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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-21
(45)【発行日】2024-07-01
(54)【発明の名称】重送検知装置及び重送検知方法
(51)【国際特許分類】
   B65H 7/12 20060101AFI20240624BHJP
   G07D 11/237 20190101ALI20240624BHJP
   G01N 21/17 20060101ALI20240624BHJP
   G06N 20/00 20190101ALI20240624BHJP
【FI】
B65H7/12
G07D11/237
G01N21/17 A
G06N20/00
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2021055505
(22)【出願日】2021-03-29
(65)【公開番号】P2022152656
(43)【公開日】2022-10-12
【審査請求日】2023-11-22
(73)【特許権者】
【識別番号】000001432
【氏名又は名称】グローリー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000914
【氏名又は名称】弁理士法人WisePlus
(72)【発明者】
【氏名】番匠谷 利彦
(72)【発明者】
【氏名】池本 良
【審査官】大山 広人
(56)【参考文献】
【文献】特公昭51-007021(JP,B1)
【文献】特開昭57-184041(JP,A)
【文献】特開2012-035953(JP,A)
【文献】特開2010-026850(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65H 7/00- 7/20
B65H 43/00-43/08
G07D 11/237
G01N 21/17
G06N 20/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
紙葉類に光を照射する光源と、
紙葉類を透過した透過光と、紙葉類で反射した反射光とを受光する受光部と、
前記受光部から、前記透過光に係る出力データである透過出力データと、前記反射光に係る出力データである反射出力データとを取得する制御部と、を備え、
前記受光部は、複数の受光画素を含み、
前記透過出力データは、前記複数の受光画素の出力データを含む透過画像データであり、
前記反射出力データは、前記複数の受光画素の出力データを含む反射画像データであり、
前記制御部は、前記透過画像データ及び前記反射画像データに基づいて、単位画素毎に重送か否かを判定し、当該判定の結果に基づいて、紙葉類が重送しているか否かを判定するものであり、注目する単位画素が重送であると判定され、かつその注目する単位画素の周囲に重送と判定された単位画素が所定数より多く存在する場合に、その注目する単位画素が重送であると判定する
ことを特徴とする重送検知装置。
【請求項2】
前記制御部は、識別関数に基づいて、各単位画素が重送か否かを判定する
ことを特徴とする請求項記載の重送検知装置。
【請求項3】
前記識別関数は、正券の一枚券の透過画像データ及び反射画像データに基づく一枚券データと、当該正券の二枚券の透過出力データ及び反射出力データに基づく二枚券データとを用いて機械学習された関数に基づくものである
ことを特徴とする請求項記載の重送検知装置。
【請求項4】
前記二枚券データを前記機械学習された関数に入力した結果得られた出力値の分布の平均及び標準偏差をそれぞれμ及びσで表した時、
前記識別関数は、μ+k×σ(kは、1以上、3以下の係数を表す)の位置を通る
ことを特徴とする請求項記載の重送検知装置。
【請求項5】
前記受光部は、同一の受光素子にて前記透過光及び前記反射光を受光する
ことを特徴とする請求項1~のいずれかに記載の重送検知装置。
【請求項6】
前記透過光及び前記反射光は、前記光源から照射された同一波長に光に基づく光である
ことを特徴とする請求項1~のいずれかに記載の重送検知装置。
【請求項7】
光源から照射されて紙葉類を透過した透過光を受光した受光部から前記透過光に係る出力データである透過出力データを取得するステップと、
前記光源から照射されて紙葉類で反射した反射光を受光した前記受光部から前記反射光に係る出力データである反射出力データを取得するステップと、
前記透過出力データ及び前記反射出力データに基づいて、紙葉類が重送しているか否かを判定する判定ステップと、
を備え
前記受光部は、複数の受光画素を含み、
前記透過出力データは、前記複数の受光画素の出力データを含む透過画像データであり、
前記反射出力データは、前記複数の受光画素の出力データを含む反射画像データであり、
前記判定ステップは、前記透過画像データ及び前記反射画像データに基づいて、単位画素毎に重送か否かを判定し、当該判定の結果に基づいて、紙葉類が重送しているか否かを判定するものであり、注目する単位画素が重送であると判定され、かつその注目する単位画素の周囲に重送と判定された単位画素が所定数より多く存在する場合に、その注目する単位画素が重送であると判定する
ことを特徴とする重送検知方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、重送検知装置、重送検知方法及び重送検知プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、特許文献1には、搬送部を挟んで配置される発光素子と受光素子とを有する光学式の重送検知センサを設け、発光素子の発光中の受光素子の受光量の低下により、一枚の紙幣が搬送されているか、二枚の紙幣が重なって搬送されているか、三枚以上の紙幣が重なって搬送されているかを検知する手法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許第6455999号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、汚損券においては、例えば、一枚であっても当該紙幣を透過する光量は、汚損券ではない紙幣に比べて減少する。このため、紙幣を透過する光量を用いるのみでは、二枚以上の紙幣が重なった状態で搬送される重送が発生しているかを正確に検知することは困難である。
【0005】
本発明は、上記現状に鑑みてなされたものであり、より正確に紙葉類の重送を検知できる重送検知装置、重送検知方法及び重送検知プログラムを提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、(1)本開示の第1の態様に係る重送検知装置は、紙葉類に光を照射する光源と、紙葉類を透過した透過光と、紙葉類で反射した反射光とを受光する受光部と、前記受光部から、前記透過光に係る出力データである透過出力データと、前記反射光に係る出力データである反射出力データとを取得する制御部と、を備え、前記制御部は、前記透過出力データ及び前記反射出力データに基づいて、紙葉類が重送しているか否かを判定する。
【0007】
