(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-21
(45)【発行日】2024-07-01
(54)【発明の名称】カバー部材用の台車
(51)【国際特許分類】
H02B 3/00 20060101AFI20240624BHJP
B62B 3/04 20060101ALI20240624BHJP
【FI】
H02B3/00 B
B62B3/04 B
(21)【出願番号】P 2020138028
(22)【出願日】2020-08-18
【審査請求日】2023-06-12
(73)【特許権者】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(73)【特許権者】
【識別番号】598076591
【氏名又は名称】東芝インフラシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000567
【氏名又は名称】弁理士法人サトー
(72)【発明者】
【氏名】岩澤 竜汰
【審査官】荒木 崇志
(56)【参考文献】
【文献】中国実用新案第208665231(CN,U)
【文献】実開昭60-058482(JP,U)
【文献】中国実用新案第205652161(CN,U)
【文献】特開2016-168868(JP,A)
【文献】国際公開第97/002774(WO,A1)
【文献】中国実用新案第209965685(CN,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02B 1/00 - 1/38
H02B 1/46 - 7/08
B62B 1/00 - 5/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
配電盤の開口に着脱可能に取り付けられるカバー部材を収納する台車であって、
前記カバー部材を収納する収納室を形成する台車本体部と、
前記収納室内において前記カバー部材を固定する固定部材と、
を備え、
前記台車本体部の底面にレールが設けられており、
前記固定部材は、前記収納室内において移動可能に設けられている
とともに、前記レールに着脱可能に取り付けられているカバー部材用の台車。
【請求項2】
前記固定部材は、その端部に設けられている係止部を前記レールに係止させることにより、前記レールに沿って移動可能に取り付けられている請求項
1に記載のカバー部材用の台車。
【請求項3】
前記係止部は、長尺な形状をなしており、
前記レールは、その上面に長尺なスリットを有しており、
前記固定部材は、長尺な前記係止部を前記スリットを介して前記レール内に挿入し、その後、前記レール内において前記係止部を回転させることによって、前記レールに取り付けられている請求項
2に記載のカバー部材用の台車。
【請求項4】
配電盤の開口に着脱可能に取り付けられるカバー部材を収納する台車であって、
前記カバー部材を収納する収納室を形成する台車本体部と、
前記収納室内において前記カバー部材を固定する固定部材と、
を備え、
前記固定部材は、前記収納室内において移動可能に設けられて
おり、
前記カバー部材は、取手部を備え、
前記収納室内に前記カバー部材が収納された状態において、前記固定部材の上端は、前記取手部の下端よりも高く、
前記収納室の上下方向の長さは、前記収納室内において前記カバー部材を前記取手部の下端が前記固定部材の上端よりも高くなる位置まで上昇させることが可能な長さであるカバー部材用の台車。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、配電盤の開口に着脱可能に取り付けられるカバー部材を収納するためのカバー部材用の台車に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば特許文献1に開示されているように、配電盤には保守点検などの作業を行うための開口が設けられており、この開口は、常時においては、カバー部材が着脱可能に取り付けられている。作業者は、このカバー部材を取り外すことにより、開口を介して配電盤の保守点検などの作業を行うことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、実際に保守点検などの作業を行う場合には、開口から取り外したカバー部材が作業の邪魔になる場合がある。即ち、配電盤の周囲に十分なスペースが確保されていない場合や、取り外したカバー部材が多数である場合などには、カバー部材を作業の邪魔にならないように退避させることが困難となり、作業者の作業負担が増大してしまう懸念がある。
【0005】
