(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-21
(45)【発行日】2024-07-01
(54)【発明の名称】シングルレバー水栓
(51)【国際特許分類】
E03C 1/044 20060101AFI20240624BHJP
E03C 1/042 20060101ALI20240624BHJP
【FI】
E03C1/044
E03C1/042 C
(21)【出願番号】P 2020200059
(22)【出願日】2020-12-02
【審査請求日】2023-09-06
(73)【特許権者】
【識別番号】000144072
【氏名又は名称】SANEI株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000394
【氏名又は名称】弁理士法人岡田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】芝原 翔
【審査官】村川 雄一
(56)【参考文献】
【文献】米国特許第07575025(US,B2)
【文献】特許第4732530(JP,B2)
【文献】特開2010-229625(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E03C 1/00 - 1/10
F16K 31/44 - 31/62
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
水栓本体の意匠面を成す化粧カバーと、前記水栓本体内の湯水混合用のカートリッジとの連結部から前記化粧カバーに形成されたカバー通し孔へと延びる操作軸と、該操作軸の頭部に連結されて前記カバー通し孔の外部に設けられるレバーハンドルと、を有するシングルレバー水栓であって、
更に、前記化粧カバーの意匠面側に
面状に重ね合わ
されるように設けられて前記カバー通し孔を外部に対して覆う可動式の化粧プレートであって、前記操作軸が前記レバーハンドルの操作により前記カートリッジとの連結部を支点に軸を傾ける動作に追従して前記化粧カバー上を摺動する
平板状の前記化粧プレートを有するシングルレバー水栓。
【請求項2】
水栓本体の意匠面を成す化粧カバーと、前記水栓本体内の湯水混合用のカートリッジとの連結部から前記化粧カバーに形成されたカバー通し孔へと延びる操作軸と、該操作軸の頭部に連結されて前記カバー通し孔の外部に設けられるレバーハンドルと、を有するシングルレバー水栓であって、
更に、前記化粧カバーの意匠面側に重ね合わせ状に設けられて前記カバー通し孔を外部に対して覆う可動式の化粧プレートであって、前記操作軸が前記レバーハンドルの操作により前記カートリッジとの連結部を支点に軸を傾ける動作に追従して前記化粧カバー上を摺動する前記化粧プレートを有し、
前記操作軸が、前記レバーハンドルの操作により、前記カバー通し孔の孔軸方向に真っ直ぐ延びる直立位置と、該直立位置から水栓奥側に傾けられる後傾位置と、の間で動かされる構成とされ、
前記カバー通し孔が、前記操作軸の前記直立位置における軸心よりも水栓奥側に偏心した位置に中心を持つ丸孔とされるシングルレバー水栓。
【請求項3】
水栓本体の意匠面を成す化粧カバーと、前記水栓本体内の湯水混合用のカートリッジとの連結部から前記化粧カバーに形成されたカバー通し孔へと延びる操作軸と、該操作軸の頭部に連結されて前記カバー通し孔の外部に設けられるレバーハンドルと、を有するシングルレバー水栓であって、
更に、前記化粧カバーの意匠面側に重ね合わせ状に設けられて前記カバー通し孔を外部に対して覆う可動式の化粧プレートであって、前記操作軸が前記レバーハンドルの操作により前記カートリッジとの連結部を支点に軸を傾ける動作に追従して前記化粧カバー上を摺動する前記化粧プレートを有し、
前記レバーハンドルの前記操作軸の頭部と連結される基部が、前記化粧プレートに形成されたプレート通し孔に通されるシングルレバー水栓。
【請求項4】
請求項3に記載のシングルレバー水栓であって、
