IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ シャープ株式会社の特許一覧

<>
  • 特許-定着装置及びそれを備えた画像形成装置 図1
  • 特許-定着装置及びそれを備えた画像形成装置 図2
  • 特許-定着装置及びそれを備えた画像形成装置 図3
  • 特許-定着装置及びそれを備えた画像形成装置 図4
  • 特許-定着装置及びそれを備えた画像形成装置 図5
  • 特許-定着装置及びそれを備えた画像形成装置 図6
  • 特許-定着装置及びそれを備えた画像形成装置 図7
  • 特許-定着装置及びそれを備えた画像形成装置 図8
  • 特許-定着装置及びそれを備えた画像形成装置 図9
  • 特許-定着装置及びそれを備えた画像形成装置 図10
  • 特許-定着装置及びそれを備えた画像形成装置 図11
  • 特許-定着装置及びそれを備えた画像形成装置 図12
  • 特許-定着装置及びそれを備えた画像形成装置 図13
  • 特許-定着装置及びそれを備えた画像形成装置 図14
  • 特許-定着装置及びそれを備えた画像形成装置 図15
  • 特許-定着装置及びそれを備えた画像形成装置 図16
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-21
(45)【発行日】2024-07-01
(54)【発明の名称】定着装置及びそれを備えた画像形成装置
(51)【国際特許分類】
   G03G 15/20 20060101AFI20240624BHJP
   G03G 21/00 20060101ALI20240624BHJP
【FI】
G03G15/20
G03G15/20 555
G03G21/00 500
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2021051060
(22)【出願日】2021-03-25
(65)【公開番号】P2022149086
(43)【公開日】2022-10-06
【審査請求日】2023-09-20
(73)【特許権者】
【識別番号】000005049
【氏名又は名称】シャープ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000947
【氏名又は名称】弁理士法人あーく事務所
(72)【発明者】
【氏名】冨依 稔
【審査官】藤井 達也
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-151906(JP,A)
【文献】特開平05-040420(JP,A)
【文献】特開2006-251488(JP,A)
【文献】特開2015-200811(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2013/0164034(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03G 13/00
G03G 13/20
G03G 13/34
G03G 15/00
G03G 15/20
G03G 15/36
G03G 21/00
G03G 21/02
G03G 21/14
G03G 21/16-21/18
G03G 21/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転可能な無端状の定着ベルトと、
前記定着ベルトの内側に配設された対向部材と、
前記定着ベルトを外側から前記対向部材に向かって圧接し、トナー画像が形成されたシートを搬送するための定着ニップ領域を前記定着ベルトとの間に形成する加圧ローラと、
前記定着ベルトを加熱する熱源と、
前記定着ニップ領域で前記シートが搬送されない領域に対応する、前記定着ベルトの幅方向の一端側であるシート非通過領域の温度を測定する非通過領域温度測定部と、
前記加圧ローラの片端側を前記定着ニップ領域の長手方向と交差する方向に揺動させる加圧ローラ揺動手段と、
前記加圧ローラ揺動手段に前記加圧ローラを揺動させることにより前記定着ベルトの移動方向を補正する蛇行補正制御を行う制御部と、
を備えた定着装置であって、
前記制御部は、前記定着ベルトを、回転させながら前記非通過領域温度測定部から遠ざかる方向へ強制的に移動させるように前記加圧ローラ揺動手段を制御する移動モードを有していることを特徴とする定着装置。
【請求項2】
請求項1に記載の定着装置であって、
前記制御部は、シートジャムからの復帰動作時に、前記移動モードを実行することを特徴とする定着装置。
【請求項3】
請求項1または請求項2のいずれかに記載の定着装置であって、
前記移動モードは、前記定着ベルトが所定の距離分回転される間実行されることを特徴とする定着装置。
【請求項4】
請求項1から請求項3までのいずれか1つに記載の定着装置であって、
前記定着ベルトの幅方向の他端側における端縁を検出するベルト端縁検出部をさらに有し、
前記制御部は、前記ベルト端縁検出部の検出結果に基づいて前記加圧ローラ揺動手段を制御することを特徴とする定着装置。
【請求項5】
請求項4に記載の定着装置であって、
前記制御部は、前記定着ベルトを回転開始させる際に、前記ベルト端縁検出部が前記定着ベルトの端縁を検出している場合には、前記移動モードを所定時間の間実行した後、前記蛇行補正制御に移行することを特徴とする定着装置。
【請求項6】
請求項1から請求項5までのいずれか1つに記載の定着装置であって、
前記制御部は、前記移動モードの実行中に前記熱源を発熱させ、所定時間の間、前記非通過領域温度測定部により測定された前記シート非通過領域の温度が所定値以上上昇しなかった場合には、前記定着ベルトへのシートのシート巻き付きを有と判定することを特徴とする定着装置。
【請求項7】
請求項1から請求項5までのいずれか1つに記載の定着装置であって、
前記定着ベルト上のシート通過領域の温度を測定する通過領域温度測定部と、をさらに有し、
前記制御部は、前記移動モードの実行中に前記熱源を発熱させ、所定時間の経過後に、前記非通過領域温度測定部により測定された前記シート非通過領域の温度と前記通過領域温度測定部により測定された前記シート通過領域の温度とに基づいて、前記定着ベルトへのシートのシート巻き付きの有無を判定することを特徴とする定着装置。
【請求項8】
請求項6または請求項7のいずれかに記載の定着装置であって、
前記制御部は、前記シート巻き付きを有と判定したときに、前記熱源の発熱と前記定着ベルトの回転とを中止することを特徴とする定着装置。
【請求項9】
