(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-21
(45)【発行日】2024-07-01
(54)【発明の名称】樹脂成形品の製造方法
(51)【国際特許分類】
B29C 51/08 20060101AFI20240624BHJP
B32B 5/24 20060101ALI20240624BHJP
B32B 5/18 20060101ALI20240624BHJP
B32B 37/10 20060101ALI20240624BHJP
B29C 43/20 20060101ALI20240624BHJP
B29C 70/16 20060101ALI20240624BHJP
B29C 70/42 20060101ALI20240624BHJP
B29K 105/08 20060101ALN20240624BHJP
B29L 9/00 20060101ALN20240624BHJP
B29K 105/04 20060101ALN20240624BHJP
【FI】
B29C51/08
B32B5/24
B32B5/18
B32B37/10
B29C43/20
B29C70/16
B29C70/42
B29K105:08
B29L9:00
B29K105:04
(21)【出願番号】P 2021050113
(22)【出願日】2021-03-24
【審査請求日】2023-07-06
(73)【特許権者】
【識別番号】000002440
【氏名又は名称】積水化成品工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002734
【氏名又は名称】弁理士法人藤本パートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】平塚 翔一
(72)【発明者】
【氏名】福永 洋一郎
(72)【発明者】
【氏名】大槻 真基
【審査官】関口 貴夫
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-235660(JP,A)
【文献】特開2015-085678(JP,A)
【文献】特開2014-028920(JP,A)
【文献】特開2015-112867(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 51/00-51/46
B29C 44/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
閉型時に内部に成形空間が形成される雄型と雌型とを備えた成形型で熱プレスを実施して樹脂発泡層と繊維強化樹脂層とを含む多層構造を備えた樹脂成形品を製造する樹脂成形品の製造方法であって、
繊維と樹脂とを含む繊維強化樹脂シートが樹脂発泡シート
の両面に積層されている積層シートを用い、
前記樹脂発泡層が前記樹脂発泡シートで構成され、且つ、前記繊維強化樹脂層が前記繊維強化樹脂シートで構成された前記樹脂成形品を製造し、
前記成形空間を形成するための凹部を備えた前記雌型と、
閉型時に前記凹部に進入する凸部を備えた前記雄型とを用い、
前記凹部を覆うように前記積層シートを前記雌型に配置し、
前記積層シートが配置された該雌型に前記雄型を重ねて前記凸部で前記積層シートを前記凹部に押し込むようにして前記熱プレスを実施し、且つ、
該熱プレスでは、配置された前記積層シートの外周縁に側方から接する移動規制部を備えた前記雌型を用いる樹脂成形品の製造方法。
【請求項2】
屈曲形状となったコーナー部を有する樹脂成形品を製造する請求項1記載の樹脂成形品の製造方法。
【請求項3】
前記樹脂発泡シートの80℃での引張伸びが10%以上である請求項1又は2に記載の樹脂成形品の製造方法。
【請求項4】
前記樹脂発泡シートの厚さが0.1mm以上5.0mm以下である請求項1乃至3の何れか1項に記載の樹脂成形品の製造方法。
【請求項5】
前記繊維強化樹脂層における前記繊維の含有率が30質量%以上80質量%以下の前記樹脂成形品を製造する請求項1乃至4の何れか1項に記載の樹脂成形品の製造方法。
【請求項6】
前記樹脂発泡シートの見掛け密度が100kg/m
3以上1100kg/m
3以下である請求項1乃至5の何れか1項に記載の樹脂成形品の製造方法。
【請求項7】
見掛け密度が300kg/m
3以上1500kg/m
3以下の前記樹脂成形品を製造する請求項1乃至6の何れか1項に記載の樹脂成形品の製造方法。
【請求項8】
製造する前記樹脂成形品が自動車用部品として用いられる樹脂成形品である請求項1乃至7の何れか1項に記載の樹脂成形品の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は樹脂発泡層と繊維強化樹脂層とを含む多層構造を有する樹脂成形品の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、FRPと称される繊維強化プラスチック材が各種の用途で広く用いられている。FRP製の工業製品の多くは、エポキシ樹脂や不飽和ポリエステル樹脂などの熱硬化性樹脂を未硬化な状態で繊維シートに含浸させたプリプレグと称される繊維強化樹脂シートを原材料にして作製されている。該繊維強化樹脂シートでFRP製の樹脂成形品を作製する際には、製品形状に対応した成形空間を有する成形型で繊維強化樹脂シートを熱プレスする方法が広く利用されている。
【0003】