前記レバーハンドルの前記基部が、前記カバー通し孔にも通されるシングルレバー水栓。
【請求項5】
水栓本体の意匠面を成す化粧カバーと、前記水栓本体内の湯水混合用のカートリッジとの連結部から前記化粧カバーに形成されたカバー通し孔へと延びる操作軸と、該操作軸の頭部に連結されて前記カバー通し孔の外部に設けられるレバーハンドルと、を有するシングルレバー水栓であって、
更に、前記化粧カバーの意匠面側に重ね合わせ状に設けられて前記カバー通し孔を外部に対して覆う可動式の化粧プレートであって、前記操作軸が前記レバーハンドルの操作により前記カートリッジとの連結部を支点に軸を傾ける動作に追従して前記化粧カバー上を摺動する前記化粧プレートを有し、
前記化粧カバーが矩形板状とされ、前記化粧プレートが前記化粧カバーよりも小さい円板状とされるシングルレバー水栓。
【請求項6】
請求項1から請求項5のいずれかに記載のシングルレバー水栓であって、
前記化粧カバーが、前記水栓本体の天板面を成すシングルレバー水栓。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シングルレバー水栓に関する。詳しくは、水栓本体の意匠面を成す化粧カバーと、化粧カバーに形成されたカバー通し孔を通って水栓本体内の湯水混合用のカートリッジとの連結部から外部へ向けて延びる操作軸と、操作軸の外部へ抜けた先から延びるレバーハンドルと、を有するシングルレバー水栓に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、水栓本体の頭部に設けられるレバーハンドルの操作により、吐水する湯水の温度調節や吐水・止水の切り替え、吐水量の調節を行うことが可能なシングルレバー水栓が開示されている。上記レバーハンドルは、その基部の周囲が化粧カバーにより覆われている。それにより、レバーハンドルは、その基部に連結されるカートリッジの操作軸のまわりに上下左右に動かされた際に、水栓本体との間に形成される隙間が外部に対して露出しにくい構成とされている。
【0003】
具体的には、レバーハンドルは、その基部に連結されるカートリッジの操作軸が、化粧カバーの中央部に空けられた通し孔を通って、通し孔の下方でカートリッジに連結された構成とされる。それにより、レバーハンドルは、カートリッジに対して、操作軸と一体的となって操作軸を中心に左右に旋回するように動かされたり操作軸の基端を中心に上下に傾動するように動かされたりする構成とされる。
【0004】
上記化粧カバーの下部には、更に、レバーハンドルの基部の動きに追従して化粧カバーに対して摺動する化粧プレートが設けられている。この化粧プレートの設定により、化粧カバーの通し孔がレバーハンドルの動きを許容するために広く形成されていても、基部との隙間が外部に露出しにくくなっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記従来技術では、化粧カバーが、化粧プレートを間に挟んで操作軸の基端から離れた配置となる構成とされる。そのため、化粧カバーの通し孔内で上下に傾動する操作軸の基端からの回転半径が大きくなり、通し孔の大型化、延いては化粧カバーの大型化を招く懸念がある。そこで、本発明は、化粧カバーの小型化を図ることが可能なシングルレバー水栓を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明のシングルレバー水栓は次の手段をとる。すなわち、シングルレバー水栓は、水栓本体の意匠面を成す化粧カバーと、水栓本体内の湯水混合用のカートリッジとの連結部から化粧カバーに形成されたカバー通し孔へと延びる操作軸と、操作軸の頭部に連結されてカバー通し孔の外部に設けられるレバーハンドルと、を有する。シングルレバー水栓は、更に、化粧カバーの意匠面側に重ね合わせ状に設けられてカバー通し孔を外部に対して覆う可動式の化粧プレートであって、操作軸がレバーハンドルの操作によりカートリッジとの連結部を支点に軸を傾ける動作に追従して化粧カバー上を摺動する化粧プレートを有する。
【0008】
