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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-21
(45)【発行日】2024-07-01
(54)【発明の名称】リチウムイオン二次電池の制御方法
(51)【国際特許分類】
   H02J 7/00 20060101AFI20240624BHJP
   H01M 10/052 20100101ALI20240624BHJP
   H01M 10/44 20060101ALI20240624BHJP
   H01M 10/48 20060101ALI20240624BHJP
【FI】
H02J7/00 B
H01M10/052
H01M10/44 P
H01M10/48 P
H02J7/00 Q
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2020198033
(22)【出願日】2020-11-30
(65)【公開番号】P2022086167
(43)【公開日】2022-06-09
【審査請求日】2023-08-07
(73)【特許権者】
【識別番号】000003997
【氏名又は名称】日産自動車株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】507308902
【氏名又は名称】ルノー エス.ア.エス.
【氏名又は名称原語表記】RENAULT S.A.S.
【住所又は居所原語表記】122-122 bis, avenue du General Leclerc, 92100 Boulogne-Billancourt, France
(74)【代理人】
【識別番号】110000486
【氏名又は名称】弁理士法人とこしえ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】奥井 武彦
(72)【発明者】
【氏名】青木 哲也
(72)【発明者】
【氏名】高市 哲
【審査官】宮本 秀一
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-160592(JP,A)
【文献】特開2011-158444(JP,A)
【文献】特開2013-085379(JP,A)
【文献】特開2008-107168(JP,A)
【文献】特開2019-050094(JP,A)
【文献】国際公開第2015/025402(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01R31/36-31/396
H01M10/05-10/0587
H01M10/36-10/48
H02J7/00-7/12
H02J7/34-7/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
グラファイトと金属活物質を含む負極を備えるリチウムイオン二次電池の制御方法において、
前記リチウムイオン二次電池の充放電を制御し、
充放電停止時において、交流電流入力に対する電圧応答又は交流電圧入力に対する電流応答を算出し、
放電側の前記電圧応答である放電電圧応答と充電側の前記電圧応答である充電電圧応答との応答性の差異又は放電側の前記電流応答である放電電流応答と充電側の前記電流応答である充電電流応答との応答性の差異に基づいて、前記リチウムイオン二次電池の充電状態(SOC)の使用範囲(SOC使用範囲)を決定する制御方法。
【請求項2】
請求項1記載の制御方法において、
前記放電電圧応答の振幅(ΔV_d)と前記充電電圧応答の振幅(ΔV_c)との比である電圧振幅比(ΔV_d/ΔV_c)の値、又は、前記放電電流応答の振幅(ΔI_d)と前記充電電流応答の振幅(ΔI_d)との比である電流振幅比(ΔI_d/ΔI_c)の値が所定の閾値未満となる前記SOC使用範囲内で、前記リチウムイオン二次電池の充電及び/又は放電を制御する制御方法。
【請求項3】
請求項1又は2記載の制御方法において、
前記放電電圧応答と前記充電電圧応答との応答性の差異又は前記放電電流応答と前記充電電流応答との応答性の差異を示す値と、決定された前記SOC使用範囲と、を対応づけてメモリに記憶し、
SOCが、前回決定した前記SOC使用範囲の下限値を含む所定SOC範囲内になるように、前記リチウムイオン二次電池の充電及び/又は放電を制御し、
前記SOCが前記所定SOC範囲内になった後に、前記放電電圧応答と前記充電電圧応答との応答性の差異又は前記放電電流応答と前記充電電流応答との応答性の差異を示す値を算出し、
前記SOCが前記所定SOC範囲内になった後に算出された、前記放電電圧応答と前記充電電圧応答との応答性の差異又は前記放電電流応答と前記充電電流応答との応答性の差異を示す値に基づき、今回の前記SOC使用範囲を決定する制御方法。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか一項に記載の制御方法において、
前記金属活物質はSiを含有する制御方法。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか一項に記載の制御方法において、
前記リチウムイオン二次電池が電力網に接続された状態で、前記SOC使用範囲を決定する制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リチウムイオン二次電池のSOC使用範囲を決定する制御方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、リチウムイオン二次電池の劣化状態に応じて、充放電に対する電圧範囲を変更する充放電制御方法が知られている(特許文献1)。特許文献1記載の充放電制御方法では、リチウムイオン電池の充放電状態に関する電池情報を取得し、電池情報に基づいて、リチウムイオン電池の放電容量Qと、放電容量Qの変化量dQに対する電池電圧Vの変化量dVの割合を示すdV/dQとの関係を示すQ-dV/dQ曲線を算出し、Q-dV/dQ曲線に基づいてリチウムイオン電池の劣化状態を判定する。そして、劣化状態の判定結果に基づいて、リチウムイオン電池の充放電に対する電圧範囲を変更する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】国際公開第2015/025402号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記の充放電制御方法では、Q-dV/dQ曲線を得るために低レートで放電する必要があるため、長い放電時間を確保できるような場面でなければ、充放電に対する電圧範囲を変更できないという問題がある。
【0005】
本発明が解決しようとする課題は、長い充放電時間を確保できるような場面に限らず、リチウムイオン二次電池のSOC使用範囲を決定できる制御方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、充放電停止時において、交流電流入力に対する電圧応答又は交流電圧入力に対する電流応答を測定し、放電側の電圧応答である放電電圧応答と充電側の電圧応答である充電電圧応答との応答性の差異又は放電側の電流応答である放電電流応答と充電側の電流応答である充電電流応答との応答性の差異に基づいて、リチウムイオン二次電池の充電状態(SOC)の使用範囲(SOC使用範囲)を決定することにより、上記課題を解決する。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、長い充放電時間を確保できるような場面に限らず、リチウムイオン二次電池のSOC使用範囲を決定できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、本実施形態に係る二次電池の電池制御システムを示すブロック図である。
図2図2は、組み立て前の二次電池の斜視図、及び、二次電池の平面図を示す。
図3図3は、二次電池のサイクル数に対する容量維持率の特性を示すグラフである。
図4図4は、Gr/SiO負極を備える二次電池に対して、SOC使用範囲を50~100%にしたときの容量維持率と、SOC使用範囲を0~100%にしたときの容量維持率を示すグラフである。
図5図5(a)は交流電流入力(三角波)に対する電圧応答の応答性を示すグラフであり、図5(b)はSOCに対する電圧振幅比(ΔV_d/ΔV_c)の特性を示すグラフである。
図6図6(a)は交流電流入力(矩形波)に対する電圧応答の応答性を示すグラフであり、図6(b)はSOCに対する電圧振幅比(ΔV_d/ΔV_c)の特性を示すグラフである。
図7図7は、第1実施形態に係る二次電池の電池制御システムにおいて、SOC使用範囲を決定するシステムにおける制御処理の手順を示すフローチャートである。
図8図8は、図7に示すステップS2における制御処理のサブフローを示すフローチャートである。
図9図9は、第2実施形態に係る二次電池の電池制御システムにおいて、SOC使用範囲を決定するシステムにおける制御処理の手順を示すフローチャートである。
図10図10は、図9に示すステップS2’における制御処理のサブフローを示すフローチャートである。
