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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-21
(45)【発行日】2024-07-01
(54)【発明の名称】電線ターミナルおよび電気コネクタ
(51)【国際特許分類】
   H01R 4/48 20060101AFI20240624BHJP
【FI】
H01R4/48 Z
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2020169502
(22)【出願日】2020-10-07
(65)【公開番号】P2022061538
(43)【公開日】2022-04-19
【審査請求日】2023-08-22
(73)【特許権者】
【識別番号】000227995
【氏名又は名称】タイコエレクトロニクスジャパン合同会社
(74)【代理人】
【識別番号】100100077
【弁理士】
【氏名又は名称】大場 充
(74)【代理人】
【識別番号】100136010
【弁理士】
【氏名又は名称】堀川 美夕紀
(72)【発明者】
【氏名】本目 英貴
【審査官】山下 寿信
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-204747(JP,A)
【文献】特開2019-079674(JP,A)
【文献】特開2019-061742(JP,A)
【文献】特開平08-017544(JP,A)
【文献】特開平05-335038(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01R 4/48
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
相手端子と嵌合する端子部、および内側に挿入される芯線と接続される電線接続部を含む端子本体と、
前記電線接続部の外周に配置される略筒状の加圧部と、を備え、
前記電線接続部は、
本体と、
第1挟持部と、
前記芯線を挟んで前記第1挟持部に対向する第2挟持部と、を備え、
前記第1挟持部または前記第2挟持部の少なくともいずれか一方は前記芯線と電気的に接続され、
前記第1挟持部は、前記芯線を挟む向きとは異なる外方に突出する第1外方凸部を含み、
前記第2挟持部は、前記芯線を挟む向きとは異なる外方に突出する第2外方凸部を含み、
前記加圧部は、前記芯線を挟む向きに突出する第1内方凸部および第2内方凸部を含み、前記第1挟持部および前記第2挟持部の間に前記芯線が挿入される第1位置から、前記第1外方凸部と前記第1内方凸部との係合、および前記第2外方凸部と前記第2内方凸部との係合により前記第1挟持部および前記第2挟持部が前記芯線に加圧される第2位置へと前記端子本体に対して移動可能であ
前記第1位置から前記第2位置への前記加圧部の移動時に、前記第1内方凸部および前記第2内方凸部は、前記第1外方凸部および前記第2外方凸部に対して後方から係合し、
前記第1外方凸部および前記第2外方凸部は、夫々の高さが最大の頂部から後方に向かうにつれて次第に低くなり、
前記第1内方凸部および前記第2内方凸部は、夫々の高さが最大の頂部から前方に向かうにつれて次第に低くなる、電線ターミナル。
【請求項2】
前記第1挟持部および前記第2挟持部のいずれか一方の少なくとも前記芯線に接触する領域は、前記芯線の外半周に実質的に倣う形状を呈する、
請求項1に記載の電線ターミナル。
【請求項3】
前記第1挟持部および前記第2挟持部の双方の前記芯線に接触する領域は、前記芯線の外半周に倣う形状を呈し、
前記第1挟持部および前記第2挟持部は前記芯線を軸心に向けて均等に押さえる、
請求項1に記載の電線ターミナル。
【請求項4】
前記電線接続部は、前記芯線が挿入されるスロットを備え、
前記第1挟持部および前記第2挟持部は、前記スロットの一部である、
請求項1から3のいずれか一項に記載の電線ターミナル。
【請求項5】
前記電線接続部は、前記スロットの挿入口よりも後方から前記スロットの内側に前記芯線を案内するガイドを備え、
前記ガイドは、
前記加圧部が前記第1位置にあるときに、前記ガイドの少なくとも一部が、前記スロットの前記挿入口よりも後方に延在している、
請求項4に記載の電線ターミナル。
【請求項6】
前記第1外方凸部および前記第2外方凸部はそれぞれ、前記第1挟持部および前記第2挟持部から、前記芯線を挟む向きとは異なる外方であって、互いに離れる向きに突出している、
請求項1から5のいずれか一項に記載の電線ターミナル。
【請求項7】
2以上の前記第1外方凸部が前記第1挟持部に設けられるとともに、2以上の前記第2外方凸部が前記第2挟持部に設けられる、
請求項6に記載の電線ターミナル。
【請求項8】
の前記第1外方凸部が、前記芯線を挟む向きおよび前記芯線が延出する方向の両方に対して直交する幅方向における前記第1挟持部の両側に隣接し、
の前記第2外方凸部が、前記幅方向における前記第2挟持部の両側に隣接している、
請求項7に記載の電線ターミナル。
【請求項9】
前記加圧部は、外周部から突出するノブを備える、
請求項1から8のいずれか一項に記載の電線ターミナル。
【請求項10】
請求項1から9のいずれか一項に記載の1以上の電線ターミナルと、
前記電線ターミナルを収容するハウジングと、を備える、電気コネクタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電線に接続される端子を含む電線ターミナル、およびかかる電線ターミナルを備えた電気コネクタに関する。
【背景技術】
【0002】
端子に電線を接続する端子接続構造として、端子に形成されたバネや、加圧用の部材を用いて、端子の電線接続部に挿入された電線の導体と端子とを加圧することで接続する構造が知られている(特許文献1,2)。
特許文献1では、端子に挿入された電線の芯線を加圧用部材に形成された押圧凸状部により上方から加圧して下方へ凸状に湾曲変形させることで、芯線の凸部に押圧力が集中した状態で端子の接点に芯線を導通させている。
