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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-21
(45)【発行日】2024-07-01
(54)【発明の名称】トンネル掘削機
(51)【国際特許分類】
   E21D 9/06 20060101AFI20240624BHJP
【FI】
E21D9/06 302Z
E21D9/06 301A
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2021139247
(22)【出願日】2021-08-27
(65)【公開番号】P2023032887
(43)【公開日】2023-03-09
【審査請求日】2023-11-07
(73)【特許権者】
【識別番号】521478094
【氏名又は名称】地中空間開発株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104433
【弁理士】
【氏名又は名称】宮園 博一
(72)【発明者】
【氏名】花岡 泰治
【審査官】五十幡 直子
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-076233(JP,A)
【文献】特開平08-100597(JP,A)
【文献】特開2020-193450(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E21D 1/00-9/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
カッタヘッドと、
前記カッタヘッドにより掘削された土砂が貯留されるチャンバと、前記チャンバよりも後方の機内室とを区画する隔壁と、
前記カッタヘッドに後方から直接接続されることにより、前記カッタヘッドとともに回転するように構成され、後端が前記隔壁よりも後方の前記機内室に配置された軸部と、
前記機内室において前記軸部に取り付けられ、前記軸部を介して前記カッタヘッドに前後方向の振動を加えることにより、前記カッタヘッドの振動を抑制する制振ジャッキと、を備え
前記軸部よりも外周側の位置で前記カッタヘッドを後方から支持する複数の支持脚をさらに備え、
前記制振ジャッキは、前記複数の支持脚を介して前記カッタヘッドに振動を加えるのではなく前記軸部を介して前記カッタヘッドに前後方向の振動を加えるように構成されている、トンネル掘削機。
【請求項2】
前記軸部は、前記カッタヘッドの回転中心軸線上に配置されている、請求項1に記載のトンネル掘削機。
【請求項3】
前記カッタヘッドは、駆動油が供給されることにより前記カッタヘッドの外周側の端部から突出して余掘りを行う油圧式の余掘用ジャッキを含み、
前記カッタヘッドの前記回転中心軸線上に配置された前記軸部には、少なくとも、前記機内室から前記カッタヘッド側に前記駆動油を送る供給路が設けられている、請求項2に記載のトンネル掘削機。
【請求項4】
前記機内室において、前記制振ジャッキを、前記隔壁の後面および胴体の内周面の少なくとも一方に固定する固定部材をさらに備える、請求項1~3のいずれか1項に記載のトンネル掘削機。
【請求項5】
前記制振ジャッキは、前記カッタヘッドの回転中心軸線上で、かつ、前記軸部よりも後方に配置されている、請求項1~4のいずれか1項に記載のトンネル掘削機。
【請求項6】
前記機内室において前記制振ジャッキを固定する固定部材をさらに備え、
前記制振ジャッキは、筒部が前記固定部材に取り付けられ、前記筒部から進退し、前記軸部に取り付けられるロッド部を含み、前記筒部に対して前記ロッド部を回転させることにより、前記制振ジャッキ自体の構造内で、前記軸部を回転支持するように構成されている、請求項5に記載のトンネル掘削機。
【請求項7】
前記制振ジャッキは、複数設けられ、
複数の前記制振ジャッキは、前記カッタヘッドの前後方向に直交する方向において、前記軸部を挟み込むように配置され、
前記軸部と前記軸部を挟み込む前記複数の制振ジャッキとの間には、前記複数の制振ジャッキを前記軸部に取り付けるとともに、前記複数の制振ジャッキに対して前記軸部を回転支持する回転軸受部が設けられている、請求項1~4のいずれか1項に記載のトンネル掘削機。
【請求項8】
