(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-21
(45)【発行日】2024-07-01
(54)【発明の名称】シート搬送装置及び画像形成装置
(51)【国際特許分類】
B65H 5/06 20060101AFI20240624BHJP
【FI】
B65H5/06 D
B65H5/06 F
(21)【出願番号】P 2020131029
(22)【出願日】2020-07-31
【審査請求日】2023-07-13
(73)【特許権者】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003133
【氏名又は名称】弁理士法人近島国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】赤松 雄貴
【審査官】小川 克久
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-206811(JP,A)
【文献】特開2016-185874(JP,A)
【文献】特開2012-189619(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65H 5/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
駆動ローラと、
前記駆動ローラに従動して回転し、前記駆動ローラとの間でシートを挟持して搬送する従動ローラと、
シートの搬送をガイドする、非導電性の搬送ガイドと、
前記搬送ガイドを支持する、導電性を有する枠体と、
前記駆動ローラを回転自在に支持する、導電性を有する軸受と、
前記従動ローラを前記駆動ローラに向けて押圧する押圧部材と、
前記搬送ガイドに設けられ、前記軸受を前記押圧部材の押圧方向に変位自在に支持する、非導電性の支持部と、
前記枠体に設けられ、前記駆動ローラが前記従動ローラに押圧されている状態で前記軸受の前記押圧方向の位置決めを行う、導電性を有する位置決め部と、を備えた、
ことを特徴とするシート搬送装置。
【請求項2】
前記駆動ローラは、前記軸受に支持される回転軸と、前記回転軸の周囲に設けられたローラ部とを有し、
前記搬送ガイドは、シートをガイドするガイド面と、前記ローラ部の一部を前記ガイド面よりも前記従動ローラ側に突出させるように前記ローラ部が配置される配置部と、を有する、
ことを特徴とする、請求項1に記載のシート搬送装置。
【請求項3】
前記支持部は、前記駆動ローラによるシートの搬送方向に関して前記軸受の両側に設けられ、前記軸受の前記搬送方向に関する位置決めを行いつつ、前記軸受が前記押圧方向に移動することを許容する1対の支持面を有する、
ことを特徴とする、請求項1又は2に記載のシート搬送装置。
【請求項4】
前記支持部は、前記駆動ローラが前記従動ローラに押圧されていない状態で、前記軸受を所定位置でそれ以上、前記押圧方向と反対方向に移動することを規制する規制面を有する、
ことを特徴とする、請求項3に記載のシート搬送装置。
【請求項5】
前記支持部は、前記搬送ガイドに突設され、内周面が前記1対の支持面及び前記規制面を有し、前記押圧方向に関して前記規制面と反対側に一部が切り欠かれた切り欠き部を有する略筒状の突部であり、
前記位置決め部は、前記切り欠き部に侵入するように形成されている、
ことを特徴とする、請求項4に記載のシート搬送装置。
【請求項6】
前記枠体は、貫通孔を有し、
前記搬送ガイドは、前記支持部の外周面が前記貫通孔に嵌合されることで前記枠体に位置決めさており、
前記位置決め部は、前記貫通孔の内周面の一部から突出するように形成されている、
ことを特徴とする、請求項5に記載のシート搬送装置。
【請求項7】
前記従動ローラは、重力方向に関して前記駆動ローラの下側に配置されている、
ことを特徴とする、請求項1ないし6の何れか1項に記載のシート搬送装置。
【請求項8】
前記駆動ローラは、回転軸線方向片側が駆動源と駆動連結されており、
前記支持部は、前記駆動ローラの前記回転軸線方向他側に配置されている、
ことを特徴とする、請求項1ないし7の何れか1項に記載のシート搬送装置。