特許文献2では、ハウジングの収容孔に収容された端子の内側に電線芯線を挿入した後、端子を前方へスライドさせる。端子には、電線を上下から挟む一対のバネが形成されている。一対のバネは、端子のスライド変位に伴い、ハウジングの開口を脱してバネの支持端側からハウジングの収容孔に押し込まれる。それによって一対のバネは、自由端が電線を押さえる向きに傾動して芯線と導通する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2019-79674号公報
【文献】特開2019-61742号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年、線径がより細い電線の使用が要望されているが、そうした細径の電線に関しては、加圧により芯線と端子の接続箇所とを接合する圧着技術によっては電気的接触性能および機械的強度を確保することが難しい。
特許文献1の構造によると、加圧用部材の押下により芯線を変形させる際に押圧凸状部のエッジによる芯線への負荷が大きく、また、接点に押し付けられる芯線の凸部に応力を集中させるので、一般的な径の電線と比べて剛性が低い細径の電線への適用が難しい。
特許文献2の構造によっても、バネの自由端のエッジが芯線に接触するので、芯線への負荷を考慮すると細径の電線への適用が難しい。また、ハウジングの収容孔に端子のバネの支持端が押し込まれてバネが傾動するので、バネに受けた押圧力を自由端に十分に作用させてバネと芯線とを十分に加圧することが難しい。
【0005】
以上より、本発明は、細径の電線にも適用可能な程に電線への負荷を軽減しつつ、端子と電線との電気的接触性能および機械的強度を確保することが可能な電線ターミナル、およびそれを備えた電気コネクタを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の電線ターミナルは、相手端子と嵌合する端子部、および内側に挿入される芯線と接続される電線接続部を含む端子本体と、電線接続部の外周に配置される略筒状の加圧部と、を備える。
電線接続部は、本体と、第1挟持部と、芯線を挟んで第1挟持部に対向する第2挟持部と、を備え、第1挟持部または第2挟持部の少なくともいずれか一方は芯線と電気的に接続され、第1挟持部は、芯線を挟む向きとは異なる外方に突出する第1外方凸部を含み、第2挟持部は、芯線を挟む向きとは異なる外方に突出する第2外方凸部を含む。
加圧部は、電線を挟む向きに突出する第1内方凸部および第2内方凸部を含み、第1挟持部および第2挟持部の間に芯線が挿入される第1位置から、第1外方凸部と第1内方凸部との係合、および第2外方凸部と第2内方凸部との係合により第1挟持部および第2挟持部が芯線に加圧される第2位置へと端子本体に対して移動可能である。
【0007】
本発明の電線ターミナルにおいて、第1挟持部および第2挟持部のいずれか一方の少なくとも芯線に接触する領域は、芯線の外半周に実質的に倣う形状を呈することが好ましい。
【0008】
本発明の電線ターミナルにおいて、第1位置から第2位置への加圧部の移動時に、第1内方凸部および第2内方凸部は、第1外方凸部および第2外方凸部に対して後方から係合し、第1外方凸部および第2外方凸部は、夫々の高さが最大の頂部から後方に向かうにつれて次第に低くなり、第1内方凸部および第2内方凸部は、夫々の高さが最大の頂部から前方に向かうにつれて次第に低くなることが好ましい。
【0009】
本発明の電線ターミナルにおいて、電線接続部は、芯線が挿入されるスロットを備え、第1挟持部および第2挟持部は、スロットの一部であることが好ましい。
【0010】
本発明の電線ターミナルにおいて、電線接続部は、スロットの挿入口よりも後方からスロットの内側に芯線を案内するガイドを備えることが好ましい。
【0011】
本発明の電線ターミナルにおいて、第1外方凸部および第2外方凸部はそれぞれ、第1挟持部および第2挟持部から、芯線を挟む向きとは異なる外方であって、互いに離れる向きに突出していることが好ましい。
本発明の電線ターミナルにおいて、2以上の第1外方凸部が第1挟持部に設けられるとともに、2以上の第2外方凸部が第2挟持部に設けられることが好ましい。
本発明の電線ターミナルにおいて、2以上の第1外方凸部が、芯線を挟む向きおよび芯線が延出する方向の両方に対して直交する幅方向における第1挟持部の両側に隣接し、2以上の第2外方凸部が、幅方向における第2挟持部の両側に隣接していることが好ましい。
【0012】
本発明の電線ターミナルにおいて、加圧部は、外周部から突出するノブを備えることが好ましい。
【0013】
本発明の電気コネクタは、上述の1以上の電線ターミナルと、電線ターミナルを収容するハウジングと、を備える。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、電線接続部の外周に配置される略筒状の加圧部が第1位置にある状態でバネの第1挟持部および第2挟持部の間に電線を挿入した後、加圧部を第2位置へと移動させることで、電線接続部の第1外方凸部と加圧部の第1内方凸部との係合、および電線接続部の第2外方凸部と加圧部の第2内方凸部との係合により、第1挟持部および第2挟持部の間に電線が加圧される。
電線は第1挟持部および第2挟持部の間に弾性的に支持され、外方凸部と内方凸部との係合による押圧力が外方凸部の頂部から内方凸部を介して第1挟持部および第2挟持部の電線を挟む領域に亘り分散して伝えられるので、電線への負荷を軽減することができる。
【0015】
それでいて、第1外方凸部および第2外方凸部と、第1挟持部および第2挟持部とが電線延出方向の同じ位置に配置されているため、押圧力が作用する領域と、電線に電気的に接続される領域とが電線延出方向において同じであって、バネに受けた押圧力を電線との接続箇所に十分に作用させることができる。そのため、挟持部が電線を挟む領域に亘り必要な接圧を実現する十分に大きな力で挟持部と電線とを加圧して電気的接触性能を確保することができるとともに、挟持部および電線を含む電気コネクタとしての機械的強度も確保することができる。
以上によれば、剛性が低い細径の電線が採用されている場合であっても、電線を弾性的に支持する第1挟持部および第2挟持部の延在する領域に亘り電線への負荷を軽減しつつ押圧力を十分に作用させることができるから、電線芯線の折損等を生じることなく、電気的接触性能および機械的強度を十分に確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の実施形態に係る電気コネクタを示す斜視図である。