(2)上記(1)に記載の重送検知装置において、前記受光部は、複数の受光画素を含んでもよく、前記透過出力データは、前記複数の受光画素の出力データを含む透過画像データであってもよく、前記反射出力データは、前記複数の受光画素の出力データを含む反射画像データであってもよく、前記制御部は、前記透過画像データ及び前記反射画像データに基づいて、単位画素毎に重送か否かを判定してもよく、当該判定の結果に基づいて、紙葉類が重送しているか否かを判定してもよい。
【0008】
(3)上記(2)に記載の重送検知装置において、前記制御部は、注目する単位画素が重送であると判定され、かつその注目する単位画素の周囲に重送と判定された単位画素が所定数より多く存在する場合に、その注目する単位画素が重送であると判定してもよい。
【0009】
(4)上記(2)又は(3)に記載の重送検知装置において、前記制御部は、識別関数に基づいて、各単位画素が重送か否かを判定してもよい。
【0010】
(5)上記(4)に記載の重送検知装置において、前記識別関数は、正券の一枚券の透過画像データ及び反射画像データに基づく一枚券データと、当該正券の二枚券の透過出力データ及び反射出力データに基づく二枚券データとを用いて機械学習された関数に基づくものであってもよい。
【0011】
(6)上記(5)に記載の重送検知装置において、前記二枚券データを前記機械学習された関数に入力した結果得られた出力値の分布の平均及び標準偏差をそれぞれμ及びσで表した時、前記識別関数は、μ+k×σ(kは、1以上、3以下の係数を表す)の位置を通ってもよい。
【0012】
(7)上記(1)~(6)のいずれかに記載の重送検知装置において、前記受光部は、同一の受光素子にて前記透過光及び前記反射光を受光してもよい。
【0013】
(8)上記(1)~(7)のいずれかに記載の重送検知装置において、前記透過光及び前記反射光は、前記光源から照射された同一波長に光に基づく光であってもよい。
【0014】
(9)本開示の第2の態様に係る重送検知方法は、光源から照射されて紙葉類を透過した透過光を受光した受光部から前記透過光に係る出力データである透過出力データを取得するステップ(A)と、前記光源から照射されて紙葉類で反射した反射光を受光した前記受光部から前記反射光に係る出力データである反射出力データを取得するステップ(B)と、前記透過出力データ及び前記反射出力データに基づいて、紙葉類が重送しているか否かを判定するステップ(C)と、を備える。
【0015】
(10)上記(9)に記載の重送検知方法において、前記受光部は、複数の受光画素を含んでもよく、前記透過出力データは、前記複数の受光画素の出力データを含む透過画像データであってもよく、前記反射出力データは、前記複数の受光画素の出力データを含む反射画像データであってもよく、前記ステップ(C)は、前記透過画像データ及び前記反射画像データに基づいて、単位画素毎に重送か否かを判定するステップ(C1)と、当該判定の結果に基づいて、紙葉類が重送しているか否かを判定するステップ(C2)と、を含んでもよい。
【0016】
(11)上記(10)に記載の重送検知方法において、前記ステップ(C1)は、注目する単位画素が重送であると判定され、かつその注目する単位画素の周囲に重送と判定された単位画素が所定数より多く存在する場合に、その注目する単位画素が重送であると判定してもよい。
【0017】
(12)上記(10)又は(11)に記載の重送検知方法において、前記ステップ(C1)は、識別関数に基づいて、各単位画素が重送か否かを判定してもよい。
【0018】
(13)上記(12)に記載の重送検知方法において、前記識別関数は、正券の一枚券の透過画像データ及び反射画像データに基づく一枚券データと、当該正券の二枚券の透過出力データ及び反射出力データに基づく二枚券データとを用いて機械学習された関数に基づくものであってもよい。
【0019】
(14)上記(13)に記載の重送検知方法において、前記二枚券データを前記機械学習された関数に入力した結果得られた出力値の分布の平均及び標準偏差をそれぞれμ及びσで表した時、前記識別関数は、μ+k×σ(kは、1以上、3以下の係数を表す)の位置を通ってもよい。
【0020】
(15)上記(9)~(14)のいずれかに記載の重送検知方法において、前記受光部は、同一の受光素子にて前記透過光及び前記反射光を受光してもよい。
【0021】
(16)上記(9)~(15)のいずれかに記載の重送検知方法において、前記透過光及び前記反射光は、前記光源から照射された同一波長に光に基づく光であってもよい。
【0022】
(17)本開示の第3の態様に係る重送検知プログラムは、重送検知装置を用いて重送を検知する重送検知プログラムであって、光源から照射されて紙葉類を透過した透過光を受光した受光部から前記透過光に係る出力データである透過出力データを取得する処理(A)と、前記光源から照射されて紙葉類で反射した反射光を受光した前記受光部から前記反射光に係る出力データである反射出力データを取得する処理(B)と、前記透過出力データ及び前記反射出力データに基づいて、紙葉類が重送しているか否かを判定する処理(C)と、を重送検知装置に実行させる。
【0023】
(18)上記(17)に記載の重送検知プログラムにおいて、前記受光部は、複数の受光画素を含んでもよく、前記透過出力データは、前記複数の受光画素の出力データを含む透過画像データであってもよく、前記反射出力データは、前記複数の受光画素の出力データを含む反射画像データであってもよく、前記処理(C)は、前記透過画像データ及び前記反射画像データに基づいて、単位画素毎に重送か否かを判定する処理(C1)と、当該判定の結果に基づいて、紙葉類が重送しているか否かを判定する処理(C2)と、を含んでもよい。
【0024】
(19)上記(18)に記載の重送検知プログラムにおいて、前記処理(C1)では、注目する単位画素が重送であると判定され、かつその注目する単位画素の周囲に重送と判定された単位画素が所定数より多く存在する場合に、その注目する単位画素が重送であると判定してもよい。
【0025】
(20)上記(18)又は(19)に記載の重送検知プログラムにおいて、前記処理(C1)では、識別関数に基づいて、各単位画素が重送か否かを判定してもよい。
【0026】
(21)上記(20)に記載の重送検知プログラムにおいて、前記識別関数は、正券の一枚券の透過画像データ及び反射画像データに基づく一枚券データと、当該正券の二枚券の透過出力データ及び反射出力データに基づく二枚券データとを用いて機械学習された関数に基づくものであってもよい。
【0027】
(22)上記(21)に記載の重送検知プログラムにおいて、前記二枚券データを前記機械学習された関数に入力した結果得られた出力値の分布の平均及び標準偏差をそれぞれμ及びσで表した時、前記識別関数は、μ+k×σ(kは、1以上、3以下の係数を表す)の位置を通ってもよい。
【0028】
(23)上記(17)~(22)のいずれかに記載の重送検知プログラムにおいて、前記受光部は、同一の受光素子にて前記透過光及び前記反射光を受光してもよい。
【0029】
(24)上記(17)~(23)のいずれかに記載の重送検知プログラムにおいて、前記透過光及び前記反射光は、前記光源から照射された同一波長に光に基づく光であってもよい。
【発明の効果】
【0030】