なお、操作軸は、カバー通し孔を通って外部に突出する長い形状から成るものの他、カバー通し孔を通らず水栓本体内に埋没する短い形状から成るものであっても良い。操作軸がカバー通し孔を通らない短い形状から成る場合、この操作軸の頭部に連結されるレバーハンドルの基部がカバー通し孔を通ることとなる。
【0009】
上記構成によれば、化粧カバーが、化粧プレートよりも操作軸の傾動の支点に近い配置となる。そのため、カバー通し孔に必要な孔径、すなわち操作軸の傾動を逃がすのに必要な孔径を小さく抑えることができ、化粧カバーの小型化を図ることができる。
【0010】
また、本発明のシングルレバー水栓は、更に次のように構成されていてもよい。操作軸が、レバーハンドルの操作により、カバー通し孔の孔軸方向に真っ直ぐ延びる直立位置と、直立位置から水栓奥側に傾けられる後傾位置と、の間で動かされる構成とされる。カバー通し孔が、操作軸の直立位置における軸心よりも水栓奥側に偏心した位置に中心を持つ丸孔とされる。
【0011】
上記構成によれば、カバー通し孔を、操作軸の可動範囲に応じて最適化した形状とすることができる。
【0012】
また、本発明のシングルレバー水栓は、更に次のように構成されていてもよい。レバーハンドルの操作軸の頭部と連結される基部が、化粧プレートに形成されたプレート通し孔に通される。
【0013】
上記構成によれば、レバーハンドルの基部と化粧プレートとを互いに近接させた配置としつつも、レバーハンドルの操作により操作軸を傾動させた際に、レバーハンドルの基部が化粧プレートと干渉する不具合を生じさせにくくすることができる。また、レバーハンドルの基部の底縁が外部に露出しにくくなるため、基部周辺の見栄え品質を更に向上させることができる。
【0014】
また、本発明のシングルレバー水栓は、更に次のように構成されていてもよい。レバーハンドルの基部が、カバー通し孔にも通される。
【0015】
上記構成によれば、レバーハンドルの基部がプレート通し孔とカバー通し孔とに跨って深く差し込まれることとなる。したがって、レバーハンドルの基部の底縁が、操作軸を傾動させても外部に露出しにくくなるため、基部周辺の見栄え品質を更に向上させることができる。
【0016】
また、本発明のシングルレバー水栓は、更に次のように構成されていてもよい。化粧カバーが矩形板状とされ、化粧プレートが化粧カバーよりも小さい円板状とされる。
【0017】
上記構成によれば、化粧カバーを大型化することなく矩形板状の角張る形状にすることができると共に、化粧プレートを化粧カバーから出っ張りにくい円板状の丸まった形状にして、基部周辺の見栄え品質を更に向上させることができる。
【0018】
また、本発明のシングルレバー水栓は、更に次のように構成されていてもよい。化粧カバーが、水栓本体の天板面を成す。
【0019】
上記構成によれば、使用者から見えやすい水栓本体の天板面にレバーハンドルが設けられる構成であっても、天板面の見栄え品質を適切に向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】第1の実施形態に係るシングルレバー水栓の概略構成を表す斜視図である。
【
図5】レバーハンドルを中立位置から引き上げた操作状態を表す平面図である。
【
図7】レバーハンドルを水側位置から引き上げた操作状態を表す平面図である。
【
図8】レバーハンドルを湯側位置から引き上げた操作状態を表す平面図である。
【
図9】水栓本体からレバーハンドル等の取付部品を外した分解斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下に、本発明を実施するための形態について、図面を用いて説明する。
【0022】
《第1の実施形態》
(シングルレバー水栓1の概略構成について)
始めに、本発明の第1の実施形態に係るシングルレバー水栓1の構成について、
図1~
図9を用いて説明する。なお、以下の説明において、手前、奥、上、下、左、右等の各方向を示す場合には、各図中に示されたそれぞれの方向を指すものとする。また、以下の説明において、具体的な参照図を示さない場合、或いは参照図に該当する符号がない場合には、
