(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-21
(45)【発行日】2024-07-01
(54)【発明の名称】量子ドット電界発光デバイス及び製造方法、表示装置
(51)【国際特許分類】
H05B 33/14 20060101AFI20240624BHJP
H10K 50/115 20230101ALI20240624BHJP
H10K 50/15 20230101ALI20240624BHJP
H10K 50/16 20230101ALI20240624BHJP
H10K 59/10 20230101ALI20240624BHJP
H10K 71/12 20230101ALI20240624BHJP
H10K 71/20 20230101ALI20240624BHJP
H10K 71/40 20230101ALI20240624BHJP
【FI】
H05B33/14 Z
H10K50/115
H10K50/15
H10K50/16
H10K59/10
H10K71/12
H10K71/20
H10K71/40
(21)【出願番号】P 2020567478
(86)(22)【出願日】2020-03-30
(86)【国際出願番号】 CN2020082134
(87)【国際公開番号】W WO2020238390
(87)【国際公開日】2020-12-03
【審査請求日】2023-03-27
(31)【優先権主張番号】201910473116.X
(32)【優先日】2019-05-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】510280589
【氏名又は名称】京東方科技集團股▲ふん▼有限公司
【氏名又は名称原語表記】BOE TECHNOLOGY GROUP CO.,LTD.
【住所又は居所原語表記】No.10 Jiuxianqiao Rd.,Chaoyang District,Beijing 100015,CHINA
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(72)【発明者】
【氏名】▲梅▼ 文▲海▼
(72)【発明者】
【氏名】▲張▼ 振▲チ▼
(72)【発明者】
【氏名】▲張▼ ▲愛▼迪
【審査官】辻本 寛司
(56)【参考文献】
【文献】特表2019-505946(JP,A)
【文献】特開2005-101363(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2019/0011439(US,A1)
【文献】特開2015-099804(JP,A)
【文献】国際公開第2018/086756(WO,A1)
【文献】特開2009-087760(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H10K 50/115
H10K 50/15
H10K 50/16
H10K 59/10
H10K 71/12
H10K 71/20
H10K 71/40
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
量子ドット電界発光デバイスであって、
基板及び前記基板に設けられる陰極と、
前記陰極の前記基板から離れた側に設けられ、複数の画素領域を備える電子輸送層と、
前記電子輸送層の前記陰極から離れた側に設けられ
、前記電子輸送層と量子ドット膜層との間に位置する接着剤層と、
前記接着剤層の前記電子輸送層から離れた側に設けられ、前記接着剤層とともに前記画素領域内に位置する
前記量子ドット膜層と、を備え、
前記接着剤層は化学結合及び物理的絡み合い作用のうちの少なくとも一方によって、それぞれ前記電子輸送層及び前記量子ドット膜層に接続され
て、量子ドット膜層と電子輸送層との間の接着力を高めることを特徴とする、量子ドット電界発光デバイス。
【請求項2】
前記接着剤層を構成する材料はシラン系材料又はアビジンを含み、
前記シラン系材料は、前記電子輸送層と反応可能な第1官能基、及び前記量子ドット膜層と反応可能な第2官能基を含み、前記第1官能基はハロゲン原子、ヒドロキシ、アルキルエーテル結合、アセトキシ、メトキシ、アミノ及びイミノのうちの少なくとも1つを含み、前記第2官能基はメルカプト、アミノ、カルボキシル及びメチルのうちの少なくとも1つを含み、
前記アビジンは、前記電子輸送層と化学結合を形成可能な第3官能基、及び前記量子ドット膜層と化学結合を形成可能な第4官能基を含有することを特徴とする、請求項1に記載の量子ドット電界発光デバイス。
【請求項3】
前記アビジンは連結されるビオチン及びストレプトアビジンを含み、前記ストレプトアビジンはヒドロキシ、アミノを含有し、前記ビオチンは硫黄原子、窒素原子及びカルボキシルを含有することを特徴とする、請求項2に記載の量子ドット電界発光デバイス。
【請求項4】
前記シラン系材料では、主鎖の原子数は7未満であることを特徴とする、請求項2に記載の量子ドット電界発光デバイス。
【請求項5】
前記シラン系材料はトリメチルクロロシラン、ヘキサメチルジシラザン、tert-ブチルジメチルクロロシラン、トリイソプロポキシシラン、ジメチルジアセトキシシラン、ジ-tert-ブチルジクロロシラン又はメルカプトプロピルトリメトキシシランを含むことを特徴とする、請求項2又は4に記載の量子ドット電界発光デバイス。
【請求項6】
前記電子輸送層を構成する材料は、酸化亜鉛、酸化チタン及び酸化ニッケルのうちの少なくとも1つを含むことを特徴とする、請求項1から5のいずれか一項に記載の量子ドット電界発光デバイス。
