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特許7508378放射線療法の治療計画を最適化するための方法、ユーザインタフェース、コンピュータプログラム製品およびコンピュータシステム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-21
(45)【発行日】2024-07-01
(54)【発明の名称】放射線療法の治療計画を最適化するための方法、ユーザインタフェース、コンピュータプログラム製品およびコンピュータシステム
(51)【国際特許分類】
   A61N 5/10 20060101AFI20240624BHJP
【FI】
A61N5/10 P
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2020567924
(86)(22)【出願日】2019-06-10
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-10-14
(86)【国際出願番号】 EP2019065070
(87)【国際公開番号】W WO2019238602
(87)【国際公開日】2019-12-19
【審査請求日】2022-05-27
(31)【優先権主張番号】18177329.2
(32)【優先日】2018-06-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】522454806
【氏名又は名称】レイサーチ ラボラトリーズ エービー
(74)【代理人】
【識別番号】100114775
【弁理士】
【氏名又は名称】高岡 亮一
(74)【代理人】
【識別番号】100121511
【弁理士】
【氏名又は名称】小田 直
(74)【代理人】
【識別番号】100202751
【弁理士】
【氏名又は名称】岩堀 明代
(74)【代理人】
【識別番号】100208580
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 玲奈
(74)【代理人】
【識別番号】100191086
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 香元
(72)【発明者】
【氏名】ボクランツ,ラスムス
(72)【発明者】
【氏名】エリックソン,クジェル
(72)【発明者】
【氏名】ジャン,ティアンファン
【審査官】木村 立人
(56)【参考文献】
【文献】特表2017-520319(JP,A)
【文献】特表2013-521843(JP,A)
【文献】国際公開第2017/174625(WO,A1)
【文献】特開2015-136625(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2009/0037150(US,A1)
【文献】国際公開第2016/198525(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61N 5/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
放射線治療計画の最適化のための放射線治療計画装置の作動方法であって、
-前記放射線治療計画装置が、入力線量分布のセットを提供する工程(S32)と、
-前記放射線治療計画装置が、患者のための臨床目標のセットに基づいて補間最適化問題を定める工程(S34)であって、前記補間最適化問題は最適化関数のセットを含み、少なくとも1つの最適化関数は前記臨床目標のセットにおける臨床目標の違反の尺度を表す工程(S34)と、
コンピュータを備える前記放射線治療計画装置が、前記コンピュータを用いて前記補間最適化問題最適化することにより、前記入力線量分布の重み付けされた組み合わせに基づいて補間された線量分布を最適化する工程(S36)であって、前記最適化は前記入力線量分布のそれぞれのために補間重みを決定する工程(S35)を含み、さらに最適化された線量分布においてこの入力線量分布に割り当てられる前記重みを指定する工程(S36)と、
-前記放射線治療計画装置が、前記補間された線量分布に基づいて補間された治療計画を計算する工程(S37)と
を含み、
前記工程(S34)は、臨床目標の第1および第2のサブセットを提供することを含み、前記第2のサブセットは前記第1のサブセットよりも低い優先度を有する臨床目標を含み、かつ前記補間重みのセットを最適化する工程(S35)は最初に前記臨床目標の第1のサブセットのために補間重みを最適化し、かつその後の動作において前記臨床目標の第2のサブセットに基づいて前記補間重みを正確にすることを含み、前記その後の動作は、前記第1のサブセットのために最適化された前記補間重みに基づく制約に従うことを特徴とする、
作動方法。
【請求項2】
前記入力線量分布のセットを提供する工程は、入力計画のセットを得ること、および前記入力計画のそれぞれのために入力線量分布を計算することを含む、請求項1に記載の作動方法。
【請求項3】
前記入力線量分布のセットを提供する工程(S32)は、
a.少なくとも2つの目的関数のセットを含む多目的最適化問題を提供すること、
b.前記多目的最適化問題に関する最適化によって入力治療計画のセットを得ること、および
c.各線量分布が前記治療計画の1つに関連づけられている、予め計算された線量分布のセットを計算すること
を含む、請求項1に記載の作動方法。
【請求項4】
