(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-21
(45)【発行日】2024-07-01
(54)【発明の名称】屋根架構
(51)【国際特許分類】
E04H 3/14 20060101AFI20240624BHJP
E04B 7/00 20060101ALI20240624BHJP
E04B 1/342 20060101ALI20240624BHJP
【FI】
E04H3/14 A
E04B7/00 Z
E04B1/342 Z
(21)【出願番号】P 2021024003
(22)【出願日】2021-02-18
【審査請求日】2023-08-02
(73)【特許権者】
【識別番号】000001373
【氏名又は名称】鹿島建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100124316
【氏名又は名称】塩田 康弘
(72)【発明者】
【氏名】土合 博之
(72)【発明者】
【氏名】小松原 辰弥
(72)【発明者】
【氏名】田中 大介
(72)【発明者】
【氏名】伊佐治 勝大
【審査官】兼丸 弘道
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-012796(JP,A)
【文献】特開2018-204213(JP,A)
【文献】特開2021-085269(JP,A)
【文献】特開2021-031919(JP,A)
【文献】特開2017-122334(JP,A)
【文献】特開2016-142116(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04B 1/34-1/342
E04H 3/14-3/30
E04B 7/00-7/24
E04C 3/02-3/294
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一方向とこれに交差する他方向を有するフィールドを周囲から包囲し、観客席を備えた躯体の観客席構造体の上空に架設される屋根架構であり、
前記観客席構造体は前記観客席が前記フィールドの前記一方向に配列する一方向構造体と、前記他方向に配列する他方向構造体と、隣接する前記一方向構造体と前記他方向構造体との間に位置する交差方向構造体とに区分され、
前記交差方向構造体の後方側の、前記観客席の配列方向両側に設置され、前記交差方向構造体に一体化する隅柱間に架設され、この両隅柱に支持される後方側斜め梁と、
隣接する前記後方側斜め梁の軸方向中間部間に架設されてこの両後方側斜め梁に支持され、平面上、互いに直交する直交梁と、
隣接する前記直交梁の軸方向中間部間に架設される前方側斜め梁と、前記直交梁と前記前方側斜め梁との接合位置の下に配置され、前記一方向構造体と前記他方向構造体に一体化し、前記前方側斜め梁を支持する中柱と、
前記フィールドの前記一方向、もしくは前記他方向に隣接する2本の前記前方側斜め梁の軸方向中間部間に架設され、この両前方側斜め梁の軸方向中間部に支持され、前記フィールドの前記他方向、もしくは前記一方向に対向する屋根支持梁と、
対向する前記屋根支持梁間に架設され、この両前記屋根支持梁に支持される複数本の小梁とを備えることを特徴とする屋根架構。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は競技場の観客席の構造体を活用しながら、フィールドの上空を覆い得る屋根を形成する形態の屋根架構に関するものである。
【背景技術】
【0002】
競技用のフィールドを周囲から包囲するように観客席が配置される競技場では通常、観客席を支持する躯体としての構造体の一部等に立設される柱間に屋根の骨組となるトラス梁を架設し、トラス梁に、観客席の上空を覆う屋根を支持させる形態が採られる。
【0003】