請求項1から請求項8までのいずれか1つに記載の定着装置を備えた画像形成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、定着装置及びそれを備えた画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
画像形成装置に用いられる定着装置として、定着ベルトと、定着ベルトの内側に配設された対向部材と、定着ベルトを外側から対向部材に向かって圧接し、トナー画像が形成されたシートを搬送するための定着ニップ領域を定着ベルトとの間に形成する加圧ローラと、定着ベルトを加熱する熱源と、を備え、未定着のトナー像が形成されたシートを定着ベルト及び加圧ローラ間に挟持し加熱することにより、シートにトナー像を定着させる定着装置が知られている。このような定着装置には、定着ベルトの温度を制御すべく、定着ベルト上においてシートが通過する領域(通過領域)の温度を測定する通過領域温度測定部が設けられている。
【0003】
また、特許文献1のように、定着ベルト上においてシートが通過しない領域(非通過領域)の温度を測定する非通過領域温度測定部がさらに設けられている定着装置が存在する。
【0004】
定着ベルト上の通過領域の温度と非通過領域の温度を測定することにより、これらの温度の差に基づいて、通過領域内における定着ベルトへのシートのシート巻き付きの有無を判定することが可能となる。具体的には、通過領域内におけるシート巻き付きがある場合には、通過領域において測定される温度の上昇がシートによって妨げられるのであるから、通過領域の温度と非通過領域の温度の差は顕著となる一方、通過領域内におけるシート巻き付きがない場合には、通過領域において測定される温度の上昇がなんら妨げられるのではないから、通過領域の温度と非通過領域の温度の差は微小に留まる。従って、通過領域の温度と非通過領域の温度の差が規定の温度以上である場合には、通過領域内における定着ベルトへのシートのシート巻き付きは有と判定される。
【0005】
シートのシート巻き付きが発生しているにもかかわらず、シート巻き付きが無と誤判定された場合、定着ベルトは目標温度(定着温度)を超えて加熱され続ける。定着ベルトが過熱されると、定着装置の故障等が引き起こされることから、シート巻き付きの有無の判定には、高い精度が求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2006-251488号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、シートが定着ベルト上の非通過領域側に寄り得ることから、シートのシート巻き付きは、通過領域のみならず非通過領域においても発生し得る。上記のような従来の技術では、定着ベルトへのシートのシート巻き付きが非通過領域においても発生している場合において、シート巻き付きの有無の誤判定が生じる虞があるという問題があった。
【0008】
とりわけ、シートが薄い場合には、例え非通過領域温度測定部が定着ベルトと接触している、いわゆる「接触型温度センサ」であったとしても、シートが非通過領域温度測定部と定着ベルトとの間に容易に入り込む。非通過領域温度測定部と定着ベルトとの間に介在するシートによって、非通過領域の正常な温度測定が妨げられ、結果としてシート巻き付きの有無の誤判定が生じるという問題があった。
【0009】
しかしながら、特に、シートのシート巻き付きをはじめとするジャムが発生した際に、そのジャムの原因となったシートや他のシートが適切に除去されずに残存してしまう場合がある。特に、シートが薄い場合には、シートが定着ベルトに密着することにより、ユーザーが定着装置内に残存するシートに気が付くことなく、結果としてシート巻き付きを看過してしまうという問題があった。
【0010】
本発明は、上記従来の問題点を解決するためになされたものであり、シートが定着ベルト上に残存していた場合であっても、シートの非通過領域の温度をより確実に測定することができ、ひいては、シートのシート巻き付きの有無を精度良く判定することができる定着装置、及びそのような定着装置を備えた画像形成装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するため、本発明の定着装置は、回転可能な無端状の定着ベルトと、前記定着ベルトの内側に配設された対向部材と、前記定着ベルトを外側から前記対向部材に向かって圧接し、トナー画像が形成されたシートを搬送するための定着ニップ領域を前記定着ベルトとの間に形成する加圧ローラと、前記定着ベルトを加熱する熱源と、前記定着ニップ領域で前記シートが搬送されない領域に対応する、前記定着ベルトの幅方向の一端側であるシート非通過領域の温度を測定する非通過領域温度測定部と、前記加圧ローラの片端側を前記定着ニップ領域の長手方向と交差する方向に揺動させる加圧ローラ揺動手段と、前記加圧ローラ揺動手段に前記加圧ローラを揺動させることにより前記定着ベルトの移動方向を補正する蛇行補正制御を行う制御部と、を備えた定着装置であって、前記制御部は、前記定着ベルトを、回転させながら前記非通過領域温度測定部から遠ざかる方向へ強制的に移動させるように前記加圧ローラ揺動手段を制御する移動モードを有していることを特徴とする。
【0012】
また、前記定着装置において、前記制御部は、シートジャムからの復帰動作時に、前記移動モードを実行してもよい。
【0013】
また、前記定着装置において、前記移動モードは、前記定着ベルトが所定の距離分回転される間実行されてもよい。
【0014】
また、前記定着装置において、前記定着ベルトの幅方向の他端側における端縁を検出するベルト端縁検出部をさらに有し、前記制御部は、前記ベルト端縁検出部の検出結果に基づいて前記加圧ローラ揺動手段を制御してもよい。
【0015】
また、前記定着装置において、前記制御部は、前記定着ベルトを回転開始させる際に、前記ベルト端縁検出部が前記定着ベルトの端縁を検出している場合には、前記移動モードを所定時間の間実行した後、前記蛇行補正制御に移行してもよい。
【0016】
また、前記定着装置において、前記制御部は、前記移動モードの実行中に前記熱源を発熱させ、所定時間の間、前記非通過領域温度測定部により測定された前記シート非通過領域の温度が所定値以上上昇しなかった場合には、前記定着ベルトへのシートのシート巻き付きを有と判定してもよい。
【0017】
また、前記定着装置において、前記定着ベルト上のシート通過領域の温度を測定する通過領域温度測定部と、をさらに有し、前記制御部は、前記移動モードの実行中に前記熱源を発熱させ、所定時間の経過後に、前記非通過領域温度測定部により測定された前記シート非通過領域の温度と前記通過領域温度測定部により測定された前記シート通過領域の温度とに基づいて、前記定着ベルトへのシートのシート巻き付きの有無を判定してもよい。
【0018】
