(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-21
(45)【発行日】2024-07-01
(54)【発明の名称】構造物を振動させるための選択的モード制御のための方法、システム、及びデバイス
(51)【国際特許分類】
H04R 1/00 20060101AFI20240624BHJP
H04R 7/04 20060101ALI20240624BHJP
【FI】
H04R1/00 310F
H04R7/04
(21)【出願番号】P 2021520206
(86)(22)【出願日】2019-10-03
(86)【国際出願番号】 US2019054513
(87)【国際公開番号】W WO2020076612
(87)【国際公開日】2020-04-16
【審査請求日】2022-09-28
(32)【優先日】2018-10-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】521145462
【氏名又は名称】ユニヴァーシティ オヴ ロチェスター
【氏名又は名称原語表記】University of Rochester
【住所又は居所原語表記】601 Elmwood Avenue, Box URV, Rochester, NY 14642 (US)
(74)【代理人】
【識別番号】100100181
【氏名又は名称】阿部 正博
(74)【復代理人】
【識別番号】100125818
【氏名又は名称】立原 聡
(72)【発明者】
【氏名】ハイレマン マイケル チャールズ
(72)【発明者】
【氏名】ボッコ マーク フレデリック
(72)【発明者】
【氏名】アンダーソン デイヴィッド アラン
【審査官】大石 剛
(56)【参考文献】
【文献】特表2018-530209(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0113513(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04R 1/00
H04R 7/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項48】
前記選択された振動モードが、最低周波数パネルモードである、
請求項26から請求項42又は請求項44のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2018年10月13日に出願された米国仮特許出願第62/745,307号に基づく優先権を主張する。上記の出願の全体が、参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
本出願は、1つ又は複数の力アクチュエータ(force actuator)が構造的振動及び/又は放射された音を誘起する、又は抑制するために使用される構造物のための制御システムに関する。
【背景技術】
【0003】
力アクチュエータが、構造物における1つ又は複数の振動共振モードの応答を誘起/抑制するために長年にわたって使用されている。モード誘起/抑制のための技術は多くの形態をとり得る。このような形態の1つは、妨害に対する構造物の応答が、まず、構造体において分布した多くのセンサーを使用して推定される、フィードバックを伴う能動的振動制御である。センサー信号が制御装置に送信され、制御装置がセンサー信号を解釈し、次にそれに応答して、構造体において分布した1つ又は複数の力アクチュエータに独立した駆動信号を送信して、特定の振動共振モードの寄与を低減又は誘起する。制御装置は、次に、センサーを介して対応する構造的応答を解釈し、必要に応じて駆動信号を調節する。
【0004】
代替的に、構造物の振動共振モード及び妨害が知られている場合、モードの特定の部分集合に対する規定の応答を与えるために、力アクチュエータのアレイが構造物に配置され得る。例えば、参照により本明細書に組み込まれる米国特許出願第15/753,679号において説明されているモードクロスオーバー技術を使用してフラットパネルラウドスピーカーを開発する場合、望ましい音放射特性を伴う屈曲モード、例えば単純に支持された長方形パネルの最低屈曲モード、及び、望ましくない音放射特性を伴う抑制モードを誘起するようにアクチュエータアレイが構成される。
【0005】
選択的モード制御のために使用される技術にかかわらず、力アクチュエータに印加される駆動信号は、各振動共振モードの節線に対するアクチュエータの位置に依存する。所与の駆動信号に対して、節線付近に位置するアクチュエータが、特定のモードにおける比較的小さい力を加えるとともに、波腹に位置するアクチュエータは、モードにおける最大力を加える。これらの制御技術は多くのモードを同時にもたらすように設計されているので、各アクチュエータに印加される信号の相対振幅は、規定の振動応答を実現するための重み付け関数を使用して各モードの節線に対するそれらの位置により重み付けされなければならない。任意のアレイレイアウトに対して、重み付け関数を実装することは多くの更なる電子機器を必要とし、このことが製造のコストを高め、及び製品の信頼性を下げ得る。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従って、より簡単な、及びより費用対効果の高い手法により、望ましくないひずみを含まない音を生成するという課題を解決するデバイス、システム及び方法が必要とされる。