本開示によれば、より正確に紙葉類の重送を検知できる重送検知装置、重送検知方法及び重送検知プログラムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
図1】実施形態1に係る重送検知装置の構成の一例を説明する模式図であり、紙幣の搬送路を側方から見た図である。
図2】実施形態1に係る重送検知装置の構成の一例を説明する模式図であり、斜め方向から見た図である。
図3】実施形態1に係る重送検知装置の構成の一例を説明する模式図であり、紙幣の搬送路を上方から見た図である。
図4】実施形態1に係る重送検知装置の構成の一例を説明する模式図であり、紙幣の搬送路を側方から見た図である。
図5】紙幣全体の画像データを示す模式図である。
図6】実施形態1に係る重送検知装置の動作の一例を説明するフローチャートである。
図7】実施形態2に係る重送検知装置が搭載され得る紙葉類処理装置の一例の外観を示した斜視模式図である。
図8】実施形態2に係る重送検知装置の構成の一例を説明するブロック図である。
図9】実施形態2に係る重送検知装置が備える光学ラインセンサの構成の一例を説明する断面模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下、本開示に係る重送検知装置、重送検知方法及び重送検知プログラムの実施形態を、図面を参照しながら説明する。本開示の対象となる紙葉類としては、紙幣、小切手、商品券、手形、帳票、有価証券、カード状媒体等の様々な紙葉類が適用可能であるが、以下においては、紙幣を対象とする装置を例として、本開示を説明する。なお、重送検知プログラムは、重送検知装置に予め導入されてもよいし、コンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録して、又は、ネットワークを介して、操作者に提供されてもよい。また、以下の説明において、同一部分又は同様な機能を有する部分には同一の符号を異なる図面間で共通して適宜用い、その繰り返しの説明は適宜省略する。また、構造を説明する図面には、互いに直交するXYZ座標系を適宜示している。
【0033】
(実施形態1)
図1を用いて、本実施形態に係る重送検知装置の構成について説明する。図1は、本実施形態に係る重送検知装置の構成の一例を説明する模式図であり、紙幣の搬送路を側方から見た図である。図1に示すように、本実施形態に係る重送検知装置1は、紙幣BNに光を照射する光源11と、紙幣BNを透過した透過光と、紙幣BNで反射した反射光とを受光する受光部13と、受光部13から、受光部13が受光した透過光に係る出力データである透過出力データと、受光部13が受光した反射光に係る出力データである反射出力データとを取得する制御部20と、を備えており、例えば、紙幣を処理対象とする紙葉類処理装置に搭載して用いることができる。識別対象となる紙幣BNは、XY平面内をX方向に搬送されてもよい。
【0034】
光源11は、紙幣BNに光を照射する。光源11は、紙幣BNの一方の主面(以下、A面)と、紙幣BNの他方の主面(以下、B面)とにそれぞれ光を照射するものであり、図1に示すように、紙幣BNに対して受光部13と反対側に設けられた光源11aと、紙幣BNに対して受光部13と同じ側に設けられた光源11bと、を有していてもよい。光源11(11a)から紙幣BNのB面に照射されて紙幣BNを透過した透過光と、光源11(11b)から照射されて紙幣BNのA面で反射した反射光と、がそれぞれ受光部13に受光されてもよい。
【0035】
光源11が照射する光は、ピーク波長とその近傍の波長を含む波長帯域の光であってもよい。光源11から照射される光の種類(波長)は、特に限定されず、白色光、赤色光、緑色光、青色光等の可視光や、赤外光等が挙げられる。
【0036】
光源11a及び11bは、互いに異なる波長の光を照射してもよいし、同一波長の光(例えば、緑色光又は赤外光)を照射してもよい。後者の場合、光源11a及び11bは、異なるタイミングで同一波長に光を照射してもよい。より詳細には、光源11a及び光源11bからそれぞれ照射される同一波長の光の照射期間が互いに重なり合わなくてもよい。なお、ここで、「照射期間」とは、光の照射開始から照射終了までの期間を意味する。
【0037】
受光部13は、紙幣BNを透過した透過光と、紙幣BNで反射した反射光とを受光する。すなわち、光学センサとして機能し得る。受光部13は、光源11(11a)から紙幣BNのB面に照射されて紙幣BNを透過した透過光と、光源11(11b)から照射されて紙幣BNのA面で反射した反射光と、をそれぞれ受光してもよい。すなわち、受光部13は、光源11(11a)が光を照射する間、その光が紙幣BNのB面に照射されて紙幣BNを透過した透過光と、光源11(11b)が光を照射する間、その光が紙幣BNのA面で反射した光と、をそれぞれ受光してもよい。このとき、受光部13は、少なくとも、紙幣BNを透過した透過光の波長帯域と、紙幣BNで反射した反射光の波長帯域とに、感度をもつセンサとして機能し得る。受光部13は、受光した透過光の光量に応じた電気信号を出力データとして出力してもよいし、受光した反射光の光量に応じた電気信号を出力データとして出力してもよい。より詳細には、受光部13は、受光素子を備えてもよく、受光素子は、透過光を受光して入射光量に応じた電気信号に変換してもよく、反射光を受光して入射光量に応じた電気信号に変換してもよく、受光部13は、それらの電気信号を出力してもよい。なお、ここで、「光量」とは、入射光の放射強度及び入射時間に比例する物理量を意味する。
【0038】
受光部13は、同一の受光素子にて、紙幣BNを透過した透過光と紙幣BNで反射した反射光とを受光してもよい。これにより、紙幣BNのほぼ同じ位置で透過した光と反射した光に基づいて当該紙幣BNが重送しているか否かを判定することができるため、更に正確に紙幣BNの重送を検知することができる。
【0039】
受光部13によって受光される、紙幣BNを透過した透過光と紙幣BNで反射した反射光とは、光源11から照射された同一波長に光に基づく光であってもよい。例えば、受光部13によって受光される透過光及び反射光は、それぞれ、光源11a及び11bによって照射された同一波長の光が紙幣BNを透過及び反射した光であってもよい。これらの場合、受光部13は、紙幣BNを透過した透過光と紙幣BNで反射した反射光とを異なるタイミングで受光してもよい。より詳細には、透過光の受光期間と、反射光の受光期間とが互いに重なり合わなくてもよい。なお、ここで、「受光期間」とは、受光開始から受光終了までの期間を意味し、受光開始時は、受光素子の露光開始時であってもよいし、受光終了時は、受光素子の露光終了時であってもよい。
【0040】
図2は、本実施形態に係る重送検知装置の構成の一例を説明する模式図であり、斜め方向から見た図である。図2に示すように、光源11及び受光部13は、Y方向に延在する光学ラインセンサ14を構成していてもよい。この場合、Y方向は、光学ラインセンサ14の主走査方向に対応し、X方向は、光学ラインセンサ14の副走査方向に対応する。光源11(各光源11a、11b)は、Y方向に延びる直線状に光を照射してもよい。受光部13は、Y方向に一列に配列された複数の受光素子(受光画素)を備えていてもよく、リニアイメージセンサを構成していてもよい。
【0041】