図2図1のII-II線断面図である。
図3図1に示す電気コネクタに備わる電線ターミナルの斜視図である。加圧部は第2位置にある。
図4】(a)は、電線が挿入される前の電線ターミナルを示す斜視図である。加圧部は第1位置にある。(b)は、電線を示す斜視図である。
図5】(a)は、図4(a)に示す電線ターミナルの端子本体の一部の斜視図である。(b)は、電線接続部の部分拡大図である。
図6図4(a)に示す電線ターミナルの加圧部の斜視図である。
図7】(a)は、加圧部が第1位置にある状態の電線ターミナルの縦断面図である。(b)は、(a)のVIIb矢印の向きから見た後面図である。
図8】(a)は、加圧部が第1位置にあり、かつ、電線接続部のスロットに電線が挿入された状態の電線ターミナルの縦断面図である。(b)は、(a)のVIIIb矢印の向きから見た後面図である。(c)は、(a)のVIIIc-VIIIc線断面図である。
図9】(a)は、電線接続部が電線に加圧される第2位置に加圧部が移動した状態の電線ターミナルの縦断面図である。(b)は、(a)のIXb-IXb線断面図である。(c)は、外方凸部の変形例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、添付図面を参照しながら、本発明の実施形態について説明する。
〔電気コネクタの構成〕
図1および図2に示す電気コネクタ1は、電線Wが接続される1以上の電線ターミナル2と、電線ターミナル2を収容するハウジング3とを備えている。
電線ターミナル2(図3)は、端子部11および電線接続部12を含む端子本体10と、電線接続部12を電線Wに加圧可能な加圧部20とを備えている。
【0018】
電気コネクタ1は、例えば、自動車に装備される機器の接続に用いられる。但し、電気コネクタ1の用途は限定されない。
【0019】
電線ターミナル2の端子部11が、図示しない相手端子に嵌合される側を「前」、その反対側であって、電線Wが引き出される側を「後」と定義する。
また、「上」および「下」は、図2の紙面の上側および下側に従うものとする。
【0020】
ハウジング3は、電線ターミナル2をそれぞれ収容可能な複数の収容部31と、収容部31の後方で複数の電線Wを支持可能な電線支持部32とを備えている。複数の収容部31にそれぞれ電線ターミナル2を収容することが可能である。ハウジング3は、全体として略直方体の形状を呈する。
各収容部31は、ハウジング3の前端部3Aから後方へ互いに平行に延びている。収容部31は、ハウジング3の下側にも設けられているが、その図示を省略する。電線支持部32は、収容部31から後方に連なり、ハウジング3の後端部3Bまで延在している。
【0021】
収容部31は、前端部3Aから後方に延びる収容孔311と、収容孔311から後方に連なり、後端部3Bまで延びる収容溝312とを含んでいる。収容孔311は、収容する端子部11の形状に倣い、横断面が矩形状に形成されている。収容溝312は上方に開放されている。
【0022】
収容孔311の内側に後方から端子部11が挿入されるとともに、収容溝312の内側に上方から電線接続部12および加圧部20が配置される。端子部11の上壁に形成された突起11Aが、ハウジング3の上壁に形成された係止アーム301に係止されることで、ハウジング3からの電線ターミナル2の離脱が規制されている。
【0023】
収容部31に収容された電線ターミナル2には、電線接続部12のバネ部120-1,120-2および加圧部20が用いられることで電線Wが接続される。電線ターミナル2に接続された電線Wは、収容溝312に沿って後方に引き出され、電線支持部32により支持される。
端子部11は、収容孔311の前端をなす挿入孔311Aを通じて挿入される図示しない相手端子と嵌合する。相手端子は、例えば、平板状のタブ端子である。相手端子の先端部は、端子部11の接点部11Bに接触導通する。
【0024】
〔電線ターミナルの構成〕
以下、電線ターミナル2について具体的に説明する。
図3および図4(a)に示すように、電線ターミナル2は、端子部11および電線接続部12が一体成形された端子本体10と、端子本体10とは別体であって、電線接続部12の外周に配置される加圧部20とを備えている。端子本体10および加圧部20のいずれも、例えば銅合金、アルミニウム合金等の金属薄板を用いた打ち抜きや折り曲げ等の加工により成形されている。
【0025】
図3は、電線ターミナル2に電線Wが接続された状態を示している。図4(a)は、電線Wが接続される前の電線ターミナル2を示している。加圧部20は、図4(a)に示す第1位置P1から、図3に示す第2位置P2へと前方に移動可能である。
【0026】
(電線)
電線Wは、図4(b)に示すように、導体である芯線W1と、芯線W1を包囲する絶縁被覆W2とを備えている。芯線W1は、絶縁被覆W2の前端よりも前方へ露出しており、電線接続部12の内側に設定されている電線挿入経路Rに挿入される。
なお、芯線W1は、単一の金属線であってもよいし、撚線や編組線であってもよい。
【0027】
(端子本体の端子)
端子部11には、図示しない相手端子を受容可能な空間10S(図2)を内包する筒の形状が与えられている。端子部11は、矩形状の横断面を呈する。端子部11に備わる上下左右の四方の壁のうち上壁11Uには、上述の突起11Aと、ストッパ突起11Cとが形成されている。ストッパ突起11Cは、上壁11Uの後端部に位置している。収容孔311への端子部11の挿入時にストッパ突起11Cがハウジング3の上壁に係止されることで、電線ターミナル2がハウジング3に対して位置決めされる。
【0028】
端子部11の下壁11Dにおいて、上壁11Uの後端部の位置よりも後方には、上述の接点部11B(図2)が形成されている。接点部11Bは、下壁11Dの前端側の位置に対して上方に隆起している。
【0029】
(端子本体の電線接続部)
図5(a)は、相手端子が接続される接点部11Bと、接点部11Bから後方に端子本体10の軸線の方向(前後方向D1)に沿って延在し、電線Wが接続される電線接続部12とを示している。電線接続部12の上壁の前端には、加圧部20の前方の限界位置を決める前限突起12Fが形成されている。
【0030】
