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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-21
(45)【発行日】2024-07-01
(54)【発明の名称】印刷装置
(51)【国際特許分類】
   B41J 2/18 20060101AFI20240624BHJP
   B41J 2/21 20060101ALI20240624BHJP
   B41J 2/01 20060101ALI20240624BHJP
   B41J 2/175 20060101ALI20240624BHJP
【FI】
B41J2/18
B41J2/21
B41J2/01 401
B41J2/175 121
B41J2/175 301
B41J2/175 501
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2020158233
(22)【出願日】2020-09-23
(65)【公開番号】P2022052068
(43)【公開日】2022-04-04
【審査請求日】2023-06-20
(73)【特許権者】
【識別番号】000207551
【氏名又は名称】株式会社SCREENホールディングス
(74)【代理人】
【識別番号】100105935
【弁理士】
【氏名又は名称】振角 正一
(74)【代理人】
【識別番号】100136836
【弁理士】
【氏名又は名称】大西 一正
(72)【発明者】
【氏名】浅田 和彦
(72)【発明者】
【氏名】秋吉 保紀
【審査官】小宮山 文男
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-124914(JP,A)
【文献】特開2018-083413(JP,A)
【文献】特開2020-078872(JP,A)
【文献】特開2014-180829(JP,A)
【文献】特開2019-123207(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41J 2/01-2/215
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
インクをノズルから印刷媒体の記録面に向けて吐出して印刷する吐出ヘッドを有するヘッド部に対し、バッファタンクに貯留されている前記インクを補給する印刷装置であって、
前記バッファタンクから前記インクを前記ヘッド部に送液する供給配管と、
前記インクを前記ヘッド部から前記バッファタンクに戻す回収配管と、
インク循環駆動部と、を備え、
前記ヘッド部は、前記インクを貯留する供給サブタンクおよび回収サブタンクと、前記供給サブタンクおよび前記回収サブタンクを接続する接続配管とを有し、前記供給サブタンクに貯留されている前記インクを前記吐出ヘッドに供給し、前記吐出ヘッドから吐出されなかった前記インクを前記回収サブタンクに回収し、前記回収サブタンクに貯留されている前記インクを前記接続配管を介して前記供給サブタンクに戻すことにより、前記インクを循環させ、
前記供給配管は前記バッファタンクと前記回収サブタンクとを接続し、
前記回収配管は前記供給サブタンクと前記バッファタンクとを接続し、
前記インク循環駆動部は、前記回収サブタンクへの前記インクの補給が行われない第1非補給時に、前記バッファタンク、前記供給配管、前記回収サブタンク、前記接続配管、前記供給サブタンクおよび前記回収配管で構成される第1循環経路に沿って前記インクを循環させ
前記供給サブタンクおよび前記回収サブタンクに貯留されている前記インクの液面レベルに基づいて前記第1循環経路に沿った前記インクの循環を制御する循環制御部をさらに備え、
前記インク循環駆動部は、前記供給配管に介挿された供給ポンプ、前記接続配管に介挿された接続ポンプおよび前記回収配管に介挿された回収ポンプを有し、
前記循環制御部は、前記供給ポンプ、前記接続ポンプおよび前記回収ポンプの駆動を制御して前記インクの循環を制御し、
前記供給ポンプ、前記接続ポンプおよび前記回収ポンプの駆動の組み合わせである循環モードを複数個記憶する記憶部と、
前記供給サブタンクおよび前記回収サブタンクに貯留されている前記インクの液面レベルを取得する液面情報取得部とをさらに備え、
前記循環制御部は、前記液面情報取得部により取得された、前記供給サブタンクでの前記液面レベルおよび前記回収サブタンクでの前記液面レベルに基づいて前記複数の循環モードから前記液面レベルに対応する循環モードを決定し、前記決定された循環モードで前記供給ポンプ、前記接続ポンプおよび前記回収ポンプを駆動させる印刷装置。
【請求項2】
請求項に記載の印刷装置であって、
鉛直方向において互いに異なる位置で前記供給サブタンクでの前記液面レベルを検出する複数の供給側レベルセンサと、
鉛直方向において互いに異なる位置で前記回収サブタンクでの前記液面レベルを検出する複数の回収側レベルセンサと、をさらに備え、
前記液面情報取得部は、前記複数の供給側レベルセンサからの出力に基づいて前記供給サブタンクでの前記液面レベルを取得するとともに、前記複数の回収側レベルセンサからの出力に基づいて前記回収サブタンクでの前記液面レベルを取得する印刷装置。
【請求項3】
請求項に記載の印刷装置であって、
鉛直方向において互いに異なる位置で前記供給サブタンクでの前記液面レベルを検出する単一の供給側レベルセンサと、
鉛直方向において互いに異なる位置で前記回収サブタンクでの前記液面レベルを検出する単一の回収側レベルセンサと、
前記吐出ヘッドによる印刷により消費されたインク量を推定するインク消費量推定部と、
前記供給ポンプ、前記接続ポンプおよび前記回収ポンプの作動による前記インクの送液量を推定するポンプ送液量推定部と、をさらに備え、
