(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-21
(45)【発行日】2024-07-01
(54)【発明の名称】医用画像処理装置、X線診断装置及び医用画像処理方法
(51)【国際特許分類】
A61B 6/00 20240101AFI20240624BHJP
G06T 7/00 20170101ALI20240624BHJP
G06T 7/136 20170101ALI20240624BHJP
【FI】
A61B6/00 550D
G06T7/00 612
G06T7/136
(21)【出願番号】P 2020176744
(22)【出願日】2020-10-21
【審査請求日】2023-09-01
(73)【特許権者】
【識別番号】594164542
【氏名又は名称】キヤノンメディカルシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003708
【氏名又は名称】弁理士法人鈴榮特許綜合事務所
(72)【発明者】
【氏名】小林 由昌
【審査官】蔵田 真彦
(56)【参考文献】
【文献】特開平06-014193(JP,A)
【文献】特開2000-276603(JP,A)
【文献】特開2009-189667(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0146959(US,A1)
【文献】中国特許出願公開第110223261(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 6/00-6/58
G06T 1/00-19/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
医用画像における画素値の累積ヒストグラムを取得する第1取得部と、
前記累積ヒストグラムに基づいて、前記医用画像における被検体領域と直接線領域との境界を規定する値を検出する検出部と
を備え
、
前記検出部は、
前記累積ヒストグラムに基づいて、前記被検体領域のX線の最小線量に対応する第1画素値と、前記直接線領域のX線の最大線量に対応する第2画素値とを取得する第2取得部と、
前記第1画素値と前記第2画素値との間の範囲内で前記直接線領域のX線の最小線量に対応する第3画素値を取得することにより、前記第3画素値である前記値を検出する第3取得部と、
を備え、
前記第2取得部は、同一又は別々の傾きをもつ右上がりの複数の直線がそれぞれ前記累積ヒストグラムに接する点を得ることにより、前記第1画素値及び前記第2画素値を取得することと等価な処理を実行し、
前記第3取得部は、前記範囲内で右上がりの直線が前記累積ヒストグラムに接する点を得ることにより、前記第3画素値を取得することと等価な処理を実行する、
医用画像処理装置。
【請求項2】
前記第2取得部は、前記複数の直線のうち、負側の切片をもつ直線が前記累積ヒストグラムに接する点の画素値を前記第1画素値とし、正側の切片をもつ直線が前記累積ヒストグラムに接する点の画素値を前記第2画素値とする処理を実行し、
前記第3取得部は、前記範囲内で、負側の切片をもつ直線が前記累積ヒストグラムに接する点の画素値を前記第3画素値とする処理を実行する、
請求項1記載の医用画像処理装置。
【請求項3】
医用画像における画素値の累積ヒストグラムを取得する第1取得部と、
前記累積ヒストグラムに基づいて、前記医用画像における被検体領域と直接線領域との境界を規定する値を検出する検出部と
を備え、
前記検出部は、
前記累積ヒストグラムに基づいて、前記被検体領域のX線の最小線量に対応する第1画素値と、前記直接線領域のX線の最大線量に対応する第2画素値とを取得する第2取得部と、
前記第1画素値と前記第2画素値との間の範囲内で前記直接線領域のX線の最小線量に対応する第3画素値を取得することにより、前記第3画素値である前記値を検出する第3取得部と、
を備え、
前記第2取得部は、
前記累積ヒストグラムの最小累積度数を示す点と最大累積度数を示す点とを結んだ第1直線の傾きに基づいた第2直線が当該最小累積度数において当該累積ヒストグラムに接した第1点の画素値を前記第1画素値とし、前記第2直線が当該最大累積度数において当該累積ヒストグラムに接した第2点の画素値を前記第2画素値とすることと等価な処理を実行し、
前記第3取得部は、
前記第1点と前記第2点とを結んだ直線と同じ傾きをもつ第3直線が前記範囲内で当該累積ヒストグラムに接した第3点の画素値を前記第3画素値とすることと等価な処理を実行する、
医用画像処理装置。
【請求項4】
医用画像における画素値の累積ヒストグラムを取得する第1取得部と、
前記累積ヒストグラムに基づいて、前記医用画像における被検体領域と直接線領域との境界を規定する値を検出する検出部と
を備え、
前記検出部は、
前記累積ヒストグラムに基づいて、前記被検体領域のX線の最小線量に対応する第1画素値と、前記直接線領域のX線の最大線量に対応する第2画素値とを取得する第2取得部と、
前記第1画素値と前記第2画素値との間の範囲内で前記直接線領域のX線の最小線量に対応する第3画素値を取得することにより、前記第3画素値である前記値を検出する第3取得部と、
を備え、
前記第2取得部は、前記累積ヒストグラムを減算により変形させ、この減算結果の累積ヒストグラムの最小値を示す点の画素値を前記第1画素値とし、前記減算結果の累積ヒストグラムの最大値を示す点の画素値を前記第2画素値とすることと等価な処理を実行し、
前記第3取得部は、少なくとも前記範囲内で前記累積ヒストグラムを減算により変形させ、この減算結果の累積ヒストグラムの最小値を示す点の画素値を前記第3画素値とすることと等価な処理を実行する、
医用画像処理装置。
【請求項5】
前記第2取得部は、前記累積ヒストグラムから右上がりの直線を減算することで、前記累積ヒストグラムの最小累積度数及び最大累積度数の各々を示す2つの水平線が、それぞれ右下がりの直線となるように当該累積ヒストグラムを変形させる、
請求項4に記載の医用画像処理装置。
【請求項6】
前記第3取得部は、前記範囲内での減算結果の累積ヒストグラムの最小値を示す点の画素値が前記境界を規定する値から外れない範囲の傾きであって(前記累積ヒストグラムの最大累積度数/(前記第2画素値-前記第1画素値))以上の前記傾きをもつ直線を前記累積ヒストグラムから減算することで、当該累積ヒストグラムを変形させる、
請求項4又は5に記載の医用画像処理装置。
【請求項7】
医用画像における画素値の累積ヒストグラムを取得する第1取得部と、
前記累積ヒストグラムに基づいて、前記医用画像における被検体領域と直接線領域との境界を規定する値を検出する検出部と
を備え、
前記検出部は、