近年、樹脂発泡体の表面に繊維強化樹脂シートを積層することによって作製された樹脂成形品が車両用の部材などをはじめとして各種の用途に利用される機会が増えている。特に自動車分野においては、ルーフ、ボンネット、フェンダー、アンダーカバー、トランクリッドなどの外装部材の他に、インストルメントパネルやドアトリムなどの内装部材として上記のような部材が有用であると考えられる(下記特許文献1、特に段落0003参考)。この種の樹脂成形品では、樹脂発泡体によって軽量性が発揮されるとともに繊維強化樹脂シートによって表層部に繊維強化樹脂層が形成されることで優れた強度が発揮される。このような樹脂発泡体と、該樹脂発泡体に積層された繊維強化樹脂層とを備えた樹脂成形品は、樹脂発泡体の表面に繊維強化樹脂シートを貼り合せて積層体を作製し、該積層体を成形型で熱プレスする方法によって作製されている(下記特許文献2、特に段落0092等参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2016-68324号公報
【文献】特開2015-226997号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
成形型を用いた樹脂成形品の製造方法では、製造する樹脂成形品に近い形状を備えた積層体を作製するために予め樹脂発泡体を所望の形状に成形することが行われている。樹脂成形品が比較的厚さが薄いものである場合、樹脂発泡シートを予め成形することなくフラットな状態で繊維強化樹脂シートを積層して積層シートを作製し、該積層シートを成形型で成形する方が効率的である。しかしながら、フラットな形状の積層シートを雄型を使って雌型に押し込むような形で熱プレスを実施して樹脂成形品を作製すると、繊維強化樹脂層で繊維の乱れが生じたりし易く良質な製品が得られ難い。そこで本発明は、このような問題の解決を図り、効率良く良質な樹脂成形品を製造することができる樹脂成形品の製造方法を提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するための本発明は、
閉型時に内部に成形空間が形成される雄型と雌型とを備えた成形型で熱プレスを実施して樹脂発泡層と繊維強化樹脂層とを含む多層構造を備えた樹脂成形品を製造する樹脂成形品の製造方法であって、
繊維と樹脂とを含む繊維強化樹脂シートが樹脂発泡シートの片面又は両面に積層されている積層シートを用い、
前記樹脂発泡層が前記樹脂発泡シートで構成され、且つ、前記繊維強化樹脂層が前記繊維強化樹脂シートで構成された前記樹脂成形品を製造し、
前記成形空間を形成するための凹部を備えた前記雌型と、
閉型時に前記凹部に進入する凸部を備えた前記雄型とを用い、
前記凹部を覆うように前記積層シートを前記雌型に配置し、
前記積層シートが配置された該雌型に前記雄型を重ねて前記凸部で前記積層シートを前記凹部に押し込むようにして前記熱プレスを実施し、且つ、
該熱プレスでは、配置された前記積層シートの外周縁に側方から接する移動規制部を備えた前記雌型を用いる樹脂成形品の製造方法、を提供する。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、効率良く良質な樹脂成形品を製造することができる樹脂成形品の製造方法が提供され得る。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、樹脂成形品の一例を示した概略斜視図である。
【
図2】
図2は、樹脂成形品の断面構造を示した概略断面図(
図1のII-II線矢視断面図)である。
【
図3】
図3は、樹脂成形品の製造に用いられる積層シートを示した概略平面図である。
【
図4】
図4は、積層シートの断面構造を示した概略断面図(
図3のIV-IV線矢視断面図)である。
【
図5】
図5は、樹脂成形品の製造に用いられる熱プレス装置を示した概略図である。
【
図6】
図6は、雌型に積層シートを配置する様子を示した概略平面図(
図5のVI-VI線矢視図)である。
【
図7】
図7は、雄型と雌型とを組み合わせた様子を示した概略断面図(
図6のVII-VII線部での矢視断面図)である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下に、本発明の一実施の形態について図を参照しつつ説明する。
図1、
図2に示すように、本実施形態における樹脂成形品1は、平板状ではなく立体的な形状を有する。本実施形態の樹脂成形品1は、厚さ方向に複数の層が積層された積層構造体である。樹脂成形品1は、樹脂発泡層11の片面又は両面に積層された繊維強化樹脂層12を備える。本実施形態の樹脂成形品1は、樹脂発泡層11の両面に繊維強化樹脂層12を備えた3層構造となっている。
【0010】
前記樹脂発泡層11は、樹脂発泡シートによって構成されている。繊維強化樹脂層12は、繊維と樹脂とを含む繊維強化樹脂シートによって構成されている。本実施形態における樹脂成形品1は、
図3、
図4に示すような樹脂発泡シート11’の両面に繊維強化樹脂シート12’が積層された3層構造の積層シート1’が熱プレスされることによって作製されたものである。前記樹脂成形品1が樹脂発泡層11の片面側のみに繊維強化樹脂層12を備えるものである場合、前記積層シート1’は、樹脂発泡シート11’の片面側のみに繊維強化樹脂シート12’が積層された2層構造であってもよい。本実施形態においては、樹脂発泡層11と繊維強化樹脂層12との他にオーバーコート層のようなものを備えた積層シートが用いられてもよい。
【0011】
前記樹脂発泡シート11’は、厚さが0.1mm以上5.0mm以下であることが好ましい。樹脂発泡シートの厚さは、例えば、ダイヤルシックネスゲージSM-112(テクロック社製)を使用して求めることができる。樹脂発泡シートの厚さは、例えば、任意に選択した複数箇所(例えば10箇所)で該樹脂発泡シートの厚さを最小単位0.01mmまで測定し、全ての測定値を算術平均することで求めることができる。