前記液面情報取得部は、前記供給側レベルセンサによる前記インクの液面検出後に、前記インク消費量推定部により推定されるインク消費量および前記ポンプ送液量推定部により推定されるインク送液量に基づいて前記供給サブタンクでの前記液面レベルを取得するとともに、前記回収側レベルセンサによる前記インクの液面検出後に、前記インク消費量推定部により推定されるインク消費量および前記ポンプ送液量推定部により推定されるインク送液量に基づいて前記回収サブタンクでの前記液面レベルを取得する印刷装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、インクを吐出ヘッドのノズルから印刷媒体の記録面に向けて吐出して印刷する印刷技術、特にインクの物性変化を抑制する技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば特許文献1には、ヘッド内循環技術を用いた印刷装置が記載されている。この印刷装置では、吐出ヘッドにインクを供給する供給タンク(本願発明の「供給サブタンク」に相当)と、吐出ヘッドからインクを回収する回収タンク(本願発明の「回収サブタンク」に相当)とが設けられている。これら回収タンク内の負圧が供給タンク内の負圧よりも大きくなるように設定され、この圧力差によりヘッド部の内部でインクが循環される。また、これらのタンクの間に配置された循環ポンプによって、負圧が大きい方(回収タンク)に貯まったインクがもう片方(供給タンク)に移動される。さらに、印刷によるインク消費によりヘッド部において循環するインク量が減少すると、供給タンクまたは回収タンクに対し、メインタンク(本願発明の「バッファタンク」に相当)からインクが補給される。
【0003】
また、特許文献1に記載されていないものの、メインタンクには多量のインクを貯留しているドラムタンクが接続されている。そして、メインタンクに貯留されているインク量が減少すると、ドラムタンクからインクがメインタンクに補給される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2020-44823号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載の印刷装置では、インク量の減少を検出した時点でインク補給が行われ、メインタンクおよび配管内で静止していたインクがヘッド部に向けて流動する。このため、インク補給に伴いインクの物性が変動して印刷品質に悪影響を及ぼす恐れがあった。例えばメインタンクに貯留されているインクの温度と、ヘッド部において循環しているインクの温度とが異なると、メインタンクからヘッド部へのインク補給によりヘッド部でのインク温度が変動して不安定となることがある。その結果、ヘッド部において循環しているインクの粘度が変化し、印刷品質の低下を招くことがあった。
【0006】
また、ドラムタンクからメインタンクにインクを補給するための配管やドラムタンクにおいては、非補給時にインクが停滞している。このため、停滞中にインクに含有される顔料が沈降してインク濃度の分布が発生する。特に、白色インクでは、当該濃度分布が顕著である。したがって、白色インクを貯留する白色ドラムタンクから白色メインタンクへのインク補給により白色メインタンクでのインク濃度が不安定となることがある。その結果、印刷品質の低下を招くことがあった。
【0007】
この発明は上記課題に鑑みなされたものであり、インク補給に伴うインクの物性の変動を抑制して高品質な印刷を可能とする印刷技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の第1の態様は、インクをノズルから印刷媒体の記録面に向けて吐出して印刷する吐出ヘッドを有するヘッド部に対し、バッファタンクに貯留されているインクを補給する印刷装置であって、バッファタンクからインクをヘッド部に送液する供給配管と、インクをヘッド部からバッファタンクに戻す回収配管と、インク循環駆動部と、を備え、ヘッド部は、インクを貯留する供給サブタンクおよび回収サブタンクと、供給サブタンクおよび回収サブタンクを接続する接続配管とを有し、供給サブタンクに貯留されているインクを吐出ヘッドに供給し、吐出ヘッドから吐出されなかったインクを回収サブタンクに回収し、回収サブタンクに貯留されているインクを接続配管を介して供給サブタンクに戻すことにより、インクを循環させ、供給配管はバッファタンクと回収サブタンクとを接続し、回収配管は供給サブタンクとバッファタンクとを接続し、インク循環駆動部は、回収サブタンクへのインクの補給が行われない第1非補給時に、バッファタンク、供給配管、回収サブタンク、接続配管、供給サブタンクおよび回収配管で構成される第1循環経路に沿ってインクを循環させ、供給サブタンクおよび回収サブタンクに貯留されているインクの液面レベルに基づいて第1循環経路に沿ったインクの循環を制御する循環制御部をさらに備え、インク循環駆動部は、供給配管に介挿された供給ポンプ、接続配管に介挿された接続ポンプおよび回収配管に介挿された回収ポンプを有し、循環制御部は、供給ポンプ、接続ポンプおよび回収ポンプの駆動を制御してインクの循環を制御し、供給ポンプ、接続ポンプおよび回収ポンプの駆動の組み合わせである循環モードを複数個記憶する記憶部と、供給サブタンクおよび回収サブタンクに貯留されているインクの液面レベルを取得する液面情報取得部とをさらに備え、循環制御部は、液面情報取得部により取得された、供給サブタンクでの液面レベルおよび回収サブタンクでの液面レベルに基づいて複数の循環モードから液面レベルに対応する循環モードを決定し、決定された循環モードで供給ポンプ、接続ポンプおよび回収ポンプを駆動させている。
【0009】
また、本発明の第2の態様は、印刷装置であって、白色インクを貯留する白色ドラムタンクと、白色ドラムタンクから補給される白色インクを貯留する白色バッファタンクと、白色バッファタンクより供給される白色インクを印刷媒体の記録面に吐出して白画像を印刷する白色ヘッド部と、白色インクの補給が行われない第2非補給時に、白色ドラムタンクと白色バッファタンクとの間で白色インクを循環させる白色インク循環部と、を備えることを特徴としている。
【0010】
また、本発明の第3の態様は、インクをノズルから印刷媒体の記録面に向けて吐出して印刷する吐出ヘッドを有するヘッド部に対し、バッファタンクに貯留されているインクを補給する印刷方法であって、供給サブタンクに貯留されているインクを吐出ヘッドに供給し、吐出ヘッドから吐出されなかったインクを回収サブタンクに回収し、回収サブタンクに貯留されているインクを供給サブタンクに戻すことにより、ヘッド部でインクを循環させながら吐出ヘッドのノズルから印刷媒体の記録面に向けて吐出して印刷する工程と、インクの補給が行われない第1非補給時に、インクを貯留するバッファタンク、回収サブタンクおよび供給サブタンクの順序でインクを循環させる工程と、を備えることを特徴としている。
【0011】
さらに、本発明の第4の態様は、印刷方法であって、白色ドラムタンクから白色バッファタンクに白色インクを補給する工程と、白色バッファタンクから供給される白色インクを白色ヘッド部によって印刷媒体の記録面に吐出して白画像を印刷する工程と、白色インクの補給が行われない第2非補給時に、白色ドラムタンクと白色バッファタンクとの間で白色インクを循環させる工程と、を備えることを特徴としている。