図1~
図9のいずれかの図を適宜参照するものとする。
【0023】
図1に示すように、本実施形態に係るシングルレバー水栓1は、図示しない洗面化粧台の天板上に設置される、いわゆる台付きタイプの混合水栓とされる。上記シングルレバー水栓1は、不図示の天板の下側から供給される湯と水とを内部で混合して吐出することができる機能を備える。
【0024】
具体的には、シングルレバー水栓1は、供給される湯と水との混合割合を内部で調節することが可能な温調機能を備える。また、シングルレバー水栓1は、混合した湯水の吐水/止水を切り替えることが可能な切替機能と、吐出する湯水の量を調節することが可能な吐出量の調節機能と、を備える。
【0025】
上記湯水の混合割合の調節と、吐水/止水の切り替えと、吐出量の調節とは、全て、水栓本体2の頭部に取り付けられた1本のレバーハンドル3の操作によって行われる。具体的には、使用者がレバーハンドル3の先端の操作部3Aを摘んで左右に回転位置を変えるように操作することで、水栓本体2の内部に設けられた湯水混合用のカートリッジ8が操作されて、水栓本体2の内部で混合される湯水の混合割合が回転位置に応じた設定温度となるように調節される。
【0026】
また、使用者がレバーハンドル3の操作部3Aを摘んで上向きに引き上げるように操作することで、その回転移動量に応じた量の湯水が、水栓本体2の正面に設けられた吐水口2Aから吐出される。また、使用者がレバーハンドル3の操作部3Aを引き上げた位置から元の高さ位置へと戻すことで、吐水口2Aからの吐水が止められる。
【0027】
上記水栓本体2の吐水口2Aの下部には、吐水口2Aから吐出された湯水を下方から受けて前方へと送り流す吐水板4が取り付けられている。上記水栓本体2は、不図示の天板上から角筒状に立ち上がる外観形状に形成されている。
【0028】
なお、本実施形態では、レバーハンドル3が
図2に示すように使用者の立つ正面側(前側)に真っ直ぐ向けられた状態を中立位置の状態として、この中立位置を含む中立位置から右側の回転操作領域が、どの回転位置でも供給された水をそのままの温度で吐出するように温度設定する冷水設定領域とされる。また、上記レバーハンドル3の中立位置から左側の回転操作領域が、回転操作量の増大と共に湯の混合割合を増大させる温水設定領域とされる。
【0029】
図3~
図4に示すように、上記レバーハンドル3は、その基部3Bが、水栓本体2の頭部に取り付けられた化粧カバー5のカバー通し孔5Aに上方から通されて、水栓本体2の内部に設けられたカートリッジ8の操作軸9(栓棒)と連結されている。詳しくは、レバーハンドル3は、その基部3Bが、上記化粧カバー5の上部に重ね合わせ状に設けられた化粧プレート6のプレート通し孔6Aにも上方から通されて、化粧プレート6を前後方向に引き連れて動くことができるように係合された構成とされる。
【0030】
上記化粧プレート6の設定により、化粧カバー5のカバー通し孔5Aがレバーハンドル3の動きを許容するために広く形成されていても、カバー通し孔5Aと基部3Bとの間の隙間が外部に露出しにくくなっている。以下、上記化粧構造の各部の具体的な構成について、周辺構造と併せて詳しく説明する。
【0031】
(各部の構成について)
図9には、シングルレバー水栓1の主要部の分解斜視図が示されている。同図に示すように、シングルレバー水栓1は、水栓本体2と、レバーハンドル3と、吐水板4と、化粧カバー5と、化粧プレート6と、ガイドプレート7と、カートリッジ8と、操作軸9と、を備える。
【0032】
レバーハンドル3は、
図3~
図4に示すように、高さ方向に円錐台状に延びる基部3Bと、基部3Bの頭頂付近から図示前上側に向けてアーチ状に湾曲して延びる操作部3Aと、を有する形状とされる。基部3Bは、化粧プレート6に形成されたプレート通し孔6Aと化粧カバー5に形成されたカバー通し孔5Aとにそれぞれ上方から通されている。そして、基部3Bは、水栓本体2の内部に設けられたカートリッジ8の頭部8Aとの連結部から上方に延びる角棒状の操作軸9と一体的に連結されている。