そこで、配電盤の開口から取り外したカバー部材を作業の邪魔にならないよう整然と収納できるようにしたカバー部材用の台車を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本実施形態に係るカバー部材用の台車は、配電盤の開口に着脱可能に取り付けられるカバー部材を収納する台車であって、前記カバー部材を収納する収納室を形成する台車本体部と、前記収納室内において前記カバー部材を固定する固定部材と、を備え、前記台車本体部の底面にレールが設けられており、前記固定部材は、前記収納室内において移動可能に設けられているとともに、前記レールに着脱可能に取り付けられている。あるいは、前記固定部材は、前記収納室内において移動可能に設けられており、前記カバー部材は、取手部を備え、前記収納室内に前記カバー部材が収納された状態において、前記固定部材の上端は、前記取手部の下端よりも高く、前記収納室の上下方向の長さは、前記収納室内において前記カバー部材を前記取手部の下端が前記固定部材の上端よりも高くなる位置まで上昇させることが可能な長さである。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】本実施形態に係るカバー部材用の台車の構成例を概略的に示す斜視図
【
図2】本実施形態に係る固定部材の構成例を概略的に示す図
【
図3】本実施形態に係る固定部材の着脱方法の一例を概略的に示す図
【
図4】本実施形態に係るカバー部材用の台車の収容室内にカバー部材が収容された状態例を概略的に示す図
【
図5】本実施形態に係るカバー部材用の台車の収容室内においてカバー部材が持ち上げられた状態例を概略的に示す図
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、カバー部材用の台車に係る一実施形態について図面を参照しながら説明する。
図1に例示する台車10は、配電盤100の開口101に着脱可能に取り付けられるカバー部材102を収納するための台車である。この場合、配電盤100の開口101は、ほぼ矩形状に形成されている。カバー部材102は、この開口101に、例えばビスなどによって着脱可能に取り付けられる。配電盤100の開口101は、例えば配電盤100の稼働時などの常時においては、カバー部材102によって閉塞されている。作業者は、このカバー部材102を取り外すことにより、開口101を介して配電盤100の保守点検などの作業、例えば、配線の組み換えや試験調整作業などを行うことができる。
【0009】
カバー部材102は、カバー部材本体部103および取手部104を備えている。カバー部材本体部103は、配電盤100の開口101よりも若干大きいほぼ矩形板状に形成されており、配電盤100の開口101を閉塞可能となっている。取手部104は、この場合、カバー部材本体部103の上下方向におけるほぼ中央部において左右の両端側に分かれて2つ設けられている。作業者は、この取手部104を持つことによって、カバー部材102の着脱作業や運搬作業などを容易に行うことができる。
【0010】
また、カバー部材本体部103の表面には、各種のマーキングMが備えられている。マーキングMには、例えば、配電盤100の名称や型番、配電盤100に対するカバー部材102の取付位置などを示す情報が表示されている。この場合、マーキングMは、カバー部材本体部103の表面において少なくとも取手部104を避けた位置、この場合、カバー部材本体部103の表面の角部に位置して設けられている。
【0011】
台車10は、台車本体部11および固定部材12を備えている。台車本体部11は、台車10の本体部分を構成するものであり、この場合、長尺なほぼ矩形箱状に形成されている。また、台車本体部11の底部には、複数のキャスター13が設けられている。これにより、台車本体部11、換言すれば、台車10全体は、移動可能に構成されている。なお、キャスター13には、当該キャスター13の転動を規制するストッパが設けられている。作業者は、ストッパを操作してキャスター13の転動を規制することにより、台車本体部11の移動、ひいては、台車10全体の移動を抑制することができる。
【0012】
また、台車本体部11は、その一側面11aが開放され、その他の面、この場合、上面、底面、一側面11aとは反対側の面、一側面11aの長手方向の両端の面が全て閉塞された構成となっている。なお、台車本体部11は、開放されている一側面11aを閉塞する蓋を備える構成としてもよい。
【0013】