電線接続部12は、図5(a)、図7(a)および(b)に示すように、本体120と、芯線W1に少なくとも一方が電気的に接続される第1挟持部121および第2挟持部122とを備えている。第1挟持部121は第1外方凸部101を含んでいる。第2挟持部122は第2外方凸部102を含んでいる。
【0031】
本体120は、第1挟持部121を含む第1バネ部120-1と、第1バネ部120-1に対して下方に位置し、第2挟持部122を含む第2バネ部120-2とを備えている。
第1バネ部120-1および第2バネ部120-2は、互いに接合されている前側から後方に向けて延在している。接点部11Bの近傍で第1バネ部120-1および第2バネ部120-2の側壁は、蟻継125により接合されている。蟻継125により、第1バネ部120-1および第2バネ部120-2が前後方向D1に位置決めされている。
【0032】
芯線W1が挿入される電線挿入経路Rは、第1バネ部120-1と第2バネ部120-2との間で前後方向D1に延在する間隙120Gに設定されている。第1バネ部120-1および第2バネ部120-2は、加圧部20と共に、後方から電線挿入経路Rに芯線W1が挿入されるスロット123をなしている。第1バネ部120-1の第1挟持部121および第2バネ部120-2の第2挟持部122は、スロット123の一部に相当する。
【0033】
電線接続部12は、スロット123の挿入口123Aよりも後方から芯線W1をスロット123の内側に案内するガイド124を備えていることが好ましい。加圧部20が第1位置P1にあるとき(図4および図7(a))、ガイド124の少なくとも一部が、スロット123の挿入口123Aよりも後方に延在している。ガイド124は、第2バネ部120-2から後方へ滑らかに連続し、後端124Bに向かうにつれて緩やかに下っている。スロット123に後方から挿入される芯線W1をガイド124により支持しつつ、電線挿入経路Rの軸線に向けて案内することが可能である。
【0034】
図2に示すように、スロット123に芯線W1が挿入されると、第1挟持部121と第2挟持部122との間に、第1挟持部121および第2挟持部122が前後方向D1に延在する長さLCに亘り芯線W1が上下方向の両側から挟まれる。
【0035】
芯線W1を挟む第1挟持部121および第2挟持部122の位置よりも前方では、第1バネ部120-1と第2バネ部120-2との間の間隔が拡大している。第1バネ部120-1は前限突起12Fに繋がり、第2バネ部120-2は接点部11Bに繋がっている。なお、第1バネ部120-1の上壁の前側には、上壁を貫通した開口120Aが形成されている。開口120Aと、加圧部20の後述する切欠211(図6)とを通じて、電線挿入経路Rに配置された芯線W1を視認可能である。
【0036】
第1挟持部121および第2挟持部122よりも後方では、第1バネ部120-1と第2バネ部120-2との間に、芯線W1の径よりも大きく、後方に向かうほど拡がる間隔が設定されている。当該間隔は、詳細には、ガイド124に連続する第2バネ部120-2側と比べ、第1バネ部120-1側により大きく拡大している。
なお、電線挿入経路Rの軸線に対してガイド124と上下対称形状のガイド(上側ガイド)が第1バネ部120-1に連続して形成されていてもよい。その場合、上側ガイドと、下側のガイド124とによって芯線W1を電線挿入経路Rの軸線に向けて案内することができる。
【0037】
第1挟持部121と第2挟持部122とが芯線W1を挟む向きは、図5(b)に示すように、電線挿入経路Rの軸線よりも上方および下方のそれぞれから電線挿入経路Rの軸線に向けて近接する内向き(dIn)の矢印で表される。当該挟む向きのことを内方dInと称する。一方、第1挟持部121と第2挟持部122とが、電線挿入経路Rの軸線から上方および下方に離れる矢印で表される向き(dOut)のことを外方dOutと称する。
より詳細には、内方dInは、内方dIn1と、内方dIn2とからなり、内方dIn1および内方dIn2を内方dInと総称する。また、外方dOutは、外方dOut1と、外方dOut2とからなり、外方dOut1および外方dOut2を外方dOutと総称する。
【0038】
第1挟持部121は、芯線W1と接触する第1接続領域121Cを含む。第1挟持部121における少なくとも第1接続領域121Cは、芯線W1の外半周に倣う形状に湾曲している。
ここで、芯線W1の「外半周」は、芯線W1を挟む挟持部121,122に対向する芯線Wの外周部の領域を言う。図7(b)の例で言えば、芯線W1の横断面が円形状であるため、芯線W1の円弧状の外半周が見て取れる。
第1挟持部121は、金属板材の曲げ加工により、図7(b)に外形を二点鎖線で示す芯線W1の外周部の形状に倣って円弧状に湾曲して形成されている。図7(b)には、第1接続領域121Cの円弧状の表面が実線で示されている。
また、第1接続領域121Cには、表面から窪んだ複数の溝121Dが前後方向D1に一定のピッチで形成されている。図7(b)には、溝121Dの底が破線で示されている。
【0039】
第2挟持部122は、第1接続領域121Cに対して下方から対向して芯線W1と接触する第2接続領域122Cを含む。第2挟持部122もまた、第1挟持部121と同様、芯線W1の外半周に倣って円弧状に湾曲している。第2接続領域122Cには、第2接続領域122Cの表面から窪んだ複数の溝122Dが、上述の溝121Dのピッチと同一のピッチで、かつ、半ピッチ分、前後方向D1にシフトして並んでいる。
芯線W1の外半周に倣う第1接続領域121Cおよび第2接続領域122Cにより、芯線W1を軸心に向けてほぼ均等に押さえることができる。また、第1接続領域121Cと第2接続領域122Cとに互い違いに配置された溝121D,122Dに芯線W1を食い込ませながら第1挟持部121および第2挟持部122を芯線W1に安定して押圧することができる。
【0040】
なお、第1挟持部121の全体が芯線W1の外半周に倣う形状である必要はなく、第1挟持部121の少なくとも第1接続領域121Cが芯線W1の外半周に倣う形状であれば足りる(例えば、図9(c)参照)。第2挟持部122および第2接続領域122Cについても同様である。