また、光源11(各光源11a、11b)及び受光部13のY方向(主走査方向)の長さは、紙幣BNのY方向の長さよりも長くてもよい。そして、光源11(各光源11a、11b)が紙幣BNのY方向全体に直線状に光を照射し、受光部13が紙幣BNのY方向全体で透過又は反射した光を受光してもよい。すなわち、受光部13は、入射光量に応じた電気信号を、複数の受光素子(Y方向の位置)に対応する複数のチャンネル(列)にて出力してもよい。チャンネル(列)は、Y方向に順に受光素子に割り当てられた番号である。このとき、受光部13は、出力データとして、各チャンネルで同時に受光した光に係るデータであるラインデータを出力してもよい。紙幣BNをX方向(副走査方向)に搬送しながら、この光源11(11a、11b)による光の照射と受光部13による光の受光とを繰り返すことによって、紙幣BNのA面全体の反射光に係るデータを取得してもよい。
【0042】
図3は、本実施形態に係る重送検知装置の構成の一例を説明する模式図であり、紙幣の搬送路を上方から見た図である。図3に示すように、光源11(各光源11a、11b)は、導光体15と、導光体15の2つの端面15aにそれぞれ対向する発光素子17と、を備えていてもよく、導光体15を介して紙幣BNに光を照射してもよい。
【0043】
導光体15は、透明な棒状の光学部材であり、発光素子17からの光を導いて照射対象である紙幣BNに向けて直線状の光を照射するものであり、発光素子17から発せられる光を線状化する。
【0044】
発光素子17は、対向する端面15aに向けて発光する素子であり、例えば、LED(Light Emitting Diode)を用いることができる。なお、発光素子17は、対応する端面に対して複数設けられていてもよい。また、各導光体15に対して、発光素子17は、2つの端面15aのいずれか一方のみに対向して配置されていてもよい。
【0045】
受光部13の各受光画素は、互いに異なる複数の波長帯域の全域に感度をもつ受光素子を備えていてもよいし、互いに異なる波長帯域の光を選択的に受光する複数種の受光素子を備えていてもよい。前者の場合、光源11は、複数波長の光を順番に紙幣BNに照射し、各波長の光の照射タイミングに合わせて受光部13が当該波長の光を受光してもよい。後者の場合、光源11は、複数波長の光を同時に紙幣BNに照射し、受光部13が複数波長の光を複数種の受光素子にてそれぞれ受光してもよい。
【0046】
図4は、本実施形態に係る重送検知装置の構成の一例を説明する模式図であり、紙幣の搬送路を側方から見た図である。図4に示すように、受光部13は、光源11(11b)から照射されて紙幣BNのA面で反射した反射光と、光源11(11a)から照射されて紙幣BNのB面で反射した反射光と、をそれぞれ受光してもよい。受光部13は、紙幣BNに対して光源11bと同じ側に設けられた受光部13aと、紙幣BNに対して光源11aと同じ側に設けられた受光部13bと、を有していてもよい。受光部13aは、光源11(11a)が光を照射する間、その光が紙幣BNのB面に照射されて紙幣BNを透過した透過光と、光源11(11b)が光を照射する間、その光が紙幣BNのA面で反射した光と、をそれぞれ受光してもよい。受光部13bは、光源11(11a)が光を照射する間、その光が紙幣BNのB面で反射した光を受光してもよい。
【0047】
受光部13aによって受光される紙幣BNのA面で反射した反射光と、受光部13bによって受光される紙幣BNのB面で反射した反射光とは、同一波長に光に基づく光であってもよい。例えば、受光部13a及び13bによって受光される紙幣BNのA面及びB面で反射した反射光は、それぞれ、光源11b及び11aによって照射された同一波長の光が紙幣BNのA面及びB面で反射した光であってもよい。
【0048】
なお、光源11aは、紙幣BNを透過する透過光用の光源と、紙幣BNのB面で反射する反射光用の光源とをそれぞれ別々に有していてもよく、これらの光源が、紙幣BNの搬送方向に並んで配置されてもよい。
【0049】
また、図4に示した場合においても、図2及び図3に示したように、光源11及び受光部13は、Y方向に延在する光学ラインセンサ14を構成していてもよい。すなわち、受光部13bは、Y方向に一列に配列された複数の受光素子(受光画素)を備えていてもよく、リニアイメージセンサを構成していてもよい。また、受光部13bのY方向(主走査方向)の長さは、紙幣BNのY方向の長さよりも長くてもよい。そして、光源11aが紙幣BNのB面のY方向全体に直線状に光を照射し、受光部13bが紙幣BNのB面のY方向全体で反射した光を受光してもよい。すなわち、受光部13bは、入射光量に応じた電気信号を、複数の受光素子(Y方向の位置)に対応する複数のチャンネル(列)にて出力してもよい。このとき、受光部13bは、出力データとして、各チャンネルで同時に受光した光に係るデータであるラインデータを出力してもよい。紙幣BNをX方向(副走査方向)に搬送しながら、この光源11aによる光の照射と受光部13bによる光の受光とを繰り返すことによって、紙幣BNのB面全体の反射光に係るデータを取得してもよい。
【0050】
制御部20は、受光部13の出力データを取得する処理を行う。より詳細には、受光部13から、受光部13が受光した透過光に係る出力データである透過出力データと、受光部13が受光した反射光に係る出力データである反射出力データとを取得する。すなわち、受光部13が受光した透過光の光量に応じたデータ(透過出力データ)と、受光部13が受光した反射光の光量に応じたデータ(反射出力データ)とを取得する。制御部20が取得する受光部13の出力データは、デジタル化されたものであってもよい。また、制御部20は、反射出力データとして、紙幣BNのA面で反射した光に係る反射出力データと、紙幣BNのB面で反射した光に係る出力データとを取得してもよい。
【0051】
受光部13は、上述のように、複数の受光画素(受光素子)を備えていてもよく、この場合、制御部20は、透過出力データとして、複数の受光画素の出力データを含む透過画像データを取得してもよく、反射出力データとして、複数の受光画素の出力データを含む反射画像データを取得してもよい。透過画像データ及び反射画像データとは、それぞれ、紙幣BNを透過した光に基づく紙幣BNの画像データ、及び紙幣BNで反射した光に基づく紙幣BNの画像データである。また、制御部20は、透過画像データ及び反射画像データとして、紙幣BN全体の画像データをそれぞれ取得してもよい。すなわち、紙幣BN全体の透過画像データと、紙幣BN全体の反射画像データとを取得してもよい。更に、制御部20は、反射画像データとして、紙幣BNのA面(全体でもよい)の反射画像データと、紙幣BNのB面(全体でもよい)の反射画像データとを取得してもよい。
【0052】
図5は、紙幣全体の画像データを示す模式図である。紙幣BN全体の画像データ(透過画像データや反射画像データ)は、紙幣BN全体を撮像したデータ(二次元データ)であり、図5に示すように、Y方向(主走査方向)及びX方向(副走査方向)にマトリクス状に配列された複数の画素Pixから構成されてもよい。各画素Pixのアドレスは、Y方向の位置に対応する受光部13のチャンネル(列)と、X方向の位置に対応するライン(行)によって特定されてもよい。ライン(行)は、受光部13が順次出力するラインデータに順に割り当てられた番号である。
