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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-21
(45)【発行日】2024-07-01
(54)【発明の名称】積層フィルムおよびその接着剤
(51)【国際特許分類】
   B32B 27/32 20060101AFI20240624BHJP
   B32B 27/00 20060101ALI20240624BHJP
   C09J 175/04 20060101ALI20240624BHJP
   B65D 65/40 20060101ALI20240624BHJP
   B32B 27/40 20060101ALI20240624BHJP
【FI】
B32B27/32 Z
B32B27/00 M
C09J175/04
B65D65/40 D
B32B27/40
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2021531306
(86)(22)【出願日】2019-10-25
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-02-03
(86)【国際出願番号】 US2019058094
(87)【国際公開番号】W WO2020117399
(87)【国際公開日】2020-06-11
【審査請求日】2022-10-11
(31)【優先権主張番号】62/774,989
(32)【優先日】2018-12-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】502141050
【氏名又は名称】ダウ グローバル テクノロジーズ エルエルシー
(73)【特許権者】
【識別番号】517222199
【氏名又は名称】ダウ キミカ デ コロンビア ソシエダ・アノニマ
(73)【特許権者】
【識別番号】590002035
【氏名又は名称】ローム アンド ハース カンパニー
【氏名又は名称原語表記】ROHM AND HAAS COMPANY
(74)【代理人】
【識別番号】100092783
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100095360
【弁理士】
【氏名又は名称】片山 英二
(74)【代理人】
【識別番号】100120134
【弁理士】
【氏名又は名称】大森 規雄
(72)【発明者】
【氏名】マルティネス バレネッチェ、フェリプ
(72)【発明者】
【氏名】カルドナ ジェミネス、エルキン デビット
(72)【発明者】
【氏名】カサルビアス、フアン カルロス
(72)【発明者】
【氏名】ウー、チエ
【審査官】大▲わき▼ 弘子
(56)【参考文献】
【文献】特表2015-528405(JP,A)
【文献】特表2019-527267(JP,A)
【文献】国際公開第2017/119469(WO,A2)
【文献】特表2016-532578(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B1/00-43/00、
C09J1/00-5/10、9/00-201/10、
B65D65/00-65/46
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
フィルム構造体であって、
(a)少なくとも1つの官能化フィルム層であって、前記フィルム構造体中の内部層として用いられる極性反応性基ポリオレフィン層を含み、当該極性反応性基ポリオレフィン層は、エチレンビニルアセテート極性コポリマーとグラフト化エチレン極性コポリマーとの物理的配合物、およびグラフト化エチレンエチルアクリレート極性コポリマーとグラフト化エチレン極性コポリマーとの物理的配合物からなる群から選択される、官能化フィルム層と、
(b)前記内部層の表面の少なくとも一部分に存在し、かつ接触する積層接着剤組成物と、を含み、
前記積層接着剤組成物の耐化学性の値は、フィルム構造体から構成された10cm×10cmのパウチをエタノールで満たして80℃で3日間保管した後、テアリングの破損モードまたは非破損モードを伴う層間剥離試験にかけられる場合、少なくとも0.772ニュートン/センチメートル(N/cm)の接着力にフィルム構造体が耐える結合強度である、フィルム構造体。
【請求項2】
前記少なくとも1つの官能化フィルム層は単層である、請求項1に記載のフィルム構造体。
【請求項3】
前記少なくとも1つの官能化フィルム層は、2つ以上の層の多層を含み、前記2つ以上の層のうち少なくとも1つが、極性反応性基ポリオレフィン層の内部層であり、前記2つ以上の層のうち少なくとも1つが、外部層である、請求項1に記載のフィルム構造体。
【請求項4】
前記積層接着剤組成物は、主としてイソシアネート基を有する汎用の単一成分接着剤である、請求項1に記載のフィルム構造体。
【請求項5】
フィルム構造体を生産するためのプロセスであって、
(i)少なくとも1つの官能化フィルム層を提供する工程であって、前記少なくとも1つの官能化フィルム層が、前記フィルム構造体中の内部層として用いられる極性反応性基ポリオレフィン層であり、当該極性反応性基ポリオレフィン層は、エチレンビニルアセテート極性コポリマーとグラフト化エチレン極性コポリマーとの物理的配合物、およびグラフト化エチレンエチルアクリレート極性コポリマーとグラフト化エチレン極性コポリマーとの物理的配合物からなる群から選択される、工程と、
(ii)積層接着剤組成物を提供する工程であって、前記積層接着剤組成物の耐化学性の値は、フィルム構造体から構成された10cm×10cmのパウチをエタノールで満たして80℃で3日間保管した後、テアリングの破損モードまたは非破損モードを伴う層間剥離試験にかけられる場合、少なくとも0.772ニュートン/センチメートル(N/cm)の接着力にフィルム構造体が耐える結合強度である、工程と、
(iii)前記積層接着剤組成物を前記内部層の表面の少なくとも一部分に塗布して、前記内部層と前記積層接着剤組成物との組み合わせフィルム構造体を形成する工程と、を含む、プロセス。
【請求項6】
積層体であって、