【請求項9】
シートに画像を形成する画像形成部と、
請求項1ないし8の何れか1項に記載のシート搬送装置と、を備えた、
ことを特徴とする画像形成装置。
【請求項10】
前記シート搬送装置は、前記画像形成部で画像を形成されたシートを排出する排出部である、
ことを特徴とする、請求項9に記載の画像形成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シートを搬送するシート搬送装置、及び、このようなシート搬送装置を備えた、複写機、プリンタ、ファクシミリ、これらの複数の機能を有する複合機などの画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
シート搬送装置として、駆動ローラと従動ローラとの間でシートを挟持して搬送する構成が従来からある。駆動ローラの回転軸(搬送ローラ軸)は、軸受により回転可能に支持され、軸受は枠体(筐体)に位置決めされていた(特許文献1)。ここで、シートの搬送をガイドする搬送ガイドを枠体に取り付ける際に、搬送ガイドと駆動ローラとを精度良く位置決めするために、駆動ローラを軸支する軸受の外径部に搬送ガイドを位置決めする構成が知られている。この場合、枠体は搬送ガイドに位置決めされる。
【0003】
一方で、耐久性の観点から駆動ローラの回転軸と軸受と枠体は、金属製(導電)が使用され、コストの観点から搬送ガイドは樹脂製(非導電)が使用される場合がある。この場合、上記の構成において、駆動ローラがシートを搬送するために回転した時、金属の回転軸は帯電する場合がある。回転軸の帯電は、搬送されるシートの搬送挙動に影響を与え、シート詰まり等を引き起こす場合がある。よって、上記の構成において、回転軸を接地させる必要がある。しかしながら、駆動ローラの回転軸と枠体との間には樹脂製の搬送ガイドが配置されていることより、駆動ローラの回転軸は枠体に接地されない。そこで、従来は、駆動ローラの回転軸と枠体を接地するために、別部材として導電部材を設けていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述のように金属製の駆動ローラの回転軸と金属製の枠体を接地するために導電部材を設けた場合、部品点数が多くなり、コストアップとなる。
【0006】
本発明は、部品点数を増加させることなく、金属製の駆動ローラの回転軸と金属製の枠体を接地させられる構成を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のシート搬送装置は、駆動ローラと、前記駆動ローラに従動して回転し、前記駆動ローラとの間でシートを挟持して搬送する従動ローラと、シートの搬送をガイドする、非導電性の搬送ガイドと、前記搬送ガイドを支持する、導電性を有する枠体と、前記駆動ローラを回転自在に支持する、導電性を有する軸受と、前記従動ローラを前記駆動ローラに向けて押圧する押圧部材と、前記搬送ガイドに設けられ、前記軸受を前記押圧部材の押圧方向に変位自在に支持する、非導電性の支持部と、前記枠体に設けられ、前記駆動ローラが前記従動ローラに押圧されている状態で前記軸受の前記押圧方向の位置決めを行う、導電性を有する位置決め部と、を備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、部品点数を増加させることなく、駆動ローラの回転軸と枠体を接地させられる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】実施形態に係る画像形成装置の概略構成断面図。
【
図3】(a)実施形態に係る非押圧時の駆動ローラの支持部の断面図、(b)従動ローラによる押圧方向を示す模式図、(c)実施形態に係る押圧時の駆動ローラの支持部の断面図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
実施形態について、
図1ないし
図3(c)を用いて説明する。まず、本実施形態の画像形成装置の概略構成について、
図1を用いて説明する。
【0011】
[画像形成装置]