前記補間された線量分布の前記最適化の前に前記入力線量分布の重み付けされた組み合わせに基づいてナビゲートされた線量分布を提供する工程(S33)であって、ここでは各入力線量分布にナビゲーション重みを割り当て、かつ前記ナビゲーション重みを前記最適化への入力値として使用する工程(S33)をさらに含む、請求項1~3のいずれか一項に記載の作動方法。
【請求項5】
前記補間された線量分布を最適化する工程(S36)は少なくとも1つの制約に依存して行われる、請求項1~4のいずれか一項に記載の作動方法。
【請求項6】
前記補間最適化問題は、
最小化:f(y)
制約:y≧0、少なくとも1つの制約ベクトルを任意に含む
g(y)≦0および/またはh(y)=0(式中、yは補間重みのベクトルである)
と表される、請求項1~5のいずれか一項に記載の作動方法。
【請求項7】
少なくとも1つの制約は前記補間された治療計画の目的関数値を制限する限界に対応し、前記限界はスライダバーに対するクランプに対応している、請求項5に記載の作動方法。
【請求項8】
請求項1~7のいずれか一項に記載の放射線治療計画装置であって、
前記放射線治療計画装置は、前記コンピュータにおいて実効される放射線治療計画の最適化を制御するための、入出力手段を有する表示手段(19’)を備え、
前記表示手段(19’)は、臨床目標のリストおよび各臨床目標のための関連する値範囲および前記臨床目標が遂行されているか否かのインジケータを表示するように構成され、かつ
前記表示手段(19’)は、前記入出力手段によりユーザが前記最適化の実行開始を操作可能に構成される、
放射線治療計画装置。
【請求項9】
前記臨床目標のリストは前記臨床目標の少なくとも1つのために関連する制約および前記制約が遂行されているか否かのインジケータを保持するようにも構成されている、請求項8に記載の放射線治療計画装置
【請求項10】
前記入出力手段は、ユーザが臨床目標および/または前記最適化問題に影響を与える他の入力データを前記コンピュータに入力できるように構成される、請求項8又は9に記載の放射線治療計画装置。
【請求項11】
非一時的記憶手段を含む担体に記憶された、放射線治療計画装置を制御するためのコンピュータプログラム製品であって、前記コンピュータプログラム製品がプロセッサ(43)において実行されると、請求項1~7のいずれか一項に記載の作動方法を行わせるコンピュータ可読コード手段を含む、コンピュータプログラム製品。
【請求項12】
前記プロセッサ(43)において実行されると、請求項8~10のいずれか一項に記載の表示手段(19’)にユーザインタフェースを表示させ、治療計画に割り当てられる補間重みに対する調整を記録させ、かつその関連する入力治療計画のための重みとして各補間重みを用いて前記さらに最適化された治療計画を予め計算された治療計画の重み付き和として計算させるコンピュータ可読コード手段を更に含む、請求項11に記載のコンピュータプログラム製品。
【請求項13】
請求項11または12に記載のコンピュータプログラム製品を備える放射線治療計画装置であって、前記コンピュータプログラム製品が、前記プロセッサ(43)において実行されて前記放射線治療計画装置を制御するように構成される、放射線治療計画装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、放射線療法の治療計画を最適化するためのコンピュータプログラム製品、コンピュータシステムおよび方法に関する。
【背景技術】
【0002】
放射線療法治療の分野における主要課題は高品質な計画を考案することにある。健康な組織に対する損傷を可能な限り少なくし、好ましくは心臓または脊髄などのリスク臓器に対して損傷を全く引き起こさずに、腫瘍などの標的領域に対する所望の効果を確実に得るために治療計画を最適化する方法の改良が常に求められている。
【0003】
治療計画の最適化の1つの形態は多目的最適化であり、これは臨床医がナビゲーションインタフェースにより異なる治療選択肢を探求するのを可能にする。この形態の最適化は、最適化関数のセットを含む最適化問題に基づいている。各最適化関数は目的関数または制約であってもよい。多くの予め計算された治療計画は目的関数および制約に基づいて得られる。予め計算された計画を使用することにより、目的関数の値を調整することで計画間を直線的にナビゲートすることによって多目的治療計画がリアルタイムで可能になる。
【0004】
治療計画の多目的最適化は一般に、N個(Nは2以上の整数である)の目的関数のセットを含む最適化問題で開始する。目的関数から可能な治療計画のセットを予め計算し、かつそれらから得られる線量分布を決定する。各計画は治療パラメータのセットにより定め、それらはフルエンスまたは機械パラメータ、例えばマルチリーフコリメータ(MLC)のリーフ位置、またはイオンビーム治療のためのスポット重量、または近接照射療法のためのシード留置時間にそれぞれ関連づけられていてもよい。
【0005】
これらの可能な治療計画を多目的ナビゲーションプロセスへの入力データとして使用してもよく、これらを本明細書では入力治療計画または入力計画と呼び、それらのために線量分布を計算する。例えば、およそ50の入力治療計画およびそれらの関連する線量分布を使用することができる。目的関数および入力治療計画に基づいて、入力治療計画に関連づけられた線量分布の重み付けされた組み合わせを決定する。この重み付けされた組み合わせ、すなわち重み付き和を本明細書ではナビゲートされた線量分布と呼ぶ。
【0006】