【0012】
このように構成された本発明(第1および第3の態様)では、ヘッド部において、供給サブタンク、吐出ヘッドおよび回収サブタンクを含む循環経路でインクが循環している。ここで、ヘッド部におけるインク量が減少すると、バッファタンクに貯留されているインクがヘッド部に補給される。一方、当該インク補給が行われない第1非補給時においては、バッファタンク、回収サブタンクおよび供給サブタンクの順序でインクが循環する。このため、バッファタンクに貯留されている補給用のインクの温度変動が抑えられる。その結果、バッファタンクからヘッド部にインクを補給したとしても、インクの物性、特に粘度に大きな変動はない。
【0013】
また、本発明(第2および第4の態様)では、白色ドラムタンクから白色バッファタンクに白色インクを補給するが、それ以外、つまり第2非補給時に、白色ドラムタンクと白色バッファタンクとの間で白色インクが循環して流動している。このため、白色インクをバッファタンクに補給した際のインクの物性、特にインク濃度が不安定となるという従来技術の問題は解消される。なお、「白色ドラムタンクと白色バッファタンクとの間」とは、後の実施形態で説明するように白色ドラムタンクから白色バッファタンクへのインクの補給直前までの意味と、後の変形例で説明するように白色ドラムタンクから白色バッファタンクまでの意味とを含んでいる。
【発明の効果】
【0014】
以上のように、本発明によれば、インク補給に伴うインクの物性の変動を抑制して高品質な印刷が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明に係る印刷装置の第1実施形態を装備する印刷システムの一例を模式的に示す正面図である。
図2A】カラー用のインク供給機構の構成を示す模式図である。
図2B】白色用のインク供給機構の構成を示す模式図である。
図3A】サブタンクの構成および循環動作を模式的に示す図である。
図3B】サブタンクの構成および循環動作を模式的に示す図である。
図4】印刷装置のヘッド部およびインク供給機構を制御する制御部の電気的構成を示すブロック図である。
図5】BH循環動作を説明するためのフローチャートである。
図6】レベルセンサにより検出されるサブタンクでの液面レベルを模式的に示す図である。
図7】白色用のインク供給機構で行われる循環補給切替動作を説明するためのフローチャートである。
図8A】白色用のインク供給機構でのインクの循環動作を示す図である。
図8B】白色用のインク供給機構でのインクの補給動作を示す図である。
図9】本発明の第2実施形態におけるBH循環動作を説明するためのフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
図1は、本発明に係る印刷装置の第1実施形態を装備する印刷システムの一例を模式的に示す正面図である。図1および以下に示す図では、装置各部の配置関係を明確にするために、印刷システム1を構成する塗布装置2、印刷装置3および乾燥装置4を配列する水平方向を「X方向」とし、図1の右手側から左手側に向かう水平方向を「+X方向」と称し、逆方向を「-X方向」と称する。また、X方向と直交する水平方向Yのうち、装置の正面側を「+Y方向」と称するとともに、装置の背面側を「-Y方向」と称する。さらに、鉛直方向Zにおける上方向および下方向をそれぞれ「+Z方向」および「-Z方向」と称する。
【0017】
この印刷システム1は、装置各部を制御部9により制御することで、繰出ロール11から巻取ロール12へロール・トゥ・ロールで長尺帯状の印刷媒体Mを搬送しつつ、塗布処理、印刷処理および乾燥処理を印刷媒体Mに施す。すなわち、塗布装置2が塗布液を印刷媒体Mに塗布する。そして、当該印刷媒体Mに対して印刷装置3がインクジェット方式で各種インクを付着させて画像を印刷する。さらに、乾燥装置4が印刷媒体Mに付着するインクを乾燥させる。なお、印刷媒体Mの素材は、OPP(oriented polypropylene)あるいはPET(polyethylene terephthalate)等のフィルムである。ただし、印刷媒体Mの素材はフィルムに限られず、紙等でもよい。かかる印刷媒体Mは、可撓性を有する。また、以下では、印刷媒体Mの両面のうち、画像が印刷される記録面を表面M1と、表面M1の反対側の面を裏面M2と適宜称する。
【0018】
塗布装置2は、液状のプライマー(塗布液)を貯留するパン21と、パン21に貯留されたプライマーに部分的に浸かるグラビアローラ22と、印刷媒体Mを搬送する搬送部23とを有する。塗布装置2では、搬送部23により搬送される印刷媒体Mにグラビアローラ22が下方から接触する塗布領域が設けられており、搬送部23は、印刷媒体Mの表面M1を下方に向けつつ塗布領域に沿って印刷媒体Mを搬送する。一方、グラビアローラ22は、その周面にプライマーを保持しつつ回転することで塗布領域にプライマーを供給する。こうして、グラビアローラ22により供給されたプライマーが塗布領域において印刷媒体Mの表面M1に塗布される。また、塗布領域では、印刷媒体Mの進行方向と、グラビアローラ22の周面の回転方向とが逆である。つまり、いわゆるリバースキス方式でプライマーが印刷媒体Mに塗布される。そして、搬送部23は、プライマーが塗布された印刷媒体Mの表面M1を上方へ向けつつ、塗布装置2から印刷装置3へ印刷媒体Mを搬出する。
【0019】
印刷装置3は、筐体31と、筐体31内に配置されたカラー印刷部32と、筐体31内においてカラー印刷部32の上方に配置された白印刷部33と、筐体31内に配置された複数のローラによって印刷媒体Mを搬送する搬送部34とを備える。
【0020】
カラー印刷部32は、搬送部34によって搬送される印刷媒体Mの上方において、印刷媒体Mの進行方向に配列された複数(4個)のヘッド部321を有する。各ヘッド部321は複数の吐出ヘッドを有し、それぞれの下方を通過する印刷媒体Mの表面M1に上方から対向する吐出ヘッドのノズルから互いに異なる色のカラーインクをインクジェット方式で吐出する。また、色毎にカラーインクをヘッド部321の吐出ヘッドに供給するカラー用のインク供給機構が設けられている。すなわち、インク供給機構によりヘッド部321の吐出ヘッドにカラーインクを供給しつつ吐出ヘッドから吐出されるカラーインクにより印刷媒体Mの表面M1にカラー画像が印刷される。ここで、カラーインクとは、白色以外のインクを意味し、シアン、マゼンタ、イエローおよびブラック等のインクを含む。