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本出願の一態様は、パネルであって、パネルが、1つ又は複数の振動共振モードをもつ、パネルと、複数の原動力アクチュエータであって、原動力アクチュエータが、選択された周波数範囲におけるすべての他のモードの誘起を最小化しながら、所与の周波数範囲において選択されたパネルモードを有意に(大きく)(significantly)作動させるように特定された、パネルにおける位置においてアレイ状に配置されており、及び、アクチュエータがパネルに等しい力を加えたときに、選択されたモードが有意な力により駆動される、複数の原動力アクチュエータと、共通信号源であって、共通信号源が、複数の原動力アクチュエータに接続されており、信号が、共通信号源から複数の力アクチュエータの各々により受信され、更に、パネルにおいて複数の力アクチュエータにより生成された原動力が、選択された周波数帯域におけるパネルからの音の放射をもたらす、共通信号源とを備える、音を放射するためのデバイスである。多くの場合、パネルから音を放射することを目的とするとき、選択されたパネルモードは、パネルのすべての点が互いに同相で動く、すなわち、境界を除いてパネル表面に節線が存在しないパネルの振動の最低モードである。
【0008】
本出願の別の一態様は、パネルを選択するステップであって、パネルが、1つ又は複数の振動共振モードをもつ、選択するステップと、複数の原動力アクチュエータを配置するステップであって、原動力アクチュエータが、選択された周波数範囲におけるすべての他のモードの誘起を最小化しながら、所与の周波数範囲において選択されたパネルモードを有意に作動させるように、パネルにおける最適化された位置においてアレイ状に配置され、アクチュエータがパネルに等しい力を加えたときに、選択されたモードが有意な力により駆動される、配置するステップと、モードクロスオーバーネットワークを介して複数の原動力アクチュエータに共通信号源を接続させるステップと、共通信号源から信号を受信するステップであって、信号が、複数の力アクチュエータの各々により受信される、受信するステップと、パネルからの音の放射を出力するように、パネルに複数の力アクチュエータにより生成された原動力を印加するステップであって、音が、選択された周波数帯域にある、印加するステップとを含む、音の放射を制御する方法である。
【0009】
本出願の別の一態様は、本明細書において説明されている様々な実施形態のうちの任意の1つを備え得る本明細書において説明されているデバイス又はシステムにより音を放射する方法であって、方法が、モバイル構造物の内側に、又は外側に本明細書において説明されているデバイス又はシステムを配置するステップと、モバイル構造物の内側に、又は外側における本出願のデバイスを使用して音を放射するステップとを含む、方法である。特定の実施形態において、モバイル構造物は輸送車両である。特定の実施形態において、モバイル構造物はモバイル電子デバイスである。特定の実施形態において、モバイル構造物は音響放射体である。
【0010】
本出願の別の一態様は、本明細書において説明されている様々な実施形態のうちの任意の1つを備える本明細書において説明されているデバイスと、プログラム可能コンピュータプロセッサであって、コンピュータプロセッサが、本明細書において説明されているデバイスにネットワーク接続されており、更に、コンピュータプロセッサが、デバイスの共通信号源により生成される信号を制御する、プログラム可能コンピュータプロセッサとを備える、音の放射を制御するためのシステムである。
【0011】
本出願の様々な態様において別々に、又は一緒に組み合わされて具現化される様々な実施形態が存在する。本明細書の以下の実施形態の独立した列挙は、本出願の様々な態様を実施する場合における任意の特定の実施形態と本明細書において列挙された他の実施形態との組み合わせを否定しない。
【0012】
特定の実施形態において、デバイスは平らなパネルを含み、円形、長方形、又は正方形からなる群から選択された形状をもつ。特定の実施形態において、デバイスは、1つの増幅器である共通信号源を含む。
【0013】
特定の実施形態において、アクチュエータは、振動共振モードの規定の部分集合をもたらすように構造体に位置している。特定の実施形態において、アクチュエータは、規定の部分集合に含まれるパネルの振動共振モードのうちの1つ又は複数の誘起を打ち消すように位置している。
【0014】
特定の実施形態において、アクチュエータは、アクチュエータが節線に位置するように位置しており、又は、選択されたパネルモードに作用する正味の力がゼロに近くなるように波腹領域に位置する。特定の実施形態において、規定のモード集合は規定の帯域幅内において共振するパネルモードのすべてを含む。特定の実施形態において、力アクチュエータは、目標総電気インピーダンスを生成するように、選択された直列/並列構成により配線される。特定の実施形態において、パネルにおける1つ又は複数の個別に駆動される個々の力アクチュエータを連動させるアレイが使用される。
【0015】
特定の実施形態において、力アクチュエータは、電磁コイル駆動装置である。特定の実施形態において、力アクチュエータは圧電材料を含む。特定の実施形態において、原動力アクチュエータは、所与の周波数範囲において最低パネルモードのみを有意に作動させるように、パネルにおける最適化された位置においてアレイ状に配置されている。特定の実施形態において、モードクロスオーバーネットワークが複数の原動力アクチュエータを接続し、共通信号源が、モードクロスオーバーネットワークを介して複数の原動力アクチュエータに接続されている。