具体的にはフィールドを挟み、フィールドの短辺方向、または長辺方向に対向する構造体の、フィールドに対して後方側に、対向する方向に直交する方向に並列させながら、柱を立設し、対向する柱間にトラス梁を架設する方法が考えられる。この方法では最長のトラス梁の長さがフィールドの長辺方向に観客席が配列する構造体の後方側間に亘る大きさになり、スパンが大きいため、梁成を大きくせざるを得ない。またトラス梁の並列方向の間隔を狭くせざるを得ないため、観客席での視界を遮る可能性が高まる。
【0004】
これに対し、フィールドの長辺方向に対向する構造体間の、短辺方向両側にキールトラスを架設し、短辺方向に対向するキールトラス間に小梁を架設する方法がある。短辺方向に対向するキールトラスのみでは並列する小梁を密に配列することになるため、小梁間の間隔をより大きく確保する目的で、キールトラスをフィールドの短辺方向にも付加的に架設することも考えられる。
【0005】
この方法では長辺方向のキールトラスが短辺方向のキールトラスの軸方向中間部に支持される形になることで、長辺方向のキールトラスのスパンが短縮される利点がある。但し、いずれかの方向のキールトラスのスパンは実質的に上記方法と変わらないため、観客席での視界に影響がある。
【0006】
一方、フィールドを包囲するように屋根支持梁を二方向に、井桁状に架設すると共に、井桁の四隅寄りに、二方向に交差する方向に斜め梁を架設することで、斜め梁のスパンを抑えながら、二方向の屋根支持梁のスパンを短縮させる方法がある(特許文献1参照)。只、この例では観客席の上空にのみ屋根を形成し、フィールドの上空を覆う屋根を形成することを想定していないため(段落0024~0026)、例えばフィールドの短辺方向に対向する屋根支持梁間に小梁を如何に架設するか、までは考慮されていない。二方向の屋根支持梁は斜め梁と交差するため、いずれかの方向に対向する屋根支持梁間に小梁を架設しようとすれば、一部の小梁は斜め梁に支持させることになり、小梁のスパンが変則的になる。
【0007】
特許文献1と同様、観客席の上空にのみ屋根を形成する例であるが、観客席の長辺方向両側に、屋根架構(屋根構造)を支持する立体架構を観客席とは分離して配置する方法がある(特許文献2参照)。この例の立体架構は観客席の長辺方向片側で3本の柱と隣接する柱間に架設される梁からなり、立体架構間に屋根梁が架設されることで、屋根架構を構成している(段落0022~0027)。屋根梁上に屋根を支持する小梁が架設されているが(段落0022、0029)、この例でもフィールド上空に屋根を配置することは想定されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】特開2012-12796号公報(請求項1、段落0024~0035、
図1~
図6)
【文献】特開2016-142116号公報(請求項1、段落0022~0042、
図1~
図4)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
特許文献2では屋根架構と観客席を支持する構造体を分離させることで(段落0022)、屋根架構の振動が構造体に伝達しないようにしていることが想像されるが、立体架構を構成する3本の柱を観客席の構造体から分離させることで、構造体とは完全に独立した柱を設置しなければならず、敷地の利用上も、構造上も効率的とは言い難い。
【0010】
本発明は上記背景より、観客席の構造体を活用しながら、フィールドの上空を覆い得る屋根を形成可能な屋根架構を提案するものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
請求項1に記載の屋根架構は、一方向とこれに交差する他方向を有するフィールドを周囲から包囲し、観客席を備えた躯体の観客席構造体の上空に架設される屋根架構であり、
前記観客席構造体は、前記観客席が前記フィールドの前記一方向に配列する一方向構造体と、前記他方向に配列する他方向構造体と、隣接する前記一方向構造体と前記他方向構造体との間に位置する交差方向構造体とに区分され、