本実施形態の画像形成装置1は、電子写真方式を用いたカラープリンタであり、複数の(本実施形態では4つ)の画像形成部Pを中間転写ベルト140上に並べて配置する、中間転写タンデム方式を採用している。このような方式の画像形成装置1は、近年の多種多様なシートSへの適応性やプリント生産性に優れるという利点がある。シートSとしては、用紙、プラスチックフィルム、布などのシート材が挙げられる。
【0012】
シートSは、収納庫100に積載される形で収納されており、1対のローラにより構成される給送部110により画像形成タイミングに合わせて給送される。給送部110により送り出されたシートSは搬送経路を通過しながら、転写前搬送部であるレジストローラ対120へと搬送される。
【0013】
1対のローラにより構成されるレジストローラ対120は、収納庫100から搬送されてくるシートSを突き当ててループを作成することによりシートSの先端を倣わせ斜行を修正する機能を有する。また、レジストローラ対120は、シートSへの画像形成のタイミング、即ち、中間転写ベルト140上に担持されたトナー像に合わせて、所定のタイミングにてシートSを二次転写部へ搬送する機能も有している。このようなレジストローラ対120は、斜行の修正を行った後に、所望のタイミングにて二次転写部130へシートSを送りだす。
【0014】
二次転写部130は、対向する二次転写内ローラおよび二次転写外ローラにより形成されるシートSへのトナー像の転写ニップ部であり、所定の加圧力と静電的負荷バイアスを与えることでシートS上にトナー像を転写させる。以上説明した二次転写部130までのシートSの搬送プロセスに対して、同様のタイミングで二次転写部130まで送られて来る画像の形成プロセスについて説明する。
【0015】
画像形成部Pは、主に像担持体としての感光ドラム141、帯電装置142、露光装置143、現像装置144、一次転写装置145、およびドラムクリーナ146等から構成される。感光ドラム141は、円筒状の感光体であり、回転駆動される。感光ドラム141は、予め帯電装置142により表面を一様に帯電される。そして、接続されたPC(パーソナルコンピュータ)や画像読取装置などから送られてきた画像情報の信号に基づいて露光装置143が駆動され、回転する感光ドラム141の表面に対して露光光が照射され、感光ドラム141の表面に静電潜像が形成される。
【0016】
感光ドラム141上に形成された静電潜像は、現像装置144によるトナー現像を経て、感光ドラム141上にトナー像として顕在化する。その後、一次転写装置145により所定の加圧力および静電的負荷バイアスが与えられ、像担持体としての中間転写ベルト140上にトナー像が転写される。
【0017】
その後、感光ドラム141上に僅かに残った転写残トナーは、ドラムクリーナ146により回収され、再び次の画像形成に備える。以上説明した画像形成部Pは、
図1の場合、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)およびブラック(Bk)の4セット存在する。勿論、色数は4色に限定されるものではなく、また色の並び順もこの限りではない。
【0018】
次に、中間転写ベルト140について説明する。中間転写ベルト140は、無端状のベルトであり、駆動ローラ、テンションローラおよび二次転写内ローラ等のローラによって張架され、図中矢印Aの方向へと搬送駆動される。先述のY、M、CおよびBkの各画像形成部Pにより並列処理される各色の画像形成プロセスは、中間転写ベルト140上に一次転写された上流色のトナー像上に重ね合わせるタイミングで行われる。その結果、最終的にはフルカラーのトナー像が中間転写ベルト140上に形成され、二次転写部130へと搬送される。
【0019】
以上、それぞれ説明したシートSの搬送プロセスおよび画像形成プロセスを以って、二次転写部130においてシートS上にフルカラーのトナー像が二次転写され、その後、シートSは定着装置160へと搬送される。定着装置160は、対向するローラもしくはベルト等による所定の加圧力と、一般的にはヒータ等の熱源による加熱効果を加えてシートS上にトナー像を溶融固着させる。
【0020】