前記累積ヒストグラムに基づいて、前記被検体領域のX線の最小線量に対応する第1画素値と、前記直接線領域のX線の最大線量に対応する第2画素値とを取得する第2取得部と、
前記第1画素値と前記第2画素値との間の範囲内で前記直接線領域のX線の最小線量に対応する第3画素値を取得することにより、前記第3画素値である前記値を検出する第3取得部と、
を備え、
前記第2取得部は、
前記累積ヒストグラムの最小累積度数を示す点と最大累積度数を示す点とを結んだ第1直線の傾きに基づいた第2直線を当該累積ヒストグラムから減算し、この減算結果の累積ヒストグラムの最小値を示す点の画素値を前記第1画素値とし、前記減算結果の累積ヒストグラムの最大値を示す点の画素値を前記第2画素値とすることと等価な処理を実行し、
前記第3取得部は、
前記累積ヒストグラム内で前記第1画素値を示す第1点と前記第2画素値を示す第2点とを結ぶ直線の傾きをもつ第3直線を求め、少なくとも前記範囲内で当該第3直線を当該累積ヒストグラムから減算し、この減算結果の累積ヒストグラムの最小値を示す点の画素値を前記第3画素値とすることと等価な処理を実行する、
医用画像処理装置。
【請求項8】
前記累積ヒストグラムの最小累積度数を示す点は、前記累積ヒストグラムの始点であり、前記累積ヒストグラムの最大累積度数を示す点は、前記累積ヒストグラムの終点である、請求項3又は
7記載の医用画像処理装置。
【請求項9】
前記第2直線の傾きは、1以下で0より大きい値である、請求項3
、7、8のいずれか一項に記載の医用画像処理装置。
【請求項10】
前記被検体領域のX線の最小線量に
対応する第1画素値は、前記被検体領域の最小画素値であり、
前記直接線領域のX線の最大線量に
対応する第2画素値は、前記直接線領域の最大画素値であり、
前記直接線領域のX線の最小線量に
対応する第3画素値は、前記直接線領域の最小画素値である、請求項
1乃至
9のいずれか一項に記載の医用画像処理装置。
【請求項11】
医用画像における画素値の累積ヒストグラムを取得する第1取得部と、
前記累積ヒストグラムに基づいて、前記医用画像における被検体領域と直接線領域との境界を規定する値を検出する検出部と
を備え
、
前記検出部は、
前記累積ヒストグラムに基づいて、前記被検体領域のX線の最小線量に対応する第1画素値と、前記直接線領域のX線の最大線量に対応する第2画素値とを取得する第2取得部と、
前記第1画素値と前記第2画素値との間の範囲内で前記直接線領域のX線の最小線量に対応する第3画素値を取得することにより、前記第3画素値である前記値を検出する第3取得部と、
を備え、
前記第2取得部は、同一又は別々の傾きをもつ右上がりの複数の直線がそれぞれ前記累積ヒストグラムに接する点を得ることにより、前記第1画素値及び前記第2画素値を取得することと等価な処理を実行し、
前記第3取得部は、前記範囲内で右上がりの直線が前記累積ヒストグラムに接する点を得ることにより、前記第3画素値を取得することと等価な処理を実行する、
X線診断装置。
【請求項12】
前記第2取得部は、前記複数の直線のうち、負側の切片をもつ直線が前記累積ヒストグラムに接する点の画素値を前記第1画素値とし、正側の切片をもつ直線が前記累積ヒストグラムに接する点の画素値を前記第2画素値とする処理を実行し、
前記第3取得部は、前記範囲内で、負側の切片をもつ直線が前記累積ヒストグラムに接する点の画素値を前記第3画素値とする処理を実行する、
請求項
11記載のX線診断装置。
【請求項13】
医用画像における画素値の累積ヒストグラムを取得する第1取得部と、
前記累積ヒストグラムに基づいて、前記医用画像における被検体領域と直接線領域との境界を規定する値を検出する検出部と
を備え、
前記検出部は、
前記累積ヒストグラムに基づいて、前記被検体領域のX線の最小線量に対応する第1画素値と、前記直接線領域のX線の最大線量に対応する第2画素値とを取得する第2取得部と、
前記第1画素値と前記第2画素値との間の範囲内で前記直接線領域のX線の最小線量に対応する第3画素値を取得することにより、前記第3画素値である前記値を検出する第3取得部と、
を備え、
前記第2取得部は、
前記累積ヒストグラムの最小累積度数を示す点と最大累積度数を示す点とを結んだ第1直線の傾きに基づいた第2直線が当該最小累積度数において当該累積ヒストグラムに接した第1点の画素値を前記第1画素値とし、前記第2直線が当該最大累積度数において当該累積ヒストグラムに接した第2点の画素値を前記第2画素値とすることと等価な処理を実行し、
前記第3取得部は、
前記第1点と前記第2点とを結んだ直線と同じ傾きをもつ第3直線が前記範囲内で当該累積ヒストグラムに接した第3点の画素値を前記第3画素値とすることと等価な処理を実行する、
X線診断装置。
【請求項14】
医用画像における画素値の累積ヒストグラムを取得する第1取得部と、
前記累積ヒストグラムに基づいて、前記医用画像における被検体領域と直接線領域との境界を規定する値を検出する検出部と
を備え、
前記検出部は、
前記累積ヒストグラムに基づいて、前記被検体領域のX線の最小線量に対応する第1画素値と、前記直接線領域のX線の最大線量に対応する第2画素値とを取得する第2取得部と、
前記第1画素値と前記第2画素値との間の範囲内で前記直接線領域のX線の最小線量に対応する第3画素値を取得することにより、前記第3画素値である前記値を検出する第3取得部と、
を備え、
前記第2取得部は、前記累積ヒストグラムを減算により変形させ、この減算結果の累積ヒストグラムの最小値を示す点の画素値を前記第1画素値とし、前記減算結果の累積ヒストグラムの最大値を示す点の画素値を前記第2画素値とすることと等価な処理を実行し、
前記第3取得部は、少なくとも前記範囲内で前記累積ヒストグラムを減算により変形させ、この減算結果の累積ヒストグラムの最小値を示す点の画素値を前記第3画素値とすることと等価な処理を実行する、
X線診断装置。
【請求項15】
前記第2取得部は、前記累積ヒストグラムから右上がりの直線を減算することで、前記累積ヒストグラムの最小累積度数及び最大累積度数の各々を示す2つの水平線が、それぞれ右下がりの直線となるように当該累積ヒストグラムを変形させる、
請求項14に記載のX線診断装置。
【請求項16】
前記第3取得部は、前記範囲内での減算結果の累積ヒストグラムの最小値を示す点の画素値が前記境界を規定する値から外れない範囲の傾きであって(前記累積ヒストグラムの最大累積度数/(前記第2画素値-前記第1画素値))以上の前記傾きをもつ直線を前記累積ヒストグラムから減算することで、当該累積ヒストグラムを変形させる、
請求項14又は15に記載のX線診断装置。
【請求項17】
医用画像における画素値の累積ヒストグラムを取得する第1取得部と、
前記累積ヒストグラムに基づいて、前記医用画像における被検体領域と直接線領域との境界を規定する値を検出する検出部と
を備え、
前記検出部は、