【請求項7】
前記量子ドット膜層の前記接着剤層から離れた側に設けられる正孔輸送層と、
前記正孔輸送層の前記量子ドット膜層から離れた側に設けられる正孔注入層と、
前記正孔注入層の前記正孔輸送層から離れた側に設けられる陽極と、をさらに備えることを特徴とする、請求項1から6のいずれか一項に記載の量子ドット電界発光デバイス。
【請求項8】
量子ドット電界発光デバイスの製造方法であって、
基板上に陰極を形成するステップと、
陰極の基板から離れた側に、複数の画素領域を含む電子輸送層を形成するステップと、
接着剤層及び量子ドット膜層を形成し、前記接着剤層が前記電子輸送層の前記陰極から離れた側に設けられ、
且つ前記電子輸送層と前記量子ドット膜層との間に位置し、前記量子ドット膜層が前記接着剤層の前記電子輸送層から離れた側に設けられ、且つ前記量子ドット膜層及び前記接着剤層がともに前記画素領域内に位置するステップと、を含み、
前記接着剤層は化学結合及び物理的絡み合い作用のうちの少なくとも一方によって、それぞれ前記電子輸送層及び前記量子ドット膜層に接続され
て、量子ドット膜層と電子輸送層との間の接着力を高めることを特徴とする、量子ドット電界発光デバイスの製造方法。
【請求項9】
前記接着剤層及び前記量子ドット膜層は、
前記電子輸送層の前記陰極から離れた側であって、且つ前記画素領域外に位置する領域にマスク層を形成するステップ、
浸漬又はスピンコーティングによって、前記マスク層及び前記電子輸送層を被覆する接着剤材料層を形成するステップ、及び
前記接着剤材料層の前記電子輸送層から離れた側に量子ドット材料をスピンコーティングし、そして前記マスク層を剥離して、前記接着剤層及び前記量子ドット膜層を得るステップによって形成されることを特徴とする、請求項8に記載の量子ドット電界発光デバイスの製造方法。
【請求項10】
前記接着剤材料層を形成する時、前記浸漬の時間又は前記スピンコーティングの静置時間はそれぞれ独立して5-60分間であることを特徴とする、請求項9に記載の量子ドット電界発光デバイスの製造方法。
【請求項11】
前記スピンコーティングの回転速度は500-3000rpmであることを特徴とする、請求項10に記載の量子ドット電界発光デバイスの製造方法。
【請求項12】
前記接着剤材料層を形成することは、
アニール処理をさらに含み、前記アニール処理の温度は50-300℃、前記アニール処理の時間は5-20分間であることを特徴とする、請求項9から11のいずれか一項に記載の量子ドット電界発光デバイスの製造方法。
【請求項13】
前記接着剤層を形成するための溶液の濃度は10-100mg/mlであることを特徴とする、請求項9から12のいずれか一項に記載の量子ドット電界発光デバイスの製造方法。
【請求項14】
前記量子ドット膜層を形成する時、前記スピンコーティングの静置時間は5-60分間であることを特徴とする、請求項9に記載の量子ドット電界発光デバイスの製造方法。
【請求項15】
前記マスク層を形成するステップは、
前記電子輸送層の表面全域にフォトレジストをスピンコーティングし、前記フォトレジストをプリベーク処理するステップと、
前記フォトレジストを露光現像し、前記フォトレジストの前記画素領域内に位置する部分を除去し、前記フォトレジストの前記画素領域外の領域に位置する部分をアニール処理して、前記マスク層を得るステップと、を含むことを特徴とする、請求項9に記載の量子ドット電界発光デバイスの製造方法。
【請求項16】
前記プリベーク処理の温度は60-150℃、前記プリベーク処理の時間は30-300秒間であることを特徴とする、請求項15に記載の量子ドット電界発光デバイスの製造方法。
【請求項17】
表示装置であって、筐体及び請求項1から7のいずれか一項に記載の量子ドット電界発光デバイスを備え、前記筐体はフロントフレーム及びリアパネルを備え、前記フロントフレーム及び前記リアパネルから収納空間が構成され、前記量子ドット電界発光デバイスは前記収納空間の内部に位置し、且つ前記量子ドット電界発光デバイスの出光側が前記リアパネルから離れて設けられることを特徴とする表示装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(優先権情報)
本願は、2019年05月31日に中国国家知識産権局に提出した、特許出願番号が201910473116.Xの特許出願の優先権及び権益を主張し、ここで参照によりその全内容が組み込まれている。
【0002】
本願は表示の技術分野に関し、具体的には、量子ドット電界発光デバイス及び製造方法、表示装置に関する。
【背景技術】
【0003】
消費レベルの向上に伴い、高解像度製品は表示製品の主要な発展方向となっている。従来、高解像度のAMOLED(アクティブマトリックス有機発光ダイオード)製品は技術的な難易度が高く、製品の歩留まりが低く、生産コストが高いという問題に直面している。有機発光表示製品の有機層は通常マスク蒸着の方法によって製造されるが、マスク蒸着方法は位置合わせが困難で、歩留まりが低く、さらなる小面積発光を実現できないという欠陥を抱えており、現在の高解像度表示のニーズを満たすことができなく、一方、印刷やプリントの方法を採用して有機層を製造する場合も、得られる表示製品の解像度は非常に限られている。量子ドット技術のさらなる発展に伴い、量子ドット電界発光デバイス(QLEDデバイス)の研究はますます深くなり、量子効率が向上し続け、QLEDデバイスはさらなる小面積発光を実現でき、表示製品のより高解像度化に有利である。
【0004】