記制振ジャッキは、前記複数の支持脚に支持された前記カッタヘッドに、前記軸部を介して前後方向の振動を加えることにより、前記カッタヘッドの振動を抑制するように構成されている、請求項1~7のいずれか1項に記載のトンネル掘削機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カッタヘッドによる地盤の掘削に伴う振動を抑制するトンネル掘削機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、カッタヘッドによる地盤の掘削に伴う振動を抑制するトンネル掘削機が知られている(たとえば、特許文献1参照)。
【0003】
上記特許文献1には、方向制御ジャッキを備えるトンネル掘削機が開示されている。方向制御ジャッキは、伸縮することによりトンネル掘削機の掘進方向を変更するジャッキである。トンネル掘削機は、カッタヘッドによる地盤の掘削に伴う振動が発生した際に、方向制御ジャッキによりトンネル掘削機の推進方向に所定位相の振動を発生させることによって、カッタヘッドによる地盤の掘削に伴う振動を抑制するように構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2017-172162号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ここで、トンネル掘削機の振動の中では、地盤の掘削に伴うカッタヘッド自体の振動が特に大きいため、従来よりカッタヘッド自体の振動を効果的に低減することが望まれている。カッタヘッド自体の振動が低減された場合、トンネル掘削機本体や、地盤に伝わる振動が抑制されるため好ましい。上記特許文献1に記載のトンネル掘削機では、前胴の最後尾に配置され、前胴などの各種構造を介して間接的にカッタヘッドに振動を伝える方向制御ジャッキ、を利用してカッタヘッドによる地盤の掘削に伴う振動を抑制しようとする構成であるため、カッタヘッド自体の振動を効果的に低減することができないという問題点がある。
【0006】
この発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、この発明の1つの目的は、カッタヘッド自体の振動を効果的に低減することが可能なトンネル掘削機を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、この発明のトンネル掘削機は、カッタヘッドと、カッタヘッドにより掘削された土砂が貯留されるチャンバと、チャンバよりも後方の機内室とを区画する隔壁と、カッタヘッドに後方から直接接続されることにより、カッタヘッドとともに回転するように構成され、後端が隔壁よりも後方の機内室に配置された軸部と、機内室において軸部に取り付けられ、軸部を介してカッタヘッドに前後方向の振動を加えることにより、カッタヘッドの振動を抑制する制振ジャッキと、を備え、軸部よりも外周側の位置でカッタヘッドを後方から支持する複数の支持脚をさらに備え、制振ジャッキは、複数の支持脚を介してカッタヘッドに振動を加えるのではなく軸部を介してカッタヘッドに前後方向の振動を加えるように構成されている
【0008】
この発明のトンネル掘削機では、上記のように、カッタヘッドに後方から直接接続される軸部に対して機内室において取り付けられ、軸部を介してカッタヘッドに前後方向の振動を加えることにより、カッタヘッドの振動を抑制する制振ジャッキを設ける。これによって、軸部に取り付けられる制振ジャッキにより、カッタヘッドに対して直接接続される軸部を介してカッタヘッドに振動を伝えることができる。また、制振ジャッキがチャンバ側ではなく比較的スペースに余裕のある機内室に配置されるため、カッタヘッドの振動を抑制するのに必要となる出力を確保可能な制振ジャッキの大きさを確保することが可能となる。以上の結果、カッタヘッド自体の振動を効果的に低減することができる。
【0009】
上記トンネル掘削機において、好ましくは、軸部は、カッタヘッドの回転中心軸線上に配置されている。このように構成すれば、カッタヘッドが回転する際に、軸部を回転中心軸線上に保持することができる。すなわち、カッタヘッドの回転に伴い軸部が前後方向に交差する方向に移動することを防ぐことができる。
【0010】
この場合、好ましくは、カッタヘッドは、駆動油が供給されることによりカッタヘッドの外周側の端部から突出して余掘りを行う油圧式の余掘用ジャッキを含み、カッタヘッドの回転中心軸線上に配置された軸部には、少なくとも、機内室からカッタヘッド側に駆動油を送る供給路が設けられている。このように構成すれば、軸部を、制振ジャッキの振動を伝えるための構成としてだけではなく、余掘用ジャッキの駆動油の供給路としても利用することができるので、部品点数を削減して、装置構成を簡素化することができる。
【0011】