また、前記定着装置において、前記制御部は、前記シート巻き付きを有と判定したときに、前記熱源の発熱と前記定着ベルトの回転とを中止してもよい。
【0019】
また、本発明に係る画像形成装置は、前記定着装置を備えた画像形成装置であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0020】
本発明により、非通過領域からのシートの排除が促されることから、非通過領域の温度をより確実に測定することができ、非通過領域の温度に基づいて定着ベルトへのシートのシート巻き付きの有無をより高い精度をもって判定することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】実施形態1における定着装置を備えた画像形成装置を正面から視た概略断面図である。
図2】実施形態1における定着装置を示す概略断面図である。
図3】定着ベルトを模式的に示す平面図である。
図4】実施形態1における定着装置の構成の一部を示す斜視図である。
図5】加圧ローラが定着ベルトに中立位置にて圧接している状態において、加圧ローラ揺動手段の構成を示す概略正面図である。
図6】カムシャフトの構成の一部を示す斜視図である。
図7】第1カムをカムシャフトの回転軸線方向から視た概略図である。
図8】第2カムをカムシャフトの回転軸線方向から視た概略図である。
図9】(a)第1カムとストッパの当接位置が位置Sにある場合におけるカムシャフトと加圧フレームの位置関係を示す概略図である。(b)第1カムとストッパの当接位置が位置Stにある場合におけるカムシャフトと加圧フレームの位置関係を示す概略図である。(c)第1カムとストッパの当接位置が位置Sbにある場合におけるカムシャフトと加圧フレームの位置関係を示す概略図である。(d)第1カムとストッパの当接位置が位置Eにある場合におけるカムシャフトと加圧フレームの位置関係を示す概略図である。
図10】加圧ローラが定着ベルトと離間している状態において、定着装置の構成の一部を示す概略正面図である。
図11】加圧ローラが定着ベルトに対して傾斜している状態を模式的に示す側面図である。
図12】定着装置の動作を制御するための制御構成を示す概略ブロック図である。
図13】定着ベルトのシート通過領域及びシート非通過領域において、シートが定着ベルトに巻き付いている状態を模式的に示す平面図である。
図14】定着ベルトのシート通過領域において、シートが定着ベルトに巻き付いている状態を模式的に示す平面図である。
図15】定着ベルトの端縁が-W方向の所定の接触位置に到達していない場合におけるベルト端縁検出部の状態を示す概略側面図である。
図16】定着ベルトの端縁が-W方向の所定の接触位置に到達している場合におけるベルト端縁検出部の状態を示す概略側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の実施の形態について、添付図面を参照しながら説明する。以下の説明では、同一の部品等には同一の符号を付しており、それら部品等の名称及び機能も同じである。従って、それらの部品等についての詳細な説明を省略している。
【0023】
(実施形態1)
-画像形成装置の全体構成-
図1は、実施形態1における定着装置200を備えた画像形成装置100を正面から視た概略断面図である。なお、図1において、符号Xは、幅方向(奥行き方向)を示しており、-X方向(マイナスX方向)を前方向とし、+X方向(プラスX方向)を後方向とする。符号Yは、幅方向Xに直交する左右方向Yを示しており、-Y方向(マイナスY方向)を左方向とし、+Y方向(プラスY方向)を右方向とする。符号Zは、上下方向を示しており、-Z方向(マイナスZ方向)を下方向とし、+Z方向(プラスZ方向)を上方向とする。このことは、後述する図においても同様である。
【0024】
図1に示す画像形成装置100は、画像読取装置10により読み取られた画像データ、又は、外部から伝達された画像データに応じて、記録用紙等のシートPに対して電子写真方式によりモノクロの画像を形成する画像形成装置である。なお、画像形成装置100は、多色及び単色の画像を形成するカラー画像形成装置であってもよい。
【0025】
画像形成装置100は、画像読取装置10と、画像形成装置本体110とを備えており、画像形成装置本体110には、画像形成部101とシート搬送系102とが設けられている。
【0026】
画像形成部101は、露光装置1(露光ユニット)、現像装置2(現像ユニット)、感光体ドラム3、感光体クリーニング装置4、帯電装置5、転写装置6(転写ユニット)及び定着装置200(定着ユニット)を備えている。また、シート搬送系102は、給紙トレイ8及び排出トレイ9を備えている。
【0027】
画像形成装置本体110の上部には、原稿載置ガラス11及び原稿読取ガラス12が設けられ、原稿載置ガラス11及び原稿読取ガラス12の下部には原稿(図示省略)の画像を読み取るための画像読取装置10が設けられている。原稿載置ガラス11は、原稿が載置される原稿載置台である。また、原稿載置ガラス11及び原稿読取ガラス12の上側には原稿搬送装置13が配置されている。原稿読取ガラス12は、原稿搬送装置13で搬送されてきた原稿を読み取る位置に設けられている。画像読取装置10で読み取られた原稿の画像は、画像データとして画像形成装置本体110に送られ、画像形成装置本体110において画像データに基づき形成された画像がシートPに画像形成(印刷)される。
【0028】
画像形成装置100では、画像形成(印刷)を行うにあたり、給紙トレイ8からシートPを供給し、シート搬送路Qに沿って設けられた搬送ローラ14aによってシートPをレジストローラ15まで搬送する。次に、シートPと感光体ドラム3上のトナー像とを整合するタイミングでシートPを搬送し、転写装置6によってシートP上に感光体ドラム3上のトナー像を転写する。その後、定着装置200によってシートP上の未定着トナーを熱で溶融、固着し、搬送ローラ14b~14b及び排出ローラ16,16を経て排出トレイ9上に排出する。また、画像形成装置100において、シートPの表面だけでなく、裏面に画像形成(印刷)を行う場合は、シートPを排出ローラ16,16から反転経路Srへ逆方向に搬送して、シートPの表裏を反転させてレジストローラ15へ再度導き、シートPの表面と同様にして、シートPの裏面にトナー像を定着させて排出トレイ9へ排出する。こうして、画像形成装置100は、一連の印刷作動を完了する。なお、シートPは、感光体ドラム3の回転軸線方向(幅方向X)において画像形成装置本体110の中央を基準(センター基準)にしてシート搬送路Qに沿って搬送される。
【0029】
-定着装置-
