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▶ アリゾナ ボード オブ リージェンツ フォー アンド オン ビハーフ オブ アリゾナ ステート ユニバーシティの特許一覧

(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-21
(45)【発行日】2024-07-01
(54)【発明の名称】無溶剤イオン性液体エポキシ樹脂
(51)【国際特許分類】
   C08G 59/20 20060101AFI20240624BHJP
   C08G 59/40 20060101ALI20240624BHJP
   C08L 63/00 20060101ALI20240624BHJP
   H01B 1/00 20060101ALI20240624BHJP
【FI】
C08G59/20
C08G59/40
C08L63/00 C
H01B1/00 A
【請求項の数】 15
(21)【出願番号】P 2021547468
(86)(22)【出願日】2020-02-18
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-04-12
(86)【国際出願番号】 US2020018682
(87)【国際公開番号】W WO2020172191
(87)【国際公開日】2020-08-27
【審査請求日】2023-02-17
(31)【優先権主張番号】62/807,134
(32)【優先日】2019-02-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】504318142
【氏名又は名称】アリゾナ ボード オブ リージェンツ オン ビハーフ オブ アリゾナ ステート ユニバーシティ
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【弁理士】
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【弁理士】
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【弁理士】
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【弁理士】
【氏名又は名称】内藤 和彦
(72)【発明者】
【氏名】フリーセン,コディ
(72)【発明者】
【氏名】バウティスタ-マルティネス,ホセ,アントニオ
(72)【発明者】
【氏名】ゴンチャレンコ,ミハイロ
(72)【発明者】
【氏名】ジョンソン,ポール
【審査官】小森 勇
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2018/081165(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2010/0004389(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08G 59/00-59/72
C08L 63/00-63/10
H01B 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
分子構造(R1-(Y1n)(式中、R1はイオン性部分であり、Y1は求核基であり、nは2~10である)およびR1に対する対イオンとして作用するイオン性部分Aを含む硬化剤化合物Hと、
分子構造(R21n)(式中、R2はイオン性部分であり、Z1はエポキシド基を含み、nは2~10である)およびR2に対する対イオンとして作用するイオン性部分Bを含むエポキシ化合物Eと、を含む、エポキシシステムであって、
前記硬化剤化合物Hが、1,3,5-トリス[1-(2’-アミノエチル)-2-メチル-1H-イミダゾール-3-イウムメチレン(iummethylene)]ベンゼントリブロミド、テトラキス[1-(2’-アミノエチル)-2-メチル-1H-イミダゾール-3-イウムメチル]メタンテトラブロミド、またはこれらの組み合わせを含み、
前記硬化剤化合物Hおよび前記エポキシ化合物Eが、混合時にポリマーを形成するように構成される、エポキシシステム
【請求項2】
前記エポキシ化合物Eが、無溶剤イオン性液体である、請求項1に記載のエポキシシステム
【請求項3】
前記硬化剤化合物Hが、無溶剤イオン性液体である、請求項1または2のいずれか一項に記載のエポキシシステム
【請求項4】
前記硬化剤化合物が、1,3,5-トリス[1-(2’-アミノエチル)-2-メチル-1H-イミダゾール-3-イウムメチレン(iummethylene)]ベンゼントリブロミドである、請求項1~のいずれか一項に記載のエポキシシステム
【請求項5】
前記硬化剤化合物Hが、テトラキス[1-(2’-アミノエチル)-2-メチル-1H-イミダゾール-3-イウムメチル]メタンテトラブロミドである、請求項1~のいずれか一項に記載のエポキシシステム
【請求項6】
促進剤、架橋剤、可塑剤、または抑制剤のうちの1つ以上をさらに含む、請求項1~のいずれか一項に記載のエポキシシステム
【請求項7】
以下の添加剤:
イオン性疎水性化合物;
疎水性化合物
イオン性親水性化合物;
イオン性遷移的疎水性/親水性化合物;
生物活性(BAIL、生物活性イオン性液体)化合物;および
可塑剤化合物
のうちの1つ以上の添加剤をさらに含み、
前記1つ以上の添加剤が、前記硬化剤化合物Hおよび前記エポキシ化合物Eの重合時にイオン性液体として放出される、請求項1~5のいずれか1項に記載のエポキシシステム
【請求項8】
可塑剤化合物をさらに含み、前記可塑剤化合物が、揮発性である、請求項のいずれか一項に記載のエポキシシステム
【請求項9】
前記ポリマーが、複数のポリマー鎖を含み、各ポリマー鎖がその長さに沿った安定な電荷を有する、請求項1~のいずれか一項に記載のエポキシシステム
【請求項10】
前記ポリマーが、多孔質である、請求項1~のいずれか一項に記載のエポキシシステム
【請求項11】
記ポリマーが、濾過膜、固体電解質、または交換膜である、請求項1~10のいずれか1項に記載のエポキシシステム
【請求項12】
請求項1~11のいずれか一項に記載のエポキシシステムの前記重合によって生成された、ポリマー。
【請求項13】
前記ポリマーが、固体電解質である、請求項12に記載のポリマー。
【請求項14】
請求項13に記載のポリマーを含む、電子部品。
【請求項15】
前記電子部品が、バッテリー、キャパシタ、圧電材料または電気アクチュエータの部品である、請求項14に記載の電子部品。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本開示は、2019年2月18日に出願された米国仮特許出願第62/807,134号のより早い出願日の利益を主張し、その米国仮特許出願は参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0002】
本開示は、新規のイオン性エポキシ樹脂、そのような樹脂を含有する系、およびそのような樹脂を作製または使用する方法に関する。
【背景技術】
【0003】
従来のエポキシ系としては、しばしば、歯科用充填材、プリント回路基板、風力タービン、軽量車両、コーティング、外装、フローリング、接着剤、航空宇宙用途、およびさまざまな他の用途で広く使用される熱硬化性ポリマーが挙げられる。この広範囲な用途は、硬度、可撓性、接着性、架橋度、鎖間結合の性質、高強度(引張、圧縮および曲げ)、耐薬品性、耐疲労性、耐食性および電気抵抗の所望の特性を付与する、さまざまな硬化反応、ならびに関連する化学組成および構造の利用可用性によって促進される。粘度などの未硬化エポキシ樹脂の特性は、モノマー、硬化剤、および触媒を適切に選択することによって、加工性を促進する。情報源にもよるが、世界のエポキシ市場は、2015年の60~71億米ドルから2024年には92~105億米ドルに増加し、1年当たりの平均生産量は、250万メートルトンになると推定される。
【0004】
従来、エポキシ系の注目すべき特性の多くは、著しい揮発性有機化合物(VOC)の排出量というコストが伴い、人間オペレーターに健康上のリスクをもたらす。そのため、従来のエポキシは、グリーンテクノロジーと考えることはできず、米国環境保護庁(EPA)の規制が必要であり(例えば、EPAは、すべてのVOCの少なくとも80%が工業プロセスで捕捉されることを求めている)、その結果、製造に携わる人間オペレーターの健康リスクとともに、全体的な運用コストに大きな影響を及ぼす。
【発明の概要】
【0005】
硬化剤化合物Hおよびエポキシ化合物Eを含む低溶剤または無溶剤のイオン性エポキシ系が開示される。いくつかの実施形態では、硬化剤化合物は、分子構造(Y-R-Y)(式中、Rはイオン性部分であり、Yは求核基であり、およびYは求核基である)と、Rに対する対イオンとして作用するイオン性部分Aと、を含む。いくつかの実施形態では、エポキシ化合物は、分子構造(Z-R-Z)(式中、Rはイオン性部分であり、Zはエポキシド基を含み、およびZはエポキシド基を含む)と、Rに対する対イオンとして作用するイオン性部分Bと、を含む。いくつかの実施形態では、低溶剤または無溶剤のエポキシ系は、分子構造(R-(Y)(式中、Rはイオン性部分であり、Yは求核基であり、nは2~10である)、およびRに対する対イオンとして作用するイオン性部分Aを含む硬化剤化合物Hと、分子構造(R-Z)(式中、Rはイオン性部分であり、Zはエポキシド基を含み、nは2~10である)、およびRに対する対イオンとして作用するイオン性部分Bを含むエポキシ化合物Eと、を含む。いくつかの実施形態では、Yは、独立して、NH基、SH基、OH基、SeH基、およびPH基から選択される求核試薬を含む。
【0006】
いくつかの実施形態では、エポキシ化合物Eおよび/または硬化剤Hは、無溶剤イオン性液体に含まれ、従来のエポキシにおけるVOCの問題に有意に対処する。いくつかの実施形態では、硬化剤化合物は、1,3,5-トリス[1-(2’-アミノエチル)-2-メチル-1H-イミダゾール-3-イウムメチレン(iummethylene)]ベンゼントリブロミドである。いくつかの実施形態では、エポキシ化合物は、テトラキス[1-(2’-アミノエチル)-2-メチル-1H-イミダゾール-3-イウムメチル]メタンテトラブロミドである。
【0007】
いくつかの実施形態では、分子構造(R-(Y1,2,3)(式中、Rはイオン性部分であり、Yは求核基であり、Yは求核基であり、およびYは求核基である)、およびRに対する対イオンとして作用するイオン性部分Aを含む硬化剤架橋剤化合物Hと、分子構造(R-(Z1,2,3)(式中、Rはイオン性部分であり、Zはエポキシド基を含み、Zはエポキシド基を含み、およびZはエポキシド基を含む)、およびRに対する対イオンとして作用するイオン性部分Bを含むエポキシ架橋剤化合物Eと、を含む、低溶剤または無溶剤のイオン性熱硬化性エポキシ系が開示される。いくつかの実施形態では、エポキシ架橋剤化合物Eは、無溶剤イオン性熱硬化性架橋剤樹脂である。いくつかの実施形態では、Y、Y、およびYは、独立して、NH基、SH基、OH基、SeH基、およびPH基から選択される求核試薬を含む。いくつかの実施形態では、硬化剤架橋剤化合物Hは、無溶剤のイオン性熱硬化性架橋剤硬化剤である。いくつかの実施形態では、硬化剤架橋剤化合物は、1,3,5-トリス[1-(2’-アミノエチル)-2-メチル-1H-イミダゾール-3-イウムメチレン]ベンゼントリブロミドである。いくつかの実施形態では、エポキシ架橋剤化合物は、テトラキス[1-(2’-アミノエチル)-2-メチル-1H-イミダゾール-3-イウムメチル]メタンテトラブロミドである。
【0008】
いくつかの実施形態では、開示される系は、促進剤、架橋剤、可塑剤、抑制剤、イオン性疎水性および/または超疎水性化合物、イオン性親水性化合物、イオン性遷移的疎水性/親水性化合物、および/または生物活性(BAIL、生物活性イオン性液体)化合物をさらに含む。
【0009】
開示されるエポキシ系から作製されたポリマーおよびそれらの使用方法も開示する。ある特定の実施形態では、硬化剤化合物Hとエポキシ化合物Eとの重合時に生成されたポリマーは、静電引力により修復プロセスを駆動するポリマー鎖に沿った安定な電荷の存在に起因して、自己修復特性を有し得る。実施形態では、硬化剤化合物Hとエポキシ化合物Eとの重合時に生成されたポリマーは、高度に規則的な多孔質系を形成し、それは、濾過膜、二次イオン性液体を交換した後の固体電解質、交換膜などに使用することができるが、これらに限定されない。ある特定の実施形態では、ポリマーは、電子部品として、例えば、バッテリー、キャパシタ、圧電材料および/または電気アクチュエータの部品として使用され得る固体電解質を含む。
【0010】
本開示の前述および他の特徴は、添付の図面を参照して進める以下の詳細な説明からより明らかになろう。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】1,3-ジ(2’-アミノエチレン)-2-メチルイミダゾリウムブロミドの典型的なNMRスペクトルの例である。
