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特許7508341蓄電池の制御装置、蓄電池の制御方法、蓄電池の制御プログラム、蓄電システム及び電池搭載機器
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-21
(45)【発行日】2024-07-01
(54)【発明の名称】蓄電池の制御装置、蓄電池の制御方法、蓄電池の制御プログラム、蓄電システム及び電池搭載機器
(51)【国際特許分類】
   H02J 7/00 20060101AFI20240624BHJP
   H01M 10/44 20060101ALI20240624BHJP
   H01M 10/48 20060101ALI20240624BHJP
【FI】
H02J7/00 302C
H01M10/44 P
H01M10/48 P
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2020186033
(22)【出願日】2020-11-06
(65)【公開番号】P2022075316
(43)【公開日】2022-05-18
【審査請求日】2023-02-17
(73)【特許権者】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(74)【代理人】
【識別番号】110003708
【氏名又は名称】弁理士法人鈴榮特許綜合事務所
(72)【発明者】
【氏名】石井 恵奈
(72)【発明者】
【氏名】砂押 貴光
(72)【発明者】
【氏名】八木 亮介
(72)【発明者】
【氏名】黒田 和人
【審査官】宮本 秀一
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-085413(JP,A)
【文献】国際公開第2015/137222(WO,A1)
【文献】特開2013-233002(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M10/42-10/48
H02J7/00-7/12
H02J7/34-7/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の電池が第1の回路に接続されるとともに、前記第1の電池より蓄電容量が大きく、かつ、前記第1の電池より許容Cレートが小さい第2の電池が第2の回路に接続される蓄電池の制御装置であって、
前記第1の電池の電圧を前記第2の電池の電圧より高く維持する状態に、前記第2の回路へ入力される電力の電圧及び前記第2の回路から出力される電力の電圧を変換するDC/DCコンバータの動作を制御するコントローラを具備し、
前記コントローラは、
前記第1の電池の開回路電圧及び内部抵抗のそれぞれについて、前記第1の電池のSOCの推定結果に対応した対応値を取得するとともに、前記第2の電池の開回路電圧について、前記第2の電池のSOCの推定結果に対応した対応値を取得し、
前記第1の電池の前記開回路電圧の前記対応値から前記第2の電池の前記開回路電圧の前記対応値を減算した減算値、及び、前記第1の電池の前記内部抵抗の前記対応値及び前記蓄電池からの出力に関する情報に基づいた基準減算値を取得し、
前記減算値が前記基準減算値より大きくなることを条件とするフィッティング計算によって、前記第1の電池からの出力値に対する前記DC/DCコンバータを通しての前記第2の電池からの出力値の比率を設定し、
設定した前記比率で前記第1の電池及び前記第2の電池から出力される状態に、前記DC/DCコンバータの前記動作を制御する、
制御装置。
【請求項2】
前記コントローラは、前記蓄電池からの前記出力に関する前記情報として、前記蓄電池からの前記出力の許容上限値、所定の期間における前記蓄電池からの前記出力の平均値、及び、前記所定の期間における前記蓄電池からの前記出力の最大値のいずれかに基づいて前記基準減算値を設定する、請求項1の制御装置。
【請求項3】
第1の電池が第1の回路に接続されるとともに、前記第1の電池より蓄電容量が大きく、かつ、前記第1の電池より許容Cレートが小さい第2の電池が第2の回路に接続される蓄電池の制御装置であって、
前記第1の電池の電圧を前記第2の電池の電圧より高く維持する状態に、前記第2の回路へ入力される電力の電圧及び前記第2の回路から出力される電力の電圧を変換するDC/DCコンバータの動作を制御するコントローラを具備し、
前記コントローラは、
前記第1の電池でのSOCに対する開回路電圧の電圧変化率について、前記第1の電池の前記SOCの推定結果に対応した対応値を取得するとともに、前記第2の電池でのSOCに対する開回路電圧の電圧変化率について、前記第2の電池の前記SOCの推定結果に対応した対応値を取得し、
前記第1の電池からの出力値に対する前記DC/DCコンバータを通しての前記第2の電池からの出力値の比率が、前記第1の電池の前記電圧変化率の前記対応値に対する前記第2の電池の前記電圧変化率の前記対応値の比率の逆数になる状態に、前記DC/DCコンバータの前記動作を制御する、
制御装置。
【請求項4】
第1の電池が第1の回路に接続されるとともに、前記第1の電池より蓄電容量が大きく、かつ、前記第1の電池より許容Cレートが小さい第2の電池が第2の回路に接続される蓄電池の制御装置であって、
前記第1の電池の電圧を前記第2の電池の電圧より高く維持する状態に、前記第2の回路へ入力される電力の電圧及び前記第2の回路から出力される電力の電圧を変換するDC/DCコンバータの動作を制御するコントローラを具備し、
前記コントローラは、
前記第2の電池の前記電圧が第1の基準電圧値より高い場合は、前記第2の電池からのみ出力させる、又は、前記第2の電池からの出力における許容上限値で前記DC/DCコンバータを通して前記第2の電池から出力させ、
前記第2の電池の前記電圧が前記第1の基準電圧値以下であり、かつ、前記第1の基準電圧値より高い第2の基準電圧値に比べて前記第1の電池の前記電圧が高い場合は、前記第1の電池からのみ出力させ、
前記第2の電池の前記電圧が前記第1の基準電圧値以下であり、かつ、前記第1の電池の前記電圧が前記第2の基準電圧値以下である場合は、前記第1の電池の前記電圧を、前記第2の電池の電圧に比べて、前記第2の基準電圧値から前記第1の基準電圧値を減算した基準減算値以上高く維持する状態に、前記DC/DCコンバータの前記動作を制御する、
制御装置。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれか1項の制御装置と、
前記第1の電池及び前記第2の電池を備え、前記制御装置によって充電及び放電が制御される前記蓄電池と、
前記第2の電池が接続される前記第2の回路へ入力される電力の電圧及び前記第2の回路から出力される電力の電圧を変換し、前記制御装置の前記コントローラによって前記動作が制御される前記DC/DCコンバータと、
を具備する蓄電システム。
【請求項6】
前記蓄電池が搭載される電池搭載機器をさらに具備する、請求項5の蓄電システム。
【請求項7】
請求項1乃至4のいずれか1項の制御装置と、
前記第1の電池及び前記第2の電池を備え、前記制御装置によって充電及び放電が制御される前記蓄電池と、
前記第2の電池が接続される前記第2の回路へ入力される電力の電圧及び前記第2の回路から出力される電力の電圧を変換し、前記制御装置の前記コントローラによって前記動作が制御される前記DC/DCコンバータと、
を具備する電池搭載機器。
【請求項8】
第1の電池が第1の回路に接続されるとともに、前記第1の電池より蓄電容量が大きく、かつ、前記第1の電池より許容Cレートが小さい第2の電池が第2の回路に接続される蓄電池の制御方法であって、
前記第1の電池の電圧を前記第2の電池の電圧より高く維持する状態に、前記第2の回路へ入力される電力の電圧及び前記第2の回路から出力される電力の電圧を変換するDC/DCコンバータの動作を制御することを具備し、
前記DC/DCコンバータの前記動作の制御において、
前記第1の電池の開回路電圧及び内部抵抗のそれぞれについて、前記第1の電池のSOCの推定結果に対応した対応値を取得するとともに、前記第2の電池の開回路電圧について、前記第2の電池のSOCの推定結果に対応した対応値を取得し、
前記第1の電池の前記開回路電圧の前記対応値から前記第2の電池の前記開回路電圧の前記対応値を減算した減算値、及び、前記第1の電池の前記内部抵抗の前記対応値及び前記蓄電池からの出力に関する情報に基づいた基準減算値を取得し、
前記減算値が前記基準減算値より大きくなることを条件とするフィッティング計算によって、前記第1の電池からの出力値に対する前記DC/DCコンバータを通しての前記第2の電池からの出力値の比率を設定し、
設定した前記比率で前記第1の電池及び前記第2の電池から出力される状態に、前記DC/DCコンバータの前記動作を制御する、
制御方法。
【請求項9】
第1の電池が第1の回路に接続されるとともに、前記第1の電池より蓄電容量が大きく、かつ、前記第1の電池より許容Cレートが小さい第2の電池が第2の回路に接続される蓄電池の制御方法であって、
前記第1の電池の電圧を前記第2の電池の電圧より高く維持する状態に、前記第2の回路へ入力される電力の電圧及び前記第2の回路から出力される電力の電圧を変換するDC/DCコンバータの動作を制御することを具備し、
前記DC/DCコンバータの前記動作の制御において、
前記第1の電池でのSOCに対する開回路電圧の電圧変化率について、前記第1の電池の前記SOCの推定結果に対応した対応値を取得するとともに、前記第2の電池でのSOCに対する開回路電圧の電圧変化率について、前記第2の電池の前記SOCの推定結果に対応した対応値を取得し、
前記第1の電池からの出力値に対する前記DC/DCコンバータを通しての前記第2の電池からの出力値の比率が、前記第1の電池の前記電圧変化率の前記対応値に対する前記第2の電池の前記電圧変化率の前記対応値の比率の逆数になる状態に、前記DC/DCコンバータの前記動作を制御する、
制御方法。
【請求項10】
第1の電池が第1の回路に接続されるとともに、前記第1の電池より蓄電容量が大きく、かつ、前記第1の電池より許容Cレートが小さい第2の電池が第2の回路に接続される蓄電池の制御方法であって、
前記第1の電池の電圧を前記第2の電池の電圧より高く維持する状態に、前記第2の回路へ入力される電力の電圧及び前記第2の回路から出力される電力の電圧を変換するDC/DCコンバータの動作を制御することを具備し、
前記DC/DCコンバータの前記動作の制御において、