上記トンネル掘削機において、好ましくは、機内室において、制振ジャッキを、隔壁の後面および胴体の内周面の少なくとも一方に固定する固定部材をさらに備える。このように構成すれば、固定部材により制振ジャッキの反力を受けることができるようになり、制振ジャッキの振動をより効果的にカッタヘッドに伝えることができる。その結果、カッタヘッド自体の振動をより効果的に低減することができる。
【0012】
上記トンネル掘削機において、好ましくは、制振ジャッキは、カッタヘッドの回転中心軸線上で、かつ、軸部よりも後方に配置されている。このように構成すれば、制振ジャッキを軸部と同軸上に配置することができるので、制振ジャッキの振動を発生させる力を、軸部およびカッタヘッドに効果的に伝えることができる。その結果、カッタヘッド自体の振動をより効果的に低減することができる。
【0013】
この場合、好ましくは、機内室において制振ジャッキを固定する固定部材をさらに備え、制振ジャッキは、筒部が固定部材に取り付けられ、筒部から進退し、軸部に取り付けられるロッド部を含み、筒部に対してロッド部を回転させることにより、制振ジャッキ自体の構造内で、軸部を回転支持するように構成されている。このように構成すれば、制振ジャッキ自体の構造内で、軸部を回転支持することができるので、軸部を回転支持する専用の構成を設ける場合と比較して、部品点数を削減して、装置構成を簡素化することができる。
【0014】
上記トンネル掘削機において、好ましくは、制振ジャッキは、複数設けられ、複数の制振ジャッキは、カッタヘッドの前後方向に直交する方向において、軸部を挟み込むように配置され、軸部と軸部を挟み込む複数の制振ジャッキとの間には、複数の制振ジャッキを軸部に取り付けるとともに、複数の制振ジャッキに対して軸部を回転支持する回転軸受部が設けられている。このように構成すれば、複数の制振ジャッキにより、カッタヘッド自体の振動を低減するための比較的大きな振動を発生させることができる。
【0015】
上記トンネル掘削機において、好ましくは、制振ジャッキは、複数の支持脚に支持されたカッタヘッドに、軸部を介して前後方向の振動を加えることにより、カッタヘッドの振動を抑制するように構成されている。このように構成すれば、カッタヘッドの支持方式がいわゆる外周支持方式となり、カッタヘッドの中央部付近が複数の支持脚により拘束されないため、カッタヘッドの中央部付近を効果的に振動させることが可能となる。

【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、上記のように、カッタヘッド自体の振動を効果的に低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】第1実施形態によるトンネル掘削機を側方から示した模式的な断面図である。
図2図1の90-90線に沿った矢視図である。
図3図1のE部の拡大図である。
図4】第2実施形態によるトンネル掘削機を側方から示した模式的な断面図である。
図5図4の91-91線に沿った矢視図である。
図6】変形例の軸部およびカッタヘッドを示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
【0019】
[第1実施形態]
(トンネル掘削機の構成)
図1図3を参照して、第1実施形態によるトンネル掘削機100について説明する。
【0020】
各図では、掘進方向(前後方向)に沿って延びるカッタヘッド1の回転中心軸線αに平行な方向(前後方向)をX方向により示す。X方向のうち、掘進方向をX1方向(前方)により示し、他方をX2方向(後方)により示す。
【0021】
各図では、上下方向をZ方向により示す。Z方向のうち、上方をZ1方向により示し、下方をZ2方向により示す。
【0022】
各図では、カッタヘッド1の回転方向(周方向)をR方向により示す。また、カッタヘッド1の半径方向をr方向により示す。
【0023】
図1に示すように、トンネル掘削機100は、カッタヘッド1と、複数の支持脚10と、隔壁23を含む掘削機本体2と、旋回台軸受3と、カッタヘッド1を回転させる駆動源4と、固定部材5と、軸部6と、振動センサ7と、制振ジャッキ8とを備えている。トンネル掘削機100は、泥土圧式のトンネル掘削機である。
【0024】
制振ジャッキ8は、隔壁23よりも後方の機内室(大気室)C2において軸部6に取り付けられている。トンネル掘削機100は、制振ジャッキ8により、軸部6を介してカッタヘッド1に前後方向の振動を加えることにより、カッタヘッド1の振動を抑制するように構成されている。詳細については後述する。
【0025】
(カッタヘッドおよび支持脚の構成)
カッタヘッド1は、前面に複数のカッタビットBを有しており、回転により地盤を掘削するように構成されている。カッタヘッド1は、後方から複数の支持脚10により支持されている。
【0026】