図2は、実施形態1における定着装置200を示す概略断面図である。図3は、定着ベルト22を模式的に示す平面図である。図4は、定着装置200の構成の一部を示す斜視図である。図において、符号Wは、定着ベルト22の回転軸線方向を示しており、-W方向(マイナスW方向)を軸線前方向とし、+W方向(プラスW方向)を軸線後方向とする。なお、本実施形態において、W方向は、X方向に沿っている。
【0030】
定着装置200は、定着ローラ21aと、加熱ローラ21bと、熱源21cと、定着ベルト22と、加圧ローラ23と、通過領域温度測定部24と、非通過領域温度測定部25と、加圧ローラ揺動手段60と、制御部70と、を備えている。制御部70は、画像形成装置100に備えられていてもよい。以下、定着装置200の各構成を詳述する。
【0031】
<定着ローラ、加熱ローラ及び熱源>
定着ローラ21aは、請求項に記載の「対向部材」に相当するものであり、定着ベルト22の内側に配設されている(図2参照)。定着ローラ21aは、回転可能な状態で定着フレーム(図示しない)によって支持されている。なお、対向部材として、定着ローラ21aの代わりに、加圧ローラ23側に平面状もしくは曲面状のパッド部を有する板状部材であって、加圧ローラ23との間で定着ベルト22を挟持するものが用いられてもよい。
【0032】
加熱ローラ21bには、熱源21cが内蔵されている(図2参照)。熱源21cは、定着ベルト22を加熱するものであり、例えば、ランプヒータから形成されている。
【0033】
なお、熱源21cは、要は、定着ベルト22を加熱することができれば足りるため、例えば、定着ローラ21aに内蔵されていてもよい。
【0034】
<定着ベルト>
定着ベルト22は、回転軸線方向をW方向として、定着ローラ21a及び加熱ローラ21bに回転可能に懸架された無端状のベルトであり、W方向に沿って所定の幅を有している(図2図3参照)。定着ベルト22は、加圧ローラ23と共にシートPを挟持搬送する役割を持つ。定着ベルト22は、加熱ローラ21bを介して、熱源21cによって所定の温度に加熱され、所定の目標温度(定着温度)に維持される。本実施形態において、定着ベルト22は、後述する加圧ローラ23の回転駆動に伴って回転される。
【0035】
定着ベルト22の表面は、W方向において、シート通過領域αとシート非通過領域βに画定されている(図3参照)。
【0036】
シート通過領域αは、搬送によってシートPが定着ベルト22上において通過し当接し得る領域である。具体的には、シート通過領域αは、後述する定着ニップ領域NでシートPが搬送される領域に対応する領域であり、W方向において、通過可能である最大のシートが、その長辺に沿った方向(いわゆる縦送り方向)で通過するに足りる大きさに設定されている。例えば、通過可能である最大のシートがA3サイズのシートである場合には、シート通過領域αの幅は、W方向において、A3サイズのシートの短辺(297mm)と等しく又は若干大きく設定されている。
【0037】
シート通過領域α内の最小シート通過領域γの幅は、通過可能である最小のシート(例えば、B6サイズ)のシートの短辺と等しく又は若干小さく設定されている。
【0038】
シート非通過領域βは、後述する定着ニップ領域NでシートPが搬送されない領域に対応する領域であり、定着ベルト22の+W方向端側の領域(シート通過領域αの+W方向側の領域)である(図3参照)。
【0039】
<加圧ローラ>
加圧ローラ23は、定着ベルト22の外側から定着ローラ21aに向かって圧接し、トナー画像が形成されたシートPを搬送するための定着ニップ領域Nを定着ベルト22との間に形成するものであり、その回転軸231が軸受232を介して前後一対の加圧フレーム30(30a,30b)によって支持されている(図4参照)。回転軸231の外側(外周部)には弾性体、例えば、5mm程度の耐熱性シリコンゴムが被膜されている。加圧ローラ23は、加圧フレーム30に係止されている付勢部材90(例えば、コイルスプリング)の付勢力によって、定着ベルト22に圧接される(図4参照)。加圧ローラ23は、後述するローラ駆動部78(駆動モータ)によって回転駆動される。加圧ローラ23が定着ベルト22に圧接された状態で回転駆動されると、定着ニップ領域Nで圧接された定着ベルト22が回転される。
【0040】
<通過領域温度測定部>
通過領域温度測定部24は、シート通過領域αの温度Tαを測定するものであり、定着ベルト22から所定の距離だけ離間して設けられている(図3参照)。本実施形態において、通過領域温度測定部24は、シート通過領域α内の最小シート通過領域γの温度を測定する。本実施形態において、通過領域温度測定部24は、いわゆる非接触型温度センサである。
【0041】
<非通過領域温度測定部>
非通過領域温度測定部25は、定着ベルト22上のシート非通過領域βの温度Tβを測定するものであり、その先端がシート非通過領域βと接触するよう設けられている(図3参照)。本実施形態において、非通過領域温度測定部25は、いわゆる接触型温度センサである。
【0042】
<加圧ローラ揺動手段>
図5は、加圧ローラ23が定着ベルト22に中立位置にて圧接している状態において、加圧ローラ揺動手段60の構成を示す概略正面図である。図6は、カムシャフト40の構成の一部を示す斜視図である。図7は、第1カム41をカムシャフト40の回転軸線方向Vから視た概略図である。図8は、第2カムをカムシャフト40の回転軸線方向Vから視た概略図である。図9(a)は、第1カム41とストッパ36の当接位置が位置Sにある場合におけるカムシャフト40と加圧フレーム30の位置関係を示す概略図であり、図9(b)は、第1カム41とストッパ36の当接位置が位置Stにある場合におけるカムシャフト40と加圧フレーム30の位置関係を示す概略図であり、図9(c)は、第1カム41とストッパ36の当接位置が位置Sbにある場合におけるカムシャフト40と加圧フレーム30の位置関係を示す概略図であり、図9(d)は、第1カム41とストッパ36の当接位置が位置Eにある場合におけるカムシャフト40と加圧フレーム30の位置関係を示す概略図である。図10は、加圧ローラ23が定着ベルト22と離間している状態において、定着装置200の構成の一部を示す概略正面図である。図11は、加圧ローラ23が定着ベルト22に対して傾斜している状態を模式的に示す側面図である。図11は、あくまで、加圧ローラ23の圧接方向を説明するための模式図であり、実際の加圧ローラ23の傾斜量をなんら表すものではない。図5図10において、符号Vは、カムシャフト40の回転軸線方向を示しており、-V方向(マイナスV方向)を軸線前方向とし、+V方向(プラスV方向)を軸線後方向とする。なお、本実施形態において、V方向は、X方向に沿っている。
【0043】