台車本体部11の内部には、長尺なほぼ矩形状の空間である収納室14が形成されている。作業者は、開放されている台車本体部11の一側面11aを介して、配電盤100から取り外したカバー部材102を収納室14内に収納可能となっている。また、作業者は、開放されている台車本体部11の一側面11aを介して、収納室14内に収納されているカバー部材102を収納室14内から取り出すことが可能となっている。
【0014】
また、収納室14内には、ビス用ポケット14aが設けられている。作業者は、配電盤100の開口101からカバー部材102を取り外した場合には、そのカバー部材102を開口101に固定していたビスを、このビス用ポケット14a内に格納しておくことができる。これにより、ビスの紛失などを回避することができる。
【0015】
固定部材12は、収納室14内においてカバー部材102を固定するための部材であり、この場合、複数の固定部材12が収納室14内に備えられている。複数の固定部材12は、それぞれ収納室14内において移動可能に設けられている。
【0016】
即ち、台車本体部11の底面にはレール15が設けられている。レール15は、台車本体部11の長手方向に沿って直線状に設けられている。また、レール15は、台車本体部11の底面において当該台車本体部11の短手方向のほぼ中央部に位置して設けられている。また、レール15の上面には、当該レール15の延伸方向に沿う長尺なスリット15aが設けられている。スリット15aは、レール15の長手方向の両端部を除くほぼ全長にわたって連続的に設けられている。
【0017】
図2に例示するように、固定部材12は、固定部材本体部12aおよび係止部12bを一体的に備えている。固定部材本体部12aは、固定部材12の本体部分を構成するものであり、この場合、長尺な矩形棒状に形成されている。係止部12bは、固定部材本体部12aの長手方向における一端部、この場合、下端部に設けられている。係止部12bは、レール15の短手方向の寸法よりも若干短い長尺な矩形棒状に形成されている。固定部材12において、固定部材本体部12aの延伸方向と係止部12bの延伸方向とは直交している。また、係止部12bは、レール15のスリット15aよりも細い連結部12cを介して固定部材本体部12aの一端部に連結されている。
【0018】
以上のように構成される固定部材12は、係止部12bをレール15内に係止させることによって、レール15に着脱可能かつ移動可能に取り付けられる。即ち、
図3に例示するように、作業者は、固定部材12をレール15に取り付ける場合には、矢印Aで例示するように、長尺な係止部12bを長尺なスリット15aに沿わせるようにして、係止部12bをスリット15aを介してレール15内に挿入する。その後、作業者は、矢印Bで例示するように、レール15内において係止部12bを回転させるように固定部材12全体を所定角度、この場合、90度ほど回転させる。
【0019】
これにより、レール15内において係止部12bがレール15の上面に下方から係止するようになり、固定部材12がレール15に取り付けられる。また、この状態において、係止部12bは、レール15の上面に下方から係止した状態を維持したままレール15の延伸方向に沿って移動可能である。よって、係止部12bを一体的に有する固定部材12も、その全体がレール15の延伸方向に沿って移動可能である。
【0020】
なお、固定部材12をレール15から取り外す場合には、上述の
図3に例示した行程を逆に進めることにより、固定部材12をレール15から取り外すことができる。また、固定部材12は、例えば鉄などといった重量のある材料で構成するとよい。これにより、収納室14内において、固定部材12を移動可能に設けつつも、例えば、台車10の移動時における振動などによって固定部材12が移動してしまうことを抑制することができる。よって、固定部材12が意図せず移動してしまったり、レール15から外れてしまったりすることを回避することができる。
【0021】
以上のように固定部材12が取り付けられた収納室14内には、
図4に例示するように、複数枚のカバー部材102を収納可能である。この場合、収納室14内には、2枚のカバー部材102を一組として収納可能となっている。即ち、2枚のカバー部材102は、それぞれの裏面、つまり、取手部104とは反対側の面を対向させた状態で、2つの固定部材12の間に挟まれるようにして収納される。
【0022】
このとき、収納室14内にカバー部材102が収納された状態において、固定部材12の上端は、取手部104の下端よりも高くなるようになっている。即ち、固定部材12のうち収納室14の底面から固定部材12の上端までの寸法、換言すれば、固定部材本体部12aの長手方向の寸法は、カバー部材102の下端から取手部104の下端までの寸法よりも長くなっている。
【0023】
また、