【0033】
具体的には、基部3Bは、上記操作軸9に上方から嵌め込まれた後、後方からビスBで締結されることにより、操作軸9と一体的に連結されている。操作軸9は、その下端部が、カートリッジ8の頭部8Aに対し、図示左右方向に延びる基軸9Aにより回転可能なように連結されている。ここで、基軸9Aが、本発明の「連結部」に相当する。
【0034】
カートリッジ8の頭部8Aは、カートリッジ8の本体部8Bに対し、互いに内外に嵌り合う筒の嵌合構造により、カートリッジ8の高さ方向に延びる中心軸Aのまわりに回転することができるように組み付けられた構成とされる。上記構成により、カートリッジ8は、レバーハンドル3が左右に動かされる操作に併せて頭部8Aが本体部8Bに対して回転し、本体部8B内での湯水の混合割合が調節されるようになっている。
【0035】
また、カートリッジ8は、レバーハンドル3が上下に動かされる動作に併せて操作軸9が傾動することにより、本体部8B内での吐水/止水の切り替えや吐水時の吐出量の調節が行われるようになっている。なお、カートリッジ8は、特開2020-46067号公報等の文献に開示されたものと同一の公知の構成となっているため、詳細な構成についての説明は省略することとする。
【0036】
上記操作軸9は、
図3~
図4に示すように、レバーハンドル3が引き上げ操作される前の止水位置にある状態では、カートリッジ8の中心軸Aの軸線上を上方に真っ直ぐ延びるように直立した直立位置の状態とされる。詳しくは、操作軸9は、レバーハンドル3が上記止水位置にある状態では、レバーハンドル3が左右方向に回されても、中心軸Aのまわりを旋回するのみで、直立位置の状態に保持されるようになっている。
【0037】
上記操作軸9は、
図5~
図6に示すように、レバーハンドル3が上記止水位置から引き上げられる吐水操作により、基軸9Aを中心に奥側に傾けられた後傾位置の状態へと切り替えられる。詳しくは、操作軸9は、レバーハンドル3が
図2~
図4で前述した正面側に向けられた中立位置から上方に引き上げられた時には、
図5~
図6に示すように、基軸9Aを中心に水栓本体2の奥側に真っ直ぐ傾けられる。
【0038】
しかし、操作軸9は、
図7に示すように、レバーハンドル3が上記中立位置から右側に回された冷水設定領域から上方に引き上げられた時には、基軸9Aを中心に水栓本体2の左奥側に斜めに傾けられる。また、操作軸9は、
図8に示すように、レバーハンドル3が上記中立位置から左側に回された温水設定領域から上方に引き上げられた時には、基軸9Aを中心に水栓本体2の右奥側に斜めに傾けられる。
【0039】
化粧カバー5は、
図2~
図4に示すように、水栓本体2の天板の意匠面を成す矩形板状の化粧部材として構成される。上記化粧カバー5は、角筒状に形成された水栓本体2の上部開口に上から嵌め込まれてセットされる。同セットにより、化粧カバー5は、水栓本体2の頭部に水栓本体2の周囲側面よりもひとまわり大きく縁が張り出す状態に設けられる。それにより、化粧カバー5は、上記張り出す縁によって水栓本体2との間の見切り線を上方から覆う、見栄え品質の良い意匠面を形成する構成とされる。
【0040】
上記化粧カバー5の略中央部には、高さ方向に丸孔状に貫通するカバー通し孔5Aが形成されている。このカバー通し孔5Aは、同カバー通し孔5Aに通されるレバーハンドル3の基部3Bの外径よりも大きな孔径を持つ形に形成されている。具体的には、カバー通し孔5Aは、
図2~
図8で前述した、レバーハンドル3が上下に動かされたり左右に動かされたりする操作によって、レバーハンドル3の基部3Bが操作軸9と共に中心軸Aのまわりに旋回したり旋回した各位置から奥側に傾けられたりするそれぞれの動きを許容できる広さに形成されている。
【0041】
より具体的には、カバー通し孔5Aは、レバーハンドル3の基部3B及び操作軸9が、
図3~
図4に示す直立位置から