前記累積ヒストグラムに基づいて、前記被検体領域のX線の最小線量に対応する第1画素値と、前記直接線領域のX線の最大線量に対応する第2画素値とを取得する第2取得部と、
前記第1画素値と前記第2画素値との間の範囲内で前記直接線領域のX線の最小線量に対応する第3画素値を取得することにより、前記第3画素値である前記値を検出する第3取得部と、
を備え、
前記第2取得部は、
前記累積ヒストグラムの最小累積度数を示す点と最大累積度数を示す点とを結んだ第1直線の傾きに基づいた第2直線を当該累積ヒストグラムから減算し、この減算結果の累積ヒストグラムの最小値を示す点の画素値を前記第1画素値とし、前記減算結果の累積ヒストグラムの最大値を示す点の画素値を前記第2画素値とすることと等価な処理を実行し、
前記第3取得部は、
前記累積ヒストグラム内で前記第1画素値を示す第1点と前記第2画素値を示す第2点とを結ぶ直線の傾きをもつ第3直線を求め、少なくとも前記範囲内で当該第3直線を当該累積ヒストグラムから減算し、この減算結果の累積ヒストグラムの最小値を示す点の画素値を前記第3画素値とすることと等価な処理を実行する、
X線診断装置。
【請求項18】
前記累積ヒストグラムの最小累積度数を示す点は、前記累積ヒストグラムの始点であり、前記累積ヒストグラムの最大累積度数を示す点は、前記累積ヒストグラムの終点である、請求項
13又は
17記載のX線診断装置。
【請求項19】
前記第2直線の傾きは、1以下で0より大きい値である、請求項
13、17、18のいずれか一項に記載のX線診断装置。
【請求項20】
前記被検体領域のX線の最小線量に
対応する第1画素値は、前記被検体領域の最小画素値であり、
前記直接線領域のX線の最大線量に
対応する第2画素値は、前記直接線領域の最大画素値であり、
前記直接線領域のX線の最小線量に
対応する第3画素値は、前記直接線領域の最小画素値である、請求項
11乃至
19のいずれか一項に記載のX線診断装置。
【請求項21】
医用画像における画素値の累積ヒストグラムを取得
する第1取得工程と、
前記累積ヒストグラムに基づいて、前記医用画像における被検体領域と直接線領域との境界を規定する値を検出する
検出工程と、
を備え、
前記検出工程は、
前記累積ヒストグラムに基づいて、前記被検体領域のX線の最小線量に対応する第1画素値と、前記直接線領域のX線の最大線量に対応する第2画素値とを取得する第2取得工程と、
前記第1画素値と前記第2画素値との間の範囲内で前記直接線領域のX線の最小線量に対応する第3画素値を取得することにより、前記第3画素値である前記値を検出する第3取得工程と、
を備え、
前記第2取得工程は、同一又は別々の傾きをもつ右上がりの複数の直線がそれぞれ前記累積ヒストグラムに接する点を得ることにより、前記第1画素値及び前記第2画素値を取得することと等価な処理を実行し、
前記第3取得工程は、前記範囲内で右上がりの直線が前記累積ヒストグラムに接する点を得ることにより、前記第3画素値を取得することと等価な処理を実行する、
医用画像処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書及び図面に開示の実施形態は、医用画像処理装置、X線診断装置及び医用画像処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
X線診断装置により得られる医用画像は、被検体を透過したX線による被検体領域と、被検体を透過しないX線(直接線)による直接線領域とを含む場合がある。この場合、医用画像は、保存時の画像の容量が大きいことと、ネガポジ反転後に直接線領域が真っ白でまぶしくなること、といった不都合がある。
【0003】
従って、この種の医用画像は、直接線領域を除去してから保存するためにトリミングが施されることが好ましい。なお、トリミングの座標は、直接線領域の境界を規定する値(例、直接線領域の最小画素値)に基づいて決定される。直接線領域の境界を規定する値は、医用画像のヒストグラムの幅やヒストグラムのスムージング回数といった、経験に基づくパラメータを用いて取得可能である。しかしながら、経験に基づく想定から外れた医用画像については、直接線領域の境界を規定する値を取得できない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本明細書及び図面に開示の実施形態が解決しようとする課題の一つは、想定から外れた医用画像でも、直接線領域の境界を規定する値を取得可能とすることである。ただし、本明細書及び図面に開示の実施形態により解決しようとする課題は上記課題に限られない。後述する実施形態に示す各構成による各効果に対応する課題を他の課題として位置づけることもできる。
【課題を解決するための手段】
【0006】
実施形態に係る医用画像処理装置は、第1取得部と、検出部とを備える。前記第1取得部は、医用画像における画素値の累積ヒストグラムを取得する。前記検出部は、前記累積ヒストグラムに基づいて、前記医用画像における被検体領域と直接線領域との境界を規定する値を検出する。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】
図1は、第1の実施形態に係る医用画像処理装置の構成を示すブロック図である。
【
図2】
図2は、第1の実施形態におけるヒストグラムの一例を示す図である。
【
図3】
図3は、第1の実施形態における累積ヒストグラムの一例を示す図である。
【
図4】
図4は、第1の実施形態における被検体領域と直接線領域との境界を規定する値を説明するための図である。
【
図5】
図5は、第1の実施形態における検出機能、第2取得機能及び第3取得機能を説明するための図である。
【
図6】
図6は、第1の実施形態における動作例を説明するためのフローチャートである。
【
図7】
図7は、第2の実施形態における動作例を説明するためのフローチャートである。
【
図8】
図8は、第2の実施形態におけるヒストグラムの一例を示す図である。
【
図9】
図9は、第2の実施形態における累積ヒストグラムの一例を示す図である。
【
図10】
図10は、第2の実施形態における第1直線及び第2直線を説明するための図である。
【
図11】
図11は、第2の実施形態における第2直線が減算された累積ヒストグラムの一例を示す図である。
【
図12】
図12は、第2の実施形態における第3直線を説明するための図である。
【
図13】
図13は、第2の実施形態における第3直線が減算された累積ヒストグラムの一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、図面を参照して各実施形態について説明する。
【0009】
<第1の実施形態>
図1は、第1の実施形態に係る医用画像処理装置1の構成を示すブロック図である。