支持脚10は、前後方向に延びる例えば円柱状形状の部材である。複数の支持脚10は、カッタヘッド1の回転方向に所定の角度間隔で円周上に配置されている。複数の支持脚10は、カッタヘッド1の半径方向(r方向)の外周側に配置されている。すなわち、カッタヘッド1は、外周側で支持される外周支持方式のカッタヘッドである。つまり、カッタヘッド1の半径方向(r方向)において、複数の支持脚10は、カッタヘッド1の回転中心軸線αおよび軸部6よりも、カッタヘッド1の外周側の端部1aに近い位置に配置されている。複数の支持脚10は、円環状の支持リング11の前面に固定されている。
【0027】
カッタヘッド1は、油圧式の余掘用ジャッキ12aを有するカッタスポーク12を含んでいる。余掘用ジャッキ12aは、駆動油が供給されることによりカッタヘッド1の外周側の端部1aから突出して余掘りを行うように構成されている。余掘用ジャッキ12aは、曲面状のトンネル施工時などに用いられる。余掘用ジャッキ12aは、軸部6を介して、潤滑用のグリースが供給されるように構成されている。また、余掘用ジャッキ12aは、軸部6を介して、余掘用ジャッキ12aを駆動させるための駆動油が供給されるように構成されている。
【0028】
(掘削機本体の構成)
掘削機本体2は、円筒状の胴体20と、隔壁23と、複数の推進ジャッキ24と、複数の中折れジャッキ25と、スクリュコンベア26とを備えている。
【0029】
胴体20は、前胴21と、前胴21の後方に配置された後胴22とを含んでいる。前胴21の内側には、旋回台軸受3、駆動源4および制振ジャッキ8などが配置されている。また、胴体20の内側には、隔壁23が設けられている。
【0030】
隔壁23は、掘進方向(X1方向)と直交する方向に延びており、カッタヘッド1により掘削された土砂が貯留されるチャンバC1と、チャンバC1よりも後方の機内室C2とを区画している。機内室C2とは、カッタヘッド1により掘削された土砂が直接流入することがない空間であり、作業者が立ち入ることが可能な空間である。
【0031】
隔壁23には、カッタヘッド1の半径方向(r方向)の中央部に軸部6を配置するための貫通穴23aが設けられている。貫通穴23aの中心位置は、カッタヘッド1の回転中心軸線αと略一致している。隔壁23の貫通穴23aは、軸部6を内側に配置した状態で土砂シール23bにより密閉されている。なお、土砂シール23bは、軸部6が振動したとしても密閉状態を保持して、チャンバC1から機内室C2に土砂が流入することを防止するように構成されている。
【0032】
複数の推進ジャッキ24は、カッタヘッド1の回転方向に所定の角度間隔で円周上に配置されている。複数の推進ジャッキ24は、胴体20に固定されており、掘削機本体2を押し進めるように構成されている。すなわち、複数の推進ジャッキ24は、掘削機本体2を推進させる駆動源である。
【0033】
複数の中折れジャッキ25は、カッタヘッド1の回転方向に所定の角度間隔で円周上に配置されている。複数の中折れジャッキ25は、前胴21と後胴22とを連結するとともに、トンネル掘削機100の掘進方向を修正または変更するように構成されている。
【0034】
スクリュコンベア26は、チャンバC1に接続され、チャンバC1内の土砂を機内室C2側に排出するように構成されている。スクリュコンベア26は、前胴21の内側の下方側に配置されている。
【0035】
(旋回台軸受の構成)
旋回台軸受3は、駆動源4の回転力をカッタヘッド1に伝達するように構成されている。旋回台軸受3は、前胴21に固定された円環状の固定外輪30と、固定外輪30の内周側に配置された円環状の可動内輪31とを備えている。
【0036】
可動内輪31は、固定外輪30に支持されており、カッタヘッド1の回転中心軸線α回りに回転可能に構成されている。可動内輪31は、駆動源4の駆動用ピニオンギヤに噛み合う円環状の内歯ギヤ(ラック)を有している。可動内輪31は、円環状の支持リング11の後面に固定されている。
【0037】
(駆動源の構成)
カッタヘッド1を回転させる駆動源4は、駆動油により駆動される油圧式の駆動源である。駆動源4は、複数の油圧式モータにより構成されている。なお、駆動源は、電動式モータにより構成されてもよい。
【0038】
(固定部材の構成)
図2に示す固定部材5は、機内室C2において、制振ジャッキ8を固定するように構成されている。詳細には、固定部材5には、前方から制振ジャッキ8の筒部8a側が接続されている。固定部材5は、カッタヘッド1の半径方向(r方向)に延びる梁部材である。固定部材5は、前方に位置する制振ジャッキ8の反力を受ける支持構造体である。
【0039】