【0016】
特定の実施形態において、圧電材料はセラミックスを含む。特定の実施形態において、圧電材料は有機ポリマーを含む。特定の実施形態において、有機ポリマーはポリビニリデンフルオライド(PVDF:polyvinylidene fluoride)を含む。特定の実施形態において、信号はデジタル信号、アナログ信号、部分的にデジタルの信号、及び部分的にアナログの信号からなる群から選択される。
【0017】
特定の実施形態において、信号はオーディオ信号である。特定の実施形態において、信号は、発話、音楽、及び他の天然に存在する音、又は人工的に合成された音のうちの1つ又は複数から選択された情報を含む。
【0018】
特定の実施形態において、システムはデータ受信器を更に備え、データ受信器は、プログラム可能コンピュータプロセッサにネットワーク接続されており、更に、データ受信器を介してシステムに入力されたデータは、デバイスの共通信号源により出力される信号に変換される。特定の実施形態において、データ受信器は、マイクロホンである。特定の実施形態において、データ受信器は、モバイル電子デバイス又は振動センサーである。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】増幅器を介して入力信号により駆動されたときに振動共振モードの集合を誘起/抑制するように構成された力アクチュエータを含む構造物である。
【
図2】個別に駆動される個々のアクチュエータを連動させて動作する12個の力アクチュエータのアレイを含んで構成された異なるアスペクト比の2つのパネル構造物を示す。
【
図3】長方形パネルの(1,1)モードを誘起するように、及び、多くの他のモードの誘起を抑制するように構成された4つのアクチュエータを含む例示的なレイアウトである。
【
図4】長方形パネルの(2,1)モードを誘起するように、及び、多くの他のモードの誘起を抑制するように構成された4つのアクチュエータを含む例示的なレイアウトである。
【
図5】長方形パネルの(1,1)モードを誘起するように、及び、多くの他のモードの誘起を抑制するように構成された8つのアクチュエータを含む例示的なレイアウトである。
【
図6】長方形パネルの(1,1)モードを誘起するように、及び多くの他のモードの誘起を抑制するように構成された18個のアクチュエータを含む例示的なレイアウトである。
【
図7】シミュレーションによるパネルにおける4つのアクチュエータに対する最適化された位置を示す。位置は正規化された寸法に対して示される。
【
図8】シミュレーションによるパネルにおける8つのアクチュエータに対する最適化された位置を示す。位置は正規化された寸法に対して示される。
【
図9】シミュレーションによるパネルにおける11個のアクチュエータに対する最適化された位置を示す。位置は正規化された寸法に対して示される。
【
図10】1つのアクチュエータ及び3つの最適化された構成体からの誘起のもとでの本文書により説明されているアクリルパネルに対する平均表面速度及び振動計画像を示す。
【
図11】直列に接続された11個のアクチュエータを含む実験パネル構成の写真を示す。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本開示が以下で詳細に説明され、本開示が例示的な実施形態に関連して説明されるが、本開示は図及び添付の特許請求の範囲に示される特定の実施形態により限定されない。
【0021】
添付の構造及び図に例を示しながら、本出願の特定の態様及び例示的な実施形態が詳細に参照される。本出願の態様は方法、材料、及び例を含む例示的な実施形態と組み合わされて説明され、このような説明は限定するものではなく、本出願の範囲は概して知られた、又は、本明細書に組み込まれたすべての同等なもの、代替例、及び変更例を包含することを意図したものである。別段の定義がされない限り、本明細書で使用されているすべての技術用語及び科学用語は本出願が属する技術分野の当業者により一般的に理解される意味と同じ意味をもつ。当業者は、本出願の態様及び実施形態の実施において使用され得る本例において説明されているものと同様の又は同等な多くの技術及び材料を認識する。本出願の説明されている態様及び実施形態は説明されている方法及び材料に限定されない。
【0022】
本明細書及び添付の特許請求の範囲において使用される英語の「a(不定冠詞)」、「an(不定冠詞)」、及び「the(定冠詞)」という単数形に対応した表現は、内容が明確に別様に示していない限り複数の指示対象を包含する。
【0023】
範囲は「おおむね(約)」ある特定の値から、及び/又は、「おおむね(約)」別の特定の値までとして表記される場合がある。このような範囲が記載されている場合、別の実施形態はそのようなある特定の値から、及び/又は、そのような他の特定の値までを包含する。同様に、値が近似として記載されている場合、「おおむね(約)」という先行詞の使用により、特定の値が別の実施形態を形成することが理解される。範囲のうちの各々のものの端点が他方の端点に関連して有意であることと、他方の端点とは無関係に有意であることとの両方が更に理解される。本明細書において開示されている多くの値が存在すること、及び、各値がその値自体に加えて「おおむね(約)」その特定の値としても本明細書に開示されていることが更に理解される。
【0024】