しかしながら、従来のQLEDデバイス及び製造方法、表示装置はまだ改良する必要がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本願は、以下の事実及び問題についての発明者の発見及び見解に鑑みてなされるものである。
【0006】
現在、QLEDデバイスは表示効果が悪いという問題を抱えている。発明者は鋭意研究及び実験を重ねたところ、主として従来のQLEDデバイスの製造方法に欠陥があることに起因することを見出した。具体的には、現在、主に露光現像によって量子ドット膜層のパターニングを実現したが、現像中に、量子ドット膜層が脱落する現象が発生することがあるため、QLEDデバイスの表示効果を損なってしまう。
【0007】
本願は、少なくとも上記問題のうちの少なくとも1つをある程度軽減又は解決することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本願の一態様では、本願は量子ドット電界発光デバイスを提供する。該量子ドット電界発光デバイスは、基板及び前記基板上に設けられる陰極と、前記陰極の前記基板から離れた側に設けられ、複数の画素領域を備える電子輸送層と、前記電子輸送層の前記陰極から離れた側に設けられる接着剤層と、前記接着剤層の前記電子輸送層から離れた側に設けられ、前記接着剤層とともに前記画素領域内に位置する量子ドット膜層と、を備え、前記接着剤層は化学結合及び物理的絡み合い作用のうちの少なくとも一方によって、それぞれ前記電子輸送層及び前記量子ドット膜層に接続される。それにより、該量子ドット電界発光デバイスの接着剤層は量子ドット膜層と電子輸送層との間の接着力を大幅に増加させることができ、製造中の量子ドット膜層脱落の問題を効果的に軽減でき、該量子ドット電界発光デバイスに良好な表示効果を付与する。
【0009】
本願の実施例において、前記接着剤層を構成する材料はシラン系材料又はアビジンを含み、前記シラン系材料は、前記電子輸送層と反応可能な第1官能基、及び前記量子ドット膜層と反応可能な第2官能基を含み、前記第1官能基はハロゲン原子、ヒドロキシ、アルキルエーテル結合、アセトキシ、メトキシ、アミノ及びイミノのうちの少なくとも1つを含み、前記第2官能基はメルカプト、アミノ、カルボキシル及びメチルのうちの少なくとも1つを含み、前記アビジンは、前記電子輸送層と化学結合を形成可能な第3官能基、及び前記量子ドット膜層と化学結合を形成可能な第4官能基を含有する。それにより、上記材料はそれぞれ電子輸送層及び量子ドット膜層と作用でき、それによって量子ドット膜層と電子輸送層との間の接着力を大幅に増加させ、量子ドット膜層の脱落を効果的に軽減する。
【0010】
本願の実施例において、前記アビジンは連結されるビオチン及びストレプトアビジンを含み、前記ストレプトアビジンはヒドロキシ、アミノを含有し、前記ビオチンは硫黄原子、窒素原子及びカルボキシルを含有する。それにより、アビジンの上記官能基又はヘテロ原子はそれぞれ電子輸送層及び量子ドット膜層と化学結合を形成でき、それによって量子ドット膜層と電子輸送層との間の接着力を大幅に増加させ、量子ドット膜層の脱落を効果的に軽減する。
【0011】
本願の実施例において、前記シラン系材料では、主鎖の原子数は7未満である。それにより、量子ドット電界発光デバイスに悪影響をもたらすことがない。
【0012】
本願の実施例において、前記シラン系材料はトリメチルクロロシラン、ヘキサメチルジシラザン、tert-ブチルジメチルクロロシラン、トリイソプロポキシシラン、ジメチルジアセトキシシラン、ジ-tert-ブチルジクロロシラン又はメルカプトプロピルトリメトキシシランを含む。それにより、上記材料から構成される接着剤層は量子ドット膜層と電子輸送層との間の接着力を増加させることができる。
【0013】
本願の実施例において、前記電子輸送層を構成する材料は、酸化亜鉛、酸化チタン及び酸化ニッケルのうちの少なくとも1つを含む。それにより、上記材料は電子輸送層に良好な電子輸送性能を付与できる。
【0014】
本願の実施例において、該量子ドット電界発光デバイスは、前記量子ドット膜層の前記接着剤層から離れた側に設けられる正孔輸送層と、前記正孔輸送層の前記量子ドット膜層から離れた側に設けられる正孔注入層と、前記正孔注入層の前記正孔輸送層から離れた側に設けられる陽極と、をさらに備える。それにより、さらに量子ドット電界発光デバイスの使用性を向上させることができる。
【0015】
本願の別の態様では、本願は量子ドット電界発光デバイスの製造方法を提供する。本願の実施例において、該方法は、基板上に陰極を形成するステップと、陰極の基板から離れた側に、複数の画素領域を含む電子輸送層を形成するステップと、接着剤層及び量子ドット膜層を形成し、前記接着剤層が前記電子輸送層の前記陰極から離れた側に設けられ、前記量子ドット膜層が前記接着剤層の前記電子輸送層から離れた側に設けられ、且つ前記量子ドット膜層及び前記接着剤層がともに前記画素領域内に位置するステップと、を含み、前記接着剤層は化学結合及び物理的絡み合い作用のうちの少なくとも一方によって、それぞれ前記電子輸送層及び前記量子ドット膜層に接続される。それにより、該方法は、操作がシンプルで、生産歩留まりが高いという利点を有し、そして得られる量子ドット電界発光デバイスの接着剤層は量子ドット膜層と電子輸送層との間の接着力を大幅に増加させることができ、製造中の量子ドット膜層脱落の問題を効果的に軽減でき、該量子ドット電界発光デバイスに良好な表示効果を付与する。
【0016】
