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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-21
(45)【発行日】2024-07-01
(54)【発明の名称】二次電池用正極の製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01M 4/1391 20100101AFI20240624BHJP
   H01M 4/62 20060101ALI20240624BHJP
   H01M 4/505 20100101ALN20240624BHJP
   H01M 4/525 20100101ALN20240624BHJP
【FI】
H01M4/1391
H01M4/62 Z
H01M4/505
H01M4/525
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2021101752
(22)【出願日】2021-06-18
(65)【公開番号】P2023000753
(43)【公開日】2023-01-04
【審査請求日】2022-10-27
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】399107063
【氏名又は名称】プライムアースEVエナジー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100103894
【弁理士】
【氏名又は名称】家入 健
(72)【発明者】
【氏名】坂井 遼太郎
(72)【発明者】
【氏名】木庭 大輔
(72)【発明者】
【氏名】柴 貴子
【審査官】窪田 陸人
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-042579(JP,A)
【文献】特開2014-143108(JP,A)
【文献】特開2019-175721(JP,A)
【文献】特開2004-253174(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 4/00-4/62
JSTPlus(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
リチウム遷移金属酸化物で構成される略球殻状又は略楕円球殻状の中空活物質粒子を形成するステップと、
前記中空活物質粒子を粉砕して、前記中空活物質粒子の一部が切断面により切り取られた略球冠状に形成される正極活物質を形成するステップと、
集電体上に前記正極活物質及び導電材を含む正極合材層を形成するステップと、
を有し、
前記正極活物質は、一方向に突出する略球冠状の凸曲面と、前記一方向側の反対側に存在するとともに前記一方向に窪む略球冠状の凹曲面と、を有する二次電池用正極の製造方法。
【請求項2】
前記正極活物質を形成するステップでは、
前記正極活物質の吸油量とBET比表面積との少なくとも一方を測定した結果が、前記中空活物質粒子について測定した結果と比べて大きい場合に、前記正極合材層を形成するステップに進む請求項に記載の二次電池用正極の製造方法。
【請求項3】
前記正極合材層を形成するステップは、
前記正極活物質、前記導電材、及び溶媒を所定の割合で含むペーストを作製するステップを含み、
前記ペーストの粘度を測定した結果が、前記中空活物質粒子、前記導電材、及び前記溶媒を前記所定の割合で含むペーストの粘度を測定した結果と比べて小さい場合に、前記集電体上に前記正極活物質、前記導電材、及び前記溶媒を含むペーストを塗工して前記正極合材層を形成する請求項又はに記載の二次電池用正極の製造方法。
【請求項4】
前記導電材は、カーボンナノチューブである請求項1から3のいずれか1項に記載の二次電池用正極の製造方法。
【請求項5】
前記凸曲面の曲率中心から前記凸曲面における前記切断面側の先端に向かう方向と、前記凸曲面の曲率中心を通る前記凸曲面の長軸と、のなす角度が±15°以内である請求項1から4のいずれか1項に記載の二次電池用正極の製造方法。
【請求項6】
前記中空活物質粒子の内面の曲率中心を通る短軸の長さに対する長軸の長さの比が1.0以上1.5未満であり、
前記凹曲面は、前記内面の長軸に沿う前記切断面により切り取られた略球冠状に形成される請求項1から5のいずれか1項に記載の二次電池用正極の製造方法。
【請求項7】
前記中空活物質粒子の外面の曲率中心を通る短軸の長さに対する長軸の長さの比が1.0以上1.8未満であり、
前記凸曲面は、前記外面の長軸に沿う前記切断面により切り取られた略球冠状に形成される請求項1から6のいずれか1項に記載の二次電池用正極の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、二次電池用正極、及び二次電池用正極の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
二次電池は、パソコンや携帯端末等のいわゆるポータブル電源や車両駆動用電源として広く用いられている。二次電池の中でも、特に、軽量で高エネルギー密度が得られるリチウムイオン二次電池は、電気自動車、ハイブリッド自動車、プラグインハイブリッド自動車等の車両の駆動用高出力電源として好適に用いられている。リチウムイオン二次電池は、正極及び負極の間を、電解質中のリチウムイオン(電荷担体)が移動することで充放電可能な二次電池である。
【0003】
このような二次電池では、高入出力化を実現するために、電荷担体の挿入脱離をスムーズに行なうことができる二次電池用正極(以下、単に「正極」と称する場合がある)が求められる。
【0004】
特許文献1には、粒子の中心から表面の方向に放射状に配向された柱状の一次粒子が凝集した単層構造の二次粒子を含み、前記二次粒子は、シェルの形状を有しており、前記一次粒子は、下記化学式1のNi‐Co‐Mnの複合金属水酸化物を含む、二次電池用正極活物質の前駆体およびこれを用いて製造した正極活物質が開示されている。
[化学式1]
Ni1-(x+y+z)CoMyMn(OH)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特表2018-536972号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載の技術では、正極活物質の粒子同士の重なり等により電気化学反応に寄与する反応面積が減少した場合、正極活物質と電解液との界面における電荷担体の挿入脱離が妨げられて、二次電池の入出力特性が良好にならないという問題がある。
【0007】
本発明は、このような問題を解決するためになされたものであり、二次電池の入出力特性を向上する二次電池用正極、及び二次電池用正極の製造方法を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
一実施の形態にかかる二次電池用正極は、集電体と、集電体上に形成され、正極活物質及び導電材を含む正極合材層と、を有し、正極活物質は、リチウム遷移金属酸化物で構成される略球殻状又は略楕円球殻状の中空活物質粒子の一部が切断面により切り取られた略球冠状に形成され、一方向に突出する略球冠状の凸曲面と、一方向側の反対側に存在するとともに一方向に窪む略球冠状の凹曲面と、を有する。