【0053】
制御部20は、重送検知装置1の各部を制御するものであってもよく、例えば、重送検知プログラムを含む、各種の処理を実現するためのプログラムと、該プログラムを実行するCPU(Central Processing Unit)と、該CPUによって制御される各種ハードウェア(例えばFPGA(Field Programmable Gate Array))等によって構成されてもよい。
【0054】
そして、制御部20は、受光部13から取得した透過出力データ及び反射出力データに基づいて、紙幣BNが重送しているか否かを判定する処理(以下、重送判定処理という場合がある)を行う。この重送判定処理では、透過出力データのみではなく、反射出力データに基づいて紙幣BNが重送しているか否かを判定するため、汚損券を、二枚以上重なって搬送される紙幣BNであると誤って検知する誤検知を低減できる。したがって、より正確に紙幣BNの重送を検知することができる。より詳細に説明すると、汚損券の一枚券と正券の二枚券とでは、受光部13の透過出力に大きな差はない可能性があるが、受光部13の反射出力には大きな差が生じるはずである。汚損券の一枚券では当該一枚券を透過せずに吸収される光成分が増加するが、正券の二枚券では当該二枚券を透過せずに反射する光成分が増加するためである。したがって、受光部13の透過出力と反射出力の関係性に着目することで、上述の誤検知の低減が可能である。そのため、受光部13から取得した透過出力データ及び反射出力データに基づいて紙幣BNが重送しているか否かを判定することによって、より正確に紙幣BNの重送を検知することができる。
【0055】
なお、汚損券の一枚券と汚損券の二枚券とでは、受光部13の反射出力に差が見られなくなる可能性があるが、汚損券の二枚券では正券の二枚券に比べて受光部13の透過出力がより低下するため、汚損券の二枚券は透過出力データ及び反射出力データに基づいて問題なく検知することが可能である。
【0056】
ここで、「重送」とは、二枚以上の紙葉類が重なった状態で搬送されることを意味する。すなわち、制御部20は、重送判定処理において、一枚の紙幣BNが搬送されているか、又は二枚以上の紙幣BNが重なった状態で搬送されているかを判定してもよい。なお、重送されている紙葉類において、二枚以上の紙葉類の重なり具合は特に限定されず、例えば、一枚券の部分が存在する状態で重なり合っていてもよいし(例えば、全ての紙葉類の輪郭が一致してもよい)、一枚券の部分が存在する状態で重なり合っていてもよい(例えば、二枚以上の紙葉類がずれて重なり合ってもよい)。
【0057】
制御部20は、重送判定処理において、透過画像データ及び反射画像データに基づいて、単位画素毎に重送か否かを判定する処理(以下、画素判定処理という場合がある)と、画素判定処理の結果に基づいて、紙幣BNが重送しているか否かを判定する処理(以下、評価処理という場合がある)とを行ってもよい。これにより、紙幣BNの模様等の影響を受けずに重送か否かを評価できる。したがって、紙幣BNの種類(金種)の確定前の段階であっても当該紙幣BNの重送を検知することができる。
【0058】
「単位画素」とは、画像データを構成する一画素、又は画像データを構成する所定数(ただし、2以上の整数)の連続する(隣接する)画素を意味する。ここで、「所定数の連続する画素」は、n行×n列(ただし、nは2以上の整数)の画素であってもよい。
【0059】
なお、画素判定処理にて制御部20が使用する透過画像データ及び反射画像データの解像度は、受光部13出力データの解像度と同じであってもよいし、異なっていてもよく、例えば、Y方向(主走査方向)及びX方向(副走査方向)において低くてもよい。
【0060】
上述のように、重送判定処理において、制御部20は、紙幣BNの画像データを構成する単位画素毎に、当該単位画素が、重送した紙幣BNの画像データの画素に相当するか否かを判定してもよい。
【0061】
以下、画素判定処理において、重送と判定された単位画素を「二枚画素」という場合があり、重送と判定されなかった単位画素を「1枚画素」という場合がある。
【0062】
制御部20は、画素判定処理において、紙幣BN全体の透過画像データと、紙幣BN全体の反射画像データとに基づいて、単位画素毎に重送か否かを判定してもよい。
【0063】
また、制御部20は、画素判定処理において、反射画像データとして、紙幣BNのA面の反射画像データと、紙幣BNのB面の反射画像データとを用いてもよく、紙幣BNのA面の反射画像データと、紙幣BNのB面の反射画像データとを合算したデータである両面反射画像データを用いてもよい。これにより、紙幣BNの模様等の影響をより受け難くすることが可能であるため、紙幣BNの種類(金種)の確定前の段階において当該紙幣BNの重送をより高精度に検知することができる。
【0064】
より具体的には、例えば、両面反射画像データとして、紙幣BNのA面の反射画像データの画素値と、紙幣BNのB面の反射画像データの画素値とを、対応する単位画素(アドレスが同じ単位画素)同士で合算したデータを用いてもよい。
【0065】
なお、単位画素が所定数の連続する画素である場合、単位画素の画素値は、例えば、所定数の連続する画素の画素値の平均値であってもよいし、所定数の連続する画素の画素値の積分値(合算値)であってもよい。
【0066】
ここで、「画素値」とは、当該画素の輝度情報(明暗の度合い又は濃度)を表し、所定の階調(例えば256階調)で表現することができる。
【0067】
また、制御部20は、画素判定処理において、透過画像データ及び反射画像データに加えて、透過画像データを反射画像データと乗算したデータである乗算データを用いて、単位画素毎に重送か否かを判定してもよい。これにより、二枚画素と一枚画素の分離性能を向上することができる。したがって、紙幣BNの重送の検知精度をより向上することが可能である。
【0068】
より具体的には、例えば、乗算データとして、透過画像データの画素値と、反射画像データの画素値とを、対応する単位画素(アドレスが同じ単位画素)同士で乗算したデータを用いてもよい。また、例えば、乗算データとして、透過画像データの画素値と、両面反射画像データの画素値とを、対応する単位画素(アドレスが同じ単位画素)同士で乗算したデータを用いてもよい。
【0069】
また、制御部20は、画素判定処理において、注目する単位画素が重送であると判定され(以下、この判定処理を第一判定処理という場合がある)、かつその注目する単位画素の周囲に重送と判定された単位画素が所定数より多く存在する場合に、その注目する単位画素が重送であると判定してもよい(以下、この判定処理を第二判定処理という場合がある)。紙幣BNが重送している箇所は、通常ある程度の面積をもっているため、上記構成によれば、ごく小さな領域(例えば1単位画素)が重送であると誤判定することを防止できる。この場合、制御部20は、画素判定処理(第二判定処理)において、注目する単位画素の周囲に重送と判定された単位画素が所定数より多く存在しない場合は、その注目する単位画素を重送でないと判定してもよい。
【0070】