図1に示す医用画像処理装置1は、X線診断装置2において撮像された医用画像をネットワークNW等を介して取得し、取得した医用画像に対して所定の画像処理を施すためのコンピュータ、あるいはワークステーションである。医用画像処理装置1は、通信インタフェース3を介して、X線診断装置2から医用画像を取得する。以下、X線診断装置2としては、マンモグラフィ装置を用いた場合を例に挙げて説明する。但し、X線診断装置は、マンモグラフィ装置に限定されず、一般X線撮影システム、X線アンギオグラフィ装置、X線TV装置及び回診用X線装置等の如き、任意のX線診断装置に適用可能となっている。
【0010】
図1に示す医用画像処理装置1は、通信インタフェース3と、メモリ4と、入力インタフェース5と、ディスプレイ6と、制御回路7と、処理回路8とを備える。
【0011】
通信インタフェース3は、有線あるいは無線にて外部装置と通信するための回路である。外部装置は、例えば、X線診断装置2、放射線部門情報管理システム(RIS:Radiological Information System)、病院情報システム(HIS:Hospital Information System)およびPACS(Picture Archiving and Communication System)等のシステムに含まれるサーバ、あるいは他のワークステーション等である。以下の説明では、医用画像処理装置1及びX線診断装置2の間の通信に通信インタフェース3が介在する旨の記載を省略する。
【0012】
メモリ4は、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、HDD(Hardware Disk Drive)及び画像メモリなど電気的情報を記録するメモリと、それらメモリに付随するメモリコントローラやメモリインタフェースなどの周辺回路から構成されている。メモリ4は、X線診断装置2により撮影された乳房に関する医用画像を記憶する。医用画像の各画素は、検出されたX線の強度又は線量に応じた画素値を有する。例えば、被検体領域と直接線領域との境界を規定する値より高い画素値を有する画素は空間等の直接線領域を表し、当該規定する値以下の画素値を有する画素は乳房領域等の被検体領域あるいはノイズ等を表す。なお、「被検体」及び「被検体領域」は、それぞれ「被写体」及び「被写体領域」と呼んでもよい。また例えば、メモリ4は、当該医用画像から取得されたヒストグラム、累積ヒストグラム、処理途中のデータ、処理結果のデータ、トリミングされた医用画像などといった各種データを記憶する。
【0013】
入力インタフェース5は、操作者からの各種指示・命令・情報・選択・設定を入力するためのトラックボール、スイッチボタン、マウス、キーボード、操作面へ触れることで入力操作を行うタッチパッド、および表示画面とタッチパッドとが一体化されたタッチパネルディスプレイ等によって実現される。入力インタフェース5は、制御回路7等に接続されており、操作者から受け取った入力操作を電気信号へ変換し制御回路7へ出力する。なお、入力インタフェース5は、トラックボール、スイッチボタン、マウス、キーボード等の物理的な操作部品を備えるものだけに限られない。例えば、装置とは別体に設けられた外部の入力機器から入力操作に対応する電気信号を受け取り、この電気信号を制御回路7へ出力する電気信号の処理回路も入力インタフェース5の例に含まれる。
【0014】
ディスプレイ6は、医用画像などを表示するディスプレイ本体と、ディスプレイ本体に表示用の信号を供給する内部回路、ディスプレイ本体と内部回路とをつなぐコネクタやケーブルなどの周辺回路から構成されている。ディスプレイ6は、制御回路7及び処理回路8による制御に従い種々のデータおよび上記医用画像等を表示する。ディスプレイ6としては、例えば、CRTディスプレイ(Cathode Ray Tube Display)、液晶ディスプレイ(LCD:Liquid Crystal Display)、有機ELディスプレイ(OELD:Organic Electro Luminescence Display)、プラズマディスプレイまたは当技術分野で知られている他の任意のディスプレイが適宜利用可能である。
【0015】
制御回路7は、ハードウェア資源として、CPU(Central Processing Unit)やMPU(Micro Processing Unit)等の所定のプロセッサと、ROM(Read Only Memory)やRAM(Random Access Memory)等の所定のメモリとを含む。制御回路7のプロセッサは、メモリに記憶される制御プログラムにより、医用画像処理装置1における各構成の動作および処理等を統括的に制御する。
【0016】
処理回路8は、メモリ4に記憶された医用画像に対して所定の画像処理を施すための回路である。処理回路8は、ハードウェア資源として、CPUやMPU等の所定のプロセッサと、ROMやRAM等の所定のメモリとを含む。処理回路8のメモリは、第1取得プログラム、検出プログラム、トリミングプログラム及び表示制御プログラム等を記憶する。当該各プログラムは、処理回路8のプロセッサにより実行され、第1取得機能80、検出機能81、トリミング機能84、表示制御機能85を処理回路8に実現させる。なお、各プログラムは、適宜、編集してもよい。例えば、検出プログラムを、第2取得プログラム及び第3取得プログラムに分割してもよい。この場合、第2取得プログラム及び第3取得プログラムは、処理回路8のプロセッサにより実行され、第2取得機能82、第3取得機能83を処理回路8に実現させる。また、第1取得プログラム及び検出プログラムを一括して画像処理プログラムとしてもよい。あるいは、第1取得プログラム、検出プログラム及びトリミングプログラムを一括して画像処理プログラムとしてもよい。また、プログラムの名称は、適宜,変更可能である。例えば、第1取得プログラムは、ヒストグラム処理プログラムと呼んでもよい。これに伴い、第1取得機能は、ヒストグラム処理機能と呼んでもよい。すなわち、プログラム及び機能の区分けや名称は、便宜的なものであり、適宜、変更してもよい。
【0017】
処理回路8のプロセッサは、メモリに記憶される第1取得プログラムを実行することにより、第1取得機能80を実現する。処理回路8は、第1取得機能80を実現することで、医用画像における画素値の累積ヒストグラムを取得する。例えば、処理回路8は、
図2及び
図3に示すように、医用画像からヒストグラムを取得し、当該ヒストグラムから累積ヒストグラムを取得する。なお、
図2のヒストグラムの横軸は画素値であり、縦軸は度数(画素数)である。
図3の累積ヒストグラムの横軸は画素値であり、縦軸は累積度数(累積した画素数)である。ここで、医用画像の各画素は、検出されたX線の強度又は線量に応じた画素値を有する。例えば、被検体領域と直接線領域との境界を規定する値より高い画素値を有する画素は空間等の直接線領域を表し、当該規定する値以下の画素値を有する画素は乳房領域等の被検体領域あるいはノイズ等を表す。