本願の実施例において、前記接着剤層及び前記量子ドット膜層は、前記電子輸送層の前記陰極から離れた側であって、且つ前記画素領域外に位置する領域にマスク層を形成するステップ、浸漬又はスピンコーティングによって、前記マスク層及び前記電子輸送層を被覆する接着剤材料層を形成するステップ、及び前記接着剤材料層の前記電子輸送層から離れた側に量子ドット材料をスピンコーティングし、そして前記マスク層を剥離して、前記接着剤層及び前記量子ドット膜層を得るステップによって形成される。それにより、シンプルな方法を利用して接着剤層及び量子ドット膜層を形成できる。
【0017】
本願の実施例において、前記接着剤材料層を形成する時、前記浸漬の時間又は前記スピンコーティングの静置時間はそれぞれ独立して5-60分間である。それにより、接着剤材料と電子輸送層を構成する材料とを十分に反応させ、接着剤層と電子輸送層との結合強度を高めることができる。
【0018】
本願の実施例において、前記スピンコーティングの回転速度は500-3000rpmである。それにより、スピンコーティングプロセスの回転速度を上記範囲内に設定することで、電子輸送層に接続されていない接着剤材料を除去できる。
【0019】
本願の実施例において、前記接着剤材料層を形成することは、アニール処理をさらに含み、前記アニール処理の温度は50-300℃、前記アニール処理の時間は5-20分間である。それにより、接着剤層中の溶剤を除去できるとともに、接着剤材料の分子を比較的に低いエネルギー状態に再配置する。
【0020】
本願の実施例において、前記接着剤層を形成するための溶液の濃度は10-100mg/mlである。それにより、電子輸送層と反応することに十分な接着剤材料を確保できる。
【0021】
本願の実施例において、前記量子ドット膜層を形成する時、前記スピンコーティングの静置時間は5-60分間である。それにより、量子ドット材料と接着剤材料を十分に反応させ、接着剤層と量子ドット膜層との結合強度を高め、量子ドット膜層と電子輸送層との間に比較的に大きい接着力を付与することができる。
【0022】
本願の実施例において、前記マスク層を形成するステップは、前記電子輸送層の表面全域にフォトレジストをスピンコーティングし、前記フォトレジストをプリベーク処理するステップと、前記フォトレジストを露光現像し、前記画素領域内に位置する前記フォトレジストの部分を除去し、前記画素領域外の領域に位置する前記フォトレジストの部分をアニール処理して、前記マスク層を得るステップと、を含む。それにより、後続の接着剤層及び量子ドット膜層の製造が容易になる。
【0023】
本願の実施例において、前記プリベーク処理の温度は60-150℃、前記プリベーク処理の時間は30-300秒間である。それにより、フォトレジストを仮硬化させることができ、後続の露光現像が容易になる。
【0024】
本願のさらに別の態様では、本願は表示装置を提供する。本願の実施例において、該表示装置は筐体及び上記量子ドット電界発光デバイスを備え、前記筐体はフロントフレーム及びリアパネルを備え、前記フロントフレーム及び前記リアパネルから収納空間が構成され、前記量子ドット電界発光デバイスは前記収納空間の内部に位置し、且つ前記量子ドット電界発光デバイスの出光側が前記リアパネルから離れて設けられる。それにより、該表示装置は上記量子ドット電界発光デバイスのすべての特徴及び利点を有し、ここでは重複説明を省略する。要するに、該表示装置は良好な表示効果及び比較的に高い解像度を有する。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図1】
図1は本願の一実施例に係る量子ドット電界発光デバイスの構造模式図を示す。
【
図2】
図2は本願の一実施例に係る量子ドット電界発光デバイスの部分構造模式図を示す。
【
図3】
図3は本願の一実施例に係る量子ドット電界発光デバイスの製造方法のフローチャートを示す。
【
図4】
図4は本願の別の実施例に係る量子ドット電界発光デバイスの製造方法のフローチャートを示す。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本願の実施例を詳細に説明し、前記実施例の例は図面に示されており、全明細書を通して、同一又は類似の標記番号は同一又は類似の素子、或いは同一又は類似機能を有する素子を示す。以下、図面を参照して説明される実施例は例示的であり、本願を説明することのみに用いられ、本願を限定するものではないと理解すべきである。
【0027】
本願の一態様では、本願は量子ドット電界発光デバイスを提供する。本願の実施例において、
図1に示すように、該量子ドット電界発光デバイスは基板800、陰極100、電子輸送層200、接着剤層300及び量子ドット膜層400を備え、陰極100は基板800上に設けられ、電子輸送層200は陰極100の基板800から離れた側に設けられ、且つ電子輸送層200は複数の画素領域10を備え、接着剤層300は電子輸送層200の陰極100から離れた側に設けられ、量子ドット膜層400は接着剤層300の電子輸送層200から離れた側に設けられ、且つ量子ドット膜層400及び接着剤層300はいずれも電子輸送層200の画素領域10内に位置し、接着剤層300は化学結合及び物理的絡み合い作用のうちの少なくとも一方によって、それぞれ電子輸送層200及び量子ドット膜層400に接続される。つまり、該量子ドット電界発光デバイスは反転型量子ドット電界発光デバイスであってもよい。それにより、該量子ドット電界発光デバイスの接着剤層は量子ドット膜層と電子輸送層との間の接着力を大幅に増加させることができ、製造中の量子ドット膜層脱落の問題を効果的に軽減でき、該量子ドット電界発光デバイスに良好な表示効果を付与する。