また、芯線W1の横断面は必ずしも円形状であるとは限らないから、芯線W1の外半周もまた、必ずしも円弧状であるとは限らない。芯線W1の外半周が、例えば、一部に直線を含んでいてもよい。芯線W1の横断面が多角形状である場合や、芯線W1が撚線や編組線である場合も含め、第1挟持部121および第2挟持部122のいずれか一方における少なくとも接続領域121C,122Cが、芯線W1の外半周に倣う形状であれば足りる。さらに、芯線W1の外半周に完全に倣う形状である必要はなく、例えば、挟持部121,122の接続領域121C,122Cが芯線W1の円弧状の外半周を模擬した多角形状である場合等、芯線W1の外半周に実質的に倣う形状であれば足りる。
【0041】
次に、第1外方凸部101および第2外方凸部102について説明する。
第1外方凸部101は、電線Wが延出する方向(前後方向D1)における第1、第2挟持部121,122の位置で、第1挟持部121から外方dOut1に突出している。図5(a)に示すように、一対の第1外方凸部101が、幅方向D2における第1挟持部121の両側に隣接して配置されている。幅方向D2は、芯線W1が延出する方向(前後方向D1)と、第1挟持部121および第2挟持部122が芯線W1を挟む向き(内方dIn)との両方に対して直交する方向に相当する。一対の第1外方凸部101は、金属板材が第1挟持部121から上方に曲げられることで、第1挟持部121と一体に成形されている。第1挟持部121および一対の第1外方凸部101は、図8(b)に示すように略C字状の横断面を呈する。
【0042】
第1外方凸部101は、高さが最大の頂部101Tと、頂部101Tから後方に向かうにつれて緩やかに下る後方スロープ101Bと、頂部101Tから前方に向かうにつれて緩やかに下る前方スロープ101Fとを有する。頂部101Tは、円弧状の第1挟持部121の頂部121Tよりも上方に位置している。
第1外方凸部101は、後述するように加圧部20の第1内方凸部201と上下方向に押し合うように係合する。この第1内方凸部201とスムーズに係合するよう、頂部101Tおよびスロープ101F,101Bの表面の全域に亘り、曲げ加工によって滑らかな湾曲面が与えられていることが好ましい。頂部101Tおよびスロープ101F,101Bを含む全体として、第1外方凸部101は、第1挟持部121の長さLCとほぼ同等の範囲あるいは第1挟持部121の長さLC以上の範囲に亘り、前後方向D1に延在している。頂部101Tは、前後方向D1における第1挟持部121の中央に位置していることが好ましい。スロープ101F,101Bは、頂部101Tを中心に前後方向D1に対称な形状に形成されているが、前後非対称な形状であってもよい。例えば、前方スロープ101Fの前後方向D1の長さと比べて後方スロープ101Bの前後方向D1の長さが短くてもよい。
【0043】
第2外方凸部102は、前後方向D1における第1、第2挟持部121,122の位置で、第2挟持部122から外方dOut2に、円弧状の第2挟持部122の頂部122Tよりも下方の位置まで突出している。第2外方凸部102は、後述するように加圧部20の第2内方凸部202と上下方向に押し合うように係合する。
第1外方凸部101と同様に、一対の第2外方凸部102が、曲げ加工により、幅方向D2における第2挟持部122の両側に隣接して配置されている。第2外方凸部102は、頂部102Tと、後方スロープ102Bと、前方スロープ102Fとを有する。また、頂部201Tおよびスロープ102B,102Fを含む全体として、第2外方凸部102は、第2挟持部122の長さLCとほぼ同等の範囲に亘り前後方向D1に延在している。
【0044】
第1外方凸部101および第2外方凸部102は、電線挿入経路Rの軸線に対して上下対称形状に形成されている。加圧部20の第1内方凸部201および第2内方凸部202も、電線挿入経路Rの軸線に対して上下対称形状に形成されている。そのため、加圧部20を第2位置P2へ移動させる際に、第1外方凸部101の後方スロープ101Bと第1内方凸部201の前方スロープ201Fとを摺動させ、かつ、第2外方凸部102の後方スロープ102Bと第2内方凸部202の前方スロープ202Fとを摺動させながら、電線挿入経路Rの軸線に沿って加圧部20を安定してスライドさせることができる。
なお、外方凸部101,102の前方スロープ101F,102F、および内方凸部201,202の後方スロープ201B,202Bは、図7(a)に二点鎖線で示されている内方凸部201,202の如く、内方凸部201,202が外方凸部101,102よりも前方に配置される場合には、端子本体10に対する加圧部20の後方へのスライド時に、相互に摺動することとなる。こうした場合にも対応できるように、外方凸部101,102および内方凸部201,202のいずれも、それぞれの頂部に対して前後方向D1に対称に形成されている。但し、内方凸部201,202(実線)が外方凸部101,102よりも後方に配置される場合か、あるいは、内方凸部201,202(二点鎖線)が外方凸部101,102よりも前方に配置される場合かのいずれかの使用に限定されるならば、加圧部20のスライド時に摺動しない、前方後方いずれかのスロープについては、スロープに替わる適宜な形状を与えることができ、上下対称形状である必要もない。
【0045】
〔加圧部〕
電線接続部12を芯線W1に加圧可能な加圧部20は、図6図7(a)および(b)に示すように、略筒状に形成され、その内部空間は前方および後方のいずれにも開放されている。この加圧部20は、電線接続部12の後方から電線接続部12の外周に配置され、第1挟持部121および第2挟持部122の間に芯線W1が挿入されるときの第1位置P1(図4(a)および図7(a))から、前方の第2位置P2(図2および図3)へと電線接続部12を含む端子本体10に対して移動可能である。
【0046】
加圧部20は、蟻継205により接合されてなる角筒部21を備えている。加圧部20(図3)の内側に電線接続部12が挿入されると、角筒部21の内側には、第1挟持部121、第2挟持部122、第1外方凸部101、および第2外方凸部102が配置される。角筒部21は、第2位置P2に加圧部20を移動させた際に、芯線W1を挟む第1挟持部121および第2挟持部122と、第1外方凸部101と、第2外方凸部102とを角筒部21の内側に拘束する。
【0047】