このようにして得られた定着画像を有するシートSは、分岐搬送機構169により、排出部170、180により排出トレイ200、210へ選択的に排出される。或いは、両面画像形成を要する場合はシートSの搬送途中で排出部を停止させ、さらに逆回転させることでシートSを両面搬送路190へと搬送する。両面搬送路190に搬送されたシートSは、表裏が反転された状態で再度、二次転写部130に搬送され、上述と同様に裏面にトナー像が二次転写された後、定着装置160によりトナー像が定着される。そして、排出トレイ200、210へ選択的に排出される。なお、排出部170、180は、それぞれ1対のローラを有するシート搬送装置であり、基本的に同様の構成を有する。以下では、排出部170について説明する。
【0021】
[排出部]
図2を用いて、排出部(シート排出装置)170について説明する。
図2に示すように、シート搬送装置としての排出部170は、駆動ローラ171、従動ローラ172、搬送ガイド173a、173b、導電性を有する軸受174、枠体175を有する。駆動ローラ171は、駆動源としてのモータMに接続されて回転駆動する。また、駆動ローラ171は、回転軸171aと、回転軸171aの周囲に設けられた複数のローラ部171bとを有する。複数のローラ部171bは、回転軸171aの回転軸線方向に間隔をあけて配置されている。また、回転軸171aは、金属などの導電性部材であり、複数のローラ部171bは、ゴムなどの弾性材により形成されている。
【0022】
従動ローラ172は、駆動ローラ171に従動して回転し、駆動ローラ171との間でシートを挟持して搬送する。即ち、駆動ローラ171と従動ローラ172とでシートを挟持して搬送することで、シートを排出トレイ200(
図1)に排出する。また、従動ローラ172は、回転軸172aと、回転軸172aの周囲に設けられた複数のローラ部172bとを有する。複数のローラ部172bは、回転軸172aの回転軸線方向に間隔をあけて配置されている。また、回転軸172aは、金属などの導電性部材であり、複数のローラ部172bは、ゴムなどの弾性材により形成されている。また、従動ローラ172の複数のローラ部172bがそれぞれ駆動ローラ171の複数のローラ部171bと当接することで、シートを挟持搬送する搬送ニップ部を形成する。
【0023】
また、従動ローラ172は、押圧部材としてのバネ179(
図3(b)参照)により駆動ローラ171に向けて付勢されている。本実施形態では、従動ローラ172は、重力方向に関して駆動ローラ171の下側に配置されているため、バネ179による押圧方向は重力方向上方となる。このために従動ローラ172は、揺動アーム173b3により押圧方向(本実施形態では上下方向)に揺動可能に支持されている。
【0024】
搬送ガイド173a、173bは、シートの搬送をガイドするもので、駆動ローラ171及び従動ローラ172により搬送されるシートの両側に配置される。搬送ガイド173a、173bは、非導電性の樹脂材料により形成されている。搬送ガイド173aは、シートの片面側(
図2の例では上面側)と対向するガイド面173a1を有し、駆動ローラ171及び従動ローラ172により搬送されるシートの片面をガイドする。
【0025】
このような搬送ガイド173aは、内側に駆動ローラ171を配置しており、ガイド面173a1の複数個所に駆動ローラ171の複数のローラ部171bの一部を露出させる透孔173a2が形成されている。即ち、配置部としての透孔173a2は、駆動ローラ171のローラ部171bの一部をガイド面173a1よりも従動ローラ側に突出させるように、ローラ部171bが配置される。
【0026】
搬送ガイド173bは、シートの他面側(
図2の例では下面側)と対向するガイド面173b1を有し、駆動ローラ171及び従動ローラ172により搬送されるシートの他面をガイドする。このような搬送ガイド173bは、従動ローラ172の複数のローラ部172bが上下方向に揺動可能となるように複数の凹部173b2が形成されている。複数の凹部173b2は、ガイド面173b1の複数個所にも開口しており、複数のローラ部172bの一部をガイド面173b1よりも駆動ローラ側に突出可能としている。
【0027】