(A)少なくとも1つの官能化フィルム層であって、前記積層体中の内部層として用いられる極性反応性基ポリオレフィン層であり、当該極性反応性基ポリオレフィン層は、エチレンビニルアセテート極性コポリマーとグラフト化エチレン極性コポリマーとの物理的配合物、およびグラフト化エチレンエチルアクリレート極性コポリマーとグラフト化エチレン極性コポリマーとの物理的配合物からなる群から選択される、官能化フィルム層と、
(B)前記内部層の表面の少なくとも一部分に存在し、かつ接触する積層接着剤組成物であって、前記積層接着剤組成物の耐化学性の値は、積層体から構成された10cm×10cmのパウチをエタノールで満たして80℃で3日間保管した後、テアリングの破損モードまたは非破損モードを伴う層間剥離試験にかけられる場合、少なくとも0.772ニュートン/センチメートル(N/cm)の接着力に積層体が耐える結合強度である、積層接着剤組成物と、
(C)少なくとも1つの極性または非極性基材であって、前記極性または非極性基材表面のうち少なくとも一部分は、前記積層接着剤組成物と接触する、極性または非極性基材と、を含み、
前記少なくとも1つの官能化フィルム層と前記少なくとも1つの極性または非極性基材との間に配置される前記積層接着剤組成物によって、前記少なくとも1つの極性または非極性基材に結合された前記少なくとも1つの官能化フィルム層を含む積層体が形成される、積層体。
【請求項7】
前記極性基材は、ポリエチレンテレフタレート、二軸延伸ポリアミド、金属化ポリエチレンテレフタレート、金属化二軸延伸ポリアミド、およびアルミニウム箔からなる群から選択され、前記非極性基材は、ポリプロピレン、ポリエチレン、ならびに二軸延伸ポリアミド、および無延伸ポリプロピレンからなる群から選択される、請求項6に記載の積層体。
【請求項8】
請求項6に記載の積層体から作製されるパウチ、サッシェ、または自立型パウチの部材を含む、積層物品。
【請求項9】
少なくとも第1のフィルム層および少なくとも第2のフィルム層を含む積層体を生産するためのプロセスであって、
(I)前記少なくとも第1のフィルム層を形成する少なくとも1つの官能化フィルム層を提供する工程であって、前記少なくとも1つの官能化フィルム層が、前記積層体中の内部フィルム層として用いられる極性反応性基ポリオレフィン層であり、当該極性反応性基ポリオレフィン層は、エチレンビニルアセテート極性コポリマーとグラフト化エチレン極性コポリマーとの物理的配合物、およびグラフト化エチレンエチルアクリレート極性コポリマーとグラフト化エチレン極性コポリマーとの物理的配合物からなる群から選択される、工程と、
(II)前記少なくとも第2のフィルム層を形成する少なくとも1つの極性または非極性フィルム基材を提供する工程と、
(III)積層接着剤組成物を提供する工程であって、前記積層接着剤組成物の耐化学性の値は、積層体から構成された10cm×10cmのパウチをエタノールで満たして80℃で3日間保管した後、テアリングの破損モードまたは非破損モードを伴う層間剥離試験にかけられる場合、少なくとも0.772ニュートン/センチメートル(N/cm)の接着力に積層体が耐える結合強度である、工程と、
(IV)前記積層接着剤組成物を前記少なくとも第1のフィルム層の表面の少なくとも一部分に塗布して、内部フィルム層と積層接着剤組成物との組み合わせを形成する工程と、
(V)前記積層接着剤組成物が前記第1のフィルム層と前記第の2フィルム層との間に配置されるように、前記少なくとも1つの極性または非極性フィルム基材を前記内部フィルム層の前記表面の前記少なくとも一部分に存在する前記積層接着剤組成物と接触させる工程と、を含み、前記極性または非極性フィルム基材の表面の少なくとも一部分が、前記積層接着剤組成物と接触して、前記内部フィルム層と前記極性または非極性フィルム基材との間に結合をもたらし、積層体を形成する、プロセス。
【請求項10】
前記少なくとも第2のフィルム層は、ポリエチレンテレフタレート、二軸延伸ポリアミド、金属化ポリエチレンテレフタレート、金属化二軸延伸ポリプロピレン、アルミニウム箔、ポリプロピレン、ポリエチレン、二軸延伸ポリプロピレン、および無延伸ポリプロピレンからなる群から選択される、請求項9に記載のプロセス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、積層フィルムおよび最終的な積層構造体を生産するための積層プロセスに用いられる接着剤組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
フレキシブル包装産業は、最終的な包装製品の完全性が、包装およびパウチまたはバッグなどの積層体から作製される包装製品内に包装される製品の使用寿命の間維持されるような、包装製品を製造するための積層体の生産に使用する接着剤の結合強度を向上させる方法を探し続けている。接着剤の結合強度に加えて、最終的な包装製品は、包装されている製品が、結合強度の低下および包装システムの安定性に対する悪影響をもたらすような、接着剤を浸食し得る化学的に攻撃的な製品である場合、その完全性を維持することが非常に重要である。
【0003】
「汎用接着剤係」などの積層接着剤としてこれまで用いられてきた公知の接着剤の中には、低い耐化学性を有するものがあり、すなわち、接着剤が、接着剤を用いた積層構造体の破損モードに伴う接着剤の結合強度への浸食に耐えるのに十分な耐化学性の値を有していない。耐化学性が低いことは、化学的に攻撃的な製品を包装するのに用いられる接着剤係にとって、一般的に望ましくない特性である。化学的に攻撃的な製品を包装するための積層プロセスにて低い耐化学性を有する接着剤を使用すると、深刻なプロセス上の問題および包装製品の破損をもたらし得る。例えば、このような接着剤を用いた積層フィルムは、包装プロセス中にバラバラなり、製品の紛失、機器の損傷、および包装製造プロセス全体の遅延を潜在的に引き起こし得る。したがって、高い耐化学特性を有する接着剤を提供することは、業界にとって大きな利点となる。
【0004】
しかしながら、ドライシリアルや他の乾燥商品など、化学的に攻撃的ではない一部の包装された製品/商品に対しては、低い耐化学性を有する汎用接着剤は、接着剤または包装の完全性を損なうことなくこのような商品を包装するのに十分に機能する。汎用接着剤は、非常に高価な高性能接着剤に代わる低コストのものを製造者に提供する。したがって、耐化学性の低い接着剤の使用は、消費者に利益をもたらすと共に消費財のコストを下げる。