図11図11は、第3実施形態に係る二次電池の電池制御システムにおいて、SOC使用範囲を決定するシステムにおける制御処理の手順を示すフローチャートである。
図12図12は、図11に示すステップ32の制御処理で推定されたSOCの大きさと、二次電池2の充放電との関係を説明するためのグラフである。
図13図13(a)は、実施例における測定結果を示すグラフであって、電圧応答の応答性を示すグラフであり、図13(b)はSOCに対する電圧応答の振幅(ΔV_d、ΔV_c)の測定結果を示すグラフであり、図13(c)はSOCに対する電圧応答の振幅比(ΔV_d/ΔV_c)の測定結果を示すグラフであり、図13(d)はSOCに対する電圧応答の振幅差(ΔV_d-ΔV_c)の測定結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
≪第1実施形態≫
本発明に係るリチウムイオン二次電池のSOC使用範囲を決定する制御装置及び制御方法の一実施形態を図面に基づいて説明する。図1は、本発明に係る電池制御装置の一実施の形態を含む電池制御システムを示すブロック図である。図1に示すように、本実施形態に係る電池制御システムは、二次電池2の充放電を制御し、二次電池2のSOC使用範囲を決定するためのシステムである。電池制御システムは、電池制御装置1と二次電池2とを備える。なお、電池制御装置1は、図1には図示されていない充電装置等を含んでいてもよい。
【0010】
電池制御装置1は、コントローラ10、電圧センサ11、電流センサ12、及び、DCDCコンバータ13を備えている。コントローラ10は、バッテリーコントロールユニット(BCU)である。コントローラ10は、電圧センサ11により検出された検出電圧、及び/又は、電流センサ12により検出された検出電流に基づき、二次電池2の状態を管理しつつ、二次電池2の状態に応じて二次電池2のSOC使用範囲を決定する。コントローラ10は、ROM又はRAMなどのメモリ、及び、CPUなどのプロセッサ等により構成されている。
【0011】
電圧センサ11は、二次電池2の端子間の電圧を検出するためのセンサである。電圧センサ11は、二次電池2の正極と負極に接続された配線の間に接続されている。電流センサ12は、二次電池2の入出力電流を検出するためのセンサである。電流センサ12は、二次電池2の正極又は負極に接続された配線に接続されている。電圧センサ11及び電流センサ12は電池の状態を検出しており、検出した値をコントローラ10に出力する。
【0012】
DCDCコンバータ13は、二次電池2から入力される電圧を、所定の電圧に変換し、モータ等の負荷に電力を出力する電力変換装置である。また、DCDCコンバータ13は、モータ等の負荷又は充電装置から入力される電圧を、所定の電圧に変換し、二次電池2に電力を出力する電力変換装置でもある。DCDCコンバータ13は、コントローラ10により制御される。DCDCコンバータ13の入力側には二次電池2が接続されており、DCDCコンバータ13の出力側には負荷が接続されている。負荷は、電力網等である。すなわち、二次電池2は、DCDCコンバータ13を介して負荷に接続されている。
【0013】
二次電池2は、たとえばリチウムイオン二次電池である。この種の二次電池2は、負極活物質として、リチウムイオンの挿入・脱離に伴って充放電電位が段階的に変化する複数の充放電領域を有する活物質を用いたものを例示することができる。このような活物質として、グラファイト構造を含有するグラファイト系活物質が好適である。そのため、以下に示す実施形態では、グラファイトと金属活物質を含む負極を備えるリチウムイオン二次電池を例示して本発明を説明する。なお、以下の説明では、二次電池2として、電解液リチウムイオン二次電池とする場合の構造及び材料について説明するが、二次電池2は、全固体リチウムイオン二次電池でもよい。また、以下、二次電池2として、ラミネート型の電池(ラミネート型セル)を例に挙げて説明するが、二次電池2は、角型の電池(角型セル)又は円筒型の電池(円筒型セル)でもよい。
【0014】
図2は、組み立て前の二次電池2の斜視図、及び、二次電池2の平面図を示す。図2(а)に示すように、二次電池2は、正極層21と、負極層22と、セパレータ23と、正極層21に接続された正極タブ24と、負極層22に接続された負極タブ25と、上部外装部材26および下部外装部材27とを備えている。正極層21、負極層22、及びセパレータ23で構成される発電要素、正極タブ24、負極タブ25は、上部外装部材26および下部外装部材27により封止されている状態で、収容されている。
【0015】
正極層21は、正極活物質と、カーボンブラック等の導電剤と、ポリフッ化ビニリデン等の結着剤と、N-メチル-2-ピロリドン等の有機溶媒とを加えてスラリーを調製してアルミニウム等の金属箔である正極側集電体の一部の主面に塗布し、乾燥およびプレスすることにより形成されている。正極活物質は、特に制限されないが、たとえば、ニッケル酸リチウム(LiNiO)、マンガン酸リチウム(LiMn)、コバルト酸リチウム(LiCoO)等のリチウム複合酸化物や、LiFePOやLiMnPO等が挙げられる。
【0016】
負極層22を構成する負極活物質層は、グラファイト(炭素)と金属の少なくとも2種類の活物質を混合させた負極活物質と、スチレンブタジエンゴム等の水系の結着剤と、溶媒として水とを混合し、スラリーを調製して、銅等の金属箔である負極側集電体の一部の主面に塗布し、乾燥およびプレスすることにより形成されている。負極活物質に含まれる金属は、Si、Sn、Sb、Pb、Al、Ge等を主たる元素とする金属、あるいは、これら主たる元素の金属の化合物などが挙げられる。
【0017】
セパレータ23は、上述した正極層21と負極層22との短絡を防止するもので、電解質を保持する機能を備えてもよい。このセパレータは、例えば、ポリエチレン(PE)やポリプロピレン(PP)等のポリオレフィン等から構成される微多孔性膜であり、過電流が流れると、その発熱によって、層の空孔が閉塞され、電流を遮断する機能をも有するものである。
【0018】
二次電池2に含有される電解液は、有機液体溶媒にホウフッ化リチウム(LiBF)、六フッ化リン酸リチウム(LiPF)などのリチウム塩を溶質として溶解させた液体である。電解液を構成する有機液体溶媒としては、たとえば、プロピレンカーボネート(PC)、エチレンカーボネート(EC)、ブチレンカーボネート(BC)、ジメチルカーボネート(DMC)、エチルメチルカーボネート(EMC)、ジエチルカーボネート(DEC)、ギ酸メチル(MF)、酢酸メチル(MA)、プロピオン酸メチル(MP)等のエステル系溶媒を挙げることができ、これらは混合して用いることができる。
【0019】
正極タブ24及び負極タブ25は、アルミニウム箔、アルミニウム合金箔、銅箔、または、ニッケル箔等を用いることができる。正極タブ24は正極層21の集電体に接合され、負極タブ25は負極層22に接合されている。
【0020】
図2(а)に示すように、正極層21と負極層22は、セパレータ23を介して積層されており、これらにより発電要素が形成されている。そして、正極層21及び負極層22の表面が覆われるよう、発電要素が上部外装部材26および下部外装部材27に収容される。上部外装部材26および下部外装部材27は、たとえば、ポリエチレンやポリプロピレンなどの樹脂フィルムや、アルミニウムなどの金属箔の両面をポリエチレンやポリプロピレンなどの樹脂でラミネートした、樹脂-金属薄膜ラミネート材など、柔軟性を有する材料で形成されている。そして、電池内部に電解液を注入して、正極タブ24および負極タブ25を外部に導出させた状態で、外装部材26、27の周囲が熱融着される封止されることで、二次電池2が構成されている。
【0021】
二次電池2は、充電装置に電気的に接続されている。二次電池2に接続されている充電装置は、たとえば、電気自動車やハイブリッド自動車に搭載された二次電池2への充電を行なうための装置である。車載された二次電池2への充電は、充電装置の充電ケーブルを取り出し、車両の充電ポートのコネクタに充電ケーブル先端の充電ガンを装着したのち、充電開始スイッチを操作することで行われる。コントローラ10は、二次電池2の充電状態(State of Charge:SOC)を管理しつつ、二次電池2の充電状態が目標となる充電状態になるように、DCDCコンバータ13及び充電装置をそれぞれ制御する。
【0022】
二次電池2は、モータ等の負荷に電気的に接続されている。負荷は、二次電池2の電力を使用して動作する装置であって、車両の駆動源となるモータや、エアーコンディショナーやライトなどの補器類等である。二次電池2の放電は、システム要求又は外部からの電力要求により、コントローラ10の制御の下、実行される。システム要求は、車両走行中に、ECUなどの車載コンピュータからの指令に相当する。外部からの電力要求について、例えば、車両の走行開始時に車室内が適温になるように、携帯端末などの車外装置からの指令で、タイマー設定で車両走行前にエアーコンディショナーを動作させる場合に、車外装置からの指令が、外部からの電力要求に相当する。
【0023】