【0009】
一実施の形態にかかる二次電池用正極の製造方法は、リチウム遷移金属酸化物で構成される略球殻状又は略楕円球殻状の中空活物質粒子を形成するステップと、中空活物質粒子を粉砕して、中空活物質粒子の一部が切断面により切り取られた略球冠状に形成される正極活物質を形成するステップと、集電体上に正極活物質及び導電材を含む正極合材層を形成するステップと、を有し、正極活物質は、一方向に突出する略球冠状の凸曲面と、一方向側の反対側に存在するとともに一方向に窪む略球冠状の凹曲面と、を有する。
【発明の効果】
【0010】
本発明により、二次電池の入出力特性を向上する二次電池用正極、及び二次電池用正極の製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】実施の形態1にかかる二次電池用正極を示す図である。
図2】実施の形態1にかかる二次電池用正極の製造方法を示すフローチャートである。
図3図1に示す正極に含まれる球冠状活物質粒子の一例を示す図である。
図4図1に示す正極に含まれる球冠状活物質粒子の他の例を示す図である。
図5図1に示す正極に含まれる球冠状活物質粒子の他の例を示す図である。
図6】角度θが異なる活物質粒子をそれぞれ含む各種正極を示す図である。
図7図6に示す各種正極の液伝導度を示すグラフである。
図8図6に示す各種正極の固体伝導度を示すグラフである。
図9図6に示す各種正極の有効反応面積を示すグラフである。
図10】実施例及び比較例を説明する表である。
図11】反応面積の評価に用いた各種正極を説明する図である。
図12図11に示す各種正極について活物質粒子の反応面積を評価した結果を示すグラフである。
図13】中空活物質粒子の反応面積について説明する図である。
図14】球冠状活物質粒子の反応面積について説明する図である。
図15】空隙率の評価に用いた各種正極を説明する図である。
図16図15に示す各種正極について空隙率を評価した結果を示すグラフである。
図17】比較例の二次電池用正極を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
実施の形態1
以下、図面を参照して本発明の実施の形態について説明する。また、説明を明確にするため、以下の記載及び図面は、適宜、簡略化されている。以下の説明において同一又は同等の要素には、同一の符号を付し、重複する説明は省略する。
【0013】
ここで、本実施形態における「短軸の長さ」及び「長軸の長さ」は、特に断りがない場合、FIB-SEM測定により得られた3次元モデルに対する画像解析から、任意に選ばれる複数の活物質粒子の外側に配置される面又は内側に配置される面を用いて計測されるものである。活物質粒子の外側の面又は内側の面において、活物質粒子の曲率中心を通る最も短い径の平均値を「短軸の長さ」として求めることができる。また、活物質粒子の外側の面又は内側の面において、活物質粒子の曲率中心を通る最も長い径の平均値を「長軸の長さ」として求めることができる。さらに、活物質粒子の外側の面における「長軸の長さ」は、活物質粒子の「直径(粒径)」に相当する。
【0014】
また、本実施形態における「厚さ」は、特に断りがない場合、FIB-SEM測定により得られた3次元モデルに対する画像解析から、任意に選ばれる活物質粒子の断面において、活物質粒子の内側に配置される面の複数の位置から外側に配置される面への最短距離が計測されるものである。活物質粒子の内側の面の複数の位置で計測された当該最短距離の平均値を「厚さ」として求めることができる。
【0015】
例えば、活物質粒子が球冠状活物質粒子20である場合、外側に配置される面が凸曲面21であり、内側に配置される面が凹曲面22である。活物質粒子が中空活物質粒子120である場合、外側に配置される面が外面121であり、内側に配置される面が内面122である。
【0016】
なお、FIB-SEMとは、集束イオンビーム(FIB;Focused Ion Beam)にて試料を加工し、当該試料の露出した断面を走査型電子顕微鏡(SEM;Scanning Electron Microscope)にて観察することを意味する。試料を加工する方法としては、例えば、適当な樹脂で固めた試料を、所望の断面で切断し、その断面を少しずつ削りながらSEM観察を行うとよい。
【0017】
FIB-SEMを用いた手法では、試料に対して、FIBによる断続的な加工とSEMによる観察とを繰り返し、得られたSEM像を3次元的に構築した3次元モデルを得ることによって、内部構造を含めた物質の構造を可視化することができる。
【0018】
以下、本実施形態にかかる二次電池用正極の好適な実施形態の一つとして、リチウムイオン二次電池用の正極に具体化して説明する。リチウムイオン二次電池は、電荷担体としてリチウムイオンを利用し、正極(正極板)と負極(負極板)との間における電荷の移動により充放電が実現される二次電池である。リチウムイオン二次電池は、例えば、電気自動車(EV)、ハイブリッド自動車(HV)、プラグインハイブリッド自動車(PHEV)等の車両の駆動用電源として用いられる。
【0019】
まず、図1を参照して、本実施形態にかかる二次電池用正極(正極1)の構成について説明する。図1は、実施の形態1にかかる二次電池用正極を示す図である。図1には、正極1の3次元モデルを示している。正極1は、集電体(正極集電体)と、正極集電体上に形成される正極合材層10と、を有する。
【0020】
正極集電体は、板状又は箔状に形成され、導電性の良好な金属により構成される。正極1に用いられる正極集電体には、例えば、アルミニウム、アルミニウム合金、ニッケル、チタン、ステンレス鋼等を用いることができる。
【0021】
正極合材層10は、少なくとも、正極活物質(球冠状活物質粒子20)と、導電材30と、を有する。正極合材層10は、その他に、分散剤及びバインダ等の添加剤を含んでもよい。
【0022】
導電材30は、正極合材層10中に導電パスを形成するための材料である。正極合材層10に適量の導電材30を混合することにより、正極1内部の電子伝導性を高めて、電池の充放電効率および入出力特性を向上させることができる。導電材30としては、例えば、各種カーボンブラック(例えば、アセチレンブラック、ケッチェンブラック)、炭素繊維(例えば、カーボンナノチューブ、カーボンナノファイバ)を初めとする炭素材料を用いることができる。
【0023】
図1には、導電材30としてアセチレンブラック(AB)を用いた正極合材層10aと、導電材30としてカーボンナノチューブ(CNT)を用いた正極合材層10bと、をそれぞれ例示し、正極合材層10a、10bにおける各導電材30の分布が図示されている。本実施形態においては、導電材30としてABを用いる場合、平均粒径20~50μmのABを用いることが好ましい。また、導電材30としてCNTを用いる場合。外形が5~30nm、アスペクト比が15~300のCNTを用いることが好ましい。
【0024】