角筒部21に備わる上下左右の四方の壁のうち上壁21Uには、電線接続部12の第1外方凸部101に対応する第1内方凸部201が形成されている。また、角筒部21の下壁21Dには、電線接続部12の第2外方凸部102に対応する第2内方凸部202が形成されている。加圧部20が第2位置P2へ移動すると、第1外方凸部101と第1内方凸部201とが係合し、かつ、第2外方凸部102と第2内方凸部202とが係合することで、第1挟持部121および第2挟持部122が芯線W1に加圧される。第1内方凸部201および第2内方凸部202の具体的な構成については後述する。
角筒部21の側壁21L,21Rは、第1バネ部120-1および第2バネ部120-2と共にスロット123を形成する。
【0048】
上壁21Uの前端部には、芯線W1の視認に用いられる切欠211が形成されている。一の側壁21Lには、前後方向D1に複数の蟻継205が並んでいる。これらの蟻継205は、第2位置P2に加圧部20を移動させた際に電線接続部12からの反力による角筒部21の変形を防止する。
【0049】
また、左右両側の側壁21L,21Rには、後端21Bから前方へ所定の長さに亘り、電線接続部12のバネ部120-1,120-2と係合する凸条22(図7(b))が形成されている。側壁21Lの凸条22は、側壁21Lにおいて蟻継205が並ぶ上下方向の中央部を側壁21Lの外側から内側に凹ませることで、側壁21Lの内側に突出した形状を呈する。側壁21Rの凸条22も、側壁21Rの上下方向の中央部を側壁21Rの外側から凹ませることで、側壁21Rの内側に突出した形状を呈する。側壁21L,21Rのそれぞれの凸条22は、第1バネ部120-1と第2バネ部120-2との間の間隙120Gに挿入されることで、間隙120Gに沿って加圧部20を前方へ案内するガイドレールとして機能する。加圧部20を第2位置P2へ前進させると、凸条22の前端22Aが、第1バネ部120-1および第2バネ部120-2のそれぞれの段差120D(図5(a))に後方から突き当たり、位置決めされる。
【0050】
加圧部20は、加圧部20を前方へスライド変位させる際に用いられるノブ23を備えていることが好ましい。ノブ23は、角筒部21よりも前方における金属板材の折り曲げにより成形され、角筒部21の上壁21Uよりも上方へ突出している。このノブ23を手指や治具により後方から前方へ押しながら加圧部20をスライドさせることができる。
ノブ23は、加圧部20の外周部から突出し、前方へ押すことができる限り、加圧部20の前端部に限らず、加圧部20の前後方向D1における適宜な箇所に設けることができる。また、ノブ23は、加圧部20の側壁21L,21Rや下壁21Dに設けられていてもよい。
【0051】
さて、加圧部20は、上述の第1外方凸部101に係合可能な第1内方凸部201と、上述の第2外方凸部102に係合可能な第2内方凸部202とを備えている。第1内方凸部201は、曲げ加工により角筒部21の上壁21Uに成形されている。第2内方凸部202は、同じく曲げ加工により角筒部21の下壁21Dに成形されている。
【0052】
第1内方凸部201は、上壁21Uから、第1挟持部121および第2挟持部122が芯線W1を挟む向きである内方dIn1に突出している。
第1内方凸部201は、上壁21Uの全幅に亘り上壁21Uの外側から内側に向けて凹ませることで、上壁21Uの内側に突出した状態を呈する。第1内方凸部201は、一対の第1外方凸部101のいずれとも係合する。この第1内方凸部201に代えて、一対の第1外方凸部101に個別に係合する一対の第1内方凸部が上壁21Uに設けられていてもよい。
【0053】
第1内方凸部201は、第1内方凸部201の前後における上壁21Uの位置からの高さが最大の頂部201Tと、頂部201Tから前方に向かうにつれて緩やかに下る前方スロープ201Fと、頂部201Tから後方に向かうにつれて緩やかに下る後方スロープ201Bとを有する。前方スロープ201Fには、対応する第1外方凸部101の後方スロープ101Bに倣う勾配が与えられることが好ましい。また、頂部201Tおよびスロープ201F,201Bの全域に亘り、前後方向D1に滑らかな湾曲面が与えられていることが好ましい。第1内方凸部201の頂部201Tは、第1外方凸部101の頂部101Tと上下方向に押し合い係合する。第1内方凸部201の頂部201Tは、頂部101Tと比べると、前後方向D1に長い所定範囲に亘り設定されている。そのため、頂部101Tと頂部201Tとの前後方向D1における位置のずれが許容される。頂部201Tを含め、第1内方凸部201は、第1外方凸部101よりも前後方向D1に長い範囲に亘り延在している。
【0054】
下壁21Dに設けられた第2内方凸部202は、前後方向D1における第1内方凸部201と同じ位置で、内方dIn2に突出している。
第2内方凸部202は、頂部202Tと、頂部202Tから前方に向かうにつれて緩やかに下る前方スロープ202Fと、頂部202Tから後方に向かうにつれて緩やかに下る後方スロープ202Bとを有する。前方スロープ202Fには、対応する第2外方凸部102の後方スロープ102Bに倣う勾配が与えられることが好ましい。
第2内方凸部202の頂部202Tは、第2外方凸部102の頂部102Tと係合する。
【0055】
図7(a)に示すように加圧部20が第1位置P1にあるとき、第1内方凸部201は第1外方凸部101と係合しておらず、第2内方凸部202は第2外方凸部102と係合していない。このとき、第1内方凸部201の少なくとも頂部201Tが、第1外方凸部101の少なくとも頂部101Tに対して後方に位置し、かつ、頂部201Tが、頂部101Tの位置に対して下方に位置している。同様に、第2内方凸部202の少なくとも頂部202Tが、第2外方凸部102の少なくとも頂部102Tに対して後方に位置しており、かつ、頂部202Tが、頂部102Tの位置に対して下方に位置している。
加圧部20が第1位置P1にあるとき、加圧部20と電線接続部12との間には、頂部101Tと上壁21Uとの間、頂部201Tと第1バネ部120-1との間、頂部102Tと下壁21Dとの間、および頂部202Tと第2バネ部120-2との間を含め、クリアランスが設定されていることが好ましい。
【0056】