図2】γ-メチル-4-(2-オキシラニルメトキシ)-γ-[4-(2-オキシラニルメトキシ)フェニル]-、メチルエステルベンゼンブタン酸の典型的なNMRスペクトルの例である。
図3】γ-メチル-4-(2-オキシラニルメトキシ)-γ-[4-(2-オキシラニルメトキシ)フェニル]-ベンゼンブタン酸の典型的なNMRスペクトルの例である。
図4】本明細書に開示される実施形態による、無溶剤イオン性液体エポキシ樹脂および硬化剤の例の化学構造を示している。
図5】本明細書に開示される実施形態による、重合反応後に超疎水性材料を生成する超疎水性アニオン性部分を含むイオン性液体エポキシ系の一例の化学構造を示している。
図6】本明細書に開示される実施形態による、重合反応後に超疎水性材料を生成する超疎水性カチオンを含むイオン性液体エポキシ系の一例の化学構造を示している。
図7】本明細書に開示される実施形態による、重合反応後に遷移的疎水性親水性材料を生成するイオン性液体エポキシ系の化学構造を示している。
図8】本明細書に開示される実施形態による、薬学的に活性なアニオンおよびカチオンを含み、重合反応後に薬物放出材料を生成するイオン性液体エポキシ系の化学構造を示している。
図9】本明細書に開示される実施形態による、無溶剤イオン性液体エポキシ樹脂に関する例示的な薬理活性イオンの化学構造、すなわち、図9A)抗ヒスタミン、図9B)エモリエント、図9C)抗炎症剤、図9D)鎮痛剤、図9E)抗炎症剤、および図9F)抗コリン作動薬の化学構造を示している。
図10】本明細書に開示される実施形態による、例示のイオン性液体例の化学構造、すなわち、図10A)および図10B)イオン性液体硬化剤、図10C)自己触媒イオン性液体硬化剤、図10D)イオン性液体促進剤、図10E)イオン性液体エポキシ樹脂、図10F)イオン性液体促進剤、図10G)および図10H)イオン性液体架橋剤、および図10I)イオン性液体促進剤の化学構造を示している。
図11】本明細書に開示される実施形態による、イオン性液体エポキシドおよび硬化剤の合成に使用可能な疎水性アニオンの例の化学構造を示している。
図12】本明細書に開示される実施形態による、イオン性液体エポキシドおよび硬化剤の合成に使用可能な疎水性カチオンの例の化学構造を示している。
図13】イオン性液体エポキシドおよび硬化剤の合成に使用可能な親水性アニオンの例の化学構造を示している。
図14】本明細書に開示される実施形態による、イオン性液体エポキシドおよび硬化剤の合成に使用可能な親水性カチオンの例の化学構造を示している。
図15】本明細書に開示される実施形態による、イオン性液体エポキシド系において活性物質として使用される生物活性イオン性液体(BAIL)の例の化学構造、すなわち、図15A)1-アルキル-1-メチルピペリジニウム-4-(4-クロロ-2-メチルフェノキシ)ブタノエート、除草剤;図15B)コリニウムピラジネート、細胞毒性剤;図15C)トリス(2-ヒドロキシエチル)メチルアンモニウムサリチレート、抗凝固剤-抗炎症剤;図15D)ラニチジニウムドクサート、ヒスタミン酸-緩和薬;図15E)リドカイニウムドクサート、鎮痛剤-緩和薬;および図15F)ジデシルジメチルアンモニウムイブノプロフェネート、抗菌-抗炎症剤の化学構造を示している。
図16】ポリマーおよびエポキシド系における可塑剤として使用されるイオン性液体の例の化学構造を示している。本明細書に開示される実施形態による、図16A)1-ブチル-3-メチルイミダゾリウムテトラフルオロボレート、図16B)1-ブチル-3-メチルイミダゾリウムビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミド、図16C)テトラヘキシルホスホニウムデカノエート、図16D)1-エチルピリジニウムビス(2-エチルヘキシル)スルホスクシネート、図16E)1-ブチル-3-メチルイミダゾリウムヘキサフルオロホスフェート、および図16F)1-オクチル-3-メチルイミダゾリウムクロリド。
図17】本明細書に開示される実施形態による、BPAを含まないイオン性液体エポキシ系の化学構造を示しており、図17A)脂肪族エポキシ樹脂の例、図17B)脂肪族硬化剤の例、図17C)脂肪族エポキシ樹脂の第2の例、および図17D)エポキシ樹脂の芳香族非フェノール性の例を示している。
図18】本明細書に開示される実施形態による、固体電解質成分を有する電気化学セル(図18A)および印加電位に起因する電極の体積変化を伴う電気化学アクチュエータ(図18B)の例を示す概略図である。
図19】ポリマー構造の主鎖に固定電荷を含有するポリマー系の修復プロセスを示している一連の断面概略図である。機械的損傷(例えば、亀裂)の存在後に、本明細書に開示される実施形態による、ポリマー構造中の電荷の静電引力が、材料の「修復」を行った。
図20】50%w/wのテトラブチルホスホニウムTFSIイオン性液体の存在下で硬化させたJeffamine-BPAフィルムの一連の走査型電子顕微鏡(SEM)画像である。本明細書に開示される実施形態により、SEM分析の前に、イオン性液体を除去するためにフィルムをメタノールで数回洗浄し、真空オーブン(35℃、完全真空、48時間)中で乾燥させた。
図21】イミダゾリウムBF4樹脂、イミダゾリウムブロミド硬化剤、およびテトライミダゾリウムブロミド架橋剤(モル比10:9:1)を使用したポリマーに関する電気化学インピーダンススペクトルであり、ポリマー試料は、2つのZnプレート(純度99.99%、0.05μmアルミナで研磨した)の間に配置され、20%m/mの追加のイオン性液体は次の通りである:21A)20%w/wのジエチルメチルアンモニウムトリフレート、21B)20%w/w 0.2MのZnCl/P4448Br、21C)20%w/w 0.2MのLiTFSI/P4448Br、21D)20%w/w 1MのLiClO3/P4448Br、および21E)20%w/w 1MのLiPF6/P4448Br。
図22】40%の追加のP4448Brイオン性液体を有しない(22A、楕円形)および有する(22A、三角形)市販のエポキシポリマーに関して記録された強度対歪みのプロットであり、また、市販のエポキシ試料(22B、長方形)と、ポリマー(イミダゾリウムBF4樹脂、イミダゾリウムブロミド硬化剤、およびテトライミダゾリウムブロミドまたは直鎖トリアミン架橋剤(モル比10:9:1))、テトライミダゾリウム架橋剤(22B、三角形)およびトリアミン直鎖架橋剤(22B、楕円形)との比較であり、ポリマーは、20%の追加のイオン性液体であるトリブチルオクチルホスホニウムブロミドを含有する。
図23】イミダゾリウムBF4樹脂(菱形)、イミダゾリウムブロミド硬化剤(赤い四角)、トリアミン直鎖架橋剤(丸)、DABCOニウムブロミド促進剤(三角)、BF4ポリマー(星)、およびPF6ポリマー(ダイヤモンド)に関する表面収着分析装置による相対湿度に対する吸水質量変化のプロットである。0.05%より低い質量変化に関して平衡時間を設定し、順方向および逆方向において記録した。
【発明を実施するための形態】
【0012】
概要
さまざまな実施形態は、処理コストを劇的に削減し、関連する健康被害を軽減するために、例えば、現在の系の幅広い適用性を維持しながら、低蒸気圧で、VOC排出を制限する改良エポキシの化学作用の発明者による実現に基づいている。本開示は、概して、異なる実施形態によれば、組み合わされると反応して高強度、多用途および/または付加機能性エポキシ系熱硬化性樹脂を形成する反応性イオン性液体の系をさまざまに提供する技術およびメカニズムに関する。これらのエポキシ系は、前述のVOCガス放出の問題を解決する。
【0013】
いくつかの実施形態は、例えば、アニオン上にエポキシド(グリシジル基)で置換されたアニオンを組み込むイオン性液体を合成することを含む。別のそのようなイオン性液体は、ジアミンおよびトリアミンの両方のカチオンを含有することができる。さらに別のそのようなイオン性液体は、アルキル化DABCOカチオン触媒を含有することができる。室温のイオン性液体は、標準状態未満で溶融し、蒸気圧ゼロを含むいくつものユニークな物理的特性を有する無溶剤液体を形成する有機塩である。イオン性液体を形成する可能性のあるイオン対の組み合わせは約10であると推定される。反応性部分を組み込んでいる有機塩を合成することによって、無溶剤および無揮発性の化学作用が可能になる。以下は、実施のための一連の例示的な短縮例である。
【0014】
さまざまな実施形態のある特定の特徴を図示するために、無溶剤イオン性液体エポキシ系は、それぞれ正電荷を有するイオン性部分基Rおよびイオン性部分Bに関して、さらに、それぞれ負電荷を有するイオン性部分基Rおよびイオン性部分Aに関して、さまざまに説明される。例えば、スキーム1は、1つの例示的な実施形態として、硬化剤イオン性液体(IL)中の正のR 置換基と、樹脂IL中の負のR を示している。しかしながら、他の実施形態では、イオン性部分基R、Rのそれぞれの電荷符号を逆にすることができる(すなわち、イオン部分A、Bのそれぞれの電荷符号も逆にされる)。
【0015】
以下の詳細な説明では、その一部を形成し、かつ、実施され得る例示的な実施形態として示される添付の図面を参照する。範囲から逸脱することなく、他の実施形態を利用してもよく、また、構造的または論理的変更を行ってもよいことを理解されたい。したがって、以下の詳細な説明は、限定的な意味で解釈されるべきではなく、実施形態の範囲は、添付の特許請求の範囲およびそれらの同等物によって定義される。
【0016】
さまざまな操作は、実施形態を理解するのに役立ち得る仕方で、順番に複数の個別の操作として説明され得るが、説明の順序は、これらの操作が順番に依存することを意味すると解釈されるべきではない。
【0017】
説明の目的上、「A/B」形式または「Aおよび/またはB」という形式の句は、(A)、(B)、または(AおよびB)を意味する。説明の目的上、「A、B、およびCのうちの少なくとも1つ」という形式の句は、(A)、(B)、(C)、(AおよびB)、(AおよびC)、(BおよびC)、または(A、BおよびC)を意味する。説明の目的上、「(A)B」という形式の句は、(B)または(AB)を意味し、すなわち、Aは任意選択的な要素である。
【0018】
説明は、「実施形態(embodiment)」または「複数の実施形態(embodiments)」という用語を使用してもよく、これらは各々、同じまたは異なる実施形態のうちの1つ以上を指し得る。さらに、実施形態に関して使用される「含む(comprising)」、「含む、挙げられる(including)」、「有する(having)」などという用語は、同義であり、一般に「オープンな」用語として意図されている(例えば、「含む、挙げられる」という用語は「含むが限定されない」と解釈されるべきであり、「有する」という用語は「少なくとも有する」と解釈されるべきであり、「含む」という用語は「含むが限定されない」と解釈されるべきである)。
【0019】
本明細書における任意の複数形および/または単数形の用語の使用に関して、当業者は、文脈および/または用途に適切であるように、複数形から単数形へ、および/または単数形から複数形へと翻訳することができる。明確にするために、さまざまな単数形/複数形の置換が、本明細書において明示的に記載され得る。
【0020】
単数形の用語「a」、「an」、および「the」には、文脈で明確に示されていない限り、複数の指示対象が含まれる。同様に、「または」という単語は、文脈が明確に別のことを示していない限り、「および」を含むことを意図している。さらに、すべての分子量または分子質量の値は概算であり、説明のために提供されていることも理解されたい。本明細書に記載されているものと類似または同等の方法および材料を本開示の実施または試験に使用することができるが、好適な方法および材料を以下に説明する。本明細書で言及されるすべての刊行物、特許出願、特許、および他の参考文献は、参照により本明細書に完全に組み込まれる。矛盾する場合は、用語の説明を含む現在の仕様が優先される。さらに、材料、方法、および例は、単なる例示であり、限定することを意図するものではない。
【0021】
本明細書で使用される場合、特に明記しない限り、以下の条件が適用されるものとする。本発明の目的のために、化学元素は、Periodic Table of the Elements,CAS version,Handbook of Chemistry and Physics,75th Edに従って識別される。さらに、有機化学の一般原則は、“Organic Chemistry”Thomas Sorrell,University Science Books, Sausalito:1999、および“March’s Advanced Organic Chemistry”,5th Ed.,Ed.:Smith, M. B. and March, J.,John Wiley & Sons,New York:2001に記載されており、それらの全内容は参照により本明細書に組み込まれる。
【0022】