本出願は、1つ又は複数の力アクチュエータが構造的振動及び/又は放射された音を誘起する、又は抑制するために使用される構造物のための制御システムを説明する。特に、本出願は、原動力アクチュエータのすべてがパネルに等しい圧力を印加したときに、好ましくは最低モードのみが所与の周波数範囲内において有意に作動させられるように、平らなパネルに原動力アクチュエータを配置するシステム及び方法を開示する。
【0025】
構造物の振動共振モードが知られている場合、力アクチュエータのアレイは、モードの特定の部分集合に対して規定の応答を与えるように構造物に位置し得る。力アクチュエータに印加される駆動信号は、各振動共振モードの節線に対するアクチュエータの位置に依存する。所与の駆動信号に対して、節線付近に位置するアクチュエータは、特定のモードにおける比較的小さい力を加えるのに対し、波腹に位置するアクチュエータは、そのモードにおける最大力を加える。
【0026】
共通源により駆動される場合に、構造的モードの所望の部分集合における他のモードを抑制しながら、アクチュエータが選択されたモードを有意に誘起するように、アクチュエータの配置を特定するための最適化方法が本明細書において説明されている。重み付け関数の必要性、及び、選択的モード誘起のための重み付け関数を実装することに関連した追加的なコストが、力アクチュエータの配置を最適化することにより不要とされる。
【0027】
システム
【0028】
図1は、本明細書において説明されているシステムの特定の実施形態を示す。構造物(100)は力アクチュエータ(101)を含む弾性パネルであり、力アクチュエータ(101)は、配線(104)によりアクチュエータにネットワーク接続された増幅器(103)を介して入力信号(102)により駆動されたとき、振動共振モードの集合を誘起/抑制するためにパネルに圧力を加えるように弾性パネルに配置されている。システムはコンピュータプロセッサ(図示されていない)を含むコンピュータネットワークを更に備え得る。本明細書において言及される圧力は単位面積当たりの力であり、力アクチュエータは、弾性パネルとのそれらの接触点の各々において等しい圧力(例えば単位面積当たりの力)を印加することを当業者は理解する。アクチュエータとパネルとの間の接触面積の違いを避けるために、等しく一貫した手法によりパネルと完全に接触するように力アクチュエータが設計されていることを当業者は理解する。アクチュエータとパネルとの間の接触面積の違いが存在しないことを確実なものとすることが、弾性パネルに対する異なるアクチュエータによる異なる力の印加を防ぐ。
図2は、
図1のシステムの実用的な実施形態のペアを示す。
【0029】
本明細書の方法、デバイス、及びシステムにおいて使用されるパネルは弾性パネルである。パネルは、アルミニウム、ガラス、木材、プラスチック、鉄と非鉄金属との両方、それらの組み合わせなど、及び弾性をもつ他の物質を部分的に、又は完全に包含するがこれらに限定されない材料から作られ得る。本明細書において以下で説明されている特定の実施形態はアクチュエータ構成体の適切な動作を実証する4個、8個、及び11個のアクチュエータを含むアクリルパネルを使用する。しかし、本明細書において説明されている方法、デバイス、及びシステムがアクリルパネルの使用に限定されないことを当業者は理解する。
【0030】
本明細書において説明されている方法、デバイス、又はシステムでは、力アクチュエータのアレイが弾性パネルの曲げ振動を誘起する。個々の力アクチュエータの各々自体は、音増幅デバイスではなく、力アクチュエータだけでは感知できる音響エネルギーを放射しない。しかし、力アクチュエータが本明細書において説明されているように弾性パネルに搭載されたとき、弾性パネルの曲げ振動が誘起され、このことが結果として、振動する弾性パネルによる音響エネルギーの放射をもたらす。1つの力アクチュエータがオーディオ信号により駆動されたとき、それが弾性プレートの全体を誘起して、音がパネル全体により放射される。弾性パネルに搭載された1つの力アクチュエータを使用すると仮定すると、弾性パネルのより高次の屈曲モードが不可避的に誘起されることになる。
【0031】
アレイ状の力アクチュエータは、パネルのより高次の屈曲モードの誘起を回避するために共同して動作する。他の屈曲モードを誘起することは音のひずみをもたらし得るので、好ましくは、パネルの最低次の屈曲モードのみが誘起され、他の屈曲モードを誘起することが避けられる。望ましくないパネルモードの誘起を明確に回避しながら、オーディオ信号が周波数帯域に分割され、力アクチュエータ信号が特定のパネルモードの制御された誘起を実現するために制御される手法は、「モードクロスオーバー」方法を通したものである。
【0032】
「モードクロスオーバーネットワーク」の重要な機能は、振動するパネルのどの屈曲モードが誘起されるかを制御するために、力アクチュエータのアレイを使用することである。モードクロスオーバーネットワークを使用した実施形態では、弾性パネルの特定の振動モードを誘起するために選択された変動するゲインファクターを伴う異なる周波数範囲における信号が個々の力アクチュエータに送信され、従って、弾性パネルの全面が音を放射する。アクチュエータのアレイに送信された信号は、複数のアクチュエータが弾性パネルの特定の振動モードを誘起するように適切にスケール調整される。例えば、弾性パネルの最低振動モードを誘起するために、パネルの中心により近いアクチュエータは、より高いゲインファクターをもたなければならず、境界により近いものは、より低いゲインを使用しなければならない。
