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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-21
(45)【発行日】2024-07-01
(54)【発明の名称】発光装置
(51)【国際特許分類】
   H01L 33/50 20100101AFI20240624BHJP
   H01L 33/60 20100101ALI20240624BHJP
【FI】
H01L33/50
H01L33/60
【請求項の数】 15
(21)【出願番号】P 2020205077
(22)【出願日】2020-12-10
(65)【公開番号】P2022092321
(43)【公開日】2022-06-22
【審査請求日】2023-06-29
(73)【特許権者】
【識別番号】000131430
【氏名又は名称】シチズン電子株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000001960
【氏名又は名称】シチズン時計株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100114018
【弁理士】
【氏名又は名称】南山 知広
(74)【代理人】
【識別番号】100180806
【弁理士】
【氏名又は名称】三浦 剛
(74)【代理人】
【識別番号】100160716
【弁理士】
【氏名又は名称】遠藤 力
(72)【発明者】
【氏名】小池 詩織
(72)【発明者】
【氏名】木下 丈
(72)【発明者】
【氏名】須藤 友紀
【審査官】皆藤 彰吾
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2015/0369997(US,A1)
【文献】特開2019-041009(JP,A)
【文献】特開2015-097235(JP,A)
【文献】特開2020-077676(JP,A)
【文献】特開2013-089645(JP,A)
【文献】特開2013ー143430(JP,A)
【文献】韓国公開特許第10-2017-0019551(KR,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 33/50
H01L 33/60
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1波長を有する光を上面及び側面から出射する発光素子と、
前記発光素子上に配置され、前記発光素子から出射された光を透過する透明部材と、
前記透明部材上に配置され、前記発光素子から出射された光を反射する反射部材と、
前記発光素子及び前記透明部材の側面を覆うように配置され、前記発光素子の前記上面から前記透明部材に入射された光、及び前記発光素子の前記側面から出射された光が入射することに応じて前記第1波長と異なる第2波長を有する光を出射する蛍光体を含有する封止部材と、
を有する、ことを特徴とする発光装置。
【請求項2】
前記反射部材上に配置され、前記発光素子及び前記蛍光体から出射された光を透過せず、且つ、平面視したときの面積が前記透明部材よりも大きい遮光部材を更に有する、請求項1に記載の発光装置。
【請求項3】
前記遮光部材の反射率は、前記反射部材の反射率よりも低い、請求項2に記載の発光装置。
【請求項4】
前記反射部材は、光を透過しない高反射アルミニウム材で形成される、請求項1に記載の発光装置。
【請求項5】
平面視したときの前記透明部材の面積は、平面視したときの前記発光素子の面積よりも大きく且つ平面視したときの前記反射部材の面積より小さく、
前記透明部材は、外縁が前記発光素子の外縁と前記反射部材の外縁の間に位置するように配置される、請求項1~3の何れか一項に記載の発光装置。
【請求項6】
前記透明部材の外縁と前記発光素子の外縁との間の距離は、前記透明部材の外縁と前記反射部材の外縁との間の距離よりも短い、請求項5に記載の発光装置。
【請求項7】
前記透明部材は、フィラーを含有しない、請求項1~6の何れか一項に記載の発光装置。
【請求項8】
前記透明部材は、前記発光素子の上面を覆うが、前記発光素子の側面は覆わない、請求項1~7の何れか一項に記載の発光装置。
【請求項9】
屈折率が前記透明部材の屈折率よりも高く、前記発光素子の上面と前記透明部材の下面とを接着する第1接着部材を更に有する、請求項1~8の何れか一項に記載の発光装置。
【請求項10】