【0005】
業界で望まれているのは、接着剤または包装の完全性を損なうことなく、化学的に攻撃的な商品を包装するのに十分に機能する、高い耐化学性を備えた汎用接着剤である。したがって、低コストの代替汎用接着剤が、より広範囲な用途で使用され得る。
【発明の概要】
【0006】
本発明は、本発明の接着剤を用いて作製される包装物品において、化学的に攻撃的な製品の包装プロセス中に、接着剤と接触するこのような製品によって浸食される接着剤の完全性の問題を解決し得る。
【0007】
本発明は、(a)適切な単層または多層フィルム構造体と、(b)異なる官能化ポリマーの適切なポリマー積層接着剤組成物との新規な組み合わせを提供し、ここで、接着剤は、接着剤の結合強度の低下を乗り切り、このような接着剤を用いて積層構造体に完全性を提供するのに十分に高い耐化学性の値を有する(例えば、積層構造体がその使用目的のために機能し、かつ機能を維持するように破損モードがない)。積層プロセスで成分(a)と(b)との上記組み合わせを使用することにより、包装製品において、化学的に攻撃的な製品の包装プロセス中にこのような製品によって浸食される接着剤の完全性の問題が、最小限に抑えられるか、またはなくなり得る。有利なことに、積層プロセスにおける(a)フィルム構造体と(b)積層接着剤組成物との上記組み合わせの使用により、包装フィルム/包装物品を生産するための積層フィルム構造体が提供される。これにより、さらには、本発明の積層フィルムを用いて商品を包装するためのプロセス全体の信頼性が高まる。
【0008】
本発明によれば、一実施形態は、(a)フィルム構造体中の内部積層体層として用いられる極性反応性基ポリオレフィン層を含む少なくとも1つの官能化フィルム層と、(b)内部層の表面の少なくとも一部分に存在し、かつ接触する積層接着剤組成物と、を含む、フィルムと接着剤との組み合わせ構造体に関し、ここで、積層フィルムの官能化内部表面に対する接着剤組成物の耐化学性の値は、結合強度に関して、接着剤の元の耐化学性の値から増加され、このような接着剤を用いた積層構造体は破損モードを被らない。
【0009】
別の実施形態では、本発明は、上記フィルム/接着剤構造体を生産するためのプロセスに関する。
【0010】
さらに別の実施形態では、本発明は、(a)フィルム構造体中の内部積層体層として用いられる極性反応性基ポリオレフィン層を含む少なくとも1つの官能化フィルム層と、(b)内部層の表面の少なくとも一部分に存在し、かつ接触する積層接着剤組成物であって、接着剤組成物の耐化学性の値は、化学的に攻撃的な製品と接触した積層構造体に有用であるのに十分に高い、積層接着剤組成物と、(c)少なくとも1つの極性または非極性基材であって、基材の表面のうち少なくとも一部分は接着剤組成物と接触する、極性または非極性基材と、を含む積層体に関する。
【0011】
さらに別の実施形態では、本発明は、上記積層体を生産するためのプロセスに関する。
【0012】
またさらに別の実施形態では、本発明は、強力な結合および高い耐化学性の値を有する接着剤を用いて作製される包装物品に関する。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の多層フィルム構造を示す概略図である。
図2】様々な異なるポリエチレン調合物を有する汎用積層接着剤であるACOTE(登録)331の耐化学性の値を示すバーチャートのグラフである。
図3】様々な異なるポリエチレン調合物を有する汎用積層接着剤であるACOTE331のグリーンタック値を示すバーチャートのグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
「中性能接着剤」、「一般性能接着剤」、または「汎用性接着剤」は、互換的に本明細書で使用され、本明細書では、単一成分ポリウレタン接着剤または2つ以上の成分を有するポリウレタン接着剤を指し、それは一旦、接着剤が完全に硬化し、2つの基材フィルム間に適切に塗布されても、接着剤が、2つのフィルム間の接着剤がヒートシール(例えば、180℃~220℃)および/もしくは滅菌法などの高い熱的応力条件下に置かれる場合、ならびに/または、接着剤が異なる攻撃的な化学素材(例えば、酸類、香辛料、界面活性剤、精油、アルコール、過酸化物)と接触する間、2つの基材フィルム構造体中の接着性を失うであろう。
【0015】
接着剤組成物に関して、「耐化学性」は、本明細書において、2つの基板フィルム間に塗布される接着剤が、1つ以上の攻撃的な化学素材(「化学的浸食剤」として本明細書にも称される)の影響下に置かれる場合、2つの基材フィルム構造体の接着性を失わないような、異なる攻撃的な化学素材(例えば、酸、香辛料、界面活性剤、精油、アルコール、過酸化物)に耐えうる接着剤の能力とみなす。接着剤の耐化学性の値は、積層体が化学的浸食剤にさらされた後、積層体に用いられる接着剤の結合強度を測定することによって提供され得て、結合強度に関する利益または被害は、結合強度試験後の印加された接着力および結合強度試験後の積層構造体の破損モードに関して測定され得る。別の実施形態では、積層構造体の接着結合強度を、同じ化学的浸食剤にもさらされた参照物または対照サンプルの積層体の接着結合強度と比較し得る。
【0016】
接着剤の耐化学性は、様々な要因、例えば、(1)対照サンプルの積層構造体、(2)接着剤と共に結合したフィルムの組成、および(3)積層体を試験するために用いられる化学的浸食剤の種類に依存し得ると共に、対照サンプルの積層体と比較した接着結合強度の増加(または、減少)は、耐化学性の良好な指標である。しかしながら、耐化学性をより確実に判断するには、接着剤の結合強度値に積層構造体の破損モードの説明が付随しなければならない。
【0017】