前記交差方向構造体の後方側の、前記観客席の配列方向両側に設置され、前記交差方向構造体に一体化する隅柱間に架設され、この両隅柱に支持される後方側斜め梁と、
隣接する前記後方側斜め梁の軸方向中間部間に架設されてこの両後方側斜め梁に支持され、平面上、互いに直交する直交梁と、
隣接する前記直交梁の軸方向中間部間に架設される前方側斜め梁と、前記直交梁と前記前方側斜め梁との接合位置の下に配置され、前記一方向構造体と前記他方向構造体に一体化し、前記前方側斜め梁を支持する中柱と、
前記フィールドの前記一方向、もしくは前記他方向に隣接する2本の前記前方側斜め梁の軸方向中間部間に架設され、この両前方側斜め梁の軸方向中間部に支持され、前記フィールドの前記他方向、もしくは前記一方向に対向する屋根支持梁と、
対向する前記屋根支持梁間に架設され、この両前記屋根支持梁に支持される複数本の小梁とを備えることを構成要件とする。
【0012】
「一方向とこれに交差する他方向を有するフィールド」とは、長辺方向と短辺方向等、フィールドを区画する線(ライン)の方向がいずれか一方向とこれに直交等、交差する方向を有することを言う。フィールドの平面形状は主に長方形であるが、正方形の場合には長辺と短辺の区別がないため、一方向と他方向と言う。フィールドの平面形状が長方形の場合、一方向は長辺方向か短辺方向を指し、他方向は短辺方向か長辺方向を指す。「観客席構造体」は観客席を支持する躯体としての構造体を言い、構造種別は主に鉄筋コンクリート造であるが、必ずしもこれには限られない。
【0013】
請求項1における「観客席がフィールドの一方向に配列する」とは、フィールドの一方向に同一高さの観客席が配列することを言い、この配列の観客席構造体が一方向構造体21である。「他方向に配列する」とは、フィールドの他方向に同一高さの観客席が配列することを言い、この配列の観客席構造体が他方向構造体22である。観客席は段差が付いて配列する方向もあり、この段差の付く方向の前方側がフィールドに近い側、後方側がフィールドから遠い側であり、前方側から後方側へかけて上りになる。以下では同一高さの観客席が配列する方向を「配列方向」、段差が付いて配列する方向を「通路方向」と言う。
【0014】
請求項1の「
隣接する一方向構造体と他方向構造体との間に位置する交差方向構造体とに区分され」とは、観客席構造体2が
図2に示すように隣接する一方向構造体21と他方向構造体22との間に交差方向構造体23が配置される
ことを意味する。「隣接する」はフィールドの一方向と他方向の双方に交差する方向に隣接することを言う。交差方向構造体23の観客席はフィールドの一方向と他方向に交差する方向に配列する。
【0016】
「後方側」は通路方向のフィールドから遠い側を指すが、必ずしも
図1に示すような、一方向構造体21と他方向構造体22の最後方部とは限らない
。
【0023】
隣接する一方向構造体21と他方向構造体22との間に交差方向構造体23が配置される
ことで、観客席構造体2は
図2に示すように一方向構造体21と他方向構造体22と、隣接する一方向構造体21と他方向構造体22との間に位置する交差方向構造体23とに区分される。
交差方向構造体23の後方側の、観客席の配列方向両側に隅柱32、32が設置(立設)され、交差方向構造体23に一体化する。「観客席の配列方向両側」は両端部とは限らず、両端部寄りを含む。
【0024】
この隅柱32、32間に後方側斜め梁42が架設され、両隅柱32、32に支持される。交差方向構造体23の後方側の両側には一方向構造体21と他方向構造体22が接続するため、隅柱32が交差方向構造体23の、観客席の配列方向両端部に位置する場合、隅柱32は一方向構造体21と他方向構造体22にも一体化する。両端部寄りの場合、隅柱32は交差方向構造体23にのみ、一体化する。後方側斜め梁42はフィールドを包囲する4箇所の交差方向構造体23の後方側に位置するため、観客席構造体2の上空に4本、架設される。隅柱32、32は後方側斜め梁42の軸方向両側に位置する。
