】
なお、型開きが行われると、エラー報知ランプ42の点灯が開始される。エラー報知ランプ42は、押出板32の前進動作完了と、押出板32の後退動作完了とが検出されると消灯してエラー報知が解除される(図6のステップ14-5参照)。
【0061】
図5に示すとおり、手動運転時では、射出成形が完了した後の、押出板前進(ステップ12)、押出板後退(ステップ13)、型締め(ステップ15)、及び射出開始(ステップ16)の各工程のうち少なくとも一部の工程が、作業者Yが操作部40に対して手動操作を行うことに基づいて行われる。
【0062】
ここで、成形側制御装置50は、射出完了後に型締め操作が行われた場合(型締め操作を受け付けた場合)において、成形品残り有無判定を行う。具体的に説明すると、成形品残り有無判定において、押出板32の前進動作が完了しているか否か、及び押出板32の後退動作が完了しているか否かを判定する。押出板32の前進動作完了、及び押出板32の後退動作完了の双方を充足している場合には、成形品残りがないとして型締め許可を行う。一方、押出板32の前進動作完了、及び押出板32の後退動作完了のうち少なくとも一方を充足していない場合には、「成形品残り有り」と判定し、手動操作による型締めを禁止する(型締め不可とする)。例えば、押出板32の前進が開始していない場合、あるいは押出板32の前進動作が完了していない場合、押出板32の前進は完了しているが押出板32の後退動作を検知していない、あるいは完了していない場合には、「成形品残り有り」と判定する。
【0063】
成形側制御装置50が行う成形品残り有無判定について、図6を用いて説明する。
【0064】
成形側制御装置50は、先ず型締め操作の有無を判定する。型締め操作があった場合(ステップ14-1=YESの場合)には処理をステップ14-2に移し、型締め操作がなかった場合(ステップ14-1=NOの場合)には成形品残り有無判定処理を終了する。
【0065】
ステップ14-2において、成形側制御装置50は、射出完了後であるか否かを判定する処理を行う。射出完了後である場合(ステップ14-2=YES)には処理をステップ14-3に移し、射出完了後ではない場合(ステップ14-2=NO)には処理をステップ14-7に移す。
【0066】
ステップ14-3において、成形側制御装置50は、押出板32の前進動作が完了しているか否かを判定する処理を行う。押出板32の前進動作が完了しているか否かの判定は、例えば押出板32の型開き方向X2へのストローク量Mが設定値に到達しているか否かに基づいて行うことができる。押出板32の前進動作が完了している場合(ステップ14-3=YES)には処理をステップ14-4に移し、押出板32の前進動作が完了していない場合(ステップ14-3=NO)には処理をステップ14-7に移す。
【0067】
ステップ14-4において、成形側制御装置50は、押出板32の後退動作が完了しているか否かを判定する処理を行う。押出板32の後退動作が完了しているか否かの判定は、例えば押出板32の後退方向へのストローク量Mが設定値に到達しているか否かに基づいて行うことができる。押出板32の後退動作が完了している場合(ステップ14-4=YES)には処理をステップ14-5に移し、押出板32の後退動作が完了していない場合(ステップ14-4=NO)には処理をステップ14-7に移す。
【0068】
ステップ14-5において、成形側制御装置50は、エラー報知を解除する処理を行う。具体的には、成形側制御装置50は、型開き後に点灯された状態となっているエラー報知ランプ42を消灯させる。
【0069】
ステップ14-6において、成形側制御装置50は、成形品残りがないと判定し、型締めを許可する処理を行う。すなわち、成形側制御装置50は、押出板32の前進動作と後退動作との双方が完了していることを条件として、成形品残りがないと判定し、型締めを許可する。これにより、図5のステップ15において型締めが行われることとなる。
【0070】