図2のヒストグラム中、被検体領域は左側の山形分布に対応し、直接線領域は右側の高い山形分布に対応する。
図3の累積ヒストグラム中の最小累積度数と最大累積度数との間において、被検体領域は左側の飽和曲線に対応し、直接線領域は右側の急峻な立上り線に対応する。処理回路8及び第1取得機能80は、第1取得部の一例である。
【0018】
処理回路8のプロセッサは、メモリに記憶される検出プログラムを実行することにより、検出機能81を実現する。処理回路8は、検出機能81を実現することで、累積ヒストグラムに基づいて、医用画像における被検体領域と直接線領域との境界を規定する値を検出する。例えば
図4に示す累積ヒストグラムL_hにおいて、累積度数が立ち上がる点を示す第1画素値b-minと、累積度数が飽和する点を示す第2画素値di-maxとの間で屈曲した点を示す第3画素値di-minが、当該境界を規定する値となっている。なお、第1画素値b-min以上、第3画素値di-min未満の領域が被検体領域である。また、第3画素値di-min以上、第2画素値di-max以下の領域が直接線領域である。なお、前述した通り、検出プログラムは、第2取得プログラム及び第3取得プログラムを含んでもよく、検出機能81は、第2取得機能82及び第3取得機能83を含んでもよい。処理回路8及び検出機能81は、検出部の一例である。処理回路8及び第2取得機能82は、第2取得部の一例である。処理回路8及び第3取得機能83は、第3取得部の一例である。
【0019】
処理回路8のプロセッサは、例えば、検出プログラムに含まれる第2取得プログラムを実行することにより、第2取得機能82を実現する。処理回路8は、第2取得機能82を実現することで、累積ヒストグラムに基づいて、被検体領域のX線の最小線量に基づく第1画素値b-minと、直接線領域のX線の最大線量に基づく第2画素値di-maxとを取得する。例えば
図5中、処理回路8は、累積ヒストグラムL_hの最小累積度数を示す点と最大累積度数を示す点とを結んだ第1直線の傾きに基づいた第2直線L1が当該最小累積度数において当該累積ヒストグラムL_hに接した第1点h1の画素値を第1画素値b-minとすることと等価な処理を実行してもよい。ここで、累積ヒストグラムL_hの最小累積度数を示す点は、累積ヒストグラムL_hの始点であってもよい。累積ヒストグラムL_hの最大累積度数を示す点は、累積ヒストグラムL_hの終点であってもよい。また、処理回路8は、第2直線L2が当該最大累積度数において当該累積ヒストグラムL_hに接した第2点h2の画素値を第2画素値di-maxとすることと等価な処理を実行してもよい。
図5中、第2直線L1,L2は、互いに異なる切片と同一の傾きとをもつ直線(一次関数の直線)である。第2直線L1,L2の傾きは、第1直線の傾きよりも小さい傾きとしてもよい。第2直線L1,L2の傾きは、1以下で0より大きい値であってもよい。
【0020】
処理回路8のプロセッサは、検出プログラムに含まれる第3取得プログラムを実行することにより、第3取得機能83を実現する。処理回路8は、第3取得機能83を実現することで、第1画素値b-minと第2画素値di-maxとの間の範囲内で直接線領域のX線の最小線量に基づく第3画素値di-minを取得することにより、第3画素値di-minである当該値(被検体領域と直接線領域と境界を規定する値)を検出する。例えば
図5中、処理回路8は、第1点h1と第2点h2とを結んだ直線と同じ傾きをもつ第3直線L3が当該範囲内で当該累積ヒストグラムL_hに接した第3点h3の画素値を第3画素値di-minとすることと等価な処理を実行してもよい。なお、第1の実施形態中、等価な処理としては、累積ヒストグラムL_hを変形させずに、複数の直線が累積ヒストグラムL_hに接する点を得ることにより、第1画素値b-min、第2画素値di-max及び第3画素値di-minを取得する処理であれば、数学的に等価な処理でもよく、情報処理的に等価な処理でもよい。例えば、等価な処理としては、画面上で第2直線L1,L2をスライドさせて累積ヒストグラムL_hに接触させる処理を用いてもよい。同様に、等価な処理としては、第1画素値b-minと第2画素値di-maxとの間の範囲において、画面上で第3直線L3をスライドさせて累積ヒストグラムL_hに接触させる処理を用いてもよい。あるいは、等価な処理としては、傾きと切片とをもつ直線の式に基づいて、当該直線と累積ヒストグラムとが共有する一点を求める処理を用いてもよい。なお、直線と累積ヒストグラムとが一点を共有する状態と、直線が累積ヒストグラムに接している状態とは等価である。従って、等価な処理としては、例えば、負側の切片をもつ第2直線L1と累積ヒストグラムL_hとが一点を共有するときの当該一点(第1点h1)が示す画素値を第1画素値b-minとする処理を用いてもよい。同様に、等価な処理としては、正側の切片をもつ第2直線L2と累積ヒストグラムL_hとが一点を共有するときの当該一点(第2点h2)が示す画素値を第2画素値Di-maxとする処理を用いてもよい。また同様に、等価な処理としては、第1画素値b-minと第2画素値di-maxとの間の範囲において、負側の切片をもつ第3直線L3と累積ヒストグラムL_hとが一点を共有するときの当該一点(第3点h3)が示す画素値を第3画素値Di-minとする処理を用いてもよい。
【0021】
処理回路8のプロセッサは、メモリに記憶されるトリミングプログラムを実行することにより、トリミング機能84を実現する。処理回路8は、トリミング機能84を実現することで、当該検出された値に基づいて医用画像から直接線領域を削除し、残りの被検体領域を含む医用画像をメモリ4に保存する。
【0022】
処理回路8のプロセッサは、メモリに記憶される表示制御プログラムを実行することにより、表示制御機能85を実現する。処理回路8は、表示制御機能85を実現することで、医用画像などを表示するようにディスプレイ6を制御する。
【0023】
次に、以上のように構成された医用画像処理装置1の処理回路8による医用画像処理方法について
図6のフローチャートを用いて説明する。なお、処理回路8は、ステップST10~ST40の各々において、処理途中のデータや処理結果のデータをディスプレイ6に表示してもよい。
【0024】
ステップST10において、処理回路8は、メモリ4内の医用画像からヒストグラムを取得する。
【0025】
ステップST20において、処理回路8は、ステップST10で取得したヒストグラムから累積ヒストグラムを取得する。
【0026】
ステップST30~ST40において、処理回路8は、累積ヒストグラムに基づいて、医用画像における被検体領域と直接線領域との境界を規定する値を検出する。