【0012】
前記樹脂発泡シート11’は、見掛け密度が100kg/m3以上1100kg/m3以下であることが好ましい。前記樹脂発泡シート11’の見掛け密度は、200kg/m3以上であってもよく、300kg/m3以上であってもよい。前記樹脂発泡シート11’の見掛け密度は、1000kg/m3以下であっても、900kg/m3以下であってもよい。
【0013】
前記樹脂発泡シート11’の見掛け密度は、JIS K7222:2005「発泡プラスチック及びゴム-見掛け密度の求め方」記載の方法で測定できる。より詳しくは、樹脂発泡シート11’から、100cm3以上の試験片を材料の元のセル構造を変えない様に切断し、その質量を測定した上で、見掛け密度を次式により算出する。100cm3以上の試験片の採取が困難な場合はできるだけ大きな試験片を採取する。尚、試験片としては、原則的には、作製した後72時間以上経過した樹脂発泡シート11’から切り出し、温度23±2℃、湿度50±5%の雰囲気下に16時間以上放置したものを用いる。
見掛け密度(kg/m3)=試験片質量(g)/試験片体積(mm3)×106
【0014】
本実施形態の樹脂発泡シート11’は、押出発泡法によって作製された押出発泡シートであっても、樹脂発泡シート11’よりも厚い樹脂発泡体をスライスしたものであってもよい。本実施形態の樹脂発泡シート11’は、80℃での引張伸びが10%以上であることが好ましい。80℃での引張伸びは10%以上であることで熱プレスでの賦形が容易に実施できるようになるとともにある程度温度が高いままでも成形型から取出すことができて樹脂成形品1を作製するのに要する時間を短縮させ得る。樹脂発泡シート11’の80℃での引張伸びは、50%以上であることがより好ましく、100%以上であることがさらに好ましい。80℃での引張伸びは、後段の実施例の項に記載の方法で実施できる。
【0015】
前記樹脂発泡シート11’を構成する樹脂は、特に限定されず、例えば、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリブチレンテレフタレート樹脂、ポリ乳酸樹脂などのポリエステル樹脂;GPPS、HIPS、ポリαメチルスチレン樹脂、スチレン-アクリロニトリル共重合体樹脂などのスチレン系樹脂;アクリル系樹脂;ポリカーボネート樹脂;ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、COP、COCなどのオレフィン系樹脂などが挙げられる。前記樹脂発泡シート11’を構成する樹脂は、ポリアミド樹脂(PA)、ポリエーテルイミド樹脂(PEI)、ポリエーテルスルホン樹脂(PESU)、ポリフェニルスルホン樹脂(PPSU)、ポリスルホン樹脂(PSU)などのエンジニアリングプラスチックであってもよい。前記樹脂発泡シート11’は、単一の樹脂で構成されても2種以上の樹脂を含んでいてもよい。
【0016】
前記繊維強化樹脂シート12’は、前記繊維が短繊維の状態で含まれていても連続繊維の状態で含まれていてもよい。前記繊維は、紡績糸となって含まれていてもフィラメント糸となって含まれていてもよい。前記繊維は、前記繊維強化樹脂シート12’において不織布や織布を構成していてもよい。本実施形態における前記繊維強化樹脂シート12’は、前記繊維で構成された不織布や織布などの基材シートを有していることが好ましく、前記樹脂が該基材シートに含浸されていることが好ましい。
【0017】
前記基材シートが、織物である場合、織り方としては、例えば、平織、綾織、朱子織などのいずれでもよい。前記基材シートは、連続繊維が一方向にのみ引き揃えられたものであってもよい。即ち、前記基材シートは、UD(Uni Direction)などと称されるものであってもよい。
【0018】
本実施形態の前記繊維は、ガラス繊維、カーボン繊維、炭化ケイ素繊維、アルミナ繊維、チラノ繊維、玄武岩繊維、ステンレス繊維、スチール繊維などの無機繊維;アラミド繊維、ポリエチレン繊維、ポリパラフェニレンベンズオキサドール(PBO)繊維などの有機繊維;ボロン繊維などが挙げられる。前記繊維は、麻、絹、綿、羊毛、パルプなどの天然繊維であってもよい。該繊維は、一種単独で用いられてもよく、二種以上が併用されてもよい。
【0019】
本実施形態の前記繊維強化樹脂シート12’は、炭素繊維で構成された1又は2以上の基材シートと、ガラス繊維で構成された1又は2以上の基材シートとが積層された状態のものであってもよい。1つの繊維強化樹脂層12を構成するための前記繊維強化樹脂シート12’は、1枚である必要はなく、複数枚の繊維強化樹脂シート12’を積層してそれらで1つの繊維強化樹脂層12を構成させるようにしてもよい。その場合、一つの繊維強化樹脂シート12’と別の繊維強化樹脂シート12’とは基材シートの目付や素材などが共通していても異なっていてもよく、該基材シートに含浸されている樹脂の種類が共通していても異なっていてもよい。
【0020】