破損モードには、積層体の耐化学性を試験した後に目視観察の決定に従って、例えば、トンネリング、層間剥離、バブリング、またはテアリングが挙げられ得る。本明細書で用いられる耐化学性試験は、攻撃的な化学試験に接着剤で結合させた積層体をかけた後(例えば、アルコールを10cm×10cmサイズのパウチに入れる。ここでは、パウチは積層体で作製されている。)、接着剤で結合させた積層体の破損モードを理解しようと試みている。48時間後、積層構造体の結合強度を測定し、積層構造体の破損モードを目視で観察する。一実施形態では、破損モードは、層間剥離に代わりテアリングを示すか、または全く破損を示さず、積層体に(積層構造体を剥離しようとして)加えられる接着力は、200g-f/in以上であり得る。上記の攻撃的な化学試験に合格した積層構造体は、つまり許容できる耐化学特性を有する積層構造体は、結合強度試験後に少なくとも200g-f/inの印加された接着力によって測定されるような結合強度を示す積層構造体であり、結合強度試験後の積層構造体の破損モードは、テアリングモードであるか、または非破損モードのいずれかである。
【0018】
一般に、本発明の積層体は、少なくとも2つのフィルム、および積層体を形成するために2つのフィルムの間にある少なくとも1つの積層接着剤を含む。上記の200g-f/in以上の接着力は、積層体が層間剥離試験を受けた際に測定され、すなわち、この接着力は、層間剥離に対抗するフィルムの中央にある粘着剤によって、一方のフィルムを他方のフィルムから剥離しようとして得られる。第1のフィルムは、本明細書に開示される本発明のフィルムであり、他の第2のフィルムは、本明細書で開示されるようなPET、BOPP、metPET、metBOPP、BOPAなどの従来の基材であり得る。したがって、好ましい実施形態では、前述の200g-f/inの接着力は、層間剥離試験で測定され、第1および第2のフィルム層間に印加される結合強度であり、すなわち、結合強度は、層間剥離に対抗する層間に配置された接着剤組成物を有する第1のフィルム層を第2のフィルム層から層間剥離させる試みにおいて、積層体が層間剥離試験を受けた場合に、積層体にとって少なくとも200g-f/inでの測定される接着力に耐えるに足りなければならない。
【0019】
接着剤組成物に関して、「グリーンタック」または「グリーンボンド」は、本明細書では、接着剤を含有する構造体(例えば、フィルム/接着剤/フィルム構造体)が、積層機のニップ部分(ニップは2つのシリンダー間の小さな接触部であり、一方のシリンダーは鋼製であり、他方のシリンダーはゴム製である)を通過した直後に、接着剤によって生じる初期結合強度値を意味する。一般に、高分子量の接着剤は、高い粘度をもたらし、さらには、大きなグリーンボンドをもたらす。
【0020】
接着剤組成物に関して、「結合強度」は、本明細書では、フィルム積層構造体の層間剥離に対抗する力を意味する。結合強度は、接着剤組成物に関し得る。二成分接着剤において、例えば、接着剤組成物の正確な化学量論の選択が重要であり得る。例えば、ポリエステルに富む接着剤は、アルミニウム箔、金属化フィルム、ポリエチレンテレフタレート、ポリアミドなどの極性フィルムに、より強く接着する。また、例えば、ポリエーテルポリオールの豊富な接着剤は、ポリエチレン、ポリプロピレンなどの非極性基材により強く接着する。
【0021】
接着剤組成物に関して、「主としてイソシアネート基」または「主としてヒドロキシル基」とは、本明細書では、接着剤系に存在する活性または官能基を意味する。例えば、イソシアネート基は、二成分ポリウレタン接着剤の部分Aに存在する官能基/反応性基であり、二成分ポリウレタン接着剤の部分Bは、(部分Aの)イソシアネート基と反応して接着剤を形成する主としてヒドロキシル基を含有する。化学反応は、部分Aと部分Bとを共に配合した後に開始する。
【0022】
「官能化」とは、ポリマー樹脂に関して、本明細書では、官能(極性)基が、「付加された化学的極性機能」を提供する別の極性または無極性ポリマー鎖(例えば、ポリエチレンまたはエチレン-極性コポリマー)に化学的に組み込まれる場合を意味する。
【0023】
本発明の広範な一実施形態は、(a)フィルム構造体中の内部積層体層として用いられる極性反応性基(すなわち、官能化ポリマー化合物)ポリオレフィン層を含む少なくとも1つの官能化フィルム層と、(b)内部層の表面の少なくとも一部分に存在し、かつ接触する積層接着剤組成物と、を含み、ここで、接着剤に耐化学性を付与した後、接着剤組成物の耐薬品性値は、接着剤を耐化学性試験にかける前の接着剤組成物の耐化学性の値を超える。
【0024】
積層接着剤組成物と組み合わせて生産されるフィルム構造体は、単層または多層フィルム構造体を含み得る。多層積層フィルム構造体は、いかなる特定の層数にも限定されず、したがって、好適な一実施形態では、フィルム構造体の層数は、例えば、共押出プロセスを用いて作製される1層から13層を含み得る。例えば、フィルム構造体は、フィルム構造の任意の層に、低密度ポリエチレン(LDPE)、線状低密度ポリエチレン(LLDPE)、またはLDPE/LLDPEの配合物のうち1つ以上の層を含み得るが、但し、フィルム構造体の少なくとも内部積層体層が、本発明の極性反応性基(官能化)ポリオレフィン層である成分(a)含むことを条件とする。
【0025】
フィルム構造体である成分(a)と組み合わせて使用される積層接着剤組成物である成分(b)は、(1)単一成分接着剤、または(2)(α)少なくとも1つのイソシアネート成分と(β)少なくとも1つのポリオール成分との混合物を含む場合がある。本発明の積層接着剤調合物または組成物のイソシアネート成分(α)は、少なくとも1つのイソシアネート化合物を含み、イソシアネートが接着剤組成物中に存在する主な化合物であり、すなわち、イソシアネート成分(α)の濃度は、ポリオール成分(β)の濃度よりも大きい。
【0026】
例えば、本発明において有用な単一成分接着剤(例えば、ADCOTE331)は、イソシアネート基を主とした含量を含有する。したがって、本発明に従って、本発明の調合物に用いられるイソシアネート化合物である成分(α)の濃度は、調合物中の全成分の総重量に基づいて、一般に、例えば、一実施形態では0.5重量%~10重量%、別の実施形態では1重量%~5重量%、およびさらに別の実施形態では2重量%~3重量%であり得る。
【0027】
イソシアネート含有量を主として含有し、本発明に有用な接着剤の実施例としては、Adcote331などの汎用単一成分接着剤、および汎用単一成分接着剤と他の任意の接着剤との混合物が挙げられる。このような接着剤は、有利なことに、強い耐化学性を有する。
【0028】