軸受174は、導電性を有し、駆動ローラ171を回転自在に支持する。即ち、駆動ローラ171の回転軸171aの端部を搬送ガイド173aに対して回転自在に支持している。枠体175は、装置のフレームであり、搬送ガイド173a、173bの駆動ローラ171及び従動ローラ172の回転軸線方向の両側の側面部173cに対向するように配置され、搬送ガイド173a、173bを支持する。したがって、駆動ローラ171及び従動ローラ172は、搬送ガイド173a、173bを介して枠体175に支持される。
【0028】
[駆動ローラの支持構造]
次に、駆動ローラ171の詳しい支持構造について、
図3(a)~(c)を用いて説明する。搬送ガイド173aは、軸受174をバネ179の押圧方向に変位自在に支持する支持部としての嵌合筒部176が設けられている。嵌合筒部176は、搬送ガイド173aの側面部173cから枠体175側に向けて、駆動ローラ171の回転軸線方向に突設された略筒状の突部である。このような嵌合筒部176は、搬送ガイド173aと一体に樹脂材料で形成されており、搬送ガイド173aと同様に非導電性である。
【0029】
嵌合筒部176は、駆動ローラ171によるシートの搬送方向(
図3(a)~(c)の左右方向)に関して軸受174の両側に、1対の支持面176aが設けられている。1対の支持面176aは、軸受174の搬送方向に関する位置決めを行いつつ、軸受174が押圧方向に移動することを許容する。
【0030】
また、嵌合筒部176は、バネ179の押圧方向に関して従動ローラ172側の側面、本実施形態では軸受174の下面と対向する側に規制面176bが設けられている。規制面176bは、駆動ローラ171が従動ローラ172に押圧されていない状態(
図3(a)の状態)で、軸受174を所定位置でそれ以上、押圧方向と反対方向(下方)に移動することを規制する面である。
【0031】
ここで、軸受174の嵌合筒部176に支持される部分の外周面は、搬送方向両側面を回転軸171aと同心の円弧状の曲面174aと、押圧方向の両側面を押圧方向と直交する平坦面174bとしている。なお、軸受174のこの部分の外周面は全周に亙って円筒面としても良い。
【0032】
嵌合筒部176の1対の支持面176aは、軸受174の曲面174aよりも曲率半径が大きい曲面として、互いに対向する支持面176aと曲面174aとが押圧方向(本実施形態では上下方向)に摺動可能としている。言い換えれば、1対の支持面176aは、上下方向に長い長丸穴形状を有し、軸受174の両側の曲面174aとそれぞれ当接しつつ、軸受174が1対の支持面176aに沿って上下方向に移動可能としている。また、規制面176bは、押圧方向と直交する平坦面であり、軸受174の下側の平坦面174bと当接することで、軸受174がそれ以上、下方に移動しないようにしている。
【0033】
このように嵌合筒部176は、内周面が1対の支持面176a及び規制面176bを有する。そして、1対の支持面176aが軸受174の両側の曲面174aと当接することで、軸受174のシートの搬送方向に関する位置決めを行う。一方、駆動ローラ171が従動ローラ172に押圧されていない状態では、規制面176bが軸受174の下側の平坦面174bと当接する。これにより、駆動ローラ171が重力により従動ローラ172側に移動し過ぎないように、所定位置で駆動ローラ171の重力方向の移動を規制している。
【0034】
また、嵌合筒部176は、押圧方向に関して規制面176bと反対側(上側)に一部が切り欠かれた切り欠き部177を有する。一方、枠体175には、貫通孔175aが形成されており、搬送ガイド173aは、嵌合筒部176の外周面が貫通孔175aに嵌合されることで枠体175に位置決めさている。
【0035】
また、枠体175には、駆動ローラ171が従動ローラ172に押圧されている状態(
図3(c)の状態)で軸受174の押圧方向の位置決めを行う、位置決め部としての位置決め突部178が設けられている。位置決め突部178は、枠体175と一体の部材であるため、枠体175と同様に導電性を有する。
【0036】