加圧ローラ揺動手段60は、加圧ローラ23の片端側(-X方向端側)を定着ニップ領域Nの長手方向(本実施形態ではW方向に沿っている)と交差する方向に揺動させるものであり、本実施形態において、加圧フレーム30(30a,30b)と、カムシャフト40と、を含む(図4図5参照)。具体的には、加圧ローラ揺動手段60は、カムシャフト40の回転によって、加圧フレーム30bに対する加圧フレーム30aの相対位置を変化させ、加圧ローラ23の-X方向側の端部23aを加圧ローラ23の+X方向側の端部23bに対して相対的にZ方向に移動させて、定着ニップ領域Nの長手方向と交差する方向に揺動させるものである。
【0044】
前後一対の加圧フレーム30(-X方向側の加圧フレーム30a及び+X方向側の加圧フレーム30b)は、カムシャフト受け部31と、カムシャフト退避部32と、加圧ローラ受け部33と、付勢部材係止部34と、支軸係合部35と、ストッパ36と、を有している(図4図5参照)。
【0045】
加圧フレーム30a,30bは、加圧ローラ23のX方向両端部23a,23bから外側に向かって突出している回転軸231を、それぞれ軸受232を介して支持するものであり、回転支軸301を回転支点として回転可能な状態で設けられている(図4図5参照)。加圧フレーム30は、例えば亜鉛メッキ鋼板などの金属製の板状体から形成されている。
【0046】
カムシャフト受け部31は、カムシャフト40の回転時に、後述するカムシャフト40の第2カム42を受ける部分である。カムシャフト受け部31は、-Y方向側/Z方向側に開口する略U字状に形成されており、第1当接部311と、湾曲部312と、第2当接部313と、を有している(図5参照)。第1当接部311と第2当接部313は、第2カム42の直径よりも若干大きく設定された開口幅D1をもって、並設されている〔図9(a)参照〕。
【0047】
カムシャフト退避部32は、カムシャフト40の回転時に、第2カム42を退避させるための部分である。カムシャフト退避部32は、カムシャフト受け部31と、加圧フレーム30の-Y方向側/Z方向側の端縁302と、に連設されており、開口幅D1よりも大きく設定された開口幅D2を有している〔図9(a)参照〕。
【0048】
加圧ローラ受け部33は、加圧ローラ23の回転軸231の軸受232と当接する部分であり、加圧フレーム30の端縁302において、カムシャフト受け部31の-Y方向側に凹設されている(図5参照)。
【0049】
ストッパ36は、カムシャフト40の第1カム41と当接する部分であり、カムシャフト受け部31と所定の位置関係において配置されている。
【0050】
付勢部材係止部34には、付勢部材90の一方が係止されている(図4図5参照)。付勢部材90の他方は、定着フレーム(図示しない)に係止されている。付勢部材係止部34は、加圧フレーム30の+Z方向側の端部に設けられている。
【0051】
支軸係合部35は、回転支軸301が係合される部分であり、加圧フレーム30の-Z方向側の端縁303に凹設されている。(図5参照)。
【0052】
カムシャフト40は、一対の第1カム41(41a、41b)と、第2カム42と、第1カム41及び第2カム42を接続するシャフト43と、を有している(図4図6参照)。第1カム41(41a、41b)は、付勢部材90の付勢力によって、加圧フレーム30と当接される。また、カムシャフト40は、後述するカム駆動部79によって、カムシャフト回転中心δ周りに回転軸線方向をV方向として回転駆動される。
【0053】
第1カム41は、カムシャフト40の端部に設けられている(図4図6参照)。第1カム41aは、カムシャフト40の-V方向側の端部に設けられており、第1カム41bは、カムシャフト40の+V方向側の端部に設けられている(図4参照)。
【0054】
第1カム41は、カムシャフト40の回転時における加圧ローラ23の挙動に応じて、領域S1(圧接領域)及び領域S2(離間移動領域)に画定されている(図7参照)。
【0055】
領域S1は、カムシャフト回転中心δからの距離が一定値Lsとなるように形成されている(図7参照)。領域S1には、位置S、位置St及び位置Sbが設けられている。位置Sは、位置Stと位置Sbの中間に位置している。位置Sにおいて、第1カム41とストッパ36が当接しているとき、加圧ローラ23が定着ベルト22に対して中立位置にて、定着ベルト22に圧接するようになっている。位置Stにおいて、第1カム41とストッパ36が当接しているとき、後述のように、加圧ローラ23が定着ベルト22を-X方向側へ傾斜したF方向に送るように定着ベルト22に圧接するようになっている。位置Sbにおいて、第1カム41とストッパ36が当接しているとき、後述のように、加圧ローラ23が定着ベルト22を+X方向側へ傾斜した方向に送るように定着ベルト22に圧接するようになっている。
【0056】
領域S2は、カムシャフト回転中心δからの距離が、LsからLeまで徐々に遠ざかるように形成されている(図7参照)。領域S2において、第1カム41を図7のR2方向に回転させると、第1カム41のストッパ36との当接位置が位置Eに到達する〔図9(d)、図10参照〕。このとき、後述のように、加圧フレーム30が第1カム41によって位置Eを支点として定着ベルト22から押し離されているとともに、加圧ローラ23と定着ベルト22が離間するようになっている。
【0057】
第2カム42は、その中心εがカムシャフト回転中心δからofだけオフセットされた偏芯カムであり、第1カム41aの内側に設けられている(図6図8参照)。第2カム42は、第1カム41の位置Sからカムシャフト回転中心δを通る径線Uに沿って、位置Sから遠ざかる方向に、所定の量(of)偏心している(図8参照)。第2カム42の径は、シャフト43の径よりも小さく設定されている。
【0058】
第2カム42は、第1カム41とストッパ36の当接位置に応じて、カムシャフト受け部31の内部に移動したり、カムシャフト退避部32に退避されたりする。
【0059】
続いて、第1カム41とストッパ36の当接位置別に、第2カム42と加圧ローラ23の圧接方向の関係を説明する。
【0060】
図9(a)に示すように、第1カム41とストッパ36の当接位置が領域S1内の位置Sにあるとき、前述のように、加圧ローラ23は、定着ベルト22に対して中立位置にて、定着ベルト22に圧接するようになっている。このとき、加圧ローラ23は、定着ベルト22に対して略平行に保たれた状態となる。このとき、第2カム42は、カムシャフト受け部31の第1当接部311と第2当接部313との間に位置している。また、このとき、第2カム42の中心εは、第1カム41とストッパ36の当接位置からカムシャフト回転中心δを通る径線Ua上に位置している。
【0061】