図6に示したように奥側に傾けられることはあっても、手前側(前側)に傾けられることがないことから、操作軸9が直立位置とされる時の基部3Bの直ぐ手前側の位置から奥側へ大きく広がるような丸孔形状に形成されている。それにより、カバー通し孔5Aは、操作軸9の直立位置における軸心(中心軸A)よりも奥側に偏心した位置に孔の中心を持つ丸孔形状に形成されている(
図2~
図4等参照)。
【0042】
化粧プレート6は、
図2~
図4に示すように、上記化粧カバー5の上部に重ね合わせ状に設けられて、化粧カバー5のカバー通し孔5Aを上方から被覆する円板状の化粧部材として構成される。上記化粧プレート6は、化粧カバー5よりは小さく、化粧カバー5に空けられたカバー通し孔5Aよりは大きな直径を持つ円板形状とされる。上記化粧プレート6の中央部には、高さ方向に丸孔状に貫通するプレート通し孔6Aが形成されている。
【0043】
このプレート通し孔6Aは、上述したカバー通し孔5Aよりも小さな孔径を持つ形状とされる。詳しくは、プレート通し孔6Aは、同プレート通し孔6Aに通されるレバーハンドル3の基部3Bの外径よりも僅かに大きな孔径を持つ形状とされる。それにより、化粧プレート6は、
図3~
図4及び
図6に示すように、プレート通し孔6Aに通されたレバーハンドル3の基部3Bがレバーハンドル3の上下動作によって奥側に傾けられたり直立位置へ戻されたりする動きに合わせて、基部3Bに引き連れられる形で化粧カバー5上を前後方向に摺動するようになっている。
【0044】
なお、化粧プレート6は、プレート通し孔6Aに通されたレバーハンドル3の基部3Bがレバーハンドル3の左右動作によって旋回される時には、プレート通し孔6Aの内部で基部3Bの旋回を許容し、レバーハンドル3の動きには追従しないようになっている。上記化粧プレート6は、その下面部に、プレート通し孔6Aの周縁に沿って下方に張り出す円筒状の下筒部6Bを有する。
【0045】
上記下筒部6Bは、化粧プレート6が化粧カバー5上にセットされるのに合わせて、化粧カバー5のカバー通し孔5A内に上方から通される。また、下筒部6Bは、化粧カバー5の下部に下方から重ね合わせ状にセットされるリング板形状のガイドプレート7のリング内にも上方から通される。そして、下筒部6Bは、上記通された先の箇所で、外周部にCリング6C(C形止め輪)が嵌め込まれて、Cリング6Cと化粧カバー5との間にガイドプレート7を挟み込んだ状態にセットされる。
【0046】
上記ガイドプレート7は、カバー通し孔5Aよりも大きな直径を持つ円板形状とされる。したがって、上記組み付けにより、化粧プレート6が、化粧カバー5に対して上方に抜け止めされた状態にセットされ、レバーハンドル3の操作に追従して化粧カバー5上を前後に摺動することができる状態となる。
【0047】
ところで、上述したカートリッジ8の頭部8Aに連結された操作軸9は、化粧カバー5のカバー通し孔5Aと化粧プレート6のプレート通し孔6Aとを通って水栓本体2から上方に突出した状態にセットされる構成とされる。それにより、操作軸9は、操作軸9にレバーハンドル3の基部3Bを取り付ける際、水栓本体2の頭部に化粧カバー5と化粧プレート6とがセットされた状態からであっても、これらから上部に突出することで外部から視認しやすく、かつ、取り付け作業を行いやすい状態とされる構成とされる。
【0048】
レバーハンドル3の基部3Bは、上記操作軸9に対し、化粧プレート6のプレート通し孔6Aと化粧カバー5のカバー通し孔5Aとに跨って入り込む位置まで上方から深く差し込まれて連結される構成とされる。それにより、レバーハンドル3の基部3Bは、操作軸9に対して、高い連結強度で連結されている。また、レバーハンドル3の基部3Bは、その深い差し込みにより、底縁が外部に露出しにくくなっている。
【0049】
詳しくは、
図6に示すように、レバーハンドル3の基部3Bは、その引き上げ操作により操作軸9の傾動の支点である基軸9Aを中心に傾けられても、その底縁が化粧プレート6の下筒部6Bの筒内に位置し、プレート通し孔6Aから上方に引き上げられないようになっている。上記構成により、レバーハンドル3の基部3Bの周辺の見栄え品質が適切に高められている。
【0050】