本実施形態では、位置決め突部178は、貫通孔175aの内周面の一部から突出するように形成されており、貫通孔175aに嵌合筒部176が嵌合された状態で、嵌合筒部176の切り欠き部177に侵入する。そして、駆動ローラ171が従動ローラ172に押圧され、軸受174が嵌合筒部176の内側で押圧方向に移動した場合に、位置決め突部178が軸受174の上側の平坦面174bと当接する。そして、それ以上、駆動ローラ171が押圧方向に移動することを規制する。この結果、駆動ローラ171の押圧方向に関する位置決めが行われる。
【0037】
なお、
図2に示すように、駆動ローラ171は、回転軸線方向片側がモータMと駆動連結されている。回転軸線方向片側は、本実施形態の場合、画像形成装置1の奥側(背面側)である。画像形成装置1の奥側とは、装置を操作する側(例えば、操作パネルが配置されている側)を前面側とした場合に、その反対側である。また、本実施形態では、嵌合筒部176は、駆動ローラ171の回転軸線方向他側(前面側)に配置されている。これは、モータMと接続される側は、例えば、ギア列を介してモータMの駆動軸と駆動ローラ171の回転軸171aを接続しており、別の構成で回転軸171aの位置決めを図っているためである。また、回転軸171aと枠体175との接地は、回転軸171aの一方の端部で行われていれば十分であるため、モータMとの接続側まで上述のような構成とすることもないためである。但し、モータMとの接続側も同様の構成としても良い。
【0038】
以下、従動ローラ172による押圧前後の動作について具体的に説明する。
図3(a)に示すように、駆動ローラ171が従動ローラ172に押圧されていない非押圧時には、軸受174は重力の影響を受けて、嵌合筒部176内で位置決め突部178から離れ、下側の平坦面174bが規制面176bと当接する。
図3(b)に示すように、従動ローラ172が駆動ローラ171の方向に押圧されると、駆動ローラ171は押圧方向に移動し、それに伴い駆動ローラ171の回転軸の端部に取り付けられた導電性の軸受174も嵌合筒部176内で移動する。
【0039】
そして、
図3(c)に示すように、軸受174の上側の平坦面174bが枠体175の一部である位置決め突部178に突き当たり、軸受174の移動が規制される。このように、駆動ローラ171が従動ローラ172に押圧されている押圧時には、導電性を有する軸受174が、導電性を有する枠体175の一部である位置決め突部178に突き当たっている。このため、駆動ローラ171が枠体175に接地状態となる。また、この状態で、軸受174が嵌合筒部176内でシートの搬送方向に位置決めされると共に、位置決め突部178との当接により、従動ローラ172による押圧方向にも位置決めされる。即ち、駆動ローラ171が軸受174を介して、シートの搬送方向にもバネ179の押圧方向にも位置決めされる。
【0040】
このように構成される本願発明の場合、駆動ローラ171の搬送ガイド173aに対する位置決め精度を確保しつつ、駆動ローラ171を接地できる。即ち、駆動ローラ171は、従動ローラ172に押圧されているため、搬送ガイド173aに対する位置決め精度が低いと、駆動ローラ171がガイド面173a1から十分に突出しない可能性がある。特に、各種のメディアに対応すべくシートの搬送力を向上させることが求められており、このために従動ローラの駆動ローラに対する押圧力を高めることで対応する場合がある。この場合、駆動ローラが撓んで、シートの搬送をガイドする搬送ガイドに対する位置決め精度によっては、駆動ローラが搬送ガイドのガイド面から十分に突出できない虞がある。駆動ローラ171が搬送ガイド173aのガイド面173a1から十分に突出できないと、駆動ローラ171と従動ローラ172とで挟持搬送されるシートが、ガイド面173a1と擦り合って詰まりが発生してしまうという懸念がある。
【0041】
本実施形態では、軸受174が搬送ガイド173aの嵌合筒部176内で押圧方向に変位自在に支持されており、駆動ローラ171が従動ローラ172に押圧された場合には、軸受174が枠体175の位置決め突部178に当接する。この結果、駆動ローラ171が押圧方向に位置決めされる。このように駆動ローラ171が押圧されることで押圧方向に位置決めされる構成としているため、従動ローラ172による押圧力に拘わらず、駆動ローラ171を高精度に位置決めできる。