樹脂発泡シート11’の両面の内の一面側に積層される1又は複数の繊維強化樹脂シート12’の総厚さと、他面側に積層される1又は複数の繊維強化樹脂シート12’の総厚さとは共通していても異なっていてもよい。即ち、作製される樹脂成形品1を樹脂発泡層の両面に繊維強化樹脂層を備えた状態のものとする場合、一面側の繊維強化樹脂層の厚さと他面側の繊維強化樹脂層の厚さとが異なっていてもよい。尚、良好な成形性を発揮させる上で前記積層シート1’は、雄型の成形面が当接される側での繊維強化樹脂シート12’の総厚さの方が雌型の成形面が当接される側での繊維強化樹脂シート12’の総厚さよりも薄い(例えば、雌型側の厚さを100%とした際に雌型側を30%~70%の厚さとする)ことが好ましい。即ち、前記積層シート1’は、雄型の成形面が当接される側での基材シートの総厚さの方が雌型の成形面が当接される側での基材シートの総厚さよりも薄い状態(例えば、雌型側の厚さを100%とした際に30%~70%の厚さ)になっていることが好ましい。樹脂成形品1での繊維強化樹脂層の厚さについても同様である。
【0021】
前記繊維とともに前記繊維強化樹脂シート12’に含まれる樹脂は、熱可塑性樹脂であっても熱硬化性樹脂であってもよい。
【0022】
熱硬化性樹脂としては、特に限定されず、例えば、エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂、ポリウレタン樹脂、シリコン樹脂、マレイミド樹脂、ビニルエステル樹脂、シアン酸エステル樹脂、マレイミド樹脂とシアン酸エステル樹脂とを予備重合した樹脂などが挙げられる。
【0023】
前記熱可塑性樹脂としては、特に限定されず、例えば、ポリエステル樹脂、オレフィン系樹脂、ポリアミド樹脂(PA)、アクリル系樹脂などが挙げられる。
【0024】
前記繊維強化樹脂シート12’に含まれる樹脂は、一種単独である必要は無く、二種以上であってもよい。繊維強化樹脂シートには、耐熱性や強度に優れる点において熱硬化性樹脂が含まれていることが好ましく、エポキシ樹脂が含まれていることが好ましい。
【0025】
前記エポキシ樹脂としては、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールフルオレン型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、環状脂肪族型エポキシ樹脂、長鎖脂肪族型エポキシ樹脂、グリシジルエステル型エポキシ樹脂、グリシジルアミン型エポキシ樹脂などが挙げられる。前記エポキシ樹脂としては、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールフルオレン型エポキシ樹脂が好ましい。
【0026】
前記基材にエポキシ樹脂を含有させた繊維強化樹脂シート12’を用いる場合、該エポキシ樹脂とともに硬化剤を含有させることが好ましい。該硬化剤としては、特に限定されず、例えば、アミン系硬化剤、イミダゾール系硬化剤、フェノール樹脂系硬化剤、酸無水物系硬化剤などが挙げられる。該硬化剤は、一種単独で含まれる必要は無く、二種以上が含まれていてもよい。
【0027】
前記繊維強化樹脂シート12’には、上記以外に各種添加剤が含まれていてもよい。該添加剤としては、例えば、抗菌剤、滑剤、帯電防止剤、酸化防止剤、耐候剤、難燃剤、フィラー、顔料などが挙げられる。
【0028】
上記のような構成部材を備えた積層シート1’によって作製される樹脂成形品1は、見掛け密度が300kg/m3以上1500kg/m3以下であることが好ましい。樹脂成形品1の見掛け密度は、400kg/m3以上であってもよく、500kg/m3以上であってもよい。樹脂成形品1の見掛け密度は、1400kg/m3以下であっても、1300kg/m3以下であってもよい。樹脂成形品1の見掛け密度は、全体の体積と質量とから計算で求めることができる。
【0029】
前記樹脂成形品1は、最も厚い箇所での厚さが、例えば、1mm以上10mm以下となるように形成され得る。前記樹脂成形品1は、最も薄い箇所での厚さが、例えば、0.5mm以上2mm以下となるように形成され得る。
【0030】
前記樹脂成形品1の樹脂発泡層11は、最も厚い箇所での厚さが、例えば、1mm以上8mm以下となるように形成され得る。前記樹脂成形品1の樹脂発泡層11は、最も薄い箇所での厚さが、例えば、0.1mm以上4mm以下となるように形成され得る。
【0031】
前記樹脂成形品1の繊維強化樹脂層12は、最も厚い箇所での厚さが、例えば、0.2mm以上3mm以下となるように形成され得る。前記樹脂成形品1の繊維強化樹脂層12は、最も薄い箇所での厚さが、例えば、0.1mm以上1mm以下となるように形成され得る。
【0032】
本実施形態の樹脂成形品1は、概ね厚さが一定となっており、最も厚い箇所での厚さと最も薄い箇所での厚さとが3mm以下である。前記の通り、本実施形態の樹脂成形品1は、立体的な形状を有し、厚さ方向に平行する平面での断面が屈曲した状態になっているコーナー部1cを複数箇所に備えている。平板状の積層シート1’でこのような屈曲形状を有するコーナー部1cを備えた樹脂成形品1を作製しようとした場合、繊維強化樹脂層12の繊維が乱れた状態となり易いものの本実施形態においては、後述するように移動規制部を備えた雌型を利用することから繊維の乱れを抑制できる。即ち、コーナー部1cを有する樹脂成形品1を作製する場合、本発明の効果がより顕著なものとなり得る。
【0033】
本実施形態の樹脂成形品1は、繊維強化樹脂層12に優れた強度を発揮させる点において繊維の含有率が30質量%以上80質量%以下であることが好ましい。繊維強化樹脂層12での繊維の含有率は、35質量%以上であってもよく、40質量%以上であってもよい。繊維強化樹脂層12での繊維の含有率は、75質量%以下であってもよく、70質量%以下であってもよい。上記のような好ましい割合で繊維を含むのは、樹脂発泡層11の両面側に備えられている2つ繊維強化樹脂層12の両方であっても一方のみであってもよい。
【0034】
本実施形態においては、樹脂成形品1を製造すべく、