より具体的には、例えば、制御部20は、3行×3列の単位画素の中心の単位画素を注目する単位画素(2,2)とし、第一判定処理において単位画素(2,2)が重送であると判定され、かつ第二判定処理において単位画素(2,2)の周囲の8つの単位画素のうちの所定数を超える単位画素が重送であると判定された場合に、単位画素(2,2)が重送であると判定し、第二判定処理において単位画素(2,2)の周囲の8つの単位画素のうちの所定数以下の単位画素が重送であると判定された場合に、単位画素(2,2)が重送でないと判定してもよい。ここで、所定数は、特に限定されず適宜設定可能であり、例えば、3又は4であってもよい。
【0071】
なお、第一判定処理は、後述する識別関数に基づいて実施してもよく、第二判定処理は、フィルタサイズがm×m(ただし、mは2以上の整数、例えば3)であり、かつカーネル値が全て1であるフィルタの畳み込み処理に基づいて実施してもよい。
【0072】
このように、制御部20は、画素判定処理において、まず、透過画像データ及び反射画像データに基づいて、単位画素毎に重送か否かを判定し、その後、重送であると判定された単位画素の連結性の確認を更に行い、所定の基準を満たす場合は当該単位画素をそのまま二枚画素と判定し、該基準を満たさない場合は当該単位画素を一枚画素と判定し直してもよい。
【0073】
また、制御部20は、画素判定処理(第一判定処理でもよい)において、識別関数に基づいて、各単位画素が重送か否かを判定してもよい。これにより、紙幣BNの種類(金種)に関係なく当該紙幣BNの重送を検知することができる。
【0074】
より具体的には、制御部20は、透過画像データ及び反射画像データを特徴量として識別関数に入力し、識別関数の出力に基づいて、各単位画素が重送か否かを判定してもよい。例えば、透過画像データの画素値x i,jと、反射画像データの画素値x i,jとを識別関数に入力してもよい。ここで、i及びjは、それぞれ、対象とする単位画素のライン(行)及びチャンネル(列)を示す番号である。
【0075】
また、識別関数に入力される反射画像データとして、両面反射画像データを用いてもよい。例えば、紙幣BNのA面の反射画像データの画素値xRA i,jと、紙幣BNのB面の反射画像データの画素値xRB i,jとを、対応する単位画素同士で合算した合算値(xRA i,j+xRB i,j)を識別関数に入力してもよい。
【0076】
また、識別関数に入力する特徴量として、乗算データを更に用いてもよい。すなわち、透過画像データ、反射画像データ及び乗算データを識別関数に入力してもよい。例えば、透過画像データの画素値x i,jと、反射画像データの画素値x i,jとを、対応する単位画素同士で乗算した値(x i,j×x i,j)を識別関数に更に入力してもよい。
【0077】
乗算データを更に用いる場合、反射画像データとして、両面反射画像データを用いてもよい。例えば、透過画像データの画素値x i,jと、反射画像データの合算値(xRA i,j+xRB i,j)とを、対応する単位画素同士で乗算した値(x i,j×(xRA i,j+xRB i,j))を識別関数に更に入力してもよい。
【0078】
識別関数は、正券の一枚券の透過画像データ及び反射画像データに基づく一枚券データと、当該正券の二枚券の透過出力データ及び反射出力データに基づく二枚券データとを用いて機械学習された関数に基づくものであってもよい。一般的に汚損券はある程度まとまった枚数を入手することが困難であるが、上記構成によれば、汚損券が充分な枚数確保できない状況であっても、正券に基づく教師データである一枚券データ及び二枚券データを用いて識別関数を生成することができる。
【0079】
なお、ここで、「一枚券データ」とは、単純に正券を一枚だけ搬送してそれぞれ採取した透過画像データ及び反射画像データを含むデータであり、「二枚券データ」は、正券を二枚重ねた状態で搬送してそれぞれ採取した透過画像データ及び反射画像データを含むデータである。二枚券データでは、紙が二枚になるため、もちろん光は透過し難くなり透過光の光量が減少する。透過光の光量が減少するということは反射光の光量は増加する。また、一枚券データ及び二枚券データにおいて、クリアウィンドウ(透明部)やホログラム等に該当する画素は外れ値として除外してもよい。更に、一枚券データにおいて、極端に透過出力の低い画素は除外してもよい。一枚券データは、正券の一枚券の透過画像データの画素値及び反射画像データの画素値(ただし、アドレスが同じ単位画素同士の画素値)を二変数とする二次元データであってもよく、二枚券データは、正券の二枚券の透過画像データの画素値及び反射画像データの画素値(ただし、アドレスが同じ単位画素同士の画素値)を二変数とする二次元データであってもよい。
【0080】
識別関数の生成には、例えば、判別分析やサポートベクターマシン、ニューラルネットワーク等を用いることができる。
【0081】
識別関数に入力する特徴量として両面反射画像データを用いる場合は、機械学習においても、一枚券データ及び二枚券データの反射画像データとして、正券の一枚券のA面の反射画像データの画素値と、当該一枚券のB面の反射画像データの画素値とを、対応する単位画素同士で合算した合算値からなるデータとともに、当該正券の二枚券のA面の反射画像データの画素値と、当該二枚券のB面の反射画像データの画素値を、対応する単位画素同士で合算した合算値からなるデータを用いてもよい。
【0082】
また、識別関数に入力する特徴量として乗算データを更に用いる場合は、機械学習においても、一枚券データ及び二枚券データは、正券の一枚券の透過画像データの画素値と、当該一枚券の反射画像データ(両面反射画像データでもよい)の画素値とを、対応する単位画素同士で乗算した値からなるデータとともに、正券の二枚券の透過画像データの画素値と、当該二枚券の反射画像データ(両面反射画像データでもよい)の画素値とを、対応する単位画素同士で乗算した値からなるデータを含んでいてもよい。
【0083】
上述のように、一枚券データ及び二枚券データを用いて機械学習によって得られた関数は、正券の一枚券とその二枚券を最も良く分離する関数であるが、本実施形態では汚損券と正券の二枚券とを分離することが求められる。そのため、正券の二枚券を分離するぎりぎりの関数を算出して識別関数として用いてもよい。すなわち、二枚券データの分布において、一枚券データ側の分布のみ考慮し、一枚券データから遠い方の分布を考慮しなくてもよい。
【0084】
より具体的には、二枚券データを機械学習された関数に入力した結果得られた出力値の分布の平均及び及び標準偏差をそれぞれμ及びσで表した時、μ+k×σ(kは、1以上、3以下の係数を表す)の位置を通るように、機械学習された関数の常数項wを変更してもよい。すなわち、識別関数は、μ+k×σの位置を通るものであってもよく、μ+k×σの位置を通るように、機械学習された関数の常数項wが変更されたものであってもよい。これにより、識別関数が一枚券データに比べて二枚券データにより近接することになるため、一枚券を二枚券と誤検知する可能性を低減することができる。kは、1.5以上、2.5以下であってもよく、例えば2であってもよい。二枚券データがいかなる分布であってもX-μ≧2σ(Xは、二枚券データを機械学習された関数に入力した結果得られた出力値)のとき、80%のデータが含まれるため、k=2であれば二枚券の検知に充分である。
【0085】