多目的最適化で使用される目的関数および制約は治療計画のための品質尺度に基づいている。目的関数は典型的には、例えば特定の臓器への最小もしくは最大線量に関する線量分布に関連づけられた品質尺度である。制約は品質尺度と実行可能な値の関連するセットとを含む。目的関数として、および制約において使用される品質尺度は、それらを連続性および微分可能性などの最適化にとって適したものにさせる数学的特性を有していなければならない。目的関数として、および制約において使用される品質尺度は典型的には、構造への実際のボクセル線量と参照線量レベルとの間の偏差に対する二次のペナルティなどのペナルティである。
【0007】
操作者が各目的関数のために所望の値を調整するのを可能にするユーザインタフェースが開発されてきた。1つのスライダバーが各目的関数のために提供されており、操作者はスライダバーを操作することができる。スライダの移動は、所望の目的関数値を入力として与えられるナビゲーションアルゴリズムによって線量分布の重み付けの変化に変換される。ナビゲーションを容易にするために、クランプを適用してスライダ移動の可能な範囲を制限してもよい。最も単純な実施形態では、クランプはスライダに関連づけられた目的関数値のための上限として機能する。
【0008】
数学的に多目的最適化問題は、
最小化:[f(x),f(x),...、f(x)]
制約:xはXに含まれる
と表すことができ、式中、各fは多目的最適化問題の目的関数であり、かつxは変数のベクトルである。xの要素は、治療計画が治療機械に伝送されるという形式で機械パラメータに直接対応していてもよい。またxの要素は、そこから1ビーム方向当たりのフルエンス分布などの機械パラメータを導出することができる治療計画の指定であってもよい。実行可能なセットXは、治療計画の有効な表現に対応する可変ベクトルのセットを定める。このセットは制約関数cのいくつかのベクトル、例えばX={x:c(x)≦0}を用いて定めることができる。典型的な制約の例は、MLCのリーフペア内の対向するリーフ間の最小分離と、1光子セグメントまたはイオンスポット当たりのMUの数に対する下限とを必要とする関数である。目的の最大化がその目的の負の最小化に等しいため、一般性を失うことなく全ての目的関数f、f、…,/fを最小化することができる。
【0009】
多目的最適化問題に対する解xは、それが実行可能である(xがXに属する)場合にパレート最適解であると言われ、各目的のための少なくとも良好な目的関数値、および少なくとも1つの目的のための厳密により良好な目的関数値を有する他の実行可能解は存在しない。多目的問題に対する異なるパレート最適解は、
最小化:Σi=1,…,(x)
制約:xはXに含まれる
に従って、多目的問題のスカラー化された対応値で最適化することにより計算することができ、ここでは負でない重みwを変化させて異なる解を生成する。当該技術分野で周知であるように、最適解は重み付き和スカラー化以外の技術によって計算することができる。特定のパレート最適解xは、N次元空間にあるベクトルまたは目的関数値f(x)を定める。パレート最適解に関連づけられた全ての目的関数ベクトルのセットは、効率的な境界として当該分野で公知のN次元空間における表面すなわちパレート面またはパレートフロントを定める。変数xのベクトルは線量分布を定めるので、パレートフロントの近似を定める入力解を入力線量分布と呼ぶことができる。
【0010】
変数xのベクトルは線量分布を定めるので、パレートフロントの近似を定める入力解を入力線量分布と呼ぶことができる。パレートフロントが定義または近似されている場合、実際の線量計画を入力線量分布の直線補間によって実行してナビゲートされた線量分布を生成してもよい。
【0011】
「Hongら,膵頭部の局所進行癌のための強度変調放射線療法の治療計画における多目的最適化(Multicriteria optimization in intensity-modulated radiation therapy treatment planning for locally advanced cancer of the pancreatic head),Int.J.Radiation Oncology Biol.Phys.,Vol.72,No.4,pp.1208-1214,2008」は、膵臓癌の治療のための多目的最適化の使用を開示している。患者のために多くの計画を得、パレート面を生成し、操作者は治療を最適化するために選択されたパレート面上の点までナビゲートする。試験により、比較的短時間で満足な品質のナビゲートされた計画に到達することができることが分かった。
【0012】
計画を生成したら臨床目標の遂行により、その治療計画が治療のために許容されるかまたは好ましいものであるかを決定する。臨床目標は治療計画のための品質尺度および品質尺度のための実行可能な値のセットを含む。臨床目標のための一般的な種類の品質尺度としては、
・いくつかの関心領域(ROI)(患者体積の小領域)のために定められる線量体積ヒストグラム(DVH)尺度
・ROIに対する線量のa:th(ここでは「a」は予め選択された(通常は組織特異的)パラメータである)累乗平均である1つの定義に従う当量の均一な線量
・いくつかの放射線生物学的モデルによって決まる、標的のための腫瘍制御率(TCP)およびリスク臓器のための正常組織合併症確率(NTCP)
が挙げられる。
【0013】
以下のような様々な理由のために、臨床目標を正確に遂行する線量分布をナビゲートすることが難しくなる場合がある。
・臨床目標で使用される品質尺度とは一般に異なる目的関数および制約として使用される品質尺度は、臨床目標の遂行レベルを臨床目標に相関する(但し、直接対応していない)目的関数値を制御するスライダの移動により間接的にのみ制御することができることを意味するという事実