上記化粧カバー5は、化粧プレート6の上部にではなく下部に位置する構成とされる。そのようなことから、化粧カバー5は、化粧プレート6よりも操作軸9の傾動の支点である基軸9Aに近い配置とされ、カバー通し孔5Aに必要な孔径、すなわち操作軸9の傾動を逃がすのに必要な孔径を小さく抑えることができる構成とされる。それにより、化粧カバー5に必要な直径も小さく抑えられており、化粧カバー5の小型化を通して水栓本体2の頭部の見栄え品質が適切に高められている。
【0051】
また、化粧プレート6が化粧カバー5のカバー通し孔5Aを下方からではなく上方から被覆する構成となっていることで、レバーハンドル3の基軸9Aよりも大きく開口するカバー通し孔5A内に上方から水が侵入しにくくなっている。加えて、化粧カバー5と化粧プレート6とによって形成される水栓本体2の天板形状が下に凹ではなく上に凸となる段差形状となるため、天板上に水や埃等の異物が滞留しにくい。したがって、その点からも水栓本体2の頭部の見栄え品質を適切に高めることができる。また、水栓本体2の頭部をより清掃しやすい構成とすることができる。
【0052】
(まとめ)
以上をまとめると、第1の実施形態に係るシングルレバー水栓1は、次のような構成となっている。なお、以下において括弧書きで付す符号は、上記実施形態で示した各構成に対応する符号である。
【0053】
すなわち、シングルレバー水栓(1)は、水栓本体(2)の意匠面を成す化粧カバー(5)と、水栓本体(2)内の湯水混合用のカートリッジ(8)との連結部から化粧カバー(5)に形成されたカバー通し孔(5A)へと延びる操作軸(9)と、操作軸(9)の頭部に連結されてカバー通し孔(5A)の外部に設けられるレバーハンドル(3)と、を有する。シングルレバー水栓(1)は、更に、化粧カバー(5)の意匠面側に重ね合わせ状に設けられてカバー通し孔(5A)を外部に対して覆う可動式の化粧プレート(6)を有する。
【0054】
化粧プレート(6)は、操作軸(9)がレバーハンドル(3)の操作によりカートリッジ(8)との連結部(9A)を支点に軸を傾ける動作に追従して化粧カバー(5)上を摺動する。上記構成によれば、化粧カバー(5)が、化粧プレート(6)よりも操作軸(9)の傾動の支点に近い配置となる。そのため、カバー通し孔(5A)に必要な孔径、すなわち操作軸(9)の傾動を逃がすのに必要な孔径を小さく抑えることができ、化粧カバー(5)の小型化を図ることができる。
【0055】
また、操作軸(9)が、レバーハンドル(3)の操作により、カバー通し孔(5A)の孔軸方向に真っ直ぐ延びる直立位置と、直立位置から水栓奥側に傾けられる後傾位置と、の間で動かされる構成とされる。カバー通し孔(5A)が、操作軸(9)の直立位置における軸心よりも水栓奥側に偏心した位置に中心を持つ丸孔とされる。上記構成によれば、カバー通し孔(5A)を、操作軸(9)の可動範囲に応じて最適化した形状とすることができる。
【0056】
また、レバーハンドル(3)の操作軸(9)の頭部と連結される基部(3B)が、化粧プレート(6)に形成されたプレート通し孔(6A)に通される。上記構成によれば、レバーハンドル(3)の基部(3B)と化粧プレート(6)とを互いに近接させた配置としつつも、レバーハンドル(3)の操作により操作軸(9)を傾動させた際に、レバーハンドル(3)の基部(3B)が化粧プレート(6)と干渉する不具合を生じさせにくくすることができる。また、レバーハンドル(3)の基部(3B)の底縁が外部に露出しにくくなるため、基部(3B)周辺の見栄え品質を更に向上させることができる。
【0057】
また、レバーハンドル(3)の基部(3B)が、カバー通し孔(5A)にも通される。上記構成によれば、レバーハンドル(3)の基部(3B)がプレート通し孔(6A)とカバー通し孔(5A)とに跨って深く差し込まれることとなる。したがって、レバーハンドル(3)の基部(3B)の底縁が、操作軸(9)を傾動させても外部に露出しにくくなるため、基部(3B)周辺の見栄え品質を更に向上させることができる。
【0058】