本発明の接着剤調合物は、有利な特性および利点を有する。例えば、一実施形態では、本発明の接着剤は、接着剤組成物中の主要な成分であるイソシアネート成分を含有しない他の接着剤調合と比較して、耐化学性の増大を有する。
【0029】
本発明の接着剤組成物の一実施形態には、接着剤および接着剤を用いた積層体と接触する化学的に攻撃的な製品に対する保護を提供するのに十分な耐化学性を有する汎用接着剤組成物が含まれる。例えば、接着剤組成物は、Adcote331(単一成分を含む汎用接着剤)などの市販の実施形態を含む場合がある。接着剤の耐化学性は、その上に塗布される接着剤を有するフィルム層の種類に影響される。例えば、上記のフィルム構造体の内部層として用いられる極性反応基(官能化)ポリオレフィン層の成分(a)は、最終的な接着剤の結合、積層体および積層体から作製される物品が、接着剤、積層体または物品に接触する製品による化学的浸食を防ぐのに十分な耐化学性を有することになる場合、決定し得る。一実施形態では、ポリマー樹脂調合物は、フィルム構造体の内部層を形成するために使用され、有益なことに、耐化学性を高めるのに有益である官能化の含有量が高い。例えば、本発明のフィルム構造体の内部層として使用され得るポリエチレン(PE)調合物中に存在する無水マレイン酸の含有量は、全配合物の重量に基づいて、一実施形態では0.15重量%~1.5重量%、別の実施形態では0.5重量%~1.4重量%、およびさらに別の実施形態では0.8重量%~1.2重量%の範囲内であり得る。本発明に有用な無水マレイン酸と組み合わせ得る他の官能化エチレンコポリマーとしては、例えば、エチレンビニルアセテート(EVA)、エチレンエチルアクリレート(EEA)、エチレンアクリル酸(EAA)、エチレンメチルアクリレート(EMA)など、およびそれらの混合物のようなエチレンコポリマーが挙げられ得る。
【0030】
化学的に攻撃的な製品に対する耐化学性を有する汎用単一成分接着剤(例えば、ADCOTE331接着剤)は、積層体および接着剤と接触する場合のある接着剤を用いて作製される積層体に完全性を提供し得る。次に、積層体から作製された包装製品は、化学的に攻撃的な製品と接触している間、その完全性を維持し得る。スナックまたはパウダーの包装は、必ずしも耐化学性を必要とするわけではないが、十分な耐化学性が要求される用途では、本発明の調合物は、本発明の接着剤調合物が予想外の高い耐化学性を示すので、有利に使用され得る。本発明の接着剤組成物は、向上した耐化学性を有する製品を提供し、これにより、以前はこのような積層体製品を使用し得なかった多くの用途に使用され得る積層体製品を提供する。
【0031】
一般に、本発明の接着剤組成物の耐化学性の値(上記で本明細書で定義されているように)は、積層体を耐化学性試験および層間剥離試験にかけた後に、積層構造体を剥離しようとして積層構造体に加えられる接着力の観点から提供され得る。本発明の接着剤組成物の耐化学値は、例えば、少なくとも、一実施形態では200g-f/inより大きく、別の実施形態では300g-f/inより大きく、さらに別の実施形態では400g-f/inより大きく、さらに別の実施形態では500g-f/inより大きい結合強度(例えば、接着力による測定の場合)であり得る。別の実施形態では、接着剤組成物の耐化学値は、例えば、2,000g-f/in未満、さらに別の実施形態では1,000g-f/in未満、さらに別の実施形態では900g-f/in未満の結合強度(例えば、接着力による測定の場合)であり得る。一般的な実施形態では、接着力は、200g-f/in以上~2,000g-f/inまでであり得る。
【0032】
結合強度を決定するための接着力の増加(または減少)には、もしあれば、破損モードを伴わなければならない。前述のように、「破損モード」には、例えば、積層体の試験後の目視観察によって決定されるように、トンネリング、層間剥離、バブリング、またはテアリングが挙げられ得る。本発明の接着剤を用いて作製された積層構造体で観察される破損モードは、他の視覚的破損モードを伴わないテアリングであり得るか、または、接着剤および積層体が本発明において許容できるような破損モードが全くない。接着剤の測定された結合強度と共に観察される他のどの薄層破損モード(例えば、トンネリング、層間剥離、バブリングなど)も、本発明で許容できる耐化学性を満たさない。
【0033】
本発明の接着剤組成物の別の実施形態としては、例えば、>0.772ニュートン/センチメートル(N/cm)または200重量グラム/インチ(g-f/in)、別の実施形態では>1,158N/cm(300g-f/in)、およびさらに別の実施形態では>1.544N/cm(400g-f/in)を超える高いグリーンタック接着値を有する積層接着剤組成物が挙げられる。またさらに別の実施形態では、接着剤組成物のグリーンタック接着値は、例えば、>0.772N/cm(200g-f/in)~1.93N/cm(500g-f/in)の範囲であり得る。
【0034】
本発明の接着剤組成物と接触する積層フィルム層の革新的な設計の1つの利点は、積層プロセス後の積層体層と接着剤層との間の化学的相互作用に基づいて、接着剤組成物が(1)グリーンタックの急速発現、および(2)速い結合強度の発現を有することである。例えば、主としてイソシアネート製品が接着剤組成物を形成するために使用される場合、接着剤のグリーンボンド(すなわち、グリーンタック値)は、主としてイソシアネート製品を含有する接着剤に対して、官能化樹脂のない接着剤製品に対してよりも予想外に速く増加する。例えば、MAHグラフトコポリマー(例えば、AMPLIFY(商標)EA101-g-MAH)などの官能化の含有量が大きな接着剤組成物は、より大きなグリーンボンドを有し得る。
【0035】
本発明の別の利点は、積層体層中にOH官能基を有する積層フィルムを設計することで、より良好な瞬時の接着が促進され、接着剤の硬化後に接着力の増強を可能にするのに通常必要とされる数時間または数日の遅延時間がなくなることである。より良好な瞬時の接着力を提供し、遅延時間をなくすことによって、全体的なコンバージョンプロセス時間の著しい削減を達成し得る。現在、積層機は、積層接着剤の塗布後に、積層機が後続のコンバージョン工程(例えば、スリッティング工程または第2の積層工程)を実施し得る前に、12時間~24時間待たなければならない。12時間から24時間の間の長い待機時間は、特に、積層プロセスで用いられる低-中分子量(MW)接着剤の小さなグリーンタックに起因し得る。