・1つの目的関数値に影響を与えるスライダの移動により全ての他のスライダを移動させて適合させた結果、臨床目標の遂行レベルもそれに応じて一般に変化する
・スライダバーの位置は線形化関数値を表すため、実際の目的関数値は関数が非線形である場合はスライダ関数値に等しくない
これらの理由のために、臨床目標を正確に達成するナビゲートされた線量分布が得られる前にかなりの量の手動微調整が必要となる場合がある。
【0014】
故に、より効率的な多目的最適化を含む治療計画が望まれている。
【発明の概要】
【0015】
本発明の目的は、より効率的であり、かつユーザフレンドリな治療計画の最適化、特に多目的最適化のための方法を提供することにある。
【0016】
本発明は、
-入力線量分布のセットを提供する工程と、
-患者のための臨床目標のセットに基づいて補間最適化問題を定める工程であって、補間最適化問題は最適化関数のセットを含み、少なくとも1つの最適化関数は臨床目標のセットにおける臨床目標の違反の尺度を表す工程と、
-補間最適化問題のコンピュータを用いた最適化によって、入力線量分布の重み付けされた組み合わせに基づいて補間された線量分布を最適化する工程であって、前記最適化は入力線量分布のそれぞれのために補間重みを決定し、さらに最適化された線量分布においてこの入力線量分布に割り当てられる重みを指定すること含む工程と、
-補間された線量分布に基づいて補間された治療計画を計算する工程と
を含む、患者のための放射線治療計画の最適化方法に関する。
【0017】
故に本発明の方法は、1つ以上の臨床目標からの偏差に直接基づいて補間された線量の自動計算を可能にする。本発明によれば、臨床目標を遂行する高品質な補間された線量分布は、スライダを手動で少し調整するか全く調整することなく特定することができる。従って時間をあまり要さず、かつ操作者の技量にもあまり依存しない方法が提供される。自動ナビゲーションの出力は、更新されたスライダ位置および更新された補間された線量分布を定める補間係数の更新されたセットである。最適化問題が臨床目標に直接基づいているとは、所望の結果と最適化において影響を受けるパラメータとの間に直接的関係が存在することを意味する。
【0018】
本方法では、それぞれの入力計画に関連づけられた線量分布の補間重みを調整するためにコンピュータを用いた最適化を適用して1つ以上の臨床目標に一致させる。典型的には臨床目標のそれぞれを、品質尺度および品質尺度のための実行可能な値のセットによって定める。補間最適化問題は1つ以上の制約も含んでいてもよい。好ましい実施形態では、少なくとも1つの制約は補間された治療計画の目的関数値を制限する限界に対応している。そのような限界を設定することはスライダバーにクランプを設定することに対応している。
【0019】
本発明の方法は治療薬送達のために使用されるハードウェアに依存していない。従って本方法は多目的最適化が適用可能であるあらゆる治療技術、例えば外部ビーム光子治療、電子線治療、イオンビーム治療および近接照射療法のために同様に有効である。
【0020】
いくつかの実施形態では、入力線量分布のセットを提供する工程は、入力計画のセットを得ること、および入力計画のそれぞれのために入力線量分布を計算することを含む。あるいは、治療計画から得られない線量分布を線量分布として使用してもよい。
【0021】
好ましい実施形態では、入力線量分布は多目的最適化から得られた治療計画に関連づけられており、かつ本方法は多目的最適化から得られたナビゲートされた計画の自動のさらなる改良を可能にする。この場合、入力線量分布のセットを提供する工程は、
a.少なくとも2つの目的関数のセットを含む多目的最適化問題を提供すること、
b.多目的最適化問題に関する最適化によって入力治療計画のセットを得ること、および
c.各線量分布が治療計画の1つに関連づけられている線量分布のセットを計算すること
を含む。
【0022】
補間された線量分布の最適化の前に、ナビゲートされた線量分布を入力線量分布の重み付けされた組み合わせに基づいて提供してもよく、ここでは各入力線量分布にナビゲーション重みを割り当て、かつナビゲーション重みを補間最適化問題への入力値として使用することができる。
【0023】
補間された線量分布を補間された計画に変換する最終工程の前に、補間された線量分布のさらなる手動ナビゲーションを行ってなおさらに改良された補間された計画を得てもよい。
【0024】
最も単純な実施形態では、臨床目標の遂行に向かう最適化は入力計画を生成すると自動的に開始する。別の実施形態では、操作者は開始命令を入力して(例えばボタンを押して)1回の動作で全ての臨床目標に関して最適化を開始することが可能である。
【0025】
好ましい実施形態では、操作者は臨床目標を優先度グループに区分してもよい。この実施形態では本方法は、高い優先度を有する臨床目標の第1のサブセットに関して第1の最適化を行い、次いで第1のサブセットよりも低い優先度を有する第2のサブセットに関してその後の最適化を行う。低くなっていく優先度のサブセットのための最適化手順の順序のために、異なる優先度レベルの臨床目標のいくつかのサブセットを定めてもよい。この場合の各新しい最適化手順では、線量分布に対して制約を設定して、より高い優先度を有する臨床目標の遂行の悪化を防止してもよい。低い優先度を有する臨床目標の遂行がより高い優先度を有する臨床目標によって完全に邪魔されないように、以前の最適化の間に得られた臨床目標の遂行レベルと比較して小さい悪化を許容するように、この制約を定めてもよい。