分散剤としては、例えば、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリビニルブチラール(PVB)、ポリビニルピロリドン(PVP)、ポリアクリレート、ポリメタクリレート、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリアルキレンポリアミン、ベンゾイミダゾール等が挙げられる。バインダには、例えば、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリアクリル酸、ポリアクリレート等を用いることができる。
【0025】
個々の正極活物質は、粒子形態をなしており、略球冠状に形成される。また、正極活物質は、一方向に突出する略球冠状の凸曲面21と、一方向側の反対側に存在するとともに一方向に窪む略球冠状の凹曲面22と、を有する。以下の説明では、本実施形態にかかる二次電池用正極(正極1)に含まれる正極活物質を球冠状活物質粒子20と称して説明する。
【0026】
球冠状活物質粒子20は、層状の結晶構造を有するリチウム遷移金属酸化物を含有する。リチウム遷移金属酸化物は、Li(リチウム)以外に、1乃至複数の所定の遷移金属元素を含む。リチウム遷移金属酸化物に含有される遷移金属元素は、Ni、Co、Mnの少なくとも一つであることが好ましい。リチウム遷移金属酸化物の好適な一例として、Ni、Co及びMnの全てを含むリチウム遷移金属酸化物が挙げられる。
【0027】
球冠状活物質粒子20は、遷移金属元素(すなわち、Ni、Co及びMnの少なくとも1種)の他に、付加的に、1種又は複数種の元素を含有し得る。付加的な元素としては、周期表の1族(ナトリウム等のアルカリ金属)、2族(マグネシウム、カルシウム等のアルカリ土類金属)、4族(チタン、ジルコニウム等の遷移金属)、6族(クロム、タングステン等の遷移金属)、8族(鉄等の遷移金属)、13族(半金属元素であるホウ素、もしくはアルミニウムのような金属)及び17族(フッ素のようなハロゲン)に属するいずれかの元素を含むことができる。
【0028】
好ましい一態様において、球冠状活物質粒子20は、下記一般式(1)で表される組成(平均組成)を有し得る。
LiNiCoMn(1-y-z)MAαMBβ…(1)
【0029】
上記式(1)において、xは、0≦x≦0.2を満たす実数であり得る。yは、0.1<y<0.6を満たす実数であり得る。zは、0.1<z<0.6を満たす実数であり得る。MAは、W、Cr及びMoから選択される少なくとも1種の金属元素であり、αは0<α≦0.01(典型的には0.0005≦α≦0.01、例えば0.001≦α≦0.01)を満たす実数である。MBは、Zr、Mg、Ca、Na、Fe、Zn、Si、Sn、Al、B及びFからなる群から選択される1種又は2種以上の元素であり、βは0≦β≦0.01を満たす実数であり得る。βが実質的に0(すなわち、MBを実質的に含有しない酸化物)であってもよい。なお、層状構造のリチウム遷移金属酸化物を示す化学式では、便宜上、O(酸素)の組成比を2として示しているが、この数値は厳密に解釈されるべきではなく、多少の組成の変動(典型的には1.95以上2.05以下の範囲に包含される)を許容し得るものである。
【0030】
球冠状活物質粒子20は、略球殻状又は略楕円球殻状の中空活物質粒子120の一部が切断面23により切り取られて、略球冠状に形成される。すなわち、球冠状活物質粒子20の材料となる中空活物質粒子120は、上記で説明した層状の結晶構造を有するリチウム遷移金属酸化物により構成されるものである。
【0031】
そこで、図2を参照して、上記した正極1の製造方法について一例を説明する。図2は、実施の形態1にかかる二次電池用正極の製造方法を示すフローチャートである。図2に示すように、本実施形態にかかる正極1の製造方法は、ステップS1~S6の工程を有する。なお、ステップS3及びステップS5の各工程は、製造される正極1の品質が確保される場合には省略することができ、その他の手法によっても代替可能である。
【0032】
ステップS1は、中空活物質粒子120を形成する工程である。ステップS2は、中空活物質粒子120を粉砕して正極活物質(球冠状活物質粒子20)を形成する工程である。ステップS3は、ステップS2で得られた正極活物質(球冠状活物質粒子20)の物性を所定値と比べて適切な値であるか否かを確認する工程である。ステップS4は、正極合材層10を形成するためのペーストを作製する工程である。ステップS5は、ステップS4で作製したペーストの粘度が所定値と比べて適切な値であるか否かを確認する工程である。ステップS6は、正極集電体上にペーストを塗工して正極合材層10を形成する工程である。
【0033】
上記の各工程について詳細に説明する。まず、ステップS1では、球冠状活物質粒子20の材料となる中空活物質粒子120を形成する。中空活物質粒子120は、殻部123と、殻部123の内部に形成される中空部124と、を有する中空構造の粒子形態をなし、略球殻状又は略楕円球殻状を有する。すなわち、中空活物質粒子120の外形は、概ね球形状、又は楕円球状(やや歪んだ球形状等)を呈している。また、中空活物質粒子120は、ともに球面状又は楕円球面状に形成される外面121と内面122とを有する。
【0034】
殻部123は、リチウム遷移金属酸化物の一次粒子が連なって略球殻状又は略楕円球殻状に形成された二次粒子である。殻部123の内部には、中空部124が形成される。殻部123の厚さ方向において、一次粒子は単層であってもよく、多層であってもよい。好ましい一態様にかかる中空活物質粒子120は、殻部123の全体に亘って、一次粒子が実質的に単層で連なった形態に構成されている。
【0035】
ここで、一次粒子は、外見上の幾何学的形態から判断して単位粒子(ultimateparticle)と考えられる粒子を指す。ここに開示される中空活物質粒子120において、一次粒子は、典型的にはリチウム遷移金属酸化物の結晶子の集合物である。中空活物質粒子120の形状観察はSEM観察で取得される画像により行うことができる。
【0036】
中空活物質粒子120の外面121の直径(粒径)は、例えば、およそ2μm以上であることが好ましく、3μm以上であることがより好ましい。また、中空活物質粒子120の直径は25μm以下であることが好ましく、15μm以下であることがより好ましい。生産性の観点から、好ましい一態様では、中空活物質粒子120の直径は、4μm以上6μm以下である。なお、外面121は、中空活物質粒子120の輪郭にあたる面である。
【0037】
殻部123の厚さは、好ましくは3.0μm以下であり、より好ましくは2.5μm以下、さらに好ましくは2.0μm以下である。殻部123の厚さが小さいほど、充電時には殻部123の内部(厚さの中央部)からもリチウムイオンが放出されやすく、リチウムイオン二次電池の放電時にはリチウムイオンが殻部123の内部まで吸収されやすくなる。殻部123の厚さの下限値は、0.1μm以上であることが好ましい。内部抵抗低減効果と耐久性とを両立させる観点から、好ましい一態様では、殻部123の厚さは、0.8μm以上1.5μm以下である。
【0038】
中空活物質粒子120の内面122の直径は、外面121の直径から殻部123の厚さを減算することにより求めることができる。なお、内面122は、中空部124の輪郭にあたる面である。
【0039】