固定部材5の両端部は、胴体20(前胴21)の内周面21aに固定されている。固定部材5は、中折れジャッキ25および後胴22の球面摺動部との干渉を避けるために、両端部が制振ジャッキ8の筒部8a側が接続される中央部よりも前方に位置するように、屈曲している。なお、複数の中折れジャッキ25の間に固定部材5を配置して、中折れジャッキ25と固定部材5との干渉を回避してもよい。また、固定部材5は、箱状断面を有する梁部材により形成されているが、このような形状の断面に限られない。
【0040】
(軸部の構成)
図1に示すトンネル掘削機100は、制振ジャッキ8により、軸部6を介してカッタヘッド1に前後方向の振動を加えることにより、カッタヘッド1の振動を抑制するように構成されている。すなわち、軸部6は、制振ジャッキ8により生成された前後方向の振動をカッタヘッド1に伝達するための振動伝達部材として機能する。
【0041】
軸部6は、前後方向に延びている。軸部6は、カッタヘッド1の回転中心軸線α上に配置されている。詳細には、軸部6の中心位置は、カッタヘッド1の回転中心軸線αと略一致している。
【0042】
軸部6は、円柱状の回転部材60と、回転部材60が内側に嵌合された円筒状の非回転部材61とを備えている。回転部材60は、カッタヘッド1とともに回転する部材である。非回転部材61は、カッタヘッド1とともに回転しない部材である。
【0043】
回転部材60は、カッタヘッド1に後方から直接接続(固定)されている。このため、回転部材60は、カッタヘッド1とともに回転中心軸線α回りに回転するように構成されている。軸部6(回転部材60)の後端6aは、隔壁23よりも後方の機内室C2に配置されている。
【0044】
図3に示すように、カッタヘッド1の回転中心軸線α上に配置された軸部6(回転部材60および非回転部材61)には、少なくとも、機内室C2からカッタヘッド1側に余掘用ジャッキ12aの駆動油を送る供給路64が設けられている。また、軸部6には、機内室C2からカッタヘッド1側に作泥材を送る供給路62が設けられている。なお、供給路62を介してカッタヘッド1側に供給された作泥材は、カッタヘッド1の前方側などに注入される。また、軸部6には、機内室C2から余掘用ジャッキ12aにグリースを送る供給路63が設けられている。
【0045】
非回転部材61は、作泥材、グリースおよび駆動油を供給する供給口Sを有している。非回転部材61の供給口Sには、作泥材、グリースおよび駆動油を供給する供給管Tが接続されている。非回転部材61は、カッタヘッド1とともに回転しない。そこで、非回転部材61から回転する回転部材60に対して作泥材、グリースおよび駆動油の供給を継続的に行うために、供給路62、63および64は、環状溝Gを有している。すなわち、軸部6は、作泥材、グリースおよび駆動油を供給するためのロータリージョイントとしても機能する。
【0046】
環状溝Gは、非回転部材61の内周面に沿った円環状に形成されている。なお、環状溝を、回転部材の外周面に沿った円環状に形成してもよい。また、供給路62、63および64の各々は、軸部6に対して1つずつ設けられていてもよいし、複数設けられていてもよい。
【0047】
(振動センサの構成)
図1に示すように、振動センサ7は、カッタヘッド1に設けられている。一例ではあるが、振動センサ7は、加速度計により構成されている。振動センサ7の設置場所は、カッタヘッド1の振動を検知可能であればいかなる位置でもよい。なお、振動センサ7は、カッタヘッド1の半径方向において、内周側(中央部付近)に設置することが好ましい。すなわち、振動センサ7は、制振ジャッキ8によるカッタヘッド1の変位が特に大きくなる軸部6の近傍に設置することが好ましい。振動センサ7の検知信号は、制振ジャッキ8に設けられた駆動制御部7aにより取得される。
【0048】
(制振ジャッキの構成)
制振ジャッキ8は、駆動制御部7aにより駆動が制御されるように構成されている。駆動制御部7aは、たとえば、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)およびRAM(Random Access Memory)などを含む制御基板として構成されている。
【0049】
駆動制御部7aは、振動センサ7の検知信号に基づいて、制振ジャッキ8の駆動を制御するように構成されている。一例ではあるが、駆動制御部7aは、振動センサ7により検知したカッタヘッド1の振動を効果的に打ち消すために、主として、振動センサ7において検知した振動とは逆位相の振動を制振ジャッキ8により発生させて、カッタヘッド1自体の振動を抑制する制御を行うように構成されている。
【0050】