図9(b)に示すように、第1カム41とストッパ36の当接位置が領域S1内の位置Stにあるとき、第2カム42の中心εは、第1カム41及びストッパ36の当接位置である位置Stからカムシャフト回転中心δを通る径線Ubよりも下方に位置している。このとき、第2カム42は、カムシャフト受け部31の第2当接部313に当接している状態となる。カムシャフト40は、第1カム41及びストッパ36の当接位置をピボットとして加圧フレーム30aを-Z方向に押し下げる。加圧フレーム30bに対する加圧フレーム30aのZ方向の相対的な位置が-Z方向側に変化することにより、加圧フレーム30aに支持された加圧ローラ23の端部23aが加圧フレーム30bに支持された加圧ローラ23の端部23bに対して相対的に-Z方向側に移動されることから、加圧ローラ23が定着ベルト22を-X方向側へ傾斜したF方向に送るように定着ベルト22に圧接している状態となる(図11参照)。なお、加圧ローラ23の傾斜量としては、例えば、A4縦サイズの構成(具体的には300mm程度)で±0.5mm程度(傾斜角度で±0.09度程度)を挙げることができるが、もちろんこれに限定されるものではない。
【0062】
図9(c)に示すように、第1カム41とストッパ36の当接位置が領域S1内の位置Sbにある場合、第2カム42の中心εは、第1カム41とストッパ36の当接位置である位置Sbからカムシャフト回転中心δを通る径線Ucよりも上方に位置している。このとき、第2カム42は、カムシャフト受け部31の第1当接部311に当接している状態となる。カムシャフト40は、第1カム41及びストッパ36の当接位置をピボットとして加圧フレーム30aを+Z方向に押し上げる。加圧フレーム30bに対する加圧フレーム30aのZ方向の相対的な位置が+Z方向側に変化することにより、加圧フレーム30aに支持された加圧ローラ23の端部23aが加圧フレーム30bに支持された加圧ローラ23の端部23bに対して相対的に+Z方向側に移動されることから、加圧ローラ23が定着ベルト22を+X方向側へ傾斜した方向に送るように定着ベルト22に圧接している状態となる。
【0063】
図9(d)に示すように、第1カム41とストッパ36の当接位置が領域S2内にある場合、定着ベルト22から離れる方向へ加圧フレーム30が第1カム41によって押し離されることから、加圧ローラ23は定着ベルト22から離間している状態となる。このとき、第2カム42は、カムシャフト退避部32へと退避している状態となる。
【0064】
<制御部>
図12は、定着装置200の動作を制御するための制御構成を示す概略ブロック図である。図13は、定着ベルト22のシート通過領域α及びシート非通過領域βにおいて、シートPが定着ベルト22に巻き付いている状態を模式的に示す平面図である。図14は、定着ベルト22のシート通過領域αにおいて、シートPが定着ベルト22に巻き付いている状態を模式的に示す平面図である。
【0065】
制御部70は、加圧ローラ揺動手段60に加圧ローラ23を揺動させることにより定着ベルト22の移動方向を補正する蛇行補正制御を行うものであり、CPU(Central Processing Unit)等のコンピュータからなる処理部70aと、ROM(Read Only Memory)等の不揮発性メモリ及びRAM(Random Access Memory)等の揮発性メモリを含む記憶部70bと、を有している(図12参照)。制御部70の入力系には、通過領域温度測定部24及び非通過領域温度測定部25が電気的に接続されている(図12参照)。制御部70の出力系には、熱源21cと、加圧ローラ23を駆動するローラ駆動部78と、加圧ローラ揺動手段60のカムシャフト40を回転駆動するカム駆動部79と、が電気的に接続されている(図12参照)。
【0066】
処理部70aによって、記憶部70bのROMに予め格納された制御プログラムが呼び出され、記憶部70bのRAM上にロードされると、上記各種構成要素の作動の制御が実行される。例えば、熱源21cの加熱作動は、処理部70aによって、非通過領域温度測定部25及び通過領域温度測定部24から取得された温度情報に基づいて、制御プログラムに従って実行される。
【0067】
制御部70による蛇行補正制御は、次の通り実行される。制御部70の処理部70aは、加圧ローラ揺動手段60の第1カム41及びストッパ36の当接位置が適宜位置St、位置S又は位置Sbとなるまでカム駆動部79を回転駆動させ、カムシャフト40を回転させる。カムシャフト40の回転によって、加圧ローラ23が定着ベルト22に対して揺動される。加圧ローラ23の揺動によって、定着ベルト22が加圧ローラ23から受ける力の方向が変化することから、加圧ローラ23が圧接する定着ベルト22の移動方向(片寄り方向)が補正されるようになっている。
【0068】
具体的には、加圧ローラ揺動手段60の第1カム41及びストッパ36の当接位置が位置Stにある場合には〔図9(b)参照〕、前述の通り加圧ローラ23が定着ベルト22を-X方向側へ傾斜したF方向に送るように定着ベルト22に圧接している状態となることから(図11参照)、定着ベルト22が加圧ローラ23から-X方向、すなわち、-W方向の力を受けて、定着ベルト22の移動方向が-W方向に補正される。一方、加圧ローラ揺動手段60の第1カム41及びストッパ36の当接位置が位置Sbにある場合には〔図9(c)参照〕、前述の通り加圧ローラ23が定着ベルト22に対して+X方向側へ傾斜して圧接している状態となることから、定着ベルト22が加圧ローラ23から+X方向、すなわち、+W方向の力を受けて、定着ベルト22の移動方向が+W方向に補正される。
【0069】
ところで、定着装置200において、加圧ローラ23と定着ベルト22との間で挟持搬送されるシートPは、通常、分離部材95(図2参照)によって、定着ベルト22から分離される。分離部材95が設けられていることにより、定着ベルト22へのシートPのシート巻き付きは発生し難くなっているものの、シートPが定着ベルト22から分離されずに、シート巻き付きが発生してしまうことがある(図13図14参照)。シート非通過領域βにおいてシートPのシート巻き付きが発生していた場合(図13参照)、シート非通過領域βの正常な温度測定が妨げられることから、そのシートPをシート非通過領域βから除去することが望まれる。定着ベルト22を、シート非通過領域βの温度を測定する非通過領域温度測定部25から遠ざかる方向へ移動させることにより、定着ベルト22上のシートPをシート非通過領域βから遠ざかる方向へ移動させることが達成できる。そこで、制御部70は、定着ベルト22を、回転させながら非通過領域温度測定部25から遠ざかる方向へ強制的に移動させるように加圧ローラ揺動手段60を制御する移動モードを有している。移動モードは、次の手順で実行される。
【0070】