前記第2の電池の前記電圧が第1の基準電圧値より高い場合は、前記第2の電池からのみ出力させる、又は、前記第2の電池からの出力における許容上限値で前記DC/DCコンバータを通して前記第2の電池から出力させ、
前記第2の電池の前記電圧が前記第1の基準電圧値以下であり、かつ、前記第1の基準電圧値より高い第2の基準電圧値に比べて前記第1の電池の前記電圧が高い場合は、前記第1の電池からのみ出力させ、
前記第2の電池の前記電圧が前記第1の基準電圧値以下であり、かつ、前記第1の電池の前記電圧が前記第2の基準電圧値以下である場合は、前記第1の電池の前記電圧を、前記第2の電池の電圧に比べて、前記第2の基準電圧値から前記第1の基準電圧値を減算した基準減算値以上高く維持する状態に、前記DC/DCコンバータの前記動作を制御する、
制御方法。
【請求項11】
第1の電池が第1の回路に接続されるとともに、前記第1の電池より蓄電容量が大きく、かつ、前記第1の電池より許容Cレートが小さい第2の電池が第2の回路に接続される蓄電池の制御プログラムであって、コンピュータに、
前記第1の電池の電圧を前記第2の電池の電圧より高く維持する状態に、前記第2の回路へ入力される電力の電圧及び前記第2の回路から出力される電力の電圧を変換するDC/DCコンバータの動作を制御させ、
前記DC/DCコンバータの前記動作の制御において、
前記第1の電池の開回路電圧及び内部抵抗のそれぞれについて、前記第1の電池のSOCの推定結果に対応した対応値を取得させるとともに、前記第2の電池の開回路電圧について、前記第2の電池のSOCの推定結果に対応した対応値を取得させ、
前記第1の電池の前記開回路電圧の前記対応値から前記第2の電池の前記開回路電圧の前記対応値を減算した減算値、及び、前記第1の電池の前記内部抵抗の前記対応値及び前記蓄電池からの出力に関する情報に基づいた基準減算値を取得させ、
前記減算値が前記基準減算値より大きくなることを条件とするフィッティング計算によって、前記第1の電池からの出力値に対する前記DC/DCコンバータを通しての前記第2の電池からの出力値の比率を設定させ、
設定した前記比率で前記第1の電池及び前記第2の電池から出力される状態に、前記DC/DCコンバータの前記動作を制御させる、
制御プログラム。
【請求項12】
第1の電池が第1の回路に接続されるとともに、前記第1の電池より蓄電容量が大きく、かつ、前記第1の電池より許容Cレートが小さい第2の電池が第2の回路に接続される蓄電池の制御プログラムであって、コンピュータに、
前記第1の電池の電圧を前記第2の電池の電圧より高く維持する状態に、前記第2の回路へ入力される電力の電圧及び前記第2の回路から出力される電力の電圧を変換するDC/DCコンバータの動作を制御させ、
前記DC/DCコンバータの前記動作の制御において、
前記第1の電池でのSOCに対する開回路電圧の電圧変化率について、前記第1の電池の前記SOCの推定結果に対応した対応値を取得させるとともに、前記第2の電池でのSOCに対する開回路電圧の電圧変化率について、前記第2の電池の前記SOCの推定結果に対応した対応値を取得させ、
前記第1の電池からの出力値に対する前記DC/DCコンバータを通しての前記第2の電池からの出力値の比率が、前記第1の電池の前記電圧変化率の前記対応値に対する前記第2の電池の前記電圧変化率の前記対応値の比率の逆数になる状態に、前記DC/DCコンバータの前記動作を制御させる、
制御プログラム。
【請求項13】
第1の電池が第1の回路に接続されるとともに、前記第1の電池より蓄電容量が大きく、かつ、前記第1の電池より許容Cレートが小さい第2の電池が第2の回路に接続される蓄電池の制御プログラムであって、コンピュータに、
前記第1の電池の電圧を前記第2の電池の電圧より高く維持する状態に、前記第2の回路へ入力される電力の電圧及び前記第2の回路から出力される電力の電圧を変換するDC/DCコンバータの動作を制御させ、
前記DC/DCコンバータの前記動作の制御において、
前記第2の電池の前記電圧が第1の基準電圧値より高い場合は、前記第2の電池からのみ出力させる、又は、前記第2の電池からの出力における許容上限値で前記DC/DCコンバータを通して前記第2の電池から出力させ、
前記第2の電池の前記電圧が前記第1の基準電圧値以下であり、かつ、前記第1の基準電圧値より高い第2の基準電圧値に比べて前記第1の電池の前記電圧が高い場合は、前記第1の電池からのみ出力させ、
前記第2の電池の前記電圧が前記第1の基準電圧値以下であり、かつ、前記第1の電池の前記電圧が前記第2の基準電圧値以下である場合は、前記第1の電池の前記電圧を、前記第2の電池の電圧に比べて、前記第2の基準電圧値から前記第1の基準電圧値を減算した基準減算値以上高く維持する状態に、前記DC/DCコンバータの前記動作を制御させる、
制御プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、蓄電池の制御装置、蓄電池の制御方法、蓄電池の制御プログラム、蓄電システム及び電池搭載機器に関する。
【背景技術】
【0002】
蓄電池は、小型の携帯機器の電源、モビリティ分野において車両に搭載される電源、及び、スマートグリッド等の送電網における定置用の電源等、幅広く用いられている。このような蓄電池は、大電流で安全に充放電可能であるとともに、大容量化されることが、求められている。
【0003】
大電流での充放電における安全性及び大容量化を両立させる観点から、第1の電池が第1の回路に接続され、第1の電池とは活物質となる材料が異なる第2の電池が第2の回路に接続される蓄電池が用いられている。このような蓄電池では、DC/DCコンバータによって、第2の回路へ入力される電力の電圧、及び、第2の回路から出力される電力の電圧を変換している。
【0004】
前述のように活物質となる材料が互いに対して異なる2種類の電池が設けられる蓄電池では、DC/DCコンバータの小型化が求められており、蓄電池からの放電等に関して、DC/DCコンバータの小型化を実現可能にする制御が行われることが求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2017-118627号公報
【文献】国際公開第2019/187132号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明が解決しようとする課題は、活物質となる材料が互いに対して異なる2種類の電池の間に設けられるDC/DCコンバータの小型化を実現可能な蓄電池の制御装置、蓄電池の制御方法及び蓄電池の制御プログラムを提供することにある。また、前述の制御装置を備える蓄電システム及び電池搭載機器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
実施形態では、第1の電池が第1の回路に接続されるとともに、第1の電池より蓄電容量が大きく、かつ、第1の電池より許容Cレートが小さい第2の電池が第2の回路に接続される蓄電池の制御装置が、提供される。制御装置は、コントローラを備え、コントローラは、第1の電池の電圧を第2の電池の電圧より高く維持する状態に、第2の回路へ入力される電力の電圧及び第2の回路から出力される電力の電圧を変換するDC/DCコンバータの動作を制御する。コントローラは、第1の電池の開回路電圧及び内部抵抗のそれぞれについて、第1の電池のSOCの推定結果に対応した対応値を取得するとともに、第2の電池の開回路電圧について、第2の電池のSOCの推定結果に対応した対応値を取得する。コントローラは、第1の電池の開回路電圧の対応値から第2の電池の開回路電圧の対応値を減算した減算値、及び、第1の電池の内部抵抗の対応値及び蓄電池からの出力に関する情報に基づいた基準減算値を取得する。コントローラは、減算値が基準減算値より大きくなることを条件とするフィッティング計算によって、第1の電池からの出力値に対するDC/DCコンバータを通しての第2の電池からの出力値の比率を設定する。コントローラは、設定した比率で第1の電池及び第2の電池から出力される状態に、DC/DCコンバータの動作を制御する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、第1の実施形態に係る蓄電システムを示す概略図である。
図2図2は、第1の実施形態に係る蓄電池からの放電において、制御装置のコントローラによって行われる処理の一例を示すフローチャートである。
図3図3は、第1の実施形態に係る蓄電池からの放電における第1の電池のSOC、及び、第2の電池のSOCのそれぞれの経時的な変化の一例を示す概略図である。
図4図4は、図3の一例の放電における第1の電池の電圧、及び、第2の電池の電圧のそれぞれの経時的な変化の一例を示す概略図である。
図5図5は、第2の実施形態に係る蓄電池からの放電において、制御装置のコントローラによって行われる処理の一例を示すフローチャートである。
図6図6は、第2の実施形態に係る制御装置のコントローラによって行われる、第1の電池の出力電流に対するDC/DCコンバータからの出力電流の比率の設定処理を示すフローチャートである。
図7図7は、第1の電池でのSOCと開回路電圧との関係、及び、第2の電池でのSOCと開回路電圧との関係の一例を示す概略図である。
図8図8は、図7の一例における、第1の電池でのSOCと開回路電圧の電圧変化率との関係、及び、第2の電池でのSOCと開回路電圧の電圧変化率との関係を示す概略図である。
図9図9は、第2の実施形態に係る制御装置のコントローラによって行われる、第1の電池の出力電流に対するDC/DCコンバータからの出力電流の比率の設定処理を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、実施形態について、図面を参照して説明する。
【0010】
(第1の実施形態)
図1は、第1の実施形態に係る蓄電システム1を示す。蓄電システム1は、蓄電池2を備える。蓄電池2は、電池搭載機器3に搭載される。電池搭載機器3としては、スマートフォン、車両、定置用電源装置、ロボット及びドローン等が挙げられ、電池搭載機器3となる車両としては、電気自動車、プラグインハイブリッド自動車及び電動バイク等が、挙げられる。また、蓄電池2が搭載されるロボットとしては、工場等で使用される無人搬送車(AGV:Automated Guided Vehicle)等の搬送ロボットが挙げられる。
【0011】