前記第1接着部材は、前記発光素子の側面から前記透明部材の外縁に向かって延伸する第1フィレットを有し、
前記第1フィレットの端部は、前記透明部材の外縁から離隔するように配置される、請求項9に記載の発光装置。
【請求項11】
前記透明部材の側面から前記反射部材の外縁に向かって延伸する第2フィレットを有し、前記透明部材の上面と前記反射部材の下面とを接着する第2接着部材を更に有し、
前記第2フィレットの端部は、前記反射部材の外縁から離隔するように配置される、請求項10に記載の発光装置。
【請求項12】
前記透明部材の硬度は、前記第1接着部材及び前記第2接着部材の硬度よりも低い、請求項11に記載の発光装置。
【請求項13】
前記透明部材の厚さは、0.05mm以上であり且つ0.7mm以下である、請求項1~12の何れか一項に記載の発光装置。
【請求項14】
前記反射部材に対向する前記透明部材の上面の屈折率は、前記発光素子に対向する前記透明部材の下面の屈折率よりも低い、請求項1~13の何れか一項に記載の発光装置。
【請求項15】
前記透明部材は、前記透明部材の下面から上面に向かって含有率が増加するように配置されたフィラーを含有する、請求項1~14の何れか一項に記載の発光装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発光装置に関する。
【背景技術】
【0002】
蛍光体を含有した封止部材によって発光素子を封止すると共に、封止部材の上方に透明部材を介して反射部材を配置し、発光装置からの光を側面から出射する発光装置が知られている(例えば、特許文献1を参照)。特許文献1に記載される発光装置では、蛍光体を含有した封止部材を介して出射される光の強度と、透明部材を介して出射される光の強度が相違するため、装飾性の高い光を側面から出射することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2013-118244号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載される発光装置では、封止部材を介して出射される光の色度と、透明部材を介して出射される光の色度との間に差が生じないように、蛍光体を含有した封止部材が発光素子と透明部材との間に配置される。一方、側面発光型の発光装置を含めて、発光装置は、小型化及び薄型化が望まれている。発光素子上に透明部材との間に配置される封止部材の厚さを薄くすることで、発光装置は、薄型化が可能であるが、封止部材を介して出射される光の色度と透明部材を介して出射される光の色度とが相違するおそれがあり、好ましくない。また、封止部材及び透明部材を介することなく、発光素子の上面に反射部材を配置することで、均一な色度を有する光を出射することができるが、発光素子の上面から出射される光が反射部材によって遮断されるため、発光効率が低下するおそれがある。
【0005】
本発明は、このような課題を解決するものであり、均一な色度を有する光を発光効率を高く出射可能な発光装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る発光装置は、第1波長を有する光を出射する発光素子と、発光素子上に配置され、発光素子から出射された光を透過する透明部材と、透明部材上に配置され、発光素子から出射された光を反射する反射部材と、発光素子及び透明部材の側面を覆うように配置され、発光素子から出射された光が入射することに応じて第1波長と異なる第2波長を有する光を出射する蛍光体を含有する封止部材とを有する。
【0007】
さらに、本発明に係る発光装置は、反射部材上に配置され、発光素子及び蛍光体から出射された光を透過せず、且つ、平面視したときの面積が透明部材よりも大きい遮光部材を更に有することが好ましい。
【0008】
さらに、本発明に係る発光装置では、遮光部材の反射率は、反射部材の反射率よりも低いことが好ましい。
【0009】
さらに、本発明に係る発光装置では、反射部材は、光を透過しない高反射アルミニウム材で形成されることが好ましい。
【0010】
さらに、本発明に係る発光装置では、平面視したときの透明部材の面積は、平面視したときの発光素子の面積よりも大きく且つ平面視したときの反射部材の面積より小さく、透明部材は、外縁が発光素子の外縁と反射部材の外縁の間に位置するように配置されることが好ましい。
【0011】
さらに、本発明に係る発光装置では、透明部材の外縁と発光素子の外縁との間の距離は、透明部材の外縁と反射部材の外縁との間の距離よりも短いことが好ましい。