本明細書で使用される「脂肪族」または「脂肪族基」という用語は、完全に飽和されている、もしくは1つ以上の不飽和単位を含有する直鎖(すなわち、非分岐)もしくは分岐の置換もしくは非置換炭化水素鎖、または完全に飽和されている、もしくは1つ以上の不飽和単位を含有するが、芳香族ではない(本明細書では「炭素環式」、「脂環式」または「シクロアルキル」とも呼ばれる)、分子の残部に対して単一の結合点を有する、単環式炭化水素もしくは二環式炭化水素を意味する。特に明記しない限り、脂肪族基は、1~6個の脂肪族炭素原子を含有する。いくつかの実施形態では、脂肪族基は、1~5個の脂肪族炭素原子を含有する。他の実施形態では、脂肪族基は1~4個の脂肪族炭素原子を含有する。なお他の実施形態では、脂肪族基は1~3個の脂肪族炭素原子を含有し、さらに他の実施形態では、脂肪族基は1~2個の脂肪族炭素原子を含有する。いくつかの実施形態では、「脂環式」(または「炭素環」もしくは「シクロアルキル」)は、完全に飽和されるか、または1つの以上の不飽和単位を含有しているが、芳香族ではなく、分子の残部に対して単一の結合点を有する単環式C~C炭化水素を指す。好適な脂肪族基としては、直鎖または分岐鎖の置換または非置換のアルキル、アルケニル、アルキニル基、およびそれらのハイブリッド、例えば(シクロアルキル)アルキル、(シクロアルケニル)アルキルまたは(シクロアルキル)アルケニルが挙げられるが、これらに限定されない。
【0023】
「低級アルキル」という用語は、C1~4直鎖または分岐鎖アルキル基を指す。例示的な低級アルキル基は、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、およびtert-ブチルである。
【0024】
「低級ハロアルキル」という用語は、1つ以上のハロゲン原子で置換されるC1~4直鎖または分岐鎖アルキル基を指す。
【0025】
「ヘテロ原子」という用語は、(窒素、硫黄、リン、またはケイ素の任意の酸化形態、任意の塩基性窒素の四級化形態、またはヘテロ環式環の置換可能な窒素、例えば、N(3,4-ジヒドロ-2H-ピロリル中の)、NH(ピロリジニル中の)またはNR(N-置換ピロリジニル中の)を含む)酸素、硫黄、窒素、リン、またはケイ素のうちの1つ以上を意味している。
【0026】
本明細書で使用される「不飽和」という用語は、部分が1つ以上の不飽和単位を有することを意味している。
【0027】
本明細書で使用されるとき、「二価のC1~8(またはC1~6)飽和または不飽和の直線状または分岐状炭化水素鎖」という用語は、本明細書で定義されるように直線状または分枝状である二価のアルキレン、アルケニレン、およびアルキニレン鎖を指す。
【0028】
「アルキレン」という用語は、二価のアルキル基を指す。「アルキレン鎖」は、ポリメチレン基、すなわち、-(CH-であり、式中、nは正の整数であって、好ましくは1~6、1~4、1~3、1~2、または2~3である。置換アルキレン鎖は、1つ以上のメチレン水素原子が置換基で置き換えられているポリメチレン基である。好適な置換基としては、置換脂肪族基について以下に記載されるものが挙げられる。
【0029】
「アルケニレン」という用語は、二価のアルケニル基を指す。置換アルケニレン鎖は、1つ以上の水素原子が置換基で置き換えられている少なくとも1つの二重結合を含有するポリメチレン基である。好適な置換基としては、置換脂肪族基について以下に記載されるものが挙げられる。
【0030】
「アルコキシ」は、基「アルキル-O-」を指す。アルコキシ基の例としては、メトキシ、エトキシ、n-プロポキシ、イソ-プロポキシ、n-ブトキシ、tert-ブトキシ、sec-ブトキシ、n-ペントキシ、n-ヘキソキシ、および1,2-ジメチルブトキシが挙げられる。
【0031】
「ハロゲン」という用語は、F、Cl、Br、またはIを意味する。
【0032】
「環」という用語は、本明細書で定義されるシクロアルキル基またはヘテロ環式環を意味する。
【0033】
単独で使用される、または「アラルキル」、「アラルコキシ」、もしくは「アリールオキシアルキル」におけるようなより大きな部分の一部として使用される「アリール」という用語は、合計5~14個の環員を有する単環式または二環式環系を指し、系における少なくとも1つの環は芳香族であり、系における各環は3~7個の環員を含有する。「アリール」という用語は、「アリール環」という用語と交換可能に使用され得る。
【0034】
単独で使用される、または「アラルキル」、「アラルコキシ」、もしくは「アリールオキシアルキル」におけるようなより大きな部分の一部として使用される「アリール」という用語は、合計5~10個の環員を有する単環式および二環式環系を指し、系における少なくとも1つの環は芳香族であり、系における各環は3~7個の環員を含有する。「アリール」という用語は、「アリール環」という用語と交換可能に使用され得る。本発明のある特定の実施形態では、「アリール」は、1つ以上の置換基を有し得る、フェニル、ビフェニル、ナフチル、アントラシルなどを含むがこれらに限定されない芳香族環系を指す。本明細書で使用される「アリール」という用語の範囲内には、芳香族環が、インダニル、フタルイミジル、ナフチミジル、フェナントリジニル、またはテトラヒドロナフチルなどの1つ以上の非芳香族環に融合される基も含まれる。
【0035】
「アラルキル」という用語は、アリール-アルキレンを指し、アリールおよびアルキレンは、本明細書で定義されている通りである。
【0036】
「アラルコキシ」という用語は、アリール-アルコキシを指し、アリールおよびアルコキシは、本明細書で定義されている通りである。
【0037】
「アリールオキシアルキル」という用語は、アリール-O-アルキレンを指し、アリールおよびアルキレンは、本明細書で定義されている通りである。
【0038】
単独で使用される、またはより大きな部分、例えば、例えば「ヘテロアラルキル」または「ヘテロアラルコキシ」の一部として使用される「ヘテロアリール」および「ヘテロアル-(heteroar-)」という用語は、5~10個の環原子、好ましくは5、6、または9個の環原子を有し、環状アレイで共有される6、10、または14個のπ電子を有し、さらに炭素原子に加えて1~5個のヘテロ原子を有する基を指す。ヘテロアリール基としては、チエニル、フラニル、ピロリル、イミダゾリル、ピラゾリル、トリアゾリル、テトラゾリル、オキサゾリル、イソキサゾリル、オキサジアゾリル、チアゾリル、イソチアゾリル、チアジアゾリル、ピリジル、ピリダジニル、ピリミジニル、ピラジニル、インドリジニル、プリニル、ナフチリジニル、およびプテリジニルが挙げられるが、これらに限定されない。本明細書で使用される「ヘテロアリール」および「ヘテロアル-」という用語はまた、ヘテロ芳香族環が、1つ以上のアリール、脂環式環、またはヘテロシクリル環に融合されている基も含み、ラジカルまたは結合点はヘテロ芳香族環上にある。非限定的な例としては、インドリル、イソインドリル、ベンゾチエニル、ベンゾフラニル、ジベンゾフラニル、インダゾリル、ベンズイミダゾリル、ベンズチアゾリル、キノリル、イソキノリル、シノリニル、フタラジニル、キナゾリニル、キノキサリニル、4H-キノリジニル、カルバゾリル、アクリジニル、フェナジニル、フェノチアジニル、フェノキサジニル、テトラヒドロキノリニル、テトラヒドロイソキノリニル、およびピリド[2,3-b]-1,4-オキサジン-3(4H)-オンが挙げられる。ヘテロアリール基は、単環式または二環式であり得る。「ヘテロアリール」という用語は、「ヘテロアリール環」、「ヘテロアリール基」、または「ヘテロ芳香族」という用語と交換可能に使用されてもよく、これらの用語のいずれかは、任意選択的に置換される環を含む。「ヘテロアラルキル」という用語は、ヘテロアリールによって置換されたアルキル基を指し、アルキル部分およびヘテロアリール部分は、独立して、任意選択的に置換される。
【0039】
本明細書で使用されるとき、「ヘテロ環」、「ヘテロシクリル」、「複素環式ラジカル」、および「ヘテロ環式環」という用語は、交換可能に使用され、安定な5員~7員の単環式部分または7員~10員の二環式複素環式部分を指し、当該環式部分は、飽和または部分的に不飽和のいずれかであり、炭素原子に加えて、上で定義したように、1つ以上、好ましくは1~4個のヘテロ原子を有する。ヘテロ環の環原子に関して使用されるとき、「窒素」という用語は、置換窒素を含む。一例として、酸素、硫黄または窒素から選択される0~3個のヘテロ原子を有する飽和または部分的に不飽和の環において、窒素は、N(3,4-ジヒドロ-2H-ピロリルにおける)、NH(ピロリジニルにおける)、または+NR(N-置換ピロリジニルにおける)であり得る。
【0040】
ヘテロ環式環は、安定な構造をもたらす任意のヘテロ原子または炭素原子のところで、ヘテロ環式環のペンダント基に対して結合することができ、任意の環原子を任意選択的に置換することができる。そのような飽和または部分的に不飽和の複素環式ラジカルの例としては、テトラヒドロフラン、テトラヒドロチオフェニルピロリジニル、ピペリジニル、ピロリニル、テトラヒドロキノリニル、テトラヒドロイソキノリニル、デカヒドロキノリニル、オキサゾリジニル、ピペラジニル、ジオキサニル、ジオキソラニル、ジアゼピニル、オキサゼピニル、チアゼピニル、モルホリニル、およびキヌクリジニルが挙げられるが、これらに限定されない。「ヘテロ環」、「ヘテロシクリル」、「ヘテロシクリル環」、「複素環式基」、「複素環式部分」、および「複素環式ラジカル」という用語は、本明細書では交換可能に使用され、ヘテロシクリル環が、1つ以上のアリール、ヘテロアリール、または脂環式環に対して、例えば、インドリニル、3H-インドリル、クロマニル、フェナントリジニル、またはテトラヒドロキノリニルに対して融合される基も含み、そのラジカルまたは結合点はヘテロシクリル環上にある。ヘテロシクリル基は、単環式または二環式であり得る。「ヘテロシクリルアルキル」という用語は、ヘテロシクリルによって置換されたアルキル基を指し、そのアルキル部分およびヘテロシクリル部分は、独立して、任意選択的に置換される。
【0041】
本明細書で使用されるとき、「部分的に不飽和」という用語は、少なくとも1つの二重結合または三重結合を含む環部分を指す。「部分的に不飽和」という用語は、不飽和の複数の部位を有する環を包含することを意図しているが、本明細書で定義されるように、アリールまたはヘテロアリール部分を含むことを意図していない。
【0042】
本明細書に記載されるように、本発明の化合物は、「任意選択的に置換された」部分を含有し得る。概して、「置換された」という用語は、「任意選択的に」という用語が先行するか否かにかかわらず、指定された部分の1つ以上の水素が好適な置換基で置き換えられていることを意味する。特に明記しない限り、「任意選択的に置換された」基は、基の各置換可能な位置に好適な置換基を有し得、任意の所定の構造における複数の位置が、特定の基から選択された複数の置換基で置換され得るとき、置換基は、すべての位置で、同じであっても、異なっていても、いずれでもよい。本発明によって想定される置換基の組み合わせは、好ましくは、安定な、または化学的に実現可能な化合物の形成をもたらすものである。本明細書で使用される「安定な」という用語は、化合物の生成、検出を可能にする条件、および、ある特定の実施形態では、化合物の回収、精製、ならびに本明細書に開示される1つ以上の目的のための使用を可能にする条件にさらされたときに、実質的に変わらない化合物を指す。
【0043】
「任意選択的に置換された」基の置換可能な炭素原子上の好適な一価の置換基は、独立して、ハロゲン;-(CH0~4R°;-(CH0~4OR°;-O(CH0~4R°、-O-(CH0~4C(O)OR°;-(CH0~4CH(OR°);-(CH0~4SR°;R°で置換され得る-(CH0~4Ph;R°で置換され得る-(CH0~4O(CH0~4Ph;R°で置換され得る-CH=CHPh;R°で置換され得る-(CH0~4O(CH0-1-ピリジル;-NO;-CN;-N;-(CH0~4N(R°);-(CH0~4N(R°)C(O)R°;-N(R°)C(S)R°;-(CH0~4N(R°)C(O)NR°;-N(R°)C(S)NR°;-(CH0~4N(R°)C(O)OR°;-N(R°)N(R°)C(O)R°;-N(R°)N(R°)C(O)NR°;-N(R°)N(R°)C(O)OR°;-(CH0~4C(O)R°;-C(S)R°;-(CH0~4C(O)OR°;-(CH0~4C(O)SR°;-(CH0~4C(O)OSiR°;-(CH0~4OC(O)R°;-OC(O)(CH0~4SR°-;-(CH0~4SC(O)R°;-(CH0~4C(O)NR°;-C(S)NR°;-C(S)SR°;-SC(S)SR°、-(CH0~4OC(O)NR°;-C(O)N(OR)R°;-C(O)C(O)R°;-C(O)CHC(O)R°;-C(NOR)R°;-(CH0~4SSR°;-(CH0~4S(O)R;-(CH0~4S(O)OR°;-(CH0~4OS(O)R°;-S(O)NR°;-(CH0~4S(O)R°;-N(R°)S(O)NR°;-N(R°)S(O)R°;-N(OR°)R°;-C(NH)NR°;-P(O)R°;-P(O)R°;-OP(O)R°;-OP(O)(OR°);SiR°;-(C1~4直鎖または分岐鎖アルキレン)O-N(R°);または-(C1~4直鎖または分岐鎖アルキレン)C(O)O-N(R°)であって、式中、各R°は、以下に定義するように置換されてもよく、独立して、水素、C1~6脂肪族、-CHPh、-O(CH0~1Ph、-CH-(5~6員ヘテロアリール環)、または独立して、窒素、酸素、もしくは硫黄から選択される0~4個のヘテロ原子を有する5~6員の飽和の、部分的に不飽和の、またはアリールの環であり、または、上記の定義にかかわらず、R°の2つの独立した存在は、それらの介在原子(複数可)と一緒になって、独立して、窒素、酸素、もしくは硫黄から選択される0~4個のヘテロ原子を有する、3~12員の飽和の、部分的に不飽和の、もしくはアリール単環式もしくは二環式環を形成し、それは以下に定義するように置換され得る。