蓄電池2は、第1の電池10及び第2の電池20を備える。第1の電池10は、1つ以上の第1のセル11を備え、第2の電池20は、1つ以上の第2のセル21を備える。本実施形態では、第1の電池10は、複数の第1のセル11を備える組電池であり、第1の電池10では、複数の第1のセル11が電気的に直列に接続される。また、本実施形態では、第2の電池20は、複数の第2のセル21を備える組電池であり、第2の電池20では、複数の第2のセル21が電気的に直列に接続される。なお、第1の電池10での第1のセル11の直列数、及び、第2の電池20での第2のセル21の直列数は、互いに対して同一であってもよく、互いに対して異なってもよい。
【0012】
第2のセル21は、第1のセル11より蓄電容量が大きい。また、第2のセル21は、第1のセル11より許容Cレート(許容充電レート及び許容放電レート)が小さい。すなわち、第2のセル21は、第1のセル11よりも、単位蓄電容量当たりの許容入力、及び、単位蓄電容量当たりの許容出力のそれぞれが小さい。ここで、単位蓄電容量当たりの許容入力、及び、単位蓄電容量当たりの許容出力のそれぞれの単位は、[W/L]等で示される。第1のセル11のそれぞれは、例えば、チタン複合酸化物が負極活物質として用いられる非水電解質セルである。第2のセル21のそれぞれは、例えば、炭素質物が負極活物質として用いられる非水電解質セルである。
【0013】
第1の電池10の複数の第1のセル11のそれぞれにおいて負極活物質として用いられるチタン複合酸化物としては、単斜晶型ニオブチタン複合酸化物、直方晶型チタン含有複合酸化物、ラムスデライト構造を有するチタン酸リチウム、スピネル構造を有するチタン酸リチウム、単斜晶型二酸化チタン、アナターゼ型二酸化チタン、ルチル型二酸化チタン及びホランダイト型チタン複合酸化物等が挙げられる。
【0014】
また、複数の第1のセル11のそれぞれでは、正極活物質として、リチウム遷移金属複合酸化物を用いることができる。複数の第1のセル11のそれぞれにおいて正極活物質として用いられるリチウム遷移金属複合酸化物としては、層状構造を有するLiMeO(0<u≦1、かつ、Meは、Ni、Co及びMnからなる群より選択される1種以上)が挙げられ、例えば、リチウムニッケルコバルトマンガン複合酸化物を用いることができる。また、複数の第1のセル11のそれぞれにおいて正極活物質として用いられるリチウム遷移金属複合酸化物としては、リチウム鉄リン酸化物も挙げられる。複数の第1のセル11に用いられる負極活物質及び正極活物質としては、特許文献2(国際公開第2019/187132号)と同様の活物質を用いることができる。
【0015】
第2の電池20の複数の第2のセル21のそれぞれにおいて負極活物質として用いられる炭素質物としては、黒鉛及び非晶質炭素等が挙げられる。また、複数の第2のセル21のそれぞれでは、正極活物質として、第1のセル11の正極活物質と同様の活物質を用いることができる。
【0016】
本実施形態では、第1の電池10は、複数の第1のセル11が直列に接続されたセル群から構成される。第1の電池10では、複数の第1のセル11は、容量、サイズ及び重量等が互いに対して同一及び略同一である。また、本実施形態では、第2の電池20は、複数の第2のセル21が直列に接続されたセル群から構成される。第2の電池20では、複数の第2のセル21は、容量、サイズ及び重量等が互いに対して同一及び略同一である。
【0017】
前述のように、第2のセル21は、第1のセル11より蓄電容量が大きく、第1のセル11より許容Cレートが小さい。そして、本実施形態では、第1の電池10においては、複数の第1のセル11が電気的に直列に接続され、第2の電池20において、複数の第2のセル21が電気的に直列に接続される。このため、第2の電池20は、第1の電池より蓄電容量が大きく、第1の電池より許容Cレートが小さい。なお、ある一例では、第1の電池10が1つの第1のセル11から形成され、第2の電池20が1つの第2のセル21から形成されてもよい。この場合も、第2の電池20は、第1の電池10より蓄電容量が大きく、第1の電池10より許容Cレートが小さい。
【0018】
第1の電池10は、第1の回路13に接続される。また、第2の電池20は、第2の回路23に接続される。蓄電システム1では、第1の回路13と第2の回路23との間にDC/DCコンバータ5が設けられる。このため、第1の電池10と第2の電池20との間に、DC/DCコンバータ5が配置される。DC/DCコンバータ5には、例えば、チョッパ等が組み込まれる。DC/DCコンバータ5は、第2の回路23へ入力される電力の電圧、及び、第2の回路23から出力される電力の電圧を、変換する。
【0019】
図1等の一例では、DC/DCコンバータ5は、スイッチング素子31A,31B、PWM(pulse width modulation)回路32、コイル35及びコンデンサ36A,36Bを備える。スイッチング素子31A,31Bは、電気的に直列に接続され、スイッチング素子31Aの低電位側の端子は、スイッチング素子31Bの高電位側の端子に接続される。そして、スイッチング素子31Aの高電位側の端子は、第1の電池10の正極端子に接続され、スイッチング素子31Bの低電位側の端子は、第1の電池10の負極端子及び第2の電池20の負極端子に接続される。第2の電池20の正極端子は、コイル35を間に介して、スイッチング素子31Aの低電位側の端子とスイッチング素子31Bの高電位側の端子との間に接続される。また、コンデンサ36Aは、第1の電池10の正極端子と負極端子との間に、第1の電池10に対して電気的に並列に接続される。そして、コンデンサ36Bは、第2の電池20の正極端子と負極端子との間に、第2の電池20に対して電気的に並列に接続される。
【0020】
PWM回路32は、スイッチング素子31A,31Bのそれぞれのゲート端子へ出力される変調信号としてPWM信号を生成する。PWM回路32は、PWM信号におけるデューティ比等を調整することにより、スイッチング素子31A,31BのそれぞれのON/OFFのタイミングを調整し、スイッチング素子31A,31Bのそれぞれの動作を制御する。スイッチング素子31A,31Bのそれぞれの動作が制御されることにより、DC/DCコンバータ5の動作が制御され、DC/DCコンバータ5からの出力等が調整される。
【0021】
また、蓄電池2は、一対の外部端子7を備える。ここで、外部端子7の一方が、正極側外部端子であり、外部端子7の他方が、負極側外部端子である。蓄電池2では、外部端子7を通して、外部の充電器等から電力が入力される。また、蓄電池2では、外部端子7を通して、外部の負荷等へ電力が出力される。蓄電池2では、第1の電池10は、DC/DCコンバータ5を間に介することなく、第1の回路13を介して外部端子7に接続される。また、第2の電池20は、DC/DCコンバータ5を間に介して、外部端子7に接続される。
【0022】
蓄電池2へ入力された電力は、電圧変換されることなく、第1の電池10に入力される。そして、第1の電池10から出力された電力は、電圧変換されることなく、外部端子7から出力される。一方、蓄電池2へ入力された電力は、DC/DCコンバータ5によって電圧変換され、電圧変換された電力が、第2の電池20に入力される。そして、第2の電池20から出力された電力は、DC/DCコンバータ5によって電圧変換され、電圧変換された電力が、外部端子7から出力される。
【0023】
第2の電池20への充電においては、DC/DCコンバータ5は、外部端子7の間の電圧Vcを第2の回路23へ入力される電圧に変換する。この際、DC/DCコンバータ5の動作を制御することにより、第2の回路23へ入力される電圧が調整され、第2の電池20の電圧Vbが調整される。これにより、DC/DCコンバータ5から第2の電池20(第2の回路23)へ出力される電流が、調整される。そして、第2の電池20からの放電においては、DC/DCコンバータ5は、第2の回路23から出力される電圧を外部端子7の間の電圧Vcに変換する。この際、DC/DCコンバータ5の動作を制御することにより、第2の回路23から出力される電圧が調整され、第2の電池20の電圧Vbが調整される。これにより、第2の電池20からDC/DCコンバータ5を通して出力される電流、すなわち、DC/DCコンバータ5から外部端子7へ出力される電流Ibが調整される。
【0024】
また、蓄電システム1は、第1のスイッチ15及び第2のスイッチ25を備える。第1のスイッチ15は、外部端子7の一方である正極側外部端子と第1の電池10の正極端子との間を電気的に接続するライン上に設けられ、ON状態及びOFF状態に切替わり可能である。第1のスイッチ15がOFF状態になることにより、第1の電池10への電力の入力、及び、第1の電池10からの電力の出力が遮断される。すなわち、第1のスイッチ15がOFF状態になることにより、第1の電池10の充電及び放電が停止される。
【0025】
また、第2のスイッチ25は、DC/DCコンバータ5と第2の電池20の正極端子との間を電気的に接続するライン上に設けられ、ON状態及びOFF状態に切替わり可能である。第2のスイッチ25がOFF状態になることにより、第2の電池20への電力の入力、及び、第2の電池20からの電力の出力が遮断される。すなわち、第2のスイッチ25がOFF状態になることにより、第2の電池20の充電及び放電が停止される。また、第1の電池10及び第2の電池20の両方が充電されている状態、及び、第1の電池10及び第2の電池20の両方から放電されている状態では、スイッチ15,25の両方がON状態に切替えられる。
【0026】
電池10,20の両方が充電されている状態では、DC/DCコンバータ5の動作の制御によって、前述のようにDC/DCコンバータ5から第2の電池20への出力電流が調整され、第2の電池20への入力電流(充電電流)及び入力電力(充電電力)が調整される。これにより、蓄電池2(外部端子7)への入力電流及び第1の電池10への入力電流のそれぞれに対する第2の電池20への入力電流の比率が調整され、蓄電池2への入力電力及び第1の電池10への入力電力のそれぞれに対する第2の電池20への入力電力の比率が調整される。
【0027】
また、電池10,20の両方から放電されている状態では、DC/DCコンバータ5の動作の制御によって、前述のようにDC/DCコンバータ5から外部端子7への出力電流が調整され、DC/DCコンバータ5を通しての第2の電池20からの出力電流(放電電流)及び出力電力(放電電力)が調整される。これにより、蓄電池2(外部端子7)からの出力電流Ic及び第1の電池10からの出力電流Iaのそれぞれに対する第2の電池20(DC/DCコンバータ5)からの出力電流Ibの比率が調整され、蓄電池2からの出力電力及び第1の電池10からの出力電力のそれぞれに対する第2の電池20からの出力電力の比率が調整される。
【0028】