【0012】
さらに、本発明に係る発光装置では、透明部材は、フィラーを含有しないことが好ましい。
【0013】
さらに、本発明に係る発光装置では、透明部材は、発光素子の上面を覆うが、発光素子の側面は覆わないことが好ましい。
【0014】
さらに、本発明に係る発光装置は、屈折率が透明部材の屈折率よりも高く、発光素子の上面と透明部材の下面とを接着する第1接着部材を更に有することが好ましい。
【0015】
さらに、本発明に係る発光装置では、第1接着部材は、発光素子の側面から透明部材の外縁に向かって延伸する第1フィレットを有し、第1フィレットの端部は、透明部材の外縁から離隔するように配置されることが好ましい。
【0016】
さらに、本発明に係る発光装置では、透明部材の側面から反射部材の外縁に向かって延伸する第2フィレットを有し、透明部材の上面と反射部材の下面とを接着する第2接着部材を更に有し、第2フィレットの端部は、反射部材の外縁から離隔するように配置されることが好ましい。
【0017】
さらに、本発明に係る発光装置では、透明部材の硬度は、第1接着部材及び第2接着部材の硬度よりも低いことが好ましい。
【0018】
さらに、本発明に係る発光装置では、透明部材の厚さは、0.05mm以上であり且つ0.7mm以下であることが好ましい。
【0019】
さらに、本発明に係る発光装置では、反射部材に対向する透明部材の上面の屈折率は、発光素子に対向する透明部材の下面の屈折率よりも低いことが好ましい。
【0020】
さらに、本発明に係る発光装置では、透明部材は、透明部材の下面から上面に向かって含有率が増加するように配置されたフィラーを含有することが好ましい。
【発明の効果】
【0021】
本発明に係る発光装置は、均一な色度を有する光を発光効率を高く出射することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】第1実施形態に係る発光装置の斜視図である。
図2】(a)は図1に示すA-A線に沿う断面図であり、(b)は図1に示す発光素子から出射される光の経路の一例を示す図である。
図3】(a)は図1に示す発光装置の発光状態の平面図であり、(b)は拡散板の下方に配置された図1に示す発光装置の発光状態の平面図であり、(c)は、図1に示す発光装置の視野角と、図1に示す発光装置から出射される光の強度との関係を示す図である。
図4】第2実施形態に係る発光装置の断面図である。
図5】(a)は図4に示す発光装置の発光状態の平面図であり、(b)は拡散板の下方に配置された図4に示す発光装置の発光状態の平面図であり、(c)は、図4に示す発光装置の視野角と、図4に示す発光装置から出射される光の強度との関係を示す図である。
図6】第3実施形態に係る発光装置の断面図である。
図7】第4実施形態に係る発光装置の断面図である。
図8図2に示す反射部材、図4に示す反射部材及び図7に示す遮光部材、並びに図6に示す反射部材の反射率を示す図である。
図9図1に示す発光装置の製造方法を示す図であり、(a)は第1工程を示し、(b)は第2工程を示し、(c)は第3工程を示し、(d)は第4工程を示し、(e)は第5工程を示し、(f)は第6工程を示す。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、図面を参照して、本発明に係る発光装置について説明する。ただし、本発明の技術的範囲はそれらの実施の形態には限定されず、特許請求の範囲に記載された発明とその均等物に及ぶ点に留意されたい。
【0024】
(第1実施形態に係る発光装置の構成及び機能)
図1は第1実施形態に係る発光装置の斜視図であり、図2(a)は図1に示すA-A線に沿う断面図であり、図2(b)は図1に示す発光素子から出射される光の経路の一例を示す図である。図2(b)は、図2(a)に示す断面図と同様に、図1に示すA-A線に沿う発光装置の断面図である。
【0025】
発光装置1は、発光素子10と、第1接着部材11と、第2接着部材12と、透明部材13と、反射部材14と、封止部材15とを有し、発光素子10から出射された光を4つの側面16から出射する。発光装置1は、例えば一辺の長さが1.1mm又は1.5mmである正方形状の平面形状を有するチップサイズパッケージ(Chip Size Package、CSP)型のLED(Light Emitting Diode)発光装置である。
【0026】