図5に示したような熱プレス装置100が用いられる。該熱プレス装置100は、前記積層シート1’を熱プレスして前記樹脂成形品1を作製するために用いられる。該熱プレス装置100は、前記積層シート1’を加熱状態とし、該繊維強化樹脂シート12’に含まれている前記樹脂を熱溶融させ、該熱溶融させた前記樹脂によって前記繊維強化樹脂シート12’と前記樹脂発泡シート11’とを接着させるとともにこれらを平坦な2次元的な状態から立体的な(3次元的な)形状へと変化させて前記樹脂成形品1を作製するために用いられる。
【0035】
前記熱プレス装置100には、樹脂成形品1の形状に対応した成形空間が閉型時に内部に形成されるように構成された成形型200と、前記積層シート1’が前記成形空間に収容されている前記成形型200を熱プレスするプレス機本体300とが備えられている。
【0036】
本実施形態のプレス機本体300は、板面が水平となるように配置された上部熱板301と、該上部熱板301の下方に板面が水平となるように配置された下部熱板302とを備え、前記上部熱板301と前記下部熱板302とが上下方向において板面を対向するように配されている。
【0037】
前記上部熱板301が固定配置されているのに対して前記下部熱板302は、該下部熱板302の下方に設けられた油圧シリンダー303によって上下方向に移動可能となってプレス機本体300に備えられている。また、上部熱板301と下部熱板302とのそれぞれは内部に過圧水蒸気や冷却水などの熱媒を流通させて温度調節可能となっている。即ち、プレス機本体300は、前記上部熱板301と前記下部熱板302との間に配したものに対して加熱及び加圧が可能となっている。
【0038】
前記成形型200は、雄型210と雌型220とを備えている。前記雌型220は、前記成形空間を形成するための凹部221を備えている。前記雄型210は、閉型時に前記凹部221に進入する凸部を備えている。即ち、前記成形型200では、前記雌型220の凹部221の開口方向と前記雄型210の凸部211の突出方向とが対向するように雄型210と雌型220とが配されている。本実施形態では雄型210と雌型220とが上下に対向するように配されている。本実施形態の前記雄型210は、前記凸部211が下向きに突出した状態となるように前記上部熱板301に取付けられている。本実施形態の前記雌型220は、前記凹部221が上方に向いて開口した状態となるように前記下部熱板302に設置されている。
【0039】
前記雄型210と前記雌型220とは前記凸部211や前記凹部221よりも外側の領域が、当該雄型210と雌型220とを合わせて前記成形型200を閉型状態とした際に互いに当接された状態となる型合せ面となっている。
【0040】
上記のように本実施形態では雄型210と雌型220とが上下に対向するように配されている。そして、本実施形態での前記型合せ面は、型締め方向に対して直交する平面となっている。従って、熱プレス装置100での前記雄型210は、型合せ面212が水平面となってるとともに前記雌型220も型合せ面222が水平面となっている。
【0041】
本実施形態での前記型合せ面222からの凹部221の底部までの深さは、前記型合せ面212からの前記凸部211の先端部の突出高さよりも深い。従って、本実施形態の成形型200は、前記型合面どうしを当接させて閉型状態にした際に前記凸部211の先端部と前記凹部221の底部との間に隙間ができるように構成されており、当該隙間が成形空間として利用されるようになっている。
【0042】
本実施形態の前記雌型220は、
図6、
図7に示すように中央部に前記凹部221を有し、外周部に前記型合わせ面222を有し、該型合わせ面222と前記凹部221との間に前記型合わせ面222よりも凹部221の深さ方向に一段下がった平面部223を有している。前記平面部223は、前記凹部221の開口縁221aから外向きに延びる水平面となっている。言い換えると本実施形態の前記雌型220は、前記凹部221の開口縁221aより外向きに延びる前記平面部223を有し、該平面部223の外縁部には該平面部223よりも一段高い段差部Sが形成されている。本実施形態では、前記凹部221の開口形状と前記平面部223とを合わせた形状を備えた積層シート1’が用いられる。
【0043】
本実施形態の樹脂成形品1は、互いに距離を隔てて並行して延びる2つの並行部1aと、該並行部1aの一端部を接続する接続部1bとを備えており、平面視における形状がU字状となっている。従って、本実施形態の樹脂成形品1は、2つの並行部1a’と、該並行部1a’の一端部を接続する接続部1b’とを備えたU字状の積層シート1’を用いて作製される。尚、本実施形態での積層シート1’と樹脂成形品1との平面視における形状は、前記積層シート1’の方が前記平面部223に対応した領域を有する分だけ面積が大きくなっている。
【0044】
本実施形態の樹脂成形品1は、上記のような装置と積層シート1’とを用いて、次のような方法で製造することができる。
1)まず、上部熱板301と下部熱板302とを加熱することでこれらに挟まれた成形型200を加熱し、該成形型200を所定の温度(例えば、100℃以上)に加熱する。
2)次いで、前記下部熱板302を降ろして上部熱板301と下部熱板302とを離して雄型210と雌型220とが上下に離間した開型状態とし、前記凹部221を覆うように前記積層シート1’を前記雌型220に配置する。
3)前記積層シート1’を前記雌型220に配置した後は、直ちに下部熱板302を油圧シリンダー303で持ち上げ、前記積層シート1’が配置された該雌型220に前記雄型210を重ねて前記凸部211で前記積層シート1’を前記凹部221にある程度押し込む。この際、成形型200を完全に締め切らない程度の圧力で保持し、成形型200の熱で積層シート1’を加熱する。