【0036】
本発明に従って生産されるフィルム(官能化積層体表面層を有する)を使用することによるさらに別の利点は、無溶剤積層接着剤中に存在し得る残留する未反応イソシアネートプレポリマーを捕捉することである。例えば、不十分なイソシアネートプレポリマーとポリオールとの配合比で調製されると、低分子量成分である無溶剤接着剤中の未反応イソシアネートプレポリマーは、未反応のイソシアネートプレポリマーが外部水分と接触すると、フィルムヒートシール層を容易に形成し、そこに移動しやすくなり、ポリウレアを形成する。積層体のヒートシール層上のこのポリウレアの形成物は、容易に溶解せず、ポリウレアの形成物は、主として無溶剤積層物での反封止の問題の原因となり得る。
【0037】
一般に、本発明の組み合わせフィルム/接着剤構造体を生産するためのプロセスは、
(i)(a)のフィルム構造体中の内部層として用いられる極性反応性基(官能化)ポリオレフィン層を含む少なくとも1つの官能化フィルム層を提供する工程と、
(ii)(b)の十分な耐化学性の値を有する積層接着剤組成物を提供する工程と、
(iii)積層接着剤組成物を内部層の表面の少なくとも一部分に塗布して、内部層と積層接着剤組成物フィルム構造体との組み合わせを形成する工程と、を含む。
【0038】
フィルム構造体を作製するプロセスは、共押出プロセスおよび装置などの当業者に公知のあらゆる層作製装置およびプロセスを含み得る。
【0039】
一般に、積層体は、(a)フィルム構造体中の内部層として用いられる極性反応性基(官能化)ポリオレフィン層を含む少なくとも1つの機能性フィルム層と、(b)内部層の表面の少なくとも一部分に存在し、かつ接触する積層接着剤組成物であって、接着剤組成物の耐化学性の値は、少なくとも200g-f/inの結合強度である、積層接着剤組成物と、(c)少なくとも1つの極性または非極性基材であって、基材の表面のうち少なくとも一部分は接着剤組成物と接触する、極性または非極性基材と、を含み得る。
【0040】
図1を参照すると、積層体を形成する複数の層が示されており、全体として数字10で表されている。上述のように、全体として数字20で表されるフィルム構造体は、単層、例えば、内部層および外部層の両方としての役目を担い得る層21のみを含むフィルム構造体であり得る。図1に示す実施形態では、フィルム構造体20は、別個の異なる外部層22に接着された内部層21を含む。図1には示されていないが、本発明の別の実施形態は、内部層21と外部層22との間に挟まれた任意の複数の層を含み得る。図1に示すように、接着剤層31を層21の内部表面に塗布し、基材41を接着剤層31に接触させて、接着剤31および内部層21を介して基材をフィルム構造体20に接着させる。層20、31および41は、共に圧縮および積層され、多層積層体10を形成し得る。
【0041】
以上、本発明の組み合わせフィルム/接着剤構造体について説明してきた。接着剤がフィルム層に塗布されると、基材である構成材(c)は、接着面を介してフィルム/接着構造体と接触させ得る。
【0042】
積層体を生産するために本発明に有用な基材は、例えば、少なくとも1つの極性または非極性基材であり得る。上述のフィルム/接着剤の組み合わせと接触させるのに有用な極性基材の例としては、ポリエチレンテレフタレート(PET)、二軸延伸ポリアミド(BOPA)、金属化ポリエチレンテレフタレート(metPET)、金属化二軸延伸ポリプロピレン(metBOPP)、およびアルミニウム箔が挙げられ得る。上記のフィルム/接着剤の組み合わせと接触させるのに有用な非極性基材の例は、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレン(PE)、および二軸延伸ポリプロピレン(BOPP)、ならびに無延伸ポリプロピレン(cPP)フィルムであり得る。
【0043】
上記の積層体を生産するためのプロセスは、
(I)(a)のフィルム構造体中の内部層として用いられる極性反応性基(官能化)ポリオレフィン層を含む少なくとも1つの官能化フィルム層を提供する工程と、
(II)(b)の十分な耐化学性の値を有する積層接着剤組成物を提供する工程と、
(III)少なくとも1つの極性または非極性基材を提供する工程と、
(IV)積層接着剤組成物を内部層の表面の少なくとも一部分に塗布して、内部層と積層接着剤組成物フィルム構造体との組み合わせを形成する工程と、
(V)少なくとも1つの極性または非極性基材を、内部層上に存在する接着剤組成物と接触させる工程と、を含み、ここで、基材の表面の少なくとも一部分は、接着剤組成物と接触して、内部層に接着された基材との間に強力な結合を実現し、積層体を形成し得る。
【0044】
積層体を生産するプロセスは、接着剤が溶剤に溶解するドライラミネートのような当業者に公知の積層体作製装置およびプロセスのいずれかを含み得て、その場合、接着剤含有溶剤は、積層されるウェブのうち1つに塗布され、その次に、溶剤は、ウェブの表面上に塗布された結合剤含有溶剤を有するウェブから蒸発する。蒸発は、乾燥オーブン内で行われて、第1の乾燥ウェブを提供し得る。次に、第1の乾燥ウェブは、加熱ローラーによって加えられる強い圧力下で別の第2のウェブに積層されて、2つのウェブとの間に永久的な結合を提供する。
【0045】
本発明に従って生産された積層体は、有利なことに、いくつかの有利な特性および利点を有する。一実施形態では、例えば、積層体は、化学的に攻撃的な製品が積層体または積層体を作製するために用いられる接着剤と接触することになる用途に使用され得て、接着剤は、上記のような化学的に攻撃的な製品による浸食に対して十分な耐化学性を有し得る。別の実施形態では、積層体は接着剤とフィルムとの組み合わせによって示される大きなグリーンタックのために、接着剤の長い硬化時間を待つ必要なく、包装物品などの物品を作製するのに直ちに使用され得る。
【0046】
別の実施形態では、本発明は、強力な結合、および少なくとも200g-f/in以上の結合強度の耐化学性の値ならびにテアリングの破損モードを有する接着剤を用いて製造された、上記の積層体を用いて作製される包装物品に関する。包装物品の例としては、枕型パウチ、自立型パウチ、バッグ、サッシェ、他の積層ウェブなどが挙げられる。