発光素子10は、アノード17とカソード18との間に順方向電圧が印加されることに応じて青色の光を出射する青色LEDダイであり、矩形の平面形状を有する。発光素子10から出射される青色の光の主波長は、第1波長の一例であり、445nmと495nmとの間の範囲内であり、一例では450nmである。発光素子10は、屈折率が1.7である透明な基板であるサファイヤ基板上に窒化ガリウム(GaN)層により形成されるPN接合層を積層して形成され、上面及び側面から青色光を出射する。発光素子10は、例えば一辺の長さが0.6mm又は1.0mmである正方形状の平面形状を有する。発光素子10の厚さは、例えば0.2mmである。
【0027】
発光素子10は、発光部を形成するPN接合部とアノード17及びカソード18との間に不図示の反射層が形成される。発光素子10は、PN接合部とアノード17及びカソード18との間に反射層が形成されることで、裏面から光を出射せずに、上面及び側面から光を出射する。
【0028】
第1接着部材11は、例えば屈折率が1.57であり、また硬度はD45~65であり、且つ0.003mm~0.010mmの厚さを有するシリコーン樹脂等の合成樹脂材で形成され、発光素子10の上面と透明部材13の下面とを接着する透明な樹脂材である。第1接着部材11は、発光素子10の側面から透明部材13の外縁に向かって延伸する第1フィレット11fを有する。第1フィレット11fは、透明部材13の外縁から離隔するように配置される。
【0029】
第2接着部材12は、第1接着部材11と同様に、例えば屈折率が1.57であり、また硬度はD45~65であり、且つ0.003mm~0.010mmの厚さを有するシリコーン樹脂等の合成樹脂材で形成され、透明部材13の上面と反射部材14の下面とを接着する透明な樹脂材である。第2接着部材12は、透明部材13の側面から反射部材14の外縁に向かって延伸する第2フィレット12fを有する。第2フィレット12fは、反射部材14の外縁から離隔するように配置される。なお、第1接着部材11と第2接着部材12は、透明部材13より硬度が高いから、薄い方が好ましい。例えば、第1接着部材11は0.010mm、第2接着部材12は0.010mm、透明部材13は0.025mmであり、第1接着部材11と第2接着部材12の合計の厚さは、透明部材13の厚さより薄いので、積層するときに割れなどが発生するリスクを低減できる。
【0030】
透明部材13は、例えば屈折率が1.46~1.53であり、また硬度はA8~22であり、且つ0.1mmの厚さを有するシリコーン樹脂等の合成樹脂材で形成される矩形の光透過部材であり、第1接着部材11を介して発光素子10上に配置される。透明部材13は、発光素子10から出射された光の波長を変換する蛍光体、及び発光素子10から出射された光を反射及び拡散するフィラーを含有しないから、発光素子10から取り出され、透明部材13内に入った光を拡散させることなく透過させることができ、透明部材13の全体を発光素子10と同じ波長の光にすることができる。透明部材13は、平面視したときの中心点が発光素子10を平面視したときの発光素子10の中心点と一致するように配置される。なお、透明部材13は、発光素子10の上面を覆うが、発光素子10の側面は覆わないよう配置される。
【0031】
反射部材14は、例えば、反射面の光の拡散性を高めることを目的に酸化チタン(TiO2)等の白色の粒子を高密度に含有した0.25mmの厚さを有するシリコーン樹脂等の合成樹脂材で形成される矩形の光反射部材であり、第2接着部材12を介して透明部材13上に配置される。反射部材14は、平面視したときの中心点が発光素子10及び透明部材13を平面視したときの発光素子10及び透明部材13の中心点と一致するように配置される。反射部材14は、発光素子10から透明部材13を経由し、反射部材14の下面に到達した光を拡散する。このとき、反射部材14は、光の拡散性が高いから、光が正反射する量を減らし、拡散反射する量を増やせる。つまり、発光素子10の上面へ向かう光の量を減らし、透明部材13の側端部へ向かう光の量を増やすことができる。
【0032】
発光素子10、透明部材13及び反射部材14は、蛍光体層である封止部材15を通る光路を短くし発光効率を上げる為、透明部材13の外縁と発光素子10の外縁との間の距離が透明部材13の外縁と反射部材14の外縁との間の距離よりも短くなるように配置される。例えば、透明部材13の外縁と発光素子10の外縁との間の距離は100μmであり、透明部材13の外縁と反射部材14の外縁との間の距離は150μmであり、反射部材14の外縁と発光素子10の外縁との間の距離は250μmである。
【0033】