【0026】
本発明は、前記請求項のいずれか1項に記載の多くの入力治療計画に基づいてコンピュータにおいて行われる放射線治療計画の最適化を制御するためのユーザインタフェースにも関し、これは臨床目標および各臨床目標のための関連する値範囲のリストを表示するための表示手段と、好ましくはユーザが上で考察されている方法に従って最適化を開始するのを可能にするユーザ入力手段とを備える。各臨床目標のために、好ましくは臨床目標が遂行されているか否かのインジケータも存在する。好ましい実施形態では臨床目標のリストは、臨床目標の少なくとも1つのために関連する制約と当該制約が遂行されているか否かのインジケータとを保持するようにも構成されている。好ましくはユーザ入力手段は、ユーザが臨床目標および/または最適化問題に影響を与える他の入力データをコンピュータに入力するのを可能にするようにも構成されている。
【0027】
本発明は、放射線療法計画装置のプロセッサにおいて実行されると当該装置に上記に係る方法を行わせるコンピュータ可読コード手段を含む、好ましくは非一時的記憶手段などの担体に記憶された放射線療法計画装置を制御するためのコンピュータプログラム製品にも関する。このコードは、好ましくは上記ユーザインタフェースを放射線療法計画装置に関連づけられた画面に表示させ、治療計画に割り当てられる補間重みに対する調整を記録させ、かつその関連する入力治療計画のための重みとして各補間重みを用いて入力治療計画の重み付き和としてさらに最適化された治療計画を計算させるようにも構成されていてもよい。
【0028】
本発明は、放射線療法治療計画装置を制御して本発明の方法を行うために、プロセッサとプロセッサにおいて実行されるように構成された上記に係るコンピュータプログラム製品を保持するプログラムメモリとを備える放射線療法治療計画装置にも関する。
【0029】
以下では本発明を添付の図面を参照しながら例としてより詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0030】
図1図1aは従来の多目的計画システムのためのユーザインタフェースを示し、図1bは本発明の方法に適合させたユーザインタフェースの一部を示す。
図2】2つの目的関数を最適化するためのパレートに基づく計画システムを示す。
図3】本発明に係る方法のフローチャートである。
図4】本発明に係る方法を実装することができるコンピュータシステムを開示している。
【発明を実施するための形態】
【0031】
本発明の実施形態によれば、最初のナビゲートされた線量分布を以下で説明する自動最適化プロセスによってさらに最適化する。このプロセスは入力線量分布間のさらなる補間を含み、その結果を補間された線量分布と呼ぶ。後で説明するように、自動最適化プロセスはナビゲートされた線量分布を最初に得ることなく入力線量分布に対して直接行ってもよい。補間された線量分布を補間された計画に変換してもよい。
【0032】
図1aは、上に定義されているナビゲートされた線量分布を得るための治療計画の手動の多目的最適化のための単純化された先行技術の治療計画インタフェース1を示す。インタフェースの最上部には、3つのフィールド11、13、15、すなわち現在の計画に対応するDVH曲線を表示するための第1のフィールド11ならびに異なる角度から見た患者画像に重ね合わされる得られた線量分布を表示するための第2のフィールド13および第3のフィールド15がある。この例では、第2のフィールド13は患者の首の断面を示し、第3のフィールド15は横側から見た患者の首および頭部を示す。分かりやすくするために、重ね合わされる線量分布はこの例の図には示されていない。
【0033】
インタフェースの最下部は、図1aでは右に示されている臨床目標をリスト化しているフィールド17を有する。当該リストは臨床目標のそれぞれに割り当てられた優先度に関する情報も含んでいてもよいが、これは図示されていない。当該リストは、任意の好適な方法でそれが達成されているか否かについての各臨床目標に関する情報も示すこともできる。この例ではこれは、目標が達成されていることを示す〇または目標が達成されていないことを示す×によって示されている。実用的な実装では、色分けされたドットが通常使用され、典型的には達成されている目標には緑色が使用され、達成されていない目標には赤色が使用される。当然ながら、目標からの偏差の大きさを示す様々な色が使用されていてもよく、かつ/または実際の値は数として表示されていてもよい。臨床目標は典型的には、治療される標的への線量に対する下限および/または周囲組織および特に心臓または脊髄などのリスク臓器に対する線量の上限の指定である。多くの場合、線量に対する下限または上限を限られた程度まで違反することは許される。従って臨床目標は、構造のためのDVH尺度に対する上限または下限として指定されていてもよい。
【0034】
インタフェース1の下部中央19には、上で考察されているN個の目的関数のリスト、および操作者がそれぞれの目的関数の値を選択するのを可能にする各目的関数のためのスライダバー21の形態の調整手段がある。当該技術分野において一般的であるように、目的関数は、制約を守りながらも1つの目的関数のためのスライダバーを移動させた場合に他の目的関数のための目的関数値を制限することに関する。
【0035】