【0021】
また、白印刷部33は、搬送部34によって搬送される印刷媒体Mの上方に配置された単一のヘッド部331を有する。ヘッド部331は、複数の吐出ヘッドを有し、それぞれの下方を通過する印刷媒体Mの表面M1に上方から対向する吐出ヘッドのノズルから白インクをインクジェット方式で吐出する。また、白色インクをヘッド部331の吐出ヘッドに供給する白色用のインク供給機構が設けられている。すなわち、インク供給機構によりヘッド部331の吐出ヘッドに白色インクを供給しつつ吐出ヘッドから吐出される白色インクにより印刷媒体Mの表面M1に白画像が印刷される。なお、インク供給機構の構成および動作については後で詳述する。
【0022】
なお、図1への図示を省略しているが、印刷装置3の筐体31内には、2種類の乾燥部が設けられている。一方はカラー印刷部32により印刷媒体Mの表面M1に付着されたカラーインクを乾燥させるプレ乾燥部である。他方は白印刷部33により印刷媒体Mの表面M1に付着された白インクを乾燥させる上方乾燥部である。
【0023】
乾燥装置4は印刷装置3から搬送されてくる印刷媒体Mの表面M1に付着するインクを乾燥させるものである。乾燥装置4は筐体41(乾燥炉)を有している。また、筐体41では、(+X)方向側にローラ42、43、46が配置されるとともに(-X)方向側にエアターンバー44、45が配置されている。これによって、(+Y)方向側から見て略S字状の搬送経路が構成され、当該搬送経路に沿って印刷媒体Mが搬送される。この搬送中に印刷媒体Mの表面M1に付着するインクが乾燥される。そして、乾燥処理を受けた印刷媒体Mは乾燥装置4から搬出され、巻取ロール12に巻き取られる。
【0024】
図2Aは、カラー用のインク供給機構の構成を示す模式図であり、図2Bは白色用のインク供給機構の構成を示す模式図である。図3Aおよび図3Bはサブタンクの構成を模式的に示す図である。以下、シアン、マゼンタ、イエローおよびブラックのインクを供給するインク供給機構5C、5M、5Y、5Kおよび白色用のインク供給機構5Wについて説明する。なお、インク供給機構5C、5M、5Y、5Kは同一構成であるため、インク供給機構5Cについて構成を説明し、残りのインク供給機構5M、5Y、5Kの構成説明は省略する。そして、当該インク供給機構5Cの説明に続いて、インク供給機構5Wの構成について説明する。
【0025】
インク供給機構5Cは、インクを貯留するタンクとして、ヘッド部321に配置される2個のサブタンク51a、51b(図3Aおよび図3B参照)と、印刷装置3の筐体内でヘッド部321から離れた領域R52に配置されるバッファタンク52と、印刷システム1から離れたドラム貯蔵領域R53に配置されるドラムタンク53とを有している。2個のサブタンク51a、51bはインクを一時的に貯留する機能を有するが、各サブタンク51a、51bで貯留可能なインク量は少なく、サブタンク51a、51bの一方でインクの貯留量が低下すると、バッファタンク52からインクが補給される。このため、バッファタンク52によるインクの貯留量はサブタンク51a、51bでのインクの貯留量より多くなるように構成されている。また、バッファタンク52でもインクの貯留量が低下すると、多量のインクを貯留しているドラムタンク53からインクが補給される。なお、本明細書では、バッファタンク52からのインク補給を「第1補給」と称し、ドラムタンク53からのインク補給を「第2補給」と称し、両者を区別して説明する。
【0026】
サブタンク51aは図示を省略する負圧供給部から供給サブタンク用負圧を受け、図2Aに示すように水平方向に配列された複数の吐出ヘッド322にインクを供給する供給サブタンクとして機能する。この供給サブタンク51aは、図3Aおよび図3Bに示すように、縦型タンク511と横型タンク512とを有している。縦型タンク511はヘッド部321の縦型タンク収容部323の内部に配置されている。一方、横型タンク512は横型タンク収容部324の内部に配置されている。この横型タンク収容部324は、図2Aに示すように、水平方向に配列された複数の吐出ヘッド322の上方位置で吐出ヘッド列と平行に設けられている。横型タンク収容部324の内部では、横型タンク512の一方端部が、図3Aおよび図3Bに示すように、縦型タンク511の鉛直中央部と連通されるとともに、他方端部が上記水平方向に延びている。さらに、吐出ヘッド322毎に、図2Aに示すように、配管513が横型タンク512から下方に延設され、吐出ヘッド322と接続されている。このため、供給サブタンク51a(=511+512)から吐出ヘッド322へのインク供給が可能となっている。
【0027】
もう一方のサブタンク51bは上記負圧供給部から供給サブタンク用負圧よりも大きい回収サブタンク用負圧を受け、複数の吐出ヘッド322から排出されるインクを回収する回収サブタンクとして機能する。回収サブタンク51bは、供給サブタンク51aと同様に、縦型タンク511と横型タンク512とを有している。縦型タンク511は縦型タンク収容部323の内部で供給サブタンク51aの縦型タンク511に並設されている。一方、横型タンク512は横型タンク収容部325の内部に配置されている。この横型タンク収容部325は横型タンク収容部324に並設されている。横型タンク収容部325の内部では、横型タンク512の一方端部が、図3Aおよび図3Bに示すように、鉛直方向における縦型タンク511の中央部と連通されるとともに、他方端部が上記水平方向に延びている。さらに、吐出ヘッド322毎に、図2Aに示すように、配管514が横型タンク512から下方に延設され、吐出ヘッド322と接続されている。このため、吐出ヘッド322から回収サブタンク51b(=511+512)へのインク回収が可能となっている。
【0028】
なお、図2A図3Aおよび図3B中の符号514は上記したインクの供給および回収を円滑に行うための空気配管である。また、符号515は横型タンク収容部324の側面に取り付けられたシリコンラバーヒータであり、供給サブタンク51aの横型タンク512に貯留されるインクの温度を調整する機能を果たす。また、図2Aでは不図示であるが、もう一方の横型タンク収容部325の側面にもシリコンラバーヒータ515が取り付けられ、回収サブタンク51bの横型タンク512に貯留されるインクの温度を調整する機能を果たす。
【0029】