封止部材15は、例えば屈折率が1.53であるシリコーン樹脂等の合成樹脂材で形成され、蛍光体及びフィラーを含有する。封止部材15に含有される蛍光体及びフィラーは、封止部材15の全体に亘って均一に配置される。
【0034】
封止部材15に含有される蛍光体は、発光素子10から出射された青色の光を変換して発光素子10から出射された青色の光の波長と異なる波長の黄色の光を出射する。封止部材15に含有される蛍光体は、例えばイットリウム・アルミニウム・ガーネット(Yttrium Aluminum Garnet、YAG)である。封止部材15に含有される蛍光体から出射される黄色の光の主波長は、第1波長と異なる第2波長の一例であり、525nmと575nmとの間の範囲内であり、一例では550nmである。
【0035】
封止部材15に含有されるフィラーは、発光素子10から出射された光及び封止部材15に含有される蛍光体から出射された光を拡散する拡散材であり、例えば二酸化ケイ素(SiO2)である。発光装置1は、発光素子10から出射された青色の光と、封止部材15に含有される蛍光体から出射された黄色の光とを封止部材15に含有されるフィラーによって混色することで白色の光を側面から出射する。
【0036】
(第1実施形態に係る発光装置の作用効果)
発光装置1は、発光素子10の上面から出射した光が透明部材13を透過した後に、発光素子10の側面から出射した光と同様に、蛍光体を含有する封止部材15を透過するので、均一な色度を有する光を発光効率を高く出射することができる。
【0037】
図3(a)は発光装置1の発光状態の平面図であり、図3(b)は拡散板の下方に配置された発光装置1の発光状態の平面図であり、図3(c)は、発光装置1の視野角と、発光装置1から出射される光の強度との関係を示す図である。図3(c)において、横軸は視野角を示し、縦軸は、発光装置1の直上の光の強度を1としたときの光の強度を示す。また、波形401は横方向の光の強度分布を示し、波形402は縦方向の光の強度分布を示す。
【0038】
発光装置1の周囲には、色ムラがない均一の色度を有する白色の光が均等な強度で出射される。反射部材14は、発光素子10から出射された光を遮光しているが、発光素子10から出射された光の一部が反射部材14を透過して発光装置1の直上方向に漏れ出している。
【0039】
漏れ出す光の強度は、反射部材14を厚くすると減り、薄くすると増やすことができる。また、漏れ出す光の強度は、含有させる白色添加物を高充填にすると減り、低充填にすると増やすことができる。発光装置1は、発光装置1の直上方向に対し、水平方向である90度までがおおむね1.2倍以内の平坦な光の強度を有するが、反射部材14の厚み及び添加物充填量を変えることで、発光装置1中心からの均一な光の配光を調整できる。
【0040】
また、発光装置1では、発光素子10の上面と透明部材13とを接着する第1接着部材11の屈折率は、透明部材13の屈折率よりも高く、発光素子10を構成するサファイヤ基板の屈折率に近くなるので、発光素子10からの光の取り出し効率が向上するから、発光素子10の上面に透明部材13を直接配置するよりも、第1接着部材11を介する方が好ましい。
【0041】
また、発光装置1では、第1フィレット11fは、透明部材13の外縁から離隔するように配置されるので、第1接着部材11を過剰に配置することなく、発光素子10の上面と透明部材13の下面とを強固に接着できる。また、発光素子10の側面に第1フィレット11fを配置するから、発光素子10からの光の取り出し効率が向上する。
【0042】
また、発光装置1では、第2フィレット12fは、反射部材14の外縁から離隔するように配置されるので、第2接着部材12を過剰に配置することなく、透明部材13の上面と反射部材14の下面とを強固に接着できる。透明部材13は、下面を第1フィレット11f、上面と4つの側面の少なくとも一部を第2フィレット12fにより覆われ、発光素子10の上面と反射部材14の下面の間で強固に接着されている。第2フィレット12fが反射部材14の外縁まで到達すると発光素子10の上面からの光が封止部材15を透過せず、発光素子10の例えば青色光が直接出射され、色ムラが発生するから第2フィレット12fは、反射部材14の外縁から離隔するように配置されるのが好ましい。
【0043】
また、発光装置1では、平面視したときの透明部材13の面積は、平面視したときの発光素子10の面積よりも大きく且つ平面視したときの反射部材14の面積より小さい。透明部材13は、透明部材13の外縁が発光素子10の外縁と反射部材14の外縁の間に位置するように配置される。