【0047】
包装物品を作製するプロセスは、垂直形成/充填/封止(VFSS)、水平形成/充填/封止(HFFS)、製袋自立型パウチ(SUP)、および形成/充填/封止自立型パウチ(FFS SUP)機械など、当業者に公知の包装作製装置およびプロセスのいずれかを含み得る。
【0048】
本発明に従って作製されたフィルム構造体および積層体は、例えば、紙/ポリ/箔もしくはBOPP/箔/PE、またはBOPP/metPP/PE、BOPP、もしくはcPPを含む様々な用途に有用であり得る。
【実施例
【0049】
以下の実施例は、本発明をさらに詳細に説明するために提示されるが、特許請求の範囲を限定するものとして解釈されるべきではない。他に指示がない限り、すべての部およびパーセンテージは重量による。
【0050】
実施例で用いられる様々な原料を以下の表Iに記載する。
【表1】
【0051】
実施例1および2ならびに比較実施例A
表IIに記載されている樹脂調合物を有する3つの異なるフィルムを、5層共押出ラインを用いて押出した。実験室積層機(Labo Combi machine)を用いて、フィルムをポリエチレンテレフタレート(PET)基材(12ミクロン厚)に積層し、コロナ処理されたフィルムの表面に3gの接着剤を塗布する前に、フィルムの側面の1つをコロナ処理した。次に、3gの汎用単一成分接着剤のADCOTE(登録商標)331は、コロナ処理されたフィルム表面に塗布された。
【表2】
【0052】
方法A-AMPLIFY(商標)EA101-g-MAHの作製方法
Amplify EAは、エチレンエチルアクリレート(EEA)コポリマーである。このコポリマーは、コポリマーの官能性を高めるために、約1%の無水マレイン酸(MAH)基でグラフト化し得る。EEA、EVAまたはEMAコポリマーなどのコポリマーは極性を有し、接着剤層と極性-極性(非反応性)相互作用を形成する傾向がある。しかしながら、MAHグラフトコポリマーのMAH-g-基部分は、接着剤中のいかなる過剰なポリオールとも共有結合を形成する傾向がある。
【0053】
AMPLIFY(商標)EA101-g-MAHの製品説明は、表IIIに記載されており、AMPLIFY(商標)EA 101-g-MAHを調製するプロセスは、反応性押出プロセスを用いてポリマーを無水マレイン酸(MAH)基でグラフト化することによって実行され得る。
【0054】
中強度スクリューを有する92mmの同方向回転二軸押出機を反応性押出成形に使用する。調合物は、ベースポリマー(例えば、AMPLIFY(商標)EA 101、無水マレイン酸(MAH)、99%)および2,5-ジメチル-2,5-ジ(t-ブチルペルオキシ)ヘキサン(DBPH、過酸化物(POX))からなる。POXは、鉱油で(例えば、1:1の比で)希釈されて、供給材料の処理および供給の容易さを向上させる。MAH供給濃度は、1.4重量%~1.5重量%であり、過酸化物供給濃度は、330ppm~650ppmである。押出成形機は、475rpm~630rpmのスクリュー速度を伴う862kg/時~953kg/時の速度で操作される。グラフト化のための押出機の(℃における)温度プロファイルを表IVに示す。
【表3】
【表4】
【0055】
耐化学性試験方法および測定
接着材料の耐化学性能を評価するためのさまざまな試験や方法が存在する。本明細書で用いられる一般的な試験には、上記の積層樹脂の調合を用いて作製された積層フィルムから構成された10×10cmの積層パウチにエタノールを満たされることが含まれる。この試験で用いられるエタノールで満たされる各パウチは、80℃のオーブンに3日間保管される。パウチの加熱は、エタノールによって積層フィルムの化学的浸食を加速させるために用いられる。上記の攻撃的な試験を用いてパウチを処理した後、パウチの積層体を結合強度分析にかけ、接着結合強度を決定する。
【0056】
グリーンタック結合強度-方法および測定
接着剤のグリーンタックボンド特性は、ASTM F904-98に記載されている手順に従って、Instron Tensile machineを用いて測定され得る。手順に従って、積層構造体の2つの側面を機械ジョーによって保持し、その後、積層構造体を一軸方向に延伸する。データは、各サンプルについて2回のサンプル測定を行うことによって得られ、次いで、データは平均値およびグラフィックスを報告するコンピュータを使用して分析される。グリーンタック特性は、積層構造体が積層プロセスを経て10分後に測定される。
【0057】
実施例で用いられる耐化学性試験は、積層体が攻撃的な化学的試験(すなわち、アルコールを10cm×10cmサイズのパウチに封入する)にかけた後、積層体の破損モードを理解しようと試みている。48時間(時)後、積層体の結合強度が測定され、構造体の破損は、層間剥離のそれよりもテアリングであることが視覚的に判断され、テアリングを得るための力は500g/inを超える。
【0058】
図2のグラフでは、ADCOTE(商標)331で構造体を積層した場合の化学的浸食の結果を示している。本発明の実施例1および本発明の実施例2の調合物は、比較実施例Aの参照調合物が破損モード試験に合格しない一方で、攻撃的な試験に耐えた(検査の間に層間剥離またはトンネリングは観察されなかった)。
【0059】
図3のグラフでは、単一成分および汎用接着剤であるADCOTE(商標)331を使用した場合のグリーンタック値が示されている。
【0060】
本発明の実施例1および本発明の実施例2の調合物は、比較実施例Aの参照物と比較した場合、最初の結合のグリーンタック(それぞれ+37%および+94.7%)の予想外の高い値をそれぞれ示している。
【0061】
図2および図3に記載されている上記試験の結果は、汎用接着剤であるADCOTE(商標)331(本発明の実施例1)と組み合わせたAmplify TY 1057(MAH)とEVAポリマーとの調合物は、比較実施例Aと比較して積層体の耐化学性およびグリーンボンドの増強を示すことを証明している。類似の性質が、同じ汎用接着剤(本発明の実施例2)によって、エチルアクリレートのコポリマーであるAmplify EA 101(MAH)と組み合わせたAmplify TY 1057(MAH)のようなフィルム層ついても観察される。
本願発明には以下の態様が含まれる。
項1.