操作者は、スライダを操作することによりナビゲートされた線量の目的の1つのための関数値を調整することができる。1つのスライダを動かした際に他のスライダが新しい値に調整されるように、全ての目的関数は互いに影響を与える。例えば1つの臓器に対する線量の増加はその周囲組織に対する線量に影響を与える。またフィールド11のDVH曲線ならびにスライダ位置によって定められる目的関数の指定された組み合わせから得られるフィールド13および15の線量分布は再計算され、かつリアルタイムで表示される。この例では、最も左のスライダバーの位置は最も望まれる値であるとみなされ、これは目的関数の値が右に向かって増加することを意味する。特定のスライダの移動は、望ましくない目的関数値が禁止されるようにスライダのためのクランプを定めることによって制限することができる。クランプ23は図1aでは水平線として示されており、ここでは目的関数1および4に対するクランプはこの例では対応するクランプの移動を実際に制限しており、他の目的関数に対するクランプは最大位置に配置されている。特定のスライダに対するクランプの配置により他のスライダのための実行可能な移動範囲の制限も生じるが、これは図1aには図示されていない。
【0036】
スライダバーは当該値を調整する特に好適な方法を提供する。但し当業者であれば理解するように、値を入力する他の方法も使用してもよく、例えば手動で数を入力したり画面上で目的のサイズに操作したりしてもよい。当然のことながら、クランプは当該関数値を制限する任意の好適な種類の関数として実装されていてもよい。
【0037】
目的関数値は特定の計画の品質のためのインジケータとして使用される。一般に臨床目標と目的との間に1対1の対応は存在しないため、現在遂行されている臨床目標がナビゲーション中ずっと遂行されたままであるという保証はない。
【0038】
図1bは、図1aの最上部にある3つのフィールド11、13、15を含むユーザインタフェース全体の中に表示することができる本発明の方法のための可能なユーザインタフェースを示す。
【0039】
図1bのユーザインタフェースは、指定された臨床目標の遂行に向かって多目的最適化を開始するためにユーザによって起動することができる第1のボタン30と、進行中の最適化を停止するために起動することができる第2のボタン31とを含む。当該ユーザインタフェースは好ましくは、最適化のための繰り返し数および/または数の許容差などの最適化設定を調整するための第3のボタン32も含む。
【0040】
当該ユーザインタフェースは、それぞれが関心領域または関心点に関する臨床目標のリストを含む第1のカラム33および各臨床目標のために現在達成されている値を含む第2のカラム34も有する。臨床目標は、例えば領域または領域の指定された部分に対する最小もしくは最大平均線量あるいは最小の均一性指標として当該技術分野で知られている方法で定められる。第3のカラム35は線量の種類を表示し、第4のカラム36は臨床目標を適用する領域、典型的には腫瘍またはリスク臓器のいずれかを表示する。この例では、計画標的体積(PTV)のための第1の臨床目標および臨床的標的体積(CTV)のための第2の臨床目標ならびに第1および第2のリスク臓器のそれぞれ、OAR1およびOAR2それぞれのための臨床目標が存在する。臨床目標のそれぞれのために優先度および/または重みを設定するために第5のカラム37および第6のカラム38を使用してもよい。「はい」のために「〇」または「いいえ」のために「×」として図1bに示されているように、臨床目標が遂行されているか否かを表示するために第7のカラム39が提供されていてもよい。所望どおりに臨床目標のうちの1つ以上のための制約を設定するために第8のカラム40が使用されてもよい。当然ながら、どのカラムを表示するかは適宜選択してもよく、かつ図1bに示されていない情報を表示することもできる。
【0041】
第4および第5のカラムを使用して当該結果に対する各臨床目標の相対的寄与を調整する。これは、臨床目標を辞書式に最適化することができる順序を定める優先度レベルを設定すること、または重みを各臨床目標に割り当て、かつ最適化問題における目的関数を定めて臨床目標からの偏差の重み付き和を最小化することのいずれかにより、それらの重要性に基づく臨床目標の優先順位付けを含めることによって行ってもよい。
【0042】
インタフェースは好ましくは、ユーザが臨床目標、値および制約を入力し、かつ優先度レベルまたは各臨床目標の重みを変えるのを可能にするように構成されている。好ましくは、最適化の結果はインタフェースの他のフィールド11、13、15に連続的に表示されるが、これは図1bに図示されておらず、かつ図1bの表にも示されていない。当然のことながら、本発明の方法はどんなユーザインタフェースも使用せずに完全に自動的に行われてもよい。この場合、本システムは「最適化を開始する」ボタンをクリックするユーザからの命令を待つ代わりに、入力線量分布が提供されるとすぐに自動的に補間を開始するように構成されていてもよい。
【0043】
図2は目的関数の単純化されたセットのための多目的最適化の原理を示す。多目的最適化では、目的関数のセットおよび制約のセットに関して多目的最適化問題を定める。
【0044】
これは、2次元表示を可能にするためにそれぞれ2つの目的関数f1およびf2(どちらも最小化される)のみを用いて図2に示されている。実践的事例では、目的関数の数は典型的には、多次元空間を必要とする約10までの間であってもよい。楕円で囲まれている領域は実行可能な治療解に対応する目的関数ベクトルを表す。
【0045】
太い実線の曲線は、2つの目的関数fおよびfの達成可能な組み合わせを定めるパレート最適解に対応する目的関数値のベクトルを示す。この曲線は多目的最適化においてパレートフロントとして知られている。パレートフロントはN次元表面であり、ここでNは目的関数の数である。図に示されているように、パレートフロント上の任意の点における目的関数の1つの改善は他の1つの悪化をもたらす。目的関数の任意の選択された組み合わせは所望の結果に基づいてトレードオフされる。