そして、中空活物質粒子120の外面121について、短軸の長さL2に対する長軸の長さL1の比(長軸の長さ/短軸の長さ、L1/L2)は、1.0以上1.8未満であることが好ましい。また、中空活物質粒子120の内面122について、短軸の長さに対する長軸の長さの比(長軸の長さ/短軸の長さ)は、1.0以上1.5未満であることが好ましい。このような比率で構成される中空活物質粒子120を用いて球冠状活物質粒子20を形成すると、球冠状活物質粒子20の表裏面(凸曲面21及び凹曲面22)が湾曲した形状となって粒子が嵩高くなる。
【0040】
上記の中空活物質粒子120を形成する方法は、例えば、原料水酸化物生成工程と、混合工程と、焼成工程と、を含む。これらの各工程について詳述する。ただし、中空活物質粒子120を形成する方法はこれに限られるものではない。
【0041】
原料水酸化物生成工程は、遷移金属化合物の水溶液にアンモニウムイオン(NH )を供給して、遷移金属水酸化物の粒子を水溶液から析出させる工程である。ここで、水溶液は、リチウム遷移金属酸化物を構成する遷移金属元素の少なくとも1種を含む。
【0042】
原料水酸化物生成工程は、水溶液から遷移金属水酸化物を析出させる核生成段階と、核生成段階よりも水溶液のpHを減少させた状態で遷移金属水酸化物の粒子を成長させる粒子成長段階とを含むことが好ましい。粒子成長段階では、pH及びアンモニウムイオン濃度を変更することにより、遷移金属水酸化物の析出速度を調整することで、中空活物質粒子120の構造(一次粒子同士の配置間隔、粒子空孔率等)を変化させることができる。
【0043】
混合工程では、原料水酸化物生成工程で生成した遷移金属水酸化物粒子を反応液から分離し、洗浄、濾過、乾燥させる。このようにして得られた遷移金属水酸化物とリチウム化合物とを混合して混合物を調製する。当該遷移金属水酸化物とリチウム化合物とは、所定の割合でできるだけ均一に混合すると良い。混合工程では、典型的には、目的物である中空活物質粒子120の組成に対応する量比で、リチウム化合物と遷移金属水酸化物粒子とを混合する。
【0044】
焼成工程は、混合物を焼成して中空活物質粒子120を得る工程である。焼成工程は、例えば酸化性雰囲気中(例えば大気雰囲気中)で行われる。焼成温度は、例えば700℃以上1100℃以下である。また、焼成工程は、異なる温度範囲で焼成する複数の工程を含んでいてもよい。焼成後には、必要に応じて、焼成物を解砕したものを分級して粒径を調整することが好ましい。
【0045】
この工程では、リチウム遷移金属酸化物の一次粒子の焼結反応を進行させる。これにより、一次粒子同士が焼結されて連なった略球殻状又は略楕円球殻状の中空活物質粒子120が形成されるとともに、中空活物質粒子120の内部には中空部124が形成される。
【0046】
続いて、ステップS2では、ステップS1で得られた中空活物質粒子120を粉砕機に投入し、中空活物質粒子120に対して剪断力を与えることにより、中空活物質粒子120の一部が切断面23により切り取られた球冠状活物質粒子20を形成する。中空活物質粒子120の粉砕に用いる粉砕機としては、ジェットミルを用いることが好ましい。粉砕の方式は、乾式であっても良く、湿式であっても良い。
【0047】
ジェットミルによる粉砕では、粉砕ガス圧力、中空活物質粒子120の供給速度、粉砕回数等の粉砕条件を適宜設定して粉砕の度合いを調整する。粉砕条件は、中空活物質粒子120の曲率中心Oを通る最も長い径である長軸に沿った切断面23で中空活物質粒子120を切り取ることができるように設定されることが好ましい。すなわち、粉砕条件を制御することによって、所望の球冠状活物質粒子20を形成することができる。
【0048】
ここで、球冠とは、球又は楕円球の一部を任意の面(本実施形態では切断面23)で切り取った球欠の側面部分である。球冠状活物質粒子20の形状は、略椀状とも言える。中空活物質粒子120の曲率中心Oは、球冠状活物質粒子20の曲率中心Oと一致する。また、中空活物質粒子120の曲率中心Oは、外面121の曲率中心Oと内面122の曲率中心Oと同一であるものとし、球冠状活物質粒子20の曲率中心Oは、凸曲面21の曲率中心Oと凹曲面22の曲率中心Oと同一であるものとする。
【0049】
粉砕条件は、特に限定されるものではなく、用いる粉砕機や中空活物質粒子120によって異なる。粉砕後には、粉砕物を分級して微粉末の除去を行ない、所望の粒径を有する球冠状活物質粒子20を得ることができる。粉砕物の分級は、分級機能を備えたジェットミルにより実施しても良く、ジェットミルとは別の分級機を用いて実施しても良い。
【0050】
中空活物質粒子120を粉砕することにより得られる球冠状活物質粒子20は、所定の厚みを有する略球冠状に形成され、凸曲面21と、凹曲面22と、切断面23と、を有する。凸曲面21は、中空活物質粒子120の外面121に対応し、外面121の一部が切断面23により切り取られたものである。凸曲面21は、一方向に突出する略球冠状に形成される。凹曲面22は、中空活物質粒子120の内面122に対応し、内面122の一部が切断面23により切り取られたものである。凹曲面22は、凸曲面21の突出方向と同じ一方向に窪む略球冠状に形成される。凹曲面22は、凸曲面21の突出方向側の反対側に存在し、凹曲面22と凸曲面21とは、互いに対向している。
【0051】
また、球冠状活物質粒子20には、凸曲面21に向かって端面の中央付近が略球冠状に窪んだ凹部24が形成される。凹部24は、中空活物質粒子120の中空部124に対応し、凹曲面22により画成される。切断面23は、凸曲面21の先端縁と凹曲面22の先端縁とを繋ぐ部分である。切断面23は、凹部24の開口を囲む略円環状を有する。
【0052】
このように、凸曲面21及び凹曲面22が湾曲した形状であると、嵩高い球冠状活物質粒子20が形成されるため、正極合材層10中における球冠状活物質粒子20同士の重なりを抑制することができる。これにより、球冠状活物質粒子20を用いた正極1では、活物質粒子同士の重なりに起因する反応面積の低下が抑制されるとともに、球冠状活物質粒子20間に電解液の浸透経路となる空隙が確保される。その結果、二次電池における入出力特性が向上する。
【0053】
続いて、ステップS3では、ステップS2で得られた球冠状活物質粒子20の物性を測定し、球冠状活物質粒子20の物性の測定値が所定値より大きい値であるか否かを確認する。球冠状活物質粒子20の物性としては、例えば、吸油量及びBET比表面積を用いることができる。また、ステップSにおける所定値としては、球冠状活物質粒子20の材料となる中空活物質粒子120の吸油量及びBET比表面積を用いることができる。
【0054】
この工程では、球冠状活物質粒子20について、吸油量とBET比表面積との少なくとも一方を測定する。そして、球冠状活物質粒子20の物性について測定した結果(測定値)が、中空活物質粒子120の同じ物性について測定した結果(所定値)と比べて大きい場合(ステップS3;YES)に、次のステップS4に進む。一方、球冠状活物質粒子20の物性について測定した結果(測定値)が、所定値以下である場合(ステップS3;NO)は、粉砕が不十分である等の理由により所望の球冠状活物質粒子20が得られていないと考えられるため、ステップS2に戻る。
【0055】
ここで、図3~5を参照して、本実施形態において望ましい球冠状活物質粒子20の構造について詳細を説明する。図3は、図1に示す正極に含まれる球冠状活物質粒子の一例を示す図である。図4は、図1に示す正極に含まれる球冠状活物質粒子の他の例を示す図である。図5は、図1に示す正極に含まれる球冠状活物質粒子の他の例を示す図である。