フィルム構造体であって、
(a)少なくとも1つの官能化フィルム層であって、前記フィルム構造体中の内部積層体層として用いられる極性反応性基ポリオレフィン層を含む、官能化フィルム層と、
(b)前記内部層の表面の少なくとも一部分に存在し、かつ接触する積層接着剤組成物と、を含み、
前記積層接着剤組成物の耐化学性の値は、積層体がテアリングの破損モードまたは非破損モードを伴う層間剥離試験にかけられる場合、少なくとも200g-f/inの測定される接着力に前記積層体が耐えるのに十分な結合強度である、フィルム構造体。
項2.
前記少なくとも1つの官能化フィルム層は単層である、項1に記載のフィルム構造体。
項3.
前記少なくとも1つの官能化フィルム層は、2つ以上の層の多層を含み、前記2つ以上の層のうち少なくとも1つが、極性反応性基ポリオレフィン層の内部層であり、前記2つ以上の層のうち少なくとも1つが、外部層である、項1に記載のフィルム構造体。
項4.
前記極性活性基ポリオレフィン層は、グラフト化エチレン極性コポリマー、非極性ポリエチレンとグラフト化エチレン極性コポリマーとの物理的配合物、エチレンビニルアセテート極性コポリマーとグラフト化エチレン極性コポリマーとの物理的配合物、およびグラフト化エチレンエチルアクリレート極性コポリマーとグラフト化エチレン極性コポリマーとの物理的配合物からなる群から選択される、項1に記載のフィルム構造体。
項5.
前記積層接着剤組成物は、主としてイソシアネート基を有する汎用の単一成分接着剤である、項1に記載のフィルム構造体。
項6.
フィルム構造体を生産するためのプロセスであって、
(i)少なくとも1つの官能化フィルム層を提供する工程であって、前記少なくとも1つの官能化フィルム層が、前記フィルム構造体中の内部層として用いられる極性反応性基ポリオレフィン層である、工程と、
(ii)十分な耐化学性の値を有する積層接着剤組成物を提供する工程であって、前記積層接着剤組成物の前記耐化学性の値は、前記積層体がテアリングの破損モードまたは非破損モードを伴う層間剥離試験にかけられる場合、少なくとも200g-f/inの測定される接着力に前記積層体が耐えるのに十分な結合強度である、工程と、
(iii)前記積層接着剤組成物を前記内部層の表面の少なくとも一部分に塗布して、前記内部層と前記積層接着剤組成物との組み合わせフィルム構造体を形成する工程と、を含む、プロセス。
項7.
積層体であって、
(A)少なくとも1つの官能化フィルム層であって、前記積層体中の内部層として用いられる極性反応性基ポリオレフィン層である、官能化フィルム層と、
(B)前記内部層の表面の少なくとも一部分に存在し、かつ接触する積層接着剤組成物であって、前記積層接着剤組成物の耐化学性の値は、前記積層体がテアリングの破損モードまたは破損モードを伴う層間剥離試験にかけられる場合、少なくとも200g-f/inの測定される接着力に前記積層体が耐えるのに十分な結合強度である、積層接着剤組成物と、
(C)少なくとも1つの極性または非極性基材であって、前記基材表面のうち少なくとも一部分は、前記接着剤組成物と接触する、極性または非極性基材と、を含み、
前記少なくとも1つの官能化フィルム層と前記少なくとも1つの極性または非極性基材との間に配置される前記積層接着剤組成物によって、前記少なくとも1つの極性または非極性基材に結合された前記少なくとも1つの官能化フィルム層を含む積層体が形成される、積層体。
項8.
前記極性基材は、ポリエチレンテレフタレート、二軸延伸ポリアミド、金属化ポリエチレンテレフタレート、金属化二軸延伸ポリアミド、およびアルミニウム箔からなる群から選択され、前記非極性基材は、ポリプロピレン、ポリエチレン、ならびに二軸延伸ポリアミド、および無延伸ポリプロピレンからなる群から選択される、項7に記載の積層体。
項9.
項7に記載の積層体から作製されるパウチ、サッシェ、自立型パウチまたは他の袋部材を含む、積層物品。
項10.
少なくとも第1の層および少なくとも第2の層を含む積層体を生産するためのプロセスであって、
(I)前記少なくとも第1のフィルム層を形成する少なくとも1つの官能化フィルム層を提供する工程であって、前記少なくとも1つの官能化フィルム層が、前記積層体中の内部層として用いられる極性反応性基ポリオレフィン層である、工程と、
(II)前記少なくとも第2のフィルム層を形成する少なくとも1つの極性または非極性フィルム基材を提供する工程と、
(III)十分な耐化学性の値を有する積層接着剤組成物を提供する工程であって、前記積層接着剤組成物の前記耐化学性の値は、前記積層体がテアリングの破損モードまたは非破損モードを伴う層間剥離試験にかけられる場合、少なくとも200g-f/inの測定される接着力に前記積層体が耐えるのに十分な結合強度である、工程と、
(IV)前記積層接着剤組成物を前記少なくとも第1のフィルム層の表面の少なくとも一部分に塗布して、内部フィルム層と積層接着剤組成物との組み合わせを形成する工程と、
(V)前記接着剤組成物が前記第1のフィルム層と前記第の2フィルム層との間に配置されるように、前記少なくとも1つの極性または非極性フィルム基材を前記内部フィルム層の前記表面の前記少なくとも一部分に存在する前記接着剤組成物と接触させる工程と、を含み、前記フィルム基材の表面の少なくとも一部分が、前記接着剤組成物と接触して、前記内部フィルム層と前記フィルム基材との間に結合をもたらし、積層体を形成する、プロセス。
項11.
前記少なくとも第2のフィルム基材層は、ポリエチレンテレフタレート、二軸延伸ポリアミド、金属化ポリエチレンテレフタレート、金属化二軸延伸ポリプロピレン、アルミニウム箔、ポリプロピレン、ポリエチレン、二軸延伸ポリプロピレン、および無延伸ポリプロピレンからなる群から選択される、項10に記載のプロセス。
項12.
項10に記載のプロセスによって作製されるパウチ、サッシェ、自立型パウチ、または他の袋部材。
図1
図2
図3