加圧部20の内側に電線接続部12を後端側から通す際には、第1内方凸部201および第2内方凸部202のスロープ201F,202Fにより第1バネ部120-1と第2バネ部120-2とが内方dInに押されて撓む。これを経て、頂部201Tが、第1外方凸部101と、第1バネ部120-1の後端部がなす挿入口123Aとの間に配置されるとともに、頂部202Tが、第2外方凸部102と、挿入口123Aとの間に配置される。このとき、加圧部20は第1位置P1にある。
加圧部20は、第1バネ部120-1の後端のフランジFLが加圧部20の内壁に突き当てられ、第2バネ部120-2の前端側が加圧部20の下壁21Dに支持された状態で、第1位置P1に維持される。
【0057】
〔電線接続の手順〕
図7図9を参照して、電線ターミナル2に電線Wを接続する手順を説明する。手順の概略としては、図7に示すように第1位置P1に加圧部20がある状態にて、図8に示すようにスロット123に電線Wの芯線W1を挿入した後、図9に示すように、加圧部20を端子本体10に対して第2位置P2まで移動せしめて第1挟持部121および第2挟持部122を芯線W1に加圧することで、芯線W1を電線接続部12に電気的に接続するとともに機械的に保持する。
【0058】
図7(a)および(b)に示すように、加圧部20が第1位置P1にあるとき、加圧部20の第1内方凸部201および第2内方凸部202は、電線接続部12の第1外方凸部101および第2外方凸部102よりも後方に配置されている。加圧部20の第1内方凸部201および第2内方凸部202のいずれも、対応する外方凸部101,102と係合していないので、加圧部20によりバネ部120-1,120-2は押圧されていない。
芯線W1が挿入される前において、第1バネ部120-1と第2バネ部120-2との間には、芯線W1の外径に対応した寸法の間隙120Gが確保されている。間隙120Gの寸法は、芯線W1の外径よりも若干広い。
【0059】
図7(a)に二点鎖線で芯線W1を示している。芯線W1の外径よりも大きい挿入口123Aを通じて芯線W1をスロット123に容易に挿入することができる。このとき、加圧部20よりも後方へ突出したガイド124に芯線W1を配置し、ガイド124に沿って芯線W1を前方へ移動させる。そうすることで、ガイド124により芯線W1を電線挿入経路Rの軸線に向けて案内しつつ、スロット123の内側へ、電線挿入経路Rの軸線に対して平行に挿入することができる。芯線W1を囲むスロット123により、芯線W1はスロット123の内側から離脱することなくスロット123内に留められる。そのため、細径であって剛性が低いために、単体では形状を維持することが難しい芯線W1が採用されているとしても、図8(a)に示すように、前後方向D1に延在するスロット123に沿って芯線W1を直線的に延びた状態に保ちながら、スロット123の内側の電線挿入経路Rに芯線W1を挿入し、電線挿入経路Rの軸線上に配置することができる。
電線挿入過程の途中からガイド124により絶縁被覆W2を支持しつつ、絶縁被覆W2から露出した芯線W1の全体をスロット123の内側に挿入することができる。このとき絶縁被覆W2は挿入口123Aの外側に配置される。
【0060】
図9(a)~(c)は、ノブ23を後方から前方へ押すことで加圧部20を端子本体10に対して第2位置P2に移動させた状態を示している。第2位置P2に移動した加圧部20は、バネ部120-1,120-2を弾性変形させながら第1挟持部121および第2挟持部122を芯線W1に加圧する。
ノブ23を前方へ押すと、間隙120Gに沿って凸条22が前進するのに伴い、加圧部20が電線挿入経路Rの軸線に対して平行に移動する。このとき、第1外方凸部101の後方スロープ101Bに、後方から第1内方凸部201の頂部201Tが乗り上げ、それと同時に、第2外方凸部102の後方スロープ102Bに、後方から第2内方凸部202の頂部202Tが乗り上げる。加圧部20の前進に伴い、頂部101Tに対して頂部201Tが近接し、頂部102Tに対して頂部202Tが近接する。
【0061】
さらに、前限突起12Fにノブ23が近接し、開口120Aの位置に切欠211が到達することで芯線W1を視認可能な位置まで加圧部20を前進させたならば、第1外方凸部101および第1内方凸部201のそれぞれの頂部101T,201Tが互いに係合するとともに、第2外方凸部102および第2内方凸部202のそれぞれの頂部102T,202Tが互いに係合する。
【0062】
このとき、図9(a)に示すように、前後方向D1における同じ位置で、上から順に、頂部201T,101T,102T,202Tが並んでいるので、第1挟持部121の真上には頂部101T,201Tが存在し、第2挟持部122の真下には頂部102T,202Tが存在している。第1外方凸部101および第2外方凸部102は、角筒部21の第1内方凸部201および第2内方凸部202の内側に拘束されているから、第1内方凸部201および第2内方凸部202により内方dInへ押圧される。
【0063】
そうすると、図9(b)に示すように、第1内方凸部201の頂部201Tから内方dIn1に第1外方凸部101を押圧する力F1と、第2内方凸部202の頂部202Tから内方dIn2に第2外方凸部102を押圧する力F2とにより、第1外方凸部101および第2外方凸部102が内方dIn1,dIn2に側壁21L,21Rを摺動しつつ弾性変形するとともに、第1挟持部121および第2挟持部122が前後方向D1の長さLCに亘り芯線W1を挟む向きdInに加圧する。ここで、押圧力F1,F2が、電線挿入経路Rの軸線上に直線的に配置されている芯線W1に対して垂直な方向に働くので、接続領域121C,122Cの全域に亘り芯線W1が安定して加圧される。
第1挟持部121および第2挟持部122は、芯線W1からの反力を受けながら、弾性力により芯線W1を挟んで機械的に保持し、かつ芯線W1と電気的に接続される。
【0064】
芯線W1を挟む第1挟持部121および第2挟持部122のそれぞれの溝121D,122Dの位置関係に基づいて、図5(b)に示すように、溝121Dと第2接続領域122Cの表面とが対向し、かつ、溝122Dと第1接続領域121Cの表面とが対向している。そのため、芯線W1を溝121D,122Dに食い込ませて、芯線W1が後方に抜けるのを防ぐとともに、電気的接触性能を安定させることができる。
【0065】