【0056】
なお、図3図5に示す実線は、球冠状活物質粒子20の凸曲面21を模式的に表したものとする。また、図3図5に示す破線は、球冠状活物質粒子20の材料となる中空活物質粒子120の外面121を模式的に表したものとする。図3図5では、球冠状活物質粒子20の全部が中空活物質粒子120の一部と一致するように球冠状活物質粒子20と中空活物質粒子120とを重ねて配置した場合を示している。そして、凸曲面21及び外面121の長軸は水平方向に延在し、凸曲面21及び外面121の短軸は鉛直方向に延在するように配置されている。
【0057】
図3図5に示すように、中空活物質粒子120を分割する切断面23は、曲率中心Oを通る面であっても良く、曲率中心Oから隔てた位置にある面であっても良い。切断面23が形成される位置は、曲率中心Oから凸曲面21における切断面23側の先端に向かう方向と、凸曲面21における長軸と、のなす角が角度θとなる位置に形成される。そして、本実施形態では、角度θが±15°以内であることが好ましい。すなわち、球冠状活物質粒子20は、中心角が150°以上210°以下の球冠状であることが好ましい。
【0058】
具体的には、θ=0°である場合、切断面23は曲率中心Oを通る面であり、球冠状活物質粒子20は半球状に形成される。θ=15°である場合、切断面23は曲率中心Oから上側に間隔を隔てた位置にある面であり、球冠状活物質粒子20は、曲率中心Oを含む相対的に大きな体積の方の立体である。θ=-15°である場合、切断面23は曲率中心Oから下側に間隔を隔てた位置にある面であり、球冠状活物質粒子20は、曲率中心Oを含まない相対的に小さな体積の方の立体である。
【0059】
さらに、角度θが±15°以内において、切断面23の形状は、図3及び図4に示すように、平面であっても良く、図5に示すように、凹凸状等の非平面であっても良い。このように、切断面23の位置及び形状に応じて球冠状活物質粒子20の形状が決定される。
【0060】
そして、本実施形態では、正極合材層10が含有する全活物質粒子のうち、角度θが±15°以内で形成される球冠状活物質粒子20が占める割合は、好ましくは30質量%以上100質量%以下であり、より好ましくは50質量%以上100質量%以下である。このような割合で構成されることにより、二次電池の入出力特性を向上する効果が一層高められる。なお、正極合材層10は、上述した角度θが±15°以内で形成される球冠状活物質粒子20の他に別の活物質粒子を含んでも良い。別の活物質粒子とは、例えば中実構造の活物質粒子、中空構造の活物質粒子、角度θが±15°以外で形成される球冠状活物質粒子20等である。
【0061】
続いて、ステップS4では、ステップS3において、物性が確認された球冠状活物質粒子20を用いて正極合材層10を形成するためのペーストを作製する。球冠状活物質粒子20を含むペーストは、球冠状活物質粒子20、導電材30、その他の添加剤、及び溶媒(水系溶媒、非水系溶媒又はこれらの混合溶媒)を所定の割合で混練することにより得られる。
【0062】
ステップS5では、ステップS4で得られたペーストの粘度を測定することにより、球冠状活物質粒子20を含むペーストの粘度の測定値が所定値より小さい値であるか否かを確認する。ステップS5における所定値としては、球冠状活物質粒子20の材料となる中空活物質粒子120を含むペーストの粘度を用いることができる。中空活物質粒子120を含むペーストは、中空活物質粒子120、導電材30、その他の添加剤、及び溶媒を、活物質粒子の種類を除いて球冠状活物質粒子20の場合と同じ材料及び割合で混練することにより得られる。
【0063】
この工程では、球冠状活物質粒子20を含むペーストの粘度を測定する。そして、球冠状活物質粒子20を含むペーストの粘度を測定した結果(測定値)が、中空活物質粒子120を含むペーストの粘度を測定した結果(所定値)と比べて小さい場合(ステップS5;YES)に、次のステップS6に進む。一方、球冠状活物質粒子20を含むペーストの粘度を測定した結果(測定値)が、所定値以上である場合(ステップS5;NO)は、粉砕が不十分である等の理由により所望の球冠状活物質粒子20が得られていないと考えられるため、ステップS2に戻る。
【0064】
ステップS6では、球冠状活物質粒子20を含むペーストを正極集電体の表面に塗工し、これを乾燥することにより溶媒を揮発させ、乾燥したものを必要に応じてプレスする。これにより、正極集電体上に、正極合材層10を形成することができる。
【0065】
正極集電体上への正極合材層10の単位面積当たりの塗布量は、特に限定されるものではないが、十分な導電パスを確保する観点から、正極集電体の片面当たり3mg/cm以上が好ましく、5mg/cm以上がより好ましく、特に6mg/cm以上であるとよい。なお、塗布量は、ペーストの固形分換算の塗付量である。
【0066】
また、正極集電体の片面当たりの塗布量は、45mg/cm以下が好ましく、28mg/cm以下がより好ましく、特に15mg/cm以下が好ましい。正極合材層10の密度も、特に限定されないが、1.0g/cm以上3.8g/cm以下であることが好ましく、1.5g/cm以上3.0g/cm以下がより好ましく、特に1.8g/cm以上2.4g/cm以下とすることが好ましい。
以上の製造方法により、本実施形態にかかる二次電池用正極を製造することができる。
【0067】
次に、図6図9を参照して、球冠状活物質粒子20における角度θの最適な範囲について、正極の3次元モデルを用いて液伝導度、固体伝導度、及び有効反応面積をシミュレーションした結果に基づいて説明する。
【0068】
図6は、角度θが異なる活物質粒子をそれぞれ含む各種正極を示す図である。図7は、図6に示す各種正極の液伝導度を示すグラフである。図8は、図6に示す各種正極の固体伝導度を示すグラフである。図9は、図6に示す各種正極の有効反応面積を示すグラフである。
【0069】
図6に示すように、液伝導度、固体伝導度、及び有効反応面積をシミュレーションにより計測するにあたっては、角度θを90°、15°、0°、-15°に設計した各種活物質粒子を用いて各種正極を製造した。具体的には、活物質粒子のそれぞれと、導電材30、その他の添加剤、及び溶媒を含むペーストを正極集電体上に塗工し、これを乾燥、プレスした後、正極合材層中に電解液を浸透させることにより各種正極を製造した。角度θ=-15°、0°、15°の活物質粒子は、それぞれ球冠状活物質粒子20である。角度θ=90°の活物質粒子は、中空活物質粒子120である。
【0070】
さらに、FIB-SEM測定により各種正極の3次元モデルを取得した。そして、各種正極の3次元モデルを用いて画像解析を行い、それぞれ液伝導度、固体伝導度、及び有効反応面積を算出して図7図9に示すグラフを作成した。
【0071】
図7に示すグラフの横軸は角度θ[°]を示し、縦軸は液伝導度[S/m]を示している。なお、液伝導度は、電解液の電気伝導度である。図7に示すように、角度θが-90°~45°の範囲では、角度θが小さいほど液伝導度が上昇することが判った。一方、角度θが45°~90°の範囲では、角度θ=45°から角度θが大きくなるにつれて液伝導度は低下傾向であるが、角度θ=90°になると液伝導度が上昇することが判った。すなわち、角度θが45°以下では、角度θが小さいほど電気抵抗が減少することが示された。