【0033】
特定の実施形態において、本明細書において説明されている方法、システム、及びデバイスは、モードクロスオーバーネットワークを伴わずに使用され得る。更に、弾性パネルが、集合内のすべての他のモードの応答を打ち消しながら、その最低屈曲モードにおいて誘起されることが好ましいが、本明細書において説明されている方法、システム、及びデバイスはこの好ましさにより限定されない。
【0034】
他の実施形態において、本明細書において説明されている方法、システム、及びデバイスは、(例えば、ノイズ消去を目的として)基本振動共振モード以外のパネルモード、又はモードの組み合わせを誘起するために使用され得る。当業者は、パネルモードの集合内のパネルモードのうちの任意のものを個別に誘起するために、本明細書において説明されている方法、システム、及びデバイスをどのように適応させるかを理解する。本明細書において説明されている方法、システム、及びデバイスは、基本振動共振モードの誘起に限定されないが、集合内の任意のモードに対して拡張され得る。
【0035】
図3~
図6は、長方形弾性パネルの特定のモードを誘起するように、及び多くの他のモードの誘起を抑制するように構成された異なる数のアクチュエータを含む例示的なレイアウトを示す。特に、
図3及び
図4の比較によると、パネルの節線に対する、パネルにおけるアクチュエータの位置のシフトが、異なるパネルモードの誘起/抑制をもたらすことが見受けられ得る。
図3では、(1,1)モードが3.000Paにより誘起されるとともに、すべての他のモードが打ち消され、
図4では、(2,1)モードが3.4641Paにより誘起されるとともに、すべての他のモードが打ち消される。
図5では、8個の力アクチュエータが使用されているが、それらの配置は、(1,1)モードのみが誘起されるとともに、他のすべてが打ち消されるようにされている。18個の力アクチュエータが使用される
図6では、他のモードが打ち消された(又は非常にわずかに誘起された)状態で、パネルが(1,1)モードにおいて最も有意に誘起されることが見受けられ得る。
【0036】
本明細書において説明されている方法、システム、及びデバイスがパネルの特定の形状又はサイズにより限定されないことを当業者は理解する。平らな弾性パネルは、円形、正方形、長方形などであり得る。縁部が概して自由状態であるか、又は弾性的に支持されると想定される分布モードラウドスピーカーとは対照的に、好ましくは、平らなパネルは単純に支持された、又は固定された縁部をもつ。
【0037】
弾性パネルのバイブロエラスティック挙動(vibroelastic behavior)
【0038】
式(1)は、L
x×L
yの大きさをもつ力を受けるプレートのバイブロエラスティック挙動を説明するために使用される[Cremer,L.,Heckl,M.,及びPeterson,B.、Structure-Borne Sound、Springer,3 edition、2005]。プレートにおける外部から印加される圧力の分布はp(x,y,t)により表され、パネルの空間的に分布した面外変位量はu(x,y,t)により表され、ここで、(x,y)はパネルにおける位置であり、tは時間を表す。
【数1】
という表記はu(x,y,t)の時間に関する二次導関数を表す。Dはパネルの「曲げ剛性」と呼ばれる量であり、ρはパネル材料の密度であり、hはパネル厚さである。
【数2】
【0039】
モード分解
【0040】
上記(1)に対するRayleigh-Ritz解はプレートの変位量プロファイルを無限数の直交振動モードの和と考え[Fuller,C.,Elliott,S.,及びNelson,P.、Active Control of Vibration、Associated Press、1996]、下記の式(2)により与えられる。モードの実際の形状及びそれらの二次共振挙動はパネルの境界条件による影響を受ける[Berry,A.,Guyader,J.-L.,及びNicolas,J.、「A General Formulation for the Sound Radiation from Rectangular,Baffled Plates with Arbitrary Boundary Conditions」、J.Acoust.Soc.Am.、88(6)、2792~2802頁、1990;Fletcher,N.H.、及びRossing,T.D.、The Physics of Musical Instruments,Springer,2 edition、1998;Li,W.L.、「Vibroacoustic analysis of rectangular plates with elastic rotational edge restraints」、Journal Acous.Soc.Am.、120(2)、769~779頁、2006]モード形状関数はG
r(x,y)と表され、rはモードインデックスである。各モードの振幅はA
rにより表される。多くの場合、二次元構造物は、例えばm及びnという2つのモードインデックスを使用するが、モードは一般性を失わずにそれらの共振周波数の次数を表すrを使用してインデックスを付されることが想定される。
【数3】
【0041】