【0046】
本システムは多くの入力線量分布を含み、そのそれぞれがパレートフロント上の点となる。この例では5つの入力線量分布があり、パレートフロント上に5つの対応する点A、B、C、D、Eがある。点Aの場合、第2の目的関数fは高い値を有するが第1の目的関数f1は低い値を有し、これはより望ましい。点Eの場合、第1の成分関数fは高いが点Aと比較してより低い値を有し、第2の成分関数fは低いが点Aと比較してより良好な値を有する。中間点B、C、Dの場合、両方の目的関数の値は最外点AおよびEの値の間である。図2はこれらの2つの点を生成する線量分布の重み付き和によって点DおよびEの間に補間された点xも示す。
【0047】
多目的最適化の本質は、患者のために考え得る限りで最良の臨床結果をもたらす閉曲線の上または影付きの領域の中にある点、言い換えると全ての入力線量分布の重み付き和を見つけることにある。正確な結果はナビゲートされた線量分布が選択された時点では未知であるため、最も好ましい計画の選択は臨床医のための部分的に主観的な選択である。これはパレートフロント上の点または全ての実行可能解によって定められる体積の中の点であってもよく、後者は当該体積の中では点yによって示されている。
【0048】
本発明によれば、上に概説されているように補間された計画が得られた後に、線量のさらなる最適化のために自動ナビゲーションが行われる。この自動ナビゲーションでは、新しい最適化問題は臨床医によって提供される臨床目標に基づいて定められる。
【0049】
ナビゲートされた計画における各入力計画の線量分布および総線量分布と臨床目標との間には線形関係があるため、ナビゲートされた計画への1つの計画の寄与を変えた場合の効果は治療体積全体について予測することができる。
【0050】
最も単純な事例では、全てが同じ優先度を有する臨床目標の1つのセットが存在する。より複雑な事例では、臨床目標のセットをサブセット、すなわち最も高い優先度を有する1つのサブセットと、いくつかの臨床目標が他のものよりも重要であり得ることを考慮に入れるために低くなっていく優先順位の1つ以上のさらなるサブセットに分割してもよい。
【0051】
図3は本発明に係る方法のフローチャートである。第1の工程S31では、本方法への入力データを決定する。工程31は以下の工程の前の任意の時点で行ってもよい。当該入力データは関連づけられた目的関数のセットを含む多目的最適化問題を含む。工程S32では、治療計画のセットを最適化問題に基づいて計算し、かつ各入力計画のために得られる線量分布を決定する。これらの線量分布をナビゲートされた線量分布の中に一緒に重み付けされた入力線量分布と呼ぶ。あまり有利ではないが、入力線量分布として任意の特定の方法で互いに関連づけられていない多くの入力計画から計算された多くの線量分布を使用することができる。最近では、最初に治療計画を計算せずに特定の患者ジオメトリのために所望の線量分布を決定することもできる。言い換えると、入力線量分布は同じ多目的最適化問題から得られた計画に基づいている必要はないが、これは好ましい実施形態である。入力線量分布は治療計画に基づいている必要は全くない。重要なことは、入力線量分布のセットが提供されるということである。
【0052】
工程S33では、入力線量分布に基づいてナビゲートされた線量分布を得る。これは、各入力線量分布のためにパラメータ重みを定めること、およびナビゲートされた線量分布を作成するためにパラメータ重みを適用することを含んでもよい。このナビゲートされた線量分布は本発明に係る自動最適化のための始点であってもよい。あるいは、自動線量分布は最初にナビゲートされた線量分布を得ずに入力線量分布から直接開始してもよい。言い換えると、工程S33は任意の工程である。
【0053】
以下の工程では、入力線量分布は工程S31~S32によって、または任意の他の好適な方法で得られた入力線量分布であってもよく、工程S33で得られたナビゲートされた線量分布を補間重みのための開始値として使用してもよい。その後の最適化は入力データが利用可能な場合に自動的に開始してもよく、あるいはユーザ入力によって手動で開始してもよい。最適化は、そのような入力手段が当該ユーザインタフェースに提供されている場合にはユーザ入力によって停止してもよい。あるいは、最適化は臨床目標が遂行されている場合には自動的に停止してもよい。工程S34では、特定の患者のための臨床目標のセットを決定する。臨床目標は目的関数に関連づけられていても関連づけられていなくてもよい。より高い優先度を有する臨床目標を遂行することがより低い優先度を有する臨床目標を遂行することよりも重要であるとみなされるように、臨床目標の優先順位付けされたリストを定めてもよい。当然ながら、工程S34は臨床目標が使用される工程S35の前の任意の時点で行ってもよい。
【0054】
工程S35では、入力線量分布のために補間重みのセットを決定する。補間重みは各線量分布のために補間重みを含む重みベクトルに関して表され、各補間重みは、他の入力線量分布に対してこの入力線量分布が補間された線量に対してなすべき寄与を決定する。工程S36では、得られた補間された線量分布は補間重みを入力線量分布に適用することにより入力線量分布の重み付き和として得てもよい。得られた重み付き和は臨床目標を最大で可能な程度まで遂行するものでなければならない。本発明によれば補間重みは、補間された線量分布に対して入力線量分布のそれぞれによってなされる寄与を調整することに直接基づいている。言い換えると、全ての入力線量分布の重み付き和が所望の線量分布をもたらすように線量分布に重み付けする。