また、電気自動車やハイブリッド自動車に搭載された二次電池2は、Vehicle Grid Integration(VGI)に利用されてもよい。VGIは、二次電池2を搭載した電気自動車やハイブリッド自動車を系統接続し、二次電池2に蓄積した電力を、電力網を介して系統(負荷)に供給する技術である。
【0024】
次に、リチウムイオン二次電池2の劣化特性とSOC使用範囲について説明する。本実施形態のような、グラファイトと金属活物質を混合させたものを負極に使用した場合には、金属活物質の寄与度が大きいSOC使用範囲で、二次電池2を充放電すると、金属活物質の劣化が促進する。図3は、二次電池2のサイクル数に対する容量維持率の特性を示すグラフである。サイクル数は、SOCを0%から100%の間で充放電を行った回数である。容量維持率は、初期状態の二次電池2の電池容量を1.0とした場合の劣化度を表している。図3において、グラフаは、負極活物質として金属活物質を含まずグラファイトを含む負極(以下、Gr負極とも称する)を備えた二次電池2の特性を示している。グラフbは、負極活物質としてグラファイトと金属の混合物を含む負極(以下、Gr/SiO負極とも称する)を備えた二次電池2の特性を示している。金属活物質は、Siを主たる元素とする金属化合物(SiO)である。図3に示すように、サイクル数の増加に伴い、Gr/SiO負極を備える二次電池2の容量維持率は、Gr負極を備える二次電池2の容量維持率よりも低くなる。つまり、Gr/SiO負極を備える二次電池2の方が、電池容量が早く低下する。
【0025】
図4のグラフは、Gr/SiO負極を備える二次電池2に対して、SOC使用範囲を50~100%にしたときの容量維持率と、SOC使用範囲を0~100%にしたときの容量維持率を示している。なお、SOC使用範囲を50~100%にしたときの特性は、サイクル数を約100としており、SOC使用範囲を0~100%にしたときの特性は、サイクル数を約50としている。SOC使用範囲は、二次電池2を使用可能な範囲をSOCで表した範囲であり、二次電池2のSOCがSOC使用範囲内に収まるように、二次電池2の充放電が行われる。図4に示すように、SOC使用範囲を50~100%にした場合には、SOC使用範囲を0~100%にした場合と比較して、サイクル数は約2倍になったとしても、SOC使用範囲を50~100%にした場合の容量維持率は、SOC使用範囲を0~100%にした場合の容量維持率よりも大きくなる。すなわち、Gr/SiO負極を備える二次電池2は、低いSOCにおける充放電を避けることで、電池容量の低下を抑制できる。
【0026】
このように、Gr/SiO負極を備える二次電池2は、SOCの低い使用範囲で充放電すると、金属活物質の寄与度が大きくなり、劣化が促進される。そのため、二次電池2の劣化を抑制するには、金属活物質の寄与度が小さいSOC使用範囲で充放電することが必要になる。また金属活物質の寄与度が小さいSOC使用範囲は、二次電池2の劣化状態に応じて変化するため、SOC使用範囲を検知する必要がある。
【0027】
これに対して、本実施形態では、二次電池2の充放電停止時において、交流電流入力に対する電圧応答を測定し、放電側の電圧応答である放電電圧応答と充電側の電圧応答である充電電圧応答との応答性の差異に基づいて、リチウムイオン二次電池の充電状態(SOC)の使用範囲(SOC使用範囲)を決定する。これにより、金属活物質の寄与度が大きいSOCの範囲を検知し、そのSOC範囲における充放電を避けることができる。本実施形態では、放電電圧応答と充電電圧応答との応答性の差異を表す指標として、放電電圧応答の振幅(ΔV_d)と充電電圧応答の振幅(ΔV_c)との比である電圧振幅比(ΔV_d/ΔV_c)の値を用いる。つまり、放電電圧応答と充電電圧応答との応答性の差異は、放電電圧振幅(ΔV_d)と充電電圧振幅(ΔV_c)との値の違いであり、比(ΔV_d/ΔV_c、ΔV_c/ΔV_d)や差(ΔV_d-ΔV_c、ΔV_c-ΔV_d)で示すことができる。
【0028】
図5(a)は交流電流入力(三角波)に対する電圧応答の応答性を示すグラフである。図5(a)のグラフaは二次電池2に対する交流電流の入力値を示しており、グラフbは当該交流電流に対する電圧応答を示している。但し、図5(a)に示す電圧の値は、交流電流により生じた電圧の値と二次電池2の休止状態におけるセル電圧との差分を示している。なお、Gr/SiO負極のGrとSiOの質量比は95:5とする。また、図5(a)は、SOCが10%である場合の交流電流入力に対する電圧応答の応答性を示しており、具体的には、周波数2Hz、電流振幅4mAの三角波を5秒間入力した場合の電圧変化を示している。
【0029】
図5(a)に示すように、二次電池2に交流電流を入力すると、当該交流電流に対する電圧応答を得ることができる。ΔV_(n)(nは正の整数であり、本例の場合n=4)は、図5(a)中の放電側(下に凸側)の頂点における放電電圧の値であり、放電電圧応答の振幅を示している。一方で、ΔV_(n)は、充電側(上に凸側)の頂点における放電電圧の値であり、充電電圧応答の振幅を示している。ΔV_(n)及びΔV_(n)は、二次電池2の休止状態におけるセル電圧との差分を取った後の値である。
【0030】
上記の放電電圧振幅(ΔV_)としては、図5(a)中のΔV_(n)の平均値を用いることができ、同様に、充電電圧振幅(ΔV_c)として、図5(a)中のΔV_(n)の平均値を用いることができる。本例では、4か所のΔV_(n)、ΔV_(n)から、充電電圧振幅(ΔV_)及び放電電圧振幅(ΔV_)を算出できる。そして、算出した充電電圧振幅(ΔV_)及び放電電圧振幅(ΔV_)から、電圧振幅比(ΔV_d/ΔV_c)を算出することができる。
【0031】
図5(b)はSOCに対する電圧振幅比(ΔV_d/ΔV_c)の特性を示すグラフである。ここでは、上記の図5(a)から算出したSOC(10%)の場合の電圧振幅比(ΔV_/ΔV_)に加えて、SOC(30%、50%)の場合の電圧振幅比(ΔV_/ΔV_)も示した。図5(b)に示すように、Gr/SiO負極を備える二次電池2は、SOCの値が小さくなるほど、電圧振幅比(ΔV_d/ΔV_c)の値が大きくなっていく傾向を有している。すなわち、SiOが充放電に大きく寄与するSOC範囲では、Grが寄与するSOC範囲に比べて、放電電圧振幅(ΔV_)が充電電圧振幅(ΔV_)に対して大きくなっている。
【0032】
電圧振幅比(ΔV_d/ΔV_c)が閾値(1.1)より大きくなるSOCの使用範囲内で、二次電池2を充放電した場合には、SiOの寄与度が大きいSOCの使用範囲で二次電池2を充放電することになるため、金属活物質の劣化が促進される。すなわち、電圧振幅比(ΔV_d/ΔV_c)を算出し、算出された電圧振幅比(ΔV_d/ΔV_c)が電圧振幅比閾値未満となるSOCの範囲を、SOC使用範囲として決定する。これにより、金属活性物の寄与度が大きいSOCの範囲を検知し、そのSOC範囲における充放電を避けることができる。
【0033】
なお、図5(a)及び図5(b)では、交流電流の波形が三角波である場合を例示しているが、交流電流の波形はこれに限定されない。上述した電圧振幅比(ΔV_d/ΔV_c)とSOCとの相関関係は、例えば、交流電流の波形が矩形波である場合も成立している。図6(a)は交流電流入力(矩形波)に対する電圧応答の応答性を示すグラフであり、図5(a)の交流電流を矩形波とした場合の電圧変化を示している。また、図6(b)はSOCに対する電圧振幅比(ΔV_d/ΔV_c)の特性を示すグラフである。
【0034】
このような場合にも、図6(b)に示すように、二次電池2は、SOCの値が小さくなるほど、電圧振幅比(ΔV_d/ΔV_c)の値が大きくなっていく傾向を有している。図6(b)に示す場合、電圧振幅比(ΔV_d/ΔV_c)は、SOC(約21%)以下の範囲で、1.1より大きくなっている。そして、電圧振幅比(ΔV_d/ΔV_c)が閾値(1.1)より大きくなるSOCの使用範囲内で、二次電池2を充放電した場合には、SiOの寄与度が大きいSOCの使用範囲で二次電池2を充放電することになるため、金属活物質の劣化が促進される。なお、交流電流の波形は、特に図示しないが、正弦波であってもよい。
【0035】
本実施形態において、コントローラ10は、二次電池2の充放電停止時において、交流電流入力に対する電圧応答を測定し、放電側の電圧応答である放電電圧応答と充電側の電圧応答である充電電圧応答との応答性の差異に基づいて、二次電池2の充電状態(SOC)の使用範囲(SOC使用範囲)を決定する。以下、この応答性の差異を示す値として電圧振幅比(ΔV_d/ΔV_c)を算出し、電圧振幅比(ΔV_d/ΔV_c)に基づき、SOC使用範囲の決定方法について説明する。図7は、SOC使用範囲を決定するシステムにおける制御処理の手順を示すフローチャートである。なお、SOC使用範囲の上限値(上限SOC)は予め設定されており、例えば100%又は80%に設定される。上限SOCは、二次電池2の仕様用途や劣化度等により変えてもよい。
【0036】
ステップS1にて、コントローラ10は、二次電池2と電力網との間に接続されているスイッチ(図示しない)をオンにして、二次電池2を電力網に接続する。
【0037】