このように構成された供給サブタンク51aと回収サブタンク51bとは、図3Aおよび図3Bに示すように、配管54により相互接続されている。より詳しくは、配管54の一方端が供給サブタンク51aの縦型タンク511に接続され、配管54の他方端が回収サブタンク51bの縦型タンク511に接続されている。こうして、配管54は供給サブタンク51aと回収サブタンク51bとを流路接続する。さらに、配管54には、ポンプ55、フィルタ56および脱ガスユニット57が介挿されている。このため、制御部9からの作動指令によりポンプ55が作動することで、図3A中の点線矢印で示すように、インクから異物成分および気体成分を除去しながら回収サブタンク51bから供給サブタンク51aにインクが送液される。すなわち、供給サブタンク51a、配管513、吐出ヘッド322、配管514、回収サブタンク51bおよび配管54という循環経路に沿ってインクを循環させつつ吐出ヘッド322にインクを供給することが可能となっている。なお、本明細書では、当該インク循環を「ヘッド内循環」と称する。
【0030】
本実施形態では、インクを循環させながら吐出ヘッド322からインクを吐出して印刷処理を実行するため、供給サブタンク51aおよび回収サブタンク51bにおけるインクの貯留量は変化する。そこで、図3Aおよび図3Bに示すように、供給サブタンク51aの縦型タンク511に貯留されたインクの液面を検出する3つのフロート式のレベルセンサ58F、58H、58Lが設けられている。これらのうちレベルセンサ58Fは縦型タンク511からインクが溢れることを検出する。一方、レベルセンサ58H、58Lは貯留予定範囲を規定するセンサである。つまり、レベルセンサ58Hは、液面が縦型タンク511におけるインクの貯留予定範囲の上限に達していることを検出する。レベルセンサ58Lは、液面が上記貯留予定範囲の下限に達していることを検出する。これらのレベルセンサ58F、58H、58Lによる検出結果を示す信号は制御部9に出力される。したがって、これらの検出信号を受けた制御部9は、供給サブタンク51aの縦型タンク511に貯留されたインクの液面が以下の4つのステータス、
・Low…液面が貯留予定範囲を下回っている
・Mid…液面が貯留予定範囲内に収まっている
・High…液面が貯留予定範囲を超えているがオーバーフロしてない
・Ovf…インクがオーバーフロしている
のいずれであるかをリアルタイムで正確に判定することが可能となっている。特に、レベルセンサ58H、58Lは、鉛直方向において貯留予定範囲に対するインク液面の位置を検出するものであり、本発明の「供給側レベルセンサ」として機能する。
【0031】
また、回収サブタンク51bの縦型タンク511にも、上記レベルセンサ58F、58H、58Lが設けられ、回収サブタンク51bの縦型タンク511に貯留されたインクの液面が上記4つのステータスのいずれであるかをリアルタイムで正確に判定することが可能となっている。特に、レベルセンサ58H、58Lは、鉛直方向において貯留予定範囲に対するインク液面の位置を検出するものであり、本発明の「回収側レベルセンサ」として機能する。
【0032】
なお、本実施形態では、液面レベルを検出するレベルセンサとして、フロート式のセンサを用いているが、レベルセンサの種類はこれに限定されるものではなく、従来より多用されている他の方式のレベルセンサを用いてもよい。
【0033】
インク供給機構5Cでは、上記のように構成されたヘッド部321に対し、バッファタンク52からインクを補給する、つまり第1補給を行うために、バッファタンク52と回収サブタンク51bの縦型タンク511とを接続する配管59が設けられている。より詳しくは、配管59の一方端はバッファタンク52に貯留されたインク領域(図2Aにおいてドットを付した領域)内に延設されている。一方、配管59の他方端は上記縦型タンク511の上端部に接続されている。また、配管59には、ポンプ60、フィルタ61、脱ガスユニット62およびバルブ63が介挿されている。このため、制御部9によりバルブ63が開成されるとともにポンプ60が作動することで、バッファタンク52に貯留されているインクが配管59を介して回収サブタンク51bに送液される。これによって、バッファタンク52からヘッド部321へのインクの補給、つまり第1補給が実行される。
【0034】
この第1補給に加え、第1補給を行わない期間(本発明の「第1非補給時」の一例に相当)にヘッド部321とバッファタンク52との間でインクを循環させるために、配管64が追加されている。配管64の一方端は、図3Aおよび図3Bに示すように、供給サブタンク51aの縦型タンク511の底部に接続されている。配管64の他方端は、図2Aに示すように、バッファタンク52の内部に延設されている。また、配管64には、バルブ65およびポンプ66が介挿されている。このため、制御部9によりバルブ65が開成されるとともにポンプ66が作動することで、供給サブタンク51aに貯留されているインクが配管64を介してバッファタンク52に送液される。すなわち、当該配管64を追加したことで、バッファタンク52、配管59、回収サブタンク51b、配管513、供給サブタンク51aおよび配管64というインクの循環経路が形成される。このバッファタンク52とヘッド部321との間に形成される循環経路は、上記ヘッド内循環と異なるものであり、以下「BH循環経路」と称する。したがって、制御部9の指令に応じてバルブ63、65を開成させるとともに両ポンプ60、66を作動させることで、図3B中の破線矢印で示すように、BH循環経路に沿ってインクが循環する。
【0035】
バッファタンク52では、図2Aに示すように、貯留されるインクの温度を検出する温度センサ67が設けられ、その温度センサ67から出力される温度信号が制御部9に出力される。また、バッファタンク52の外壁にシリコンラバーヒータ68が装着されている。このため、上記温度信号に基づいて制御部9がシリコンラバーヒータ68を制御することでバッファタンク52内のインク温度を高精度に調整することが可能となっている。
【0036】
また、バッファタンク52には、レベルセンサ69が設けられ、貯留されているインクの高さレベルを5段階で検出し、その検出結果を制御部9に出力する。さらに、バッファタンク52には、撹拌ユニット70が設けられ、バッファタンク52に貯留されているインクを撹拌して濃度ムラを防止している。
【0037】