【0028】
以下、本願の具体的な実施例を参照しながら、該量子ドット電界発光デバイスの各構造を詳細に説明する。
【0029】
陰極の構成材料については特に限定せず、当業者は量子ドット電界発光デバイスによく使用される陰極材料に応じて選択できる。例えば、本願の実施例において、陰極100は酸化インジウムスズ(ITO)から構成されてもよい。
【0030】
電子輸送層の構成材料については特に限定せず、良好な電子輸送作用を有すればよく、当業者は具体的な状況に応じて選択できる。例えば、本願の実施例において、電子輸送層200は金属酸化物から形成されてもよく、具体的には、電子輸送層200を構成する材料は酸化亜鉛、酸化ニッケル及び酸化チタンのうちの少なくとも1つを含んでもよい。上記金属酸化物の表面に所定のヒドロキシがあり、ヒドロキシは比較的に活発な基であり、金属酸化物の電子輸送効果を損なうことなく、複数種の成分と化学結合を形成できる。例えば、接着剤層を構成する材料は、金属酸化物の表面におけるヒドロキシと反応して、接着剤層と電子輸送層の接続を実現することができる。
【0031】
本願の実施例において、電子輸送層200と量子ドット膜層400との間に接着剤層300が設けられ、接着剤層300は化学結合及び物理的絡み合い作用のうちの少なくとも一方によって、それぞれ電子輸送層200及び量子ドット膜層400と接続して、量子ドット膜層と電子輸送層との間の接着力を高める。
【0032】
本願の実施例において、接着剤層300の構成材料はシラン系材料を含んでもよく、シラン系材料のSi原子に4個の官能基が連結可能であり、従って同時に電子輸送層及び量子ドット膜層と化学反応又は物理的絡み合いを行うことができる官能基を選択してもよい。具体的には、上記シラン系材料の1つの官能基は電子輸送層と化学反応してもよく、それと同時にもう1つの官能基は量子ドット膜層と化学反応してもよく、又は、上記シラン系材料の1つの官能基は電子輸送層と化学反応してもよく、それと同時にもう1つの官能基は量子ドット膜層と物理的絡み合い(例えばメチル、直鎖又は側鎖を有するアルキル)を行ってもよい。
【0033】
具体的には、シラン系材料は、電子輸送層と反応可能な第1官能基、及び量子ドット膜層と反応可能な第2官能基を含み、第1官能基はハロゲン原子、ヒドロキシ、アルキルエーテル結合、アセトキシ、メトキシ、アミノ及びイミノのうちの少なくとも1つを含み、第2官能基はメルカプト、アミノ、カルボキシル及びメチルのうちの少なくとも1つを含む。シラン系材料はハロゲン原子、ヒドロキシ、アルキルエーテル結合、アセトキシ、メトキシ、アミノ、及びイミノ等の官能基によって、電子輸送層を構成する金属酸化物の表面におけるヒドロキシと化学反応でき、それによって電子輸送層と接着剤層がケイ素-酸素結合によって接続され、また、シラン系材料はメルカプト、アミノ、及びカルボキシル等の官能基によって、よく使用される量子ドット材料と化学反応でき、具体的には、シラン系材料は上記官能基を利用して量子ドット材料と配位結合を形成し、又は、シラン系材料はメチルによって量子ドット材料と物理的絡み合いを行い、接着剤層と量子ドット膜層の接続を実現する。
【0034】
本願の実施例において、シラン系材料では、主鎖の原子数は7未満である。それにより、量子ドット電界発光デバイスに悪影響をもたらすことがない。例えば、主鎖のケイ素原子、炭素原子、酸素原子、窒素原子、ハロゲン原子等の総数は7未満である。
【0035】
シラン系材料の具体的な成分については特に限定せず、シラン系材料は上記官能基を含有すればよく、当業者は具体的な状況に応じて選択できる。例えば、本願の具体的な実施例において、シラン系材料はトリメチルクロロシラン、ヘキサメチルジシラザン、tert-ブチルジメチルクロロシラン、トリイソプロポキシシラン、ジメチルジアセトキシシラン、ジ-tert-ブチルジクロロシラン又はメルカプトプロピルトリメトキシシランであってもよく、ここでは一々列挙しない。
【0036】
本願の実施例において、接着剤層300を構成する材料はさらにアビジンであってもよく、アビジンは電子輸送層と化学結合を形成可能な第3官能基、及び量子ドット膜層と化学結合を形成可能な第4官能基を含有する。それにより、アビジンは上記官能基によってそれぞれ電子輸送層を構成する金属酸化物及び量子ドット材料と化学反応でき、接着剤層と電子輸送層及び量子ドット膜層との接続を実現する。具体的には、アビジンは、連結されるビオチン及びストレプトアビジンを含んでもよく、ストレプトアビジンはヒドロキシ、アミノ(すなわち、第3官能基)を含有し、ビオチンは硫黄原子、窒素原子及びカルボキシル(すなわち、第4官能基)を含有する。ストレプトアビジンのヒドロキシ、アミノは電子輸送層を構成する金属酸化物の表面におけるヒドロキシと反応でき、それによって接着剤層と電子輸送層がケイ素-酸素結合によって接続され、ビオチンの硫黄原子、窒素原子及びカルボキシルは量子ドット材料と配位結合を形成でき、接着剤層と量子ドット膜層の接続を実現する。
【0037】
本願の実施例において、上記シラン系材料及びアビジンは、接着剤層と電子輸送層、量子ドット膜層との接続を実現し、電子輸送層と量子ドット膜層との間に比較的に大きい接着力を付与し、製造中の量子ドット膜層の脱落を効果的に軽減することができるだけでなく、上記材料は量子ドット膜層の発光性能に悪影響をもたらすこともない。且つ、上記材料の一部はさらに電子輸送層材料界面の隙間を減少させ、デバイスの短絡を減少させることができ、例えば、ハロゲン原子を含有するシラン系材料、ヒドロキシを含有するシラン系材料、アルキルエーテル結合を含有するシラン系材料、アセトキシを含有するシラン系材料、メトキシを含有するシラン系材料等が挙げられる。