【0044】
R°上の好適な一価の置換基(またはR°の2つの独立した存在をそれらの介在原子と一緒にすることによって形成される環)は、独立して、-(CH0~2、-(ハロR)、-(CH0~2OH、-(CH0~2OR、-(CH0~2CH(OR、-O(ハロR)、-CN、-N、-(CH0~2C(O)R、-(CH0~2C(O)OH、-(CH0~2C(O)OR、-(CH0~2SR、-(CH0~2SH、-(CH0~2NH、-(CH0~2NHR、-(CH0~2NR 、-NO、-SiR 、-OSiR 、-C(O)SR、-(C1~4直鎖または分枝鎖アルキレン)C(O)OR、または-SSRであり、式中、各Rは、非置換であるか、または「ハロ」が前に付いている場合は、1つ以上のハロゲンのみで置換されており、独立して、C1~4脂肪族、-CHPh、-O(CH0~1Ph、または独立して、窒素、酸素、もしくは硫黄から選択される0~4個のヘテロ原子を有する5~6員の飽和の、部分的に不飽和の、またはアリールの環から選択される。R°の飽和炭素原子上の好適な二価の置換基としては、=Oおよび=Sが挙げられる。
【0045】
「任意選択的に置換された」基の飽和炭素原子上の好適な二価の置換基としては、=O、=S、=NNR*、=NNHC(O)R*、=NNHC(O)OR*、=NNHS(O)R*、=NR*、=NOR*、-O(C(R*2))2~3O-、または-S(C(R*))2~3S-が挙げられ、式中、R*の各独立した存在は、水素、以下に定義するように置換され得るC1~6脂肪族、または独立して、窒素、酸素、もしくは硫黄から選択される0~4個のヘテロ原子を有する非置換の5~6員の飽和の、部分的に不飽和の、またはアリールの環から選択される。「任意選択的に置換された」基の隣接する置換可能な炭素に結合される好適な二価の置換基としては、-O(CR 2~3O-が挙げられ、式中、R*の各独立した存在は、水素、以下に定義するように置換され得るC1~6脂肪族、または独立して、窒素、酸素、もしくは硫黄から選択される0~4個のヘテロ原子を有する非置換の5~6員の飽和の、部分的に不飽和の、またはアリールの環から選択される。
【0046】
R*の脂肪族基上の好適な置換基としては、ハロゲン、-R、-(ハロR)、-OH、-OR、-O(ハロR)、-CN、-C(O)OH、-C(O)OR、-NH、-NHR、-NR 、または-NOが挙げられ、式中、各Rは、非置換であるか、または「ハロ」が前に付いている場合は、1つ以上のハロゲンのみで置換されていて、独立して、C1~4脂肪族、-CHPh、-O(CH0~1Ph、または独立して、窒素、酸素、もしくは硫黄から独立して選択される0~4個のヘテロ原子を有する5~6員の飽和の、部分的に不飽和の、またはアリールの環である。
【0047】
「任意選択的に置換された」基の置換可能な窒素上の好適な置換基としては、-R、-NR 、-C(O)R、-C(O)OR、-C(O)C(O)R、-C(O)CHC(O)R、-S(O)、-S(O)NR 、-C(S)NR 、-C(NH)NR 、または-N(R)S(O)が挙げられ、式中、各Rは、独立して、水素、以下に定義するように置換され得るC1~6脂肪族、非置換-OPh、または独立して、窒素、酸素、もしくは硫黄から選択される0~4個のヘテロ原子を有する5~6員の飽和の、部分的に不飽和の、またはアリールの環であるか、または、上記の定義にかかわらず、Rの2つの独立した存在は、それらの介在原子(複数可)と一緒になって、独立して、窒素、酸素、もしくは硫黄から選択される0~4個のヘテロ原子を有する、非置換の3~12員の飽和の、部分的に不飽和の、もしくはアリールの単環式もしくは二環式の環を形成する。
【0048】
の脂肪族基上の好適な置換基は、独立して、ハロゲン、-R、-(ハロR)、-OH、-OR、-O(ハロR)、-CN、-C(O)OH、-C(O)OR、-NH、-NHR、-NR 、または-NOであり、式中、各Rは、非置換であるか、または「ハロ」が前に付いている場合は、1つ以上のハロゲンのみで置換されていて、独立して、C1~4脂肪族、-CHPh、-O(CH0~1Ph、または独立して、窒素、酸素、もしくは硫黄から選択される0~4個のヘテロ原子を有する5~6員の飽和の、部分的に不飽和の、またはアリールの環から選択される。
【0049】
特に明記しない限り、本明細書に記載される構造はまた、構造のすべての異性(例えば、エナンチオマー、ジアステレオマー、および幾何(または配座))形態を含むことも意味しており、例えば、各不斉中心に関するRおよびS配置、ZおよびE二重結合異性体、ZおよびE配座異性体も含むことも意味している。したがって、単一の立体化学異性体、ならびに本発明の化合物のエナンチオマーと、ジアステレオマーと、幾何異性体(または配座異性体)との混合物は、本発明の範囲内である。特に明記しない限り、本発明の化合物のすべての互変異性体形態は、本発明の範囲内である。
【0050】
「促進剤」という用語は、それ自体が影響を受けることなく化学反応を開始または促進する(例えば、加速する)物質を指すことを意図している。
【0051】
「架橋剤」という用語は、共有結合またはイオン結合によって2つのポリマー鎖を連結する添加剤を指すことを意図している。架橋剤は、一般に、それらの反応性、長さ、および溶解性に基づいて選択される。架橋剤は、試料への添加時に自発的に反応することもできる、または光反応性基などを介して、特定の時間、活性化させることもできる。従来のエポキシ樹脂系において、架橋剤は、エポキシド環を開環できる3つ以上の求電子基を有する化合物の群である。一般的な線状硬化剤に加えて、三官能性または四官能性架橋剤の導入により、線状エポキシよりも硬度、強度、および耐薬品性を向上させる多次元ポリマーネットワークが作り出され、より高い溶融温度を有する熱硬化性ポリマーが生成される。いくつかの実施形態では、イオン性液体は、イオン性熱硬化性架橋剤(IT-架橋剤)として機能するように改変される。
【0052】
「可塑剤」という用語は、材料の機械的特性を改変する物質を指すことを意図している。可塑剤は、それらが添加される材料の物理的特性を変える。例えば、可塑剤はポリマー鎖間の引力を減らして、ポリマー鎖をより柔軟にすることができる。可塑剤は、柔軟性、作業性、耐久性、または伸縮性を付与することができる。可塑剤は、ポリマーなどの材料の剛性、変形能、伸び、靭性、プロセス粘度、使用温度などを変えることができる。可塑剤は、典型的には、揮発性の低い液体または固体である。可塑剤として使用されるイオン性液体のいくつかは、図16A~16Fに示してあり、これらはすべて、イオン性液体エポキシド系における二次イオン性液体として使用することができる。
【0053】
「阻害剤」という用語は、化学反応の速度を低下させる、または化学反応を妨げる物質を指すことを意図している。
【0054】
「イオン性液体」という用語は、液体状態の塩である。イオン性液体は、主にイオンと短寿命のイオン対から作製される。イオン性液体は、定義上、蒸気圧を有していない。これらの物質は、液体電解質、イオン性溶融物、イオン性流体、溶融塩、液体塩、またはイオン性ガラスとさまざまに呼ばれている。分解または気化せずに溶解するあらゆる塩は、通常は、イオン性液体を生成する。室温のイオン性液体は、100℃未満で溶解し、無溶剤の液体を形成する有機塩であり、蒸気圧がゼロなどのいくつかの独自の物理的特性を備えている。イオン性液体を形成する可能性のあるイオン対の組み合わせは、推定106から1014ある。一般に、幅広い目的で無溶剤および無揮発性の化学反応を可能にする反応性部分を組み込んでいるイオン性液体を合成することが可能である。具体的には、いくつかの実施形態で本明細書に開示されるのは、エポキシド(グリシジル基)で置換されたアニオン/カチオン、およびエポキシド重合反応のために設計されたジアミン部分によって置換された対応するアニオン/カチオンを組み込んでいる合成イオン性液体である。
【0055】
「生物活性イオン性液体」(BAIL)は、生物活性を持つイオン性液体の一種である。例示的なBAILは、図8、9A~9Fおよび15A~15Fに提供している。
【0056】
「イオン性疎水性化合物」という用語は、正および負のイオン対からできており、水と不混和性であるが、水に対してある程度の溶解性および水中での溶解性を有する化合物を指す。
【0057】
「超疎水性化合物」という用語は、水に不混和性であり、水に対して10重量%以下の溶解度を有する化合物を指す。
【0058】
「イオン性親水性化合物」という用語は、正および負のイオン対からできており、水中で可溶性であり、気相から可溶化水を蓄積する能力を示す化合物を指す。
【0059】
「イオン性遷移的疎水性/親水性化合物」という用語は、正および負のイオン対から構成される化合物を指し、その疎水性または親水性の特性は、上記のように、pH、CO2分圧、相対湿度、または温度などの化学的または環境的入力に応じて、一方から他方に移行することができる。
【0060】
「反応条件」という用語は、化学反応が進行する物理的および/または環境的条件を指すことを意図している。「に対して十分な条件下で」または「に対して十分な反応条件下で」という用語は、所望の化学反応が進行することができる反応条件を指すことを意図している。反応条件の例としては、反応温度、溶剤、pH、圧力、反応時間、反応物のモル比、塩基または酸の存在、または触媒、放射線、濃度などが挙げられるが、これらに限定されない。反応条件は、カップリング条件、水素化条件、アシル化条件、還元条件などの条件が用いられる特定の化学反応にちなんで名付けられ得る。ほとんどの反応に関する反応条件は、当業者に一般に知られているか、または文献から容易に入手することができる。本明細書で提供される化学変換を実施するために十分な例示的な反応条件は、全体を通して、特に以下の実施例において見出すことができる。反応条件は、特定の反応に列挙されたものに加えて試薬を含み得ることもまた企図される。
【0061】
いくつかの実施形態の説明
硬化剤化合物(H)およびエポキシ化合物(E)を含むエポキシ系が、本明細書で開示される。典型的には、硬化剤化合物およびエポキシ化合物は、別々に提供され、次いで、使用時に混合されてポリマーを形成する。実施形態では、硬化剤化合物は、以下の分子構造を有する:
-R-Y
式中、Rはイオン性部分であり、YおよびYはRに結合している。ある特定の実施形態では、Yは、求核基であるか、またはそれを含む。ある特定の実施形態では、Yは、求核基であるか、またはそれを含む。ある特定の実施形態では、YおよびYは同一である。ある特定の実施形態では、YおよびYは同一ではない。特定の例では、YおよびYは、独立して、NH基、SH基、OH基、SeH基、およびPH基から選択される求核試薬を含む。ある特定の実施形態では、硬化剤化合物(H)は、例えば、Rに対する対イオンとして作用するイオン性部分Aとの分子複合体として、無溶剤イオン性液体の一部であり、例えば、成分である。Y-R-Yの例は、表1および図4、5、6、7、8、10A~10Iおよび17A~17Dに示してある。イオン対イオンの例は、図4、5、6、7、8、9、10A~10I、13A~17Dに示してある。
【0062】
実施形態では、硬化剤化合物は、以下の分子構造を有する:
-(Y
式中、Rはイオン性部分であり、YはRに結合している。ある特定の実施形態では、Yは、求核基であるか、またはそれを含む。ある特定の実施形態では、個々のY基は同一である。実施形態では、nは、2~10の整数、例えば、2、3、4、5、6、7、8、9、もしくは10またはその中の任意の一組である。ある特定の実施形態では、個々のY基は同一ではない。特定の例では、個々のY基は、独立して、NH基、SH基、OH基、SeH基、およびPH基から選択される求核試薬を含む。ある特定の実施形態では、硬化剤化合物(H)は、例えば、Rに対する対イオンとして作用するイオン性部分Aとの分子複合体として、無溶剤イオン性液体の一部であり、例えば、成分である。R-(Yの例は、表1および図4、5、6、7、8、10A~10Iおよび17A~17Dに示してある。イオン対イオンの例は、図4、5、6、7、8、9、10A~10I、13A~17Dに示してある。
【0063】
開示されるエポキシ系は、エポキシ化合物Eをさらに含む。実施形態では、エポキシ化合物は、以下に記載の分子構造を有する:
-R-Z
式中、Rはイオン性部分であり、Zはエポキシド基であるかまたはそれを含み、Zはエポキシド基であるかまたはそれを含む。ある特定の実施形態では、ZおよびZは同一である。ある特定の実施形態では、ZおよびZは同一ではない。ある特定の実施形態では、エポキシ化合物(E)は、例えば、Rに対する対イオンとして作用するイオン性部分Bとの分子複合体として、無溶剤イオン性液体の一部であり、例えば、成分である。Z-R-Zの例は、表1および図4、5、6、7、8、10A~10Iおよび17A~17Dに示してある。イオン対イオンの例は、図4、5、6、7、8、9、10A~10I、13A~17Dに示してある。