【0072】
続いて、図8に示すグラフの横軸は角度θ[°]を示し、縦軸は固体伝導度[S/m]を示している。なお、固体伝導度は、活物質粒子の電気伝導度である。図8に示すように、角度θが-90°~90°の範囲では、角度θが大きいほど固体伝導度が上昇することが判った。一方、角度θが小さすぎると、固体伝導度が低下することが判った。角度θが小さい活物質粒子は、比較的小さく分断された粒子であるため、十分な電気伝導性を確保するためには、角度θが大きい活物質粒子と比べると正極合材層中の導電材30の必要量が多くなることが示された。
【0073】
続いて、図9に示すグラフの横軸は角度θ[°]を示し、縦軸は有効反応面積[m]を示している。なお、有効反応面積は、活物質粒子と電解液との界面において電気化学反応に実際に寄与する活物質粒子の反応面積である。図9に示すように、角度θが-15°~90°の範囲では、角度θが小さいほど有効反応面積が上昇することが判った。一方、角度θが大きすぎると、有効反応面積が低下することが判った。すなわち、比較的小さく分断された粒子では、表面積が増加するため、有効反応面積が大きくなることが示された。
【0074】
図7図9に示す結果から、角度θを±15°以内とした場合、液伝導度、固体伝導度、及び有効反応面積のバランスが良く、良好な性能を有する正極1を得ることができると判断し、角度θの最適範囲を決定した。
【0075】
次に、図10を参照して、実施例1~3、比較例1~7について説明する。なお、実施例は本発明を限定するものではない。図10は、実施例及び比較例を説明する表である。
図10に示す構成を備える10種類の正極を製造し、製造した正極と負極と2枚のセパレータとを重ね合わせて電極体を作製した。これを、注液口を有する電池ケースに収容した。続いて、電池ケースの注液口から電解液を注入し、当該注液口を気密に封止した。以上のようにして、10種類の評価用電池を作製した。セパレータには、ポリオレフィン多孔フィルムを用いた。電解液には、エチレンカーボネート(EC)とジエチルカーボネート(DEC)との混合溶媒に六フッ化リン酸リチウム(LiPF)を溶解させた非水電解液を用いた。
【0076】
実施例1~3は、図2に示すフローにしたがって製造した正極1である。実施例1~3の正極1は、粒径:5μm、厚さ:0.8~1.5μmの球冠状活物質粒子20を正極1の活物質粒子として用いた。球冠状活物質粒子20の材料としては、粒径:5μm、厚さ:0.8~1.5μm、外面121における長軸の長さ/短軸の長さ(L1/L2):1.0~1.5、内面122における長軸の長さ/短軸の長さ:1.0~1.8の中空活物質粒子120を用いた。中空活物質粒子120に対して、分級機能を備えたジェットミルによる粉砕を施した後、粉砕物を分級することにより、角度θ=0°の球冠状活物質粒子20を得た。
【0077】
得られた球冠状活物質粒子20について、吸油量及びBET比表面積を測定した。そして、球冠状活物質粒子20の吸油量を測定した測定値が中空活物質粒子120の吸油量を測定して得られた所定値と比べて大きいことを確認した。また、球冠状活物質粒子20のBET比表面積を測定した測定値が中空活物質粒子120のBET比表面積を測定して得られた所定値と比べて大きいことを確認した。
【0078】
比較例1~4の正極は、実施例1~3で用いた球冠状活物質粒子20の材料である中空活物質粒子120を正極の活物質粒子として用いた。比較例5~7の正極は、粒径:3μmに形成した小粒径活物質粒子を正極の活物質粒子として用いた。ここで用いられる小粒径活物質粒子は、中実構造を有し、一次粒子が集まって形成された二次粒子である。
【0079】
実施例1~3、比較例1~7において、正極の活物質粒子は、全てLiNi(1-X-Y)CoMn、0≦X≦0.35、0≦Y≦0.35で表される平均組成を有するリチウムニッケルコバルトマンガン複合酸化物(NCM)を用いた。
【0080】
各種正極は以下のように製造した。まず、活物質粒子(球冠状活物質粒子20、中空活物質粒子120、又は小粒径活物質粒子)と、導電材30(AB又はCNT)と、その他の添加剤とを図10に示す混合比で混合し、溶媒としてN-メチル-2-ピロリドンを添加して混練することによりペーストを作製した。作製したペーストを正極集電体であるアルミニウム箔の両面に、一定の厚み・塗工量となるように塗工し、乾燥後、プレスすることにより10種類のシート状の正極を製造した。なお、添加剤には、バインダとしてのPVdFを一定の割合で添加した。
【0081】
ここで、球冠状活物質粒子20を含むペーストについては粘度を測定した。そして、球冠状活物質粒子20を含むペーストの粘度を測定した測定値が中空活物質粒子120を含むペーストの粘度を測定して得られた所定値と比べて小さいことを確認した。中空活物質粒子120を含むペーストは、活物質粒子の種類を除いて球冠状活物質粒子20の場合と同じ材料及び割合で作製されたものである。
【0082】
また、負極は以下のように製造した。負極の活物質粒子としての非晶質炭素でコートされた粒子状の天然黒鉛と、バインダとしてのスチレンブタジエンラバー(SBR)と、増粘剤としてのカルボキシメチルセルロース(CMC)とを、一定の質量比にてイオン交換水中で混錬することにより、負極合材層を形成するためのペーストを調製した。得られたペーストを、負極集電体である銅箔の両面に塗工し、乾燥後、プレスすることにより負極を製造した。
【0083】
以上の実施例1~3及び比較例1~7の各正極をそれぞれ含む10種類の評価用電池について、電圧降下量を測定した。10種類の評価用電池は、25℃の環境下において、SOC(State Of Charge)60%の充電状態から10~40Cの電流値で放電を行った時の放電開始から10秒間後のそれぞれの電圧降下量を測定した。電圧降下量を測定した結果を図10の結果欄に示す。
【0084】
図10の結果より、導電材30がABである場合、実施例1、2と比較例1とを比べると、実施例1、2ではABの使用量を増量することにより電圧降下量を低減できることが判った。また、導電材30がCNTである場合、実施例3と比較例2~7とを比べると、実施例3は、比較例2~7と比べて、例えばCNTの使用量が同じであっても電圧降下量を効果的に低減できるため、必要以上にCNTを増量する必要がないことが判った。
【0085】
さらに、正極合材層10中における導電材30の分布について図1及び図17を参照して説明する。図17は、比較例の二次電池用正極を示す図である。ここで、図1の上側には、導電材30としてABを用いた実施例1にかかる正極1の3次元モデルを示している。また、図17には、導電材30としてABを用いた比較例1にかかる正極の3次元モデルを示している。実施例1及び比較例1は、活物質粒子を除いて共通の構成を有する。
【0086】
そして、実施例1及び比較例1について導電材30の分布を比較すると、比較例1では、中空活物質粒子120の中空部124には導電材30が存在せず、中空活物質粒子120の粒子間に形成される空隙に導電材30が偏在していることが確認できる。これに対し、実施例1では、球冠状活物質粒子20の凸曲面21及び凹曲面22を含む外表面全体に亘って導電材30が接触可能に分布していることが確認できる。このように、本実施形態によれば、球冠状活物質粒子20の外表面を最大限に活用できるため、効率良く有効反応面積を確保することができる。