【0025】
隣接する後方側斜め梁42、42の軸方向中間部間に平面上、互いに直交する直交梁7、7が架設され、両後方側斜め梁42、42に支持される。後方側斜め梁42の軸方向中間部は交差方向構造体23への隅柱32の接合位置以外の部分を指す。「平面上、」とは、平面図として見たとき、の意味である。
【0026】
直交梁7、7は基本的にフィールドの一方向と他方向に平行に架設される結果、互いに直交し、観客席構造体2の上空に4本、架設される。1本の後方側斜め梁42は軸方向中間部の2箇所で二方向の直交梁7、7を支持する。隣接する直交梁7、7の軸方向中間部間に前方側斜め梁43が架設される。前方側斜め梁43は各交差方向構造体23上で後方側斜め梁42と平行に架設される。
【0027】
直交梁7と前方側斜め梁43との接合位置の下に、前方側斜め梁43を支持する中柱33が設置(立設)され、一方向構造体21と他方向構造体22に一体化する。中柱33は
図4に示すように直交梁7の下に配置されるため、直交梁7も支持する。中柱33、33は前方側斜め梁43の軸方向両側の下に位置し、直交梁7の軸方向中間部の下に位置する。
【0028】
フィールドの一方向、もしくは他方向に隣接する2本の前方側斜め梁43、43の軸方向中間部間に、フィールドの他方向、もしくは一方向に対向する屋根支持梁5が架設され、両前方側斜め梁43の軸方向中間部に支持される。4本の内、2本の前方側斜め梁43、43間に屋根支持梁5が架設されることで、屋根支持梁5、5は観客席構造体2の上空に2本、架設され、フィールドの他方向か一方向に対向する。対向する屋根支持梁5、5間に小梁6が架設され、両屋根支持梁5、5に支持される。小梁6は小梁6の幅方向に複数本、並列する。
【0029】
屋根架構1を構成し、屋根支持梁5を直接、支持する前方側斜め梁43の軸方向両側に位置する中柱33が一方向構造体21と他方向構造体22に一体化し、後方側斜め梁42の軸方向両側に位置する隅柱32が交差方向構造体23に一体化することで、中柱33と隅柱32を観客席構造体2とは独立して設置する必要がない。この結果、中柱33と隅柱32の構造が単純化され、材料も節減される他、中柱33と隅柱32設置のための敷地を余分に確保する必要もない。
【0030】
また屋根支持梁5を支持する前方側斜め梁43が、一方向構造体21と他方向構造体22に一体化した中柱33、33間に架設され、両中柱33、33に支持されることで、競技場の平面上、前方側斜め梁43を観客席構造体2の後方側よりフィールド寄りに配置することが可能になる。結果として小梁6を直接、支持する屋根支持梁5を隣接する前方側斜め梁43、43に支持させることで、屋根支持梁5を対向する一方向構造体21、または他方向構造体22の後方側間に架設する場合より、屋根支持梁5の両端間区間(スパン)が短縮されるため、屋根支持梁5の成を抑制することが可能になる。
【0031】
加えて複数本の小梁6がフィールドの他方向、もしくは一方向に対向する屋根支持梁5、5間に架設されることで、小梁6はフィールドの上空を跨ぐように架設されるため、フィールドの上空を覆い得る屋根材(屋根葺き材)10を屋根支持梁5、5間に敷設することが可能になる。フィールド上の屋根は一旦、小梁6に支持されて対向する屋根支持梁5、5に支持され、各屋根支持梁5両側の前方側斜め梁43、43を通じて中柱33、33に支持される。屋根の荷重の一部は直交梁7、7と後方側斜め梁42、42を通じて隅柱32、32に支持される。
【発明の効果】
【0032】
小梁を支持する、対向する屋根支持梁を間接的に支持する隅柱と中柱を観客席を備えた観客席構造体に一体化させるため、隅柱と中柱を観客席構造体とは独立して設置する必要がない。この結果、隅柱と中柱の構造が単純化され、材料も節減される上、隅柱と中柱設置のための敷地を余分に確保する必要が生じない。
【0033】