【0064】
実施形態では、エポキシ化合物は、以下の分子構造を有する:
-(Z
式中、Rはイオン性部分であり、Zはエポキシド基であるか、またはそれを含む。ある特定の実施形態では、個々のZ基は同一である。ある特定の実施形態では、個々のZ基は同一ではない。実施形態では、nは、2~10の整数、例えば、2、3、4、5、6、7、8、9、もしくは10またはその中の任意の一組である。ある特定の実施形態では、エポキシ化合物(E)は、例えば、Rに対する対イオンとして作用するイオン性部分Bとの分子複合体として、無溶剤イオン性液体の一部であり、例えば、成分である。R-(Zの例は、表1および図4、5、6、7、8、10A~10Iおよび17A~17Dに示してある。イオン対イオンの例は、図4、5、6、7、8、9、10A~10I、13A~17Dに示してある。
【0065】
ある特定の実施形態では、エポキシ系は、促進剤、架橋剤、可塑剤、または抑制剤のうちの1つ以上をさらに含む。促進剤、架橋剤、可塑剤、および/または抑制剤は、硬化剤化合物、エポキシ化合物、またはさらには系の別個の成分として含まれ得る。促進剤、架橋剤、可塑剤、および抑制剤のイオンの例は、図10A~10Iおよび16A~16Fに示してある。
【0066】
ある特定の実施形態では、エポキシ系は、イオン性疎水性および/または超疎水性化合物をさらに含む。実施形態では、イオン性疎水性および/または超疎水性化合物は、例えば、対イオンAとして、エポキシ化合物および硬化剤化合物のいずれかもしくは両方、例えば対イオンBとして、エポキシ化合物、または、例えば、対イオンAおよび対イオンBとしての両方を提供することができる。実施形態では、イオン性疎水性および/または超疎水性化合物は、硬化剤化合物Hとエポキシ化合物Eとの重合時にイオン性液体として放出されて、生成されたポリマーの特性を改変する。そのようなイオン性疎水性および/または超疎水性化合物は、当技術分野で知られており、代表的な例は、図5および6に見出すことができる。
【0067】
ある特定の実施形態では、エポキシ系は、イオン性親水性化合物をさらに含む。実施形態では、イオン性親水性化合物は、例えば、対イオンAとして、硬化剤化合物のいずれかもしくは両方、例えば対イオンBとして、エポキシ化合物、または、例えば、対イオンAおよび対イオンBとしての両方を提供することができる。実施形態では、イオン性親水性化合物は、硬化剤化合物Hとエポキシ化合物Eとの重合時にイオン性液体として放出されて、生成されたポリマーの特性を改変する。そのようなイオン性親水性化合物は当技術分野で知られている。
【0068】
ある特定の実施形態では、エポキシ系は、イオン性遷移的疎水性/親水性化合物をさらに含む。実施形態では、イオン性遷移的疎水性/親水性化合物は、例えば、対イオンAとして、硬化剤化合物のいずれかもしくは両方、例えば対イオンBとして、エポキシ化合物、または、例えば、対イオンAおよび対イオンBとしての両方を提供することができる。実施形態では、イオン性遷移的疎水性/親水性化合物は、硬化剤化合物Hとエポキシ化合物Eとの重合時にイオン性液体として放出されて、生成されたポリマーの特性を改変する。そのようなイオン性遷移的疎水性/親水性化合物は、当技術分野で知られており、代表的な例は、図7に見出すことができる。
【0069】
ある特定の実施形態では、エポキシ系は、生物活性(BAIL、生物活性イオン性液体)化合物をさらに含む。実施形態では、生物活性(BAIL、生物活性イオン性液体)化合物は、例えば、対イオンAとして、硬化剤化合物のいずれかもしくは両方、例えば対イオンBとして、エポキシ化合物、または、例えば、対イオンAおよび対イオンBとしての両方を提供することができる。実施形態では、生物活性(BAIL、生物活性イオン性液体)化合物は、硬化剤化合物Hとエポキシ化合物Eとの重合時にイオン液体として放出されて、生成されたポリマーの特性を改変する。そのような生物活性(BAIL、生物活性イオン性液体)化合物は、当技術分野で知られており、代表的な例は、図8、9A~9F、および15A~15Fにおいて見出すことができる。
【0070】
ある特定の実施形態では、エポキシ系は、可塑剤化合物をさらに含む。実施形態では、可塑剤化合物は、例えば、対イオンAとして、硬化剤化合物のいずれかもしくは両方、例えば対イオンBとして、エポキシ化合物、または、例えば、対イオンAおよび対イオンBとしての両方を提供することができる。実施形態では、可塑剤化合物は、硬化剤化合物Hとエポキシ化合物Eとの重合時にイオン性液体として放出されて、生成されたポリマーの特性を改変する。そのような可塑剤化合物は、当技術分野で知られており、代表的な例は、図16A~16Fに見出すことができる。ある特定の実施形態では、可塑剤化合物は、低い(蒸気圧が10-7バール未満)ゼロまでの揮発性を有する。
【0071】
スキーム1
スキーム1は、開示される実施形態に従って、それぞれのイオン性部分基および対応する対イオンを各々含む、第1の化合物と第2の化合物との重合反応の例を示している。
【化1】
スキーム1.エポキシド系に関する簡略化された重合反応
【0072】
より具体的には、スキーム1は、実施形態による、開示されるエポキシ系の例を図示している。示したように、エポキシ系は、硬化剤化合物Hおよびエポキシ化合物Eを含む。示したように、硬化剤化合物Hは、イオン性部分基Rと、Rに結合された、例えば、Rに化学的に結合されたYおよびY基とを含有するカチオン性分子構造(Y-R-Y)を含む。第1の反応に示したように、硬化剤化合物Hは、Rにおいて、カチオン性分子構造(Y-R-Y)と併せて、アニオン性部分A、例えば、対イオンをさらに含む。示したように、エポキシ化合物Eは、イオン性部分基Rと、Rに結合された2つのエポキシド基/求電子性(本明細書では「Z」で表される)基を含むアニオン性分子構造(Z-R-Z)を有する。さらに、エポキシ化合物Eは、例えば、Rにおいて、対イオンとして作用する、アニオン性分子構造(Z-R-Z)と併せて、カチオン性部分Bを含む。第2の反応に示したように、硬化剤化合物Hは、Rにおいて、アニオン性分子構造(Y-R-Y)と併せて、アニオン性部分A、例えば、対イオンをさらに含む。示したように、エポキシ化合物Eは、イオン性部分基Rと、Rに結合された2つのエポキシド基/求電子性(本明細書では「Z」で表される)基を含むカチオン性分子構造(Z-R-Z)を有する。さらに、エポキシ化合物Eは、例えば、Rにおいて、対イオンとして作用する、アニオン性分子構造(Z-R-Z)と併せて、アニオン性部分Bを含む。第3の反応に示したように、硬化剤化合物Hは、Rにおいて、カチオン性分子構造(Y-R-Y)と併せて、アニオン性部分A、例えば、対イオンをさらに含む。示したように、エポキシ化合物Eは、イオン性部分基Rと、Rに結合された2つのエポキシド基/求電子性(本明細書では「Z」で表される)基を含むカチオン性分子構造(Z-R-Z)を有する。さらに、エポキシ化合物Eは、例えば、Rにおいて、対イオンとして作用する、アニオン性分子構造(Z-R-Z)と併せて、アニオン性部分Bを含む。第4の反応に示したように、硬化剤化合物Hは、Rにおいて、カチオン性分子構造(Y-R-Y)と併せて、カチオン性部分A、例えば、対イオンをさらに含む。示したように、エポキシ化合物Eは、イオン性部分基Rと、Rに結合された2つのエポキシド基/求電子性(本明細書では「Z」で表される)基を含むカチオン性分子構造(Z-R-Z)を有する。さらに、エポキシ化合物Eは、例えば、Rにおいて、対イオンとして作用する、アニオン性分子構造(Z-R-Z)と併せて、カチオン性部分Bを含む。
【0073】
特に明記しない限り、「アニオン性分子構造」、「アニオン性部分(anionic portion)」、「アニオン性部分基(anionic moiety group)」などの特定の文脈で使用される「アニオン性」とは、対応する「カチオン性」構造/部分/基の正電荷との結合を容易にする負電荷を提供する、原子または分子構造(例えば、これらの分子または部分)の特性を指す。例えば、アニオン性部分Aは、例えば、イオン結合(例えば、Aが単一の原子である場合)または分子間結合によって、イオン性部分基Rに結合することができる。あるいは、またはさらに、カチオン性部分Bは、イオン結合(例えば、Bが単一の原子である場合)または分子間結合によって、イオン性部分基Rに結合することができる。いくつかの例では、カチオン性部分Aは、例えば、イオン結合(例えば、Aが単一の原子である場合)または分子間結合によって、イオン性部分基Rに結合することができる。あるいはまたはさらに、アニオン性部分Bは、イオン結合(例えば、Bが単一の原子である場合)または分子間結合によって、イオン性部分基Rに結合することができる。
【0074】
スキーム1に示した例示的な反応経路において、Yおよび/またはYは、求核性基であることができ、例えば、-NH、-SH、-OH、-SeH、-PH、または他の求核性置換基が挙げられるが、これらに限定されない。分子構造(Y-R-Y)では、少なくとも1つのそのようなY基は、分子構造(Z-R-Z)のエポキシド基と反応性であって、完全な重合反応において、安定な化学結合、例えば、二量体を形成することができる。
【0075】
表1には、それぞれのイオン性液体エポキシ系でさまざまに利用することができる分子構造の例が示してある。上付きの数字(例えば、R、R、R、Rなど)は、例えば、下付きの数字(例えば、R、R)を使用して代わりに識別される部分基に関する成分構造を示すために本明細書で使用されることに留意されたい。
【表1-1】
【表1-2】
【表1-3】
【0076】
、R、R、R、R、およびRは、任意の好適な鎖であることができ、Yおよび/またはYは、求核基であることができ、例えば、-NH、-SH、-OH、-SeH、-PHが挙げられるが、これらに限定されない。Yおよび/またはYおよびエポキシ部分(エポキシ基は、Yおよび/またはYと反応して永久化学結合を形成するのに好適な任意の求電子基であり得るZ基の例である)は、RとRとの間で交換することができる。アニオン性部分は、任意の好適なアニオン性置換基であることができる。
【0077】
スキーム1に示した実施形態によって図示されるように、イオン性部分基Rに結合されたYおよび/またはY基は、アミン基であることができる(例えば、Yおよび/またはYは一級アミン基である)。硬化剤化合物Hは、エポキシ化合物Eと反応する硬化剤として機能することができる。化合物H、Eの反応は、エポキシド基のうちの1つにおいて、Yおよび/またはY基のうちの1つと鎖を形成することをもたらすことができ、例えば、その場合、別個の副産物分子が、アニオン性部分Aおよびカチオン性部分Bによって形成される。ある特定の実施形態は、所望の材料特性を達成すると同時に、VOC副産物の有意な削減を提供するために、選択されるR、R、Zおよび/またはZ、Yおよび/またはY、A、A、およびB、およびBの多種多様な組み合わせをさまざまに容易にする。
【0078】
スキーム1に示した例示的な実施形態では、第1の化合物は、イオン性部分基Rおよび対応する対イオンAを含み、第2の化合物は、イオン性部分基Rおよび対応する対イオンBを含む。スキーム1に示した例示的な反応経路は、重合反応からの二量体形成の例を表している。
【0079】
イオン性部分RおよびR基のさまざまな組み合わせが可能であり、対応する対イオン(AおよびB)を注意深く選択すると、2つの化合物は、二次イオン性液体(A)を形成することができ、イオン性液体エポキシ系からのVOC放出の可能性を制限または回避することができる。また、スキーム1における最後の2つの例に示されているように、二次イオン性液体は生成されないが、対応する対イオンを補償するために永久電荷がポリマー鎖中に残留する場合、同じ電荷のイオン性液体樹脂およびイオン性液体硬化剤を使用することも考えられる。表1に示した最後の4つの例では、Bは、RおよびR基が本質的にイオン性であることを示すためである。
【0080】
本開示の態様はまた、本明細書に開示されるエポキシド系の重合によって生成されるポリマーにも関する。実施形態では、硬化剤化合物Hとエポキシ化合物Eとの重合時に生成されたポリマーは、静電引力により修復プロセスを駆動するポリマー鎖に沿った安定な電荷の存在に起因して、自己修復特性を含む。実施形態では、硬化剤化合物Hとエポキシ化合物Eとの重合時に生成されたポリマーは、高度に規則的な多孔質系を形成し、それは、濾過膜、二次イオン性液体を交換した後の固体電解質、交換膜などとして使用することができるが、これらに限定されない。特定の実施形態では、ポリマーは、固体電解質を含む。ポリマーを含む電子部品が本明細書で開示される。実施形態では、電子部品は、バッテリー、キャパシタ、圧電材料および/または電気アクチュエータの部品である。
【0081】
合成方法
スキーム2
スキーム2は、本明細書で開示される実施形態によるエポキシ系の硬化剤化合物を合成するための例示的な反応を示している。そのような反応は、例えば、スキーム1に示したように、硬化剤化合物Hのいくつかまたはすべての製造に寄与することができる。