【0087】
次に、図10に示す結果が得られた理由について、正極の3次元モデルを用いて活物質粒子の反応面積及び正極の空隙率をシミュレーションした結果に基づいて説明する。これらのシミュレーションを行うにあたっては、4種類の活物質粒子を用意した。
【0088】
4種類の活物質粒子は、球冠状活物質粒子20、中空活物質粒子120、中実活物質粒子220、及び板状活物質粒子320である。球冠状活物質粒子20は、半径:2.5μm(すなわち、粒径:5μm)、厚さ:1μmを有する。中空活物質粒子120は、半径:2.5μm(すなわち、粒径:5μm)、厚さ:1μm、外面121における長軸の長さ/短軸の長さ(L1/L2):1.05、内面122における長軸の長さ/短軸の長さ:1.05を有する。中実活物質粒子220は、一次粒子が集まって形成された略球状の二次粒子であって、半径:2.5μm(すなわち、粒径:5μm)、長軸の長さ/短軸の長さ:1.05を有する。板状活物質粒子320は、略矩形板状に形成され、長軸の長さ:2.5μm、短軸の長さ(厚さ):1μmを有する。ここで用いられる球冠状活物質粒子20は、半径:2.5μm(すなわち、粒径:5μm)、厚さ:1μm、外面121における長軸の長さ/短軸の長さ(L1/L2):1.05、内面122における長軸の長さ/短軸の長さ:1.05を有する中空活物質粒子120を粉砕したものである。
【0089】
まず、図11及び図12を参照して活物質粒子の反応面積についてシミュレーションした結果を説明する。図11は、反応面積の評価に用いた各種正極を説明する図である。図12は、図11に示す各種正極について活物質粒子の反応面積を評価した結果を示すグラフである。
【0090】
図11に示すように、活物質粒子の反応面積をシミュレーションにより計測するにあたっては、20μm四方の筐体を用いて形成される(20μm)の領域内に各種活物質粒子をランダムに充填した。具体的には、活物質粒子のそれぞれと、導電材30、その他の添加剤、及び溶媒を含むペーストを正極集電体上に塗工し、これを乾燥、プレスした後、正極合材層中に電解液を浸透させた。これにより、(20μm)の領域内に形成される各種正極を製造した。各種正極におけるそれぞれの活物質粒子の充填率は、45%とした。
【0091】
実施例Aは、球冠状活物質粒子20を含む正極1である。比較例Aは、中空活物質粒子120を含む正極である。参考例1Aは、中実活物質粒子220を含む正極である。参考例2Aは、板状活物質粒子320を含む正極である。
【0092】
さらに、FIB-SEM測定により各種正極の3次元モデルを取得した。そして、各種正極の3次元モデルを用いて画像解析を行い、理論反応面積及び有効反応面積を算出して図12に示すグラフを作成した。図12には、各種正極における活物質粒子と電解液との界面おける反応面積(理論反応面積及び有効反応面積)を比較した結果を示している。図12に示す実線は、理論反応面積のプロット値から算出した近似曲線である。図12に示す破線は、比較例Aについては有効反応面積のプロット値を用いて算出した近似曲線である。
【0093】
図12に示すように、理論反応面積は下記の通りである。
参考例1A:5.71×10-9[m
参考例2A:8.53×10-9[m
実施例A:11.2×10-9[m
比較例A(外面121及び内面122):10.3×10-9[m
【0094】
それぞれの反応面積について考察すると、参考例1Aに含まれる中実活物質粒子220では、粒子同士の重なりを除いた外側の面のみが反応面積にあたるため、他の例と比べて反応面積が低下した。また、参考例2Aに含まれる板状活物質粒子320では、製造時に行われるプレスに伴い、板状活物質粒子320の厚さ方向における両面が正極集電体の面内方向に配向した状態となる。これにより、板状活物質粒子320を用いた場合、粒子同士が重なり合う部分が多くなり、反応面積が低下した。
【0095】
続いて、比較例Aについては、図13を参照しつつ説明する。図13は、中空活物質粒子の反応面積について説明する図である。比較例Aに含まれる中空活物質粒子120では、粒子同士の重なりを除いた中空活物質粒子120の外面121及び内面122が理論反応面積にあたる。しかしながら、比較例Aについて有効反応面積を考えた場合、中空部124には、導電材30が存在しないため、中空部124における電子伝導性を十分に確保することができない。
【0096】
このように、中空活物質粒子120を用いた場合、中空部124を十分に活用することができず、内面122と電解液との界面における反応性は低下する。したがって、中空部124を除外した外面121のみが有効反応面積にあたると考えて比較例Aの有効反応面積を算出すると、有効反応面積は7.22×10-9[m]となる。
【0097】
これらに対し、実施例Aに含まれる球冠状活物質粒子20では、反応面積の低下を抑制することができる。図14は、球冠状活物質粒子の反応面積について説明する図である。図14に示すように、球冠状活物質粒子20は、粒子同士の重なりを除いた凸曲面21、凹曲面22、及び切断面23が理論反応面積にあたる。さらに、球冠状活物質粒子20においては、粒子の嵩高さにより、粒子同士の重なりが防止される。そのため、球冠状活物質粒子20を用いた場合、例えば、板状活物質粒子320と比べて粒子同士の重なりに起因する反応面積の低下が抑制される。また、中空活物質粒子120の中空部124に対応する凹曲面22についても、反応面積から除外されることなく反応場として有効に活用できる。
【0098】
次に、図15及び図16を参照して正極の空隙率についてシミュレーションした結果を説明する。図15は、空隙率の評価に用いた各種正極を説明する図である。図16は、図15に示す各種正極について空隙率を評価した結果を示すグラフである。
【0099】
図15に示すように、正極の空隙率をシミュレーションにより計測するにあたっては、16μm四方の筐体を用いて形成される(16μm)の領域内に各種活物質粒子をランダムに充填した。具体的には、活物質粒子のそれぞれと、導電材30、その他の添加剤、及び溶媒を含むペーストを正極集電体上に塗工し、これを乾燥した後、正極合材層中に電解液を浸透させた。これにより、(16μm)の領域内に形成される各種正極を製造した。各種正極におけるそれぞれの活物質粒子は、鉛直方向の上方から成り行きで充填したものである。
【0100】
実施例Bは、球冠状活物質粒子20を含む正極1である。比較例Bは、中空活物質粒子120を含む正極である。参考例1Bは、中実活物質粒子220を含む正極である。参考例2Bは、板状活物質粒子320を含む正極である。
【0101】
さらに、FIB-SEM測定により各種正極の3次元モデルを取得した。そして、各種正極の3次元モデルを用いて画像解析を行い、理論空隙率及び有効空隙率を算出して図16に示すグラフを作成した。図16には、各種正極における活物質粒子間に形成される空隙率(理論空隙率及び有効空隙率)を比較した結果を示している。図16に示す実線は、理論空隙率のプロット値から算出した近似曲線である。図16に示す破線は、比較例Bについては有効空隙率のプロット値を用いて算出した近似曲線である。空隙率は、(16μm)の領域内に占める活物質粒子の体積の割合から、活物質粒子以外の体積が占める割合を算出した。