また、蓄電システム1には、電流検出部37,38、第1の電池監視部(第1のCMU(Cell Management Unit))17、第2の電池監視部(第2のCMU)27、及び、電池管理部(BMU(Battery Management Unit))40を備える。電流検出部37,38のそれぞれは、電流検出回路から形成される。電流検出部37は、蓄電池2の充電において、蓄電池2(外部端子7)に入力される電流を検出し、蓄電池2からの放電において、蓄電池2(外部端子7)から出力される電流Icを検出する。また、電流検出部38は、蓄電池2の充電において、外部端子7からDC/DCコンバータ5へ入力される電流を検出し、蓄電池2からの放電において、DC/DCコンバータ5から外部端子7へ出力される電流Ibを検出する。なお、蓄電池2への充電では、外部端子7から第1の電池10への入力電流と外部端子7からDC/DCコンバータ5への入力電流との合計が、蓄電池2への入力電流となる。そして、蓄電池2からの放電では、第1の電池10から外部端子7への出力電流IaとDC/DCコンバータ5から外部端子7への出力電流Ibとの合計が、蓄電池2からの出力電流Icとなる。
【0029】
電池監視部17,27及び電池管理部40のそれぞれは、プロセッサ及び記憶媒体を備える。プロセッサは、CPU(Central Processing Unit)、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)、マイコン、FPGA(Field Programmable Gate Array)及びDSP(Digital Signal Processor)等のいずれかを含む。記憶媒体には、メモリ等の主記憶装置に加え、補助記憶装置が含まれ得る。記憶媒体としては、磁気ディスク、光ディスク(CD-ROM、CD-R、DVD等)、光磁気ディスク(MO等)、及び、半導体メモリ等が挙げられる。電池監視部17,27及び電池管理部40のそれぞれでは、プロセッサ及び記憶媒体のそれぞれは、1つであってもよく、複数であってもよい。電池監視部17,27及び電池管理部40のそれぞれでは、プロセッサは、記憶媒体等に記憶されるプログラム等を実行することにより、処理を行う。
【0030】
蓄電システム1では、少なくとも電池管理部40によって、蓄電池2を制御及び管理する制御装置が構成される。このため、蓄電池2の制御装置のコントローラは、少なくとも電池管理部40のプロセッサ及び記憶媒体等を備える。制御装置によって、第1の電池10及び第2の電池20のそれぞれの充電及び放電等が制御される。図1等の一例では、蓄電池2の制御装置は、電池管理部40に加えて、第1の電池監視部17及び第2の電池監視部27等から構成される。このため、図1の一例では、電池監視部17,27及び電池管理部40のそれぞれのプロセッサ等は、蓄電池2の制御装置のコントローラによって行われる処理の一部を実施する。そして、電池監視部17,27及び電池管理部40のそれぞれの記憶媒体に、蓄電池2の制御装置のコントローラによる処理に必要なデータが、記憶される。
【0031】
また、図1の一例では、電池監視部17,27及び電池管理部40等は、電池搭載機器3に搭載され、蓄電池2の制御装置は、電池搭載機器3に搭載される処理装置等から構成される。このため、制御装置による処理は、電池搭載機器3に搭載される処理装置等によって実施される。例えば、第1の電池監視部17の処理は、第1の電池10用に設けられた処理回路によって実施され、第2の電池監視部27の処理は、第2の電池20用に設けられた処理回路によって実施される。そして、電池管理部40の処理は、蓄電池2用に設けられた制御回路によって実施される。
【0032】
なお、制御装置のコントローラによって実行されるプログラムは、インターネット等のネットワークを介してコントローラに接続されたコンピュータ(サーバ)、又は、クラウド環境のサーバ等に格納されてもよい。この場合、例えば、制御装置のコントローラは、ネットワーク経由でプログラムをダウンロードする。
【0033】
また、制御装置の少なくとも一部が、電池搭載機器3の外部の処理装置から構成されてもよい。電池搭載機器3の外部の処理装置は、例えば、電池搭載機器3の外部のサーバであり、プロセッサ及び記憶媒体を備える。電池搭載機器3の外部の処理装置が蓄電池2の制御装置の少なくとも一部を構成する場合、制御装置の処理の少なくとも一部は、電池搭載機器3の外部の処理装置のプロセッサ等によって行われ、電池搭載機器3の外部の処理装置の記憶媒体等に処理に必要なデータ等が記憶される。また、電池搭載機器3の外部の処理装置が制御装置の少なくとも一部を構成する場合、電池搭載機器3に搭載される処理装置(コンピュータ)が、電池搭載機器3の外部の処理装置と、ネットワークを介して通信可能である。
【0034】
また、蓄電池2の制御装置の少なくとも一部が、クラウド環境のクラウドサーバによって構成されてもよい。ここで、クラウド環境のインフラは、仮想CPU等の仮想プロセッサ及びクラウドメモリによって、構成される。このため、クラウドサーバが制御装置の一部を構成する場合、制御装置の処理の少なくとも一部は、仮想プロセッサによって行われ、クラウドメモリに処理に必要なデータ等が記憶される。また、クラウドサーバが制御装置の一部を構成する場合、電池搭載機器3に搭載される処理装置(コンピュータ)は、クラウドサーバと通信可能である。
【0035】
第1の電池監視部17は、第1の電池10の電圧(第1の電圧)Va、及び、第1の電池10を流れる電流を検出及び取得する(矢印A1)。このため、第1の電池10からの放電においては、第1の電池監視部17は、第1の電池10から外部端子7への出力電流Iaを検出する。第1の電池監視部17は、第1の電池10の電圧Va、及び、第1の電池10からの出力電流Ia等を、例えば所定のタイミングで、定期的に検出する。また、第1の電池監視部17は、第1の電池10の温度等を、定期的に検出してもよい。第2の電池監視部27は、第2の電池20の電圧(第2の電圧)Vbを検出及び取得する(矢印A2)。第2の電池監視部27は、第2の電池20の電圧Vb等を、例えば所定のタイミングで、定期的に検出する。また、第2の電池監視部27は、第2の電池20の温度等を、定期的に検出してもよい。
【0036】
電池管理部40は、第1の電池監視部17での第1の電池10の監視結果を取得するとともに(矢印A3)、第2の電池監視部27での第2の電池20の監視結果を取得する(矢印A4)。電池管理部40は、電池監視部17,27のそれぞれでの監視結果を、例えば所定のタイミングで、定期的に取得する。したがって、電池管理部40は、第1の電池10の電圧Va及び第2の電池20の電圧Vbを定期的に取得するとともに、第1の電池10からの放電時には、第1の電池からの出力電流Iaを定期的に取得する。また、電池管理部40は、電流検出部37での検出結果を取得するとともに(矢印A5)、電流検出部38での検出結果を取得する(矢印A6)。電池管理部40は、電流検出部37,38のそれぞれでの検出結果を、例えば所定のタイミングで、定期的に取得する。したがって、蓄電池2からの放電時等では、電池管理部40は、第2の電池20からDC/DCコンバータ5を通して出力される電流Ib、及び、蓄電池2からの出力電流Icを、定期的に取得する。なお、ある一例では、第1の電池監視部17が第1の電池10からの出力電流Iaを検出せず、電流検出部37,38と同様の電流検出部(電流検出回路)が設けられる。そして、電流検出部によって出力電流Iaが検出され、電池管理部40は、電流検出部の検出結果を取得することにより、第1の電池10からの出力電流Iaを取得する。また、別のある一例では、第1の電池10からの出力電流Iaを検出する検出回路等は設けられず、電池管理部40は、蓄電池2からの出力電流Ic及び第2の電池20からの出力電流Ibを用いて、出力電流Iaを算出する。この場合、電池管理部40は、出力電流Icから出力電流Ibを減算した減算値を、出力電流Iaとして取得する。
【0037】
また、電池管理部40は、電池搭載機器3の他の処理装置、及び、電池搭載機器3の外部の処理装置等と通信可能であってもよい。この場合、電池管理部40は、通信によって、蓄電池2の充電及び放電に関する情報を取得可能である。例えば、蓄電池2の充電時には、電池管理部40は、蓄電池2が接続される充電器の定格出力(定格出力電力)等の、充電器に関する情報を、通信によって取得する。また、蓄電池2の放電時には、蓄電池2が接続される負荷への定格入力(定格入力電力)等の、負荷に関する情報を、通信によって取得する。また、電池管理部40は、ユーザインタフェース等で入力された蓄電池2の充電及び放電に関する操作指令等を、通信によって取得してもよい。
【0038】
電池管理部40は、第1のスイッチ15の動作を制御するとともに(矢印A7)、第2のスイッチ25の動作を制御する(矢印A8)。このため、スイッチ15,25のそれぞれでは、電池管理部40によって、ON/OFFが切替えられる。また、電池管理部40は、DC/DCコンバータ5の動作に関する指令を、PWM回路32に出力する(矢印A9)。DC/DCコンバータ5では、PWM回路32が、電池管理部40からの指令に基づいて、スイッチング素子31A,31BのそれぞれへのPWM信号を生成し、スイッチング素子31A,31BのそれぞれにおけるON/OFFのタイミングを調整する。したがって、DC/DCコンバータ5の動作は、電池管理部40によって制御される。電池管理部40は、電池監視部17,27及び電流検出部37,38からの情報、及び、通信によって取得した情報に基づいて、スイッチ15,25及びDC/DCコンバータ5の動作を制御する。
【0039】
以下、本実施形態の蓄電池2の制御について説明する。以下の蓄電池2の制御は、例えば、蓄電池2の制御装置のコントローラによって行われ、図1の一例等では、少なくとも電池管理部40によって、処理の一部が行われる。
【0040】
図2は、蓄電池2からの放電において、蓄電池2の制御装置のコントローラによって行われる処理の一例を示す。図2の処理は、蓄電池2からの1回の放電において、放電開始から放電終了(充電停止)までの間に、電池管理部40を含む制御装置のコントローラによって行われる。また、蓄電池2からの放電は、第1の電池10の電圧Vaが第2の電池20の電圧Vbより高い状態で、開始されるものとする。
【0041】
図2に示すように、蓄電池2からの放電においては、電池管理部40等は、第2の電池監視部27から取得した第2の電池20の電圧Vbが、電圧基準値(第1の電圧基準値)Vbrefより高いか否か判定する(S101)。電圧Vbが電圧基準値Vbrefより高い場合は(S101-Yes)、電池管理部40等は、第2の電池20からのみ電力を出力させ、第2の電池20からのみ放電させる(S102)。この際、電池管理部40等は、第1のスイッチ15をOFF状態に切替える等して、第1の電池10からの出力を停止させ、第1の電池10からの放電を停止させる。したがって、第1の電池10からの出力電流Iaは、ゼロとなる。S102の処理を行うと、処理は、S109へ進む。