また屋根支持梁を支持する前方側斜め梁を、一方向構造体と他方向構造体に一体化した中柱間に架設し、両中柱に支持させるため、競技場の平面上、前方側斜め梁を観客席構造体の後方側よりフィールド寄りに配置することができる。この結果、屋根支持梁を対向する一方向構造体、または他方向構造体の後方側間に架設する場合より、屋根支持梁の両端間区間(スパン)を短縮することができ、屋根支持梁の成を抑制することができる。
【0034】
加えて複数本の小梁をフィールドの他方向、もしくは一方向に対向する屋根支持梁間に架設するため、小梁をフィールドの上空を跨ぐように架設することができ、フィールドの上空を覆い得る屋根を屋根支持梁間に敷設することができる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【
図1】対向する屋根支持梁を支持する斜め梁を一方向構造体と他方向構造体に一体化した側柱間に架設し、支持させた場合の屋根架構の
参考例を示した平面図である。
【
図2】隣接する一方向構造体と他方向構造体との間に交差方向構造体が配置され、交差方向構造体の両側に一体化した隅柱間に後方側斜め梁が架設され、後方側斜め梁間に直交梁が架設され、直交梁間に、対向する屋根支持梁を支持する前方側斜め梁を架設した場合の屋根架構の構成例を示した平面図である。
【
図3】
図2に示す屋根架構の変形例を示した平面図である。
【
図4】
図2に示す屋根架構と隅柱及び中柱の関係を示した斜視図である。
【
図5】
図4に示す屋根架構を
図4とは異なる角度から見た状況を示した斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0036】
図1は一方向とこれに交差する他方向を有するフィールドを周囲から包囲し、観客席を備えた躯体としての観客席構造体2の上空に架設される屋根架構1の構成例と観客席構造体2との関係を示す。観客席構造体2は少なくとも観客席がフィールドの長辺方向等の一方向に配列する一方向構造体21と、短辺方向等の他方向に配列する他方向構造体22とに区分される。フィールドは少なくとも対向する一方向構造体21、21と対向する他方向構造体22、22に包囲された地盤上、あるいは床面上の領域を指す。観客席構造体2は主に鉄筋コンクリート造、鉄骨鉄筋コンクリート造等で構築されるが、種別は問われない。
図1は参考例を示している。
【0037】
図1では観客席がフィールドの一方向と他方向に交差する方向に配列する交差方向構造体23が隣接する一方向構造体21と他方向構造体22との間に配置された場合の例を示している。但し、一方向に付き、斜め梁41が1本、架設される
図1に示す例では交差方向構造体23はなく、一方向構造体21と他方向構造体22が直接、接触(接続)する場合もある。
【0038】
一方向構造体21の後方側の2箇所と、他方向構造体22の後方側の2箇所のそれぞれに、フィールドの上空で対向する屋根支持梁5、5を受ける斜め梁41を支持する側柱31、31が立設(設置)され、一方向構造体21と他方向構造体22に一体化する。
図1中、斜め梁41の軸方向両端部の白丸が側柱31を示す。一方向構造体21の2本の側柱31、31と、他方向構造体22の2本の側柱31、31は観客席の配列方向に間隔を置いて配置される。「後方側」はフィールドから遠い側を指す。
【0039】
「一体化する」とは、一方向構造体21と他方向構造体22における側柱31の立設位置の躯体が側柱31の一部になっていることを言う。側柱31は一方向構造体21と他方向構造体22に一体化するため、基本的には観客席構造体2と同一の構造で構築されるが、必ずしもその必要はなく、鉄骨造の場合もある。後述の隅柱32と中柱33も同様である。
【0040】
斜め梁41は隣接する一方向構造体21と他方向構造体22の、互いに近い側に位置する側柱31、31間に架設され、軸方向両端部において両側柱31、31に支持される。斜め梁41には
図4、
図5に示すようなトラス梁が主に使用されるが、それには限定されない。