まず、制御部70の処理部70aは、カム駆動部79を回転駆動させ、第1カム41及びストッパ36の当接位置が位置Stとなるまで、カムシャフト40を回転させる。第1カム41とストッパ36の当接位置が位置Stにある場合、前述の通り、加圧ローラ23が定着ベルト22を-X方向側へ傾斜したF方向に送るように定着ベルト22に圧接している状態となり、定着ベルト22が-W方向、すなわち、非通過領域温度測定部25から遠ざかる方向へ移動される。このような移動モードによって、-W方向への定着ベルト22の移動に伴って、定着ベルト22上のシートPがシート非通過領域βから排除されることから、非通過領域の温度をより確実に測定することができ、非通過領域の温度に基づいて定着ベルトへのシートのシート巻き付きの有無をより高い精度をもって判定することが可能となる。なお、上記移動モードの実行後に、制御部70の処理部70aは、カム駆動部79を回転駆動させ、第1カム41及びストッパ36の当接位置が位置Sとなるまで、R1方向へカムシャフト40を回転させて、加圧ローラ23を定着ベルト22に対して中立位置側に移動させるようにしてもよい。
【0071】
本実施形態において、制御部70は、シートジャムからの復帰動作時に、上記の移動モードを実行する。「シートジャム」とは、画像形成装置100の画像形成動作中に何らかの影響(例えば、シートPが搬送経路中で他部品に引っかかるなど)によってシートの正常な搬送が妨碍された状態を指す。ジャムが発生した場合、画像形成動作が中断され、ユーザーにシートPを搬送経路から除去する機会が与えられる。「シートジャムからの復帰動作」とは、ジャムによって画像形成動作が中断された状態から、通常の画像形成動作へと移行することを指す。制御部70がシートジャムからの復帰動作時に移動モードを実行することにより、シートジャムの発生後にユーザーによってシートPが定着ベルト22から適切に除去されなかった場合であっても、定着ベルト22上に残存したシートPを非通過領域から遠ざかる方向へ移動させて、シート非通過領域βの温度を測定することができる。
【0072】
本実施形態において、上記の移動モードは、定着ベルト22が所定の距離分回転される間、例えば、定着ベルト22が1周分回転される間実行される。これにより、シート非通過領域βからシートPを精度良く排除することができる。
【0073】
本実施形態において、制御部70は、定着ベルト22へのシートPのシート巻き付きの有無を判定する。本実施形態において、制御部70は、移動モードの実行中に熱源21cを発熱させ、所定時間の経過後に、非通過領域温度測定部25により測定されたシート非通過領域βの温度と通過領域温度測定部24により測定されたシート通過領域αの温度とに基づいて、定着ベルト22へのシートPのシート巻き付きの有無を判定する。シート巻き付きの有無の判定は、次の手順で実行される。
【0074】
まず、制御部70の処理部70aは、上記の通り移動モードの実行を開始する。次に、処理部70aは、熱源21cを発熱させる。処理部70aは、通過領域温度測定部24からシート通過領域αの温度Tαの情報を取得するとともに、非通過領域温度測定部25からシート非通過領域βの温度Tβの情報を取得する。このとき、図3のように、定着ベルト22へのシートPのシート巻き付きが発生していない場合には、非通過領域温度測定部25及び通過領域温度測定部24がともに定着ベルト22の表面の実温度を測定することから、温度Tαと温度Tβは、近似する。しかし、図14のように、シート通過領域αにおいて定着ベルト22へのシートPのシート巻き付きが発生している場合には、非通過領域温度測定部25が定着ベルト22の表面の実温度を測定する一方、通過領域温度測定部24は、シートPの表面の実温度を測定する。シートPには、定着ベルト22の表面から熱が伝達されるが、この熱伝達時の熱損失によって、シートPの表面の温度は、定着ベルト22の表面の温度と比較して、必然的に低くなる。図14のように、定着ベルト22へのシートPのシート巻き付きが発生している場合には、温度Tαと温度Tβの差は顕著となる。
【0075】
従って、温度Tαと温度Tβの差が所定値未満である場合には、処理部70aは、定着ベルト22へのシートPのシート巻き付きを無と判定し、温度Tαと温度Tβの差が所定値以上である場合には、処理部70aは、定着ベルト22へのシートPのシート巻き付きを有と判定する。上記のような手順によって、定着ベルト22へのシートPのシート巻き付きの有無を判定することが可能となる。
【0076】
本実施形態において、制御部70は、シート巻き付きを有と判定したときに、熱源21cの発熱と定着ベルト22の回転とを中止する。これにより、定着ベルト22が熱源21cによって目標温度(定着温度)を超えて加熱され続けることが阻止され、結果として、定着ベルト22の過熱を起因とする定着装置の故障等を回避することができるという効果が生じる。
【0077】
(実施形態2)
実施形態2において、制御部70は、移動モードの実行中に熱源21cを発熱させ、所定時間の間、非通過領域温度測定部25により測定されたシート非通過領域βの温度が所定値以上上昇しなかった場合には、定着ベルト22へのシートPのシート巻き付きを有と判定する。本実施形態におけるシート巻き付きの有無の判定は、次の手順で実行される。
【0078】
まず、制御部70の処理部70aは、実施形態1に記載の通り移動モードの実行を開始する。次に、処理部70aは、非通過領域温度測定部25からシート非通過領域βの温度Tβの情報を取得し、記憶部70bに記憶させる。続いて、処理部70aは、熱源21cを発熱させる。処理部70aは、再び、非通過領域温度測定部25からシート非通過領域βの温度Tβの情報を取得し、この温度Tβの情報を記憶部70bに記憶させた温度情報と比較する。このとき、図3のように、定着ベルト22へのシートPのシート巻き付きが発生していない場合には、非通過領域温度測定部25の温度測定がシートPによって妨げられないことから、非通過領域温度測定部25により測定されたシート非通過領域βの温度Tβは、熱源21cの発熱後に所定値以上上昇する。しかし、図13のように、シート通過領域α及びシート非通過領域βにおいて定着ベルト22へのシートPのシート巻き付きが発生している場合には、非通過領域温度測定部25の温度測定がシートPによって妨げられることから、非通過領域温度測定部25により測定されたシート非通過領域βの温度Tβは、熱源21cの発熱前後で互いに近似する。このような手順によって、移動モードの実行中にシートPがシート非通過領域βに残存している場合であっても、定着ベルト22へのシートPのシート巻き付きの有無をバックアップ的に判定することが可能となる。
【0079】
(実施形態3)