【0042】
電圧Vbが電圧基準値Vbref以下の場合は(S101-No)、電池管理部40等は、第1の電池監視部17から取得した第1の電池10の電圧Vaが、電圧基準値(第2の電圧基準値)Varefより高いか否か判定する(S103)。電圧基準値Varefは、電圧基準値Vbrefより高い。電圧Vaが電圧基準値Varefより高い場合は(S103-Yes)、電池管理部40等は、第1の電池10からのみ電力を出力させ、第1の電池10からのみ放電させる(S104)。この際、電池管理部40等は、第2のスイッチ25をOFF状態に切替える等して、第2の電池20からの出力を停止させ、第2の電池20からの放電を停止させる。したがって、DC/DCコンバータ5を通しての第2の電池20からの出力電流Ibは、ゼロとなる。S104の処理を行うと、処理は、S109へ進む。
【0043】
電圧Vaが電圧基準値Varef以下の場合は(S103-No)、電池管理部40等は、第1の電池10及び第2の電池20の両方から電力を出力させ、電池10,20の両方から放電させる(S105)。この際、スイッチ15,25の両方が、ON状態となる。そして、第1の電池10からの出力電流IaとDC/DCコンバータ5を通しての第2の電池20からの出力電流Ibとの合計が、蓄電池2からの出力電流Icとなる。
【0044】
ここで、前述の電圧基準値Varefから電圧基準値Vbrefを減算した基準減算値αrefを規定する。S105の処理を行うと、電池管理部40等は、第1の電池10の電圧Vaから第2の電池20の電圧Vbを減算した減算値αが前述の基準減算値αrefより小さいか否かを判定する(S106)。すなわち、第1の電池10の電圧Vaが第2の電池20の電圧Vbに比べて基準減算値αref以上高いか否かが、判定される。減算値αが基準減算値αrefより小さい場合は(S106-Yes)、電池管理部40等は、DC/DCコンバータ5の動作を制御することより、DC/DCコンバータ5から外部端子7への出力電流Ibを減少させる(S107)。これにより、第1の電池10からの出力電流Iaに対するDC/DCコンバータ5を通しての第2の電池20からの出力電流Ibの比率が減少する。S107の処理を行うと、処理は、S109へ進む。
【0045】
一方、減算値αが基準減算値αref以上の場合は(S106-No)、電池管理部40等は、DC/DCコンバータ5の動作を制御することより、DC/DCコンバータ5から外部端子7への出力電流Ibの大きさを維持する(S108)。そして、処理は、S109へ進む。
【0046】
S109では、電池管理部40等は、蓄電池2からの放電を停止するか否か、すなわち、蓄電池2からの放電を終了するか否かを、判定する。電池管理部40等は、例えば、ユーザインタフェース等で放電を停止させる操作指令が入力されたことに基づいて、蓄電池2からの放電を停止させる。また、電池管理部40等は、第2の電池20の電圧Vbが放電終了電圧値Vbterまで低下したことに基づいて、蓄電池2からの放電を停止させる。ここで、放電終了電圧値Vbterは、基準電圧値Vbrefより低い。また、蓄電池2の使用においては、第2の電池20の電圧Vbの許容範囲が設定される。放電終了電圧値Vbterは、電圧Vbの許容範囲の下限値である許容下限値と同一であってもよく、電圧Vbの許容下限値よりも高くてもよい。
【0047】
蓄電池2からの放電を停止しない場合は(S109-No)、処理はS101に戻る。そして、電池管理部40等は、S101以降の処理を順次に実施する。このため、蓄電池2からの放電では、放電を終了しない限り、S101以降の処理が、定期的に実施される。
【0048】
本実施形態では、電池10,20の両方から電力が出力されている場合でも、S106~S108の処理が定期的に行われるため、第1の電池10の電圧Vaを第2の電池20の電圧Vbに比べて前述の基準減算値αref以上高く維持する状態に、DC/DCコンバータ5の動作が制御される。したがって、第1の電池10の電圧Vaを第2の電池20の電圧Vbより高く維持する状態に、DC/DCコンバータ5の動作が制御され、電圧Va,Vbの大小関係が逆転しない状態に、DC/DCコンバータ5の動作が制御される。なお、蓄電池2の充電においても、第1の電池10の電圧Vaを第2の電池20の電圧Vbより高く維持する状態に、DC/DCコンバータ5の動作が制御され、電圧Va,Vbの大小関係が逆転しない状態に、DC/DCコンバータ5の動作が制御される。
【0049】
図3は、蓄電池2からの放電における第1の電池10のSOC(第1のSOC)ηa、及び、第2の電池20のSOC(第2のSOC)ηbのそれぞれの経時的な変化の一例を示す。図4は、図3の一例の放電における第1の電池10の電圧(第1の電圧)Va、及び、第2の電池20の電圧(第2の電圧)Vbのそれぞれの経時的な変化の一例を示す。図3及び図4では、横軸は放電開始時を基準とする時間を示す。図3では、縦軸はSOCを示し、第1の電池10のSOCηaの変化を実線で、第2の電池20のSOCηbの変化を破線で示す。図4では、縦軸は電圧を示し、第1の電池10の電圧Vaの変化を実線で、第2の電池20の電圧Vbの変化を破線で示す。なお、SOCηa,ηbのそれぞれは、電流積算法、電池(10又は20)の電圧とSOCとの関係を用いた算出法、及び、カルマンフィルタを用いた推定法等のいずれかによって、算出可能である。
【0050】
図3及び図4の一例では、放電開始から時間t1又はその直近の時点までは、第2の電池20の電圧Vbが基準電圧値Vbrefより高いと判定される。このため、S102の処理によって、第2の電池20からのみ放電される。そして、時間t1又はその直近の時点で、電圧Vbが基準電圧値Vbrefまで低下する。そして、時間t2又はその直近の時点までは、第1の電池10の電圧Vaが基準電圧値Varefより高いと判定される。このため、時間t1又はその直近の時点から時間t2又はその直近の時点までは、S104の処理によって、第1の電池10からのみ放電される。
【0051】
そして、時間t2又はその直近の時点で、電圧Vaが基準電圧値Varefまで低下する。そして、時間t2又はその直近の時点より後では、S105の処理によって、電池10,20の両方から放電される。この際、S106~S108の処理によって、第1の電池10の電圧Vaを第2の電池20の電圧Vbに比べて前述の基準減算値αref以上高く維持する状態に、DC/DCコンバータ5の動作が制御される。このため、時間t2又はその直近の時点から放電停止まで、第1の電池10の電圧Vaは、第2の電池20の電圧Vbより高く維持される。そして、時間t3又はその直近の時点において、第2の電池20の電圧Vbが放電終了電圧値Vbterまで低下し、蓄電池2からの放電が停止される。
【0052】
本実施形態では、電池管理部40を含む制御装置のコントローラによって前述のように蓄電池2が制御されるため、第1の電池10の電圧Vaは、第2の電池20の電圧Vbより高く維持され、電圧Va,Vbの大小関係が、逆転しない状態に維持される。このため、蓄電池2からの放電において、DC/DCコンバータ5は、第2の回路23から出力される電力を昇圧して外部端子7へ出力すればよく、第2の回路23から出力される電力を降圧することはない。また、蓄電池2への充電においては、DC/DCコンバータ5は、第2の回路23へ入力される電力を降圧して第2の電池20へ出力すればよく、第2の回路23へ入力される電力を昇圧する必要はない。第2の回路23から出力される電力の降圧、及び、第2の回路23へ入力される電力の昇圧を行う必要がないため、DC/DCコンバータ5を小型化することが可能となり、DC/DCコンバータ5の構成を単純化することが可能となる。
【0053】
前述のように、本実施形態では、活物質となる材料が互いに対して異なる2種類の電池10,20の間にDC/DCコンバータ5が設けられる蓄電池2において、DC/DCコンバータ5の小型化を実現可能にする蓄電池2の放電(充電)等の制御が、行われる。
【0054】
(第1の実施形態の変形例)
なお、ある変形例では、図2のS106において減算値αが基準減算値αref以上の場合は(S106-No)、電池管理部40等は、S108の処理の代わりに、DC/DCコンバータ5の動作を制御することより、DC/DCコンバータ5から外部端子7への出力電流Ibを増加させてもよい。ただし、本変形例でも、減算値αが基準減算値αrefより小さい場合は(S106-Yes)、電池管理部40等は、DC/DCコンバータ5の動作を制御することより、DC/DCコンバータ5から外部端子7への出力電流Ibを減少させる。
【0055】
また、ある変形例では、図2のS101において第2の電池20の電圧Vbが電圧基準値Vbrefより高い場合は(S101-Yes)、第2の電池20からの出力における許容上限値に基づいて、第2の電池20のみから出力(放電)させるか否か判定してもよい。蓄電池2の使用においては、DC/DCコンバータ5を通しての第2の電池20の出力電流Ib等の第2の電池20からの出力について、許容範囲が設定される。そして、許容範囲の上限値として、許容上限値が設定される。
【0056】
ある一例では、電圧Vbが電圧基準値Vbrefより高い場合、電池管理部40等は、蓄電池2からの出力電流IcがDC/DCコンバータ5(第2の電池20)からの出力電流Ibの許容上限値Ibupより大きいか否かを判定する。そして、出力電流Icが許容上限値Ibup以下の場合は、電池管理部40等は、第2の電池20のみから出力(放電)させ、第1の電池10からの出力を停止させる。一方、出力電流Icが許容上限値Ibupより大きい場合は、電池管理部40等は、スイッチ15,25の両方をON状態にし、電池10,20の両方から放電させる。この際、電池管理部40等は、DC/DCコンバータ5の動作を制御することにより、出力電流Ibが許容上限値Ibupになる状態で、第2の電池20から出力させる。すなわち、第2の電池20からの出力における許容上限値で、DC/DCコンバータ5を通して第2の電池20から出力(放電)させる。そして、電池管理部40等は、蓄電池2からの出力電流Icから許容上限値Ibupを減算した余剰電流(Ic-Ibup)を第1の電池10から出力(放電)させる。
【0057】
前述した変形例においても、第1の実施形態等と同様に、第1の電池10の電圧Vaが第2の電池20の電圧Vbより高く維持される状態、すなわち、電圧Va,Vbの大小関係が逆転しない状態にDC/DCコンバータ5の動作が制御される。このため、DC/DCコンバータ5の小型化を実現可能となる。