ステップS2にて、コントローラ10は、充電電圧振幅(ΔV_)及び放電電圧振幅(ΔV_)を算出する。図8は、ステップS2における制御処理のサブフローを示すフローチャートである。コントローラ10は、図8に示すステップS21~26の制御処理を実行することで、充電電圧振幅(ΔV_)及び放電電圧振幅(ΔV_)を算出する。なお、コントローラ10は、ステップS21~26の制御処理とは別に、電圧センサ11及び電流センサ12を用いて、二次電池2の電圧及び電流を所定周期で検出している。検出周期(サンプルレート)は短いほど精度が高くなるが、例えば1秒(1Hz)に設定されている。なお、電池温度は、任意の温度でよいが、電池温度が低いほど電圧応答の振幅(ΔV)が大きくなり、電池温度が高いほど電圧応答の振幅(ΔV)が小さくなる。
【0038】
ステップS21にて、コントローラ10は、二次電池2を電力網に接続した後、1分以上、充放電を禁止して、二次電池2を休止状態とする。なお、電力網に接続する前に、二次電池が1分以上、休止状態になっている場合には、ステップS1における、電力網に接続した後の休止は設けなくてもよい。休止時間を1分以上とすることは一例にすぎず、休止時間は例えば10秒以上でもよい。休止時間が経過した後、ステップS22にて、コントローラ10は、休止状態における二次電池2のセル電圧V_0(開放電圧)をメモリに記憶する。
【0039】
ステップS23にて、コントローラ10は、二次電池2にn周期分(nは正の整数)の交流電流を入力する。ここで入力する交流電流は、放電側と充電側で振幅と波形が同じものであればよい。また、交流電流の波形は、充電側と放電側の波形が対称であれば任意の波形でよく、例えば、三角波、矩形波、又は正弦波であってもよい。また、交流電流の周波数は、SiOの充放電反応が現れる帯域内の値であれば任意の値でよい。また、計測周期(n)は任意の整数でよく、1周期分のピーク値としてもよい。また、電流値は任意の値でよいが、例えば、0.1Cであれば充分な精度を確保することができる。また、ステップS23では、交流電流により、放電を先に行い、充電を後に行ってもよいし、充電を先に行い、放電を後に行ってもよい。
【0040】
次に、ステップ24にて、各周期の放電側の電圧応答の振幅(V_(n))と、各周期の充電側の電圧応答の振幅(V_(n))を計測し、電圧振幅(V_(n)、V_(n))をメモリに記憶する。この際、電圧応答の振幅の値は、複数セルごとに計測してもよいし、1個のセルごとに計測してもよいが、1個のセルごとに計測すれば、より精度を向上できる。
【0041】
ステップS25にて、コントローラ10は、電圧振幅(V_(n)、V_(n))のそれぞれの平均値を算出することで、放電側の電圧応答の振幅の平均値(V_)及び充電側の電圧応答の振幅の平均値(V_)を算出する。次に、ステップ26にて、放電電圧振幅(ΔV_=V_0-V_)及び充電電圧振幅(ΔV_c=V_-V_0)を算出する。
【0042】
図7に戻り、ステップS2において放電電圧振幅(ΔV_)及び充電電圧振幅(ΔV_c)を算出した後、ステップS3にて、コントローラ10は電圧振幅比(ΔV_d/ΔV_c)を算出する。そして、電圧振幅比(ΔV_d/ΔV_c)と電圧振幅比閾値とを比較し、電圧振幅比(ΔV_d/ΔV_c)が電圧振幅比閾値未満であるか否かを判定する。電圧振幅比閾値は、SOC使用範囲の下限値を設定するための閾値であって、予め設定されている。電圧振幅比閾値は、二次電池2の使用用途等に応じて許容できる劣化速度及び/又は許容できる劣化度等に応じて設定されればよい。電圧振幅比閾値は、負極活物質の仕様(金属活物質の比率、金属活物質に使用される金属の種類等)に応じて設定されてもよい。また電圧振幅比閾値は、二次電池2の電圧及び/又は電流の検出精度等に応じて設定されてもよい。本実施形態では、電圧振幅比閾値は一例として1.1に設定されている。
【0043】
算出された電圧振幅比(ΔV_d/ΔV_c)が電圧振幅比閾値(1.1)より低い場合には、コントローラ10は、ステップS4~ステップS8の制御処理を実行する。一方、算出された電圧振幅比(ΔV_d/ΔV_c)が電圧振幅比閾値(1.1)以上である場合には、コントローラ10は、ステップS9~ステップS13の制御処理を実行する。
【0044】
ステップS4にて、コントローラ10は二次電池2を放電する。二次電池2の電圧振幅比(ΔV_d/ΔV_c)が電圧振幅比閾値(1.1)より低い場合には、二次電池2のSOCはSOC使用範囲の下限値より高いため、電圧振幅比閾値(1.1)に対応するSOC使用範囲の下限値を決めるために、SOCを下げる。ステップS5にて、コントローラ10は、放電を停止する。ステップS6にて、コントローラ10は、放電電圧振幅(ΔV_)及び充電電圧振幅(ΔV_c)を再度算出する。放電電圧振幅(ΔV_)及び充電電圧振幅(ΔV_c)の算出方法は、ステップS2の制御処理における算出方法と同様である。
【0045】
ステップS7にて、コントローラ10は電圧振幅比(ΔV_d/ΔV_c)と電圧振幅比閾値(1.1)とを比較し、電圧振幅比(ΔV_d/ΔV_c)が電圧振幅比閾値(1.1)以上であるか否か判定する。電圧振幅比(ΔV_d/ΔV_c)が電圧振幅比閾値(1.1)より低い場合には、コントローラ10は、制御処理のフローをステップS4に戻して、二次電池2を放電する。すなわち、ステップS4~S7の制御処理を繰り返し実行することで、SOCが高SOC側からSOC使用範囲の下限値に近づくように、電圧振幅比(ΔV_d/ΔV_c)を電圧振幅比閾値(1.1)に近づける。
【0046】
電圧振幅比(ΔV_d/ΔV_c)が電圧振幅比閾値(1.1)以上である場合には、ステップS8にて、コントローラ10は現在のSOCをSOC使用範囲の下限値(下限SOC)に決定する。つまり、コントローラ10は、電圧振幅比(ΔV_d/ΔV_c)が電圧振幅比閾値(1.1)に達した時のSOCを、SOC使用範囲の下限SOCとして決定する。
【0047】
ステップS9にて、コントローラ10は二次電池2を充電する。二次電池2の電圧振幅比(ΔV_d/ΔV_c)が電圧振幅比閾値(1.1)以上である場合には、二次電池2のSOCはSOC使用範囲の下限値以下であるため、電圧振幅比閾値(1.1)に対応するSOC使用範囲の下限値を決めるために、SOCを上げる。ステップS9の制御処理における充電は、SOC使用範囲外の充電になるため、二次電池2の劣化が促進されないよう、充電電流を小さくする。例えば、充電電流のレートは0.5C以下に設定されるとよい。ステップS10にて、コントローラ10は二次電池2の充電を停止する。次に、ステップ11にて、ントローラ10は、放電電圧振幅(ΔV_)及び充電電圧振幅(ΔV_c)を算出する。放電電圧振幅(ΔV_)及び充電電圧振幅(ΔV_c)の算出方法は、ステップS2の制御処理における算出方法と同様である。
【0048】
ステップS12にて、コントローラ10は電圧振幅比(ΔV_d/ΔV_c)と電圧振幅比閾値(1.1)とを比較し、電圧振幅比(ΔV_d/ΔV_c)が電圧振幅比閾値(1.1)未満であるか否か判定する。電圧振幅比(ΔV_d/ΔV_c)が電圧振幅比閾値(1.1)以上である場合には、コントローラ10は、制御処理のフローをステップS9に戻して、二次電池2を充電する。すなわち、ステップS9~S12の制御処理を繰り返し実行することで、SOCが低SOC側からSOC使用範囲の下限値に近づくように、電圧振幅比(ΔV_d/ΔV_c)を電圧振幅比閾値(1.1)に近づける。
【0049】
電圧振幅比(ΔV_d/ΔV_c)が電圧振幅比閾値(1.1)未満である場合には、ステップS13にて、コントローラ10は現在のSOCをSOC使用範囲の下限値(下限SOC)に決定する。つまり、コントローラ10は、電圧振幅比(ΔV_d/ΔV_c)が電圧振幅比閾値(1.1)に達した時のSOCを、SOC使用範囲の下限SOCとして決定する。そして、コントローラ10は、SOC使用範囲の決定するための制御処理のフローを終了させる。これにより、コントローラ10は、電圧振幅比(ΔV_d/ΔV_c)に基づきSOC使用範囲を決定する。
【0050】
そして、コントローラ10は、ステップS8、S13の制御処理により決定したSOC使用範囲を、算出された電圧振幅比(ΔV_d/ΔV_c)と対応させてメモリに保存する。コントローラ10は、二次電池2の通常使用時には、SOCがメモリに保存されたSOC使用範囲内になるよう、二次電池2の充電及び/又は放電を制御する。なお、二次電池2のSOC使用範囲は、二次電池2の劣化速度を抑制するための目標範囲であって、二次電池2は、SOC使用範囲外で充放電されてよい。また、二次電池2のSOC使用範囲を決定するために、前回決定されたSOC使用範囲を外れて、充放電を行ってもよい。
【0051】
ところで、リチウムイオン二次電池の電池容量を上げるために、負極活物質としてグラファイトと金属活物質を混合したものが負極に使用される。しかしながら、負極の金属活物質の寄与度が大きいSOCの範囲で充放電が行われると、劣化が促進される。本実施形態では、負極の金属活物質の寄与度が大きいSOCの範囲を高精度、短時間で検知できる。そして、負極の金属活物質の寄与度が大きいSOCの範囲を避けて、SOC使用範囲が決定さるため、金属活物質の劣化が少ないSOCの範囲内で充放電が行われる。その結果として、容量維持率の低下を抑制し、サイクル特性を高めることができる。
【0052】