インク供給機構5Cでは、上記のように構成されたバッファタンク52に対し、ドラムタンク53からインクを補給する、つまり第2補給を行うために、ドラムタンク53とバッファタンク52とを接続する配管71が設けられている。より詳しくは、配管71の一方端はドラムタンク53に貯留されたインク領域(図2Aにおいてドットを付した領域)内に延設されている。配管71の他方端はバッファタンク52に延設されている。また、配管71には、バルブ72、ポンプ73およびバルブ74が介挿されている。このため、制御部9によりバルブ72、74が開成されるとともにポンプ73が作動することで、ドラムタンク53に貯留されているインクが配管71を介してバッファタンク52に送液される。これによって、ドラムタンク53からバッファタンク52へのインクの補給、つまり第2補給が実行される。
【0038】
次に、白色用のインク供給機構5Wの構成について図2B図3Aおよび図3Bを参照しつつ説明する。インク供給機構5Wがカラー用のインク供給機構5C、5M、5Y、5Kと大きく相違する点は、大きく以下の3点であり、それ以外の構成は同一である。なお、白色用のインク供給機構5Wの構成において、図2Bでは、ヘッド部を符号331で示し、また、吐出ヘッドを符号332で示している。その他のインク供給機構5Cと同様の構成物については、先に説明したインク供給機構5Cと同じ符号を付している。
【0039】
第1の相違点は、ドラムタンク53に対し、撹拌ユニット75が設けられている点である。撹拌ユニット75によりバッファタンク52に貯留されている白色インクが撹拌されることで濃度ムラが効果的に防止される。また、第2点目は、白色インクから異物などを除去するために、配管71にフィルタ76が介挿されていることである。さらに、第3点目は、配管71の中間部から配管77を分岐させることによりドラムタンク53、配管71および配管77の間で白色インクを循環させる循環経路(以下「DP循環経路」という)が形成されている点である。すなわち、配管77はポンプ73とバルブ74との間で分岐され、その先端がドラムタンク53に延設されている。そして、この配管77のドラムタンク側の端部およびバッファタンク側の端部に対し、バルブ78、79がそれぞれ介挿されている。このため、制御部9からの指令に応じてバルブ78、79が閉成された状態では、インク供給機構5C、5M、5Y、5Kと同様にして、第2補給が実行される。一方、制御部9からの指令に応じてバルブ74が閉成されるとともにバルブ72、78、79が開成された状態でポンプ73が作動することで、DP循環経路に沿って白色インクが循環する。その結果、次の作用効果が得られる。
【0040】
本実施形態においても、従来技術と同様に、ドラムタンク53からバッファタンク52への白色インクの補給は1本の配管71で行われる。ここで、第2補給を行わない期間(本発明の「第2非補給時」の一例に相当)においては、白色インクは配管71に停滞すると、その停滞中に白色インクに含有される顔料が沈降してインク濃度の分布が発生する。しかしながら、本実施形態では、DP循環経路が設けられている。したがって、第2非補給時においてDP循環経路に沿って白色インクを循環させることで、顔料の沈降を効果的に防止することができる。その結果、従来技術での課題、つまり白色インクにおける顔料沈降に起因する印刷品質の低下を効果的に防止することができる。
【0041】
図4は、印刷装置のヘッド部およびインク供給機構を制御する制御部の電気的構成を示すブロック図である。なお、本実施形態では、1つの制御部9によりカラーインクおよび白色インクの吐出、インク供給およびインク補給を全体的に制御するが、もちろん、カラーインクと白色インクとに分けて制御部を設けたり、インクの色毎に制御部を設けてもよい。なお、以下においては、白色インクに対する吐出、インク供給およびインク補給について説明する。
【0042】
制御部9は、演算処理部91および記憶部92を備えている。演算処理部91は、吐出ヘッド332によるインクの吐出を制御するために必要な演算を実行し、例えばFPGA(Field-Programmable Gate Array)あるいはプロセッサ等で構成される。また、記憶部92は、各種の情報を記憶し、例えばHDD(Hard Disk Drive)等で構成される。
【0043】
演算処理部91は、吐出ヘッド322、332の各ノズルからのインクの吐出を制御するヘッド制御部911を有する。このヘッド制御部911は、印刷画像情報に基づき吐出ヘッド322、332を制御する。この印刷画像情報は、吐出ヘッド322、332から吐出されるインクによって印刷する画像を示し、ヘッド制御部911は、印刷画像情報に従って吐出ヘッド322、332の各ノズルにインクドットを吐出させることで、印刷媒体Mに画像が印刷される。具体的には、この印刷画像情報は例えばハーフトーン処理後のデータである。
【0044】
また、演算処理部91は、ポンプ制御部912、ヒータ制御部913、バルブ制御部914、液面情報取得部915、循環制御部916、循環補給切替部917、インク消費量推定部918およびポンプ送液量推定部919を備えている。ポンプ制御部912は、装置各部に設けられたポンプ55、60、66、73を制御する。ヒータ制御部913は、シリコンラバーヒータ515、68を制御する。バルブ制御部914は、バルブ63、65、72、74、78、79の開閉を制御する。液面情報取得部915は、レベルセンサ58F、58H、58L、69からの出力に基づいてタンクに貯留されているインクの液面に関する情報を取得する。循環制御部916は、BH循環経路に沿ってインクを循環させる際のモードを決定することで、BH循環経路に沿ったインクの循環を制御する。
循環補給切替部917は、DP循環経路に沿った白色インクの循環と、配管71によるバッファタンク52への白色インクの補給とを切り替える。インク消費量推定部918は、吐出ヘッド322、332が各ノズルからインクドットを吐出した回数に基づき吐出ヘッド322、332により消費されたインク量を推定する。ポンプ送液量推定部919は、ポンプ55、60、66、73の作動によるインクの送液量を推定する。
【0045】
記憶部92は、装置各部を制御する制御プログラム921と、BH循環経路でインクを循環させる際の循環モードをテーブル形式で記述したBH循環データ922とを予め記憶している。演算処理部91は記憶部92から制御プログラム921を読み出し、当該制御プログラム921にしたがって装置各部を制御して印刷動作を実行するが、電源投入されている間、各色についてBH循環動作を連続的に実行するとともに、白色インクについてはさらに循環補給切替動作を連続的に実行する。以下、BH循環動作および循環補給切替動作を順番に説明する。
【0046】