【0038】
本願の実施例において、量子ドット膜層400は赤色量子ドット、緑色量子ドット及び青色量子ドットを備えてもよく、それにより、量子ドット電界発光デバイスに良好な表示色を付与することができる。赤色量子ドット、緑色量子ドット、青色量子ドットの材料については特に限定せず、当業者は上記量子ドットのよく使用される材料に応じて選択できる。
【0039】
本願の実施例において、
図2に示すように、該量子ドット電界発光デバイスは正孔輸送層500、正孔注入層600及び陽極700をさらに備えてもよく、正孔輸送層500は量子ドット層400の接着剤層300から離れた側に設けられ、正孔注入層600は正孔輸送層500の量子ドット膜層400から離れた側に設けられ、陽極700は正孔注入層600の正孔輸送層500から離れた側に設けられる。それにより、さらに量子ドット電界発光デバイスの使用性を向上させることができる。
【0040】
正孔輸送層、正孔注入層及び陽極の構成材料については特に限定せず、当業者は量子ドット電界発光デバイスの上記構造のよく使用される材料に応じて選択できる。
【0041】
本願の別の態様では、本願は量子ドット電界発光デバイスの製造方法を提供する。本願の実施例において、該方法によって製造される量子ドット電界発光デバイスは前述した量子ドット電界発光デバイスであってもよく、それにより、該方法によって製造される量子ドット電界発光デバイスは前述した量子ドット電界発光デバイスと同様な特徴及び利点を有することができ、ここでは重複説明を省略する。
【0042】
本願の実施例において、
図3に示すように、該方法は、以下のステップS100~S300を含む。
【0043】
S100:基板上に陰極を形成する
本願の実施例において、該ステップでは、基板上に陰極を形成する。陰極の材料については上記で詳細に説明されたため、ここでは重複説明を省略する。
【0044】
陰極の形成方法については特に限定せず、当業者は陰極の形成によく使用される方法に応じて選択できる。
【0045】
S200:陰極上に電子輸送層を形成する
本願の実施例において、該ステップでは、陰極上に電子輸送層を形成する。電子輸送層の具体的な材料については上記で詳細に説明されたため、ここでは重複説明を省略する。
【0046】
電子輸送層の形成方法については特に限定せず、当業者は具体的な状況に応じて設計できる。例えば、本願の実施例において、電子輸送層はスピンコーティングしてアニールすることによって形成されてもよい。
【0047】
本願の実施例において、電子輸送層は、後続のステップで形成される接着剤層及び量子ドット膜層を担持するための複数の画素領域を備える。
【0048】
S300:接着剤層及び量子ドット膜層を形成する
本願の実施例において、該ステップでは、接着剤層及び量子ドット膜層を形成する。本願の実施例において、接着剤層は電子輸送層の陰極から離れた側に設けられ、量子ドット膜層は接着剤層の電子輸送層から離れた側に設けられ、接着剤層及び量子ドット膜層はいずれも電子輸送層の画素領域内に位置し、接着剤層は化学結合及び物理的絡み合い作用のうちの少なくとも一方によって、それぞれ電子輸送層及び量子ドット膜層に接続されてもよい。それにより、電子輸送層と量子ドット膜層との間の接着力を大幅に高め、製造中の量子ドット膜層脱落の問題を効果的に軽減することができ、最終的に得られる量子ドット電界発光デバイスに良好な表示効果を付与する。
【0049】
接着剤層を構成する材料については上記で詳細に説明されたため、ここでは重複説明を省略する。
【0050】
本願の実施例において、
図4に示すように、接着剤層300及び量子ドット膜層400は、以下のステップによって形成されてもよい。まず、電子輸送層200の陰極100から離れた側であって、画素領域10外に位置する領域にマスク層20を形成する。具体的には、電子輸送層200の表面全域にフォトレジスト21をスピンコーティングし(
図4中の(a)参照)、フォトレジスト21をプリベーク処理し、その後、フォトレジスト21を露光現像し、フォトレジスト21の画素領域10内に位置する部分を除去し、フォトレジスト21の画素領域10外の領域に位置する部分をアニール処理して、マスク層20を得る(
図4中の(b)参照)。フォトレジストの具体的な種類については特に限定せず、露光現像した後、電子輸送層の画素領域外の領域にマスク層を形成できればよく、当業者は具体的な状況に応じて設計できる。本願の実施例において、プリベーク処理の温度は60-150℃であってもよく、例えば、85℃、100℃、120℃であり、プリベーク処理の時間は30-300秒間であってもよく、例えば、60秒間、100秒間、150秒間、200秒間、250秒間である。それにより、フォトレジストを仮硬化させることができ、後続の露光現像が容易になる。露光現像の時間及びアニール処理の温度、時間については特に限定せず、電子輸送層の画素領域外の領域にマスク層を形成できればよく、例えば、本願の具体的な実施例において、露光の時間は10秒間、現像の時間は60秒間、アニール処理の温度は100℃、アニール処理の時間は5分間であってもよい。
【0051】
次に、浸漬又はスピンコーティングによって、マスク層20及び電子輸送層200を被覆する接着剤材料層30を形成する。具体的には、浸漬によって接着剤材料層30を形成する場合、まず、マスク層20を設けた電子輸送層200を、接着剤層を形成するための溶液に浸漬し、所定時間浸漬した後に取り出し、さらに溶剤で洗い流して、余分な接着剤溶液を除去し、マスク層20及び電子輸送層200を被覆する接着剤材料層30を得る(