また、化粧カバー(5)が矩形板状とされ、化粧プレート(6)が化粧カバー(5)よりも小さい円板状とされる。上記構成によれば、化粧カバー(5)を大型化することなく矩形板状の角張る形状にすることができると共に、化粧プレート(6)を化粧カバー(5)から出っ張りにくい円板状の丸まった形状にして、基部(3B)周辺の見栄え品質を更に向上させることができる。
【0059】
また、化粧カバー(5)が、水栓本体(2)の天板面を成す。上記構成によれば、使用者から見えやすい水栓本体(2)の天板面にレバーハンドル(3)が設けられる構成であっても、天板面の見栄え品質を適切に向上させることができる。
【0060】
《その他の実施形態について》
以上、本発明の実施形態を1つの実施形態を用いて説明したが、本発明は上記実施形態のほか、以下に示す様々な形態で実施することができるものである。
【0061】
1.本発明のシングルレバー水栓は、洗面化粧台の天板上に設置される台付きタイプの他、浴室の壁面に設置される壁付きタイプの構成であっても良い。また、シングルレバー水栓は、レバーハンドルが水栓本体の頭部に設けられるタイプの他、水栓本体の側部に横向きに取り付けられるタイプであっても良い。また、シングルレバー水栓は、水栓本体の頭部より低い位置に台座を段差状に有し、この台座上にレバーハンドルが縦向きに取り付けられるタイプの構成であっても良い。
【0062】
2.上記レバーハンドルの取り付け位置に対応して、水栓本体の意匠面を成す化粧カバーも、水栓本体の天板面の他、水栓本体の周囲側面や頭部より低い位置に設けられる台座の天板面を成す位置にカバー通し孔を有する構成であっても良い。カバー通し孔は、カートリッジの操作軸の軸心と同心の丸孔形状とされるものであっても良い。また、カバー通し孔は、丸孔形状の他、矩形や三角形その他の異形の孔形状から成るものであっても良い。化粧カバーの形状は、水栓本体の形態やその適用位置に応じて適宜形状に形成されるものであり、矩形板状から成るものに限らず、円板状その他の異形の板形状から成るものであっても良い。
【0063】
3.化粧プレートも同様に、その形状は、化粧カバーの形状に応じて適宜形状に形成されるものであり、円板状から成るものに限らず、矩形板状その他の異形の板形状から成るものであっても良い。化粧プレートに形成されるプレート通し孔は、レバーハンドルの基部の形状(或いは基部が通されず操作軸のみが通される場合には操作軸の形状)に応じて適宜形状に形成されるものであり、丸孔形状以外の形状から成るものであっても良い。
【0064】
4.操作軸は、必ずしも化粧カバーのカバー通し孔と化粧プレートのプレート通し孔とを通って外部に突出するものでなくても良く、カバー通し孔のみ通るものや、カバー通し孔も通らず水栓本体内に埋没する短い形状から成るものであっても良い。このような構成であっても、操作軸をレバーハンドルの基部と連結することができる構成であれば良い。なお、カートリッジとの連結部から延びる操作軸がカバー通し孔を通らないような短い構成となる場合、この操作軸の頭部と連結されるレバーハンドルの基部が、カバー通し孔を通って設けられることとなる。
【0065】
5.レバーハンドルの基部も、必ずしも化粧プレートのプレート通し孔と化粧カバーのカバー通し孔とを通って操作軸の頭部と連結されるものでなくても良い。すなわち、レバーハンドルの基部は、プレート通し孔には通されるがカバー通し孔には通されない位置や、プレート通し孔にも通されない位置までしか操作軸に差し込まれない構成であっても構わない。このような構成であっても、化粧プレートを、プレート通し孔に通されるレバーハンドルの基部や操作軸の動作によって追従動作させることは可能である。
【符号の説明】
【0066】
1 シングルレバー水栓
2 水栓本体
2A 吐水口
3 レバーハンドル
3A 操作部
3B 基部
4 吐水板
5 化粧カバー
5A カバー通し孔
6 化粧プレート
6A プレート通し孔
6B 下筒部
6C Cリング
7 ガイドプレート
8 カートリッジ
8A 頭部
8B 本体部
9 操作軸
9A 基軸(連結部)
B ビス
A 中心軸