上記のように本実施形態では、二次電池2の充放電を制御し、二次電池2の充放電停止時において、放電電圧振幅(ΔV_)及び充電電圧振幅(ΔV_c)を算出し、放電電圧振幅(ΔV_)と充電電圧振幅(ΔV_c)との差異に基づき、二次電池2のSOC使用範囲を決定する。なお、放電電圧振幅(ΔV_)と充電電圧振幅(ΔV_c)との差異は、電圧振幅比(ΔV_d/ΔV_c)に相当する。これにより、負極の金属活物質が寄与するSOCの範囲を短時間で把握し、その範囲の充放電を避けることができる。すなわち、長い充放電時間を確保できるような場面に限らず、二次電池2のSOC使用範囲を決定できる。また、SOC使用範囲が、負極の金属活物質の寄与度が大きいSOCの範囲を避けて設定される。そして、二次電池2の通常使用時には、SOC使用範囲内で充放電が行われるため、負極の金属活物質の劣化に伴う、リチウムイオン二次電池の容量低下を抑制できる。
【0053】
また、その他の方法として、充電時と放電時のEIS(Electro-chemical Impedance Spectroscopy)測定の測定値の差異からも金属活物質の寄与度が大きいSOC範囲を検知することが考えられる。EIS測定では、充電側及び放電側の交流インピーダンスの振幅の差異を考慮無しに解析されるため、充放電停止状態で計測しても交流インピーダンスが一意に決まるだけで、金属活物質の寄与の有無が判別できない。従って、EIS測定を利用する場合には、充放電中の計測結果の差異を見て判別する必要があり、2回の計測を要することになる。これに対して、本実施形態では、充放電停止状態で電圧応答の応答性を少なくとも1回計測するだけで、金属活物質の寄与の有無を判別できるため、EISを利用する方法に比べて1/2以下の時間で、放電電圧振幅(ΔV_)と充電電圧振幅(ΔV_c)との差異の判別が可能である。
【0054】
また、本実施形態では、放電電圧振幅(ΔV_)及び充電電圧振幅(ΔV_c)との差異を示す値(電圧振幅比(ΔV_d/ΔV_c)に相当する)が電圧振幅比閾値未満となるSOC使用範囲内で、二次電池2の充電及び/又は放電を制御する。これにより、負極の金属活物質の寄与度が大きいSOCの範囲を避けて充放電を制御できる。その結果として、負極の金属活物質の劣化に伴う、リチウムイオン二次電池の容量低下を抑制できる。
【0055】
また本実施形態では、負極の金属活物質はSiを含有する。これにより、電池容量を上げるために、金属活物質にSiを使用した場合に、負極の金属活物質の寄与度が大きいSOCの範囲を避けて充放電できるため、Siの劣化に伴うリチウムイオン二次電池の容量低下を抑制できる。
【0056】
また本実施形態では、二次電池2が電力網に接続された状態で、SOC使用範囲を決定する。これにより、二次電池2が電力網に接続している間に、負極の金属活物質の寄与度が大きいSOCの範囲を検知し、負極の金属活物質の寄与度が大きいSOCの範囲を避けながら、できるかぎり低いSOC範囲で充放電できる。その結果として、金属活物質の劣化と、高SOCであるほど促進する保存劣化の両方を抑制しつつ、SOC使用範囲を最適な範囲に設定できる。
【0057】
なお、本実施形態において、図7に示すステップS4~S7の制御処理を繰り返し実行することで、SOCを高SOC側からSOC使用範囲の下限値に近づけている。このとき、ステップS4の制御処理における放電時間を短くするほど、放電容量が細かく刻まれるため、SOC使用範囲の決定までに要する時間は長くなるが、精度は高くなる。
【0058】
また、本実施形態において、ステップS4の制御処理における放電は、時間の代わりに、SOCで区切ってもよい。例えば、SOC(1%)毎に、放電を区切って、放電電圧振幅(ΔV_)及び充電電圧振幅(ΔV_c)を算出し、SOC使用範囲を決定する。すなわち、SOC使用範囲は、SOC(1%)を単位あたりに調整される。そのため、SOC使用範囲の算出精度に誤差があったとしても、その誤差により、金属活物質の寄与度が大きいSOCの範囲をSOC(1%)未満に抑制できる。
【0059】
また、本実施形態において、ステップS6の制御処理の後、所定のSOC相当分、充電し、充電後のSOCをSOC使用範囲の下限値として決定してもよい。所定のSOCは、例えば5%に設定される。また本実施形態の変形例では、所定のSOCを1%にしてもよい。これにより、金属活物質の寄与度が大きいSOCの範囲に対して、所定のSOC相当分の余裕をもたせたSOCを、SOC使用範囲の下限値に決定できるため、負極の金属活物質の劣化に伴う、リチウムイオン二次電池の容量低下を抑制できる。
【0060】
なお、本実施形態において、図7に示すステップS9~S12の制御処理を繰り返し実行することで、SOCを低SOC側からSOC使用範囲の下限値に近づけている。このとき、ステップS9の制御処理における充電時間を短くするほど、充電容量が細かく刻まれるため、SOC使用範囲の決定までに要する時間は長くなるが、精度は高くなる。
【0061】
また本実施形態において、ステップS9の制御処理における充電は、時間の代わりに、SOCで区切ってもよい。例えば、SOC(1%)毎に、充電を区切って、放電電圧振幅(ΔV_)及び充電電圧振幅(ΔV_c)を算出し、SOC使用範囲を決定する。すなわち、SOC使用範囲は、SOC(1%)を単位あたりに調整される。そのため、SOC使用範囲の算出精度に誤差があったとしても、その誤差により、金属活物質の寄与度が大きいSOCの範囲をSOC(1%)未満に抑制できる。
【0062】
また、本実施形態において、ステップS12の制御処理の後、所定のSOC相当分、充電し、充電後のSOCをSOC使用範囲の下限値として決定してもよい。所定のSOCは、例えば5%に設定される。また本実施形態の変形例では、所定のSOCを1%にしてもよい。これにより、金属活物質の寄与度が大きいSOCの範囲に対して、所定のSOC相当分の余裕をもたせたSOCを、SOC使用範囲の下限値に決定できるため、負極の金属活物質の劣化に伴う、リチウムイオン二次電池の容量低下を抑制できる。
【0063】
また、本実施形態の変形例として、ステップS3の制御処理において、電圧振幅比(ΔV_d/ΔV_c)が電圧振幅比閾値(1.1)以上である場合には、コントローラ10は、二次電池2を充電し、電圧振幅比(ΔV_d/ΔV_c)が電圧振幅比閾値(1.1)未満になった後に、ステップS4~ステップS8の制御処理を実行して、SOC使用範囲を決定してもよい。
【0064】
なお、本実施形態において、コントローラ10は、放電電圧振幅(ΔV_)と充電電圧振幅(ΔV_c)との差異を示す値は、電圧振幅比(ΔV_d/ΔV_c)に限らず、電圧振幅差(ΔV_d-ΔV_c又はΔV_c-ΔV_d)でもよい。コントローラ10は、放電電圧振幅(ΔV_)と充電電圧振幅(ΔV_c)から電圧振幅差(ΔV_d-ΔV_c又はΔV_c-ΔV_d)を算出し、算出された電圧振幅差(ΔV_d-ΔV_c又はΔV_c-ΔV_d)に基づき、二次電池2のSOC使用範囲を決定してもよい。具体的には、ステップS3の制御フローにおいて、コントローラ10は、放電電圧振幅(ΔV_)と充電電圧振幅(ΔV_c)との差分を電圧振幅差(ΔV_d-ΔV_c又はΔV_c-ΔV_d)として算出する。そして、ステップS3、ステップS7、ステップS12において、電圧振幅比(ΔV_d/ΔV_c)の代わりに、コントローラ10は算出された電圧振幅差(ΔV_d-ΔV_c又はΔV_c-ΔV_d)と電圧振幅差閾値とを比較する。電圧振幅閾値は、電圧振幅比閾値と同様に予め設定される閾値である。そして、ステップS8及びステップS13において、コントローラ10は、算出された電圧振幅差(ΔV_d-ΔV_c又はΔV_c-ΔV_d)が電圧振幅差閾値に達した時のSOCを、SOC使用範囲の下限SOCに決定する。
【0065】
このように、本実施形態では、放電電圧振幅(ΔV_)と充電電圧振幅(ΔV_c)との差異を示す値として、放電電圧振幅(ΔV_)と充電電圧振幅(ΔV_c)との電圧振幅差(ΔV_d-ΔV_c又はΔV_c-ΔV_d)を算出し、算出された電圧振幅差(ΔV_d-ΔV_c又はΔV_c-ΔV_d)に基づき、二次電池2のSOC使用範囲を決定する。これにより、負極の金属活物質が寄与するSOCの範囲を短時間で把握し、その範囲の充放電を避けることができる。すなわち、長い充放電時間を確保できるような場面に限らず、二次電池2のSOC使用範囲を決定できる。また、SOC使用範囲が、負極の金属活物質の寄与度の高いSOCの範囲を避けて設定される。そして、二次電池2の通常使用時には、SOC使用範囲内で充放電が行わるため、負極の金属活物質の劣化に伴う、リチウムイオン二次電池の容量低下を抑制できる。
【0066】
また、SiOは、充電側過電圧と放電側過電圧とが異なっている。この充放電時の過電圧の差は、IR(電解液抵抗、活物質の電気抵抗等)とIR以外の過電圧(電荷移動抵抗、拡散抵抗等)に分けられるが、電圧振幅差(ΔV_d-ΔV_c又はΔV_c-ΔV_d)を算出することによりIRを相殺できるので、劣化等に伴うIR変化が生じても精度良くSiO寄与範囲を判別できる。これにより、SiOが寄与するSOC使用範囲をより正確に把握することができるため、SOC使用範囲の下限をSiOが寄与するSOC使用範囲の近傍まで拡大することができ、SOC使用範囲をより拡大することができる。