【0082】
スキーム2に示したように、ジアミンイミダゾリウムイオン性液体のクラスは、エポキシポリマー系における硬化剤として、例えば、本明細書で開示される硬化剤として使用することができるアミン化学作用を提供する。例えば、スキーム2の例示的な反応は、1,3-ジ(2’-アミノエチレン)-2-メチルイミダゾリウムブロミドの合成を提供する。
【0083】
合成の第1の工程は、塩化トリチル(2)を使用してブロモエチルアミン(1)のアミノ基を保護し、得られた化合物(3)で、(ジメチルホルムアミド(DMF)中で12時間還流しながら)塩基性条件下で2-メチルイミダゾール(4)を置換して、二置換中間体(5)を得る工程である。アミン基の脱保護は、ジオキサン中の酸性媒体中で行って、塩酸塩誘導体(6)を得て、注意深い中和をNaOHを使用することによって達成して、標的化合物(7)を得る。
【化2】
スキーム2.1,3-ジ(2’-アミノエチレン)-2-メチルイミダゾリウムブロミドの合成
【0084】
標的化合物(7)に関して全プロトンNMR分光分析を行うと、期待される特性と相関する適切なピークを示した。得られた材料は、高粘度の褐色の液体である。追加の研究では、分解の兆候もなく、少なくとも6か月の時間枠(実験室の棚で不活性雰囲気なしで保管、密閉容器)において、この硬化剤の安定性が示されている。化合物(7)を含むイオン性液体硬化剤を、重合反応の促進剤または改質剤なしで、市販の樹脂(1:1の質量比)に対して試験した。試験により、硬化剤は、120℃の硬化温度で2時間有効であり、褐色の固体材料を生成することが明らかになった。
【0085】
スキーム3
スキーム3は、本明細書で開示される実施形態によるスキーム1に示したように、アニオン性分子構造(Z-R-Z)を含むエポキシ化合物を合成するプロセスにおける反応の例を示している。示したように、ホスフィネートジエポキシ酸の合成は、改良されたアルブゾフ反応を使用して起こすことができる。スキーム3に示した反応例では、酸性化合物(9)をテトラアキルホスホニウムヒドロキシドで中和して、対応するホスホニウムイオン性液体を得る。式中、Rは、アルキルであることができ、例えば、1~16個の炭素原子、例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、または16の炭素原子を有するアルキルであることができる。
【化3】
スキーム3.Rがアルキルであるホスフィネートジエポキシ酸の合成
【0086】
スキーム4
スキーム4は、本明細書で開示される実施形態によるスキーム1に示したようなアニオン性分子構造(Z-R-Z)を含むエポキシ化合物を合成するプロセスにおける反応の別の例を示している。より具体的には、スキーム4は、モノマー構造へのイオン性部分の付加によるビスフェノールAジグリシジルエーテル(2,2-ビス[4-(グリシジルオキシ)フェニル]プロパン)類似体の合成を示している(スキーム4)。
【化4】
スキーム4.一般的なビスフェノールAジグリシジルエーテルイオン性液体構造
【0087】
スキーム5
スキーム5は、本明細書で開示される実施形態によるスキーム1に示したようなアニオン性分子構造(Z-R-Z)を含むエポキシ化合物を合成するプロセスにおける反応の別の例を示している。スキーム5の例示的なジグリシジル化反応において、4-ヒドロキシ-γ-(4-ヒドロキシフェニル)-γ-メチル-メチルエステルベンゼンブタン酸(10)は、100℃で15分間、塩基性条件で、エピクロロヒドリン(11)と反応する。そのような反応は、γ-メチル-4-(2-オキシラニルメトキシ)-γ-[4-(2-オキシラニルメトキシ)フェニル]-、メチルエステルベンゼンブタン酸(12)の90%を超える収率をもたらすことができる。そのような反応の1つから生じる材料のプロトンNMR分析を図2に示す。図2は、化合物(12)が主成分であることを示唆している特徴的なピークを示している。
【化5】
スキーム5.4-ヒドロキシ-γ-(4-ヒドロキシフェニル)-γ-メチル-メチルエステルベンゼンブタン酸のジグリシジル化の一般的な手順
【0088】
スキーム6
スキーム6は、本明細書で開示される実施形態によるスキーム1に示したようなアニオン性分子構造(Z-R-Z)を含むエポキシ化合物を合成するプロセスにおける反応の別の例を示している。スキーム6に示した反応は、例えば、スキーム5に示した反応から継続することができる。
【0089】
スキーム6に示したように、-OMe(酸素/メチル基)部分は、0℃で混合されたNaOH(3当量)/アセトン/水を使用して、例えば、さらなる精製を必要とせずに、加水分解することができ、そして室温まで1.5時間温めることができる(スキーム6)。反応時間を延長しても、TLCによって反応を追跡した際に、所望の生成物からの逸脱は認められない。遊離酸誘導体(13)であるγ-メチル-4-(2-オキシラニルメトキシ)-γ-[4-(2-オキシラニルメトキシ)フェニル]-ベンゼンブタン酸は、定量的収率で得られ、CDCl中でのプロトンNMRによって完全に特徴付けられた。
【化6】
スキーム6.γ-メチル-4-(2-オキシラニルメトキシ)-γ-[4-(2-オキシラニルメトキシ)フェニル]-、メチルエステルベンゼンブタン酸の-OMe基の加水分解のための一般的な手順
【0090】
化合物(13)について得られた典型的なスペクトルの例を図3に示す。図3は、化合物(13)のすべての特徴を示している。反応生成物のNMRはまた、精製プロセス中に使用された溶剤(酢酸エチル)の存在も示している。
【0091】
スキーム7
スキーム7は、本明細書で開示される実施形態によるスキーム1に示したようなアニオン性分子構造(Z-R-Z)を含むエポキシ化合物を合成するプロセスにおける反応の別の例を示している。スキーム7に示した反応は、例えば、スキーム6に示した反応から継続することができる。化合物(13)のエポキシ基を損傷する可能性を軽減するために、等モル量のテトラブチルホスホニウムヒドロキシド(14)を使用して、メタノール中で、イオン性液体の形成を行って、ベンゼンブタン酸プロトンを中和し(スキーム7)、次いで、迅速に、MeOH(混合時間15分)および真空(30mmHg)下、45℃で4時間、生成水を除去し、室温および全真空で24時間乾燥させた。そのようなプロセスの試験運転では、暗い黄色の粘性液体が得られた。
【化7】
スキーム7.テトラブチルホスホニウムγ-メチル-4-(2-オキシラニルメトキシ)-γ-[4-(2-オキシラニルメトキシ)フェニル]-ベンゼンブタノエートの合成に関する一般的な手順
【0092】
実施形態では、等モル量の化合物(15)イオン液体樹脂および化合物(7)イオン性液体硬化剤は、組み合わせることができ、例えば、室温で手動で混合することができ、そして1.5mlのケイ素金型に注ぎ、120℃の真空オーブンに12時間一晩置いた。組み合わされた化合物(7)および(15)の反応は、脂肪性の特徴およびゴムのような靭性を有する固体材料をもたらす。そのような特性は、エポキシ系中の比較的少量の架橋剤と関連があり得ると理論付けた。この仮説を精査するために、新しいイオン性液体硬化剤を調製した。重合プロセス中に生成される二次イオン性液体は、テトラブチルホスホニウムブロミドである。
【0093】
スキーム8
スキーム8は、脂肪族性のエポキシ化合物である、2,2-ビス(グリシジルオキシメチル)プロピオン酸のテトラブチルホスホニウム塩(21)を合成するプロセスにおける反応の例を示している。合成経路には3つの工程が含まれる:すなわち、NaOHを含むトルエン中において、臭化アリル(17)による市販の2,2-ビス(ヒドロキシメチル)プロピオン酸(16)のアルキル化。この反応は、完了するために一晩の還流を必要とし、90%の収率でジアリル中間体(18)を生成する。生成物は、極めて純粋であり、次の工程のためにさらに精製する必要はない。オレフィン中間体(18)のエポキシド(20)への酸化は、m-クロロ過安息香酸(19)を用いて、室温で一晩、標準的な方法によって行った。この方法では、面倒なカラム精製が必要であるが、90%の収率でエポキシ化生成物(20)が得られる。標的イオン性液体エポキシ樹脂(21)の形成は、スキーム7の化合物(15)について記載したのと同様の方法によって、等モル量のテトラブチルホスホニウムヒドロキシド(14)を含むメタノール中で行った。
【化8】
スキーム8.テトラブチルホスホニウム2,2-ビス(グリシジルオキシメチル)プロピオネートの合成
【0094】
スキーム9
スキーム9は、正に帯電した複素環式コアを有するエポキシ化合物を合成するプロセスにおける反応の例を示している。そのようなエポキシイオン性樹脂は、負に帯電した硬化剤(スキーム1の2行目)または同様に正の硬化剤(スキーム1の3行目)のいずれかと反応することができる。両方の正に帯電した成分の場合(3行目)、ABタイプの追加のイオン性液体は形成されず、それは、ある特定の特性にとって役立つ可能性がある。
【化9】
スキーム9.例:1,3-ビス(2-オキシラニルエチル)イミダゾリウムビス(トリフルオロメタン)スルホンイミドの合成
【0095】
合成経路には、2つの工程が含まれる:すなわち、通常のアルキル化条件(NaHCO3-アセトニトリル、一晩還流)における4-ブロモ-1-ブテン(23)による市販のイミダゾール(22)のアルキル化および四級化である。四級化中間体(24)は99%で得られた。粗生成物は、十分に純粋であり、追加の精製なしに次の工程に使用された。オレフィン四級化中間体(24)のエポキシ化は、標準的な方法で、m-クロロ過安息香酸(19)を用いて室温で一晩行った。脂肪族エポキシイオン性樹脂に関する類似の場合(スキーム8、化合物20)と同様に、生成物は面倒なカラム精製を必要とした。最終的な収率は約50%であった。
【0096】
スキーム10
スキーム10は、実施形態によるエポキシ系の硬化剤化合物を合成するプロセスにおける反応の例を示している。この例示的な実施形態では、新規の硬化剤は、ポリマー鎖間の架橋を促進するために、多分岐構造を有することを意図している。N1,N1-ビス(2-アミノエチル)-1,2-エタンジアミン(化合物26、スキーム10)を、室温条件下で一晩撹拌しながら、BOC(例えば、tert-ブチルオキシカルボニル)保護基を使用して保護した。次いで、保護された化合物(28)を、一晩撹拌しながら、アセトニトリル還流において、120℃でヨウ化メチルを使用してアルキル化し、そのアルキル化反応を、(28)が完全に消費されるまでTLCによって追跡し、溶剤および過剰のMeI(ヨウ化メチル)を、45°~50℃および30mmHgで4時間、回転蒸発によって除去し、続いて室温および全真空で乾燥させた。MeIアルキル化剤を選択したのは、試薬が入手し易いためであるが、選択されるオプションはいくつかあり、最終的な選択は、エポキシ樹脂系全体の特性を改変するために使用され得る、ことに言及するのは重要である。HCl-ジオキサン溶液を使用してBOC保護を除去し、NaOHを使用して残りの酸を中和した。この工程の後、LiTFSIの水溶液中でのイオン性液体の複分解によって最終イオン性液体が得られ、無機塩は、ナノ純水による数回洗浄ならびに50℃および15mmHgでの4時間の回転蒸発によって除去した。化合物(30)2-アミノ-N,N-ビス(2-アミノエチル)-N-メチル-エタンアミニウムビス(トリフルオロメタン)スルホンアミドが、粘稠な白色液体として得られ、それを室温および完全真空下にて24時間乾燥させた。
【化10】
スキーム10.例:2-アミノ-N,N-ビス(2-アミノエチル)-N-メチル-エタナミニウムビス(トリフルオロメタン)スルホンイミドの合成
【0097】
化合物(15)および(30)との試験反応の例示的な結果を本明細書に記載する。より具体的には、1グラムの2-アミノ-N,N-ビス(2-アミノエチル)-N-メチル-エタンアミニウムビス(トリフルオロメタン)スルホンアミド(30)を、1グラムのテトラブチルホスホニウムγ-メチル-4-(2-オキシラニルメトキシ)-γ-[4-(2-オキシラニルメトキシ)フェニル]-ベンゼンブタノエート(15)と手動で混合し(モル比1.5:1)、シリコーン金型中で120℃にて12時間硬化させて、薄黄色の硬質固体材料を得た。その生成された二次イオン性液体は、テトラブチルホスホニウムビス(トリフルオロメタン)スルホンアミドである。
【0098】
スキーム11および12
以下、スキーム11および12は、ポリマー鎖間の架橋を促進するように意図された多分岐硬化剤化合物の2つの追加の特定の例を示している。
【0099】
スキーム11は、テトラキス[1-(2’-アミノエチル)-2-メチル-1H-イミダゾール-3-イウムメチル]メタンテトラブロミド(34)の合成の例を示している。合成経路は、DMF中で一晩加熱することによって、先に得られたトリチル保護ブロモエチルアミン(3)でテトラキス(2-メチルイミダゾール-1-イルメチル)メタン(別名ペンタエリスリチルテトライミダゾール)(31)を四級化することから始まる。四級化テトラブロミド中間体(32)は、MeOH-ジクロロメタン系(5%~20%のMeOH)での勾配カラム精製によって、副生成物の混合物から62%の収率で単離された。
【0100】