【0058】
(第2の実施形態)
次に、第2の実施形態について説明する。なお、以下の説明では、第1の実施形態等と同様の部分については、説明を省略する。
【0059】
図5は、蓄電池2からの放電において、蓄電池2の制御装置のコントローラによって行われる処理の一例を示す。本実施形態では、蓄電池2からの放電における制御装置の処理が、前述の実施形態等とは異なる。図5の処理は、蓄電池2からの1回の放電において、放電開始から放電終了(充電停止)までの間に、電池管理部40を含む制御装置のコントローラによって行われる。本実施形態でも、蓄電池2からの放電は、第1の電池10の電圧Vaが第2の電池20の電圧Vbより高い状態で、開始されるものとする。
【0060】
図5に示すように、蓄電池2からの放電においては、電池管理部40等は、第1の電池10からの出力電流Iaに対するDC/DCコンバータ5を通しての第2の電池20からの出力電流Ibの比率(Ib/Ia)の設定処理を行う(S111)。これにより、第1の電池10からの出力値に対するDC/DCコンバータ5を通しての第2の電池20からの出力値の比率が、設定される。そして、電池管理部40等は、設定した比率(Ib/Ia)で電池10,20のそれぞれから出力される状態に、DC/DCコンバータ5の動作を制御する(S112)。
【0061】
そして、S109の処理と同様に、電池管理部40等は、蓄電池2からの放電を停止するか否かを、判定する(S113)。蓄電池2からの放電を停止しない場合は(S113-No)、処理はS111に戻る。そして、電池管理部40等は、S111以降の処理を順次に実施する。本実施形態では、蓄電池2からの放電において、放電が終了するまで、S111及びS112の処理が、定期的に実施される。したがって、出力電流Iaに対する出力電流Ibの比率(Ib/Ia)の設定が、定期的に行われる。
【0062】
図6は、制御装置のコントローラによって行われる、第1の電池10の出力電流Iaに対するDC/DCコンバータ5(第2の電池20)からの出力電流Ibの比率(Ib/Ia)の設定処理を示す。ここで、蓄電池2からの放電開始時を基準とする時間の変数tを規定する。また、図6の一例では、比率(Ib/Ia)の設定処理が、時間間隔Δtごとに行われるものとする。
【0063】
図6に示すように、比率(Ib/Ia)の設定処理では、電池管理部40等は、蓄電池2からの出力に関する情報として、蓄電池2(外部端子7)からの出力電流Icの許容上限値Icupを取得する(S121)。すなわち、電池管理部40等は、蓄電池2からの出力の許容上限値を取得する。蓄電池2の使用においては、出力電流Icについて、許容範囲が設定され、許容範囲の上限値として、許容上限値Icupが設定される。蓄電池2の使用においては、外部端子7の間の電圧Vc、すなわち、蓄電池2からの出力電圧についても許容範囲が設定され、蓄電池2(外部端子7)からの出力電力Pcについても許容範囲が設定される。ある一例では、出力電流Icの許容上限値Icupは、出力電力Pcの許容上限値Pcup及び電圧Vcの許容下限値Vclowを用いて、式(1)のようにして算出される。なお、出力電力Pcの許容上限値Pcup及び出力電流Icの許容上限値Icup等のそれぞれは、負荷の定格入力等に関係なく1つの固定値に設定されてもよく、負荷の定格入力等に対応して複数の値に設定可能であってもよい。
【0064】
【数1】
【0065】
S121の処理を行うと、電池管理部40等は、第1の電池10のSOCηaのリアルタイムの(時間tでの)推定値ηa(t)、及び、第2の電池20のSOCηbのリアルタイムの(時間tでの)推定値ηb(t)を取得する(S122)。推定値ηa(t)は、第1の電池10の出力電流Iaの経時的変化等に基づいて電流積算法によって推定してもよく、第1の電池10の電圧VaとSOCηaとの関係に基づいて推定してもよい。同様に、推定値ηb(t)は、第2の電池20(DC/DCコンバータ5)の出力電流Ibの経時的変化等に基づいて電流積算法によって推定してもよく、第2の電池20の電圧VbとSOCηbとの関係に基づいて推定してもよい。また、推定値ηa(t),ηb(t)は、カルマンフィルタを用いた推定法によって推定してもよい。なお、推定値ηa(t),ηb(t)の推定は、電池管理部40等を含む制御装置で行われてもよく、制御装置とは別の処理装置等によって行われてもよい。
【0066】
S122の処理を行うと、電池管理部40等は、第1の電池10の内部抵抗Raについて、SOCηaの推定値ηa(t)に対応した対応値Ra(ηa(t))を取得する(S123)。すなわち、内部抵抗Raについて、第1の電池10のSOCηaの推定結果に対応した対応値Ra(ηa(t))が、取得される。電池管理部40の記憶媒体又は電池管理部40と通信可能な処理装置の記憶媒体等には、第1の電池10のSOCηaと内部抵抗Raとの関係を示すデータが記憶される。SOCηaと内部抵抗Raとの関係を示すデータとしては、テーブル又は関数等が挙げられる。電池管理部40等は、SOCηaと内部抵抗Raとの関係を示すデータを用いて、内部抵抗Raについて、SOCηaの推定値ηa(t)に対応した対応値Ra(ηa(t))を特定する。
【0067】
なお、第1の電池監視部17等によって第1の電池10の温度を検出する場合は、第1の電池10の温度ごとに、SOCηaと内部抵抗Raとの関係を示すデータが設定されてもよい。この場合、電池管理部40等は、内部抵抗Raについて、第1の電池10の温度及びSOCηaの推定値ηa(t)の両方に対応した対応値Ra(ηa(t))を特定する。また、蓄電池2の運転時間、及び、第1の電池10の劣化状態等の少なくともいずれかに対応させて、SOCηaと内部抵抗Raとの関係を示すデータが更新されてもよい。
【0068】
また、本実施形態では、比率(Ib/Ia)の設定処理において、第1の電池10からの出力電流Iaの仮定値Iapre、及び、DC/DCコンバータ5を通しての第2の電池20からの出力電流Ibの仮定値Ibpreが設定される。S123の処理を行うと、電池管理部40等は、出力電流Iaの仮定値Iapre及び出力電流Ibの仮定値Ibpreについて、初期値を設定する。この際、電池管理部40等は、仮定値Iapreの初期値を前述した蓄電池2からの出力電流Icの許容上限値Icupに設定し、仮定値Ibpreの初期値をゼロに設定する(S124)。
【0069】
そして、電池管理部40等は、第1の電池10のSOCηaの時間間隔Δt経過した時点での推定値ηa(t+Δt)、及び、第2の電池20のSOCηbの時間間隔Δt経過した時点での推定値ηb(t+Δt)を取得する(S125)。すなわち、次回の比率の設定処理が行われるタイミングでのSOCηaの推定値ηa(t+Δt)及びSOCηbの推定値ηb(t+Δt)が、取得される。ある一例では、推定値ηa(t+Δt)は、SOCηaのリアルタイムの推定値ηa(t)、出力電流Iaの仮定値Iapre及び第1の電池10の蓄電容量Qaを用いて、式(2)のように算出される。そして、推定値ηb(t+Δt)は、SOCηbのリアルタイムの推定値ηb(t)、出力電流Ibの仮定値Ibpre及び第2の電池20の蓄電容量Qbを用いて、式(3)のように算出される。なお、推定値ηa(t+Δt),ηb(t+Δt)の推定は、電池管理部40等を含む制御装置で行われてもよく、制御装置とは別の処理装置等によって行われてもよい。
【0070】
【数2】
【0071】
S125の処理を行うと、電池管理部40等は、第1の電池10の開回路電圧Vaocvについて、SOCηaの推定値ηa(t+Δt)に対応した対応値Vaocv(ηa(t+Δt))を取得し、第2の電池20の開回路電圧Vbocvについて、SOCηbの推定値ηb(t+Δt)に対応した対応値Vbocv(ηb(t+Δt))を取得する(S126)。すなわち、開回路電圧Vaocvについて、第1の電池10のSOCηaの推定結果に対応した対応値Vaocv(ηa(t+Δt))が取得され、開回路電圧Vbocvについて、第2の電池20のSOCηbの推定結果に対応した対応値Vbocv(ηb(t+Δt))が取得される。
【0072】
電池管理部40の記憶媒体又は電池管理部40と通信可能な処理装置の記憶場体等には、第1の電池10のSOCηaと開回路電圧Vaocvとの関係を示すデータ、及び、第2の電池20のSOCηbと開回路電圧Vbocvとの関係を示すデータが記憶される。これらのデータは、例えば、テーブル又は関数等である。電池管理部40等は、SOCηaと開回路電圧Vaocvとの関係を示すデータを用いて、開回路電圧Vaocvについて、SOCηaの推定値ηa(t+Δt)に対応した対応値Vaocv(ηa(t+Δt))を特定する。そして、電池管理部40等は、SOCηbと開回路電圧Vbocvとの関係を示すデータを用いて、開回路電圧Vbocvについて、SOCηbの推定値ηb(t+Δt)に対応した対応値Vbocv(ηb(t+Δt))を特定する。
【0073】
なお、第1の電池監視部17等によって第1の電池10の温度を検出する場合は、第1の電池10の温度ごとに、SOCηaと開回路電圧Vaocvとの関係を示すデータが設定されてもよい。この場合、電池管理部40等は、開回路電圧Vaocvについて、第1の電池10の温度及びSOCηaの推定値ηa(t+Δt)の両方に対応した対応値Vaocv(ηa(t+Δt))を特定する。同様に、第2の電池監視部27等によって第2の電池20の温度を検出する場合は、第2の電池20の温度ごとに、SOCηbと開回路電圧Vbocvとの関係を示すデータが設定されてもよい。また、蓄電池2の運転時間、及び、第1の電池10の劣化状態等の少なくともいずれかに対応させて、SOCηaと開回路電圧Vaocvとの関係を示すデータが更新されてもよい。同様に、蓄電池2の運転時間、及び、第2の電池20の劣化状態等の少なくともいずれかに対応させて、SOCηbと開回路電圧Vbocvとの関係を示すデータが更新されてもよい。
【0074】
ここで、前述の開回路電圧Vaocvの対応値Vaocv(ηa(t+Δt))から開回路電圧Vbocvの対応値Vbocv(ηb(t+Δt))を減算した減算値βを、パラメータとして規定する。また、比率(Ib/Ia)の設定処理では、前述の出力電流Icの許容上限値Icupと内部抵抗Raの対応値Ra(ηa(t))との積が、減算値βの基準減算値βrefとして設定される。基準減算値βrefは、内部抵抗Raの対応値Ra(ηa(t))に加えて、蓄電池2からの出力の許容上限値である出力電流Icの許容上限値Icupに基づいて、設定される。S126の処理を行うと、電池管理部40等は、減算値βが基準減算値βrefより大きいか否か、すなわち、式(4)が成立するか否かを判定する(S127)。