Arを特定するために、外部から印加される圧力の分布p(x,y,t)は文字nを使用してインデックスを付された、関心のある周波数範囲内においてパネルにおける屈曲波長に対して寸法が小さいN個のアクチュエータ要素のアレイを備えることが考慮される。小さいサイズは、δ(x-xn)δ(y-yn)として、各駆動装置からの圧力分布の近似を可能にし、この場合においてアクチュエータは(xn,yn)に配置される。各アクチュエータ要素は、パネルにおける関連する圧力を取得するために、4/LxLyという係数(ファクター)によりスケール調整された、fnにより表された力を生成する[Anderson,D.,Heilemann,M.C.,及びBocko,M.F.、「Flat-Panel Loudspeaker Simulation Model with Electromagnetic Inertial Exciters and Enclosures」、Journal Audio Eng.Soc.、2017]。任意の所与のモードに対して印加される実際の圧力Prは、アクチュエータの位置に依存し、例えば、所与のモードの節に位置するアクチュエータはそのモードを誘起することができない。モード波長と比べて寸法が無視できる程度であるアクチュエータの低周波例では、位置に基づいてアクチュエータにより供給されるモードにおける圧力をスケール調整する駆動装置対モード(driver-to-mode)「カップリングファクター」は、Gr(xn,yn)により与えられる。
【0042】
N個のアクチュエータがパネルに力を印加する場合、所与のモードにおける全圧P
rは、単にそのモードにおける各アクチュエータの圧力の和である。R個のモードにおけるそれぞれの全圧は次のように行列形式により表される。
【数4】
【0043】
特定の実施形態において、すべてのアクチュエータが等しい圧力を供給する場合、アクチュエータ位置は、最低モード圧力に対する高次モード圧力の比を最小化することにより決定される。
【0044】
最適化方法
【0045】
力アクチュエータがすべて1つの増幅器により駆動されて、それでもなお弾性パネルにおける1つの構造的モードのみを誘起するように、弾性パネルの表面における力アクチュエータの配置を決定するための最適化方法が本明細書において説明されている。本明細書において「最適化された」ということは、選択されていないモードにおける力の合計に対する、誘起されるように選択されたモードにおける力の比を最大化するアクチュエータ位置を導出するために、探索が実施されることを意味する。好ましくは、ラウドスピーカーに対して、最低モードが誘起される。
【0046】
N個のアクチュエータの集合に対して、N個の最低モードは、アレイが誘起することを意図したモードを除いて、すべて0(又は、ほぼ0)の力をもたなければならないことが好ましい。好ましくは、誘起される選択されたモードにおける力は、他のN個のモードのうちの任意のものにおける力より少なくとも10倍大きい。例えば、下記の表1において、最低モードは、集合における他のものより比べものにならないほど強い力をもつ。駆動装置構成(ひいては、各モードにおいて加えられる相対的な力)は、使用されるアクチュエータの数に応じて変化する。下記の表1において、アクチュエータの数が増えるにつれて、最低モードにおける力が大きくなる。ユーザーは、使用されるアクチュエータ当たり1つのモードにおける力のみを指定し得ることに留意されたい。
【0047】
下記の表1における4つのアクチュエータの例を参照すると、最初の4つのモードは、最低モード以外、すべて0の力をもつ。8つのアクチュエータの例では、最初の8つのモードは、最低モード以外、すべて0の力をもつ。同じことが、11個のアクチュエータの例に当てはまる。最初の4/8/11個以外の幾つかのモードも0の力をもつことも見受けられ得る。これは、使用される駆動装置の数、及びパネルのアスペクト比に依存する。最適化されたアクチュエータレイアウトの対称性は、集合外のモードも抑制されることを可能にする。例えば、
図3では、その特定のモードの節線に対する最適化されたレイアウトの対称性に起因して、(4つのアクチュエータのみが存在する場合であっても)5番目のモード(2,2)は0の力となる。
【0048】
しかし、本明細書において説明されている最適化方法は、最低のものだけでなく任意のモードに対して概して機能し得る。任意の選択されたモードにその使用範囲を拡張するためにアルゴリズムに対して行われなければならない2つの変更が存在する。第1の点は、式(4)における列形式の行列においてP1が0に等しいこと、及び、どのモードが選択されるかに応じて、異なる行における力/圧力が非ゼロであることである。第2の変更は、式(4)の右側における1の列形式の行列が、他のモードを誘起するために必要な位相変化を補償するために、1つ又は複数の-1を含む必要があり得ることである。位相変化は、アクチュエータの極性(どの端部が+-信号に接続されるか)を切り替えることにより実現され得、従って、それらは依然として共通源により誘起され得る。一実施形態が
図4に示されており、この場合、最低から2番目のモードが誘起され、特に、最低モードは最小化される。本明細書における「最小化」は、特定の閾値レベルを示唆するわけではなく、むしろ、望ましくない(選択されていない)モードの誘起を最小化することを示唆する。選択されたモードの選択、又は適切な位相変化を実現する手段が本明細書における発明に対する限定ではないことを当業者は理解する。
【0049】
本明細書において説明されている方法及びシステムの好ましい目標は、同じ力を供給するアクチュエータのアレイを使用して最低パネルモードのみを誘起することである。これは、上記の式(3)を次のように構成することを意味する。