図5は、BH循環動作を説明するためのフローチャートである。図6は、レベルセンサにより検出されるサブタンクでの液面レベルを模式的に示す図である。演算処理部91は、電源投入されている間、ステップS1~S4を繰り返して実行する。ステップS1で演算処理部91の液面情報取得部915が供給サブタンク51aに設けられたレベルセンサ58F、58H、58Lからの出力に基づいて供給サブタンク51aの縦型タンク511に貯留されているインクの液面ステータスを取得する。例えば図6の(a)欄に示すようにインクの液面がレベルセンサ58Fの検出レベルLov、レベルセンサ58Hの検出レベルLH、レベルセンサ58Lの検出レベルLLのいずれにも達していない場合、レベルセンサ58F、58H、58Lにより液面は検出されない。このセンサ出力状況に基づいて液面情報取得部915は、現状の液面ステータスがLow状態であると判定する。また、レベルセンサ58Lのみがインクを検出した場合、液面情報取得部915は、現状の液面ステータスがMid状態であると判定する(同図の(b)欄参照)。また、レベルセンサ58L、58Hが液面を検出した場合、液面情報取得部915は、現状の液面ステータスがHigh状態であると判定する(同図の(c)欄参照)。さらに、レベルセンサ58Fがインクを検出した場合、液面情報取得部915は、現状の液面ステータスがOvf状態であると判定する(同図の(d)欄参照)。
【0047】
次のステップS2では、液面情報取得部915が回収サブタンク51bに設けられたレベルセンサ58F、58H、58Lからの出力に基づいて回収サブタンク51bの縦型タンク511に貯留されているインクの液面ステータスを取得する。
【0048】
こうして液面情報取得部915による供給サブタンク51aおよび回収サブタンク51bの液面ステータスの確認が完了すると、循環制御部916が液面ステータスに対応する循環モードをBH循環データ922に基づいて決定する(ステップS3)。本実施形態では、図5のテーブルに示すように、供給サブタンク51aの液面ステータス(図5中の「Feed」)と、回収サブタンク51bの液面ステータス(図5中の「Return」)との組み合わせに応じてポンプ55の出力(図5中の「Duty」)、ポンプ60のON/OFF切替(図5中の「Supply」)およびポンプ66のON/OFF切替(図5中の「MainRet」)を予め設定している。なお、図5中の「Duty」の項における「→」、「↑」、「↓」、「Zero」は、それぞれ以下の動作、
「→」…ポンプ55の出力を維持する
「↑」…ポンプ55の出力を一定値だけ増加させる
「↓」…ポンプ55の出力を一定値だけ減少させる
「Zero」…ポンプ55の出力をゼロとする
を意味している。
【0049】
次のステップS4では、ステップS3で決定された循環モードにしたがってポンプ制御部912がポンプ55の出力、ポンプ60、66のON/OFF切替を行う。これによって、供給サブタンク51aおよび回収サブタンク51bでのインクの貯留量に対応しながらインクがBH循環経路で循環されながらヘッド部331へのインクの補給、つまり第1補給が行われる。
【0050】
なお、これらの一連の処理(ステップS1~S4)は、装置に電源投入されている間、一定の周期で連続的に行われる。したがって、バッファタンク52に貯留されているインクの温度と、ヘッド部321、331において循環しているインクの温度とは常時同じである。その結果、ヘッド部321、331にインクが補給された際にも、ヘッド部321、331でのインク温度は安定しており、ヘッド部321、331による印刷品質を維持することができる。このようなインクのBH循環動作は、白色用のインク供給機構5Wだけでなく、カラー用のインク供給機構5C、5M、5Y、5Kにおいても同様であり、ヘッド部321による印刷品質を維持することができる。
【0051】
図7は、白色用のインク供給機構で行われる循環補給切替動作を説明するためのフローチャートである。図8Aは、白色用のインク供給機構でのインクの循環動作を示す図であり、図8Bは、白色用のインク供給機構でのインクの補給動作を示す図である。演算処理部91のバルブ制御部914がバルブ74を閉成する一方で、バルブ72、78、79を開成する。また、演算処理部91のポンプ制御部912がポンプ73を作動させる。これにより、図8Aに示すように、白色インクの補給を行わない期間(つまり第2非補給時)、DP循環経路に沿って白色インクが循環して流動している(ステップS11)。
【0052】
一方、白色インクの補給が必要であると演算処理部91が判定する(ステップS12で「YES」)と、バルブ制御部914がバルブ79を開成状態から閉成状態に切り替えるとともにバルブ74を閉成状態から開成状態に切り替える。これにより、DP循環経路に沿った白色インクの循環は停止される(ステップS13)。また、ポンプ73により送液される白色インクの経路は、図8Bの太線に示すように、DP循環経路から補給経路に切り替えられる(ステップS14)。
【0053】
そして、ポンプ制御部912がポンプ73の出力を白色インクの補給、つまり第2補給に適した値に調整し、ドラムタンク53からバッファタンク52へ白色インクを補給する(ステップS15)。演算処理部91は、バッファタンク52への白色インクの補給が完了するまで、上記第2補給を継続する。そして、第2補給が完了したことを確認する(ステップS16で「YES」)と、バルブ制御部914がバルブ79を閉成状態から開成状態に切り替えるとともにバルブ74を開成状態から閉成状態に切り替える。これにより、ポンプ73により送液される白色インクの経路は、図8Aの太線に示すように、補給経路からDP循環経路に戻される(ステップS17)。また、ポンプ制御部912がポンプ73の出力を白色インクの循環に適した値に戻す。
【0054】
なお、これらの一連の処理(ステップS11~S17)は、装置に電源投入されている間、連続的に行われる。したがって、バッファタンク52への補給が行われる直前まで、白色インクはDP循環経路に沿って循環されている。このため、第2非補給時において白色インクは流動し、白色インクの停滞が防止される。したがって、白色インクをバッファタンク52に補給した際にインク濃度が不安定となるという従来技術の問題を解消することができる。その結果、白色インクの第2補給による印刷品質の低下を効果的に防止することができる。
【0055】