【0027】
始めに、ステップST30において、処理回路8は、被検体領域のX線の最小線量に基づく第1画素値b-minと、直接線領域のX線の最大線量に基づく第2画素値di-maxとを取得する。例えば、
図5中、処理回路8は、累積ヒストグラムL_hの最小累積度数を示す点と最大累積度数を示す点とを結んだ第1直線の傾きに基づいた第2直線L1が当該最小累積度数において当該累積ヒストグラムL_hに接した第1点h1の画素値を第1画素値b-minとすることと等価な処理を実行し、第1画素値b-minを取得する。第1画素値b-minは、被検体領域の最小画素値であってもよい。
【0028】
また、処理回路8は、第2直線L2が当該最大累積度数において当該累積ヒストグラムL_hに接した第2点h2の画素値を第2画素値di-maxとすることと等価な処理を実行し、第2画素値di-maxを取得する。第2画素値di-maxは、直接線領域の最大画素値であってもよい。なお、第1画素値b-minと、第2画素値di-maxとは、いずれを先に取得してもよい。
【0029】
続いて、ステップST40において、処理回路8は、第1画素値b-minと第2画素値di-maxとの間の範囲内で直接線領域のX線の最小線量に基づく第3画素値di-minを取得することにより、第3画素値di-minである当該値(被検体領域と直接線領域と境界を規定する値)を検出する。例えば、
図5中、処理回路8は、第1点h1と第2点h2とを結んだ直線と同じ傾きをもつ第3直線L3が当該範囲内で当該累積ヒストグラムL_hに接した第3点h3の画素値を第3画素値di-minとすることと等価な処理を実行し、第3画素値di-minを取得する。第3画素値di-minは、直接線領域の最小画素値であってもよい。
【0030】
以上のステップST10~ST40により、想定から外れた医用画像でも、直接線領域の境界を規定する値を取得可能とすることができる。
【0031】
以下、処理回路8は、当該検出された値に基づいて医用画像から直接線領域を削除し、残りの被検体領域を含む医用画像をメモリ4に保存する。
【0032】
上述したように第1の実施形態によれば、医用画像における画素値の累積ヒストグラムを取得し、累積ヒストグラムに基づいて、医用画像における被検体領域と直接線領域との境界を規定する値を検出する。これにより、想定から外れた医用画像でも、直接線領域の境界を規定する値を取得可能とすることができる。
【0033】
補足すると、想定から外れた医用画像からヒストグラムを作成した際には、例えば、ギザギザの激しい山形分布が通常よりシフトしたヒストグラムとなり、ヒストグラムの幅やスムージング回数といったパラメータが不適切な値になる場合がある。この場合、直接線領域の境界を規定する値が被検体領域の途中の値、又は直接線領域の途中の値となり、トリミングによって、被検体領域又は直接線領域が途中から除去される可能性がある。
【0034】
これに対し、第1の実施形態によれば、累積ヒストグラムを用いている。累積ヒストグラムが示す累積度数は、画素値の増加に従い、一定の値か、又は増加した値をとる。すなわち、累積ヒストグラムは、想定から外れた医用画像から取得されても、ヒストグラムとは異なり、ギザギザの激しい山形分布にはならず、形状が概ね安定している。例えば、累積ヒストグラムは、想定から外れた医用画像から取得されても、最小累積度数と最大累積度数との間で、左側に飽和曲線状の被検体領域を有し、右側に急峻な立上り線状の直接線領域を有するといったように、概ね安定した形状となる。第1の実施形態は、このような累積ヒストグラムに基づいて、被検体領域と直接線領域との境界を規定する値を検出するようにしたので、想定から外れた医用画像でも、直接線領域の境界を規定する値を取得可能とすることができる。
【0035】
また、第1の実施形態によれば、直接線領域の境界を規定する値を検出した後、当該検出した値に基づくトリミングを行うことにより、直接線領域を除去した状態で医用画像を保存できる。このため、直接線領域に起因した画像容量の増大やネガポジ反転後の眩しさといった不都合を解消することができる。
【0036】
また、第1の実施形態によれば、累積ヒストグラムに基づいて、被検体領域のX線の最小線量に基づく第1画素値と、直接線領域のX線の最大線量に基づく第2画素値とを取得してもよい。また、第1画素値と第2画素値との間の範囲内で直接線領域のX線の最小線量に基づく第3画素値を取得することにより、第3画素値である当該値(直接線領域の境界を規定する値)を検出してもよい。この場合、比較的、取得し易い第1画素値及び第2画素値を取得した後、第1画素値及び第2画素値の間の範囲内で第3画素値を取得するので、比較的容易な処理で実現することができる。
【0037】
また、第1の実施形態によれば、累積ヒストグラムの最小累積度数を示す点と最大累積度数を示す点とを結んだ第1直線の傾きに基づいた第2直線が当該最小累積度数において当該累積ヒストグラムに接した第1点の画素値を第1画素値とすることと等価な処理を実行してもよい。また、当該第2直線が当該最大累積度数において当該累積ヒストグラムに接した第2点の画素値を第2画素値とすることと等価な処理を実行してもよい。また、第1点と第2点とを結んだ直線と同じ傾きをもつ第3直線が当該範囲内で当該累積ヒストグラムに接した第3点の画素値を当該第3画素値とすることと等価な処理を実行してもよい。この場合、累積ヒストグラムの形状を変えずに、右上がりの複数の直線を累積ヒストグラムに接触させる処理により、第1画素値、第2画素値及び第3画素を取得するので、比較的容易な処理で実現することができる。
【0038】
また、第1の実施形態によれば、累積ヒストグラムの最小累積度数を示す点は、累積ヒストグラムの始点であってもよい。累積ヒストグラムの最大累積度数を示す点は、累積ヒストグラムの終点であってもよい。この場合、累積ヒストグラムから自動的に第1直線を得ることができるので、処理効率の向上を期待することができる。
【0039】
また、第1の実施形態によれば、第2直線の傾きは、1以下で0より大きい値である、としてもよい。この場合、過大な傾きの第2直線を用いず、適切な傾きの第2直線を使用するので、第1画素値を取得する際に、第3画素値を取得してしまう誤動作を防止することができる。
【0040】
また、第1の実施形態によれば、被検体領域のX線の最小線量に基づく第1画素値は、被検体領域の最小画素値としてもよい。直接線領域のX線の最大線量に基づく第2画素値は、直接線領域の最大画素値としてもよい。直接線領域のX線の最小線量に基づく第3画素値は、直接線領域の最小画素値としてもよい。この場合、X線の最小線量に基づく画素値が最小画素値であり、X線の最大線量に基づく画素値が最大画素値であるので、線量と画素値とを明確に対応づけることができる。