図4、
図5は
図2に示す形態の屋根架構1の各梁と各柱の関係を、観客席構造体2を省略して示している。
【0041】
屋根支持梁5は
図1に示すようにフィールドの一方向、もしくは他方向に隣接する、あるいは対向する2本の斜め梁41、41の軸方向中間部間に架設される。この関係で、1本の斜め梁41は軸方向中間部で屋根支持梁5の軸方向の一方の端部を支持するため、斜め梁41は観客席構造体2の上空に4本、架設される。「軸方向中間部」は軸方向両端部以外の区間を指す。斜め梁41の軸方向両端部は側柱31、31の頂部等にはピン接合、もしくは半剛接合、または剛接合される。以下ではピン接合等と言う。斜め梁41の一方の端部は熱伸縮を許容するために、スライド自在に支持(ローラ接合)されることもある。
【0042】
屋根支持梁5、5はフィールドの上空に幅方向に並列して架設される複数本の小梁6を支持する。この関係で屋根支持梁5、5は観客席構造体2の上空に2本、架設され、軸方向両端部において斜め梁41、41の軸方向中間部に支持される。
図1中、屋根支持梁5の軸方向両端部の白丸が斜め梁41との接合部を示す。
【0043】
図1は屋根支持梁5、5がフィールドを挟んでその短辺方向(他方向)に対向する場合の例を示しているが、長辺方向(一方向)に対向する場合もある。その場合、屋根支持梁5はフィールドの短辺方向(他方向)に隣接(対向)する斜め梁41、41間に架設される。屋根支持梁5にも
図4、
図5に示すように主にトラス梁が使用されるが、それには限定されない。屋根支持梁5の軸方向両端部も斜め梁41、41にはにピン接合等されるが、一方の端部はスライド自在に支持されることもある。屋根支持梁5の端部と斜め梁41との接合部は例えば
図4、
図5に示すようにトラス梁同士等の接合になる。この場合、屋根支持梁5の上下弦材が斜め梁41の上下弦材間に挟まるような形で、互いにピン接合等される。
【0044】
対向する2本の屋根支持梁5、5間に複数本の小梁6が架設され、軸方向両端部において両屋根支持梁5、5に支持される。小梁6にも
図4~
図6に示すように主にトラス梁が使用されるが、それには限定されない。複数本の小梁6は基本的には幅方向に等間隔に配列する。小梁6の軸方向両端部も屋根支持梁5、5にはピン接合等されるが、一方の端部はスライド自在に支持されることもある。屋根材(屋根葺き材)10は
図6に示すように基本的にフィールドと観客席構造体2の全体の上空を覆うように敷設される。
図6は
図2の縦断面を示すが、屋根支持梁5と小梁6は
図1に示す例と同一である。
【0045】
小梁6と小梁6上に敷設される屋根材10の荷重は小梁6の軸方向両端部の屋根支持梁5、5に分散して伝達される。屋根材10を含む小梁6と屋根支持梁5の荷重は屋根支持梁5、5からその軸方向両端部の斜め梁41、41に分散して伝達される。斜め梁41に伝達された荷重と斜め梁41の荷重はその軸方向両端部の側柱31、31に分散して伝達される。
【0046】
図2は観客席構造体2の上空に架設される屋根架構1の他の構成例と観客席構造体2との関係を示す。この例では
図1に示す例での斜め梁41に相当する前方側斜め梁43の後方側に、観客席構造体2の後方側に一体化する隅柱32、32に支持される後方側斜め梁42を前方側斜め梁43と平行に架設している。この関係で、観客席構造体2が一方向構造体21と他方向構造体22と、隣接する一方向構造体21と他方向構造体22との間に位置する交差方向構造体23とに区分されている。交差方向構造体23の観客席はフィールドの長辺方向(一方向)と短辺方向(他方向)の双方に交差する方向に配列する。後方側斜め梁42にも主にトラス梁が使用されるが、それには限定されない。
図4、
図5では後方側斜め梁42を簡略化して示している。
【0047】
隅柱32、32は交差方向構造体23の後方側の、観客席の配列方向両側に立設され、交差方向構造体23に一体化する。図面では隅柱32、32を観客席の配列方向両端部に配置した場合の例を示しているが、配列方向両側は両端部とは限らず、両端部寄りの場合もある。