【0067】
なお、SOC使用範囲は、劣化前の電圧振幅比(ΔV_d/ΔV_c)を算出し、その算出結果から、SOC使用範囲の初期値を決定してもよい。SiOの理論容量(mAh/g)とSiO使用量(g)からSiO寄与容量を算出し、算出されたSiO寄与容量と、劣化前の二次電池2の電池容量から、劣化前において主にSiOが寄与するSOC範囲を算出できる。例えば、SiO寄与容量/電池容量=15%であれば、SOC範囲(0~15%)がSiOの寄与度が大きいSOC範囲となる。そして、そのSOC範囲(0~15%)避けた範囲(例えば、15~100%)がSOC使用範囲となる。
【0068】
また、上記例において、劣化前におけるSOC15%相当の電圧振幅比(ΔV_d/ΔV_c)を、電圧振幅比閾値として算出し、二次電池2の劣化後は、電圧振幅比(ΔV_d/ΔV_c)が電圧振幅比閾値となるSOCを、SOC使用範囲の下限SOCとする。これにより、二次電池2の劣化前後でも、負極の金属活物質の寄与度が大きいSOCの範囲を避けて充放電できる。
【0069】
なお、本実施形態に係る電池制御システムは、VGI以外の例として以下のような適用事例があげられる。一例として、二次電池2を使用した電気自動車において、SOC使用範囲の下限値より数パーセント程度高いSOC対して、バッテリー残量アラームを鳴らすためのアラーム用閾値を設定する。そして、通常走行中に、二次電池2のSOCが、アラーム用閾値まで低くなった場合には、アラームを出力し、ユーザに対して早期の充電を促す。
【0070】
また他の例として、二次電池2のSOCがSOC使用範囲の下限SOCまで低くなった場合には、モータの出力トルクに制限をかけるなど、二次電池2の放電電流を抑えてもよい。なお、このような出力制限は必ずしも常時、加える必要はなく、例えば、大きな加速性能が要求された場面(例えば、フルスロットル相当のトルク要求があった場合)等、限定的な条件を満たした場合に、出力制限を解除して、SOC使用範囲の下限SOC以下で、二次電池2を使用してもよい。これにより、負極の金属活物質の寄与度が大きいSOC範囲内での使用頻度を少なくし、二次電池2の劣化を抑制することができる。
【0071】
さらに他の例として、二次電池2を定置用電源に利用した場合、又は、二次電池2を備えた車両を、屋内用又は屋外用の外部電源として利用した場合も適用可能である。この際には、上記と同様に、下限SOC使用範囲の下限SOCに応じたアラーム設定を行ってもよい。
【0072】
≪第2実施形態≫
次に、第2実施形態に係る電池制御システムについて説明する。第2実施形態では、交流電圧入力に対する二次電池2の電流応答を算出し、放電側の電流応答である放電電流応答と充電側の電流応答である充電電流応答との応答性の差異に基づいて、SOC使用範囲を決定する。
【0073】
図9は、第2実施形態に係る二次電池の電池制御システムにおいて、SOC使用範囲を決定するシステムにおける制御処理の手順を示すフローチャートである。図10は、図9に示すステップS2’における制御処理のサブフローを示すフローチャートである。本実施形態では、放電電流応答と充電電流応答との応答性の差異として、放電電流応答の振幅(ΔI_d)と充電電流応答の振幅(ΔI_c)との比である電流振幅比(ΔI_d/ΔI_c)の値を用いて、SOC使用範囲を決定している。図9に示すフローチャートでは、図7のフローチャートの電圧応答を使用するステップS2,S3,S6,S7,S11,S12が、電流応答を用いるステップS2’,S3’,S6’,S7’,S11’,S12’に置き換えられている。以下、ステップS2’,S3’,S6’,S7’,S11’,S12’について詳細に説明する。そして、第1実施形態に係る判定システムと異なるステップ以外は、第1実施形態と同様の構成を有し、第1実施形態と同様の制御を実施し、第1実施形態と同様に動作するものであって、第1実施形態の記載を適宜、援用する。
【0074】
図9のステップS2’では、放電電流応答の振幅(ΔI_d)と充電電流応答の振幅(ΔI_c)とを算出する。このステップS2’では、コントローラ10は、図10に示すステップS21’~24’の制御処理を実行することで、放電電流応答の振幅(ΔI_d)と充電電流応答の振幅(ΔI_c)を算出する。
【0075】
ステップS21’にて、コントローラ10は、二次電池2を電力網に接続した後、1分以上、充放電を禁止して、二次電池2を休止状態とする。なお、電力網に接続する前に、二次電池が1分以上、休止状態になっている場合には、ステップS1における、電力網に接続した後の休止は設けなくてもよい。休止時間を1分以上とすることは一例にすぎず、休止時間は例えば10秒以上でもよい。
【0076】
ステップS22’にて、コントローラ10は、二次電池2にn周期分(nは正の整数)の交流電圧を入力する。ここで入力する交流電圧は、放電側と充電側で振幅と波形が同じものであればよい。また、交流電圧の波形は、充電側と放電側の波形が対称であれば任意の波形でよく、例えば、三角波、矩形波、又は正弦波であってもよい。また、計測周期(n)は任意の整数でよく、1周期分のピーク値としてもよい。また、交流電圧の周波数は、SiOの充放電反応が現れる帯域内の値であれば任意の値でよい。また、電圧値は任意の値でよいが、例えば、0.1Cであれば充分な精度を確保することができる。また、ステップS22’では、交流電圧により、放電を先に行い、充電を後に行ってもよいし、充電を先に行い、放電を後に行ってもよい。
【0077】
ステップS23’にて、コントローラ10は、各周期の放電側の電流応答の振幅(I_(n))と、各周期の充電側の電流応答の振幅(I_(n))を計測し、電流振幅(I_(n)、I_(n))をメモリに記憶する。この際、電流の振幅の値は、複数のセルごとに計測してもよいし、1個のセルごとに計測してもよいが、1個のセルごとに計測すれば、より精度を向上できる。
【0078】
ステップS24’にて、コントローラ10は、記憶した電流振幅(I_(n)、I_(n))から、それぞれの平均値を算出することで、放電側の電流応答の振幅の平均値(I_)及び充電側の電流応答の振幅の平均値(I_)を算出する。本実施形態では、平均値(I_)が放電電流応答の振幅(ΔI_d)であり、平均値(I_)が充電電流応答の振幅(ΔI_c)である。
【0079】
図9に戻り、ステップS2において放電電流応答振幅(ΔI_d)及び電電流応答振幅(ΔI_c)を算出した後、ステップS3にて、コントローラ10は電流振幅比(ΔI_d/ΔI_c)を算出する。そして、電流振幅比(ΔI_d/ΔI_c)と電流振幅比閾値とを比較し、電流振幅比(ΔI_d/ΔI_c)が電流振幅比閾値未満であるか否かを判定する。電流振幅比閾値は、SOC使用範囲の下限値を設定するための閾値であって、予め設定されている。電流振幅比閾値は、二次電池2の使用用途等に応じて許容できる劣化速度及び/又は許容できる劣化度等に応じて設定されればよい。電流振幅比閾値は、負極活物質の仕様(金属活物質の比率、金属活物質に使用される金属の種類等)に応じて設定されてもよい。また電流振幅比閾値は、二次電池2の電圧及び/又は電流の検出精度等に応じて設定されてもよい。本実施形態では、電流振幅比閾値は一例として1.1に設定されている。
【0080】
算出された電流振幅比(ΔI_d/ΔI_c)が電流振幅比閾値(1.1)より低い場合には、コントローラ10は、ステップS4~ステップS8の制御処理を実行する。一方、算出された電流振幅比(ΔI_d/ΔI_c)が電流振幅比閾値(1.1)以上である場合には、コントローラ10は、ステップS9~ステップS13の制御処理を実行する。
【0081】
ステップS4,S5は、第1実施形態と同様である。ステップS6’では、上記ステップS2’と同様の方法により、放電電流応答振幅(ΔI_d)及び電電流応答振幅(ΔI_c)を算出する。そして、ステップS7’にて、コントローラ10は電流振幅比(ΔI_d/ΔI_c)と電流振幅比閾値(1.1)とを比較し、電流振幅比(ΔI_d/ΔI_c)が電流振幅比閾値(1.1)以上であるか否か判定する。電流振幅比(ΔI_d/ΔI_c)が電流振幅比閾値(1.1)より低い場合には、コントローラ10は、制御処理のフローをステップS4に戻して、二次電池2を放電する。すなわち、ステップS4~S7’の制御処理を繰り返し実行することで、SOCが高SOC側からSOC使用範囲の下限値に近づくように、電流振幅比(ΔI_d/ΔI_c)を電流振幅比閾値(1.1)に近づける。
【0082】
電流振幅比(ΔI_d/ΔI_c)が電流振幅比閾値(1.1)以上である場合には、ステップS8にて、コントローラ10は現在のSOCをSOC使用範囲の下限値(下限SOC)に決定する。つまり、コントローラ10は、電流振幅比(ΔI_d/ΔI_c)が電流振幅比閾値(1.1)に達した時のSOCを、SOC使用範囲の下限SOCとして決定する。
【0083】