【0041】
なお、上記実施形態では、被検体領域と直接線領域との境界を規定する値として、直接線領域のX線の最小線量に基づく第3画素値を用いたが、これに限定されない。例えば、被検体領域と直接線領域との境界を規定する値として、被検体領域のX線の最大線量に基づく画素値を用いてもよい。すなわち、境界を規定する値としては、例えば、直接線領域の最小画素値(又は略最小画素値)と、被検体領域の最大画素値(又は略最大画素値)とのいずれを用いてもよい。
【0042】
また、上記実施形態では、累積ヒストグラム上で同一の傾きをもつ第2直線をそれぞれ最小累積度数と最大累積度数とに接触させることと等価な処理を実行することで第1画素値及び第2画素値を取得したが、これに限定されない。例えば、別々の傾きをもつ複数の直線をそれぞれ最小累積度数と最大累積度数とに接触させることと等価な処理を実行することで第1画素値及び第2画素値を取得してもよい。
【0043】
また、上記実施形態において、X線診断装置2の一例として、マンモグラフィ装置を例に挙げて説明したが、実施形態はこれに限定されない。例えば、X線診断装置2は、一般X線撮影システム、X線アンギオグラフィ装置、X線TV装置及び回診用X線装置等のモダリティに適用可能である。
【0044】
また、本実施形態において、医用画像処理装置1とX線診断装置2とは別体で設けられているが、本実施形態はこれに限定されない。例えば、医用画像処理装置1の処理回路8をX線診断装置2に備えていてもよい。
【0045】
<第2の実施形態>
次に、第2の実施形態について説明するが、前述した構成要素と同一部分には同一符号を付してその詳しい説明を省略し、ここでは、主に、異なる部分について述べる。
【0046】
第2の実施形態は、第1の実施形態の変形例であり、累積ヒストグラムに演算を施す処理を用いて、第1画素値、第2画素値及び第3画素値を取得する形態である。これに伴い、処理回路8の第2取得機能82及び第3取得機能83が変形されている。
【0047】
すなわち、処理回路8は、第2取得機能82を実行することで、累積ヒストグラムの最小累積度数を示す点と最大累積度数を示す点とを結んだ第1直線の傾きに基づいた第2直線を当該累積ヒストグラムから減算し、この減算結果の累積ヒストグラムの最小値を示す点の画素値を第1画素値とし、減算結果の累積ヒストグラムの最大値を示す点の画素値を第2画素値とすることと等価な処理を実行する。
【0048】
処理回路8は、第3取得機能83を実行することで、累積ヒストグラム内で第1画素値を示す第1点と第2画素値を示す第2点とを結ぶ直線の傾きをもつ第3直線を求め、少なくとも第1画素値と第2画素値との間の範囲内で当該第3直線を当該累積ヒストグラムから減算し、この減算結果の累積ヒストグラムの最小値を示す点の画素値を第3画素値とすることと等価な処理を実行する。なお、第2の実施形態中、等価な処理としては、演算により変形させた累積ヒストグラムの最大値、最小値(又は極大値、極小値)を得ることにより、第1画素値b-min、第2画素値di-max及び第3画素値di-minを取得する処理であれば、数学的に等価な処理でもよく、情報処理的に等価な処理でもよい。
【0049】
他の構成は、第1の実施形態と同様である。
【0050】
次に、以上のように構成された医用画像処理装置の処理回路による医用画像処理方法について
図6及び
図7のフローチャート並びに
図8乃至
図13の模式図を用いて説明する。なお、前述同様に、処理回路8は、
図6及び
図7の各ステップにおいて、処理途中のデータや処理結果のデータをディスプレイ6に表示してもよい。
【0051】
ステップST10において、処理回路8は、
図8に示すように、メモリ4内の医用画像からヒストグラムを取得する。本実施形態のヒストグラムは、様々な例を示す観点から、
図2に示したものとは異なるものとした。
【0052】
ステップST20において、処理回路8は、
図9に示すように、ステップST10で取得したヒストグラムから累積ヒストグラムを取得する。
【0053】
ステップST30~ST40において、処理回路8は、医用画像における被検体領域と直接線領域との境界を規定する値を検出する。
【0054】
詳しくは、ステップST30において、処理回路8は、累積ヒストグラムの最小累積度数を示す点と最大累積度数を示す点とを結んだ第1直線の傾きに基づいた第2直線を当該累積ヒストグラムから減算し、この減算結果の累積ヒストグラムの最小値を示す点の画素値を第1画素値とし、当該減算結果の累積ヒストグラムの最大値を示す点の画素値を第2画素値とすることと等価な処理を実行する。
【0055】
また、ステップST40において、処理回路8は、累積ヒストグラム内で第1画素値を示す第1点と第2画素値を示す第2点とを結ぶ直線の傾きをもつ第3直線を求め、当該第3直線を当該累積ヒストグラムから減算し、この減算結果の累積ヒストグラムの最小値を示す点の画素値を第3画素値とすることと等価な処理を実行する。なお、第3直線の減算は、少なくとも第1画素値と第2画素値との間の範囲内で行えばよい。
【0056】
このようなステップST30は、
図7中、ステップST31~ST34からなり、ステップST40は、ステップST41~ST44からなる。以下、順に説明する。
【0057】
始めに、ステップST31において、処理回路8は、
図10に示すように、累積ヒストグラムL_hの最小累積度数を示す点と最大累積度数を示す点とを結んだ第1直線Laを求める。なお、
図10中、累積ヒストグラムL_hの最小累積度数を示す点は、累積ヒストグラムL_hの始点であり、累積ヒストグラムL_hの最大累積度数を示す点は、累積ヒストグラムL_hの終点である。但し、最小累積度数を示す点と最大累積度数を示す点は、始点及び終点の例に限定されない。すなわち、最小累積度数を示す点としては、始点と、後述する第1画素値b-minとの間の任意の点が、適宜、使用可能となっている。同様に、最大累積度数を示す点としては、後述する第2画素値di-maxと、終点との間の任意の点が、適宜、使用可能となっている。但し、ステップST31の段階では、第1画素値b-min及び第2画素値di-maxは、不明である。このため、始点以外の点を用いる場合、例えば、操作者による入力インタフェース5の操作により、ディスプレイ6に表示された累積ヒストグラムL_h上で、最小累積度数を示す点を指定すればよい。また、終点以外の点を用いる場合には、同様にして、最大累積度数を示す点を指定すればよい。なお、最小累積度数を示す点及び最大累積度数を示す点を指定する場合、カーソル操作により指定してもよく、点を示す画素値をキー入力操作により指定してもよい。
【0058】