トリチル保護の除去は、メタノール水溶液中の強酸性媒体中で標準的な手順に従って行った。周囲温度で16時間後、脱保護が完了し、トリフェニルメタン副生成物がエーテル抽出によって除去された。水相から、蒸発および真空乾燥後、吸湿性の高いテトラヒドロクロリドテトラブロミド(33)が得られた。このテトラヒドロクロリド(33)を水性媒体中のNaOHで注意深く塩基性化し、続いて溶剤を蒸発させ、NaClからエタノール抽出すると、標的の遊離テトラアミノ架橋剤(34)が定量的収率で得られた。
【化11】
スキーム11.テトラキス[1-(2’-アミノエチル)-2-メチル-1H-イミダゾール-3-イウムメチル]メタンテトラブロミドの合成
【0101】
スキーム12は、1,3,5-トリス[1-(2’-アミノエチル)-2-メチル-1H-イミダゾール-3-イウムメチレン]ベンゼントリブロミド(39)の合成例を示しており、エポキシ系の新規な硬化剤としても使用される。この例では、新規の硬化剤は、四級化イミダゾリウム部分と芳香族ベンゼンコアとを備える三分岐構造を有する。
【0102】
この硬化剤への最初の工程は、モノアルキル化2-メチルイミダゾール(35)の合成であり、それは、このクラスの分子を合成するための新規のビルディングブロックと考えられる。実際に、この合成は、前述の四級化トリチル保護ジアミノ中間体(5)の調製の第1の工程である。モノアルキル化中間体を達成するために、反応物(3)と(4)の間の反応を室温で等モル比で行った。無機副生成物NaBrは、水-ジクロロメタン後処理によって容易に除去され、その後、標的化合物(35)はジクロロメタン相から結晶性生成物として収率78%で単離された。この方法で得られた生成物(35)は、さらなる変換のために十分に純粋であったが、分析目的のためにヘキサンから再結晶化させることができた。
【0103】
この調製経路の次の工程は、80℃のDMF中で19時間加熱しながら、先に合成した1,2,3-トリス(ブロモメチル)ベンゼン(36)で中間体(35)を四級化することである。DMFを除去した後、四級化トリブロミド中間体(37)を、エーテルおよびアセトンによる次なる処理によって、難溶性沈殿物として不純物から分離した。98%の収率で得られた生成物(37)は、非常に純粋(例えば、90%超の純度)であり、追加の精製なしでさらに使用することができた。分析の目的で、生成物の試料を水から再結晶させることができた。
【0104】
トリチル保護の除去は、メタノール水溶液中の強酸性媒体中で標準的な手順に従って行った。周囲温度で18時間後、脱保護が完了し、トリフェニルメタン副生成物がエーテル抽出によって除去された。水相から、蒸発および真空乾燥後、吸湿性の高いトリヒドロクロリドトリブロミド(38)が得られた。このトリヒドロクロリド(38)を水性媒体中のNaOHで注意深く塩基性化し、続いて溶剤を蒸発させ、NaClからエタノール抽出すると、標的の遊離トリアミン架橋剤(39)が94%の収率で得られた。イミダゾリウム系多分岐架橋剤イオン性液体添加剤の利点の1つは、イミダゾリウム系樹脂および硬化剤との改善された混和性である。
【化12】
スキーム12.1,3,5-トリス[1-(2’-アミノエチル)-2-メチル-1H-イミダゾール-3-イウムメチレン]ベンゼントリブロミドの合成
【0105】
スキーム13
スキーム13は、実施形態によるエポキシ系のための改質剤(例えば、促進剤または触媒)の合成を容易にする反応の例を示している。そのような促進剤/触媒は、スキーム1に示した反応を促進することができる。
【0106】
VOC放出の可能性を軽減または無効にするイオン性液体またはイオン性化合物として重合反応の改質剤を合成することが可能である。最も一般的に使用される反応改質剤の1つはDABCOであり、重合反応におけるその触媒効果は硬化のプロセスの加速に役立つ。イオン性DABCO化合物の合成は知られているが、そのイオン性形態は抗菌剤として試験されてきたが、重合改質剤としては試験されてこなかった。1つの例示的な実施形態では、ダボコニウム化合物は、例えば、還流条件下で一晩撹拌しながら、ジクロロメタン中の1-ブロモオクタンによる1,4-ジアザビシクロ[2.2.2]オクタンの直接アルキル化によって、合成することができる。オクチルダブコニウムブロミドは、定量的収率で得ることがでる。
【化13】
スキーム13.N-オクチルダブコニウムブロミドの合成のための一般的な手順
【0107】
エポキシ技術に対するこのアプローチの1つの利点は、各材料の特定の使用に応じて異なる特性を最終生成物に付与するために、重合反応中に生成されたイオン性液体の特性を調整することができる点である。このその場改質剤は、疎水性または親水性であるように、ポリマーネットワークの可塑剤として作用するように、および/または充填剤として作用するように凝固するように設計することができる。あるいは、またはさらに、そのようなその場改質剤は、医療で使用するための抗菌性イオン性液体を提供する際に使用するために適合させることができる。
【0108】
化合物およびエポキシ系の例
図4は、実施形態による、エポキシ系の例を示しており、スキーム1に示した特徴のうちのいくつかまたは全部を含む。より具体的には、図4は、無溶剤エポキシ樹脂(ジエポキシホスフィネートテトラブチルホスホニウム)および硬化剤(ジメチルアミンイミダゾリウムブロミド)を含む系の一例を示している。そのような系の重合反応が完了すると、副生成物として得られるイオン性液体は、テトラブチルホスホニウムブロミドを含むことができ、それは次に、例えば、重合したホスフィネート/ジメチルアミンイミダゾリウムネットワークの可塑剤として使用することができる。
【0109】
図5は、実施形態による、エポキシ系の例を示しており、スキーム1に示した特徴のうちのいくつかまたは全部を含む。より具体的には、図5は、可能な無溶剤イオン性液体エポキシ系の一例を示している。例えば、ユーザーが、超疎水性表面を有するポリマーを必要とする場合、イミダゾリウムビス[ビス(ペンタフルオロエチル)ホスフィニル]イミドイオン液体の場合のように、重合反応後に超疎水性イオン液体を生成するように硬化剤および樹脂を設計することが可能であり、アニオン性部分はイオン性液体の疎水性部分である。1つのそのようなイオン性液体エポキシ系は図5に示してある。
【0110】
図6は、実施形態による、エポキシ系の例を示しており、スキーム1に示した特徴のうちのいくつかまたは全部を含む。より具体的には、図6は、トリ(n-ヘキシル)[2-エトキシ-2-オキソエチル]アンモニウムなどの超疎水性カチオンの代替使用を図示している。
【0111】
図7は、実施形態による、エポキシ系の例を示しており、スキーム1に示した特徴のうちのいくつかまたは全部を含む。図7に示した例示的な実施形態の場合、最終生成物の疎水性親水性特性は、遷移的疎水性を有するイオン性液体を使用して、重合プロセス後に調整し改変することができる。この場合、疎水性は二酸化炭素の存在によって改変される。COのない環境では、この種のイオン性液体は疎水性挙動を有する。材料は、COにさらされると、イオン性液体は、親水性状態へ遷移する。この現象は可逆的であり、エポキシ樹脂の硬化後でも調整可能な材料を提供することができよう。同じ挙動は、ピラゾール、イミダゾール、およびトリアゾールに由来するアニオン性部分でも観察されている。
【0112】
図8は、実施形態による、エポキシ系の例を示しており、スキーム1に示した特徴のうちのいくつかまたはすべてを含む。硬化プロセス後の二次イオン性液体の生成は、イオン性液体エポキシ樹脂の用途のさまざまな医療、製薬、および/または他の重要な分野において有用であり得る。いくつかの実施形態は、例えば、薬理学的に活性なイオン性液体、例えば、イブプロフェネートおよびリドカイニウムに由来する薬理学的に活性なイオン性液体を使用して、薬物療法のための長期放出系をさまざまに提供する。さまざまな実施形態によれば、これらのイオン性液体からいくつかの組み合わせを得ることができ、例えば、鎮痛剤を放出するフェルール(ferule)の可能性を開くことができる(図8)。このようにして生成された二次イオン性液体は、リドカイニウムイブプロフェネートであろう。
【0113】
図9A~9Fは、アニオン性部分およびカチオン性部分のさまざまな例を示しており、例えば、それぞれに、実施形態によるエポキシ系の各々、スキーム1のアニオン性部分Aまたはカチオン性部分Bのそれぞれの1つとしてさまざまに機能する。いくつかの実施形態では、エポキシポリマー技術は、医薬品活性イオン性液体の新たな分野とさまざまにブレンドされている。図9A~9Fは、さまざまな実施形態による使用に適合させることができる有用な治療材料のいくつかの例を示している。
【0114】
図10A~10Iは、それぞれの実施形態によるエポキシ系の硬化剤化合物、エポキシ化合物および改質剤の各々のさまざまな例を示している。図10A~10Iに示した化合物のいくつかまたはすべては、各々、例えば、スキーム1に示した系の特徴のすべてのうちのいくつかを有するそれぞれの系の成分であることができる。
【0115】
多数の可能な対イオンの存在により、無溶剤イオン性液体エポキシ系のエンドユーザーが必要とする多種多様な仕様のいずれかを満たす最終ポリマーの設計が可能になることを認めることは重要である。好適なイオンの組み合わせにより、柔軟性、硬度、疎水性、硬化時間、硬化温度、二次反応の設定、イオン伝導性などのポリマー特性を調整することができよう。また、イオン性液体架橋剤、促進剤、触媒の設計(図10A~10Iに示した例)により、エポキシ系全体がゼロ蒸気圧成分で構成されることが保証される。
【0116】
少なくとも部分的にそのような特性のいくつかまたはすべてに起因して、例として、電気エネルギーを貯蔵するためのバッテリーの開発において重要な熱硬化性固体電解質を生成することが可能であり得る。いくつかの実施形態による無溶剤イオン性液体エポキシ系は、電解質をバッテリー構造に注入することを可能にし、重合反応を起こし、完全に重合されたイオン性液体で満たされた固体電解質を提供する。
【0117】
図11は、アニオン性部分のさまざまな例、例えば、スキーム1に示したアニオン性部分Aを示しており、それぞれのエポキシ系の各は実施形態による。図12は、カチオン性部分、例えば、スキーム1に示したカチオン性部分Bのさまざまな例を示しており、それぞれのエポキシ系の各は実施形態による。
【0118】
上記のように、疎水性材料は、硬化剤およびエポキシイオン性液体に対応する対イオンを選択することにより、イオン性液体エポキシから生成することができた。多種多様な疎水性アニオン(図11)および疎水性カチオン(図12)が利用可能であり、異なる実施形態に従って、最終材料の特定の所望のレベルの疎水性に正確に適合する組み合わせの選択が容易である。
【0119】
図13は、アニオン性部分のさまざまな例、例えば、スキーム1に示したアニオン性部分Aを示しており、それぞれのエポキシ系の各は実施形態による。図11に示した例によって図示されるように、二次イオン性液体が顕著な親水性を有するエポキシドイオン性液体を合成することが可能であり得る。多くの無機アニオンは、親水性が高く(図13)、イオン性液体を生成するために嵩高いアニオンが必要とされる。
【0120】
図14は、カチオン性部分、例えば、スキーム1に示したカチオン性部分Bのさまざまな例を示しており、それぞれのエポキシ系の各は実施形態による。図14は、無機カチオンと、高度に親水性の水素結合ドナー部分を有する有機カチオンとを図示している。
【0121】
図15A~15Fは、イオン性液体エポキシ化合物のさまざまな例、例えば、スキーム1に示したものなどを示しており、実施形態によるそれぞれのエポキシ系の各々を示している。除草特性を有するイオン性液体から抗腫瘍活性を有するイオン性液体まで、幅広い生物活性なイオン性液体(BAIL)が存在する。いくつかの例を図15A~15Fに示す。新規なBAILは定期的に導入されており、これらのBAILの多くは、好適な硬化プロセス後に薬物溶出材料を提供するイオン性液体エポキシ系における二次イオン性液体として使用することができる。他の例は、フルフェナム酸(非ステロイド系抗炎症薬)およびアンピシリン(抗腫瘍活性)から誘導されるイオン性液体である。
【0122】
図16A図16Fは、実施形態によるそれぞれのエポキシ系の反応によって各々形成される副生成物化合物のさまざまな例を示している。図16A~16Fに示した化合物は、各々、例えばスキーム1に示したアニオンAとカチオンBとの反応によって形成され得る。
【0123】
可塑剤は、さまざまなポリマーの機械的特性、例えば、剛性、変形性、伸び、靭性、プロセス粘度、使用温度などを改変するために使用される。従来、可塑剤には、内部可塑剤および外部可塑剤の2種類が存在する。内部可塑剤は、ポリマーの機械的性質、すなわち、共重合部分、置換基の付加などに影響を及ぼす、ポリマーに対する構造的改変である。外部可塑剤は、ポリマーの結晶化度に影響を及ぼす、ポリマー加工中に組み込まれる添加剤である。有機溶剤は、通常は、可塑剤として利用されるが、それらの効率は、典型的には、ポリマー構造中の溶剤の耐久性と関連がある。多くの一般的な可塑剤は、例えば、揮発性、沸点、浸透圧、および溶剤力などのパラメータに応じた速度で、時間の経過とともに消散する。そのような問題のために、いくつかの実施形態では、比較的に極めて低い蒸気圧を有するイオン性液体を、新規なクラスの可塑剤として使用することができる。そのような使用は、より優れた溶剤力、浸透圧、および低揮発性を利用することができる。可塑剤として使用されるイオン性液体のいくつかは、図16A~16Fに示してあり、これらはすべて、イオン性液体エポキシド系における二次イオン性液体として使用することができる。