制御部20は、評価処理において、画素判定処理で判定された二枚画素の総和を算出し、算出した総和を所定の閾値と比較してもよい。そして、当該比較の結果に基づいて、紙幣BNが重送しているか否かを判定してもよい。例えば、二枚画素の総和が閾値を超える場合は、紙幣BNが重送していると判定し、二枚画素の総和が閾値を超えない場合は、紙幣BNが重送していない(1枚の紙幣BNが搬送されている)と判定してもよい。
【0086】
より具体的には、制御部20は、重送判定処理において、下記式(1)~(6)に基づいて、紙幣BNが重送しているか否かを判定してもよい。
【0087】
【数1】
【0088】
式(1)において、Nは閾値であり、λがN以下であれば、紙幣BNが重送していないと判定し、λがNを超えれば、紙幣BNが重送していると判定する。
【0089】
式(1)及び(2)において、λは評価値であり、全ライン(LN)及び全チャンネル(CH)の単位画素のP’i,jの総和を算出する。
【0090】
式(2)及び(3)において、P’i,jは二枚画素の連結性に係る畳み込み処理の結果であり、nは畳み込み処理の結果の閾値であり、畳み込み処理の結果がnを超えれば、式(4)の結果通り、そのまま二枚画素と判定し、畳み込み処理の結果がnを超えなければ、式(4)の結果を採用せずに一枚画素と判定し直す。
【0091】
式(3)及び(4)において、Pi,jは識別関数ω・φ(xi,j)の結果であり、cは識別関数の出力である分類スコアの閾値であり、分類スコアがcを超えれば二枚画素と判定し、分類スコアがcを超えなければ一枚画素と判定する。
【0092】
識別関数は、ω・φ(xi,j)で表され、式(6)に示されるように2次元の特徴量が入力される。式(5)において、ω(w~w)は、機械学習の結果得られた係数ベクトル(重み)である。ただし、wは、識別関数が二枚券データの分布の平均+2σの位置を通るように、機械学習の結果得られた関数の常数項を変更することによって得られた値である。一方、w~wは、機械学習の結果得られた値そのものである。式(6)で表されるφ(xi,j)は単位画素i,j(i及びjは、それぞれ、対象とする単位画素のライン(行)及びチャンネル(列)を示す番号)の特徴量ベクトルである。式(6)において、x i,jは、対象単位画素i,jにおける透過画像データに係る画素値であり、x i,jは、対象単位画素i,jにおける反射画像データに係る画素値である。ここでは、識別関数は、線形識別式で表される。
【0093】
制御部20は、重送判定処理において、上記式(6)の代わりに下記式(6’)を用いてもよい。式(6’)において、xRA i,jは、それぞれ、対象単位画素i,jにおける紙幣BNのA面の反射画像データに係る画素値であり、xRB i,jは、それぞれ、対象単位画素i,jにおける紙幣BNのB面の反射画像データに係る画素値である。この場合、識別関数は、両面反射画像データが特徴量として識別関数に入力され、線形識別式で表される。
【0094】
【数2】
【0095】
また、制御部20は、重送判定処理において、上記式(5)及び(6)の代わりに下記式(5’)及び(6’’)を用いてもよい。式(5’)において、ω(w~w)は、式(5)と同様に機械学習の結果得られた係数ベクトル(重み)である(ただし、wは機械学習の結果得られた関数の常数項を変更したもの)。この場合、識別関数は、乗算データを含む3次元の特徴量が入力され、線形識別式を非線形モデルに拡張した式で表される。
【0096】
【数3】
【0097】
また、制御部20は、重送判定処理において、上記式(5)及び(6)の代わりに上記式(5’)及び下記式(6’’’)を用いてもよい。この場合、識別関数は、両面反射画像データ及び乗算データを含む3次元の特徴量が入力され、線形識別式を非線形モデルに拡張した式で表される。
【0098】
【数4】
【0099】
制御部20は、受光部13から取得した透過出力データ及び/又は反射出力データを利用して、紙幣BNを識別する処理(以下、識別処理という場合がある)を行ってもよい。識別処理の内容は特に限定されず、例えば、紙幣の場合は金種の識別、紙幣の真偽や正損の判定、紙幣の外形情報や通過位置情報の取得、紙幣に印字された数字、文字等の記号の読み取りといった各種機能が挙げられる。
【0100】
次に、図6を用いて、本実施形態に係る重送検知装置1の動作について説明する。図6は、本実施形態に係る重送検知装置の動作の一例を説明するフローチャートである。
【0101】
図6に示すように、まず、制御部20が、光源11(11a)から照射されて紙幣BNを透過した光を受光した受光部13(13a)から透過出力データを取得する(ステップS11)。
【0102】
次に、制御部20が、光源11(11a、11b)から照射されて紙幣BNで反射した光を受光した受光部13(13a、13a)から反射出力データを取得する(ステップS12)。
【0103】
なお、ステップS11とステップS12のタイミングは、反対であっても同時であってもよい。
【0104】
その後、制御部20が、ステップS11及びS12で取得した透過出力データ及び反射出力データに基づいて、紙幣BNが重送しているか否かを判定する重送判定処理を行い(ステップS13)、重送検知装置1の動作が終了する。
【0105】
(実施形態2)
図7を用いて、本実施形態に係る重送検知装置が搭載され得る紙葉類処理装置の構成について説明する。図7は、本実施形態に係る重送検知装置が搭載され得る紙葉類処理装置の一例の外観を示した斜視模式図である。本実施形態に係る重送検知装置が搭載される紙葉類処理装置は、例えば、図7に示す構成を有するものであってもよい。図7に示す紙葉類処理装置300は、紙幣の重送検知を行うとともに、紙幣の識別処理を行う本実施形態に係る重送検知装置(図7では図示せず)と、処理対象の複数の紙幣が積層状態で載置されるホッパ301と、リジェクト紙幣が排出される2つのリジェクト部302と、オペレータからの指示を入力するための操作部303と、筐体310内で金種、真偽及び正損が識別された紙幣を分類して集積するための4つの集積部306a~306dと、紙幣の識別計数結果や各集積部306a~306dの集積状況等の情報を表示するための表示部305とを備える。
【0106】
次に、図8を用いて、本実施形態に係る重送検知装置の構成について説明する。図8は、本実施形態に係る重送検知装置の構成の一例を説明するブロック図である。図8に示すように、本実施形態に係る重送検知装置100は、光学ラインセンサ110、120、制御部120、記憶部130及び搬送部140を備えている。
【0107】
光学ラインセンサ110、120は、搬送される紙幣の各種の光学特性を検出するものであり、紙幣の搬送路に沿って、光源及び受光部を備えていてもよい。光源は、紙幣に複数波長の光を照射し、受光部は、同じ光学ラインセンサの光源から照射されて紙幣で反射された複数波長の光を受光し、複数波長の光に係る反射出力データを波長毎に出力する。また、光学ラインセンサ110の受光部は、光学ラインセンサ120の光源から照射されて紙幣を透過した複数波長の光を受光し、複数波長の光に係る透過出力データを波長毎に出力する。
【0108】