ステップST32において、処理回路8は、第1直線Laの傾きに基づいた第2直線Lbを求める。具体的には、第1直線Laの傾きをaとしたとき、a/10の傾きをもつ第2直線Lbをディスプレイ6に描画させる。第1直線Laが累積ヒストグラムL_hの始点及び終点を結ぶ場合、第1直線Laの傾きaは、a=最大累積度数/(最大累積度数を示す点の画素値)を計算して得られる。第1直線Laが累積ヒストグラムL_hの始点以外の点及び/又は終点以外の点を結ぶ場合、第1直線Laの傾きaは、a=最大累積度数/(最大累積度数を示す点の画素値-最小累積度数を示す点の画素値)を計算して得られる。なお、傾きa/10は一例であり、これに限定されない。例えば、第2直線Lbの傾きは、1以下で0より大きい値のうち、任意の値としてもよい。
【0059】
ステップST33において、処理回路8は、
図11に示すように、第2直線Lbを当該累積ヒストグラムL_hから減算し、この減算結果の累積ヒストグラムL_hbをディスプレイ6に描画させる。減算結果の累積ヒストグラムL_hbは、水平線だった最小累積度数の線及び最大累積度数の直線が、それぞれ(-a/10)の傾きをもつ右下がりの直線になっている。
【0060】
ステップST34において、処理回路8は、減算結果の累積ヒストグラムL_hbのうち、最小値を示す点L_hb_minの画素値を第1画素値b-minとし、最大値を示す点L_hb_minの画素値を第2画素値di-maxとする。これにより、ステップST30が終了し、ステップST40が開始される。
【0061】
続いて、ステップST41において、処理回路8は、
図12に示すように、累積ヒストグラムL_h内で第1画素値を示す第1点h1と第2画素値を示す第2点h2とを結ぶ直線Lc*を求める。
【0062】
ステップST42において、処理回路8は、直線Lc*を累積ヒストグラムL_hの原点に平行移動させ、直線Lc*の傾きをもつ第3直線Lcを求めると共に、第3直線Lcをディスプレイ6に描画させる。
【0063】
ステップST43において、処理回路8は、当該第3直線Lcを当該累積ヒストグラムL_hから減算する。なお、この例では、累積ヒストグラムL_hの始点から終点までの範囲で減算を行うが、これに限定されない。例えば、第3直線Lcの減算は、少なくとも第1画素値b-minと第2画素値di-maxとの間の範囲内で行えばよい。なお、減算を当該範囲内で行う場合、直線Lc*を第3直線とし、直線Lc*を累積ヒストグラムL_hから減算してもよい。すなわち、直線Lc*と第3直線Lcとは同じ傾きをもつため、いずれを累積ヒストグラムL_hから減算してもよい。また、第3直線Lcの傾きは、減算結果の最小値を示す点が第3画素値から外れない範囲で変更してもよい。例えば、第3直線Lcの傾きcは、c(=最大累積度数/(第2画素値-第1画素値))以上の値に変更してもよい。例えば、cの値に端数がある場合、適宜、端数を切り上げてもよい。
【0064】
ステップST44において、処理回路8は、
図13に示すように、ステップST43の減算結果の累積ヒストグラムL_hcのうち、最小値を示す点L_hc_minの画素値を第3画素値di-minとする。これにより、ステップST40が終了する。
【0065】
以上のステップST10~ST40により、想定から外れた医用画像でも、直接線領域の境界を規定する値を取得可能とすることができる。
【0066】
以下、処理回路8は、当該検出された値に基づいて医用画像から直接線領域を削除し、残りの被検体領域を含む医用画像をメモリ4に保存する。
【0067】
上述したように第2の実施形態によれば、累積ヒストグラムの最小累積度数を示す点と最大累積度数を示す点とを結んだ第1直線の傾きに基づいた第2直線を当該累積ヒストグラムから減算することと等価な処理を実行する。この減算結果の累積ヒストグラムの最小値を示す点の画素値を第1画素値とし、減算結果の累積ヒストグラムの最大値を示す点の画素値を第2画素値とすることと等価な処理を実行する。また、累積ヒストグラム内で第1画素値を示す第1点と第2画素値を示す第2点とを結ぶ直線の傾きをもつ第3直線を求め、少なくとも第1画素値と第2画素値との間の範囲内で当該第3直線を当該累積ヒストグラムから減算し、この減算結果の累積ヒストグラムの最小値を示す点の画素値を第3画素値とすることと等価な処理を実行する。
【0068】
このように、累積ヒストグラムに演算を施す処理を用いる構成に変形しても、第1の実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0069】
以上説明した少なくとも一つの実施形態によれば、想定から外れた医用画像でも、直接線領域の境界を規定する値を取得可能とすることができる。
【0070】
上記説明において用いた「プロセッサ」という文言は、例えば、CPU(central processing unit)、GPU(Graphics Processing Unit)、或いは、特定用途向け集積回路(Application Specific Integrated Circuit:ASIC)、プログラマブル論理デバイス(例えば、単純プログラマブル論理デバイス(Simple Programmable Logic Device:SPLD)、複合プログラマブル論理デバイス(Complex Programmable Logic Device:CPLD)、及びフィールドプログラマブルゲートアレイ(Field Programmable Gate Array:FPGA)等の回路を意味する。プロセッサはメモリに保存されたプログラムを読み出し実行することで機能を実現する。なお、メモリにプログラムを保存する代わりに、プロセッサの回路内にプログラムを直接組み込むよう構成しても構わない。この場合、プロセッサは回路内に組み込まれたプログラムを読み出し実行することで機能を実現する。なお、本実施形態の各プロセッサは、プロセッサごとに単一の回路として構成される場合に限らず、複数の独立した回路を組み合わせて1つのプロセッサとして構成し、その機能を実現するようにしてもよい。さらに、
図1における複数の構成要素を1つのプロセッサへ統合してその機能を実現するようにしてもよい。
【0071】
なお、本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0072】
1 医用画像処理装置
2 X線診断装置
3 通信インタフェース
4 メモリ
5 入力インタフェース
6 ディスプレイ
7 制御回路
8 処理回路
80 第1取得機能
81 検出機能
82 第2取得機能
83 第3取得機能
84 トリミング機能
85 表示制御機能
L_h、L_hb、L_hc 累積ヒストグラム
b-min 被検体領域の最小画素値
di-min 直接線領域の最小画素値
di-max 直接線領域の最大画素値
L1~L3、La~Lc、Lc* 直線
h1~h3、L_hb_min、L_hb_max、L_hc_min 点