【0075】
【数3】
【0076】
減算値βが基準減算値βrefより大きい場合は(S127-Yes)、電池管理部40等は、仮定値Iapreに対する仮定値Ibpreの比率(Ibpre/Iapre)を、出力電流Iaに対する出力電流Ibの比率(Ib/Ia)として設定する。一方、減算値βが基準減算値βref以下の場合は(S127-No)、電池管理部40等は、出力電流Iaの仮定値Iapreを一定電流値εだけ減算し、出力電流Ibの仮定値Ibpreを一定電流値εだけ加算する(S129)。ここで、一定電流値εは、例えば、出力電流Icの許容上限値Icupを2以上の自然数のいずれかで除算した値である。ある一例では、一定電流値εは、許容上限値Icupの100分の1であり、別のある一例では、一定電流値εは、許容上限値Icupの200分の1である。なお、S124及びS129では、仮定値Iapreと仮定値Ibpreとの和が許容上限値Icupになる状態に、仮定値Iapre,Ibpreが設定される。
【0077】
本実施形態では、図6の処理によって、出力電流Iaに対する出力電流Ibの比率(Ib/Ia)が設定される。したがって、式(4)を条件式とするフィッティング計算(最適化計算)によって、すなわち、減算値βが基準減算値βrefより大きいことを条件とするフィッティング計算によって、第1の電池10からの出力値に対するDC/DCコンバータ5を通しての第2の電池20からの出力値の比率が、設定される。
【0078】
ここで、減算値βは、第1の電池10の開回路電圧Vaocvの対応値Vaocv(ηa(t+Δt))から第2の電池20の開回路電圧Vbocvの対応値Vbocv(ηb(t+Δt))を減算した値である。そして、開回路電圧Vaocvの対応値Vaocv(ηa(t+Δt))は、第1の電池10のSOCηaの推定結果に対応した値であり、開回路電圧Vbocvの対応値Vbocv(ηb(t+Δt))は、第2の電池20のSOCηbの推定結果に対応した値である。また、基準減算値βrefは、第1の電池10の内部抵抗Raの対応値Ra(ηa(t))及び蓄電池2からの出力に関する情報に基づいた値である。そして、内部抵抗Raの対応値Ra(ηa(t))は、第1の電池10のSOCηaの推定結果に対応した値である。このため、減算値βが基準減算値βrefより大きいことを条件とするフィッティング計算によって、出力電流Iaに対する出力電流Ibの比率が、適切に設定される。すなわち、蓄電池2からの放電において第1の電池10の電圧Vaが第2の電池20の電圧Vbより高く維持される状態に、第1の電池10からの出力値に対するDC/DCコンバータ5を通しての第2の電池20からの出力値の比率が設定される。
【0079】
本実施形態では、前述のように適切に設定された比率(Ib/Ia)で電池10,20のそれぞれから出力される状態に、DC/DCコンバータ5の動作が制御される。このため、本実施形態でも、第1の電池10の電圧Vaが第2の電池20の電圧Vbより高く維持される状態、すなわち、電圧Va,Vbの大小関係が逆転しない状態にDC/DCコンバータ5の動作が制御される。このため、DC/DCコンバータ5の小型化を実現可能となる。
【0080】
なお、蓄電池2の充電においても、第1の電池10の電圧Vaを第2の電池20の電圧Vbより高く維持する状態に、第1の電池10への入力値に対するDC/DCコンバータ5を通しての第2の電池20への入力値の比率が設定される。そして、設定した比率で電池10,20のそれぞれに入力される状態にDC/DCコンバータ5の動作が制御されることにより、電圧Va,Vbの大小関係が逆転しない状態に、DC/DCコンバータ5の動作が制御される。
【0081】
また、本実施形態では、前述のような制御が行われるため、第2の電池20の電圧Vbがある程度高い状態でも、第2の電池20のみからではなく第1の電池10からも、ある程度の電力が出力される。このため、第2の電池20のSOCηbのみが低い状態で放電が停止(終了)されることが、有効に防止される。これにより、放電の後において、許容Cレートが小さい第2の電池20のSOCηbのみが低い状態から充電が開始されることが、有効に防止され、充電における効率が向上する。
【0082】
(第2の実施形態の変形例)
なお、ある変形例では、比率(Ib/Ia)の設定処理において、出力電流Icの許容上限値Icupの代わりに、所定の期間における蓄電池2からの出力電流Icの平均値Icave、及び、所定の期間における蓄電池2からの出力電流Icの最大値Icmaxのいずれかが用いられてもよい。この場合、蓄電池2からの出力の許容上限値の代わりに、所定の期間における蓄電池2からの出力の平均値及び最大値のいずれかが、蓄電池2からの出力に関する情報として用いられる。ここで、所定の期間は、例えば、比率(Ib/Ia)の設定処理を行っている時点又はその前の時点が終点となる一定の長さの期間である。
【0083】
本変形例でも、第2の実施形態等と同様に、減算値βが規定される。また、基準減算値βrefが蓄電池2からの出力の許容上限値に基づく値であるのに対し、本変形例では、減算値βに関する基準減算値は、所定の期間における蓄電池2からの出力の平均値及び最大値のいずれかに基づく値となる。ただし、本変形例でも、減算値βに関する基準減算値(βrefに相当する値)は、第1の電池10の内部抵抗Raの対応値Ra(ηa(t))及び蓄電池2からの出力に関する情報に基づいた値である。したがって、第2の実施形態等と同様のフィッティング計算によって比率(Ib/Ia)の設定を行うことにより、本変形例でも、第1の電池10の電圧Vaが第2の電池20の電圧Vbより高く維持される状態に、第1の電池10からの出力値に対するDC/DCコンバータ5を通しての第2の電池20からの出力値の比率が設定される。したがって、本変形例でも、第2の実施形態等と同様の作用及び効果を奏する。
【0084】
(第3の実施形態)
次に、第3の実施形態について説明する。なお、以下の説明では、第1の実施形態等と同様の部分については、説明を省略する。本実施形態でも、第2の実施形態等と同様に、蓄電池2からの放電において、蓄電池2の制御装置のコントローラは、図5に示す処理を行う。ただし、本実施形態では、出力電流Iaに対する出力電流Ibの比率(Ib/Ia)の設定処理(S111)が、第2の実施形態等とは異なる。
【0085】
ここで、第1の電池10でのSOCηaに対する電圧Vaの電圧変化率γa、及び、第2の電池20でのSOCηbに対する電圧Vbの電圧変化率γbを規定する。本実施形態では、比率(Ib/Ia)の設定処理において、SOCηaに対する開回路電圧Vaocvの電圧変化率γaocv、及び、SOCηbに対する開回路電圧Vbocvの電圧変化率γbocvが用いられる。
【0086】
図7は、第1の電池10でのSOC(第1のSOC)ηaと開回路電圧Vaocvとの関係、及び、第2の電池20でのSOC(第2のSOC)ηbと開回路電圧Vbocvとの関係の一例を示す。図8は、図7の一例における、第1の電池10でのSOCηaと開回路電圧Vaocvの電圧変化率γaocvとの関係、及び、第2の電池20でのSOCηbと開回路電圧Vbocvの電圧変化率γbocvとの関係を示す。図7及び図8では、横軸はSOCを示す。図7では、縦軸は電圧を示し、第1の電池10の開回路電圧Vaocvを実線で、第2の電池20の開回路電圧Vbocvを破線で示す。図8では、縦軸はSOCに対する電圧の電圧変化率を示し、第1の電池10の電圧変化率γaocvを実線で、第2の電池20の電圧変化率γbocvを破線で示す。
【0087】
図7及び図8の一例では、第1の電池10のSOCηaが値η1になる状態では、開回路電圧Vaocvは電圧値Vaocv(η1)となり、電圧変化率γaocvは値γaocv(η1)となる。ここで、図7の座標(η1,Vaocv(η1))における開回路電圧Vaocvの接線の傾きが、値γaocv(η1)となる。また、第2の電池20のSOCηbが値η1になる状態では、開回路電圧Vbocvは電圧値Vbocv(η1)となり、電圧変化率γbocvは値γbocv(η1)となる。ここで、図7の座標(η1,Vbocv(η1))における開回路電圧Vbocvの接線の傾きが、値γbocv(η1)となる。
【0088】
図9は、本実施形態の制御装置のコントローラによって行われる、第1の電池10の出力電流Iaに対するDC/DCコンバータ5(第2の電池20)からの出力電流Ibの比率(Ib/Ia)の設定処理を示す。図9に示すように、比率(Ib/Ia)の設定処理では、電池管理部40等は、第1の電池10のSOCηaのリアルタイムの(時間tでの)推定値ηa(t)、及び、第2の電池20のSOCηbのリアルタイムの(時間tでの)推定値ηb(t)を取得する(S131)。推定値ηa(t),ηb(t)は、第2の実施形態等で前述したようにして、推定される。
【0089】
そして、電池管理部40等は、第1の電池10でのSOCηaに対する開回路電圧Vaocvの電圧変化率γaocvについて、SOCηaの推定値ηa(t)に対応した対応値γaocv(ηa(t))を取得し、第2の電池20でのSOCηbに対する開回路電圧Vbocvの電圧変化率γbocvについて、SOCηbの推定値ηb(t)に対応した対応値γbocv(ηb(t))を取得する(S132)。すなわち、電圧変化率γaocvについて、第1の電池10のSOCηaの推定結果に対応した対応値γaocv(ηa(t))が取得され、電圧変化率γbocvについて、第2の電池20のSOCηbの推定結果に対応した対応値γbocv(ηb(t))が取得される。
【0090】
電池管理部40の記憶媒体又は電池管理部40と通信可能な処理装置の記憶場体等には、第1の電池10のSOCηaと電圧変化率γaocvとの関係を示すデータ、及び、第2の電池20のSOCηbと電圧変化率γbocvとの関係を示すデータが記憶される。これらのデータは、例えば、図8等の関係を示すテーブル又は関数等である。電池管理部40等は、SOCηaと電圧変化率γaocvとの関係を示すデータを用いて、電圧変化率γaocvについて、SOCηaの推定値ηa(t)に対応した対応値γaocv(ηa(t))を特定する。そして、電池管理部40等は、SOCηbと電圧変化率γbocvとの関係を示すデータを用いて、電圧変化率γbocvについて、SOCηbの推定値ηb(t)に対応した対応値γbocv(ηb(t))を特定する。
【0091】