ステップS9,S10は、第1実施形態と同様である。ステップS11’では、上記ステップS2’と同様の方法により、放電電流応答振幅(ΔI_d)及び電電流応答振幅(ΔI_c)を算出する。そして、ステップS7’にて、コントローラ10は電流振幅比(ΔI_d/ΔI_c)と電流振幅比閾値(1.1)とを比較し、電流振幅比(ΔI_d/ΔI_c)が電流振幅比閾値(1.1)未満であるか否か判定する。電流振幅比(ΔI_d/ΔI_c)が電流振幅比閾値(1.1)以上である場合には、コントローラ10は、制御処理のフローをステップS9に戻して、二次電池2を充電する。すなわち、ステップS9~S12’の制御処理を繰り返し実行することで、SOCが低SOC側からSOC使用範囲の下限値に近づくように、電流振幅比(ΔI_d/ΔI_c)を電流振幅比閾値(1.1)に近づける。
【0084】
電流振幅比(ΔI_d/ΔI_c)が電流振幅比閾値(1.1)未満である場合には、ステップS13にて、コントローラ10は現在のSOCをSOC使用範囲の下限値(下限SOC)に決定する。つまり、コントローラ10は、電流振幅比(ΔI_d/ΔI_c)が電流振幅比閾値(1.1)に達した時のSOCを、SOC使用範囲の下限SOCとして決定する。そして、コントローラ10は、SOC使用範囲の決定するための制御処理のフローを終了させる。これにより、コントローラ10は、電流振幅比(ΔI_d/ΔI_c)に基づきSOC使用範囲を決定する。
【0085】
上記のような第2実施形態においても、第1実施形態と同様の効果を得ることができる。なお、本実施形態では、放電電流応答と充電電流応答との応答性の差異を示す値として、電流振幅比(ΔI_d/ΔI_c)の値を用いる例を説明したがこれに限定されない。例えば、当該差異を示す値として、電流振幅差(ΔI_d-ΔI_c又はΔI_c-ΔI_d)を用いてもよい。この場合、ステップS3’、S6’、S12’において、コントローラ10は、電流振幅比(ΔI_d/ΔI_c)の代わりに、電流振幅差(ΔI_d-ΔI_c又はΔI_c-ΔI_d)を算出する。そして、コントローラ10は、算出された電流振幅差(ΔI_d-ΔI_c又はΔI_c-ΔI_d)と電流振幅差閾値とを比較する。電流振幅差閾値は、電流振幅比閾値と同様に予め設定される閾値である。
【0086】
≪第3実施形態≫
次に、第3実施形態に係る電池制御システムについて説明する。第3実施形態では、SOC使用範囲の決定に要する時間を、第1実施形態よりさらに早くするために、SOC使用範囲を決定するための制御処理の一部を変更している。なお、以下に説明する点において第1実施形態に係る判定システムと異なること以外は、第1実施形態と同様の構成を有し、第1実施形態と同様の制御を実施し、第1実施形態と同様に動作するものであって、第1実施形態の記載を適宜、援用する。
【0087】
本実施形態において、コントローラ10は、例えば、二次電池2の充放電終了時など、所定のタイミングで、SOC使用範囲を決定する。また、コントローラ10は、SOC使用範囲を決定する際には、二次電池2のSOCがSOC使用範囲の下限SOCに近い値で、電圧振幅比(ΔV_d/ΔV_c)を算出するために、SOC使用範囲の下限SOCを含む所定SOC範囲を設定する。所定SOC範囲(以下、下限SOC決定範囲と称する)は、SOC使用範囲の下限SOCに対して、プラス側とマイナス側にそれぞれ所定SOC分(例えば±5%)広げた範囲である。そして、現在のSOCが下限SOC決定範囲外である場合には、コントローラ10は、二次電池2のSOCが下限SOC決定範囲内に含まれるように、二次電池2の充電又は放電を行う。そして、二次電池2のSOCが下限SOC決定範囲内になった後に、コントローラ10は、電圧振幅比(ΔV_d/ΔV_c)を算出し、電圧振幅比(ΔV_d/ΔV_c)に基づきSOC使用範囲を決定する。
【0088】
以下、放電電圧応答と充電電圧応答の応答性の差異を示す値として電圧振幅比(ΔV_d/ΔV_c)を算出し、算出された電圧振幅比(ΔV_d/ΔV_c)に基づきSOC使用範囲を決定するための制御処理を説明する。図11は、SOC使用範囲を決定するシステムにおける制御処理の手順を示すフローチャートである。ステップS31にて、コントローラ10は二次電池2を電力網に接続する。ステップS32にて、コントローラ10は二次電池2のSOCを推定する。SOCは、例えば、開放電圧(OCV)とSOCとの相関性を示すマップを用いたマップ演算により、推定すればよい。マップはコントローラ10内のメモリに格納されており、開放電圧(SOC)は、二次電池2を電力網に接続する直前の電池電圧に相当する。
【0089】
ステップS33にて、コントローラ10は推定されたSOCと、前回決定したSOC使用範囲の下限SOC(SOC_0)に所定SOC(5%)を加えた値(SOC_0+5%)とを比較し、推定されたSOCが「SOC_0+5%」より大きいか否か判定する。SOC_0+5%は、下限SOC決定範囲の上限値に相当する。
【0090】
推定されたSOCが下限SOC決定範囲の上限値(SOC_0+5%)より大きい場合には、ステップS34にて、コントローラ10は、SOCが上限値(SOC_0+5%)になるまで、二次電池2を放電する。SOCが上限値(SOC_0+5%)に達した後、ステップS35にて、コントローラ10は、放電を停止する。次に、ステップS36にて、コントローラ10は、放電電圧振幅(ΔV_)と充電電圧振幅(ΔV_)を算出する。放電電圧振幅(ΔV_)及び充電電圧振幅(ΔV_)の算出方法は、第1実施形態におけるステップS2の制御処理における算出方法と同様である。ステップS37にて、コントローラ10は電圧振幅比(ΔV_/ΔV_c)と電圧振幅比閾値(1.1)とを比較し、電圧振幅比(ΔV_/ΔV_c)が電圧振幅比閾値(1.1)以上であるか否か判定する。電圧振幅比(ΔV_/ΔV_c)が電圧振幅比閾値(1.1)より低い場合には、ステップS38にて、コントローラ10は、二次電池2を放電する。次に、ステップS39にて、二次電池の放電を停止する。そして、コントローラ10は、ステップS36及びステップS37の制御処理を再度実行する。
【0091】
一方で、電圧振幅比(ΔV_/ΔV_c)が電圧振幅比閾値(1.1)以上である場合には、ステップS40にて、コントローラ10は現在のSOCをSOC使用範囲の下限値(下限SOC)に決定する。
【0092】
ステップS33の比較判定の制御処理において、推定されたSOCが下限SOC決定範囲の上限値(SOC_0+5%)以下であると判定された場合には、ステップS41にて、コントローラ10は、推定されたSOCと、前回決定したSOC使用範囲の下限SOC(SOC_0)に所定SOC(5%)を引いた値(SOC_0-5%)とを比較し、推定されたSOCが「SOC_0-5%」より小さいか否か判定する。SOC_0-5%は、下限SOC決定範囲の下限値に相当する。
【0093】
推定されたSOCが下限SOC決定範囲の下限値(SOC_0-5%)より小さい場合には、ステップS42にて、コントローラ10は、SOCが下限値(SOC_0-5%)になるまで、二次電池2を充電する。SOCが下限値(SOC_0-5%)に達した後、ステップS43にて、コントローラ10は、充電を停止する。次に、ステップS44にて、放電電圧振幅(ΔV_)と充電電圧振幅(ΔV_)を算出する。放電電圧振幅(ΔV_)及び充電電圧振幅(ΔV_)の算出方法は、第1実施形態におけるステップS2の制御処理における算出方法と同様である。ステップS45にて、電圧振幅比(ΔV_/ΔV_c)と電圧振幅比閾値(1.1)とを比較し、電圧振幅比(ΔV_/ΔV_c)が電圧振幅比閾値(1.1)以下であるか否か判定する。電圧振幅比(ΔV_/ΔV_c)が電圧振幅比閾値(1.1)より高い場合には、ステップS46にて、コントローラ10は、二次電池2を充電する。次に、ステップS47にて、二次電池の充電を停止する。そして、コントローラ10は、ステップS44及びステップS45の制御処理を再度実行する。
【0094】
一方で、電圧振幅比(ΔV_/ΔV_c)が電圧振幅比閾値(1.1)以下である場合には、ステップS48にて、コントローラ10は現在のSOCをSOC使用範囲の下限値(下限SOC)に決定する。
【0095】
ステップS41の比較判定の制御処理において、推定されたSOCが下限SOC決定範囲の下限値(SOC_0-5%)以上であると判定された場合、すなわち、推定されたSOCが下限SOC決定範囲内である場合には、ステップS49にて、コントローラ10は放電電圧振幅(ΔV_)と充電電圧振幅(ΔV_)を算出する。放電電圧振幅(ΔV_)及び充電電圧振幅(ΔV_)の算出方法は、第1実施形態におけるステップS2の制御処理における算出方法と同様である。
【0096】
ステップS50にて、コントローラ10は、算出された電圧振幅比(ΔV_/ΔV_c)と電圧振幅比閾値(1.1)とを比較し、算出された電圧振幅比(ΔV_/ΔV_c)が電圧振幅比閾値(1.1)未満であるか否かを判定する。電圧振幅比(ΔV_/ΔV_c)が電圧振幅比閾値(1.1)未満である場合には、ステップS51にて、コントローラ10は二次電池2を放電する。そして、コントローラ10は、ステップS52~ステップS57の制御処理を実行する。ステップS52~ステップS57の制御処理は、ステップS35~ステップS40の制御処理と同様である。
【0097】
ステップS50の比較判定において、電圧振幅比(ΔV_/ΔV_c)が電圧振幅比閾値(1.1)以上である判定された場合には、ステップS58にて、コントローラ10は二次電池2を充電する。そして、コントローラ10は、ステップS59~ステップS64の制御処理を実行する。ステップS59~ステップS64の制御処理は、ステップS43~ステップS48の制御処理と同様である。