図4中の(c)参照)。又は、スピンコーティングによって接着剤材料層30を形成する時、まず、接着剤層を形成するための溶液をマスク層20及び電子輸送層200の画素領域に滴下し、その後、所定時間静置しそして回転乾燥させて、マスク層20及び電子輸送層200を被覆する接着剤材料層30を得る(
図4中の(c)参照)。
【0052】
最後に、接着剤材料層30のマスク層20及び電子輸送層200から離れた側に量子ドット材料をスピンコーティングし、マスク層20を剥離して、接着剤層300及び量子ドット膜層400を得る。それにより、シンプルな方法だけで、接着剤層及び量子ドット膜層を形成できる。具体的には、量子ドット材料をスピンコーティングした後、アニール処理を行い、量子ドット材料層40を形成し(
図4中の(d)参照)、マスク層20の剥離中、接着剤材料層30及び量子ドット材料層40のそれぞれのマスク層20に位置する部分が同期に除去されてもよく、それにより、接着剤層300及び量子ドット膜層400が得られ、且つ接着剤層300及び量子ドット膜層400はいずれも電子輸送層200の画素領域内に位置する(
図4中の(e)参照)。
本願の実施例において、接着剤材料層を形成する時、浸漬の時間又はスピンコーティング静置の時間はそれぞれ独立して5-60分間であってもよく、例えば、20分間、30分間、40分間、50分間であり、それにより、接着剤材料と電子輸送層を構成する材料とを十分に反応させ、接着剤層と電子輸送層との結合強度を高めることができる。
【0053】
本願の実施例において、スピンコーティングによって接着剤材料層を形成する場合、スピンコーティングの回転速度は500-3000rpmであってもよく、例えば、1000rpm、1500rpm、2000rpm、2500rpmである。それにより、スピンコーティングプロセスの回転速度を上記範囲内に設定することで、電子輸送層と接続されていない接着剤材料を除去できる。
【0054】
本願の実施例において、接着剤層を形成するための溶液は、接着剤材料(例えば、前述したシラン系材料又はアビジン)を溶剤に溶解させて形成されてもよく、それにより、接着剤材料と電子輸送層を構成する金属酸化物との反応が容易になる。上記溶剤の具体的な成分については特に限定せず、上記接着剤材料を溶解できればよく、当業者は具体的な状況に応じて選択できる。例えば、本願の具体的な実施例において、溶剤はトルエン、キシレン、クロロベンゼン芳香族炭化水素系溶剤、アルコール系溶剤(例えば、メタノール、エタノール)、極性非プロトン性溶剤(例えば、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルスルホキシド)であってもよい。
【0055】
本願の実施例において、接着剤層を形成するための溶液の濃度は10-100mg/mlであってもよく、例えば、20mg/ml、30mg/ml、40mg/ml、50mg/ml、60mg/ml、70mg/ml、80mg/ml、90mg/mlである。それにより、電子輸送層を構成する材料と反応することに十分な接着剤材料を確保できる。
【0056】
本願の実施例において、浸漬又はスピンコーティングによって接着剤材料層を形成した後、さらに接着剤材料層をアニール処理してもよく、アニール処理の温度は50-300℃であってもよく、例えば、85℃、100℃、200℃、280℃であり、アニール処理の時間は5-20分間であってもよく、例えば、10分間、15分間である。それにより、接着剤層中の溶剤を除去できるとともに、接合剤材料の分子を比較的に低いエネルギー状態に再配置する。
【0057】
本願の実施例において、量子ドット膜層を形成する時、量子ドット材料をスピンコーティングした後の静置時間は5-60分間であってもよく、例えば、20分間、30分間、40分間、50分間である。それにより、量子ドット材料と接着剤材料とを十分に反応させ、接着剤層と量子ドット膜層との結合強度を高め、量子ドット膜層と電子輸送層との間に比較的に大きい接着力を付与することができる。本願の実施例において、量子ドット膜層を形成する時、量子ドット材料をアニール処理する温度及び時間については特に限定せず、当業者は量子ドット膜層を形成する時のアニール処理によく使用される温度及び時間に応じて設計できる。
【0058】
本願の実施例において、量子ドット膜層は赤色量子ドット、緑色量子ドット及び青色量子ドットを備えてもよく、上記ステップによって1種の色の量子ドット及び該量子ドットと電子輸送層を接続する接着剤層を形成した後、S300のステップを繰り返して、もう1種の色の量子ドット及び該量子ドットと電子輸送層を接続する接着剤層を順に形成し、それによって複数種の色の量子ドットの製造を完成する。
【0059】
本願の実施例において、複数種の色の量子ドットを備える量子ドット膜層を製造した後、該方法は、量子ドット膜層の接着剤層から離れた側に、正孔輸送層、正孔注入層及び陽極を順に蒸着するステップをさらに含む。それにより、量子ドット電界発光デバイスの製造を完成し、該量子ドット電界発光デバイスに良好な使用性を付与することができる。
【0060】
以上のように、該方法は、操作がシンプルで、生産歩留まりが高いという利点を有し、得られる量子ドット電界発光デバイスの接着剤層は量子ドット膜層と電子輸送層との間の接着力を大幅に増加させることができ、製造中の量子ドット膜層脱落の問題を効果的に軽減でき、該量子ドット電界発光デバイスに良好な表示効果を付与する。