なお、第1の電池監視部17等によって第1の電池10の温度を検出する場合は、第1の電池10の温度ごとに、SOCηaと電圧変化率γaocvとの関係を示すデータが設定されてもよい。この場合、電池管理部40等は、電圧変化率γaocvについて、第1の電池10の温度及びSOCηaの推定値ηa(t)の両方に対応した対応値γaocv(ηa(t))を特定する。同様に、第2の電池監視部27等によって第2の電池20の温度を検出する場合は、第2の電池20の温度ごとに、SOCηbと電圧変化率γbocvとの関係を示すデータが設定されてもよい。また、蓄電池2の運転時間、及び、第1の電池10の劣化状態等の少なくともいずれかに対応させて、SOCηaと電圧変化率γaocvとの関係を示すデータが更新されてもよい。同様に、蓄電池2の運転時間、及び、第2の電池20の劣化状態等の少なくともいずれかに対応させて、SOCηbと電圧変化率γbocvとの関係を示すデータが更新されてもよい。
【0092】
S132の処理を行うと、電池管理部40等は、電圧変化率γaocvの対応値γaocv(ηa(t))に対する電圧変化率γbocvの対応値γbocv(ηb(t))の比率の逆数を、出力電流Iaに対する出力電流Ibの比率(Ib/Ia)として設定する(S133)。本実施形態では、S133の処理によって設定された比率(Ib/Ia)で電池10,20のそれぞれから出力される状態に、DC/DCコンバータ5の動作が制御される。したがって、第1の電池10からの出力値に対するDC/DCコンバータ5を通しての第2の電池20からの出力値の比率が、第1の電池10の電圧変化率γaocvの対応値γaocv(ηa(t))に対する第2の電池20の電圧変化率γbocvの対応値γbocv(ηb(t))の比率の逆数になる状態に、DC/DCコンバータ5の動作が制御される。
【0093】
ここで、電圧変化率γaocvの対応値γaocv(ηa(t))は、第1の電池10のSOCηaの推定結果に対応した値であり、電圧変化率γbocvの対応値γbocv(ηb(t))は、第2の電池20のSOCηbの推定結果に対応した値である。このため、対応値γaocv(ηa(t))に対する対応値γbocv(ηb(t))の比率の逆数に出力電流Iaに対する出力電流Ibの比率(Ib/Ia)が設定されることにより、比率(Ib/Ia)が適切に設定される。すなわち、蓄電池2からの放電において第1の電池10の電圧Vaが第2の電池20の電圧Vbより高く維持される状態に、第1の電池10からの出力値に対するDC/DCコンバータ5を通しての第2の電池20からの出力値の比率が設定される。
【0094】
このため、本実施形態でも、第1の電池10の電圧Vaが第2の電池20の電圧Vbより高く維持される状態、すなわち、電圧Va,Vbの大小関係が逆転しない状態にDC/DCコンバータ5の動作が制御される。このため、DC/DCコンバータ5の小型化を実現可能となる。
【0095】
また、本実施形態では、前述のような制御が行われるため、第2の電池20の電圧Vbがある程度高い状態でも、第2の電池20のみからではなく第1の電池10からも、ある程度の電力が出力される。このため、第2の実施形態等と同様に、第2の電池20のSOCηbのみが低い状態で放電が停止(終了)されることが、有効に防止される。
【0096】
(その他の変形例)
なお、ある変形例でも、第2の電池20の電圧Vbを第1の電池10の電圧Vaより高く維持する状態に、DC/DCコンバータ5の動作が制御されてもよい。この場合も、第1の電池10の電圧Vaと第2の電池20の電圧Vbとの大小関係が逆転しない状態に、DC/DCコンバータ5の動作が制御される。本変形例では、蓄電池2からの放電において、DC/DCコンバータ5は、第2の回路23から出力される電力を降圧して外部端子7へ出力すればよく、第2の回路23から出力される電力を昇圧することはない。また、蓄電池2への充電においては、DC/DCコンバータ5は、第2の回路23へ入力される電力を昇圧して第2の電池20へ出力すればよく、第2の回路23へ入力される電力を降圧する必要はない。このため、本変形例でも、DC/DCコンバータ5を小型化することが可能となる。
【0097】
これら少なくとも一つの実施形態又は実施例では、第1の回路に接続される第1の電池の電圧と第2の回路に接続される第2の電池の電圧との大小関係が逆転しない状態に、第2の回路へ入力される電力の電圧及び第2の回路から出力される電力の電圧を変換するDC/DCコンバータの動作が、制御される。これにより、活物質となる材料が互いに対して異なる2種類の電池の間に設けられるDC/DCコンバータの小型化を実現可能な蓄電池の制御装置、蓄電池の制御方法及び蓄電池の制御プログラムを提供することができる。
【0098】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
以下、付記を記載する。
[1]第1の電池が第1の回路に接続されるとともに、前記第1の電池より蓄電容量が大きく、かつ、前記第1の電池より許容Cレートが小さい第2の電池が第2の回路に接続される蓄電池の制御装置であって、
前記第1の電池の電圧と前記第2の電池の電圧との大小関係が逆転しない状態に、前記第2の回路へ入力される電力の電圧及び前記第2の回路から出力される電力の電圧を変換するDC/DCコンバータの動作を制御するコントローラを具備する、
制御装置。
[2]前記コントローラは、前記第1の電池の前記電圧を前記第2の電池の前記電圧より高く維持する状態に、前記DC/DCコンバータの前記動作を制御する、[1]の制御装置。
[3]前記コントローラは、
前記第1の電池の開回路電圧及び内部抵抗のそれぞれについて、前記第1の電池のSOCの推定結果に対応した対応値を取得するとともに、前記第2の電池の開回路電圧について、前記第2の電池のSOCの推定結果に対応した対応値を取得し、
前記第1の電池の前記開回路電圧の前記対応値から前記第2の電池の前記開回路電圧の前記対応値を減算した減算値、及び、前記第1の電池の前記内部抵抗の前記対応値及び前記蓄電池からの出力に関する情報に基づいた基準減算値を取得し、
前記減算値が前記基準減算値より大きくなることを条件とするフィッティング計算によって、前記第1の電池からの出力値に対する前記DC/DCコンバータを通しての前記第2の電池からの出力値の比率を設定し、
設定した前記比率で前記第1の電池及び前記第2の電池から出力される状態に、前記DC/DCコンバータの前記動作を制御する、
[2]の制御装置。
[4]前記コントローラは、前記蓄電池からの前記出力に関する前記情報として、前記蓄電池からの前記出力の許容上限値、所定の期間における前記蓄電池からの前記出力の平均値、及び、前記所定の期間における前記蓄電池からの前記出力の最大値のいずれかに基づいて前記基準減算値を設定する、[3]の制御装置。
[5]前記コントローラは、
前記第1の電池でのSOCに対する開回路電圧の電圧変化率について、前記第1の電池の前記SOCの推定結果に対応した対応値を取得するとともに、前記第2の電池でのSOCに対する開回路電圧の電圧変化率について、前記第2の電池の前記SOCの推定結果に対応した対応値を取得し、
前記第1の電池からの出力値に対する前記DC/DCコンバータを通しての前記第2の電池からの出力値の比率が、前記第1の電池の前記電圧変化率の前記対応値に対する前記第2の電池の前記電圧変化率の前記対応値の比率の逆数になる状態に、前記DC/DCコンバータの前記動作を制御する、
[2]の制御装置。
[6]前記コントローラは、
前記第2の電池の前記電圧が第1の基準電圧値より高い場合は、前記第2の電池からのみ出力させる、又は、前記第2の電池からの出力における許容上限値で前記DC/DCコンバータを通して前記第2の電池から出力させ、
前記第2の電池の前記電圧が前記第1の基準電圧値以下であり、かつ、前記第1の基準電圧値より高い第2の基準電圧値に比べて前記第1の電池の前記電圧が高い場合は、前記第1の電池からのみ出力させ、
前記第2の電池の前記電圧が前記第1の基準電圧値以下であり、かつ、前記第1の電池の前記電圧が前記第2の基準電圧値以下である場合は、前記第1の電池の前記電圧を、前記第2の電池の電圧に比べて、前記第2の基準電圧値から前記第1の基準電圧値を減算した基準減算値以上高く維持する状態に、前記DC/DCコンバータの前記動作を制御する、
[2]の制御装置。
[7][1]乃至[6]のいずれか1つの制御装置と、
前記第1の電池及び前記第2の電池を備え、前記制御装置によって充電及び放電が制御される前記蓄電池と、
前記第2の電池が接続される前記第2の回路へ入力される電力の電圧及び前記第2の回路から出力される電力の電圧を変換し、前記制御装置の前記コントローラによって前記動作が制御される前記DC/DCコンバータと、
を具備する蓄電システム。
[8]前記蓄電池が搭載される電池搭載機器をさらに具備する、[7]の蓄電システム。
[9][1]乃至[6]のいずれか1つの制御装置と、
前記第1の電池及び前記第2の電池を備え、前記制御装置によって充電及び放電が制御される前記蓄電池と、
前記第2の電池が接続される前記第2の回路へ入力される電力の電圧及び前記第2の回路から出力される電力の電圧を変換し、前記制御装置の前記コントローラによって前記動作が制御される前記DC/DCコンバータと、
を具備する電池搭載機器。
[10]第1の電池が第1の回路に接続されるとともに、前記第1の電池より蓄電容量が大きく、かつ、前記第1の電池より許容Cレートが小さい第2の電池が第2の回路に接続される蓄電池の制御方法であって、
前記第1の電池の電圧と前記第2の電池の電圧との大小関係が逆転しない状態に、前記第2の回路へ入力される電力の電圧及び前記第2の回路から出力される電力の電圧を変換するDC/DCコンバータの動作を制御することを具備する、制御方法。
[11]第1の電池が第1の回路に接続されるとともに、前記第1の電池より蓄電容量が大きく、かつ、前記第1の電池より許容Cレートが小さい第2の電池が第2の回路に接続される蓄電池の制御プログラムであって、コンピュータに、
前記第1の電池の電圧と前記第2の電池の電圧との大小関係が逆転しない状態に、前記第2の回路へ入力される電力の電圧及び前記第2の回路から出力される電力の電圧を変換するDC/DCコンバータの動作を制御させる、制御プログラム。
【符号の説明】
【0099】
1…蓄電システム、2…蓄電池、3…電池搭載機器、5…DC/DCコンバータ、7…外部端子、10…第1の電池、11…第1のセル、13…第1の回路、17…第1の電池監視部、20…第2の電池、21…第2のセル、23…第2の回路、27…第2の電池監視部、37,38…電流検出部、40…電池管理部。
図1
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