4)積層シート1’の温度(例えば、輻射温度計で測定される表面温度)が、例えば、80℃~100℃となった時点で下部熱板302を油圧シリンダー303で持ち上げ、前記積層シート1’が配置された該雌型220に前記雄型210を重ねて前記凸部211で前記積層シート1’を前記凹部221に押し込むようにして前記熱プレスを実施する。このとき、樹脂発泡シート11’の80℃での引張伸びが所望の値を有することで樹脂成形品1の内部の樹脂発泡シート11’を破損させることなく成形することが可能となり、成形サイクルを早める上で有利となるほかに、内部に欠陥がない樹脂成形品1を得ることができる。
5)一定時間、熱プレスを実施した後は、成形型200を強制的に冷却せずに雄型210と雌型220とを開いて樹脂成形品1を成形型200から取出す。具体的には、成形型200の温度(例えば、接触式温度計で測定される型合せ面の表面温度)を、例えば、100℃以上に保ったまま雄型210と雌型220とを開いて樹脂成形品1を成形型200から取出す。
6)成形型200より取出した樹脂成形品1は、冷却した後に必要に応じてトリミングによる外形加工を施したり、バリ取りなどを施す。
【0045】
本実施形態の前記雌型220では、前記積層シート1’は、その外周部を前記平面部223に載せる形で配される。前記平面部223と前記型合わせ面222との境界には、段差部Sが形成され、前記型合わせ面222が前記平面部223よりも一段高い位置に設けられている。前記平面部223は、前記凹部221の全周に亘って備えられていてもよいが、本実施形態の前記雌型220では、前記凹部221の外周縁に隣接する領域の内の一部の領域には前記平面部223が備えられておらず前記型合わせ面222と直に前記凹部221が隣り合う状況となっている。尚、この領域では、平面部223を設けられている部分よりも深い段差が形成されている。従って、本実施形態の前記雌型220では、段差部Sが前記凹部221よりも外側を周回するように環状になって設けられており、該段差部Sの内側に前記凹部221が配された状態となっている。
【0046】
本実施形態の前記積層シート1’は、この段差部Sの内側に嵌め込み可能で、外周部の一部を前記平面部223に載置可能な形状を有する。前記段差部Sは、前記積層シート1’が所望の位置から別のところに位置ずれしてしまうことを規制する移動規制部となっている。即ち、本実施形態の前記積層シート1’は、全体が側方に移動することが前記移動規制部で規制されつつ雌型22の凹部221へと押し込まれる形で熱プレスされる。本実施形態では、前記のようにして前記熱プレスが実施される。そして、本実施形態の前記段差部Sは、雌型220の凹部221に押し込められる際に積層シート1’が位置ずれすることを規制し、樹脂成形品1に繊維の乱れが生じることを防止する。繊維が乱れて繊維密度のムラ(濃淡)が生じると美観が損なわれるだけでなく部分的に低強度になってしまうおそれがあるが、本実施形態においてはそのような問題が生じ難い。
【0047】
本実施形態では移動規制部を前記積層シート1’の外周全域に亘る段差部Sにより構成させるようにしているが、前記移動規制部は、所望の箇所に設けたガイドピンなどで構成してもよい。即ち、本実施形態では、ガイドピンの側面部を積層シート1’の外周縁に外側より当接させるようにして熱プレス時の積層シート1’の位置ずれを防止するようにしてもよい。また、前記移動規制部は、積層シート1’の角部に外側から当接されるように配された平面視鉤型の突起などによって構成させてもよい。
【0048】
本実施形態の雌型220は、前記積層シート1’の外周の内、30%以上の区間において当該雌型220の一部が外側より接するような形状を有していることが好ましく。積層シートの外周において前記雌型220が外側より接する区間の割合は、50%以上であってもよく、75%以上であってもよい。
【0049】
本実施形態の雌型220は、型締め方向(本実施形態では上下方向)に直交する平面方向(本実施形態では水平方向)での前後左右の四方から前記積層シート1’の外周縁に外側から接する形状を有していることが好ましい。
【0050】
前記積層シート1’の外周部の複数箇所をクランプのような部材で把持して外向きに引っ張るようにすれば熱プレス時の積層シート1’の位置ずれ(横ずれ)を防止することができるが、その場合は、積層シート1’を前記型合せ面よりも外側にはみ出すような大きさにしてはみ出し領域において把持することが必要になる。そうすると、製品(樹脂成形品)として利用されない部分が多くなって製造効率を低下させてしまうことになる。一方で、本実施形態では、雌型220の面積(型締め方向に直交する平面への投影面積)よりもの小さな積層シート1’を用いることができ、製造効率の向上が図られ得る。例えば、本実施形態では、雌型220の面積の90%以下の面積を有する積層シート1’が用いられ得る。積層シート1’の面積は雌型220の面積の80%以下とすることもでき、70%以下とすることもできる。積層シート1’の面積は、通常、雌型220の面積の10%以上とされる。
【0051】
本実施形態においては、前記熱プレスにおける圧縮率(成形空間の平均厚さ/積層シート1’の平均厚さ×100%)が一定以上であることで外観良好な繊維強化樹脂層12が得られ易くなる。一方で圧縮率が一定以下である方が軽量性に優れた樹脂成形品を得る上で有利となる。圧縮率は30%以上70%以下であることが好ましい。前記圧縮率は40%以上であってもよい。前記圧縮率は60%以下であってもよい。