【0124】
図17A~17Dは、エポキシ化合物のさまざまな例、例えば、スキーム1に示したものなどを示しており、実施形態によるそれぞれのエポキシ系の各々を示している。近年、さまざまなポリマー配合物中にビスフェノールA(BPA)が存在すると、健康が害される懸念があることが発見されてきている。BPAは、女性および男性の生殖系における問題、子供の先天性欠損症、代謝性疾患、および免疫系障害(immune system affectation)に関連/相関している。これらおよび/または他の理由のために、ポリマー製造においてBPA不含有の選択肢を有することは、製造業者にとって重要である。さまざまな実施形態による無溶剤イオン性液体エポキシド系は、低い固有蒸気圧を有し、揮発性BPAのリスクが比較的低いため、それらはヒトへの使用を目的とするポリマー系生成物におけるBPA汚染の可能性を軽減するのに重要であり得る。脂肪族系は、BPAの問題を軽減することができる実装の一例である。BPA副生成物の可能性を軽減するために提案されたいくつかの構造を、図17A図17Dに示す。
【0125】
図18A図18Bは、実施形態による各エポキシ材料をそれぞれ含むデバイスの一例を示している。例えば、図18Aおよび図18Bの装置は各々、スキーム1に示したような反応によって形成されたものなどの、それぞれのエポキシ材料を含むことができる。
【0126】
固体電解質および電気化学アクチュエータは密接に関連していて、例えば、両方の系は、一般に、2つの電子伝導体(電極)間に電解質(有機または無機塩)を含有するポリマーマトリックスからなる。主な違いは、固体電解質において、対応する化学作用は、典型的には、印加電位によるイオン移動によって引き起こされる体積変化(図18A)である電極内の体積変化を最小化するように設計されており、その場合、充放電サイクル中に電解質濃度が一定となる。一方、電気化学アクチュエータにおいては、異なる効果が望まれ、例えば、電極の体積および電解質の濃度は変化する必要がある。したがって、電極内で異なる体積変化を引き起こすために異なる化学作用が必要とされる場合があり(図18B)、その結果として、セルの片側で圧縮が生じ、反対側で膨張が生じ、この現象を利用して、セルに印加される電位差に比例する移動が生じる。
【0127】
異なる実施形態によるイオン性液体エポキシド系は、固体電解質および電気化学アクチュエータのそれぞれ1つの生成にさまざまに適合させることができる。そのようなエポキシド系は、重合反応の副生成物としての二次イオン性液体の生成を伴うポリマーマトリックス(エポキシドポリマー)の合成を容易にすることができる。固体電解質を有する電気化学セルと電気化学アクチュエータとの間の遷移は、二次イオン性液体イオンの設計時選択および電極の組成に基づくことができる。また、これらの電気機械特性の存在によって、例えば、ポリマー中の機械的応力と、印加された電気化学的電位との間の強い対応により、イオン性液体エポキシド系は、圧電材料の設計および開発を改善することができる。この技術に関して1つの可能な用途は、多種多様なセンサーの構築である。
【0128】
自己修復ポリマー
図19は、開示される実施形態によるエポキシ材料、例えばスキーム1に示したような反応によって形成されたエポキシ材料を含む、自己修復ポリマーの例を示している。自己修復ポリマーは、引っかき傷、刺し傷、または亀裂などの機械的損傷からそれ自体を修復することができる材料である。機械的損傷の形成後に反応するモノマー材料と触媒とで満たされたマイクロカプセルの形成で最も使用される自己修復特性をポリマーに付与するいくつかのメカニズムが存在する。しかしながら、イオノマー鎖からなるポリマー材料も存在し、修復プロセスは、ポリマー構造中に存在する電荷の静電引力を促進する。図19は、この種の系のための修復プロセスの断面図を示している。
【0129】
いくつかの実施形態によるイオン性液体エポキシド系の性質は、例えば、材料の自己修復特性を促進するのに好適である固定電荷を有するポリマー鎖をさまざまに可能にすることができ、重合反応中に生成される二次イオン性液体は、最終生成物の機械的挙動を改善する可塑剤として作用することができる。
【0130】
ポリマーフィルム
図20は、開示される実施形態によるエポキシ材料、例えば、スキーム1に示したような反応によって形成されたエポキシ材料を含む、フィルムの例を示している。
【0131】
イオン性液体を使用するエポキシドポリマーの改変は、温度、時間、硬化剤/樹脂比などの硬化反応条件を変更するために実施することができる。例えば、エポキシ系におけるイオン性液体含有量は、改質剤として利用するとき、2~5部/100ゴム(phr)の範囲であることができる。イオン性液体は、硬化プロセス中にいくつかのエポキシド成分の粘度を改変するために5~10phrの範囲で使用することができる。しかしながら、より高いイオン性液体含有量(全質量の約30~70%w/w)では、イオン性液体は、最終材料中に空隙空間を生じさせる傾向がある。このイオン性液体を洗い流した後、得られた材料は10~20μm程度の孔径を有する高多孔質固体である(50%テトラブチルホスホニウムTFSIイオン性液体を有するJeffamine-BPA系に関する図20のSEM画像を参照されたい)。
【0132】
いくつかの実施形態によるイオン性液体エポキシド系は、同様の結果を生み出すことができ、最終生成物は、高度に規則的な孔径を有するフィルター構造として使用することができよう。イオン性液体の含有量を改変することによって、フィルター系の得られる孔径および選択性を選択的に設計(「調整」)することが可能であり得る。
【0133】
無溶剤イオン性液体エポキシ樹脂(SILER)を用いたバッテリーセパレータ
実施形態において、開示されるイオン性液体は、イオン性熱硬化性架橋剤として使用される。例えば、いくつかの実施形態では、表1に提供した構造を有する分子は、IT架橋剤として使用される。開示されるイオン性液体は、さまざまな工業的用途のためのイオン性熱硬化性架橋剤として使用され得ると考えられる。いくつかの特定の実施形態では、IT架橋剤は、無溶剤イオン性液体エポキシ樹脂(SILER)とともにバッテリーセパレータの構築に使用される。イオン伝導性は、これらの材料にとって必須の特性である。図21A~23は、IT架橋剤として使用される開示の組成物の能力を実証する研究を示している。最初に、IT架橋剤で改変され、追加のイオン性液体を含有するSILERポリマーのいくつかの試料を、電気化学的インピーダンス分光法によって試験した。完全なポリマー試料を、2つのZnプレートの間に配置し、カスタマイズされたハンドプレスを使用して厚さを調整し、GAMRYポテンシオスタットに接続した。ポリマー試料は、同じ基本配合(それぞれ10:9:1のモル比のイミダゾリウムBF4樹脂、イミダゾリウムブロミド硬化剤、および臭化テトライミダゾリウム架橋剤)を有し、20%m/mの追加イオン性液体で改変して、材料の導電性を改善した。確実に完全に重合させるために、ポリマー試料を60℃で一晩硬化させた。プロトン伝導性を測定するために、ジエチルメチルアンモニウムトリフレート(DEMATF)を1つの試料に添加し、もう1つの試料は、トリブチルオクチルホスホニウムブロミド中0.2M塩化亜鉛を有し、市販の亜鉛電池に見出される典型的な濃度を模倣する。3つの試料を、リチウム電池で使用されるさまざまなリチウム化合物で、すなわち、リチウムビス(トリフルオロメタン)スルホンアミド(LiTFSI、0.2M)、炭酸リチウム(LiCO3、1M)、およびトリブチルオクチルホスホニウムブロミド中ヘキサフルオロリン酸リチウム(LiPF6、1M)で改変した。得られた電気化学的インピーダンススペクトルを図21A~21Eに示した。イオン性熱硬化性ポリマー試料に関する昇順の導電性は、DEMATF<ZnCl2<LiTFSI<LiCO3<LiPF6であった。切片でのZ’値は、最も適合する半円方程式によって推定し、対応する導電率は、各試料の特定の幾何学的寸法を使用して計算し、以下の表2に示してある。LiPFを1Mを含有するポリマーに関する導電率は、DEMATFを有するものよりも3桁大きい(表2を参照されたい)。従来のエポキシポリマーは、同様の導電率を有するために、40~60%の範囲のイオン性液体含有量に達する必要があり、60~20重量パーセントへの減少は、非イオン性エポキシ材料を超える、イオン伝導性に対するIT構造の利点を示唆していることに留意するのは興味深い。
【表2】
【0134】
幅広い組成のIT架橋剤で改変された異なるSILERポリマーの引張強度と、完全に配合された市販のポリマーとのそれらの比較を調査した(図22Aおよび22Bを参照されたい)。図22Aおよび22Bは、市販のエポキシポリマー単独およびIT-架橋剤ポリマーに関する典型的な引張強度対歪みを示しており、すべてのポリマーは犬の骨の形(46mm x 10mm x 2mm)に成形した。市販のポリマーの最大強度は、46MPaであり、このポリマーに、バッテリーセパレータにおいて十分なイオン伝導性に必要な40%m/mのトリブチルオクチルホスホニウムブロミドを添加して硬化させた場合、最大引張強度は、8MPaに減少した。また、試料が破損する前に、有意な粘弾性挙動が観察され、それは、追加のイオン性液体の可塑化効果と関連があると考えられる。
【0135】
SILER/IT-架橋剤ポリマー試料(モル比10:9:1のイミダゾリウムBF樹脂と、イミダゾリウムブロミド硬化剤と、トリエチルメチルアンモニウムブロミン架橋剤(図22B、三角形)またはテトライミダゾリウムアミンブロミン架橋剤(図22B、楕円形)との組成物)は、20%の追加のイオン性液体を含有していた。線状トリアミン架橋剤を用いているSILERポリマーは、15.4MPaの極限引張強さ値を有し、テトライミダゾリウムアミン架橋剤に対応する極限引張強さ値は28.2MPaであった。どちらの場合も、粘弾性領域の有意な存在はなかった。SILER/IT架橋剤ポリマーは、改善された硬化および最大強度を付与するために、市販のエポキシと同等の添加剤バランスを含み得ることが考えられる。したがって、開示されるポリマーは、イオン伝導性の増加のために犠牲にされることなく、改善された機械的強度特性を提供する。
【0136】
試験された別の特性は、水蒸気を吸収するSILER成分およびポリマーの能力であった。この特性を測定するために、イミダゾリウムBF樹脂と、イミダゾリウムブロミド硬化剤と、線状トリエチルメチルアンモニウム架橋剤と、二つのSILERポリマー(10:9:1の樹脂:硬化剤:架橋剤、1つはBF樹脂を使用したもの、およびもう一方は同じもののPFバージョンを使用したもの)を、最小質量変化が検出されるまで、10、30、50、70、および90%の異なる相対湿度で安定化させた。Δm/m対RHとしてプロットした典型的な等温線を図23に示してある。線状架橋剤およびイミダゾリウムブロミド硬化剤は、すべての相対湿度でより高い吸水率を示し、それぞれ最大で127%および120%であった。SILERイミダゾリウムBF樹脂の水の取り込みは、すべてのRHで無視できるものであった。ポリマーは、樹脂アニオンに依存する挙動を有する。最も疎水性のアニオン(PF)を有するポリマーは、27%(90%RH)の最大Δm/m値を有し、疎水性がより低い(BF)は、同じ相対湿度において76%と3倍程度高い。RH掃引の方向を逆にすると、すべての試料のΔm/m対RHプロットの挙動において感知可能なヒステリシスはなく、可逆的な水の吸着/脱着プロセスを示している。
【0137】
ある特定の実施形態が本明細書で図示および説明されたが、同じ目的を達成するために計算された多種多様な代替および/または同等の実施形態または実装が、範囲から逸脱することなく示されかつ説明された実施形態の代わりになり得ることは、当業者には理解されるであろう。当業者は、実施形態が非常に多種多様な方法で実施され得ることを容易に理解するであろう。本出願は、本明細書で考察される実施形態の任意の適応または変形を網羅することを意図している。したがって、実施形態は、特許請求の範囲およびその同等物によってのみ限定されることが明示的に意図されている。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9A
図9B
図9C
図9D
図9E
図9F
図10A
図10B
図10C
図10D
図10E
図10F
図10G
図10H
図10I
図11
図12
図13
図14
図15A
図15B
図15C
図15D
図15E
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図16A
図16B
図16C
図16D
図16E
図16F
図17A
図17B
図17C
図17D
図18A
図18B
図19
図20
図21A
図21B
図21C
図21D
図21E
図22A
図22B
図23