図2では隅柱32と後述の中柱33を黒丸で示している。
【0048】
交差方向構造体23の配列方向の両側には一方向構造体21と他方向構造体22が接続するため、隅柱32、32が配列方向両端部に配置された
図2の例では隅柱32、32が一方向構造体21と他方向構造体22にも一体化することになる。後方側斜め梁42は隅柱32、32間に架設され、軸方向両端部において両隅柱32、32に支持される。
【0049】
隣接する、あるいは対向する後方側斜め梁42、42の軸方向中間部間に平面上、互いに直交する直交梁7、7が架設され、軸方向両端部において両後方側斜め梁42、42の軸方向中間部に支持される。直交梁7の軸方向両端部も後方側斜め梁42にはピン接合等されるが、一方の端部はスライド自在に支持されることもある。直交梁7にも主にトラス梁が使用されるが、それには限定されない。
図4、
図5では直交梁7を簡略化して示している。
【0050】
隣接する直交梁7、7の軸方向中間部間に、後方側斜め梁42に平行に前方側斜め梁43が架設され、軸方向両端部において直交梁7、7に支持される。前方側斜め梁43の軸方向両端部も直交梁7にはピン接合等されるが、一方の端部はスライド自在に支持されることもある。前方側斜め梁43にも
図4、
図5に示すように主にトラス梁が使用されるが、それには限定されない。
【0051】
直交梁7と前方側斜め梁43との接合位置の下に前方側斜め梁43を支持する中柱33が設置される。中柱33は直交梁7の下に配置されるため、直交梁7も支持する。中柱33は一方向構造体21の通路方向の中間部と、他方向構造体22の通路方向の中間部に設置され、一方向構造体21と他方向構造体22に一体化する。
【0052】
フィールドの一方向、もしくは他方向に隣接する、あるいは対向する2本の前方側斜め梁43、43の軸方向中間部間に前記の屋根支持梁5が架設され、両前方側斜め梁43の軸方向中間部に支持される。屋根支持梁5、5は観客席構造体2の上空に2本、架設され、フィールドの他方向、もしくは一方向に対向する。屋根支持梁5の軸方向両端部も前方側斜め梁43にはピン接合等されるが、一方の端部はスライド自在に支持されることもある。
【0053】
対向する2本の屋根支持梁5、5間に複数本の前記の小梁6が架設され、軸方向両端部において両屋根支持梁5、5に支持される。小梁6の軸方向両端部も屋根支持梁5、5にはピン接合等されるが、一方の端部はスライド自在に支持されることもある。
【0054】
図2は一方向構造体21の後方側と他方向構造体22の後方側に、各構造体21、22単位で隣接する隅柱32、32を互いにつなぐつなぎ梁8を架設すると共に、中柱33の頂部とつなぎ梁8の軸方向中間部との間に連結材9を架設し、直交梁7が受ける鉛直荷重と水平荷重の一部をつなぎ梁8に流すようにした場合の例を示している。
図4、
図5は
図2に示す屋根架構1と各柱32、33の関係の概要を示す。
【0055】
つなぎ梁8は一方向構造体21の後方側で隣接する隅柱32、32間と、他方向構造体22の後方側で隣接する隅柱32、32間に架設され、つなぎ梁8が受ける荷重を両隅柱32、32に伝達する。つなぎ梁8と連結材9にも主にトラス梁が使用されるが、それには限定されない。
【0056】
図3は
図2中のつなぎ梁8と連結材9を不在にした場合の、
図2に示す屋根架構1の例の変形例を示す。つなぎ梁8と連結材9がないこと以外の屋根架構1と各柱32、33の構成は
図2に示す例と同じである。
図3では小梁6を省略している。
【符号の説明】
【0057】
1……屋根架構、
2……観客席構造体、21……一方向構造体、22……他方向構造体、23……交差方向構造体、
31……側柱、32……隅柱、33……中柱、
41……斜め梁、42……後方側斜め梁、43……前方側斜め梁、
5……屋根支持梁、
6……小梁、
7……直交梁、
8……つなぎ梁、9……連結材、
10……屋根材。