【0052】
本実施形態においては、成形型200が加熱されている状態で雄型210と雌型220とを開いて内部の圧力を開放するため、樹脂発泡層11を二次発泡させることができ、厚さ方向への寸法増大を図ることができる。即ち、本実施形態では、成形空間の厚さ方向における寸法よりも厚い樹脂成形品1を作製することができる。本実施形態では、成形空間の容積の1.1倍以上の体積を有する樹脂成形品1を作製することができる。樹脂成形品1の体積は、成形空間の容積の1.2倍以上であってもよく、1.3倍以上であってもよい。樹脂成形品1の体積は、通常、成形空間の容積の3倍以下とされる。
【0053】
本実施形態では上記のような圧縮率で熱プレスを実施して良好な外観を得ることができるとともに熱プレス後の加熱状態での圧力開放によって積層シート1’の厚さ以上の樹脂成形品1を得ることができる。そして、本実施形態においては、樹脂発泡シート11’を樹脂成形品1に対応した形状に予め成形することなく樹脂成形品1を製造できるため、効率よく樹脂成形品1を製造することができる。しかも、その際に繊維強化樹脂層において繊維の乱れが生じ難いため、外観や強度における質が良好な樹脂成形品1を製造できる。
【0054】
本実施形態の樹脂成形品の製造方法は、自動車用部品(例えば、ルーフ、ボンネット、フェンダー、アンダーカバー、トランクリッドなどの外装部材;インストルメントパネルやドアトリムなどの内装部材等)として用いられる樹脂成形品の製造などに好適である。
【0055】
尚、本実施形態の樹脂成形品1の製造方法は、上記のような例示に限定されるものではなく、種々の変更が加えられ得る。例えば、製造する樹脂成形品の形状は、当然ながら、上記のような形状のものに限定されない。したがって、成形型の形状も、当然ながら、上記のような形状のものに限定されない。例えば、雌型の凹部の底部や雄型の凸部の先端部に凹凸を備えた成形型で更なる凹凸形状を備えた樹脂成形品を製造する場合や、全体形状が上記例示と全く異なる樹脂成形品を製造する場合も本発明の意図する範囲である。即ち、本発明は、上記例示に何等限定されるものではない。
【実施例】
【0056】
次に実施例を挙げて本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0057】
(実施例1)
雄型と雌型とを備え、閉型時にこれらの間に所望形状の成形空間が形成される成形型を用意した。前記成形型の雌型としては、成形用の凹部の周囲に一段下がった平面部(移動規制部)が備えられているものを用いた。即ち、前記凹部の外周縁よりも外側を通って前記凹部を内側に包囲するような形で段差部が形成され、この平面視環状となるように配され、その内側よりも外側が一段高くなるように形成された段差部を有するものを雌型に採用した。そして、雌型としては、成形空間を画定する成形面の外周縁から5mm内側にケガキ線が彫り込まれたものを用いた。
【0058】
樹脂発泡シートとして、ポリエステル系樹脂発泡シート(PET系樹脂、厚み:0.80mm、坪量:350g/m2)を1枚用意した。製造する樹脂成形品の形状の3次元CADデータを利用し、3次元的な形状を2次元的になるように展開した際の平面形状を算出し、該樹脂発泡シートをそのような形状に加工した。樹脂発泡シートの形状は、ソフトウェア(例えば、Siemens PLM Software社製、製品名:Fiber Sim)を用いて決定した。また、前記平面形状には、雌型の平面部に相当する部分も含めるようにした。
【0059】
炭素繊維からなる綾織の織物から形成された基材シートと該基材シートに含浸された樹脂とを含む繊維強化樹脂シート(三菱レイヨン社製 商品名「パイロフィルプリプレグ TR3523-392IPM」、目付:200g/m2、厚さ:0.23mm)を3枚用意した。繊維強化樹脂シートは、ポリエチレンテレフタレート樹脂発泡シートと同様に樹脂成形品の3次元CADデータからソフトウェア(例えば、Siemens PLM Software社製、製品名:Fiber Sim)を用いて算出した平面形状とした。また、ポリエチレンテレフタレート樹脂発泡シートと同様に前記平面形状内には、雌型の平坦面に対応した部分を含めた。繊維強化樹脂シートには、熱硬化性樹脂として未硬化のエポキシ樹脂(ガラス転移温度:133℃)が45質量%含有されるものを用いた。
【0060】
上記ポリエチレンテレフタレート発泡シート1の一面に繊維強化樹脂シートを2枚積層し、更にもう一面に繊維強化樹脂シートを1枚積層した。その際、圧着用器具等を用いた仮接着の工程は実施せずに、積層シートを作製した。
【0061】
次に、予め140℃に昇温した雌雄金型の雌型に積層体を配置した。その際、雌型の凹部の外側に形成されている段差部の内側に積層シートをはめ込むようにして当該積層シートを配置した。また、積層シートは、繊維強化樹脂シートの積層厚さの薄い側(繊維強化樹脂シートが1枚の側)を上面となるように(雄型に面するように)配置した。
【0062】
続いて、雌雄金型を型締めすることによって、熱プレス成形し、積層シートを所望形状に成形するとともに樹脂発泡シートで樹脂発泡層を構成させるとともに繊維強化樹脂シートで線強化樹脂層を構成させて樹脂成形品を型内に形成させた。
【0063】
熱プレス時、積層シートが140℃となるように15分間に亘って保持し、繊維強化樹脂シートに含まれているエポキシ樹脂を硬化させ、繊維強化樹脂シートの強化用の繊維どうしを硬化したエポキシ樹脂で結着、固定して繊維強化樹脂層を形成させ、この繊維強化樹脂層を硬化したエポキシ樹脂によってポリエチレンテレフタレート樹脂発泡シートの両面に積層一体化させて3次元的な形状を有する樹脂成形品を製造した。