【0044】
発光装置1では、発光素子10の側面から出射した光は、封止部材15を略水平方向に透過するのに対し、発光素子10の上面から出射した光は、透明部材13の中で反射を繰り返しながら水平方向に進み、透明部材13の側端から傾斜した斜め方向に光を出射する。発光素子10の上面から出射した光は、封止部材15を斜め方向に透過するため、透明部材13の外縁を発光素子10の外縁に一致させると、発光素子10の側面から出射した光よりも封止部材15を透過する距離が長くなるから、封止部材15の色味が強くなる。
【0045】
発光装置1では、透明部材13は、透明部材13の外縁が発光素子10の外縁と反射部材14の外縁の間に位置するように配置されるので、発光素子10の上面及び側面のそれぞれから出射した最も強い光が封止部材15を透過する距離は略同一になる。発光装置1では、発光素子10の上面及び側面のそれぞれから出射した光が封止部材15を透過する距離は略同一になるので、発光装置1の側面から出射される光の色度は、略均一になる。
【0046】
発光装置1では、透明部材13の外縁と発光素子10の外縁との間の距離は、透明部材13の外縁と反射部材14の外縁との間の距離よりも短いので、発光素子10の上面及び側面のそれぞれから出射した最も強い光が封止部材15を透過する距離の同一性を向上できる。発光素子10の上面及び側面のそれぞれから出射した光が封止部材15を透過する距離の同一性が向上されるので、発光装置1の側面から出射される光の色度の均一性を更に向上できる。発光装置1では、発光素子10の上面からの光取り出し効率をよくするため、透明部材13を配置している。発光素子10の側面から出射された透明部材13の側端を通過する傾斜した光は封止部材15を透過する距離が長くなり、封止部材15の色味が強くなる。一方、透明部材13の側端より水平方向に出射された光は、封止部材15を透過する距離が短くなり、封止部材15の色味が弱くなる。透明部材13の側端では発光素子10の上面及び側面のそれぞれから出射した光の合成光によって発光装置1の側面から出射される光の色度の均一性を更に向上できる。
【0047】
(第2実施形態に係る発光装置の構成及び機能)
図4は、第2実施形態に係る発光装置の断面図である。図4は、図2に示す断面図と同様に、図1に示すA-A線に沿う断面図である。
【0048】
発光装置2は、反射部材24を反射部材14の代わりに有することが発光装置1と相違する。反射部材24以外の発光装置2の構成要素の構成及び機能は、同一符号が付された発光装置1の構成要素の構成及び機能と同一なので、ここでは詳細な説明は省略する。
【0049】
反射部材24は、例えば0.01mm~0.02mmの厚さを有するステンレス鋼板等の金属材で形成される矩形の光反射部材であり、第2接着部材12を介して透明部材13上に配置される。反射部材24は、平面視したときの中心点が発光素子10及び透明部材13を平面視したときの発光素子10及び透明部材13の中心点と一致するように配置される。
【0050】
(第2実施形態に係る発光装置の作用効果)
発光装置2では、光を透過しない金属材で形成される反射部材24を光反射部材として採用するので、上面から光が出射されず、側面のみから光が出射される理想的な側面発光装置を実現することができる。また、発光装置2は薄型にできる。
【0051】
図5(a)は発光装置2の発光状態の平面図であり、図5(b)は拡散板の下方に配置された発光装置2の発光状態の平面図であり、図5(c)は、発光装置2の視野角と、発光装置2から出射される光の強度との関係を示す図である。図5(c)において、横軸は視野角を示し、縦軸は、発光装置2の直上の光の強度を1としたときの光の強度を示す。また、波形601は横方向の光の強度分布を示し、波形602は縦方向の光の強度分布を示す。
【0052】
発光装置2は、縦方向及び横方向の何れにおいても、視野角が大きくなるに従って光の強度が高くなる理想的な側面発光装置として機能することが確認される。また、発光装置2の周囲には、色ムラがない均一の色度を有する白色の光が均等な強度で出射される。図5(a)のように、発光装置1に比べ、平面視したときに矩形の光の広がりであることが確認できる。
【0053】
(第3実施形態に係る発光装置の構成及び機能)
図6は、第3実施形態に係る発光装置の断面図である。図6は、図2に示す断面図と同様に、図1に示すA-A線に沿う断面図である。
【0054】