制振ジャッキ8は、1つのみ設けられている。制振ジャッキ8は、前後方向に延びている。制振ジャッキ8は、カッタヘッド1の回転中心軸線α上で、かつ、軸部6よりも後方に配置されている。制振ジャッキ8は、筒部8aが固定部材5に取り付けられ、筒部8aから進退し、軸部6に取り付けられるロッド部8bを含んでいる。
【0051】
筒部8aは、後端側が固定部材5により回転可能に支持されている。ロッド部8bは、前端側が軸部6(回転部材60)に対して回転可能に接続されている。制振ジャッキ8は、油圧式のジャッキである。なお、制振ジャッキ8は、電動式のジャッキであってもよい。
【0052】
制振ジャッキ8は、カッタヘッド1が回転する際に、筒部8aに対してロッド部8bを回転させることにより、制振ジャッキ8自体の構造内で、軸部6を回転支持するように構成されている。すなわち、制振ジャッキ8は、制振ジャッキ8自体の構造内で、筒部8aに対する軸部6(回転部材60)の回転を吸収するように構成されている。したがって、カッタヘッド1とともに回転中心軸線α回りに回転する構成は、軸部6の回転部材60、および、ロッド部8bである。
【0053】
制振ジャッキ8は、複数の支持脚10に支持されたカッタヘッド1に対して、カッタヘッド1に後方から直接接続された軸部6を介して、前後方向の振動を加えることにより、カッタヘッド1の振動を抑制するように構成されている。
【0054】
カッタヘッド1は、外周支持方式であり、内周側の比較的大きな範囲RA(図1の二点鎖線で囲んだ範囲)が複数の支持脚10に拘束されない範囲となっている。したがって、カッタヘッド1は、カッタヘッド1の中央部に配置された制振ジャッキ8が伸縮した場合、範囲RAを太鼓(ダイアフラム)のように前後に膨らませる振動が発生するように構成されている。
【0055】
トンネル掘削機100は、このような振動を制振ジャッキ8および軸部6により発生させて、掘削に伴いカッタヘッド1自体に発生する振動を打ち消すことにより、カッタヘッド1自体に発生する振動を低減するように構成されている。
【0056】
(第1実施形態の効果)
第1実施形態では、以下のような効果を得ることができる。
【0057】
第1実施形態では、上記のように、カッタヘッド1に後方から直接接続される軸部6に対して機内室C2において取り付けられ、軸部6を介してカッタヘッド1に前後方向の振動を加えることにより、カッタヘッド1の振動を抑制する制振ジャッキ8を設ける。これによって、軸部6に取り付けられる制振ジャッキ8により、カッタヘッド1に対して直接接続される軸部6を介してカッタヘッド1に振動を伝えることができる。また、制振ジャッキ8がチャンバC1側ではなく比較的スペースに余裕のある機内室C2に配置されるため、カッタヘッド1の振動を抑制するのに必要となる出力を確保可能な制振ジャッキ8の大きさを確保することが可能となる。以上の結果、カッタヘッド1自体の振動を効果的に低減することができる。
【0058】
第1実施形態では、上記のように、軸部6は、カッタヘッド1の回転中心軸線α上に配置されている。これによって、カッタヘッド1が回転する際に、軸部6を回転中心軸線α上に保持することができる。すなわち、カッタヘッド1の回転に伴い軸部6が前後方向に交差する方向に移動することを防ぐことができる。
【0059】
第1実施形態では、上記のように、カッタヘッド1は、駆動油が供給されることによりカッタヘッド1の外周側の端部1aから突出して余掘りを行う油圧式の余掘用ジャッキ12aを含み、カッタヘッド1の回転中心軸線α上に配置された軸部6には、少なくとも、機内室C2からカッタヘッド1側に駆動油を送る供給路64が設けられている。これによって、軸部6を、制振ジャッキ8の振動を伝えるための構成としてだけではなく、余掘用ジャッキ12aの駆動油の供給路64としても利用することができるので、部品点数を削減して、装置構成を簡素化することができる。
【0060】
第1実施形態では、上記のように、機内室C2において、制振ジャッキ8を、胴体20の内周面21aに固定する固定部材5をさらに備える。これによって、固定部材5により制振ジャッキ8の反力を受けることができるようになり、制振ジャッキ8の振動をより効果的にカッタヘッド1に伝えることができる。その結果、カッタヘッド1自体の振動をより効果的に低減することができる。
【0061】
第1実施形態では、上記のように、制振ジャッキ8は、カッタヘッド1の回転中心軸線α上で、かつ、軸部6よりも後方に配置されている。これによって、制振ジャッキ8を軸部6と同軸上に配置することができるので、制振ジャッキ8の振動を発生させる力を、軸部6およびカッタヘッド1に効果的に伝えることができる。その結果、カッタヘッド1自体の振動をより効果的に低減することができる。
【0062】