【0061】
本願のさらに別の態様では、本願は表示装置を提供する。本願の実施例において、該表示装置は筐体及び前述した量子ドット電界発光デバイスを備え、筐体はフロントフレーム及びリアパネルを備え、フロントフレーム及びリアパネルから収納空間が構成され、量子ドット電界発光デバイスは収納空間の内部に位置し、量子ドット電界発光デバイスの出光側がリアパネルから離れて設けられる。それにより、該表示装置は前述した量子ドット電界発光デバイスのすべての特徴及び利点を有し、ここでは重複説明を省略する。要するに、該表示装置は良好な表示効果及び比較的に高い解像度を有する。
【0062】
以下、具体的な実施例を参照しながら本願の技術案を説明し、なお、以下の実施例は本願を説明するためのみのものであり、本願の範囲を限定するものでないと理解すべきである。実施例で具体的な技術又は条件が明記されていない場合、本分野の文献で説明される技術又は条件又は製品の取扱説明書に従って行うこととなる。
【0063】
第1パターンの例
(1)基板上にITO陰極を形成し、ITO陰極上に1層の酸化亜鉛フィルムをスピンコーティングし、85℃で20分間アニールし、電子輸送層を形成する。
【0064】
(2)100mgのメルカプトプロピルトリメトキシシランを秤量して10mlのトルエン溶液に溶解させて、接着剤溶液を得る。
【0065】
(3)電子輸送層の陰極から離れた側にフォトレジストをスピンコーティングし、120℃で2分間プリベークし、その後、フォトレジストを露光現像してアニール処理し、電子輸送層の画素領域外の領域にマスク層を形成する。露光の時間は10秒間、現像の時間は2分間、アニール処理の温度は100℃、アニール処理の時間は5分間である。
【0066】
(4)マスク層を設けた電子輸送層を接着剤溶液に浸漬し、30分間浸漬した後に取り出し、トルエンできれいに洗い流し、その後、アニール処理して、マスク層及び電子輸送層を被覆する接着剤材料層を得る。アニール処理の温度は85℃、アニール処理の時間は5分間である。
【0067】
(5)接着剤材料層の電子輸送層及びマスク層から離れた側に、赤色量子ドット材料CdSe/ZnSをスピンコーティングし、30分間静置してアニール処理し、赤色量子ドット材料層を形成し、その後、マスク層を剥離し、且つ赤色量子ドット材料層及び接着剤材料層のマスク層上に位置する部分がマスク層の剥離とともに同期に除去され、接着剤層及び赤色量子ドットを得る。アニール処理の温度は100℃、アニール処理の時間は5分間である。
【0068】
(6)ステップ(3)-(5)を繰り返して、緑色量子ドット及び緑色量子ドットと電子輸送層とを接続する接着剤層、青色量子ドット及び青色量子ドットと電子輸送層とを接続する接着剤層を得る。
【0069】
第2パターンの例
第2パターンの例は第1パターンの例のステップと同様であるが、相違点は、電子輸送層と量子ドット膜層との間に接着剤層を形成しないことである。
【0070】
蛍光顕微鏡を使用して、それぞれ上記2つのパターンの例で得られた量子ドット膜層を観察し、具体的には、蛍光顕微鏡に使用されるパラメータについて、それぞれ、水銀ランプの電力は100Wであり、波長は365nmを選択し、5倍、10倍、20倍のレンズを選択して観察したところ、第2パターンの例における量子ドット膜層は脱落が深刻で、膜層は不完全であり、脱落率は20%-90%であるが、第1パターンの例における量子ドット膜層は脱落現象がないことを見出した。
【0071】
それにより、本願の実施例に係る量子ドット電界発光デバイスの量子ドット膜層と電子輸送層との間に比較的に大きい接着力を有し、製造中、量子ドット膜層は顕著な脱落を示さず、良好な形態を有し、それにより量子ドット電界発光デバイスに良好な表示効果を付与する。
【0072】
本願の説明では、用語「上」、「下」等で指示される方位又は位置関係は図示に基づく方位又は位置関係であり、本願の説明の便宜上使用されるものであり、本願を必ず特定の方位で構成したり操作したりすることを求めず、従って、本願を限定するものではないと理解すべきである。
【0073】
本明細書の説明では、用語「一実施例」、「別の実施例」等を参照する説明とは、該実施例を参照して説明される具体的な特徴、構造、材料又は特徴が本願の少なくとも1つの実施例に含まれることを意味する。本明細書では、上記用語の例示的な記載は必ずしも同一の実施例又は例に対するものではない。且つ、説明される具体的な特徴、構造、材料又は特徴はいずれか1つ又は複数の実施例又は例示において適宜組み合わせることができる。また、相互に矛盾しない限り、当業者は本明細書で説明される異なる実施例又は例示及び異なる実施例又は例示の特徴を結合したり組み合わせたりすることができる。また、なお、本明細書では、用語「第1」、「第2」、「第3」、「第4」は説明の目的のみに使用され、相対的な重要性を指示又は暗示したり指示される技術的特徴の数を暗黙的に示したりしないと理解すべきである。
【0074】
以上、本願の実施例を示して説明したが、上記実施例は例示的なものであり、本願を限定しないと理解すべきであり、当業者は本願の範囲を逸脱せずに上記実施例に対して変化、変更、置換や変形を行うことができると理解できる。
【符号の説明】
【0075】
10 画素領域
20 マスク層
21 フォトレジスト
30 接着剤材料層
40 量子ドット材料層
100 陰極
200 電子輸送層
300 接着剤層
400 量子ドット膜層
500 正孔輸送層
600 正孔注入層
700 陽極
800 基板