制御部120は、記憶部130に記憶された各種の処理を実現するためのプログラム(重送検知プログラムを含む)と、当該プログラムを実行するCPUと、当該CPUによって制御される各種ハードウェア(例えばFPGA)等によって構成されている。制御部120は、記憶部130に記憶されたプログラムに従って、重送検知装置100の各部を制御する。また、制御部120は、記憶部130に記憶されたプログラムにより、受光部からの透過出力データ及び反射出力データの取得処理、取得した透過出力データ及び反射出力データに基づく重送判定処理、取得した透過出力データ及び/又は反射出力データに基づく識別処理等の処理を行う機能を有している。制御部120によるこれらの処理は、実施形態1で説明した制御部20による処理と同様であるため詳細な説明は省略する。
【0109】
制御部120は、識別処理として、紙幣の少なくとも金種及び真偽を識別する処理を行う。制御部120は、紙幣の正損を判定する機能を有してもよい。その場合、制御部120は、紙幣の汚れ、折れ、破れ等を検出することにより、紙幣を、市場で再利用できる正券及び市場流通に適さない損券のいずれとして処理するかを判定する機能を有する。
【0110】
記憶部130は、半導体メモリやハードディスク等の不揮発性及び/又は揮発性の記憶装置から構成されており、重送検知装置100を制御するための各種プログラムと各種データとを記憶している。
【0111】
搬送部140は、複数のローラやベルト等を回転駆動して、重送検知装置100内に設けた搬送路に沿って紙幣を1枚ずつ搬送する。
【0112】
次に、図9を用いて、光学ラインセンサ110、120の構成について説明する。図9は、本実施形態に係る重送検知装置が備える光学ラインセンサの構成の一例を説明する断面模式図である。図9に示すように、重送検知装置100は、互いに対向配置された光学ラインセンサ110及び120を備えている。光学ラインセンサ110及び120は、各々、本実施形態に係る紙葉類処理装置の搬送路311に対向するコンタクトイメージセンサから構成されており、Z方向において離間した光学ラインセンサ110及び120の間には、紙幣BNがXY平面内をX方向に搬送される隙間が形成されており、この隙間は本実施形態に係る紙幣処理装置の搬送路311の一部を構成する。光学ラインセンサ110及び120は、それぞれ、搬送路311の上側(+Z方向)及び下側(-Z方向)に位置している。Y方向が光学ラインセンサ110、120の主走査方向に対応し、X方向が光学ラインセンサ110、120の副走査方向に対応している。
【0113】
図9に示すように、各光学ラインセンサ110、120は、2つの反射用の光源111b、集光レンズ112、受光部113及び基板114を備えている。反射用の光源111bは、例えば、主走査方向に延在する導光体と、導光体の少なくとも一方の端面に対向し、複数波長の光をそれぞれ照射する複数種の発光素子とを備えている。光学ラインセンサ110の光源111bと、光学ラインセンサ120の光源111bとは、それぞれ、紙幣BNのA面とB面とに、複数波長の光を順次照射する。光源111bは、複数波長の光として、例えばピーク波長が互いに異なる光を照射する。具体的には、例えば、赤外光(ピーク波長が互いに異なる複数種の赤外光でもよい)、赤色光、緑色光、青色光、白色光、紫外光等を用いることができる。集光レンズ112は、例えば、主走査方向に複数のロッドレンズが配列されたロッドレンズアレイから構成され、反射用の光源111bから出射され、紙幣BNのA面又はB面で反射された光を集光する。受光部113は、例えば、主走査方向に複数の受光素子(受光画素)が配列されたリニアイメージセンサを備えており、各受光素子は、光源111bが照射する複数波長の光の波長帯域に感度をもつ。各受光素子には、例えば、少なくとも可視領域から波長1100nmの赤外領域まで感度をもつ、シリコン(Si)フォトダイオードを用いることができる。各受光素子は、基板114上に実装されており、集光レンズ112によって集光された光を受光して、入射光量に応じた電気信号に変換して基板114に出力する。各受光素子は、光源111bによる各波長の光の照射タイミングに合わせて当該波長の光を受光する。基板114は、例えば、受光素子を駆動するための駆動回路と、受光素子からの信号を処理して出力するための信号処理回路とを含んでいる。基板114は、受光部113(各受光素子)の出力信号を増幅処理した後、デジタルデータにA/D変換した上で出力する。
【0114】
光学ラインセンサ120は、1つの透過用の光源111aを更に備えている。光源111aは、光学ラインセンサ110の集光レンズ112の光軸上に配置されており、光源111aから出射された光の一部は、紙幣BNを透過し、光学ラインセンサ110の集光レンズ112に集光されて受光部113で検出される。光源111aは、紙幣BNのB面に、波長帯域が互いに異なる光を順次、又は同時に照射する。光源111aは、複数波長の光として、例えばピーク波長が互いに異なる光を照射する。具体的には、例えば、赤外光、緑色光等を用いることができる。
【0115】
なお、「複数波長の光」とは、波長帯域が互いに異なる光であり、互いにピーク波長が異なっていてもよい。複数波長の光は、例えば、可視光については色が互いに異なる光であってもよく、赤外光及び紫外光については、波長帯域の一部のみが互いに重なる光又は波長帯域が互いに重ならない光であってもよい。
【0116】
本実施形態では、制御部120が実施形態1で説明した制御部20と同様の処理を行うことから、実施形態1と同様に、紙幣の識別処理を行うことが可能であるとともに、より正確に紙幣の重送を検知することが可能である。また、紙幣の厚みを検知する機械式の厚検センサを用いずとも光学ラインセンサ110、120のみで紙幣の重送を検知することが可能であるため、コスト削減と、紙幣の搬送品質の向上とに貢献することができる。機械式の厚検センサを用いた重送検知方法は、信頼性は高いが、コストが高く、紙幣を押さえつける必要があり紙幣の搬送品質に悪影響を及ぼす。
【0117】
なお、上記実施形態では、透過出力と反射出力の関係から紙幣の重送を検知する場合について説明したが、同様の思想に基づいて透過出力と反射出力の関係が異常な画素を検知することも可能である。具体的には、例えば、特殊なスレッド、油染み、クリアウィンドウ、ホログラム等に該当する画素を検知してもよい。
【0118】
以上、図面を参照しながら実施形態を説明したが、本開示は、上記実施形態に限定されるものではない。また、各実施形態の構成は、本開示の要旨を逸脱しない範囲において適宜組み合わされてもよいし、変更されてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0119】
以上のように、本開示は、紙葉類の重送を検知するのに有用な技術である。
【符号の説明】
【0120】
1、100:重送検知装置
11、11a、11b、111a、111b:光源
13、13a、13b、113:受光部
14、110、120:光学ラインセンサ
15:導光体
15a:導光体の端面
17:発光素子
20、120:制御部
112:集光レンズ
114:基板
130:記憶部
140:搬送部
300:紙幣処理装置
301:ホッパ
302:リジェクト部
303:操作部
305:表示部
306a~306d:集積部
311:搬送路
BN:紙幣
Pix:画素

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9