図5に例示するように、収納室14の上下方向の長さは、収納室14内においてカバー部材102を取手部104の下端が固定部材12の上端よりも高くなる位置まで上昇させることが可能な長さとなっている。作業者は、このように、収納室14内においてカバー部材102を上昇させることによって、取手部104を固定部材12に干渉させることなく、カバー部材102を収納室14内に出し入れすることができる。
【0024】
以上に例示した実施形態によれば、台車10は、カバー部材102を収納する収納室14を形成する台車本体部11と、収納室14内においてカバー部材102を固定する固定部材12と、を備えており、その固定部材12が、収納室14内において移動可能に設けられている。このように構成される台車10によれば、収納室14内における固定部材12の位置を適宜調整することにより、配電盤100の開口101から取り外したカバー部材102を作業の邪魔にならないよう整然と収納することができる。
【0025】
また、台車10によれば、固定部材12は、台車本体部11の底面に設けられたレール15に着脱可能に取り付けられている。このように構成される台車10によれば、収納室14内に対する固定部材12の取り付けをレール15に対し確実に行うことができ、また、取り付けた固定部材12をレール15に沿って移動させやすい。従って、例えば、カバー部材102の枚数や大きさなどに応じて、収納室14内における固定部材12の数の調整や位置調整を円滑に行うことができる。
【0026】
また、台車10によれば、固定部材12は、その端部に設けられている係止部12bをレール15に係止させることより、レール15に沿って移動可能に取り付けられている。このように構成される台車10によれば、レール15に対する固定部材12の取り付けを確実に行うことができ、且つ、取り付けた固定部材12をレール15から抜けにくくした構成を実現することができる。
【0027】
また、台車10によれば、固定部材12は、長尺な係止部12bをスリット15aを介してレール15内に挿入し、その後、レール15内において係止部12bを回転させることによって、レール15に取り付けられている。このように構成される台車10によれば、固定部材12をレール15から一層抜けにくくした構成を実現することができる。また、このような構成を、レール15に対し固定部材12を回転させるという簡素な取り付け方法によって実現することができる。
【0028】
また、台車10によれば、収納室14内にカバー部材102が収納された状態において、固定部材12の上端が取手部104の下端よりも高くなる構成となっている。このように構成される台車10によれば、例えば台車10の移動時などにおいて、仮に収納室14内からカバー部材102が飛び出すような力が作用したとしても、取手部104が固定部材12に干渉するため、カバー部材102の飛び出しを抑制することができる。よって、収納室14内から意図せずカバー部材102が飛び出してしまうことを抑制することができ、安全性の向上を図ることができる。
【0029】
また、台車10によれば、収納室14の上下方向の長さは、収納室14内においてカバー部材102を取手部104の下端が固定部材12の上端よりも高くなる位置まで上昇させることが可能な長さとなっている。このように構成される台車10によれば、作業者は、収納室14内においてカバー部材102を適宜上昇させることによって、取手部104を固定部材12に干渉させることなく、カバー部材102を収納室14内に円滑に出し入れすることができる。
【0030】
なお、本実施形態は、上述した一実施形態に限定されず、その要旨を逸脱しない範囲において種々の変形や拡張を行うことができる。例えば、収納室14内に設ける固定部材12の大きさ、形状、数などは、適宜変更して実施することができる。また、台車本体部11は、一側面11aのほか、当該一側面11a以外の面、例えば、上面も開放した構成としてもよい。この場合、一側面11a以外の開放面について、蓋を設けてもよいし、設けなくてもよい。
【0031】
以上、本発明の一実施形態を説明したが、本実施形態は、一例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。この新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。本実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0032】
図面中、10はカバー部材用の台車、11は台車本体部、12は固定部材、12bは係止部、14は収納室、15はレール、15aはスリット、100は配電盤、101は配電盤の開口、102はカバー部材、104は取手部、を示す。