【0064】
しかる後、雄型と雌型とを成形型を強制冷却することなく開いて樹脂成形品を取り出して樹脂成形品を室温環境下で放冷することで30℃以下に冷却した。
得られた樹脂成形品は、硬化した熱硬化性樹脂によって強化繊維どうしが結着され且つ成形空間に対応した形状に成形されていた。
樹脂成形品では、雌型側に厚さ0.46mm、目付400g/m2の繊維強化樹脂層が、雄型側に厚さ0.23mm、目付200g/m2の繊維強化樹脂層が、それぞれ樹脂発泡層の両面に全面的に密着されていた。
【0065】
同様の工程を10回繰り返し、樹脂成形品を10個得て、各樹脂成形品について良品・不良品の判定を行った。その際、前記ケガキ線より内側に繊維の不足箇所がない場合を良品、不足箇所が1か所でもある場合を不良品とし、下記式にて良品率を算出し示した。結果を、表に示す。
良品率(%) = 良品の数/樹脂成形品の数(10個)× 100
【0066】
得られた樹脂成形品の断面観察を実施した。樹脂成形品のコーナー部のうち、樹脂発泡層が最も大きく曲がっていると思われる箇所を選定し、該コーナー部で樹脂成形品を切断し、樹脂発泡層の断面をマイクロスコープ(KEYENCE,VHX-1000)で観察した。得られた観察画像から樹脂発泡層の状態を確認し、割れや欠け、繊維強化樹脂層との界面の剥離などの有無を評価した。結果を、表1に示す。
【0067】
(比較例1)
平面部に対応する部分を積層シートに設けないようにし、段差部が移動規制部として機能しないようにして熱プレスを実施したこと以外は実施例1と同様にして樹脂成形品を作製した。
【0068】
【0069】
(実施例2)
樹脂発泡シートとして、ポリエステル系樹脂発泡シート(PET系樹脂、厚さ:2.00mm、坪量:600g/m2)を用いたこと以外は実施例1と同様にして樹脂成形品を作製した。
【0070】
(実施例3)
樹脂発泡シートとして、結晶化処理を施したポリエステル系樹脂発泡シート(PET系樹脂、厚み:0.80mm、坪量:350g/m2)を用い、積層シートを140℃で10分間に亘って熱プレスを実施したこと以外は実施例1と同様にして樹脂成形品を作製した。
【0071】
(実施例4)
樹脂発泡シートとして、ポリエステル系樹脂発泡シート(PET系樹脂、厚さ:3.20mm、坪量:900g/m2)を用いたこと以外は実施例1と同様にして樹脂成形品を作製した。
【0072】
(実施例5)
樹脂発泡シートとして、ポリエステル系樹脂とポリイミド系樹脂とを含む樹脂発泡シート(ポリエステル系樹脂:ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリイミド系樹脂:ポリエーテルイミド(PEI)、樹脂比率:PET/PEI=70/30、厚さ:1.25mm、坪量:340g/m2)を用いたこと以外は実施例1と同様にして樹脂成形品を作製した。
【0073】
(実施例6)
樹脂発泡シートとして、ポリエステル系樹脂とポリイミド系樹脂を含む発泡シート(ポリエステル系樹脂:ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリイミド系樹脂:ポリエーテルイミド(PEI)、樹脂比率:PET/PEI=50/50、厚さ:1.07mm、坪量:340g/m2)を用いたこと以外は実施例1と同様にして樹脂成形品を作製した。
【0074】
(比較例2)
樹脂発泡シートを、アクリル系樹脂発泡シート(PMMA系樹脂、厚さ:2.5mm、発泡倍率:10倍)に代えたこと以外は比較例1と同様にして樹脂成形品を作製した。
【0075】
各樹脂成形品に用いた樹脂発泡シートについては以下のような評価を実施した。
【0076】
(引張試験方法)
引張伸びはJIS K6767:1999に準拠し測定した。すなわち引張伸びは(株)島津製作所製「オートグラフ AG-X plus 100kN」万能試験機、及び付帯恒温槽「TCR2A型」を用いて測定し、(株)島津製作所製「TRAPEZIUM X」万能試験機データ処理を用いて測定した。試験片は押出方向(MD方向)に対して、ダンベル形タイプ1(ISO1798規定)で切り出した。試験片の数は3個とした。試験片はJIS K 7100:1999の記号「23/50」、2級の標準雰囲気下で16時間かけて状態調節した後、測定に用いた。測定は80℃環境下で行い、試料のつかみ具部を紙ガムテープなどで補強し、各指定温度恒温槽内の引張冶具に試験片を挟み、3分間保持後測定を開始した。試験速度は500mm/min、つかみ具間隔は100mmとした。得られたグラフより、傾きが最大となる荷重領域を設定し、前記万能試験機データ処理にて見かけ引張弾性率を求めた。この弾性率の直線とストロークの交点を伸びの原点とし、引張伸びを下記式で自動算出した。
引張伸び(%)=(変位/標準距離)×100
変位:伸びの原点からのストローク変化量(mm)
標準距離:つかみ具間距離の初期値(100mm)
【0077】
【0078】
上記のことからも、本発明では良質な樹脂成形品が効率良く製造されることがわかる。
【符号の説明】
【0079】
1:樹脂成形品、1’:積層シート、1c:コーナー部、11:樹脂発泡層、11’:樹脂発泡シート、12:繊維強化樹脂層、12’:繊維強化樹脂シート、100:熱プレス装置、200:成形型、210:雄型、211:凸部、212:(雄型の)型合せ面、220:雌型、221:凹部、221a:開口縁、222:(雌型の)型合せ面、223:平面部、300:プレス機本体、301:上部熱板、302:下部熱板、303:油圧シリンダー、S:段差部(移動規制部)