【0102】
図16に示すように、理論空隙率は下記の通りである。
参考例1B:42.0[%]
参考例2B:51.0[%]
実施例B:53.8[%]
比較例B(中空部124を含む):54.5[%]
【0103】
それぞれの空隙率について考察すると、参考例1Bでは、中実活物質粒子220が略球状であるため、充填量が多くなり、他の例と比べて空隙率が低下した。また、参考例2Bでは、成り行きで充填された板状活物質粒子320がランダムに配向するため、粒子間に空隙が形成されやすく、参考例1Bと比べると空隙率が向上した。
【0104】
続いて、比較例Bでは、中空活物質粒子120の粒子間及び中空部124が理論空隙率にあたるため、理論空隙率は他の例と比べて大きくなる。しかしながら、比較例Bについて有効空隙率を考えた場合、反応面積の場合と同様に、中空部124には、導電材30が存在しないため、中空部124を十分に活用することができず、内面122と電解液との界面における反応性は低下する。したがって、中空部124を除外した粒子間の空隙のみが有効空隙率にあたると考えて比較例Bの有効空隙率を算出すると、有効空隙率は42.0[%]となる。
【0105】
これらに対し、実施例Bでは、成り行きで充填された球冠状活物質粒子20がランダムに配向するため、粒子間に空隙が形成されやすい。また、球冠状活物質粒子20は湾曲した形状であるため、板状活物質粒子320と比べてさらに空隙率が向上する。したがって、実施例Bでは、正極合材層10中の空隙を十分に確保でき、正極合材層10に対する電解液の浸透性が向上する。そのため、実施例Bの正極1を用いれば、正極合材層10中でリチウムイオンをスムーズに拡散及び移動させることができ、二次電池における入出力特性が向上するものと考えられる。
【0106】
ところで、二次電池の入出力特性を向上するためには、活物質粒子を微細化して反応面積を増加させる方法も考えられるが、活物質粒子の粒径が小さすぎると生産性が低下したり、電池特性が低下したりする問題が生じる場合がある。一方、球冠状活物質粒子20は、ある程度の粒径を有するため、粒径が小さすぎることに起因する生産性の低下を抑制しつつ、正極1を容易に製造することができる。
【0107】
以上説明したように、本実施形態にかかる二次電池用正極は、リチウム遷移金属酸化物で構成される略球殻状又は略楕円球殻状の中空活物質粒子120の一部が切断面23により切り取られた略球冠状に形成される球冠状活物質粒子20を含む。この球冠状活物質粒子20は、一方向に突出する略球冠状の凸曲面21と、一方向側の反対側に存在するとともに一方向に窪む略球冠状の凹曲面22と、を有する。
【0108】
このような構成により、正極活物質である球冠状活物質粒子20の外表面全体を電気化学反応に寄与し得る有効な反応場として利用することができる。そして、球冠状活物質粒子20は湾曲した形状であるため、正極合材層10中において球冠状活物質粒子20同士が重なる部分が低減される。これより、粒子同士の重なりに起因する反応面積の低下が抑制される。さらに、球冠状活物質粒子20間には電解液の浸透経路となる空隙が確保されるため、内部抵抗の増加が抑制される。したがって、本実施形態によれば、高入出力特性を有する二次電池を提供することができる。
【0109】
また、本実施形態にかかる二次電池用正極では、球冠状活物質粒子20とCNTとの組み合わせにより、CNTの使用量を低減しても、正極合材層10中の電子伝導性を十分に確保することが可能であるため、相対的に球冠状活物質粒子20の割合を増加させることができる。したがって、本実施形態によれば、高エネルギー密度の二次電池を提供することができる。
【0110】
また、球冠状活物質粒子20は、凸曲面21の曲率中心Oから凸曲面21の先端に向かう方向と、凸曲面21の長軸と、のなす角度θが±15°以内であることが好ましい。このような構成によれば、電子伝導性が良好、且つ反応場が確保された性能のバランスに優れた正極1を得ることができる。
【0111】
また、球冠状活物質粒子20の材料となる中空活物質粒子120の内面122について、長軸の長さ/短軸の長さは、1.0以上1.5未満であることが好ましい。また、球冠状活物質粒子20の材料となる中空活物質粒子120の外面121について、長軸の長さ/短軸の長さ(L1/L2)は、1.0以上1.8未満であることが好ましい。このように構成される中空活物質粒子120を用いて球冠状活物質粒子20を形成すると、球冠状活物質粒子20の凸曲面21及び凹曲面22がそれぞれ湾曲した形状となって粒子が嵩高くなる。これにより、正極合材層10中における球冠状活物質粒子20同士の重なりを抑制することができる。
【0112】
さらに、本実施形態にかかる二次電池用正極の製造方法によれば、中空活物質粒子120を粉砕する際の粉砕条件を制御することによって、上記の効果を奏する二次電池用正極を製造することができる。
【0113】
また、粉砕して得られた球冠状活物質粒子20の物性について適宜測定を行うことにより、中空活物質粒子120が適切に粉砕されているか確認しながら、粉砕条件を調整することができる。さらに、球冠状活物質粒子20を含むペーストの粘度について適宜測定を行うことにより、中空活物質粒子120が適切に粉砕されているか確認しながら、粉砕条件を調整することができる。このような構成によれば、所望の球冠状活物質粒子20を確実に得ることができ、球冠状活物質粒子20を用いて製造された二次電池用正極の品質が向上する。
【0114】
なお、本発明は上記実施の形態に限られたものではなく、趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更することが可能である。例えば、上記実施形態では、ジェットミルを用いて中空活物質粒子120の粉砕を行ったが、これに限らず、他の粉砕方式を用いても良い。他の粉砕方式としては、ボールミル、ビーズミル、ロッドミル等を用いることができる。
【0115】
また、吸油量については、中空活物質粒子120<板状活物質粒子320<微粉末活物質粒子<球冠状活物質粒子20の関係が成り立つことが判っている。ここで、微粉末活物質粒子は、例えば、中空活物質粒子120を粉砕機で粉砕した場合に、球冠状活物質粒子20よりさらに微細に粉砕して得られる活物質粒子である。そのため、吸油量の所定値として、板状活物質粒子320又は微粉末活物質粒子の吸油量を測定した結果を用いても良い。さらに、ペーストの粘度については、ペーストに含有される活物質粒子によって、球冠状活物質粒子20<中空活物質粒子120<板状活物質粒子320の関係が成り立つことが判っている。そのため、粘度の所定値として、板状活物質粒子320を含むペーストの粘度を測定した結果を用いても良い。
【符号の説明】
【0116】
1 正極
10、10a、10b 正極合材層
20 球冠状活物質粒子
21 凸曲面
22 凹曲面
23 切断面
24 凹部
30 導電材
120 中空活物質粒子
121 外面
122 内面
123 殻部
124 中空部
220 中実活物質粒子
320 板状活物質粒子
O 曲率中心
θ 角度
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