【数5】
【0050】
最適化の目標は、圧力P
1が最大化されるように、及び圧力P
2からP
Rが最小化されるように、アクチュエータ位置(x
1,y
1)から(x
N,y
N)を決定することである。従って、最適化は、
【数6】
と定式化され、ここで、
【数7】
である。
【0051】
N個のアクチュエータを使用してゼロの誘起圧力にスケール調整され得るモードの数であるRに対する明示的な制限は存在しない。本明細書において説明されている特定の実施形態は、時間サンプリングデータのナイキストレートに類似した、R=2N、又はアクチュエータの2倍のモードを使用する。
【0052】
コンピュータシステム
【0053】
特定の実施形態において、本明細書のデバイス又はシステムは、コンピュータシステムを介して制御され、及びネットワーク接続されてもよく、コンピュータシステムは、メモリ、プロセッサ、及び、任意選択的に二次ストレージデバイスを含む。幾つかの実施形態において、コンピュータシステムは、複数のプロセッサを含み、複数の、例えばブレードサーバー、又は他の知られたサーバー構成体として構成される。特定の実施形態において、コンピュータシステムは、入力デバイス、ディスプレイデバイス、及び出力デバイスを更に含む。幾つかの実施形態において、メモリは、RAM又は同様の種類のメモリを含む。特定の実施形態において、メモリは、プロセッサによる実行のための1つ又は複数のアプリケーションを記憶する。幾つかの実施形態において、二次ストレージデバイスは、ハードディスクドライブ、フロッピーディスクドライブ、CD-ROM、又はDVDドライブ、又は他の種類の不揮発性データストレージを包含する。特定の実施形態において、プロセッサは、メモリ又は二次ストレージに記憶された、又は、インターネット又は他のネットワークから受信されたアプリケーションを実行する。幾つかの実施形態において、プロセッサによる処理は、コンピュータ又は他の機械による実行のための、例えばソフトウェアモジュールといったソフトウェアにより実施されてもよい。これらのアプリケーションは、好ましくは、本明細書において説明されている機能及び方法を実施するために実行可能な命令を含む。アプリケーションは、好ましくはGUIを提供し、ユーザーはGUIを通して見ること、及びアプリケーションと対話することを行い得る。他の実施形態において、システムは、システムを制御するために、及び/又は見るために遠隔アクセス可能である。
【0054】
使用方法
【0055】
特定の実施形態において本明細書において説明されているデバイス及びシステムは、携帯電話、電子ノートパッド、電子タブレット、(例えば、救急車、又は医療関連の目的のために使用される自動車における)電子自動車ダッシュボード、電子オートバイダッシュボード、電子リストバンド、電子ネックウェア、壁設置型スクリーン、ポータブルモニター(例えば医療施設における車輪付きモニター)、電子ヘッドバンド、電子ヘルメット、電子アイウェア(例えば、装着者にリアルタイムで情報を表示し得るレンズを含む眼鏡)、電子リング、ネットワーク接続されたコンピュータ(例えばパーソナルコンピュータ)、リモート視認技術(例えば、地方医師クライアント患者通信デバイス)、及び一般的なポータブル電子デバイスを包含するがこれらに限定されないデバイスから音トランスミッションへの接続に使用され得る。特定の実施形態において、デバイスは、振動センサー、例えば圧電又はPVDFセンサー、又は加速度計であり得る。
【0056】
本出願は、限定と解釈されてはならない以下の例により更に説明される。本出願中で引用される特許出願、例えば、米国特許出願第15/255,366号、第15/778,797号及び、米国仮特許出願第62/745,324号、第62/745,314号、並びに、図面及び表を含むすべての参照物の内容が、参照により本明細書に組み込まれる。
【0057】
例
【0058】
結果は、L
x=38cm、L
y=28cm、及びh=6mmの寸法をもつシミュレーションによるアクリルプレートにおけるアクチュエータの配置に対して、本例において提示される。最適化ルーチンを実施するときにモードインデックスが適切にオーダー決めされるように、各モードの共振周波数が計算されなければならない。クランプされた縁部を想定した場合、(2つの方向インデックスm
r及びn
rに対応した)インデックスrをもつモードの共振周波数は、
【数8】
のように与えられる経験的な式を使用して計算され[Mitchell,A.K.及びHazell,C.R.、「A Simple Frequency Formula for Clamped Rectangular Plates」、J.Sound Vib.、118(2)、271~281頁、1987]、ここで、
【数9】
及び
【数10】
である。
【0059】
アクリルの場合、次の材料値、D=8.2Pa m、及びρ=1180kg/m
3が使用される。モード形状は、
【数11】
の形態をとる。
【0060】
最適化ルーチンは、MATLAB最適化ツールボックス(例えば、www.mathworks.com/products/optimization.htmlを参照されたい)を使用して実施される。アクチュエータ位置の結果が、
図7、
図8、及び
図9におけるアレイにおけるN個のアクチュエータの幾つかの値に対して示され、
図7、
図8、及び
図9は、アクチュエータのオーダー決めが重要ではないことを考慮した後で、広域的な最適条件を典型的に表す特定の実施形態を示す。
【0061】