図15は、定着ベルト22の-W方向側の端縁22aが-W方向の所定の接触位置に到達していない場合におけるベルト端縁検出部50の状態を示す概略側面図である。図16は、定着ベルト22の端縁22aが-W方向の所定の接触位置に到達している場合におけるベルト端縁検出部50の状態を示す概略側面図である。
【0080】
実施形態3における定着装置200は、上記の実施形態1における定着装置200に加えて、ベルト端縁検出部50をさらに有している。
【0081】
-ベルト端縁検出部-
ベルト端縁検出部50は、ベルト接触部51と、検出センサ52と、を有している(図15図16参照)。ベルト端縁検出部50は、定着ベルト22の-W方向側に設けられており、-W方向側における定着ベルト22の端縁22aを、所定の検出位置において検出する役割を持つ。
【0082】
ベルト接触部51は、遮蔽アーム510と、支軸511と、接触爪512と、を有している(図15図16参照)。
【0083】
遮蔽アーム510は、後述する検出センサ52と接触している状態で検出センサ52の受光を遮蔽する部分であり、支軸511から-W方向にアーム状に延設されている。
【0084】
支軸511は、ベルト接触部51の回転支軸となる部分であり、定着装置200のハウジング(図示しない)に取り付けられている。
【0085】
接触爪512は、定着ベルト22の端縁22aと、所定の接触位置において接触する部分であり、支軸511から-Z方向に延設されている。
【0086】
遮蔽アーム510と接触爪512の重量バランスは、ベルト接触部51が定着ベルト22と離間された状態、すなわち無負荷状態において、遮蔽アーム510が検出センサ52の受光を遮蔽している状態となるように設定されている。
【0087】
検出センサ52は、例えば、透過型フォトインタラプタであり、発光器から発光された光の遮蔽を受光器で検出することにより、遮蔽アーム510の有無を判定するセンサである。検出センサ52の信号出力に基づいて、ベルト端縁検出部50によって、端縁22aが検出される。検出センサ52は、係止部521によって、定着フレーム(図示しない)に固定されている。
【0088】
定着ベルト22の端縁22aは、ベルト端縁検出部50によって、次の通り検出される。
【0089】
定着ベルト22の端縁22aが-W方向の所定の接触位置に到達していないとき、端縁22aと接触爪512は離間された状態となる(図15参照)。遮蔽アーム510は、検出センサ52と接触して、検出センサ52の受光を遮蔽している状態となる。検出センサ52は、その受光の遮蔽をもって遮蔽アーム510を有と判定する。このときの検出センサ52の出力信号に基づいて、ベルト端縁検出部50は、端縁22aを検出していない状態となる。
【0090】
一方、定着ベルト22の端縁22aが-W方向の所定の接触位置に到達しているとき、端縁22aは、接触爪512と接触している状態となる。定着ベルト22の-W方向へのさらなる変位によって、接触爪512が-W方向に移動されるとともに、ベルト端縁検出部50がR3方向に回転する(図15図16参照)。ベルト端縁検出部50の回転に伴い、遮蔽アーム510は、検出センサ52から離間され、検出センサ52の受光を遮蔽していない状態となる(図16参照)。このときの定着ベルト22の端縁22aの位置を、「所定の検出位置」と称す。検出センサ52は、その受光をもって遮蔽アーム510を無と判定する。このときの検出センサ52の出力信号に基づいて、ベルト端縁検出部50は、端縁22aを検出している状態となる。
【0091】
実施形態3における制御部70は、ベルト端縁検出部50の検出結果に基づいて加圧ローラ揺動手段60を制御する。例えば、ベルト端縁検出部50が定着ベルト22の端縁22aを検出した場合、制御部70の処理部70aは、カム駆動部79を回転駆動させ、第1カム41及びストッパ36の当接位置が位置Sbとなるまで、図7のR1方向へカムシャフト40を回転させる。このようにカムシャフト40を回転させると、前述の通り、加圧ローラ23は、定着ベルト22を+X方向側へ傾斜した方向に送るように、定着ベルト22に圧接している状態となる。言い換えると、制御部70の処理部70aは、定着ベルト22の端縁22aが所定の検出位置に到達すると、定着ベルト22の移動方向が+W方向となるように加圧ローラ揺動手段60を制御する。一方、ベルト端縁検出部50が端縁22aを検出しなくなった場合、制御部70の処理部70aは、定着ベルト22の移動方向が-W方向となるように加圧ローラ揺動手段60を制御する。これにより、定着ベルト22をW方向のどちらか一方に偏ることなく安定走行させる制御(蛇行補正制御)が達成される。
【0092】
また、実施形態3において、制御部70は、定着ベルト22を回転開始させる際に、ベルト端縁検出部50が定着ベルト22の端縁を検出している場合には、前述の移動モードを所定時間の間実行した後、前述の蛇行補正制御に移行する。ここで、所定時間とは、例えば、定着ベルト22が一回転する程度から数回転する程度の回転時間でよい。これにより、定着ベルト22上のシートPをシート非通過領域βから遠ざかる方向へ確実に移動させることができる。
【0093】
また、実施形態3において、ベルト端縁検出部50が定着ベルト22の端縁を検出していない場合の移動モードの実行時間は、ベルト端縁検出部50が定着ベルト22の端縁を検出している場合の移動モードの実行時間よりも長く設定されている。これにより、定着ベルト22及びベルト端縁検出部50への過負荷を回避することができる。
【0094】
上記の実施形態はすべての点で例示であって、限定的な解釈の根拠となるものではない。従って、本発明の技術的範囲は、上記した実施形態のみにより解釈されるものではなく、特許請求の範囲の記載に基づいて画定される。また、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内でのすべての変更が含まれる。
【符号の説明】
【0095】
100 画像形成装置
200 定着装置
21a 定着ローラ
21b 加熱ローラ
22 定着ベルト
22a 端縁
23 加圧ローラ
23a 端部
23b 端部
24 通過領域温度測定部
25 非通過領域温度測定部
30 加圧フレーム
31 カムシャフト受け部
32 カムシャフト退避部
33 加圧ローラ受け部
34 付勢部材係止部
35 支軸係合部
36 ストッパ
40 カムシャフト
41 第1カム
42 第2カム
43 シャフト
50 ベルト端縁検出部
51 ベルト接触部
510 遮蔽アーム
511 支軸
512 接触爪
52 検出センサ
60 加圧ローラ揺動手段
70 制御部
P シート
δ カムシャフト回転中心
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16