加圧部20は、挟持部121,122により芯線W1を加圧したまま、第2位置P2に維持される。加圧部20に用いられる金属は、樹脂に比べて特性の経年変化や、温度変動による特性変化が小さく、剛性を維持する。金属部材である加圧部20によれば、電気コネクタ1として十分な機械的強度を保ち、信頼性の向上に寄与することができる。
【0066】
〔本実施形態による主な効果〕
以上で説明した本実施形態の電線ターミナル2は、加圧部20の第2位置P2への移動に伴う内方凸部201,202と外方凸部101,102との係合により第1バネ部120-1および第2バネ部120-2に押圧力F1,F2を印加し、弾性変形した挟持部121,122が芯線W1を加圧するように構成されている。
ここで、第1外方凸部101および第2外方凸部102と、第1挟持部121および第2挟持部122とが電線延出方向(前後方向D1)の同じ位置に配置されているため、内方凸部201,202から外方凸部101,102へ、さらに挟持部121,122へと押圧力F1,F2が作用する領域と、芯線W1に電気的に接続される領域とが電線延出方向において同じである。そうすると、押圧力が作用する領域と、芯線に電気的に接続される領域とが電線延出方向において異なる場合と比べ、バネ部120-1,120-2に受けた押圧力F1,F2を芯線W1との接続箇所に十分に作用させることができる。そのため、挟持部121,122のそれぞれの接続領域121C,122Cの全域に亘り必要な接圧を実現する十分に大きな力で挟持部121,122と芯線W1とを加圧して電気的接触性能を確保することができるとともに、挟持部121,122および芯線W1を含む電気コネクタ1としての機械的強度をも確保することができる。
【0067】
芯線W1は挟持部121,122の間に弾性的に支持され、押圧力F1,F2は、外方凸部101,102の頂部101T,102Tから内方凸部201,202を介して第1挟持部121および第2挟持部122の芯線W1を挟む長さLCに亘り分散して伝えられる。そのため、細径の電線Wにも適用可能な程に芯線W1への負荷を軽減しながら、加圧による芯線W1の変形の如何を問わず、必要な接圧を実現して電気的接触性能および機械的強度を確保することができる。
加えて、芯線W1の外半周に実質的に倣う第1接続領域121Cおよび第2接続領域122Cにより、芯線W1を軸心に向けてほぼ均等に押さえることができるので、芯線W1の応力集中を避けることができる。
さらに、第1挟持部121に対して幅方向D2における両側に隣接した一対の第1外方凸部101と、第2挟持部122に対して幅方向D2における両側に隣接した一対の第2外方凸部102とによれば、芯線W1への応力集中を避けて、芯線W1の幅方向D2の両側を均等に押さえることができる。
【0068】
以上によれば、剛性が低い細径の電線Wが採用されているとしても、芯線W1を弾性的に支持する挟持部121,122の延在する領域に亘り芯線W1への負荷を軽減しつつ押圧力F1,F2を十分に作用させることができるので、芯線W1の折損等を生じることなく、電気的接触性能および機械的強度を十分に確保することができる。
【0069】
本実施形態によれば、加圧による芯線の塑性変形を伴う圧着技術に代わり、圧着と同等の電気的接触性能および機械的強度を実現可能であって、圧着技術の適用が難しい細径の電線Wにも適用可能な電線ターミナル2および電気コネクタ1を提供することができる。
【0070】
上記以外にも、本発明の主旨を逸脱しない限り、上記実施形態で挙げた構成を取捨選択したり、他の構成に適宜変更したりすることが可能である。
例えば、図9(c)に示すように、第1挟持部121の幅方向D2の中央に単一の第1外方凸部101が突設され、第2挟持部122の幅方向D2の中央に単一の第2外方凸部102が突設されていてもよい。
あるいは、図9(c)に示す第1外方凸部101を図8(c)に示す2つの第1外方凸部101の間に追加し、図9(c)に示す第2外方凸部102を図8(c)に示す2つの第2外方凸部102の間に追加してもよい。
つまり、第1外方凸部101および第2外方凸部102のそれぞれの数は問わない。第1外方凸部101の数と、第2外方凸部102の数とが相違していてもよく、第1挟持部121における第1外方凸部101の位置と、第2挟持部122における第2外方凸部102の位置とが相違していてもよい。さらに、第1挟持部121に設けられる2以上の第1外方凸部101の間で形状が相違していたり、第2挟持部122に設けられる2以上の第2外方凸部102の間で形状が相違していたりしてもよい。
【符号の説明】
【0071】
1 電気コネクタ
2 電線ターミナル
3 ハウジング
3A 前端部
3B 後端部
10 端子本体
10S 空間
11 端子部
11A 突起
11B 接点部
11C ストッパ突起
11D 下壁
11U 上壁
12 電線接続部
12F 前限突起
20 加圧部
21 角筒部
21B 後端
21D 下壁
21L,21R 側壁
21U 上壁
22 凸条
22A 前端
23 ノブ
31 収容部
32 電線支持部
101 第1外方凸部
101B 後方スロープ
101F 前方スロープ
101T 頂部
102 第2外方凸部
102B 後方スロープ
102F 前方スロープ
102T 頂部
120 本体
120-1 第1バネ部
120-2 第2バネ部
120A 開口
120D 段差
120G 間隙
121 第1挟持部
121C 第1接続領域
121D 溝
121T 頂部
122 第2挟持部
122C 第2接続領域
122D 溝
122T 頂部
123 スロット
123A 挿入口
124 ガイド
124B 後端
125 蟻継
201 第1内方凸部
201B 後方スロープ
201F 前方スロープ
201T 頂部
202 第2内方凸部
202B 後方スロープ
202F 前方スロープ
202T 頂部
205 蟻継
211 切欠
301 係止アーム
311 収容孔
311A 挿入孔
312 収容溝
D1 前後方向
D2 幅方向
In,dIn1,dIn2 内方
Out,dOut1,dOut2 外方
F1,F2 押圧力
FL フランジ
P1 第1位置
LC 長さ
P2 第2位置
R 電線挿入経路
W 電線
W1 芯線
W2 絶縁被覆
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9