第1実施形態では、上記のように、機内室C2において制振ジャッキ8を固定する固定部材5をさらに備え、制振ジャッキ8は、筒部8aが固定部材5に取り付けられ、筒部8aから進退し、軸部6に取り付けられるロッド部8bを含み、筒部8aに対してロッド部8bを回転させることにより、制振ジャッキ8自体の構造内で、軸部6を回転支持するように構成されている。これによって、制振ジャッキ8自体の構造内で、軸部6を回転支持することができるので、軸部6を回転支持する専用の構成を設ける場合と比較して、部品点数を削減して、装置構成を簡素化することができる。
【0063】
第1実施形態では、上記のように、カッタヘッド1の半径方向の外周側に配置され、カッタヘッド1を後方から支持する複数の支持脚10をさらに備え、制振ジャッキ8は、複数の支持脚10に支持されたカッタヘッド1に、軸部6を介して前後方向の振動を加えることにより、カッタヘッド1の振動を抑制するように構成されている。これによって、カッタヘッド1の支持方式がいわゆる外周支持方式となり、カッタヘッド1の中央部付近が複数の支持脚10により拘束されないため、カッタヘッド1の中央部付近を効果的に振動させることが可能となる。
【0064】
[第2実施形態]
図4および図5を参照して、第2実施形態について説明する。この第2実施形態では、トンネル掘削機100が1つの制振ジャッキ8を備える上記第1実施形態とは異なり、トンネル掘削機200が複数の制振ジャッキ208を備える例について説明する。なお、図中において、上記第1実施形態と同様の構成には、同じ符号を付して図示する。
【0065】
第2実施形態のトンネル掘削機200は、複数(2つ)の制振ジャッキ208を備えている。
【0066】
制振ジャッキ208は、筒部208aと、筒部208aから前方側に進退移動するロッド部208bとを含んでいる。第1実施形態のロッド部8bとは異なり、第2実施形態のロッド部208bは、カッタヘッド1とともに回転することはない。
【0067】
2つの制振ジャッキ208は、カッタヘッド1の前後方向に直交する方向において、軸部6を挟み込むように配置されている。詳細には、2つの制振ジャッキ208は、軸部6の左右方向の一方側および他方側に1つずつ配置されている。すなわち、複数(2つ)の制振ジャッキ208は、軸部6の回転方向において、等角度間隔(180度間隔)で配置されている。2つの制振ジャッキ208は、略平行に配置されている。
【0068】
軸部6と、軸部6を挟み込む複数(2つ)の制振ジャッキ208との間には、回転軸受部209が設けられている。回転軸受部209は、複数の制振ジャッキ208を軸部6に取り付けるとともに、複数の制振ジャッキ208に対して軸部6を回転支持するように構成されている。複数の制振ジャッキ208は、後端側が固定部材5に接続されている。
【0069】
複数の制振ジャッキ208は、複数の支持脚10に支持されたカッタヘッド1に対して、カッタヘッド1に後方から直接接続された軸部6を介して前後方向の振動を加えることにより、カッタヘッド1の振動を抑制するように構成されている。
【0070】
第2実施形態のその他の構成は、上記第1実施形態と同様である。
【0071】
(第2実施形態の効果)
第2実施形態では、以下のような効果を得ることができる。
【0072】
第2実施形態では、上記のように、カッタヘッド1に後方から直接接続される軸部6に対して機内室C2において取り付けられ、軸部6を介してカッタヘッド1に前後方向の振動を加えることにより、カッタヘッド1の振動を抑制する制振ジャッキ208を設ける。これによって、上記第1実施形態と同様に、カッタヘッド1自体の振動を効果的に低減することができる。
【0073】
第2実施形態では、上記のように、制振ジャッキ208は、複数設けられ、複数の制振ジャッキ208は、カッタヘッド1の前後方向に直交する方向において、軸部6を挟み込むように配置され、軸部6と軸部6を挟み込む複数の制振ジャッキ208との間には、複数の制振ジャッキ208を軸部6に取り付けるとともに、複数の制振ジャッキ208に対して軸部6を回転支持する回転軸受部209が設けられている。これによって、複数の制振ジャッキ208により、カッタヘッド1自体の振動を低減するための比較的大きな振動を発生させることができる。
【0074】
第2実施形態のその他の効果は、上記第1実施形態と同様である。
【0075】
[変形例]
なお、今回開示された実施形態および変形例は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した実施形態の説明ではなく特許請求の範囲によって示され、さらに特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更(変形例)が含まれる。