下記の表1は、
図7、
図8、及び
図9からの3つの駆動レイアウトを想定した、スケール調整後における各アクチュエータがパネルに1Paの圧力を供給するときの、各プレートモードにおける圧力を列記している。表におけるモードは、増加する共振周波数に対して列記されている。各駆動レイアウトは、有意な大きさの圧力を伴う(1;1)モードを誘起することができ、ほとんどの他のモードは非常に小さい圧力を伴って、又はまったく圧力を伴わずに駆動される。4つのアクチュエータに対して、有意な大きさの圧力を伴って駆動される最低周波数モードは(5;1)モードである。8つのアクチュエータに対して、一次より上の最低の有意なモード(1;5)モードである。11個のアクチュエータを含む場合、(7;1)モードが有意に駆動される最低モードである。
【0062】
【0063】
図7、
図8、及び
図9からの3つの最適なアクチュエータアレイの実施形態は、上述の説明においてシミュレーションされているものと同じパラメータを使用してパネルに配置される。市販のアクチュエータは、パネルに重量及び共振を追加し[Anderson,D.,Heilemann,M.C.,及びBocko,M.F.、「Flat-Panel Loudspeaker Simulation Model with Electromagnetic Inertial Exciters and Enclosures」、Journal Audio Eng.Soc.、2017]、及び、外半径11mm及び内半径8.25mmをもつパネルへの環状接続部を含む。これらの特性は、パネルに共振を追加し、既存の共振をわずかにシフトさせ、及び、打ち消されることを意図したモードにおいて小さい大きさの圧力を加える。
【0064】
パネルは、その縁部において重い木製フレームにエポキシ樹脂で接着され、クランプされた境界条件をシミュレーションする。6mmのアクリルパネルは有効なスピーカーを作るには重過ぎる可能性がある一方で、等方性、アクリルの一様な挙動、その本質的に高い減衰、及びアクチュエータに比べて比較的大きい重量は、それを実験検証に対して理想的なものにする。上述のように、アクリルの使用は、どのような観点からも、本明細書において開示されている方法、システム、又はデバイスを限定しない。
【0065】
アレイにおける異なる数のアクチュエータは、様々なインピーダンスをもつパターンを生成し、多くの場合、別のアレイと同じインピーダンスを与えるように直列・並列の組み合わせによりアクチュエータをつなぐことはできない。4つのアクチュエータを含む構成体の場合、4Ωアクチュエータの2つの直列接続が、4Ω負荷を与えるように並列に配線される。8つのアクチュエータの構成体の場合、4Ωアクチュエータの2つの直列接続が、8Ωのインピーダンスを与えるように並列に配置される。11個のアクチュエータの構成体の場合、すべてのアクチュエータが、44Ωのインピーダンスを与えるように直列に配線される。11個のアクチュエータを含む実験構成の写真が
図10に示される。この実験は、6.8mmの空間分解能において1m離れたスキャニングレーザー振動計を使用して実施される。
【0066】
3つの最適化されたアクチュエータレイアウトの各々、及び、比較のために正規化された位置(0.37;0.71)に位置する1つのアクチュエータを使用した場合のパネルの平均表面速度が
図11に示される。
図11は、アクチュエータ構成体が幅広い周波数帯域にわたって成功裏に最低パネルモードのみを選択的に誘起することができることを例示している。おそらくアクチュエータの環状の形状に起因して、500Hz付近において、各構成体に対して(3;1)モードのわずかな誘起が存在する。最低モードの共振周波数は、[Anderson,D.,Heilemann,M.C.,及びBocko,M.F.、「Flat-Panel Loudspeaker Simulation Model with Electromagnetic Inertial Exciters and Enclosures」、Journal Audio Eng.Soc.、2017]において予測されている共振結合に起因してアクチュエータ構成体間において一貫性がない。アクチュエータアレイが市販のアクチュエータを使用して幅広い周波数帯域に対して最低パネルモードのみを誘起することに成功していることが実証されている。これらの結果は、モードクロスオーバーネットワークを使用したフラットパネルラウドスピーカーにおける実施態様に対して実用上有用である。
【0067】
様々な実施形態がここまでに説明されているが、このような開示は例示として提示されているだけであり、限定ではないことが理解されなければならない。従って、主題の構成及び方法の広さ及び範囲は、上述の例示的な実施形態のうちの任意のものにより限定されてはならないが、後述の特許請求の範囲及びそれらの均等なもののみに従って定義されなければならない。
【0068】
上述の説明は、本発明をどのように実施するかを当業者に教示することを目的としており、本説明を読むことで当業者に明らかとなるそれらの明らかな変更例及び変形例のすべてを詳細に説明することが意図されているわけではない。しかし、そのような明白な変更例及び変形例のすべてが後述の請求項により規定される本発明の範囲に含まれることが意図されている。特許請求の範囲は、そうでないことを文脈が明示的に示していない限り、特許請求の範囲で意図されている目的を達成するのに効果的な任意の順序でコンポーネントとステップとを包含することを意図したものである。