ステップ14-7において、成形側制御装置50は、成形品残り有りと判定し、型締めを禁止する処理を行う。すなわち、成形側制御装置50は、押出板32の前進動作及び後退動作の少なくとも一方が完了していないことを条件として、成形品残り有りと判定し、型締めを禁止する。
【0071】
このように、射出成形装置10によれば、手動操作を行う場合(手動運転時)において、成形品Wが残存したまま型締めが行われることを抑制することができる。すなわち、射出成形装置10では、例えば、射出完了後、押出板32が前進しないまま自動運転が切れた場合(自動運転モード中の押出板32の前進前に運転が停止した場合)や、トライ時など1サイクル運転のために手動運転を行う場合など、少なくとも一部の動作が手動で行われる場合において、押出板32の進退動作が完了していない場合に「成形品残り」と判断し、手動での型締めを不可とする(手動での型締めを禁止する)。
【0072】
すなわち、射出成形装置10では、射出完了後に、押出板32が完全に前進し切ったこと(設定位置P2まで前進したこと)と、押出板32が完全に後退し切ったこと(初期位置P1に戻ったこと)との少なくとも一方が検知されていない場合には、手動による型締めを禁止する。また、射出成形装置10では、型開き後にエラー報知(エラー報知ランプ42の点灯)を行い、「成形品残り無し」と判定されるまでエラー報知を継続する。これにより、金型20内に成形品Wが残存していないかどうかといった確認作業を作業者Yに促すことができる。その結果、射出成形装置10は、カメラやセンサを設けることなくコストを抑えて成形品残りの有無を検知する機能を設け、成形品Wが残存したまま型締めが行われることに起因する金型20の破損を抑制することができる。
【0073】
より詳細に説明すると、トライのための1サイクル運転をした場合や、何らかの不具合によりサイクル停止が働いた場合(自動運転が切れた場合)には、金型20内に成形品Wが残った状態で運転が停止する場合がある。このようなイレギュラー対応となる場合には、型開き後の動作(押出板32の進退動作や型開き動作)を手動操作で行うこととなる。そのため、自動運転モードでの運転に慣れた作業者Yが、「型開き後には成形品Wが取り出されている」との思い込みなどにより成形品Wを取り忘れたり、操作ミスによってそのまま型締めを行ったりすると、金型20内に成形品Wを挟みこみ金型20を破損させてしまう恐れがある。
【0074】
これに対して射出成形装置10では、手動操作を行う場合(手動運転時)において、射出完了から型締めまでに必要な動作(押出板32の前進完了、及び押出板32の後退完了)が完了しているか否か、金型20に成形品Wの取り出し忘れがないかどうかなど、作業者Yに確認を促すことができる。その結果、作業者Yの操作ミスや成形品Wを取り出したとの思い込みにより、成形品Wが金型20に残存したまま型締めが行われることや成形品Wが残存した状態でさらに射出が行われること(二度打ち)を抑制することができる。
【0075】
また、本実施形態の射出成形装置10では、エラー報知ランプ42を点灯させてエラー(成形品残り)を報知して、金型内に成形品が残存していないかどうか、型締めまでに必要な動作が全て完了しているかといった確認作業を作業者に促すことができる。なお、本実施形態では「成形品残り無し」と判定されるまでエラー報知を継続することとしたが、本発明の射出成形装置は本実施形態に限定されない。例えば、エラー報知は押出板(押出装置)の前進を検知した時点で解除するものとしてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0076】
本発明は、射出成形により成形品を製造する装置として、好適に採用することができる。
【符号の説明】
【0077】
10 射出成形装置
11 プラテン(一対のプラテン)
12 固定プラテン(プラテン)
14 可動プラテン(プラテン)
20 金型
22 固定型(金型)
24 可動型(金型)
30 押出装置
32 押出板(押出装置)
40 操作部(操作装置)
42 エラー報知ランプ(報知装置)
50 成形側制御装置(制御装置)
S 射出成形システム
W 成形品
図1
図2
図3
図4
図5
図6