【0076】
たとえば、上記第1および第2実施形態では、カッタヘッドの支持方式として外周支持方式を採用した例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、カッタヘッドの支持方式として中間支持方式や、センターシャフト支持方式などの異なる支持方式を採用してもよい。
【0077】
また、上記第1実施形態では、トンネル掘削機が1つの制振ジャッキを備える例を示し、上記第2実施形態では、トンネル掘削機が2つの制振ジャッキを備える例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、トンネル掘削機が3つ以上の制振ジャッキを備えていてもよい。
【0078】
また、上記第1および第2実施形態では、制振ジャッキを、固定部材を介して胴部の内表面に固定した例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、制振ジャッキを、固定部材を介して隔壁の後面に固定してもよい。
【0079】
また、上記第1および第2実施形態では、制振ジャッキのロッド部を軸部に接続した例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、制振ジャッキの筒部を軸部に接続してもよい。また、制振ジャッキの筒部を軸部に接続することに加え、ロッド部が固定部材に取り付けられるようにしてもよい。
【0080】
また、上記第1実施形態では、1つの制振ジャッキのロッド部を筒部に対して回動させることにより、制振ジャッキ自体の構造内で筒部に対する軸部の回転を吸収した例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、第2実施形態と同様に、1つの制振ジャッキと軸部との間に回転軸受部を設けてもよい。
【0081】
また、上記第1および第2実施形態では、制振ジャッキをカッタヘッドの回転中心軸線上に配置した例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、制振ジャッキをカッタヘッドの回転中心軸線からずれた位置に配置してもよい。
【0082】
また、上記第1および第2実施形態では、軸部に作泥材の供給路を設けた例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、軸部に作泥材の供給路を設けなくてもよい。
【0083】
また、上記第1および第2実施形態では、軸部に余掘用ジャッキの潤滑用のグリースの供給路を設けた例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、軸部に余掘用ジャッキの潤滑用のグリースの供給路を設けなくてもよい。
【0084】
また、上記第1および第2実施形態では、軸部に余掘用ジャッキの駆動油の供給路を設けた例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、軸部に余掘用ジャッキの駆動油の供給路を設けなくてもよい。
【0085】
また、上記第1および第2実施形態では、泥土圧式のトンネル掘削機に本発明を適用した例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、泥水式のトンネル掘削機に本発明を適用してもよい。
【0086】
また、上記第1および第2実施形態では、軸部を、カッタヘッドに後方から接続されるとともに、制振ジャッキが取り付けられる部材により構成した例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、たとえば、図6に示すように、軸部306を、制振ジャッキ(図示せず)が取り付けられる部材306a、および、部材306aとカッタヘッド1とを互いに接続する中間部材306bなどを含むように構成してもよい。この他、カッタヘッドを、地盤を掘削するカッタヘッド本体、および、軸部を接続するためにカッタヘッド本体の後面に設けられた補助部材などを含むように構成してもよい。
【符号の説明】
【0087】
1 カッタヘッド
1a (カッタヘッドの外周側の)端部
5 固定部材
6、306 軸部
6a (軸部の)後端
8、208 制振ジャッキ
8a 筒部
8b ロッド部
10 支持脚
12a 余掘用ジャッキ
20 胴体
21a (胴体の)内周面
23 隔壁
64 (余掘用ジャッキの駆動油の)供給路
100、200 トンネル掘削機
209 回転軸受部
C1 チャンバ
C2 機内室
α (カッタヘッドの)回転中心軸線
図1
図2
図3
図4
図5
図6