【0042】
また、本実施形態の場合、部品点数を増加させることなく、駆動ローラ171の回転軸171aと枠体175を接地させられる。即ち、軸受174及び位置決め突部178を有する枠体175は、導電性を有するため、このように軸受174が位置決め突部178と当接することで駆動ローラ171が接地される。このため、部品点数を増加させることなく、導電性を有する軸受174が導電性を有する枠体175に当接することができ、接地するための導電部材を削減することが可能となる。
【0043】
また、上述の特許文献1に記載の構成の場合、駆動ローラを接地すべく、軸受と枠体との間にアース板を挟み込んでいる。軸受と枠体との間にアース板を挟み込む構成の場合、アース板の取り付け方によっては軸受に余計な外力が加わって軸受が傾く可能性がある。この場合、ローラの回転軸が偏摩耗したり、ローラの駆動トルクが上昇したりする。これに対して本実施形態の場合、上述の特許文献1のようにアース板などの部品を追加してないので、取り付け誤差などにより軸受174に余計な外力が加わることを抑制できる。この結果、外力により軸受174が傾いて偏摩耗が生じたり、駆動ローラ171の駆動トルクが上昇したりすることを抑制できる。
【0044】
また、軸受174が偏摩耗した場合には、その際に発生する摩耗紛が駆動ローラ171の回転軸171aと導電性の軸受174の間に蓄積していく。そして、その摩耗紛が固着してしまうと、駆動ローラ171の回転が停止(ロック)して、シートの詰まりが発生してしまう虞がある。但し、本実施形態では、このような摩耗粉が発生しにくいので、摩耗粉による駆動ローラ171の回転が停止を発生しにくくできる。
【0045】
[他の実施形態]
上述の実施形態では、本発明のシート搬送装置を排出部に適用した場合について説明した。但し、本発明のシート搬送装置は、シートを収納庫から装置内に給送する給送部や、他のシートを搬送する部分にも適用可能である。また、シート搬送装置は、画像形成装置以外の装置にも適用可能である。例えば、シートを搬送しつつシート上の画像を読み取る画像読取装置や、シートにステイプルなどの処理を施すシート処理装置、画像形成装置とは別体で、画像形成装置にシートを給送するためのシート給送装置などのシートを搬送する部分にも適用可能である。
【0046】
また、上述の実施形態では、駆動ローラ171の押圧方向の位置決めを図るべく、支持部としての嵌合筒部176を枠体175の貫通孔175aに嵌合させ、嵌合筒部176に形成した切り欠き部177に位置決め突部178を侵入させる構成とした。但し、搬送ガイド173aが別の部分で枠体175に位置決めされていれば、支持部が枠体175の貫通孔に嵌合していなくても良い。この場合、枠体175に支持部内の軸受の押圧方向の移動を規制するための位置決め部を支持部の近傍などに設ける。
【0047】
また、上述の実施形態では、軸受174のシートの搬送方向の位置決めと押圧方向の位置決めとを嵌合筒部176により行ったが、シートの搬送方向の位置決めは、軸受を押圧方向に変位自在に支持する支持部とは別の部分で行っても良い。また、支持部と搬送ガイドとは別体であっても良く、位置決め部と枠体とは別体であっても良い。更に、搬送ガイドは、駆動ローラにより搬送されるシートをガイドするものであれば、駆動ローラのローラ部を配置する配置部がない構成、例えは、駆動ローラのシート搬送方向上流側のみ、或いは、下流側のみにある構成であっても良い。
【符号の説明】
【0048】
1・・・画像形成装置/170、180・・・排出部(シート搬送装置)/171・・・駆動ローラ/171a・・・回転軸/171b・・・ローラ部/172・・・従動ローラ/173a、173b・・・搬送ガイド/173a1、173b1・・・ガイド面/173a2・・・透孔(配置部)/174・・・軸受/175・・・枠体/175a・・・貫通孔/176・・・嵌合筒部(支持部)/176a・・・支持面/176b・・・規制面/177・・・切り欠き部/178・・・位置決め突部(位置決め部)/179・・・バネ(押圧部材)/P・・・画像形成部/S・・・シート