【0055】
工程S36では、得られた補間された線量分布を治療計画に変換する。入力線量分布が入力治療計画から得られた線量分布に基づいている場合、これは入力計画の変数(多目的最適化問題における変数x)の補間に補間重みを適用することを含む。そのような補間は、例えば変数がイオンビームスポット重量または外部ビーム光子治療のためのフルエンスマップを表す場合に変数と線量との関係が線形であるかおよそ線形である治療薬送達技術のために可能である。入力線量分布がどんな治療計画もなく得られた場合は、補間された線量分布と最適化された計画のための線量分布との間の偏差を最小化するように定められた最適化問題を解くことにより補間された治療計画を得てもよい。
【0056】
また補間された線量分布または補間された変数は、治療計画に変換する前に線量分布のさらなる最適化のための始点として使用してもよい。例えば、実行可能な治療計画に関連づけられた線量分布と補間された線量分布との誤差を最小化する最適化は、変数と線量分布との関係が非線形である送達技術のために行ってもよい。
【0057】
本方法は、望まれる場合はいつでも工程S33および/または工程S35およびS36を繰り返すことにより拡張してもよい。工程S33の手動ナビゲーションとS36~S37における補間との間をそれぞれ移動することが所望に応じて何度でも可能である。繰り返しの間に臨床目標に対する1つ以上のクランプまたは制約を追加して、1回の繰り返しからの所望の出力が後の繰り返しにおいて破棄されないことを保証してもよい。
【0058】
指定された臨床目標を最も達成する補間重みのための工程S35における探索は、補間重みyが決定変数を構成する最適化として実装されていてもよい。最小化される最適化関数fおよび任意に正でない場合に実行可能である制約関数のベクトルgおよびゼロである場合に実行可能である制約関数のベクトルhによって、ユーザ要求を反映させてもよい。
【0059】
数学的に本方法は同じ優先度を有する全ての臨床目標の場合に、以下の最適化問題:
最小化:f(y)
制約:y≧0,g(y)≦0,h(y)=0
として表すことができ、式中、yは補間重みのベクトルであり、かつgおよびhは制約関数のベクトルである。好ましい一実施形態では、等式制約付き関数hのベクトルは関数ey-1を含み、式中、eは全ての関数のベクトルであり、これは補間重みを合計すると1になることを保証する。この自動ナビゲーションにおける目的関数fはナビゲートされた線量分布がどの程度臨床目標から離れているかの尺度である。これは重みyのベクトルに関して表され、各重みはナビゲートされた線量分布に対する入力計画の1つの寄与を決定する。
【0060】
臨床目標のセットが、異なる優先度レベルが割り当てられたk個のサブセットに分割されている場合、これは数学的に、
辞書式最小化:f1(y),...,f(y)
制約:y≧0,g(y)≦0,h(y)=0
として表すことができ、式中、「辞書式最小化」は最適なyが指定された順序で最適化関数f~fを最小化する解であることを示す。言い換えると、最適化は指定された順序で一度に1つの最適化関数のために行われる。最適化関数の各最適化後に、制約を追加して、より低い優先度の最適化関数がより高い優先度を有する最適化関数の遂行における悪化をもたらすことを回避する。
【0061】
自動補間の目標がユーザ指定の臨床目標を遂行することである場合、最適化関数はそれぞれが目標の1つの違反を測定する成分関数の合計であってもよい。制約のベクトルの成分は、遂行されている状態に維持されなければならない既に達成されている臨床目標を反映していてもよい。自動最適化問題は一般に、内点法または逐次二次計画法などの標準的な非線形プログラミング方法を用いて解くことができる連続的な非線形最適化問題である。
【0062】
図4は、本発明に係る方法を実行することができるコンピュータシステムの概略図である。コンピュータ41はプロセッサ43、データメモリ44およびプログラムメモリ46を備える。好ましくは、キーボード、マウス、ジョイスティック、音声認識手段または任意の他の利用可能なユーザ入力手段の形態で1つ以上のユーザ入力手段48も存在する。また図1bに関連して考察されているインタフェースを表示するための画面を含む表示装置49が好ましくは存在する。またユーザ入力手段48を使用してデータをインタフェースに入力してもよい。またユーザ入力手段は外部メモリユニットからデータを受信するように構成されていてもよい。
【0063】
データメモリ34は、入力計画および臨床目標などの手続きで使用されるデータを含む。プログラムメモリ36は、コンピュータに図3に関連して考察されている方法工程を行わせるように構成されたコンピュータプログラムを保持している。
【0064】
当然のことながら、データメモリ34およびプログラムメモリ36は概略的に図示および考察されている。それぞれが1つ以上の異なる種類のデータを保持しているか、あるいは1つのデータメモリが好適に構造化された方法で全てのデータを保持しているいくつかのデータメモリユニットが存在し、かつそれがプログラムメモリも保持していてもよい。例えば予め計算された計画、臨床目標およびナビゲートされた線量分布のそれぞれのために別個のメモリまたはメモリセグメントが存在してもよい。また1つ以上のメモリが他のコンピュータ上に格納されていてもよい。
図1
図2
図3
図4