【0098】
そして、コントローラ10は、ステップS40、S48、S57、S64の制御処理により決定したSOC使用範囲を、算出された電圧振幅比(ΔV_/ΔV_c)と対応させてメモリに保存する。コントローラ10は、二次電池2の通常使用時には、SOCがメモリに保存されたSOC使用範囲内に含まれるように、二次電池2の充放電を制御する。
【0099】
図12は、ステップS32の制御処理で推定されたSOCの大きさと、二次電池2の充放電との関係を説明するためのグラフである。図12に示すように、下限SOC決定範囲は、前回決定したSOC使用範囲の下限値を中心に所定のSOC(±5%)の幅に設定されている。推定SOCが下限SOC決定範囲の上限値(SOC_0+5%)より大きい場合には、二次電池2が放電されるため、SOCは高SOC側から下限SOC決定範囲に近づく(図12の矢印Hを参照)。一方、推定SOCが下限SOC決定範囲の下限値(SOC_0-5%)より小さい場合には、二次電池2が充電されるため、SOCは低SOC側から下限SOC決定範囲に近づく(図12の矢印Lを参照)。そして、本実施形態では、SOCが下限SOC決定範囲内になった後に、電圧振幅比(ΔV_/ΔV_c)が算出され、電圧振幅比(ΔV_/ΔV_c)に基づき今回のSOC使用範囲が決定される。これにより、ステップS36~S39の制御ループ及びステップS53~S56の制御ループの繰り返し回数を減らすことができる。
【0100】
上記のように、本実施形態では、放電電圧応答と充電電圧応答の応答性の差異を示す値(電圧振幅比(ΔV_d/ΔV_c))と、決定されたSOC使用範囲と、を対応づけてメモリに記憶し、SOCが、前回決定した前記SOC使用範囲の下限値を含む所定SOC範囲内になるように、二次電池2の充電及び/又は放電を制御し、SOCが下限SOC決定範囲内になった後に、放電電圧応答と充電電圧応答の応答性の差異を示す値(電圧振幅比(ΔV_d/ΔV_c))を算出する。そして、SOCが下限SOC決定範囲内になった後に算出された、放電電圧応答と充電電圧応答の応答性の差異を示す値(電圧振幅比(ΔV_d/ΔV_c))に基づき、今回のSOC使用範囲を決定する。これにより、SOC使用範囲を決定する際に、負極の金属活物質の寄与度が高いSOCの範囲をできるだけ避けて充放電を制御できる。その結果として、負極の金属活物質の劣化に伴う、リチウムイオン二次電池の容量低下を抑制できる。
【0101】
なお本実施形態において、前回決定したSOC使用範囲の下限値を中心に所定のSOCの幅(例えば±5%)をもつよう下限SOC決定範囲を設定したが、SOCの幅は任意の値に設定できる。SOCの幅が大きすぎると、ステップS36~S39の制御ループ及びステップS53~S56の制御ループの回数が多くなる可能性がある。また、SOCの幅が小さすぎると、算出された電圧振幅比(ΔV_d/ΔV_c)が電圧振幅比閾値より大きくなったり小さくなったりを繰り返し、電圧振幅比閾値に収束しないおそれがある。そのため好ましくは、SOCの幅は、SOCの推定誤差の2倍程度にするとよい。
【0102】
なお、本実施形態において、コントローラ10は、放電電圧振幅(ΔV_d)と充電電圧振幅(ΔV_c)から電圧振幅差(ΔV_d-ΔV_c又はΔV_c-ΔV_d)を算出し、算出された電圧振幅差(ΔV_d-ΔV_c又はΔV_c-ΔV_d)に基づき、二次電池2のSOC使用範囲を決定してもよい。ステップS36、S44、S49、S53、S60、において、コントローラ10は、電圧振幅比(ΔV_d/ΔV_c)の代わりに、電圧振幅差(ΔV_d-ΔV_c又はΔV_c-ΔV_d)を算出する。ステップS37、S45、S50、S54、S61において、コントローラ10は、算出された電圧振幅差(ΔV_d-ΔV_c又はΔV_c-ΔV_d)と電圧振幅差閾値とを比較する。電圧振幅差閾値は、電圧振幅比閾値と同様に予め設定される閾値である。そして、ステップS37、S45、S54、S61において、コントローラ10は、算出された電圧振幅差(ΔV_d-ΔV_c又はΔV_c-ΔV_d)が電圧振幅差閾値に達した時のSOCを、SOC使用範囲の下限SOCに決定する。
【0103】
以上、本発明の実施形態について説明したが、これらの実施形態は、本発明の理解を容易にするために記載されたものであって、本発明を限定するために記載されたものではない。したがって、上記の実施形態に開示された各要素は、本発明の技術的範囲に属する全ての設計変更や均等物をも含む趣旨である。
【実施例
【0104】
以下、本発明を、さらに詳細な実施例に基づき説明するが、本発明は、これら実施例に限定されない。
【0105】
<試作品(実施例)の作成>
負極活物質としてグラファイトカーボン(Gr)とケイ素酸化物(SiO)を質量比95:5で混合し、バインダ(結着剤)としてスチレンブタジエンゴム(SBR)を使用し、スラリーにして銅箔上に塗布することで、負極層を作成した。正極活物質としてニッケル酸リチウム(NCA)を、導電助剤としてカーボンブラックを、バインダ(結着剤)としてPVDFを使用し、スラリーにしてアルミニウム箔上に塗布することで、正極層を作成した。セパレータとしてポリエチレン(PE)フィルムを使用した。電解液として、エチレンカーボネート(EC)/ジメチルカーボネート(DMC)/エチルメチルカーボネート(EMC)混合溶媒に六フッ化リン酸リチウム(LiPF)を溶解させたものを使用した。負極層、セパレータ、及び正極層を重ねたものをアルミラミネートで挟み込み、その内部に電解液を注入し、ラミネート周囲を封止することで、テスト用セル(試作品)を作成した。
【0106】
<実施例の評価>
(1)試作品に対して、SOCを調整するために次のような充放電を行った。まず、放電電流値(0.2C)で、電池電圧が2.5Vになるまで放電した。放電後、SOC10%に相当する目標電圧まで、充電電流値(0.2C)で充電した。SOC10%に相当する目標電圧に達した後は、定電圧充電に移行し、充電電流値が0.01Cまで低下した時点で充電終了とした。
(2)(1)SOC調整後の試作品に対して、以下の要領で電圧変化を測定した。まず、充電終了後1分以上経過した後、試作品に対して、交流電流を5秒間入力して、電圧変化を記録した。この交流電流の周波数は2Hz、電流振幅は4mA、波形は三角波とした。この際の電圧変化は、交流電流の入力前の電圧に対する変化代として記録した。そして放電側の電圧のピーク値V_(n)、充電側ピーク値V_(n)を算出した。ここで、nは周期の数を表す正の整数であり、本実施例では、nの値は10である。次に、算出した10点のV_(n)及びV_(n)の平均値を算出することで、放電電圧振幅(ΔV_)と充電電圧振幅(ΔV_)を算出した。最後に、放電電圧振幅(ΔV_)を充電電圧振幅(ΔV_)で除して、電圧振幅比(ΔV_/ΔV_)を算出した。
(3)(2)の電圧測定後の試作品に対して、SOC30%に相当する目標電圧まで、充電電流値(0.2C)で充電した。SOC30%に相当する目標電圧に達した後は、電流値が0.01Cに低下するまで定電圧充電を行った(SOC調整)。
(4)(2)と同様の方法で、交流電流を印加することで充放電制御を行い、その際の電圧変化を記録し、電圧振幅比(ΔV_/ΔV_)を算出した。
(5)(4)以降、SOC50%に相当する電圧を目標電圧として、(3)のSOC調整を行い、(4)の電圧変化測定(電圧振幅比(ΔV_/ΔV_)の算出を含む)を行った。
【0107】
<実施例の評価結果>
SOCを10%に調整した後、(2)で測定された電圧変化をプロットすると、図13(a)のグラフのような測定結果が得られた。図13(a)において、グラフаは交流電流の変化を表し、グラフbは交流電流に対する電圧応答を表している。(1)~(5)の評価方法により、各SOC(10%、30%、50%)に対して、算出した電圧振幅(ΔV_、ΔV_)をプロットすると、図13(b)~図13(d)のグラフのような測定結果が得られた。図13(b)~図13(d)おいて、横軸はSOCで共通しており、縦軸は、電圧振幅(ΔV_、ΔV_)、電圧振幅(ΔV_、ΔV_)の比(ΔV_/ΔV_)、及び電圧振幅(ΔV_、ΔV_)の差分(ΔV_-ΔV_)をそれぞれ表している。また、図13(b)において、グラフаは放電電圧振幅(ΔV_)の変化を表し、グラフbは充電電圧振幅(ΔV_)の変化を表している。
【0108】
図13(c)及び図13(d)に示すように、SOCが30%以下の範囲で、電圧振幅(ΔV_、ΔV_)の比(ΔV_/ΔV_)及び差分(ΔV_-ΔV_)は、SOCが30%より大きい範囲内の値と比較して大きくなることが確認できる。つまり、実施例では、SiOが充放電に大きく寄与するSOC範囲では、Grが寄与するSOC範囲に比べて、充電時と放電時の電圧応答の振幅の差異が大きくなることが確認できた。
【符号の説明】
【0109】
1…判定装置
2…二次電池
10…コントローラ
11…電圧センサ
12…電流センサ
13…DCDCコンバータ
21…正極層
22…負極層
23…セパレータ
24…正極タブ
25…負極タブ
26…上部外装部材
27…下部外装部材
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13