発光装置3は、反射部材34を反射部材14の代わりに有することが発光装置1と相違する。反射部材34以外の発光装置2の構成要素の構成及び機能は、同一符号が付された発光装置1の構成要素の構成及び機能と同一なので、ここでは詳細な説明は省略する。
【0055】
反射部材34は、例えば0.2mmの厚さを有し、表面が高反射加工されたアルミニウム材で形成される矩形の光反射部材であり、第2接着部材12を介して透明部材13上に配置される。反射部材34は、平面視したときの中心点が発光素子10及び透明部材13を平面視したときの発光素子10及び透明部材13の中心点と一致するように配置される。
【0056】
(第3実施形態に係る発光装置の作用効果)
発光装置3は、反射率がステンレス鋼板等の金属材よりも反射率が高く且つ光を透過しない高反射アルミニウム材で形成される反射部材34を光反射部材として採用することで、側面のみから光が出射される理想的な側面発光装置が実現でき、かつ発光装置2よりも発光効率を向上させることができる。
【0057】
(第4実施形態に係る発光装置の構成及び機能)
図7は、第4実施形態に係る発光装置の断面図である。図7は、図2に示す断面図と同様に、図1に示すA-A線に沿う断面図である。
【0058】
発光装置4は、第3接着部材43及び遮光部材44を有することが発光装置1と相違する。第3接着部材43及び遮光部材44以外の発光装置3の構成要素の構成及び機能は、同一符号が付された発光装置1の構成要素の構成及び機能と同一なので、ここでは詳細な説明は省略する。
【0059】
第3接着部材43は、第1接着部材11及び第2接着部材12と同様に、例えば屈折率が1.57であり且つ0.003mm~0.005mmの厚さを有するシリコーン樹脂等の合成樹脂材で形成され、反射部材14の上面と遮光部材44の下面とを接着する。
【0060】
遮光部材44は、反射部材24と同様に、例えば0.01mm~0.02mmの厚さを有するステンレス鋼板等の金属材で形成される矩形の遮光部材であり、第3接着部材43を介して反射部材14上に配置される。遮光部材44は、平面視したときの中心点が発光素子10、透明部材13及び反射部材14を平面視したときの発光素子10、透明部材13及び反射部材14の中心点と一致するように配置される。
【0061】
(第4実施形態に係る発光装置の作用効果)
発光装置4は、光を透過しない金属材で形成される遮光部材44を、反射率が高いものの一部の光を透過する反射部材14の上方に配置することで、側面のみから光が出射される理想的な側面発光装置が実現でき、かつ全波長域での発光効率を発光装置2及び3よりも向上させることができる。
【0062】
図8は、反射部材14、反射部材24及び遮光部材44、並びに反射部材34の反射率を示す図である。
図8において、横軸は波長を示し、縦軸は反射率を示し、波形901は反射部材14の厚みを0.250mmで、酸化チタン濃度40wt%で測定した時の反射率を示し、波形903は反射部材24及び遮光部材44の反射率を示し、波形902は反射部材34の反射率を示す。
【0063】
反射部材14の反射率は、400nmから800nmまでの波長領域において、98%と非常に高くなっている。
反射部材34の反射率は、400nmから600nmまでの波長領域において、反射率は95%程度と非常に高くなっているものの、600nmを超える波長領域では徐々に低下する。
反射部材24及び遮光部材44の反射率は、400nmから800nmまでの波長領域において、60%程度であり、反射部材34の反射率と比較して低くなっている。
【0064】
発光装置4は、反射率が非常に高い反射部材14の上方に光を完全に遮光する遮光部材44を配置することで、上面から光が出射されず、側面のみから光が出射される理想的な側面発光装置を実現することができる。
【0065】
(実施形態に係る発光装置の変形例)
発光装置1~4では、透明部材の厚さは0.1mmであるが、実施形態に係る発光装置では、0.025mm以上であり且つ0.7mm以下であってもよい。透明部材の厚さが0.025mm未満であるとき、発光素子10の上面から出射された光の大部分が発光装置の側面から出射されないための発光効率が低下するおそれがある。また、透明部材の厚さは、0.05mm未満であるとき、透明部材が破れるおそれがあるため、0.05mm以上が好ましい。また、透明部材の厚さは、0.7mmより厚いとき、発光装置を平面視したときの遮光感が低下する。なお、実施形態に係る発光装置では、製造時の透明部材のハンドリング性から、厚さは、0.4mm以下であることが好ましい。