上記した第1実施形態では、配管54、59、64がそれぞれ本発明の「接続配管」、「供給配管」および「回収配管」の一例に相当している。また、ポンプ55、60、66がそれぞれ本発明の「接続ポンプ」、「供給ポンプ」および「回収ポンプ」の一例に相当し、それらが本発明の「インク循環駆動部」として機能している。また、BH循環経路が本発明の「第1循環経路」の一例に相当している。また、配管71が本発明の「白色補給配管」の一例に相当する。また、配管71から分岐してドラムタンク53に延設された配管77が本発明の「分岐配管」の一例に相当し、本発明の「白色インク循環部」として機能している。また、ポンプ73が本発明の「白色送液ポンプ」の一例に相当している。また、インク供給機構5Wにおけるバッファタンク52およびポンプ73がそれぞれ本発明の「白色バッファタンク」および「白色補給ポンプ」の一例に相当している。さらに、ヘッド部331が本発明の「白色ヘッド部」の一例に相当している。
【0056】
なお、本発明は上記した実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない限りにおいて上述したもの以外に種々の変更を行うことが可能である。例えば、上記第1実施形態では、2つのレベルセンサ58H、58Lによりサブタンクに貯留されているインク液面の貯留予定範囲に対する高さ位置を検出している。ここで、インク消費量推定部918によるインク消費量の推定値およびポンプ送液量推定部919によるインク送液量の推定値を利用することで、レベルセンサの個数を減少させることができる(第2実施形態)。
【0057】
図9は、本発明の第2実施形態におけるBH循環動作を説明するためのフローチャートである。この第2実施形態では、供給サブタンク51aの縦型タンク511に貯留されたインクの液面を検出するレベルセンサが1個設けられている。また、回収サブタンク51bの縦型タンク511にも、供給サブタンク51aと同様に、レベルセンサが1個設けられている。また、液面情報取得部915は、図9に示すように、レベルセンサによる液面検出と、インク消費量(推定値)と、インク送液量(推定値)とに基づいてサブタンク内での液面レベルを取得する。なお、その他の構成は第1実施形態と同一であるため、同一符号を用いて説明を続ける。
【0058】
第2実施形態では、演算処理部91は、電源投入されている間、ステップS21~S26を繰り返して実行する。ステップS21で演算処理部91のインク消費量推定部918が、供給サブタンク51aに貯留されたインクの液面を上記レベルセンサが検出した時点よりノズルから吐出されたインクドットのカウント値に基づいて上記液面検出時点からのインク消費量を推定する。また、演算処理部91のポンプ送液量推定部919が上記液面検出時点からの各ポンプ55、60、66によるインク送液量を推定する。そして、これらの推定値に基づき、液面情報取得部915が供給サブタンク51aに貯留されているインクの液面レベルをリアルタイムで取得する(ステップS22)。
【0059】
また、回収サブタンク51bの液面レベルについても、液面情報取得部915が供給サブタンク51aでのそれと同様にして、リアルタイムで取得する(ステップS23、S24)。すなわち、インク消費量推定部918が、回収サブタンク51bに貯留されたインクの液面を上記レベルセンサが検出した時点よりノズルから吐出されたインクドットのカウント値に基づいて上記液面検出時点からのインク消費量を推定する。また、演算処理部91のポンプ送液量推定部919が上記液面検出時点からの各ポンプ55、60、66によるインク送液量を推定する(ステップS23)。そして、これらの推定値に基づき、液面情報取得部915が回収サブタンク51bに貯留されているインクの液面レベルをリアルタイムで取得する(ステップS24)。
【0060】
そして、液面情報取得部915による供給サブタンク51aおよび回収サブタンク51bの液面ステータスの確認が完了すると、循環制御部916が液面ステータスに対応する循環モードをBH循環データ922に基づいて決定する(ステップS25)。さらに、当該循環モードにしたがってポンプ制御部912がポンプ55の出力、ポンプ60、66のON/OFF切替を行う。これによって、供給サブタンク51aおよび回収サブタンク51bでのインクの貯留量に対応しながらインクがBH循環経路で循環されながらヘッド部321、331へのインクの補給、つまり第1補給が行われる(ステップS26)。
【0061】
なお、これらの一連の処理(ステップS21~S26)も、第1実施形態と同様に、装置に電源投入されている間、一定の周期で連続的に行われる。
【0062】
また、各サブタンク51a、51bにおいて液面レベルが範囲に入っているか否かを、上記第1実施形態では2個のレベルセンサ58H、58Lにより直接的に検出し、上記第2実施形態では1個のレベルセンサにより間接的に検出している。もちろん、3個以上のレベルセンサを用いて液面レベルをさらに高い分解能で検出するように構成してもよい。
【0063】
また、上記第1実施形態では、白色インクについてのみ循環補給切替動作を行っているが、カラーインクについても循環補給切替動作を行ってもよい。また、循環補給切替動作の代わりに、ヘッド部321、331とバッファタンク52との間で行われる循環動作と同様の動作を行ってもよい(変形例)。
【0064】
また、上記実施形態では、バルブ63、65をヘッド部321、331内に配置しているが、バルブ63、65の少なくとも一方をバッファタンク52の配置領域R52に配置してもよい。ただし、ヘッド部321、331と配置領域R52との間で配管59、64を引き回す必要があり、配管長は数メートルにも達することがある。そこで、応答性を考慮すると、第1実施形態の配設位置が望ましい。
【産業上の利用可能性】
【0065】
本発明は、インクを吐出ヘッドのノズルから印刷媒体の記録面に向けて吐出して印刷する印刷装置および印刷方法におけるインクの補給技術全般に適用可能である。
【符号の説明】
【0066】
3…印刷装置
51a…供給サブタンク
51b…回収サブタンク
52…バッファタンク、白色バッファタンク
53…ドラムタンク
54…(接続)配管
55…(接続)ポンプ
59…(供給)配管
60…(供給)ポンプ
64…(回収)配管
66…(回収)ポンプ
71…(白色補給)配管
73…(白色補給)ポンプ
77…(分岐)配管(白色インク循環部)
58H,58L,69…レベルセンサ
91…演算処理部
92…記憶部
321…ヘッド部
331…(白色)ヘッド部
322,332…吐出ヘッド
915…液面情報取得部
916…循環制御部
917…循環補給切替部
918…インク消費量推定部
919…ポンプ送液量推定部
M…印刷媒体
M1…表面(記録面)
Z…鉛直方向
図1
図2A
図2B
図3A
図3B
図4
図5
図6
図7
図8A
図8B
図9