【0066】
また、発光装置1~4では、透明部材は、蛍光体及びフィラーを含有しないが、実施形態に係る発光装置では、透明部材は、フィラーを含有してもよい。例えば、実施形態に係る発光装置では、透明部材は、透明部材の下面から上面に向かって、フィラーが無い層、フィラーが少し含有している層、フィラーが多く含有している層のように、含有率が下面から上面に向かって、増加するように配置されたフィラーを含有してもよい。透明部材の下面から上面に向かって含有率が増加するように配置されたフィラーを透明部材が含有することで、透明部材は、光を導光する導光特性を維持しつつ、上方に透過する光の光量を減少させて、発光装置の上面から光漏れを抑制することができる。
【0067】
また、発光装置1~4では、透明部材の屈折率は、上面及び下面で同一であるが、実施形態に係る発光装置では、例えば、透明部材の上面の屈折率1.46~1.53で、発光素子に対向する透明部材の下面の屈折率は1.57とし、透明部材の上面の屈折率は下面の屈折率よりも低くしてもよい。透明部材の下側を屈折率が比較的高い部材により形成すると共に、透明部材の上側を屈折率が比較的低い部材により形成することにより、透明部材の上面の屈折率は透明部材の下面の屈折率よりも低くなる。実施形態に係る発光装置では、透明部材の上面の屈折率は、発光素子に対向する透明部材の下面の屈折率よりも低くすることで、上方に透過する光の光量を減少させることができる。なお、透明部材は異なる屈折率の層を貼り合わせて作製しても良い。
【0068】
また、発光装置1~4は、封止部材15は、青色の光が入力されることに応じて黄色の光を出射する蛍光体が含有されるが、実施形態に係る発光装置は、封止部材は、黄色以外の色を出射する蛍光体を含有してもよく、2種類以上の蛍光体を含有してもよい。
【0069】
また、実施形態に係る発光装置では、第1フィレット11f及び第2フィレット12fが透明部材及び反射部材の外縁に到達しないように、透明部材及び反射部材の下面の外縁の近傍に凹凸が形成されてもよい。
【0070】
また、発光装置1~4は、単一の発光素子10を有するが、実施形態に係る発光装置は、複数の発光素子10を有してもよい。
【0071】
(実施形態に係る発光装置の製造方法)
図9は発光装置1の製造方法を示す図であり、図9(a)は第1工程を示し、図9(b)は第2工程を示し、図9(c)は第3工程を示し、図9(d)は第4工程を示し、図9(e)は第5工程を示し、図9(f)は第6工程を示す。
【0072】
まず、複数の発光素子10が準備され、第2工程において、複数の発光素子10のそれぞれの上面に、第1接着部材11によって透明部材13が接着される。
【0073】
次いで、第3工程において、第2工程において透明部材13が上面に接着された複数の発光素子10のそれぞれを上下反転させて、第2接着部材12によって反射基材140に接着される。反射基材140は、反射部材14と同一の部材で形成され且つ反射部材14と同一の厚さを有する部材である。
【0074】
次いで、第4工程において、封止部材15と同一の部材で形成された封止基材150が複数の発光素子10及び透明部材13を封止するように反射基材140の前面に亘って配置される。封止基材150は、固化前の封止基材150の樹脂材料を不図示の収容部材の内部に配置された反射基材140の上方から複数の発光素子10及び透明部材13の合計の高さを超える高さまで充填した後に、固化することで形成される。
【0075】
次いで、第5工程において、封止基材150の上面が発光素子10のアノード17及びカソード18の高さまで切削される。そして、第6工程において、反射基材140及び封止基材150を発光素子10毎に切断することによって、複数の反射部材14及び封止部材15のそれぞれが分離されて発光装置1が製造される。なお、発光装置2~4の製造方法は、発光装置1の製造方法と同様なので、ここでは詳細な説明は省略する。
【0076】
また、発光装置1~4は、反射部材14と同一厚さを有する部材である反射基材140に発光素子10を載置して製造されるが、実施形態に係る発光装置は、反射基材140に発光素子10を載置することなく製造されてもよい。
【符号の説明】
【0077】
1~4 発光装置
10 発光素子
11 第1接着部材
12 第2接着部材
13 透明部材
14、24、34 反射部材
15 封止部材
43 第3接着部材
44 遮光部材
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9